説明

高圧ガスタンク

【課題】部材の変形、劣化をより効果的に低減でき得る高圧ガスタンクを提供する。
【解決手段】高圧ガスタンク10は、その内部にガスが貯留される中空形状体であるライナ12と、前記ライナ12の外側面を覆う補強層16と、前記ライナの端部に配置されるとともにバルブアッセンブリ100が装着される口金14と、を有する。口金14は、前記ライナ12の内外を連通する略筒状の筒部30と、当該筒部30の外側面から外側に張り出して前記ライナ12と補強層16との間に位置する鍔部32と、を含む。高圧ガスタンク10は、さらに、前記口金12に連結されるとともに、その一部が前記ライナ12の内側面に接触する応力緩和プレート17も有している。口金14等の突出力が、鍔部32だけでなく、この応力緩和プレート17にも分散されて伝達されることで、応力の集中が緩和され、部材(補強層16など)の変形、劣化をより効果的に防止または低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常圧よりも高い圧力でガス(例えば水素ガスや天然ガスなど)を貯留する高圧ガスタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然ガスや水素ガスなどの燃料ガスを、常圧より高い圧力、すなわち、高圧(例えば35MPaや70MPa)で貯留する高圧ガスタンクが広く知られている。かかる高圧ガスタンクは、これらガスを燃料とする移動体、例えば、燃料電池自動車や、CNG車などに搭載されることが多い。
【0003】
この種の高圧ガスタンクとしては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1記載の高圧ガスタンクは、合成樹脂製の内殻と、該内殻に取り付けられた口金と、内殻および口金の外面を覆うFRP(Fiber Reinforced Plastics)製の外殻(補強層)と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−14342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、こうした従来の高圧ガスタンクの口金には、内殻と外殻との間に位置する鍔部(フランジ部)が延設されていることが多い。かかる鍔部は、他の部位に比して応力が集中しやすく、当該応力を受けて鍔部や当該鍔部周辺の外殻に変形が生じやすい。この鍔部等の変形は、高圧ガスタンクの性能低下や寿命低下の要因の一つになる。この鍔部等の変形を防止するために、補強層を肉厚にすることが考えられる。しかし、かかる補強層の肉厚化は、コスト増加やタンクのサイズや重量増加を招く。
【0006】
こうした問題を低減するために、特許文献1には、タンク内圧により変形が生じやすい鍔部と外殻との間に、当該鍔部への圧縮応力を吸収・緩和する緩衝材を設ける技術が開示されている。かかる技術によれば、タンク内圧に起因する部材変形を多少は低減できる。しかし、この特許文献1記載の技術のように緩衝材を設けたとしても、鍔部周辺に応力が集中することに変わりはないため、当該鍔部周辺における部材の変形、劣化を効果的に防止または低減することは出来なかった。
【0007】
そこで、本発明では、部材の変形、劣化をより効果的に防止または低減でき得る高圧ガスタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高圧ガスタンクは、常圧よりも高い圧力でガスを貯留する高圧ガスタンクであって、その内部にガスが貯留される中空形状体であるライナと、前記ライナの外側面を覆う補強層と、前記ライナの端部に配置されるとともにバルブアッセンブリが装着される口金であって、前記ライナの内外を連通する略筒状の筒部および当該筒部の外側面から外側に張り出して前記ライナと補強層との間に位置する鍔部を含む口金と、前記口金に連結されるとともに、その一部が前記ライナの内側面に接触する応力緩和プレートと、を備えることを特徴とする。
【0009】
好適な態様では、前記応力緩和プレートは、前記ライナの内側面に対応した形状を有し、当該ライナの内側面に面接触する接触部を有する。この場合、前記接触部は、少なくとも、前記ライナと前記補強層との間に前記鍔部が介在していない部分においても前記ライナの内側面に接触している、ことが望ましい。
【0010】
他の好適な態様では、前記応力緩和プレートは、前記ライナの形状変化に追従する程度の弾性を有する。
【0011】
他の好適な態様では、前記ライナは、円筒形の端部に略半球面状のライナドーム部を接続した形状であり、前記口金は、前記ライナドーム部の中央に形成された孔に挿入され、前記応力緩和プレートは、前記口金の筒部の下端面に連結される略環状の連結部と、前記連結部の周縁から立脚する略円錐台状の中間部と、前記中間部の上縁から延設されるとともに前記ライナドーム部に面接触する接触部と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、口金等の突出力が、鍔部だけでなく、前記口金に連結されるとともにその一部が前記ライナの内側面に接触する応力緩和プレートにも分散されて補強層に伝達されることになる。その結果、応力の集中が緩和され、部材の変形、劣化をより効果的に防止または低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態である高圧ガスタンクの概略断面図である。
【図2】図1におけるA部拡大図である。
【図3】応力緩和プレートの断面斜視図である。
【図4】他の応力緩和プレートの上面図である。
【図5】他の応力緩和プレートの上面図である。
【図6】従来の高圧ガスタンクの口金周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である高圧ガスタンク10の概略断面図である。また、図2は、図1におけるA部拡大図である。
【0015】
この高圧ガスタンク10は、水素ガスや天然ガスなどの燃料ガスを常圧より高い圧力、すなわち高圧(例えば数十MPa〜100MPaなど)で貯蔵するための容器である。高圧ガスタンク10は、据え置き型として用いられてもよいし、車両などの移動体に搭載されて用いられてもよい。例えば、燃料電池自動車に搭載されて使用される場合、この高圧ガスタンク10には、数十Mpa〜100Mpa程度の圧力の燃料ガス(水素ガス)が充填される。
【0016】
本実施形態の高圧ガスタンク10は、樹脂などからなるライナ12や、当該ライナ12の端部に装着される口金14、ライナ12および口金14の外側面を覆う補強層16、および、口金14にかかる応力を緩和する応力緩和プレート17などを備えている。
【0017】
ライナ12は、樹脂などからなる略円筒形部材で、ガスバリア性を有している。このライナ12は、より正確に言えば、円筒の両端に、略半球面状のライナドーム部22を接続したような形状となっている。そして、このライナ12の内部が、高圧ガスが充填されるガス貯留空間18となる。さらに、ライナ12の一端または両端(図示例では両端)、すなわち、ライナドーム部22の略中心は、タンクの内側に折りこまれており、口金14が挿入される挿入筒20を形成している。この挿入筒20は、口金14の外径とほぼ同じ、あるいは、若干大きい内径を有した略円筒形部位である。
【0018】
なお、本実施形態のライナ12は、応力緩和プレート17を装着する都合上、二つのライナ片を溶接することにより形成される。ライナ片は、一端に口金14が装着可能で、他端が完全開口された略円筒形の部材、すなわち、ライナ12を横半分に分割したような部材である。ライナ12を形成する場合には、まず、このライナ片の一端に口金14を装着し、さらに、当該口金14の後端面に応力緩和プレート17をボルト締結する。そして、口金14および応力緩和プレート17が取り付けられた二つのライナ片の他端を溶接などで接続することにより、一つのライナ12が形成される。
【0019】
口金14は、ライナ12の端部に配置された略円筒形部材であって、ライナ12の内外を連通する部材である。この口金14の内部には、バルブアッセンブリが着脱されるようになっている。口金14は、ステンレスやアルミニウムなどの金属からなり、略円筒形の筒部30と、当該筒部30の外側面から突出形成される鍔部32を有している。なお、以下の説明では、口金のうち、ライナ12に挿入される側の端部(すなわち図2において右側端部)を「後端」、ライナ12の外側に突出する側の端部(すなわち図2において左側端部)を「先端」と呼ぶ。
【0020】
筒部30は、その内径がバルブアッセンブリの外径より僅かに小さい筒状部位である。この筒部30の内側面には、バルブアッセンブリの着脱を許容する雌ネジが形成されている。ここで、この筒部30の先端はタンクの外側に突出しており、筒部30の後端はタンクの内部に突出している。この筒部30の後端面30aには、後に詳説する応力緩和プレート17を螺合連結するための連結ボルト50が螺合される雌ネジ34が形成されている。
【0021】
鍔部32は、筒部30の中間高さ位置から外側に張り出した略円盤状の部位である。また、鍔部32は、ライナドーム部22周辺に対応した形状をしており、当該口金14をライナ12に装着した際、この鍔部32とライナドーム部22の端面とが滑らかに連続するようになっている。この鍔部32は、筒部30と一体成形されており、かかる鍔部32が、ライナ12と補強層16との間に位置することにより、口金14の抜けが阻害される。
【0022】
すなわち、タンクに充填されたガスからの圧力により、口金14および当該口金14に装着されたバルブアッセンブリ100が外側方向に押圧される。この押圧を受けて口金14等が抜けようとしても、鍔部32が、補強層16に当接することになるため、口金14等の抜けが確実に阻害されるようになっている。
【0023】
ただし、後に詳説するように、従来、この鍔部32の補強層16への当接に伴い、補強層16が変形することがあった。かかる補強層16の変形は、種々の問題を招くことが知られている。そこで、本実施形態では、この補強層16の変形を防止または低減するために、口金14に連結されるとともに、その一部がライナ12の内側面に接触する応力緩和プレート17を設けている。この応力緩和プレート17は、金属からなるプレートであるが、その具体的な構成や作用については後に詳説する。
【0024】
補強層16は、樹脂製のライナ12を補強する目的設けられる層で、例えば、繊維強化複合材としての単位繊維強化プラスチック(CFRP)などから構成される。この補強層16は、繊維状材料であるCFRPを、例えば、フィラメントワインディング法(以下「FW法」と略す)などにより、口金14が装着された状態のライナ12の外側面に巻回することで形成される。なお、図面から明らかなとおり、この補強層16も、ライナ12と同様に、先端の両端に略半球面が接続されたような中空体形状となる。そして、この補強層16の端部には、口金14の突出を許容するための開口が形成されることになる。
【0025】
ここで、補強層16には、タンク内に充填されたガスの圧力が、口金14およびライナ12を介して伝達される。この伝達される圧力は、均一ではなく、口金14の鍔部32周辺において過大になり易いことが知られている。その結果、従来の高圧ガスタンクでは、当該鍔部周辺において補強層の変形が生じる場合があった。これについて、図6を参照して詳説する。
【0026】
図6は、従来の高圧ガスタンクの概略断面図であり、図6(a)は補強層16の変形前を、図6(b)は補強層16の変形後を示している。従来の高圧ガスタンクも、樹脂製のライナ12、当該ライナ12の端部に装着される口金14、ライナ12および口金14の外側面を覆う補強層16などを備えている。ただし、本実施形態の高圧ガスタンクと異なり、従来の高圧ガスタンクには、口金14に連結されるとともに、その一部がライナ12の内側面に接触する応力緩和プレート17は設けられていない。
【0027】
かかる高圧ガスタンクにおいて、当該タンクに高圧ガスが充填された場合、当該高圧ガスの圧力がライナ12および口金14を介して補強層16に伝達され、補強層16が、外向きに押圧されることになる。この押圧を受けて、補強層16の開口周辺が、当該開口が広がる方向、換言すれば、口金14との接触面積が減少する方向に変形し、結果として、図6(b)で図示するような状態になることがある。
【0028】
かかる変形が生じる原因としては、まず、補強層16のなかでも開口周辺は、他の部位に比して強度が低く、変形し易いことが挙げられる。また、もう一つの原因として、当該開口周辺には、口金14の鍔部32を介して、他の部位に比して過大な押圧力が伝達されやすいことが挙げられる。
【0029】
すなわち、高圧ガスの圧力は、ライナ12の内側面だけでなく、口金14の筒部後端面30aや当該口金14に螺合連結されたバルブアッセンブリ100の底面にもかかる。この内圧を受けて、バルブアッセンブリ100および口金14は、外側に突出しようとする。ただし、この口金14等の突出は、口金14の鍔部32が補強層16に当接することで阻害される。別の見方をすれば、補強層16のうち当該鍔部32との接触部分には、当該鍔部32に作用する内圧だけでなく、口金14およびバルブアッセンブリ100が外側に突出しようとする力もかかることになる。
【0030】
より具体的に説明すると、高圧ガスの圧力をP、鍔部32の外径をb、口金14の筒部30の外径をrとした場合、当該鍔部32を介して補強層16に伝達される圧力P*は、P*=(b2×P)/(b2−r2)という数式で表される。かかる圧力P*がかかることで補強層16のうち開口周辺が、口金14との接触面積が減少する方向、すなわち、外側方向に変位しやすくなる。
【0031】
この開口周辺における補強層16の変形が生じた場合、図6(b)に図示するように、口金14、ライナ12、および、補強層16の間に微小な間隙が形成され、ガスバリア性能が低減したり、高圧ガスタンク全体としての強度が低下したりすることもある。そして、なによりも、かかる補強層16の変形は、口金14と補強層16との接触面積の更なる低減、ひいては、負荷(圧力)のさらなる集中を招き、結果として、補強層16のさらなる変形を誘発するという悪循環を招く。
【0032】
こうした補強層16の変形を防止するために、補強層16を、より肉厚にすることが考えられる。補強層16を肉厚にした場合、当該補強層16の強度が向上し、変形しづらくなる。しかし、補強層16の肉厚化は、高圧ガスタンクのサイズ増加や、補強層16の材料費増加という新たな問題を招く。
【0033】
本実施系形態では、補強層16を肉厚化することなく、かかる補強層16の変形、ひいては、応力(圧力)の集中を防止または低減するために、応力緩和プレート17を設けている。以下、この応力緩和プレート17について、図1〜図3を参照して説明する。図3は、応力緩和プレート17の断面斜視図である。
【0034】
既述したとおり、応力緩和プレート17は、口金に連結されるとともに、その一部がライナ12の内側面に接触するプレートである。この応力緩和プレート17は、連結部40、中間部42、および、接触部44に大別される。連結部40は、口金14の筒部後端面30aに螺合締結される略環状部位で、その中央には、口金筒部30の内径よりも大きく、かつ、口金筒部30の外径よりも小さい貫通孔40aが形成されている。また、この連結部40には、複数のボルト孔41が、周方向に均等に並んでいる。また、既述したとおり、筒部後端面30aのうち、このボルト孔41に対応する位置には、複数の雌ネジ34が形成されている。応力緩和プレート17を口金14に連結する場合には、このボルト孔41に挿通させた連結ボルト50を口金14に形成された雌ネジ34に螺合させればよい。
【0035】
略環状の連結部40の周縁からは、中間部42が立脚している。この中間部42は、接触部44と連結部40とを接続する部位で、連結部40から離れるほど大径になるような略円錐台形状をしている。また、この中間部42の高さは、筒部後端面30aからライナドーム部22の内側面までの距離にほぼ等しくなっている。
【0036】
中間部42の周縁から延びる接触部44は、ライナドーム部22に対応した形状をしており、当該ライナドーム部22に面接触できるようになっている。この接触部44は、少なくとも、その外周縁が、鍔部32の外周縁よりも外側に位置するような形状となっている。換言すれば、鍔部32が介在することなく、ライナ12を挟んで接触部44と補強層16が対向する部分が存在するような構成となっている。かかる構成とするのは、口金14全体にかかる応力を、より分散するためである。
【0037】
なお、本実施形態では、この応力をより分散するために、接触部44を、その内周縁が鍔部32の外周縁よりも外側に位置するような形状としている。換言すれば、本実施形態において、接触部44と補強層16との間には、鍔部32が一切介在しない構成となっているが、これについても後に詳説する。
【0038】
かかる応力緩和プレート17は、口金14にかかる応力の一部をライナドーム部22に伝達する。そして、これにより、鍔部32周辺への応力集中が緩和する。すなわち、既述したとおり、タンクに充填されたガスの圧力を受けて、バルブアッセンブリ100および口金14が、外側に突出しようとする。従来、この口金14等の突出を阻害するべく、鍔部32のみが補強層16に当接していたため、当該鍔部32周辺にのみ過大な応力が作用していた。
【0039】
一方、本実施形態では、口金14等が突出しようとした場合、当該突出を阻害するべく、鍔部32が補強層16に当接するだけでなく、口金14に連結された応力緩和プレート17の接触部44もライナ12の内側面に当接することになる。換言すれば、口金14およびバルブアッセンブリ100の後端面に作用した応力は、鍔部32だけでなく、応力緩和プレート17の接触部44にも分散されたうえで、補強層16に伝達されることになる。
【0040】
ここで、既述したとおり、本実施形態の応力緩和プレート17の接触部44は、ライナ12と補強層16との間に鍔部32が介在していない位置において、ライナ12の内側面に接触している。換言すれば、接触部44およびライナ12を介して伝達される口金14等の突出力は、補強層16のうち鍔部32とは接触していない部分に伝達されることになる。そのため、応力の集中が緩和され、鍔部32周辺での補強層16の変位が効果的に防止または低減される。
【0041】
なお、当然ながら、応力緩和プレート17は、タンクの内圧変動により塑性変形しない程度の剛性を有していることが望まれる。また同時に、応力緩和プレート17、特に接触部44は、ライナ12に形状変形に追従できる程度の弾性を備えていることも望まれる。すなわち、樹脂からなるライナ12は、温度変化などにより微妙に変形することが知られている。温度変化などによりライナ12が変形したにもかかわらず、応力緩和プレート17の接触部44の形状が不変の場合、当該接触部とライナ12内側面との接触面積が低減し、ひいては、応力の分散度合いが低減することになる。そこで、応力緩和プレート17の接触部44は、ライナの変形に追従できる程度の弾性を有していることが望ましい。かかる弾性は、応力緩和プレート17の材質や肉厚を調整することにより持たせることができる。また、接触部44の形状を特殊形状にすることにより弾性を持たせるようにしてもよい。例えば、図4に図示するように、接触部44に、径方向に延びる切り込み、すなわち、スリット46を複数形成することで、接触部44に適度な弾性を持たせることができる。また、スリット46を形成するのではなく、図5に図示するように、略矩形状の複数の接触部44aを周方向に間隔48を空けて配置し、上面視で略歯車状になるようにしてもよい。かかる構成にしても、温度変化に伴うライナ12の形状変化に柔軟に追従することができる。そして、結果として、応力の集中、ひいては、補強層16の変形等をより効果的に防止または低減できる。なお、スリット46を形成したり、略矩形状の接触部44aを周方向に配置したりする場合、当該スリット46や略矩形状の接触部44aが、周方向に均等に並ぶようにする。これは、ライナ12および補強層16にかかる応力を均等に分散させるためである。
【0042】
また、これまで説明した応力緩和プレート17の構成は一例であり、少なくとも、口金14に連結されるとともに、ライナ12の内側面の一部に接触できるのであれば、他の構成でもよい。例えば、上述の説明では、応力緩和プレート17は、口金14の筒部後端面30aに連結されているが、他の部位、例えば、口金筒部30の外周面などに連結されてもよい。また、応力緩和プレート17および口金14の連結手段、螺合に限定されず、溶接や嵌合など、他の連結手段を用いてもよい。また、本実施形態では、ライナ12を略円筒状としているが、端部に口金14が装着される中空体であるなら、他の形状、例えば、略球形などであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 高圧ガスタンク、12 ライナ、14 口金、16 補強層、17 応力緩和プレート、18 ガス貯留空間、20 挿入筒、22 ライナドーム部、30 筒部、32 鍔部、34 雌ネジ、40 連結部、42 中間部、44 接触部、50 連結ボルト、100 バルブアッセンブリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常圧よりも高い圧力でガスを貯留する高圧ガスタンクであって、
その内部にガスが貯留される中空形状体であるライナと、
前記ライナの外側面を覆う補強層と、
前記ライナの端部に配置されるとともにバルブアッセンブリが装着される口金であって、前記ライナの内外を連通する略筒状の筒部および当該筒部の外側面から外側に張り出して前記ライナと補強層との間に位置する鍔部を含む口金と、
前記口金に連結されるとともに、その一部が前記ライナの内側面に接触する応力緩和プレートと、
を備えることを特徴とする高圧ガスタンク。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧ガスタンクであって、
前記応力緩和プレートは、前記ライナの内側面に対応した形状を有し、当該ライナの内側面に面接触する接触部を有する、ことを特徴とする高圧ガスタンク。
【請求項3】
請求項2に記載の高圧ガスタンクであって、
前記接触部は、少なくとも、前記ライナと前記補強層との間に前記鍔部が介在していない部分においても前記ライナの内側面に接触している、ことを特徴とする高圧ガスタンク。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の高圧ガスタンクであって、
前記応力緩和プレートは、前記ライナの形状変化に追従する程度の弾性を有する、ことを特徴とする高圧ガスタンク。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の高圧ガスタンクであって、
前記ライナは、円筒形の端部に略半球面状のライナドーム部を接続した形状であり、
前記口金は、前記ライナドーム部の中央に形成された孔に挿入され、
前記応力緩和プレートは、前記口金の筒部の下端面に連結される略環状の連結部と、前記連結部の周縁から立脚する略円錐台状の中間部と、前記中間部の上縁から延設されるとともに前記ライナドーム部に面接触する接触部と、を含む、
ことを特徴とする高圧ガスタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−270781(P2010−270781A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120934(P2009−120934)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】