説明

高圧系統保護機器の動作試験装置及び動作試験方法

【課題】現地での試験装置の構築に時間がかからないようにする
【解決手段】一次側に電圧調整器SDを介して商用電源CPSが接続される試験用単相変圧器Tの二次側出力巻線の一端に一方の端子が他端に他方の端子がそれぞれ接続され地絡電圧検出器V0Sが接続される地絡電圧検出端子V0T、二次側出力巻線に直列に接続され地絡電流検出器I0Sが接続される地絡電流検出端子I0T、高圧母線HVBの負荷開閉器64より電源側に接続される電源側出力端子POT、高圧母線HVBの負荷開閉器64より負荷側に接続される負荷側出力端子LOT、二次側出力巻線の一端及び他端と電源側出力端子POT及び負荷側出力端子LOTとの接続を切り替えることにより高圧母線HVBに流れる試験用地絡電流の方向を電源側から負荷側への方向と負荷側から電源側への方向とに選択的に切り替える地絡電流方向切り替えスイッチSWを一体的に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高圧需要家内で発生した電気設備の事故に対して自動的に高圧母線を遮断して他の需要家への前記事故の影響を制限する負荷開閉器にそれぞれ搭載された零相電流検出器及び零相電圧検出器の各出力を入力する過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型開閉器制御装置に搭載された地絡方向継電器を含む総合的な動作試験をする高圧系統保護機器の動作試験装置及び動作試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
6.6kV気中負荷開閉器及び、過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型開閉器(SOG)制御装置に搭載の地絡保護継電器(67)は、保護対象回路の地絡時に発生する零相電圧をコンデンサ型零相電圧検出装置(ZPD)で検出し、零相電流を零相変流器(ZCT)で検出し、これらの零相電圧、零相電流の大きさ及び、位相関係から、保護対象回路の地絡事故か、外部事故かを判断し、地絡故障回線の切り離しを行う。
【0003】
前記の通り、地絡方向継電器は零相電圧と零相電流の位相関係が重要である事から、コンデンサ型零相電圧検出装置(ZPD)、零相電流を零相変流器(ZCT)、地絡方向継電器までのケーブル及び、地絡方向継電器の動作を含めた総合的な動作確認が必要となる
【0004】
地絡方向継電器の総。同図においては、試験を実施するにあたり、運用停止状態にした高圧母線に繋がる負荷側回線を3相短絡し、試験用単相変圧器Tは低圧側が電圧調整器を介して試験用電源に接続され、試験用単相変圧器Tにより変圧比nで昇圧した対地試験電圧(地絡電圧)を印加する。変圧器Tの高圧側に試験用インピーダンス回路Zを設け高圧合試験を運用停止状態で実施する場合、特許文献1による動作試験回路の一例を図5に示す母線に接続し、試験用単相変圧器Tと試験用インピーダンス回路Zで構成される閉回路に流れる電流を零相変流器ZCTに貫通させて接地する事により、零相変流器ZCTに電流を流す。
接地計器用変圧器EVT(またはコンデンサ型零相電圧検出装置ZPD)は、高圧母線に接続されて零相電圧を検出する。
地絡方向継電器は、零相変流器ZCT及び、接地計器用変圧器EVT(またはコンデンサ型零相電圧検出装置ZPD)からの零相電流I0及び、零相電圧V0が入力され、地絡方向動作を行う。
【0005】
前述の特許文献1において、地絡電流は接地計器用変圧器EVTの制限抵抗及び、試験用インピーダンスZが固定である事から地絡電圧と連動して変動する事となる。零相変流器ZCTが貫通型の場合は、試験用電源で生成した電流を零相変流器ZCTに貫通させ地絡電流の模擬を実施しているが、零相変流器ZCTが装置搭載型の場合は、高圧主回路自体に地絡電流を流す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】2007−132665号公報(図1及びその説明)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の試験装置は以上のように構成されている為、次のような問題がある。
接地計器用変圧器EVTの制限抵抗及び、試験用インピーダンスZの値は固定であり、地絡電流I0は印加電圧の大きさに比例して変動する為、地絡方向継電器の地絡電圧検出と、地絡電流検出を個別に確認する事ができない。すなわち、地絡電圧のみ検出時又は、地絡電流のみ検出時に地絡方向継電器の不動作を確認する事ができない。
【0008】
変圧器Tの高圧側に試験用インピーダンス回路Zを設け高圧母線に接続し、試験用単相変圧器Tと試験用インピーダンス回路Zで構成される閉回路に流れる電流を零相変流器ZCTに貫通させて接地する事により、零相変流器ZCTに電流を流している為、貫通型の零相変流器ZCTでは回路構成が可能であるが、6.6kV気中負荷開閉器PAS及び、過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型高圧開閉器制御装置SOGに搭載の地絡保護継電器のように零相変流器が6.6kV気中負荷開閉器PAS内に搭載され、零相変流器ZCTに貫通できない場合は、零相変流器ZCTに電流を流す事ができず、地絡方向継電器を動作させる事ができない。
地絡方向継電器の方向性を確認する為、地絡電流の位相を振替えて継電器の動作、不動作を確認する必要があるが、その際、地絡電流の方向を入れ替える為、試験用単相変圧器Tの高圧側と高圧母線の接続を変更する必要があり、試験時間が長くなる。
試験回路に使用する設備、部品が独立しており、現地での試験回路及び、計測回路の構築などの所謂現地での試験装置の構築に時間がかかる。
過電圧を印加した場合、過大な地絡電流が流れるが、その際、過電流保護が無い為、試験回路を焼損させる可能性がある。
【0009】
この発明は、前述のような実情に鑑みてなされたもので、現地での試験装置の構築に時間がかからないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る高圧系統保護機器の動作試験装置は、高圧需要家内で発生した電気設備の事故に対して自動的に高圧母線を遮断して他の需要家への前記事故の影響を制限する負荷開閉器にそれぞれ搭載された零相電流検出器及び零相電圧検出器の各出力を入力する過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型開閉器制御装置に搭載された地絡方向継電器を含む総合的な動作試験をする高圧系統保護機器の動作試験装置であって、一次側に電圧調整器を介して商用電源が接続される試験用単相変圧器、この試験用単相変圧器の二次側出力巻線の一端に一方の端子が前記二次側出力巻線の他端に他方の端子がそれぞれ接続され地絡電圧検出器が接続される地絡電圧検出端子、前記二次側出力巻線に直列に接続され地絡電流検出器が接続される地絡電流検出端子、前記高圧母線の前記負荷開閉器より電源側に接続される電源側出力端子、前記高圧母線の前記負荷開閉器より負荷側に接続される負荷側出力端子、及び選択的切り替えにより前記試験用単相変圧器の二次側出力巻線の前記一端及び前記他端と前記電源側出力端子及び前記負荷側出力端子との接続を切り替えることにより前記高圧母線に流れる試験用地絡電流の方向を電源側から負荷側への方向と負荷側から電源側への方向とに選択的に切り替える地絡電流方向切り替えスイッチを備えているものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、高圧需要家内で発生した電気設備の事故に対して自動的に高圧母線を遮断して他の需要家への前記事故の影響を制限する負荷開閉器にそれぞれ搭載された零相電流検出器及び零相電圧検出器の各出力を入力する過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型開閉器制御装置に搭載される地絡方向継電器を含む総合的な動作試験をする高圧系統保護機器の動作試験装置であって、一次側に電圧調整器を介して商用電源が接続される試験用単相変圧器、この試験用単相変圧器の二次側出力巻線の一端に一方の端子が前記二次側出力巻線の他端に他方の端子がそれぞれ接続され地絡電圧検出器が接続される地絡電圧検出端子、前記二次側出力巻線に直列に接続され地絡電流検出器が接続される地絡電流検出端子、前記高圧母線の前記負荷開閉器より電源側に接続される電源側出力端子、前記高圧母線の前記負荷開閉器より負荷側に接続される負荷側出力端子、及び選択的切り替えにより前記試験用単相変圧器の二次側出力巻線の前記一端及び前記他端と前記電源側出力端子及び前記負荷側出力端子との接続を切り替えることにより前記高圧母線に流れる試験用地絡電流の方向を電源側から負荷側への方向と負荷側から電源側への方向とに選択的に切り替える地絡電流方向切り替えスイッチを備えているので、現地での試験装置の構築に時間がかからないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1を示す図で、地絡電流方向切り替えスイッチSWを上側に選択切り替えしている状態を例示する図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す図で、地絡電流方向切り替えスイッチSWを下側に選択切り替えしている状態を例示する図である。
【図3】この発明の実施の形態2を示す図で、接地計器用変圧器EVTが電源側に設置されている場合を例示する図である。
【図4】この発明の実施の形態2を示す図で、接地計器用変圧器EVTが負荷側に設置されている場合を例示する図である。
【図5】従来の試験装置(回路)及び試験方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。図1においては、電圧調整器SDを介して接続された試験用単相変圧器Tの二次側を電流方向切替スイッチSW、電流調整用可変抵抗R及び、過電流防止用固定抵抗RL、過電流防止用開閉器MCCBを介して試験用単相変圧器Tの二次側に接続された試験装置の切替スイッチSWの両端から、6.6kV気中負荷開閉器64の両端を3相短絡して接続し、電圧調整器SDから商用電源に接続し、又、接地端子Eをアースearthに接続する。
【0014】
実施の形態1は、高圧需要家内で発生した電気設備の事故に対して自動的に高圧母線HVBを遮断して他の需要家への前記事故の影響を制限する負荷開閉器64にそれぞれ搭載された零相電流検出器ZCT及び零相電圧検出器ZPDの各出力を入力する過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型高圧開閉器制御装置SOGに搭載された地絡方向継電器67を含む総合的な動作試験をする高圧系統保護機器の動作試験装置であって、本実施の形態1の高圧系統保護機器の動作試験装置は、一次側に電圧調整器SDを介して商用電源CPSが接続される試験用単相変圧器T、この試験用単相変圧器Tの二次側出力巻線の一端に一方の端子が前記二次側出力巻線の他端に他方の端子がそれぞれ接続される地絡電圧検出端子V0T、前記二次側出力巻線に直列に接続され地絡電流検出器I0Sが接続される地絡電流検出端子I0T、前記高圧母線HVBの前記負荷開閉器64より電源側に接続される電源側出力端子POT、前記高圧母線HVBの前記負荷開閉器64より負荷側に接続される負荷側出力端子LOT、及び選択的切り替えにより前記試験用単相変圧器Tの二次側出力巻線の前記一端及び前記他端と前記電源側出力端子POT及び前記負荷側出力端子LOTとの接続を切り替えることにより前記高圧母線HVBに流れる試験用地絡電流の方向を電源側から負荷側への方向と負荷側から電源側への方向とに選択的に切り替える地絡電流方向切り替えスイッチSWを一体的に備えている。
【0015】
また、本実施の形態1の高圧系統保護機器の動作試験装置では、地絡電流過電流防止用開閉器MCCBが前記試験用単相変圧器Tの二次側出力巻線に直列に接続され、地絡電流過電流防止用抵抗RLが前記試験用単相変圧器Tの二次側出力巻線に直列に接続され、地絡電流調整用抵抗Rが前記試験用単相変圧器Tの二次側出力巻線に直列に接続されている。
【0016】
前記地絡電流過電流防止用開閉器MCCBと前記地絡電流過電流防止用抵抗RLと前記地絡電流調整用抵抗Rとが直列に接続され、この地絡電流過電流防止用開閉器MCCBと地絡電流過電流防止用抵抗RLと地絡電流調整用抵抗Rとの直列回路に前記地絡電流検出端子I0Tが直列に接続されている。
【0017】
前記電源側出力端子POT及び前記負荷側出力端子LOTの何れも前記高圧母線HVBの各相に接続できる3個の端子である。
前記零相電流検出器ZCT、前記零相電圧検出器ZPD、及び前記地絡方向継電器67の各動作の健全性は、前記過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型高圧開閉器制御装置SOGで総合的に判別される。
【0018】
また、換言すれば、本実施の形態1は、高圧需要家内で発生した電気設備の事故に対して、自動的に電路を遮断して他の需要家への影響を最小限にする為の6.6kV気中負荷開閉器PASと、それと組合わせて使用する過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型高圧開閉器制御装置SOGに搭載される地絡方向継電器67を総合的に組合せて動作試験を行う為の装置であって、一般的に使用可能な商用電源CPSを使用し、零相電圧V0を調整する為の電圧調整回路、零相電流I0を調整する為の電流調整回路、地絡方向を切り替える為の切替回路、零相電圧、零相電流の計測回路、過電流保護回路が、地絡方向継電器の動作試験装置として一体化されたものである。
【0019】
また、6.6kV気中負荷開閉器PAS及び、過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型高圧開閉器制御装置SOGに搭載の地絡保護継電器67用総合試験装置であり、6.6kVの高圧用気中負荷開閉器PAS及び、過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型高圧開閉器制御装置SOGに搭載の地絡保護継電器67用の試験に係り、特に、一次回路、保護回路を合わせた総合動作を容易に実施できる試験装置である。
【0020】
従来の方法に比べて6.6kV気中負荷開閉器及び、過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型高圧開閉器制御装置SOGに搭載の地絡保護継電器試験回路の構築が容易となると共に、試験回路の保護、零相電圧、零相電流の検出回路を個別に確認することができる試験装置である。
【0021】
6.6kV気中負荷開閉器及び、過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型高圧開閉器制御装置SOGに搭載の地絡保護継電器試験装置は、地絡電圧V0と地絡電流I0を個別に調整する為に、地絡電圧を調整する為の電圧調整回路の他に、地絡電流を調整する為の可変抵抗R、地絡電流方向切替用スイッチSW、地絡電流過電流防止用固定抵抗RL、地絡電流過電流防止用開閉器MCCBを設けたもので、これらを一体化したものである。
【0022】
交流100Vなどの商用電源に接続された電圧調整器SDを介して試験用単相変圧器Tの高圧側を、3相短絡された6.6kV気中負荷開閉器PASの両端の高圧母線に接続し、試験用単相変圧器Tの高圧側の片側を接地させるものである。
【0023】
試験用単相変圧器Tの高圧側の回路内に設けられた可変抵抗Rによって、零相変流器に流れる地絡電流の大きさを任意に変更し、且つ、電圧調整器SDによって、コンデンサ型零相電圧検出装置ZPDに入力される地絡電圧の大きさを任意に変更できる
【0024】
試験用単相変圧器Tの高圧側の回路内に設けられた可変抵抗Rによって、零相変流器に流れる地絡電流の大きさの任意に変更するが、誤って抵抗をゼロΩにした場合、過大な電流が流れ回路を焼損する可能性がある為、固定抵抗RLを設け、過大電流防止を図る事を特徴とする。又、試験回路内の短絡等の事故電流が流れ、被試験回路への影響を防止する為、過電流防止用MCCBを設けたものである。
【0025】
地絡電流の方向を試験回路の解線、再接続をすることなく変更できるようにするため、試験用単相変圧器Tの高圧側の回路内に設けられた地絡電流方向切替スイッチSWを設け容易に地絡電流の方向を変更できるようにしたものである。
【0026】
次に動作について説明する。参考として、一般的に、6.6kV気中負荷開閉器PAS及び、過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型高圧開閉器制御装置SOGに搭載の地絡保護継電器67の地絡電圧V0検出は6600/√3の2%から10%程度であり、2%の整定であれば76V程度、10%の整定であれば381V程度になるように、計測端子V0Tに接続された電圧計VOSを見ながら、電圧調整器SDを調節し、試験地絡電圧V0の検出動作を確認する。又、試験地絡電圧V0のみの検出では、地絡方向継電器67は不動作である事を確認する。その後、試験地絡電圧V0が検出しなくなるまで、電圧調整器SDを調節する。
【0027】
次に、地絡電流要素の検出確認であるが、一般的に、6.6kV気中負荷開閉器PAS及び、過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型高圧開閉器制御装置SOGに搭載の地絡保護継電器67の地絡電流I0検出は、0.2Aから0.6A程度であり、0.2Aの整定の場合は、計測端子I0Tに接続された電流計I0Sを見ながら、可変抵抗器Rを調節し、試験地絡電流I0の検出動作を確認する。試験地絡電流I0のみの検出では、地絡方向継電器67は不動作である事を確認する。
【0028】
再度、電圧調整器SDを調節し、試験地絡電圧V0と試験地絡電流I0を両方検出させ、且つ、試験地絡電流I0の方向が、6.6kV気中負荷開閉器PASの電源側から負荷側に流れている場合、地絡方向継電器67が動作する事を確認する。
【0029】
地絡方向継電器67が動作時、図2のとおり、地絡電流方向切替スイッチSWを選択切替操作し、試験地絡電流I0の方向が6.6kV気中負荷開閉器PASの負荷側から電源側に流れている場合、地絡方向継電器67が動作しない事を確認する。
【0030】
本実施の形態1は、前述のような高圧系統保護機器の動作試験装置を使用し、前記電源側出力端子POTを前記高圧母線HVBの前記負荷開閉器64より電源側に接続すると共に、前記負荷側出力端子LOTを前記高圧母線HVBの前記負荷開閉器64より負荷側に接続して、前記零相電流検出器ZCT、前記零相電圧検出器ZPD、及び前記地絡方向継電器67の各動作の健全性を総合的に判別する高圧系統保護機器の動作試験方法でもある。
【0031】
本実施の形態1によれば、6.6kV気中負荷開閉器PASと、それと組合わせて使用する過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型開閉器制御装置SOGに搭載される地絡方向継電器67の総合動作試験では、試験回路の構築に時間がかかり、試験時の配線変更により配線間違い及び、操作誤りによる試験回路への損傷が懸念され、又、地絡方向継電器の各検出回路の個別の動作確認が考慮されていなかったという従来の諸問題を解決できる。
【0032】
零相電圧V0を調整する為の電圧調整回路、零相電流I0を調整する為の電流調整回路、地絡方向を切り替える為の切替回路、零相電圧、零相電流の計測回路、過電流保護回路が、地絡方向継電器の動作試験装置として一体化されている為、各部品、設備間の接続、配線が不要となる為、試験準備時間の短縮を図る事ができる。従来方法に比べて試験回路構築が容易になると共に、試験時の回路切替も不要となる為、試験時間の短縮が図ることができる。
【0033】
地絡電圧V0と、地絡電流I0を個別に変化させる事が可能である為、地絡方向継電器の電圧要素と電流要素を個別に検出させて、地絡方向継電器が動作しない事を確認する事が可能となる。
【0034】
地絡電流I0の方向を切り替える際、切替スイッチSWの操作のみで行える事から、試験回路の解線、再接続が不要となり、試験時間の短縮が図れる。
【0035】
操作ミスによる過電流防止の為の固定抵抗RLの設置と、試験回路短絡等の事故による過電流防止の為のMCCBを設けている為、異常発生時の被試験回路及び、試験回路の影響を最小限にする事が可能となり、又、人的にも安全となる。
【0036】
万が一、地絡電流調整用可変抵抗器Rの操作を誤り、ゼロΩにしたとしても、過電流防止用固定抵抗RLがある為、過大電流が流れる事を防止できる。又、計測回路の短絡、地絡等により、過大な電流が流れた場合においても、過電流防止用MCCBが開放する事により、被試験回路、試験回路の電流を開放し、焼損等を防止する事ができる。
【0037】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2を図に基づいて説明する。図3においては、電圧調整器SDを介して接続された試験用単相変圧器Tの二次側を電流方向切替スイッチ、電流調整用可変抵抗R及び、過電流防止用固定抵抗RL、過電流防止用開閉器MCCBを介して試験用単相変圧器Tの二次側に接続された試験装置の切替スイッチSWの負荷側から、6.6kV気中負荷開閉器の負荷側を3相短絡して接続し、6.6kV気中負荷開閉器の電源側に接続されている接地計器用変圧器EVTのアースを介して回路を構成する。又、電圧調整器SDから商用電源に接続し、接地端子Eをアースに接続する。
【0038】
本実施の形態2では、地絡電圧V0、地絡電流I0の調節方法、地絡方向継電器の動作確認方法、過電流発生時の保護方法は実施の形態1と同様であるが、本設計器である接地計器用変圧器EVTと本設ケーブルを介して、地絡電流I0を流す為、各本設計器を含めた総合動作を確認する事が可能となる。
【0039】
地絡電流の方向は、接地計器用変圧器EVTが6.6kV気中負荷開閉器の負荷側若しくは電源側に接続されるかで決まるが、負荷側に接続された場合は、図4のとおり、零相変流器ZCTの試験端子を使用して、零相変流器ZCTに適切な電流を流す。尚、これら図3、図4の接続では高圧母線への接続が片側で良い為、試験準備時間の短縮を図る事ができる。
【0040】
6.6kV気中負荷開閉器PASと接地計器用変圧器EVTを組合せた回路で接地計器用変圧器EVT経由で地絡電流を流す場合に、試験回路を切り替えることで、EVTの設置箇所に関わらず、容易に地絡電流を流すことができる地絡方向継電器の動作試験装置である。
【0041】
本実施の形態2は、図3の例によれば、前述の実施の形態1の動作試験装置を使用し、接地計器用変圧器EVTを前記高圧母線HVBの前記負荷開閉器64より電源側に接続すると共に、前記負荷側出力端子LOTを前記高圧母線HVBの前記負荷開閉器64より負荷側に接続して、前記零相電流検出器ZCT、前記零相電圧検出器ZPD、及び前記地絡方向継電器67の各動作の健全性を総合的に判別する高圧系統保護機器の動作試験方法である。
【0042】
また、図4の例によれば、前述の実施の形態1の動作試験装置を使用し、接地計器用変圧器EVTを前記高圧母線HVBの前記負荷開閉器64より負荷側に接続すると共に、前記負荷側出力端子LOTを前記高圧母線HVBの前記負荷開閉器64より負荷側に接続して、前記零相電流検出器ZCT、前記零相電圧検出器ZPD、及び前記地絡方向継電器67の各動作の健全性を総合的に判別する高圧系統保護機器の動作試験方法である。
【0043】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を適宜、変形、省略することができる。
なお、各図中、同一符合は同一または相当部分を示す。
【符号の説明】
【0044】
64 負荷開閉器、
67 地絡方向継電器、
CPS 商用電源、
EVT 接地計器用変圧器、
HVB 高圧母線、
I0 地絡電流、
I0S 地絡電流検出器、
I0T 地絡電流検出端子、
LOT 負荷側出力端子、
MCCB 過電流保護用開閉器、
PAS 6.6kV気中負荷開閉器、
POT 電源側出力端子、
R 可変抵抗器、
RL 過電流防止用固定抵抗器、
SD 電圧調整器、
SOG 過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型高圧開閉器制御装置、
SW 地絡電流方向切替スイッチ、
T 試験用単相変圧器、
V0 地絡電圧、
V0S 地絡電圧検出器、
V0T 地絡電圧検出端子
ZCT 零相変流器、
ZPD 零相電圧検出器。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧需要家内で発生した電気設備の事故に対して自動的に高圧母線を遮断して他の需要家への前記事故の影響を制限する負荷開閉器にそれぞれ搭載された零相電流検出器及び零相電圧検出器の各出力を入力する過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型開閉器制御装置に搭載された地絡方向継電器を含む総合的な動作試験をする高圧系統保護機器の動作試験装置であって、
一次側に電圧調整器を介して商用電源が接続される試験用単相変圧器、
この試験用単相変圧器の二次側出力巻線の一端に一方の端子が前記二次側出力巻線の他端に他方の端子がそれぞれ接続され地絡電圧検出器が接続される地絡電圧検出端子、
前記二次側出力巻線に直列に接続され地絡電流検出器が接続される地絡電流検出端子、
前記高圧母線の前記負荷開閉器より電源側に接続される電源側出力端子、
前記高圧母線の前記負荷開閉器より負荷側に接続される負荷側出力端子、及び
選択的切り替えにより前記試験用単相変圧器の二次側出力巻線の前記一端及び前記他端と前記電源側出力端子及び前記負荷側出力端子との接続を切り替えることにより前記高圧母線に流れる試験用地絡電流の方向を電源側から負荷側への方向と負荷側から電源側への方向とに選択的に切り替える地絡電流方向切り替えスイッチ、
を備えていることを特徴とする高圧系統保護機器の動作試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧系統保護機器の動作試験装置において、
地絡電流過電流防止用開閉器が、前記試験用単相変圧器の二次側出力巻線に直列に接続されている
ことを特徴とする高圧系統保護機器の動作試験装置。
【請求項3】
請求項2に記載の高圧系統保護機器の動作試験装置において、
地絡電流過電流防止用抵抗が、前記試験用単相変圧器の二次側出力巻線に直列に接続されている
ことを特徴とする高圧系統保護機器の動作試験装置。
【請求項4】
請求項3に記載の高圧系統保護機器の動作試験装置において、
地絡電流調整用抵抗が、前記試験用単相変圧器の二次側出力巻線に直列に接続されている
ことを特徴とする高圧系統保護機器の動作試験装置。
【請求項5】
請求項4に記載の高圧系統保護機器の動作試験装置において、
前記地絡電流過電流防止用開閉器と前記地絡電流過電流防止用抵抗と前記地絡電流調整用抵抗とが直列に接続されている
ことを特徴とする高圧系統保護機器の動作試験装置。
【請求項6】
請求項5に記載の高圧系統保護機器の動作試験装置において、
前記地絡電流過電流防止用開閉器と前記地絡電流過電流防止用抵抗と前記地絡電流調整用抵抗との直列回路に前記地絡電流検出端子が直列に接続されている
ことを特徴とする高圧系統保護機器の動作試験装置。
【請求項7】
請求項6に記載の高圧系統保護機器の動作試験装置において、
前記電源側出力端子及び前記負荷側出力端子の何れも前記高圧母線の各相に接続できる3個の端子である
ことを特徴とする高圧系統保護機器の動作試験装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一に記載の高圧系統保護機器の動作試験装置において、
前記零相電流検出器、前記零相電圧検出器、及び前記地絡方向継電器の各動作の健全性が前記過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ型開閉器制御装置で総合的に判別される
ことを特徴とする高圧系統保護機器の動作試験装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項7の何れか一に記載の高圧系統保護機器の動作試験装置を使用し、
前記電源側出力端子を前記高圧母線の前記負荷開閉器より電源側に接続すると共に、前記負荷側出力端子を前記高圧母線の前記負荷開閉器より負荷側に接続して、
前記零相電流検出器、前記零相電圧検出器、及び前記地絡方向継電器の各動作の健全性を総合的に判別する
ことを特徴とする高圧系統保護機器の動作試験方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項7の何れか一に記載の高圧系統保護機器の動作試験装置を使用し、
接地計器用変圧器を前記高圧母線の前記負荷開閉器より電源側に接続すると共に、前記負荷側出力端子を前記高圧母線の前記負荷開閉器より負荷側に接続して、
前記零相電流検出器、前記零相電圧検出器、及び前記地絡方向継電器の各動作の健全性を総合的に判別する
ことを特徴とする高圧系統保護機器の動作試験方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項7の何れか一に記載の高圧系統保護機器の動作試験装置を使用し、
接地計器用変圧器を前記高圧母線の前記負荷開閉器より負荷側に接続すると共に、前記負荷側出力端子を前記高圧母線の前記負荷開閉器より負荷側に接続して、
前記零相電流検出器、前記零相電圧検出器、及び前記地絡方向継電器の各動作の健全性を総合的に判別する
ことを特徴とする高圧系統保護機器の動作試験方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104712(P2013−104712A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247245(P2011−247245)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】