説明

高導電性溶液のエアロゾル化のための組成物

静電噴霧又は電気流体力学的噴霧による、導電性溶液(好ましくは高導電性溶液)のエアロゾル化のための組成物が提供される。これらの組成物を製造及び使用する方法、並びにこれらの組成物を含有する静電エアロゾル発生器及び電気流体力学的エアロゾル発生器も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電噴霧又は電気流体力学的噴霧による高導電性液体組成物(製剤)のエアロゾル化のための組成物、並びにこれらの組成物の製造及び使用の方法に関する。いくつかの実施の形態では、高導電性組成物は、小粒径(例えば1μm〜5μm)を送達することが可能な静電噴霧装置と組み合わせて使用することができる。本発明の高導電性液体組成物は、3つ以上の基本成分、すなわち、活性剤と、活性成分が溶解、懸濁又は乳化し得る液体担体物質と、静電手段又は電気流体力学的(EHD)手段によりエアロゾル生成雲の生成が可能な表面レオロジー特性を組成物に与えるエアロゾル調整物質とを含む。
【背景技術】
【0002】
特定の静電法による微細な噴霧を生成する装置及び方法が知られている。例えば、コフィーの米国特許第4,962,885号明細書は、静電的に帯電した滴の微細な噴霧を生成するための方法及び装置を記載しており、本明細書に参照により援用される。より具体的には、その方法及び装置は、接地電極に密接に隣接した、約1ボルト〜20000ボルトの電位に帯電した導電性ノズルを含む。ノズルと接地電極との間に生成される対応する電界は、ノズルに送達される液体を霧化するのに十分に強く、それにより、帯電した微細な液滴の供給を行う。しかしながら、この電界は、高電流の消費を伴うコロナ放電を生じさせるほど強くはない。かかる液体ディスペンサの方法及び装置の使用には、塗装及び農作物の噴霧のための噴霧器が含まれる。電界を用いての液体のエアロゾル化は、静電エアロゾル化(electrostatic-aerosolization)と呼ばれることが多い。
【0003】
最近では、そのような噴霧装置が、患者による吸入用の治療製品のエアロゾルの生成及び送達に有用であることが認識されている。ドゥヴォルスキーらの米国特許第6,302,331号明細書に記載されている特定の一例では、流体が、該流体をエーロゾル化させるように近位電極に対して高電位に維持されるノズルに送達され、このとき流体はテイラーコーンと呼ばれる円錐状でノズルから噴出する。これは、本明細書に参照により援用される。かかる装置において用いられるノズルの1つのタイプは、導電可能なキャピラリーチューブである。電位がキャピラリーチューブにかけられ、キャピラリーチューブが流動性内容物を帯電させることで流体がテイラーコーンの形態でキャピラリーチューブの先端又は末端から噴出するようにする。吐出される前の流体のテイラーコーン形状は、流体の電荷の力と流体自体の表面張力との平衡に起因する。ほとんどの液体の導電性が有限であることから、細い液体(約1μm直径)ジェット(最大10m/sの速度)がコーン先端から噴出する。レイリー・テーラー不安定性から、ジェットは単分散帯電粒子流に破砕する。次いで、電荷により滴流が分散して円錐エアロゾルスプレーとなる([LJ .09] The Dynamics of a Steady Taylor cone electrospray Martin Bell (Ohio University, Athens, OH 45701), Maarten A. Rutgers (The Ohio State University, Columbus, OH 43210) ; Session LJ - Surface Tension Effects I. ORAL session, Tuesday morning, November 24, Jefferson, Adam's Mark Hotel)。得られるエアロゾルスプレーは帯電したままであるか、又は放電されて中和スプレーを生成することができる。研究によれば、このエアロゾル(ソフトクラウド(soft cloud)と記載されることが多い)は、滴のサイズが均一であり、先端を出る速度は高速であるが、先端を少しでも超えると急激に減速して非常に低速になる。
【0004】
静電噴霧装置は、ノズルの先端で帯電滴を生成する。使用に応じて、これらの帯電滴は、部分的に又は完全に(噴霧装置内の参照電極又は放電電極を用いて)中和することができる。放電手段又はエアロゾルを部分的に放電する手段を用いない静電噴霧装置の場合での典型的な用途としては、塗装噴霧装置又は殺虫剤噴霧装置が挙げられる。これらのタイプの噴霧装置は、エアロゾルが噴霧装置を出る際に残留電荷を有しているため、コーティングされる表面に滴が引きつけられると共にしっかり密着することから好ましいであろう。しかしながら、他の場合では、エアロゾルが完全に電気的に中和していることが好ましい場合もある。例えば、いくつかの治療エアロゾルの送達では、電気的中和又は放電により、エアロゾルを口及び喉の内側に付着させるのではなく肺まで到達させる。
【0005】
現時点では、吸入治療は急速に発展している技術である。数多くの活性薬剤が開発中であり、これらの薬剤の有効な送達及びその薬剤を用いての治療が吸入エアロゾルによって可能となることが期待されている。活性成分のエアロゾル化には、組成物をエアロゾル化プロセスと適合性のあるものにする特定のいくつかの特徴及び特性を備えた組成物を必要とする。有機溶媒のような適当な液体担体に、薬物等の特定の活性成分を配合するプロセスは、特に困難なものであろう。ゆえに、種々の活性成分、ある範囲の適した担体及び適当なエアロゾル発生器と適合性のある基本成分又は一般成分が必要とされている。
【0006】
ノアケスらの米国特許第4,829,996号明細書、セキンズらの米国特許第5,707,352号明細書及びブロウニングらの米国特許第6,503,481号明細書は全て、静電エアロゾル装置と共に用いるのに適した製剤を開示しており、それぞれが本明細書に参照により援用されるが、この従来技術でも、高導電性製剤(導電性が約12.5マイクロジーメンス/cm以上である溶液)を噴霧することは、比較的高い体積流量及び低電圧要件でコーンジェットモードの課題を残している。典型的には、高導電性製剤を噴霧することにより、大きな粒子、多峰性分布及び多数の放電ストリーマが生じる。このような望まない結果は、テイラーコーン内での電気的な力と物理化学的な力との不平衡に起因する。
【0007】
肺疾患治療を含む多数の用途に実用的な流体体積流量を十分に下回るように流体体積流量を下げることによって、表面レオロジーを変えることなく、高導電性製剤をエアロゾル化することを可能とする一方、EHD装置を用いて高流量且つ比較的高い導電率で、高導電性製剤をエアロゾル化することが非常に望ましい。
【0008】
ハートマンら(J. Aerosol Sci. Vol. 30, No. 7, pp. 823-849, 1999)は、層流条件下での理想とされるテイラーコーンの力の平衡を説明している。テイラーコーン内では、通常の電気的ストレスの電気的な力、接線方向の電気的ストレス、及び電荷に起因する電気分極ストレスが、表面張力の物理化学的な力と平衡をとる。液体の導電率が増大する(すなわち、抵抗率は減少する)につれて、電気的な力は増大するが、表面張力が最も重要である物理化学的な力は一定のままである。したがって、結果としての力の不平衡により、テイラーコーンの不安定性が誘起され、噴霧が良好でなくなる。力の不平衡により、流れの複雑なカオス的挙動がもたらされ得る(Marginean, I., Nemes, P. and Vertes, A., Order-Chaos-Order Transitions in Electrosprays: The Electrified Dripping Faucet, Physical Review Letters 11 August 2006, PRL 97, 064502 (2006))。
【0009】
静電エアロゾル化又はEHDエアロゾル化を用いた場合に、高導電性液体製剤のエアロゾル化が困難であることが立証され得るが、高導電性液体製剤には、所望の標的表面への特定のいくつかの活性成分の送達が必要とされることがある。例えば、小分子量の塩は通常、水又はアルコールのような導電性溶媒中に、より溶解する。さらに、他の活性成分は、本質的に高導電性である(すなわち、いくつかのペプチド及びタンパク質を含むイオン種)。いくつかの活性成分(及び製剤)は、溶液を導電性にする活性成分のpH安定化及び/又は可溶化を必要とする。エアロゾル調整物質のような他のさらなる物質は、イオン種又は帯電種とすることができる。このように、高導電性液体製剤を静電的にエアロゾル化する能力により、他の場合では静電的に送達されることができない活性成分の送達を可能にする例が多数存在する。
【0010】
したがって、高導電性液体に起因する力の不平衡を相殺するために、流体粘度を著しく増大させないようにして、全体にわたって表面の粘弾性率及び位相角が小さいことによって示されるように、流体表面をより粘性があるものとすることが望ましい。
【0011】
本発明者らは、臨界表面粘弾性を制御することによって、EHDエアロゾル化手段を用いて導電性製剤を噴霧する効率(流量と印加電圧との組み合わせによって測定される)を高めることができることを見出した。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、高導電性担体液体を含む液体組成物を対象とし、該液体組成物は、小さい均一な粒子へとエアロゾル化することができる。実施の形態によっては、静電エアロゾル発生器又は電気流体力学的エアロゾル発生器を用いて、選択部位に規定量の望ましい成分(例えば、ユーザーの肺に活性医薬成分)を送達することができる。組成物の重要な特性は、かかるエアロゾル発生器を用いた液体組成物の望ましく且つ好ましく最適な使用のために与えられる。本発明のいくつかの実施の形態による液体組成物は、様々な組み合わせ、濃度、及び相互に対する比率で存在し得る2つ又は3つ以上の基本成分を含有し得る。
【0013】
本発明の実施の形態によっては、液体組成物の第1の構成成分が活性成分である。活性成分、すなわち活性剤は、エアロゾルとして標的表面に送達される、任意の薬剤又はそれらの薬剤の混合物であり得る。かかる薬剤の例は、農薬、化学薬品、塗料、化粧品、医薬品である。農業分野において、活性剤は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、又はこのような薬剤の混合物であってもよい。薬剤分野において、活性剤は、治療薬、生物学的に活性なタンパク質、すなわちペプチド、又はワクチンであり得る。
【0014】
治療用の液体組成物の第2の構成成分は、活性成分が溶解、懸濁又は乳化し得る液体担体物質であり、かかる担体液体の例としては、水、アルコール、エーテル、アルキルスルホキシド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。特に好ましい実施の形態において、溶媒は、アルコール、好ましくはグリセロールと組み合わせたエタノールである。場合によっては、液体の最適なエアロゾル化を達成するのに必要とされる導電率の範囲を得るには、液体担体物質の混合物を使用することが望ましいことがある。
【0015】
(実施の形態によっては任意であってもよい)液体組成物のさらなる構成成分としては、最適なエアロゾル化について規定される範囲(例えば、静電装置又は電気流体力学的装置によって小さい均一な滴を生成する範囲)内における液体組成物の表面レオロジー特性の調整に関与する材料が挙げられる。
【0016】
本発明は、ある好ましい特徴を有する高導電性液体組成物の組成を提供することが理解され得る。これらの好ましい特徴により、液体組成物から生成されるエアロゾルも特定の好ましい特徴を有する。本発明の典型的な実施の形態としては、EHDエアロゾル化装置を用いた液体組成物のエアロゾル化を促す、規定の表面レオロジー特性を有する液体組成物が挙げられる。
【0017】
本発明のさらなる目的、利点及び新規な態様は、続く詳細な説明を鑑みて明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ペンダントバブルの簡略図であり、A及びBは、バブルの表面上の個々のポイントであり、且つZは、2つのポイント間の鉛直距離である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、静電エアロゾル発生器又は電気流体力学的エアロゾル発生器を用いてエアロゾル化することのできる高導電性液体組成物を対象とし、該高導電性液体組成物は、約0.5mN/m〜約10mN/mの表面粘弾性率、約0.5度〜約90度の位相角、並びに約5.0マイクロジーメンス/cm〜約1000マイクロジーメンス/cm、好ましくは約12.5マイクロジーメンス/cm〜約400マイクロジーメンス/cmの導電率を有している。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、高導電性液体組成物が静電エアロゾル発生器又は電気流体力学的エアロゾル発生器を用いてエアロゾル化されるときに生成されるエアロゾルを対象とし、該高導電性液体組成物は、約0.5mN/m〜約10mN/mの表面粘弾性率、約0.5度〜約90度の位相角、並びに約5.0マイクロジーメンス/cm〜約1000マイクロジーメンス/cm、好ましくは約12.5マイクロジーメンス/cm〜約400マイクロジーメンス/cmの導電率を有している。
【0021】
本発明は、静電エアロゾル発生器又は電気流体力学的エアロゾル発生器を用いてエアロゾル化することのできる高導電性液体組成物をさらに対象とし、該高導電性液体組成物は、約0.5mN/m〜約10mN/mの表面粘弾性率、約0.5度〜約90度の位相角、並びに約5.0マイクロジーメンス/cm〜約1000マイクロジーメンス/cm、好ましくは約12.5マイクロジーメンス/cm〜約400マイクロジーメンス/cmの導電率、0.5mN/m〜約10mN/mを有し、該液体組成物は、
i)1つ又は複数の活性剤と、
ii)担体液体と、
iii)表面レオロジー特性を調整するための1つ又は複数の材料と、
iv)任意に、1つ又は複数の製剤補助剤と
から成る。
【0022】
本発明のさらなる実施形態は、処置の必要な標的表面へ活性薬物を直接送達するための、液体担体ビヒクル中に溶解、懸濁又は乳化された有効量の上記活性剤を含む高導電性液体組成物を対象とし、該高導電性液体組成物は、約0.5mN/m〜約10mN/mの表面粘弾性率、約0.5度〜約90度の位相角、並びに約5.0マイクロジーメンス/cm〜約1000マイクロジーメンス/cm、及び好ましくは約12.5マイクロジーメンス/cm〜約400マイクロジーメンス/cmの導電率を有し、該液体担体は、任意に、以下の構成成分、
i)上記液体担体の表面レオロジー特性を調整する1つ又は複数の材料と、
ii)1つ又は複数の製剤賦形剤と
を含有し得る。
【0023】
本発明による高導電性液体組成物は、静電エアロゾル発生器又は電気流体力学的エアロゾル発生器と適合性があり、そのため、ある特定のいくつかの好適な特性及び特徴を有するエアロゾル雲が、装置を使用するたびに生成される。本明細書で使用する場合、静電装置及び電気流体力学的装置は双方とも「EHD」装置と総称する。
【0024】
粒径及び分布パターンが均一なエアロゾルは、使用者の気道への吸入等に、より望ましい堆積特性を示す(すなわち、これらのエアロゾルは吸入により摂取される率が高い)ため、これらの特徴を有していないエアロゾルに比して望ましい。適合可能な組成物を用いる場合、静電装置及びEHDエアロゾル発生器を調整して、他の装置又は方法によって生成されるエアロゾルよりもサイズが均一な粒子を有する実質的に単分散のエアロゾルを生成することができる。
【0025】
典型的なEHD装置は、エアロゾル化すべき液体の供給源と流体連通するスプレーノズルと、少なくとも1つの放電電極と、放電電極の電位に対して負(又は正の)電位にスプレーノズルを維持する第1の電圧源と、スプレーノズルの電位に対して正(又は負の)電圧に放電電極を維持する第2の電圧源とを含む。他の装置では、一方の電極が高帯電しており、第2の電極が接地していてもよい。例えば、放電電極は+10kV又は−10kVであってもよく、ノズルは接地していてもよい。たいていのEHD装置では、液体が滴を形成し、この滴が高電界強度領域に入ることによって、エアロゾルが生成される。次いで、電界は、これらの滴に正味の電荷を付与し、この正味の電荷は、滴の表面上に滞留する傾向がある。滴の表面上の電荷の反発力は、滴中の液体の表面張力と平衡し、それにより、テイラーコーンとして知られている円錐状の構造を滴が形成する。この円錐状の構造の先端では、滴の表面に加わる電気的な接線力及び法線力が液体の表面張力を上回り、それにより、大体同じサイズである多くのより小さな滴に分散する液体流を生成する。より小さなこれらの滴は、使用者が最終的に吸い込むエアロゾル雲を構成するミストを形成する。
【0026】
本明細書中で使用する場合、「活性剤」という用語は、本発明の高導電性液体組成物が噴霧される、すなわちEHD装置によってエアロゾル化されるときに生成されるエアロゾルによって標的表面に送達される物質を指す。静電エアロゾル化又はEHDエアロゾル化を用いて所望の部位(標的表面)に活性剤を分配することができる。例えば、吹き付け塗装の際、任意の周囲領域にではなく、コーティングすべき面に最適量の顔料及びバインダを送達することが好ましい。他の実施形態では、高導電性液体組成物溶液のEHDエアロゾル化を用いて、殺虫剤のような農薬、殺菌剤、化粧品(例えばリキッドファンデーション及び日焼け製剤)、風味剤及び薬学的に活性な薬剤を送達することができる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の高導電性液体組成物は、標的表面への所望量の活性剤の送達を可能にする濃度で少なくとも1つの活性成分を含有し得る。当業者に理解されるように、標的表面へのエアロゾルによる送達に適した活性剤の数及び種類は広範囲に様々であり、複数の選択肢を含む。
【0028】
活性剤が医薬品である場合、インスリン及び他のタンパク質と、塩形態の活性成分と、小分子の合成薬物と、ワクチンと、DNA及びRNAベクター並びにワクチンを含む核酸と、アプタマーと、嚢胞性線維症のような疾患を治療する遺伝子治療剤と、酵素と、ホルモンと、抗体と、ビタミンと、ペプチド及びポリペプチドと、オリゴヌクレオチドと、細胞と、抗原と、アレルゲンと、抗菌剤、抗生剤、抗真菌剤及び抗ウイルス薬を含む抗感染剤と、抗癌剤と、麻酔薬のような疼痛管理薬とから選択される少なくとも1つの活性成分を含み得る。
【0029】
特に、本明細書で使用する適切な薬剤としては、アルブテロール(サルブタモールとしても知られている)、アトロピン、ブデソニド、クロモリン、エピネフリン、エフェドリン、フェンタニル、フルニソリド、フォルモテロール、臭化イプラトロピウム、イソプロテレノール、ピブテロール、プレドニソロン、トリアムシノロンアセトニド、サルメテロール、アミロライド、フルチカゾン、並びに、上記薬剤の薬学的に許容可能な酸付加塩及びエステル、それらの水和物及びそれらの他の溶媒和が挙げられる。
【0030】
本発明の組成物及び方法に使用される他の適した薬剤としては、シスプラチン及びカルボプラチン、メトトレキサート、タキソール、マイトマイシン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトラマイシン、タモキシフェン、エトポシド、α−及びβ−インターフェロンのような抗悪性腫瘍薬と、ケトコナゾール、ナイスタチン及びアムホテリシンBのような抗真菌剤と、β−ラクタム抗生剤と、ヒト成長ホルモンのようなホルモンと、例えばヒドロコルチゾン及びプレドニゾロンであるステロイドと、例えば13−cis−レチノイン酸のようなレチノイン酸及び誘導体であるビタミンと、インスリン、インターフェロン及びインターロイキンのようなペプチドと、アシクロビル及びアジドチミジン(AZT)のような抗ウイルス薬と、クロラムフェニコール及びクリンダマイシンのような抗生剤と、抗炎症剤と、アヘンと、鎮静剤と、塩酸リドカインのような局部麻酔薬とが挙げられる。
【0031】
本明細書で使用する場合、「薬学的に活性な薬剤」は、疾患又は症状の治療のために活性薬物としてヒト又は動物患者に投与される生物学的に活性な薬剤を指す。かかる活性薬物は、疾患又は症状を治療するために「薬学的に有効な量」で患者に投与される。適した薬剤又は薬物とは、吸入による投与に適する薬剤又は薬物であり、吸入は、経口及び鼻吸入による治療に用いられる。
【0032】
当業者に理解されるように、「薬学的に有効な量」とは、治療すべき疾患又は症状に対する治療的に関連した効果を有する、ある量の薬学的に活性な薬剤を意味する。治療的に関連した効果により、患者の疾患又は症状の1つ又は複数の症状が、ある程度緩和されるか、或いは疾患又は症状に関連するか又はそれに関与する1つ又は複数の生理学的パラメータ又は生化学的パラメータが、部分的に又は完全に通常状態に戻る。特定の詳細な用量の特定の活性薬剤は、米国食品医薬品局によって認可されるそのラベリング、すなわち添付文書に見られ得る(21 CFR §201.56&201.57を参照)。
【0033】
「有効な量」という用語が医薬品ではない活性剤に関して用いられる場合、1つの特定の活性剤の有効な量は、該活性剤の性質と標的表面に活性剤を送達する理由とに応じて決まる。
【0034】
活性剤が液体担体に添加される場合、活性剤が液体担体に可溶性であれば溶液が生成され、活性剤が不溶性であれば懸濁液が生成される。本明細書で使用する場合、「懸濁液」という用語は、その元来の意味を示すと共に、液体担体中に懸濁した活性剤の粒子又は活性剤の粒子の凝集物を指す。活性剤が懸濁液として存在する場合、活性剤の粒子は、例えば、約10nm〜約2500nm、好ましくは約50nm〜約1000nm、より好ましくは約50nm〜約500nmのナノメートル範囲であることが好ましい。活性剤が医薬品である場合では、良好なエアロゾルの形成及び肺での良好なエアロゾル堆積を確実にするために、薬物の粒径がエアロゾル滴のサイズよりも小さいことが重要である。担体液体が連続相及び分散相を含有するエマルションである場合、活性剤は、相の1つに溶解又は懸濁され得る。
【0035】
本発明の液体担体ビヒクルは、EHD噴霧/エアロゾル化装置を用いて患者の「気道」に薬学的に活性な薬剤を送達するために、エアロゾルを調製するのに有用である。本明細書で使用する場合、「気道」という用語は、口腔咽頭部及び喉頭を含む上気道、その後に続き、その後に気管支及び細気管支へ分岐する気管を含む下気道を含む。上気道及び下気道は、誘導気道と呼ばれる。終末細気管支が、その後、呼吸細気管支に分岐し、最終的に、呼吸域である肺胞すなわち深肺に至る。Gonda, I. "Aerosols for delivery of therapeutic and diagnostic agents to the respiratory tract," in Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 6: 273-313, (1990).
【0036】
通常、深肺すなわち肺胞は、全身送達のために吸入された治療エアロゾルの主要標的である。しかしながら、本明細書で使用する場合、「気道」という用語は、鼻道の粘膜及び口腔の粘膜への本発明の薬剤組成物の投与を含むことをさらに意味する。活性剤のエアロゾルの全身送達のための好適な標的は、深肺すなわち肺胞である。
【0037】
本明細書に記載の液体担体をEHD装置を用いて噴霧するときに生成されるエアロゾル滴の粒径は、直径が約1μm〜約300μm、好ましくは直径が約1μm〜約50μmの範囲である。当業者に理解されるように、エアロゾルの粒径は、エアロゾルの使用に応じて選択される。一例として、エアロゾル化された塗料の粒径は、概して、深肺に送達されるエアロゾル化薬物の粒径よりも大きい。他方、日焼け組成物のような化粧品の粒径は、噴霧される個人によるエアロゾル粒子の吸入を防止するように、直径が約50μmよりも大きくなければならない。
【0038】
薬物が全身活性のために深肺に送達される場合にエアロゾルが患者の気道に投与される場合、得られるエアロゾルの粒径は、約1μm〜約8.0μm、好ましくは約1μm〜約5.0μmの範囲である。薬物が中肺に送達される場合、得られるエアロゾルの粒径は、約2μm〜約10μmの範囲であり、好ましくは約5μm〜約10μmが使用される。薬学的に活性な薬剤が口腔咽頭域に送達される場合、エアロゾルの粒径は概して、約2μm〜約10μmの範囲であり、約5μm〜約10μmの範囲が好適である。薬物が口腔粘膜又は外鼻孔に送達される場合、得られるエアロゾルの粒径は、約10μm〜約50μmの範囲であり、好ましくは約20μm〜約30μmが用いられる。
【0039】
動物の気道へのエアロゾル化による薬物送達は、特定の環境における薬物送達の他の方法よりも好ましい場合がある。患者の肺へ薬物又は他の活性成分を直接送達することには、以下の複数の利点、すなわち、薬物吸収の広範な表面領域、及び局部的薬物治療の場合の疾患部位への治療剤の直接送達が提供されることと、患者の腸管での薬物分解の可能性(経口投与に伴う危険性)が排除されることと、皮下注射を繰り返さずに済むこととが挙げられる。さらに、エアロゾル吸入による肺系への薬物の送達を用いて、肺癌又は喘息のような呼吸器疾患の治療のための標的化された局部薬物送達と同様に、薬物を全身送達することができる。また、滴の電荷が通常は中和されている静電式吸入器では、多くの従来の定量噴霧式吸入器(MDI)に比して利点が示されており、その利点としては、より均一な滴を生成することと、患者が生成されたエアロゾル液又はミストを通常の呼吸で吸入することができることと、より高い投与効果が得られることと、より再現可能な容量を提供することとが挙げられる。患者の肺へのエアロゾル化活性成分の投与において重要な考慮事項には、患者又は使用者が最終的に吸入する活性成分及びエアロゾル雲を含有する組成物の特性が含まれる。いくつかの実施形態による組成物は、エアロゾル発生器によって一貫して噴霧されることが可能であり、使用者に十分な許容性があるものとする。組成物は、活性成分に適した担体を有する。さらに、いくつかの実施形態による活性成分は、組成物中で一定期間安定しているものとする。
【0040】
さらに、エアロゾル発生器自体が、製剤を、特定の所望の特性を有するエアロゾル雲に有効に一貫して変換するものとする。例えば、エアロゾル発生器は、使用者がエアロゾル粒子を吸入することを困難にする高速のエアロゾルを送達することがない。好適なエアロゾル特性としては、サイズが大体均一な粒子から成るエアロゾル雲も挙げられる。所定のサイズの均一な粒子から成るエアロゾル雲は典型的に、患者又は使用者への治療組成物の最も効率が良い有効な送達を提供するが、その理由は、患者が受ける用量を、より厳密に制御することができる(すなわち、均一な粒径がより厳密な送達及び投与にかなう)からである。したがって、薬物及びエアロゾル装置の最大有効性にあっては、均一のサイズのエアロゾル粒子の一貫した生成が、概して、組成物が特定の装置を用いてエアロゾル化されるたびに生じるものとする。
【0041】
本明細書で使用する場合、「標的表面」という用語は、EHD装置を用いて本発明の高導電性液体組成物をエアロゾル化するときに生成されるエアロゾル粒子が堆積する表面を指す。かかる標的表面の例示的な例は、塗装されている表面、植物の葉、リキッドメーキャップが施される者の顔及び/又は身体、日焼け物質が塗布される者の身体、ヒト又は動物の身体の傷、患者の気道に送達される薬物の場合では、口腔咽頭部、喉頭、気管、気管支、細気管支、肺胞である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「担体液体」という用語は、活性成分が溶解、懸濁、又は乳化することができると共に高導電性である高導電性液体を指す。電力がEHD噴霧においてエアロゾルの生成を確定する際にかかる重要な役割を果たすため、高導電性液体が比較的非導電性の液体とは著しく異なって挙動し得ることは、当業者には理解可能である。液体製剤が静電噴霧されるために、製剤は、幾分導電性であるものとする。本明細書で使用する場合、本発明の「高導電性」液体製剤という用語は、約12.5マイクロジーメンス/cmよりも大きい導電性を有する高導電性の液体組成物を指す。導電性は400マイクロジーメンス/cmと同じ高さ(又はそれよりも高い場合もある)の範囲であってもよい。
【0043】
種々の溶媒又は溶媒の混合物は、担体液体としての使用に適し得る。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、水又はエタノールが(活性成分の可溶性特性に応じて)、活性成分が溶解又は懸濁する溶媒として用いられる。概して、担体液体(溶媒)は、アルコール、エーテル、アルキルスルホキシド、パーフルオロカーボン、ヒドロフルオロアルカンから成る群と、それらの溶媒の組み合わせとから選択され得る。水及びエタノールは、大気並びにヒト及び動物に比較的支障がないため、吸入する場合に、これらの溶媒の混合物を担体液体として用いることが多い。
【0044】
いくつかの実施形態では、組成物の担体(溶媒)比率は、液体組成物の総体積の5%〜95%(v/v)を示し得る。他の実施形態では、担体液体が示す液体組成物の比率は、活性成分の溶解性又は不溶性に応じて様々である。例えば、活性成分が担体(例えば水)中で高溶解性である場合、総組成物の担体比率は、約5.0%〜10.0%(v/v)と低いこともある。活性成分が水(又は他の担体液体)中で適度にしか可溶性ではない場合、大きな比率の担体液体が活性剤を完全に溶解するか又は十分に懸濁するために必要とされ得る。他の実施形態では、液体混合物、例えばエタノール及びグリセロールの使用が、噴霧され得る安定した組成物を得るために必要とされ得る。例えば、担体は、水とエタノール、又は水とプロピレングリコール、又はエタノールと水とグリセロール等の任意の混合物、あるいは、これらの液体担体の種々の組み合わせであってもよい。
【0045】
本発明の好適な実施形態では、担体液体として選択される溶媒は、特定のいくつかの活性成分との適合性及びEHD装置との適合性の双方に基づいて選択され、典型的には、水及び/又はエタノールが挙げられる。
【0046】
本発明者らは、臨界表面粘弾性率及び位相角の値が満たされると、粒径、エアロゾル速度及び得られる堆積パターンを厳密に制御することができるエアロゾルを、EHDエアロゾル生成器が生成することが可能であることを見出した。得られたエアロゾル粒子が帯電していないEHDエアロゾル生成器は、吸入により患者の肺系に送達すべき治療組成物との併用に理想の装置である。かかる臨界値が満たされると、静電式エアロゾル発生器もまた、高導電性液体製剤に所望のスプレー特性をもたらし得る。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物の関連表面レオロジー特性は、1ミリメートル当たりのミリニュートン(mN/m)といった単位の表面粘弾性率(E1S)及び度のような単位の位相角(δ1S)を有する。表面粘弾性率は、液体の表面張力が摂動に対して元の状態から逸脱する程度の尺度である。低い表面粘弾性率は、自動車のショックアブソーバと同様にして、表面摂動に抵抗する流体面を示す。より詳細には、表面張力は、表面積の変化に応じて最低限変化する。高導電性製剤の場合、表面摂動は、流体が引き伸ばされてテイラーコーンを形成する際の局部化した電力変動及び新しい表面の急速形成に起因すると考えられる。
【0048】
本発明の高導電性液体組成物の表面粘弾性率(E)は、約0.5mN/m〜約10mN/m、好ましくは約2.0mN/m〜約7.5mN/mの範囲、より好ましくは約5.0mN/mである。
【0049】
位相角は、表面が摂動に応答するのに必要とされる時間の尺度である。大きな位相角は、摂動に対する表面の応答がより遅いことを示す。表面の応答が、より遅いことが望ましいと考えられる。本明細書に記載の本発明では、位相角は、約0.5度〜約90度、好ましくは約10度〜約50度の範囲、より好ましくは約25度である。
【0050】
高導電性組成物の静電噴霧の場合、溶液は、高導電性製剤のエアロゾル化を促すために、短い振動期間、特に1秒の振動期間で全体の表面粘弾性率(E)が低く且つ位相角(δ)が高いことが好ましい。実際には、Eが減少しδが増大するにつれて、表面はより粘性となる。Eが減少しても、滴膨張中に表面張力は増大しない。δが増加するにつれて、表面張力の増大がより効果的に減衰する。実質的に、より粘性の表面は、テイラーコーン表面の(流体の電荷の増加に起因する)増大した可変の電気的ストレスに対するショックアブソーバとして作用する。
【0051】
好適な実施の形態では、Eは、10mN/m未満であり、より好ましくは7.5mN/m未満であり、位相角(δ)は、好ましくは10度よりも大きく、より好ましくは20度よりも大きいものとする。
【0052】
表面張力は、液体表面が有する特性であり、この特性によって、これらの表面は、あたかも伸張状態の薄い弾性膜で覆われているかのように挙動する。表面張力は、液体の表面積を増加させるのに必要とされるエネルギーの尺度である。表面張力がより低い液体は、表面張力がより高い液体よりも容易にエアロゾル化する。
【0053】
表面張力は、表面の単位長にわたり通常作用する力によって測定される。表面張力の現象は、液体の表面付近の不平衡な分子凝集力に起因する。この用語が本明細書で使用される場合、この用語は、エアロゾル滴の形成直前のテイラーコーンにおける液体製剤の表面張力を指す。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、液体組成物の表面張力は、約10mN/m〜約72mN/mの範囲内にある。本発明のより好適な実施形態では、組成物の表面張力は、約15mN/m〜約45mN/mの範囲内にある。本発明の最も好適な実施形態では、組成物の表面張力は、約20mN/m〜約35mN/mの範囲内にある。
【0055】
粘性は、流体の流れに対する抵抗の尺度であり、したがって、概して容易に流れる液体ほど粘性が低い。液体組成物の粘性は、組成物への少量の活性剤の添加によって著しく影響されるものではない。しかしながら、特定の懸濁している薬剤又は非常に高濃度の活性剤の添加により、液体組成物の粘性は増加し得る。粘性は、本発明のエアロゾル形成の重要なパラメータとは言えないが、粒径分布に影響を及ぼすものである。高粘性材料は、粒径がより大きく且つより分散性があるか又は双峰性分布を有するエアロゾルを形成する傾向がある。臨界粘性値を超えると、テイラーコーンから噴射される形成されたジェットは、個々のエアロゾル粒子へと離散することなく、代わりに連続した帯(ligaments)を形成する。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、液体組成物の表面レオロジー特性は、好ましくは約10mN/m未満である表面粘弾性率と、10度よりも大きい位相角とを含み、その一方、導電性は約12.5マイクロジーメンス/cm〜1000マイクロジーメンス/cm、好ましくは約12.5マイクロジーメンス/cm〜約400マイクロジーメンス/cmである。いくつかの実施形態では、単に活性成分及び担体材料を組み合わせることによって、これらのパラメータ内にある物理特性を有する液体組成物を達成することが可能であり得る。しかしながら、活性成分及び担体材料の組み合わせがこれらのパラメータ内にある物理特性を有する液体組成物を生成しない場合、溶液への界面活性剤及び/又はポリマーの添加により、所要のパラメータ内の組成物がもたらされるであろう。
【0057】
高導電性液体は、表面レオロジー特性を調整する材料の使用によって安定させることができる。膜形成剤、界面活性剤、ポリマー、タンパク質、ペプチド、生体高分子のような薬剤を用いて、表面レオロジー特性を調整することができる。ポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのような膜形成剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース材料、他の膜形成剤、これらの混合物を、本発明に使用することができる。
【0058】
組成物に添加され得るポリマーとしては、PVP40Kのような種々の分子量のPVPポリマー、チロキサポール、ポリエチレングリコール、トリトン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロースのような生体高分子、それらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
本発明の液体組成物のいくつかの特定の表面レオロジー特性は、EHD装置を用いて高導電性製剤の安定した単分散のエアロゾルを得るという点で、重要であることが見出されている。したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、界面活性剤を活性成分及び担体液体に添加して、担体液体の表面レオロジー特性を調整することができる。
【0060】
天然及び合成リン脂質誘導体のような界面活性剤、例えば、レシチン、1−パルミトイル−2−(16−フルオロパルミトイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)及び1,2−ジミリストイルアミド−1,2−デオキシホスホチジルコリン(DDPC)と、ポリソルベート、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80)、ソルビタンモノオレエート(Span80)、ソルビタントリオレエート(Span85)と、オレイン酸と、グリセロールのようなポリオールと、中鎖トリグリセリドと、脂肪酸と、ダイズ油と、オリーブ油と、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、修飾糖界面活性剤と、このような界面活性剤の組み合わせとが、本発明の高導電性液体製剤に有用であることを見出した。
【0061】
本明細書に記載されたこれらの表面活性剤及び/又はポリマーの組み合わせが、本発明のいくつかの実施形態において有利である。例えば、エタノール単独の使用によりエアロゾルを生成することができるが、エアロゾルの粒径が好適な範囲を下回る場合がある。エタノールとポリエチレングリコールを互いに好適な比で組み合わせることによって、好適な粒径を達成することができる。
【0062】
担体液体への界面活性剤及び/又はポリマーの添加により、表面レオロジーパラメータを変更することができ、所望の、好ましくは最適な範囲内に液体組成物を戻すことができる。界面活性剤及び/又はポリマーの添加は、活性成分と溶媒との組み合わさった材料が所望の特性を有するエアロゾルをもたらさない本発明の実施形態においてのみ、必要である。本発明のいくつかの実施形態では、界面活性剤及び/又はポリマーは、液体組成物中に液体組成物の約0.05重量%〜約50重量%(w/v)で存在する。
【0063】
本発明のエアロゾルが用いられる用途に応じて、さらなる製剤賦形剤を組成物中に含めることができる。かかる材料は、液体組成物の安定性、エアロゾル粒径の制御を容易にすること、組成物中の活性成分の溶解性を増大させること、液体の表面張力を低下させること、及び抗菌剤目的、酸化防止剤目的等が挙げられるがこれらに限定されない種々の目的のために含めることができる。当業者には理解されるように、さらなる成分は、得られる液体製剤が以下の重要な特性、すなわち、約0.5mN/m〜約10mN/mの表面粘弾性率、約0.5度〜約90度の位相角、約5.0マイクロジーメンス/cm〜約1000マイクロジーメンス/cm、好ましくは約12.5マイクロジーメンス/cm〜約400マイクロジーメンス/cmの導電性を有する限り、添加してもよい。
【0064】
溶解、懸濁又は乳化すると、活性成分は担体液体自体において安定し、また最終の組成物中において安定するものとする。安定性は、活性成分がエアロゾル化の前に活性を失わない(すなわち、妥当な貯蔵寿命が保持される)ことと、エアロゾル化プロセスの結果として活性成分が活性を失うか又は著しく劣化しないこととが必要である。さらに、いくつかの用途では、高導電性液体組成物が経時にわたって安定であることが必要とされる。種々の実施形態では、安定性の問題は、組成物への安定化成分の添加によって対処され得る。
【0065】
オイル、グリセリド、ポリソルベート、セルロース、レシチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチルグリコール、サッカライドガム、アルギネートの1つ又は複数を、本発明の製剤に添加して、組成物の物理安定性を上げてもよい。いくつかの実施形態では、アスコルビン酸及びアスコルビン酸エステルのような抗酸化剤、ビタミンE、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンを添加して、酸化によって引き起こされる薬物のような活性剤の分解を低減することができる。本発明のいくつかの実施形態では、クエン酸、シクロデキストリン、エチレンジアミン四酢酸のようなキレート化剤すなわち錯化剤を、(ここに記載される安定化剤の代替物として又はこれに加えて)添加して、薬物組成物を安定化し、且つ組成物における活性成分の溶解性を増大させることができる。
【0066】
代替的に又は付加的に、いくつかの実施形態では、防腐剤成分を組成物に添加して、高導電性組成物の制菌管理(microbial integrity)を維持してもよい。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、塩化ベンザルコニウム、フェノール、パラベン、又は任煮の他の許容可能な抗菌剤若しくは抗真菌剤のうちの少なくとも1つを添加して、微生物汚染又は攻撃から組成物を保護する。
【0067】
活性剤が薬物である場合では、賦形剤を添加して患者がエアロゾル化した組成物を受ける能力を高めるか又は増大させることができる。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、スクロース、トレハロース、マンニトールのような糖若しくは糖アルコールを添加して、タンパク質を含有する組成物を安定化させるか、又は人工甘味剤として使用して、組成物の味覚を改善することができる。いくつかの実施形態では、糖、オイル、クエン酸、メントール、カンファーのような風味料を添加して、組成物の香味を改善することができる。
【0068】
以下の液体組成物は、表Iに挙げた組成物を有して調製される。これらの実施例は、本発明の実施形態の例示であることが意図され、本明細書で開示される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。表Iの液体製剤のそれぞれについて、実施例1で以下に記載するように且つ表IIIにおける概説のように、表面粘弾性率及び位相角を測定した。
【0069】
【表1】

【0070】
表Iの製剤に加え、いくつかの特定の薬物を配合し、支障なくエアロゾル化した。表IIでは薬物、及び製剤についての他の情報を挙げている。
【0071】
【表2】

【0072】
表Iの製剤はそれぞれ、米国特許出願である米国仮特許出願第60/773,272号「正確な計量システム」(2006年11月16日出願の米国実用特許出願第10/560,540号)及び米国仮特許出願第60/773,239号「電界シールドによる解離吐出EHD噴霧器」(2006年11月16日に出願の米国実用特許出願第11/560,542号)及び米国特許出願第11/485,787号「改良分配装置及び方法」(上記出願のそれぞれは参照により本明細書に援用される)に記載のEHD手持式エアロゾル化装置を用いて噴霧した。最適なエアロゾル化に必要とされる電圧及び電流を求めて表IIIにまとめた。
【0073】
表IIIに示す電圧を用いて表Iの液体を噴霧した場合に生成されたエアロゾルを、主観的に評価した。このエアロゾルは湿潤度、「ストリーマ」の存在、帯幅(plume width)、脈動及びマイクロアンペア(μA)について視覚的に観察した。1、3又は5の主観的なエアロゾルスコアを各エアロゾルに割り当てた。スコア1は性能不良、3は平均的な性能、5は優れた性能に相当する。表Iに記載の製剤によるエアロゾルのそれぞれのスコアを表IIIに示す。
【0074】
本開示全体を通して記載されている表面レオロジーパラメータに関するさらなる詳細を、以下の実験記載に示す。
【実施例】
【0075】
実施例1
粘弾性率評価
表面レオロジー評価は、初めに平衡状態にある表面の摂動に主眼を置いている。この場合では、表Iのそれぞれの液体サンプル中に、予め形成した気泡の表面積の振動実験を行った。この実験は、アイティーコンセプト(フランス)製のトラッカーオスシレイティングドロップテンショメータ(Tracker Oscillating Drop Tensiometer)により行った。各実験に関して、ある表面積(この場合では25mm2)の気泡を、液体バルク内の上向きキャピラリーに垂架型で形成する。気泡の表面張力及び表面積は、滴の表面積(この場合では12.5mm2(50%))が種々の速度の振動で制御可能に振動を受けるように、垂滴法(以下を参照)によって光学的にモニタリングされる。
【0076】
垂滴表面張力の実験は以下のように行う。気泡を、表面張力に適した液体内の上向きのキャピラリー先端に形成する。次いで、気泡表面を、高画素CCDカメラを用いてデジタル画像化する。次いで、気泡の画像を数学的に分析して、その表面及びその表面積に沿って300点以上のその平均曲率を求める。気泡に空気を加えたり気泡から空気を引き出したりして気泡の表面積を所望の値に制御するように働くキャピラリーに接続されたポンプへのフィードバックとして、その表面積データを用いる。
【0077】
曲率データを用いて現在の表面張力を求める。キャピラリー先端に垂架している気泡の表面の任意の所定点での曲率は、2つの相反する因子(又は力)、すなわち細く延びるか又は上向きに「垂滴状」の気泡をつくる浮力作用と、気泡を球状に保つ表面張力作用(球は、任意の形状の表面と体積との比が最も低いためである)とに応じて決まる。表面張力は本質的に、表面の単位面積を生成するのに必要な作用量である。
【0078】
したがって、垂滴表面張力の評価は、連続相を有するその表面に沿った種々の点での気泡の平均曲率の形態での垂滴にかかるこれらの2つの力間に存在する平衡を観察することを含む。より低い表面張力は、より「垂滴状」である気泡形状を意味し、より高い表面積は、より球状の滴形状を意味する。
【0079】
垂滴の数学的分析はラプラス方程式に基づき、これによれば、表面の任意の所定点での差圧(ΔP)は、その点での表面の平均曲率((1/r1+1/r2)式中、r1及びr2は、主要な半径曲率である)に表面の張力(σ)の2倍を乗算した値に等しい。
ΔP=(1/r1+1/r2)2σ
【0080】
垂架型気泡の場合、任意の2つの垂直位置間の滴内の差圧は、
ΔρgZ
であり、式中、Δρは、気泡を形成中の空気とバルク液体との間の密度差であり、gは、重力加速度であり、Zは、図1に示されるように、2つの位置間の垂直距離である。
【0081】
表面張力の測定は実際に、300点以上(図1に明示されたA及びBのような)における滴の平均曲率を求めることによって行われるため、それらの点は対で用いられ、上記の所与の式を用いて表面張力を解く。
((1/r1+1/r2地点A−(1/r1+1/r2地点B)2σ=ΔρgZA-B間
のように、表面張力は、任意の所与の滴画像を少なくとも150倍にして求める。これらの表面張力値を平均化して、滴の表面張力全体について1つの値を得る。この技法は、既知の表面張力を有する液体の表面張力を求める際にも、非常に正確であることが見出されている(通常0.1%未満の誤差)。
【0082】
記載された粘弾性率及び位相角試験によるデータを、表IIIの第8欄及び第9欄にまとめる。
【0083】
滴は表面積に関して制御可能に振動するため、表面張力応答がモニタリングされる。この作業から、試験した各サンプルにつき1つずつ、5つの生データファイルを提示する。それぞれにおいて、摂動(又は面の歪み)の正弦波は同じである、すなわち、初期の25mm2の表面積の50%であり、初めは最大37.5mm2であるが、その後12.5mm2に縮小する。そのため、表面は伸張及び圧縮の双方を受けている。この伸張及び圧縮は、5回の振動期、すなわち完全な振動の1秒、2秒、5秒、10秒及び20秒でなされた。
【0084】
各実験において、全体的な表面の粘弾性率(E)、弾性率(E’)及び粘性率(E”)の値を得るために、弾性(ばね)要素及び粘性(ダッシュポット)要素を直列に用いた単純なケルビンモデルのレオロジーを用いて、得られた表面張力波を表面積の摂動波に対して分析した。
【0085】
これは、以下のように行われる:
粘弾性率(E)=dσ/(dA/A)
弾性率(E’)=Ecos(δ)
粘性率(E”)=Esin(δ)
式中、dσは、平衡張力に対する表面張力正弦波の振幅であり、dA/Aは、初期面積に対する面積振動の振幅であり、この場合、全ての実験について(37.5−25.0)/25.0=0.5であり、δは、表面張力応答が面積変化による摂動に遅れる位相角である。δ=0度の場合、応答は完全に弾性応答であり、δ=90度の場合、応答は完全に粘性応答である。任意の他の条件では、応答は粘弾性応答である。
【0086】
【表3】

【0087】
本願中に記載した論文、特許、特許出願及び/又は出願公開は全て、その内容全体が参照により本願に援用される。
【0088】
したがって、導電性液体組成物を製造及び使用するための組成物及び方法が提供されることが分かる。特定の実施形態を本明細書において詳細に開示しているが、これは例示目的で一例としてなされているにすぎず、以下に続く添付の特許請求の範囲に関して限定することを意図していない。特に、本発明者らは、特許請求の範囲が規定する本発明の精神及び範囲から逸脱せずに種々の置換、代替、及び変更を行い得ることを意図している。他の態様、利点及び変更も、以下に続く特許請求の範囲内にあると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気流体力学的エアロゾル化手段を用いてエアロゾル化することのできる高導電性液体組成物であって、該高導電性液体組成物は、0.5mN/m〜10mN/mの表面粘弾性率と、10度〜50度の位相角と、12.5マイクロジーメンス/cm〜400マイクロジーメンス/cmの導電率とを有し、
該高導電性液体組成物は、
(i)活性剤と、
(ii)エタノールである液体担体ビヒクルと、
(iii)表面レオロジー特性を調整するための材料と、
(iv)任意に、製剤補助剤又はそれらの混合物と
を含み、
前記活性剤は、前記液体担体ビヒクル中に溶解又は懸濁されている高導電性液体組成物。
【請求項2】
前記高導電性液体組成物の前記表面粘弾性率は、2.0mN/m〜7.5mN/mの範囲である、請求項1に記載の高導電性液体組成物。
【請求項3】
前記高導電性液体組成物の前記表面粘弾性率は5.0mN/mである、請求項2に記載の高導電性液体組成物。
【請求項4】
前記高導電性液体組成物の前記位相角は25度である、請求項1に記載の高導電性液体組成物。
【請求項5】
前記高導電性液体組成物の前記導電率は、10.0マイクロジーメンス/cm〜約400マイクロジーメンス/cmの範囲である、請求項1〜3及び4のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項6】
前記高導電性液体組成物の前記導電率は12.5マイクロジーメンス/cmである、請求項1〜3、4及び5のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項7】
前記高導電性液体組成物は、20mN/m〜30mN/mの表面張力を有する、請求項1〜3、4及び5並びに6のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項8】
前記表面レオロジー特性を調整するための材料は、成膜剤、ポリオール、界面活性剤及びポリマー、又はそれらの混合物を含む、請求項1〜3、4及び5、6並びに7のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項9】
前記表面レオロジー特性を調整するための材料は、ポリビニルピロリドンポリマー、チロキサポール、アルキルポリグルコシド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロース、並びにそれらの混合物から本質的に成る群から選択される、請求項1〜3、4及び5、6、7並びに8のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項10】
前記活性剤は、前記液体担体ビヒクル中に溶解又は懸濁されている、請求項1〜3、4及び5、6、7並びに8のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項11】
前記形成賦形剤は、前記高導電性液体組成物の物理安定性を高める薬剤、抗酸化剤、キレート化剤すなわち錯化剤、抗菌剤、抗真菌剤、又は風味料から成る群から選択される、請求項1〜3、4及び5、6、7、8並びに10のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項12】
高導電性液体組成物が電気力学的エアロゾル化手段を用いてエアロゾル化されるときに生成されるエアロゾルであって、
該高導電性液体組成物は、
(i)活性剤と、
(ii)エタノールである液体担体ビヒクルと、
(iii)表面レオロジー特性を調整するための材料と、
(iv)任意に、製剤補助剤又はそれらの混合物と
を含み、
前記活性剤は、前記液体担体ビヒクル中に溶解又は懸濁され、前記高導電性液体組成物は、0.5mN/m〜10mN/mの表面粘弾性率と、0.5度〜90度の位相角と、12.5マイクロジーメンス/cm〜400マイクロジーメンス/cmの導電率とを有するエアロゾル。
【請求項13】
1.0μm〜300.0μmのエアロゾル粒径を有する、請求項12に記載のエアロゾル。
【請求項14】
1.0μm〜50.0μmのエアロゾル粒径を有する、請求項12又は13に記載のエアロゾル。
【請求項15】
前記高導電性液体組成物の前記表面粘弾性率は、2.0mN/m〜7.5mN/mの範囲である、請求項12〜14のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項16】
前記高導電性液体組成物の前記表面粘弾性率は5.0mN/mである、請求項12〜15のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項17】
高導電性液体組成物の前記位相角は25度である、請求項12〜16のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項18】
前記表面粘弾性率は、2.0mN/m〜約7.5mN/mであり、前記位相角は、10度〜50度であり、前記導電率は、5.0マイクロジーメンス/cm〜400マイクロジーメンス/cmである、請求項12〜16及び17のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項19】
前記表面粘弾性率は5.0mN/mであり、前記位相角は25度であり、前記導電率は12.5マイクロジーメンス/cmである、請求項12〜16並びに17及び18のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項20】
前記高導電性液体組成物の前記導電率は、10.0マイクロジーメンス/cm〜400マイクロジーメンス/cmの範囲である、請求項12〜16及び17〜19のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項21】
前記高導電性液体組成物の前記導電率は12.5マイクロジーメンス/cmである、請求項12〜16及び17〜20のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項22】
前記高導電性液体組成物は、約10mN/m〜約72.0mN/mの範囲の表面張力を有し、前記高導電性液体組成物から生成される前記エアロゾルは、約1.0μm〜約300.0μmの粒径を有する、請求項12〜16及び17〜21のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項23】
前記表面レオロジー特性を調整するための材料は、成膜剤、ポリオール、界面活性剤及びポリマー、又はそれらの混合物を含む、請求項12〜16及び17〜22のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項24】
前記表面レオロジー特性を調整するための材料は、ポリビニルピロリドンポリマー、チロキサポール、アルキルポリグルコシド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロース、並びにそれらの混合物から本質的に成る群から選択される、請求項12〜16及び17〜23のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項25】
前記活性剤は、前記液体担体ビヒクル中に溶解又は懸濁されている、請求項12〜16及び17〜24のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項26】
前記形成賦形剤は、前記高導電性液体組成物の物理安定性を高める薬剤、抗酸化剤、キレート化剤、抗菌剤、抗真菌剤、又は風味料を含む、請求項12〜16及び17〜25のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項27】
標的表面への活性剤の直接送達のための高導電性液体組成物であって、
該高導電性液体組成物は、電気流体力学的エアロゾル化手段を用いてエアロゾル化することができ、該高導電性液体組成物は、0.5mN/m〜10mN/mの表面粘弾性率と、10度〜50度の位相角と、12.5マイクロジーメンス/cm〜400マイクロジーメンス/cmの導電率とを有し、
該高導電性液体組成物は、
(i)活性剤と、
(ii)エタノールである液体担体ビヒクルと、
(iii)表面レオロジー特性を調整するための材料と、
(iv)製剤補助剤又はそれらの混合物と
を含み、
前記活性剤は、前記液体担体ビヒクル中に溶解又は懸濁されている高導電性液体組成物。
【請求項28】
前記活性剤は、医薬品、塗料、農薬、化粧品又は風味材料から成る群から選択される、請求項27に記載の高導電性液体組成物。
【請求項29】
前記活性剤は、塗料、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、液体ファンデーション、液体タンニング材料、及び風味料から成る群から選択される、請求項27又は28に記載の高導電性液体組成物。
【請求項30】
前記活性剤は、小分子薬剤、ワクチン、核酸、遺伝子治療薬、酵素、ホルモン、抗体、ビタミン、ペプチド、ポリペプチド、抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス薬、抗癌剤、及び疼痛管理薬から成る群から選択される医薬品である、請求項27〜29のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項31】
前記表面粘弾性率は、2.0mN/m〜7.5mN/mであり、前記位相角は、10度〜50度であり、前記導電率は、5.0マイクロジーメンス/cm〜400マイクロジーメンス/cmである、請求項27〜30のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項32】
前記表面粘弾性率は5.0mN/mであり、前記位相角は25度であり、前記導電率は12.5マイクロジーメンス/cmである、請求項27〜31のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項33】
前記表面粘弾性率は、2.0mN/m〜7.5mN/mであり、前記位相角は、10度〜50度であり、前記導電率は、5.0マイクロジーメンス/cm〜400マイクロジーメンス/cmである、請求項27〜32のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項34】
前記高導電性液体組成物は、15.0mN/m〜45.0mN/mの表面張力を有し、該高導電性液体組成物から生成される前記エアロゾルは、約1.0μm〜約100.0μmの粒径を有する、請求項27〜33のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項35】
前記高導電性液体組成物は、20.0mN/m〜35.0mN/mの表面張力を有し、該高導電性液体組成物から生成される前記エアロゾルは、1.0μm〜50.00μmの粒径を有する、請求項27〜33及び34のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項36】
前記表面レオロジー特性を調整するための材料は、成膜剤、ポリオール、界面活性剤、ポリマー及びセルロース材料、並びにそれらの混合物を含む、請求項27〜33並びに34及び35のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項37】
前記表面レオロジー特性を調整するための材料は、ポリビニルピロリドンポリマー、チロキサポール、アルキルポリグルコシド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロース、並びにそれらの混合物から本質的に成る群から選択される、請求項27〜33及び34〜36のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項38】
前記活性剤は、前記液体担体ビヒクル中に溶解又は懸濁されている、請求項27〜33、34〜37のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項39】
前記形成賦形剤は、前記高導電性液体組成物の物理安定性を高める薬剤、抗酸化剤、キレート化剤、抗菌剤、抗真菌剤、又は風味料から成る群から選択される、請求項27〜33及び34〜38のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物。
【請求項40】
患者上又は患者内の標的表面に活性剤を送達するのに使用される、請求項1〜3、4及び5、6、7、8並びに10、又は27〜33及び34〜39のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物、又は請求項12〜16及び17〜24のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項41】
前記送達は、電気流体力学的手段による、請求項40に記載の高導電性液体組成物又はエアロゾル。
【請求項42】
前記標的表面が前記患者の気道の表面である、請求項40又は41に記載の高導電性液体組成物又はエアロゾル。
【請求項43】
喘息、COPD、疼痛、衰弱、嘔吐、骨粗鬆症、肺高血圧症、糖尿病、喫煙依存症、免疫抑制、又は感染から本質的に成る群から選択される疾患又は症状を治療、予防又は寛解させるための、請求項40〜42のいずれか一項に記載の高導電性液体組成物又はエアロゾル。

【図1】
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【公表番号】特表2010−518005(P2010−518005A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548318(P2009−548318)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/001391
【国際公開番号】WO2008/094693
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(500415173)バテル・メモリアル・インスティテュート (9)
【氏名又は名称原語表記】BATTELLE MEMORIAL INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】505 King Avenue, Columbus, OH 43201−2693, U.S.A.
【Fターム(参考)】