説明

高所作業車の点検装置

【課題】点検時の停車位置が傾斜地であってもその影響を受けることなく、絶対角方式の起伏角度検出器の故障検出において正確な判断を行うことができる、高所作業車の点検装置を提供する。
【解決手段】車体上に起伏動等の作動自在に設けられたブームの水平面に対する起伏角度の検出を行う絶対角方式の起伏角度検出器81と、ブーム操作レバー71の操作に応じてブームの作動を制御するためのブーム作動制御部61と、アウトリガジャッキが下方に張り出してその下端部が接地したか否かを検出する接地検出器55と、接地検出器55により全てのアウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、アウトリガジャッキの接地後、最初にブーム操作レバー71の操作が行われたとき、起伏角度検出器により検出された起伏角度が所定範囲に収まっているか否かを判定するセンサ判定部63とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体上に起伏動等の作動自在なブームと、車体の前後左右に車体を支持するアウトリガジャッキとを備える高所作業車の点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車は、車体上に起伏動、伸縮動、旋回動自在に設けられたブームと、ブームの先端に設けられた作業台と、車体の前後左右に設けられ下方に張り出すことで車体を支持するアウトリガジャッキとを備え、アウトリガジャッキを車体の下方に張り出して車体を安定支持させた後に、ブームを起伏動、伸縮動、旋回動等をさせることにより、作業台を所望の高所位置に移動させることができるようになっている。
【0003】
上記の高所作業車において、高所作業車の転倒、損傷等の事故を未然に防いで作業時の安全を図るため、ブームの起伏角度を検出する起伏角度検出器、ブームの伸長量を検出する伸長量検出器、ブームの旋回角度を検出する旋回角度検出器等を備え、これらの検出結果よりブームから車体を転倒させる方向に作用する転倒モーメントを常時算出し、その値が許容値に達した場合には該モーメントが増大する方向へのブーム作動を規制する安全装置が設けられている。このような安全装置を正しく作動させるためには上記の検出器が正常に作動している必要があるため、作業開始前や作業終了後等にブームの格納状態が検出されているときに各検出器の検出値が許容範囲内であるか否かを判断し、その結果検出値が許容範囲外であった場合には該当する検出器を故障であるとみなし、ブザー等を鳴らしてその旨を作業者に報知する点検装置が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)
【0004】
【特許文献1】特開2000−289998号公報
【特許文献2】実開平4−115897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の起伏角度検出器としては、ブームの水平面に対する起伏角度の検出を行う絶対角方式のものが多く用いられている。この絶対角方式の起伏角度検出器は、高所作業はアウトリガジャッキを張り出して車体を水平支持した状態で行うため、作業現場が坂道であっても何ら影響を受けることもなく、正確に起伏角度を検出することができる。
【0006】
このような起伏角度検出器の点検方法としては、ブームの格納時の倒伏角度が最大倒伏角度である場合、検出角度が最大倒伏角度より負角であると検出されたときに、起伏角度検出器に異常があると判断するようにする。ここで、作業現場が坂道であり、高所作業車がその坂の下方に向かってブームが伸びるように停車し且つアウトリガジャッキによって車体を水平にする前の状態であったときに、特許文献に記載の点検装置により起伏角度検出器の点検が行われると、起伏角度検出器による検出値が負角であるため、許容角度範囲以下となり、起伏角度検出器は正常であるにもかかわらず、故障であると誤認されてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、点検時の停車位置が傾斜地であってもその影響を受けることなく、絶対角方式の起伏角度検出器の故障検出において正確な判断を行うことができる、高所作業車の点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る高所作業車の点検装置は、車体と、前記車体上に起伏動等の作動自在に設けられたブームと、前記ブームの水平面に対する起伏角度の検出を行う絶対角方式の起伏角度検出手段(例えば、本実施形態における起伏角度検出器81)と、前記ブームを作動させるための操作を行うブーム操作手段(例えば、本実施形態におけるブーム操作レバー71)と、前記ブーム操作手段の操作に応じて前記ブームの作動を制御するための作動制御手段(例えば、本実施形態におけるコントローラ60)と、前記車体の前後左右に取り付けられ、下方に張り出して前記車体を支持するアウトリガジャッキと、前記アウトリガジャッキが下方に張り出して、その下端部が接地したか否かを検出する接地検出手段(例えば、本実施形態における接地検出器55)と、前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、前記アウトリガジャッキの接地後、最初に前記ブーム操作手段の操作が行われたとき、前記起伏角度検出手段により検出された起伏角度が所定範囲に収まっているか否かを判定するセンサ判定手段(例えば、本実施形態のコントローラ60のセンサ判定部63)とを備えて構成される。
【0009】
また、本発明では、前記車体と前記ブームとの間に配設されて前記ブームを起伏動させる起伏シリンダと、前記起伏シリンダに作用する軸力を検出する軸力検出手段(例えば、本実施形態における軸力検出器84)と、前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが接地状態から未接地状態になったことが検出された第1の時刻を記憶する時刻記憶手段(例えば、本実施形態におけるコントローラ60の時刻記憶部64)と、前記時刻記憶手段により前記第1の時刻が記憶されてから、前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出された第2の時刻までの時間を計測する時間計測手段(例えば、本実施形態におけるコントローラ60の時間計測部65)と、前記時間計測手段により計測された前記第1の時刻から前記第2の時刻までの計測時間が所定時間以上であったか否かを判定する経過時間判定手段(例えば、本実施形態におけるコントローラ60の経過時間判定部66)とを備え、前記センサ判定手段は、前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、前記アウトリガジャッキの接地後、最初に前記ブーム操作手段の操作が行われたとき、前記経過時間判定手段による判定を行わせ、その結果前記計測時間が所定時間以上であると判定された場合に、前記軸力検出手段により検出された軸力が所定範囲に収まっているか否かを判定するように構成してもよい。
【0010】
また、本発明では、前記ブームは、伸縮動及び旋回動自在に設けられ、前記ブームの伸長量を検出する伸長量検出手段(例えば、本実施形態における伸長量検出器82)と、前記ブームの旋回角度を検出する旋回角度検出手段(例えば、本実施形態における旋回角度検出器83)とを備え、前記センサ判定手段は、前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、前記アウトリガジャッキの接地後、最初に前記ブーム操作手段の操作が行われたとき、前記伸長量検出手段により検出された伸長量及び前記旋回角度検出手段により検出された旋回角度が所定範囲に収まっているか否かを判定するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る高所作業車の点検装置は、全てのアウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、全アウトリガジャッキの接地後、最初にブーム操作手段の操作が行われたとき、すなわち車体が水平支持された状態で、検出器の点検作業が行われるため、点検時の停車位置が傾斜地であってもその影響を受けることなく、絶対角方式の起伏角度検出器の故障検出において正確な判断を行うことができ、作業時の安全性を高めることができる。また、自動で検出器の点検作業が行われるため、作業者の作業時の負担を減らせ、且つ、確実に実行することができる。
【0012】
また、本発明では、前記車体と前記ブームとの間に配設されて前記ブームを起伏動させる起伏シリンダと、前記起伏シリンダに作用する軸力を検出する軸力検出手段と、前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが接地状態から未接地状態になったことが検出された第1の時刻を記憶する時刻記憶手段と、前記時刻記憶手段により前記第1の時刻が記憶されてから、前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出された第2の時刻までの時間を計測する時間計測手段と、前記時間計測手段により計測された前記第1の時刻から前記第2の時刻までの計測時間が所定時間以上であったか否かを判定する経過時間判定手段とを備え、前記センサ判定手段は、前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、前記アウトリガジャッキの接地後、最初に前記ブーム操作手段の操作が行われたとき、前記経過時間判定手段による判定を行わせ、その結果前記計測時間が所定時間以上であると判定された場合に、前記軸力検出手段により検出された軸力が所定範囲に収まっているか否かを判定するように構成してもよい。
【0013】
この構成により、全てのアウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、全アウトリガジャッキの接地後、最初にブーム操作手段の操作が行われ、且つ、全てのアウトリガジャッキが接地状態から未接地状態になった第1の時刻から、全てのアウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となった第2の時刻までの時間が所定時間以上であったとき、すなわちブームが格納されてから十分な時間が経過して起伏シリンダの軸力がほぼゼロとなったときに、検出器の点検作業が行われるため、軸力検出器が所定の軸力(ほぼゼロ)を出力しているか否かの判断を行ういわゆるゼロ点検査を正確に行うことが可能となり、絶対角方式の起伏角度検出器の故障検出のみならず、軸力検出器の故障検出においてもより正確な判断を行うことができ、作業時の安全性の向上に貢献できる。また、この点検作業は自動で行われるため、作業者の負担を減らし、作業効率を向上させることができる。
【0014】
なお、全てのアウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、全アウトリガジャッキの接地後、最初にブーム操作手段の操作が行われ、且つ、全てのアウトリガジャッキが接地状態から未接地状態になった第1の時刻から、全てのアウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となった第2の時刻までの時間が所定時間未満であったときは、起伏シリンダの軸力が残留して、軸力検出が不正確となるおそれがあるため、軸力検出器の故障検出は行わない。
【0015】
また、本発明では、前記ブームは、伸縮動及び旋回動自在に設けられ、前記ブームの伸長量を検出する伸長量検出手段と、前記ブームの旋回角度を検出する旋回角度検出手段とを備え、前記センサ判定手段は、前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、前記アウトリガジャッキの接地後、最初に前記ブーム操作手段の操作が行われたとき、前記伸長量検出手段により検出された伸長量及び前記旋回角度検出手段により検出された旋回角度が所定範囲に収まっているか否かを判定するように構成してもよい。
【0016】
この構成により、絶対角方式の起伏角度検出器の故障検出を実行するときに、伸長量検出器及び旋回角度検出器の故障検出も同時に行うことができるため、作業時の安全性を向上させることができる。また、これらの点検作業は自動で行われるため、点検作動に時間を取られることなく実際の作業に取りかかることができ、作業効率を高めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図2は本発明に係る点検装置を備えた高所作業車1である。本発明に係る点検装置の説明をする前に、先ずこの高所作業車1の構成について説明する。
【0018】
高所作業車1は、走行用車輪11を備えて運転キャビン12から走行運転が可能なトラック式の車体10と、車体10上に設けられた旋回台20と、この旋回台20から上方に延びて設けられた支柱21の上部にフートピン22を介して基端部が支持されたブーム(伸縮ブーム)30と、このブーム30の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台40とを有して構成される。
【0019】
旋回台20は車体10の後部に上下軸まわり360度回動自在に取り付けられている。車体10の内部には旋回モータ(油圧モータ)23が設けられており、この旋回モータ23を回転作動させることにより、図示しないギヤを介して旋回台20を水平旋回動させることができる。ブーム30は基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に構成されており、内部に設けられた伸縮シリンダ(油圧シリンダ)31の伸縮作動により各ブーム30a,30b,30cを相対的に移動させてブーム30全体を軸方向に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと旋回台20の支柱21との間には起伏シリンダ(油圧シリンダ)24が跨設されており、この起伏シリンダ24を伸縮作動させることによりブーム30全体を起伏動させることができる。
【0020】
先端ブーム30cの先端部には垂直ポスト保持金具32が取り付けられており、この垂直ポスト保持金具32により垂直ポスト33の下端部が枢支されている。この垂直ポスト33はブーム30内に設けられた図示しないレベリング装置により、ブーム30の起伏角度によらず常時垂直姿勢が保持される構成となっている。
【0021】
作業台40は箱形状を有しており、外部に突出して設けられた作業台保持ブラケット41を介して垂直ポスト33の上端部に回動自在に取り付けられている。作業台保持ブラケット41の内部には首振りモータ(油圧モータ)42が設けられており、この首振りモータ42を回転作動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト33まわりに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポスト33は上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0022】
作業台40にはブーム30の旋回、起伏、伸縮操作を行うためのブーム操作レバー71及び作業台40の首振り操作を行うための作業台操作レバー72が設けられている。ブーム操作レバー71の操作により出力された操作信号は、車体10内に設置されたコントローラ60のブーム作動制御部61に入力される(図1参照)。コントローラ60のブーム作動制御部61はブーム操作レバー71の操作信号に基づいて、旋回モータ23に対応する第1制御バルブV1、伸縮シリンダ31に対応する第2制御バルブV2及び起伏シリンダ24に対応する第3制御バルブV3の各スプール(図示せず)を電磁駆動する。また、作業台操作レバー72は首振りモータ42に対応する第4制御バルブV4のスプール(図示せず)を直接(機械的に)駆動する。
【0023】
車体10内に設けられた油圧ポンプPは、図示しないエンジンや電動モータ等により回転駆動され、上記第1〜第4制御バルブV1,V2,V3,V4経由で旋回モータ23伸縮シリンダ31、起伏シリンダ24及び首振りモータ42に圧油を供給する。このため、旋回モータ23伸縮シリンダ31及び起伏シリンダ24はブーム操作レバー71の操作により所望に作動させることができ、首振りモータ42は作業台操作レバー72の操作により所望に作動させることができる。
【0024】
車体10の前後左右4箇所にはアウトリガジャッキ50が設けられており、側方及び下方に張り出して(伸長作動して)接地させることにより、車体10を安定的に支持することができる。各アウトリガジャッキ50は、車体10の側方に下方に延びて設けられたアウタポスト51と、アウタポスト51内に下方に伸縮自在に収納されたインナポスト52と、インナポスト52の下端部に取り付けられた接地板53と、アウタポスト51及びインナポスト52に内蔵され、伸縮作動することでインナポスト52をアウタポスト51に対して伸縮させるジャッキシリンダ54とから構成されている。
【0025】
各アウトリガジャッキ50の張り出し作動(ジャッキシリンダ54の伸長作動)操作及び格納作動(ジャッキシリンダ54の収縮作動)操作は、車体10の後方に設けられたジャッキ操作レバー73の操作により行う。ジャッキ操作レバー73の操作を行うと、コントローラ60のジャッキ作動制御部62を介してジャッキ制御バルブVJが電磁駆動され、各ジャッキシリンダ54に油圧ポンプPからの圧油が供給されて伸縮作動し、ジャッキシリンダ54を伸長させ(アウトリガジャッキ50の張り出し作動)、或いはジャッキシリンダ54を収縮させる(アウトリガジャッキ50の格納作動)ことができる。各アウトリガジャッキ50には、そのアウトリガジャッキ50の下端部(接地板53)が接地したか否かを検出するリミットスイッチからなる接地検出器55が設けられており、接地板53が接地した状態においてはオン信号を出力し、それ以外の状態はオフ信号を出力する。これら接地検出器55のオン・オフ信号は、後述のコントローラのセンサ判定部63に入力される。なお、図1では記載を簡単にするためアウトリガジャッキ50及びジャッキ制御バルブVJが1つずつしか示されていないが、実際には車体10に設けられた前後左右計4つのアウトリガジャッキ50に対応して、ジャッキシリンダ54とジャッキ制御バルブVJがそれぞれ4つずつ存在する。また、接地検出器55も4つずつ存在する。
【0026】
このような構成の高所作業車1を用いて高所作業を行う場合、作業者は、車体10の後部に設けられたジャッキ操作レバー73を操作して各アウトリガジャッキ50の張り出し操作入力を行い、各アウトリガジャッキ50を接地状態まで張り出させて車体10を安定姿勢にした後、車体10上から図示しないステップ等を介して作業台40に乗り込む。そして、作業台40に設けられたブーム操作レバー71及び作業台操作レバー72を操作して、作業台40を移動させる。これにより作業台40上の作業者は、自らのレバー操作により作業台40を任意の位置に移動させて所望の高所作業を行うことができる。また、高所作業の終了後は、作業台40上の作業者は自らレバー操作を行ってブーム30を格納姿勢にして、作業台40より降りる。そして、この作業者が地上に降りたことを確認してからジャッキ操作レバー73を操作して各アウトリガジャッキ50を格納させる。
【0027】
次に、上記高所作業車1に備えられた点検装置について説明する。本発明に係る高所作業車1に備えられた点検装置は、図1に示すように、アウトリガジャッキ50と、ブーム操作レバー71と、コントローラ60と、コントローラ60をオン・オフ作動させるための操作を行う電源スイッチSWと、接地検出器55と、起伏角度検出器81と、伸長量検出器82と、旋回角度検出器83と、軸力検出器84とを備えて構成される。
【0028】
起伏角度検出器81は、ブーム30の基端部に設けられ、ブーム30の水平面に対する起伏角度を検出する(いわゆる絶対角方式)。伸長量検出器82は、ブーム30内に設けられ、ブーム30の伸長量を検出する。旋回角度検出器83は、車体10内に設けられ、ブーム30(旋回台20)の車体10に対する旋回角度を検出する。軸力検出器84は、起伏シリンダ24の下端部に設けられ、起伏シリンダ24からの押圧力を直接受けることによりその軸力を検出するロードセルからなる。これら検出器81〜84の検出情報は、いずれもコントローラ60のセンサ判定部63に入力される。
【0029】
コントローラ60の時刻記憶部64は、接地検出器55により全てのアウトリガジャッキ50が接地状態から未接地状態になったことが検出された第1の時刻を記憶するためのものであり、記憶した第1の時刻はコントローラ60の時間計測部65に入力される。時間計測部65は、時刻記憶部64により第1の時刻が記憶されてから、接地検出器55により全てのアウトリガジャッキ50が未接地状態から接地状態となったことが検出された第2の時刻までの時間を計測するものであり、この計測時間はコントローラ60の経過時間判定部66に入力される。経過時間判定部66は、時間計測部65により計測された第1の時刻から第2の時刻までの計測時間が所定時間以上であったか否か、具体的にはブーム30が格納されてから十分な時間が経過して、起伏シリンダ24の軸力がほぼゼロとなるまでに必要な時間が経ったか否かを判定するものであり、経過時間判定部66による判定結果はコントローラ60のセンサ判定部63に入力される。なお、本実施形態では、上記計測時間を8時間と想定しているが、これに限定されるものではなく、作業現場の気温と起伏シリンダに用いられている作動油の性質との関係等、諸条件を考慮しながら適宜設定可能である。
【0030】
コントローラ60のセンサ判定部63は、電源スイッチSWがオン操作され、接地検出器55により全てのアウトリガジャッキ50が未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、アウトリガジャッキ50の接地後、最初にブーム操作レバー71の操作が行われたとき、すなわち車体が水平支持されている状態のときに、起伏角度検出器81により検出された起伏角度、伸長量検出器82により検出された伸長量及び旋回角度検出器83により検出された旋回角度が所定範囲に収まっているか否かを判定する。
【0031】
また、センサ判定部63は、電源スイッチSWがオン操作され、接地検出器55により全てのアウトリガジャッキ50が未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、アウトリガジャッキ50の接地後、最初にブーム操作レバー71の操作が行われたとき、経過時間判定部66による判定を行わせ、その結果計測時間が所定時間以上であると判定された場合に、すなわちブーム30が格納されてから十分な時間が経過して起伏シリンダ24の軸力がほぼゼロとなったとみなされた場合に、軸力検出部84により検出された軸力が所定範囲に収まっているか否かを判定する(具体的には、軸力検出器84が所定の軸力(ほぼゼロ)を出力しているか否かの判定を行う)。
【0032】
なお、センサ判定部63により上記検出器81〜84の異常が検出されたときは、ブザー等の警報装置90により警報作動が行われる。なお、警報作動として、ブザー等による聴覚的な報知だけでなく、ランプや液晶ディスプレイ等による視覚的な報知がなされるように構成してもよい。
【0033】
次に、本発明に係る点検装置の作用を説明する。最初に、アウトリガジャッキ50とブーム30を車体10に格納した状態で、車両を作業現場の近くまで移動させた後に、作業者は、ジャッキ操作レバー73の操作を行って各アウトリガジャッキ50をその下端部(接地板53)が接地状態となるまで張り出させ、車体10を安定支持させた後に、作業台40に乗り込む。そして、電源スイッチSWをオン操作した後に、作業台40を任意の位置に移動させるため、ブーム操作レバー71及び作業台操作レバー72の操作を行う。
【0034】
この間、コントローラ60のセンサ判定部63では、図3に示すような処理が行われる。センサ判定部63は、電源スイッチSWがオン操作されると(ステップS1)、接地検出器55により全てのアウトリガジャッキ50が未接地状態から接地状態となったことが検出されているか否か、具体的には、車体10が水平支持された状態となっているか否かを判定する(ステップS2)。
【0035】
ステップS2において、接地検出器55により全てのアウトリガジャッキ50が未接地状態から接地状態となったことが検出されていると判定したときは、アウトリガジャッキ50の接地後、最初のブーム操作レバー71の操作が行われたか否かを判定する(ステップS3)。一方、ステップS2において、接地検出器55により全てのアウトリガジャッキ50が未接地状態から接地状態となったことが検出されなかったと判定されたときは、今回のルーチン処理を終了し、次のルーチン処理に移る。
【0036】
ステップS3において、最初にブーム操作レバー71の操作が行われたと判定されたときは、経過時間判定部66による判定を行わせ、その結果、時間計測部65により計測された計測時間(すなわち、時刻記憶部64により第1の時刻が記憶されてから、接地検出器55により全てのアウトリガジャッキ50が未接地状態から接地状態となったことが検出された第2の時刻までの時間)が所定時間以上であったか否か、具体的には、ブーム30が格納されてから十分な時間が経過して起伏シリンダ24の軸力がほぼゼロとなったか否かを判定する(ステップS4)。一方、ステップS3において、最初にブーム操作レバー71の操作が行われなかったと判定されたときは、今回のルーチン処理を終了し、次のルーチン処理に移る。
【0037】
ステップS4において、経過時間判定部66により計測時間が所定時間以上であると判定された場合は、軸力検出器84により検出された軸力が所定範囲(ここではほぼセロ)に収まっているか否かを判定する、すなわち軸力検出器84が正常であるか否かを判定する(ステップS5)。一方、ステップS4において、経過時間判定部66により計測時間が所定時間以上ではないと判定された場合は、軸力検出器84の点検は行わず、ステップS7に進む。
【0038】
ステップS5において、軸力検出器84により検出された軸力が所定範囲に収まっていると判定されたとき、すなわち軸力検出器84が正常であると判定されたときは、ステップS7に進む。一方、軸力検出器84により検出された軸力が所定範囲に収まっていないと判定されたとき、すなわち軸力検出器84は故障であると判定されたときは、警報装置90を警報作動させてその旨を作業者に知らせ(ステップS6)、ステップS7に進む。
【0039】
ステップS7では、起伏角度検出器81により検出された起伏角度、伸長量検出器82により検出された伸長量及び旋回角度検出器83により検出された旋回角度が所定範囲に収まっているか否かを判定する。このステップS7において、起伏角度検出器81、伸長量検出器82及び旋回角度検出器83により検出された値がそれぞれ所定範囲に収まっていると判定されたとき、すなわち各検出器81〜83が正常であると判定されたときは、このまま本処理を終了する。一方、ステップS7において、起伏角度検出器81、伸長量検出器82及び旋回角度検出器83により検出された値がそれぞれ所定範囲に収まっていないと判定されたとき、すなわち検出器81〜83が故障であると判定されたときは、警報装置90を警報作動させてその旨を作業者に知らせ(ステップS8)、本処理を終了する。
【0040】
センサ判定部63により上記処理が行われ、検査対象となった検出器がいずれも正常であった場合は、作業者は引き続き高所作業を進める。そして、高所作業の終了後は、作業台40上の作業者は自らレバー71,72の操作を行ってブーム30を格納姿勢にして、作業台40より降りる。そして、この作業者が地上に降りたことを確認してからジャッキ操作レバー73を操作し、各アウトリガジャッキ50を格納させる。
【0041】
また、センサ判定部63により上記処理が行われた結果、検査対象となった検出器に故障があり、警報装置90の警報作動が行われた場合は、該当する検出器の更正作業に早急に取り掛かる等の適切な対応を、高所作業前に取ることができ、作業時の安全を図ることができる。
【0042】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したもの限定されない。
【0043】
例えば、上記実施形態においては、起伏シリンダ24に作用する軸力を検出する軸力検出器84は、起伏シリンダ24からの押圧力を直接受けるロードセルタイプのものであったが、その他のもの(起伏シリンダ24のロッド部に貼付した歪ゲージからなり、起伏シリンダ24の軸力に応じてその抵抗値を変化させるもの等)であってもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、本発明の点検装置が適用される対象はブームの先端部に作業者搭乗用の作業台40を有した高所作業車1であったが、これに限定されず、ブームの先端部に他の作業機を有した、クレーン車や穴掘り建柱車を有して構成されるあらゆるブーム作業車に対して適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る点検装置のブロック図を示す。
【図2】本発明に係る点検装置を搭載した高所作業車の正面図を示す。
【図3】本発明に係るセンサ判定部の処理の流れを説明するフローチャートを示す。
【符号の説明】
【0046】
1 高所作業車
10 車体
24 起伏シリンダ
30 ブーム
50 アウトリガジャッキ
55 接地検出器(接地検出手段)
60 コントローラ(作業制御手段)
63 センサ判定部(センサ判定手段)
64 時刻記憶部(時刻記憶手段)
65 時間計測部(時間計測手段)
66 経過時間判定部(経過時間判定手段)
71 ブーム操作レバー
81 起伏角度検出器(起伏角度検出手段)
82 伸長量検出器(伸長量検出手段)
83 旋回角度検出器(旋回角度検出手段)
84 軸力検出器(軸力検出手段)
SW 電源スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体上に起伏動等の作動自在に設けられたブームと、
前記ブームの水平面に対する起伏角度の検出を行う絶対角方式の起伏角度検出手段と、
前記ブームを作動させるための操作を行うブーム操作手段と、
前記ブーム操作手段の操作に応じて前記ブームの作動を制御するための作動制御手段と、
前記車体の前後左右に取り付けられ、下方に張り出して前記車体を支持するアウトリガジャッキと、
前記アウトリガジャッキが下方に張り出して、その下端部が接地したか否かを検出する接地検出手段と、
前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、前記アウトリガジャッキの接地後、最初に前記ブーム操作手段の操作が行われたとき、前記起伏角度検出手段により検出された起伏角度が所定範囲に収まっているか否かを判定するセンサ判定手段とを備えて構成されることを特徴とする高所作業車の点検装置。
【請求項2】
前記車体と前記ブームとの間に配設されて前記ブームを起伏動させる起伏シリンダと、 前記起伏シリンダに作用する軸力を検出する軸力検出手段と、
前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが接地状態から未接地状態になったことが検出された第1の時刻を記憶する時刻記憶手段と、
前記時刻記憶手段により前記第1の時刻が記憶されてから、前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出された第2の時刻までの時間を計測する時間計測手段と、
前記時間計測手段により計測された前記第1の時刻から前記第2の時刻までの計測時間が所定時間以上であったか否かを判定する経過時間判定手段とを備え、
前記センサ判定手段は、前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、前記アウトリガジャッキの接地後、最初に前記ブーム操作手段の操作が行われたとき、前記経過時間判定手段による判定を行わせ、その結果前記計測時間が所定時間以上であると判定された場合に、前記軸力検出手段により検出された軸力が所定範囲に収まっているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の高所作業車の点検装置。
【請求項3】
前記ブームは、伸縮動及び旋回動自在に設けられ、
前記ブームの伸長量を検出する伸長量検出手段と、
前記ブームの旋回角度を検出する旋回角度検出手段とを備え、
前記センサ判定手段は、前記接地検出手段により全ての前記アウトリガジャッキが未接地状態から接地状態となったことが検出されている状態で、前記アウトリガジャッキの接地後、最初に前記ブーム操作手段の操作が行われたとき、前記伸長量検出手段により検出された伸長量及び前記旋回角度検出手段により検出された旋回角度が所定範囲に収まっているか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の高所作業車の点検装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−35386(P2009−35386A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201627(P2007−201627)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】