説明

高温用バルブ装置

【課題】高い耐腐食性を呈し得ると共に、シリコンを製造する際の反応副生成物や反応用の原料を固体のシリコンとは相状態の全く異なる気体状態に維持しながら機械的に分離することができる簡便な構成の高温用バルブ装置を提供する。
【解決手段】シリコンを生成する反応器10の下方に配置自在な高温用バルブ装置40、140であって、反応器の内部空間に連通して、反応器において生成されたシリコンを導入自在な第1の管状部材と、第1の管状部材内に配置されたバルブと、反応器からバルブに至る第1の管状部材の一部及びバルブを含む加熱領域を、反応器におけるシリコンの生成に関連する関連物質の沸点以上に加熱自在な加熱器100と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温用バルブ装置に関し、特に、高温下で反応生成物に加えて腐食性ガスが流入する高温用バルブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高温下で流量を制御するバルブとしては、製鉄用高炉に向けて吹き込まれる高温の流体や製鉄用高炉から放出される高温高圧の流体の流量を制御するバタフライ弁が用いられており、かかるバタフライ弁の耐熱性を向上すべく、近年種々の構成が提案されてきている。
【0003】
特許文献1は、高温用バタフライ弁に関し、セラミック製の弁体がケーシングの流体流路内に回転自在に支持されて、ケーシングは、金属ケース及びその内側に形成された断熱層を有し、かかる断熱層が、耐熱性に優れた耐火物から成る外層及び高強度の耐火物から成る内層を有する構成を提案する。
【0004】
特許文献2は、高温流体の流量制御弁に関し、金属ケースの内側に、高強度の耐火物から成って複数に分割された内層及び耐熱性に優れた不定耐火物からなる外層を有する断熱層を設けると共に、流路内にセラミックス製の弁板を有する弁体を配置し、断熱層で弁軸のみを支持したり、弁体と駆動部の継手とを焼嵌めにより連結した構成を提案する。
【0005】
特許文献3は、高温用バタフライ弁に関し、外筒及び内筒を有する弁箱の筒軸方向の中程に筒軸に直交して挿通した弁軸に弁体を取り付けたバタフライ弁において、外筒の内周及び内筒の外周の筒軸方向の両端部にそれぞれ突条を設けて、内筒を外筒に対してかかる両端部で単純梁状に支持させ、両者の間に断熱材を配置すると共に、内筒の材質と弁体の材質とをステンレス鋼、高クロム鋳鋼等の同じ材質にした構成を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭60−77856号公報
【特許文献2】特開平4−285368号公報
【特許文献3】特開2004−138202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1及び特許文献2に提案される構成では、金属ケースの内側に耐火性の断熱層を配した構成を有するものであるため、耐熱性には優れているが、外部から強制的に弁体に至る流路や弁体を加熱する構成に関しては、何等の開示や示唆はなされていない。
【0008】
また、特許文献3に提案される構成では、弁箱の外筒及び内筒の間に断熱材を配した構成を有するものであるため、外部から強制的に弁体に至る流路や弁体を加熱する構成に関しては、何等の開示や示唆はなされていない。更に、内筒の材質と弁体の材質とをステンレス鋼、高クロム鋳鋼等の同じ材質にした構成を有するものであるため、鉄等に対して腐食性のある流体に用いるのは困難な傾向が高い。
【0009】
ここで、本発明者の更なる検討によれば、高純度シリコンを化学的なプロセスにより製造する場合には、製造の目的物である反応生成シリコンやその反応副生成物に加えて、反
応用の原料が混入した状態で、シリコンの取り出し部に送られる事象が発生する可能性がある。
【0010】
かかる場合、製造の目的物である反応生成シリコンから、反応副生成物や反応用の原料を簡便な構成のバルブ装置を用いて効率的に分離することが望ましいが、反応副生成物や反応用の原料は、高い腐食性を示すからその対策が求められると共に、それらがシリコンの取り出し部に向かって送られる際に、多結晶となった固体のシリコンと同様に固体となってシリコンに混入することが考えられるため、反応副生成物や反応用の原料を固体のシリコンとは相状態の全く異なる気体状態に加熱して維持しバルブ装置で機械的に分離することも求められる。
【0011】
つまり、現状では、高い耐腐食性を実現すると共に、シリコンを製造する際の反応副生成物や反応用の原料を固体のシリコンとは相状態の全く異なる気体状態に維持しながら機械的に分離することができる新規な構成の高温用バルブ装置が、待望された状況にある。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、高い耐腐食性を呈し得ると共に、シリコンを製造する際の反応副生成物や反応用の原料を固体のシリコンとは相状態の全く異なる気体状態に維持しながら機械的に分離することができる簡便な構成の高温用バルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の目的を達成すべく、本発明の第1の局面における高温用バルブ装置は、シリコンを生成する反応器の下方に配置自在な高温用バルブ装置であって、前記反応器の内部空間に連通して、前記反応器において生成されたシリコンを導入自在な第1の管状部材と、前記第1の管状部材内に配置されたバルブと、前記反応器から前記バルブに至る前記第1の管状部材の一部及び前記バルブを含む加熱領域を、前記反応器におけるシリコンの生成に関連する関連物質の沸点以上に加熱自在な加熱器と、を備えた構成を有する。
【0014】
また本発明は、かかる第1の局面に加えて、前記第1の管状部材は、鉛直方向に平行な第1の方向に延在する縦外管と、前記第1の方向に直交する第2の方向に延在する横外管と、を有し、前記バルブは、前記横外管内を回転自在に延在する第2の管状部材に設けられることを第2の局面とする。
【0015】
また本発明は、かかる第2の局面に加えて、更に、前記横外管と前記第2の管状部材との間に画成される間隙部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構を備えることを第3の局面とする。
【0016】
また本発明は、かかる第2から第3のいずれかの局面に加えて、前記第2の管状部材は、グランドシールを介して、前記横外管内に回転自在に配設されることを第4の局面とする。
【0017】
また本発明は、かかる第4の局面に加えて、前記グランドシールは、前記加熱器の前記加熱領域外に配置されることを第5の局面とする。
【0018】
また本発明は、かかる第2から第5のいずれかの局面に加えて、前記第2の管状部材は、前記バルブに連なる壁部である一端部及び前記一端部に対向する他端部で閉じられた内管を有し、前記他端部が、前記内管の内部空間を外部に連通する連通孔を有することを第6の局面とする。
【0019】
また本発明は、かかる第2から第6のいずれかの局面に加えて、前記横外管は、前記横
外管を拡径した拡径部を有し、前記縦外管及び前記横外管は、前記拡径部を介して、互いに連結されることを第7の局面とする。
【0020】
また本発明は、かかる第3から第7のいずれかの局面に加えて、前記不活性ガス供給機構は、前記横外管に設けた環状流路部材を有し、前記不活性ガス供給機構から供給される不活性ガスは、前記環状流路部材の内部空間を介して、前記間隙部に供給されることを第8の局面とする。
【0021】
また本発明は、かかる第3から第8のいずれかの局面に加えて、前記不活性ガス供給機構は、前記横外管の一端部を塞ぐ側板に固定されたチャンバ管を有し、前記不活性ガス供給機構から供給される不活性ガスは、更に、前記チャンバ管を介して、前記横外管の内部空間に供給されることを第9の局面とする。
【0022】
また本発明は、かかる第1から第9のいずれかの局面に加えて、前記関連物質は、前記反応器に設けられた漏斗状のガイド部材を介して、前記第1の管状部材に導入されることを第10の局面とする。
【0023】
また本発明は、かかる第1から第10のいずれかの局面に加えて、前記関連物質は、亜鉛及び塩化亜鉛を含むことを第11の局面とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1の局面における高温用バルブ装置によれば、第1の管状部材の反応器から第1の管状部材内に配置されたバルブに至る部分及びバルブを含む加熱領域を、反応器におけるシリコンの生成に関連する関連物質の沸点以上に加熱自在な加熱器を備えることにより、耐腐食性の高い簡便な構成で、シリコンを製造する際の反応副生成物や反応用の原料である関連物質を、固体のシリコンとは相状態の全く異なる気体状態に維持しながら機械的に効率よく分離することができ、かかる関連物質の混入が低減されたシリコンの製造に寄与することができる。
【0025】
本発明の第2の局面における構成によれば、第1の管状部材が、鉛直方向に平行な第1の方向に延在する縦外管と、第1の方向に直交する第2の方向に延在する横外管と、を有し、バルブが、横外管内を回転自在に延在する第2の管状部材に設けられることにより、石英ガラスを好適に使用し得る簡便な構成で、耐熱性や耐腐食性の高い高温用バルブ装置を実現し得て、シリコン製造時の関連物質の混入が低減されたシリコンの製造に寄与することができる。
【0026】
本発明の第3の局面における構成によれば、更に、横外管と第2の管状部材との間に画成される間隙部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構を備えることにより、簡便な構成で、バルブが不要に固着等しない信頼性の高い高温用バルブ装置を実現し得て、シリコン製造時の関連物質の混入が低減されたシリコンの製造に寄与することができる。
【0027】
本発明の第4の局面における構成によれば、第2の管状部材が、グランドシールを介して、横外管内に回転自在に配設されることにより、簡便な構成で、バルブ装置内を外部から適宜封止しながら回転自在な信頼性の高いバルブを有する高温用バルブ装置を実現し得て、シリコン製造時の関連物質の混入が低減されたシリコンの製造に寄与することができる。
【0028】
本発明の第5の局面における構成によれば、グランドシールが、加熱器の加熱領域外に配置されることにより、グランドシールの耐久性を高く維持しながら回転自在な信頼性の高いバルブを有する高温用バルブ装置を実現し得て、シリコン製造時の関連物質の混入が
低減されたシリコンの製造に寄与することができる。
【0029】
本発明の第6の局面における構成によれば、第2の管状部材が、バルブに連なる壁部である一端部及び一端部に対向する他端部で閉じられた内管を有し、他端部が、内管の内部空間を外部に連通する連通孔を有することにより、内管の内部空間の圧力が不要に上昇して破損することを抑制でき、高い信頼性のバルブを有する高温用バルブ装置を実現し得て、シリコン製造時の関連物質の混入が低減されたシリコンの製造に寄与することができる。
【0030】
本発明の第7の局面における構成によれば、横外管が、横外管を拡径した拡径部を有し、縦外管及び横外管が、拡径部を介して互いに連結されることにより、石英ガラスを好適に使用し得る簡便な構成で、組立性が向上した高い信頼性の回転自在なバルブを有する高温用バルブ装置を実現し得て、シリコン製造時の関連物質の混入が低減されたシリコンの製造に寄与することができる。
【0031】
本発明の第8の局面における構成によれば、不活性ガス供給機構が、横外管に設けた環状流路部材を有し、不活性ガス供給機構から供給される不活性ガスは、環状流路部材の内部空間を介して、横外管と第2の管状部材との間に画成される間隙部に対してより均質的に供給されることにより、バルブが不要に固着等しない信頼性の高い高温用バルブ装置を簡便かつ確実に実現し得て、シリコン製造時の関連物質の混入が低減されたシリコンの製造に寄与することができる。
【0032】
本発明の第9の局面における構成によれば、不活性ガス供給機構は、横外管の一端部を塞ぐ側板に固定されたチャンバ管を有し、不活性ガス供給機構から供給される不活性ガスは、チャンバ管を介して、横外管と第2の管状部材との間に画成される間隙部や横外管の内部空間に対してより均質的に供給されることにより、バルブが不要に固着等しない信頼性の高い高温用バルブ装置を簡便かつ確実に実現し得て、シリコン製造時の関連物質の混入が低減されたシリコンの製造に寄与することができる。
【0033】
本発明の第10の局面における構成によれば、関連物質が、反応器に設けられた漏斗状のガイド部材を介して、第1の管状部材に導入されることにより、加熱器のサイズを小型化することができ、コンパクトな構成の高温用バルブ装置を実現し得て、シリコン製造時の関連物質の混入が低減されたシリコンの製造に寄与することができる。
【0034】
本発明の第11の局面における構成によれば、関連物質に、金属等に対する腐食性の高い亜鉛及び塩化亜鉛を含む場合であっても、以上の構成の高温用バルブ装置を適用することにより、シリコン製造時の関連物質の混入が低減されたシリコンの製造に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態で用いたシリコン製造装置の模式的縦断面図である。
【図2】本実施形態におけるシリコン製造装置に適用された上方バルブ装置の模式的縦断面図である。
【図3】図3(a)は、本実施形態におけるシリコン製造装置に適用された変形例の上方バルブ装置の模式的縦断面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態で用いたシリコン製造装置の模式的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を適宜参照して、本発明の各実施形態における高温用バルブ装置につき、シリコン製造装置に適用した場合を例に挙げ、詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸、z軸は、3軸直交座標系を成し、z軸は、縦方向である鉛直方向を示し、z軸の負方向を下方であって下流側とする。
【0037】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態における高温用バルブ装置につき、図1から図3を用いて、詳細に説明する。
【0038】
図1は、本実施形態で用いたシリコン製造装置の模式的縦断面図である。図2は、本実施形態におけるシリコン製造装置に適用された上方バルブ装置の模式的縦断面図である。
【0039】
図1及び図2に示すように、シリコン製造装置1は、z軸に平行な中心軸Cと同軸で鉛直方向に延在する典型的には円筒状で、かつ、その内部で四塩化珪素が亜鉛で還元される還元反応が生じる反応器10を備える。かかる反応器10は、典型的には石英製であり、その縦壁に挿通孔10aが形成されている。また、反応器10の上方端は、それに固設された典型的には石英製で円板状の上蓋12で閉じられ、反応器10の下方端は、それに固設された典型的には石英製で円板状の底板30で閉じられる。
【0040】
ここで、シリコン製造装置1においては、反応器10が、その径Dよりも、上蓋12への合わせ面と底板30の下面との長さLが長い寸法を有する縦型の反応器であり、反応器の10の内部において、亜鉛ガスを四塩化珪素ガスよりも上方(上流側)で供給し、適宜反応器10の温度を設定しながら、還元反応を生じて、シリコンを析出する析出領域を四塩化珪素ガスが供給される部位よりも下方(下流側)に画成し、反応器10のより下方(より下流側)から、シリコンを回収し得るものである。
【0041】
具体的には、反応器10の上方開放端を閉じる上蓋12に、その中央領域で中心軸Cと同軸に1個の挿通孔12a、並びにそれぞれ隣接して挿通孔12aを囲うように複数個の挿通孔12b及び複数個の挿通孔12cが、形成される。
【0042】
1個の挿通孔12aには、図示を省略する亜鉛ガス供給源に連絡して典型的には石英製である1本の亜鉛ガス供給管18が挿通されて固定される。かかる亜鉛ガス供給管18は、反応器10の内部に侵入して、中心軸Cと同軸で鉛直下方に延在すると共に、その縦壁の下端部で中心軸Cに直交する方向に向いて開口する亜鉛ガス供給口18aを有する一方で、その鉛直方向の先端は閉じられている。なお、亜鉛ガス供給源としては、かかる亜鉛ガス供給管18の鉛直方向に延在する部分に亜鉛線を導入して、詳細は後述する加熱器で亜鉛線を沸点以上に加熱して気化する構成を採用してもよいし、独立した亜鉛ガス供給装置を採用してもよい。また、必要に応じて、亜鉛ガス供給管18には、図示を省略する不活性ガス源から不活性ガスを混入可能である。
【0043】
亜鉛ガス供給管18の亜鉛ガス供給口18aは、複数個備えられることが好ましく、典型的には中心軸Cに軸対称に120°の等間隔で、その縦壁の下端に3個開口することが好ましい。これは、亜鉛ガスが反応器10の内部に水平方向で吐出されてより確実に均等に拡散し、亜鉛ガスと四塩化珪素ガスとの混合がより良好に行われ得るためである。なお、もちろん、亜鉛ガスと四塩化珪素ガスとが良好に混合する場合には、亜鉛ガス供給管18の亜鉛ガス供給口18aは、1個のみ設けてもよいし、亜鉛ガス供給管18の鉛直方向の先端を開放して設けてもよい。
【0044】
複数の挿通孔12bは、典型的には中心軸Cから等距離であって上蓋12の周方向に1
20°の等間隔で3個設けられている。かかる各挿通孔12bには、図示を省略する不活性ガス供給源に連絡して典型的には石英製である1本の不活性ガス供給管14が挿通されて固定され、不活性ガス供給管14は、反応器10の内部に侵入して、中心軸Cと平行で鉛直下方に延在し、その下端で開放された開口である不活性ガス供給口14aを有する。また、不活性ガス供給管14の内部には、図示を省略する四塩化珪素ガス供給源に連絡して典型的には石英製である1本の四塩化珪素ガス供給管16が配設されて、四塩化珪素ガス供給管16は、反応器10の内部に侵入して、中心軸Cと平行で鉛直下方に延在する。かかる四塩化珪素ガス供給管16は、その縦壁の下端部で中心軸Cに直交する方向に向いて開口する四塩化珪素ガス供給口16aを有する一方で、その鉛直方向の先端は閉じられている。なお、四塩化珪素ガス供給管16は、必要に応じて図示を省略する不活性ガス供給源に連絡可能である。
【0045】
四塩化珪素ガス供給管16の四塩化珪素ガス供給口16aは、その縦壁の下端において任意の位置及び任意の個数で開口すれば足りる。これは、亜鉛ガスと四塩化珪素ガスとの混合性の観点からは、四塩化珪素ガスが水平方向に吐出されるものであれば足りるからである。
【0046】
複数の挿通孔12cは、典型的には中心軸Cから等距離であって上蓋12の周方向に120°の等間隔で、かつ対応する挿通孔12bを挟むように3個設けられている。かかる各挿通孔12cには、詳細は後述する剥離機構24の導入管24aが挿通されて固定される。
【0047】
このように上蓋12の中央に1本の亜鉛ガス供給管18を挿通して反応器10内を延在させると共に、その周囲に複数の不活性ガス供給管14に内包される四塩化珪素ガス供給管16を配設する構成を採用した理由は、沸点が910℃の亜鉛ガスは、沸点が59℃の四塩化珪素ガスよりも高温に加熱された状態で反応器10に導入される必要があるため、反応器10や上蓋12の径が若干大きくなる傾向にはあるものの、装置全体の構成をよりコンパクトにしながら、相対的に高温に維持した亜鉛ガスを確実に反応器10内の径方向の中央部に集中的に導入すると共に、四塩化珪素ガスをその周囲に分散的に導入し得る利便性を考慮したためである。なお、反応器10や上蓋12の径を更に大型化できる場合には、亜鉛ガス供給管18を上蓋12の中央領域に複数個設けてもかまわない。
【0048】
ここで、不活性ガス供給口14aは、反応器10の上蓋12への合わせ面からの長さL1の位置で、反応器10の内部に開口する。また、四塩化珪素ガス供給口16aは、反応器10の上蓋12への合わせ面からの長さL2(L2>L1)の位置で、反応器10の内部に開口する。また、亜鉛ガス供給口18aは、反応器10の上蓋12への合わせ面からの長さL3(L3<L2)の位置で、反応器10の内部に開口する。つまり、不活性ガス供給口14aの開口位置(下端位置)は、四塩化珪素ガス供給口16aの開口位置(典型的には中心位置)よりも、上方にある。また、亜鉛ガス供給口18aの開口位置(典型的には中心位置)は、四塩化珪素ガス供給口16aの開口位置よりも、上方にあり、不活性ガス供給口14aの開口位置よりも、下方にある(L1<L3<L2)。
【0049】
反応器10の縦壁に設けられた挿通孔10aには、図示を省略する排気ガス処理装置に連絡して典型的には石英製である排気管20が挿通される。かかる排気管20は、反応器10の挿通孔10aで溶着され、反応器10と一体構成されることが耐久上好ましい。また、排気管20の反応器10側の端部は、反応器10内で開口する排気導入口20aを有する。
【0050】
また、反応器10の縦壁は、その外部から上方加熱器22で囲われる。かかる上方加熱器22は、中心軸Cと同軸な典型的には円筒状の電気炉であり、鉛直下方に向かって、第
1加熱部22a、第2加熱部22b及び第3加熱部22cを順次有し、第3加熱部22cには、排気管20が貫通する貫通孔22dが設けられる。
【0051】
更に、反応器10には、その内壁に沿って、中心軸Cと同軸で延在する典型的には円筒状の内管26が挿入される。かかる内管26は、典型的には石英製であって、反応器10に対して装脱自在であり、内管26の内壁面が、多結晶シリコンが析出する析出領域Sとなる。
【0052】
具体的には、内管26の上端26aは、開放端であって反応器10の上蓋12への合わせ面からの長さL4の位置にあり、不活性ガス供給管14の不活性ガス供給口14aの開口位置は、内管26の上端26aよりも上方にある一方で、四塩化珪素ガス供給管16の四塩化珪素ガス供給口16a、及び四塩化珪素ガス供給口16aの開口位置よりも上方にある亜鉛ガス供給管18の亜鉛ガス供給口18aの各開口位置は、内管26の上端26aよりも下方にある(L1<L4<L3<L2)。
【0053】
このように、四塩化珪素ガス供給管16の四塩化珪素ガス供給口16aの開口位置及び亜鉛ガス供給管18の亜鉛ガス供給口18aの開口位置が、内管26の上端26aよりも下方になるように設定したのは、上蓋12の中央に亜鉛ガス供給管18を挿通して反応器10内を延在させる構成を採用したことで、内管26の縦壁に挿通孔を設けることなく簡便な構成で亜鉛ガス供給口18aを下方に配置することが可能となったことのみならず、四塩化珪素ガスに加えて亜鉛ガスもが内管26の内部で吐出されることにより、反応器10の縦内壁と内管26の縦外壁との隙間でかかるガスが不要に拡散して侵入してしまう現象を確実に抑制して、内管26の内壁面に析出領域Sが確実に画成できることを考慮したためである。
【0054】
また、内管26は、その下方端が底板30に連なるため排気管20を超えて下方に延在するから、不要に排気管20の排気導入口20aを塞がないように、反応器10の挿通孔10aに対応する位置に挿通孔26bを有している。つまり、排気管20は、反応器10の縦壁に設けられた挿通孔10a及び内管26の縦壁に設けられ挿通孔26bに挿通されて固定される。
【0055】
また、内管26内には、排気導入口20aに対応した挿通孔26bよりも下方で、内管26の内壁面及び底板30の上面の間を延在して下方に向かって縮径すると共にそれらに固設された漏斗状のガイド部材32が配置される。かかるガイド部材32の下端部における内壁面は、底板30に形成された貫通孔30aに連なる。かかるガイド部材32を設けることにより、剥離機構24によって剥離されて自重で落下する多結晶シリコンを、スムースに詳細は後述する下方に配置された上方バルブ装置40に導くことが可能となると共に、かかる上方バルブ装置40の下方加熱器100のサイズを不要に増大させずに小型化できることになる。
【0056】
また、内管26は、上方加熱器22における第2加熱部22b及び第3加熱部22cにより、1000℃以上1100℃以下の温度のような高温に加熱されて維持されるため、その外壁面が反応器10の内壁面と接していると、互いに固着して取り外せなくなる可能性があることを考慮して、所定の間隙を介して反応器10に対して並置されている。なお、かかる間隙を安定的に維持するには、典型的には石英製のスペーサを設置することも好ましい。
【0057】
より詳しくは、上方加熱器22において、第1加熱部22aは、シリコンが析出する析出温度を超える温度(例えば、1200℃)を呈するように加熱して維持可能な加熱部であり、不活性ガス供給口14aを有する不活性ガス供給管14、四塩化珪素ガス供給口1
6aを有する四塩化珪素ガス供給管16及び亜鉛ガス供給口18aを有する亜鉛ガス供給管18が配された反応器10の縦壁、それに対応する内管26の縦壁及びその内部を囲って、かかる領域をシリコンが析出する析出温度を超える温度に加熱して維持する。
【0058】
ここで、シリコンが析出する析出温度の範囲としては、950℃以上1100℃以下の範囲が好適な温度範囲として評価できる。というのは、反応器10の縦壁、内管26の縦壁及びその内部の温度が950℃未満であると、四塩化珪素が亜鉛で還元される還元反応の反応速度が遅くなってしまう一方で、反応器10の縦壁、内管26の縦壁及びその内部の温度が1100℃を超えると、シリコンが固体で存在するよりも四塩化珪素という化合物の気体として存在することが安定なためかかる還元反応自体が起こらないと考えられるからである。また、亜鉛の沸点は910℃であるので、かかるシリコンが析出する析出温度の範囲自体は、亜鉛の沸点を超えた温度範囲である。
【0059】
また、第2加熱部22b及びその鉛直下方に連続的に設けられた第3加熱部22cは、シリコンの析出温度範囲にある温度を呈するように加熱して維持可能な加熱部であり、不活性ガス供給管14、四塩化珪素ガス供給管16及び亜鉛ガス供給管18が配されない反応器10の縦壁、それに対応する内管26の縦壁及びその内部を上下に連続して覆って、かかる領域をシリコンが析出する析出温度に加熱して維持する。
【0060】
ここで、第2加熱部22bは、第1加熱部22aが加熱する部分よりも下方において、シリコンが析出する析出温度の範囲内である温度(例えば、1100℃)で反応器10の縦壁、内管26の縦壁及びその内部を加熱可能な加熱部である。また、第3加熱部22cは、第2加熱部22bが加熱する部分よりも下方において、シリコンが析出する析出温度の範囲内であるが第2加熱部22bの加熱温度よりは低い温度(例えば1000℃)で反応器10の縦壁、内管26の縦壁及びその内部を加熱可能な加熱部である。
【0061】
かかる第2加熱部22bは、第1加熱部22aの加熱温度と第3加熱部22cの加熱温度とをつなぐ中間の加熱温度を呈するものであるが、必要に応じて省略可能であり、いずれにせよ、四塩化珪素ガス供給口16aを有する四塩化珪素ガス供給管16及び亜鉛ガス供給口18aを有する亜鉛ガス供給管18が配される部分において反応器10の縦壁、それに対応する内管26の縦壁及びその内部をシリコンが析出する析出温度を超える温度で加熱する第1加熱部22aの鉛直下方において、かかる四塩化珪素ガス供給管16及び亜鉛ガス供給管18が配されない部分における反応器10の縦壁、それに対応する内管26の縦壁及びその内部をシリコンが析出する析出温度範囲で加熱するような加熱部を設ければよい。なお、第2加熱部22bは、第1加熱部22aの加熱温度と第3加熱部22cの加熱温度との差が過大にならないように調整する機能もあり、内管26の縦壁等の温度変化が過大になることを抑制できる。
【0062】
なお、上方加熱器22における第1加熱部22a、第2加熱部22b及び第3加熱部22cの加熱温度の全ては、いずれも亜鉛の沸点である910℃を超えていることになる。
【0063】
さて、剥離機構24は、反応器10に装着された内管26の内壁面における析出領域Sに堆積した多結晶シリコンを剥離して自重で下方に落下させる機構であり、上蓋12の各挿通孔12cに、その導入管24aが挿通されて固定される。
【0064】
より詳しくは、剥離機構24は、各挿通孔12cに固定された導入管24aに上下移動自在に挿通されて、中心軸Cと平行に延在する典型的には石英製の棒部材24bを備える。かかる棒部材24bは、反応器10内に侵入して内管26の内壁面の析出領域Sに析出した多結晶シリコンの層には干渉するが、内管26の内壁面自体には不要に干渉することがないように、内管26の内壁面に対して所定の間隔でもって離間しながら平行に延在し
て対向する。棒部材24bの形状は、内管26が円筒状の場合には典型的には円柱状であり、内管26が角筒状の場合には典型的には角柱状である。
【0065】
更に、剥離機構24は、導入管24aの上端部と棒部材24bの上端部であるフランジ部との間に介装されて棒部材24bが挿通される内部領域を封ずると共に所定のバネ定数を有した弾性部材である蛇腹状の伸縮管24cと、棒部材24bの上端部であるフランジ部上に載置された錘24dと、錘24dに連絡したアクチュエータ24eと、を備える。伸縮管24cは、初期状態において、アクチュエータ24eが錘24dを最下位で係止することにより錘24dの荷重を受けて所定長さほど縮んだ圧縮状態に設定されていてもよいし、アクチュエータ24eが錘24dを最上位で係止することにより錘24dの荷重を実質受けないような実質的に自然長を呈する非圧縮状態に設定されていてもよい。なお、伸縮管24cの下端部を上蓋12の上面に直接当接する場合には、導入管24aは、省略可能である。
【0066】
かかる剥離機構24では、伸縮管24cが初期状態において圧縮状態に設定されている場合には、棒部材24bは、対応して最下位の位置にあるが、アクチュエータ24eを作動して錘24dの係止を解いて上方に引っ張り上げて、圧縮状態の伸縮管24cを伸ばすことにより、棒部材24bは、伸縮管24cの伸張力を受けながらアクチュエータ24eの引き上げ力により上方に移動して最上位の位置まで移動することができる。そして、棒部材24bが最上位の位置まで移動したならば、アクチュエータ24eで錘24dを係止して、棒部材24bを最上位の位置に維持することになる。もちろん、棒部材24bが最上位の位置まで移動した際に、必要に応じて、アクチュエータ24eで錘24dを係止しない状態に維持してもよく、かかる場合には、伸縮管24cが錘24dの荷重を受けて縮むことにより、棒部材24bは、下方に移動して最下位の位置まで移動することができ、その後必要に応じて、棒部材24bは、このような上下移動の動作を繰り返すことが可能である。
【0067】
一方で、伸縮管24cが初期状態において非圧縮状態に設定されている場合には、棒部材24bは、対応して最上位の位置にあるが、アクチュエータ24eを作動して錘24dの係止を解いて錘24dの荷重を伸縮管24cに印加して縮めることにより、棒部材24bは、伸縮管24cの圧縮反力を受けながら錘24dの荷重により下方に移動して最下位の位置まで移動することができる。そして、棒部材24bが最下位の位置まで移動したならば、アクチュエータ24eで錘24dを係止して、棒部材24bを最下位の位置に維持することになる。もちろん、棒部材24bが最下位の位置まで移動した際に、必要に応じて、アクチュエータ24eで錘24dを係止しないで上方に引っ張り上げてもよく、かかる場合には、伸縮管24cが錘24dの荷重を受けないで伸びることにより、棒部材24bは、上方に移動して最上位の位置まで移動することができ、その後必要に応じて、棒部材24bは、このような上下移動の動作を繰り返すことが可能である。
【0068】
ここで、内管26の内壁面の析出領域Sに多結晶シリコンが析出している場合には、棒部材24bが、かかる上下移動を行うことにより、その下方の先端や析出領域Sに対向する側面が、析出領域Sに析出した典型的には針状結晶から成る多結晶シリコンに機械的に当たって、その衝撃で針状の多結晶シリコンを、析出領域Sから、つまり内管26の内壁面から折って剥離させて反応器10の下方に自重で落下させることができる。
【0069】
つまり、棒部材24bは、それを上下移動することによって、シリコン析出領域Sに析出した多結晶シリコンを剥離して反応器10の下方に落下させることが必要なものであるから、棒部材24bの上下方向の移動範囲としては、少なくとも、その下方の先端が、シリコン析出領域Sの上端に対してより鉛直上方の位置とより鉛直下方の位置との間の位置をとりえるような移動範囲が必要である。また、より確実にシリコン析出領域Sに析出し
た多結晶シリコンを剥離するためには、棒部材24bの上下方向の移動範囲としては、棒部材24bの下方の先端が、シリコン析出領域Sの下端よりも鉛直下方となる位置に達するような移動範囲を確保することがより好ましい。
【0070】
なお、棒部材24bを上下に移動するための装置として、伸縮管24c、錘24d及びアクチュエータ24eから成るものを示したが、もちろんこれに限定されるものではなく、より高価なものとはなるがエアーシリンダー等の装置を用いてもかまわない。
【0071】
更に、このように内管26の内壁面の析出領域Sに堆積した多結晶シリコンが剥離されて自重で下方に落下することになるので、反応器10の下方端に固設された底板30の下方には、順次、上方バルブ装置40、連絡管102、下方バルブ装置104及びシリコン回収槽106が接続する。
【0072】
具体的には、上方バルブ装置40は、高温用のバルブ装置であり、反応器10における多結晶シリコンの生成に関連し底板30の貫通孔30aを介して下方に落下する融体状や固体状の関連物質が、反応器10からシリコン回収槽106に向かって拡散して不要に送られることを防止するために設けられており、典型的には石英製の外管50と、外管50内に配置される典型的には石英製の内管60と、外管50の周囲に配された下方加熱器100と、を有する。
【0073】
ここで、反応器10における多結晶シリコンの生成に関連する関連物質としては、製造の目的物であるシリコン以外の反応副生成物に加えて反応用の原料が挙げられる。例えば、四塩化珪素と亜鉛との還元反応でシリコンを生成する場合においては、かかる関連物質には、製造の目的物であるシリコン以外の反応副生成物である塩化亜鉛に加えて、いずれも未反応の原料である四塩化珪素及び亜鉛が含まれる。
【0074】
詳しくは、外管50は、それぞれが中心軸Cと同軸で鉛直方向に順に延在する典型的には円筒状の上方縦外管52及び下方縦外管54と、中心軸Cと直交する中心軸CL方向に延在する典型的には円筒状の横外管56と、を有する。
【0075】
上方縦外管52は、上端フランジ52a及び下端52bを有して、上端フランジ52aが底板30に対してその下方から取り付けられると共に、上方縦外管52の内部空間は、底板30に形成された貫通孔30aを介して反応器10の内部空間に連通される。また、下方縦外管54は、下端フランジ54a及び上端54bを有して、下端フランジ54aにはその下方から連絡管102が取り付けられると共に、下方縦外管54の内部空間は、上方縦外管52の内部空間に連通自在である。
【0076】
横外管56は、その一端に設けられたフランジ56a、かかる一端に対向する他端に設けられた拡径部56b及びそれらの間で横外管56の壁部を貫通して互いに対向するように形成された一対の挿通孔56c、56dを有する。上方の挿通孔56cには、上方縦外管52の下端52bが挿入されて溶着される一方で、下方の挿通孔56dには、下方縦外管54の上端54bが挿入されて溶着される。なお、このように横外管56に一対の挿通孔56c、56dを形成する代わりに、上方縦外管52及び下方縦外管54を1つの縦外管としながら横外管56を2つに分割し、1つの縦外管の一対の挿通孔を設けて、それらに対応して2つの横外管の端部を挿入して溶着してもかまわない。
【0077】
内管60は、中心軸CLを回転軸として回転自在であると共に、横外管56内で上方縦外管52内及び下方縦外管54内に露出しないように配置されて典型的には円筒状の内管本体部62と、内管本体部62に連なると共に横外管56内で上方縦外管52内及び下方縦外管54内に露出するように配置されて延在するバルブ64と、を有する。
【0078】
かかる内管本体部62は、バルブ64と反対側で内管本体部62を塞ぐ他端部62aにおいて、内管本体部62の内部空間を外部に連通させる連通孔62bを有する。また、かかる他端部62aには、図示を省略するモータが接続されて、かかるモータを駆動制御することにより、内管60を中心軸CLを回転軸として回転自在とする。
【0079】
バルブ64は、内管本体部62に連なって内管本体部62を他端部62aの反対側で塞ぐ第1の壁部64aと、横外管56におけるフランジ56a側の内部空間に対応して配置される第2の壁部64bと、第1の壁部64a及び第2の壁部64bの間を延在する典型的には平板状のバルブ本体部64cと、を有する。かかるバルブ64は、中心軸CLを回転軸として内管60、つまり内管本体部62を回転させることにより、中心軸CLを回転軸として回転される。
【0080】
つまり、バルブ本体部64cがx−y平面に平行な水平状態にあるときには、上方縦外管52及び下方縦外管54を閉じてそれらの内部空間を実質的に非連通状態として、反応器10で生成され剥離機構24で剥離されて落下し底板30の貫通孔30aを介して落下してきた多結晶シリコンを、バルブ本体部64c上に堆積自在とする。一方で、バルブ本体部64cが水平状態から回転されると、対応して上方縦外管52及び下方縦外管54を開いてそれらの内部空間を連通状態として、バルブ本体部64c上に堆積した多結晶シリコンを、更に下方の連絡管102、ひいてはシリコン回収槽106に向かって落下自在とする。
【0081】
また、このように内管本体部62及びバルブ64を有する内管60を、上方縦外管52、下方縦外管54及び横外管56に接触することなく中心軸CLを回転軸として回転自在とするように、内管本体部62の外面部、並びにバルブ64の第1の壁部64aの外端部及びバルブ64の第2の壁部64bの外端部と、横外管56の対応する内面部と、の間には、間隙部が存在する。
【0082】
ここで、横外管56の拡径部56bの内面部及び対応する内管本体部62の外面部の間には、グランドシール70が介装される。かかるグランドシール70により、内管本体部62の外面部及びバルブ64の第1の壁部64aの外端部及び横外管56の内面部の間に設定される間隙部を維持してかかる間隙部の端部を封止しながら、内管60が中心軸CLを回転軸として回転自在とされる。また、グランドシール70は、横外管56の拡径部56bに装着される押さえ部材72により抜け止めされる。
【0083】
また、横外管56の壁部を貫通して形成された挿通孔56cには、不活性ガス供給管74が挿通されて、図示を省略する不活性ガス供給源から、内管本体部62の外面部及びバルブ64の第1の壁部64aの外端部と対応する横外管56の内面部との間に設定される間隙部に対して不活性ガスを供給自在である。
【0084】
一方で、横外管56のフランジ56aには典型的には石英製の側板76が固設されて、拡径部56bと反対側において横外管56の内部空間の端部が閉じられる。側板76を貫通して形成された挿通孔76aには、不活性ガス供給管78が挿通されて、図示を省略する不活性ガス供給源から、かかる横外管56の内部空間及びバルブ64の第2の壁部64bの外端部と対応する横外管56の内面部との間に設定される間隙部に対して不活性ガスを供給自在である。
【0085】
このように、不活性ガス供給源から不活性ガス供給管74及び78に不活性ガスを供給するのは、内管本体部62の外面部及びバルブ64の第1の壁部64aの外端部と対応する横外管56の内面部との間に設定される間隙部や、バルブ64の第2の壁部64bの外
端部と対応する横外管56の内面部との間に設定される間隙部に対して、所定の圧力の不活性ガスを供給して、かかる間隙部に、反応器10で生成された多結晶シリコンやそれに関連する関連物質が、下方に落下しながら不要に侵入することを防止して、固化した関連物質がバルブ64に付着してバルブ64が固着することを防止するためである。
【0086】
また、かかる不活性ガス供給源や不活性ガス供給管74及び78は、不活性ガス供給機構を成すものであり、不活性ガス供給源は、不活性ガス供給管74及び78に個別に設けてもよいし共通に設けてもよい。
【0087】
また、下方加熱器100は、反応器10における多結晶シリコンの生成に関連する関連物質が、融体状や固体状の相状態で、底板30の貫通孔30a及び上方縦外管52を経て、不要に反応器10からシリコン回収槽106に向かって拡散して送られてしまうことを防止すべく、所定の加熱領域を所定の温度範囲で加熱してかかる関連物質を気体の状態に維持するために設けられている。
【0088】
具体的には、下方加熱器100が加熱する加熱領域は、反応器10に取り付けられた底板30からバルブ64に至る上方縦外管52及びバルブ64を含む領域である。下方加熱器100は、かかる加熱領域を反応器10における多結晶シリコンの生成に関連する関連物質の沸点以上に加熱自在なように、上方縦外管52及びバルブ本体部64cを囲って、上方縦外管52、下方縦外管54及び横外管56の一部の周囲に配置される。また、反応器10における多結晶シリコンの生成に関連する関連物質は、反応器10内のガイド部材32の内部空間を通過して上方縦外管52に至るのであるから、下方加熱器100は、ガイド部材32と上方縦外管52との間で関連物質が加熱されない領域が生じないように、上方加熱器22の第3加熱部22cに連続して第3加熱部22cの下方に配置される。なお、下方加熱器100には、上方縦外管52、下方縦外管54、横外管56及び不活性ガス供給管78との機械的な干渉を防ぐために、適宜貫通孔等が形成される。
【0089】
また、下方加熱器100の加熱温度の範囲は、反応器10における多結晶シリコンの生成に関連する関連物質が底板30の貫通孔30aを経て上方縦外管52内に拡散して流入してきた場合に、かかる関連物質が融体状や固体状の相状態にならずに気化させる温度範囲であって、生成されたシリコンを不要に溶融しない温度範囲に設定することが必要である。
【0090】
つまり、下方加熱器100の加熱温度の範囲は、かかる関連物質が呈する沸点のうちで最も高い沸点の温度以上でシリコンの融点の温度未満の範囲に設定されることが必要である。例えば、四塩化珪素と亜鉛との還元反応でシリコンを生成する場合においては、四塩化珪素の沸点は59℃、塩化亜鉛の沸点は732℃及び亜鉛の沸点は910℃であるから、下方加熱器100の加熱温度は、これらの中で最も高い沸点の温度である910℃以上でシリコンの融点の温度である1410℃以下の範囲に設定すればよい。現実的には、底板30からバルブ64に至る上方縦外管52及びバルブ64を含む加熱領域をムラ無く均一に加熱すれば足りることを考慮すれば、下方加熱器100の加熱温度は、950℃程度であればよい。
【0091】
また、横外管56の拡径部56bの内面部及び対応する内管本体部62の外面部の間に介装されるグランドシール70は、内管本体部62が回転する際にその外面部がグランドシール70の外面部に摺接するものであるから、すべり性が良好でかつ耐熱性もある材料である典型的にはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂製であるが、その耐熱性には限界がある。そこで、かかるグランドシール70は、下方加熱器100の加熱領域の範囲外に離間されて設置されて、その常用耐熱温度以下の温度雰囲気下に置かれている。
【0092】
かかる上方バルブ装置40における下方縦外管54の下端フランジ54aには、その下方から連絡管102が取り付けられて、連絡管102は、上方バルブ装置40を介して反応器10の内部と連通する。また、かかる連絡管102には、下方バルブ装置104が接続する。
【0093】
かかる下方バルブ装置104は、反応器10の内部の環境と外部の環境とをシリコン回収槽106により近い位置で遮断自在なバルブ104aを備える。上方バルブ装置40とシリコン回収槽106との連通を遮断するようにバルブ104aを閉じた状態では、上方バルブ装置40のバルブ64を回転して開いた場合に、バルブ64上に堆積した後に自重により落下してくる多結晶シリコンを、バルブ104a上に堆積自在である。一方で、上方バルブ装置40とシリコン回収槽106と連通させるようにバルブ104aを開いた状態では、バルブ104a上に堆積した多結晶シリコンを、シリコン回収槽106に自重で落下させて回収自在である。
【0094】
また、かかるシリコン回収槽106は、上方加熱器22の加熱領域外及び下方加熱器100の加熱領域外において常温雰囲気中に設置されており、シリコン製造装置1に対して装脱自在である。
【0095】
ついで、以上の構成のシリコン製造装置1を用いて、多結晶のシリコンを製造するシリコンの製造方法につき、詳細に説明する。なお、かかるシリコンの製造方法の一連の工程は、各種センサからの検出データを参照しながら各種データベース等を有するコントローラで自動制御してもよいし、一部又は全部を手動で行ってもよい。
【0096】
まず、上方バルブ装置40のバルブ64及び下方バルブ装置104のバルブ104aを閉じて、反応器10の内部と外部とを遮断した状態で、反応器10の内部に、不活性ガス供給口14aから不活性ガスを所定時間供給して、反応器10の内部の反応雰囲気を整える。なお、この際、必要に応じて、四塩化珪素ガス供給口16a及び亜鉛ガス供給口18aからも、不活性ガスを所定時間供給してもかまわない。
【0097】
次に、上方加熱器22における第1加熱部22aにより、不活性ガス供給口14aを有する不活性ガス供給管14、四塩化珪素ガス供給口16aを有する四塩化珪素ガス供給管16及び亜鉛ガス供給口18aを有する亜鉛ガス供給管18が配された反応器10の縦壁、それに対応する内管26の縦壁及びその内部を加熱し、かかる部分をシリコンの析出温度を超える温度に加熱して維持する。同時に、上方加熱器22における第2加熱部22b及び第3加熱部22cにより、かかる不活性ガス供給管14、四塩化珪素ガス供給管16及び亜鉛ガス供給管18が配されない反応器10の縦壁、それに対応する内管26の縦壁及びその内部を加熱し、かかる部分をシリコンの析出温度範囲に加熱して維持する。
【0098】
同時に、下方加熱器100により、反応器10に取り付けられた底板30からバルブ64に至る上方縦外管52及びバルブ64を含む加熱領域を、反応器10における多結晶シリコンの生成に関連する関連物質が呈する沸点のうちで最も高い沸点の温度以上でシリコンの融点の温度未満の温度範囲で加熱して維持する。
【0099】
次に、かかる温度条件を維持して、還元反応工程を実施する。具体的には、反応器10の内部に、四塩化珪素ガス供給口16aから四塩化珪素ガスを供給し、かつ亜鉛ガス供給口18aから亜鉛ガスを供給する。この際、不活性ガス供給管74及び78から、内管本体部62の外面部及びバルブ64の第1の壁部64aの外端部と対応する横外管56の内面部との間に設定される間隙部や、バルブ64の第2の壁部64bの外端部と対応する横外管56の内面部との間に設定される間隙部に対し、対応して不活性ガスを供給する。な
お、この際、必要に応じて、不活性ガス供給口14aから不活性ガスを供給していてもかまわない。
【0100】
すると、反応器10の内部で、四塩化珪素が亜鉛で還元される還元反応が生じ得ることになる。しかし、ここで、四塩化珪素ガスは、その比重が亜鉛ガスの比重の2.6倍程度である相対的に重いガスなので、四塩化珪素ガス供給口16aの開口位置よりも上方にある亜鉛ガス供給口18aまでは実質拡散できず、反応器10の内部における四塩化珪素ガス供給口16aの近傍かそれよりも下方領域で、還元反応が生じて、固体のシリコンと塩化亜鉛ガスとが生成することになる。
【0101】
更に、ここで、不活性ガス供給管14、四塩化珪素ガス供給管16及び亜鉛ガス供給管18が配されない反応器10の縦壁、それに対応する内管26の縦壁及びその内部は、第2加熱部22b及び第3加熱部22cにより、シリコンの析出温度範囲の温度を呈するように加熱され維持されているため、還元反応により生成されたシリコンは、かかる内管26の縦壁の下部、つまり内管26の内壁面における四塩化珪素ガス供給口16aよりも下方であって排気導入口20aよりも上方である領域である析出領域Sに針状結晶として析出していく。この際、四塩化珪素ガス供給口16aや亜鉛ガス供給口18aには、シリコンが析出することはなく、かかる供給口がシリコンで閉塞されることもない。
【0102】
更にこのように、内管26の内壁面の下部における析出領域Sでは、針状結晶のシリコンが順次析出されていくと共に、その析出されたシリコンを種結晶としてシリコンが結晶成長していくため、十分な厚みの多結晶シリコンが堆積されることになる。ここでは、このような析出のプロセス及びそれに関連する結晶成長のプロセスを含めて、析出と呼ぶことにする。
【0103】
次に、かかる還元反応を所定時間継続した後、内管26の内壁面の下部における析出領域Sに十分な厚みの多結晶シリコンが堆積されたならば、反応の原料である四塩化珪素ガスと亜鉛ガスとの供給を停止する。そして、不活性ガス供給管14の不活性ガス供給口14a等から不活性ガスを反応器10の内部に供給した状態で、反応器10の内部の雰囲気を不活性ガスで置換する。
【0104】
次に、剥離機構24のアクチュエータ24eを作動し、錘24dの係止を解いて伸縮管24cを伸張又は圧縮することにより、棒部材24bを対応して上下移動させると、その先端や側面が内管26の内壁面の析出領域Sに堆積した多結晶シリコンに当たり、その衝撃で針状の多結晶シリコンが折れることにより内管26の内壁面から機械的に剥離され、その剥離物が自重で下方に落下する。この際、上方バルブ装置40のバルブ64は閉じられているから、落下してきたシリコンはバルブ64上に堆積していく。
【0105】
この際、下方加熱器100により、反応器10に取り付けられた底板30からバルブ64に至る上方縦外管52及びバルブ64を含む加熱領域を、反応器10における多結晶シリコンの生成に関連する関連物質が呈する沸点のうちで最も高い沸点の温度以上でシリコンの融点の温度未満の温度範囲で加熱して維持しているから、かかる関連物質が溶融された状態や固化された状態で、バルブ64上に堆積することが低減されている。
【0106】
また、不活性ガス供給管74及び78から、内管本体部62の外面部及びバルブ64の第1の壁部64aの外端部と対応する横外管56の内面部との間に設定される間隙部や、バルブ64の第2の壁部64bの外端部と対応する横外管56の内面部との間に設定される間隙部に対し、対応して不活性ガスを供給していることから、反応器10で生成された多結晶シリコンやそれに関連する関連物質が、かかる間隙部に不要に侵入することが防止されて、固化した関連物質がバルブ64に付着してバルブ64が固着することが防止され
ている。
【0107】
そして、このように棒部材24bを上下移動する剥離工程が終了したならば、上方バルブ装置40のバルブ64を開いて、バルブ64上に堆積した多結晶シリコンを、自重で下方バルブ装置104のバルブ104a上に堆積させた後で、かかるバルブ104aを開いて、バルブ104a上に堆積した多結晶シリコンを、自重でシリコン回収槽106に落下させる。
【0108】
その後、反応器10の内部を外部から遮断すべくバルブ64及び104aを再び閉じる一方で、シリコン回収槽106内の多結晶シリコンを取り出して回収して、今回のシリコンの製造方法の一連の工程は終了し、必要に応じて連続的に、次回のシリコンの製造方法の一連の工程に入る。ここで、シリコン回収槽106は、シリコン製造装置1に対して装脱自在であるので、シリコンが落下し終わったならば、バルブ104aを閉じた後に、シリコン回収槽106をシリコン製造装置1から取り外して所定の保管場所に移動して、シリコン回収槽106の内部の多結晶シリコンを取り出すことも可能となる。
【0109】
ここで、かかるシリコンの製造方法を一連の工程を何回か繰り返すと、内管26の内壁面が劣化してくるため、繰り返し回数が規準回数を超えた内管26については、反応器10から取り外して、新たな内管26に交換することになる。
【0110】
さて、以上の構成のシリコン製造装置1における上方バルブ装置40に関しては、種々の変形例が考えられる。そこで、かかる変形例の1つとして、上方バルブ装置140を例に挙げて、図3をも参照しながら、以下、詳細に説明する。
【0111】
図3において、図3(a)は、本変形例の上方バルブ装置の模式的縦断面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図である。
【0112】
本変形例における上方バルブ装置140は、前述した上方バルブ装置40に対して、外管150や内管160等の構成が異なっていることが主たる相違点であるため、以下、かかる相違点に着目して説明することとし、同様の構成については同一の符号を付しながら、適宜説明を簡略化又は省略する。
【0113】
図3(a)及び図3(b)に示すように、本変形例における上方バルブ装置140においては、外管150が、それぞれが中心軸Cと同軸で鉛直方向に順に延在する典型的には円筒状の上方縦外管152及び下方縦外管154と、中心軸Cと直交する中心軸CL方向に延在する典型的には円筒状の横外管156と、を有することは、前述した上方バルブ装置40と同様であるが、横外管156は、上方縦外管152及び下方縦外管154の周辺で、横外管156が拡径した拡径部156eを有しており、かかる拡径部156eにおいて、横外管156の壁部を貫通して互いに対向するように一対の挿通孔156c、156dが形成される。
【0114】
このように横外管156が拡径部156eを有する構成であることに対応して、上方縦外管152及び下方縦外管154は、いずれも長さが短縮されており、上方縦外管152の下端152bは、横外管156の拡径部156eにおける上方の挿通孔156cに挿入されて溶着される。一方で、下方縦外管154の上端154bは、横外管156の拡径部156eにおける下方の挿通孔156dに挿入されて溶着される。ここで、上方縦外管152及び下方縦外管154は、下方加熱器100が小型化されているために相対的に小径であるから、それぞれが小径の上方縦外管152及び下方縦外管154を、同様に小径の横管156に溶着することは溶着工程に正確性が要求される等の煩雑さを伴うが、このように横外管156に拡径部156eを設けて、かかる拡径部156eに対して上方縦外管
152及び下方縦外管154をそれぞれ溶着することとすれば、溶着工程が簡便化されると共に、得られる溶着構造全体の強度も向上する。
【0115】
また、このように横外管156が拡径部156eを有する構成であることに対応して、内管本体部162も拡径部162eを有すると共にフランジ156aも大径化され、かつバルブ164における第1の壁部164a及び第2の壁部164bもそれぞれ大径化されている。かかる横外管156のフランジ156aには、対応して大径化された側板176が固設される。
【0116】
更に、本変形例では、不活性ガス供給機構が、図示を省略する不活性ガス供給源から不活性ガス供給管74及び78を介して、不活性ガスを均質的に、内管本体部162の外面部及びバルブ164の第1の壁部164aの外端部と対応する横外管156の内面部との間に設定される間隙部や、バルブ164の第2の壁部164bの外端部と対応する横外管156の内面部との間に設定される間隙部に対して供給する。
【0117】
具体的には、不活性ガス供給管74は、典型的には石英製の環状流路部材180に形成された挿通孔180aに挿通されて固定されると共に、かかる環状流路部材180は、横外管156の壁部をその周方向の全周にわたって貫通する挿通孔156cに挿通されて固定される。かかる構成により、不活性ガス供給管74及び環状流路部材180を順次介して、内管本体部162の外面部及びバルブ164の第1の壁部164aの外端部と対応する横外管156の内面部との間に設定される間隙部に対して不活性ガスを均質的に供給することができて、反応器10で生成されて下方に落下する多結晶シリコンやそれに関連する関連物質が、かかる間隙部に不要に侵入することをより確実に防止する。
【0118】
また、不活性ガス供給管78は、典型的には石英製のチャンバ管190に形成された挿通孔190aに挿通されて固定されると共に、かかるチャンバ管190は、横外管156のフランジ156aに固設された側板176に固設される。かかる構成により、不活性ガス供給管78、チャンバ管190、及び側板176に形成された挿通孔176aを順次介して、バルブ164の第2の壁部164bの外端部と対応する横外管156の内面部との間に設定される間隙部に対して不活性ガスをより均質的に供給することができて、反応器10で生成されて下方に落下する多結晶シリコンやそれに関連する関連物質が、かかる間隙部に不要に侵入することをより確実に防止する。
【0119】
なお、かかる環状流路部材180及びチャンバ管190に関する構成は、前述した上方バルブ装置40に対して、適宜組み合わせて、又は選択的に適用自在である。
【0120】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態における高温用バルブ装置につき、更に図4をも参照して、詳細に説明する。
【0121】
図4は、本実施形態で用いたシリコン製造装置の模式的縦断面図である。
【0122】
本実施形態においては、第1の実施形態で説明した上方バルブ装置40やその変形例で説明した上方バルブ装置140が適用され得るシリコン製造装置2の細部構成が、第1の実施形態で説明したシリコン製造装置1のものと異なっていることが主たる相違点であるため、以下、かかる相違点に着目して説明することとし、同様の構成については同一の符号を付しながら、適宜説明を簡略化又は省略する。
【0123】
図4に示すように、本実施形態におけるシリコン製造装置2では、第1の実施形態で説明したシリコン製造装置1の剥離機構24が、ショックブローガス供給管124に置換さ
れた構成を有する。
【0124】
具体的には、反応器10の上蓋12に形成された複数個の12cのそれぞれには、第1の実施形態における剥離機構24の導入管24aに代えて、図示を省略する高圧の不活性ガス供給源に連絡して典型的には石英製である1本のショックブローガス供給管124が挿通されて固定される。かかるショックブローガス供給管124は、反応器10の内部に侵入して、中心軸Cと同軸で鉛直下方に延在すると共に、その鉛直方向の先端で開口するショックブローガス供給口124aを有する。
【0125】
ここで、ショックブローガス供給管124のショックブローガス供給口124aは、反応器10の上蓋12への合わせ面から長さL5の位置で開口する。かかるショックブローガス供給口124aの開口位置は、ショックブローガス供給口124aから反応器10の内管26の内壁面に画成される析出領域Sに対して高圧の不活性ガスを吐出する必要があるため、析出領域Sに近接しつつそれよりも上方に位置することが好ましく、そうすると典型的には、四塩化珪素ガス供給口16aの開口位置よりも下方にあり、かつ析出領域Sよりも上方に位置することが好ましい(L1<L4<L3<L2<L5)。
【0126】
また、ショックブローの条件としては、ショックブローガス供給口124aから吐出される不活性ガスの圧力及びブロー時間が挙げられる。かかる圧力は、低すぎると析出領域Sに析出したシリコンを十分に剥離することができず、一方で、高すぎると内管26の縦壁やショックブローガス供給管124が破損する傾向があるため、0.1MPa以上1.0MPa以下の範囲が好ましく、実用上は0.3MPa以上0.6MPa以下の範囲がより好ましい。ブロー時間としては、短すぎると析出領域Sに析出したシリコンを十分に剥離できず、一方で、長すぎるとショックブロー用の不活性ガスの導入量が多くなり、反応器10の温度が低下したり、剥離されたシリコンが排気ガスとともに排出され回収できなくなる傾向があるので、0.1秒以上3.0秒以下の範囲が好ましく、更に、かかるブロー時間のショックブローを複数回所定の間隔で周期的に繰り返してもよい。
【0127】
以上の構成のシリコン製造装置2を用いて多結晶のシリコンを製造するシリコンの製造方法においては、第1の実施形態と同様に、還元反応工程で、内管26の内壁面に画成される析出領域Sに多結晶シリコンを堆積させた後、剥離機構24を用いた剥離工程に代えて、ショックブローガス供給管124を用いたショックブロー工程で、析出領域Sの多結晶シリコンを剥離して、上方バルブ装置40のバルブ64及び下方バルブ装置104のバルブ104a上に順次堆積させ、このように堆積した多結晶シリコンを、自重でシリコン回収槽106に落下させて回収することになる。
【0128】
ここで、以上の構成のシリコン製造装置2に適用可能な上方バルブ装置としては、もちろん第1の実施形態における上方バルブ装置40に限らず、第1の実施形態の変形例における上方バルブ装置140であってもよい。
【0129】
また、第1の実施形態における上方バルブ装置40や、第1の実施形態の変形例における上方バルブ装置140は、第1の実施形態におけるシリコン製造装置1や第2の実施形態におけるシリコン製造装置2に対して適用することができるのみならず、反応器内でシリコンが生成されて、かかるシリコンがその副生物や原料と共に、シリコンの取り出し部に向かって下方に送られ得る構成のシリコン製造装置に対しては、例えば反応器が横型配置であったりシリコンの製造プロセスが異なっていても、好適に適用することができることはもちろんである。
【0130】
なお、以上の本実施形態においては、交換の利便性等を考慮して内管26を反応器10内に配設したが、反応器10自体を適宜交換することが可能な場合であれば、内管26を
省略して、反応器10の内壁面に直接的にシリコン析出領域Sを設定することも可能である。
【0131】
また、以上の各実施形態においては、亜鉛ガス供給口18aが四塩化珪素ガス供給口16aよりも上方に配置される構成について説明したが、これに限定されるものではなく、構成は煩雑にはなるが、ガスの吐出方向や流速等を制御してガスの拡散性等が調整できる場合には、亜鉛ガス供給口18aが四塩化珪素ガス供給口16aに対して同じ高さやより下方に配置されるような構成を採用することも可能である。
【0132】
また、以上の各実施形態において、上方加熱器22及び下方加熱器100は、加熱器全体の構成が大型化する傾向にはあるが、加熱器の機能上はそれらを一体化することも可能である。
【0133】
また、以上の各実施形態において、反応器、上蓋、底板、不活性ガス供給管、四塩化珪素ガス供給管、亜鉛ガス供給管、排気管、内管、棒部材、環状流路部材やチャンバ管を含む上方バルブ装置の各管状部材やバルブ、及びショックブローガス供給管の材質としては、950℃以上もの高温において、原料の四塩化珪素ガスや亜鉛ガス、副生する塩化亜鉛ガス等に耐える材質でなければならないので、石英、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられるが、析出したシリコン中への炭素や窒素の混入を避ける見地からは、石英、具体的には石英ガラスが最も好ましい。また、伸縮管の材質としては、特に限定されず、金属製や樹脂製が挙げられるが、耐熱性の点からは金属製であることが好ましい。
【0134】
また、以上の本実施形態において、不活性ガスとしては、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス、Rnガス等の希ガスや窒素ガス等が挙げられるが、析出したシリコン中への窒素の混入を避ける見地からは希ガスが好ましく、中でも低価格であるArガスが最も好ましい。
【0135】
さて、以下、以上の各実施形態に対応する各実験例及びその比較例について、詳細に説明する。
【0136】
(実験例1)
本実験例では、第1の実施形態における上方バルブ装置40を適用したシリコン製造装置1を用いて、多結晶シリコンを製造した。
【0137】
具体的には、シリコン製造装置1において、石英製の反応器10は、外径Dを226mm(肉厚は3mmで、内径は220mm)及び長さLを2330mmに設定し、石英製の内管26は、外径を206mm(肉厚は3mmで、内径は200mm)及び反応器10の上蓋12への合わせ面からの上端26aの長さL4を50mmに設定し、石英製の亜鉛ガス供給管18は、外径を42mm(肉厚は3mmで、内径は36mm)に設定し、亜鉛ガス供給管18の下端を塞いで縦壁のみに中心軸Cについて120°の等間隔になるように径16mmで3個設けた亜鉛ガス供給口18aの開口位置(開口の中心位置)は、反応器10の上蓋12への合わせ面からの長さL3が300mmになるように設定し、かつ、反応器10の下部に連絡する排気導入口20aを有する石英製の排気管20は、外径を56mm(肉厚は2mmで、内径は52mm)に設定した。
【0138】
また、石英製の不活性ガス供給管14及びその内部に配設される石英製の四塩化珪素ガス供給管16は、中心軸Cから85mmの距離で120度の均等な間隔で3個配設し、各剥離機構24の棒部材24bは、3個の不活性ガス供給管14を対応して挟んで中心軸Cから85mmの距離で120°の均等な間隔で3個配設した。
【0139】
ここで、各不活性ガス供給管14は、外径を16mm(肉厚は1mmで、内径は14mm)に設定し、不活性ガス供給口14aの開口位置(不活性ガス供給管14の反応器10内における端部位置)は、反応器10の上蓋12への合わせ面からの長さL1が10mmになるように設定し、各四塩化珪素ガス供給管16は、外径を9mm(肉厚は1mmで、内径は7mm)に設定し、四塩化珪素ガス供給管16の下端を塞いで縦壁のみに径4mmで内管26の内壁に対向するように1個設けた四塩化珪素ガス供給口16aの開口位置(開口の中心位置)は、反応器10の上蓋12への合わせ面からの長さL2が500mmになるように設定した。
【0140】
また、各剥離機構24については、棒部材24bは、石英製であって鉛直方向に延在する円柱状の棒部材として、その外径を9mm及び長さ1900mmに設定し、伸縮管24cは、金属製として、その自然長を100mm及びバネ定数を0.15kg/mmに設定し、錘24dは、鉄製として、その重量を3kgに設定した。かかる剥離機構24の初期状態としては、予め錘24dの荷重を伸縮管24cに印加して、棒部材24bを最下位に位置させておいた。
【0141】
以上の具体的構成において、反応器10の内部を外部から遮断するために、上方バルブ装置40のバルブ64及び下方バルブ装置104のバルブ104aを閉じた状態で、まず、不活性ガス供給管14の不活性ガス供給口14aより0.83SLMの流量のArガス、四塩化珪素ガス供給管16の四塩化珪素ガス供給口16aより1.00SLMの流量のArガス、及び亜鉛ガス供給管18の亜鉛ガス供給口18aより0.84SLMの流量のArガス(計2.67SLMの流量のArガス)を反応器10の内部に吐出した。
【0142】
次に、このようにArガスを反応器10の内部に供給している状態で、上方加熱器22を通電して、第1加熱部22aにより対応する反応器10の縦壁、内管26の縦壁及びその内部の領域が1200℃になるように昇温して維持し、第2加熱部22bにより対応する反応器10の縦壁、内管26の縦壁及びその内部の領域が1100℃になるように昇温して維持し、第3加熱部22cにより対応する反応器10の縦壁、内管26の縦壁及びその内部の領域が1000℃になるように昇温して維持した。
【0143】
同時に、下方加熱器100を通電して、反応器10に取り付けられた底板30から上方バルブ装置40のバルブ64に至る上方縦外管52及びバルブ64を含む領域が950℃になるように昇温して維持した。
【0144】
次に、このように上方加熱器22を通電して、第1加熱部22a、第2加熱部22b及び第3加熱部22cが、それぞれ対応する反応器10の縦壁、内管26の縦壁及びその内部の領域を加熱して維持すると共に、下方加熱器100を通電して、反応器10に取り付けられた底板30からバルブ64に至る上方縦外管52及びバルブ64を含む領域を加熱して維持した状態で、Arガスに加えて流量が10.00SLMの亜鉛ガスを混合した混合ガスを10.84SLMの流量で亜鉛ガス供給管18の亜鉛ガス供給口18aより反応器10の内部に吐出した。同時に、不活性ガス供給管14の不活性ガス供給口14aより0.83SLMの流量のArガスを反応器10の内部に吐出しながら、四塩化珪素ガス供給管16のガスをArガスから四塩化珪素ガスに切り替えて、四塩化珪素ガス供給口16aより5.00SLMの流量の四塩化珪素ガスを反応器10の内部に吐出して、120分の間、反応させた。
【0145】
この際、不活性ガス供給管74及び78から、内管本体部62の外面部及びバルブ64の第1の壁部64aの外端部と対応する横外管56の内面部との間に設定される間隙部や、バルブ64の第2の壁部64bの外端部と対応する横外管56の内面部との間に設定される間隙部に対し、対応して不活性ガスをそれぞれ3.5SLMの流量で供給した。
【0146】
次に、このように120分間反応させた後、上方加熱器22及び下方加熱器100のそれぞれの通電を維持した状態で、反応の原料である四塩化珪素ガス及び亜鉛ガスの供給を停止した。その後、再び、不活性ガス供給管14の不活性ガス供給口14aより200SLMの流量のArガス、四塩化珪素ガス供給管16の四塩化珪素ガス供給口16aより200SLMの流量のArガス、亜鉛ガス供給管18の亜鉛ガス供給口18aより200SLMの流量のArガスを、反応器10の内部にそれぞれ吐出して、反応器10の内部をArガスで5分間置換した。この際、不活性ガス供給管74及び78からは、Arガスを供給し続けている。
【0147】
次に、このようにArガスで置換した後、アクチュエータ24eで錘24dの係止を解いて引き上げると、伸縮管24cが約20mm伸びることによって、棒部材24bを鉛直上方に約20mm移動させた。その後、再びアクチュエータ24eで錘24dを押し下げてその荷重を伸縮管24cに印加し、伸縮管24cを約20mm縮ませて、棒部材24bを鉛直下方に約20mm下げた位置に復帰させておいた。
【0148】
そして、以上のような120分間の反応、5分間のArガスによる置換、及び棒の上下移動操作の一連の工程を合計2回繰り返した後で、反応器10の下方で連結する上方バルブ装置40のバルブ64を開けてバルブ64上に堆積した多結晶シリコンを、自重で下方バルブ装置104のバルブ104a上に落下させて堆積させた後で、下方バルブ装置104のバルブ104aを開けて、シリコン回収槽106にバルブ104a上の堆積物を落下させ、シリコン回収槽106の中の回収物を確認したところ、針状の多結晶シリコンが存在した。
【0149】
かかる針状の多結晶シリコンは、反応器10内の内管26の内壁面にシリコンが析出した後、棒部材24bの上下移動操作によって剥離されて上方バルブ装置40のバルブ64及び下方バルブ装置104のバルブ104a上に順次堆積したものが回収されたものと考えられる。
【0150】
また、かかる針状の多結晶シリコンの重量を計測したところ、789gであり、反応に供した四塩化珪素ガスの反応率は53%であった。さらに、シリコン回収槽106の中の回収物中には亜鉛及び塩化亜鉛も含まれていたが、その総重量は7gであり、多結晶シリコンの重量のわずか1%に過ぎなかった。これは、下方加熱器100により、反応器10に取り付けられた底板30からバルブ64に至る上方縦外管52及びバルブ64を含む加熱領域を、950℃の温度まで加熱して維持しているから、亜鉛及び塩化亜鉛が固化された状態で、バルブ64上に堆積することが低減されたためと考えられる。
【0151】
また、かかる針状の多結晶シリコンを光学顕微鏡で観察したところ、内管26の材料である無色透明の石英片は認められなかった。これは、剥離機構24の棒部材24bを上下移動して反応器10の内管26の内壁面に析出したシリコンを剥離することにより、回収された多結晶シリコン中への石英片の混入が防止できたためと考えられる。
【0152】
(実験例2)
本実験例では、第1の実施形態における上方バルブ装置40を適用したシリコン製造装置1において剥離機構24をショックブローガス供給管124に置き換えた構成である第2の実施形態のシリコン製造装置2を用いたこと以外は、実験例1と同様に多結晶シリコンを製造した。
【0153】
具体的には、ショックブローガス供給管は、3個の不活性ガス供給管14を対応して挟んで中心軸Cから85mmの距離で120°の均等な間隔で3個配設した。各ショックブ
ローガス供給管124は、外径を9mm(肉厚は1mmで、内径は7mm)に設定し、ショックブローガス供給口124aの開口位置(ショックブローガス供給管124の反応器10内における端部位置)は、反応器10の上蓋12への合わせ面からの長さが600mmになるように設定した。
【0154】
以上の具体的構成において、実験例と同様の各工程を行って、亜鉛と四塩化珪素とで120分間の反応を行った後、Arガスで5分間置換した。その後、ショックブローガス供給管124のショックブローガス供給口124aよりArガスを高圧で吐出して、ショックブローを行った。この際のショックブローの条件は、Arガスの圧力を0.4MPaとして1回のショックブロー時間を0.5秒に設定し、次のショックブローまでの間隔を3.0秒間空けて、合計15回のショックブローを実行した。
【0155】
そして、以上の120分間の反応、5分間のArガスによる置換及びArガスによる15回のショックブローの一連の工程を合計2回繰り返した後で、反応器10の下方で連結する上方バルブ装置40のバルブ64を開けてバルブ64上に堆積した多結晶シリコンを、自重で下方バルブ装置104のバルブ104a上に落下させて堆積させた後で、下方バルブ装置104のバルブ104aを開けて、シリコン回収槽106にバルブ104a上の堆積物を落下させ、シリコン回収槽106の中の回収物を確認したところ、針状の多結晶シリコンが存在した。
【0156】
かかる針状の多結晶シリコンは、反応器10内の内管26の内壁面にシリコンが析出した後、棒部材24bの上下移動操作によって剥離されて上方バルブ装置40のバルブ64及び下方バルブ装置104のバルブ104a上に順次堆積したものが回収されたものと考えられる。
【0157】
また、かかる針状の多結晶シリコンの重量を計測したところ、755gであり、反応に供した四塩化珪素ガスの反応率は50%であった。さらに、シリコン回収槽106の中の回収物中には亜鉛及び塩化亜鉛も含まれていたが、その総重量は8gであり、多結晶シリコンの重量のわずか1%に過ぎなかった。これは、下方加熱器100により、反応器10に取り付けられた底板30からバルブ64に至る上方縦外管52及びバルブ64を含む加熱領域を、950℃の温度まで加熱して維持しているから、亜鉛及び塩化亜鉛が固化された状態で、バルブ64上に堆積することが低減されたためと考えられる。
【0158】
ここで、針状の多結晶シリコンを光学顕微鏡で観察したところ、極微量ではあるが、無色透明の石英片が混入していた。また、内管26のシリコン析出領域Sに相当する部位の内壁面を目視で観察した結果、無数のクラックが観察された。これは、温度の低いArガスが、ショックブローの際に石英製の内管26の内壁面とシリコンとの界面に吹き付けられ、これら2種類の材料の熱膨張係数の差により、内管26の内壁面に応力が発生して内管26の内壁面の一部が剥離し、シリコンと共に下方に落下して回収されたシリコン中に混入したものと考えられる。
【0159】
(比較例1)
本比較例では、実験例1の構成から上方バルブ装置40を省いた構成のシリコン製造装置を用いたこと以外は、実験例1と同様に多結晶シリコンを製造した。
【0160】
その結果、シリコン回収槽106の中の回収物を確認したところ、針状の多結晶シリコンに加えて多量の亜鉛及び塩化亜鉛が存在した。かかる針状の多結晶シリコンの重量を計測したところ、766gであり、反応に供した四塩化珪素ガスの反応率は51%であった。また、亜鉛及び塩化亜鉛の重量を計測したところ、489gであった。また、針状の多結晶シリコンを光学顕微鏡で観察したところ、内管26の材料である無色透明の石英片は
認められなかった。
【0161】
(比較例2)
本比較例では、実験例2の構成から上方バルブ装置40を省いた構成のシリコン製造装置を用いたこと以外は、実験例2と同様に多結晶シリコンを製造した。
【0162】
その結果、シリコン回収槽106の中の回収物を確認したところ、針状の多結晶シリコンに加えて多量の亜鉛及び塩化亜鉛が存在した。かかる針状の多結晶シリコンの重量を計測したところ、781gであり、反応に供した四塩化珪素ガスの反応率は52%であった。また、亜鉛及び塩化亜鉛の重量を計測したところ、499gであった。また、針状の多結晶シリコンを光学顕微鏡で観察したところ、極微量ではあるが、無色透明の石英片が混入していた。
【0163】
以上の各実験例及び各比較例からは、各実験例では、各比較例で見られるような回収された多結晶シリコン中への亜鉛及び塩化亜鉛の混入が顕著に低減できており、これは、反応器の下方に高温用バルブ装置を設ける有意性が確認できたものといえる。
【0164】
なお、本発明においては、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0165】
以上のように、本発明においては、高い耐腐食性を呈し得ると共に、シリコンを製造する際の反応副生成物や反応用の原料を固体のシリコンとは相状態の全く異なる気体状態に維持しながら機械的に分離することができる簡便な構成の高温用バルブ装置を提供することができるものであり、その汎用普遍的な性格から、太陽電池用シリコン等の製造装置に広範に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0166】
1………シリコン製造装置
10……反応器
10a…挿通孔
12……上蓋
12a、12b、12c…挿通孔
14……不活性ガス供給管
14a…不活性ガス供給口
16……四塩化珪素ガス供給管
16a…四塩化珪素ガス供給口
18……亜鉛ガス供給管
18a…亜鉛ガス供給口
20……排気管
20a…排気導入口
22……上方加熱器
22a…第1加熱部
22b…第2加熱部
22c…第3加熱部
22d…貫通孔
24……剥離機構
24a…導入管
24b…棒部材
24c…伸縮管
24d…錘
24e…アクチュエータ
26……内管
26a…上端
26b…挿通孔
30……底板
30a…貫通孔
32……ガイド部材
40、140…上方バルブ装置
50、150…外管
52、152…上方縦外管
52a…上端フランジ
52b、152b…下端
54……下方縦外管
54a…下端フランジ
54b、154b…上端
56、156…横外管
56a、156a…フランジ
56b…拡径部
56c、56d、156c、156d…挿通孔
60、160…内管
62、162…内管本体部
62a…他端部
62b…連通孔
64、164…バルブ
64a、164a…第1の壁部
64b、164b…第2の壁部
64c…バルブ本体部
70……グランドシール
72……押さえ部材
74……不活性ガス供給管
76……側板
76a…挿通孔
78……不活性ガス供給管
100…下方加熱器
102…連絡管
104…下方バルブ装置
104a…バルブ
106…シリコン回収槽
124…ショックブローガス供給管
124a…ショックブローガス供給口
176…側板
176a…挿通孔
180…環状流路部材
180a、190a…挿通孔
190…チャンバ管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを生成する反応器の下方に配置自在な高温用バルブ装置であって、
前記反応器の内部空間に連通して、前記反応器において生成されたシリコンを導入自在な第1の管状部材と、
前記第1の管状部材内に配置されたバルブと、
前記反応器から前記バルブに至る前記第1の管状部材の一部及び前記バルブを含む加熱領域を、前記反応器におけるシリコンの生成に関連する関連物質の沸点以上に加熱自在な加熱器と、
を備えた高温用バルブ装置。
【請求項2】
前記第1の管状部材は、鉛直方向に平行な第1の方向に延在する縦外管と、前記第1の方向に直交する第2の方向に延在する横外管と、を有し、前記バルブは、前記横外管内を回転自在に延在する第2の管状部材に設けられる請求項1に記載の高温用バルブ装置。
【請求項3】
更に、前記横外管と前記第2の管状部材との間に画成される間隙部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構を備える請求項2に記載の高温用バルブ装置。
【請求項4】
前記第2の管状部材は、グランドシールを介して、前記横外管内に回転自在に配設される請求項2又は3に記載の高温用バルブ装置。
【請求項5】
前記グランドシールは、前記加熱器の前記加熱領域外に配置される請求項4に記載の高温用バルブ装置。
【請求項6】
前記第2の管状部材は、前記バルブに連なる壁部である一端部及び前記一端部に対向する他端部で閉じられた内管を有し、前記他端部が、前記内管の内部空間を外部に連通する連通孔を有する請求項2から5のいずれかに記載の高温用バルブ装置。
【請求項7】
前記横外管は、前記横外管を拡径した拡径部を有し、前記縦外管及び前記横外管は、前記拡径部を介して、互いに連結される請求項2から6のいずれかに記載の高温用バルブ装置。
【請求項8】
前記不活性ガス供給機構は、前記横外管に設けた環状流路部材を有し、前記不活性ガス供給機構から供給される不活性ガスは、前記環状流路部材の内部空間を介して、前記間隙部に供給される請求項3から7のいずれかに記載の高温用バルブ装置。
【請求項9】
前記不活性ガス供給機構は、前記横外管の一端部を塞ぐ側板に固定されたチャンバ管を有し、前記不活性ガス供給機構から供給される不活性ガスは、更に、前記チャンバ管を介して、前記横外管の内部空間に供給される請求項3から8のいずれかに記載の高温用バルブ装置。
【請求項10】
前記関連物質は、前記反応器に設けられた漏斗状のガイド部材を介して、前記第1の管状部材に導入される請求項1から9のいずれかに記載の高温用バルブ装置。
【請求項11】
前記関連物質は、亜鉛及び塩化亜鉛を含む請求項1から10のいずれかに記載の高温用バルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−132522(P2012−132522A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286131(P2010−286131)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(503107255)株式会社キノテック・ソーラーエナジー (18)
【Fターム(参考)】