説明

高硬度材の加工装置及び加工方法

【課題】高硬度材でなる工具やワークを比較的簡単に加工できる複合加工装置と加工方法を提供する。
【解決手段】主軸台1にレーザ加工ヘッド3と機械加工ヘッド5を取り付け、テーブル13上には研削装置15を取り付け、主軸台1とテーブル13との間でX、Y、Z、B、C軸方向の相対移動が可能な送り軸装置を設ける。工具素材35をテーブル13に取り付けてレーザ加工ヘッド3によって荒加工後、工具素材35を機械加工ヘッド5の主軸9に取り付けて回転させ、研削装置15の砥石車19を回転させながら工具素材35に接触させ、X、Y、Z、B、C軸を移動させて工具素材35の先端刃部を整形仕上げし、刃付け加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶ダイヤモンド焼結体(以下PCDという)、立方晶窒化ほう素焼結体(以下CBNという)、超硬合金等の高硬度材でなる工具を作製する加工装置及び加工方法、並びに超硬合金、セラミックス等の高硬度材、高硬度高脆性材でなるワークの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削、研削加工用の工具の材料として、PCD、CBN、超硬合金等の高硬度材が知られている。高硬度材でなる工具は、その硬さゆえ作製するのが難しい。例えば、特許文献1にはPCD工具を作製可能なNC研削盤が開示されている。加工されるべき工具素材をワーク主軸に取り付け、研削工具の円板電極との間に加工電圧を印加して放電加工により工具素材を荒加工した後、加工電圧の印加を停止した状態で研削による仕上げ加工を行い、工具を作製するものである。
【0003】
また、超硬合金製の金型、セラミックス製の部品等高硬度材、高硬度高脆性材でなるワークを加工する要求が増えている。高硬度材ワークを加工すると工具の摩耗が早く、加工時間と加工コストの増加を招く。
この高硬度材ワークを加工する工作機械として、例えば、特許文献2にはワークに対してレーザ加工又は機械加工を選択的に施す複合加工機が開示されている。レーザ加工でワークの荒加工を行い、切削又は研削による機械加工でそのワークの仕上げ加工を行うといった使い方ができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−311535号公報
【特許文献2】特開2007−83285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術のように、工具素材を放電加工した後に研削加工する構成では陽極と陰極とを絶縁したり、放電加工液と研削液とを分別回収する複雑な構造が必要となる問題点がある。また、特許文献2は、高硬度材でなる工具をレーザ加工と機械加工によって作製することを意図していない。
【0006】
そこで本発明の目的は、PCD、CBN、超硬合金等の高硬度材でなる工具を簡単に作製できる加工装置及び加工方法を提供することである。また、高硬度材ワークを加工するとき、加工能率と工具寿命を両立できる加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するため、レーザ加工、及び切削又は研削の機械加工で高硬度材でなる工具を作製する複合加工装置であって、レーザビーム照射手段を有するレーザ加工ヘッドと回転主軸を有する機械加工ヘッドを備えたヘッドユニットと、被加工物を取り付けるテーブルと、X、Y、Zの直動3軸方向と、X軸周りのA軸又はY軸周りのB軸、及びZ軸周りのC軸の回転2軸方向に前記ヘッドユニットと前記テーブルとを相対移動させる送り軸装置と、前記テーブルに設けられ、前記機械加工ヘッドの回転主軸に取り付けた工具を整形仕上げし、刃付け加工を行う砥石車を回転駆動する研削装置と、を具備する複合加工装置が提供される。
【0008】
また、前記複合加工装置を用いて、高硬度材でなる工具を作製する工具作製方法であって、前記複合加工装置のテーブルに工具素材を取り付け、前記レーザビーム照射手段から照射されるレーザビームにより前記工具素材の先端刃部を荒加工し、該工具素材を前記機械加工ヘッドの回転主軸に取り付け、前記工具素材と前記研削装置の砥石車とを接触させながら前記送り装置により相対移動を行わせ、前記工具素材の先端刃部を整形仕上げして刃付け加工を施す工具作製方法が提供される。
【0009】
また、前記複合加工装置を用いて、高硬度材でなる工具を作製する工具作製方法であって、前記機械加工ヘッドの回転主軸に工具素材を取り付け、前記レーザ加工ヘッドと前記機械加工ヘッドとを相対移動させて前記レーザビーム照射手段から照射されるレーザビームにより前記工具素材の先端刃部を荒加工し、その後、前記工具素材と前記研削装置の砥石車とを接触させながら前記送り装置により相対移動を行わせ、前記工具素材の先端刃部を整形仕上げして刃付け加工を施す工具作製方法が提供される。
【0010】
本発明によれば、レーザ加工ヘッドから照射されるレーザビームによって高硬度材でなる工具素材の先端刃部が荒加工される。その後、荒加工された工具素材は機械加工ヘッドの回転主軸に装着されて回転されるとともに、テーブルに設けられた研削装置の回転駆動される砥石車に接触されながら5軸方向の相対移動が可能な送り軸装置によって先端刃部の輪郭が所望の形状に整形仕上げされ、更にすくい面、逃げ面を加工することによる刃付け加工も行われる。
【0011】
上記の工具作製方法で作製する高硬度材でなる工具は、先端刃部が半球形に整形され、その球面に一つ又は複数のすくい面が形成されるボールエンドミルである。また、上記の工具作製方法で作製する高硬度材でなる工具は、先端刃部の横断面が多角形状に形成され、該多角形状の各頂点が構成する稜線が縦断面で円弧形の切刃をなすボールエンドミルである。
【0012】
また、前記複合加工装置を用いて高硬度材ワークを加工するワークの加工方法であって、上記の工具作製方法で作製した工具を前記機械加工ヘッドの回転主軸に装着し、前記テーブルに取り付けたワークに前記レーザビーム照射手段から照射されるレーザビームにより荒加工を施し、前記機械加工ヘッドの回転主軸に装着した高硬度材でなる工具により前記ワークに仕上げ加工を施すワークの加工方法が提供される。
【0013】
上記の複合加工機を用い、上記の工具作製方法で作製した工具を上記の複合加工機の機械加工ヘッドに装着し、テーブルに取り付けた高硬度材ワークをまずレーザ加工ヘッドから照射されるレーザビームにより荒加工し、その後機械加工ヘッドの工具を用いて機械加工による仕上げ加工を行う。高硬度材ワークは機械加工よりレーザ加工の方が能率よく加工でき、その後切込みの少ない仕上げ加工だけに工具を用いた切削又は研削による機械加工を施す。必要に応じて、レーザ加工ヘッドから照射されるレーザビームによってワークに更にシボ加工を施すこともできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複合加工装置のレーザ加工ヘッドから照射されるレーザビームにより高硬度材でなる工具素材でも比較的容易に荒加工できる。その後、同一の複合加工装置の機械加工ヘッドに取り付けた荒加工された工具素材を5軸の送り装置と研削装置との協働作用によって整形仕上げ加工及び刃付け加工する。放電加工特有の絶縁や加工液分別のための構造は必要でなく、レーザ加工、機械加工の切換えが簡単に行え、操作性良く高硬度材でなる工具を作製できる利点がある。
【0015】
更に続けて、複合加工装置のテーブルに高硬度材ワークを取り付け、レーザ加工ヘッドにより荒加工を施し、前工程で作製した工具を装着した機械加工ヘッドにより仕上げ加工を施す。このように、一台の加工装置で工具の作製からワークの加工までの一連の作業工程をこなすことができる。超硬合金製の高硬度材ワークやセラミックス製の高硬度高脆性材ワークは、レーザ加工ヘッドによって比較的容易に加工できる。その後、機械加工ヘッドに取り付けた工具によって仕上げ加工を施しワークの加工を完了させる。高硬度材ワークをレーザ加工によって加工能率を上げ、切込みの少ない仕上げ加工のみを機械加工により行って工具の摩耗を極力抑えるので、加工能率と工具寿命の両立を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態による複合加工装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す複合加工装置により高硬度材でなる工具を作製する方法を示す概略図であり、(a)は荒加工工程を、(b)は仕上げ加工工程をそれぞれ示す。
【図3】作製した1枚刃のボールエンドミルの先端刃部を示す概略図である。
【図4】作製した多刃のボールエンドミルの先端刃部を示す概略図であり、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図5】作製した多角形状のボールエンドミルの先端刃部を示す概略図であり、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による複合加工装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の高硬度材の加工装置及び加工方法の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0018】
最初に、図1を参照して、本発明の第1の実施形態による複合加工装置の全体構成を説明する。加工装置の基台(図示せず)に対して鉛直な上下方向(Z軸方向)に移動可能に設けられた主軸台1には、レーザ加工ヘッド3と機械加工ヘッド5が固定されている。レーザ加工ヘッド3は、レーザビーム照射手段7を有しており、下方に向けてレーザビームLを照射する。レーザビーム照射手段7は、レーザビームを発振するファイバレーザと、発振したレーザビームを集光レンズに導きワークに対して照射する集光機構とから成る。ファイバレーザと集光機構については、ここでは説明を省略する。尚、レーザは、ダイヤモンドに対する光の吸収率が高い1〜2μmの波長のものを用いるのが加工能率上好ましい。
【0019】
機械加工ヘッド5には主軸9が回転支持され、主軸9の軸線はZ軸方向を向いている。主軸9は駆動手段(図示せず)により回転駆動される。主軸9の先端には、切削工具又は研削工具が装着される。レーザ加工ヘッド3から照射されるレーザビームLの光軸と機械加工ヘッド5の主軸9の軸線とは平行になるようにレーザ加工ヘッド3と機械加工ヘッド5は主軸台1に固定されている。
【0020】
加工装置の基台(図示せず)に対して水平な直交2軸方向(X軸方向及びY軸方向)に移動可能に設けられたテーブル台11は、更に、点Oを中心としてY軸周りのB軸方向に回転可能に設けられている。テーブル台11には、テーブル13がテーブル台11に対してZ軸周りのC軸方向に回転可能に設けられている。テーブル台11及びテーブル13は、2つの回転送り軸を有する例えばトラニオン形のテーブル装置で構成される。本実施形態は主軸台1がZ軸方向に、テーブル13がX、Y、B、C軸方向に移動する構成であるが、要は主軸台1とテーブル13とがX、Y、Z、B、C軸方向に相対移動すればよく、テーブルは固定されていて、主軸台1がX、Y、Z軸方向に移動し、機械加工ヘッド5が主軸台1に対してB軸方向に回転し、主軸9がC軸方向に位置決め可能になっていてもよい。B軸に代えて、X軸周りの回転をするA軸を有していてもよい。その他、直動3軸と回転2軸の送り軸装置の構成は、いろいろな形態が考えられる。
【0021】
テーブル13上には、加工すべきワークが取り付けられる。また、テーブル13上には、着脱可能に又はワークの加工の支障にならない箇所に研削装置15が設けられる。この研削装置15は、テーブル13上に取り付けられた回転駆動部17と、回転駆動部17の回転軸に取り付けられた砥石車19とで成る。砥石車19は、高硬度材のワークを加工する場合は、緑色炭化ケイ素質系砥石(以下GC砥石という)やダイヤモンド、CBN砥粒をホイールにメタルボンドや電着により保持固着したものを採用するのが好ましい。
【0022】
次に、図1の複合加工装置を用いて、高硬度材でなる工具を作製する方法について、図2を参照して説明する。図2(a)に示すように、テーブル13上には上向きにホルダ取付具31が固定される。ホルダ取付具31にはテーパ穴とクランプ手段が設けられており、工具ホルダ33のテーパシャンクを把持、解放可能である。工具ホルダ33の先端部には工具素材35のシャンク部を把持するチャックが設けられている。このようにしてテーブル13上に上向きに取り付けられた工具素材35に対してレーザ加工ヘッド3からレーザビームLを照射して、工具素材35の先端刃部を荒加工する。そのとき必要に応じてX、Y、Z、B、C軸を移動させ、工具素材35の先端刃部を仕上げ代を残した形状に成形する。
【0023】
荒加工した工具素材35を工具ホルダ33とともにホルダ取付具31から取り外し、機械加工ヘッド5の主軸9に取り付ける。テーブル13上のホルダ取付具31を取り外し、図1に示すように、研削装置15をテーブル13上に取り付ける。ボールエンドミルを作製する場合は、図2(b)に示すように、主軸9を回転させ、回転する砥石車19を工具素材35の先端刃部に当接させた状態でB軸を水平から垂直の90°の範囲にわたって移動させ、まず先端刃部を半球状に整形仕上げする。次いで、主軸9の回転を止め、B軸及びC軸を所望の角度位置に位置決めして、回転する砥石車19を工具素材35の先端刃部に当接してすくい面を加工し、刃付けを行う。先端刃部が半球状の研削工具を作製する場合は、すくい面を加工することによる刃付け加工を省略すればよい。この場合、工具素材35の材料成分であるダイヤモンド、CBN、超硬合金等の微小な粒子が砥粒として機能する。
【0024】
テーブル13上にパレット装着手段を設け、ホルダ取付具31を有したパレット、研削装置15を有したパレット、ワークを取り付けたパレット等の複数のパレットをパレットマガジンに用意しておき、パレット交換手段によってテーブル13との間で自動的にパレット交換することによりテーブル13上にホルダ取付具31、研削装置15、ワーク等を選択的に取り付けることもできる。また、テーブル13上にホルダ取付具31や研削装置15を常時取り付けておいてもよい。更に、工具素材35をテーブル13上に取り付けるとき、ホルダ取付具31や工具ホルダ33を用いず、工具素材35を直接取り付ける取付具を用いてテーブル13上に取り付けてもよい。
【0025】
次に、本実施形態の複合加工装置及び工具作製方法でボールエンドミルを作製する場合、どんな先端刃部にするかを図3、図4、図5を用いて説明する。図3は半球状の先端刃部に軸線に対して傾いた1つの平面を加工し、すくい面37としている。半球とすくい面37との稜線が切刃39であり、1枚刃のボールエンドミルとなる。このすくい面37の加工は、主軸9の回転を停止し、B軸とC軸を所望の角度位置に位置決めした状態で砥石車19を回転駆動し、半球の法線方向から砥石車19を工具素材35に当接させ所定量切り込めばよい。
【0026】
図4は、半球状の先端刃部に複数の平面状のすくい面41を形成している。同じく半球とすくい面41との稜線が切刃43である。1枚刃のボールエンドミルのすくい面の加工と同様な方法で各すくい面41の加工を繰り返し行えばよい。このとき、各すくい面41の軸線方向の位置を互いにずらすようにするのが好ましい。このように多刃のボールエンドミルを作製することもできる。図5は、軸線と垂直な横断面が六角形になるように、かつ、六角形の各頂点が構成する稜線が軸線と平行な縦断面で円弧形状の6枚の切刃45をなすように作製したボールエンドミルである。この場合の加工は、主軸9の回転を停止し、C軸を60度ごとに割り出し、各割出し位置で砥石車19を回転駆動させながら、工具素材35との間でX、Z、B軸の同時3軸制御の相対移動を行えばよい。切刃45は幅をもたせるのが好ましい。六角形に代えて、他の多角形状にすることもできる。尚、スクエアボールエンドミルやラジアスエンドミルになるように整形仕上げ加工及び刃付け加工を行うこともできる。また、整形仕上げ加工及び刃付け加工の際は砥石車19が摩耗するので、加工寸法を測定しつつ加工を進め、必要があれば新しい砥石車19に交換して加工精度を高める必要がある。
【実施例2】
【0027】
図6を参照して、本発明の第2の実施形態による複合加工装置の全体構成と、この複合加工装置を用いた工具の作製方法を説明する。加工装置の基台(図示せず)に対して鉛直な上下方向(Z軸方向)に移動可能に設けられている主軸台51に、第1スライダ53と第2スライダ55が設けられている。第1スライダ53は主軸台51に対してX軸と平行なU軸方向に移動可能であり、第2スライダ55は主軸台51に対してZ軸と平行なW軸方向に移動可能である。第1スライダ53には機械加工ヘッド57がY軸周りのB1軸方向に回転可能に取り付けられ、第2スライダ55にはレーザ加工ヘッド59がY軸周りのB2軸方向に回転可能に取り付けられる。機械加工ヘッド57の主軸61は回転駆動されるとともに、回転方向の送り制御が可能なようにC軸機能を有している。
【0028】
加工装置の基台(図示せず)にはテーブル63がX軸及びY軸方向に移動可能に設けられ、テーブル63上には研削装置15が常時取り付けられている。更に、テーブル63上には加工すべきワークWの取り付けスペースが確保されている。
【0029】
本実施形態の複合加工装置を用いて高硬度材でなる工具を作製する方法は、工具素材35を機械加工ヘッド57の主軸61に取り付け、機械加工ヘッド57とレーザ加工ヘッド59とをU、W、B1、B2軸方向に相対移動させて、工具素材35の先端刃部をレーザビームLで荒加工する。その後、研削装置15の回転する砥石車19を回転する工具素材35に当接させながらX、Y、Z、B1、C軸を相対移動させて工具素材35の先端刃部を所望形状に整形仕上げ加工し、その後主軸61の回転を停止してC軸で工具素材を割り出し、刃付け加工する。
【0030】
第1又は第2の実施形態の工具作製方法は、高硬度材でなる工具素材の荒加工をレーザ加工を採用して比較的能率よく行い、その後、工具素材と砥石車との5軸方向の相対移動手段により容易に先端刃部の整形仕上げ加工と刃付け加工が行える。
【0031】
第1又は第2の実施形態の工具作製方法で作成した工具をそのまま機械加工ヘッド5、57の主軸9、61に装着した状態でテーブル13、63上に高硬度材ワークWを取り付ける。まずレーザ加工ヘッド3、59からレーザビームLを照射して、ワークWを荒加工する。次いで主軸9、61に装着されている工具によってワークWに切削又は研削による仕上げ加工を施す。高硬度材ワークはレーザ加工によって比較的能率よく荒加工が行われ、残された微小の仕上げ代だけを切削又は研削によって除去し、仕上げ加工を行う。機械加工で除去する部分は少ないので工具寿命は長くなる。このように、高硬度材ワークの加工に適した工具の作製からそのワークの加工までの工程を1台の複合加工装置で行うこと、及びレーザ加工と機械加工を使い分けることによって、加工能率と工具寿命を両立させて高硬度材ワークを加工できる。尚、ファイバレーザに代えてYAGレーザを用いることもできる。
【0032】
高硬度材でなる金型を加工する場合、いわゆるシボ加工を更に行うことがある。その場合はレーザ加工ヘッド3、59からワークWに向けてレーザビームLを照射し、送り軸の送り速度を変化させてビーム照射密度を調節し、シボ加工の深さを制御する手法をとる。複合加工装置が具備している送り機能を利用してレーザ加工の微妙な深さ制御を容易に行える。
【符号の説明】
【0033】
1 主軸台
3 レーザ加工ヘッド
5 機械加工ヘッド
7 レーザビーム照射手段
9 主軸
11 テーブル台
13 テーブル
15 研削装置
19 砥石車
35 工具素材
37、41 すくい面
39、43、45 切刃
L レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工、及び切削又は研削の機械加工で高硬度材でなる工具を作製する複合加工装置であって、
レーザビーム照射手段を有するレーザ加工ヘッドと回転主軸を有する機械加工ヘッドを備えたヘッドユニットと、
被加工物を取り付けるテーブルと、
X、Y、Zの直動3軸方向と、X軸周りのA軸又はY軸周りのB軸、及びZ軸周りのC軸の回転2軸方向に前記ヘッドユニットと前記テーブルとを相対移動させる送り軸装置と、
前記テーブルに設けられ、前記機械加工ヘッドの回転主軸に取り付けた工具を整形仕上げし、刃付け加工を行う砥石車を回転駆動する研削装置と、
を具備することを特徴とした複合加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の複合加工装置を用いて、高硬度材でなる工具を作製する工具作製方法であって、
前記複合加工装置のテーブルに工具素材を取り付け、
前記レーザビーム照射手段から照射されるレーザビームにより前記工具素材の先端刃部を荒加工し、
荒加工した工具素材を前記機械加工ヘッドの回転主軸に取り付け、
前記工具素材と前記研削装置の砥石車とを接触させながら前記送り装置により相対移動を行わせ、前記工具素材の先端刃部を整形仕上げして刃付け加工を施すことを特徴とした工具作製方法。
【請求項3】
請求項1に記載の複合加工装置を用いて、高硬度材でなる工具を作製する工具作製方法であって、
前記機械加工ヘッドの回転主軸に工具素材を取り付け、
前記レーザ加工ヘッドと前記機械加工ヘッドとを相対移動させて前記レーザビーム照射手段から照射されるレーザビームにより前記工具素材の先端刃部を荒加工し、
その後、前記工具素材と前記研削装置の砥石車とを接触させながら前記送り装置により相対移動を行わせ、前記工具素材の先端刃部を整形仕上げして刃付け加工を施すことを特徴とした工具作製方法。
【請求項4】
前記高硬度材でなる工具は、先端刃部が半球形に整形され、その球面に一つ又は複数のすくい面が形成されるボールエンドミルである、請求項2又は請求項3に記載の工具作製方法。
【請求項5】
前記高硬度材でなる工具は、先端刃部の横断面が多角形状に形成され、該多角形状の各頂点が構成する稜線が縦断面で円弧形の切刃をなすボールエンドミルである、請求項2又は請求項3に記載の工具作製方法。
【請求項6】
請求項1に記載の複合加工装置を用いて高硬度材ワークを加工するワークの加工方法であって、
請求項2又は請求項3に記載の工具作製方法で作製した工具を前記機械加工ヘッドの回転主軸に装着し、
前記テーブルに取り付けたワークに前記レーザビーム照射手段から照射されるレーザビームにより荒加工を施し、
前記機械加工ヘッドの回転主軸に装着した高硬度材でなる工具により前記ワークに仕上げ加工を施すことを特徴としたワークの加工方法。
【請求項7】
請求項6に記載のワーク加工方法で加工した高硬度材ワークに前記レーザビーム照射手段から照射されるレーザビームにより更にシボ加工を施すワークの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−667(P2011−667A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144624(P2009−144624)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(500372717)学校法人福岡工業大学 (32)
【出願人】(000154990)株式会社牧野フライス製作所 (116)
【Fターム(参考)】