説明

高粘性材料の定量吐出装置および方法

【課題】高圧下で液送される高粘性材料であっても精度良く吐出する吐出装置および方法の提供。
【解決手段】高粘性材料を吐出する吐出口を有する吐出ユニットと、高粘性材料を貯留する貯留エリア、該貯留エリアに高粘性材料を供給するための受入口、および前記吐出ユニットに高粘性材料を送出するための送出口を有する貯留ユニットと、容器に充填された高粘性材料を前記貯留ユニットに第1の圧力で供給する高圧供給ポンプと、を提供し、高粘性材料を定量吐出する方法において、前記高圧供給ポンプおよび前記貯留ユニットを連通する流路にポンプ機構およびバルブ機構を有する液送ユニットを設け、該液送ユニットにより前記第1の圧力よりも低く調整された第2の圧力により前記貯留ユニットに高粘性材料を供給することを特徴とする高粘性材料の定量吐出方法および装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリス、オイル、又はペースト状材料もしくはクリーム状材料といった高粘性材料を精度良く吐出する吐出装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリスのような高粘性材料を定量的に供給する供給装置として、流動性の材料をノズルから吐き出して供給する材料の供給装置において、材料を収容する収容手段と、収容手段から送り出される材料を吐き出すための吐出手段と、収容手段から吐出手段に材料を配送する第1の配送手段と、収容手段から送り出される材料を予備的に貯蔵して、収容手段内の材料が無くなった場合に、吐出手段に予備材料を送り出すための予備材料貯蔵手段と、収容手段から予備材料貯蔵手段に材料を配送する第2の配送手段とを備え、第2の配送手段は予備材料貯蔵手段の材料受入口に接続され、予備材料貯蔵手段の材料供給口は吐出手段側に接続されている材料の供給装置、が特許文献1に開示される。
【0003】
また、収容タンクなどの貯留部に貯留された被供給材料を吸引し高圧状態で供給する供給装置と、ワークに対し定量供給する吐出装置と、前記供給装置の供給口と吐出装置の吸引口との間を接続し減圧比の設定が可能である減圧弁及び開閉弁が設けられる供給ラインと、前記吐出装置の吸込口付近の圧力を検出する圧力センサーと、その圧力センサーからの圧力信号に基づき前記吐出装置の吸込口付近の圧力が設定上限値を超えた場合に前記開閉弁を閉じ、設定下限値を下回った場合に前記開閉弁を開く制御手段とを備える材料供給システムにおいて、前記開閉弁と前記吐出装置の吸込口との間の供給ラインに、前記減圧弁の減圧比を前記吐出装置の運転時に全量を流す圧力よりは低い圧力に設定した状態で前記吐出装置の吸込口付近の圧力が短時間で設定上限値を超えたり設定下限値を下回ったりするのを抑制するアキュムレータを設けた装置、が特許文献2に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−299861号公報
【特許文献2】特開2004−249243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら先行技術に開示される装置は、収容手段や収容タンクに収容される高粘性材料を、吐出手段や吐出装置に液送するにあたっては、前記容器から液体材料を汲み出すポンプの液送圧を制御して液送している。
しかし、流路が液体材料で満たされた液送路により液送される液体材料の脈動等による圧力変動を充分に除去することが難しく、吐出手段に供給する液体材料の圧力変動が液体材料の吐出量のばらつきを引き起こしていた。
すなわち、特許文献1の実施の形態1に開示される装置では、吐出バルブと連通する流路の逆端に位置する液体材料圧送ポンプによる圧力により吐出されるものであり、流路において吐出バルブから最も離れて位置する吐出バルブ近傍の圧力を一定に保つことが難しく、特許文献2の発明の実施の形態に開示される装置では、プランジャーポンプ(供給装置)による圧力をアキュムレータを介して吐出装置に供給するため、同文献[0033]に記載のとおり、材料の供給圧力に変動を生じる。
【0006】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高圧下で液送される高粘性材料であっても精度良く吐出する吐出装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の装置は次のように構成されている。
[1]高粘性材料を吐出する吐出口を有する吐出ユニットと、高粘性材料を貯留する貯留エリア、該貯留エリアに高粘性材料を供給するための受入口、および前記吐出ユニットに高粘性材料を送出するための送出口を有する貯留ユニットと、容器に充填された高粘性材料を前記貯留ユニットに第1の圧力で供給する高圧供給ポンプと、制御部と、を備える高粘性材料の定量吐出装置において、前記高圧供給ポンプおよび前記貯留ユニットを連通する流路に液送ユニットを設け、該液送ユニットにより前記第1の圧力よりも低く調整された第2の圧力により前記貯留ユニットに高粘性材料を供給することを特徴とする高粘性材料の定量吐出装置。
[2]前記貯留ユニットは、前記貯留エリアの上方に第3の圧力に調圧された空間を保持して高粘性材料を貯留し、前記液送ユニットは、前記第1の圧力未満かつ前記第3の圧力を超える前記第2の圧力により前記貯留ユニットに高粘性材料を供給することを特徴とする[1]記載の高粘性材料の定量吐出装置。
[3]前記送出口を前記貯留エリアの下方に配設し、前記受入口を前記貯留エリアの前記送出口より上方に配設し、前記貯留エリアの断面積を前記送出口の断面積よりも大きく構成したことを特徴とする[1]または[2]記載の高粘性材料の定量吐出装置。
[4]前記貯留ユニットに、前記受入口より上方位置で貯留された高粘性材料の貯留量を監視するセンサを設け、前記制御部が、前記センサからの信号に基づき前記液送ユニットを作動して前記貯留ユニットに高粘性材料を補充することを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載の高粘性材料の定量吐出装置。
[5]前記液送ユニットは、前記高圧供給ポンプから供給された高粘性材料を前記貯留ユニットに送出するポンプ機構と、前記高圧供給ポンプと連通させ且つ前記貯留ユニットとの連通を遮断する第1の位置および前記貯留ユニットと連通させ且つ前記高圧供給ポンプとの連通を遮断する第2の位置を有するバルブ機構と、を備えることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載の高粘性材料の定量吐出装置。
【0008】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の方法は次のように構成されている。
[6]高粘性材料を吐出する吐出口を有する吐出ユニットと、高粘性材料を貯留する貯留エリア、該貯留エリアに高粘性材料を供給するための受入口、および前記吐出ユニットに高粘性材料を送出するための送出口を有する貯留ユニットと、容器に充填された高粘性材料を前記貯留ユニットに第1の圧力で供給する高圧供給ポンプと、を提供し、高粘性材料を定量吐出する方法において、前記高圧供給ポンプおよび前記貯留ユニットを連通する流路にポンプ機構およびバルブ機構を有する液送ユニットを設け、該液送ユニットにより前記第1の圧力よりも低く調整された第2の圧力により前記貯留ユニットに高粘性材料を供給することを特徴とする高粘性材料の定量吐出方法。
[7]前記貯留ユニットは、前記貯留エリアの上方に第3の圧力に調圧された空間を保持して高粘性材料を貯留し、前記液送ユニットは、前記第1の圧力未満かつ前記第3の圧力を超える前記第2の圧力により前記貯留ユニットに高粘性材料を供給することを特徴とする[6]記載の高粘性材料の定量吐出方法。
[8]前記送出口を前記貯留エリアの下方に配設し、前記受入口を前記貯留エリアの前記送出口より上方に配設し、前記貯留エリアの断面積を前記送出口の断面積よりも大きく構成したことを特徴とする[6]または[7]記載の高粘性材料の定量吐出方法。
[9]前記貯留ユニットに、前記受入口より上方位置で貯留された高粘性材料の貯留量を監視するセンサを設け、前記制御部が、前記センサからの信号に基づき前記液送ユニットを作動して前記貯留ユニットに高粘性材料を補充することを特徴とする[6]ないし[8]のいずれかに記載の高粘性材料の定量吐出方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、収容タンクに収容される高粘性材料を汲み出す高圧ポンプとは圧力的に分離された新たな圧力供給源を利用するため、圧力変動が極めて小さい状態で吐出ユニットに高粘性材料を供給することができるので、吐出ユニットからばらつきなく高精度に高粘性材料を吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の定量吐出装置の一形態を示した概略構成図である。
【図2】実施例に係る高圧供給ポンプの正面概略構成図である。
【図3】実施例に係る高圧供給ポンプの側面概略構成図である。
【図4】高圧供給ポンプによる圧送作業開始時の状態説明図である。
【図5】高圧供給ポンプによる圧送作業終了時の状態説明図である。
【図6】(a)フォロープレート部のシャベル本体上昇時の拡大断面図、(b)フォロープレート部のシャベル本体下降時の拡大断面図である。
【図7】実施例に係る液送ユニットの側面概略構成図である。
【図8】実施例に係る貯留ユニットの概略断面図である。
【図9】液送ユニットから材料供給が行われていない状態の貯留エリアの説明図である。
【図10】液送ユニットから材料供給が行われている状態の貯留エリアの説明図である。
【図11】実施例に係る定量吐出装置の各部位における圧力変動等を示したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の高粘性材料の定量吐出装置は、高圧供給ポンプ100、液送ユニット200、貯留ユニット300、吐出装置400および制御部500を主要な構成要素とする。これらの各要素は、図1に示す如く、高圧供給ポンプ100、液送ユニット200、貯留ユニット300、吐出装置400は、この順に液送管を介して連通される。すなわち、高圧供給ポンプ100と液送ユニット200とが液送管A810を介して連通され、液送ユニット200と貯留ユニット300とが液送管B820を介して連通され、貯留ユニット300と吐出装置400とが液送管C830を介して連通される。
【0012】
高圧供給ポンプ100は、高粘性材料が充填された容器(供給源)から高粘性材料を汲み出し液送ユニット200に液送する。前記容器は、例えば、ペール缶、グリス缶、一斗缶などである。高圧供給ポンプとしては、例えば、出願人が特開2004−332638に開示する高粘性材料用の圧送装置を用いることができる。
【0013】
液送ユニット200は、高圧供給ポンプ100から高圧下で液送された高粘性材料を、高圧供給ポンプ100からの供給圧力(第1の圧力)よりも低く調圧された圧力(第2の圧力)で貯留ユニット300に液送するための装置である。
液送ユニット200は、高圧供給ポンプ100から供給された高粘性材料を貯留ユニット300に送出するポンプ機構と、バルブ機構とを備えている。バルブ機構は、ポンプ機構が高圧供給ポンプから高粘性材料の供給を受ける際には、ポンプ機構と貯留ユニット300との連通を遮断し、ポンプ機構が貯留ユニット300に高粘性材料を供給する際には、ポンプ機構と高圧供給ポンプ100との連通を遮断する切換バルブであり、例えばスライド型、一方向回転型、または往復動回転型の切換バルブを用いることができる。
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも充分に低く、且つ、後述する貯留ユニット300の貯留エリア70の上方に設けられた空間の圧力(第3の圧力)を超える圧力とすることが好ましい。
【0014】
貯留ユニット300は、吐出ユニット400に高粘性材料を供給するために、一時的に高粘性材料を貯留するためのものである。貯留ユニット300は、高粘性材料を貯留する貯留エリア70を有しており、貯留エリア70の上方には常に空間が形成されるようになっている。そして、貯留エリア70の上方の空間は、減圧弁75を介して接続される加圧源により常時一定圧に調圧されている。
貯留エリア70に貯留される高粘性材料の量は、貯留量センサ74により常時所定の範囲内となるように調整される。
貯留ユニット300を設ける際に重要なことは、貯留エリア70から吐出ユニット400へ高粘性材料を送出する送出口を受入口より下方に設けると共に、送出口の断面積(流路径)と比べて貯留エリア70の断面積(貯留容器の径)を十分に大きく構成する(例えば断面積を数倍以上とする)ことである。このような構成とすることにより、貯留エリア70の上方(すなわち液面)方向への流動抵抗が送出口方向への流動抵抗と比べ十分に小さくなるため、液送ユニット200から高粘性材料が供給される際に生じうる圧力変動や脈動の影響を最小限にすることができるからである。
【0015】
吐出ユニット400は、従来から知られる吐出装置を用いることができる。例えば、特開2002ー282740に開示されるJet式、特開2002ー326715に開示されるスクリュー式、WO2007/046495に開示されるプランジャー式、などの吐出装置を用いることができる。
前記貯留ユニット300との距離は近いことが好ましい。また、前記貯留ユニット300とは相対位置を変えず一体的に構成されることが好ましく、SUS等の硬質材料で構成される液送管Cを介して連通することが好ましい。
【0016】
制御部500は、高圧供給ポンプ100、液送ユニット200、貯留ユニット300、および吐出装置400と電気的に接続され、これらの作動を制御する。
【0017】
以下では本発明を実施するための形態を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
≪構成≫
本実施例の高粘性材料の定量吐出装置の構成は、図1と同様であり、高圧供給ポンプ100、液送ユニット200、貯留ユニット300、吐出装置400および制御部500を主要な構成要素とする。以下、これらの各要素の具体的な構成を説明する。
【0019】
[高圧供給ポンプ100]
本実施例の高圧供給ポンプ100を構成する圧送装置について、図2ないし図6を参照しながら説明する。
この装置は、缶体21に貯留されている高粘性材料を缶体21内から取り出して圧送するために、前記高粘性材料を加圧して前記缶体21の上面を封止するフォロープレート20を、前記缶体21に対して昇降されるポンプ手段18の下端に備える高粘性材料圧送装置において、前記ポンプ手段を指示する可動板16と、可動板16を昇降するシリンダ15と、可動板16の移動を案内する昇降ガイド13と、を備え、前記昇降ガイド13を、前記ポンプ手段18の背面かつ前記シリンダ15の前面に位置するように配設するよう構成される。
【0020】
ポンプ手段18は、図3ないし図5に開示するように、前記缶体21内の高粘性材料の上面を封止及び加圧し、前記可動板16の下面に固定されるフォロープレート20と、前記フォロープレート20の下端にシャベルプレート28とを備える。
シャベル本体27は、図6に開示するように、前記シャベルプレート28と、前記シャベルプレート28から延出された軸29を備える。軸29は、ポンプ手段18内に形成される送出管23に挿通され、可動板16の上面に固定されたエアーモータ30に連結され、エアーモータ30の動作に連動して、上下方向に移動し、送出管23に高粘性材料を掻き込む。このようにして、ポンプ手段18は、高粘性材料に高圧を与えて高粘性材料を送出する。
【0021】
本実施例の高圧供給ポンプ100は、高圧供給ポンプ100と液送ユニット200とを連通する液送管A810に配設された圧力センサ101が90kgf/cmとなると作動し、110kgf/cmを超えると作動を停止する。すなわち、液送管A810内の高粘性材料の圧力は、100kgf/cm前後の高圧に維持される。液送管A810は前記高圧に耐えられる管で構成されることはいうまでもない。
【0022】
[液送ユニット200]
液送ユニット200は、高圧供給ポンプ100から高圧下で液送された高粘性材料を、高圧供給ポンプ100からの供給圧力よりも低い圧力(例えば3〜7kgf/cm程度)で貯留ユニット300に液送する。
本実施例における液送ユニット200は、前記高圧供給ポンプ100によらず貯留ユニット300に液送するポンプ機能を有する。
【0023】
本実施例の液送ユニット200は、図7に示す如く構成される。
切換バルブ50は、液送管A810と計量孔51とを連通する第1位置、または、計量孔51と液送管B820とを連通する第2位置、の二の位置を切り換えるよう作動する。
プランジャ52は、切換バルブ50から離れる方向(上方向)に移動して計量孔51に高粘性材料を吸入し、切換バルブ50に向かう方向(下方向)に移動して計量孔51に吸入した高粘性材料を排出する。
【0024】
液送動作について説明する。
切換バルブ50を第1位置に位置させ、プランジャ52を切換バルブ50から離れる方向に移動させて高圧供給ポンプ100から液送された高粘性材料を計量孔51に吸入する。
次に、切換バルブ50を第2位置に切り換え、その後にプランジャ52を切換バルブ50に向かう方向に移動させて計量孔51に吸引した高粘性材料を排出することにより、液送ユニット200から貯留ユニット300に高粘性材料を液送する。
このように、切換バルブ50が第1位置と第2位置を切り換えるよう作動するから、高圧供給ポンプ10と貯留ユニット300が直接的に連通することはない。したがって、高圧供給ポンプ10による高圧が、貯留ユニット300に直接作用することがない。
言い換えると、高圧供給ポンプ100による液送圧力は、前記高圧供給ポンプ100から液送ユニット200まで高粘性材料を液送するために作用するものであり、液送ユニット200による液送圧力は、前記液送ユニット200から貯留ユニット300まで高粘性材料を液送するために作用するものであり、高圧供給ポンプ100から液送ユニット200までの液送圧力と、液送ユニット200から貯留ユニット300までの液送圧力は、圧力的に分断されている。
【0025】
なお、液送ユニット200は、図7に開示される装置に限定されるものではないことはいうまでもない。例えば、吐出装置に組み込み可能な弁付プランジャポンプであり、プランジャ吸引動作時には上流側に、プランジャ排出動作時には下流側に、連通するようなバルブ(但し、上下流は直接的に連通しない)として作用する定量弁を用いることもできる。
【0026】
[貯留ユニット300]
貯留ユニット300は、液送ユニット200と吐出ユニット400との間に、一時的に高粘性材料が貯留するよう設けられるものであり、図8に示すように高粘性材料が貯留する貯留エリア70を有する。
前記貯留エリア70の上下方向の中央より下部には液送ユニット300から高粘性材料が供給される受入口71が設けられ、最下部には高粘性材料を吐出ユニット400に送出する送出口72が設けられている。
また、前記貯留エリア70の最上部には気圧調整口73が設けられ、前記貯留エリア70の気圧は前記気圧調整口73を介して連通する減圧弁75により常時一定圧に調圧される。そして、この調圧された圧力によって、貯留エリア70に貯留する高粘性材料が吐出装置400に液送される。
なお、減圧弁75により調圧された貯留エリア70の気体圧力は、液送ユニット200から液送される液送圧よりも小さく調圧される。
【0027】
貯留エリア70に貯留される高粘性材料の量は、その水頭位置の上方に常に空間が形成される量とする。すなわち、貯留ユニット300内の貯留エリア70に貯留される高粘性材料は、気圧調整口73到達する高さまで高粘性液体材料を貯留してはならない。そこで、貯留ユニット300には、貯留エリア70内の高粘性材料の液面位置を検出する液面センサ74を設けている。これにより、前記受取口71が設けられた高さよりも液面位置が低下することを防止するとともに、貯留エリア70に貯留される高粘性材料の水頭位置の上方は常に空間が形成されることを保持している。
【0028】
本実施例の液面センサ74は、液面位置が検出位置より低下すると信号を制御部500に送出し、液面位置が検出位置よりも上昇すると前記信号の送出を停止するものであり、前記検出位置が、受取口71上方の液面位置を検出するよう調整されている。
このように、液面センサ74の液面検知により、前記受取口71が設けられた高さよりも液面位置が低下することを防止するとともに、気圧調整口73まで高粘度材料が満たされてしまうことを防止する。
なお、液面センサ74を二つの液面センサにより構成し、高粘性材料の水頭位置の下限及び上限をそれぞれ規定し、この範囲内に高粘性材料が貯留されるようにしても良い。
【0029】
[吐出ユニット400]
吐出ユニット400は、高粘性材料を目的位置へ吐出するための吐出装置である。吐出ユニット400を構成する吐出装置は、Jet式、スクリュー式、プランジャー式、などの吐出装置を用いることができる。
本実施例の吐出装置は、貯留ユニット300、液送管C830および吐出ユニット400を塗布ロボットのヘッドに搭載して使用される。
なお、開閉弁を吐出ユニットとして用いることもでき、この場合には、前記減圧弁75で調圧された圧力が吐出圧力として作用し、高粘性材料が吐出される。
【0030】
[制御部500]
制御部500は、貯留ユニット300の液面センサからの信号を受信し、吐出ユニット400の作動、液送ユニット200の作動および高圧供給ポンプ100の作動を制御する。
【0031】
<動作>
容器内の高粘性材料が、高圧供給ポンプ100により液送ユニット200へ移送され、液送ユニット200から貯留ユニット300に移送され、貯留ユニット300から吐出ユニット400に移送され、吐出ユニット400から所望量の高粘性材料が吐出される手順については上述したとおりである。
続いて、吐出ユニット400からの高粘性材料の吐出が繰り返されると、それに伴い貯留ユニット300内の高粘性材料の水頭位置も徐々に低下する。そして、液面センサ74の検知位置よりも前記水頭位置が低下すると、液面センサ74から制御部500に信号が送出され、制御部500は液送ユニット200を作動させる。液送ユニット200が作動することにより、貯留ユニット300内の高粘性材料の水頭位置が上昇し、前記液面センサ74の検知位置を超えると、前記液面センサ74は信号の送出を停止する。制御部500は液面センサ74からの信号が停止されると、前記液送ユニット200の作動を停止させる。前記液送ユニット200は、制御部500から作動の停止命令が出されるまで、プランジャ52の進退移動および切換バルブ50の切換動作を繰り返し続ける。
この間、液送ユニット200から貯留ユニット300が高粘性材料を供給と並行して、吐出ユニット400は吐出作業は実施されている。
【0032】
図9および図10を参照しながら更に詳しく説明する。なお、図9および図10では、説明の便宜上、液面位置の変化を強調して描写している。
図9は、液送ユニット200から材料供給が行われていない状態の貯留エリア70を説明するものである。
貯留ユニット300の貯留エリア70に貯留される高粘性材料は、減圧弁75により調圧された圧力により、送出口72から液送管C830を介して吐出ユニット400に送出される。ここで、本実施例の液送ユニット200を有する構成では、貯留ユニット300と高圧供給ポンプ100とは直接的に連通していないから、貯留ユニット300と液送ユニット200とを連通する液送管C830内の高粘性材料も、減圧弁75により調圧された圧力下(例えば1.5〜3.0kgf/cm程度)にある。
【0033】
図10は、液送ユニット200から材料供給が行われている状態の貯留エリア70を説明するものである。
液送ユニット200が作動すると、前記液送管B820の高粘性材料の圧力は上昇し、前記液送管B820内の高粘性材料は、貯留ユニット300の受取口71を経て貯留エリア70に流入する。ここで、貯留エリア70に流入した高粘性材料は、流動抵抗の小さい方向に優先的に流れるから、細径に絞られた送出口72を通過するよりも、送出口72よりも大きい径(水平断面積)に形成された貯留エリア70の水頭位置を上昇させるように流れ、その結果水頭位置が上昇する。他方、液送管C830から吐出ユニット400へ流入した高粘性材料の液送圧力は、前記水頭位置の上昇(液面上昇)により開放される。
このように、本実施例の装置では、貯留ユニット300が液送ユニット200から高粘性材料の供給を受けても、貯留ユニット300から吐出ユニット400への高粘性材料の液送圧に影響を与えることがない。したがって、吐出ユニット400から吐出される高粘性材料の吐出量精度に、液送ユニット200から供給された高粘性材料による液送圧変動が悪影響を与えることを回避することができる。本実施例では、貯留エリア70の水平断面積を送出口72の水平断面積の10倍に構成したが、これらの水平断面積比が5倍程度でも同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、液送ユニット200から高粘性材料が貯留ユニット300に供給されても、吐出ユニット400の液送圧力に影響を与えないから、液送ユニット200のプランジャ52の繰り返し動作等により、貯留ユニット70の受入口71から脈動を伴った高粘性材料が流入しても、吐出ユニット400の液送圧力に影響を与えず、結果として前記脈動を除去
することが可能である。
液送圧力が、吐出ユニット400により吐出される高粘性材料の吐出量精度に影響を与
えることはない。
【0035】
また、高圧供給ポンプ100は、吐出ユニット400の吐出動作と同期することなく、液送管A810が規定圧力範囲となるよう、圧力センサ101の計測量に基づき作動する。規定圧力範囲から下がると、高粘性材料が充填された容器から高粘性材料を汲み出し液送管A810内の圧力を上昇させ、規定圧力範囲を超えるとその動作を停止する。
図11は、本実施例の定量吐出装置における各部位の圧力変動等を示したタイムチャートである。図11中、「400」で示された最上段は吐出装置のON/OFFのタイミングを示しており、二段目は貯留エリア70における水頭位の検出位置を示しており、「74」で示された三段目は液面センサからの信号出力のON/OFFのタイミングを示しており、「200」で示された四段目は液送ユニットの作動のON/OFFのタイミングを示しており、「101」で示された五段目は圧力センサにおける圧力変動を示しており、「100」で示された六段目は高圧供給ポンプのの作動ON/OFFのタイミングを示している。
【0036】
以上に説明した本実施例の定量吐出装置によれば、前記高圧ポンプによる圧力とは圧力的に分離された液送ユニットを利用するため、圧力変動が極めて小さい状態で吐出装置に高粘性材料が供給されるため、吐出装置からばらつきなく高精度に高粘性材料を吐出させることができる。
また、液送ユニットは吐出装置の近くに配置することができるため液送路を短くすることができ、これにより更に脈動等の圧力変動を最小限に抑えることもできる。
【符号の説明】
【0037】
13 昇降ガイド
15 シリンダ
16 可動板
18 ポンプ手段
20 フォロープレート
21 缶体
23 送出管
27 シャベル本体
28 シャベルプレート
29 軸
30 エアーモータ
50 切換バルブ
51 計量孔
52 プランジャ
70 貯留エリア
71 受入口(受取口)
72 送出口
73 気圧調整口
74 液面センサ(貯留量センサ)
75 減圧弁
100 高圧供給ポンプ
101 圧力センサ
200 液送ユニット
300 貯留ユニット
400 吐出ユニット(吐出装置)
500 制御部
810 液送管A
820 液送管B
830 液送管C

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘性材料を吐出する吐出口を有する吐出ユニットと、
高粘性材料を貯留する貯留エリア、該貯留エリアに高粘性材料を供給するための受入口、および前記吐出ユニットに高粘性材料を送出するための送出口を有する貯留ユニットと、
容器に充填された高粘性材料を前記貯留ユニットに第1の圧力で供給する高圧供給ポンプと、
制御部と、を備える高粘性材料の定量吐出装置において、
前記高圧供給ポンプおよび前記貯留ユニットを連通する流路に液送ユニットを設け、該液送ユニットにより前記第1の圧力よりも低く調整された第2の圧力により前記貯留ユニットに高粘性材料を供給することを特徴とする高粘性材料の定量吐出装置。
【請求項2】
前記貯留ユニットは、前記貯留エリアの上方に第3の圧力に調圧された空間を保持して高粘性材料を貯留し、
前記液送ユニットは、前記第1の圧力未満かつ前記第3の圧力を超える前記第2の圧力により前記貯留ユニットに高粘性材料を供給することを特徴とする請求項1記載の高粘性材料の定量吐出装置。
【請求項3】
前記送出口を前記貯留エリアの下方に配設し、
前記受入口を前記貯留エリアの前記送出口より上方に配設し、
前記貯留エリアの断面積を前記送出口の断面積よりも大きく構成したことを特徴とする請求項1または2記載の高粘性材料の定量吐出装置。
【請求項4】
前記貯留ユニットに、前記受入口より上方位置で貯留された高粘性材料の貯留量を監視するセンサを設け、
前記制御部が、前記センサからの信号に基づき前記液送ユニットを作動して前記貯留ユニットに高粘性材料を補充することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高粘性材料の定量吐出装置。
【請求項5】
前記液送ユニットは、前記高圧供給ポンプから供給された高粘性材料を前記貯留ユニットに送出するポンプ機構と、前記高圧供給ポンプと連通させ且つ前記貯留ユニットとの連通を遮断する第1の位置および前記貯留ユニットと連通させ且つ前記高圧供給ポンプとの連通を遮断する第2の位置を有するバルブ機構と、を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高粘性材料の定量吐出装置。
【請求項6】
高粘性材料を吐出する吐出口を有する吐出ユニットと、
高粘性材料を貯留する貯留エリア、該貯留エリアに高粘性材料を供給するための受入口、および前記吐出ユニットに高粘性材料を送出するための送出口を有する貯留ユニットと、
容器に充填された高粘性材料を前記貯留ユニットに第1の圧力で供給する高圧供給ポンプと、を提供し、高粘性材料を定量吐出する方法において、
前記高圧供給ポンプおよび前記貯留ユニットを連通する流路にポンプ機構およびバルブ機構を有する液送ユニットを設け、該液送ユニットにより前記第1の圧力よりも低く調整された第2の圧力により前記貯留ユニットに高粘性材料を供給することを特徴とする高粘性材料の定量吐出方法。
【請求項7】
前記貯留ユニットは、前記貯留エリアの上方に第3の圧力に調圧された空間を保持して高粘性材料を貯留し、
前記液送ユニットは、前記第1の圧力未満かつ前記第3の圧力を超える前記第2の圧力により前記貯留ユニットに高粘性材料を供給することを特徴とする請求項6記載の高粘性材料の定量吐出方法。
【請求項8】
前記送出口を前記貯留エリアの下方に配設し、
前記受入口を前記貯留エリアの前記送出口より上方に配設し、
前記貯留エリアの断面積を前記送出口の断面積よりも大きく構成したことを特徴とする請求項6または7記載の高粘性材料の定量吐出方法。
【請求項9】
前記貯留ユニットに、前記受入口より上方位置で貯留された高粘性材料の貯留量を監視するセンサを設け、
前記制御部が、前記センサからの信号に基づき前記液送ユニットを作動して前記貯留ユニットに高粘性材料を補充することを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の高粘性材料の定量吐出方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−284627(P2010−284627A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142788(P2009−142788)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(390026387)武蔵エンジニアリング株式会社 (56)
【Fターム(参考)】