高耐熱接合材料及びそれを用いた半導体装置
【課題】製造コストの上昇を抑えつつ、Zn−Al系はんだの表面の酸化を抑止することができると共に良好な濡れ性を示し、フラックスレスで接続を行うことができる高耐熱接合材料、及び、それを用いた半導体装置を提供すること。
【解決手段】アルミニウム2を中心に、第一の亜鉛3、アルミニウム2、第二の亜鉛4の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛3及び第二の亜鉛4のアルミニウム2との接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層5、6が形成されている、高耐熱接合材料。
【解決手段】アルミニウム2を中心に、第一の亜鉛3、アルミニウム2、第二の亜鉛4の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛3及び第二の亜鉛4のアルミニウム2との接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層5、6が形成されている、高耐熱接合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置の分野において、特にパワー半導体装置の分野において、半導体素子をダイボンディングする際に用いられる、鉛を多く含み融点が300℃近い、いわゆる高温はんだと呼ばれるはんだの代替材料となり得る、高耐熱接合材料及びそれを用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リードフレームを用いて製造される半導体装置の多くは、リードフレーム上に半導体素子をダイボンディングし、ワイヤーボンディングにより、リードフレームの内部接続端子と半導体素子の電極端子とを電気的に接続した後、トランスファーモールドにより、半導体素子及び接続部周辺をモールド樹脂で被覆して、製造されるのが一般的である。
【0003】
ダイボンディングには、古くは金−シリコン接合などが採用されてきたが、金が高コストであることから、近年は鉛を9割近く含み、融点が約300℃である高温はんだが多く用いられるようになってきている。特に、パワー半導体装置など、半導体素子の発熱が大きく、半導体素子からの良好な放熱性が求められる、半導体装置においては、高温はんだが多く用いられている。一方、半導体素子の発熱が小さい半導体装置においては、ダイボンディング材として接着性を有する有機フィルムが用いられることがある。
【0004】
しかしながら、はんだに関しては、環境意識の高まりと共に、各国で環境影響物質の規制が進められており、はんだに含まれる鉛の使用も一部では規制の対象となっている。これによって、例えば上記により製造された半導体装置をプリント基板に実装する際に用いられるはんだ材としては、融点が183℃の鉛−錫共晶はんだから、錫−銀−銅はんだなどの鉛フリーはんだに置き換えられてきた。しかし、上記した半導体素子をダイボンディングする際に用いられる高温はんだについては、置き換え可能な適当な接合材料が見当たらないことから、これまでのところ規制の対象からは除外されてきた。
【0005】
はんだの鉛フリー化は時代の趨勢であり、半導体素子をダイボンディングする際に用いられる高温はんだについても、その代替材料となり得る高耐熱接合材料の開発が望まれている。
【0006】
このような状況に対応して、先行技術文献である特許文献1には、Zn−Al−Mg−Ga系の合金組成からなる、鉛フリーの高温はんだが開示されている。特許文献1によると、この合金は、Gaを加えることで、従来の高鉛はんだに近い融点を実現している。また、この合金は、硬度が高く加工性に劣ることから、200℃程度で熱間成形してはんだ合金材とするか、粉末にした後でペースト状のはんだ合金材とするのがよいとあり、薄い金属箔からなるはんだ材を得るためには、製造コストの上昇は免れず、また、ペースト状のはんだ材では、接続後に洗浄が必要なことが多く、通常、洗浄を行わずに済むようにフラックスレスで接続している、パワー半導体装置における半導体素子のダイボンディングには、少なくとも汎用的には適用できない可能性がある。
【0007】
また、特許文献2には、Zn−Al−Ge系またはZn−Al−Mg系の合金組成からなる、鉛フリーの高温はんだが開示されている。特許文献2によると、この合金は、Gaまたは/およびMgを加えることで、従来の高鉛はんだに近い融点を実現している。しかし、はんだとしての濡れ性を確保するために必須である、はんだの表面の酸化膜の還元や破壊については、不明な点が多い。
【0008】
また、特許文献3には、Zn/Al/Znの三層構造からなるクラッドはんだが開示されている。特許文献3によると、このクラッドはんだは、表面に強固な酸化皮膜を形成するAlをZnで被覆することで、Al表面の酸化膜の形成を回避して、はんだとしての濡れ性の向上を図っている。Al表面の酸化膜の形成が回避されるので、はんだとしての濡れ性の向上は達成されるが、Znも酸化し易い金属であるため、実際に接続を行う場合は、接続部の周囲の雰囲気を含めて、適切な接続条件及び接続装置を選択して採用する必要がある。
【0009】
また、特許文献4には、Zn−Al系の合金組成からなる、鉛フリーはんだの表面に、Au層またはAg層を被覆形成した構造からなる複合はんだが開示されている。特許文献4によると、この複合はんだは、Au層またはAg層の存在により、Zn−Al系合金はんだの表面の酸化を抑止するものである。しかし、Zn−Al系合金はんだもまた酸化し易い金属であるため、単純にAu層またはAg層をめっきにより形成しようとしても、既に酸化が進行しているZn−Al系合金はんだの表面にめっきを施すことになり、内部に酸化膜が閉じ込められることにより、接続時に、溶融はんだ中に酸化物が巻き込まれる恐れがある。これにより接続部の信頼性は低下する可能性がある。また、長尺の金属箔からなるはんだ材の表面にめっきを施す場合は、めっき処理にコストが嵩む不利がある。これは、めっき以外のスパッタなどの方法でも同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−172352号公報
【特許文献2】特開平11−288955号公報
【特許文献3】特開2008−126272号公報
【特許文献4】特開2002−261104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
Zn−Al系合金はんだの実用上の大きな課題は、通常、フラックスレスで接続している、パワー半導体装置における半導体素子のダイボンディングに適用できるようにすることである。そのためには、まず、Zn−Al系はんだの表面の酸化を抑止することが肝要である。また、製造コストの上昇をできるだけ抑える必要がある。
【0012】
既に述べた通り、特許文献1に記載のZn−Al−Mg−Ga系の合金はんだは、硬度が高く加工性に劣ることから、製造コストの上昇は免れず、また、ペースト状のはんだ材では、フラックスレスで接続している、パワー半導体装置における半導体素子のダイボンディングには、適用できない可能性がある。
【0013】
また、特許文献2に記載のZn−Al−Ge系またはZn−Al−Mg系の合金はんだは、はんだとしての濡れ性を確保するためには、はんだの表面の酸化を抑止することが必須であるが、この点について特許文献2には何も記載がなく、はんだの表面の酸化を抑止することは困難であると考えられる。
【0014】
また、特許文献3に記載のZn/Al/Znのクラッドはんだは、AlをZnで被覆することで、Al表面の強固な酸化膜の形成を回避することは可能であるが、Znの酸化の問題があり、必ずしも良好な接続を容易に行うことができない場合が懸念される。
【0015】
また、特許文献4に記載のZn−Al系の合金はんだは、その表面に、Au層またはAg層を被覆形成したことにより、Zn−Al系合金はんだの表面の酸化を抑止することは可能であるが、Zn−Al系合金はんだの表面にAu層またはAg層をめっき、スパッタなどにより形成する場合は、製造コストが高くなる可能性がある。
【0016】
したがって、本発明の目的は、製造コストの上昇を抑えつつ、Zn−Al系はんだの表面の酸化を抑止することができると共に良好な濡れ性を示し、フラックスレスで接続を行うことができる高耐熱接合材料、及び、それを用いた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層が形成されていることを特徴とする高耐熱接合材料を提供する。
【0018】
この高耐熱接合材料によれば、上記構成の採用により、つまり、Zn/Al/Znクラッド材の採用によりAlをZnで被覆し、さらに、両側のZnの表面を耐酸化性を有する金属層で被覆することにより、Zn−Al系はんだの表面の酸化を抑止することができると共に良好な濡れ性を示し、フラックスレスで接続を行うことができる高耐熱接合材料を得ることができる。
【0019】
請求項2の発明は、アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面、及び、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面に、夫々、耐酸化性を有する金属層が形成されていることを特徴とする高耐熱接合材料を提供する。
【0020】
この高耐熱接合材料によれば、上記効果に加えて、両側のZn(第一の亜鉛及び第二の亜鉛)のAl(アルミニウム)との接続界面に、夫々、耐酸化性を有する金属層を形成したことにより、両側のZnについては、マスクを使用することなくその全面に耐酸化性を有する金属層をめっきにより形成することができるので、めっき処理による製造コストの上昇を抑えることができる。また、このようにZnの全面に耐酸化性を有する金属層を形成することにより、少なくともその耐酸化性の観点から、接続界面におけるZnとAlとの密着が得やすくなる。したがって、通常クラッド材を製造する場合は、接合面を脱脂、酸化膜除去等の前処理により表面清浄化してから各材料を圧延して接着一体化するが、前記により接続界面におけるZnとAlとの密着が得やすくなるので、クラッド材の製造が非常に容易になる。さらに、Znの全面に耐酸化性を有する金属層を形成することにより、例えばクラッド材保管中に、AlのZn側への拡散を抑制することができる。すなわち、前記したように、本発明は、Zn/Al/Znクラッド材の採用によりAlをZnで被覆し、さらに、両側のZnの表面を耐酸化性を有する金属層で被覆することで、Alが表面に出ない構造としたものであるが、Znの全面に耐酸化性を有する金属層を形成することにより、ZnとAlの接続界面にも耐酸化性を有する金属層が存在することになるので、この耐酸化性を有する金属層がAlの拡散バリアとなって、AlのZn側への拡散を抑制することができる。但し、この拡散バリア層は、本発明の場合、耐酸化性を有する金属層の厚さが薄くてよいので、接合時の加熱に対しては、Zn−Al系はんだの溶融に悪影響を与えるものではない。
【0021】
請求項3の発明は、耐酸化性を有する金属層が、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金の何れかの金属層、または、それらを複合した金属層からなることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱接合材料を提供する。
【0022】
ここで、この発明において耐酸化性を有する金属層として、Au、Ag、Cu、Ni、Pd、Ptを用いる理由を説明する。図3は、各種金属の酸化物の乖離圧の温度依存性を示す、いわゆるエリンガム図と呼ばれる特性図である。この図は、日本金属学会編、「講座・現代の金属学」、精錬編2、非鉄金属精錬の巻末の付表1の標準自由エネルギー変化に基づいて作成したものである。この図において、縦軸の乖離酸素分圧logPO2が0よりも大きい領域は、酸素1気圧下でも金属が酸化しない領域である。したがって、この図によれば、例えばAgの場合は190℃以上の大気中で酸化しないことが分かる。Au、Pd、Ptについては、データが無かったため記載していないが、一般に貴金属と呼ばれる極めて酸化しにくい金属であるため、図中の温度領域で乖離酸素分圧logPO2が0の線よりも上にくるものと思われる。また、この図から分かるもう一つの大事な点は、各種金属の酸化物の乖離酸素分圧logPO2がH2−H2Oの線よりも上にくるか下にくるかということである。つまり、H2−H2Oの線よりも上にくる場合は、金属の酸化物が水素によって還元されうることを意味する。これは水素の方がより安定な酸化物(この場合H2O)を生成しようとするので、その線よりも上にある金属の酸化物が、水素によって酸素を奪い取られる、いわゆる還元反応を起こすからである。この図によると、水素によって還元されうる酸化物を形成する金属としては、Ag、Cu、Ni、Pbが挙げられる。このうち、Pbは、環境への影響が懸念されるので、対象外とされる。したがって、この発明において耐酸化性を有する金属層としては、貴金属と呼ばれる極めて酸化しにくい金属であるAu、Pd、Ptと、190℃以上の加熱で自然還元されうるAgと、水素で還元されうるCu、Niとが、夫々対象とされる。なお、水素による還元については、パワー半導体装置などの半導体素子の接合(ダイボンディング)では、既に製品によっては、水素雰囲気や水素窒素雰囲気で接合すること(水素による還元)が行われている。
【0023】
この高耐熱接合材料によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、すなわち、耐酸化性を有する金属層が、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金の何れかの金属層、または、それらを複合した金属層からなることにより、Zn−Al系はんだの表面の酸化をより確実に抑止することができると共に良好な濡れ性を示し、フラックスレスで接続を行うことができる高耐熱接合材料を得ることができる。
【0024】
請求項4の発明は、耐酸化性を有する金属層の厚さが、第一の亜鉛及び第二の亜鉛の厚さの1/10以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱接合材料を提供する。
【0025】
この発明においては、耐酸化性を有する金属層は、高耐熱接合材料の一部として、接続時に、Zn−Al系の溶融はんだ中に溶解することが求められる。その一部が溶解されずに残る状態は、接続時に、濡れ性不良を発生させる恐れが高まるので、好ましくない。したがって、耐酸化性を有する金属層の厚さは、これを適正範囲に定めることが好ましく、その厚さは、発明者らの検討によると、Zn(第一の亜鉛及び第二の亜鉛)全体の厚さの1/10以下であれば、少なくとも接合温度を420℃とすることでZnは溶融するので、その溶融はんだ中に耐酸化性を有する金属層を溶解させることが可能である。実際には、Znと一緒にAlも溶融するので、耐酸化性を有する金属層は、Zn−Al溶融はんだ中に溶解することになるが、この点も踏まえて、耐酸化性を有する金属層の厚さをZn全体の厚さの1/10以下と定めればよい。また、耐酸化性を有する金属層の厚さが薄いほど、その溶解は速やかに行われる。
【0026】
この高耐熱接合材料によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、すなわち、耐酸化性を有する金属層の厚さが、第一の亜鉛及び第二の亜鉛の厚さの1/10以下であることにより、接続時に、耐酸化性を有する金属層が溶融はんだ中に溶解されずに残ることがなく、濡れ性不良を発生させる恐れを低下させることができる。これにより、接続部の信頼性は向上することになる。
【0027】
請求項5の発明は、耐酸化性を有する金属層の厚さが、0.1μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱接合材料を提供する。
【0028】
この発明において、耐酸化性を有する金属層は、また、AlとZnの間にあっては、前述したように、Alの拡散バリアとして、AlのZn側への拡散を抑制するものである。この効果についても、Zn/Al/Znクラッド材を相当期間保管しなければならない現実を考えると、疎かにできない重要事項であるということができる。通常、金属間の拡散現象は、拡散定数を用いて計算することができる。日本金属学会編、「金属データブック」改訂4版、(p20〜p25)に基づいて、耐酸化性を有する金属層としてのAu、Ag、Cu、Ni、Pd、PtとZnとの間の拡散の進行状況を計算すると、それらの耐酸化性を有する金属層の厚さを0.1μmとすることで、室温25℃で1年程度であれば、十分、その拡散の進行を遅らせることができることが分かる。
【0029】
この高耐熱接合材料によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、すなわち、耐酸化性を有する金属層の厚さが、0.1μm以上であることにより、Znの全面に耐酸化性を有する金属層を形成して、ZnとAlの接続界面に耐酸化性を有する金属層を存在させた場合は、耐酸化性を有する金属層がAlの拡散バリアとなって、AlのZn側への拡散を効果的に抑制することができる。
【0030】
請求項6の発明は、溶融時における、耐酸化性を有する金属層の濃度が、前記金属層が銅あるいはニッケルの場合、全体の平均亜鉛濃度の20%以下の濃度であり、前記金属層が銀の場合、全体の平均亜鉛濃度の23%以下の濃度であり、前記金属層が金の場合は、全体の平均亜鉛濃度の35%以下の濃度であり、前記金属層がパラジウムの場合、全体の平均亜鉛濃度の25%以下の濃度であり、前記金属層が白金の場合、全体の平均亜鉛濃度の38%以下の濃度であることを特徴とする請求項4に記載の高耐熱接合材料を提供する。
【0031】
この発明は、要するに、請求項4の規定との関係で、接合材料全体が溶融したときの、耐酸化性を有する金属層の濃度を見たものである。言い換えれば、耐酸化性を有する金属層が全てZn−Al溶融はんだ中に溶解したときの、耐酸化性を有する金属層の濃度を見たものである。請求項4には、耐酸化性を有する金属層の厚さが第一の亜鉛及び第二の亜鉛の厚さの1/10以下であると規定されている。この上限値に基づいて、溶融時における耐酸化性を有する金属層の濃度を求めると、耐酸化性を有する金属層の濃度は、前記金属層が銅あるいはニッケルの場合、全体の平均亜鉛濃度の20%以下の濃度であり、前記金属層が銀の場合、全体の平均亜鉛濃度の23%以下の濃度であり、前記金属層が金の場合、全体の平均亜鉛濃度の35%以下の濃度であり、前記金属層がパラジウムの場合、全体の平均亜鉛濃度の25%以下の濃度であり、前記金属層が白金の場合、全体の平均亜鉛濃度の38%以下の濃度となる。なお、各数値はあくまでも夫々の濃度の最大値である。
【0032】
この高耐熱接合材料によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、すなわち、溶融時における、耐酸化性を有する金属層の濃度が上記の通りであるので、耐酸化性を有する金属層を構成するCu、Ni、Ag、Au、Pd、PtがZn−Al溶融はんだ中に溶解されずに残ることがなく、濡れ性不良を発生させる恐れを低下させることができる。これにより、接続部の信頼性は向上することになる。
【0033】
請求項7の発明は、アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層が形成されている高耐熱接合材料を用いて、少なくとも半導体素子をダイボンディングしたことを特徴とする半導体装置を提供する。
【0034】
この半導体装置によれば、上記構成の採用により、すなわち、既に述べた請求項1に記載の高耐熱接合材料を用いて、少なくとも半導体素子をダイボンディングしたことにより、半導体素子をフラックスレスで効率的にダイボンディングすることができる。これにより、半導体装置の製造コストの上昇を抑えることができる。
【0035】
請求項8の発明は、アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面、及び、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面に、夫々、耐酸化性を有する金属層が形成されている高耐熱接合材料を用いて、少なくとも半導体素子をダイボンディングしたことを特徴とする半導体装置を提供する。
【0036】
この半導体装置によれば、上記構成の採用により、すなわち、既に述べた請求項2に記載の高耐熱接合材料を用いて、少なくとも半導体素子をダイボンディングしたことにより、半導体素子をフラックスレスで効率的にダイボンディングすることができる。これにより、半導体装置の製造コストの上昇を抑えることが可能になる。また、この半導体装置によれば、請求項2に記載の高耐熱接合材料を用いることにより、耐酸化性を有する金属層をめっきにより形成する場合における処理コストの上昇を抑えることができるので、この点からも半導体装置の製造コストの上昇を抑えることができる。また、クラッド材保管中のAl、Zn間の拡散を抑えることで、接続部の品質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の高耐熱接合材料、及び、それを用いた半導体装置によれば、高耐熱接合材料については、製造コストの上昇を抑えつつ、Zn−Al系はんだの表面の酸化を抑止することができると共に良好な濡れ性を示し、フラックスレスで接続を行うことができる。半導体装置については、そのような高耐熱接合材料を用いて半導体素子をダイボンディングすることにより、半導体装置の製造コストの上昇を抑えることができると共に、接続部の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る高耐熱接合材料の横断面図である。
【図2】本発明の第二の実施の形態に係る高耐熱接合材料の横断面図である。
【図3】各種金属の酸化物の乖離圧の温度依存性を示す、いわゆるエリンガム図と呼ばれる特性図である。
【図4】本発明の第三の実施の形態に係る高耐熱接合材料の横断面図である。
【図5】本発明の第四の実施の形態に係る高耐熱接合材料の横断面図である。
【図6】本発明の第五の実施の形態に関する、高耐熱接合材料を用いて製造されたパワー半導体装置の説明図である。
【図7】Zn−Al系合金の平衡状態図である。
【図8】Ag−Zn系合金の平衡状態図である。
【図9】本発明の構成の一部を利用して製造されたLEDパッケージ用Al/Znクラッド材の横断面図である。
【図10】本発明の構成の一部を利用して製造されたLEDパッケージ用Al/Znクラッド材の横断面図である。
【図11】LEDパッケージ用Al/Znクラッド材を用いて製造されたLEDパッケージの説明図である
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図及び表に基づいて本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0040】
(第一の実施の形態)
図1に、本発明の第一の実施の形態に係る高耐熱接合材料1の横断面図を示す。この高耐熱接合材料1は、アルミニウム(Al)2を中心に、第一の亜鉛(Zn)3、アルミニウム(Al)2、第二の亜鉛(Zn)4の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛(Zn)3及び第二の亜鉛(Zn)4のアルミニウム(Al)2との接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層5、6が形成されている。
【0041】
この高耐熱接合材料1において、Zn/Al/Znクラッド材の厚さは、一般に採用されているダイボンディング用はんだ材の厚さと同じく、100〜200μm程度の厚さとなるように設計することが好ましい。ここでは、溶融時におけるZn−Alの平均組成が、Zn−Al共晶近傍のZn−5wt%Alとなるように、各部材の厚さを調整して、Zn58μm、Al16μm、Zn58μmとなるように設計した。また、耐酸化性を有する金属層5、6の厚さを、夫々1μmとした。
【0042】
耐酸化性を有する金属層5、6には、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)のうちから選ばれた金属が用いられる。また、これらの金属のうちのいくつかを組み合わせて用いることも可能である。なお、Au、Ag、Cu、Ni、Pd、Ptを用いる理由は、既に述べた通りである。
【0043】
また、耐酸化性を有する金属層5、6の全体の厚さは、これも既に述べた理由から、Zn3、4の全体の厚さの1/10以下であることが好ましい。ここでは、Zn3、4の夫々の厚さ58μmに対して、各金属層5、6の厚さを夫々1μmとした。このような厚さであれば、耐酸化性を有する金属層5、6は、接続時にZnとAlが溶融したときに、その溶融はんだ中に速やかに溶解する。
【0044】
また、この溶融時における、耐酸化性を有する金属層5、6の濃度は、上記した1/10以下の上限値との関係から、前記金属層が銅(Cu)あるいはニッケル(Ni)の場合、全体の平均亜鉛濃度の20%以下の濃度であり、前記金属層が銀(Ag)の場合、全体の平均亜鉛濃度の23%以下の濃度であり、前記金属層が金(Au)の場合は、全体の平均亜鉛濃度の35%以下の濃度であり、前記金属層がパラジウム(Pd)の場合、全体の平均亜鉛濃度の25%以下の濃度であり、前記金属層が白金(Pt)の場合、全体の平均亜鉛濃度の38%以下の濃度となる。
【0045】
図1の高耐熱接合材料1を製造するには、まず、クラッド圧延に投入する前のZn3、4の素材箔の片面に耐酸化性を有する金属層5、6をめっきにより形成する。Al2とZn3、4の素材箔の厚さ、及び、前記めっき厚は、クラッド圧延の加工度を考慮して、適正な厚さに設定する。例えば、加工度90%でクラッド圧延を行う場合は、上記により、Zn3、4の仕上がり厚さがいずれも58μm、Alの仕上がり厚さが16μmであるので、Zn3、4とAl2の素材箔の厚さを、夫々、580μm、160μmとし、耐酸化性を有する金属層5、6の圧延前のめっき厚を、10μmとする。このように準備された材料を用いて、クラッド圧延を行い、Zn/Al/Znクラッド材を仕上がり厚さに製造する。これに対し、最初に、クラッド圧延を行い、Zn/Al/Znクラッド材を仕上がり厚さに製造してから、クラッド材の両側のZnの表面に、めっきにより金属層5、6を形成する方法も考えられる。この方法は、否定されるものではないが、長尺のクラッド材の表面にめっきを施すことになり、めっき処理を行うにあたって、大きなめっき浴が必要となる。前者の方は、めっき浴が小さくて済むことから、作業性もよく、低コストでめっき処理を行うことができる。
【0046】
また、この実施の形態において、耐酸化性を有する金属層5、6としてAu、Pd、Ptを用いた場合は、貴金属であることから高コストとなるが、Zn−Al系はんだの表面の酸化がほぼ完全に抑止されるため、良好な濡れ性を示し、接合不良は発生しにくい。Agを用いた場合は、クラッド材を室温で保管中に、Agの酸化が進行するが、接合時に、例えば窒素雰囲気中で加熱する中でAgの酸化物が徐々に還元されることになり、クラッド材がZn−Al共晶温度382℃に達すると、ZnとAlとの界面から共晶溶解反応が起こり、この溶液(Zn−Al溶融はんだ)中にAg及びAgの酸化物が溶解するので、良好な濡れ性を示す。耐酸化性を有する金属層5、6としてCu、Niを用いた場合は、水素あるいは水素窒素雰囲気で接合することで、良好な濡れ性が得られ易くなる。なお、Cu、Niの表面に多少酸化物が存在していたとしても、これらの酸化物はZn−Al溶融はんだによって破壊される可能性があり、したがって、必ずしも水素あるいは水素窒素雰囲気で接合しなければならないというものではない。
【0047】
(第二の実施の形態)
図2に、本発明の第二の実施の形態に係る高耐熱接合材料7の横断面図を示す。この高耐熱接合材料7は、アルミニウム(Al)2を中心に、第一の亜鉛(Zn)3、アルミニウム(Al)2、第二の亜鉛(Zn)4の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛(Zn)3及び第二の亜鉛(Zn)4のアルミニウム(Al)2との接続界面ではない表面、及び、第一の亜鉛(Zn)3及び第二の亜鉛(Zn)4のアルミニウム(Al)2との接続界面に、夫々、耐酸化性を有する金属層8、9が形成されている。
【0048】
この実施の形態は、Zn3、4のAl2との接続界面に耐酸化性を有する金属層8、9が形成されている以外は、第一の実施の形態の場合と同じである。したがって、両者に共通の説明は省略する。
【0049】
この実施の形態で、Zn3、4のAl2との接続界面に耐酸化性を有する金属層8、9を形成した理由は、まず、Zn3、4の表面に耐酸化性を有する金属層8、9をめっきにより形成する場合は、片面めっきだと反対側の表面をマスクにより緊密に覆わなければならないが、全面めっきだとその必要が無く、めっき処理に伴う製造コストの上昇を抑制できるからである。もう一つの理由は、これは積極的なメリットであり、全面めっきであればZn3、4のAl2との接続界面にも耐酸化性を有する金属層8、9が存在することになるので、少なくともその耐酸化性の観点から、接続界面におけるZnとAlとの密着が得やすくなるからである。通常、クラッド材を製造する場合は、接合面を脱脂、酸化膜除去等の前処理により表面清浄化してから各材料を圧延して接着一体化するが、前記により接続界面におけるZnとAlとの密着が得やすくなるので、クラッド材の製造が非常に容易になる。さらに、もう一つの理由は、全面めっきであればZn3、4のAl2との接続界面にも耐酸化性を有する金属層8、9が存在することになるので、例えばクラッド材保管中に、AlのZn側への拡散を抑制することができるからである。既に述べたように、本発明は、Zn/Al/Znクラッド材の採用によりAlをZnで被覆し、さらに、両側のZnの表面を耐酸化性を有する金属層で被覆することで、Alが表面に出ない構造としたものであるが、全面めっきであればZn3、4のAl2との接続界面にも耐酸化性を有する金属層8、9が存在することになるので、耐酸化性を有する金属層8、9がAl2の拡散バリアとなって、AlのZn側への拡散を抑制することができる。但し、この拡散バリア層は、本発明の場合、耐酸化性を有する金属層8、9の厚さが薄くてよいので、接合時の加熱に対しては、Zn−Al系はんだの溶融に悪影響を与えるものではない。
【0050】
この実施の形態においては、高耐熱接合材料7を構成するZn/Al/Znクラッド材の仕上がり厚さは、第一の実施の形態の場合と同じく、Zn58μm、Al16μm、Zn58μmとした。また、耐酸化性を有する金属層5、6、8、9の仕上がり厚さは、夫々1μmとした。耐酸化性を有する金属層5、6、8、9を構成する金属には、Au、Ag、Cu、Ni、Pd、Ptのうちから選ばれた金属が用いられる。耐酸化性を有する金属層5、6は、第一の実施の形態の場合と同じく、Zn/Al/Znクラッド材の表面のZnの酸化を抑制する役割をする。耐酸化性を有する金属層8、9は、クラッド圧延の際は、クラッド材の接続界面におけるZnとAlとの密着を得やすくし、また、クラッド材保管中は、Alの拡散バリアとなって、AlのZn側への拡散を抑制する役割をする。但し、この拡散バリア層は、耐酸化性を有する金属層8、9の厚さが薄いので、接合時の300℃以上の加熱に対しては、AlとZnの拡散が非常に早く進行し、すぐにZnとAlが混ざり合い、Zn−Al共晶溶解が起こり始めるため、Zn−Al系はんだの溶融の障害にはならない。
【0051】
(第三の実施の形態)
図4に、本発明の第三の実施の形態に係る高耐熱接合材料10の横断面図を示す。この高耐熱接合材料10は、アルミニウム(Al)2を中心に、第一の亜鉛(Zn)3、アルミニウム(Al)2、第二の亜鉛(Zn)4の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛(Zn)3及び第二の亜鉛(Zn)4のアルミニウム(Al)2との接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層11、12が埋め込まれた状態でパターン形成されている。
【0052】
この構造も、クラッド圧延に投入する前のZn3、4の素材箔の片面に耐酸化性を有する金属層11、12をめっきによりパターン形成することで、容易に得ることができる。
【0053】
これ以外は、第一の実施の形態の場合と同じである。したがって、両者に共通の説明は省略する。
【0054】
この実施の形態によれば、耐酸化性を有する金属層11、12として、高価なAu、Pd、Ptを使用する場合は、その使用量を削減することができるメリットがある。
【0055】
(第四の実施の形態)
図5に、本発明の第四の実施の形態に係る高耐熱接合材料13の横断面図を示す。この高耐熱接合材料13は、アルミニウム(Al)2を中心に、第一の亜鉛合金(Zn合金)14、アルミニウム(Al)2、第二の亜鉛合金(Zn合金)15の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛合金(Zn合金)14及び第二の亜鉛合金(Zn合金)15のアルミニウム(Al)2との接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層16、17が形成されている。
【0056】
この実施の形態は、要するに、第一の亜鉛及び第二の亜鉛としてZn合金を用いたものであり、Zn合金としては、例えばZn−(3.5〜4.3)Al−(<0.25)Cu−(0.02〜0.05)Mg合金や、Zn−(3.5〜4.3)Al−(0.75〜1.25)Cu−(0.03〜0.08)Mg合金など、JIS H5301規格のZDC1やZDC2のZnダイカスト合金が用いられる。
【0057】
この実施の形態によれば、市場流通量の多い亜鉛合金を用いることで低コスト化のメリットがある。
【0058】
(第五の実施の形態)
図6に、本発明の第五の実施の形態に関する、上記高耐熱接合材料1、7、10、13を用いて製造されたパワー半導体装置18を示す。
【0059】
このパワー半導体装置18は、上記高耐熱接合材料1、7、10、13を用いて、リードフレーム19の半導体素子搭載部20上に半導体素子21をダイボンディングし、ワイヤーもしくはリボン22を用いたワイヤーボンディングにより、リードフレーム19の内部接続端子23と半導体素子21の電極端子24とを電気的に接続した後、トランスファーモールドにより、半導体素子21及び接続部周辺をモールド樹脂25で被覆して、製造される。半導体素子搭載部20は、その底面をモールド樹脂25から露出させて、半導体素子21からの発熱による放熱性を高めている。なお、このような半導体素子搭載部20は、ヒートスプレッダと呼ばれることもある。
【0060】
この実施の形態のパワー半導体装置18によれば、高耐熱接合材料1、7、10、13を用いて、半導体素子21をダイボンディングしたことにより、半導体素子21をフラックスレスで効率的にダイボンディングすることができる。これにより、半導体装置の製造コストの上昇を抑えることができる。特に、高耐熱接合材料7を用いることにより、耐酸化性を有する金属層をめっきにより形成する場合における処理コストの上昇を抑えることができるので、より一層、半導体装置の製造コストの上昇を抑えることができる。また、クラッド材保管中のAl、Zn間の拡散を抑えることで、接続部の品質の向上を図ることができる。したがって、高耐熱接合材料1、7、10、13は、半導体装置用のダイボンディング材として好適な材料であるということができる。
【実施例】
【0061】
表1は、図2の構成に基づいて、溶融時におけるZn−Al系はんだの組成がZn−Al共晶近傍の組成となるように、クラッド材を構成する三層のZn3、Al2、Zn4の厚さを変え、さらに、耐酸化性を有する金属層(耐酸化性金属層)5、6、8、9を構成する金属の種類とその厚さを変えて、高耐熱接合材料7を製造した結果を纏めたものである。
【0062】
【表1】
【0063】
ここで、耐酸化性金属層5、6、8、9としては、Au、Ag、Cu、Niの何れかの金属層、または、それらを複合した金属層(例えば二層めっきにより形成)を用い、その厚さは、夫々1μmとした。複合した金属層の場合、その厚さは、トータルで1μmとした。なお、表1中のこれらの厚さは、いずれもクラッド圧延後の仕上がり厚さである。また、表1中の耐酸化性金属層5、6、8、9の厚さは、1μmに限らず、0.1μm〜5.8μmの範囲で、適宜選択、適用することが可能である。
【0064】
この実施例は、あくまでも図2の構成に基づくものであり、図1の構成に基づく場合は、耐酸化性金属層8、9は無くても構わない。耐酸化性金属層8、9を設けるかどうかは、一義的には、耐酸化性金属層5、6を片面めっきにより形成する場合の、マスク使用に伴うめっき処理のコストの上昇を考慮して、判断される。
【0065】
上記のほか、例えばAl2の厚さを100μm程度に厚くすることも可能である。また、一般に高温はんだ材として用いられる、高耐熱接合材料の全体の厚さを、設計により60μm程度に薄くしたり、200μm程度に厚くしたりすることも可能である。また、耐酸化性金属層を構成する金属の種類については、コスト低減を優先する場合は、AuやAgを使用せず、CuやNiを使用し、耐酸化性、濡れ性を優先する場合は、反対にAuやAgを使用する。これらの金属を含めて使用可能ないくつかの金属を組み合わせることにより、AuやAgの使用量を少なくして、期待する耐酸化性を確保することが可能である。要するに、図1及び図2に記載の高耐熱接合材料の具体的構成については、溶融時におけるZn−Al系はんだの組成を中心とした、接合条件、接合環境、コスト等を踏まえて、種々選択することが可能である。
【0066】
さらに、表1の内容を補足すると、既に述べたように、実施例1〜7の溶融時におけるZn−Al系はんだの組成は、Zn−Al共晶近傍の組成となるように調整されたものである。これについては、図7のZn−Al系合金の平衡状態図を見ると分かるように、共晶組成は、加熱して融点を越えるとZnとAlが同時に溶解して、最も安定的に溶融するため、はんだ等の接合材料においては、濡れ性の点から優れた組成であるということができる。したがって、必ずしも共晶組成に限定されるわけではないが、実施例1〜7においては、共晶をベースに耐酸化性金属の厚さを調整して、その組成を変化させている。
【0067】
例えば、実施例2の場合は、耐酸化性金属層として夫々厚さ1μmのAgを設けており、この実施例2によれば、Agは190℃以上の環境、あるいは水素還元雰囲気で接続を行う場合は容易に還元されるため、良好な濡れ性が得られる。また、AgはAu、Pd、Ptほど高価な貴金属ではないため、コスト面でもメリットは大きい。さらに、実施例2の場合、溶融時の合金に占めるAgの濃度は約2.4%であるが、図8のAg−Zn系合金の平衡状態図を見ると分かるように(実際にはAlの影響も考慮して、三元状態図で見るべきであるが、Ag量が比較的微量であるため、液相面の組成による移動は比較的小さいと予想されることと、分かり易さのため、Ag−Zn二元状態図を使用)、2%程度のAg濃度であれば、430℃程度の加熱では固相が出てこないことが分かる。したがって、その温度で液体となったZnの液相中へのAgの溶解は非常に早くなる。これに対し、Ag濃度が高く(Ag量が多く)、Znの液相と平衡状態でAgの固相が形成される場合は、Znの液相中へのAgの溶解は遅くなる。但し、既に述べたように、耐酸化性金属層としてのAgの全体の厚さが概ねZnの全体の厚さの1/10以下であれば、その溶解性は確保されることになる。したがって、はんだ材としての濡れ性も確保されることになる。
【0068】
(参考例1)
図9に、本発明の構成の一部を利用して製造されたLEDパッケージ用Al/Znクラッド材26の横断面図を示す。
【0069】
このAl/Znクラッド材26は、Al27の片側にのみ存在するZn28の表面に耐酸化性を有する金属層29を形成したものであり、やはり高耐熱接合材料として使用されるものである。
【0070】
硬質ロールを用いた圧延により金属箔を製造する場合は、圧縮された金属箔の加工面は鏡面となる。これを利用して、前記クラッド材26をクラッド圧延により製造する場合において、Al27を十分厚くしておくと、Zn28とAl27の接続界面は加工時に熱をもらって共晶反応により溶解するが、厚くされたAl27の表面は鏡面加工されて溶解されずにそのままの表面状態を保つことができる。したがって、このAl/Znクラッド材26を用いて、例えばLED素子を搭載するための接着性を有する配線を形成し、LEDパッケージを構成する場合は、鏡面加工されたAlの配線によって、LED素子からの発光に対する高い反射率が得られることになる。
【0071】
(参考例2)
図10に、本発明の構成の一部を利用して製造されたLEDパッケージ用Al/Znクラッド材30の横断面図を示す。
【0072】
このAl/Znクラッド材30は、Al27の片側にのみ存在するZn28の表面、及び、Al27との接続界面に、夫々耐酸化性を有する金属層31、32を形成したものであり、やはり高耐熱接合材料として使用されるものである。
【0073】
また、このAl/Znクラッド材30についても、クラッド圧延により製造し、Al27を十分厚くして、Al27の表面を鏡面加工することについては、参考例1と同じである。したがって、また、参考例1と同じように、このAl/Znクラッド材30を用いて、例えばLED素子を搭載するための接着性を有する配線を形成し、LEDパッケージを構成する場合は、鏡面加工されたAlの配線によって、LED素子からの発光に対する高い反射率が得られることになる。
【0074】
(参考例3)
図11に、上記LEDパッケージ用Al/Znクラッド材26、30を用いて製造されたLEDパッケージ33を示す。
【0075】
このLEDパッケージ33は、セラミック基板34上にスパッタ、蒸着、あるいはめっきなどにより、べた状に形成されたTi35/Cu36の電極の上に上記クラッド材26、30を接合し、エッチングにより余分なAl、Zn、Ti、Cuを除去して、所望の配線パターンを形成する。そして、この配線パターン上の素子搭載部に透明接着剤37を用いてLED素子38を搭載し、LED素子38の電極と配線パターン上の電極との間をボンディングワイヤ39により電気的に接続して、製造される。40はZn−Al合金はんだ部である。なお、さらに透明な樹脂を用いて、LED素子38及び接続部周辺を被覆する場合もある。
【0076】
このLEDパッケージ33によれば、前記したようにAlを鏡面加工して製造されたクラッド材26、30を用いて配線を形成することにより、LED素子38からの発光に対する高い反射率が得られると共に、厚いAlとCuによって構成された配線を通して、LED素子38からの発熱を平面方向に拡散させることができ、放熱性に優れたLEDパッケージを得ることができる。
【0077】
セラミック基板34を用いたLEDパッケージでは、一般に、セラミック基板34としてアルミナセラミック基板が用いられる。これは、アルミナセラミックが光の反射率が高く、LED素子38からの発光の多くを光の取出面方向に向けるのに有利であるからである。しかし、一般に、アルミナセラミックは、熱伝導率が低く、放熱性に優れているとは言いがたい。放熱性の高いセラミックとしては、例えば窒化アルミニウムがある。しかし、窒化アルミニウムは、光の反射率が高くないことから、LEDパッケージに用いられることはほとんどない。窒化アルミニウム上にAlのメタライズを蒸着やスパッタで形成することも考えられるが、結晶粒の成長による凹凸により、光を乱反射させてしまうため、高い反射率が得られなくなる。
【0078】
この参考例3のように、Alを鏡面加工して製造されたクラッド材26、30を用いて配線を形成することで、窒化アルミニウムを用いることが可能になり、これにより発光に対する高い反射率とともに優れた放熱性を備えたLEDパッケージを製造することが可能になる。
【符号の説明】
【0079】
1、7、10、13 高耐熱接合材料
2 アルミニウム(Al)
3、14 第一の亜鉛(第一のZn)
4、15 第二の亜鉛(第二のZn)
5、6、8、9、11、12、16、17 耐酸化性を有する金属層(耐酸化性金属層)
18 パワー半導体装置
19 リードフレーム
20 半導体素子搭載部
21 半導体素子
22 ワイヤーもしくはリボン
23 内部接続端子
24 電極端子
25 モールド樹脂
26、30 Al/Znクラッド材
27 Al
28 Zn
29、31、32 耐酸化性を有する金属層
33 LEDパッケージ
34 セラミック基板
35 Ti
36 Cu
37 透明接着剤
38 LED素子
39 ボンディングワイヤ
40 Zn−Al合金はんだ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置の分野において、特にパワー半導体装置の分野において、半導体素子をダイボンディングする際に用いられる、鉛を多く含み融点が300℃近い、いわゆる高温はんだと呼ばれるはんだの代替材料となり得る、高耐熱接合材料及びそれを用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リードフレームを用いて製造される半導体装置の多くは、リードフレーム上に半導体素子をダイボンディングし、ワイヤーボンディングにより、リードフレームの内部接続端子と半導体素子の電極端子とを電気的に接続した後、トランスファーモールドにより、半導体素子及び接続部周辺をモールド樹脂で被覆して、製造されるのが一般的である。
【0003】
ダイボンディングには、古くは金−シリコン接合などが採用されてきたが、金が高コストであることから、近年は鉛を9割近く含み、融点が約300℃である高温はんだが多く用いられるようになってきている。特に、パワー半導体装置など、半導体素子の発熱が大きく、半導体素子からの良好な放熱性が求められる、半導体装置においては、高温はんだが多く用いられている。一方、半導体素子の発熱が小さい半導体装置においては、ダイボンディング材として接着性を有する有機フィルムが用いられることがある。
【0004】
しかしながら、はんだに関しては、環境意識の高まりと共に、各国で環境影響物質の規制が進められており、はんだに含まれる鉛の使用も一部では規制の対象となっている。これによって、例えば上記により製造された半導体装置をプリント基板に実装する際に用いられるはんだ材としては、融点が183℃の鉛−錫共晶はんだから、錫−銀−銅はんだなどの鉛フリーはんだに置き換えられてきた。しかし、上記した半導体素子をダイボンディングする際に用いられる高温はんだについては、置き換え可能な適当な接合材料が見当たらないことから、これまでのところ規制の対象からは除外されてきた。
【0005】
はんだの鉛フリー化は時代の趨勢であり、半導体素子をダイボンディングする際に用いられる高温はんだについても、その代替材料となり得る高耐熱接合材料の開発が望まれている。
【0006】
このような状況に対応して、先行技術文献である特許文献1には、Zn−Al−Mg−Ga系の合金組成からなる、鉛フリーの高温はんだが開示されている。特許文献1によると、この合金は、Gaを加えることで、従来の高鉛はんだに近い融点を実現している。また、この合金は、硬度が高く加工性に劣ることから、200℃程度で熱間成形してはんだ合金材とするか、粉末にした後でペースト状のはんだ合金材とするのがよいとあり、薄い金属箔からなるはんだ材を得るためには、製造コストの上昇は免れず、また、ペースト状のはんだ材では、接続後に洗浄が必要なことが多く、通常、洗浄を行わずに済むようにフラックスレスで接続している、パワー半導体装置における半導体素子のダイボンディングには、少なくとも汎用的には適用できない可能性がある。
【0007】
また、特許文献2には、Zn−Al−Ge系またはZn−Al−Mg系の合金組成からなる、鉛フリーの高温はんだが開示されている。特許文献2によると、この合金は、Gaまたは/およびMgを加えることで、従来の高鉛はんだに近い融点を実現している。しかし、はんだとしての濡れ性を確保するために必須である、はんだの表面の酸化膜の還元や破壊については、不明な点が多い。
【0008】
また、特許文献3には、Zn/Al/Znの三層構造からなるクラッドはんだが開示されている。特許文献3によると、このクラッドはんだは、表面に強固な酸化皮膜を形成するAlをZnで被覆することで、Al表面の酸化膜の形成を回避して、はんだとしての濡れ性の向上を図っている。Al表面の酸化膜の形成が回避されるので、はんだとしての濡れ性の向上は達成されるが、Znも酸化し易い金属であるため、実際に接続を行う場合は、接続部の周囲の雰囲気を含めて、適切な接続条件及び接続装置を選択して採用する必要がある。
【0009】
また、特許文献4には、Zn−Al系の合金組成からなる、鉛フリーはんだの表面に、Au層またはAg層を被覆形成した構造からなる複合はんだが開示されている。特許文献4によると、この複合はんだは、Au層またはAg層の存在により、Zn−Al系合金はんだの表面の酸化を抑止するものである。しかし、Zn−Al系合金はんだもまた酸化し易い金属であるため、単純にAu層またはAg層をめっきにより形成しようとしても、既に酸化が進行しているZn−Al系合金はんだの表面にめっきを施すことになり、内部に酸化膜が閉じ込められることにより、接続時に、溶融はんだ中に酸化物が巻き込まれる恐れがある。これにより接続部の信頼性は低下する可能性がある。また、長尺の金属箔からなるはんだ材の表面にめっきを施す場合は、めっき処理にコストが嵩む不利がある。これは、めっき以外のスパッタなどの方法でも同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−172352号公報
【特許文献2】特開平11−288955号公報
【特許文献3】特開2008−126272号公報
【特許文献4】特開2002−261104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
Zn−Al系合金はんだの実用上の大きな課題は、通常、フラックスレスで接続している、パワー半導体装置における半導体素子のダイボンディングに適用できるようにすることである。そのためには、まず、Zn−Al系はんだの表面の酸化を抑止することが肝要である。また、製造コストの上昇をできるだけ抑える必要がある。
【0012】
既に述べた通り、特許文献1に記載のZn−Al−Mg−Ga系の合金はんだは、硬度が高く加工性に劣ることから、製造コストの上昇は免れず、また、ペースト状のはんだ材では、フラックスレスで接続している、パワー半導体装置における半導体素子のダイボンディングには、適用できない可能性がある。
【0013】
また、特許文献2に記載のZn−Al−Ge系またはZn−Al−Mg系の合金はんだは、はんだとしての濡れ性を確保するためには、はんだの表面の酸化を抑止することが必須であるが、この点について特許文献2には何も記載がなく、はんだの表面の酸化を抑止することは困難であると考えられる。
【0014】
また、特許文献3に記載のZn/Al/Znのクラッドはんだは、AlをZnで被覆することで、Al表面の強固な酸化膜の形成を回避することは可能であるが、Znの酸化の問題があり、必ずしも良好な接続を容易に行うことができない場合が懸念される。
【0015】
また、特許文献4に記載のZn−Al系の合金はんだは、その表面に、Au層またはAg層を被覆形成したことにより、Zn−Al系合金はんだの表面の酸化を抑止することは可能であるが、Zn−Al系合金はんだの表面にAu層またはAg層をめっき、スパッタなどにより形成する場合は、製造コストが高くなる可能性がある。
【0016】
したがって、本発明の目的は、製造コストの上昇を抑えつつ、Zn−Al系はんだの表面の酸化を抑止することができると共に良好な濡れ性を示し、フラックスレスで接続を行うことができる高耐熱接合材料、及び、それを用いた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層が形成されていることを特徴とする高耐熱接合材料を提供する。
【0018】
この高耐熱接合材料によれば、上記構成の採用により、つまり、Zn/Al/Znクラッド材の採用によりAlをZnで被覆し、さらに、両側のZnの表面を耐酸化性を有する金属層で被覆することにより、Zn−Al系はんだの表面の酸化を抑止することができると共に良好な濡れ性を示し、フラックスレスで接続を行うことができる高耐熱接合材料を得ることができる。
【0019】
請求項2の発明は、アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面、及び、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面に、夫々、耐酸化性を有する金属層が形成されていることを特徴とする高耐熱接合材料を提供する。
【0020】
この高耐熱接合材料によれば、上記効果に加えて、両側のZn(第一の亜鉛及び第二の亜鉛)のAl(アルミニウム)との接続界面に、夫々、耐酸化性を有する金属層を形成したことにより、両側のZnについては、マスクを使用することなくその全面に耐酸化性を有する金属層をめっきにより形成することができるので、めっき処理による製造コストの上昇を抑えることができる。また、このようにZnの全面に耐酸化性を有する金属層を形成することにより、少なくともその耐酸化性の観点から、接続界面におけるZnとAlとの密着が得やすくなる。したがって、通常クラッド材を製造する場合は、接合面を脱脂、酸化膜除去等の前処理により表面清浄化してから各材料を圧延して接着一体化するが、前記により接続界面におけるZnとAlとの密着が得やすくなるので、クラッド材の製造が非常に容易になる。さらに、Znの全面に耐酸化性を有する金属層を形成することにより、例えばクラッド材保管中に、AlのZn側への拡散を抑制することができる。すなわち、前記したように、本発明は、Zn/Al/Znクラッド材の採用によりAlをZnで被覆し、さらに、両側のZnの表面を耐酸化性を有する金属層で被覆することで、Alが表面に出ない構造としたものであるが、Znの全面に耐酸化性を有する金属層を形成することにより、ZnとAlの接続界面にも耐酸化性を有する金属層が存在することになるので、この耐酸化性を有する金属層がAlの拡散バリアとなって、AlのZn側への拡散を抑制することができる。但し、この拡散バリア層は、本発明の場合、耐酸化性を有する金属層の厚さが薄くてよいので、接合時の加熱に対しては、Zn−Al系はんだの溶融に悪影響を与えるものではない。
【0021】
請求項3の発明は、耐酸化性を有する金属層が、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金の何れかの金属層、または、それらを複合した金属層からなることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱接合材料を提供する。
【0022】
ここで、この発明において耐酸化性を有する金属層として、Au、Ag、Cu、Ni、Pd、Ptを用いる理由を説明する。図3は、各種金属の酸化物の乖離圧の温度依存性を示す、いわゆるエリンガム図と呼ばれる特性図である。この図は、日本金属学会編、「講座・現代の金属学」、精錬編2、非鉄金属精錬の巻末の付表1の標準自由エネルギー変化に基づいて作成したものである。この図において、縦軸の乖離酸素分圧logPO2が0よりも大きい領域は、酸素1気圧下でも金属が酸化しない領域である。したがって、この図によれば、例えばAgの場合は190℃以上の大気中で酸化しないことが分かる。Au、Pd、Ptについては、データが無かったため記載していないが、一般に貴金属と呼ばれる極めて酸化しにくい金属であるため、図中の温度領域で乖離酸素分圧logPO2が0の線よりも上にくるものと思われる。また、この図から分かるもう一つの大事な点は、各種金属の酸化物の乖離酸素分圧logPO2がH2−H2Oの線よりも上にくるか下にくるかということである。つまり、H2−H2Oの線よりも上にくる場合は、金属の酸化物が水素によって還元されうることを意味する。これは水素の方がより安定な酸化物(この場合H2O)を生成しようとするので、その線よりも上にある金属の酸化物が、水素によって酸素を奪い取られる、いわゆる還元反応を起こすからである。この図によると、水素によって還元されうる酸化物を形成する金属としては、Ag、Cu、Ni、Pbが挙げられる。このうち、Pbは、環境への影響が懸念されるので、対象外とされる。したがって、この発明において耐酸化性を有する金属層としては、貴金属と呼ばれる極めて酸化しにくい金属であるAu、Pd、Ptと、190℃以上の加熱で自然還元されうるAgと、水素で還元されうるCu、Niとが、夫々対象とされる。なお、水素による還元については、パワー半導体装置などの半導体素子の接合(ダイボンディング)では、既に製品によっては、水素雰囲気や水素窒素雰囲気で接合すること(水素による還元)が行われている。
【0023】
この高耐熱接合材料によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、すなわち、耐酸化性を有する金属層が、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金の何れかの金属層、または、それらを複合した金属層からなることにより、Zn−Al系はんだの表面の酸化をより確実に抑止することができると共に良好な濡れ性を示し、フラックスレスで接続を行うことができる高耐熱接合材料を得ることができる。
【0024】
請求項4の発明は、耐酸化性を有する金属層の厚さが、第一の亜鉛及び第二の亜鉛の厚さの1/10以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱接合材料を提供する。
【0025】
この発明においては、耐酸化性を有する金属層は、高耐熱接合材料の一部として、接続時に、Zn−Al系の溶融はんだ中に溶解することが求められる。その一部が溶解されずに残る状態は、接続時に、濡れ性不良を発生させる恐れが高まるので、好ましくない。したがって、耐酸化性を有する金属層の厚さは、これを適正範囲に定めることが好ましく、その厚さは、発明者らの検討によると、Zn(第一の亜鉛及び第二の亜鉛)全体の厚さの1/10以下であれば、少なくとも接合温度を420℃とすることでZnは溶融するので、その溶融はんだ中に耐酸化性を有する金属層を溶解させることが可能である。実際には、Znと一緒にAlも溶融するので、耐酸化性を有する金属層は、Zn−Al溶融はんだ中に溶解することになるが、この点も踏まえて、耐酸化性を有する金属層の厚さをZn全体の厚さの1/10以下と定めればよい。また、耐酸化性を有する金属層の厚さが薄いほど、その溶解は速やかに行われる。
【0026】
この高耐熱接合材料によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、すなわち、耐酸化性を有する金属層の厚さが、第一の亜鉛及び第二の亜鉛の厚さの1/10以下であることにより、接続時に、耐酸化性を有する金属層が溶融はんだ中に溶解されずに残ることがなく、濡れ性不良を発生させる恐れを低下させることができる。これにより、接続部の信頼性は向上することになる。
【0027】
請求項5の発明は、耐酸化性を有する金属層の厚さが、0.1μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱接合材料を提供する。
【0028】
この発明において、耐酸化性を有する金属層は、また、AlとZnの間にあっては、前述したように、Alの拡散バリアとして、AlのZn側への拡散を抑制するものである。この効果についても、Zn/Al/Znクラッド材を相当期間保管しなければならない現実を考えると、疎かにできない重要事項であるということができる。通常、金属間の拡散現象は、拡散定数を用いて計算することができる。日本金属学会編、「金属データブック」改訂4版、(p20〜p25)に基づいて、耐酸化性を有する金属層としてのAu、Ag、Cu、Ni、Pd、PtとZnとの間の拡散の進行状況を計算すると、それらの耐酸化性を有する金属層の厚さを0.1μmとすることで、室温25℃で1年程度であれば、十分、その拡散の進行を遅らせることができることが分かる。
【0029】
この高耐熱接合材料によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、すなわち、耐酸化性を有する金属層の厚さが、0.1μm以上であることにより、Znの全面に耐酸化性を有する金属層を形成して、ZnとAlの接続界面に耐酸化性を有する金属層を存在させた場合は、耐酸化性を有する金属層がAlの拡散バリアとなって、AlのZn側への拡散を効果的に抑制することができる。
【0030】
請求項6の発明は、溶融時における、耐酸化性を有する金属層の濃度が、前記金属層が銅あるいはニッケルの場合、全体の平均亜鉛濃度の20%以下の濃度であり、前記金属層が銀の場合、全体の平均亜鉛濃度の23%以下の濃度であり、前記金属層が金の場合は、全体の平均亜鉛濃度の35%以下の濃度であり、前記金属層がパラジウムの場合、全体の平均亜鉛濃度の25%以下の濃度であり、前記金属層が白金の場合、全体の平均亜鉛濃度の38%以下の濃度であることを特徴とする請求項4に記載の高耐熱接合材料を提供する。
【0031】
この発明は、要するに、請求項4の規定との関係で、接合材料全体が溶融したときの、耐酸化性を有する金属層の濃度を見たものである。言い換えれば、耐酸化性を有する金属層が全てZn−Al溶融はんだ中に溶解したときの、耐酸化性を有する金属層の濃度を見たものである。請求項4には、耐酸化性を有する金属層の厚さが第一の亜鉛及び第二の亜鉛の厚さの1/10以下であると規定されている。この上限値に基づいて、溶融時における耐酸化性を有する金属層の濃度を求めると、耐酸化性を有する金属層の濃度は、前記金属層が銅あるいはニッケルの場合、全体の平均亜鉛濃度の20%以下の濃度であり、前記金属層が銀の場合、全体の平均亜鉛濃度の23%以下の濃度であり、前記金属層が金の場合、全体の平均亜鉛濃度の35%以下の濃度であり、前記金属層がパラジウムの場合、全体の平均亜鉛濃度の25%以下の濃度であり、前記金属層が白金の場合、全体の平均亜鉛濃度の38%以下の濃度となる。なお、各数値はあくまでも夫々の濃度の最大値である。
【0032】
この高耐熱接合材料によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、すなわち、溶融時における、耐酸化性を有する金属層の濃度が上記の通りであるので、耐酸化性を有する金属層を構成するCu、Ni、Ag、Au、Pd、PtがZn−Al溶融はんだ中に溶解されずに残ることがなく、濡れ性不良を発生させる恐れを低下させることができる。これにより、接続部の信頼性は向上することになる。
【0033】
請求項7の発明は、アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層が形成されている高耐熱接合材料を用いて、少なくとも半導体素子をダイボンディングしたことを特徴とする半導体装置を提供する。
【0034】
この半導体装置によれば、上記構成の採用により、すなわち、既に述べた請求項1に記載の高耐熱接合材料を用いて、少なくとも半導体素子をダイボンディングしたことにより、半導体素子をフラックスレスで効率的にダイボンディングすることができる。これにより、半導体装置の製造コストの上昇を抑えることができる。
【0035】
請求項8の発明は、アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面、及び、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面に、夫々、耐酸化性を有する金属層が形成されている高耐熱接合材料を用いて、少なくとも半導体素子をダイボンディングしたことを特徴とする半導体装置を提供する。
【0036】
この半導体装置によれば、上記構成の採用により、すなわち、既に述べた請求項2に記載の高耐熱接合材料を用いて、少なくとも半導体素子をダイボンディングしたことにより、半導体素子をフラックスレスで効率的にダイボンディングすることができる。これにより、半導体装置の製造コストの上昇を抑えることが可能になる。また、この半導体装置によれば、請求項2に記載の高耐熱接合材料を用いることにより、耐酸化性を有する金属層をめっきにより形成する場合における処理コストの上昇を抑えることができるので、この点からも半導体装置の製造コストの上昇を抑えることができる。また、クラッド材保管中のAl、Zn間の拡散を抑えることで、接続部の品質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の高耐熱接合材料、及び、それを用いた半導体装置によれば、高耐熱接合材料については、製造コストの上昇を抑えつつ、Zn−Al系はんだの表面の酸化を抑止することができると共に良好な濡れ性を示し、フラックスレスで接続を行うことができる。半導体装置については、そのような高耐熱接合材料を用いて半導体素子をダイボンディングすることにより、半導体装置の製造コストの上昇を抑えることができると共に、接続部の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る高耐熱接合材料の横断面図である。
【図2】本発明の第二の実施の形態に係る高耐熱接合材料の横断面図である。
【図3】各種金属の酸化物の乖離圧の温度依存性を示す、いわゆるエリンガム図と呼ばれる特性図である。
【図4】本発明の第三の実施の形態に係る高耐熱接合材料の横断面図である。
【図5】本発明の第四の実施の形態に係る高耐熱接合材料の横断面図である。
【図6】本発明の第五の実施の形態に関する、高耐熱接合材料を用いて製造されたパワー半導体装置の説明図である。
【図7】Zn−Al系合金の平衡状態図である。
【図8】Ag−Zn系合金の平衡状態図である。
【図9】本発明の構成の一部を利用して製造されたLEDパッケージ用Al/Znクラッド材の横断面図である。
【図10】本発明の構成の一部を利用して製造されたLEDパッケージ用Al/Znクラッド材の横断面図である。
【図11】LEDパッケージ用Al/Znクラッド材を用いて製造されたLEDパッケージの説明図である
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図及び表に基づいて本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0040】
(第一の実施の形態)
図1に、本発明の第一の実施の形態に係る高耐熱接合材料1の横断面図を示す。この高耐熱接合材料1は、アルミニウム(Al)2を中心に、第一の亜鉛(Zn)3、アルミニウム(Al)2、第二の亜鉛(Zn)4の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛(Zn)3及び第二の亜鉛(Zn)4のアルミニウム(Al)2との接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層5、6が形成されている。
【0041】
この高耐熱接合材料1において、Zn/Al/Znクラッド材の厚さは、一般に採用されているダイボンディング用はんだ材の厚さと同じく、100〜200μm程度の厚さとなるように設計することが好ましい。ここでは、溶融時におけるZn−Alの平均組成が、Zn−Al共晶近傍のZn−5wt%Alとなるように、各部材の厚さを調整して、Zn58μm、Al16μm、Zn58μmとなるように設計した。また、耐酸化性を有する金属層5、6の厚さを、夫々1μmとした。
【0042】
耐酸化性を有する金属層5、6には、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)のうちから選ばれた金属が用いられる。また、これらの金属のうちのいくつかを組み合わせて用いることも可能である。なお、Au、Ag、Cu、Ni、Pd、Ptを用いる理由は、既に述べた通りである。
【0043】
また、耐酸化性を有する金属層5、6の全体の厚さは、これも既に述べた理由から、Zn3、4の全体の厚さの1/10以下であることが好ましい。ここでは、Zn3、4の夫々の厚さ58μmに対して、各金属層5、6の厚さを夫々1μmとした。このような厚さであれば、耐酸化性を有する金属層5、6は、接続時にZnとAlが溶融したときに、その溶融はんだ中に速やかに溶解する。
【0044】
また、この溶融時における、耐酸化性を有する金属層5、6の濃度は、上記した1/10以下の上限値との関係から、前記金属層が銅(Cu)あるいはニッケル(Ni)の場合、全体の平均亜鉛濃度の20%以下の濃度であり、前記金属層が銀(Ag)の場合、全体の平均亜鉛濃度の23%以下の濃度であり、前記金属層が金(Au)の場合は、全体の平均亜鉛濃度の35%以下の濃度であり、前記金属層がパラジウム(Pd)の場合、全体の平均亜鉛濃度の25%以下の濃度であり、前記金属層が白金(Pt)の場合、全体の平均亜鉛濃度の38%以下の濃度となる。
【0045】
図1の高耐熱接合材料1を製造するには、まず、クラッド圧延に投入する前のZn3、4の素材箔の片面に耐酸化性を有する金属層5、6をめっきにより形成する。Al2とZn3、4の素材箔の厚さ、及び、前記めっき厚は、クラッド圧延の加工度を考慮して、適正な厚さに設定する。例えば、加工度90%でクラッド圧延を行う場合は、上記により、Zn3、4の仕上がり厚さがいずれも58μm、Alの仕上がり厚さが16μmであるので、Zn3、4とAl2の素材箔の厚さを、夫々、580μm、160μmとし、耐酸化性を有する金属層5、6の圧延前のめっき厚を、10μmとする。このように準備された材料を用いて、クラッド圧延を行い、Zn/Al/Znクラッド材を仕上がり厚さに製造する。これに対し、最初に、クラッド圧延を行い、Zn/Al/Znクラッド材を仕上がり厚さに製造してから、クラッド材の両側のZnの表面に、めっきにより金属層5、6を形成する方法も考えられる。この方法は、否定されるものではないが、長尺のクラッド材の表面にめっきを施すことになり、めっき処理を行うにあたって、大きなめっき浴が必要となる。前者の方は、めっき浴が小さくて済むことから、作業性もよく、低コストでめっき処理を行うことができる。
【0046】
また、この実施の形態において、耐酸化性を有する金属層5、6としてAu、Pd、Ptを用いた場合は、貴金属であることから高コストとなるが、Zn−Al系はんだの表面の酸化がほぼ完全に抑止されるため、良好な濡れ性を示し、接合不良は発生しにくい。Agを用いた場合は、クラッド材を室温で保管中に、Agの酸化が進行するが、接合時に、例えば窒素雰囲気中で加熱する中でAgの酸化物が徐々に還元されることになり、クラッド材がZn−Al共晶温度382℃に達すると、ZnとAlとの界面から共晶溶解反応が起こり、この溶液(Zn−Al溶融はんだ)中にAg及びAgの酸化物が溶解するので、良好な濡れ性を示す。耐酸化性を有する金属層5、6としてCu、Niを用いた場合は、水素あるいは水素窒素雰囲気で接合することで、良好な濡れ性が得られ易くなる。なお、Cu、Niの表面に多少酸化物が存在していたとしても、これらの酸化物はZn−Al溶融はんだによって破壊される可能性があり、したがって、必ずしも水素あるいは水素窒素雰囲気で接合しなければならないというものではない。
【0047】
(第二の実施の形態)
図2に、本発明の第二の実施の形態に係る高耐熱接合材料7の横断面図を示す。この高耐熱接合材料7は、アルミニウム(Al)2を中心に、第一の亜鉛(Zn)3、アルミニウム(Al)2、第二の亜鉛(Zn)4の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛(Zn)3及び第二の亜鉛(Zn)4のアルミニウム(Al)2との接続界面ではない表面、及び、第一の亜鉛(Zn)3及び第二の亜鉛(Zn)4のアルミニウム(Al)2との接続界面に、夫々、耐酸化性を有する金属層8、9が形成されている。
【0048】
この実施の形態は、Zn3、4のAl2との接続界面に耐酸化性を有する金属層8、9が形成されている以外は、第一の実施の形態の場合と同じである。したがって、両者に共通の説明は省略する。
【0049】
この実施の形態で、Zn3、4のAl2との接続界面に耐酸化性を有する金属層8、9を形成した理由は、まず、Zn3、4の表面に耐酸化性を有する金属層8、9をめっきにより形成する場合は、片面めっきだと反対側の表面をマスクにより緊密に覆わなければならないが、全面めっきだとその必要が無く、めっき処理に伴う製造コストの上昇を抑制できるからである。もう一つの理由は、これは積極的なメリットであり、全面めっきであればZn3、4のAl2との接続界面にも耐酸化性を有する金属層8、9が存在することになるので、少なくともその耐酸化性の観点から、接続界面におけるZnとAlとの密着が得やすくなるからである。通常、クラッド材を製造する場合は、接合面を脱脂、酸化膜除去等の前処理により表面清浄化してから各材料を圧延して接着一体化するが、前記により接続界面におけるZnとAlとの密着が得やすくなるので、クラッド材の製造が非常に容易になる。さらに、もう一つの理由は、全面めっきであればZn3、4のAl2との接続界面にも耐酸化性を有する金属層8、9が存在することになるので、例えばクラッド材保管中に、AlのZn側への拡散を抑制することができるからである。既に述べたように、本発明は、Zn/Al/Znクラッド材の採用によりAlをZnで被覆し、さらに、両側のZnの表面を耐酸化性を有する金属層で被覆することで、Alが表面に出ない構造としたものであるが、全面めっきであればZn3、4のAl2との接続界面にも耐酸化性を有する金属層8、9が存在することになるので、耐酸化性を有する金属層8、9がAl2の拡散バリアとなって、AlのZn側への拡散を抑制することができる。但し、この拡散バリア層は、本発明の場合、耐酸化性を有する金属層8、9の厚さが薄くてよいので、接合時の加熱に対しては、Zn−Al系はんだの溶融に悪影響を与えるものではない。
【0050】
この実施の形態においては、高耐熱接合材料7を構成するZn/Al/Znクラッド材の仕上がり厚さは、第一の実施の形態の場合と同じく、Zn58μm、Al16μm、Zn58μmとした。また、耐酸化性を有する金属層5、6、8、9の仕上がり厚さは、夫々1μmとした。耐酸化性を有する金属層5、6、8、9を構成する金属には、Au、Ag、Cu、Ni、Pd、Ptのうちから選ばれた金属が用いられる。耐酸化性を有する金属層5、6は、第一の実施の形態の場合と同じく、Zn/Al/Znクラッド材の表面のZnの酸化を抑制する役割をする。耐酸化性を有する金属層8、9は、クラッド圧延の際は、クラッド材の接続界面におけるZnとAlとの密着を得やすくし、また、クラッド材保管中は、Alの拡散バリアとなって、AlのZn側への拡散を抑制する役割をする。但し、この拡散バリア層は、耐酸化性を有する金属層8、9の厚さが薄いので、接合時の300℃以上の加熱に対しては、AlとZnの拡散が非常に早く進行し、すぐにZnとAlが混ざり合い、Zn−Al共晶溶解が起こり始めるため、Zn−Al系はんだの溶融の障害にはならない。
【0051】
(第三の実施の形態)
図4に、本発明の第三の実施の形態に係る高耐熱接合材料10の横断面図を示す。この高耐熱接合材料10は、アルミニウム(Al)2を中心に、第一の亜鉛(Zn)3、アルミニウム(Al)2、第二の亜鉛(Zn)4の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛(Zn)3及び第二の亜鉛(Zn)4のアルミニウム(Al)2との接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層11、12が埋め込まれた状態でパターン形成されている。
【0052】
この構造も、クラッド圧延に投入する前のZn3、4の素材箔の片面に耐酸化性を有する金属層11、12をめっきによりパターン形成することで、容易に得ることができる。
【0053】
これ以外は、第一の実施の形態の場合と同じである。したがって、両者に共通の説明は省略する。
【0054】
この実施の形態によれば、耐酸化性を有する金属層11、12として、高価なAu、Pd、Ptを使用する場合は、その使用量を削減することができるメリットがある。
【0055】
(第四の実施の形態)
図5に、本発明の第四の実施の形態に係る高耐熱接合材料13の横断面図を示す。この高耐熱接合材料13は、アルミニウム(Al)2を中心に、第一の亜鉛合金(Zn合金)14、アルミニウム(Al)2、第二の亜鉛合金(Zn合金)15の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛合金(Zn合金)14及び第二の亜鉛合金(Zn合金)15のアルミニウム(Al)2との接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層16、17が形成されている。
【0056】
この実施の形態は、要するに、第一の亜鉛及び第二の亜鉛としてZn合金を用いたものであり、Zn合金としては、例えばZn−(3.5〜4.3)Al−(<0.25)Cu−(0.02〜0.05)Mg合金や、Zn−(3.5〜4.3)Al−(0.75〜1.25)Cu−(0.03〜0.08)Mg合金など、JIS H5301規格のZDC1やZDC2のZnダイカスト合金が用いられる。
【0057】
この実施の形態によれば、市場流通量の多い亜鉛合金を用いることで低コスト化のメリットがある。
【0058】
(第五の実施の形態)
図6に、本発明の第五の実施の形態に関する、上記高耐熱接合材料1、7、10、13を用いて製造されたパワー半導体装置18を示す。
【0059】
このパワー半導体装置18は、上記高耐熱接合材料1、7、10、13を用いて、リードフレーム19の半導体素子搭載部20上に半導体素子21をダイボンディングし、ワイヤーもしくはリボン22を用いたワイヤーボンディングにより、リードフレーム19の内部接続端子23と半導体素子21の電極端子24とを電気的に接続した後、トランスファーモールドにより、半導体素子21及び接続部周辺をモールド樹脂25で被覆して、製造される。半導体素子搭載部20は、その底面をモールド樹脂25から露出させて、半導体素子21からの発熱による放熱性を高めている。なお、このような半導体素子搭載部20は、ヒートスプレッダと呼ばれることもある。
【0060】
この実施の形態のパワー半導体装置18によれば、高耐熱接合材料1、7、10、13を用いて、半導体素子21をダイボンディングしたことにより、半導体素子21をフラックスレスで効率的にダイボンディングすることができる。これにより、半導体装置の製造コストの上昇を抑えることができる。特に、高耐熱接合材料7を用いることにより、耐酸化性を有する金属層をめっきにより形成する場合における処理コストの上昇を抑えることができるので、より一層、半導体装置の製造コストの上昇を抑えることができる。また、クラッド材保管中のAl、Zn間の拡散を抑えることで、接続部の品質の向上を図ることができる。したがって、高耐熱接合材料1、7、10、13は、半導体装置用のダイボンディング材として好適な材料であるということができる。
【実施例】
【0061】
表1は、図2の構成に基づいて、溶融時におけるZn−Al系はんだの組成がZn−Al共晶近傍の組成となるように、クラッド材を構成する三層のZn3、Al2、Zn4の厚さを変え、さらに、耐酸化性を有する金属層(耐酸化性金属層)5、6、8、9を構成する金属の種類とその厚さを変えて、高耐熱接合材料7を製造した結果を纏めたものである。
【0062】
【表1】
【0063】
ここで、耐酸化性金属層5、6、8、9としては、Au、Ag、Cu、Niの何れかの金属層、または、それらを複合した金属層(例えば二層めっきにより形成)を用い、その厚さは、夫々1μmとした。複合した金属層の場合、その厚さは、トータルで1μmとした。なお、表1中のこれらの厚さは、いずれもクラッド圧延後の仕上がり厚さである。また、表1中の耐酸化性金属層5、6、8、9の厚さは、1μmに限らず、0.1μm〜5.8μmの範囲で、適宜選択、適用することが可能である。
【0064】
この実施例は、あくまでも図2の構成に基づくものであり、図1の構成に基づく場合は、耐酸化性金属層8、9は無くても構わない。耐酸化性金属層8、9を設けるかどうかは、一義的には、耐酸化性金属層5、6を片面めっきにより形成する場合の、マスク使用に伴うめっき処理のコストの上昇を考慮して、判断される。
【0065】
上記のほか、例えばAl2の厚さを100μm程度に厚くすることも可能である。また、一般に高温はんだ材として用いられる、高耐熱接合材料の全体の厚さを、設計により60μm程度に薄くしたり、200μm程度に厚くしたりすることも可能である。また、耐酸化性金属層を構成する金属の種類については、コスト低減を優先する場合は、AuやAgを使用せず、CuやNiを使用し、耐酸化性、濡れ性を優先する場合は、反対にAuやAgを使用する。これらの金属を含めて使用可能ないくつかの金属を組み合わせることにより、AuやAgの使用量を少なくして、期待する耐酸化性を確保することが可能である。要するに、図1及び図2に記載の高耐熱接合材料の具体的構成については、溶融時におけるZn−Al系はんだの組成を中心とした、接合条件、接合環境、コスト等を踏まえて、種々選択することが可能である。
【0066】
さらに、表1の内容を補足すると、既に述べたように、実施例1〜7の溶融時におけるZn−Al系はんだの組成は、Zn−Al共晶近傍の組成となるように調整されたものである。これについては、図7のZn−Al系合金の平衡状態図を見ると分かるように、共晶組成は、加熱して融点を越えるとZnとAlが同時に溶解して、最も安定的に溶融するため、はんだ等の接合材料においては、濡れ性の点から優れた組成であるということができる。したがって、必ずしも共晶組成に限定されるわけではないが、実施例1〜7においては、共晶をベースに耐酸化性金属の厚さを調整して、その組成を変化させている。
【0067】
例えば、実施例2の場合は、耐酸化性金属層として夫々厚さ1μmのAgを設けており、この実施例2によれば、Agは190℃以上の環境、あるいは水素還元雰囲気で接続を行う場合は容易に還元されるため、良好な濡れ性が得られる。また、AgはAu、Pd、Ptほど高価な貴金属ではないため、コスト面でもメリットは大きい。さらに、実施例2の場合、溶融時の合金に占めるAgの濃度は約2.4%であるが、図8のAg−Zn系合金の平衡状態図を見ると分かるように(実際にはAlの影響も考慮して、三元状態図で見るべきであるが、Ag量が比較的微量であるため、液相面の組成による移動は比較的小さいと予想されることと、分かり易さのため、Ag−Zn二元状態図を使用)、2%程度のAg濃度であれば、430℃程度の加熱では固相が出てこないことが分かる。したがって、その温度で液体となったZnの液相中へのAgの溶解は非常に早くなる。これに対し、Ag濃度が高く(Ag量が多く)、Znの液相と平衡状態でAgの固相が形成される場合は、Znの液相中へのAgの溶解は遅くなる。但し、既に述べたように、耐酸化性金属層としてのAgの全体の厚さが概ねZnの全体の厚さの1/10以下であれば、その溶解性は確保されることになる。したがって、はんだ材としての濡れ性も確保されることになる。
【0068】
(参考例1)
図9に、本発明の構成の一部を利用して製造されたLEDパッケージ用Al/Znクラッド材26の横断面図を示す。
【0069】
このAl/Znクラッド材26は、Al27の片側にのみ存在するZn28の表面に耐酸化性を有する金属層29を形成したものであり、やはり高耐熱接合材料として使用されるものである。
【0070】
硬質ロールを用いた圧延により金属箔を製造する場合は、圧縮された金属箔の加工面は鏡面となる。これを利用して、前記クラッド材26をクラッド圧延により製造する場合において、Al27を十分厚くしておくと、Zn28とAl27の接続界面は加工時に熱をもらって共晶反応により溶解するが、厚くされたAl27の表面は鏡面加工されて溶解されずにそのままの表面状態を保つことができる。したがって、このAl/Znクラッド材26を用いて、例えばLED素子を搭載するための接着性を有する配線を形成し、LEDパッケージを構成する場合は、鏡面加工されたAlの配線によって、LED素子からの発光に対する高い反射率が得られることになる。
【0071】
(参考例2)
図10に、本発明の構成の一部を利用して製造されたLEDパッケージ用Al/Znクラッド材30の横断面図を示す。
【0072】
このAl/Znクラッド材30は、Al27の片側にのみ存在するZn28の表面、及び、Al27との接続界面に、夫々耐酸化性を有する金属層31、32を形成したものであり、やはり高耐熱接合材料として使用されるものである。
【0073】
また、このAl/Znクラッド材30についても、クラッド圧延により製造し、Al27を十分厚くして、Al27の表面を鏡面加工することについては、参考例1と同じである。したがって、また、参考例1と同じように、このAl/Znクラッド材30を用いて、例えばLED素子を搭載するための接着性を有する配線を形成し、LEDパッケージを構成する場合は、鏡面加工されたAlの配線によって、LED素子からの発光に対する高い反射率が得られることになる。
【0074】
(参考例3)
図11に、上記LEDパッケージ用Al/Znクラッド材26、30を用いて製造されたLEDパッケージ33を示す。
【0075】
このLEDパッケージ33は、セラミック基板34上にスパッタ、蒸着、あるいはめっきなどにより、べた状に形成されたTi35/Cu36の電極の上に上記クラッド材26、30を接合し、エッチングにより余分なAl、Zn、Ti、Cuを除去して、所望の配線パターンを形成する。そして、この配線パターン上の素子搭載部に透明接着剤37を用いてLED素子38を搭載し、LED素子38の電極と配線パターン上の電極との間をボンディングワイヤ39により電気的に接続して、製造される。40はZn−Al合金はんだ部である。なお、さらに透明な樹脂を用いて、LED素子38及び接続部周辺を被覆する場合もある。
【0076】
このLEDパッケージ33によれば、前記したようにAlを鏡面加工して製造されたクラッド材26、30を用いて配線を形成することにより、LED素子38からの発光に対する高い反射率が得られると共に、厚いAlとCuによって構成された配線を通して、LED素子38からの発熱を平面方向に拡散させることができ、放熱性に優れたLEDパッケージを得ることができる。
【0077】
セラミック基板34を用いたLEDパッケージでは、一般に、セラミック基板34としてアルミナセラミック基板が用いられる。これは、アルミナセラミックが光の反射率が高く、LED素子38からの発光の多くを光の取出面方向に向けるのに有利であるからである。しかし、一般に、アルミナセラミックは、熱伝導率が低く、放熱性に優れているとは言いがたい。放熱性の高いセラミックとしては、例えば窒化アルミニウムがある。しかし、窒化アルミニウムは、光の反射率が高くないことから、LEDパッケージに用いられることはほとんどない。窒化アルミニウム上にAlのメタライズを蒸着やスパッタで形成することも考えられるが、結晶粒の成長による凹凸により、光を乱反射させてしまうため、高い反射率が得られなくなる。
【0078】
この参考例3のように、Alを鏡面加工して製造されたクラッド材26、30を用いて配線を形成することで、窒化アルミニウムを用いることが可能になり、これにより発光に対する高い反射率とともに優れた放熱性を備えたLEDパッケージを製造することが可能になる。
【符号の説明】
【0079】
1、7、10、13 高耐熱接合材料
2 アルミニウム(Al)
3、14 第一の亜鉛(第一のZn)
4、15 第二の亜鉛(第二のZn)
5、6、8、9、11、12、16、17 耐酸化性を有する金属層(耐酸化性金属層)
18 パワー半導体装置
19 リードフレーム
20 半導体素子搭載部
21 半導体素子
22 ワイヤーもしくはリボン
23 内部接続端子
24 電極端子
25 モールド樹脂
26、30 Al/Znクラッド材
27 Al
28 Zn
29、31、32 耐酸化性を有する金属層
33 LEDパッケージ
34 セラミック基板
35 Ti
36 Cu
37 透明接着剤
38 LED素子
39 ボンディングワイヤ
40 Zn−Al合金はんだ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層が形成されていることを特徴とする高耐熱接合材料。
【請求項2】
アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面、及び、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面に、夫々、耐酸化性を有する金属層が形成されていることを特徴とする高耐熱接合材料。
【請求項3】
耐酸化性を有する金属層が、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金の何れかの金属層、または、それらを複合した金属層からなることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱接合材料。
【請求項4】
耐酸化性を有する金属層の厚さが、第一の亜鉛及び第二の亜鉛の厚さの1/10以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱接合材料。
【請求項5】
耐酸化性を有する金属層の厚さが、0.1μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱接合材料。
【請求項6】
溶融時における、耐酸化性を有する金属層の濃度が、前記金属層が銅あるいはニッケルの場合、全体の平均亜鉛濃度の20%以下の濃度であり、前記金属層が銀の場合、全体の平均亜鉛濃度の23%以下の濃度であり、前記金属層が金の場合、全体の平均亜鉛濃度の35%以下の濃度であり、前記金属層がパラジウムの場合、全体の平均亜鉛濃度の25%以下の濃度であり、前記金属層が白金の場合、全体の平均亜鉛濃度の38%以下の濃度であることを特徴とする請求項4に記載の高耐熱接合材料。
【請求項7】
アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層が形成されている高耐熱接合材料を用いて、少なくとも半導体素子をダイボンディングしたことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面、及び、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面に、夫々、耐酸化性を有する金属層が形成されている高耐熱接合材料を用いて、少なくとも半導体素子をダイボンディングしたことを特徴とする半導体装置。
【請求項1】
アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層が形成されていることを特徴とする高耐熱接合材料。
【請求項2】
アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面、及び、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面に、夫々、耐酸化性を有する金属層が形成されていることを特徴とする高耐熱接合材料。
【請求項3】
耐酸化性を有する金属層が、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金の何れかの金属層、または、それらを複合した金属層からなることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱接合材料。
【請求項4】
耐酸化性を有する金属層の厚さが、第一の亜鉛及び第二の亜鉛の厚さの1/10以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱接合材料。
【請求項5】
耐酸化性を有する金属層の厚さが、0.1μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱接合材料。
【請求項6】
溶融時における、耐酸化性を有する金属層の濃度が、前記金属層が銅あるいはニッケルの場合、全体の平均亜鉛濃度の20%以下の濃度であり、前記金属層が銀の場合、全体の平均亜鉛濃度の23%以下の濃度であり、前記金属層が金の場合、全体の平均亜鉛濃度の35%以下の濃度であり、前記金属層がパラジウムの場合、全体の平均亜鉛濃度の25%以下の濃度であり、前記金属層が白金の場合、全体の平均亜鉛濃度の38%以下の濃度であることを特徴とする請求項4に記載の高耐熱接合材料。
【請求項7】
アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面に、耐酸化性を有する金属層が形成されている高耐熱接合材料を用いて、少なくとも半導体素子をダイボンディングしたことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
アルミニウムを中心に、第一の亜鉛、アルミニウム、第二の亜鉛の三層がクラッドされた金属箔からなり、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面ではない表面、及び、第一の亜鉛及び第二の亜鉛のアルミニウムとの接続界面に、夫々、耐酸化性を有する金属層が形成されている高耐熱接合材料を用いて、少なくとも半導体素子をダイボンディングしたことを特徴とする半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−224598(P2011−224598A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95300(P2010−95300)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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