説明

高速原子線源および高速原子線放出方法ならびに表面改質装置

【課題】安価に短時間で所望の単位時間当たりの放出原子密度分布にすることを可能にする。
【解決手段】陽極駆動部31aにより陽極2の中心を回動軸として反復回動可能にすることにより、陽極2と原子放出部との距離を変化させる。制御部32aは、陽極2の変位により所望の原子密度分布を得るように設定された入力データを受けて、陽極2を変位させるための駆動制御信号を前記陽極駆動部31aに出力する。また、制御部32aによって、陽極駆動部31aを駆動中に停止したり、駆動速度を変更したりして、陽極2における各姿勢の滞在時間などを変更することにより、単位時間あたりの原子密度を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを発生させて原子を放出する高速原子線源[FAB (Fast Atom Bombardment)又はSaddle Field Source]、および高速原子線放出方法、ならびに高速原子線源を搭載する表面処理装置(例えば表面改質装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
常温の大気中に存在する原子、分子よりはるかに大きな運動エネルギで、かつ方向性を持っているものは高速原子線と呼ばれ、また、その高速原子線を発生させるものは高速原子線源と呼ばれる。
【0003】
高速原子線源は、主に半導体製造プロセスで使用される加工工程などに利用されている。高速原子線源は、イオンビームに比べ加工対象を帯電させないことが特徴であって、帯電による対象物へのダメージや、対象物の特性により帯電すると所望の処理精度が確保できないような場合でも使用することができる。
【0004】
しかし、従来の高速原子線源においては、放出される原子線の密度が均一になり難いという課題がある。この課題を解決するため、高速原子線源において放出される原子の分布を面均一にするようにした技術が特許文献1に記載されている。
【0005】
特許文献1には、プラズマを生成する放電容器に複数の孔を有する放出電極あるいはガス導入電極を設け、前記孔の長さあるいは径を位置によって異なるように設定し、放出される原子の分布の均一化を図るようにした構成の高速原子線源が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特許第3363040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、処理される対象物の形状、また、例えばウエハのようなチップに比べて大きなもの、またはエッチングレートを向上させる場合、あるいは設備の構成によっては、原子線源と対象物との距離が不均一になる場合があり、このような場合に高速原子を照射すると、対象物に衝突する原子密度が均一にならず、対象物の構造が設計と不一致となり、不良を発生させてしまう。
【0008】
また、処理の量や対象物が変われば、従来法では原子線源の構造を変更しなければならず、経済的ではない。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであって、安価に短時間で所望の単位時間当たりの放出原子密度分布にすることを可能にした高速原子線源および高速原子線放出方法ならびに表面改質装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0011】
本発明の第1態様によれば、一部が開口され、陰極として作用して、原子を放出可能な放出部を有し、かつ内部にプラズマを発生させる筒状体と、
前記筒状体の内部に配置される陽極と、
前記陽極に電気的に接続されて前記陽極に電圧を印加して、前記筒状体内に前記プラズマを発生させて、前記放出部から原子を放出させる電源と、
前記筒状体の内部で前記放出部に対して前記陽極を変位させる陽極駆動部とを備る原子線源を提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、前記陽極は、棒状あるいはリング状である第1の態様に記載の原子線源を提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、前記陽極駆動部を制御して、前記放出部に対して前記陽極を所定周期毎に接近し又は離れるように変位させる制御部をさらに備える第1または2の態様に記載の原子線源を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、前記陽極の前記変位に関連して、前記電源から前記陽極に印加される前記電圧を制御する制御部をさらに備える第1〜3のいずれか1つの態様に記載の原子線源を提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、筒状体を陰極とし、前記筒状体の内部に設けられた陽極に電圧を印加して前記筒状体の内部でプラズマを発生させて前記筒状体の一部が開口されて陰極として作用して、原子を放出可能な放出部から原子を放出するとともに、前記筒状体の内部で前記放出部に対して前記陽極を陽極駆動部により変位させる原子線放出方法を提供する。
本発明の第6態様によれば、前記陽極駆動部を制御して、前記放出部に対して前記陽極を所定周期毎に変位させつつ、前記筒状体の内部で前記プラズマを発生させて前記放出部から前記原子を放出する、第5の態様に記載の原子線放出方法を提供する。
【0016】
本発明の第7態様によれば、前記陽極として複数の棒状の陽極が配置されており、前記複数の棒状の陽極部材の長手軸方向はそれぞれ前記放出部に大略平行な状態で、かつ、前記放出部が、前記原子を放出する対象の対象物の面に対して傾斜した状態で、前記筒状体の内部で前記プラズマを発生させて前記放出部から前記原子を放出するとともに、前記複数の棒状の陽極部材のうち、少なくとも前記対象物に近い側の前記陽極部材を前記放出部に対して変位させる、第5又は6の態様に記載の原子線放出方法を提供する。
【0017】
本発明の第8態様によれば、前記陽極の前記変位に関連して、前記電源から前記陽極に印加される前記電圧を制御しながら、前記筒状体の内部でプラズマを発生させて前記開口部から原子を放出する、第5〜7のいずれか1つの態様に記載の原子線放出方法を提供する。
【0018】
本発明の第9態様によれば、筒状体内部にプラズマを発生させた原子線源から原子を対象物に放出して前記対象物の表面改質をする表面改質装置において、
載置台に載置された前記対象物の平面に垂直な軸に対し、前記原子線源における原子を放出する放出中心軸を傾斜して設置されるとともに、
前記原子線源として、第1〜3いずれか1つの態様に記載の原子線源により構成する表面改質装置を提供する。
【0019】
前記構成により、内部にプラズマを発生させて原子を放出する陰極の筒状体内部に棒状あるいはリング状の陽極を配置し、この陽極を変位可能にして、対象物に対して最適な単位時間当たりの放出原子密度分布となるように、筒状体内の陽極を変位させ、放電空間内の電子密度を制御することにより、所望の処理能力を確保することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、陰極である筒状体内部の陽極を変位させ、放電空間内の電子密度を制御することにより、安価に短時間で所望の単位時間当たりの放出原子密度分布を得ることができ、表面改質装置においては、良好な表面処理が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係る高速原子線源を説明するための高速原子線源の一部を破断して示す斜視図であり、1は高速原子線源の外枠(筒状体の一例、図1では直方体形状の筒状体で示す。)、2は外枠1の内部に互いに平行に配置された複数の棒状の陽極、3は外枠1の外部に配置された直流高圧電源、4は外枠1の内部の放電空間、5は外枠1の一面に配置されて外枠1の外部と放電空間4を繋ぐ原子放出部、6は外枠1の一面に配置されたガス導入部、7は放出される原子線を示す。
【0023】
図1において、高速原子線源の外枠1は、絶縁体またはアースと接続された導電体で構成されており、内部に設けられた複数の陽極2には直流高圧電源3が接続されて、例えば2kV〜3kVの電圧を複数の陽極2のそれぞれに印加する。また、外枠1の一部(少なくとも、陽極2の軸方向と平行な方向沿いの面、図1では上面と下面)には、外部と放電空間4を繋ぐ開口である原子放出部5が設けられている。原子放出部5は、外枠1の導電体部分と導通が取れており、共に陰極として作用する。原子放出部1の形状は、無数の貫通孔がある導電性の板体とするものが一般的である。原子放出部5は、図1では、上下に2つの面を設けているが、高速原子線を効率良く発生させるためには、上下いずれか1つの面とするのが好ましい。複数の陽極2は、一例として、それぞれ、上下の原子放出部5に対して同一距離だけ離れて互いに大略平行に配置されている。
【0024】
さらに、外枠1の一部(図1では、原子放出部5が配置された上面と直交する左側の側面)には、外枠1の外部から放電用のガスを導入するためのガス導入部6が設けられている。ガス導入部6は、この配置に限らず、外枠1の形状、および陽極2の形状と位置に応じて、プラズマが安定する最適な場所へ配置することが望ましい。ガス導入部6には、ガス供給装置70が連結されて、制御装置100の制御の下に、ガス供給装置70から、プラズマを形成するのに必要なガスがガス導入部6を通して外枠1の内部の放電空間4に供給されるようにしている。
【0025】
なお、所望の原子線7の密度が得られるものであれば、外枠1の形状は任意に設計できる。また、原子放出部5の配置は、所望の原子線7の密度が得られる場所であれば、設置個数、方向、場所を任意に設定することができる。第1実施形態における図1に示す原子放出部5の位置は、放出原子密度の比較的高い位置に配置した例である。
【0026】
ガス供給装置70により、ガス導入部6からプラズマを形成するガス、例えばAr、N、He、H、O、HOなどを放電空間4内に導入し、減圧装置71により放電空間4の圧力を約100Pa以下にし、直流高圧電源3により陽極2に直流電圧を印加することによって、放電空間4にプラズマが形成される。制御装置100は、ガス供給装置70と、減圧装置71と、直流高圧電源3と、陽極駆動装置31に接続された制御部32とをそれぞれ動作制御して、放電空間4にプラズマを形成するようにする。
【0027】
図2Aは、本発明の前記第1実施形態に係る高速原子線源を搭載した表面処理装置の一例としての表面改質装置を示す概略構成図であり、11は反応容器により構成される反応室、12は処理対象物である一方の基板であって一例としてSi(シリコン)からなり、13は処理対象物である他方の基板であって一例としてSi(シリコン)からなる。制御装置100は、ガス供給装置70と、減圧装置71と、直流高圧電源3と、陽極駆動装置31に接続された制御部32とをそれぞれ有する高速原子線源19,20と、ベローズ駆動装置74などとを動作制御するとともに、質量分析器28,30からの分析結果情報が入力されて、放電空間4にプラズマを形成して基板の表面改質を行なうようにする。
【0028】
一方の基板12は下部基板台14の上に載置され、他方の基板13は上部基板台15に固定される。上部基板台15には静電チャック16が埋め込まれ、静電チャック16に電圧印加装置73により電圧を印加することにより、他方の基板13は静電チャック16に静電吸着される。上部基板台15は、ベローズ17に取り付けられて、反応室11に対して昇降可能としている。すなわち、ベローズ17は、その下端が、反応室11の上面に固定されたリング状固定板17cに固定され、ベローズ17の上端には固定板17bが固定されている。固定板17bを貫通して固定板17bに支持棒17aが固定されている。支持棒17aの下部は反応室11を貫通して、下端に上部基板台15が固定されている。ベローズ17は、エアーポンプなどのベローズ駆動装置74に連結されて、ベローズ駆動装置74が駆動されることにより、ベローズ17が伸縮して、固定板17bよって支持棒17aが昇降し、上部基板台15を昇降させることができる。すなわち、このベローズ17を上下することにより、ベローズ17に連結された上部基板台15を上下動することができて、対向する面が互いに表面改質された他方の基板13を、一方の基板12に圧着させることができる。
【0029】
18は反応室11の真空排気口、71は反応室11内を真空吸引して減圧にする減圧装置、19は一方の基板12を改質するための高速原子線7を放出する第1の高速原子線源(例えば、図1の高速原子線源)、20は他方の基板13を改質するための高速原子線7を放出する第2の高速原子線源(例えば、図1の高速原子線源)、両高速原子線源19、20には、それぞれ、ガス供給配管21、22と、陽極2への電圧印加用の電力供給配線23、24が接続されている。ガス供給配管21、22と電力供給配線23、24は、供給コネクタ25、26により、反応室11の真空度を保つことができるようにしている。また、支持棒17aも、シール17dにより反応室11の真空度を保つことができるようにしている。
【0030】
27は、一方の基板12の基板表面を第1の高速原子線源19から照射された高速原子線7により洗浄する際、該一方の基板12の表面から放出された元素を取り込むための質量分析口、28は質量分析口27に連結された質量分析器である。また、29は、他方の基板13の基板表面を第2の高速原子線源20から照射された高速原子線により洗浄する際、該他方の基板13の表面から放出された元素を取り込むための質量分析口、30は質量分析口29に連結された質量分析器である。質量分析器29,30により質量分析をそれぞれの基板12,13に対して行ない、その分析結果の情報を基に制御装置100で洗浄動作を制御することにより、それぞれの基板12,13に対して所望の洗浄が行えるようにしている。
【0031】
前記構成の高速原子線源および表面改質装置における動作中、プラズマ内の加速されたイオンが他のイオン、原子、電子、および放電空間4の外枠内壁、陽極2などに衝突した際に中性化された原子が、原子放出部5を通過して原子線7を形成する。原子線7の原子の密度は、放電空間4における原子放出部5と陽極2との間の電子密度に大きく影響を受ける。
【0032】
図3A及び図3Bに示すように、原子放出部5に対して同一距離だけ離れて複数の陽極2がそれぞれ配置され、外枠1に対して上側にのみ配置された原子放出部5の表面と基板12、13とが大略平行に配置されておれば、基板12、13の表面のそれぞれの点と陽極2との距離が一定であるため、通常、図1に示す高速原子線源19,20の放出原子密度、従って、基板12、13の表面に衝突する原子密度は均一で一定になるように構成されている。図3Bの45は2つの陽極2の中間部に形成されたプラズマを概略的に示している。しかしながら、図5に示すように、従来のように、陽極2の位置を外枠1内で固定したまま、単に、斜め方向から処理対象物である基板12、13に高速原子線7を高速原子線源19,20から照射する場合には、基板12、13の表面のそれぞれの点と陽極2との距離が一定ではないため、実際に、基板12、13の表面に衝突する原子密度が不均一となる。図5では、高速原子線源19,20の斜め右下側に位置する陽極2と基板12、13の表面との距離が最も近く、単位時間当たりの原子密度が高くなる一方、高速原子線源19,20の斜め左上側に位置する陽極2と基板12、13の表面との距離が最も大きく、単位時間当たりの原子密度が低くなるので、基板12、13の表面に衝突する原子密度が不均一となっている。
【0033】
そこで、図4Aに示すように、放電空間4の内部の陽極2の位置を陰極である外枠1側へ近付けると(例えば、陽極2の長手方向の一端部(図4Aの右端部)を支点として他端部(図4Aの左端部)を陰極である外枠1側へ近付けると)、陽極2から陰極へ引っ張られるイオンの運動エネルギが減少する。図4Bは、2つの陽極2のうちの左側の陽極2のみを図4Aのように変位させたときに、2つの陽極2の中間部に右側に傾斜して形成されたプラズマ45を概略的に示している。図4Cは、2つの陽極2のうちの左側の陽極2のみを図4Aとは逆方向に陰極から遠ざかるように変位させたときに、2つの陽極2の中間部に左側に傾斜して形成されたプラズマ45を概略的に示している。また、陽極2の周りを周期運動している電子は、陽極2と陰極の距離が近くなることによって、外枠1の壁への衝突が増加し電子の密度が減少する。その結果、衝突によって中性化された原子の数が減少し、放出原子密度が減少する。
【0034】
よって、後述するように陽極2の位置を変えるように制御(陽極2が変位するように制御)することにより、所望の単位時間当たりの放出原子密度にするように陽極2に勾配を付けることが可能となる。すなわち、図6に示すように、斜め方向から基板12、13に高速原子線7を高速原子線源19,20から照射し、基板12、13に衝突する原子密度を均一にするように陽極2の位置を変更させる、すなわち陽極2を変位させるように制御することにより、原子線7による均一処理が可能となる。
【0035】
具体的には、一例として、複数の棒状の陽極2が配置されており、前記複数の棒状の陽極2の長手軸方向はそれぞれ前記放出部5に大略平行な状態で、かつ、前記放出部5が、前記原子を放出する対象の対象物の一例としての基板12,13の面に対して傾斜した状態で、前記外枠1の内部で前記プラズマを発生させて前記放出部5から前記原子を放出するとともに、前記複数の棒状の陽極2のうち、少なくとも前記基板12,13に遠い側の前記陽極2(図6では左上側の陽極2)を前記放出部5に対して変位(例えば接近)させれば、図3Bような大略均一なプラズマ45を陽極2,2間に形成することできて、高速原子線7による基板12、13の表面に衝突する原子密度を大略均一にすることができる。
【0036】
図7〜図9は第1実施形態における陽極の配置例、その変位動作などに係る説明図である。
【0037】
図7において、31aは、棒状の陽極2を、該陽極2の中心を回動軸として反復回動可能にすることにより、陽極2と前記原子放出部5との距離を変える、陽極駆動部31の一例としての陽極駆動部、32aは、陽極2の変位により所望の原子密度分布を得るように設定された入力データを受けて、陽極2を変位させるための駆動制御信号を陽極駆動部31aのモータ81に出力する、制御部32の一例としての制御部である。
【0038】
陽極2の変位動作としては、陽極2の中心を支点として揺動するのではなく、左右に平行移動させてもよく、また、陽極2の変位動作は、プラズマ放電を妨げないような動作であるなら、どのような動作でもよい。例えば、陽極2の変位は、前記原子放出部5に対して単純に遠ざかる運動、単純に近づく運動、プラズマ発生位置を中心として前記原子放出部5に対して接離する運動などが挙げられる。前記原子放出部5に対して単純に遠ざかる運動又は単純に近づく運動は、運動が単純であるため制御しやすく、原子密度分布を全体的に増減させることができる。これに対して、プラズマ発生位置を中心として前記原子放出部5に対して接離する運動の場合には、陽極2の長手方向の一方の端部側の原子密度分布に対して他方の端部側の原子密度分布を相対的に増減させることができ、部分的に原子密度分布を増減させることができる。
【0039】
陽極駆動部31aは、具体的に図示しないが、モータ、シリンダ、又は電磁石などの陽極駆動源とその駆動力伝達機構とにより構成されている。具体的には、図2B及び図2Cに示すように、陽極駆動部31aは、反応室11の外部の駆動源から磁石を利用して回転駆動力を反応室11内に伝達し、反応室11内の高速原子線源19,20の近傍でカム機構により陽極2の変位を行なうようにしている。一例として、図2Bに示すように、反応室11の外部には駆動源の一例としてのモータ81を配置している。モータ81の回転軸81aにはカップリング82が連結されている。カップリング82により、モータ81の回転軸81aと連結された駆動軸83は、反応室11の壁11wを貫通して、壁11wに対して軸受け90により回転自在に支持されるように配置されている。なお、91は反応室11の減圧状態を維持するためのシールである。駆動軸83の外枠1の内側端部の円柱部には、N極とS極の駆動側磁石84n,84sが固定されている。N極とS極の駆動側磁石84n,84sの周囲には、N極とS極の駆動側磁石84n,84sと隙間を空けてかつ磁気的に吸引するS極とN極の従動側磁石85s,85nが従動軸86の外側端部の円筒部に固定されて、駆動側磁石84n,84sの回転に対応して従動側磁石85s,85nが同時的に回転されることにより、非接触で、モータ81からの回転力を従動軸86に伝達できるようにしている。図2Cに示すように、従動軸86の内側端部には偏心カム87を固定し、従動軸86の回転により偏心カム87が従動軸86の回転軸86r周りに偏心回転するようにしている(図2D参照)。この偏心カム87には、外枠1の枠壁1wの長孔1p(図2E参照)を貫通して陽極2に連結されたカムフォロワ88がバネ89の付勢力により常時接触するように付勢されている。カムフォロワ88は、従動軸86の回転軸と直交する案内軸89g沿いに直線的に昇降移動する。一方、各陽極2は、その長手方向の中央部が絶縁体支持部材79で揺動可能に外枠1に支持されており、各陽極2の一端が、自在継ぎ手や球面軸受けなどの連結部88aを介してカムフォロワ88と連結されて、カムフォロワ88の移動に対して陽極2が絶縁体支持部材79を支点として揺動可能としている。この結果、カムフォロワ88の昇降運動により、絶縁体支持部材79を支点として陽極2が図7に示すように揺動することになる。絶縁体支持部材79による陽極2の支持箇所をプラズマ発生位置の中心にすれば、プラズマ発生位置の中心回りに陽極2が揺動することになる。
【0040】
また、陽極駆動部31aに接続された制御部32aによって、陽極駆動部31aを陽極変位駆動中に停止したり、駆動速度を変更したりするなどの動作制御を行なって、陽極2における各姿勢の滞在時間などを変更することにより、単位時間あたりの原子密度を変化させることができる。
【0041】
図7のような陽極の揺動動作を行なうことにより、陰極の軸方向の原子線放出開口部の中心付近の、原子線密度を一定として、原子線放出開口部端部の原子線密度を上下させることができる。
【0042】
次に、図8に示す別の例では、図7の揺動運動に代えて、陽極2と前記原子放出部5との平行状態を保ったまま、陽極2と前記原子放出部5との距離を増減するように、陽極2を図8の上下方向(陽極2の直径方向でかつ前記原子放出部5の表面とは直交する方向)沿いに変位させることにより、原子密度を可変にしている。図7に示す例と同様に、陽極駆動部31の一例としての陽極駆動部31bは駆動源の一例としてモータ、シリンダ、又は電磁石などで構成することができ、陽極駆動部31bと同様な構成とすることができる。図7とは異なり、陽極2は単に上下方向に移動するため、陽極2の揺動を許容するような自在継ぎ手や球面軸受けなどの連結部88aは不要となり、単に、カムフォロワ88の一端を陽極2に連結固定するだけでよく、連結構造を簡単なものとすることができる。図7の制御部32aと同様に、陽極2を変位させるための駆動制御信号を陽極駆動部31bに出力する、制御部32の一例としての制御部32bによって、上下方向に移動の移動動作中に停止したり、動作速度を変更したりするなどの動作制御を行なって、陽極2の各姿勢の滞在時間を変更することにより、単位時間あたりの原子密度を変化させるようにしてもよい。
【0043】
図8のような陽極2の平行移動を行なうことにより、陽極2から、均一勾配の密度の原子線放出を行なうことができる。より具体的には、原子線放出口の固定の電極を基準として、可動側へ、なだらかな勾配の密度を有する原子線放出を行なうことができる。
【0044】
次に、図9に示すさらに別の例では、陽極2と前記原子放出部5との距離を一定に保ったまま、陽極2を横方向沿い(陽極2の直径方向でかつ前記原子放出部5の表面沿い)に変位させることにより、原子密度を可変にしている。図7、図8に示す例と同様に、陽極駆動部31の一例としての陽極駆動部31cは駆動源の一例としてモータ、シリンダ、又は電磁石などで構成することができ、陽極駆動部31bと同様な構成とすることができる。図7とは異なり、陽極2は単に横方向に移動するため、陽極2の揺動を許容するような自在継ぎ手や球面軸受けなどの連結部88aは不要となり、単に、カムフォロワ88の一端を陽極2に連結固定するだけでよく、連結構造を簡単なものとすることができる。図7の制御部32aと同様に、陽極2を変位させるための駆動制御信号を陽極駆動部31cに出力する、制御部32の一例としての制御部32cによって、横方向の移動動作中に停止したり、動作速度を変更したりして、陽極2の各姿勢の滞在時間を変更することにより、単位時間あたりの原子密度を変化させるようにしてもよい。
【0045】
図9のような陽極2の横方向の移動動作を行なうことにより、陽極2から、均一勾配の密度の原子線放出を行なうことができる。より具体的には、全体はほぼ均一に、原子線放出口の端部(可動電極側)のみの密度の急な増減の原子線放出を行なうことができる。
【0046】
次に、図10は、図1に示す第1実施形態の変形例にかかる高速原子線源40Aにおける一部を破断して示す斜視図であり、図1に示す高速原子線源の外枠1が矩形状であるのに対して、この変形例では外枠1Aを円筒状にし、原子放出部5Aを円筒状の外枠1Aの軸方向の1つの円形端面の中央部の円形部分とし、ガス導入部6Aを円筒状の外枠1Aの湾曲した周面に形成することが異なる。
【0047】
図10のような、高速原子線源によれば、対象物に対して、原子線放出密度が高くかつ狭い範囲で原子線放出を行なうことができる。
【0048】
また、図11は、本発明の第2実施形態に係る高速原子線源40Bを説明するための高速原子線源40Bの外枠1Aの一部を破断して示す斜視図である。なお、以下の説明において、前記第1実施形態などにて説明した部材に対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0049】
第2実施形態は、高速原子線源40Bの外枠1Aを円筒状にし、内部に設置する陽極2Bとしてリング状のものを使用し、リング状の陽極2Bに対応して原子放出部5Bを図10の原子放出部5Aよりも大きい円板にして外枠1Aの軸方向の両側の端面に配置した点が第1実施形態と異なる。
【0050】
図11のような、高速原子線源によれば、図10の高速原子線源よりも広い範囲に原子線放出を行なうことができる。
【0051】
さらに、図12A〜図14は第2実施形態における陽極2Bの配置例、その変位動作などに係る説明図である。
【0052】
図12Aは陽極2Bの正面図、図12Bは図12Aにおける陽極2Bと駆動制御系を示す側面図であって、31dは、リング状の陽極2Bの中線を軸として一点鎖線で示すように反復回動可能にすることにより、陽極2Bと図11の原子放出部5Bとの距離を変える、陽極駆動部31の一例としての陽極駆動部、32dは陽極2Bを変位させるための駆動制御信号を陽極駆動部31dに出力する、制御部32の一例としての制御部である。
【0053】
制御部32dによって、陽極駆動部31dを駆動中に停止したり、駆動速度を変更したりして、陽極2における各姿勢の滞在時間などを変更することにより、単位時間あたりの原子密度を変化させることができる。
【0054】
図12A,図12Bの陽極2の変位を行なうことにより、原子線放出口の中心(円陽極の中心)の密度を中心として対称な密度を有する原子線放出を行なうことができる。
【0055】
また、図13に示す例では、陽極2Bと前記原子放出部5Bとの平行状態を保ったまま、陽極駆動部31の一例としての陽極駆動部31eにより陽極2Bを横方向(図13の左右方向、図11の外枠1Aの軸方向と直交する方向)に変位させることにより、原子密度を可変にしている。図12に示す例と同様に、陽極駆動部31eを、陽極2Bを変位させるための駆動制御信号を陽極駆動部31eに出力する、制御部32の一例としての制御部32eによって、変位動作中に停止したり、変位動作速度を変更したりして、陽極2Bの各姿勢の滞在時間を変更することにより、単位時間あたりの原子密度を変化させるようにしてもよい。
【0056】
図13の陽極の変位を行なうことにより、外枠(陰極)に陽極が近い箇所の密度を上げた状態の、原子線放出を行なうことができる。
【0057】
図14に示す例では、陽極2Bと前記原子放出部5との距離を一定に保ったまま、陽極駆動部31の一例としての陽極駆動部31fにより陽極2Bを図14の上下方向、横方向、斜め方向に変位させることにより、原子密度を可変させている。この例においても、図12に示す例と同様に、陽極駆動部31fを、陽極2Bを変位させるための駆動制御信号を陽極駆動部31fに出力する制御部32fによって、陽極2Bを、変位動作中に停止したり、速度を変更したりして、陽極2Bの各姿勢の滞在時間を変更することによって、単位時間あたりの原子密度を変化させてもよい。
【0058】
図14の陽極の変位を行なうことにより、原子線放出口(外枠(陰極))に対して陽極2が小さい場合には、原子線の密度の高い原子線放出を局所的に行なうことができる。従って、対象物の照射面に選択的に原子線放出をしたい場合に好適なものとなる。
【0059】
なお、図8〜図14までの前記実施形態及び前記変形例において、それぞれの駆動部は、図7の駆動部31aと同様な構造を有し、それぞれの例において、駆動力の伝達方向の変換が必要な場合には、適宜、公知の機構を使用すればよい。
【0060】
本発明は、前記した実施形態や変形例に限らず、種々の態様で実施することができる。
【0061】
例えば、前記実施形態及び前記変形例の他の、陽極2,2Bの変位の例として、陽極2,2Bの変位開始直前に、陽極2,2Bに印加する電圧を上げたのち、陽極2,2Bの変位を行なうことも可能である。このように電圧を上げてから、陽極2,2Bの変位を行なうことにより、電圧印加開始時の初期プラズマ発生時のプラズマを安定させることができる。また、陽極2,2Bの変位動作中に、陽極2,2Bに印加する電圧を上下させながら変位を行なうことも可能である。このように、陽極2,2Bの変位動作中に電圧を上下させると、複数の陽極2,2B間の間隔を広げるときは電圧を上げ、複数の陽極2,2B間の間隔を狭めるときは電圧を下げるようにすれば、陽極変位前に放出していた単位面積当たりの原子線の密度と、陽極変位中及び陽極変位後の単位面積当たりの原子線の密度をほぼ一定に保つことができる。
【0062】
また、図2Aでは、高速原子線源19,20が2つ配置されているが、1つの高速原子線源19だけ配置するようにしてもよい。例えば、図2Fに示すように、基板12の表面のクリーニングなどの表面処理を行なう場合に最適なものとすることができる。
【0063】
図2Fのようにすれば、1つの対象物の片面を洗浄したいときに、簡単な装置構成にすることができる。
【0064】
また、陽極2,2Bの変位例として、複数の陽極2,2Bのうち、基板側に近い側の陽極を、一旦基板側から遠ざけたのち、そのまま遠ざけたままであると、プラズマが消える可能性がある。そこで、再び、元の位置又はその元の位置よりも基板に近い位置まで陽極2,2Bを移動させるのが好ましい。よって、このような陽極2,2Bの往復移動を所定周期毎に行なうことが好ましい。位置の変位は、せいぜい1cm程度が好ましい。
【0065】
原子線放出口(外枠(陰極))と陽極の大きさにもよるが、1cm未満であれば、プラズマの強度が強くなりすぎて、陽極や陰極が損傷する可能性があるため、前記したように1cm程度が好ましい。
【0066】
なお、対象物の基板12,13は、ウェハレベルで、4〜12インチのウェハに適用することができる。例えば、6インチのウェハの場合には、高速原子線源は例えば190mm×280mm×100mmの大きさのものが使用できる。この場合の原子放出部5は20cm×20cm程度が好ましい。
【0067】
また、複数の陽極2,2Bに1つの電源から同じ電圧を印加するものの他、図15A,図15Bに変形例として示すように、複数の陽極2,2B毎に直流高圧電源3a,3bを備えて、それぞれ独立して直流高圧電源3a,3bからそれぞれの陽極2に電圧を印加可能とするようにしてもよい。この場合には、陽極2,2B毎に異なる電圧を印加することも可能である。図15Aにおいて、右側の陽極2に対して、左側の陽極2よりも低い電圧を直流高圧電源3bから印加するように制御装置100で制御する。すると、最初は、図15Aに示すように、左側の陽極2よりも右側の陽極2に近寄った位置にプラズマ45が形成され、その後、図15Bに示すように、左側の陽極2から右側の陽極2に向けてプラズマ45が形成されるようになる。これにより、右側の陽極2に近い側で、原子線7が多く放出されるようにすることができる。
【0068】
図15A,15Bのように変化させることで、プラズマを安定した状態で陽極2側に移動させることができる。
【0069】
なお、本明細書において原子を放出するとして説明したが、外枠内に発生したプラズマからイオンを放出することも可能である。
【0070】
なお、上記様々な実施形態及び変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、半導体製造プロセス、MEMS(Micro Electro Mechanical System)、常温接合分野などにおいて、スパッタ、蒸着、エッチング、表面クリーニング、デポジッションなどの材料加工、ナノ加工分野などの構成、製作、加工の用途に用いられる高速原子線源装置および高速原子線放出方法ならびに表面改質装置として適用され、特に、加工面積が広い対象物や、装置構成または加工特性上、加工面と高速原子線源との距離を一定にすることができない場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施形態に係る高速原子線源を説明するための高速原子線源の一部を破断して示す斜視図
【図2A】本発明の第1実施形態に係る高速原子線源を搭載した表面改質装置を示す概略構成図
【図2B】前記表面改質装置の陽極駆動部の一例の部分概略構成図
【図2C】前記表面改質装置の陽極駆動部の一例の部分概略構成図
【図2D】図2Cにおいて矢印Aの方向から見た図であって、前記表面改質装置の陽極駆動部の一例のカム部分の概略構成図
【図2E】図2Cにおいて矢印Bの方向から見た図であって、前記表面改質装置の陽極駆動部の一例の長孔部分の概略構成図
【図2F】本発明の第1実施形態に係る高速原子線源を搭載した表面処理装置において、高速原子線源を1つだけ配置した例を示す概略構成図
【図3A】高速原子線源の放出原子密度分布の説明図(より詳しくは、上側の図は原子放出部の位置に対する放出原子密度の分布のグラフ、下側の図は高速原子線源の側面図)
【図3B】図3Aにおける、高速原子線源の放出原子密度分布の平面的な説明図
【図4A】陽極を変位させる場合の本発明の第1実施形態における高速原子線源の放出原子密度分布の説明図(より詳しくは、上側の図は原子放出部の位置に対する放出原子密度の分布のグラフ、下側の図は高速原子線源の側面図)
【図4B】図4Aの高速原子線源において、2つの陽極のうちの左側の陽極のみを図4Aのように変位させたときに、2つの陽極の中間部に右側に傾斜して形成されたプラズマを概略的に示す、高速原子線源の放出原子密度分布の平面的な説明図
【図4C】2つの陽極のうちの左側の陽極のみを図4Aとは逆方向に陰極から遠ざかるように変位させたときに、2つの陽極の中間部に左側に傾斜して形成されたプラズマを概略的に示す、高速原子線源の放出原子密度分布の平面的な説明図
【図5】従来の配置のように、高速原子線源を斜め方向から照射したときの対象物への衝突原子密度分布の説明図(より詳しくは、上側の図は高速原子線源で対象物を照射する状態の側面図、下側の図は原子放出部の位置に対する放出原子密度の分布のグラフ)
【図6】本第1実施形態における高速原子線源を斜め方向から照射したときの対象物への衝突原子密度分布の説明図(より詳しくは、上側の図は高速原子線源で対象物を照射する状態の側面図、下側の図は原子放出部の位置に対する放出原子密度の分布のグラフ)
【図7】第1実施形態における陽極の配置例、その変位動作などに係る説明図
【図8】第1実施形態における陽極の別の配置例、その変位動作などに係る説明図
【図9】第1実施形態における陽極のさらに別の配置例、その変位動作などに係る説明図
【図10】図1に示す第1実施形態の変形例における高速原子線源を一部を破断して示す斜視図
【図11】本発明の第2実施形態に係る高速原子線源を説明するための高速原子線源の一部を破断して示す斜視図
【図12A】第2実施形態における陽極の配置例、その変位動作などに係る説明図
【図12B】第2実施形態における陽極などの配置例、その変位動作などに係る説明図
【図13】第2実施形態における陽極などの配置例、その変位動作などに係る説明図
【図14】第2実施形態における陽極などの配置例、その変位動作などに係る説明図
【図15A】本発明の第1実施形態のさらに変形例における、高速原子線源の放出原子密度分布の平面的な説明図
【図15B】本発明の第1実施形態のさらに変形例における、高速原子線源の放出原子密度分布の平面的な説明図
【符号の説明】
【0073】
1 高速原子線源の外枠(筒状体の一例)
2 陽極
3 直流高圧電源
4 放電空間
5 原子放出部
6 ガス導入部
7 原子線
11 反応室
12、13 基板(処理対象物)
14 下部基板台
15 上部基板台
19、20 高速原子線源
31,31a〜31f 陽極駆動部
32,32a〜32f 制御部
70 ガス供給装置
71 減圧装置
73 電圧印加装置
74 ベローズ駆動装置
100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部が開口され、陰極として作用して、原子を放出可能な放出部を有し、かつ内部にプラズマを発生させる筒状体と、
前記筒状体の内部に配置される陽極と、
前記陽極に電気的に接続されて前記陽極に電圧を印加して、前記筒状体内に前記プラズマを発生させて、前記放出部から原子を放出させる電源と、
前記筒状体の内部で前記放出部に対して前記陽極を変位させる陽極駆動部とを備る原子線源。
【請求項2】
前記陽極は、棒状あるいはリング状である請求項1に記載の原子線源。
【請求項3】
前記陽極駆動部を制御して、前記放出部に対して前記陽極を所定周期毎に接近し又は離れるように変位させる制御部をさらに備える請求項1または2に記載の原子線源。
【請求項4】
前記陽極の前記変位に関連して、前記電源から前記陽極に印加される前記電圧を制御する制御部をさらに備える請求項1〜3のいずれか1つに記載の原子線源。
【請求項5】
筒状体を陰極とし、前記筒状体の内部に設けられた陽極に電圧を印加して前記筒状体の内部でプラズマを発生させて前記筒状体の一部が開口されて陰極として作用して、原子を放出可能な放出部から原子を放出するとともに、前記筒状体の内部で前記放出部に対して前記陽極を陽極駆動部により変位させる原子線放出方法。
【請求項6】
前記陽極駆動部を制御して、前記放出部に対して前記陽極を所定周期毎に変位させつつ、前記筒状体の内部で前記プラズマを発生させて前記放出部から前記原子を放出する、請求項5に記載の原子線放出方法。
【請求項7】
前記陽極として複数の棒状の陽極が配置されており、前記複数の棒状の陽極部材の長手軸方向はそれぞれ前記放出部に大略平行な状態で、かつ、前記放出部が、前記原子を放出する対象の対象物の面に対して傾斜した状態で、前記筒状体の内部で前記プラズマを発生させて前記放出部から前記原子を放出するとともに、前記複数の棒状の陽極部材のうち、少なくとも前記対象物に近い側の前記陽極部材を前記放出部に対して変位させる、請求項5又は6に記載の原子線放出方法。
【請求項8】
前記陽極の前記変位に関連して、前記電源から前記陽極に印加される前記電圧を制御しながら、前記筒状体の内部でプラズマを発生させて前記開口部から原子を放出する、請求項5〜7のいずれか1つに記載の原子線放出方法。
【請求項9】
筒状体内部にプラズマを発生させた原子線源から原子を対象物に放出して前記対象物の表面改質をする表面改質装置において、
載置台に載置された前記対象物の平面に垂直な軸に対し、前記原子線源における原子を放出する放出中心軸を傾斜して設置されるとともに、
前記原子線源として、請求項1〜3いずれか1つに記載の原子線源により構成する表面改質装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【公開番号】特開2007−317650(P2007−317650A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102845(P2007−102845)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】