説明

高電圧検出器

【課題】 静電気の影響を受けにくく、作業員などの被検対象が高電圧源に接近したことを正確に検出して警報を発することができる、信頼性の高い高電圧検出器を提供することである。
【解決手段】 被検対象に複数の電界センサS1,S2,S3を備え、これら電界センサを演算手段2に接続して、この演算手段2は電界センサの検出値間の差を演算するとともに、その差が設定値以上になったとき、警報信号を出力する構成にし、高電圧源に接近したことを知らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高電圧源に接近したことを知らせるための高電圧検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道の架線工事など、電気関係の工事を行なう作業員が、充電状態にある高電圧機器や高電圧の送電線などの高電圧源に接近したとき、それを知らせるための高電圧検出器が知られている。
この種の高電圧検出器として、例えば、特許文献1,2に示すものがあるが、これらは高電圧源によって電界が誘導される検出電極と、この検出電極が受ける電界を検出する検出回路とを備え、その検出信号値によって高電圧電源に接近したかどうかを判断するものである。具体的には、上記検出電極からの検出信号の値を設定値と比較して、設定値を超えたときに警報信号を発するようにしている。
【0003】
そして、特許文献1には、作業員が利用するヘルメットにテープ状の検出電極を貼り付けて、この検出電極の電圧を検出して高電圧源の有無を検出するものが記載されている。
また、特許文献2に記載された高電圧検出器も、検出電極を作業員のヘルメットなどに取り付け、この検出電極の誘導電流を検出するものであるが、通信機能を備え、通信によって作業員以外にも高電圧源への接近を知らせるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−012842号公報
【特許文献2】特許第3459485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来の高電圧検出器は、検出電極の検出値に応じて高電圧源までの距離を検出するようにしていた。しかし、上記検出電極に誘導される電界の検出値は静電気の影響を受けやすく、正確な誘導電界を検出しにくいという問題があった。特に、作業員自身や、作業員のヘルメット、着衣などは静電気が溜まりやすく、これらに検出電極を取り付けたときには静電気の影響で検出値が変化し、高電圧源に接近しているかいないかを検知できないこともある。そのため、高電圧源に接近しているのに警報が発せられなかったり、反対に、実際にはそれほど接近していないのに、警報を発してしまったりすることがある。
この発明の目的は、作業員などの被検対象が高電圧源に接近したことを正確に検出して警報を発することができる、信頼性の高い高電圧検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、被検対象に複数の電界センサを備え、これら電界センサを演算手段に接続し、この演算手段は上記複数の電界センサの検出値の差を演算するとともに、その差が上記演算手段に予め記憶させた設定値以上になったとき、警報信号を出力する構成にした点に特徴を有する。
この発明の電界センサには、静電電位計,非接触電位計(表面電位計)と呼称される電位センサも含まれるもので、要するにこのセンサが受ける電界の大きさを計れるものはすべて含まれるものである。
また、上記高電圧源の高電圧とは、人が接近したときに危険を及ぼす大きさの電圧である。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明を前提とし、被検対象に備える保持手段に複数の電界センサを設け、これら各電界センサは、同一の高電圧源に対して検出値が異なる関係を保った点に特徴を有する。
なお、上記同一の高電圧源に対して検出値が異なる関係とは、同一の高電圧源に基づいて各電界センサが電界を受け、その検出値の値が異なるようになっているということであり、このような関係を保つ構成には、複数の電界センサを、高電圧源から異なる距離に配置することだけでなく、センサの検出方向を相違させたり、各電界センサの検出感度を相違させたりする構成などが含まれる。
【0008】
第3の発明は、上記第1、第2の発明を前提とし、被検対象に備える保持手段に複数の電界センサを設け、これら各電界センサの検出方向を相違させた点に特徴を有する。
なお、電界センサの検出方向とは、電界センサの高電圧源に対する向きのことである。高電圧電源の電圧や位置が同じでも、電界センサの向きが異なればそのセンサが受ける電界が異なって検出値が変わり、高電圧源に電界センサが正対しているとき、最も大きな検出値を出力する。
【0009】
第4の発明は、上記第1〜第3の発明を前提とし、被検対象に備える保持手段に複数の電界センサを設け、これら各電界センサは、上記同一の高電圧源に対して異なる距離を保つ構成にした点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
第1〜第4の発明では、高電圧検出器が高電圧源に接近したかどうかを、電界センサの電界の検出値の大小で判断するのではなく、複数の電界センサから出力される検出値の差によって判断するようにしている。電界センサは、高電圧電源からの距離が同じでも、電界センサの検出方向や、取り付け箇所の静電気によって検出値が変化するが、この発明では、検出値の大小ではなく、複数の電界センサからの検出値の差によって高電圧電源に接近したことを検出するようにしている。そのため、静電気の影響を受け難く、高電圧源に接近したときには確実に警報を出力でき、安全である。
また、電界センサを複数設けることによって、電界センサの検出可能範囲が広くなり、電界センサの死角を小さくすることができる。
【0011】
第2の発明によれば、保持手段に設けた複数の電界センサを、同一の高電圧源の検出値が異なる位置関係に設けているので、これらの電界センサと高電圧源との距離が短くなったときに、各電界センサの検出値の差が大きくなって高電圧源に接近したことを検出することができる。
【0012】
第3の発明では、複数の電界センサの検出方向を相違させたので、全ての電界センサと高電圧源との距離が等しくなったとしても、各電界センサからの検出値には差が出ることになる。そのため、高電圧検出器が高電圧源に接近したときには、各電界センサからの検出値の差がより大きくなり、高電圧源への接近状態が判別しやすくなる。
第4の発明では、各電界センサと高電圧源との距離を異なる距離にすることによって、各電界センサからの検出値に差が出るようにしている。そのため、高電圧検出器が高電圧源に接近したときには、各電界センサからの検出値の差がより大きくなり、高電圧源への接近状態が判別しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の高電圧検出器を示す平面図である。
【図2】第1実施形態の高電圧検出器の構成図である。
【図3】電界センサの検出方向を説明するための図である。
【図4】高電圧の送電線Wに対して作業員が後ろ向きになっている状態を示した図である。
【図5】図4に示す状態における、送電線Wからの距離Lと電界センサの検出値Eとの関係を示すグラフである。
【図6】送電線Wに対して作業員が正対している状態を示した図である。
【図7】送電線Wに対し、作業員が横を向いている状態を示した図である。
【図8】図7に示す状態における、送電線Wからの距離Lと電界センサが検出した検出値Eとの関係を示すグラフである。
【図9】第2実施形態の斜視図である。
【図10】第3実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図8に基づいて、この発明の第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態の高電圧検出器を取り付けたヘルメット1を示した図で、このヘルメット1は、高電圧源に接近する可能性のある、この発明の被検対象である電気工事の作業員などが装着するものである。
この実施形態の高電圧検出器は、図2に示すとおり、3個の電界センサS1,S2,S3と、これらに接続した演算手段2と、警報手段3とで構成されている。
上記各電界センサS1,S2,S3はそれぞれ、高電圧源によって電荷が誘導される検出電極を備え、検出した電界の検出値を演算手段2に対して出力するものである。個々の電界センサが電界を検出する原理は上記従来例のものと同様で、高電圧源からの距離が小さくなるほど大きな電界を検出するものである。
【0015】
このような電界センサは、原理的には高電圧源の電圧が交流でも直流でも検出可能であるが、実際には直流電界の正確な検出は難しかった。なぜなら、上記電界センサの電極に、同一極性の電荷のみが誘導されると、電極に溜まった電荷が逃げて時間とともに電界が変化してしまうことがあるからである。
従って、長時間電界を検出するためには、電界センサS1,S2,S3に、音叉などを利用して開閉を繰り返すシャッターを備えるのが望ましい。
【0016】
そして、この第1実施形態では、上記各電界センサS1,S2,S3を、ヘルメットの外周に所定の間隔を保って設け、演算手段2及び警報手段3を備えたデータ処理部4をヘルメット1の前面に設けている。なお、図中、符号1aは、ヘルメット1のつばであり、作業員は、このつば1aを前にしてこのヘルメット1を被るものとする。
【0017】
なお、上記ヘルメット1の外周に設けた電界センサS1,S2,S3は、それぞれ検出方向がある。この検出方向とは、電界センサの高電圧源に対する向きのことで、高電圧電源の電圧や位置が同じでも、電界センサの向きが異なればそのセンサが受ける電界が異なり検出値が変わる。そして、電界センサが高電圧源に対して正対するとき、高電圧電源と電界センサとの間の静電容量が最大となり、電界の検出値が最大となる。この正対する方向を、各電界センサS1,S2,S3の近傍に矢印で図示している。高電圧源は、上記矢印の先端方向にあるとき、各電界センサS1,S2,S3と正対するものとする。
【0018】
例えば、図3のように高電圧源としての送電線Wからの距離がL1の位置に3つの電界センサS1,S2,S3を設けるとともにその検出方向が異なる場合には、送電線Wと正対している電界センサS1の検出値が最も大きく、検出方向を送電線Wと反対側にしている電界センサS2の検出値が最も小さい。そして、送電線Wと正対はしていないが、反対向きでもない電界センサS3の検出値は上記両検出値の間になる。
そして、この第1実施形態では、図1に示すように、3個の電界センサS1,S2,S3の位置を装置させるとともに、検出方向も相違させてヘルメット1に設けている。
【0019】
また、上記演算手段2は、各電界センサS1,S2,S3から出力される検出値に基づいて後で説明する処理によって、この高電圧検出器、すなわち高電圧検出器を備えた作業員が高電圧源に接近しているかどうかを判定する機能を備えている。そして、演算手段2が、作業員が高電圧源に接近していると判定した場合に、警報手段3に対して警報信号を出力する。なお、上記演算手段2が、作業員が高電圧源に接近していると判定する原理は後で詳しく説明する。
警報手段3は、演算手段2から警報信号が入力されたら、警報を発する機能を備えている。警報の種類としては、例えば、ブザーやサイレン、振動、ランプなど、作業員本人や第三者に、高電圧源に近づきすぎたことを知らせるものならどのようなものでもよい。但し、この第1実施形態では、警報手段3をヘルメット1に設けているので、ランプの点滅などでは作業員本人が気づかないので、本人に知らせるためには音や振動などが適している。
【0020】
上記した第1実施形態のヘルメット1を被った作業員が、高電圧源である高電圧の送電線Wの周囲で作業をし、送電線Wに接近した場合に、上記高電圧検出器が警報を発するメカニズムについて以下に説明する。なお、ここで、作業員が高電圧源に接近した状態というのは、作業員が感電するなどの危険が及ぶ距離まで近づいた状態のことで、その距離は高電圧源の電圧によって変わるものである。
この第1実施形態の高電圧検出器は、電界センサS1,S2,S3をヘルメット1の周囲に間隔を保って設けるとともに、それら各電界センサの検出方向を相違させている。そのため、このヘルメット1を被った作業員が特定の位置にいるとき、送電線Wによって各電界センサS1,S2,S3が受ける電界が異なるので、各電界センサS1,S2,S3が出力する検出値は異なる。この点は、実験により確認している。
【0021】
例えば、図4に示すように作業員が送電線Wに背を向けた状態で、送電線Wまでの距離を変化させて、各電界センサS1,S2,S3の検出値を測定した。
その結果、図5に示すデータが得られた。
図5は、図4のように作業員が送電線Wに背を向けた状態における、送電線Wからの作業員との距離Lと各電界センサS1,S2,S3の検出値Eとの関係を示したグラフである。なお、距離Lは上記ヘルメット1を被った作業員の中心と上記送電線Wとの距離である。
【0022】
そして、図5のグラフに示すように電界センサS2の検出値が他の電界センサS1,S3と比べて大きい。その理由は、電界センサS2が他の電界センサS1,S3と比べて送電線Wに最も近く、しかも、電界センサS2が送電線Wと正対しているからである。
なお、図5のグラフに示したように、送電線Wと作業員との距離Lが大きくなるに従って、3つの電界センサS1,S2,S3のそれぞれの検出値は小さくなるとともに、検出値間の差が小さくなることが実験で明らかになった。
【0023】
このように送電線Wと作業員との距離Lが大きくなるに従って検出値間の差が小さくなる理由は、次のように推測できる。
まず、作業員と送電線Wとの距離Lが大きくなるに従って、距離Lに対する各電界センサS1,S2,S3の位置の相対差が小さくなるので、検出値に差がなくなると考えられる。
また、距離Lが大きくなればなるほど、各電界センサの検出方向の違いも検出値にほとんど影響を及ぼさなくなる。
このような理由から、図5のグラフに示す実験結果が得られたと考えられる。
【0024】
また、作業員が上記送電線Wと正対した場合は、各電界センサS1,S2,S3の位置関係及び検出方向は図6に示すようになる。ここでは図示しないが、送電線Wからの距離が等しく、検出方向が斜め前方に向いている電界センサS1及びS3の検出値は等しく、送電線Wから離れていて後ろ向きの電界センサS2の検出値が、上記電界センサS1よりもかなり小さかった。
そして、図6に示す向きの場合にも、送電線Wと作業員との距離Lが大きくなるに従って3つの電界センサS1,S2,S3の検出値の差が小さくなった。
【0025】
さらに、図7に示すように、作業員の左手側に送電線Wを位置させた場合の、距離Lに対する電界センサS1,S2,S3から出力される検出値Eとの関係も測定した。その結果は、図8に示すとおりであった。
すなわち、送電線Wとの距離が最も小さく、検出方向が斜め前方の電界センサS1、次に距離が小さく検出方向が送電線Wに平行な電界センサS2、距離が大きく検出方向が送電線Wに対して斜め後ろ向きの電界センサS3の順に検出値が大きかった。
この場合も、上記距離Lが大きくなるに従って、3つの電界センサS1,S2,S3の検出値の差が小さくなったが、その理由は図5のグラフについて説明したものと同じと推測できる。
【0026】
上記のように、3つの電界センサS1,S2,S3の検出方向や各電界センサの位置の差に応じた送電線Wからの距離によって検出値が異なるが、いずれの場合も、作業員と送電線Wとの距離Lが大きくなれば、電界センサ間の検出値の差が小さくなることが確認できた。
言い換えれば、送電線Wと作業員との距離Lが小さくなれば、位置や向きの影響が大きくなって、位置や向きの異なる各電界センサから出力される検出値の差が大きくなるということである。
【0027】
そして、送電線Wと作業員との距離Lが小さくなったとき、各電界センサからの出力値の差が大きくなる理由は、次のように推測できる。
送電線Wと作業員との距離Lが小さくなると、上記距離Lに対する各電界センサの位置の相対差が大きくなるので、各電界センサの位置の差に応じた上記送電線Wと各電界センサとの距離の違いが、電界センサの検出値の大小に大きく現れると推測できる。
また、送電線Wと作業員との距離Lが小さければ、各電界センサの検出値は全体的に大きくなり、検出方向の違いによる検出値の変化が大きく表れる。
【0028】
そこで、この第1実施形態の高電圧検出器は、上記送電線Wと作業員との距離Lが近づくに従って、複数の電界センサによる検出値の差が大きくなるという原理を利用して、作業員が送電線Wに接近したことを検出するようにしている。
そして、この第1実施形態の演算処理手段2では、各電界センサS1,S2,S3から検出値が入力されたら、それら検出値間の差を演算し、その差が設定値以上になった場合に高電圧源である送電線Wに接近していると判断して警報信号を警報手段へ出力するようにしている。この設定値は、電界センサS1,S2,S3の検出感度や検出方向などに応じて予め演算手段2に設定しておくものである。
【0029】
なお、演算手段2は、3つの電界センサS1,S2,S3からの検出値の、全ての組み合わせの差のうち、いずれか一つでも設定値以上になった場合には警報信号を出力するようにしている。上記演算手段2は、入力された複数の検出値の全ての組み合わせにおける差を演算してから、演算した差の値と設定値とを対比するようにしてもよいし、2つの検出値の差を演算するごとにその値を上記設定値と対比するようにしてもよい。そして、上記差の値が上記設定値以上であると判断したときに警報信号を出力すればよい。要するにひと組の検出値に差が出れば、その他の組み合わせによる差を演算しなくてもよい。
【0030】
上記のように、この第1実施形態の高電圧検出器では、電界センサS1,S2,S3からの検出値が大きいとき演算手段2が警報信号を出力するのではなく、検出値間の差が大きいときに高電圧源に接近したと判断し、演算手段2が警報信号を出力するようにしている。
電界センサS1,S2,S3からの検出値の大小は、ヘルメット表面の静電気などの影響を受けて変化する可能性があるため、検出値の大小によって高電圧源との接近状態を正確に判断することは難しい。しかし、このような静電気はヘルメット1に設けた3つの電界センサS1,S2,S3のいずれの検出値にもほとんど同じように影響を与えるので、検出値同士の差を取れば上記静電気の影響を排除することができる。
従って、この第1実施形態の高電圧検出器は静電気の影響を受け難く、作業員が高電圧源に近づき過ぎたとき、それを確実に検出して警報を出すことができる。
【0031】
なお、上記第1実施形態では、ヘルメット1に高電圧検出器を取り付け、ヘルメット1がこの発明の被検対象である作業員に備える保持手段であるが、この保持手段は複数の電界センサを適当な位置関係を維持して保持できるものならどのようなものでもよい。
さらに、ヘルメット1に、複数の電界センサを保持した保持手段としての別部材を取り付けるようにしてもよい。
【0032】
図9に示す第2実施形態は、ベルト5の外側に一定の間隔を保って上記第1実施形態と同じ電界センサS1,S2,S3を取り付けたものである。また、ベルト5には図2に示す第1実施形態と同様の演算手段2及び警報手段3からなるデータ処理部4を備えている。
さらに、このベルト5の両端には一対の接続部材6,6を備え、これら接続部材6,6を接続することによってこの第2実施形態の高電圧検出器を作業着の上に装着することができる。
また、上記第1実施形態のヘルメットに替えて、第2実施形態のベルト5を通常のヘルメットや帽子に取り付けて使用することもできる。
この第2実施形態の高電圧検出器も、これを装着した作業員が送電線などの高電圧源に近づいた事を確実に検出して警報を発することができる。
【0033】
図10に示す第3実施形態は、信号機や架線の修理、街路樹の伐採など行なうときに利用する高所作業車の作業台7に、4つの電界センサS1,S2,S3,S4を取り付けたものである。上記作業台7は、高所作業を行なう作業員が乗るための台で、この作業台7を移動させるための操作部を備えている。作業員は、自ら操作部を操作して作業台7を移動させる。
また、上記電界センサS1,S2,S3,S4は全て上記第1実施形態の電界センサS1と同じ機能を有するものである。そして、これらの電界センサS1,S2,S3,S4は、図2に示す第1実施形態と同様の演算手段2に接続され、この演算手段2にはランプやスピーカーなどを備えた警報手段3を接続している。そして、これら上記演算手段2及び警報手段3を作業台7に設けている。
【0034】
特に、上記警報手段3を警報ランプで構成した場合には、その警報ランプを上記作業台7の操作部の近傍に設けて、作業台7の位置を操作している作業員が警報を見落とすことがないようにする必要がある。
この第3実施形態では、上記作業台7がこの発明の被検対象であるが、上記演算手段2が、上記電界センサS1,S2,S3,S4からの検出値間の差を演算し、その差の値が設定値以上になったとき、警報信号を出力する点は、上記第1実施形態と同じである。そのため、この第3実施形態の高電圧検出器も、静電気の影響を受けにくく、上記作業台7が高電圧の送電線などに接近したときには確実に警報を発することができる。
【0035】
上記のように、第1〜第3実施形態の高電圧検出器は、それを取り付けた箇所の静電気の影響を最小限にして、高電圧源に接近したことを正確に検出し、確実に危険を知らせることができる。
特に、直流電界を検出する場合には、交流電界を検出する場合と比べて、電界センサが静電気の影響を受けやすいので、上記実施形態の高電圧検出器はより有効である。
【0036】
また、上記実施形態では、複数の電界センサの検出方向を全て相違させているので、高電圧源がどの方向から接近したとしても電界検出の死角を少なくでき、電界を確実に検出することが可能である。
さらに、上記実施形態では全ての電界センサの設置位置も相違させ、高電圧源からの距離が異なるようにして、高電圧源に接近したときの検出値の差がより大きくなるようにしている。
【0037】
そして、上記実施形態においては、全ての電界センサの設置位置を相違させることによって、同一の高電圧源に対して検出値が異なる位置関係と、全ての電界センサの検出方向を相違させることによって、検出値が異なる位置関係とを実現している。
但し、複数の電界センサの位置や、検出方向のすべてを相違させなくてもよく、例えば、全ての電界センサを一箇所に集中して設け、その検出方向だけを相違させてもよいし、検出方向を同じくして設置位置だけを相違させてもよい。
【0038】
また、各電界センサの検出方向や設置の位置関係に基づいて、高電圧源の接近方向を判定することも可能である。
例えば、検出方向を相違させた電界センサの検出値間の差が大きくなったことにより高電圧源の接近を検出したとき、大きな検出値を出力した電界センサが高電圧源に正対していると判断し、高電圧源の接近方向を特定することができる。
このように高電圧源の接近方向が特定できれば、警報手段によって高電圧源の接近方向を知らせることもできる。具体的には、高電圧源がどちらから接近しているのかによって警報の音を変えたり、警報の種類を変えたりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明の高電圧検出器は、被検対象としての作業員や機器などに取り付け、充電状態にある高電圧機器や高電圧の送電線などの様々な高電圧源に接近することによる危険を回避する必要がある様々な場所で利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ヘルメット
2 演算手段
3 警報手段
5 ベルト
7 作業台
W 送電線
S1〜S4 電界センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検対象に複数の電界センサを備え、これら電界センサを演算手段に接続し、この演算手段は上記複数の電界センサの検出値の差を演算するとともに、その差が上記演算手段に予め記憶させた設定値以上になったとき、警報信号を出力する構成にした高電圧検出器。
【請求項2】
被検対象に備える保持手段に複数の電界センサを設け、これら各電界センサは、同一の高電圧源に対して検出値が異なる関係を保った構成にした請求項1記載の高電圧検出器。
【請求項3】
被検対象に備える保持手段に複数の電界センサを設け、これら各電界センサの検出方向を相違させた請求項1または2に記載の高電圧検出器。
【請求項4】
被検対象に備える保持手段に複数の電界センサを設け、これら各電界センサは、上記同一の高電圧源に対して異なる距離を保つ構成にした請求項1〜3のいずれか1に記載の高電圧検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−192033(P2011−192033A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57766(P2010−57766)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(501213860)独立行政法人労働安全衛生総合研究所 (12)
【出願人】(000183738)春日電機株式会社 (54)
【Fターム(参考)】