説明

高電圧発生装置及び画像形成装置

【課題】立ち上げ時間が大幅に短縮され、且つ、目標電圧が広範囲に設定される高電圧発生装置でも、立ち上げ時にオーバーシュートやアンダーシュートが発生せず、且つ、短時間で出力電圧を目標電圧に到達させること。
【解決手段】立ち上げ制御において、出力電圧検出回路4により検出された電圧Vdtが目標電圧値Vtgtよりも小さい過渡電圧値Vtgt1に到達するまでは所定の変化率で立ち上げ、出力電圧検出回路4により検出された電圧Vdtが過渡電圧値Vtgt1に到達したあとは所定の変化率よりも小さい変化率で目標電圧値Vtgtに立ち上げる制御を行うPWM制御電圧生成回路10と、目標電圧値Vtgtが小さいほど過渡電圧値Vtgt1を小さく設定する過渡目標値生成回路17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧を出力する高電圧発生装置に関し、特に高速に目標電圧に立ち上げることが可能な高電圧発生装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式の画像形成装置では、電子写真感光体(以下、感光ドラムという)表面を帯電装置によって一様に帯電し、帯電された感光ドラム表面を露光装置によって露光して静電潜像を形成する。そして、現像装置で静電潜像を現像剤(以下、トナーという)により現像してトナー像を形成し、現像したトナー像を転写装置によって記録材に転写する。そして、定着装置によりトナー像を記録材上に定着して出力する。転写装置としては、感光ドラムとニップ部を形成して記録材を搬送する転写ローラが用いられ、トナーとは逆極性の高電圧(以下、転写電圧という)が印加されて、トナー像が記録材に転写される。
【0003】
ここで、転写ローラの抵抗は周囲の温度や湿度に応じて変動しやすく、所望の転写電流値が得られない場合、転写不良やゴースト等の画像不良が発生するおそれがあり、転写不良や画像不良を低減させるために次のような制御を行っている。すなわち、転写ローラに印加する転写電圧を最適化するために、転写ローラの抵抗値を測定し、測定結果に応じて転写電圧を適正に制御している。この制御はATVC制御(Active Transfer Voltage Control)と呼ばれる周知の制御方法である。この制御によれば、転写ローラのインピーダンスが環境の変化により変動しても、印加電流値を適正な値とするための転写電圧を印加するように制御できる。
【0004】
尚、ATVC制御について、昨今は、ハードウエアによる制御に代えて、コントローラ内のソフトウエアで実行する方法が主流となっている。これは回路構成や制御の簡素化及び安定化を図るために有効な方法である。具体的には、転写電圧を一定電圧として転写ローラに印加し、そのときにハードウエアで検知した印加電流値をコントローラでモニタし、モニタした電流値と目標の電流値とから印加する転写電圧(電圧値)を求める処理をソフトウエアで実行する制御である。しかし、転写電圧の出力範囲や負荷変動の範囲が広い場合には上述のソフトウエアによる制御方法を実行すると、次に説明するような課題が発生する。例えば、負荷条件(負荷変動等)により起動時の印加電圧の特性が大きく異なってしまうと、目標電圧に収束するまでの起動時間にばらつきが生じたり、また、オーバーシュートやアンダーシュートが生じてしまう可能性がある。これでは、画質の低下や感光ドラムの劣化の原因になる可能性がある。
【0005】
そこで、特許文献1では、記録材の先端から複数回A/D変換して得られた出力値及びフィードバックした出力電圧からインピーダンスの平均値を算出する。そして、算出された平均値の範囲(第1の条件)と、現在の出力値と目標電流値との差分の範囲(第2の条件)の2つの条件に基づきPWM信号の値(オンデューティ幅)を演算する方法が開示されている。特許文献1によれば、ソフトウエアの制御によって所望の転写電圧に向けて収束する時間を短くしたり、オーバーシュートやアンダーシュートを低減することができる。
【0006】
また、高電圧を高速に目標電圧に立ち上げるための他の一例として、特許文献2には、次のような構成が開示されている。すなわち、電圧検出回路の検出電圧と基準電圧より若干低い第2の基準電圧とを比較して、電圧検出回路の検出電圧が第2の基準電圧を超えたときは、負荷であるコンデンサへの充電速度を緩やかにするように制御する方法が提案されている。この特許文献2では、起動時から順次、急速充電領域、緩速充電領域、維持充電領域を備えており、起動開始すると、PWM信号のオンデューティ幅を最大のオンデューティ幅にして立ち上げを急速に行う。そして、出力電圧が第2の基準電圧値(約90%として例示している)となると、緩速充電領域に切り換わる。このPWM信号のパルスを生成する回路の入力側に積分回路を設けており、積分回路によって立ち上げ時の初期は急速に充電し、その後、緩速充電領域と維持充電領域では僅かに充放電させてオーバーシュートやアンダーシュートが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−088965号公報
【特許文献2】特開平09−093920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、転写電圧の制御の高速化及びオーバーシュート、アンダーシュートを低減するための工夫がなされている。昨今、更に、画像形成装置の生産性を向上する対策の一つとしてコンピュータ等からプリント指示(プリントコマンド送信)後、最初の記録材への印字が完了するまでの時間を更に短縮することが求められている。以下、プリント指示から最初の記録材の印字完了までの時間を、FPOT(First Print Out Time)という。FPOTをより短縮することにより、ユーザにとっては、プリント指示してから短時間でプリントが完了するというメリットが享受できる。このFPOTを更に短縮する場合は、上述したATVC制御に要する時間を更に短縮する必要がある。
【0009】
特許文献1に記載のソフトウエアによって目標電圧に収束させる制御方式でも、ある程度、時間の短縮効果は得られる。しかし、ソフトウエアのよる設定更新が一定のインターバルで実行されるため制御周期が長くなる。更に、更新回数の累積分の収束時間が必要となる。そのために、更に短時間で目標電圧に収束させるには、ソフトウエアによる制御では限界がある。また、特許文献1では、昇圧トランスをスイッチングするPWM信号のオンデューティ幅を変更して、オープンループ制御で目標電圧に収束する制御方式である。この制御方式は、ハードウエアの立ち上がり(定常領域への到達)を待ってから出力値を検出して、次の設定値を更新する。つまり、オンデューティ幅と出力電圧(帰還制御なしで定常領域で到達する値)が直線性の関係をもつ特性であれば高速化ができる。しかし、直線性の特性を持つ回路を構成することは容易でなく、回路の時定数や各素子のばらつきの影響を受けて直線性を保つことは難しい。この直線性が保たれていないと同じ時間幅の変化量であっても出力電圧の変化量に違いが生じて、出力電圧の制御の安定性及び精度が低下してしまう。尚、この直線性を改善しようとすると、逆に応答性が低下する等の他の課題が発生する可能性がある。
【0010】
また、特許文献2では、目標電圧を維持する制御を実行する維持充電領域では、PWM信号のパルスを出力する回路に対して、僅かな入力電圧の増減によって出力電圧を僅かに増減させて目標電圧に維持する制御を行う。しかし、緩速充電領域から維持充電領域に遷移するときは、僅かにしか入力電圧が減少されないので、オーバーシュート電圧の低減が難しいという課題がある。このオーバーシュート電圧を低減するには、緩速充電領域での立ち上げをより緩やかにすれば良いものの、緩やかにしすぎると立ち上げ時間が長くなってしまう。また、PWMのパルスを出力する回路の入力側に積分回路を用いる回路であり、積分回路を用いた場合はPWM信号のオンデューティ幅を0から最大のオンデューティ幅まで立ち上げる際の起動時間(積分時間)がかかってしまう。
【0011】
本発明は、このような状況のもとでなされたものである。本発明は、立ち上げ時間が大幅に短縮され、且つ、目標電圧が広範囲に設定される高電圧発生装置でも、立ち上げ時にオーバーシュートやアンダーシュートが発生せず、且つ、短時間で出力電圧を目標電圧に到達させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。
【0013】
(1)トランスと、前記トランスを駆動する駆動手段と、前記駆動手段を駆動するための駆動信号を生成する生成手段と、前記トランスから出力される電圧を整流する整流手段と、前記整流手段により整流された電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、前記電圧検出手段により検出された電圧に基づき前記生成手段が生成する駆動信号を制御することにより、負荷に出力する出力電圧を第一電圧値に立ち上げるまでの立ち上げ制御と、前記出力電圧が前記第一電圧値に立ち上がったあとの定電圧制御を行う高電圧発生装置であって、前記立ち上げ制御において、前記電圧検出手段により検出された電圧が前記第一電圧値よりも小さい第二電圧値に到達するまでは所定の変化率で立ち上げ、前記電圧検出手段により検出された電圧が前記第二電圧値に到達したあとは前記所定の変化率よりも小さい変化率で前記第一電圧値に立ち上げる制御を行う制御手段と、前記第一電圧値が小さいほど前記第二電圧値を小さく設定する設定手段と、を備えることを特徴とする高電圧発生装置。
【0014】
(2)静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体の表面を帯電する帯電手段と、前記像担持体に担持された静電潜像を現像してトナー像とする現像手段と、前記現像手段により現像されたトナー像を記録材に転写するための転写手段と、前記(1)に記載の高電圧発生装置と、を備え、前記負荷は、前記帯電手段、前記現像手段及び前記転写手段の少なくとも1つを含むことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、立ち上げ時間が大幅に短縮され、且つ、目標電圧が広範囲に設定される高電圧発生装置でも、立ち上げ時にオーバーシュートやアンダーシュートが発生せず、且つ、短時間で出力電圧を目標電圧に到達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1、2の高電圧発生装置の出力値が過渡のスルーレート状態で到達目標値に達する電圧波形を示す図
【図2】実施例1、2、従来例の高電圧発生装置の機能ブロック図
【図3】実施例1の高電圧発生装置の回路構成を示す図
【図4】実施例1と従来例の立ち上げを行った高電圧出力波形例を示す図
【図5】実施例1との比較のための従来例の+5KV目標における高電圧発生装置の立ち上げ電圧波形例を示す図
【図6】実施例1、従来例の+1KV目標における高電圧発生装置の立ち上げ電圧波形例を示す図
【図7】実施例1、従来例の高電圧発生装置が出力した電圧波形の目標値付近を拡大した図
【図8】実施例2の高電圧発生装置の回路構成を示す図
【図9】実施例2の立ち上げを行った高電圧出力波形例を示す図
【図10】実施例3の画像形成装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下添付図面を参照して、本発明の好適ないくつかの実施例について、更に具体的かつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
[高電圧発生装置の出力波形]
実施例1及び後述する実施例2に従う高電圧発生装置は、立ち上げ制御を行う立ち上げ過渡期間中にスルーレートを切り替える過渡目標電圧を設けて帰還制御されるようにしたものである。更に、昇圧トランスは出力値が過渡状態の急峻なスルーレート状態で到達目標値に達する入力駆動条件で駆動開始されるようにしたものである。そして、目標値の大小に関わらず、出力値をオーバーシュートなく短い時間で目標値へ収束させることを可能としたものである。
【0019】
この急峻なスルーレート状態で到達目標値に達する高電圧発生装置について、具体的な出力波形の模式図を図1に示して説明する。図1は横軸を時間(ミリ秒(ms))、縦軸を高電圧出力(V)としたグラフである。波形Bは高電圧発生回路における出力電圧が時定数カーブに従って目標値に上昇している状態の波形例を示すものである。波形A’は出力電圧が目標値以上に到達する入力駆動条件で昇圧トランスを駆動した場合のものであり、時定数時間は波形Bと変わらない。その一方で、同じ目標値に到達するまでの時間taは飛躍的に速くなっている。この過渡時の高速なスルーレート部分TH(V/s)を用いて出力電圧を目標値又は目標値近傍まで立ち上げる。そして、その後、波形Aに示すように、ハードウエアの高速な定電圧制御回路によって目標値維持の高速帰還制御(定電圧制御)が行われるようにしたのが本実施例の高電圧発生装置である。
【0020】
本実施例の高電圧発生装置は、高電圧発生装置の起動開始から目標電圧に到達するまでの過渡時間領域を起動開始直後の高速立ち上げ期間T1と目標値到達前の定電圧制御待機期間T2との2つに分割する。そして、所定の過渡目標電圧が検出されることにより、高速立ち上げ期間T1から定電圧制御待機期間T2に移行するものである。高速立ち上げ期間T1と定電圧制御待機期間T2とでスイッチングするPWM信号のオンデューティ幅はそれぞれの期間で切り替え設定される。この目標値到達前の定電圧制御待機期間T2ではオンデューティ幅が狭くなり立ち上げ能力が低めに抑制される。そして、この過渡状態の高速立ち上げ期間T1から定電圧制御待機期間T2への移行は、所定の過渡目標電圧の検出によって行われる。そして、最終的に到達する目標電圧値(以下、最終到達目標値)が大きいときは、過渡目標電圧を少し小さい値に設定し、最終到達目標値が小さいときは過渡目標電圧を大幅に小さい値に設定することを特徴とする。
【0021】
[高電圧発生装置]
本実施例の高電圧発生装置の主要となる機能ブロック図を図2(b)に示す。尚、図2(a)は本実施例との比較のために従来の一般的な高電圧発生装置を例示したものである。例示した従来の高電圧発生装置は、目標値設定部21で設定した出力となるように、定電圧制御部22で昇圧回路23の出力部をモニタするとともに入力部を帰還制御したものである。本実施例の高電圧発生装置は、高速立ち上げ期間T1から定電圧制御待機期間T2に移行する過渡目標電圧を可変生成する過渡目標値生成回路27と過渡目標値立ち上げ制御部26を更に備えたものである。
【0022】
まず、図3に示す高電圧発生装置の構成概要について説明する。図3に示す高電圧発生装置は、次の構成を備える。すなわち、アナログ回路で構成された高電圧発生回路と、高電圧発生回路に出力するハードウエア制御信号を生成するASIC 2と、ASIC 2のハードウエア制御信号の出力状態を制御・設定するマイクロコントローラ1とから構成されている。尚、マイクロコントローラ1とASIC 2とが、図2(b)の目標値設定部21に相当し、マイクロコントローラ1は後述する目標値をASIC 2に設定する。更に、高電圧発生回路のアナログ回路で構成された部分は、次の構成を備える。すなわち、昇圧トランスT1とその周辺回路による昇圧回路と、出力電圧検出回路4と、昇圧トランスT1を駆動するPWM信号を生成するコンパレータCMP15と、PWM制御電圧生成回路10と、出力電流検出回路9とを備える。
【0023】
マイクロコントローラ1は、ASIC 2内に構成される最終到達目標値設定用レジスタのHVtgt部31とオンオフ設定用レジスタのオンオフ設定部(以下、ONOFF設定部とする)33に対して、所定のタイミングで所定の値を設定する。これによりマイクロコントローラ1は、高電圧発生装置の目標出力値の変更やオンオフのタイミングを制御する。図中、マイクロコントローラ1がASIC 2に対して行う情報の読み込み及び設定をRead/Writeと記す。また、ASIC 2は、HVtgt部31に応じた高圧制御信号HVCNTをD/Aコンバータを介してアナログ信号として外部に出力する。また、ASIC 2は、ONOFF設定部33に応じたオンオフ制御信号/HVONと、高電圧発生回路で使用される所定周期のクロック信号CLKとを外部に出力する。尚、高圧制御信号HVCNTは、PWM信号で出力し、PWM周波数における応答特性を良くした高次のローパスフィルタ等でDC電圧値に変換したものでも良く、同様の機能を満たす。
【0024】
[高電圧発生回路の動作概要]
次に、図3に示す高電圧発生装置における高電圧発生回路の動作概要について説明する。昇圧トランスT1(トランス)は、コンパレータCMP15(生成手段)で生成されたPWM信号(駆動信号)に従ってスイッチング駆動される。昇圧トランスT1から出力された高電圧は出力電圧検出回路4(電圧検出手段)で分圧されて検出され、検出された分圧電圧Vdtは高圧制御信号HVCNTにより設定された目標電圧Vtgt(第一電圧値)とコンパレータCMP10で比較演算される。そして、コンパレータCMP10による比較演算結果に応じて更にコンパレータCMP15が出力するPWM信号のオンデューティ幅が帰還制御される。この帰還制御されたオンデューティ幅で昇圧トランスT1がスイッチング駆動される。このコンパレータCMP10による帰還制御は定常領域で行われる。
【0025】
一方、起動直後の過渡状態では、検出されたVdtが過渡目標電圧Vtgt1(第二電圧値)に到達する前段階では高速立ち上げ期間T1として急峻なスルーレートで立ち上がる。そして、過渡目標電圧Vtgt1に到達した後の段階で定電圧制御待機期間T2として緩やかなスルーレートに移行して最終到達目標値へと立ち上がっていく。
【0026】
次に、図3に示す高電圧発生装置における高電圧発生回路の動作詳細について説明する。まず、コンパレータCMP15の動作について説明する。コンパレータCMP15には、PWM制御電圧生成回路10(制御手段)の出力と擬似三角波生成回路12の出力が接続されている。擬似三角波生成回路12は、クロック信号CLKと抵抗器R6とコンデンサC3により擬似三角波を簡易的に生成する一例を示したものである。三角波の生成は他の三角波生成回路によるものであっても良い。PWM制御電圧生成回路10は、三角波からPWM信号を生成する際のスライスレベルとなるPWM制御電圧Vthを生成する。コンパレータCMP15は、非反転入力部に接続されたこの三角波信号と、反転入力部に接続されたこのPWM制御電圧Vthを比較演算してPWM信号のオンデューティ幅を可変出力する。コンパレータCMP15は、反転入力部の電圧値Vthが低いほど、ローレベル側のデューティ幅が狭いPWM信号を出力する。尚、本実施例では、コンパレータCMP15が出力するPWM信号のローレベルのデューティ幅が、高電圧発生回路の作動時のオンデューティ幅である。従って、電圧値Vthが低いほど、PWM信号のローレベルのデューティ幅が狭くなり、オンデューティ幅が狭くなる。
【0027】
[PWM制御電圧生成回路]
次に、コンパレータCMP15にPWM制御電圧Vthを出力するPWM制御電圧生成回路10について説明する。PWM制御電圧生成回路10には、ASIC 2から出力された高圧制御信号HVCNTと出力電圧検出回路4で検出された負荷電圧の検出値である電圧(以降、検出電圧値という)Vdtが接続されている。PWM制御電圧生成回路10は、高圧制御信号HVCNTにより負荷電圧の最終到達目標値が設定され、出力電圧検出回路4からの検出電圧値Vdtをモニタしながら、コンパレータCMP15へ出力するPWM制御電圧Vthを帰還制御する。
【0028】
(過渡目標値生成回路)
PWM制御電圧生成回路10は、最大デューティ切替回路16と過渡目標値生成回路17と出力電圧制御回路18とを備える。尚、最大デューティ切替回路16は、図2(b)の過渡目標値立ち上げ制御部26に相当する。過渡目標値立ち上げ制御部26が行う過渡目標値立ち上げ制御の具体的手段は、後述する、昇圧トランスT1を駆動する最大デューティ幅の切替制御となる。また、過渡目標値生成回路17は、図2(b)に過渡目標値生成回路27として図示している。また、出力電圧制御回路18は、図2(b)の定電圧制御部62に相当する。過渡目標値生成回路17(設定手段)は、ASIC 2から出力された高圧制御信号HVCNTに対して所定のオフセット電位分を下降させた電圧信号Vtgt1を過渡目標値として生成する。一例としてツェナーダイオードD3のツェナー電圧分を降下させた電圧信号を生成する回路を示す。OP10はオペアンプ、R7は抵抗器である。
【0029】
(最大デューティ切替回路)
過渡目標値Vtgt1は最大デューティ切替回路16のコンパレータCMP11に接続されており、負荷部(負荷)の検出電圧値Vdtと比較演算される。検出電圧値Vdtが過渡目標値Vtgt1以下の場合には、コンパレータCMP11の出力がオープンとなり、最大デューティ切替回路16は電源電圧Vccを抵抗器R2とR3で分圧した電圧Vdutyを出力電圧制御回路18に出力する。電圧VdutyはコンパレータCMP15でPWM信号を生成する際におけるスライスレベルの最大値となる。つまり、電圧VdutyはコンパレータCMP15で生成されるPWM信号の最大オンデューティ幅を設定する。
【0030】
検出電圧値Vdtが過渡目標値Vtgt1以上となった場合には、コンパレータCMP11の出力がローレベルとなり、最大デューティ切替回路16が出力していた電圧Vdutyは、抵抗器R1も加えた分圧値へと下降する。これにより、コンパレータCMP15でPWM信号を生成する際におけるスライスレベルが下降することとなる。つまり、コンパレータCMP15で生成されるPWM信号のローレベルのデューティ幅が狭くなるように、言い換えれば最大オンデューティ幅が狭くなるように変更される。この電圧Vdutyを下降させる際には、出力電圧制御回路18内のダイオードD1を介してコンデンサC2にチャージされている電荷を放電させることにより、瞬時に電圧Vdutyの切り替えが行われる。
【0031】
このように、最大デューティ切替回路16は、負荷部の検出電圧値Vdtが過渡目標値Vtgt1に至った時点で、瞬時にPWM制御電圧Vthを切り替える。これにより、コンパレータCMP15が出力するPWM信号のローレベルの幅、言い換えればオンデューティ幅を狭く切り替える動作を行う。
【0032】
(出力電圧制御回路)
次に、出力電圧制御回路18について説明する。出力電圧制御回路18は、最終到達目標値に至った負荷部の高電圧を所定値に保持するための定電圧制御を担う回路部である。コンパレータCMP10はASIC 2から出力された高圧制御信号HVCNTによって設定された目標電圧値Vtgtと負荷部の検出電圧値Vdtとを比較演算し、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgt以下の場合には、オープン出力となる。検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgt以上の場合には、ローレベルを出力してコンデンサC2にチャージされていた電荷を急速に放電させる。コンデンサC2の電荷が急速放電されると、コンパレータCMP15の反転入力部が瞬時に0V電位に降下するため、コンパレータCMP15の出力は瞬時にハイレベルとなって高電圧発生回路は急速にオフ状態とされる。
【0033】
コンパレータCMP10の出力がローレベルから再びオープン出力に変化した際は、PWM制御電圧Vthが最大デューティ切替回路16の出力電圧Vdutyとなるように、抵抗器R4を介してコンデンサC2に電荷がチャージされる。この充電の時定数は抵抗器R2〜R4とコンデンサC2の値によって決定される。この時定数によって、オンデューティ幅が0から緩やかに広げられていく回路が構成される。つまり、出力電圧制御回路18は、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgtを超えたときには瞬時にオンデューティ幅を0(ゼロ)として高電圧発生回路を急速にオフする。一方、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgtを下回ったときには立ち上げに時定数を持たせることで高電圧発生回路を緩やかにオンさせる。その結果、定電圧保持の帰還制御によって発生する電圧振動(リップル、ハンチング)を大幅に抑制することが可能となる。尚、この本実施例の高電圧発生装置における定常領域の出力波形は、後述する図7(d)で示す波形となる。
【0034】
(トランス周辺回路)
次に、高電圧発生回路に構成される昇圧トランスT1周辺の回路について説明する。上述のコンパレータCMP15から出力されたPWM信号はFET Q4のゲート端子に入力される。小信号FET Q4と電源電圧Vcc及び抵抗器R8は、FET Q4のゲート端子に入力されたPWM信号に従ってパワーMOSFET Q5のゲート端子を駆動する。パワーMOSFET Q5(駆動手段)は昇圧トランスT1をスイッチング駆動する。スイッチング駆動された昇圧トランスT1は脈流の高電圧を出力する。昇圧トランスT1によって出力された脈流の高電圧は高圧ダイオードD2と高圧コンデンサC5と出力電圧検出回路4からなる整流器(整流手段)で整流されて直流電圧化され、負荷部HVoutputに出力される。負荷部HVoutputに出力された高電圧は、出力電圧検出回路4により分圧されて検出される。検出された分圧電圧VdtはコンパレータCMP10及びコンパレータCMP11によってモニタされており、高圧制御信号HVCNTにより設定された目標電圧値Vtgtと比較されて目標電圧を維持する帰還制御が行われる。尚、R7、R20、R21、R25は抵抗器、C4、C20、C21はコンデンサである。また、出力電流検出回路9は、抵抗25、オペアンプ21を備え、負荷部HVoutputに流れる電流を検出し、検出結果をマイクロコントローラ1に出力する。
【0035】
尚、オンオフ制御信号/HVONはパワーMOSFET Q5のゲート端子をFET Q2で直接制御するため、オンオフ時の応答遅延時間を小さく抑制することが可能となる。この応答遅延時間が若干遅くなっても問題ない場合には、オンオフ制御信号/HVON及びFETのQ2の代わりに、ASIC 2から出力されるクロック信号CLKをハイレベル固定出力とすることによって高電圧発生回路をオンオフする構成としても良い。
【0036】
[過渡目標値についての従来例との比較]
次に、本実施例の過渡目標値について図4を用いて従来例と対比しながら詳細に説明する。尚、図4の各曲線は曲線ごとの違いをわかりやすくするために、便宜上、時間軸を互いに若干シフトさせて描画している。図4(a)は、従来の過渡目標値と最終到達目標値に従って、従来の立ち上げ能力で負荷電圧の立ち上げを行った高電圧出力波形である。立ち上げ曲線A1は、最終到達目標値+4KVに対して、90%となる+3.6KVを過渡の目標到達値として検知して、立ち上げスルーレートを変更したものである。立ち上げ曲線A2は、最終到達目標値+1KVに対して、90%となる900Vを過渡目標値として立ち上げを行った高電圧出力波形である。立ち上げ曲線A3は、最終到達目標値+400Vに対して、90%となる360Vを過渡目標値として立ち上げを行った高電圧出力波形である。何れの立ち上げ曲線も最終到達目標値よりも少し低い90%のところに過渡目標値を設定している。
【0037】
これに対し図4(b)は、本実施例の過渡目標値と最終到達目標値に従って立ち上げを行った高電圧出力波形である。立ち上げ曲線B1は、最終到達目標値+4KVに対して、90%となる+3.6KVを過渡の目標到達値として検知して、立ち上げスルーレートを変更したものである。立ち上げ曲線B2は、最終到達目標値+1KVに対して、60%となる600Vを過渡目標値として立ち上げを行った高電圧出力波形である。立ち上げ曲線B3は、最終到達目標値+400Vに対して、過渡目標値は0Vであり、実質の動作としては過渡目標値がない状態であり、立ち上げ初期から緩いスルーレートで昇圧させている。すなわち本実施例では、過渡目標値は、最終到達目標電圧が大きいときには最終到達目標電圧よりも少し低い値とされ、最終到達目標電圧が小さいときには最終到達目標電圧よりも大幅に低い値とされる。言い換えれば、最終到達目標電圧が大きいときには所定の過渡目標値とし、最終到達目標電圧が小さいときには、最終到達目標電圧が大きいときの過渡目標値に比べて低い(小さい)過渡目標値とする。このように、最終到達目標電圧が低くなるほど、過渡目標値を低くする。その結果、高電圧発生装置の立ち上げ能力を飛躍的に高めた場合において、図4(b)の立ち上げ曲線では目標値が小さいときにおいてもオーバーシュートなく立ち上げることが可能となる。これに対して、図4(a)の従来の立ち上げ曲線では目標値が小さいときには大幅なオーバーシュートが発生してしまっていた。
【0038】
次に、以上説明した高電圧発生装置のアナログ回路とASIC 2の機能を適用して生成される高電圧波形の具体例を図5〜図7に示す。尚、従来構成の高電圧発生装置を高速化した場合の波形と対比しながら説明を行う。一例として、昇圧トランスの駆動周波数を50KHz(20マイクロ秒(以下、μs)周期)、昇圧トランス及び整流器からなる昇圧回路の入出力応答時間(遅延時間)を20μsとする。また、1パルスのスイッチング駆動で数百Vの立ち上げ能力を有する高電圧発生装置の場合を例に説明する。尚、遅延時間はこの昇圧回路の入出力応答時間が支配的となるため、その他の遅延時間は0と仮定して説明する。最終到達目標電圧を5KVとした場合を図5に、最終到達目標電圧を1KVとした場合を図6に示して、目標値が大小の広いレンジで可変設定される例を説明する。
【0039】
(従来における最終到達目標電圧が5KVの場合)
まず、最終到達目標電圧を5KVとした場合の図5から説明する。図5(a)と図5(b)は、立ち上げ途中で出力電圧の上昇カーブを緩やかに切り替える高電圧発生装置の波形例である。特に図5(a)、図5(b)は、目標電圧よりやや低い過渡目標電圧を検知することによって出力電圧の立ち上げを緩やかにする従来タイプの高電圧発生装置を想定した立ち上げ波形例である。以後、起動後の高速立ち上げ期間T1となる過渡領域を第1過渡領域、続いて緩やかな立ち上げとなる定電圧制御待機期間T2の過渡領域を第2過渡領域と称す。図5(a)と図5(b)の従来の高電圧発生装置では、最終到達目標電圧よりやや低い過渡目標電圧で出力電圧の検知を行うため、その時点で制御できるのは、20μs以降に出力される電圧となる。仮に、検知した段階から0msで昇圧トランスT1の駆動を停止可能な場合においても、1パルスで出力部を数百V昇圧する高電圧発生装置では、20μs後にはオーバーシュートが発生してしまう。以下を具体例で説明する。
【0040】
図5(a)は、過渡目標電圧を90%に設定し、第1過渡領域では1パルス駆動で125V昇圧していく高電圧発生装置の場合の出力波形例である。最終到達目標電圧値が5KVであるので、目標の90%である4.5KVで過渡目標電圧による検知が行われ、第2過渡領域となる。ただし、第2過渡領域に入る20μs前に駆動された電力が既に投入されているため、出力電圧は4.625KVまで昇圧し、4.625KVを超えてから第2過渡領域に入る。すなわち、起動(0ms)から0.77msで過渡目標電圧4.5KVに達したが、理想上の緩速充電への移行開始時間0.77msでは第2過渡領域には入らず、実際の緩速充電への移行開始時間は、応答の遅延時間20μs後となっている。このため、0.125KVだけ応答遅延による昇圧が生じている。この例では、4.625KVから第2過渡領域となったため、大きなオーバーシュートなく最終到達目標値の5KVまで収束していく。
【0041】
一方、図5(b)は、過渡目標電圧を90%に設定し、第1過渡領域では1パルス駆動で300V昇圧していく高電圧発生装置の場合の出力波形例である。最終到達目標電圧値が5KVであるので、目標の90%である4.5KVで過渡目標電圧による検知が行われ、第2過渡領域となる。ただし、第2過渡領域に入る20μs前に駆動された電力が既に投入されているため、出力電圧は4.8KVまで昇圧し、4.8KVを超えてから第2過渡領域に入る。すなわち、起動(0ms)から0.3msで過渡目標電圧4.5KVに達したが、理想上の緩速充電への移行開始時間0.3msでは第2過渡領域には入らず、実際の緩速充電への移行開始時間は、応答の遅延時間20μs後となっている。このため、0.3KVの応答遅延による昇圧が生じている。この例では、4.8KVから第2過渡領域となったため、5KV超えのオーバーシュートに対する余裕は大きくないものの、大きなオーバーシュートなく最終到達目標値の5KVまで収束していく。
【0042】
従って、最終到達目標電圧が5KVの場合には、高電圧発生装置が1パルス駆動で昇圧していく電圧が125Vであっても、更に高速化した300Vであっても、大きなオーバーシュートなく目標値の5KVまで収束していく。
【0043】
(従来における最終到達目標電圧が1KVの場合)
しかしながら、図6(b)に示すように目標電圧値が小さく且つ昇圧能力が高い(目標1KV、1パルス駆動で300V昇圧する)場合にはオーバーシュートが発生してしまう。まず、目標電圧値が小さく昇圧能力がやや高い場合(目標1KV、1パルス駆動で125V昇圧する)から図6(a)を用いて説明する。図6(a)は、過渡目標電圧を90%に設定し、第1過渡領域では1パルス駆動で125V昇圧していく高電圧発生装置の場合の出力波形例である。最終到達目標電圧値が1KVであるので、目標の90%である0.9KVで過渡目標電圧による検知が行われ、第2過渡領域となる。ただし、第2過渡領域に入る前に既に駆動されていた電力が投入されているため、出力電圧は1KVまで昇圧して第2過渡領域に入る。すなわち、起動(0ms)から0.14msで過渡目標電圧0.9KVに達したが、理想上の緩速充電への移行開始時間0.14msでは第2過渡領域には入らず、実際の緩速充電への移行開始時間は、応答の遅延時間20μs後となっている。このため、0.125KVだけ応答遅延による昇圧が生じている。この例では、1KVから第2過渡領域となったため、第2の基準電圧の検知時から1KV超えのオーバーシュートに対する余裕はないものの(マージン電圧A≒0V)、大きなオーバーシュートなく目標値の1KVで収束される。
【0044】
一方、図6(b)は、過渡目標電圧を90%に設定し、起動時には、1パルス駆動で300V昇圧していく高電圧発生装置の場合の出力波形例である。最終到達目標電圧値が1KVであるので、目標の90%である0.9KVで過渡目標電圧による検知が行われ、第2過渡領域となる。ただし、第2過渡領域に入る前に既に駆動されていた電力が投入されているため、出力電圧は1.2KVまで昇圧し、1.2KVを超えてから第2過渡領域に入る。すなわち、起動(0ms)から0.06msで過渡目標電圧0.9KVに達したが、理想上の緩速充電への移行開始時間0.06msでは第2過渡領域には入らず、実際の緩速充電への移行開始時間は、応答の遅延時間20μs後となっている。このため、0.3KVの応答遅延による昇圧が生じている。従って、第2過渡領域に入った時には、既に200V(=1.2KV−1KV)の大きなオーバーシュートが発生してしまう(オーバーシュート電圧B)。従来は、図6(a)に示すような高電圧発生回路の立ち上げ能力がそれほど大きくなかったときには問題がなかった。しかし、図6(b)に示すような立ち上げ時間を飛躍的に短縮するために、数パルスが入力されるだけで目標電圧まで昇圧するように高電圧発生装置の立ち上げ能力を飛躍的に高くしたような場合には、大きなオーバーシュートを発生してしまっていた。
【0045】
(本実施例の場合)
これに対し、本実施例の高電圧発生装置の出力波形例を図6(c)に示す。本実施例の高電圧発生回路は、起動開始直後の高速立ち上げ期間T1(第1過渡領域)と目標値到達前の定電圧制御待機期間T2(第2過渡領域)と、目標電圧に到達した後の定電圧制御期間T3(定常領域)の3つに時間領域が分割される。第1過渡領域では、前述のコンパレータCMP11がオープン出力の状態であり、より高いPWM制御電圧Vthをスライスレベルとして生成されたPWM信号で昇圧トランスT1がスイッチングされる。そして、第1過渡領域では、300V/パルス(所定の変化率)の高スルーレートで負荷電圧が上昇していく。過渡目標電圧を検知すると、コンパレータCMP11がローレベル出力に変化し、第2過渡領域に遷移する。第2過渡領域では、低められたPWM制御電圧Vthをスライスレベルとして生成されたPWM信号で昇圧トランスT1がスイッチングされる。例えば本実施例では、50V/パルス(所定の変化率よりも小さい変化率)の比較的低スルーレートで負荷電圧が上昇していく。出力電圧が最終到達目標電圧に達すると、PWM信号のオンデューティ幅は瞬時に0とされ、高電圧発生回路の昇圧動作は急速にオフされる。最終到達目標電圧に到達したときには、50V/パルスの低スルーレートとなっているため、到達直後のオーバーシュート最大量は50Vと小さい値に抑制される。
【0046】
本実施例では、高速立ち上げとなる第1過渡領域から第2過渡領域への遷移は、最終到達目標電圧の値が大きいときは少し低い過渡目標値、最終到達目標電圧の値が小さいときは大幅に低い過渡目標値にそれぞれ設定される。例えば、本実施例では、最終到達目標値が+5KVの場合には90%となる+4.5KVに設定され、最終到達目標値が+1KVの場合には50%となる+0.5KVに設定され、最終到達目標値が+500Vの場合には0%となる+0Vに設定される。その結果、目標値が+5KVであっても+1KVであっても、その目標電圧値の大きさに関わらず到達直後のオーバーシュートが抑制され、且つ短時間で出力電圧を目標値に到達させることが可能となる。尚、図6(c)の過渡目標値は一例であって、最終到達目標電圧の値が小さいときは大幅に低い過渡目標値となるようであれば、この例に限る必要はない。例えば、最終到達目標値が+1KVの場合には60%となる+0.6KVや、30%となる+0.3KV等としても良い。
【0047】
[定常領域の動作についての従来例との比較]
次に、目標電圧に到達した後の定電圧制御期間T3(定常領域)の動作について、本実施例の高電圧波形の具体例を従来構成での波形例と対比しながら図7に例示して説明する。本実施例の波形例は図7(d)に示す。立ち上げ時間を速くするためには、起動開始後のPWM信号のオンデューティ幅を大きくして応答性を速くする必要がある。しかしながら、応答性を速くした場合には、定電圧制御動作時において、目標値を境界として出力電圧が上下してオーバーシュートを繰り返す制御動作になりやすい。この様子を図7(a)に示す。第2過渡領域に入って1パルスの入力で50Vずつ昇圧しており、目標電圧に到達するとスイッチングが瞬時にオフされる。スイッチングが瞬時にオフされた後は、容量性の負荷にチャージされた電荷が自然放電していくことにより電圧値が降下する。つまり、瞬時に高電圧発生回路のスイッチングがオフされても負荷電圧は自然放電以上の速さでは降下しない。これを図7(a)に自然放電による電圧降下のスロープとして図示している。
【0048】
負荷電圧が目標電圧まで降下すると高電圧発生回路は再びスイッチングを開始する。スイッチングを開始すると、パルスが入力されて再び負荷電圧が上昇し、その後目標電圧に達しスイッチングが再びオフされるという制御を繰り返す。しかしながら、スイッチングがオフされるまでに入力されたパルスが1パルスであっても、目標電圧に達したときには既に入力されているため、その分の電圧、この例では50Vの小さな電圧振動(リップル、ハンチング)は発生する。ここで、応答の遅延時間ΔTd1(=t2−t1)は、出力電圧が目標電圧を下回ったことを検知してから、制御によって実際に出力電圧が上がりだすまでの遅延時間である。また、応答の遅延時間ΔTd2(=t3−t2)は、出力電圧が目標電圧を上まわったことを検知してから、制御によって実際に出力電圧が下がりだすまでの遅延時間である。ΔTd1、ΔTd2は、上述した20μsの応答遅延時間のことであり、この遅延時間は昇圧回路(トランス)の入出力応答時間が支配的となっている。
【0049】
図7(b)では、第2過渡領域に入って、1パルスの入力で100Vずつ昇圧していく場合の波形例を示す。図7(a)と同様の現象によりオーバーシュートが発生する。但し、オーバーシュート量は2倍の100Vとなる。そして、オーバーシュートした電圧が目標電圧まで降下する際のスルーレートは、負荷の容量と抵抗値による自然放電による時定数で決定されるために、図7(a)の場合と比較して、2倍の周期でオーバーシュートを繰り返すことになる。
【0050】
また、特許文献2で例示したような高電圧発生装置では、目標電圧値に保持制御する維持充電領域においては、僅かなPWM回路への入力電圧の増減によって出力電圧を僅かに増減させて目標電圧のハンチングを小さく維持するものであった。しかしながら、緩速充電領域から維持充電領域への遷移時においても僅かにしか入力電圧が減少されないため、図7(c)に示すように目標値到達時点のオーバーシュートは大きくなりやすい。
【0051】
その一方、図7(d)に示す本実施例の高電圧発生装置では、検出電圧値が目標電圧値を超えたときには瞬時にPWM信号のオンデューティ幅を0としている(超過時はパルスの瞬時オフ)。その後出力電圧が降下し、再び目標電圧以下となるとオンデューティ幅が0から緩やかに広げられていくスローオンデューティでスイッチングが再開される。そのため、図7(c)と比較して目標電圧値への到達直後のオーバーシュートが小さく抑制されるとともに、定電圧制御期間T3における負荷電圧の立ち上げ能力は小さく抑制される。このため本実施例の図7(d)では、図7(a)や図7(b)と比較して定常領域で発生する電圧振動(リップル、ハンチング)も大幅に抑制される。つまり、定常領域全域でのオーバーシュートや電圧振動(リップル、ハンチング)を小さく抑制することが可能となる。
【0052】
以上述べたように本実施例に従えば、最終到達目標電圧が大きいときは少し小さい値に設定され、最終到達目標電圧が小さいときは大幅に小さい値に設定される過渡目標電圧を設ける。そして、この過渡目標電圧への到達検知後にPWM信号のオンデューティ幅を瞬時に狭く切り替えるようにして、更に、検出電圧値が最終到達目標電圧値を超えたときには瞬時にオンデューティ幅を0として目標維持の制御を行うPWM制御を行う構成とする。その結果、本実施例によれば、高電圧発生装置の立ち上げ能力が飛躍的に高くされ、最終到達目標電圧が大小の広いレンジで様々な値に設定された場合においても、オーバーシュートなく且つ飛躍的な短時間で出力電圧を目標値に到達させることが可能となる。また、立ち上げの過渡領域では、最大値となるオンデューティ幅のPWM信号で瞬時に出力を開始する一方で、その後の目標値維持の定常領域ではオンデューティ幅を拡げる立ち上げ側には緩やかな時定数を持たせて出力される構成とする。これにより、立ち上げ能力が飛躍的に高くされて短時間で目標値に到達する高電圧発生装置であっても、定常領域での電圧振動(リップル、ハンチング)を全域に及んで小さく抑制することが可能となる。
【0053】
以上、本実施例によれば、立ち上げ時間が大幅に短縮され、且つ、目標電圧が広範囲に設定される高電圧発生装置でも、立ち上げ時にオーバーシュートやアンダーシュートが発生せず、且つ、短時間で出力電圧を目標電圧に到達させることができる。
【0054】
なお、上記の実施例においては、高電圧として正極性の高電圧を出力する構成で説明したが、負極性の高電圧を出力する構成においても適用可能である。負極性の高電圧に適用する場合は、上記実施例の図4で示した+1KV〜+4KVを例えば、−1KV〜−4KVの範囲で出力する構成にすればよい。
【実施例2】
【0055】
実施例2の高電圧発生装置は、実施例1の高電圧発生装置と同様に、高電圧発生装置の起動開始から目標電圧に到達するまでの過渡時間領域を起動開始直後の高速立ち上げ期間T1と目標値到達前の定電圧制御待機期間T2との2つに分割する。そして、所定の過渡目標電圧が検出されることにより、高速立ち上げ期間から定電圧制御待機期間に移行するものである。高速立ち上げ期間T1と定電圧制御待機期間T2とでスイッチングするPWM信号のオンデューティ幅はそれぞれの期間で切替設定される。この最終目標値到達前の定電圧制御待機期間ではオンデューティ幅が狭くなり立ち上げ能力が低めに抑制される。そして、この過渡状態の高速立ち上げ期間T1から定電圧制御待機期間T2への移行は、所定の過渡目標電圧の検出によって行われる。所定の過渡目標電圧については、最終到達目標電圧値が大きいときは、過渡目標電圧を少し小さい値に設定し、最終到達目標電圧値が小さいときは過渡目標電圧を大幅に小さい値に設定する。更に、本実施例に従う高電圧発生装置は、高電圧出力部の負荷容量や負荷抵抗値を検出し、その検出結果に従って過渡目標電圧を可変して設定するものである。
【0056】
[高電圧発生装置]
本実施例の高電圧発生装置の主要となる機能ブロック図を図2(c)に示す。本実施例の高電圧発生装置は、高速立ち上げ期間T1から定電圧制御待機期間T2に移行する過渡目標電圧を可変制御する過渡目標値立ち上げ制御部26を更に備えたものである。目標値設定部21は、過渡目標値立ち上げ制御部26と定電圧制御部62を夫々制御する。
【0057】
本実施例の高電圧発生装置を図8に示す。本実施例は、実施例1で説明を行ったASIC 2に対して高圧制御信号HVCNT2を追加されたASIC 7を構成する。また、過渡目標値生成回路17の代わりに、ASIC 7から出力された高圧制御信号HVCNT2がPWM制御電圧生成回路20内の最大デューティ切替回路16に直接接続されたものである。その他の構成は実施例1と同様である。尚、既に実施例1において説明した内容と同じ構成要素や信号には同じ参照番号や記号を付し、その説明は省略する。
【0058】
PWM制御電圧生成回路20(制御手段)について説明する。PWM制御電圧生成回路20には、ASIC 7から出力された高圧制御信号HVCNT及びHVCNT2と出力電圧検出回路4で検出された負荷電圧の検出値Vdtが接続されている。マイクロコントローラ1(設定手段)は、ASIC 7内に構成される最終到達目標値設定用レジスタのHVtgt部31と過渡目標値設定用レジスタのHVtgt2部32に対して、所定の値を設定する。これにより、高電圧発生装置の最終到達目標電圧値や過渡目標電圧値を制御する。また、ASIC 7は、HVtgt部31、HVtgt2部32に応じた高圧制御信号HVCNT、HVCNT2をD/Aコンバータを介してアナログ信号として外部に出力する。PWM制御電圧生成回路20は、この高圧制御信号HVCNTにより負荷電圧の最終到達目標値を設定され、この高圧制御信号HVCNT2により負荷電圧の過渡目標値を設定される。そして、出力電圧検出回路4からの検出電圧値Vdtをモニタしながら、コンパレータCMP15へ出力するPWM制御電圧Vthを帰還制御する。
【0059】
PWM制御電圧生成回路20は、最大デューティ切替回路16と出力電圧制御回路18とから構成される。最大デューティ切替回路16には、高圧制御信号HVCNT2が接続されている。この高圧制御信号HVCNT2によって設定される過渡目標値Vtgt2は最大デューティ切替回路16のコンパレータCMP11に接続されており、負荷部の検出電圧値Vdtと比較演算される。検出電圧値Vdtが過渡目標値Vtgt2以下の場合には、コンパレータCMP11の出力がオープンとなり、最大デューティ切替回路16は電源電圧Vccを抵抗器R2とR3で分圧した電圧Vdutyを出力電圧制御回路18に出力する。電圧VdutyはコンパレータCMP15でPWM信号を生成する際におけるスライスレベルの最大値となる。つまり、電圧VdutyはコンパレータCMP15で生成されるPWM信号の最大オンデューティ幅を設定する。
【0060】
検出電圧値Vdtが過渡目標値Vtgt2以上となった場合には、コンパレータCMP11の出力がローレベルとなる。そして、最大デューティ切替回路16が出力していた電圧Vdutyは、抵抗器R1も加えた分圧値へと下降し、コンパレータCMP15でPWM信号を生成する際におけるスライスレベルが下降することとなる。つまり、コンパレータCMP15で生成されるPWM信号の最大オンデューティ幅が狭くなるように変更される。この電圧Vdutyを下降させる際には、出力電圧制御回路18内のダイオードD1を介してコンデンサC2にチャージされている電荷を放電させることにより、瞬時に電圧Vdutyの切り替えが行われる。
【0061】
このように、最大デューティ切替回路16は、負荷部の検出電圧値Vdtが過渡目標値Vtgt2に至った時点で、瞬時にPWM制御電圧Vthを切り替えることにより、PWM信号のオンデューティ幅を狭く切り替える動作を行う。出力電圧制御回路18については、実施例1と同様であるため、詳細説明を省略する。出力電圧制御回路18は、実施例1と同様に、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgtを超えたときには瞬時にオンデューティ幅を0として高電圧発生回路を急速にオフする。そして、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgtを下回った時には立ち上げに時定数を持たせることで高電圧発生回路を緩やかにオンさせる。その結果、定電圧保持の帰還制御によって発生する電圧振動(リップル、ハンチング)を大幅に抑制することが可能となる。
【0062】
[出力負荷部の抵抗値変化に応じた立ち上げ波形の変化]
次に、高電圧発生装置の出力負荷部の抵抗値変化に応じて、過渡目標値の可変を行う制御動作について説明する。図9(a)に、出力負荷部の抵抗値変化によって高電圧発生装置の立ち上げ波形が変化する様子を示す。立ち上げ曲線A(破線)は、最終到達目標電圧を+4KVとし、過渡目標電圧を+3.6KVとしたときの立ち上げ波形を示す。過渡目標電圧の+3.6KVを時刻t1に検知した後に、立ち上げスルーレートが緩やかに変更され、時刻t2に+4KVの最終到達目標電圧に達している。この立ち上げ曲線Aに対して立ち上げ曲線A’(実線)は、負荷抵抗値の値が温湿度環境等の影響により低下した場合の立ち上げ波形を示したものである。立ち上げ曲線Aよりもスルーレートが全体的に緩やかとなり、立ち上げ曲線Aでは過渡目標値に到達する時間がt1であったものが立ち上げ曲線A’ではt1’と長くなる。また、立ち上げ曲線Aでは最終到達目標値に達する時間がt2であったものが、立ち上げ曲線A’ではt2’へと大幅に長くなってしまう。このように、負荷抵抗値の変化に応じて、高電圧発生装置の立ち上げ波形が変化する。
【0063】
[出力負荷部の抵抗値の算出]
次に、本実施例の高電圧の立ち上げ方法について説明する。マイクロコントローラ1は、負荷部HVoutputへ流れる電流を出力電流検出回路9(電流検出手段)により検出する。そして、検出した電流値と、ASIC 7のレジスタHVtgtに設定した最終到達目標電圧とから出力負荷部の抵抗値を算出する。この抵抗値の大きさに応じて過渡目標電圧を、高圧制御信号HVCNT2を用いて可変設定する。本実施例では、図9(a)に示すように、温湿度環境等の影響により負荷抵抗値が低下したことに応じて、過渡目標値を上げる制御を行う。図9(b)に立ち上げ波形を示す。図9(b)の立ち上げ曲線C(実線)は、図9(a)の立ち上げ曲線A’よりも200V大きい3.8KVに過渡目標電圧が設定される。過渡目標電圧にはt1”で到達する。また、最終目標電圧までは200Vしかないものの、立ち上げ曲線Aよりもスルーレートが全体的に緩やかであるため、オーバーシュートせずに最終到達目標電圧に達する。そして、負荷抵抗値が低下したために立ち上げ曲線A’では大幅に長くなってしまっていた最終到達目標値に達する時間が、本実施例の立ち上げ曲線Cでは大幅に短縮されてt2”となる。尚、温湿度環境等の影響により負荷抵抗値が上昇した場合には、過渡目標値を下げる制御を行う。
【0064】
以上述べたように本実施例に従えば、高電圧出力部の負荷容量や負荷抵抗値の変動を検出し、その検出結果に従って過渡目標電圧を可変設定し、この過渡目標電圧への到達検知後にPWM信号のオンデューティ幅を瞬時に狭く切り替える構成とする。これにより、高電圧発生装置の立ち上げ能力が飛躍的に高くされ、最終到達目標電圧が大小の広いレンジで様々な値に設定され、かつ負荷抵抗が大幅に変動した場合においても、次のような効果がある。すなわち、オーバーシュートなく且つ飛躍的な短時間で出力電圧を目標値に到達させることが可能となる。また、実施例1と同様に、立ち上げの過渡領域では、最大値となるオンデューティ幅のPWM信号で瞬時に出力を開始する一方で、その後の目標値維持の定常領域ではオンデューティ幅を拡げる立ち上げ側には緩やかな時定数を持たせて出力される構成とする。これにより、立ち上げ能力が飛躍的に高くされて短時間で目標値に到達する高電圧発生装置であっても、定常領域での電圧振動(リップル、ハンチング)を全域に及んで小さく抑制することが可能となる。
【0065】
以上、本実施例によれば、立ち上げ時間が大幅に短縮され、且つ、目標電圧が広範囲に設定される高電圧発生装置でも、立ち上げ時にオーバーシュートやアンダーシュートが発生せず、且つ、短時間で出力電圧を目標電圧に到達させることができる。
【0066】
なお、上記の実施例においては、高電圧として正極性の高電圧を出力する構成で説明したが、負極性の高電圧を出力する構成においても適用可能である。負極性の高電圧に適用する場合は、上記の実施例で示した+1KV〜+4KVを例えば、−1KV〜−4KVの範囲で出力する構成にすればよい。
【実施例3】
【0067】
(高電圧発生装置の適用例)
実施例1、2の高電圧発生装置を例えば、電子写真方式の画像形成装置に適用することができる。電子写真方式の画像形成装置としてレーザビームプリンタを例にあげて高電圧発生装置の適用例を説明する。
【0068】
上述の実施例で説明した高電圧発生装置は、電子写真方式のプリンタの画像形成部に対して高電圧を印加するための高圧電源として適用可能である。図10(a)に電子写真方式のプリンタの一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ200は、静電潜像が形成される像担持体としての感光ドラム211、感光ドラム211を一様に帯電する帯電部217(帯電手段)、感光ドラム211に形成された静電潜像をトナーで現像する現像部212(現像手段)を備えている。そして、感光ドラム211に現像されたトナー像をカセット216から供給された記録材としてのシート(不図示)に転写部218(転写手段)によって転写して、シートに転写したトナー像を定着器214で定着してトレイ215に排出する。この感光ドラム211、帯電部217、現像部212、転写部218が画像形成部である。尚、実施例1、2の高電圧発生装置を適用可能な画像形成装置は、図10(a)に例示したものに限定されず、例えば複数の画像形成部を備える画像形成装置であってもよい。更に、感光ドラム211上のトナー像を中間転写ベルトに転写する一次転写部と、中間転写ベルト上のトナー像をシートに転写する二次転写部を備える画像形成装置であってもよい。
【0069】
図10(b)はレーザビームプリンタ200に設けられる複数の高圧電源(上述の実施例1、2に記載の高電圧発生装置)から出力された高電圧を帯電部217、現像部212、転写部218の夫々に出力する構成を示している。高圧電源1 501は帯電部217に高電圧を出力し、高圧電源2 502は現像部212に高電圧を出力し、高圧電源3 503は転写部218に高電圧を出力する。すなわち、帯電部217、現像部212、転写部218が、高電圧発生装置の負荷部となる。夫々の高圧電源1 501乃至3 503から出力される高電圧の値は、制御部としてのコントローラへ500から出力される制御信号に応じて必要な電圧値に制御される。そして、例えば、帯電部217に高電圧を出力した際に、帯電部217に流れる電流を上述の出力電流検出回路9で検出して、検出した電流値が所定値になるように出力を調整する。また、転写部218に高電圧を出力した際に、転写部218に流れる電流を上述の出力電流検出回路9で検出して、検出した電流値が所定値になるように出力を調整する。また、現像部212に高電圧を出力した際に、上述の出力電圧検出回路4で電圧を検出して、検出した電圧が所定値になるように出力を調整する。このように、実施例1及び2の高電圧発生装置は、画像形成のための高電圧の印加のために適用可能である。
【0070】
以上説明したように、上記実施例1、2で説明した高圧電源を電子写真方式のプリンタの高圧電源として適用すれば、画像形成装置の高速化やFPOTの短縮化が可能となる。本実施例によれば、立ち上げ時間が大幅に短縮され、且つ、目標電圧が広範囲に設定される高電圧発生装置を備える画像形成装置でも、立ち上げ時にオーバーシュートやアンダーシュートが発生せず、且つ、短時間で出力電圧を目標電圧に到達させることができる。
【符号の説明】
【0071】
4 出力電圧検出回路
10 PWM制御電圧生成回路
17 過渡目標値生成回路
CMP15 コンパレータ
Q5 パワーMOSFET
T1 昇圧トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスと、
前記トランスを駆動する駆動手段と、
前記駆動手段を駆動するための駆動信号を生成する生成手段と、
前記トランスから出力される電圧を整流する整流手段と、
前記整流手段により整流された電圧を検出する電圧検出手段と、
を備え、
前記電圧検出手段により検出された電圧に基づき前記生成手段が生成する駆動信号を制御することにより、負荷に出力する出力電圧を第一電圧値に立ち上げるまでの立ち上げ制御と、前記出力電圧が前記第一電圧値に立ち上がったあとの定電圧制御を行う高電圧発生装置であって、
前記立ち上げ制御において、前記電圧検出手段により検出された電圧が前記第一電圧値よりも小さい第二電圧値に到達するまでは所定の変化率で立ち上げ、前記電圧検出手段により検出された電圧が前記第二電圧値に到達したあとは前記所定の変化率よりも小さい変化率で前記第一電圧値に立ち上げる制御を行う制御手段と、
前記第一電圧値が小さいほど前記第二電圧値を小さく設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする高電圧発生装置。
【請求項2】
前記整流手段により出力された電流を検出する電流検出手段を備え、
前記設定手段は、前記電流検出手段による検出結果に基づき前記第二電圧値を設定することを特徴とする請求項1に記載の高電圧発生装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記電流検出手段による検出結果に基づき前記負荷の抵抗値を算出し、算出した抵抗値が小さいほど前記第二電圧値を大きく設定することを特徴とする請求項2に記載の高電圧発生装置。
【請求項4】
前記生成手段が生成する駆動信号はPWM信号であり、
前記制御手段は、前記電圧検出手段により検出された電圧が前記第二電圧値に到達するまでは前記PWM信号のオンデューティ幅を所定の幅とし、前記第二電圧値に到達したあとは前記PWM信号のオンデューティ幅を前記所定の幅より狭い幅とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高電圧発生装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記立ち上げ制御及び前記定電圧制御において、前記電圧検出手段により検出された電圧が前記第一電圧値を超えた場合には、前記PWM信号のオンデューティ幅をゼロにすることを特徴とする請求項4に記載の高電圧発生装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記定電圧制御において、前記電圧検出手段により検出された電圧が前記第一電圧値を下回った場合には、前記PWM信号のオンデューティ幅を所定の時定数でゼロから緩やかに広げることを特徴とする請求項5に記載の高電圧発生装置。
【請求項7】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体を一様に帯電する帯電手段と、
前記像担持体に担持された静電潜像を現像してトナー像とする現像手段と、
前記現像手段により現像されたトナー像を記録材に転写するための転写手段と、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の高電圧発生装置と、
を備え、
前記負荷は、前記帯電手段、前記現像手段及び前記転写手段の少なくとも1つを含むことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−66298(P2013−66298A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203417(P2011−203417)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】