説明

高齢者配慮住宅

【課題】一般住宅を建築する場合、建築時において家族等に要介護者が存在しなければ、要介護者用住宅を積極的に建築する動機に乏しく、仮に要介護者用の居室を備えた住宅を予め建築した場合であっても、要介護者が出現するまでは介護用の機能を十分に発揮することができず、むしろ居住者が健常者のみの間は、このような居室は無駄な空間となってしまうという問題が生じていた。
【解決手段】本発明では、後から改築すると大幅に改築が必要となってしまう建物の構造に関する箇所については予め介護を想定した構造とし、それ以外の箇所については要介護者が出現した場合に介護に適した住宅となるように施工可能な構造とした住宅を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体障害者など、体の不自由な人が居住する場合に配慮した住宅を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高齢者や車椅子を利用した身体障害者などに配慮した建物の供給が試みられてきている。例えば、老人ホームや介護用のケアハウス、福祉施設がその典型的な建物である。しかし、被介護者の中には、これらの施設への入居を希望せず、在宅での介護を希望する人も多い。また、介護保険法の改正により、在宅介護サービスを受ける環境作りが整備されつつある。このような社会情勢の中で、在宅介護サービスを受けられる住宅作りが重要となっている。
【0003】
そこで、特許文献1では、車椅子で移動しなければいけない要介護者等が一つの居室にて生活することができる住宅に関する技術が開示されている。家族の中に既に介護が必要となった人が存在する場合には、特許文献1に開示された要介護者用住宅は有効な技術である。
【特許文献1】特開2004−44382
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般住宅を建築する場合、建築時において家族等に要介護者が存在しなければ、予め家族の中に要介護者が出現することを見越した要介護者用住宅を積極的に建築する動機に乏しい。
【0005】
また、仮に要介護者が出現することを見越して、上記のような要介護者用の居室を備えた住宅を予め建築した場合であっても、要介護者が出現するまでは介護用の機能を十分に発揮することができず、むしろ居住者が健常者のみの間は、このような居室は無駄な空間となってしまうという問題が生じていた。
【0006】
そこで、本発明では、後から改築すると大幅に改築が必要となってしまう箇所については予め介護を想定した構造とし、それ以外の箇所については要介護者が出現した場合に介護に適した住宅となるように施工可能な構造とした住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するため、第一発明では、引き戸を有する玄関と、道路から玄関たたき床までを段差なしで繋ぐ幅員0.8メートル以上のスロープと、前記スロープに設けられる高さ1メートル以下の手摺と、を有する住宅を提案する。
【0008】
第二発明では、第一発明に記載の住宅であって、前記玄関は、引き戸レールにそって雨仕舞のための排水溝を有し、玄関たたき床面は、前記雨仕舞に向けた水勾配を有し、玄関たたき床面と、玄関あがり框とは段差が10ミリメートル以内である住宅を提案する。
【0009】
第三発明では、第一発明又は第二発明に記載の住宅であって、幅員0.8メートル以上である廊下と、廊下床面から高さ1メートル以下の位置に手摺設置用補強部材を配した廊下側壁と、を有する住宅を提案する。
【0010】
第四発明では、第一発明から第三発明のいずれか一に記載の住宅であって、衣服の着脱を行うための脱衣室を有し、前記脱衣室は、床面から高さ1メートル以下の位置に略水平手摺設置用補強部材を、床面から高さ1.3メートル以下の位置に略垂直手摺設置用補強部材を施した壁面と、洗面器上面が0.65メートル以上0.9メートル以下の高さに設置され、蛇口の開閉装置がレバー式形状である洗面台と、前記洗面台とは別に設けられた掃除用流しと、からなる住宅を提案する。
【0011】
第五発明では、第四発明に記載の住宅であって、前記脱衣室に隣接した浴室を有し、前記浴室は、平均的成人体格を有する介助者一名以上が前かがみにて被介助者と胴体が重なることなく入浴、体洗いができる程度の介助スペースを備え、前記脱衣室床面と略同一の高さであり、滑り止め凹凸加工された浴室床面と、前記脱衣室床面と、前記浴室床面との間に段差とならないレール上を滑る有効開口幅寸法が0.8メートル以上である引き戸と、前記浴室床面からの縁の高さが0.45メートル以下であり、縁に腰を掛けられる腰掛部を設けた浴槽と、前記浴室床面での移動時に握るための略水平手摺設置用補強部材と、前記浴槽への入浴時又は浴槽からの出浴時に握るための略垂直手摺設置用補強部材と、を施した壁面と、からなる住宅を提案する。
【0012】
第六発明では、第一発明から第五発明のいずれか一に記載の住宅であって、洋式便器と、前記洋式便器の便座への立ち座り時に握るための略垂直手摺設置用補強部材と、前記便座へ座った時に座位を安定するために握る略水平手摺設置用補強部材と、を施した壁面と、前記便座に対応した背もたれと、を有するトイレをさらに有する住宅を提案する。
【0013】
第七発明では、第一発明から第六発明のいずれか一に記載の住宅であって、手摺代わりとなる高さ1メートル以下のテーブルが配置された居間をさらに有する住宅を提案する。
【0014】
第八発明では、第一発明から第七発明のいずれか一に記載の住宅であって、ベッドを備えた個室であって、前記ベッド上へ直接風が当たらないように設置された空調機と、前記ベッドのベッド面下面の高さよりも低い位置に設置されたコンセントの差込口と、有効開口幅寸法が0.8メートル以上ある引き戸と、を有する個室をさらに有する住宅を提案する。
【0015】
第九発明では、第一発明から第八発明のいずれか一に記載の住宅であって、居室との出入口の段差が125ミリメートル以下であるデッキ及び/又はバルコニーをさらに有する住宅を提案する。
【0016】
第十発明では、第三発明から第九発明のいずれか一に記載の住宅であって、手摺設置用補強部材の一又は複数に手摺が設置された住宅を提案する。
【発明の効果】
【0017】
以上のような構成をとる本発明の住宅では、建物の外構、廊下等、後から改築する場合には大幅に改築が必要となってしまう箇所については予め介護を想定した構造とし、壁面に設ける手摺等は必要となる介護の程度に応じて後から設置可能となるようにしている。このため、住宅の建築時に家族が健常者のみであれば、無駄な手摺等を設置することなく広々とした廊下や居室空間を利用することができ、要介護者が出現した時点で建物の基本構造を変更することなく、容易にかつ低コストで要介護者用の住宅へ改築することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。なお、実施形態1は主に請求項1について説明する。実施形態2は主に請求項2について説明する。実施形態3は主に請求項3、10について説明する。実施形態4は主に請求項4、10について説明する。実施形態5は主に請求項5、10について説明する。実施形態6は主に請求項6、10について説明する。実施形態7は主に請求項7について説明する。実施形態8は主に請求項8について説明する。実施形態9は主に請求項9について説明する。
【0019】
≪実施形態共通の概念≫
【0020】
図1は本発明の実施形態に共通する住宅の概念を例示している。図1に示す住宅は、次のようなユニットにより形成されている。まず、道路に接続した住宅の入り口(0101)から玄関(0102)まではスロープによって段差なく接続されている。玄関(0102)では、玄関たたき床面と、玄関あがり框との段差は車椅子等でも上がることができる程度の僅かな段差とするか、又は段差を一切設けない構造としている。玄関(0102)に接続した廊下(0103a)は車椅子等でも通行可能となるように十分な幅を有しており、居間及び食堂(0107)へ接続している。居間の周囲には、台所(0110)、寝室(0108a、0108b)等が隣接しており、これらの居室とも段差なく接続されており、居住者は車椅子等でも自由に往来可能となっている。居間からはさらに廊下(0103b)を通って洗面・脱衣室(0104)及びトイレ(0106)への往来が可能である。浴室(0105)は、当該洗面・脱衣室(0104)に隣接して設けられている。当該廊下(0103b)はさらに、居間に隣接した寝室(0108b)の、居間と共有した壁面とは別の壁面に設けられた入り口に接続されている。また、居間(0107)と寝室(0108b)とが外部に面する壁面の外側にはウッドデッキ(0109)が設けられている。さらに、これら以外にも収納や家具など通常必要となる機能を有する。図1に示す住宅は、1階建ての住宅であるが、本発明に係る住宅は2階建て以上であっても良い。しかし、高齢者等に配慮して1階部分のみで生活に必要不可欠な機能を満足しうることが望ましい。また、2階部分を有する場合には、バルコニーを有しても良い。図1に示す住宅の間取り図は、本発明を実施しうる住宅の間取り図の一例を示しいているに過ぎず、なんら当該間取りに限定されるものではない。
【0021】
≪実施形態1≫
【0022】
(実施形態1の構成)図2は本実施形態の住宅の道路から玄関に係る部分を例示した図である。本実施形態における住宅は、玄関(0205)と、スロープ(0202)と、手摺(0203)とからなる。
【0023】
(実施形態1の構成の説明)玄関(0205)は、本実施形態における住宅の出入口であり、引き戸を有する。玄関に用いる戸を開き戸ではなく引き戸とすることで、力の無い高齢者であっても容易に戸の開閉をすることができる。また、車椅子利用者が扉を開ける際に、開き戸であると車椅子が邪魔になって扉を開けにくいが、引き戸の場合にはこのような不都合も無い。以下の実施形態の引き戸においても同様である。
【0024】
道路(0201)から当該玄関(0205)の玄関たたき床までは、スロープ(0202)にて段差なしで繋がれている。「道路」とは、道路交通法上の道路のみならず、住宅の外構から外側の他人と共用している通路、駐車場その他公共スペース等をも含む概念である。また、「道路から」とは、道路の端部からを意味しており、スロープの概念は道路上の凹凸の有無によって左右されるものではない。スロープの道路側の端部に排水溝等(0204)を設ける場合には、該排水溝までを道路とみなし、スロープは玄関(0205)の玄関たたき床と該排水溝(0204)までを段差なしで繋ぐ。なお、該排水溝の蓋板やグレーチングは隙間の小さい細目のものを利用することが望ましい。なお、「段差なし」とは、凹凸が一切無い表面をいうものではなく、高齢者の歩行時や車椅子利用者の通行時に支障となる程度の段差がないことをいうものである。例えば、建物の外構では、3ミリメートル未満程度の段差であれば、高齢者の歩行時や車椅子利用者の通行時に支障とならない。また、スロープは一部において3ミリメートル以上の段差を有する場合であっても、当該段差が高齢者の歩行時や車椅子利用者の通行時に支障とならない箇所にのみ段差が存在するのであれば、「段差なし」と捉えることができる。
【0025】
また、図1に示すように、スロープ(0101)の道路側の端部は、L型部分を設けることにより、道路に対して一直線に直接接続されないようにすることが望ましい。このようにして道路にスロープを接続することで、スロープにて勢いがついた車椅子等がそのまま道路へ飛び出してしまうことを防止することができる。さらに、スロープの末端に平坦なスペースを設け、車椅子を一旦停止して道路の安全を確認できるようにすることが望ましい。
【0026】
なお、スロープ(0202)は、幅員を0.8メートル以上とし、車椅子等であっても通行に支障の無い幅員を確保している。なお、車椅子の通行を一層円滑に行うためには、該スロープの幅員は1.2メートル以上1.5メートル以下程度であることがより望ましい。また、スロープの勾配はなるべく緩勾配とすることが望ましいため、住宅の地盤の形成時に宅地地盤レベルと道路レベルとの高低差を予め小さくしておくと良い。同様に、住宅の1階床レベルも道路レベルとの高低差が小さくなるように設計することが望ましい。
【0027】
スロープ(0202)には、高さ1メートル以下の手摺(0203)を設ける。該手摺の高さは1メートル以下とし、車椅子利用者や、高齢者が利用し易いようにする。また、腰が曲がっている高齢者等に備えて、該手摺は0.7メートル以上0.85メートル以下程度であることがより望ましい。後述する実施形態において説明する屋内に設置される手摺については、後から設置できるように壁等に補強部材を入れることとしているが、本実施形態における手摺(0203)は予めスロープに設置することとしている。スロープは通常はタイルやコンクリート、アスファルト等の部材により形成されるため、スロープの形成後に必要となった時点で手摺を設けることとすると、コンクリートの削孔等が必要となり、大掛かりな作業となる。このため、該手摺(0203)については、予めスロープ形成時に設置することとしている。
【0028】
(実施形態1の効果)以上のような構成をとる本実施形態の住宅では、後から改築する場合には大幅に改築が必要となってしまう建物の外構について、予め障害者や高齢者などの要介護者に配慮した住宅を提供することができる。
【0029】
《実施形態2》
【0030】
(実施形態2の構成)図3は本実施形態の玄関に係る部分を例示した図である。図3(a)は玄関の屋外側から見た玄関ドアである引き戸(0301)の正面図、図3(b)は玄関の屋内側から見た玄関内部の様子を表した図、図3(c)は玄関の床面部分を表した図である。本実施形態における住宅は、実施形態1に記載の住宅を基本とし、さらに、前記玄関は、引き戸(0301)と、引き戸レールにそった排水溝(0302)と、玄関たたき床面(0303)と、玄関あがり框(0306)とからなる。玄関たたき床面とは、玄関たたき床の表面である。
【0031】
(実施形態2の構成の説明)本実施形態に係る住宅は、実施形態1に記載の住宅のスロープにて道路から段差なしで繋がれた玄関たたき床面(0303)を備える玄関を有し、スロープと玄関とは引き戸(0301)にて区切られている。引き戸は引き戸レール上を滑動することにより開閉が行われる。該引き戸レールにそって、該引き戸のスロープ側(屋外側)に雨仕舞のための排水溝(0302)が配置される。該排水溝の蓋は、高齢者や障害者の歩行や、車椅子利用者の通行の支障とならないように細目状のものを利用することが望ましい。雨仕舞とは、外部からの雨水を玄関内部へ侵入させないための役割と、玄関内部に侵入した雨水や玄関たたきを掃除する際に使用する水などを速やかに排水させるための役割を持つ仕組みである。玄関たたき床面(0303)には、雨仕舞に向けて水勾配、すなわち、雨仕舞に向けての下り勾配が設けられている(図3(c)中の矢印で示される勾配)。該床面の勾配により、玄関たたき床に侵入した雨水や、玄関たたき床にて車椅子の車輪を洗った排水、車椅子の車輪に付着した泥などで汚れた玄関たたき床面を掃除するための排水などが排水溝へ流れるようになっている。通常であれば、車椅子の車輪等の掃除を玄関内で行うことは困難であるが、玄関たたき床面に設けられた勾配により、これらを容易に行うことができる。このため、玄関内又は近傍に掃除のための水道の蛇口やシャワーなどを備えていることが望ましい。なお、玄関たたき床面は、滑りにくくするために凹凸の意匠を施した床面等とすることが望ましい。この際の凹凸は、高低差1ミリメートル程度の歩行時に支障とならない凹凸とする。
【0032】
玄関あがり框(0306)と玄関たたき床面(0303)とは、段差が10ミリメートル以内となるようにする。段差を10ミリメートル以内とすることで、高齢者があまり足を上げなくても容易にあがり框に上がることができ、車椅子利用者も車椅子に乗ったまま車輪をあがり框に乗り上げることができる。さらに、当該段差は、2ミリメートル以上5ミリメートル以下程度であることが望ましく、3ミリメートルであることがより望ましい。玄関たたき床面には、雨仕舞に向けて下り勾配が設けられていることから、玄関あがり框に向けては上り勾配が設けられていることになる。このため、屋外(スロープ)と玄関あがり框の上面である1階床面との段差は、玄関たたき床面と玄関あがり框との段差以上の高低差となる。このため、玄関たたき床面と玄関あがり框との段差を数ミリメートルとした場合であっても、雨水等が屋内に容易に侵入してしまう虞も少ない。
【0033】
さらに、玄関には、高齢者等が靴の着脱時に腰を下ろすためのベンチ(0304)や、立ち座り時に掴むための手摺(0305)又は該手摺を設置するための手摺設置用補強部材(0307)を設置しても良い。
【0034】
(実施形態2の効果)以上のような構成をとる本実施形態の住宅では、後から改築する場合には大幅に改築が必要となってしまう建物の玄関部分の構造について、予め障害者や高齢者などの要介護者に配慮した住宅を提供することができる。
【0035】
《実施形態3》
【0036】
(実施形態3の構成)図4は本実施形態の廊下に係る部分を例示した図である。図4(a)は廊下の奥行きを表した図であり、図4(b)は手摺設置用補強部材の別の形態を例示した図である。本実施形態における住宅は、実施形態1又は2に記載の住宅を基本とし、さらに、前記住宅に設けられた廊下は、十分な幅を有し、手摺設置用補強部材(0401)が施された廊下側壁(0402)とからなる。
【0037】
(実施形態3の構成の説明)本実施形態に係る住宅は、実施形態1又は2に記載の住宅内部の廊下構造に特徴を有する。本実施形態における廊下は、幅員がL=0.8メートル以上である。このため、車椅子利用者であっても十分な幅が確保でき、容易に通行することができる。廊下の幅Lの上限は、一般的な住宅であれば1.2メートル程度であるが、これ以上の幅としても良い。
【0038】
図4(a)に示すように、該廊下は、廊下床面から高さ1メートル以下の位置に手摺設置用補強部材(0401)を配した廊下側壁(0402)にて形成されている。廊下側壁(0402)には、手摺設置用補強部材が予め設置されており、必要となったときに容易に手摺(0403)を設置可能となっている。図4(a)は既に手摺を設置した状態を示している。補強部材とは、例えば、厚さ1センチメートルから3センチメートル程度の木材やCチャンネルなどの軽量鉄骨などが該当する。手摺は、手摺に設けられたフランジを介して補強部材にねじや釘を打ち込むことで固着することができる。補強部材には、ねじを固定するためのねじ穴を予め設けておいても良い。該手摺設置用補強部材(0401)は、手摺が廊下床面から1メートル以内の位置に設置されるように廊下側壁に配置される。該手摺設置用補強部材は、景観上側壁内部に設けられていることが望ましいが、この場合には該補強部材がどの位置に設置されているのかを廊下側から視認できることが望ましい。例えば、手摺設置用補強部材が配置されている箇所をマーキングしたり、手摺設置用補強部材が配置されている位置を示した地図を予め作成したりすることが望ましい。また、将来介護が必要となる者が、右半身と左半身のいずれか一方のみが不自由になる可能性もある。このため、廊下の両側に手摺設置用補強部材を設けておくことがより望ましい。
【0039】
図4(b)に手摺設置用補強部材の別の形態を例示する。図4(b)に示す手摺設置用補強部材の例では、廊下側壁(0402)の壁面内部に手摺(0403)が手摺設置用補強部材(0401)とともに予め収納されている場合を示している。手摺を収納している廊下側壁(0402)を開閉式としておけば、必要に応じて即座に手摺を設置することができる。該手摺(0403)は両端部でスライド可能に手摺設置用補強部材と連結しており、手摺設置用補強部材を図4(b)に示す矢印方向へスライドすることにより、手摺を廊下側壁の表面に設置することができる。なお、手摺設置用補強部材の廊下側壁表面側端部に係止手段を設けることで手摺を固定することができる。
【0040】
なお、既に介護が必要な者が家族にいる場合には、必要に応じて図4(a)又は図4(b)に示す手摺設置用補強部材を利用して、一部又は全部の手摺を予め設置しても良い。以下の実施形態においても同様である。
【0041】
(実施形態3の効果)以上のような構成をとる本実施形態の住宅では、後から改築する場合には大幅に改築が必要となってしまう建物の廊下の幅について、予め障害者や高齢者などの要介護者に配慮した構造とし、壁面に設ける手摺等は必要となる介護の程度に応じて後から設置することができる。このため、住宅の建築時に家族が健常者のみであれば、無駄な手摺等を設置することなく広々とした廊下を利用することができ、要介護者が出現した時点で建物の基本構造を変更することなく、容易にかつ低コストで要介護者用の住宅へ改築することができるという優れた効果を奏する。
【0042】
《実施形態4》
【0043】
(実施形態4の構成)図5は本実施形態の洗面・脱衣室に係る部分を例示した図である。図5(a)は脱衣室に備えられた洗面台を含むコーナーを表した図、図5(b)は脱衣室の一角に設けられた掃除用流しを表した図である。本実施形態における住宅は、実施形態1から3に記載の住宅を基本とし、さらに、前記住宅に設けられた脱衣室は、略水平手摺設置用補強部材(0504)と略垂直手摺設置用補強部材(0507)を施した壁面(0503)と、洗面台(0501)と、掃除用流し(0502)とからなる。
【0044】
(実施形態4の構成の説明)本実施形態に係る住宅は、実施形態1から3に記載の住宅内部の脱衣室に特徴を有する。本実施形態における脱衣室は、床面から高さ1メートル以下の位置に、脱衣時に握るための手摺を設置することができる略水平手摺設置用補強部材(0504)と、略垂直手摺設置用補強部材(0507)とが施された壁面(0503)からなる。このため、居住者が健常者のみであるときには、手摺(0505、0508)を設置せず、広々とした脱衣室を利用することができるが、居住者に介護が必要となった場合には、当該各手摺設置用補強部材に後から手摺を設置することができる。図5(a)は手摺を設置した状態を示している。手摺設置用補強部材の具体的な構成については実施形態3と同様である。なお、略垂直に設置された手摺の上端部の高さは、床面から1.3メートル以下程度で良い。これは、主な利用者である高齢者等の肩よりも高い位置に手摺を設置する必要性が少ないためである。
【0045】
脱衣室には、洗面器上面が0.65メートル以上0.8メートル以下の高さに設置され、蛇口(0506)の開閉装置がレバー式形状である洗面台(0501)が設けられる。すなわち、該脱衣室は洗面室の機能をも備える。洗面器上面とは、洗面台(0501)における手や顔などを洗うための器部分の上面である。洗面器上面を0.65メートル以上0.9メートル以下とすることで、高齢者等が洗面台を利用する際の足腰の負担を低減することができる。さらに、1メートル以下であるため、要介護者が着替える際に洗面器上面に手を付くこともできる。該洗面器の水道の蛇口をレバー式形状とすることで、握力の弱い高齢者等であっても容易に蛇口の開閉を行うことができる。なお、レバー式の開閉装置を用いる代わりに、自動水栓装置を用いても良い。
【0046】
脱衣室には、図5(b)に示すように前記洗面台とは別に掃除用流し(0502)が設けられる。掃除用流しとは、雑巾や汚物の付着した衣服を洗濯するための流しである。該掃除用流しが無い場合には、高齢者の汚物が付着したオムツ等を手や顔などを洗う洗面台や風呂場にて洗濯をする必要があるが、該掃除用流しを備えることで、汚物の洗濯を洗面台とは別の箇所で行うことができる。このため、洗面台や風呂場を清潔に保つことができる。
【0047】
(実施形態4の効果)以上のような構成をとる本実施形態の住宅では、後から改築する場合には大幅に改築が必要となってしまう建物の脱衣室について、予め障害者や高齢者に配慮した構造とし、壁面に設ける手摺等は必要となる介護の程度に応じて後から設置することができる。このため、住宅の建築時に家族が健常者のみであれば、無駄な手摺等を設置することなく広々とした脱衣室を利用することができ、要介護者が出現した時点で建物の基本構造を変更することなく、容易にかつ低コストで要介護者用の住宅へ改築することができるという優れた効果を奏する。
【0048】
《実施形態5》
【0049】
(実施形態5の構成)図6は本実施形態の浴室に係る部分を例示した図である。図6(a)は浴室の体洗いスペースを表した図、図6(b)は浴室の入り口を表した図、図6(c)は浴槽を表した図である。本実施形態における住宅は、実施形態1から4に記載の住宅を基本とし、さらに、前記住宅に設けられた浴室は、介助スペース(0601)を備えた浴室床面(0603)と、引き戸(0602)と、浴槽(0606)と、からなる。
【0050】
(実施形態5の構成の説明)本実施形態に係る住宅は、実施形態1から4に記載の住宅内部の浴室に特徴を有する。
【0051】
介助スペース(0601)とは、平均的成人体格を有する介助者一名以上が前かがみにて被介助者と胴体が重なることなく体洗いの補助ができる程度のスペースである。介助スペースは、浴室床面を広めにすることで設けることができる。例えば、浴室床面を縦横1.6メートル四方程度とすることで介助スペースを設けることができる。なお、浴室床面とは、ここでは、浴室の底面のうち、浴槽が配置されている部分以外の底面部分を指す。
【0052】
浴室床面(0603)の高さは、前記脱衣室床面と略同一の高さとし、高齢者等がつまずくことのないようにする。また、浴室床面の表面には滑り止め凹凸加工を施し、高齢者等であっても床面を滑りにくくする。
【0053】
脱衣室と浴室との間に設けられた引き戸(0602)は、脱衣室床面と浴室床面との間に段差とならない高さにレールを設置し、該レール上を滑動することで開閉される。また、該引き戸の有効開口幅寸法は0.8メートル以上とし、高齢者等を介助した状態で介助者と被介助者が通過できる。有効開口幅寸法は0.8メートル以上1.2メートル以下程度がより望ましい。
【0054】
浴槽(0606)は、浴室床面(0602)からの縁の高さHが0.45メートル以下とする。縁の高さを0.45メートル以下とすることで、高齢者等であっても跨ぎ易い段差となり、転倒等を防止することができる。また、浴槽の縁には腰を掛けられる腰掛部(0607)を設ける。腰掛部を設けることで、浴槽へ入る際に一旦腰掛けてから湯船につかることができるので、高齢者等であっても楽な姿勢で湯船に漬かることができ、湯船から上がる場合にも、一旦腰掛けてから立ち上がることができるため、より高齢者等の転倒を防止することができる。腰掛部は、浴槽の少なくとも一部に設けられていればよい。図6では、浴槽の一辺の縁が約30センチメートル程度の幅を有しており、腰掛部(0607)を形成している。
【0055】
浴槽の壁面には、浴室床面での移動時に握るための手摺を設置するための略水平手摺設置用補強部材(0604)と、浴槽への入浴時又は浴槽からの出浴時に握るための手摺を設置するための略垂直手摺設置用補強部材(0605)と、を施している。略水平手摺設置用補強部材に設置される手摺は、高齢者等が浴室床面での移動時に握るため、廊下手摺高さ等と同じ浴室床面から1メートル以下の高さに略水平方向に設けられることが望ましい。また、略垂直手摺設置用補強部材に設置される手摺は、高齢者等が浴槽への入浴時又は浴槽からの出浴時に握るための手摺であるため、図6(c)に示すように浴槽と浴室床面との境近傍に略垂直に設けられる。図6では、各手摺設置用補強部材に手摺を設置した状態を示している。本実施形態においても、居住者が健常者のみであるときには手摺を設置せずに、広々とした浴室を利用することができ、居住者に介護が必要となった場合には、当該手摺設置用補強部材に後から手摺を設置することができる。手摺設置用補強部材の具体的な構成については実施形態3と同様である。
【0056】
(実施形態5の効果)以上のような構成をとる本実施形態の住宅では、後から改築する場合には大幅に改築が必要となってしまう建物の浴室について、予め障害者や高齢者に配慮した構造とし、壁面に設ける手摺等は必要となる介護の程度に応じて後から設置することができる。このため、住宅の建築時に家族が健常者のみであれば、無駄な手摺等を設置することなく広々とした浴室を利用することができ、要介護者が出現した時点で建物の基本構造を変更することなく、容易にかつ低コストで要介護者用の住宅へ改築することができるという優れた効果を奏する。
【0057】
《実施形態6》
【0058】
(実施形態6の構成)図7は本実施形態のトイレに係る部分を例示した図である。本実施形態における住宅は、実施形態1から5に記載の住宅を基本とし、さらに、前記住宅に設けられたトイレは、洋式便器(0701)と、略垂直手摺設置用補強部材(0703)と、略水平手摺設置用補強部材(0702)と、からなる。
【0059】
(実施形態6の構成の説明)本実施形態に係る住宅は、実施形態1から5に記載の住宅内部のトイレに特徴を有する。本実施形態に係るトイレは、洋式便器(0701)を用いている。洋式便器は、高齢者等にとって和式便器の場合よりも排便作業を楽な姿勢で行うことができる。また、トイレの壁面には、該洋式便器の便座への立ち座り時に握るための手摺を設置できる略垂直手摺設置用補強部材(0703)と、前記便座へ座った時に座位を安定するために握る手摺を設置できる略水平手摺設置用補強部材(0702)と、を予め施しておく。略垂直手摺設置用補強部材に設置される手摺は、該洋式便器の便座への立ち座り時に握るため、該洋式便器の前面近傍の利用者が前かがみになった時に握れる位置に設けられることが望ましい。このような位置に手摺を設置すると、利用者は自然と腰を上げることができる。また、略水平手摺設置用補強部材に設置される手摺は、高齢者等が便座での座位安定のために利用するため、高齢者等が便座に着座したときに手の届く範囲に設置されている必要がある。また、便座への立ち座り時に握る手摺と座位安定のために握る手摺とを一体化してL字型の手摺(0705)としても良いし、U型の手摺(0706)を便座横に設置しても良い。さらに、トイレ内での移動のための手摺(0708)を設置するための手摺設置用補強部材(0707)を設けても良い。図7では、各手摺設置用補強部材に手摺を設置した状態を示している。本実施形態においても、居住者が健常者のみであるときには手摺を設置せずに、広々としたトイレを利用することができ、居住者に介護が必要となった場合には、当該手摺設置用補強部材に後から手摺を設置することができる。手摺設置用補強部材の具体的な構成については実施形態3と同様である。
【0060】
なお、洋式便器には、高齢者等が着座する際に勢いよく後部へ倒れてしまうことを防止するために背もたれ(0704)を設けてもよい。
【0061】
(実施形態6の効果)以上のような構成をとる本実施形態の住宅では、後から改築する場合には大幅に改築が必要となってしまう建物のトイレについて、予め障害者や高齢者に配慮した構造とし、壁面に設ける手摺等は必要となる介護の程度に応じて後から設置することができる。このため、住宅の建築時に家族が健常者のみであれば、無駄な手摺等を設置することなく広々としたトイレを利用することができ、要介護者が出現した時点で建物の基本構造を変更することなく、容易にかつ低コストで要介護者用の住宅へ改築することができるという優れた効果を奏する。
【0062】
《実施形態7》
【0063】
(実施形態7の構成)図8は本実施形態の居間に係る部分を例示した図である。本実施形態における住宅は、実施形態1から6に記載の住宅を基本とし、さらに、前記住宅に設けられた居間は、手摺代わりとなる高さ1メートル以下のテーブル(0801)が配置されていることを特徴とする。
【0064】
(実施形態7の構成の説明)本実施形態に係る住宅は、実施形態1から6に記載の住宅内部の居間に特徴を有する。本実施形態に係る居間は、高さ1メートル以下のテーブルが配置されているため、高齢者等が移動時にテーブルを手摺代わりとすることができる。テーブルの高さは、0.7メートル以上1メートル以下がより望ましい。同様に、椅子(0802)の背もたれの高さも手すり代わりとなるように床面から背もたれの上端部までの高さが1メートル以下となるようにしても良い。なお、椅子は、利用者が着席した場合に姿勢を維持し易くするために背もたれを大きくすることが望ましい。また、他の居室から該居間までの境目に設けられた敷居(0803)等は、高齢者等が躓くことの無いように段差が3ミリメートル以下となるようにすることが望ましい。
【0065】
(実施形態7の効果)以上のような構成をとる本実施形態の住宅では、予め障害者や高齢者の手摺代わりとなる家具を設置することで、無駄な手摺等を設置することなく広々とした居間を利用することができる。
【0066】
《実施形態8》
【0067】
(実施形態8の構成)図9は本実施形態の個室、寝室に係る部分を例示した図である。図9(a)は個室内部を見た場合を表した図、図9(b)は個室内部から入り口の引き戸を見た場合を表した図である。本実施形態における住宅は、実施形態1から7に記載の住宅を基本とし、さらに、前記住宅に設けられた個室は、空調機(0901)と、壁面に設置されたコンセント(0903)と、引き戸(0904)などから構成されている。
【0068】
(実施形態8の構成の説明)本実施形態に係る住宅は、実施形態1から7に記載の住宅内部の個室に特徴を有する。本実施形態に係る個室は、ベッド(0902)を備えることが可能な程度の広さを有する個室である。ベッドとは、一般的なベッドのみならず、介護専用のベッド等も含む。
【0069】
個室には、空調機(0901)が備えられているが、空調機は直接ベッド上へ風が当たらないように設置されている。高齢者等が空調機からの送風を直接受けると、体調を崩し易いが、該空調機は直接ベッド上へ風が当たらないように設置されており、ベッドに横たわった高齢者等が体調を崩すことをなるべく防止することができる。
【0070】
個室の壁面には、ベッドのベッド下面の高さよりも低い位置にコンセント(0903)の差込口が設けられている。ベッド下面とは、ベッドの平坦部を構成している部分の下面である。コンセントの差込口は、通常は床面から約25センチメートルの高さの壁面に設けられる。該ベッドとして、介護ベッドを置く場合、電動でベッドの起き上がりをさせるための電源が必要となるため、ベッドをコンセントの近くに配置する必要がある。しかし、床面から約25センチメートルの高さにコンセントを設けると、コンセントの差込口はベッドに当たってしまう可能性が高い。このため、本実施形態では、ベッド下面の高さよりも低い位置にコンセントの差込口を設け、介護ベッドに当たらない高さにてコンセントを利用可能としている。なお、ベッド下面の高さよりも低い位置としては、床面からコンセントの差込口までの高さAが12センチメートル以上20センチメートル以下程度の位置であることが望ましい。
【0071】
一方、図9(b)に示すように、介護用ベッド用に設けるコンセントとは別に、通常の電気製品を利用するためのコンセント(0905)を設ける場合には、床面から約40センチメートルから60センチメートル程度の高さに設けることが望ましい。このような高さにコンセントの差込口を設けた場合には、コンセントの差込時に大きく腰を曲げる必要がなくなり、高齢者等のみならず、健常者であっても利便性が高くなる。また、個室の照明を点灯させるためのスイッチ(0906)は、高齢者でも利用し易い高さに設置することが望ましい。図9(b)では、スイッチ(0906)が床面から高さ0.9メートルから1.1メートルの高さに設けられており、高齢者であっても腕を上げることなく押すことができ、車椅子利用者でも背伸びせずに押すことができる。さらに、スイッチを引き戸の引き手付近に設けることで、高齢者であっても引き戸を開けた後にすぐにスイッチの位置を探し当てることができる。
【0072】
また、引き戸(0904)付近に設けられるこれらのコンセント(0905)及びスイッチ(0906)は、引き戸から間をあけて設けることが望ましい。これは、スイッチが引き手と重なって押しにくくなることを防ぎ、入り口から入ってきた車椅子利用者の足がコンセントに当たってしまうことを防ぐためである。引き戸(0904)からスイッチ(0906)等までの距離Bは、30センチメートル以上50センチメートル以下程度とすることが望ましい。
【0073】
個室の出入口には有効開口幅寸法が0.8メートル以上である引き戸(0904)を設ける。出入口の有効開口幅寸法は0.8メートル以上1.2メートル以下であることがより望ましい。有効開口幅寸法を0.8メートル以上とすることで、車椅子利用者の通行や、図9(b)に示すような被介助者が介助者に介助された状態での通行が可能となる。また、開き戸ではなく、引き戸とすることで、力の無い高齢者等であっても容易に戸の開閉を可能となる。また、引き戸では、戸開閉による前後の移動が無いため、体のバランスが保ち易く、転倒する要因を軽減することができる。
【0074】
(実施形態8の効果)以上のような構成をとる本実施形態の住宅では、後から改築する場合には大幅に改築が必要となってしまうコンセントの差込口の位置などについて、予め障害者や高齢者に配慮した構造とするのみならず、住宅の建築時に家族が健常者のみであっても利便性を損なうことの無い構造とすることができる。
【0075】
《実施形態9》
【0076】
(実施形態9の構成)図10は本実施形態のデッキに係る部分を例示した図である。本実施形態における住宅は、実施形態1から8に記載の住宅を基本とし、さらに、前記住宅に設けられたデッキ及び/又はバルコニー(以下、「デッキ等」という)は、出入口の段差が125ミリメートル以下であることを特徴とする。なお、デッキとは、主として1階居室に隣接して設けられる屋外への張り出し床をいい、バルコニーとは、主として2階居室に隣接して設けられる屋外への張り出し床をいう。
【0077】
(実施形態9の構成の説明)本実施形態に係る住宅は、実施形態1から8に記載の住宅内部のデッキ等に特徴を有する。本実施形態に係るデッキ等は、居室との出入口の段差が125ミリメートル以下とする。居室とは、実施形態7に記載の居間や実施形態8に記載の個室等をいう。居室と出入口との段差は雨水の居室への流入等を考慮すると、50ミリメートル以上125ミリメートル以下であることが望ましい。しかし、デッキ等に建物外部に向けて勾配が付けられているなどの雨水対策がされている場合には、居室とデッキ等との出入口の段差は極力小さい方がよく、段差がないことが最も望ましい。
【0078】
なお、実施形態1から8に記載した各住宅は、浴室などの一部を除いて住宅の全ての箇所において一定の室内温度とするための空調機を備えることが望ましい。例えば、廊下、居室、脱衣室などを全て同じ室温となるように管理することができれば、周りの温度変化が高齢者等の身体に与える負担を少なくすることができる。この際、浴室には浴室内暖房乾燥機を備えることが望ましい。
【0079】
(実施形態8の効果)以上のような構成をとる本実施形態の住宅では、後から改築する場合には大幅に改築が必要となってしまうデッキ等について、予め障害者や高齢者に配慮した構造とするのみならず、住宅の建築時に家族が健常者のみであっても利便性を損なうことの無い構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本実施形態の住宅における間取りを例示する図
【図2】実施形態1の住宅の外構を表す図
【図3】実施形態2の玄関を表す図
【図4】実施形態3の廊下を表す図
【図5】実施形態4の住宅における脱衣室を表す図
【図6】実施形態5の住宅における浴室を表す図
【図7】実施形態6の住宅におけるトイレを表す図
【図8】実施形態7の住宅における居間を表す図
【図9】実施形態8の住宅における個室を表す図
【図10】実施形態9の住宅におけるデッキを表す図
【符号の説明】
【0081】
0101 スロープ
0102 玄関
0103a、0103b 廊下
0104 脱衣室
0105 浴室
0106 トイレ
0107 居間・食堂
0108a、0108b 寝室
0109 デッキ
0110 台所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き戸を有する玄関と、
道路から玄関たたき床までを段差なしで繋ぐ幅員0.8メートル以上のスロープと、
前記スロープに設けられる高さ1メートル以下の手摺と、
を有する住宅。
【請求項2】
前記玄関は、引き戸レールにそって雨仕舞のための排水溝を有し、
玄関たたき床面は、前記雨仕舞に向けた水勾配を有し、
玄関たたき床面と、玄関あがり框とは段差が10ミリメートル以内である
請求項1に記載の住宅。
【請求項3】
幅員0.8メートル以上である廊下と、
廊下床面から高さ1メートル以下の位置に手摺設置用補強部材を配した廊下側壁と、
を有する請求項1又は2に記載の住宅。
【請求項4】
衣服の着脱を行うための脱衣室を有し、
前記脱衣室は、
床面から高さ1メートル以下の位置に略水平手摺設置用補強部材を、床面から高さ1.3メートル以下の位置に略垂直手摺設置用補強部材を施した壁面と、
洗面器上面が0.65メートル以上0.9メートル以下の高さに設置され、蛇口の開閉装置がレバー式形状である洗面台と、
前記洗面台とは別に設けられた掃除用流しと、
からなる請求項1から3のいずれか一に記載の住宅。
【請求項5】
前記脱衣室に隣接した浴室を有し、
前記浴室は、
平均的成人体格を有する介助者一名以上が前かがみにて被介助者と胴体が重なることなく体洗いができる程度の介助スペースを備え、
前記脱衣室床面と略同一の高さであり、滑り止め凹凸加工された浴室床面と、
前記脱衣室床面と、前記浴室床面との間に段差とならないレール上を滑る有効開口幅寸法が0.8メートル以上である引き戸と、
前記浴室床面からの縁の高さが0.45メートル以下であり、縁に腰を掛けられる腰掛部を設けた浴槽と、
前記浴室床面での移動時に握るための略水平手摺設置用補強部材と、前記浴槽への入浴時又は浴槽からの出浴時に握るための略垂直手摺設置用補強部材と、を施した壁面と、
からなる請求項4に記載の住宅。
【請求項6】
洋式便器と、
前記洋式便器の便座への立ち座り時に握るための略垂直手摺設置用補強部材と、前記便座へ座った時に座位を安定するために握る略水平手摺設置用補強部材と、を施した壁面と、
前記便座に対応した背もたれと、
を有するトイレをさらに有する請求項1から5のいずれか一に記載の住宅。
【請求項7】
手摺代わりとなる高さ1メートル以下のテーブルが配置された居間をさらに有する請求項1から6のいずれか一に記載の住宅。
【請求項8】
ベッドを備えた個室であって、
前記ベッド上へ直接風が当たらないように設置された空調機と、
前記ベッドのベッド面下面の高さよりも低い位置に設置されたコンセントの差込口と、
有効開口幅寸法が0.8メートル以上ある引き戸と、
を有する個室をさらに有する請求項1から7のいずれか一に記載の住宅。
【請求項9】
居室との出入口の段差が125ミリメートル以下であるデッキ及び/又はバルコニーをさらに有する請求項1から8のいずれか一に記載の住宅。
【請求項10】
請求項3から9のいずれか一に記載の住宅であって、手摺設置用補強部材の一又は複数に手摺が設置された住宅。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−38510(P2008−38510A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215691(P2006−215691)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000114086)ミサワホーム株式会社 (288)
【Fターム(参考)】