説明

(メタ)アクリル酸プロセスにおける汚損を防止するための組成物および方法

アミノアルキルイミダゾリンまたはアルキル置換スクシンイミド防汚剤またはそれらの混合物を有する組成物、および(メタ)アクリル酸製造プロセスおよび(メタ)アクリル酸が反応に用いられ、未反応の(メタ)アクリル酸が回収(recover)されるプロセスにおける汚損を防止するためのアミノアルキルイミダゾリン類およびアルキル置換スクシンイミド類の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸プロセスにおける汚損を防止する組成物および方法に関する。特に、本発明は、アミノアルキルイミダゾリンまたはアルキル置換スクシンイミド防汚剤またはそれらの混合物を含有する組成物、および(メタ)アクリル酸製造プロセスおよび反応に(メタ)アクリル酸が用いられる、未反応の(メタ)アクリル酸が回収(recover)されるプロセスにおける汚損を防止するための防汚剤の使用である。
【背景技術】
【0002】
最も一般的な(メタ)アクリル酸へのルートは、3〜4個の炭素原子を有するアルカン、アルケン、アルカノールまたはアルケナルの気相触媒酸化を経るものである。上記酸化プロセスからの反応生成物は分離され、回収(recovery)および精製セクションにおいて(メタ)アクリル酸は精製される。上記回収および精製セクションの設計は、プロセス装置および作動条件によって異なるが、基本的には抽出および蒸留分離を含む。一般化された(メタ)アクリル酸の回収および精製プロセスにおいては、酸化プロセスからの廃液はアブソーバー内で冷却され、生成物廃液から軽い(light)成分を除去する。その後、抽出カラムにおいて(メタ)アクリル酸は、選択された溶媒により水または酢酸のいずれかまたは両方を除去することにより濃縮される。粗(メタ)アクリル酸流はその後、続きの蒸留塔内で精製され、残留する抽出溶媒および反応副生物が除去される。設計の違いは溶媒選択に見られる。
【0003】
(メタ)アクリル酸は反応性モノマーであり、如何なるささいな環境の変化でも重合する傾向にある。このことは(メタ)アクリル酸の製造における回収および精製作業中も同様であり、上昇した温度が(メタ)アクリル酸の重合を促進する。このような状況下では、望まれない重合は、ポリマーの堆積物がプロセス装置を汚染するほど深刻になる。最終的には、装置の停止およびポリマー汚染物質の除去のための洗浄が必要とされる。従来、上記望まれない重合を防止するために、モノマーの製造プロセスにおいては重合抑制剤が用いられている。一般的な重合抑制剤としては、フェノール化合物、アミン類、キノン類、ニトロキシル化合物、および特定の無機複合体が挙げられる。フェノチアジン(PTZ)、ハイドロキノン(HQ)およびモノメチルハイドロキノンエーテル(MEHQ)が最も広く用いられている抑制剤の例である。これらの抑制剤は重合反応を阻害し、ポリマーの形成を防止するように設計されている。しかしながら、望まないポリマー形成を完全に排除するほど効果的な市販の重合抑制剤は一つもない。これらの抑制剤の存在下であっても、依然としてポリマー形成およびその後の汚染はかなりの量であるため、定期的な洗浄は(メタ)アクリル酸プロセスの手順の一部である。
【0004】
工業的な手順においては、汚染防止の向上のために、重合抑制剤に加えて分散剤も用いられる場合がある。通常分散剤は、汚染物質粒子の表面と親和性および液体プロセス流への良好な溶解性を有する分子から成る。抑制剤とは異なり、分散剤は汚染物質形成に関与する重合反応を阻害しない。代わりに分散剤分子は、化学的または物理的相互作用を通じて既存のポリマー粒子に吸着し、上記ポリマー粒子上に隔離層を形成し、上記粒子の凝集を防止することにより、上記粒子をプロセス媒体において浮遊状態に維持する。効果的な分散剤の選択は、その実用性が共に既定のプロセスに特有である汚染物質および液体媒体の詳細な特質に大きく左右されるため、実験的な技術に留まっている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は(メタ)アクリル酸および、
式(I)のアミノアルキルイミダゾリン類
【0006】
【化1】

【0007】
および、式(II)のアルキル置換スクシンイミド類
【0008】
【化2】

【0009】
および、それらの混合物から成る群から選択される1以上の化合物を有し、
nは1〜約9の整数であり;mは1〜約10の整数であり;RおよびR´はC〜Cのアルキレンであり;R、R、RおよびRはC〜C30のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアルキルおよびアミノアリールからそれぞれ選択され;およびR4は水素、(CHCOOH、CHCH(CH)COOH、イミダゾリン、アルキルおよびアルキルアリールから選択されることを特徴とする組成物である。
【0010】
他の態様においては、本発明は効果的な防汚量の1以上の式(I)のアミノアルキルイミダゾリン類
【0011】
【化3】

【0012】
または、1以上の式(II)のアルキル置換スクシンイミド類
【0013】
【化4】

【0014】
または、それらの混合物をプロセス流に添加することを含み、
nは1〜約9の整数であり;mは1〜約10の整数であり;RおよびR´はC〜Cのアルキレンであり;R、R、RおよびRはC〜C30のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアルキルおよびアミノアリールからそれぞれ選択され;およびR4は水素、(CHCOOH、CHCH(CH)COOH、イミダゾリン、アルキルおよびアルキルアリールから選択されることを特徴とする(メタ)アクリル酸プロセスにおける汚損を防止する方法である。
【0015】
本発明の上記アミノアルキルイミダゾリン類およびアルキル置換スクシンイミド類は、(メタ)アクリル酸の製造または、(メタ)アクリル酸がプロセス流に含有される関連するプロセスにおいて用いられるプロセス装置における汚染物質の形成および堆積を効果的に防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
用語の定義
「アルケニル」は、単一の水素原子の除去による1以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または枝分れ鎖炭化水素に由来する一価の基を意味する。上記アルケニル基は、1以上の酸素または硫黄原子、または、ここではYは2つの酸素または硫黄原子または−NY−基は互いに付着しないという条件で規定されている1以上の式−NY−の基で途絶(interrupt)され得る。代表的なアルケニル基は、エテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イル等である。
【0017】
「アルコキシ」は、アルキル−O−基を意味し、アルキルはここで規定されるものである。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等を挙げることができる。
【0018】
「アルキル」は、単一の水素原子の除去による直鎖または枝分れ鎖の飽和炭化水素に由来する一価の基を意味する。上記アルキル基は、1以上の酸素または硫黄原子、または、ここではYは2つの酸素または硫黄原子または−NY−基は互いに付着しないという条件で規定されている1以上の式−NY−の基により途絶され得る。代表的なアルキル基としては、エチル、n−およびイソ−プロピル、n−、二級、イソおよび三級ブチル、ラウリル、オクタデシル等を挙げることができる。
【0019】
「アルキルアリール」は、アルキル−アリレーン基を意味し、アルキルおよびアリレーンはここで規定されるものである。代表的なアルキルアリールは、トリル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ノニルフェニル等である。
【0020】
「アルキレン」は、2つの水素原子の除去による直鎖または枝分れ鎖の飽和炭化水素に由来する2価の基を意味する。代表的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソブチレン等を挙げることができる。
【0021】
「アミノ」は、式YN−の基およびその四級塩であり、YおよびYはそれぞれ、ここで規定される水素、アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはアリールアルキルである。YおよびYは、それらが付着しているN原子と共に、ヘテロシクリル基も形成し得る。代表的なアミノ基は、アミノ(−NH)、メチルアミノ、エチルアミノ、イソ−プロピルアミノ、四級ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、ピペリジノ等である。
【0022】
「アミノアルキル」は、アミノ−アルキレン−基を意味し、アミノおよびアルキレンはここで規定されるものである。代用的なアミノアルキル基は、3−ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノエチル等である。
【0023】
「アミノアリール」は、アミノ−アリレーン−基を意味し、アミノおよびアリレーンはここで規定されるものである。
【0024】
「アリール」は、約5〜約14の環原子を有する飽和および不飽和の芳香性炭素環式ラジカル、および飽和および不飽和芳香性ヘテロサイクリックラジカルを意味する。代表的なアリールは、フェニルナフチル、フェナントリル、アントラシル、ピリジル、フリル、ピロリル、キノリル、チエニル、チアゾリル、ピリミジル、インドリル等である。状況に応じて、アリールは、ヒドロキシ、ハロゲン、C〜CのアルキルおよびC〜Cのアルコキシから選択される1以上の基で置換される。
【0025】
「アリールアルキル」は、アリール−アルキレン−基を意味し、アリールおよびアルキレンはここで規定されるものである。代表的なアリールアルキルは、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、1−ナフチルメチル等を挙げることができる。
【0026】
「アリレーン」は、2つの水素原子の除去によるここで規定されるアリールに由来する芳香性の単環または多環の環系を意味する。
【0027】
「ヘテロシクリル」は、環系における1以上の原子が例えば窒素、酸素または硫黄などの炭素以外の成分である、約3〜約10環原子、好ましくは約5〜約10環原子の芳香性または非芳香性の単環または多環の環系を意味する。環系の環の好ましいサイズは、環が約5〜約6環原子を含むものである。状況に応じてヘテロシクリルは、1以上のヒドロキシ、アルコキシ、アミノまたはチオ基により置換される。代表的な飽和ヘテロシクリル環は、ピペリジル、ピローリジニル、ピペラジニル、モルフォリニル、チオモルフォリニル等である。代表的な芳香性ヘテロシクリル環は、ピラジニル、ピリジル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル等である。
【0028】
「ヒドロキシアルキル」は、アルキル基の1つの炭素原子に1つより多いヒドロキシ基が付着しないという条件で、1以上のヒドロキシル基により置換された、ここで規定されているアルキル基を意味する。代表的なヒドロキシアルキルは、ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等である。
【0029】
「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドを意味する。
【0030】
「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸およびアクリル酸を意味する。
【0031】
「(メタ)アクリル酸プロセス」は、アクリル酸およびメタクリル酸の製造のためのプロセスを意味し、特に上記製造プロセスの回収および精製プロセスを意味する。(メタ)アクリル酸プロセスは、(メタ)アクリル酸が反応において用いられ、および未反応の(メタ)アクリル酸が回収される、(メタ)アクリル酸のエステル化などのプロセスを含む。また、(メタ)アクリル酸がかなりの量の副生成物として発生し、製造される生成物の精製の初期の段階に存在する、例えばアクロレインおよびアクリロニトリル製造のような他の製造プロセスも含まれる。
【0032】
「防止する」は、防止することおよび抑制することの両方を含む。
【0033】
好ましい態様
本発明は、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸を含有するプロセス流を扱うプロセス装置における汚損を軽減するための、選択されたアミノアルキルイミダゾリンおよびアルキル置換スクシンイミド防汚剤の使用を開示する。
【0034】
アミノアルキルイミダゾリン類は、長鎖カルボン酸をポリアルキレンポリアミンと、例えばここに参照する米国特許第2,200,815号、第2,267,965号、第2,992,230号、および第5,300,235号に記載されている化学量論的方法により反応させることにより調製できる。
【0035】
本発明のアミノアルキルイミダゾリン類の調製に用いられる長鎖カルボン酸は、式R´´−COOHを有し、R´´はC〜C30のアルキルまたはアルケニルであり、状況に応じて1以上のアリール基で置換される。代表的な長鎖カルボン酸は、オレイン酸、リノール酸、共役リノール酸、パルミチン酸およびステアリン酸を含む。
【0036】
このアミノアルキルイミダゾリンの調製に用いられるポリアルキレンポリアミン類は、式
【0037】
【化5】

【0038】
を有し、RはC〜Cのアルキレンであり、mは1〜約11の整数である。「ポリエチレンポリアミン」は、ポリアルキレンポリアミンを意味し、Rは−CHCH−である。代表的なポリアルキレンポリアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、およびペンタエチレンヘキサミンを含む。
【0039】
本発明の好ましい態様においては、アミノアルキルイミダゾリンはトール油脂肪酸(TOFA)、オレイン酸およびリノール酸の混合物を等モルの量のジエチレントリアミン(DETA)を反応させ、TOFA/DETAイミダゾリン(1−アミノエチル−2−C17アルキレン−2−イミダゾリン)を準備することにより調製される。
【0040】
他の好ましい態様においては、アミノアルキルイミダゾリンは(i)トール油脂肪酸をポリエチレンポリアミンと反応させ;および(ii)工程(i)の生成物をアクリル酸と反応させることにより調製される。
【0041】
アルキル置換スクシンイミドおよび関連する物質の調製は、例えば、ここに参照する米国特許第3,172,892号、第3,219,666号、第3,272,746号、第4,379,064号および第4,889,646号に記載されている。用語「スクシンイミド」はスクシンイミドの調製に採用される反応の副生成物として生成されるアミド、イミドおよびアミジン種の多くを含むと理解される。しかしながら、優勢な生成物はスクシンイミドであり、上記用語は通常アルキル置換スクシンイミドまたは無水物を窒素含有化合物と反応させた生成物を意味するものとして許容される。好ましくは、窒素含有化合物はアミンであり、より好ましくはここで規定されるポリアルキレンポリアミン類である。
【0042】
本発明の好ましい態様においては、アルキル置換スクシンイミドは、C12〜C30のオレフィン類と、無水マレイン酸と、ポリエチレンポリアミンとの混合物を反応させることにより調製される。「C12〜C30のオレフィン」とは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオリゴマーなどの、C〜Cのα−モノ−オレフィン類のオリゴマーを意味する。
【0043】
他の好ましい態様においては、アルキル置換スクシンイミドはC12〜C30のオレフィン類と、無水マレイン酸と、ジエチレントリアミンとの混合物を反応させることにより調製される。
【0044】
本発明のアミノアルキルイミダゾリンおよびアルキル置換スクシンイミド防汚剤は、単独でも、適切な溶媒との混合物としてでも用いることができる。使用(取り扱い、噴射および分配)上の利便性のため、通常は、上記防汚剤を液体状にするために、適切な溶媒が好まれる。適切な溶媒は上記防汚剤を溶解し、(メタ)アクリル酸プロセスとの相性が良くなければならない。適切な溶媒は、水、脂肪族留出液、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアルキレートエステル、アルキルメタクリレートエステル、種々の(メタ)アクリル酸製造プロセスに用いられる市販の抽出溶媒、および芳香族類を含む。代表的な抽出溶媒は、ブチルアセテート、ヘプタン、ジイソブチルケトン、エチルアクリレート、メチルイソブチルケトン、高沸点オイル等を含む。代表的な芳香族類は、キシレン、トルエン、重芳香性ナフサ等を含む。
【0045】
本発明の好ましい態様においては、アミノアルキルイミダゾリンおよびアルキル置換スクシンイミド防汚剤は、1以上の重合抑制剤と共に用いられる。重合抑制剤は、従来(メタ)アクリル酸製造において望まれない重合を抑制するために用いられてきた。重合抑制剤の例は、HQ、MEHQ、PTZ、4−ヒドロキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−1−オキシル、その他のニトロキシル化合物、N−アルキルフェニレンジアミン類、ニトロソ化N−アルキルフェニレンジアミン類、ヒドロキシルアミン類、ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、ニトロソジフェニルアミン、銅複合体類、マンガン複合体類、および(メタ)アクリル酸の調製、精製、および貯蔵/輸送の技術において公知のその他のものを含む。多くの場合、(メタ)アクリル酸プロセスにおいては複数の抑制剤が混合されて用いられてきた。用語「プロセス重合抑制剤」とは、公知の重合抑制剤の如何なる、単独または混合物としての使用を意味する。
【0046】
本発明の他の好ましい態様においては、アミノアルキルイミダゾリンおよびアルキル置換スクシンイミド防汚剤は、1以上の分散剤防汚剤と共に混合して用いられる。代表的な分散剤防汚剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などの硫酸化炭化水素類、ポリイソブチレンコハク酸エステル類、アルキルフェノールエトキシレート類、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂類、脂肪酸エステル類、脂肪酸エステルアミド類、脂肪族アルコールエトキシレート類、ポリサッカライドエステル類等を含む。これは、(メタ)アクリル酸の重合以外の汚損源に汚損状況の一部が由来する場合に特に重要である。防汚剤の性能の向上は、本発明に記載される防汚剤と、他の潜在的な分散剤との混合を通じて期待される。
【0047】
本発明の他の好ましい態様においては、アミノアルキルイミダゾリンおよびアルキル置換スクシンイミド防汚剤は、1以上の重合抑制剤および1以上の分散剤防汚剤と共に混合して用いられる。
【0048】
本発明のアミノアルキルイミダゾリンおよびアルキル置換スクシンイミド防汚剤は、(メタ)アクリル酸製造プロセス、(メタ)アクリル酸エステル化プロセス、アクロレイン製造プロセス、およびアクリロニトリル製造プロセスから選択される(メタ)アクリル酸プロセスにおいて、汚損を抑制するために好ましく用いられる。
【0049】
アミノアルキルイミダゾリンおよびアルキル置換スクシンイミド防汚剤および任意の重合抑制剤、分散剤防汚剤および溶媒は、(メタ)アクリル酸プロセス中へ直接噴射され、このことは、プロセス中への異なる個所における噴射、同じ個所における別途の製剤としての噴射、または単一の混合製剤の一部として共に噴射されることを含む。
【0050】
アミノアルキルイミダゾリンおよびアルキル置換スクシンイミドは、好ましくは約1〜約10000ppmの投与量、より好ましくは約10〜約1000ppmの投与量、特に好ましくは約30〜約300ppmの投与量においてプロセスへ添加される。
【0051】
本発明の好ましい態様においては、アミノアルキルイミダゾリンおよびアルキル置換スクシンイミドは連続的に添加される。
【0052】
他の好ましい態様においては、アミノアルキルイミダゾリンまたはアルキル置換スクシンイミドは断続的に添加される。
【0053】
上記は、下記の実施例を参照することによってより理解されるかもしれないが、下記の実施例は説明のために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0054】
本発明のアミノアルキルイミダゾリンおよびアルキル置換スクシンイミド防汚剤の防汚剤性能は、(メタ)アクリル酸精製の蒸留作業におけるポリマー形成環境をシミュレートするためのベンチスケールの全還流蒸留装置を用いて計測された。上記装置は、上部に還流コンデンサ、中央部にトレー部、および底部に1リットルのボイラーフラスコを有する。アクリル酸が供給される実験では、上記ボイラーフラスコは約450gのアクリル酸で満たされ、それは約200ppmのMEHQで抑制された。安全な作業を確保するために、追加的な量の抑制剤、すなわち0.23gのPTZが上記ボイラーフラスコに添加された。電気加熱マントルから一定の熱が加えられている状態で、ボイラーフラスコは上記アクリル酸を沸騰させ、抑制剤欠乏アクリル酸蒸気を発生する。蒸気は、トレー部を通って上昇し、還流コンデンサへと移動する。上記トレー部は、ステンレス鋼316Lから成る、複数の等間隔の、円状の網目版を有する。還流コンデンサからのアクリル酸凝縮物は、上記トレーを通りボイラーフラスコへと流れ戻る。上記装置は160〜190mmHgの圧力および97〜100℃のポット温度下で作動された。
【0055】
別途に示されない限りは、下記の各例において上記装置は全還流モードで30分作動される。防汚剤含有溶液(処理済)または対照溶媒(未処理)は何れも、液体添加物は上記トレー部の上方の位置において連続的に装置内へ噴射される。噴射された溶液は、還流凝縮物がトレー部へ流れ戻る前に凝集物とよく混合され、トレー部と噴射された添加物との良好な接触を確保する。
【0056】
未処理の実験においては、ポリマーが形成され、時間とともにトレー上に沈殿する。また、ポリマーはボイラーフラスコの内壁の液の上方およびフラスコの底に沈殿する。
【0057】
処理済の実験においては、全ての防汚剤が重量対重量ベースで等価な投与量において比較される。処理しない実験に比べ、効果的な防汚剤の結果は、上記トレー部上、フラスコ壁上およびフラスコ液中でのより少ないポリマー堆積につながる。
【0058】
ポリマー沈殿の定性的な測定は、トレーおよび壁上のポリマー付着の目視検査により行った。定量的な測定は、各実験の最後にトレー部上のポリマーの重量を測ることにより得た。
【0059】
実施例1
未処理の対照
この実験は、激しい汚損およびトレー部の詰りのために、21分の還流作業後に終了された。白いポリマー汚染物質が各金属トレーの両面に見られ、より高いトレーには幾分多くの量が付着した。トップのトレーの孔は完全にポリマーにより塞がれた。ポリマー(4.5g)はこの実験中トレー部上に集積された。ポリマー沈殿は、ボイラーフラスコ壁の液の線の上下でも見られた。
【0060】
実施例2
TOFA/DETAイミダゾリンでの処理
この実験は、防汚剤、TOFA/DETAイミダゾリンが連続的に噴射されたこと以外は、実施例1に記載されたように実施した。
【0061】
TOFA/DETAイミダゾリンは、1:1のモル比においてTOFAをDETAと反応させることにより調製した。一般的なイミダゾリン調製手順に続き、約70℃の温度で、継続的に攪拌しながらDETAを徐々にTOFA含有溶液に添加した。通常、添加中は温度上昇が見られる。DETA添加が完了したら、混合物を約175℃まで加熱し、アミド形成の理論上の量の水が収集されるまで上記温度を維持した。混合溶液はその後約225℃まで加熱され、2時間維持された。イミダゾリンの形成に由来し、この温度において、更なる水が収集された。得られた生成物は、赤外線スペクトルバンドが1610cm−1付近であるアミノエチルC17アルケニルイミダゾリンである。
【0062】
実験の最後においては、これらの点において表面への防汚剤溶液の接触が不十分であったことに由来すると思われる、わずかな小さいポリマーの塊が金属トレーの下部に散乱している以外は、金属トレーのほとんどの個所にはポリマーが付着していなかった。ポリマー(0.5g)はトレー部上で収集され、フラスコ壁およびフラスコ内の液はきれいで、透明であった。表1において、平均汚損速度について処理済の実験と未処理の実験とを比較する。上記平均汚損速度は、トレー部上の最終的なポリマーを実験持続時間で平均することにより計算された。上記比較は、防汚剤処理で汚損速度が激減することを示す(未処理の0.21から処理済の毎分0.017g)。この実験は、TOFA/DETAイミダゾリンがアクリル酸重合由来の堆積に効果的な防汚剤であることをはっきりと証明する。
【0063】
実施例3
オレイン酸/DETAイミダゾリンでの処理
この処理済の実験は、TOFA/DETAイミダゾリン処理がオレイン酸/DETAイミダゾリンに置き換えられたこと以外は、実施例2に記載されたように実施した。オレイン酸/DETAイミダゾリンは、1:1のモル比においてオレイン酸をDETAと、実施例2に記載される手順に従って反応させることにより調製した。
【0064】
実験の最後においては、これらの個所において表面への防汚剤溶液の接触が不十分であったことに由来すると思われる、数個のポリマーの塊が一部の金属トレーの端に形成している以外は、金属トレーのほとんどの個所はきれいであった。ポリマー(3.1g)はトレー部上で収集された。フラスコ壁および液はかなりきれいで、透明であった。表1に示すように、平均汚損速度は毎分0.10gである。この実験においても、オレイン酸/DETAイミダゾリン処理はポリマー形成および堆積の激減をもたらした。
【0065】
実施例4
TOFA/DETAイミダゾリン付加物と、アクリル酸とでの処理
この実験は、TOFA/DETAイミダゾリンがTOFA/DETAイミダゾリンの付加物およびアクリル酸に置き換えられたこと以外は、実施例2に記載されたように実施した。TOFA/DETAイミダゾリン−アクリル酸付加物は、実施例2のTOFA/DETAイミダゾリンを等モルの量のアクリル酸と約120℃の温度、連続的な窒素パージ下で2.5時間反応させることにより調製した。上記TOFA/DETAイミダゾリン−アクリル酸反応は、下記の式を有するミハエル付加反応生成物の一般的な付加物を生成した:
【0066】
【化6】

【0067】
ここで、RはC1733のアルキレン基である。
【0068】
実験の最後においては、金属トレーのほとんどの部分はきれいであり、極少数のポリマーの塊が金属トレーの下部に見られた。ポリマー(0.6g)はトレー部上で収集された。この実験の平均汚損速度は、毎分0.020gであり、これは実施例2のTOFA/DETAイミダゾリンで行われた処理に匹敵するものである。
【0069】
実施例5
TOFA/アミノエチルエタノールアミン(AEEA)イミダゾリンでの処理
この処理済の実験は、TOFA/DETAイミダゾリン処理がTOFA/AEEAイミダゾリンに置き換えられたこと以外は、実施例2に記載されたように実施した。TOFA/AEEAイミダゾリンは、1:1のモル比においてTOFAをAEEAと、実施例2の手順に従って反応させることにより調製した。得られた生成物は、ヒドロキシエチルC17アルケニルイミダゾリンである。
【0070】
実験の最後においては、金属トレーのほとんどの表面はポリマーで覆われていた。ポリマー(5.6g)はトレー部上で収集された。ポリマーの堆積は、フラスコ壁およびフラスコの底でも見られた。この実験の平均汚損速度は毎分0.19gであり、実施例1における未処理のものに匹敵するものである。実施例2におけるTOFA/DETAイミダゾリンとは異なり、TOFA/AEEAイミダゾリン処理は、汚損低減における如何なる劇的な向上ももたらさなかった。この実施例は、アミノ官能基がTOFA/DETAイミダゾリンでの観察された性能についてクリティカルであることを示唆する。
【0071】
実施例6
N−ジエチレントリアミンC12〜C30アルケニルスクシンイミド処理
この処理済の実験は、TOFA/DETAイミダゾリンの代わりにN−ジエチレントリアミンC12〜C30アルケニルスクシンイミドが用いられたこと以外は、実施例2に記載されたように実施した。スクシンイミドは、C12〜C30のオレフィン類、無水マレイン酸およびジエチレントリアミンの混合物を下記の一般的な反応条件下で反応させることにより調製した。
【0072】
12〜C30オレフィン混合物および無水マレイン酸は、C12〜C30アルケニルスクシン無水物を形成するために、反応炉に充填され、約250℃で約3時間加熱された。その後、ジエチレントリアミンをゆっくり炉に添加した。反応に由来する粘性の増加を低減するため、通常はジエチレントリアミンとともに溶媒が添加される。概して、アミンが添加されるにつれて発熱が炉の温度を上昇させる。反応を終了させるため、反応温度は約140℃に約2時間維持された。最終反応生成物は、N−ジエチレントリアミンC12〜C30アルケニルスクシンイミドである。
【0073】
実験の最後においては、金属トレーの上面にはポリマーは付着しておらずきれいであり、金属トレーの下面にはルーズなポリマーの塊が散乱していた。ポリマー(2.8g)はトレー部上で収集された。フラスコ壁および液はかなりきれいで、透明であった。表1に示すように、計算された平均汚損速度は0.093である。N−ジエチレントリアミンC12〜C30アルケニルスクシンイミドが汚損防止において効果的であることが明確である。
【0074】
【表1】

【0075】
特許請求の範囲に規定される発明の概念および範囲から外れることなく、ここに記載された本発明の方法の構成、操作およびアレンジメントの変更ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸および、
式(I)のアミノアルキルイミダゾリン類
【化1】

および、式(II)のアルキル置換スクシンイミド類
【化2】

および、それらの混合物から成る群から選択される1以上の化合物を有し、
nは1〜約9の整数であり;mは1〜約10の整数であり;RおよびR´はC〜Cのアルキレンであり;R、R、RおよびRはC〜C30のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアルキルおよびアミノアリールからそれぞれ選択され;およびR4は水素、(CHCOOH、CHCH(CH)COOH、イミダゾリン、アルキルおよびアルキルアリールから選択されることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記アミノアルキルイミダゾリンが、カルボン脂肪酸をポリエチレンポリアミンと反応させることにより調製されたことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アミノアルキルイミダゾリンが、トール油脂肪酸をポリエチレンポリアミンと反応させることにより調製されたことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミノアルキルイミダゾリンが、(i)トール油脂肪酸をポリエチレンポリアミンと反応させ;および
(ii)工程(i)の生成物をアクリル酸と反応させることにより調製されたことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルキル置換スクシンイミドが、C12〜C30のオレフィン類と、無水マレイン酸と、ポリエチレンポリアミンとの混合物を反応させることにより調製されたことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アルキル置換スクシンイミドが、C12〜C30のオレフィン類と、無水マレイン酸と、ジエチレントリアミンとの混合物を反応させることにより調製されたことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
1以上の重合抑制剤類をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
1以上の分散剤類をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
1以上の重合抑制剤類、および1以上の分散剤類をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
1以上の溶媒類をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
効果的な防汚量の1以上の式(I)のアミノアルキルイミダゾリン類
【化3】

または、1以上の式(II)のアルキル置換スクシンイミド類
【化4】

または、それらの混合物をプロセス流に添加することを含み、
nは1〜約9の整数であり;mは1〜約10の整数であり;RおよびR´はC〜Cのアルキレンであり;R、R、RおよびRはC〜C30のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアルキルおよびアミノアリールからそれぞれ選択され;およびR4は水素、(CHCOOH、CHCH(CH)COOH、イミダゾリン、アルキルおよびアルキルアリールから選択されることを特徴とする(メタ)アクリル酸プロセスにおける汚損を防止する方法。
【請求項12】
前記アミノアルキルイミダゾリン類またはアルキル置換スクシンイミド類が、約1〜約10000ppmの投与量でプロセスに添加されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アミノアルキルイミダゾリン類またはアルキル置換スクシンイミド類が、約10〜約1000ppmの投与量でプロセスに添加されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記アミノアルキルイミダゾリン類またはアルキル置換スクシンイミド類が、約30〜約300ppmの投与量でプロセスに添加されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記アミノアルキルイミダゾリン類またはアルキル置換スクシンイミド類が連続的に添加されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記アミノアルキルイミダゾリン類またはアルキル置換スクシンイミド類が断続的に添加されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記(メタ)アクリル酸プロセスが、(メタ)アクリル酸製造プロセス、(メタ)アクリル酸エステル化プロセス、アクロレイン製造プロセス、およびアクリロニトリル製造プロセスから選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2007−517029(P2007−517029A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546967(P2006−546967)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/031464
【国際公開番号】WO2005/067446
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(505137122)ナルコ エナジー サーヴィシーズ,エル.ピー. (2)
【氏名又は名称原語表記】NALCO ENERGY SERVICES, L.P.
【住所又は居所原語表記】7701 Highway 90−A, Sugarland, TX 77478, United States of America
【Fターム(参考)】