説明

2つの流体、特に接着剤成分を供給するためのデュアルエンドアプリケータ

2つの個別の組織接着剤を供給するためのアプリケータ(100)は、2つの組織接着剤をそれぞれ収容する2つの別個の内部領域(208a、208b)を有する、概ね細長のボディ(202)を含む。各領域と連絡するヒンジ式レバー(224a、224b、224b')は、操作者が力を印加するのに応じて、アプリケータの端部(104、106)から接着剤を選択的に排出させる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、接着剤、より具体的には医療用接着剤を塗布するための、改良されたアプリケータおよび方法に関する。本発明により、特定のスポットに少量の接着剤を正確に塗布して、スポット溶接に類似した強力な点結合を作ることが可能となる。さらに、本発明により、既に結合された領域上にシーラント層を設け、これにより接着表面に可撓性シーリングを施すことが可能となる。
【0002】
本発明は、手術時の切開創または裂傷など、哺乳動物組織の長い創傷を閉創するのに特に有用である。
【背景技術】
【0003】
現在の最新技術
現在、手術時の切開創または裂傷は、縫合糸、ステープル、接着ストリップ、または液体の組織接着剤により閉創されている。縫合糸、ステープル、および接着剤ストリップは長年にわたって広く用いられており、組織接着剤は、米国におけるJ&J社のDERMABOND(商標)、ならびに欧州におけるLiquibandおよびその他の製品の上市に伴って、近年広範に受け容れられている。典型的に組織接着剤は、皮膚縁を合わせた(近接させた)後、創の線に沿って細い線または幅広の帯として塗布される。次に、接着剤が固化する間、創縁を合わせたまま保持する必要がある。以前の閉創形式に対する組織接着剤の利点の1つは、創の閉創とシーリングの両方が行われるため、流体を保持でき且つ感染性物質の侵入が起こらないことである。このため患者は、失血または感染を心配することなく、ほぼ直ちに入浴できることもある。
【0004】
組織接着剤は典型的に、組織への親和性が高く且つ非常に容易に湿潤する、低粘度の液体である。アプリケータは典型的に、幅広のチップを有するチューブまたはアンプルであり、接着剤を塗布するにはユーザーが強く握って接着剤を排出させる必要がある。低粘度の流体の放出は、十分な制御ができないことが多く、望ましくない領域に接着剤が流れ込んでそこで望ましくない接着をもたらす可能性がある。接着剤の塗布の制御が不十分なため、接着剤が患者の眼に流れ込んだ症例、または術者の手袋もしくは器具が患者に接着した症例が多数報告されている。さらに、強力な組織接着剤は可撓性が低い傾向があり、可撓性が高い組織接着剤は結合が弱い傾向がある。したがって、閉創用の組織接着剤はこれまで、可撓性と結合強度との妥協点となる傾向があった。
【0005】
現在の最新技術の典型は、Closure Corporation社が製造しJ&JのEthicon部門が販売するDERMABOND(商標)である。同製品は、破壊可能なガラスアンプルを収容したプラスチック製アプリケータの中に配置された、2-オクチルシアノアクリレートである。アプリケータの端部には直径約5/16"の多孔性球形チップが収容され、内部のガラスアンプルが破壊された後、このチップを通って接着剤が塗布される。接着剤は典型的に10 cps未満と低粘度であり、且つ、哺乳動物の皮膚を急速に湿潤させ、これにより皮膚上を自由に流れるようになる。このチップからの組織接着剤の塗布は制御が困難である。DERMABOND(商標)の使用説明は、ユーザーに以下のように指示している:「手袋を装用した指または滅菌した鉗子で創縁を近接させる。優しくブラッシングする動きにより、近接させた創縁の表面に、液体のDERMABOND(商標)接着剤を複数(少なくとも3つ)の薄い層としてゆっくり塗布する。層を塗布してから次の層を塗布するまで約30秒間待つ。最後の層を塗布した後、手操作により創縁の近接を約60秒間維持する」。この方法により形成される接着剤の層は、典型的に幅が1/4インチ以上であり、且つ、層を3つ塗布するためかなり厚くなる。2-オクチルシアノアクリレートは、エチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、およびヘキシルシアノアクリレートなど低級の同族体と比較して剛性率が低いにもかかわらず、この層の幅および厚さのため、層は剛性となる。この技術では、接着剤の層を塗布する前に創縁全体を近接させておく必要があるため、数センチメートルを超える切開創または裂傷の閉創には適さない。
【0006】
より近年では、創に沿って間隔を開けて組織接着剤の小さなスポットを設けることにより、接着剤で層を「点溶接」する手技が一部の医師に採用されている。この方式の場合は、接合しようとするスポット部のみ創縁を近接させればよく、且つ、はるかに長い創を閉創することができる。創を適切に閉創した後、医師は、創の長さに沿って組織接着剤の細い線を走行させることによって創をシールできる。閉創手技におけるこの進歩は、ごく少量を正確に塗布できる、強力且つ速硬性の接着剤によって可能となる。しかし、強力且つ速硬性の接着剤は剛性が高い傾向があり、この接着剤で形成したシーラント線は創部に不快感をもたらす可能性がある。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、第一および第二の別個の流体(例えば液体など)を提供する第一および第二の端部を有するアプリケータを提供する。アプリケータは、第一および第二の別個の流体を収容するよう適合化された第一および第二の個別の領域を規定するハウジングアセンブリであって、第一および第二の個別の領域が、アプリケータの第一および第二の端部においてアプリケータの外部と流体接触し且つ第一および第二の流体がハウジングアセンブリ内で混合しないよう互いに隔離された領域であるハウジングアセンブリを含む。アプリケータは、第一の流体がアプリケータの第一の端部から流出するよう第一の流体に十分な圧力を印加するための、第一の加圧装置をさらに含む。
【0008】
発明の詳細な説明
図1Aおよび図1Bはそれぞれ、本発明のアプリケータ100の左立面図および上面図である。アプリケータ100は一般的にハウジングアセンブリ102を含み、且つ、第一の端部104および第二の端部106を有する。アプリケータ100は、中に収容された2つの流体塊(図には示していない)を隔離し、且つ、これらの流体を端部104および106から選択的に供給するように設計される。
【0009】
図2および図3はそれぞれ、図1Bの線A-Aおよび図1Aの線B-Bにおけるアプリケータ100の断面図である。ハウジングアセンブリ102は一般的に、一端が環状構造204によりキャップされ他端がエンドキャップ206によりキャップされた、細長のボディ202を含む。ハウジングアセンブリ102は、1組の変形可能チューブ208aおよび208bが中に配置されたチャンバを規定する。変形可能チューブ208aおよび208bは、それぞれ、好適な接着剤の密封アンプル(212a、212b)をその内部領域(210a、210b)内に少なくとも部分的に収容する。好ましくは、アンプル212aはn-ブチルシアノアクリレートまたはペンチルシアノアクリレートなど強力且つ速硬性の接着剤を収容し、アンプル212bはオクチルシアノアクリレートまたはヘキシルシアノアクリレートなど可撓性がより高い組織接着剤を収容する。詳しく後述するように、他の種類の接着剤を使用してもよい。いくつかの用途において、2つのアンプル212aおよび212bは同じ接着剤成分を収容してもよく、このことは理解されるものと思われる。
【0010】
アンプル212aおよび212bが、詳しく後述する様式により、破壊などによって開封されたとき、アンプルの内容物の混合が生じないよう、領域210aおよび210bは互いに隔離される。隔離は主として、中央不透過性バリア216が中に形成された概ね管状の構造として構成され且つチューブ208aおよび208bの端部を保持するよう機能する、中央接合部214によってもたらされる。チューブ208bの反対側の端部は、領域210bとアプリケータ100の外部との間で流体接触用の導管として機能する環状構造204によって保持される。
【0011】
同様に、チューブ208aの反対側の端部は、チューブ208aがエンドキャップ206の外側とボディ202の内側との間に嵌合する状態で、エンドキャップ206により支持される。この詳細を図2Aに示す。エンドキャップ206にはノズル218が接触する。ノズル218は、エンドキャップ206の中に形成された中央チャネルと揃う位置に中央チャネルを備える。これらの中央チャネルは流体導管220を形成し、これにより、領域210aとアプリケータ100の外部との間の流体接触を可能にする。内部領域210aおよび210bとアプリケータ100の外部との間の流体の流路には、アンプルに収容された接着剤の通過を妨げることなく、フィルタ222aおよび222bが配置される。流体を拡げやすくするため、導管220の端部の領域は球形の微孔性チップ222aも備える。
【0012】
操作者の手(図には示していない)からチューブ208aおよび208bへと選択的に且つ制御可能な状態で力を印加し、これによってアンプル212aおよび212bを破壊して開封し、そして最終的にアンプルの内容物をアプリケータ100から流出させるため、ヒンジ式レバー224a、224b、および224b'などの加圧装置が提供される。
【0013】
ヒンジ式レバー224a、224b、および224b'は、操作者の指と接触してそこから内向きの圧力すなわちアプリケータ100の方向への圧力を受ける、てこ部(224al、224bl、および224bl')をそれぞれ有する。ヒンジ式レバー224a、224b、および224b'はまた、チューブ208aおよび208bと(図に示すように直接的に、または他の何らかの公知の力伝達機構を介して間接的に)接触し操作者の指からチューブへと力を伝達して、チューブを変形させ且つその中の流体収容アンプル212aおよび212bを破壊する、プランジャ部(224ap、224bp、および224bp')もそれぞれ有する。ヒンジ動作を容易にするため、ヒンジ式レバー224a、224b、および224b'は、それぞれポイント224ai、224bi、および224bi'において、ハウジングアセンブリ102に、好ましくは細長のボディ202に、回転可能な状態で取り付けられる。この取付は、好ましくは、レバーおよび/または細長のボディ202と一体の材料による可撓性の接続ブリッジによって実現される。または、従来のヒンジ式の構成(図には示していない)をこの目的のために用いてもよい。レバー224a、224b、および224b'のプランジャ部224ap、224bp、および224bp'の形状は、レバーを内向きに動かしたときに領域210aおよび210bから押し出される流体の良好な制御を可能にする輪郭および体積をプランジャ部とチューブ208aおよび208bとの交点がもつように決定される。
【0014】
アプリケータ100の部品の材料は、互いに適合するように、且つアンプル212aおよび212bに収容された接着剤と適合するように選択される。接着剤と接触することが意図される部品は特にこのことが当てはまる。患者への傷害および/または毒性のリスクを低減するため、生体適合性も重要である。接着剤がシアノアクリレートである場合は、シアノアクリレートと非反応性である材料が選択される。接着剤と適合するものである限り、ポリマー材料をアプリケータ100の部品に使用してもよい(接着剤と適合するとは、アプリケータの部品が接着剤中で容易に劣化しないこと、接着剤がアプリケータの部品を劣化させないこと、および、アプリケータの部品がいずれのプレポリマーの重合にも影響しないことを意味する)。この点において、本明細書記載の接着剤組成物の存在下で不活性であるという理由から、アプリケータの部品に高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンを使用することが好ましい。接着剤組成物と適合性のある他の材料は当業者が容易に決定することができ、例えば、ポリエチレン(80A-80D)、ポリエステル-ポリエーテルブロック共重合体(30D-80D)、Alcryn(塩素化ポリオレフィン)(60A-80A)、Pebax(ポリアミド-ポリエーテルブロック共重合体)(25D-70D)などその他のポリオレフィン;PTFE(Teflon(商標)などのポリテトラフルオロエチレン)、ペルフルオロアルコキシ樹脂、フッ化エチレンプロピレンポリマー、ETFE、SEBS(スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン)などのフルオロポリマー;シリコーン;ケイ素の相互侵入網目構造;ナイロン(6/6、6/10、および6/12);ならびにポリアミドが含まれる。
【0015】
図4に示すように(図2も参照)、使用時、手術後に切開創400を閉創するため、操作者(図には示していない)は、アプリケータ100のチップ105を切開創に近づけ、ヒンジ式レバー224a(図2)を押し下げる。この押し下げる力は、アンプル212aを破壊し、その中に収容されている強力且つ速硬性の接着剤402を少量、領域210aに流入させ、フィルタ222aおよびチャネル220を通過させ、そしてアプリケータ100の外部へと流出させるのに十分な力である。強力且つ速硬性の接着剤は、スポット溶接と類似の様式でスポット404として切開創の創縁に塗布され、これにより、少なくともアンプル212bに収容されている可撓性のより高い組織接着剤を塗布するのに十分な時間にわたって、創縁を一緒に保持するための強力な結合をもたらす。
【0016】
アンプル212bから可撓性のより高い組織接着剤を塗布する様子を図5に示す。この塗布は、ヒンジ式レバー224bおよび224b'の作動によりアンプル212bが破壊される前または後に、アプリケータ100の端部106を切開創400に近づけることによって行われる。ヒンジ式レバー224bおよび224b'には、可撓性の組織接着剤を領域210bから排出させ、フィルタ222bを通過させ、そしてアプリケータ100の外部へと流出させるのに十分な力が印加される。ヒンジ式レバー224bおよび224b'に十分な圧力を印加しながらフィルタ222bを切開創400に沿って走行させることにより、切開創の領域をカバーしこれを完全に閉鎖する。
【0017】
シアノアクリレート接着剤組成物
本発明のアプリケータによって塗布できる接着液には、多様なシアノアクリレート接着剤調合物が含まれ得る。しかし、本発明はいかなる特定の種類の接着剤にも限定されず、任意の好適な医療用(または非医療用)接着剤を使用できることが理解されるべきである。一般的に、第一のアンプルまたはリザーバは、n-ブチルシアノアクリレートなど、結合力がより強く且つ可撓性がより低いシアノアクリレート接着剤組成物を収容し、第二のリザーバは、オクチルシアノアクリレートまたはヘキシルシアノアクリレートなど、可撓性がより高い組織接着剤を保持する。
【0018】
任意で選択される本発明の好ましい局面においては、シアノアクリレート接着剤調合物が両方のリザーバに収容される。好ましくは、使用されるシアノアクリレート組成物は、液体/ゲルとして皮膚表面に塗布できるシアノアクリレートプレポリマー組成物を含む。シアノアクリレートプレポリマーは、鎮痛薬、抗炎症薬、および抗菌薬などの治療用薬剤を含んでいてもよい。
【0019】
好ましくは重合可能なシアノアクリレートプレポリマーは、そのモノマー形が以下の化学式Iで表されるシアノアクリレートエステルを含む:

上記化学式において、Rは以下からなる群より選択される:
炭素原子1〜10のアルキル、
炭素原子2〜10のアルケニル、
炭素原子5〜8のシクロアルキル基、
フェニル、
2-エトキシエチル、
3-メトキシブチル、
および以下の化学式の置換基:

上記化学式において、各R'は独立に、以下からなる群より選択される:
水素およびメチル;
且つ、R"は以下からなる群より選択される:
炭素原子1〜6のアルキル、
炭素原子2〜6のアルケニル、
炭素原子2〜6のアルキニル、
炭素原子3〜8のシクロアルキル、
ベンジル、メチルベンジル、およびフェニルエチルからなる群より選択されるアラルキル、
フェニル、ならびにヒドロキシル、クロロ、ブロモ、ニトロ、炭素原子1〜4のアルキル、および炭素原子1〜4のアルコキシからなる群より選択される1〜3つの置換基で置換されたフェニル。
【0020】
より好ましくは、化学式Iのシアノアクリレートエステルにおいて、Rは、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、2-エチルヘキシル、n-ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルを含む、炭素原子2〜10のアルキル基である。参照によりその全部が本明細書に組み入れられるBergerらの米国特許第5,998,472号に開示されているように、このような化合物の混合物も使用できる。より強力で可撓性がより低い接着剤については、Rは好ましくはエチル、ブチル、またはペンチルであり、これにより、得られるポリマーフィルムの剛性率を高くする。可撓性がより高い接着剤については、Rは好ましくはヘキシルまたはオクチルである。非常に好ましい一態様において、第一のリザーバはn-ブチルシアノアクリレートエステルを収容し、第二のリザーバはオクチルシアノアクリレートエステルを収容する。
【0021】
「重合可能なシアノアクリレートエステル」という用語は、シアノアクリレートモノマーを含む重合可能な調合物、または、好ましくはそのモノマー形が上記の化学式Iで表される化合物である重合可能なオリゴマーを指すことが理解されるべきである。
【0022】
本明細書記載の重合可能なシアノアクリレートエステルは、水蒸気または組織タンパク質の存在下で急速に重合し、n-ブチル-シアノアクリレートは、組織毒性または細胞毒性を生じることなく哺乳動物の皮膚組織に結合する。
【0023】
重合可能なシアノアクリレートエステルは当技術分野において公知であり、例えば、その開示内容の全部が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第3,527,224号、同第3,591,676号、同第3,667,472号、同第3,995,641号、同第4,035,334号、および同第4,650,826号に記載されている。
【0024】
本発明のアプリケータにより塗布されるシアノアクリレート組成物は「生体適合性の可塑剤」を含んでいてもよい。本明細書において、「生体適合性の可塑剤」という用語は、シアノアクリレート組成物中に溶解または分散できる物質であって、皮膚表面上に得られるポリマーフィルムコーティングの可塑性を増大させ、且つ、使用される用量で中等度〜重度の皮膚刺激反応を生じないという基準において皮膚適合性である、任意の物質を意味する。好適な可塑剤は当技術分野において周知であり、その開示内容の全部が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第2,784,127号および同第4,444,933号に開示されている可塑剤を含む。あくまでも例示であるが、具体的な可塑剤としては、アセチルクエン酸トリ-n-ブチル(好ましくは約20重量パーセント以下)、アセチルクエン酸トリヘキシル(好ましくは約20重量パーセント以下)、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、クエン酸・n-ブチリル・トリ-n-ヘキシル、およびジエチレングリコールジベンゾエート(好ましくは約20重量パーセント以下)などがある。使用される特定の生体適合性可塑剤は決定的に重要なものではなく、好ましい可塑剤には、フタル酸ジオクチルおよびクエン酸C2-C4-アシル・トリ-n-ヘキシルも含まれる。
【0025】
さらに、本発明のアプリケータにより塗布されるシアノアクリレート組成物は「抗菌薬」を含んでいてもよい。本明細書において、「抗菌薬」という用語は、微生物(例えば、細菌、真菌、酵母、およびウイルス)を破壊し、これによりその成長および病原作用を防ぐ薬剤を意味する。
【0026】
本発明の実施に有用な好ましいシアノアクリレート組成物は、参照によりその全部が本明細書に組み入れられるGreffらの米国特許第5,480,935号にも開示されている。特に好ましい態様において、シアノアクリレート接着剤組成物は、抗菌的に有効量の、適合する抗菌薬をさらに含む。そのような組成物は、好ましくは、組成物の総重量に対して約0.1〜約30重量パーセント、好ましくは約0.5〜約10重量パーセントの適合する抗菌薬を溶液または懸濁液として含む。適合する抗菌薬とは、シアノアクリレート組成物中に溶解または懸濁できる抗菌薬であって、シアノアクリレート組成物の早期重合を引き起こさず、シアノアクリレート組成物を哺乳動物の皮膚に塗布した際にその重合を妨げず、且つ、意図される用途に適合する(患者の皮膚に対する生体適合性を含む)抗菌薬である。そのような好適な組成物は、シアノアクリレート/ポピドンヨード複合体の組成物を開示している米国特許第6,475,502号、ならびに、シアノアクリレートエステルおよびフェノールの組成物を開示している、2003年8月29日に提出された米国特許出願第60/498,913号に開示されている。これら3件の開示内容は参照によりその全部が本明細書に組み入れられる。
【0027】
適合する抗菌薬を組成物中に用いることにより、ポリマーフィルムから薬剤を放出することが可能となり、したがって、フィルム付近の微生物増殖を低減できる。
【0028】
シアノアクリレート組成物とともに使用するのに適した他の薬剤としては、参照によりその全部が本明細書に組み入れられるGreffらの米国特許第5,962,010号記載のものなどのコルチコステロイド、およびリドカインなどの鎮痛薬がある。前者は炎症を軽減させ、後者は疼痛を軽減させる。ステロイドと鎮痛薬との組合せも本発明の意図に含まれる。
【0029】
以上は本発明を実施するための例示的な様式であり、本発明を限定する意図はない。当業者には、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明に改変を行い得ることが明らかであると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
当業者には、本明細書を添付の図面とともに読むことによって、本発明の多数の利点が明らかになるものと思われる。添付の図面において、同様の要素には同様の符番が付されている。
【図1A】本発明のアプリケータの左立面図である。
【図1B】図1A記載のアプリケータの上面図である。
【図2】図1B記載のアプリケータの線A-Aにおける断面図である。
【図2A】図2の一部の拡大図である。
【図3】図1A記載のアプリケータの線B-Bにおける断面図である。
【図4】強力且つ速硬性の接着剤を切開創に塗布するための、本発明のアプリケータの使用法を示した図である。
【図5】可撓性のより高い組織接着剤を図4記載の切開創に塗布するための、本発明のアプリケータの使用法を示した図である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、第一および第二の別個の流体を提供する第一および第二の端部を有するアプリケータ:
第一および第二の別個の流体を収容するよう適合化される第一および第二の個別の領域を規定するハウジングアセンブリであって、第一および第二の個別の領域が、アプリケータの第一および第二の端部においてアプリケータの外部と流体接触し且つ第一および第二の流体がハウジングアセンブリ内で混合しないよう互いに隔離された領域であるハウジングアセンブリ;ならびに
第一の流体がアプリケータの第一の端部からアプリケータの外へ流出するよう第一の流体に十分な圧力を印加するための第一の加圧装置。
【請求項2】
第一の加圧装置が、圧力を印加するための第一のプランジャ部を有する第一のヒンジ式レバーである、請求項1記載のアプリケータ。
【請求項3】
第一の領域内に配置され且つ第一の流体を収容する第一の密封アンプルをさらに含み、第一のレバーが、第一の流体が第一のアンプルから流出するよう第一のアンプルの完全性を破壊するように機能する、請求項2記載のアプリケータ。
【請求項4】
第一のアンプルの破片がアプリケータの外へと流出するのを妨げるための第一のフィルタをさらに含む、請求項3記載のアプリケータ。
【請求項5】
第二の流体がアプリケータの第二の端部からアプリケータの外へ流出するよう第二の流体に十分な圧力を印加するための第二の加圧装置をさらに含む、請求項1記載のアプリケータ。
【請求項6】
第二の加圧装置が、第二の流体に圧力を印加するための第二のプランジャ部を有する第二のヒンジ式レバーである、請求項5記載のアプリケータ。
【請求項7】
第二の領域内に配置され且つ第二の流体を収容する第二の密封アンプルをさらに含み、第二のレバーが、第二の流体が第二のアンプルから流出するよう第二のアンプルの完全性を破壊するように機能する、請求項6記載のアプリケータ。
【請求項8】
第二のアンプルの破片がアプリケータの外へと流出するのを妨げるための第二のフィルタをさらに含む、請求項7記載のアプリケータ。
【請求項9】
第一の流体が速硬性の強力プレポリマー接着剤であり、且つ、第二の流体が可撓性のシーラント層を形成できるプレポリマー接着剤である、請求項1記載のアプリケータ。
【請求項10】
第一の流体が、n-ブチルシアノアクリレートを含む、請求項1記載のアプリケータ。
【請求項11】
第二の流体が、オクチルシアノアクリレートを含む、請求項1記載のアプリケータ。
【請求項12】
第二の流体が、ブチルシアノアクリレートとオクチルシアノアクリレートとの配合物である、請求項1記載のアプリケータ。
【請求項13】
第二の流体が、ブチルシアノアクリレートとデシルシアノアクリレートとの配合物である、請求項1記載のアプリケータ。
【請求項14】
第二の流体が、オクチルシアノアクリレートを含む、請求項10記載のアプリケータ。
【請求項15】
第一の端部が、第一の流体を特定のスポットに提供するよう適合化され、且つ、第二の端部が、第二の流体をシーラント層として供給するよう適合化されている、請求項1記載のアプリケータ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−527256(P2007−527256A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516410(P2006−516410)
【出願日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002515
【国際公開番号】WO2004/110282
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505460455)メドロジック グローバル リミテッド (2)
【Fターム(参考)】