説明

2次元走査装置

【課題】本発明は、第1軸周りの揺動と第2軸周りの揺動が同一周波数で、且つ、互いに90°異なる位相で行われる2次元走査装置を提供する。
【解決手段】本発明は、揺動部材2と、揺動部材と中心が一致するように、前記揺動部材の外側に配置されたリング部材3と、前記揺動部材と前記リング部材とを接続し、第1軸に沿って配置された一対の第1接続部材4Aと、前記揺動部材と前記リング部材とを接続し、前記第1軸と直交する第2軸に沿って配置された一対の第2接続部材4Bとを備え、前記第1接続部材及び前記第2接続部材は、前記リング部材との接続部分を揺動中心として、前記リング部材を含む平面に対して略直交方向に揺動可能とされ、更に、前記リング部材を伸縮させて前記第1接続部材及び前記第2接続部材を揺動させることにより、前記揺動部材を揺動させる駆動手段5を備えることを特徴とする2次元走査装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元走査が可能な2次元走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像の読取り、書込み等を行うためのレーザ光の2次元走査方式として、レーザ光を螺旋状に走査するトルネードスキャンが知られている。このようなトルネードスキャンを行う方法として、例えば、レーザ光を反射するミラー面を有する揺動部材を、該ミラー面の法線が螺旋を描くように揺動させる方法を挙げることができる。ミラー面の法線が螺旋を描くように揺動部材を揺動させる構造として、ジンバル構造を挙げることができる。
【0003】
このジンバル構造は、図12に示すように、ミラー面101aを有する揺動部材101と、該揺動部材101の外側に配置された第1枠体102と、該第1枠体102の外側に配置された第2枠体103と、揺動部材101と第1枠体102とを連結する第1軸部材104と、第1枠体102と第2枠体103とを連結する第2軸部材105とを備える。第1軸部材104は、第1枠体102に対して揺動部材101をその軸心回り(第1軸周り)に揺動可能に支持している。第2軸部材105は、その軸心が第1軸部材104の軸心と直交し、第2枠体103に対して第1枠体102をその軸心回り(第2軸周り)に揺動可能に支持している。
【0004】
このようなジンバル構造においては、第1軸周りの揺動と第2軸周りの揺動とを同一周波数で、且つ、位相を90°異ならせて行うと共に、第1軸周りの揺動と第2軸周りの揺動との振幅を時間と共に増大又は減少させることで、ミラー面101aの法線が螺旋を描くように揺動部材101が揺動する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のジンバル構造は、第1軸周りの揺動と第2軸周りの揺動とが互いに独立して行うことが可能な構成とされている。従って、上記のジンバル構造においては、第1軸周りの揺動の周波数と第2軸周りの揺動の周波数とがずれる恐れがある。また、同様の理由により、上記のジンバル構造においては、第1軸周りの揺動の位相と第2軸周りの揺動の位相との差が、90°からずれる恐れがある。このため、上記ジンバル構造においては、ミラー面101aの法線が螺旋を描くように揺動部材101が揺動しなくなる恐れがある。
【0006】
本発明は、第1軸周りの揺動と第2軸周りの揺動が同一周波数で、且つ、互いに90°異なる位相で行われる2次元走査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するべく、本発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載の如く、揺動部材と、前記揺動部材と中心が一致するように、前記揺動部材の外側に配置されたリング部材と、前記揺動部材と前記リング部材とを接続し、前記リング部材を含む平面内に存在し、且つ、前記揺動部材の中心を通る第1軸に沿って配置された一対の第1接続部材と、前記揺動部材と前記リング部材とを接続し、前記リング部材を含む平面内に存在し、前記揺動部材の中心を通り、且つ、前記第1軸と直交する第2軸に沿って配置された一対の第2接続部材とを備え、前記第1接続部材及び前記第2接続部材は、前記リング部材との接続部分を揺動中心として、前記リング部材を含む平面に対して略直交方向に揺動可能とされ、更に、前記リング部材を伸縮させて前記第1接続部材及び前記第2接続部材を揺動させることにより、前記揺動部材を揺動させる駆動手段を備え、前記駆動手段は、前記リング部材を前記第1軸方向に伸張させると共に、前記第2軸方向に収縮させることで、前記揺動部材を前記第1軸周りに揺動させ、前記リング部材を前記第1軸方向に収縮させると共に、前記第2軸方向に伸張させることで、前記揺動部材を前記第2軸周りに揺動させることを特徴とする2次元走査装置を提供する。
【0008】
前記揺動部材の法線が螺旋を描くように前記揺動部材を揺動させるための具体的構成として、特許請求の範囲の請求項2に記載の如く、前記駆動手段は、前記第1軸方向及び前記第2軸方向に伸縮する第1平面内cos2θモードの振動を前記リング部材に発生させると共に、前記第1平面内cos2θモードの振動における前記リング部材の前記第1軸方向と前記第2軸方向の伸縮量を時間と共に増大又は減少させる構成を挙げることができる。
【0009】
好ましくは、特許請求の範囲の請求項3に記載の如く、前記第1接続部材の接続部分は、前記第2軸方向に凸状に屈曲し、前記第2接続部材の接続部分は、前記第1軸方向に凸状に屈曲した構成を挙げることができる。
【0010】
好ましくは、特許請求の範囲の請求項4に記載の如く、前記揺動部材と前記リング部材とを接続し、前記リング部材を含む平面内に存在し、前記揺動部材の中心を通り、且つ、前記第1軸と45°の角度を成す第3軸に沿って配置された一対の第3接続部材と、前記揺動部材と前記リング部材とを接続し、前記リング部材を含む平面内に存在し、前記揺動部材の中心を通り、且つ、前記第3軸と直交する第4軸に沿って配置された一対の第4接続部材と、前記第3接続部材と、前記第4接続部材とは、前記リング部材との接続部分を揺動中心として、前記リング部材を含む平面に対して略直交方向に揺動可能とされ、前記駆動手段は、前記第1平面内cos2θモードの振動と、前記第1平面内cos2θモードの振動に対して最大伸縮方向が45°、前記リング部材の伸縮の位相が90°異なる第2平面内cos2θモードの振動とを前記リング部材に同時に発生させると共に、前記第1平面内cos2θモードの振動における前記リング部材の前記第1軸方向と前記第2軸方向の伸縮量、及び、前記第2平面内cos2θモードの振動における前記リング部材の前記第3軸方向と前記第4軸方向の伸縮量を時間と共に増大又は減少させる構成とされる。
【0011】
好ましくは、特許請求の範囲の請求項5に記載の如く、前記第3接続部材の接続部分は、前記第4軸方向に凸状に屈曲し、前記第4接続部材の接続部分は、前記第3軸方向に凸状に屈曲した構成を挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、加工誤差が生じることにより、第1軸周りの固有振動数と第2軸周りの固有振動数とに差異が生じることが防止された2次元走査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本実施形態に係る2次元走査装置1の概略平面図である。図1に示すように、2次元走査装置1は、揺動部材2と、リング部材3と、第1〜4接続部材4A〜4Dと、駆動手段5とを備える。更に、2次元走査装置1は、サポート部材6と、筐体7と、レーザ(図示しない)とを備える。尚、ここで挙げた2次元走査装置1を構成する部材のうち、筐体7、レーザ及び後述する駆動手段5に具備される第1〜4交流電源を除いた部材は、シリコンで形成されている。シリコンで形成されたこれらの部材は、エッチングや成膜などの公知のMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて、1枚のシリコン基板を加工して作製されたものである。
【0014】
揺動部材2は、図1に示すように、平面視円形の円板状である。揺動部材2の表面には、レーザからのレーザ光を効率良く反射させるために、アルミ蒸着などのミラー加工が施されている。
【0015】
リング部材3は、揺動部材2と中心が一致するように、揺動部材2の外側に配置されている。かかるリング部材3は、サポート部材6によって支持されている。サポート部材6は、一端部がリング部材3から径外方向に延出され、他端部がリング部材3の外側に配置された筐体7に接続されている。
【0016】
リング部材3のサポート部材6が接続される部位は、第1〜4軸A〜D上でない部位とされている。第1軸Aは、リング部材3を含む平面内に存在し、且つ、揺動部材2の中心を通る軸である。第2軸Bは、リング部材3を含む平面内に存在し、揺動部材2の中心を通り、且つ、第1軸Aと直交する軸である。第3軸Cは、リング部材3を含む平面内に存在し、揺動部材2の中心を通り、且つ、第1軸Aと45°の角度を成す軸である。第4軸Dは、リング部材3を含む平面内に存在し、揺動部材2の中心を通り、且つ、第3軸Cと直交する軸である。このように、リング部材3は、第1〜4軸A〜D上でない部位において、サポート部材6と接続されているので、後述する駆動手段5が備える第1〜4固定電極を第1〜4軸A〜D上の位置に配置することができる。
【0017】
第1〜接続部材4A〜4Dは、揺動部材2とリング部材3とを接続する部材である。第1接続部材4Aは、揺動部材2の第1軸A方向の両側において、第1軸Aに沿って配置されている。第2接続部材4Bは、揺動部材2の第2軸B方向の両側において、第2軸Bに沿って配置されている。第3接続部材4Cは、揺動部材2の第3軸C方向の両側において、第3軸Cに沿って配置されている。第4接続部材4Dは、揺動部材2の第4軸D方向の両側において、第4軸Dに沿って配置されている。
【0018】
図2は、第1接続部材4Aの構成図である。図2(a)は、第1接続部材4Aの平面図を示す。図2(a)に示すように、第1接続部材4Aのリング部材3との接続部分41Aは、リング部材3側が二又に別れ、二又に分かれたそれぞれの部分は、第2軸B方向に凸状に屈曲している。本実施形態においては、このように第2軸B方向に凸状に屈曲することで、接続部分41Aが長く形成されている。図2(b)は、第1接続部材4Aがリング部材3を含む平面Pに対して略直交方向(図2(b)の矢印R方向)に揺動したときのZ―Z断面図を示す。接続部分41Aを長く形成すると、図2(b)に示すように、第1接続部材4Aが揺動する際に生じる、接続部分41Aに発生するねじりのねじり率を低く抑えることができる。ねじり率を低く抑えることで、接続部分41Aにおけるねじりを容易に生じさせることができ、接続部分41Aを揺動中心として第1接続部材4Aを揺動させ易くすることができる。
【0019】
また、図2(a)に示すように、第1接続部材4Aの揺動部材2との接続部分42Aは、リング部材3との接続部分41Aと同一の構成とされている。従って、第1接続部材4Aは、接続部分42Aを揺動中心として揺動し易い構成とされている。
【0020】
このように、第1接続部材4Aが接続部分41A又は接続部分42Aを揺動中心として、平面Pに対して略直交方向に揺動すると、図2(c)に示すように、平面Pにおける揺動部材2とリング部材3との距離が縮まる。よって、第1接続部材4Aは、リング部材3が第1軸A方向に収縮可能なように、揺動部材2とリング部材3とを接続している。
【0021】
また、図3は、第1接続部材4Aの平面図である。図3(a)は、接続部分41A、42Aが伸張していない状態の平面図を示す。図3(b)は、接続部分41A、42Aが伸張した状態の平面図を示す。図3(a)及び図3(b)に示すように、接続部分41Aは、凸状に屈曲した部分が第1軸A方向に伸縮するように変形することで、第1軸A方向に伸張することができる。また、接続部分41Aと同様に、接続部分41Aと同一構成の接続部分42Aも第1軸A方向に伸張することができる。よって、図3(b)に示すように、第1接続部4Aは、リング部材3が第1軸A方向に伸張可能なように、揺動部材2とリング部材3とを接続している。
【0022】
尚、第2〜4接続部材4B〜4Dは、以上において説明した第1接続部材4Aと同様の構成とされている。
【0023】
駆動手段5は、第1平面内cos2θモードの振動と第2平面内cos2θモードの振動とをリング部材3に同時に発生させて、揺動部材2を揺動させる。図4(a)は、リング部材3に発生する第1平面内cos2θモードの振動を示す平面図である。図4(b)は、リング部材3に発生する第2平面内cos2θモードの振動を示す平面図である。
【0024】
図4(a)及び図4(b)における実線は第1平面内cos2θモードの振動及び第2平面内cos2θモードの振動の何れの振動もしていない状態のリング部材3を示し、破線は各振動状態のリング部材3を示す。本実施形態での第1平面内cos2θモードの振動においては、図4(a)に示すように、第1軸A方向と第2軸B方向とが最大伸縮方向である。一方、本実施形態での第2平面内cos2θモードの振動においては、図4(b)に示すように、第3軸C方向と第4軸D方向とが最大伸縮方向である。即ち、第1平面内cos2θモードと第2平面内cos2θモードとの最大伸張方向は、45°異なる。
【0025】
また、第2平面内cos2θモードの振動におけるリング部材3の伸縮の位相は、第1平面内cos2θモードの振動におけるリング部材3の伸縮の位相に対して90°遅れている。具体的には、第3軸C方向の伸縮の位相は、第1軸A方向の伸縮の位相に対して90°遅れ、第4軸D方向の伸縮の位相は、第2軸B方向の伸縮の位相に対して90°遅れている。
【0026】
次に、駆動手段5の具体的構成を説明する。かかる具体的構成においては、駆動手段5は、第1〜4可動電極と、第1〜4固定電極と、第1〜4交流電源とを具備する。
【0027】
図1に示すように、第1可動電極511は、リング部材3の第1軸A上の2つの部位に設けられている。かかる第1可動電極511は、リング部材3の径外方向に延出された複数の突状部分で構成された櫛歯状に形成されている。第2可動電極514は、リング部材3の第2軸B上の2つの部位に、第3可動電極521は、リング部材3の第3軸C上の2つの部位に、第4可動電極524は、リング部材3の第4軸D上の2つの部位に設けられている。第2可動電極514と、第3可動電極521と、第4可動電極524とは、第1可動電極511と同一の構成とされている。
【0028】
第1固定電極512は、第1可動電極511に対して第1軸A方向に所定の間隔を置いて、リング部材3の外側に配置されている。第1固定電極512は、複数の突状部分で構成された櫛歯状に形成されている。第1固定電極512の突状部分は、第1可動電極511の突状部分と噛み合うように、リング部材3の径内方向に延びている。このように突状部分同士が噛み合うことにより、第1可動電極511と第1固定電極512との対向面積が大きくなり、第1可動電極511と第1固定電極512との間に、大きな静電力を生じさせ易い。第2固定電極515は、第2可動電極514に対して第2軸B方向に所定の間隔を置いて、リング部材3の外側に配置されている。第3固定電極522は、第3可動電極521に対して第3軸C方向に所定の間隔を置いて、リング部材3の外側に配置されている。第4固定電極525は、第4可動電極524に対して第4軸D方向に所定の間隔を置いて、リング部材3の外側に配置されている。第2固定電極515と、第3固定電極522と、第4固定電極525とは、第1固定電極512と同一の構成とされている。尚、第1固定電極512と、第2固定電極515と、第3固定電極522と、第4固定電極525とは、図示しない部材によって、筐体7に固定されている。
【0029】
第1交流電源513は、サポート部材6と第1固定電極512とに電気的に接続されており、第1可動電極511と第1固定電極512との間に第1交流電圧(図7参照)を印加可能とされている。上述のように、リング部材3と、サポート部材6と、第1〜4可動電極511、514、521、524とは、シリコン材から形成されているので、これらの部材は互いに電気的に接続されている。よって、サポート部材6と第1固定電極512とに電気的に接続された第1交流電源513は、第1可動電極511と第1固定電極512との間に第1交流電圧を印加することができる。
【0030】
第2交流電源516は、サポート部材6と第2固定電極515とに電気的に接続されており、サポート部材6と第2可動電極514とが電気的に接続されているので、第2可動電極514と第2固定電極515との間に第2交流電圧(図7参照)を印加可能とされている。この第2交流電圧の位相は、第1交流電圧に対して位相が180°遅れている。第3交流電源523は、サポート部材6と第3固定電極522とに電気的に接続されており、サポート部材6と第3可動電極521とが電気的に接続されているので、第3可動電極521と第3固定電極522との間に第3交流電圧(図7参照)を印加可能とされている。この第3交流電圧の位相は、第1交流電圧に対して位相が90°遅れている。第4交流電源526は、サポート部材6と第4固定電極525とに電気的に接続されており、サポート部材6と第4可動電極524とが電気的に接続されているので、第4可動電極524と第4固定電極525との間に第4交流電圧(図7参照)を印加可能とされている。この第4交流電圧の位相は、第3交流電圧に対して位相が180°(第1交流電圧に対して270°)遅れている。
【0031】
以上の構成の駆動手段5において、第1可動電極511と第1固定電極512との間に第1交流電圧が印加されると、第1可動電極511と第1固定電極512との間に第1軸A方向の静電力A’(図1参照)が作用する。この静電力A’が作用することにより、リング部材3は、第1軸A方向に伸縮する。同様に、第2可動電極514と第2固定電極515との間に第2交流電圧が印加されると、第2可動電極514と第2固定電極515との間に、第2軸B方向の静電力B’が作用し、リング部材3が第2軸B方向に伸縮する。第2交流電圧の位相は、第1交流電圧の位相に対して180°遅れているため、静電力B’は、静電力A’に対して、180°遅れた位相で大きさが変化する。よって、リング部材3の第1軸A方向の伸縮と第2軸B方向の伸縮との位相は、180°異なる。従って、駆動手段5は、図4(a)に示すような、第1平面内cos2θモードの振動をリング部材3に発生させることができる。
【0032】
一方、第3可動電極521と第3固定電極522との間に第3交流電圧が印加されると、第3可動電極521と第3固定電極522との間に第3軸C方向の静電力C’が作用し、リング部材3が第3軸C方向に伸縮する。同様に、第4可動電極524と第4固定電極525との間に第4交流電圧が印加されると、第4可動電極524と第4固定電極525との間に、第4軸D方向の静電力D’が作用し、リング部材3が第4軸D方向に伸縮する。第4交流電圧の位相は、第3交流電圧の位相に対して180°遅れているため、静電力D’は、静電力C’に対して、180°遅れた位相で大きさが変化する。よって、リング部材3の第3軸C方向の伸縮と第4軸D方向の伸縮との位相は、180°異なる。従って、駆動手段5は、図4(b)に示すような、第2平面内cos2θモードの振動をリング部材3に発生させることができる。
【0033】
また、図7に示すように、第3交流電圧の位相は第1交流電圧の位相に対して90°遅れ、第4交流電圧の位相は第2交流電圧の位相に対して90°遅れている。そのため、静電力C’は、静電力A’に対して90°遅れた位相で大きさが変動し、静電力D’は、静電力B’に対して90°遅れた位相で大きさが変動する。よって、駆動手段5が発生させる第2平面内cos2θモードの振動によるリング部材3の伸縮の位相は、第1平面内cos2θモードの振動によるリング部材3の伸縮の位相に対して90°遅れている。
【0034】
図5及び図6は、以上に説明した第1平面内cos2θモードの振動と、第2平面内cos2θモードの振動とを同時にリング部材3に発生させたときの、揺動部材2、リング部材3及び第1〜4接続部材4A〜4Dの状態の変化を示す。揺動部材2、リング部材3及び第1〜4接続部材4A〜4Dの状態は、図5(a)→図5(b)→図5(c)→図5(d)→図6(a)→図6(b)→図6(c)→図6(d)の順で変化している。図5(a)〜(d)、図6(a)〜(d)の各図間においては、リング部材3の第1軸A方向、第2軸B方向、第3軸C方向及び第4軸D方向(以下、「各軸方向」という)の伸縮の位相が90°ずつ進んでいる。図5及び図6の平面図は、揺動部材2、リング部材3及び第1〜4接続部材4A〜4Dの平面視における概略構成を示す。図5(a)、図5(c)、図6(a)、及び図6(c)のV―V断面図は第1軸Aに沿った断面を、W―W断面図は第2軸Bに沿った断面を示す。また、図5(b)、図5(d)、図6(b)、及び図6(d)のX―X断面図は第3軸Cに沿った断面を、Y―Y断面図は第4軸Dに沿った断面を示す。
【0035】
図5(a)に示す状態では、リング部材3は第1軸A方向に伸張し、第2軸B方向に収縮している。図5(b)に示す状態では、リング部材3は第3軸C方向に伸張し、第4軸B方向に収縮している。図5(c)に示す状態では、リング部材3は、第1軸A方向に収縮し、第2軸B方向に伸張している。図5(d)に示す状態では、リング部材3は第3軸C方向に収縮し、第4軸B方向に伸張している。図6(a)に示す状態では、リング部材3の状態が図5(a)に示す状態と同一である。図6(b)に示す状態では、リング部材3の状態が図5(b)に示す状態と同一である。図6(c)に示す状態では、リング部材3の状態が図5(c)に示す状態と同一である。図6(d)に示す状態では、リング部材3の状態が図5(d)に示す状態と同一である。
【0036】
図5及び図6に示すように、揺動部材2は、リング部材3の伸張方向と平行な軸周りの一方向に揺動する。リング部材3の伸張方向と平行な軸周りの一方向に揺動することを図5(a)を用いて説明する。図5(a)のW―W断面図に示すように、リング部材3の収縮方向である第2軸B方向においては、リング部材3が収縮することにより、揺動部材2とリング部材3との距離が近くなり、一対の第2接続部材4Bは、図2(c)を用いて説明したように、接続部分41B及び接続部分42Bを揺動中心として平面Pに対して略直交方向に揺動する。この揺動により、接続部分42Bが平面Pから直交方向に離間することで、揺動部材2は、第1軸Aを揺動中心として、リング部材3の伸張方向と平行な第1軸A周りの一方向A1に揺動する。
【0037】
一方、揺動部材2は、リング部材3の収縮方向と平行な軸周りには揺動しない。第1〜4接続部材4A〜4Dのうち、リング部材3の伸張方向と平行な向きに配置された第1〜4接続部材4A〜4Dにおいては、接続部分41A〜41D、及び、接続部分42A〜42Dがリング部材3の伸張に追従して、伸張する。そのため、例えば図5(a)のV―V断面図に示すように、リング部材3の伸張方向と平行な向きに配置された第1接続部材4Aは揺動しない。第1接続部材4Aは揺動しないため、揺動部材2は、リング部材3の収縮方向と平行な第2軸周りには揺動しない。
【0038】
よって、図5(a)の状態においては、揺動部材2は、第1軸A周りの一方向A1に揺動する。同様に、図5(b)の状態においては、揺動部材2は、第3軸C周りの一方向C1に揺動し、図5(c)の状態においては、揺動部材2は、第2軸B周りの一方向B1に揺動し、図5(d)の状態においては、揺動部材2は、第4軸D周りの一方向D1に揺動し、図6(a)の状態においては、揺動部材2は、第1軸A周りの他方向A2に揺動し、図6(b)の状態においては、揺動部材2は、第3軸C周りの他方向C2に揺動し、図6(c)の状態においては、揺動部材2は、第2軸B周りの他方向B2に揺動し、図6(d)の状態においては、揺動部材2は、第4軸D周りの他方向D2に揺動する。以上のように、第1軸A周りの揺動の位相に対して第3軸C周りの揺動の位相は45°遅れ、第2軸B周りの揺動の位相は90°遅れ、第4軸D周りの揺動の位相は135°遅れている。また、第1軸A周り、第2軸B周り、第3軸C周り、及び、第4軸D周り(以下、「各軸周り」という)の揺動は同一周波数で行われる。この結果、揺動部材2の法線Nは、図5(a)〜(d)及び図6(a)〜(d)の平面図に示すように、円弧を描くように向きを変更する。
【0039】
尚、第3交流電圧と第4交流電圧との位相を入れ替えれば、揺動部材2の法線Nの向きを反対方向に変更することができる。よって、第1平面内cos2θモードの振動と第2平面内cos2θモードの振動とが同時にリング部材3に発生することで、2次元走査装置1は、揺動部材2の法線Nの向きの変更方向を制御することができる。
【0040】
また、駆動手段5は、揺動部材2の各軸周りの揺動を共振現象を利用して行う。揺動部材2は、平面視円形であるため、揺動部材2の各軸方向の構成は同一であり、各軸周りの固有振動数は同一である。各軸周りの固有振動数が同一であるため、各軸周りの揺動に共振現象を利用しても、各軸周りの揺動を同一周波数で行うことができ、揺動部材2の法線Nが円弧を描くように、揺動部材2を揺動させることができる。尚、各軸周りの固有振動数が同一となる揺動部材2の形状は、平面視円形だけでなく、例えば、平面視正8n角形(n:は正の整数)がある。
【0041】
また、駆動手段5は、共振現象を利用するために、第1〜4交流電圧の周波数を揺動部材2の各軸周りの固有振動数の2倍としている。このように、第1〜4交流電圧の周波数を揺動部材2の各軸周りの固有振動数の2倍とするのは、図5(a)〜(d)及び図6(a)〜(d)に示すように、各軸周りの揺動は、リング部材3が各軸方向に2回伸縮することによって1回行われるためである。即ち、各軸周りの揺動は、リング部材3の伸縮の周波数の2倍の周波数で行われるためである。このように、共振現象を利用して、揺動部材2の各軸周りの揺動を行うことで、揺動部材2の各軸周りの揺動を、小さな駆動力で行うことができる。
【0042】
更に、駆動手段5は、第1平面内cos2θモードの振動及び第2平面内cos2θモードの振動におけるリング部材3の伸縮量を時間と共に増大又は減少させることによって、揺動部材2の法線Nが、螺旋を描くように揺動部材2を揺動させる。リング部材3の収縮量が大きくなればなるほど、揺動部材2とリング部材3との距離が近くなる。よって、リング部材3の収縮量が大きくなればなるほど、第1〜4接続部材4A〜4Dの振幅(第1〜4接続部材4A〜4Dと平面Pとが成す角度)が大きくなる。第1〜4接続部材4A〜4Dの揺動の振幅が大きくなればなるほど、図2(c)に示す接続部分42Aが平面Pに対して直交方向に離間するので、揺動部材2の揺動の振幅が大きくなる。よって、第1平面内cos2θモードの振動及び第2平面内cos2θモードの振動におけるリング部材3の伸縮量の大きさを調整することで、揺動部材2の法線Nが描く円弧の径を調整することができる。従って、リング部材3の伸縮量の大きさを時間と共に増大または減少させることによって、揺動部材2の法線Nが螺旋を描くように方向を変更することができる。
【0043】
尚、リング部材3の伸縮量の増大又は減少を行う方法としては、例えば、第1〜4交流電圧の実効値を時間と共に増大又は減少させることで、静電力A’〜D’の大きさを時間と共に増大又は減少させる方法を挙げることができる。
【0044】
このように、2次元走査装置1は、揺動部材2の法線Nが螺旋を描くように方向を変更できるため、レーザからのレーザ光を揺動部材2に反射させることで、トルネードスキャンをすることができる。
【0045】
以上に説明したように、揺動部材2の第1軸A周りの揺動は、リング部材3の第2軸B方向の伸縮に連動し、揺動部材2の第2軸B周りの揺動は、リング部材3の第1軸A方向の伸縮に連動する。第1平面内cos2θモードの振動及び第2平面内cos2θモードの振動が発生するリング部材3においては、第1軸A方向の伸縮と第2軸B方向の伸縮とは同一の周波数で、且つ、互いに180°異なる位相で行われる。よって、揺動部材2の第1軸A周りの揺動と揺動部材2の第2軸B周りの揺動とは、同一周波数で、且つ、互いに90°異なる位相で行われる。従って、2次元走査装置1においては、揺動部材2の第1軸A周りの揺動と第2軸B周りの揺動とは、同一周波数で、且つ、互いに90°異なる位相で行われる。
【0046】
よって、2次元走査装置1は、第1軸A周りの揺動の周波数と第2軸B周りの揺動の周波数がずれることや、第1軸A周りの揺動の位相と第2軸B周りの揺動の位相との差が90°からずれることによって、法線Nが螺旋を描くように揺動部材2が揺動しなくなる恐れがない。同様の理由により、2次元走査装置1は、第3軸C周りの揺動の周波数と第4軸D周りの揺動の周波数とがずれることや、第3軸C周りの揺動の位相と第4軸D周りの揺動の位相の差が90°からずれることによって、法線Nが螺旋を描くように揺動部材2が揺動しなくなる恐れがない。
【0047】
また、本実施形態のように揺動部材2が平面視円形であれば、シリコン基板を加工して揺動部材2等を作製する際の加工誤差によって、揺動部材2等が全体的に大きくなったり、小さくなったりしても、揺動部材2の各軸方向の構成は同一であり、揺動部材2の各軸周りの固有振動数は同一のままである。よって、平面視円形の揺動部材2を備える2次元走査装置1は、このような加工誤差が生じても、共振現象を利用して、揺動部材2の法線Nが螺旋を描くように、揺動部材2を揺動させることができる。また、上記のような加工誤差が生じても、揺動部材2の各軸周りの固有振動数が同一である揺動部材2の形状は、平面視円形だけでなく、例えば、平面視正8n角形(n:は正の整数)がある。
【0048】
尚、本実施形態においては、2次元走査装置1は、上述のように、揺動部材2の法線Nの向きの変更方向を制御するために、第1平面内cos2θモードの振動と、第2平面内cos2θモードの振動とを同時に発生させることが可能な構成とされているが、本発明にかかる2次元走査装置は、第1平面内cos2θモードの振動のみを発生させる構成であってもよい。第1平面内cos2θモードの振動のみを発生させる構成の場合、揺動部材2の状態は、図5(a)→図5(c)→図6(a)→図6(c)の順で変化することも、図5(a)→図6(c)→図6(a)→図5(c)の順で変化することも可能である。
いずれの順番で変化するかは、例えば、実際に揺動部材2が揺動しているときの、揺動部材2の重量バランス等によって定まる。
【0049】
このように、第1平面内cos2θモードの振動のみを発生させる構成の場合は、第1軸A周り、及び、第2軸B周りの揺動が同一周波数で行われ、第1軸A周りの揺動の位相に対して第2軸B周りの揺動の位相が90°遅れれば、揺動部材2の法線Nが円弧又は螺旋を描くように、揺動部材2を揺動させることができる。よって、第1平面内cos2θモードの振動のみを発生させる構成の場合において、共振現象を利用して、揺動部材2の法線Nが円弧を描くように揺動部材2を揺動させる場合は、揺動部材2の形状は、第1軸A周りと第2軸B周りとの固有振動数が同一となる形状とされる。第1軸A周りと第2軸B周りとの固有振動数が同一となる形状としては、例えば、平面視円形、平面視正4n角形(n:は正の整数)がある。
【0050】
また、第1平面内cos2θモードの振動のみを発生させる構成の場合、揺動部材2の第1軸A方向と第2軸B方向との構成が同一となる場合、揺動部材2等が全体的に大きくなったり、小さくなったりする加工誤差が生じても、揺動部材2の第1軸A周りの固有振動数と第2軸B周りの固有振動数とは同一のままである。よって、第1平面内cos2θモードの振動のみを発生させる構成の場合、揺動部材2の第1軸A方向と第2軸B方向との構成が同一となる形状のときは、上記のような加工誤差が生じても、共振現象を利用して、第1軸A周りと第2軸B周りの揺動を同一の周波数で行うことができる。尚、揺動部材2の第1軸A方向と第2軸B方向との構成が同一となる揺動部材2の具体的な形状としては、例えば、平面視円形、平面視正4n角形(n:正の整数)がある。
【0051】
このように第1平面内cos2θモードの振動のみを発生させる構成の場合、2次元走査装置は、第2平面内cos2θモードの振動を発生させるための部材を備えなくてもよい。本実施形態の場合においては、第2平面内cos2θモードの振動を発生させるための部材には、第3接続部材4C、第4接続部材4D、第3可動電極521、第3駆動電極522、第3交流電源523、及び、第4可動電極524、第4駆動電極525、第4交流電源526が該当する。
【0052】
本実施形態における2次元走査装置1は、レーザからのレーザ光を揺動部材2で反射して、2次元走査をする構成とされている。本発明に係る2次元走査装置における2次元走査の方式は、これに限らず、例えば、揺動部材2の表面に発光素子を載置して、当該発光素子から発せられるレーザ光等の光で2次元走査を行う方式であってもよい。
【0053】
以下において、駆動手段5の変形例を説明する。
【0054】
<変形例1>
本変形例に係る駆動手段5は、第1〜4電線と、第1〜4磁界発生手段と、第1〜4交流電源とを具備する。
【0055】
図8は、本変形例に係る駆動手段5を備えた2次元走査装置1の説明図である。図8(a)は、リング部材3の第1軸A上の部位近傍の2次元走査装置1の平面図を示す。図8(a)に示すように、第1電線53は、リング部材3の第1軸A上の2つの部位(図8(a)では、一方側の部位のみ示している)に略第2軸B方向に沿って配置されている。図示していないが、第2電線は、リング部材3の第2軸B上の2つの部位に略第1軸A方向に沿って配置され、第3電線は、リング部材3の第3軸C上の2つの部位に略第4軸D方向に沿って配置され、第4電線は、リング部材3の第4軸D上の2つの部位に略第3軸C方向に沿って配置されている。
【0056】
第1磁界発生手段54は、第1電線53が配置されたリング部材3の電線配置部にリング部材3の厚み方向の磁界を発生させる。図8(b)は、第1磁界発生手段54の具体的構成を示す図である。図8(b)に示すように、第1磁界発生手段54は、電線配置部に対してリング部材3の厚み方向一方側と他方側とに位置する永久541を有する。かかる磁石541は、リング部材3の電線配置部における磁力を高めるためのヨーク542に支持されている。図示していないが、第2磁界発生手段は、第2電線が配置されたリング部材3の電線配置部にリング部材3の厚み方向の磁界を発生させ、第3磁界発生手段は、第3電線が配置されたリング部材3の電線配置部にリング部材3の厚み方向の磁界を発生させ、第4磁界発生手段は、第4電線が配置されたリング部材3の電線配置部にリング部材3の厚み方向の磁界を発生させる。第2〜4磁界発生手段は、第1磁界発生手段と同一の構成である。
【0057】
図8(a)に示すように、第1交流電源513は、第1電線53に第1交流電圧を印加可能とされている。図示していないが、第2交流電源は、第2電線に第2交流電圧を印加可能とされ、第3交流電源は、第3電線に第3交流電圧を印加可能とされ、第4交流電源は、第4電線に第4交流電圧を印加可能とされている。
【0058】
図8(a)に示すように、以上の構成において、第1電線53に第1交流電圧が印加され、第1電線53に電流が流れると、第1軸A方向の力A’’がリング部材3の第1電線53が配置された電線配置部に発生する。このように、第1軸A方向の力A’’が発生することで、リング部材3は第1軸A方向に伸縮する。同様に、第2〜4電線に第2〜4交流電圧を印加することで、第2〜4軸B〜D方向の力がリング部材3の各電線配置部に発生し、第2〜4軸B〜D方向の力が発生することで、リング部材3が第2〜4軸B〜D方向に伸縮する。
【0059】
よって、本変形例に係る駆動手段5は、第1cos2θモードの振動と、第2cos2θモードの振動とをリング部材3に発生させることができ、揺動部材2の法線Nが円弧を描くように、揺動部材2を揺動させることができる。また、上記の実施形態と同様に、本変形例に係る駆動手段5は、第1平面内cos2θモードの振動及び第2平面内cos2θモードの振動におけるリング部材3の伸縮量を時間と共に増大又は減少させることによって、揺動部材2の法線Nが、螺旋を描くように揺動部材2を揺動させる。リング部材3の伸縮量の増大又は減少を行う方法としては、例えば、第1〜4交流電圧の実効値を時間と共に増大又は減少させることで、電線配置部に発生する第1〜4軸A〜D方向の力を時間と共に増大又は減少させる方法を挙げることができる。
【0060】
<変形例2>
図9は、本変形例に係る駆動手段5を備えた2次元走査装置1のリング部材3近傍の平面図である。図9に示すように、本変形例に係る駆動手段5は、第1〜4圧電素子55A〜55Dと、第1〜4交流電源513、516、523、526とを具備する。
【0061】
第1圧電素子55Aは、リング部材3の第2軸B上の2つの部位に伸縮方向が第1軸A方向に向けられて配置されている。第2圧電素子55Bは、リング部材3の第1軸A上の2つの部位に伸縮方向が第2軸B方向に向けられて配置されている。第3圧電素子55Cは、リング部材3の第4軸D上の2つの部位に伸縮方向が第3軸C方向に向けられて配置されている。第4圧電素子55Dは、リング部材3の第3軸C上の2つの部位に伸縮方向が第4軸D方向に向けられて配置されている。このような第1〜4圧電素子55A〜55Dが配置されたリング部材3は、第1〜4圧電素子55A〜55Dのうち、伸縮した圧電素子の伸縮方向に収縮する。第1〜4圧電素子55A〜55Dの伸縮量は、印加される電圧が大きくなればなるほど大きくなる。
【0062】
第1交流電源513は、第1圧電素子55Aに第1交流電圧を印加可能とされている。第2交流電源516は、第2圧電素子55Bに第2交流電圧を印加可能とされている。第3交流電源523は、第3圧電素子55Cに第3交流電圧を印加可能とされている。第4交流電源526は、第4圧電素子55Dに第4交流電圧を印加可能とされている。
【0063】
このように、第2圧電素子55Bには、第1圧電素子55Aに印加される第1交流電圧に対して位相が180°遅れた第2交流電圧が印加されるので、第1圧電素子55Aの伸縮の位相に対して第2圧電素子55Bの伸縮の位相は180°遅れる。よって、リング部材3の第1軸A方向の伸縮と第2軸B方向の伸縮との位相は、180°異なる。従って、第1圧電素子55Aと第2圧電素子55Bとの伸縮により、第1平面内cos2θモードの振動がリング部材3に発生する。
【0064】
また、第4圧電素子55Cには、第3圧電素子55Cに印加される第3交流電圧に対して位相が180°遅れた第4交流電圧が印加されるので、第3圧電素子55Cの伸縮の位相に対して第4圧電素子55Dの伸縮の位相は180°遅れる。よって、リング部材3の第3軸C方向の伸縮と第4軸D方向の伸縮との位相は、180°異なる。従って、第3圧電素子55Cと第4圧電素子55Dとの伸縮により、第2平面内cos2θモードの振動がリング部材3に発生する。
【0065】
更に、第3交流電圧の位相は第1交流電圧の位相に対して90°遅れている。そのため、リング部材3の第3軸C方向の伸縮は第1軸A方向の伸縮に対して位相が90°遅れている。また、第4交流電圧の位相は第2交流電圧の位相に対して90°遅れている。そのため、リング部材3の第4軸D方向の伸縮は第2軸B方向の伸縮に対して位相が90°遅れている。よって、第2平面内cos2θモードの振動によるリング部材3の伸縮の位相は、第1平面内cos2θモードの振動によるリング部材3の伸縮の位相に対して90°遅れている。
【0066】
従って、本変形例に係る駆動手段5は、第1平面内cos2θモードの振動と第2平面内cos2θモードの振動とをリング部材3に発生させることで、揺動部材2の法線Nが円弧を描くように、揺動部材2を揺動させることができる。また、上記の実施形態と同様に、本変形例に係る駆動手段5は、第1平面内cos2θモードの振動及び第2平面内cos2θモードの振動におけるリング部材3の伸縮量を時間と共に増大又は減少させることによって、揺動部材2の法線Nが、螺旋を描くように揺動部材2を揺動させる。リング部材3の伸縮量の増大又は減少を行う方法としては、例えば、第1〜4交流電圧の実効値を時間と共に増大又は減少させることで、第1〜4圧電素子55A〜Dの伸縮量を時間と共に増大又は減少させる方法を挙げることができる。
【0067】
<変形例3>
図10は、本変形例に係る駆動手段5を備えた2次元走査装置1の平面図である。図10に示すように、本変形例に係る駆動手段5は、サポート部材6に配置された圧電素子56と第1〜4交流電源513、516、523、526とを備える。図10(a)に示すように、圧電素子56は、サポート部材6のうち、リング部材3から径外方向に延出された部分に配置されている。圧電素子56は、サポート部材6のリング部材3の周方向の一端部と、他端部とに配置されている。
【0068】
従って、図10(a)の1点鎖線で示すように、サポート部材6に配置された圧電素子6のうち、第1軸A側の端部に配置された圧電素子56にのみ電圧を印加すると、サポート部材6が湾曲し、当該サポート部材6と接続されたリング部材3の部分31が、第1軸A方向に移動する。一方、図10(a)の2点鎖線で示すように、サポート部材6に配置された圧電素子6のうち、第2軸B側の端部に配置された圧電素子56にのみ電圧を印加すると、サポート部材6が湾曲し、サポート部材6と接続されたリング部材3の部分が、第2軸B方向に移動する。
【0069】
このため、図10(b)に示すように、各サポート部材6に配置された圧電素子のうち、第1軸A側の端部に配置された圧電素子56に電圧が印加されると、リング部材3は、第1軸A方向に伸張し、第2軸B方向に収縮する。一方、図示していないが、各サポート部材6に配置された圧電素子のうち、第2軸B側の端部に配置された圧電素子56に電圧が印加されると、リング部材3は、第1軸A方向に収縮し、第2軸B方向に伸張する。
【0070】
以上のように配置された圧電素子56のうち、第1軸A側の端部に配置された圧電素子56は、第1交流電源513と電気的に接続されている。また、第2軸B側の端部に配置された圧電素子56は、第2交流電源516と電気的に接続されている。
【0071】
このように、第2軸B側の端部に配置された圧電素子56には、第1軸A側の端部に配置された圧電素子56に印加される第1交流電圧に対して位相が180°遅れた第2交流電圧が印加される。このため、第1軸A側の端部に配置された圧電素子56の収縮の位相に対して第2軸B側の端部に配置された第2圧電素子56の収縮の位相は180°遅れる。よって、リング部材3の第1軸A方向の伸縮と第2軸B方向の伸縮との位相は、180°異なる。従って、圧電素子56の伸縮によって、第1平面内cos2θモードの振動がリング部材3に発生する。
【0072】
また、第1交流電源513又は第2交流電源516に電気的に接続された圧電素子56は、更に、第3交流電源523又は第4交流電源526と電気的に接続されている。具体的には、サポート部材6の第3軸C側の端部に配置された圧電素子56は、第3交流電源523と電気的に接続されている。また、サポート部材6の第4軸D側の端部に配置された圧電素子56は、第4交流電源526と電気的に接続されている。
【0073】
このように、第4軸D側の端部に配置された圧電素子56には、第3軸C側の端部に配置された圧電素子56に印加される第3交流電圧に対して位相が180°遅れた第4交流電圧が印加される。このため、第3軸C側の端部に配置された圧電素子56の伸縮の位相に対して第4軸D側の端部に配置された第4圧電素子56の伸縮の位相は180°遅れる。よって、リング部材3の第3軸C方向の伸縮と第4軸D方向の伸縮との位相は、180°異なる。従って、圧電素子56の伸縮によって、第2平面内cos2θモードの振動がリング部材3に発生する。
【0074】
更に、第3交流電圧の位相は第1交流電圧の位相に対して90°遅れ、第4交流電圧の位相は第2交流電圧の位相に対して90°遅れている。そのため、変形例2で説明したように、本変形例における第2平面内cos2θモードの振動によるリング部材3の伸縮の位相は、第1平面内cos2θモードの振動によるリング部材3の伸縮の位相に対して90°遅れている。
【0075】
従って、本変形例に係る駆動手段5は、第1平面内cos2θモードの振動と第2平面内cos2θモードの振動とをリング部材3に発生させることで、揺動部材2の法線Nが円弧を描くように、揺動部材2を揺動させることができる。また、上記の実施形態と同様に、本変形例に係る駆動手段5は、第1平面内cos2θモードの振動及び第2平面内cos2θモードの振動におけるリング部材3の伸縮量を時間と共に増大又は減少させることによって、揺動部材2の法線Nが、螺旋を描くように揺動部材2を揺動させる。リング部材3の伸縮量の増大又は減少を行う方法としては、例えば、第1〜4交流電圧の実効値を時間と共に増大又は減少させることで、サポート部材6の湾曲量を時間と共に増大又は減少させる方法を挙げることができる。
【0076】
<変形例4>
図11は、本変形例に係る駆動手段5が備えられた2次元走査装置1の構成図である。図11(a)は、本変形例に係る駆動手段5が備えられた2次元走査装置1のリング部材3近傍の概略平面図である。図11(b)は、図11(a)のT―T断面図である。
【0077】
図11に示すように駆動手段5は、永久磁石57と、第1〜8コイル58A〜58Hと、第1〜8交流電源513、516、523、526、533、536、543、546とを備える。図11(b)に示すように、永久磁石57は、揺動部材2の一方の面に取り付けられている。第1〜8コイル58A〜58Hは、リング部材3が含まれる平面Pの永久磁石57が取り付けられた側に、平面Pに対して所定の距離を置いて配置されている。図11(a)に示すように、第1〜8コイル58A〜58Hは、平面視において、揺動部材2の中心を囲むように、揺動部材2の中心に対して45°間隔で配置されている。具体的には、第1コイル58Aは、揺動部材2の中心に対して第1軸A方向一方側の第1軸Aと重なった位置に配置されている。第1コイル58Aに対して、第2コイル58Bは、揺動部材2を中心にして左回りに45°の位置に、第3コイル58Cは、揺動部材2を中心にして左回りに90°の位置に、第4コイル58Dは、揺動部材2を中心にして左回りに135°の位置に、第5コイル58Eは、揺動部材2を中心にして左回りに180°の位置に、第6コイル58Fは、揺動部材2を中心にして左回りに225°の位置に、第7コイル58Gは、揺動部材2を中心にして左回りに270°の位置に、第8コイル58Hは、揺動部材2を中心にして左回りに315°の位置に、配置されている。
【0078】
第1コイル58Aは、第1交流電源513に電気的に接続され、第2コイル58Bは、第5交流電源533に電気的に接続され、第3コイル58Cは、第3交流電源523に電気的に接続され、第4コイル58Dは、第6交流電源536に電気的に接続され、第5コイル58Eは、第2交流電源516に電気的に接続され、第6コイル58Fは、第7交流電源543に電気的に接続され、第7コイル58Gは、第4交流電源526に電気的に接続され、第8コイル58Hは、第8交流電源546に電気的に接続されている。第5交流電源523は、第1交流電圧に対して位相が45°遅れた第5交流電圧(図7参照)を印加可能とされ、第6交流電源536は、第1交流電圧に対して位相が135°遅れた第6交流電圧(図7参照)を印加可能とされ、第7交流電源543は、第1交流電圧に対して位相が225°遅れた第7交流電圧(図7参照)を印加可能とされ、第8交流電源546は、第1交流電圧に対して位相が315°遅れた第8交流電圧(図7参照)を印加可能とされている。
【0079】
図11(b)に示すように、第1〜8コイル58A〜58Hに電圧が印加されると、第1〜8コイル58A〜58Gと永久磁石57との間に磁界が発生し、引力又は斥力の磁力が発生する。
【0080】
揺動部材2の中心を挟んで反対側に配置された2つのコイルには、位相が180°異なる交流電圧が印加されている。そのため、図11(b)に示すように、揺動部材2の中心を挟んで一方側に配置された第3コイル58Cと永久磁石57との間では引力が発生し、揺動部材2の中心を挟んで他方側に配置された第7コイル58Gと磁永久石57との間では斥力が発生する。よって、図11(b)の点線で示すように、揺動部材2は、引力が発生する側がコイルに接近、斥力が発生する側はコイルから離間する。このような接近及び離間によって、揺動部材2は揺動する。
【0081】
第1〜8コイル58A〜58Hにおいては、隣接するコイル間において、コイルに印加される交流電圧は、45°ずつ異なっている。よって、揺動部材2のコイルと接近及び離間する部位が周方向にずれることで、揺動部材2は、法線Nが円弧を描くように揺動する。
【0082】
また、上記の実施形態と同様に、本変形例に係る駆動手段5は、揺動部材2の揺動の振幅を時間と共に増大又は減少させることによって、揺動部材2の法線Nが、螺旋を描くように揺動部材2を揺動させる。動部材2の揺動の振幅を時間と共に増大又は減少させる方法としては、例えば、第1〜8交流電圧の実効値を時間と共に増大又は減少させることで、第1〜8コイル58A〜Gと永久磁石57との間に発生する引力又は斥力を時間と共に増大又は減少させる方法を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、実施形態に係る2次元走査装置の概略平面図である。
【図2】図2は、第1接続部材の構成図である。図2(a)は、揺動していない状態の第1接続部材の平面図を示す。図2(b)は、第1接続部材がリング部材を含む平面に対して略直交方向に揺動したときのZ―Z断面図を示す。図2(c)は、揺動している状態の第1接続部材の平面図を示す。
【図3】図3は、第1接続部材の平面図である。図3(a)は、接続部分が伸張していない状態の平面図を示す。図3(b)は、接続部分が伸張した状態の平面図を示す。
【図4】図4(a)は、リング部材3に発生する第1平面内cos2θモードの振動を示す平面図である。図4(b)は、リング部材3に発生する第2平面内cos2θモードの振動を示す平面図である。
【図5】図5は、リング部材の伸縮状態と、揺動部材の揺動状態とを対応関係を示す図である。
【図6】図6は、リング部材の伸縮状態と、揺動部材の揺動状態とを対応関係を示す図である。
【図7】図7は、第1交流電圧の位相に対する、第2〜8交流電圧の各位相を示している。
【図8】図8は、変形例1に係る駆動手段を備えた2次元走査装置の説明図である。図8(a)は、リング部材の第1軸上の部位近傍の2次元走査装置の平面図を示す。図8(b)は、第1磁界発生手段の具体的構成を示す図である。
【図9】図9は、変形例2に係る駆動手段を備えた2次元走査装置のリング部材3近傍の平面図である。
【図10】図10は、変形例3に係る駆動手段を備えた2次元走査装置の説明図である。図10(a)は、変形例3に係る駆動手段の圧電素子近傍の拡大平面図を示す。図10(b)は、各サポート部材に配置された圧電素子のうち、第1軸側の端部に配置された圧電素子に電圧が印加されたときのリング部材の状態を示す。
【図11】図11は、変形例4に係る駆動手段が備えられた2次元走査装置の構成図である。図11(a)は、本変形例に係る駆動手段が備えられた2次元走査装置のリング部材近傍の概略平面図を示す。図11(b)は、図11(a)のT―T断面図を示す。
【図12】図12は、ジンバル構造の説明図である。
【符号の説明】
【0084】
1…2次元走査装置、2…揺動部材、3…リング部材、4A〜4D…第1〜第4接続部材、5…駆動手段、6…サポート部材、7…筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動部材と、
前記揺動部材と中心が一致するように、前記揺動部材の外側に配置されたリング部材と、
前記揺動部材と前記リング部材とを接続し、前記リング部材を含む平面内に存在し、且つ、前記揺動部材の中心を通る第1軸に沿って配置された一対の第1接続部材と、
前記揺動部材と前記リング部材とを接続し、前記リング部材を含む平面内に存在し、前記揺動部材の中心を通り、且つ、前記第1軸と直交する第2軸に沿って配置された一対の第2接続部材とを備え、
前記第1接続部材及び前記第2接続部材は、前記リング部材との接続部分を揺動中心として、前記リング部材を含む平面に対して略直交方向に揺動可能とされ、
更に、前記リング部材を伸縮させて前記第1接続部材及び前記第2接続部材を揺動させることにより、前記揺動部材を揺動させる駆動手段を備え、
前記駆動手段は、
前記リング部材を前記第1軸方向に伸張させると共に、前記第2軸方向に収縮させることで、前記揺動部材を前記第1軸周りに揺動させ、
前記リング部材を前記第1軸方向に収縮させると共に、前記第2軸方向に伸張させることで、前記揺動部材を前記第2軸周りに揺動させることを特徴とする2次元走査装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、
前記第1軸方向及び前記第2軸方向に伸縮する第1平面内cos2θモードの振動を前記リング部材に発生させると共に、前記第1平面内cos2θモードの振動における前記リング部材の前記第1軸方向と前記第2軸方向の伸縮量を時間と共に増大又は減少させることを特徴とする請求項1に記載の2次元走査装置。
【請求項3】
前記第1接続部材の接続部分は、前記第2軸方向に凸状に屈曲し、前記第2接続部材の接続部分は、前記第1軸方向に凸状に屈曲したことを特徴とする請求項1又は2に記載の2次元走査装置。
【請求項4】
前記揺動部材と前記リング部材とを接続し、前記リング部材を含む平面内に存在し、前記揺動部材の中心を通り、且つ、前記第1軸と45°の角度を成す第3軸に沿って配置された一対の第3接続部材と、
前記揺動部材と前記リング部材とを接続し、前記リング部材を含む平面内に存在し、前記揺動部材の中心を通り、且つ、前記第3軸と直交する第4軸に沿って配置された一対の第4接続部材と、
前記第3接続部材と、前記第4接続部材とは、前記リング部材との接続部分を揺動中心として、前記リング部材を含む平面に対して略直交方向に揺動可能とされ、
前記駆動手段は、前記第1平面内cos2θモードの振動と、前記第1平面内cos2θモードの振動に対して最大伸縮方向が45°、前記リング部材の伸縮の位相が90°異なる第2平面内cos2θモードの振動とを前記リング部材に同時に発生させると共に、前記第1平面内cos2θモードの振動における前記リング部材の前記第1軸方向と前記第2軸方向の伸縮量、及び、前記第2平面内cos2θモードの振動における前記リング部材の前記第3軸方向と前記第4軸方向の伸縮量を時間と共に増大又は減少させることを特徴とする請求項2又は3に記載の2次元走査装置。
【請求項5】
前記第3接続部材の接続部分は、前記第4軸方向に凸状に屈曲し、前記第4接続部材の接続部分は、前記第3軸方向に凸状に屈曲したことを特徴とする請求項4に記載の2次元走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−42607(P2009−42607A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209014(P2007−209014)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】