説明

2031オキシドレダクターゼ

真菌の必須タンパク質または遺伝子を標的化する抗真菌剤を同定する方法であって、
候補物質を(i)配列番号3に示した配列を含むNADH:フラビンオキシドレダクターゼタンパク質、(ii)(i)の相同体でありかつ配列番号8、12、14、19、24、42、44、83もしくは85に示した配列を含むNADH:フラビンオキシドレダクターゼタンパク質、(iii)(i)もしくは(ii)と50%同一性を有するタンパク質、(iv)少なくとも50アミノ酸長を有する(i)、(ii)もしくは(iii)の断片を含むタンパク質、(v)(i)、(ii)、(iii)もしくは(iv)をコードする配列を含むポリヌクレオチド、または(vi)(v)のコード配列と少なくとも70%同一性を有する配列を含むポリヌクレオチドと接触させるステップ、および
上記候補物質が(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)と結合するまたはそれをモジュレートするかどうかを確認するステップ
を含み、ここで(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)と結合するまたはそれをモジュレートすることは上記候補物質が抗真菌剤であることを示す、上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗真菌剤をスクリーニングする方法、真菌性2031オキシドレダクターゼ(2031 OR)酵素、ならびに真菌感染症の診断および治療に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシドレダクターゼは、酸化還元(レドックス)反応を触媒する酵素の主要クラス(EC 1)である。酸化還元反応は、分子間の、すなわち電子供与体(または還元剤)から電子受容体(または酸化剤)への電子または水素原子の形態での還元当量の移動に関わる。呼吸からタンパク質フォールディングまでの多数の細胞プロセスにとって重要な、多くの異なる種のオキシドレダクターゼが存在する。
【0003】
酵素のNADH:フラビンオキシドレダクターゼ/NADHオキシダーゼファミリー(InterPro参照番号IPR001155)は、ほぼ263種のメンバーを包含し、そのほとんどは細菌または酵母由来であるが植物および線虫のメンバーも若干ある。このファミリーのメンバーは、強固に結合した補欠分子族としてフラビンモノヌクレオチド(FMN)またはフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を利用する。フラビン補欠分子族は酸化型(FMNもしくはFAD)または還元型(FMNH2もしくはFADH2)で存在しうる。これらのオキシドレダクターゼは、還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を還元剤として利用する。様々な基質が該酸化還元反応における酸化剤として作用することができる。
【0004】
旧黄色酵素(OYE)は、このオキシドレダクターゼのファミリーのなかで最も古くから知られるメンバーである(WilliamsおよびBruce, 2002, Microbiology 148, 1607-1614の総説がある)。OYE1(EC 1.6.99.1)は醸造用下面酵母からWarburg & Christian(1932, Naturwissenschaften 20, 688)により単離され、そして補因子を必要とすることが示された最初の酵素であった(Theorell, 1935, Biochem. Z. 275, 344-346)。この黄色の補因子はリボフラビン5'-リン酸(フラビンモノヌクレオチド、FMNとしても知られている)であることがわかった。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に2種のOYE(OYE2およびOYE3)およびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)に2種のOYEの存在することが知られている。酵素の生化学的機構および構造について多くのことがわかっているものの、酵素の正確な生理学的役割はまだ解明されていない。
【0005】
OYEはNADPHデヒドロゲナーゼ活性を有する(下記反応1を参照)。還元された酵素は、シクロへキセノン(反応2を参照)、デュロキノン、メナジオンおよびN-エチルマレイミドを含むα/β-不飽和カルボニル化合物の還元を触媒する。
【化1】

【0006】
OYEはステロール代謝に関わりうること(Stottら, 1993, J. Biol. Chem. 268: 6097-6106)、または、例えば脂質過酸化分解産物の解毒に関わる抗酸化物質防御機構の一部分でありうること(Kohli & Massey, 1998, J. Biol. Chem. 273, 32763-32770)が予想されている。OYE2もOYE3も共にS. cerevisiaeにとって必須でない(h ttp://genome-www4.stanford.edu/cgi-bin/SGD/locus.pl?locus=S0001222;h ttp://db.yeastgenome.org/cgibin/SGD/locus.pl?locus=YPL171C)。
【0007】
NADH:フラビンオキシドレダクターゼファミリーの細菌性メンバーとしては、大腸菌(Eschrichia coli)N-エチルマレイミドレダクターゼ、Pseudomonas putida M10モルフィノンレダクターゼ、Enterobacter cloacae PB2四硝酸ペンタエリトリトールレダクターゼおよびAzoarcus evansii 2-アミノベンゾイル-CoAモノオキシゲナーゼ/レダクターゼ(Schuehleら, 2001, J. Bacteriol. 183, 5268-5278)が挙げられる。
【発明の開示】
【0008】
本発明者らは、NADH:フラビンオキシドレダクターゼ型の或るオキシドレダクターゼの遺伝子が真菌細胞の生存にとって必須であることを見出した。この知見によれば、該オキシドレダクターゼを標的化するその能力に基づいて抗真菌剤を同定することが可能になる。
【0009】
本発明は、抗真菌剤をスクリーニングするために利用することができる、本明細書で2031オキシドレダクターゼ(2031 OR)と称する新しいグループのオキシドレダクターゼを提供する。特に、Aspergillus fumigatus、Aspergillus nidulans、Candida albicans、Colletotrichium trifolii、Fusarium graminearum(アナモルフGibberella zeae)、Fusarium sporotrichoides、Magnaporthe grisea、Neurospora crassa、Schizosaccharomyces pombeおよびUstilago maydis(表Iを参照)由来の2031オキシドレダクターゼを提供する。2031 ORはOYEおよびそれに近い近縁酵素と関係はあるが、しかし新規の異なるオキシドレダクターゼのセットを規定するものでありかつ2031 ORは真菌細胞の生存にとって必須である。
【0010】
従って本発明は、次を提供する:
‐真菌の必須タンパク質または遺伝子を標的化する抗真菌剤を同定する方法であって、
候補物質を
(i) 配列番号3に示した配列を含むNADH:フラビンオキシドレダクターゼタンパク質、
(ii) (i)の相同体でありかつ配列番号8、12、14、19、24、42、44、83もしくは85で示した配列を含むNADH:フラビンオキシドレダクターゼタンパク質、
(iii) (i)もしくは(ii)と50%同一性を有するタンパク質、
(iv) 少なくとも50アミノ酸長を有する(i)、(ii)もしくは(iii)の断片を含むタンパク質、
(v) (i)、(ii)、(iii)もしくは(iv)をコードする配列を含むポリヌクレオチド、または
(vi) (v)のコード配列と少なくとも70%同一性を有する配列を含むポリヌクレオチド
と接触させるステップ、および
上記候補物質が(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)と結合するまたはそれをモジュレートするかどうかを確認するステップ
を含み、ここで(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)と結合するまたはそれをモジュレートすることは上記候補物質が抗真菌剤であることを示す、上記方法、
‐抗真菌剤を同定または取得するための、上に規定した(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)の使用、
‐真菌感染症を予防または治療するための医薬品の製造における、本発明の方法により同定した抗真菌剤の使用、
‐サンプル中の本発明のタンパク質またはポリヌクレオチドの存在を検出することを含む、サンプル中の真菌の存在を検出する方法、
‐単離された本発明のタンパク質またはポリヌクレオチド、
‐本発明のポリヌクレオチドを遺伝子導入した生物、
‐本発明のポリヌクレオチドまたはタンパク質を非機能化するかまたは抑制するように遺伝子操作した生物、
‐本発明のタンパク質に対して特異的な抗体、
‐本発明のスクリーニング方法により同定した抗真菌剤を投与することを含む真菌感染症の予防または治療方法、ならびに
‐本発明のタンパク質またはポリヌクレオチドの発現または活性の抑制により、死滅したかまたはその増殖が低減した真菌。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記のように、本発明は、抗真菌剤を同定するための、真菌性オキシドレダクターゼタンパク質およびポリヌクレオチド(該真菌性オキシドレダクターゼタンパク質およびポリヌクレオチドの相同体および/または断片を含む)である、またはそれらから誘導される特定のタンパク質およびポリヌクレオチド配列(本明細書では「本発明のタンパク質」および「本発明のポリヌクレオチド」と呼ぶ)の使用に関する。
【0012】
本明細書で使用される用語「オキシドレダクターゼ」または「OR」は酸化または還元反応を触媒することができる酵素として定義することができる。本発明のタンパク質は酸化または還元活性、本明細書に記載したかかるいずれかの活性を有しうる。本発明のORは一般に酵素委員会の分類EC1に該当するものである。
【0013】
必須な真菌性遺伝子は、真菌中で遺伝的に破壊された(例えば発現されない)場合、最小もしくは規定培地におけるまたは真菌に感染したモルモット、マウス、ウサギもしくはラットにおける該真菌細胞の生存を阻止するまたは増殖を有意に遅延させる遺伝子として定義することができる。一実施形態において、本発明のタンパク質はかかる遺伝子破壊の影響を補うことができる。従って、本発明のタンパク質は自然の2031オキシドレダクターゼを発現しない真菌細胞の生存(生存力)を生起することができる。
【0014】
本発明のタンパク質またはポリヌクレオチド(または真菌性「2031 OR」遺伝子、核酸またはタンパク質)は、該ファミリーの他メンバーとの配列類似性によって定義することができる。上記のように、この類似性は(例えば、配列表に示した配列との)%同一性に基づくことができる。
【0015】
本発明のタンパク質またはポリヌクレオチドは、示した配列のいずれかの図1および2の領域1〜11(図の上方に記した)に規定したモチーフの1つ以上を含むことができる。従って、本発明のタンパク質は配列番号3について示したモチーフ1〜11の1つ以上を含むことができ、かつ本発明のポリヌクレオチドは配列番号1のモチーフ1〜11の1つ以上を含むことができる。
【0016】
典型的には、該モチーフは図1または2に示した等価位置と同じ位置に存在する。等価位置は、例えば、本明細書に記載のいずれかの好適なアルゴリズムを用いて推論することができる。一実施形態においては、該タンパク質またはポリヌクレオチドは、図1または2に示したモチーフに隣接する配列、例えば該モチーフのN末端側および/もしくはC末端側、または5'および/もしくは3'に隣接する少なくとも10、20または30アミノ酸長/ヌクレオチド長;または隣接配列と%同一性を有する配列も含む。
【0017】
本発明のタンパク質は、典型的には図1および2に示したモチーフの少なくとも2、3、5、8または11個を含む。該タンパク質は好ましくは少なくともモチーフ番号6および/またはモチーフ番号9を含む。
【0018】
本発明のタンパク質またはポリヌクレオチドは、(配列番号1〜44および82〜85に示した)他の2031 ORポリヌクレオチドまたはタンパク質と、旧黄色酵素ファミリーポリヌクレオチドまたはタンパク質に対するよりも大きい同一性でアラインメントさせることができる。
【0019】
本発明のタンパク質またはポリヌクレオチドは、典型的には、(配列番号1-44および82-85で示した)他の2031 ORポリヌクレオチドまたはタンパク質と、旧黄色酵素ファミリーポリヌクレオチドまたはタンパク質に対するよりも、系統学的分析によって、例えば、60%を越えるブートストラップ値をもつ系統分岐群を形成する。
【0020】
一実施形態においては、本発明のタンパク質の有する配列はPFAMプロファイル「oxidored FMN」、またはINTERPROプロファイルIPR001155と一致し(例えば、e-50以下のE値をもつ)かつ旧黄色酵素ファミリータンパク質よりも配列番号1〜44および82〜85のいずれかの1つに示した2031 ORに近接する。
【0021】
本発明のタンパク質またはポリヌクレオチドは、例えば本発明の方法に使用する場合、(非細胞形態などの)単離された形態であってもよい。好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは2031 OR遺伝子を含む。好ましくは、単離されたタンパク質は2031 ORを含む。該ポリヌクレオチドは自然の、合成の、または組換えのポリヌクレオチドを含むことができ、そして該タンパク質は自然の、合成の、または組換えのタンパク質を含むことができる。該ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、自然の、合成の、または組換えのポリヌクレオチドまたはタンパク質の組合わせをそれぞれ含むことができる。本発明のポリヌクレオチドおよびタンパク質は、天然の2031 ORポリヌクレオチドおよびタンパク質と同じかまたは異なる配列を有することができる。
【0022】
本明細書において、用語「から単離された(isolated from)」は「の(of)」と読むことができると理解される。それ故に、ある特定の生物「から単離された」ポリヌクレオチドおよびタンパク質という言及には、合成または遺伝子組換えなどにより該生物から取得するのとは別の方法により調製したポリヌクレオチドおよびタンパク質が含まれる。
【0023】
好ましくは、該ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、真菌、より好ましくは糸状真菌、さらにより好ましくは子嚢菌(Ascomycete)から単離される。
【0024】
好ましくは、該ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、アスペルギルス(Aspergillus);ブルメリア(Blumeria);カンジダ(Candida);コレトトリチウム(Colletotrichium);クリプトコッカス(Cryptococcus);エンセファリトズーン(Encephalitozoon);フザリウム(Fusarium);レプトスフェリア(Leptosphaeria);マグナポルテ(Magnaporthe);ミコスフェレラ(Mycosphaerella);ノイロスポラ(Neurospora);フィトフトラ(Phytophthora);プラスモパラ(Plasmopara);ニューモシスティス(Pneumocystis);ピリキュラリア(Pyricularia);フィチウム(Pythium);プッチニア(Puccinia);リゾクトニア(Rhizoctonia);シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces);トリコフィトン(Trichophyton);およびウスティラーゴ(Ustilago)から選択される生物より単離される。
【0025】
好ましくは、該ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、アスペルギルス(Aspergillus)、カンジダ(Candida)、コレトトリチウム(Colletotrichium)、フザリウム(Fusarium)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ミコスフェレラ(Mycosphaerella)、ノイロスポラ(Neurospora)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)およびウスティラーゴ(Ustilago)からなる属の群より独立して選択される生物から単離される。
【0026】
好ましくは、該ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、Aspergillus flavus;Aspergillus fumigatus;Aspergillus nidulans;Aspergillus niger;Aspergillus parasiticus;Aspergillus terreus;Blumeria graminis;Candida albicans;Candida cruzei;Candida glabrata;Candida parapsilosis;Candida tropicalis;Colletotrichium trifolii;Cryptococcus neoformans;Encephalitozoon cuniculi;Fusarium graminarium;Fusarium solani;Fusarium sporotrichoides;Leptosphaeria nodorum;Magnaporthe grisea;Mycosphaerella graminicola;Neurospora crassa;Phytophthora capsici;Phytophthora infestans;Plasmopara viticola;Pneumocystis jiroveci;Puccinia coronata;Puccinia graminis;Pyricularia oryzae;Pythium ultimum;Rhizoctonia solani;Schizzosaccharomyces pombe;Trichophyton interdigitale;Trichophyton rubrum;および Ustilago maydisからなる種の群より選択される生物から単離される。
【0027】
好ましくは、該ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、Aspergillus fumigatus、Aspergillus nidulans、Candida albicans、Colletotrichium trifolii、Fusarium graminearum、Fusarium sporotrichoides、Magnaporthe grisea、Mycosphaerella graminicola、Neurospora crassa、Schizosaccharomyces pombeおよびUstilago maydisからなる種の群より選択される生物から単離される。
【0028】
該ポリヌクレオチド、および好ましくはタンパク質は、A. fumigatus AF293から単離することができる。
【表1】

【0029】
(1)配列番号後の数字はタンパク質をコードするゲノムDNAの塩基に対応する。
(2)RNA配列は配列表においてチミジン(T)を用いて表わしたが、in vivoではウリジン(U)が存在しうることは当然である。
(3)最良の予想されるcDNA/タンパク質を得るには、EST(配列番号22)の位置690におけるNAの1塩基欠失が必要である。
(4)翻訳を最適化するには、2つの単一塩基欠失が必要である。
【0030】
バイオインフォマティクス分析を実施して真菌性2031 OR内の機能的に重要な領域を同定した。2031 ORは、Candida albicansのエルゴステロール結合タンパク質も含む酵母酵素の「旧黄色酵素(OYE)」グループと近縁ではあったが異なっている。2031 ORとOYEファミリータンパク質との結晶構造の比較により、これらの酵素の触媒機能に関与する高度に保存された残基を同定した。しかし、その比較によってまた、2031 OR酵素に保存されたがOYE酵素に保存されない基質結合部位に隣接する7つの残基クラスターも同定し、従って、これらは基質特異性を決定することが示唆された(図1および2の領域2、4、6、7、8、10、および11、ならびに下記の実施例4)。4つのさらなる保存された残基クラスターを同定し、これらは触媒作用に関わらないと予想されたものの、2031に保存されたがOYEに保存されない。従って、これらも2031 ORをOYEから区別するものである(図1および2の領域1、3、5、および9、ならびに下記の実施例4)。
【0031】
本発明は上記ポリヌクレオチドおよびタンパク質の変異体も提供するものであり、以下にそれらを説明する。
【0032】
一実施形態において、本発明のタンパク質は、図1に示した配列番号3、6、8、10、12、14、16、19、22、24、27、30、33、35、38、40、42、44、83もしくは85のいずれかの配列番号の領域1〜11から実質的に構成されかつ独立して選択されるアミノ酸配列、またはそれらの変異体を含むことができる。少なくとも1つの領域またはモチーフが機能性でありうる。
【0033】
本発明のポリヌクレオチドは、ゲノムDNAなどのDNAを含むことができる。該ポリヌクレオチドは、図2に示した配列番号1、4、7、9、11、13、15、17、20、23、25、28、31、34、36、39、41、43、82もしくは84のいずれかの配列番号の領域1〜11から実質的に構成されかつ独立して選択される配列、または相補配列、またはそれらの変異体を含むことができる。
【0034】
好ましくは、該ポリヌクレオチドは、配列番号3、6、8、10、12、14、16、19、22、24、27、30、33、35、38、40、42、83もしくは85のアミノ酸配列を実質的に含む真菌性2031 ORタンパク質、またはそれらの変異体をコードする。
【0035】
該ポリヌクレオチドは、RNA、好ましくはmRNA、好ましくはスプライシングを受けたmRNAを含むことができる。好ましくは、該ポリヌクレオチドは実質的に配列番号2、5、7、9、11、13、15、18、21、23、26、29、32、34、36、37、39、41、43、82もしくは84に示した配列、または相補配列、またはそれらの変異体を含む。
【0036】
好ましくは、該タンパク質は、実質的に配列番号3、6、8、10、12、14、16、19、22、24、27、30、33、35、38、40、42、44、83もしくは85の配列またはそれらの変異体を含む。
【0037】
好ましくは、該タンパク質は、図1およびに表Iの列「gDNA/EST」に記載した配列番号1、4、7、9、11、13、15、17、20、23、25、26、28、29、31、34、36、39、41、43、82もしくは84の配列の領域、または相補配列、またはそれらの変異体によりコードされる。
【0038】
該ポリヌクレオチドは、図2に示した配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、17、18、20、21、23、25、26、28、29、31、32、34、36、37、39、41、43、82もしくは84の配列の少なくとも1つ由来の領域1〜11の少なくとも1つから独立して選択されるヌクレオチド配列領域もしくはモチーフ、または相補配列、またはそれらの変異体を実質的に含むことができる。
【0039】
好ましくは、該単離されたポリヌクレオチドは、表Iの列「gDNA/EST」に示した領域および配列から独立して選択されるヌクレオチド配列を実質的に含む。
【0040】
好ましくは、該タンパク質は、表Iの列「gDNA/EST」に示した少なくとも1つの領域および配列から独立して選択される配列を実質的に含むポリヌクレオチド、または相補配列、またはそれらの変異体によりコードされる。
【0041】
用語「自然のアミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質」は、生物学的供給源からin vivoまたはin vitroで自然に産生されたアミノ酸、ポリヌクレオチドまたはタンパク質を意味する。
【0042】
用語「合成アミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質」は、人為的にまたは新規に(de novo)当技術分野で公知のDNAまたはタンパク質合成機を用いて作製されたアミノ酸、ポリヌクレオチドまたはタンパク質を意味する。
【0043】
用語「組換えアミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質」は、当技術分野で公知の組換えDNAまたはタンパク質の技術または技法を用いて作製されたアミノ酸、ポリヌクレオチドまたはタンパク質を意味する。
【0044】
用語「変異体(variant)」、および用語「実質的にアミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質配列」は、近縁(関連)配列を意味するために、本明細書において用いられる。以下に説明するようにかかる近縁配列は、典型的には、例えば配列の全長にわたってまたは所与の長さの部分にわたって、所与の配列と相同である(%同一性を有する)。近縁配列はまた、該配列のまたは相同配列の断片であってもよい。変異体タンパク質は変異体ポリヌクレオチドによりコードされてもよい。
【0045】
用語「変異体」および用語「実質的にアミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質配列」により、本発明者らは、該配列が、言及した配列のいずれか1つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質配列と、少なくとも30%、好ましくは40%、より好ましくは50%、そしてさらにより好ましくは60%配列同一性を有することを意味する。「実質的にアミノ酸/ポリヌクレオチド/ペプチド配列」である配列は関連する配列と同じであってもよい。
【0046】
異なるアミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質配列の間の%同一性の計算は次の通り実施することができる。最初にマルチプルアラインメントをClustalXプログラムにより作製する(ペアワイズパラメータ:ギャップオープニング10.0、ギャップ伸長0.1、タンパク質マトリックスGonnet 250、DNAマトリックスIUB;マルチプルパラメータ:ギャップオープニング10.0、ギャップ伸長0.2、遅延分岐配列30%、DNA移行重み0.5、ネガティブマトリックス オフ、タンパク質マトリックスgonnetシリーズ、DNA重みIUB;タンパク質ギャップパラメータ:残基特異的ペナルティ オン、親水性ペナルティ オン、親水性残基GPSNDQERK、ギャップ分離距離4、最終ギャップ分離 オフ)。次いで%同一性をマルチプルアラインメントから(N/T)*100[式中、Nは2つの配列が同一残基を有する位置の数であり、そしてTは比較した位置の全数である]として計算する。あるいは、%同一性は(N/S)*100[式中、Sは比較される短い方の配列の長さである]として計算することができる。アミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質配列は新規に(de novo)合成してもよいし、あるいは自然のアミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質配列、またはその誘導体であってもよい。
【0047】
言及した配列のいずれかと65%を超える同一性を有するアミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質配列も意図している。言及した配列のいずれかと70%を超える同一性を有するアミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質配列も意図している。言及した配列のいずれかと75%を超える同一性を有するアミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質配列も意図している。言及した配列のいずれかと80%を超える同一性を有するアミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質配列も意図している。好ましくは、該アミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質配列は言及した配列のいずれかと85%同一性を有し、より好ましくは言及した配列のいずれかと90%同一性、さらにより好ましくは92%同一性、さらにより好ましくは95%同一性、さらにより好ましくは97%同一性、さらにより好ましくは98%同一性、そして最も好ましくは99%同一性を有する。
【0048】
上述の%同一性は、元の配列の全長にわたってまたは元の配列の15、20、50もしくは100アミノ酸/塩基の領域にわたって測定することができる。ある好ましい実施形態においては、%同一性を配列番号3と比較して測定する。好ましくは、変異体タンパク質は、配列番号3または配列番号3の一部分と少なくとも40%同一性、例えば少なくとも60%または少なくとも80%同一性を有する。
【0049】
あるいは、実質的に類似したヌクレオチド配列は、配列番号1、2、4、5、7、8、9、11、13、15、17、18、20、21、23、25、26、28、29、31、32、34、36、37、39、41、43、82もしくは84に示した配列またはそれらの相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列によりコードされるものでありうる。ストリンジェントな条件とは、ヌクレオチドをフィルターに結合したDNAまたはRNAと6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でほぼ45℃にてハイブリダイズさせ、次いで少なくとも1回の0.2×SSC/0.1%SDS中でほぼ5〜65℃にて洗浄することを意味する。あるいは、実質的に類似したタンパク質は、少なくとも1個の、しかし5、10、20、50または100個未満のアミノ酸だけ、配列番号3、6、8、10、12、14、16、19、22、24、27、30、33、35、38、40、42、44、83または85に示した配列と異なることができる。かかる相違はそれぞれ付加、欠失または置換であってもよい。
【0050】
遺伝暗号の縮重によって、いずれかの核酸配列がそれらのコードするタンパク質の配列に実質的に影響を与えることなく変更されるかまたは変化して、その機能性変異体を提供しうることは明らかである。好適なヌクレオチド変異体は、配列内で同じアミノ酸をコードする異なるコドンの置換により改変された配列を有し、サイレントな変化を生じる変異体である。
他の好適な変異体は、相同ヌクレオチド配列を有する変異体であって、しかし置換されるアミノ酸と類似の生物物理的特性の側鎖をもつアミノ酸をコードする異なるコドンの置換により改変されて保存的変化を生じる配列の全てまたは部分を含む上記変異体である。例えば、小さな非極性、疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、およびメチオニンが挙げられる。大きな非極性、疎水性アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンが挙げられる。極性の中性アミノ酸としては、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正に帯電した(塩基性)アミノ酸としては、リシン、アルギニンおよびヒスチジンが挙げられる。負に帯電した(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。カンジダ(Candida)属を含むある特定の生物は、大部分の真核生物で利用されるコドンと比較して非標準コドンを利用することが知られている。かかる生物由来のポリヌクレオチドおよびタンパク質と本明細書に記載の配列との比較は、これらの相違を考慮して行わなければならない。
【0051】
タンパク質またはDNA配列の正確なアラインメントにおいて、配列の最適な一致とかかる一致を得るためのギャップ導入との間のバランス(trade-off)が重要である。タンパク質の場合、一致のスコアを決定する手法も重要である。PAMマトリックス(例えば、Dayhoff, M.ら, 1978, Atlas of protein sequence and structure, Natl. Biomed. Res. Found.)およびBLOSUMマトリックスのファミリーは保存置換の性質と尤度を数値化し、マルチプルアラインメントアルゴリズムに利用しているが、当業者は他の同様に適用しうるマトリックスを知っているであろう。多くの利用されていマルチプルアラインメントプログラムClustalW、およびそのウインドウズ版ClustalX(Thompsonら, 1994, Nucleic Acids Research, 22, 4673-4680;Thompsonら, 1997, Nucleic Acids Research, 24, 4876-4882)はタンパク質およびDNAのマルチプルアラインメントを作製するための効率的な方法である。
【0052】
Alignプログラム(Hepperle, D., 2001: Multicolor Sequence Alignment Editor. Institute of Fresh Water Ecology and Inland Fisheries, 16775 Stechlin, Germany)の利用も好ましいが、他のJalViewまたはCinemaなども好適である。
【0053】
タンパク質の間の%同一性計算は、Clustalによるマルチプルアラインメントの作製中に行われる。しかし、これらの値は、もしアラインメントを手作業で改善した場合に、または2つの配列を計画的に比較するために再計算する必要がある。アラインメント内のタンパク質配列の対に対してこの値を計算するプログラムとしては、アミノ酸置換のモデルとして「類似性テーブル」オプションを用いるPHYLIP系統発生学パッケージ内のPROTDIST(Felsenstein;h ttp://evolution.gs.washington.edu/phylip.html)が挙げられる(P)。DNA/RNAに対してはPHYLIPのDNADISTプログラム内に同一のオプションが存在する。
【0054】
タンパク質配列中の他の改変、すなわち、翻訳中または後に、例えばアセチル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、タンパク分解切断またはリガンドとの結合により起こる改変も意図しており、本発明の範囲に包含される。
【0055】
用語「変異体(variant)」、および用語「実質的にアミノ酸/ポリヌクレオチド/タンパク質配列」はまた、例えば、先に言及した相同配列(特定の配列と%同一性を有する)を有する断片を含む関連ポリヌクレオチドまたはタンパク質配列の断片も包含する。ポリヌクレオチド断片は、典型的には、少なくとも10塩基、例えば少なくとも20、30、50、100、200、500または1000塩基を含む。タンパク質断片は、典型的には、少なくとも10アミノ酸、例えば少なくとも20、30、50、80、100、150、200、300、400または500アミノ酸を含む。該断片は該タンパク質のそれぞれの末端から少なくとも3アミノ酸、例えば少なくとも10、20または30アミノ酸のアミノ酸を欠損してもよい。
【0056】
本発明は、2031 ORタンパク質またはポリヌクレオチドのモジュレーター、例えば本発明のタンパク質またはポリヌクレオチドの発現または活性の阻害剤を同定するために使用することができるスクリーニングの方法を提供する。該方法の一実施形態においては、候補物質を本発明のタンパク質またはポリヌクレオチドと接触させ、該候補物質が該タンパク質またはポリヌクレオチドと結合するかまたはそれらをモジュレートするかどうかを決定する。
【0057】
モジュレーターはタンパク質の活性を増進(アゴニスト作用)するかまたは抑制(拮抗)することができる。(真菌感染に対する)治療モジュレーターは、本発明のタンパク質またはポリヌクレオチドの発現または活性を抑制しうる。
【0058】
本発明の方法をin vitro(細胞内もしくは外)でまたはin vivoで行うことができる。一実施形態においては、該方法を細胞に対してまたは細胞培養物の細胞抽出物に対して実施することができる。細胞は、ポリヌクレオチドまたはタンパク質が自然に存在する細胞であってもよいしまたはそうでなくてもよい。細胞は真菌細胞であってもよいしまたはそうでなくてもよく、あるいは本明細書に記載の真菌のいずれかの細胞であってもよいしまたはそうでなくてもよい。タンパク質またはポリヌクレオチドは該方法において非細胞形態で存在してもよく、従って、タンパク質は細胞から精製した組換えタンパク質の形態であってもよい。
【0059】
いずれの好適な結合または活性アッセイを利用してもよい。候補物質がタンパク質またはポリヌクレオチドと結合できるかどうかを決定する方法は、タンパク質またはポリヌクレオチドを候補物質に加え、そして結合が起こるかどうかを、例えば、タンパク質またはポリヌクレオチドと結合する候補物質の量を測定することにより決定するステップを含むものである。結合は、結合すると変化するタンパク質またはポリヌクレオチドの特性、例えば分光学的変化などを測定して決定することができる。結合は、候補の存在および不在のもとでの反応基質または生成物のレベルを測定して両者のレベルを比較することにより決定することができる。
【0060】
アッセイフォーマットは「バンドシフト(band shift)」系であってもよい。この系は、試験候補物質が、該化合物の不在のときと比較してゲル電気泳動においてタンパク質またはポリヌクレオチドを前進させるか遅延させるかを決定することを含む。
【0061】
該方法は競合結合法であってもよい。この方法は、候補物質が、タンパク質またはポリヌクレオチドと該タンパク質またはポリヌクレオチドと結合することがわかっている作用薬(例えば、タンパク質に特異的な抗体またはタンパク質の基質など)との結合を抑制できるどうかを決定する。
【0062】
候補物質がタンパク質の活性をモジュレートするかどうかは、該タンパク質の活性が認められる条件下で候補物質をタンパク質に供給して、候補物質が生成物の活性をモジュレートできるかどうかを確認することにより決定することができる。
【0063】
測定する活性は、オキシドレダクターゼ活性などの、本明細書に記載の本発明のタンパク質のいずれの活性であってもよい。一実施形態においては、酸化還元反応を候補物質の存在および不在のもとで行い、上記候補物質が本発明のタンパク質のオキシドレダクターゼ活性を抑制するかどうかを確認するステップを含み、その場合、候補物質が不在のもとで上記タンパク質が電子受容体の還元を触媒する条件のもとで、上記タンパク質をNADHまたはNADPH、および電子受容体と接触させることによって上記酸化還元反応を行うスクリーニング方法が提供される。
【0064】
ある好ましい実施形態においては、酸化還元反応の抑制を、NADHまたはNADPH酸化の量を検出することにより、例えばNADHおよびNADPHの酸化型の生成を分光学的に測定することにより確認する。これは340nmで測定することにより行うことができる(実施例7を参照)。
【0065】
あるいは、メチレンブルー、フェナジンメトスルフェートまたは2,6-ジクロロフェノールインドフェノールなどの好適な比色用オキシドレダクターゼ基質を用いて抑制を測定することができる。
【0066】
上記方法で試験することができる好適な候補物質としては、抗体産物(例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体およびCDRグラフト抗体)が挙げられる。さらに、コンビナトリアルライブラリー、規定された化学物質、ペプチドおよびペプチド擬似体、オリゴヌクレオチドおよび天然産物ライブラリー、例えばディスプレイライブラリー(例えばファージディスプレイライブラリー)も試験することができる。候補物質は化学化合物であってもよい。最初のスクリーニングには1反応当たり複数バッチの候補物質、例えば、10種の物質を使用して、抑制を示すバッチの物質を個々に試験することができる。
【0067】
本発明のさらなる態様によれば、医薬品または診断に使用する本発明のポリヌクレオチドまたはタンパク質が提供される。
【0068】
該ポリヌクレオチドまたはタンパク質を使用前に改変して、好ましくはそれらの誘導体または変異体を作製することができる。該ポリヌクレオチドまたはタンパク質を誘導体化してもよい。該タンパク質を、エピトープタギング、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、マルチプルヒスチジンまたはマルトース結合タンパク質などの融合パートナーまたは精製タグの付加、緑色蛍光タンパク質の付加、ビオチンまたは蛍光タグを含む分子の共有結合、セレノメチオニンの組み込み、放射性同位元素または蛍光/非蛍光ランタニドキレートの封入または結合によって改変することができる。該ポリヌクレオチドを、メチル化またはジゴキシゲニン(DIG)の付加により、あるいは上記タグ、タンパク質またはエピトープをコードする配列の付加により改変することができる。
【0069】
好ましくは、医薬品を、真菌感染症を遅延または予防するように適合させる。真菌感染症はヒト、動物または植物におけるものでありうる。該ポリヌクレオチドまたはタンパク質を薬物の開発に利用することができる。該ポリヌクレオチドまたはタンパク質を、上記ポリヌクレオチドまたは上記タンパク質の分子モデルの作製においてまたはそのために利用することができる。
【0070】
本発明のさらなる態様によれば、真菌感染症の治療用の医薬品を調製するための本発明のポリヌクレオチドまたはタンパク質の使用を提供する。
【0071】
該ポリヌクレオチドまたはタンパク質を、使用する前に改変して、好ましくはそれらの誘導体または変異体を製造することができる。該ポリヌクレオチドまたはタンパク質を誘導体化してもよい。ポリヌクレオチドまたはタンパク質を改変または誘導体化しなくてもよい。
【0072】
好ましくは、医薬品を、真菌感染症を遅延または予防するように適合させる。治療は真菌感染症を遅延または予防することを含む。好ましくは、該薬物および/または医薬品は阻害剤、好ましくは2031 OR阻害剤を含む。好ましくは、該薬物または医薬品を、該ポリヌクレオチドまたはそれらの断片の発現および/または活性、ならびに/あるいはそれらのタンパク質または断片の機能を抑制するよう適合させる。
【0073】
好ましくは、真菌感染症は、真菌、より好ましくは子嚢菌類、そしてさらにより好ましくは、アスペルギルス(Aspergillus);ブルメリア(Blumeria);カンジダ(Candida);コレトトリチウム(Colletotrichium);クリプトコッカス(Cryptococcus);エンセファリトズーン(Encephalitozoon);フザリウム(Fusarium);レプトスフェリア(Leptosphaeria);マグナポルテ(Magnaporthe);ミコスフェレラ(Mycosphaerella);ノイロスポラ(Neurospora);フィトフトラ(Phytophthora);プラスモパラ(Plasmopara);ニューモシスティス(Pneumocystis);ピリキュラリア(Pyricularia);フィチウム(Pythium);プッチニア(Puccinia);リゾクトニア(Rhizoctonia);シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces);トリコフィトン(Trichophyton);およびウスティラーゴ(Ustilago)の属から選択される生物による感染症を含むものである。
【0074】
好ましくは、真菌感染症は、アスペルギルス(Aspergillus)、カンジダ(Candida)、コレトトリチウム(Colletotrichium)、フザリウム(Fusarium)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ミコスフェレラ(Mycosphaerella)およびウスティラーゴ(Ustilago)からなる属から選択される生物による感染症を含むものである。
【0075】
好ましくは、真菌感染症は、Aspergillus flavus;Aspergillus fumigatus;Aspergillus nidulans;Aspergillus niger;Aspergillus parasiticus;Aspergillus terreus;Blumeria graminis;Candida albicans;Candida cruzei;Candida glabrata;Candida parapsilosis;Candida tropicalis;Colletotrichium trifolii;Cryptococcus neoformans;Encephalitozoon cuniculi;Fusarium graminarium;Fusarium solani;Fusarium sporotrichoides;Leptosphaeria nodorum;Magnaporthe grisea;Mycosphaerella graminicola;Phytophthora capsici;Phytophthora infestans;Plasmopara viticola;Pneumocystis jiroveci;Puccinia coronata;Puccinia graminis;Pyricularia oryzae;Pythium ultimum;Rhizoctonia solani;Trichophyton interdigitale;Trichophyton rubrum;およびUstilago maydisの種から選択される生物による感染症を含むものである。
【0076】
好ましくは、真菌感染症は、Aspergillus fumigatus;Aspergillus nidulans、Candida albicans、Colletotrichium trifolii、Fusarium graminearum、Fusarium sporotrichoides、Magnaporthe grisea、Mycosphaerella graminicolaおよびUstilago maydisの種から選択される生物による感染症を含むものである。
【0077】
本発明の他の態様によれば、個体における真菌感染症の存在を検出する方法であって、
(i)生物からサンプルを採取するステップ;および
(ii)上記サンプルにおける本発明のポリヌクレオチドまたはタンパク質の存在を検出するステップ
を含む方法が提供される。
【0078】
個体は個人(ヒト)または動物(哺乳動物または鳥類など)または植物であってもよい。真菌感染症は、アスペルギルス(Aspergillus);ブルメリア(Blumeria);カンジダ(Candida);コレトトリチウム(Colletotrichium);クリプトコッカス(Cryptococcus);エンセファリトズーン(Encephalitozoon);フザリウム(Fusarium);レプトスフェリア(Leptosphaeria);マグナポルテ(Magnaporthe);ミコスフェレラ(Mycosphaerella);フィトフトラ(Phytophthora);プラスモパラ(Plasmopara);ニューモシスティス(Pneumocystis);ピリキュラリア(Pyricularia);フィチウム(Pythium);プッチニア(Puccinia);リゾクトニア(Rhizoctonia);トリコフィトン(Trichophyton);およびウスティラーゴ(Ustilago)の属から選択される生物による感染から生じうる。
【0079】
真菌感染症は、Aspergillus flavus;Aspergillus fumigatus;Aspergillus nidulans;Aspergillus niger;Aspergillus parasiticus;Aspergillus terreus;Blumeria graminis;Candida albicans;Candida cruzei;Candida glabrata;Candida parapsilosis;Candida tropicalis;Colletotrichium trifolii;Cryptococcus neoformans;Encephalitozoon cuniculi;Fusarium graminarium;Fusarium solani;Fusarium sporotrichoides;Leptosphaeria nodorum;Magnaporthe grisea;Mycosphaerella graminicola;Phytophthora capsici;Phytophthora infestans;Plasmopara viticola;Pneumocystis jiroveci;Puccinia coronata;Puccinia graminis;Pyricularia oryzae;Pythium ultimum;Rhizoctonia solani;Trichophyton interdigitale;Trichophyton rubrum;およびUstilago maydisの種から選択される生物による感染から生じうる。
【0080】
好ましくは、サンプルは、好ましくは核酸および/またはタンパク質を含む生物学的サンプルを含むものである。本発明の方法の一実施形態においては、検出を実施する前に、核酸またはタンパク質をサンプルから(少なくとも部分的に)精製する。
【0081】
生物がアスペルギルス属のAspergillus fumigatus、Aspergillus nidulansまたはAspergillus nigerである場合、サンプルは痰、気管支肺胞洗浄液、尿、呼吸検体、気管内吸引液、侵襲性処置により得た無菌検体、例えば硝子体穿刺、鼓室穿刺、脳生検または吸引、経鼻または洞(sinus)検体、血液、組織または剖検を含むことができる。
【0082】
生物がイネいもち病菌(Magnaporthe grisea)である場合、サンプルはイネの葉またはイネの茎を含むことができる。
【0083】
好ましくは、第1または第3の態様に規定した、上記サンプル中のポリヌクレオチドの存在の検出は、DNA、好ましくはゲノムDNA、より好ましくは真菌ゲノムDNAの増幅に用いるように適合させた少なくとも1つのオリゴヌクレオチド対の使用を含む。増幅はPCR増幅であってもよい。
【0084】
好ましくは、PCR増幅は次からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのプライマー対を使用する:
Aspergillus fumigatus;配列番号1に対しては配列番号67および68;配列番号4に対しては配列番号69および70;ならびに配列番号7に対しては配列番号71および72、
Candida albicans;配列番号11に対しては配列番号73および74、
Magnaporthe grisea;配列番号20に対しては配列番号75および76。
【0085】
好ましくは、上記検出は、増幅したDNAをサイズ分析、好ましくは電気泳動で処理し、そして好ましくは、その結果を陽性対照および陰性対照と比較するステップを含む。上記検出はまた、正しい配列を実証するための増幅したDNAの配列を決定するステップを含んでもよい。
【0086】
好ましくは、上記サンプル中のタンパク質の存在の検出は、本発明のタンパク質の一部または全部に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用を含む。
【0087】
本発明のさらなる態様によれば、本発明のポリヌクレオチドを含む組換えDNA分子またはベクターを提供する。
【0088】
該組換えDNA分子またはベクターは発現カセットを含むことができる。好ましくは、該組換えDNA分子またはベクターは発現ベクターを含む。好ましくは、該ポリヌクレオチド配列は、発現制御配列と機能的に連結されている。好適な制御配列はプロモーター、エンハンサーなどを含む。
【0089】
本発明の他の態様によれば、本発明のポリヌクレオチド、組換えDNA分子またはベクターを含有する細胞が提供される。
【0090】
該細胞は、該ポリヌクレオチド、組換えDNA分子またはベクターを用いて好適な手法により形質転換またはトランスフェクトすることができる。好ましくは、該細胞は本発明の組換えタンパク質を産生する。
【0091】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを遺伝子導入した生物(その細胞は本明細書に記載の本発明の細胞と同じであってもよい)も提供する。かかる生物は典型的には、本明細書に記載の真菌のいずれかの属または種などの真菌である。該生物は、細菌、ウイルスまたは酵母などの微生物であってもよい。該生物は、植物、本明細書に記載の動物などの動物(鳥類および哺乳動物を含む)であってもよい。
【0092】
該生物は、本発明のポリヌクレオチドの上記生物の細胞中への導入により、そして多細胞生物の場合は、該細胞を全生物に成長させることにより作製することができる。
【0093】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の自然のポリヌクレオチドまたはタンパク質が非機能性であるおよび/または抑制されている細胞が提供される。該細胞は多細胞生物の細胞であってもまたは多細胞生物中に存在してもよい。
【0094】
該細胞は突然変異細胞であってもよい。該細胞は典型的には、本明細書に記載の真菌のいずれかの属または種などの真菌細胞である。該細胞を作製する好ましい手法は、本発明のポリヌクレオチドを、該ポリヌクレオチドが非機能性であるように改変することである。この改変は、遺伝子産物の発現または機能を破壊する突然変異を生起するものであってもよい。かかる突然変異は、ポリヌクレオチドの5'または3'調節配列として作用する核酸配列に対するものであってもよいし、あるいはポリヌクレオチドのコード配列中に導入された突然変異であってもよい。ポリヌクレオチドの機能的欠失は、例えば、ヌクレオチド置換、付加または、好ましくは、ヌクレオチド欠失の形態のポリヌクレオチドの突然変異によるものであってもよい。
【0095】
該ポリヌクレオチドは、
(i)ポリヌクレオチドのコード配列の読み枠をシフトする方法;
(ii)ポリヌクレオチドがコードするタンパク質中のアミノ酸を付加、置換もしくは欠失させる方法;
(iii)ポリヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドに関連する上流および下流調節配列をコードするDNAを部分的または全て欠失させる方法;あるいは
(iv)DNAのコードもしくは非コード領域中に挿入する方法
により非機能化および/または抑制することができる。
【0096】
突然変異をポリヌクレオチド中に導入する好ましい手法は、突然変異させるポリヌクレオチドを特異的に標的化する分子生物学技法を利用することである。突然変異はDNA分子を用いて誘発させることができる。突然変異を導入する最も好ましい手法は、とりわけ標的ポリヌクレオチドとDNA分子の間で相同組換えが起こるように調製したDNA分子を用いることである。この場合、2本鎖であってもよいDNA分子は、該DNA分子が標的とハイブリダイズする(次いでそれと組換わる)ことができるように、標的ポリヌクレオチドと類似または同一の塩基配列を含有する。
【0097】
また、突然変異を遺伝子またはその調節領域中に導入せずに、該ポリヌクレオチドが非機能化および/または抑制された細胞を提供することも可能である。これは特異的阻害剤を用いることにより行われる。かかる阻害剤の例としては、ポリヌクレオチドの転写を阻止するか、または翻訳、発現を阻止するか、または翻訳後修飾を破壊する作用薬が挙げられる。あるいは、阻害剤は遺伝子産物の分解を増加する作用薬(例えば、特定のタンパク分解酵素)であってもよい。同様に、阻害剤は、中和抗体(例えば抗2031 OR抗体)などのポリヌクレオチド産物の機能化を阻止する作用薬であってもよい。阻害剤はまた、アンチセンスオリゴヌクレオチド、または遺伝子の発現またはタンパク質の安定性および/もしくは機能を抑制する合成化学物質であってもよい。阻害剤はまた、2031 ORと相互作用してその機能を阻止するタンパク質であってもよい。阻害剤はまた、RNA干渉により抑制を生起するRNA分子であってもよい。一実施形態において、RNA干渉を生起するアンチセンスポリヌクレオチドまたはRNA分子は本発明のポリヌクレオチドである。
【0098】
さらなる態様によれば、本発明のタンパク質に対して免疫特異性を示す抗体を提供する。該抗体は診断試薬として用いることができる。
【0099】
該抗体はモノクローナルであってもまたはポリクローナルであってもよく、そしてマウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウマ、ヤギまたはロバに対して産生したものでもよい。該抗体は、1つのまたは全てのタンパク質に対して一緒に産生したものでもよく、あるいはタンパク質分解または組換え断片に対して産生したものでもよい。
【0100】
本発明の目的のため、用語「抗体」には、特に断らない限り、本発明のタンパク質と結合するフラグメントが含まれる。かかるフラグメントとしては、Fv、F(ab')およびF(ab')2フラグメント、ならびに一本鎖抗体が挙げられる。さらに、該抗体およびそのフラグメントは、キメラ抗体、CDRグラフト抗体またはヒト化抗体であってもよい。
【0101】
投与
いずれの本明細書に記載の治療用物質(例えば、タンパク質、ポリヌクレオチドまたはモジュレーター)の製剤も、物質の性質および治療する条件などの因子に依存するであろう。いずれのかかる物質も様々な剤形で投与することができる。投与は、経口(例えば錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁剤、散剤または顆粒剤として)、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、経皮または輸液技法によって行うことができる。該物質はまた、座剤として投与することもできる。医師はそれぞれの特定の患者に対して要求される投与経路を決定することができるであろう。
【0102】
典型的には、該物質を製薬上許容される担体または希釈剤を用いて使用するように製剤する。製薬担体または希釈剤は、例えば等張性溶液でありうる。例えば、固体の経口剤形は、活性化合物と共に、希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、ショ糖、セルロース、コーンスターチまたはポテトスターチ;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤;例えばデンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;脱凝集剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはグリコール酸ナトリウムデンプン;発泡混合物;染料;甘味剤;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩;および、一般的に、医薬製剤に用いられる無毒性で薬理学的に不活性な物質を含有することができる。かかる医薬調製物は、公知の方法で、例えば、混合、造粒、製錠、糖衣、またはフィルムコーティングのプロセスにより製造することができる。
【0103】
経口投与用の液状分散剤はシロップ剤、乳剤および懸濁剤でありうる。シロップ剤は、担体として、例えば、ショ糖、またはグリセリンとショ糖、および/またはマンニトール、および/またはソルビトールを含有してもよい。懸濁剤および乳剤は、担体として、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含有してもよい。筋肉内注射用の懸濁剤または溶剤は、活性化合物と一緒に、製薬上許容される担体、例えば、無菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えばプロピレングリコール、および、所望であれば、好適な量の塩酸リドカインを含有してもよい。
【0104】
静脈内注射または輸液用の溶剤は、担体として、例えば無菌水を含有するか、または好ましくは無菌の水性等張生理食塩水溶液の形態であってもよい。
【0105】
治療上有効で無毒な量の物質を投与する。用量は様々なパラメータ、とりわけ、使用する物質;治療する患者の年齢、体重および状態;投与経路;ならびに所要の治療計画に応じて決定することができる。医師はさらに、いずれかの特定の患者に対する所要の投与経路および投与量を決定することができるであろう。典型的な日用量は、具体的な阻害剤の活性、治療する被験者の年齢、体重および状態、疾患のタイプおよび重篤度ならびに投与の頻度および経路に応じて、体重1kg当たり約0.1〜50mg、好ましくは約0.1mg/kg〜10mg/kg体重である。好ましくは、日用量レベルは5mg〜2gである。
【0106】
農業用途
本発明の方法により同定したモジュレーターは、真菌感染症を予防または治療する目的で植物に投与することができる。該モジュレーターは通常、1以上の農芸的に許容される担体または希釈剤と一緒に組成物の形態で適用し、処理する農場または植物にさらなる化合物と同時にまたは続いて施用することができる。
【0107】
本発明のモジュレーターは、製剤業界で慣用される担体、界面活性剤または施用増進助剤と一緒に施用することができる。好適な担体および希釈剤は、製剤技術で通常使用される物質、例えば天然または再生鉱物、溶媒、分散剤、湿潤剤、粘着付与剤、結合剤または肥料である。
【0108】
本発明のモジュレーターまたはそれらを含有する農芸化学的組成物を施用するための好ましい方法は葉施用である。施用数および施用率(rate of application)は真菌感染の強度に依存する。しかし、活性成分はまた、植物の土地に液状組成物を含浸させることによりまたは化合物を固体剤形、例えば顆粒剤形で土壌に施用すること(土壌施用)により、土壌経由で根を通して植物に浸透させることもできる(全身作用)。活性成分はまた、種子に活性成分を含有する液状製剤を含浸させるまたは種子を固体製剤によりコーティングするのいずれかによって、種子に施用することもできる(コーティング)。特別な場合には、さらなるタイプの施用、例えば、植物茎または芽の選択的処理も可能である。
【0109】
活性成分は無修飾の形態で、または、好ましくは、製剤業界で慣用される助剤と一緒に使用し、それ故に公知の方法で乳化可能な濃縮物、コーティング可能なペースト、直接散布可能なまたは希釈可能な溶液、希釈乳液、水和性粉末、可溶性粉末、微粉、顆粒、およびまた、カプセル封入物(例えば、ポリマー物質中)に製剤する。組成物の性質と同様に、施用の方法、例えば吹き付け、噴霧、散布、撒布または注入(pouring)は、意図する目的および支配的環境に応じて選択する。好都合な施用率は、通常、1ヘクタール(「ha」、ほぼ2.471エーカー)当たり活性成分(a.i.)50g〜5kg、好ましくは100g〜2kg a.i./ha、最も好ましくは200g〜500g a.i./haである。
【0110】
活性成分および、適宜、固体または液体助剤を含有する製剤、組成物または調製物は、公知の方法で、例えば、活性成分を展開剤、例えば溶媒、固体担体および、適宜、界面活性化合物(界面活性剤)とともに均一に混合および/または粉砕することにより調製する。
【0111】
好適な溶媒としては、芳香族炭化水素、好ましくは8〜12個の炭素原子を有する部分、例えば、キシレン混合物または置換されたナフタレン、フタル酸エステル、例えばフタル酸ジブチルまたはフタル酸ジオクチル、脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサンまたはパラフィン、アルコールおよびグリコールとそれらのエーテルおよびエステル、例えばエタノール、エチレングリコール、モノメチルまたはモノエチルエーテル、ケトン、例えばシクロヘキサノン、強極性溶媒、例えばN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドもしくはジメチルホルムアミド、ならびにエポキシ化植物油、例えばエポキシ化ヤシ油もしくはダイズ油;または水が挙げられる。
【0112】
散布剤および分散可能な粉末用に使用される固体担体は、通常、天然鉱物フィラー、例えば方解石、滑石粉、カオリン、モンモリロナイトまたはアタパルガイトである。物理的特性を改良するために、高分散化したケイ酸または高分散化した吸着剤ポリマーを加えることもできる。好適な粒状吸着性担体は多孔質タイプ、例えば軽石、砕いたレンガ、海泡石またはベントナイトであり;好適な非吸着性担体は方解石または砂などの材料である。さらに、無機または有機質の予め造粒した多種類の材料、例えば、とりわけドロマイトまたは粉末化した植物遺体を用いることができる。
【0113】
好適な界面活性化合物は、製剤に用いる活性成分の性質に応じて、優れた乳濁化、分散化および水和特性を有する非イオン、陽イオンおよび/または陰イオン界面活性剤である。用語「界面活性剤」はまた、界面活性剤の混合物も含むと解釈しうる。
【0114】
好適な陰イオン性界面活性剤は、水溶性石鹸および水溶性合成界面活性剤化合物の両方でありうる。好適な石鹸は、高級脂肪酸(10〜22個の炭素原子鎖)のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または無置換のもしくは置換されたアンモニウム塩、例えばオレイン酸もしくはステアリン酸、またはヤシ油もしくは獣脂油から得られる天然脂肪酸混合物のナトリウムまたはカリウム塩である。脂肪酸メチルタウリン塩も使用することができる。
【0115】
しかし、さらにしばしば、いわゆる合成界面活性剤が使用され、とりわけ脂肪族スルホン酸塩、脂肪族硫酸塩、スルホン化ベンズイミダゾール誘導体またはアルキルアリールスルホン酸塩が使用される。脂肪族スルホン酸塩または硫酸塩は通常、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または無置換のもしくは置換されたアンモニウム塩の形態であり、8〜22個の炭素のアルキル基(アルキル基のアルキル部分も含む)を有し、例えば、リグノンスルホン酸の、ドデシル硫酸塩の、または(天然脂肪酸から得られる)脂肪族アルコール硫酸塩混合物のナトリウムまたはカルシウム塩の形態である。これらの化合物はまた、脂肪族アルコール/エチレンオキシド付加化合物の硫酸エステルおよびスルホン酸の塩も含む。該スルホン化ベンズイミダゾール誘導体は、好ましくは2つのスルホン酸基および1つの8〜22個の炭素原子を含有する脂肪酸基を有する。アルキルアリールスルホン酸塩の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸の、またはナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物のナトリウム、カルシウムまたはトリエタノールアミン塩である。また、対応するリン酸塩、例えばp-ノニルフェノールと4〜14モルのエチレンオキシドとの付加化合物のリン酸エステルの塩も好適である。
【0116】
非イオン界面活性剤は、好ましくは、脂肪族もしくは脂環族アルコール、または飽和もしくは不飽和脂肪酸、およびアルキルフェノールのポリグリコールエーテル誘導体であって、ここで、上記誘導体は3〜30個のグリコールエーテル基、ならびに(脂肪族)炭化水素部分に8〜20個の炭素原子およびアルキルフェノールのアルキル部分に6〜18個の炭素原子を含有する。
【0117】
さらなる好適な非イオン界面活性剤は、ポリエチレンオキシドと、ポリプロピレングリコール、エチレンジアミンプロピレングリコールおよび(アルキル鎖に1〜10個の炭素原子を含有する)アルキルポリプロピレングリコールとの水溶性付加化合物であって、上記付加化合物は20〜250個のエチレングリコールエーテル基および10〜100個のプロピレングリコールエーテル基を含有する。これらの化合物は通常、プロピレングリコール1ユニット当たり1〜5個のエチレングリコールユニットを含有する。
【0118】
非イオン界面活性剤の代表例は、ノニルフェノールポリエトキシエタノール、ヒマシ油ポリグリコールエーテル、ポリプロピレン/ポリエチレンオキシド付加化合物、トリブチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコールおよびオクチルフェノキシエトキシエタノールである。ポリオキシエチレンソルビタンおよびトリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステルも好適な非イオン界面活性剤である。
【0119】
陽イオン界面活性剤は、好ましくは、N-置換基として少なくとも1つのC8-C22アルキル基、および、さらなる置換基として、低級の無置換またはハロゲン化アルキル、ベンジルまたは低級ヒドロキシアルキル基を有する四級アンモニウム塩である。塩は好ましくは、ハロゲン化物、メチル硫酸塩またはエチル硫酸塩の形態であり、例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリドまたはベンジルジ(2-クロロエチル)エチルアンモニウムブロミドである。
【0120】
製剤の業界で慣用される界面活性剤は、例えば、“McCutcheon's Detergents and Emulsifiers Annual”, MC Publishing Corp. Ringwood, New Jersey, 1979、およびSiselyおよびWood, “Encyclopaedia of Surface Active Agents,” Chemical Publishing Co., Inc. New York, 1980に記載されている。
【0121】
農芸化学組成物は通常、約0.1〜約99%、好ましくは約0.1〜約95%、そして最も好ましくは約3〜約90%の活性成分、約1〜約99.9%、好ましくは約1〜99%、そして最も好ましくは約5〜約95%の固体または液体助剤、および約0〜約25%、好ましくは約0.1〜約25%、そして最も好ましくは約0.1〜約20%の界面活性剤を含有する。市販製品は濃縮物として製剤することが好ましいものの、最終消費者は通常、希釈した製剤を使用するであろう。
【0122】
本明細書に記載した特徴の全てを、上記態様のいずれかといずれの組み合わせにでも組合わせることができる。
【0123】
以下に、本発明の実施形態を、添付図面を参照して、実施例として説明する。
【実施例1】
【0124】
Aspergillus fumigatusの必須遺伝子の同定
特許WO 00177295A1に記載のmycobank技法に次の改変を加え、これを用いて、A. fumigatusゲノムの必須領域を同定した。
【0125】
再半数体化(re-haploidisation)(1.6節)
24頁11〜18行: 分生子(A. fumigatus)を、安定した二倍体形質転換体コロニーから採集し、そしてほぼ3x104個の胞子を用いて1mg/ml FPAを含有する1mlのSABブロスに接種した。この培養物を37℃にて20時間、振盪しながら(200rpm)インキュベートした。100μlの該培養物を0.2mg/ml FPAを含有する完全培地上にまいて、37℃で3日間または急速に増殖するセクターが現れるまでインキュベートした。分生子を各セクターから採集し、硝酸塩、亜硝酸塩およびヒポキサンチン培地上にプレーティングし、得られる分生子の窒素利用プロファイルを評価した。親株の窒素利用プロファイルを備えたコロニーは二倍体の一倍体への分裂を示した。44個の一倍体セクターを形質転換体2031から単離した。単離した一倍体は、hph遺伝子が機能に必要なゲノムの部分中に挿入されたことを示すハイグロマイシン耐性がなかった。
【0126】
形質転換(1.7節):
25頁9行: HindIIIを用いて線状化したプラスミドpAN7-1を形質転換ベクターとして用いた。PAN7-1はハイグロマイシン耐性を与えるhph遺伝子を保持する。
【0127】
25頁17〜20行:1mlの冷YEDをキュベットに加えて、37℃で1時間インキュベートした。アリコートを選択寒天(250μg/mlハイグロマイシンの入った完全培地)上にまいた。選択培地上で増殖するコロニーは推定形質転換体とみなした。
【0128】
挿入点は31頁5〜17行に概説されたプラスミドレスキュー法を用いて同定した。挿入部位をPCRを用いて確証した。プラスミドレスキューデータから得た配列を用いてpAN7-1の配列内に1つのプライマーを設計しかつ挿入点近くの予想配列内に1つの相補プライマーを設計した。二倍体2031 ORから単離したゲノムDNAを鋳型として用いた。
【0129】
得られるDNA配列(実験2031、pAN7.1配列上流の175塩基を取り除いたもの)は挿入部位の直ぐ下流のgDNA配列に相当し、配列番号45として示した。
【実施例2】
【0130】
必須遺伝子の特徴決定
2.1ゲノム分析
TIGR A. fumigatus データベース(w ww.TIGR.org)を、上記実施例1で同定した配列番号45の配列を用いて検索し(blastn)、コンティグ4798との一致(E値4.6e-148)を同定した。コンティグ配列の適当な領域を、w ww.tigr.orgからダウンロードし、Genscan(genes.mit.edu/GENSCAN.html;Settings;organism = vertebrate;Suboptimal exon cutoff = 1.00)を用いて遺伝子予測を実施した。
【0131】
ゲノムからの遺伝子の最初の予測は不正確なプロセスであることが知られており(Burset, M. および Guigo, 1996, Genomics, 34, 353-367)、特に(本事例のように)使用するプログラムが検証するゲノムに特定して訓練されていない場合にそうである。従って、その予想を注意深く検証し、いずれかの予想された遺伝子をいずれかの相同タンパク質と比較し、そして真菌性遺伝子構造の取扱いの知識を利用することにより確かな予想に到達することが必要である。そこで、予想された遺伝子をblastp(h ttp://blast.genome.ad.jp/)、マルチプルアラインメントプログラムClustalX(Thompsonら, 1997, Nucleic Acids Research, 24:4876-4882)、およびアラインメントエディター/ビュアーAlign(Hepperle, D., 2001: Multicolor Sequence Alignment Editor. Institute of Fresh Water Ecology and Inland Fisheries, 16775 Stechlin, Germany)を用いて、類似配列と比較した。遺伝子構造を可視化し、Artemis(h ttp://www.sanger.ac.uk/Software/Artemis/;Rutherfordら, 2000, Bioinformatics 16, 944-945)を用いて改変した。
【0132】
挿入部位に隣接する遺伝子は、配列番号1に示したゲノム配列の塩基299〜469(エキソン1)および塩基520〜1618(エキソン2)に対応した。該遺伝子に対するタンパク質配列を配列番号3に示す。挿入部位は、該遺伝子の5'ATG開始コドンの上流735塩基であった。
【0133】
h ttp://blast.genome.ad.jp/におけるタンパク質データベースの検索によって、タンパク質配列番号3がNADH依存性フラビンオキシドレダクターゼファミリーのメンバーであることが示された。このタンパク質を今後、2031 ORオキシドレダクターゼ(2031 OR;mycobank実験2031に由来する)と称する。他の2031 OR様タンパク質も同定した(実施例4.1を参照)。NADH依存性フラビンオキシドレダクターゼファミリーにはまた、S. cerevisiaeおよび他の真菌由来の旧黄色酵素(OYE)も含まれるが、2031 ORはOYEと区別することができる。
【0134】
図1に、A. fumigatus由来の2031 ORアミノ酸配列ならびに他の真菌および細菌由来の近縁ORのマルチプルアラインメントを示す(実施例4も参照)。領域1〜11はOR間で保存されたアミノ酸を意味する。
【0135】
真菌性2031 ORは次の通りである:配列番号3、6および8、A. fumigatus;配列番号10、A. nidulans;配列番号12および14、C. albicans;配列番号16および19、N. crassa;配列番号22および44、M. grisea;配列番号24(NP_595868)、S. pombe;配列番号27、C. trifolii;配列番号30、33および35、F. sporotrichioides;配列番号38および83、F. graminearum;配列番号40および42、M. graminicola;配列番号85、U. maydis。
【0136】
2031と類似の細菌性ORは次の通りである:T44612(Pseudomonas putida)、配列番号86;NP_625402(Streptomyces coelicolor)、配列番号87;NP_295913(Deinococcus radiodurans)、配列番号88;AF320254(Azoarcus evansii、配列番号89)。
【0137】
旧黄色酵素ファミリー(元もと、S. cerevisiaeで同定された)に類似した真菌性ORは次の通りである:A. fumigatus、Af4875およびAf4961、それぞれ配列番号90および91;C. albicans、Ca2460およびA36990、それぞれ配列番号92および93;N. crassa、Nc4452、配列番号94;S. cerevisiae、OYE1、OYE2およびOYE3、それぞれ配列番号95〜97。
【0138】
配列番号3以外のORを同定した配列検索およびマルチプルアラインメントを構築する方法の詳細は、下記の実施例4に記載した。
【0139】
図2において、A. fumigatus由来の2031 ORのヌクレオチド配列ならびに他の真菌および細菌由来の近縁2031 ORのマルチプルアラインメントを示す(実施例4も参照)。領域1〜11は、アミノ酸レベルにおける2031 OR間で保存されたアミノ酸を意味する。真菌性2031 ORは次の配列番号である:配列番号1、2、4、5、および7、A. fumigatus;配列番号9、A.nidulans;配列番号11および13、C. albicans;配列番号15、17および18、N. crassa;配列番号20、21および43、M. grisea;配列番号23(NP_595868)、S. pombe;配列番号25および26、 C. trifolii;配列番号28、29、31、32および34、F. sporotrichioides;配列番号36、37および82、F. graminearum;配列番号39および41、M. graminicola;配列番号84、U. maydis。
【0140】
上記ORを同定した配列検索およびマルチプルアラインメントを構築する方法の詳細は以下の実施例4に記載する。
【0141】
2.2 遺伝子のゲノム配列の決定
以上のバイオインフォマティクス分析の後、2031 ORのゲノム配列を実験的に決定した。
【0142】
2.2.1 細菌株および真菌株
細菌クローニングのために、大腸菌(E.coli)Top10株(Invitrogen)およびselect96株(Promega)を製造業者の指示書に従い使用した。
【0143】
A. fumigatus臨床単離株AF293(ref. No. NCPF7367;the NCPF repository(Bristol, U.K.);the CBS repository(Belgium)またはDr. David Denning's clinical isolate culture collection(Hope Hospital, Salford. U.K.)から公的に入手しうる)が本発明において好ましい株である。AF293は、1993年に侵襲性アスペルギルス症および再生不良性貧血の患者の肺生検から単離された。これがShrewsburyによりPHLSに寄贈された。
【0144】
2.2.2 A. fumigatusゲノムDNAの精製
ゲノムDNA単離用の菌糸材料を得るために、ほぼ107個のA. fumigatus 分生子を50mlのVogel最小培地中に接種し、そして200rpmにて振盪しながら対数期後期まで(18〜24時間)37℃にてインキュベートした。Buckner漏斗と真空ポンプに接続した枝付きフラスコを用いて、菌糸をWhatmann 54濾紙上で吸引濾過して乾燥し、PBS/Tweenを用いて洗浄した。この時点で、菌糸を凍結乾燥し、後日に抽出してもよい。
【0145】
菌糸(新鮮なものまたは凍結乾燥したもの)を、-20℃に冷却した乳鉢中で液体窒素を用いて粉砕して粉末化した。粉砕したバイオマスを氷上の50mlチューブに10mlマークまで移した。次いで、等容積の抽出バッファー(0.7M NaCl;0.1M Na2SO3;0.1M Tris-HCl pH 7.5;0.05M EDTA;1%(w/v)SDS;65℃に予熱)をそれぞれのチューブに加え、ピペットチップを用いて十分に混合し、そして65℃にて20分間、水浴中でインキュベートした。次いで元のバイオマスの容積と等しい容積のクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)を各チューブに加え、チューブを十分攪拌して氷上で30分間インキュベートした。次いでチューブを3,500×gにて30分間遠心分離し、水相を注意深く新しい50mlチューブへ界面を乱さないように移した。
【0146】
等容積のクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)を加え、該チューブをボルテックスで攪拌し、そして氷上で15分間インキュベートした。次いでチューブを3,500×gにて15分間遠心した。この遠心処理の後、大量の沈降物がなお存在する場合には、上清を取り出してクロロホルム:イソアミルアルコール処理するステップを繰り返した。上清を取り出して透明な無菌のOak Ridgeチューブに移した。等容積のイソプロパノールを加えて静かに混合した。チューブを室温で少なくとも15分間インキュベートした。次いでチューブを3,030×gにて10分間4℃で遠心分離してDNAをペレット化した。上清を取り出してペレットを10〜25分間、空気乾燥させた。ペレットを2ml無菌水中に懸濁した。1mlの7.5M酢酸アンモニウムを加え、混合し、そして氷上で1時間インキュベートした。チューブを12,000×gにて30分間遠心分離し、上清を新しいチューブに移し、そして0.54容積のイソプロパノールを加え、混合し、室温にて少なくとも15分間インキュベートした。次いでチューブを5,930×gにて10分間遠心分離し、上清を取り出してペレットを1mlの70%エタノール中で洗浄した。チューブを5,930×gにて10分間遠心分離して全てのエタノールを取り除いた。ペレットを20〜30分間、室温にて空気乾燥し、そして0.5〜1.0mlのTE(10mM Tris-HCl pH 7.5;1mM EDTA)中に懸濁した。最後に、DNAをRNase A(5μlの1mg/mlストック)を用いて処理した。
【0147】
2.2.3 PCR 反応
A. fumigatus AF293 2031 ORの上流および下流領域に対するプライマー;すなわち、クローニングプライマー対、配列番号46(Ox9_for)および47(Ox10_rev)を設計した。次の試薬と条件を用いた:
PCRマスターミックス
10×高忠実度PCRバッファー 5μl
dNTP(clontech:10mM) 1μl
nH2O 39μl
Pfu Ultra Polmerase(2.5U/μl) 1μl
フォワードプライマー(Ox9_for:10pmol/μlストック)1μl
リバースプライマー(Ox10_rev:10pmol/μlストック) 1μl
gDNA(ストックの1:30希釈物) 2μl
PCRサイクル
1) 95℃、2分
2) 95℃、30秒
3) 54℃、30秒
4) 72℃、2分
5) 72℃、10分
6) 8℃、保持。
【0148】
ステップ2〜4を40サイクル行い、そしてPCR産物をゲル上に泳動させた。産物バンド(1.9kb)をゲルから切り出し、Qiagen's QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen Ltd, Boundary Court, Gatwick Road, Crawley, West Sussex, RH10 9AX, UK)を用いて製造業者の指示書に従って精製し、そして30μlの無菌水(BDH分子生物学グレード/無菌フィルター)中に溶出させた。
【0149】
2.2.4 ゲノムDNAのクローニングと配列決定
平滑末端を生じるPfu Ultraポリメラーゼを用いて増幅したので、pGEM Teasyにライゲートする前に「A」オーバーハングを付加する必要があった。12.5μlの精製PCR産物を12.5μlの2×PCR Reddyミックス(ABGene)を用いて70℃にて30分間インキュベートした。次いで該サンプルをQigen Qiaquickゲル抽出キットを用いて精製し、そして30μlの分子生物学グレード水で溶出した。
【0150】
次いでPCR産物をpGEM-Teasy(Promega)中に次のライゲーション混合物を用いてライゲートした:
2×バッファー 5μl、
pGEM Teasy 1μl、
PCR産物 3μl、および
T4DNAリガーゼ 1μl
反応物を一晩4℃にてインキュベートした。
【0151】
次いで2μlのライゲーションミックスをSelect 96細胞(Promega)に加え、そして20分間氷上でインキュベートした。次いで細胞を42℃にて45秒の熱ショックを与え、そして氷上に戻した。250μlの室温SOC培地を加え、細胞を1時間37℃にて220rpmで振盪しながらインキュベートした。次いで50および200μlの量をアンピシリン(100μg/ml)、50μl X-gal(4%)および10μl IPTG(100mM)を含有するLB寒天プレート上へプレーティングし、そして一晩37℃にてインキュベートした。
【0152】
個々の白色コロニーを各形質転換体から拾い、アンピシリン(100μg/ml)を含むLB中に接種し、一晩37℃にて220rpmで振盪しながらインキュベートした。Qiagen miniprepキットを使用して製造業者の指示書に従い、プラスミドDNAを抽出した。1μlのプラスミドDNAをEcoRIを用いて1時間37℃にて消化した。断片サイズを計算して、gDNAについて3Kbおよび1.6Kb、ならびにcDNAについて3Kbおよび1.2Kbの結果を得た。正しい制限消化パターンを示すクローンを、MWG Biotech UK Ltd(Water side House, Peartree Bridge, Milton Keynes, MK6 3BY)にて配列決定した。実験的に決定した2031 ORの配列は、バイオインフォマティクス分析(実施例2)により同定した配列とコード領域が同一であった。
【実施例3】
【0153】
cDNA配列決定および2031 ORに対するRACE
cDNAをクローニングしかつ配列決定することによって2031 ORメッセージの内部配列を実験的に決定し、そして該遺伝子の5'および3'末端をRACE(Rapid Amplication of cDNA Ends(cDNA末端の迅速増幅))により決定した。
【0154】
3.1 cDNAクローニングおよび配列決定
3.1.1 A. fumigatusのRNAおよびcDNAの調製
真菌培養物を実施例2.2.2に記載の通り調製した。培養物を濾過により回収し、次いで2回DEPC処理水を用いて洗浄し、そして50ml Falconチューブに移した。サンプルを液体窒素中で凍結しそして-80℃にて必要時まで貯蔵した。
【0155】
RNAを調製するために、真菌サンプルを液体窒素下で微粉末に粉砕した。次いでRNAを、Qiagen RNeasy Plant Miniキットを用いて、RNeasy Mini Handbook (06/2001, pp.75-78, h ttp://www.qiagen.com/literature/handbooks/rna/rnamini/1016272HBRNY_062001WW.pdf)に記載の糸状真菌から全RNAを単離するためのプロトコルに従い抽出した。次の改変を加えた:ステップ3において、RLCを溶解バッファーとして選択した;ステップ7において、RneasyカラムをRW1の添加後5分間室温にてインキュベートした。オプションのステップ9aを行った;ステップ10において、RNaseを含まない水30μlを加え、サンプルを10分間室温にてインキュベートし、次いで遠心分離した;ステップ11において、溶出ステップを繰り返して全容積60μlのRNAを得た。
【0156】
DNA混入物を、Dnaseの添加により、すなわち、10×DNaseバッファーの存在のもとでRNA 1μg当たりDNase 2μlを用いて、37℃にて2時間インキュベートすることにより、RNAから除去した。DNase処理したRNAを、RNeasy Plant Miniキットを用いて、RNAクリーンアップ用のRNeasy Mini Protocol(RNeasy Mini Handbook 06/2001, pp.79-81)に従いクリーンアップした
上記RNAからcDNAを合成するために、次の反応混合物を調製した:
100ng〜1μgのDNAを含まないRNA、3μlオリゴ(dT)(100ng/μl)、および全容積42μlまでのDEPC-処理水。サンプルをヒートブロック中で65℃にて5分間インキュベートし、その後、これらをゆっくりと室温まで冷却させた。次いで2μl Ultrapure dNTPs、1μl逆転写酵素(Stratascript)および5μl 10×逆転写酵素反応バッファー(Stratascript)を加えた。サンプルを42℃にて1時間インキュベートし、90℃にて5分間変性し、次いで氷上で冷却した。
【0157】
3.1.2 cDNA構築物の作製
PCRを上記cDNAを用いて実施し、プライマー対の配列番号48(Ox1_for)および配列番号49(Ox3_rev)を用いてcDNA断片を作製した。PCR反応は次の試薬と条件を用いて実施した。
【0158】
PCRマスターミックス
10×高忠実度PCRバッファー 5μl
dNTP(clontech:10mM) 1μl
MgSO4(50 mM) 2μl
nH2O 37.8μl
白金TAQポリメラーゼ(5U/μl) 0.2μl
フォワードプライマー(Ox1_for:10pmol/μlストック) 1μl
リバースプライマー(Ox3_rev:10pmol/μlストック) 1μl
cDNA 2μl
PCRサイクル
1) 94℃、5分、
2) 94℃、30秒、
3) 53℃、30秒、
4) 68℃、90秒、
5) 68℃、10分、
6) 8℃、一時停止。
【0159】
ステップ2〜4を全部で40回行った。アンプリコンは1269bpであった。PCR産物を、Qiagen's QIAquick PCR Purificationキット(Qiagen Ltd, Boundary Court, Gatwick Road, Crawley, West Sussex, RH10 9AX, UK)を用いて製造業者の指示書に従い精製した。精製したPCR産物をアガロースゲル上で試験した。
【0160】
PCR産物をpGEM-Teasy中にライゲートし、それを用いてSelect 96細胞を形質転換し、上記2.2.4に記載の通り配列決定した。得られたcDNA配列を配列番号2の塩基115〜1385として示した。
【0161】
3.2 RACE
遺伝子の5'および3'末端を決定するためにRACE(Rapid Amplication of cDNA Ends(cDNA末端の迅速増幅))を、GeneRacerTMキット(Invitrogen;カタログ番号L1502-01)を用いて、本質的に製造業者の指示書の通り実施した。
【0162】
3.2.1 RNAの調製
A. fumigatusバイオマスは、2.2.2に記載の通り調製した。RNAは、FastRNAキット(QBIOgene)を用いて、製造業者の指示書(Revision 6030-999-1J05)に従い、次の修正を行って調製した:ステップ1において抽出に40mgのバイオマスを用いた;ステップ2においてサンプルを20秒間、速度5にて処理し、氷上で3分間インキュベートし、そして再び20秒間、速度5にて処理した;ステップ3においてサンプルを5分間遠心分離した;ステップ5において500μl DIPSを加え、混合し、そして室温にて2分間インキュベートした。サンプルを再び混合し、さらに2分間インキュベートした;ステップ6において250μl SEWS中で2回洗浄を実施した;ステップ7において、ペレットを50μl SAFEバッファーに溶解した。
【0163】
3.2.2 RACE
上に記載の通り調製した1μg全RNAを、10μl反応物中で10ユニットの子ウシ腸管ホスファターゼ(CIP)、1μl 10×CIPバッファーおよび40U RNaseOutTM(DEPC水で10μlに調整する)を用いて50℃にて1時間脱リン酸した。次いでサンプルを、DEPC水を用いて100μlに調整し、そしてRNAを100μl(25:24:1)フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールを用いて抽出した。次いでRNAを、2μlムラサキイガイ・グリコーゲン(10mg/ml)、10μl 3M酢酸ナトリウム、pH 5.2および220μl 95%エタノールを加えて沈降させ、そしてサンプルをドライアイス上で10分間かけて凍結させた。RNAを14,500rpmにて20分間、4℃での遠心分離によりペレット化し、70%エタノールを用いて洗浄し、空気乾燥し、そして8μl DEPC水に再懸濁した。
【0164】
脱リン酸したRNA(7μl)を10μl反応液中で、0.5Uタバコ酸ピロホスファターゼ(TAP)、1μl 10×TAPバッファーおよび40U RnaseOutTMを用いて1時間37℃にて脱キャップした。RNAをフェノール:クロロホルムを用いて抽出し、そして上記のように沈降させ、次いで7μl DEPC処理水中に再懸濁した。
【0165】
脱リン酸し、脱キャップしたRNA(7μl)を予めアリコートしたGeneRacerTM RNA Oligo(0.25μg)に加え、そして65℃にて5分間インキュベートした。次いで10μlライゲーション反応を1μl 10xリガーゼバッファー、1μl 10mM ATP、40U RnaseOutTMおよび5U T4 RNAリガーゼを加えて開始し、そして37℃にて1時間インキュベートした。RNAを抽出し、先に記載のように沈降させて11μl DEPC処理水に再懸濁した。
【0166】
第1鎖cDNAは、1μl GeneRacerTM Oligo dTプライマーおよび1μl dNTPミックス(それぞれ10mM)を10μlのライゲートしたRNAに加えることにより調製し、65℃にて5分間インキュベートした。次の試薬;4μl 5×第1鎖バッファー、2 μl 0.1M DTT、1μl RNaseOutTMおよび1μl SuperScriptTMII RT(200U/μl)を12μlのライゲートしたRNAおよびプライマーミックスに加え、そして最初に42℃にて50分間インキュベートし、次いで反応を停止するために70℃にて15分間インキュベートした。2U RNase Hを反応ミックスに加えて37℃にて20分間インキュベートした。
【0167】
5'cDNA末端を増幅するために、50μl PCR反応を、1μlの上記の調製したRACEの準備ができたcDNA、1μl GeneRacerTM 5'プライマー、1μlリバース遺伝子特異的プライマー(配列番号50;Ox6race_rev:5pmol/μlストック)、1μl dNTP溶液(それぞれ10mM)、2μl 50mM MgSO4、5μl高忠実度PCRバッファー、0.5μl Platinum(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ高忠実度(5U/μl)および38.5μl無菌水を用いて開始した。サイクルパラメータを以下の表IIに示した。
【0168】
次いで第2の、ネステッドPCR段階を、上記第1段階からの1μlのRACE cDNA、1μlネステッド5'プライマー(キットと共に供給された)、1μlリバース遺伝子特異的プライマー(配列番号50;Ox6race_rev:5pmol/μlストック)、1μl dNTP溶液(それぞれ10mM)、2μl 50mM MgSO4、5μl高忠実度PCRバッファー、0.5μl Platinum(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ高忠実度(5U/μl)および38.5μl無菌水を用いて開始した。サイクルパラメータは以下の表IIに示した。
【0169】
3'末端を増幅するために、50μl PCR反応を、1μlの上記の調製したRACEの準備ができたcDNA、1μl GeneRacerTM 3'プライマー(10μM)、1μlフォワード遺伝子特異的プライマー(配列番号51;Ox7race_for:5pmol/μlストック)、1μl dNTP溶液(それぞれ10mM)、2μl 50mM MgSO4、5μl高忠実度PCRバッファー、0.5μl Platinum(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ高忠実度(5U/μl)および38.5μl無菌水を用いて開始した。サイクルパラメータは以下の表IIに示した。
【0170】
次いで第2のネステッドPCR段階を、上記第1段階からの1μlの3'RACE cDNA、1μlネステッド3'プライマー(キットと共に供給された)、1μlリバース遺伝子特異的プライマー(配列番号52;Ox8race_for:5pmol/μlストック)、1μl dNTP溶液(それぞれ10mM)、2μl 50mM MgSO4、5μl高忠実度PCRバッファー、0.5μl Platinum(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ高忠実度(5U/μl)および38.5μl無菌水を用いて開始した。サイクルパラメータは以下の表IIに示した。
【表2】

【0171】
5'および3'RACEは、予想した5'ATGおよび3'停止コドンを確証するとともに、配列番号2の塩基1〜114および1385〜1921に示される5'および3'非翻訳領域を与えた。従って、こうして決定した2031 ORのコード配列は、配列番号1として示したgDNAの塩基299〜469および520〜1618の配列と同一であった。
【実施例4】
【0172】
他の真菌性2031 ORおよび近縁遺伝子の同定
他の真菌および細菌中のA. fumigatus 2031 ORの相同体を、バイオインフォマティクス分析の方法により同定した。バイオインフォマティクスにより同定した配列を用いてプライマーを設計することができ、さらにこれを用いてPCRで2031 OR相同体をコードするDNAを作製することができる。
【0173】
あるいは、縮重PCRを用いて新規遺伝子の配列を得ることができ、次いでこれを用いて目的生物のcDNAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングし、2031 OR相同体を含有するクローンを同定するためのプローブを作製することができる。別の方法として、1つの種由来の遺伝子の断片をプローブとして用いるサザンブロットを利用して第2の種のゲノム中の相同体の存在を同定することができる。次いで同じプローブを用いてcDNAまたはゲノムcDNAライブラリーをスクリーニングすることができる。一度、新規の遺伝子に対応するクローンが同定されれば、それを発現させて該タンパク質の機能の特徴決定を行うことができる。
【0174】
4.1 バイオインフォマティクスによる相同体の同定
PFAM(h ttp://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/)による2031 ORタンパク質配列の分析により、これがOxidored FMNファミリー(PF00724)のメンバー(E値3.6e-57)であることを同定した。このファミリーにはS. cerevisiae および他の真菌のよく特徴決定されている「旧黄色酵素」タンパク質が含まれる。
【0175】
A. fumigatus 2031 OR配列の相同体をデータベース検索により同定した(表III参照)。必要に応じて、一致するコンティグをダウンロードし、実施例2に記載の通り、Genscan分析、blast検索、アラインメントおよびArtemisによる可視化により、遺伝子をゲノムDNAから予測した。2031 ORおよび近縁遺伝子に対するタンパク質およびヌクレオチドのマルチプルアラインメントを作製した(図1および2)。
【0176】
タンパク質および核酸のマルチプルアラインメントは、ClustalX(Thompsonら, 1994, Nucleic Acids Research, 22, 4673-4680;Thompsonら, 1997, Nucleic Acids Research, 24, 4876-4882)などのプログラムの手法によりおよび/またはAlign(Hepperle, D., 2001: Multicolor Sequence Alignment Editor. Institute of Fresh Water Ecology and Inland Fisheries, 16775 Stechlin, Germany)などの手動型アラインメントエディターを用いて作製する。
【表3】

【0177】
1blastスコアに対するE値は、脚注で特に断らない限り、2031 ORタンパク質を用いた検索を意味する。
2cDNAを作製したのは、遺伝子が多重エキソンを含有する、またはESTの配列決定からの起こり得るフレームシフトエラーが存在する、または所与のESTが非コード鎖であるのいずれかの場合である。
3http://www.TIGR.orgにおけるNP_595868を用いたA. fumigatusゲノムの検索(tblastn)。
4ローカルコンピューターで行ったA. nidulansゲノムの検索(tblastn)。
5http://www-sequence.stanford.edu/group/candida/における、C. albicansゲノムの検索(blastp)。
6http://blast.genome.ad.jpにおける、非重複(non-redundant)タンパク質配列データベース(nr)の検索(blastp)。
7http://www.broad.mit.edu/annotation/fungi/neurospora/における、N. crassa 予想タンパク質の検索(blastp)。
8http://www.broad.mit.edu/annotation/fungi/magnaporthe/における、M. grisea 予想タンパク質の検索(blastp)。
9S. cerevisiaeのorfタンパク質の検索(h ttp://mips.gsf.de/cgi-bin/blast/blast_page?genus=yeast)。
10http://cogeme.ex.ac.uk/blast.htmlにおける、COGEME病原性真菌ESTデータベースの検索(tblastn、最大E値=0.1)。
11ローカルコンピューターで配列番号1を用いて行った、NCBI非重複タンパク質データベースの検索(blastx)。細菌性タンパク質に対するヒットの選択されたセットだけを示した。
12ローカルコンピューターで行ったF. graminearum予想タンパク質の検索(blastp)。
13ローカルコンピューターで行った、U. maydisコンティグの検索(tblastn)。
【0178】
2031 OR、OYEおよびblast検索から同定したヒットの間の関係を明らかにするために系統学的分析を実施した。PHYLIPプログラムセット(Felsenstein, Felsenstein, J., 2002. PHYLIP(Phylogeny Inference Package) version 3.6a3、著者による頒布、Department of Genome Sciences, University of Washington, Seattle)を利用した。分析に用いたマルチプルアラインメントは、本質的に、図1に示したものであり、部分配列、ギャップ領域および信頼性のないアラインメントセクションは排除されている。距離マトリックスはPROTDISTを用いてJones-Taylor-Thorntonモデルにより作製し、系統樹(tree)はFITCHを用いてグローバル再配置(global rearrangements)および10ジャンブル(jumble)の入力順序(input order)により推測した。100ブートストラップ複製を、SEQBOOT、上記PROTDISTを用いて作製した距離マトリックス、NEIGHBOURを用いて推測した系統樹を用いて作製し、次いでブートストラップ値およびコンセンサス系統樹をCONSENSEを用いて計算した。系統樹をTREEVIEW(Page, 1996 Page, R. D. M., 1996. 「TREEVIEW:パソコン上の系統樹表示への応用(TREEVIEW: An application to display phylogenetic trees on personal computers)」 Computer Applications in the Biosciences 12, 357-358.)を用いて見た。
【0179】
系統学的分析によって、良いブートストラップ値により支持されるA. fumigatus 2031 ORおよび他酵素を含む系統分岐群(clade)を同定した。この集団は、同じく良いブートストラップ値により支持されるOYE酵素を含有する系統分岐群から区別することができた。2031 ORおよびOYEの両方の細菌性相同体(示してない)も同定した。従って、本発明者らが同定した2031 OR相同体のセットは、驚くべきことに、十分特徴決定されたOYEファミリーと異なり、そしてこれがA. fumigatus 2031 ORにとって必須であることが実証されたことにより抗真菌剤に対する潜在的標的のセットであることが明らかになった。
【0180】
4.2 縮重PCRによる相同体の同定
4.2.1. 目的生物由来のゲノムDNAの調製
真菌培養物を、特定種に好適な方法を用いて調製した。例えば、AspergillusおよびCandida種、Cryptococcus neoformans、Fusarium solaniおよびTrichophyton種はサブローデキストロース寒天上で30〜35℃にて維持した。Leptosphaeria nodorumは麦芽寒天培地(30g/L麦芽エキス;15g/L Bacto寒天、pH 5.5)上で、24.0℃;Magnaporthe griseaはオートミール寒天(6.7g/L寒天、53.3g/Lインスタント・オートミル)上で25.0℃、またはコーンミール寒天(Difco 0386)上で26.0℃;Phytophthora capsici培養はV-8寒天上で24℃にて維持した。Pyricularia oryzae培養はコメ糠寒天上で24℃にて白色蛍光灯(12時間人工日)のもとで維持し、7〜14日毎に菌糸プラグの新しいプレートへの移送により継代培養した。Pythium ultimum培養はPDA上で24℃にて維持し、7日毎に気中菌糸の新しいプレートへの接種針を用いた移送により継代培養した。Rhizoctonia solani培養はPDA上で24℃にて蛍光(12時間人工日)のもとで維持し、7日毎に菌糸プラグの新しいプレートへの移送により継代培養した。Ustilago maydis培養はPDY寒天上で30℃にて暗所で維持し、再度画線培養により継代培養した。
【0181】
ゲノムDNAは標準的方法、例えばQiagen DNeasy Plantキットを用いて、または実施例2.2に記載の方法を用いて培養物から調製した。
【0182】
4.2.2 PCR
プライマー(配列番号53および54)を、図2に領域2および6として示した2031 OR特異的領域上に設計した。しかし、当業者は、代わりのプライマーも試みる必要がありうることを理解するであろう。上記プライマー対を用いるPCR反応を次の通り構成した:
12.5μl 2×ReddyMix PCRマスターミックス(ABIgene)、
1μl プライマー配列番号53(5pmol)、
1μl プライマー配列番号54(5pmol)、
鋳型gDNA(1.5〜4μg/ml)、および
ヌクレアーゼを含まない水を加えて最終容積25μlとする。
【0183】
反応は次の条件を用いてBiometraパーソナルPCRサイクラーで実施する(Thistle Scientific Ltd, DFDS House, Goldie Road, Uddington, Glasgow, G71 6NZ):
ステップ1 95℃ 5分、
ステップ2 95℃ 1分、
ステップ3 53℃ 1分30秒、
ステップ4 68℃ 2分30秒、
ステップ5 72℃ 10分、
ステップ6 4℃ 保持。
【0184】
ステップ2〜4は30サイクル実施する。(残留酵素およびヌクレオチドを除去するために)PCR産物をQiagen's QIAquick PCR Purificationキット(Qiagen Ltd, Boundary Court, Gatwick Road, Crawley, West Sussex, RH10 9AX, UK)を用いて製造業者の指示書に従い精製し、そして40μlの無菌水(BDH分子生物学グレード/フィルター滅菌)中に溶出させる。精製したPCR産物を1%アガロース上で試験する。
【0185】
当業者は、ある産物作製を試みる際に、縮重PCRがいくつかのパラメータの変更が必要であることを理解するであろう。これらのパラメータには、プライマー濃度、鋳型濃度、Mg2+イオンの濃度、伸長およびアニーリング時間、およびアニーリング温度が含まれる。温度の変更は勾配PCR装置の利用によって対応することができる。
【0186】
精製したPCR産物をpPEM-Teasy(Promega)中にクローニングし、次いでXL10-Gold(登録商標)Kan超コンピテント大腸菌(E.coli)細胞中に製造業者の指示書に従い形質転換することができる。次いで形質転換反応物を、アンピシリン(100μg/ml)、50μl X-gal(4%)および10μl IPTG(100mM)を含有するLB寒天プレート上にプレーティングする。一晩37℃でのインキュベーションの後に、それぞれの形質転換から得た個々の白色コロニーを、アンピシリン(100μg/ml)を含有するLBブロス中に継代培養する。一晩37℃で振盪しながらインキュベートした後に、プラスミドをQiagen遠心ミニプラスミド抽出キットを用いて製造業者の指示書に従い抽出し、そして全長配列決定のために送付する。
【0187】
4.3 サザンブロットによる相同体の同定
4.3.1 ゲノムDNAの消化とナイロン膜への転写
目的真菌からのゲノムDNAを適当な制限酵素を用いて消化し、0.8%アガロースゲル上を泳動させる。次いでゲルを250mM HCl中に10分間を越えないよう振盪しながら室温で浸し、その後、ゲルを無菌RO水を用いてすすいだ。
【0188】
DNAのナイロン膜上への転写は0.4M NaOHを用いて行った。転写プロトコルおよび装置は周知であり、例えばSambrookら, (1989), Molecular Cloning, 2nd Edition., Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。転写後、120℃にて30分間のベーキングにより、DNAを膜上に固定した。次いで膜を直ぐ使用してもよいし、または後の使用に備えて乾燥貯蔵してもよい。
【0189】
4.3.2. プローブの調製
プローブは、DNAの制限酵素消化または適当な領域のPCRのいずれかにより作製する。好適なプローブは、プライマー対配列番号53および54、A. fumigatusゲノムDNA、および4.2.2に記載の方法を用いて、PCRにより作製することができる。
【0190】
DNA鋳型1μgを分子生物学グレードの水に希釈して全容積16μlとし、沸騰水浴中で10分間変性し、そして速やかに氷上で冷却する。次いで、4μl DIG-High Prime(1mM dATP、1mM dCTP、1mM dGTP、0.65 mM dTTP、0.35mMアルカリ易分解性ジゴキシゲニン-11-dUTP、1U/μlラベリンググレードのクレノウ酵素、5×反応バッファーを含む50%(v/v)グリセロール)を加え、そして反応物を37℃にて20時間インキュベートし、その後、2μlの200mM EDTA pH8.0を加えてラベリング反応を停止させる。ラベリング効率はDIGラベリングした対照DNAとの比較により計算する。
【0191】
4.3.3. プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション
膜を、膜表面積100cm2当たりプレハイブリダイゼーション溶液(DIG Easy Hyb, Roche)20mlを含有するハイブリダイゼーションチューブ中に置いて、42℃にて2時間、ハイブリダイゼーションオーブン内でプレハイブリダイズした。DIGラベリングしたプローブを、沸騰水浴中で10分間加熱することにより変性し、次いで直接氷上で冷却した。次いでプローブをほぼ200ng/mLハイブリダイゼーション溶液(Easy Hyb, Roche;ハイブリダイゼーション1回当たり少なくとも5mLのハイブリダイゼーション溶液を必要とする)に希釈する。プレハイブリダイゼーション溶液をハイブリダイゼーションチューブから廃棄し、DIGラベリングしたプローブを含有するハイブリダイゼーション溶液を速やかに加える。次いで、ハイブリダイゼーションを一晩42℃にてハイブリダイゼーションオーブン内で進行させる。最適温度はプローブサイズおよび標的配列との相同性に依存し、実験的に決定した。
【0192】
ハイブリダイゼーションの後、膜を42℃にて2回、1回洗浄当たり5分間、50mlのストリンジェンシー洗浄溶液(3×SSC、0.1% SDS;ここで20×SSCバッファーは3M NaCL、300mMクエン酸ナトリウム、pH 7.0である)を用いて洗浄し、次いで室温にて2回、1回洗浄当たり15分間、50mlのストリンジェンシー洗浄溶液中で洗浄した。これらの洗浄のストリンジェンシーは、SSC濃度を6×SSC、0.1%SDSに増加するおよび/または洗浄温度を低下することによって、低下させることができる。
【0193】
4.3.4. 検出
膜を20mL洗浄バッファー(100mMマレイン酸、150mM NaCl;pH 7.5;0.3%v/v Tween 20)中で洗浄し、その後、逐次に20mLブロッキング溶液(100mMマレイン酸、150mM NaCl、pH 7中に溶解した核酸ハイブリダイゼーション用の1% w/vブロッキング試薬、Roche)を用いて、室温にて、30分間インキュベートし;1:5,000でブロッキングバッファー中に希釈した抗DIGアルカリホスファターゼ(Roche)を用いて、室温にて、30分間インキュベートし;洗浄バッファーでそれぞれ15分間、室温にて2回洗浄し;検出バッファー(100mM Tris-Hcl、100 mM NaCl;pH 9.5)を用いて、室温にて、2分間インキュベートする。次いで膜を取り出して、アセテートシートの表面上に置き、そしてほぼ0.5 ml(100cm2当たり)のCSPDまたはCDP-starを膜の表面上に加えた。次いで第2のアセテートのシートを膜の表面を覆って置き、そのアセンブリを5分間室温にてインキュベートし、次いでプラスチックバッグに入れてシールした。次いでそのアセンブリをX線フィルムに15分〜1時間曝露する。最適曝露時間は24時間まで曝露時間を増加することにより実験的に決定する。
【0194】
ゲル上にあるバンドが存在することは、目的のゲノムDNA中にある遺伝子が存在することの確証である。バンドの分子量は、遺伝子を含有する制限酵素切断断片のサイズに依存する。
【実施例5】
【0195】
A. fumigatusに感染しているハチノスツヅリガ(wax moth;Galleria melonella)幼虫およびマウスの発現
5.1 感染したハチノスツヅリガ幼虫からのcDNAの調製
ハチノスツヅリガ幼虫は、カンジダ(Candida)感染を研究するための良好なモデル系であることが示されている(Cotterら, 2000, FEMS Immunol Med Microbiol 27, 163-9;Brennanら, 2002, FEMS Immunol Med Microbiol 34, 153-7)。本発明者らは、この昆虫系はまた、アスペルギルス(Aspergillus)感染を研究するための良好な系であることを見出した(D. LawおよびJ. Rooke、作成中の原稿)。
【0196】
5.1.1 増殖とハチノスツヅリガ幼虫の感染
サブローデキストロース寒天上で増殖したA. fumigatus(AF293)の胞子を回収してPBS/Tween 80中に再懸濁させた。胞子を洗浄し、そして10μlの種菌液が感染後3〜4日に試験群の90%を死に到らしめるようにその濃度を調節した(AF293に対するこの濃度は5.0〜7.0×108 cfu/mlである)。種菌液濃度を改良ノイバウエル血球計算盤を用いて評価し、TVC計数により確認した。
【0197】
ハチノスツヅリガ幼虫をLivefood UK(Somerset, UK;w ww.livefood.co.uk)から購入し、感染前に暗所で室温にて木屑中に維持した。健常な幼虫(250mg+/-50mg)を選択して感染直前に4℃にて10分間インキュベートしてこれらを固定した。次いで無菌ハミルトンシリンジを用いて、幼虫に10μl胞子懸濁液(100×ストック)を左最後部前脚のクチクラから注射した。次いで幼虫を無菌ペトリ皿に移した。次の対照も準備した:10μl PBS/Tweenだけを注射した幼虫;10μl熱死滅胞子(20分間100℃のインキュベーションにより死滅)を注射した幼虫;針を刺したが注入しなかった幼虫;および無処理の幼虫。幼虫を30℃にてインキュベートして毎日少なくとも2回モニタリングした。全ての処置と対照は10匹の幼虫のバッチについて行った。幼虫の死および一般健康状態を24時間毎に記録し、死亡したまたは瀕死の幼虫は試験群から取り除いた。
【0198】
5.1.2 Aspergillus fumigatusに感染したハチノスツヅリガ幼虫(Galleria melonella)からの、DNAを含まないRNAの調製
cDNAを次の供給源から調製した:非感染幼虫;A. fumigatusによる感染48時間後(感染早期)の幼虫;A. fumigatusによる感染72時間後(感染後期)の幼虫;熱死滅A. fumigatus胞子に感染させた幼虫;およびサブローデキストロース寒天ブロス中で16時間増殖したA. fumigatus。
【0199】
凍結した幼虫を、予め22℃にて一晩ベーキングした乳鉢と乳棒を用いて液体窒素中で微粉末に粉砕し、RNaseZAPを用いて処理し、DEPC処理(0.1%(v/v)DEPCで1時間攪拌しそして1時間オートクレーブで処理)した水でそそぎ洗いし、そして液体窒素を用いて冷却した。粉砕したサンプルをエッペンドルフチューブに移し(1チューブ当たり50mg未満)、そして全RNAをQiagen RNeasy Plant Miniキットを用いて、RNeasy Mini Handbook(06/2001, Pages 75-78, h ttp://www.qiagen.com/literature/handbooks/rna/rnamini/1016272HBRNY_062001WW.pdf)に記載の糸状真菌から全RNAを単離するプロトコルに従い抽出した。
【0200】
上記プロトコルに次の改変を行った:ステップ3において、600μl RLTをそれぞれ50mgの組織に加えてボルテックスで攪拌した;ステップ4において、サンプルを3分間、最高速度で遠心分離した;ステップ6において、同じ組織からの全てのサンプルを同じRNeasyカラムに適用した;ステップ7において、RNeasyカラムを5分間室温にてRW1の添加後にインキュベートした;任意のステップ9aを2回行った;ステップ10において、30μlのRNaseを含まない水を加え、サンプルを10分間室温にてインキュベートし、次いで1分間、14,000 RPMにて遠心分離した;ステップ11において、溶出ステップを繰り返して全容積60μlのRNAを得た。該RNAのサンプルを1.5%アガロースゲル上で泳動させ、RNAの量を分子マーカーを用いて定量した。次いでRNAを-80℃にて貯蔵した。
【0201】
RNAの一部分を、1μgRNA当たり2μlのRNaseを含まないDNase(Promega)を用いて、10×DNaseバッファー(Promega)の存在のもとで37℃にて4時間、Dnase処理した。次いでRNAをQiagen RNeasy Plant Miniキットを用いて、RNA Cleanup用のRNeasy Miniプロトコル(RNeasy Mini Handbook 06/2001, pages 79-81)(クリーンアップ処理中のRneasy handbookに記載のさらなるDNase処理ステップも含む)に従いクリーンアップした。
【0202】
上記プロトコルに次の改変を行った:任意ステップ5aを実施した;ステップ6において、30μlのRNaseを含まない水を加え、サンプルを10分間室温にてインキュベートし、次いで1分間14,000RPMにて遠心分離した;ステップ7において、ステップ6からの溶出液をRNeasyカラムに移送し、10分間室温にてインキュベートし、次いで1分間14,000RPMにて遠心分離した。DNase処理したRNAのサンプルをアガロースゲルで泳動させ、定量し、そして-80℃にて貯蔵した。
【0203】
5.1.3 DNA混入について、RNAサンプルの点検
RNAサンプル由来のゲノムDNAの不在を検証するために、β-チューブリン遺伝子(配列番号77および78)を増幅するプライマーを用いてPCRを行った。逆転写ステップ不在のもとではgDNAだけが検出され、従ってgDNA混入が示されるであろう。次の反応混合物を準備した:
12.5μl 2×ReddyMix PCRマスターミックス(ABIgene)
1μl 各プライマー(5pmol)
鋳型gDNA(1.5〜4μg/ml)
ヌクレアーゼを含まない水(最終容積25μlになるまで加える)
【0204】
反応は、次の条件を用いて、BiometraパーソナルPCRサイクラー(Thistle Scientific Ltd, DFDS House, Goldie Road, Uddington, Glasgow, G71 6NZ)で実施した:
ステップ1 95℃ 5分、
ステップ2 90℃ 1分、
ステップ3 51℃ 1分、
ステップ4 68℃ 1分、
ステップ5 68℃ 10分、
ステップ6 4℃ 保持
ステップ2〜4を40サイクル実施した。
【0205】
PCR産物が観察された場合にはゲノムDNAが存在するので、該サンプルを再びDNase処理した。もしPCRが生じなければ、サンプル中にDNAは存在しなかった。
【0206】
5.1.4 cDNAの調製
300μgのDNAを含まないRNAと3μlオリゴ(dT)(100 ng/μl)をRNaseを含まない0.5mlミクロ遠心チューブに加え、DEPC処理水を用いて全容積42μlとした。サンプルを混合し、ヒートブロック中で65℃にて5分間インキュベートし、次いでゆっくりと室温まで冷却した。次いで2μl Ultrapure dNTP(それぞれ10mM、Clontech)、1μl stratascript逆転写酵素(Stratagene)および5μl 10×逆転写酵素反応バッファーを加えた。サンプルを42℃にて1時間インキュベートし、90℃にて5分間変性し、次いで氷上で冷却した。サンプルを5〜10μlアリコートとして分注して-20℃にて貯蔵した。
【0207】
5.2 感染マウスからのcDNAの調製
5.2.1 マウスのA. fumigatusによる感染と組織の抽出
次の通り、マウスにAspergillus fumigatusを感染させ、器官を採取した。13匹の雄CD1マウスに免疫抑制薬シクロホスファミド(0.025g/ml;200mg/kg)IVを尾静脈経由で注射した。72時間後、12匹のマウスに0.15mlのAspergillus fumigatus AF293分生子(7.5×105/ml)を注射した。感染の11時間後に4匹のマウスを、過剰量のハロタンを吸入させて犠牲にした。脳、肺、肝および腎を取り出して液体窒素に漬けて凍結し、-70℃にて貯蔵した。さらなる4匹のマウスも感染24時間後におよび48時間後に犠牲にした。
【0208】
RNAをマウス組織から、上記ハチノスツヅリガ幼虫(5.1.2および5.1.3)について記載したように調製した。
【0209】
5.2.2 DNAを含まないRNAからの、cDNAの調製
cDNAはDNAを含まないRNAからPromega逆転写キットを用いて、製品と共に供給されたプロトコル(Technical Bulletin No.099、h ttp://www.promega.com/tbs/tb099/tb099.pdf)に従い調製した。プロトコルに対する改変として、cDNA合成反応を、42℃にて示唆された15分間ではなく60分間インキュベートした。サンプルを5〜10μlアリコートとして-20℃にて貯蔵した。
【0210】
5.3 プライマーの設計と最適化
2031 OR cDNA配列に対するプライマーは、Beacon Designer 2.1(Premier Biosoft, h ttp://www.premierbiosoft.com)を用いて、次のパラメーターを使用して設計した;標的Tm=58±8℃;プライマー長=16〜24;アンプリコン長=75〜150bp。他の全ての設定値はデフォールトとした。二量体または他の二次構造を形成しえないプライマーを選ぶように注意した。アンプリコンの二次構造を、mfold(h ttp://www.bioinfo.rpi.edu/applications/mfold/old/dna/form1.cgi)を用いて計算し、アンプリコンの二次構造が全く無いまたはわずかなプライマーセットを選んだ。得られたプライマーを配列番号79および80として示した。
【0211】
プライマーセットに対する最適アニーリング温度を決定するために、Icycler PCRマシーン(Biorad)上で鋳型としてA. fumigatus AF293ゲノムDNAと、次の反応混合物を用いて、勾配PCRを実施した:
112.5μl Abgene PCR Reddymix、
9μl配列番号79;OXRED 2031F6(5pm/μl)、
9μl配列番号80;OXRED 2031R5(5pm/μl)、
85.5μl H2O、および
9μl AF293 gDNA(10ng/ul)。
【0212】
陰性対照については、gDNAを省いて対応する分だけ水の量を増加した。
【0213】
それぞれのミックスに対して、25μlをマルチウエルプレート上の8個のウエル中にピペッティングし、そして各ウエルを異なる温度(50〜65℃)にて次の条件に従い実施した:
ステップ1 95℃ 5分、
ステップ2 95℃ 1分、
ステップ3 勾配50〜65℃ 1.5分、
ステップ4 72℃ 1分、
ステップ5 72℃ 10分、
ステップ6 8℃ 保持
ステップ2〜4を30サイクル実施した。
【0214】
該PCR産物を2%アガロースゲル上で泳動させた。全ての温度について148bpの正しいサイズの単一バンドがゲル上に見られ、そして最適温度は63℃であることがわかった。
【0215】
5.4 プライマーの種特異性の試験
上記設計のリアルタイムプライマーをさらに、マウス核酸がこれらのプライマーを用いて増幅されないことを保証するために試験した。それぞれ次を含有する4つの反応物を準備した:
12.5μl Abgene Reddymix、
1μl プライマー配列番号79、
1μl プライマー配列番号80および
9.5μl H2O、
ならびに1μl感染マウス腎cDNA(50ngμl;実験);1μl非感染マウス腎cDNA(50ng/μl;非感染対照);1μl AF293 gDNA(10ng/μl;陽性対照);1μl水(陰性対照)のいずれか。
【0216】
次のPCR設定を用いた:
ステップ1 95℃ 5分、
ステップ2 95℃ 1分、
ステップ3 63℃ 1.5分、
ステップ4 72℃ 1分、
ステップ5 72℃ 10分、
ステップ6 8℃ 保持
ステップ2〜4を40回実施した。
【0217】
PCR産物を2%アガロースゲル上で泳動させた。A. fumigatusゲノムDNAは148bp(予想されたサイズ)のバンドを与えたが、非感染または感染マウスcDNAにバンドは見とめられなかった。従って、これらのプライマーは特異性があると思われた。
【0218】
5.5 感染幼虫における発現を検出するリアルタイムPCR
PCR反応を、Biorad iQ SYBR緑色スーパーミックスを用いて次の通り準備した:
14μl プライマー配列番号79、
14μl プライマー配列番号80、
175μl SYBRミックス、および
133μl H2O。
【0219】
72μlの上記ミックスを含有する4つの反応物を準備し、そして3μl H2O;3μl非感染幼虫cDNA(50ng/μl);3μl AF293 gDNA(5ng/μl);または3μl感染幼虫cDNA(50ng/μl)のいずれかを加えた。それぞれの反応液の3×25μlアリコートを、Abgeneマルチウエルプレートに分注し、該プレートを光学用シーリングテープ(Biorad)を用いてシールし、次いでBiorad IcyclerリアルタイムPCRマシーン中に置いた。反応は次の条件を用いて実施した:
ステップ1 95.0℃ 3分、
ステップ2 95.0℃ 30秒、
ステップ3 63.0℃ 30秒
データ採取およびリアルタイム分析の開始
ステップ4 72.0℃ 15秒
ステップ2〜4を60サイクル実施
ステップ5 95.0℃ 30秒、
ステップ6 50.0℃ 30秒、
ステップ7 50.0℃ 10秒。
【0220】
サイクル2から出発して各サイクル後に、90サイクルのステップ7を設定温度を0.5℃だけ増加して実施した。融解曲線データ採取および分析を開始した。
【0221】
結果を表IVおよびVに示す。2031 ORの発現を、Af293 cDNA(Ct=25.8)および感染幼虫(Ct=32.3)の両方で実証した。従って、A. fumigatus培養物および感染幼虫からのA. fumigatusの両方においてメッセージが発現された。陰性および非感染幼虫対照は、プライマー二量体および非特異的産物だけを与える。
【表4】

【0222】
データ解析パラメーター:計算された閾値をユーザー選択閾値7.4で置き換えた:ユーザー選択基線サイクルは2〜10とした。
【表5】

【0223】
融解曲線分析パラメーター;自動ピーク検出の閾値は2.64に設定した。
【0224】
5.6 感染マウス腎cDNAにおける発現を検出するリアルタイムPCR
1μlの感染マウスcDNAを用いる、5.5に記載と同様のリアルタイム実験は増幅を示さなかった(データは示してない)。そこで、感染マウスcDNAの量を増加して、次の条件により実験を実施した:
18μl プライマー配列番号79、
18μl プライマー配列番号80、
225μl SYBRミックス、および
99μl H2O。
【0225】
60μlの上記ミックスを含有する4つの反応物を準備し、そして15μl H2O;3μl非感染マウス腎(50 ng/μl)+12μl H2O;15μl感染マウス腎(感染後48時間)(50ng/μl);または3μl AF293 cDNA(5ng/μl)+12μl H2Oのいずれかを加えた。それぞれの反応液の3×25μlアリコートを、Abgeneマルチウエルプレートに分注し、該プレートを光学用シーリングテープ(Biorad)を用いてシールし、次いでBiorad IcyclerリアルタイムPCRマシーン中に置いた。反応は次の条件を用いて実施した:
ステップ1 95.0℃ 3分、
ステップ2 95.0℃ 30秒、
ステップ3 63.0℃ 30秒
データ採取およびリアルタイム分析を実施した
ステップ4 72.0℃ 15秒
ステップ2〜4を60サイクル実施した
ステップ5 95.0℃ 30秒、
ステップ6 50.0℃ 30秒、
ステップ7 50.0℃ 10秒。
【0226】
サイクル2から出発して各サイクル後に、90サイクルのステップ7を設定温度を0.5℃だけ増加して実施した。融解曲線データ採取および分析を実施した。
【0227】
cDNAにおけるA. fumigatus AF293 2031 ORの発現(Ct=28.8)が見られたが、感染マウス腎反応では3つのうちの2つ(Ct値=34.4、41.2)だけにしか見られなかった(表VIおよびVII)。他の1つの感染マウス腎cDNAの反応産物(ウエルA12)はプライマー二量体または非特異的産物であった(融解曲線上でTm=81℃である)が、正しい2031 OR産物は88.5℃のTmを有する(表VIおよびVII)。陰性および非感染腎対照はプライマー二量体および非特異的産物しか与えなかった。
【表6】

【0228】
計算された閾値を、ユーザー選択閾値5.4で置き換えた。ユーザー選択基線サイクルは2〜10とした。
【表7】

【0229】
自動ピーク検出のための閾値は2.09にセットした。
【0230】
従って、A. fumigatus 2031 ORはハチノスツヅリガ幼虫の感染中に明らかに発現される。一方、2031 ORはマウス腎の感染中に非常に低いレベルでしか発現されない。何故なら、シグナルを得るには鋳型の量を増加しなければならなかったからである。感染中の発現は、該遺伝子産物が抗真菌剤に対する好適な標的となりうることを示唆する。
【実施例6】
【0231】
組換え2031 ORおよび/または断片の発現
機能の詳細な研究を可能にするためおよび阻害化合物のハイスループットスクリーニングを開発する出発点として、組換えタンパク質または断片を発現させた。
【0232】
6.1 cDNA構築物の産生
上記のように調製したcDNAを用いてPCRを実施し、本質的に配列番号3に対応する2031 OR配列をコードするポリヌクレオチドを作製した。PCR反応を、次の反応混合物および条件を用いて行った。全ての試薬はKODキット(Novagen)に存在した。
【0233】
2.5μl 10×PCRバッファー、
5μl dNTPs(2mM)、
2μl MgSO4(25mM)、
1μl プライマーA(5pmol)(配列番号55;SL_OxXa30F5)、
1μl プライマーB(5pmol)(配列番号56;SL-OxXa30R7)、
1μl 鋳型cDNA、
11.5μl ヌクレアーゼを含まない水、および
1μl KODポリメラーゼ。
【0234】
PCR反応は次の条件を用いて実施した:
ステップ1 94℃ 5分、
ステップ2 94℃ 1分、
ステップ3 59.3℃ 1分、
ステップ4 68℃ 1分30秒、
ステップ5 68℃ 10分、
ステップ6 10℃ 保持。
【0235】
ステップ2〜4を40サイクル実施し、PCR産物を、Qiagen's QIAquick PCR 精製キット(Qiagen Ltd, Boundary Court, Gatwick Road, Crawley, West Sussex, RH10 9AX, UK)を用いて製造業者の指示書に従い精製した。精製したPCR産物をアガロースゲル上で試験した。
【0236】
次いで、cDNA断片をpET30 Xa/LICベクター(Novagen)中にクローニングし、Nova Blue化学的コンピテント大腸菌(E.coli)細胞中に形質転換し、そして予熱したカナマイシン(+)選択プレートへプレーティングした。一晩37℃にてインキュベーションの後、カナマイシン耐性コロニーを選択してカナマイシンを含有するLB培地で増殖させた。プラスミドDNAをプラスミドミニキット(Qiagen)を用いて単離した。インサートの存在と正しい方向の確証を構築物の制限酵素分析および配列決定により確認した。
【0237】
正しい配列と方向であることを確証しておいた精製プラスミドDNAを化学的にコンピテントなBL21 Star (DE3) One Shot大腸菌中に形質転換し、そして一晩37℃にて増殖させた。2mlの一晩培養物を用いて100mlのLB、30μg/mlカナマイシンに接種し、そして該培養を37℃、220rpmにて、細胞密度が0.6の光学密度に達するまで(ほぼ3時間)インキュベートした。次いで、組換えタンパク質の発現をIPTG(1mM)を用いて5時間誘導した。
【0238】
細菌を4500rpmにて10分間の遠心分離により回収し、そして得たペレットを溶解バッファー(10ml Bugbuster(Novagen)、10μl Benzonase(Novagen)、0.4μlリゾチーム(Novagen)および100μl 1Mイミダゾール)中で20分間室温にて溶解した。次いで細胞を、20分間16000g、4℃にて遠心処理し、そして可溶性組換えタンパク質を含有する上清を取り出し、クリーンなチューブに入れた。
【0239】
上清を、予め洗浄したNi-Nta樹脂に、樹脂1ml当たり5〜10mgタンパク質の濃度で加え、そして1時間かけて4℃にて結合させた。次いでタンパク質-樹脂ミックスをカラム中に注いで、2回、4mlの洗浄バッファー(2.5ml 1Mリン酸バッファーpH 8、6.25 ml 4M NaCl、1ml 1MイミダゾールpH8、0.5ml 10%Tween 20;n.H2Oで50mlに調製したもの)で洗浄し、次いで4×0.5ml画分で溶出バッファー(250μl 1Mリン酸バッファーpH8、625μl 4M NaCl、1.25ml 1MイミダゾールpH8、50μl 10% Tween 20、n.H2Oで5mlに調製したもの)を用いて溶出した。精製タンパク質を含有する画分をSDS-PageおよびウェスタンブロットによりS-タグHRPコンジュゲート(Novagen)を用いて検出した。精製組換えタンパク質を含有する画分をYM10カラム(Millipore)を用いて濃縮した。
【0240】
図3AはIPTGによる24時間にわたる組換え2031 OR発現の誘導を示す。タンパク質サンプルをいくつかの時点で採取し、SDS-PAGEゲル上で泳動させてクーマシーを用いて染色した。1時間で、正しいサイズのバンドが非誘導サンプルと比較して明らかに誘導された。タンパク質の量は誘導時間が長くなるにつれて増加した。図3Bは精製組換え2031 ORのクーマシー染色したゲルを示す。細菌内の発現に、グルタチオンS-トランスフェラーゼまたはマンノース結合融合タンパク質系などの代わりの発現系を利用することができる。
【0241】
他の2031 ORの組換え断片を、表VIIIに記載のプライマー対および鋳型、または類似のプライマーおよび表IIIに掲げた他の2031 ORを用いて作製することができる。
【表8】

【実施例7】
【0242】
オキシドレダクターゼアッセイと阻害剤スクリーニング
7.1オキシドレダクターゼアッセイ
2031 ORのアッセイは、AbramovitzおよびMassey(1976, J. Biol. Chem. 251: 5321-5326)ならびにStottら(1993, J. Biol. Chem. 268: 6097-6106)が記載した方法に基づくとともに、この酵素のピリジンヌクレオチドNADHおよび/またはNADPHを酸化する能力に基づくものである。これらの還元型の補因子(すなわちNADHおよびNADPH)の吸収ピークは340nmの波長にあるが、酸化型の補因子(すなわちNAD+およびNADP+)はこの波長において吸収しない。従って、NAD(P)HのNAD(P)+への転換は340nmの波長で分光学的にモニターすることができる。類似のアッセイは、NADHまたはNADPHを補因子として用いる全てのオキシドレダクターゼに対して採用することができる。
【0243】
アッセイは96ウエルプレートで行った。各ウエルに、組換え2031 OR(10〜1000ng);40μlの125〜2500μM NADPH;1μLの100mMシクロヘキセノンまたは他の基質を加え、そして容積を0.1Mリン酸カリウムpH 7.0を用いて200μLに調製した。サンプルを室温にてインキュベートし、そして吸光度測定を340nmにて30秒毎、10分間実施した。吸光度の変化を、NADPHおよびNADHの340nmにおけるモル吸光係数6270(すなわち、1M溶液はこの波長において6270の光学密度を有する)を用いて、酸化されたNADPHのnmolとして表わした。
【0244】
組換え2031 ORに対して可能性のある様々な基質を用いた初期の実験により、該タンパク質は機能的デヒドロゲナーゼ活性を有することが示され、かつシクロへキセノンがメナジオン、デュロキノンまたはN-エチルマレイミドより優れた基質であることが確認された。これを図5に示す。アッセイの最終濃度は次の通りであった:500μM基質、1μg/200μL 2031 OR、120μM NADPH。
【0245】
2031 ORの生理学的基質はまだ確認していないが、一般的なオキシドレダクターゼ基質、例えばフェリシアン化物、メチレンブルー、フェナジンメトスルフェートおよび2,6-ジクロロフェノールインドフェノールもまたオキシドレダクターゼ活性をアッセイするために利用することができる。
【0246】
2031 ORの阻害剤のスクリーニングは、推定阻害物質を反応液へ加え、リン酸カリウムバッファーの量を減ずることにより改変した上記アッセイを用いて行うことができる。アッセイは、スクリーニングのスループットを高めるために384ウエルまたは1536ウエルプレートにおいて実施することができる。
【0247】
7.2 2031 OR阻害剤を同定するためのハイスループットスクリーニング
2031 OR阻害剤をハイスループットスクリーニングにより同定した。次の試薬を調製した。
【0248】
アッセイプレート:試験対象の化合物を100% DMSOに溶解し(ポリプロピレン容器)、水で希釈し、そして384正方形ウエルポリスチレンプレート(10μl/ウエル)中に供給した。全てのアッセイウエル中の最終DMSO濃度は5%v/vであった。
βNADPH(テトラナトリウム塩)/2-シクロヘキセン-1-オン試薬;NADPH(1.2917mMを含む100mMカリウムリン酸バッファー、pH7.0)および2-シクロヘキセン-1-オン(10mMを含む100mMリン酸カリウムバッファー、pH7.0)の溶液をアッセイ当日に調製し、そして2-シクロヘキセン-1-オン溶液1部に対してNADPH溶液9部の比で組合わせた。NADPHおよび2-シクロヘキセン-1-オンの最終アッセイウエル濃度はそれぞれ465μMおよび400μMであった。
2031 OR酵素:組換え酵素を実施例6に記載の通り調製し、そして次の通り脱塩した:2.5mlの溶出したタンパク質を25mlの0.1M KPO4 pH7を用いて平衡化したPD10カラム(Amersham)上へ供給した。次いでタンパク質を3.5mlの0.1M KPO4 pH7を用いて溶出した。該タンパク質のアリコートを-80℃にて貯蔵した。スクリーニングのために、典型的には、タンパク質を100mMリン酸カリウムバッファー、pH7.0に5〜11.25μg/mlまで希釈した。
停止試薬:0.4M NaOH水溶液。
【0249】
2-シクロヘキセン-1-オン(スクリーニングアッセイにおいて2031 ORに対する基質)のKmは100μMであることを確認した。シグナルを増加するために、スクリーニングは4倍のKmの2-シクロヘキセン-1-オンを用いて行った。所定のインキュベーション時間全体のスクリーニングの反応速度は、反応進行曲線が時間とタンパク質濃度の両方に対して線形となるようにした。スクリーニングのZ'値は0.77に等しく、従って十分許容可能であった(Zhangら, 1999, J. Biomolecular Screening, 4, 67-73)。プレート上のウエル、プレート対プレートおよびスクリーニング実行対スクリーニング実行の間のシグナルの一貫性もHTS(ハイスループットスクリーニング)形式の条件を満たした。
【0250】
アッセイは、Tecan Freedom、Tecan TeMoおよびPerkinElmer MinitrakロボットならびにThermoLabsystemsマルチドロップ384およびTecan Safire自動プレートリーダーを使って実施した。20μlの酵素に続いて20μlのNADPH/2-シクロヘキセン-1-オン溶液を、試験化合物を含有するマイクロタイタープレートのウエルに加えた。20μlの100mMリン酸カリウムバッファー、pH7.0をバックグラウンド無酵素対照用のプレートセット(2連)に対して使用し;(可溶化化合物ストックと同じ方法で希釈した)DMSOを無化合物対照用に用いた。プレートを室温にて30分間インキュベートし、その後、25μlの0.4M NaOH停止試薬を加えた。プレートをTecan Safireプレートリーダー上で340nmにて読み取り、そしてデータを自作のExcelスプレッドシートを用いて処理し、生データを抑制率(%)データに変換した。一次スクリーニングと本質的に同じプロトコルを用いて、選択した化合物に対する用量応答データを測定するために、二次スクリーニングを実施した。二次スクリーニングは、適当な抑制値をグラフ化し、試験した化合物についてのIC50データを決定するために、シグモイドモデル606によるExcelfitバージョン3ソフトウエア(IDBS)を用いた。図6は、一次スクリーニングにより同定し、次いで二次スクリーニングでアッセイした2種の阻害化合物(AおよびB)に対する典型的な結果を示す。
【0251】
HTSアッセイに対する正しい停止試薬の同定も大切であった。最初にpHに依存しないで反応を停止する化学阻害剤の系を探したが、NaOHが始めに予想したより大きい利益をもたらすことを見出した、すなわち、NaOHは反応における緩衝化を克服するだけでなく反応を完全停止するが、また未反応NADPHにさらに大きい保護も与えた。高レベルのNaOHはNADP(340nmで吸収のない反応生成物)を蛍光生成物に変換し、この蛍光生成物は340nmの読み取りを妨害しうることが知られている(PassonneauおよびLowry, 1993, Enzymatic analysis, a practical guide, pp.3-21およびp381. 1993 The Humana Press Inc. NJ USA)。従って、HTSアッセイに用いるNaOHレベルは、NADP転換からの蛍光の量が些細なレベルまで低下する一方、反応を完全停止するように選んだ。NaOHの使用によりNADPHの高い安定性が得られるので、直接のプレート読み取りの代わりに、プレートを反応停止後少なくとも20時間までに読み取ればよいようになる(それ以上長い時間は研究しなかった)。これは、さらに大きいスクリーニングを実施できるという点で明らかに有利であった。分光学的読み取りのために貯蔵したプレートは自己接着性フィルムを用いてシールし、暗所に貯蔵した。
【実施例8】
【0252】
真菌感染を検出する方法
本発明に記載の配列を真菌感染症を診断するために使用した。A. fumigatus、A. nidulans、もしくはC. albicansに感染している可能性のある患者、またはM. griseaに感染している可能性のあるコメの葉または茎、またはC. trifoliiに感染したアルファルファ、またはF. graminearum、F. sporotrichioides、もしくはM. graminicolaに感染したコムギ、または他の生物由来のサンプルを、DNAeasy TissueキットまたはQIAamp DNA Blood Miniキット(Quiagen, Crawley, UK)を用いてDNAを抽出する処理をしたが、他のDNA調製方法も利用可能であり適切である。
【0253】
DNAを調製した後、PCR反応を次の通り実施する:
反応ミックス:
12.5μl 2x ReddyMix PCRマスターミックス(ABgene)、
1μl プライマーA(5pmol)、
1μl プライマーB(5pmol)、
5μl 鋳型DNA、および
5.5μl ヌクレアーゼを含まない水。
【0254】
好適なプライマー対を次の表IXに掲げる:
【表9】

【0255】
配列番号後の括弧内の数字は、プライマーが開始する鋳型中の塩基を示す。
【0256】
適当な対照としては、(i)鋳型DNAを含むがプライマーを含まない;プライマーを含むが鋳型を含まない(陰性対照);(ii)真菌性2031 ORをコードするcDNAまたは患者DNAの代わりに培養真菌由来のDNA(陽性対照)が挙げられる。
【0257】
PCR反応は次の通り実施する:
ステップ1 95℃ 5分
ステップ2 95℃ 1分
ステップ3 53℃ 1分30秒
ステップ4 72℃ 1分30秒
ステップ5 72℃ 10分
ステップ6 4℃ 保持。
【0258】
ステップ2〜4を30サイクル実施し、PCR産物をアガロースゲル上で試験した。正しい分子量のバンドの産生は、その特定の真菌が存在するという診断になる。診断のためのPCR産物の制限酵素消化を実施することがさらに必要でありうる。もし必要であれば、PCR産物をpGEM-Teasy(Promega)などのベクター中にサブクローニングし、そしてPCR産物が適当な真菌由来であることを立証するために配列決定を行う。
【0259】
あるいは、A. fumigatus、A. nidulans、C. albicansもしくはM. grisea、C. trifolii、F. graminearum、F. sporotrichioidesもしくはM. graminicola、または他の生物による感染の存在を、真菌性タンパク質に対して産生した抗体を用いて検出する。1つの好適な方法は捕獲(capture)ELISAの利用である。この方法では、マイクロタイタープレートを真菌性タンパク質に対して産生したモノクローナル抗体を用いてコーティングする。次いでプレートを希釈した患者サンプルまたはサンプルの適当なタンパク質抽出物(特に、サンプルが生検または植物組織の場合)と共にインキュベートする。次いでプレートを(真菌性タンパク質に対して産生した)ポリクローナル抗体と共にインキュベートする。最終的に二次抗体の結合を、ポリクローナル抗体に対する酵素結合または蛍光標識した抗体を用いて検出した。実施に当たっては、2つのモノクローナルもしくはポリクローナル抗体または様々な組み合わせを用いることができる。
【実施例9】
【0260】
抗体の産生
真菌性2031 ORに対する抗体は診断試薬として有意義な用途がありうる(上記実施例8を参照)。免疫原として、組換えドメインを利用することができる(実施例6に記載の通り)。あるいは、個々の2031 ORに特有な領域、またはORのあるセット内、種のあるセット内、もしくは属のある範囲内の交差反応性を与えると思われる領域をコードする合成タンパク質を利用する。ペプチドは、免疫前にキャリアタンパク質とコンジュゲートさせる必要がありうる。
【0261】
免疫感作する動物由来の免疫前血清を免疫原に対してスクリーニングし、内因性交差反応性がないことを確証する。次いで動物(典型的にはヒツジ、ウサギまたはマウス)を免疫感作する。ポリクローナル抗体産生については、得られる血清をクロマトグラフィマトリックスと架橋した免疫原を用いてアフィニティ精製する。あるいは、血清由来の抗体画分の、例えばマトリックスと架橋したプロテインGまたはプロテインAを用いる精製で十分でありうる。モノクローナル抗体産生は当業者に周知の方法により実施する。
【0262】
得られるポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体の特異性を、免疫原、関係構築物または全細胞溶解物および抽出物を標的として用いるELISAおよび/またはウェスタンブロットによりチェックする。他のOR、種々の構築物または様々な種などの陰性対照も、特異性を試験するためにならびに/または種の範囲および/もしくは属交差反応性を確認するために用いる。
【実施例10】
【0263】
機能的に無能化した2031 OR遺伝子を有する真菌の産生
BamHIを用いて部分的に消化しかつベクターpBACe3.6中に挿入したA. fumigatusゲノムを含有する、BAC(細菌人工染色体)クローンライブラリーをSanger Centre, Cambridge, UKから購入した。不活性化しようとする遺伝子を含有するBACクローンをバイオインフォマティクス(Sanger BACおよび関係データベースのBLAST検索)により同定し、該クローンのグリセロールストックを50ml LB、20μg/mlクロラムフェニコール中で37℃にて一晩増殖させる。一晩培養物を4,500rpmにて15分間遠心分離する。細菌ペレットを4mlのバッファーP1(Qiagenプラスミドminiprepキット)中に再懸濁し、次いで4mlのバッファーP2(Qiagenプラスミドminiprepキット、溶解バッファー)を加え、3〜6回反転させて静かに混合する。タンパク質およびゲノムDNAを4mlのバッファーP3(Qiagenプラスミドminiprepキット、中和バッファー)を加えかつ氷上で10分間インキュベートすることにより沈降させる。混合物を30分間4500rpmにて遠心分離した後、上清を50mlファルコンチューブ中に移し、等容積のフェノール/クロロホルム(1:1)混合物を加え、そして該混合物を15分間4500rpmにて遠心分離する。次いで上清をOakridgeチューブ中に移し、0.7容積のイソプロパノールを加える。混合後、チューブを10,000rpm(Beckman遠心機、ローターJA-17)にて30分間4℃にて遠心分離する。得られるペレットを2ml 70%エタノールを用いて同じ速度で洗浄する。得られるBAC DNAを100μlのバッファーEBに再懸濁させる。
【0264】
遺伝子転移(transposition)反応を次の通り行う。7μl精製BAC、pMOD2(Epicenter)のモザイク末端を含有する1μlトランスポゾンpZVK2(遺伝子操作で作ったプラスミドであってその配列は配列番号81として示した)、真菌性プロモーターの制御下にあるカナマイシン耐性遺伝子およびゼオシン(Zeocin)耐性遺伝子、ならびに1μl EZ:TNトランスポザーゼ(Epicenter)を37℃にて2時間インキュベートし、その後に1μl停止溶液(1%SDS)を加え、そして混合物を70℃にて10分間加熱した。次いでエレクトロコンピテントGeneHogs大腸菌細胞(Invitrogen)を、この遺伝子転移したBACを用いて形質転換し、該細胞をLB寒天、25μg/mlカナマイシン、20μg/mlクロラムフェニコール上に置いて、プレートを一晩、37℃にてインキュベートした。
【0265】
少なくとも96個のコロニーを拾い、96ウエルプレートにおいて2×LB(二倍濃縮したLB)、20μg/mlクロラムフェニコール中で37℃にて一晩増殖させる。次いでBAC DNAを、Millipore montage 96 BACキットを利用しMWG ROBOSEQ 4200ロボットを用いて精製する。目的遺伝子中に挿入されたトランスポゾンを含有するBACを、目的遺伝子全体に架かる(spanning)と共にトランスポゾンからBAC中に伸長する(extending)PCRにより同定する。目的遺伝子中への挿入は産物サイズの増加として現れる。サザンブロットも行ってトランスポゾンがBAC中に1回だけ挿入されたことを確証する。
【0266】
次いで、ベクター主鎖をBAC DNAでない部分で切断することが確認された制限酵素を用いてBACを線状化し、そしてA. fumigatusAf293株を形質転換するために用いる。A. fumigatus(一倍体)プロトプラストを、(0.6M KCl中の)5% Glucanex(Novo Nordisk A/S)溶液を用いて調製し、2時間80rpmで30℃にて振盪する。プロトプラストを、0.6M KClを用いて、次いでSTC(ソルビトール、Tris、CaCl2)を用いて洗浄する。洗浄したプロトプラストをSTC中に105/mlとなるよう希釈し、そして100μlを14mlファルコンチューブ中に移す。7μlの線状化BACをチューブに加え、全体の混合物を氷上で20分間インキュベートする。200μlのPEG 8000溶液(60%w/v、pH 7.5)を2分間にわたり滴下し、次いで800μlのPEGを加えることによって、形質転換を行う。混合物を室温にて20分間放置する。形質転換したプロトプラストをSTCにより洗浄し、1ml STCに再懸濁し、CM-ソルビトール-ゼオシン(250μg/ml)プレート上にまいて、37℃にてインキュベートする。
【0267】
4〜10日のインキュベーション後にゼオシン耐性コロニーを拾って、目的遺伝子全体を特異的に増幅するプライマーを用いるPCRによりノックアウト遺伝子の存在をチェックする。通常、10〜20個の形質転換体をチェックする。BACの異所組み込み(ectopic integration)はPCRにより2つのバンドを示し、1つは内因性遺伝子であり、1つはより高い分子量を有するBAC/トランスポゾン構築物である。内因性遺伝子がトランスポゾン改変遺伝子により置換されると、PCRによってさらに高い分子量の単一バンドを生じる。もし形質転換体が破壊された内因性遺伝子を示さなければ、目的遺伝子は必須であってノックアウトされた細胞が死滅し、置換が不成功に終わった細胞だけが生存する。この場合、形質転換を二倍体に対して同じ形質転換の方法を用いて行う。次いで該遺伝子の必須性を、再一倍体化、および一倍体の分離パターンを検証することによって試験する。
【実施例11】
【0268】
2031 ORオキシドレダクターゼ遺伝子を用いる、MycoBank形質転換体のレスキュー
11.1 2031 OR構築物の調製
NheIオーバーハングを持つ2031 OR遺伝子を、PCRによりプライマー対(配列番号98および配列番号99)を用いて調製した。
【0269】
PCR反応:
2.5μl 10×PCRバッファー、
0.5μl dNTPs、
2μl MgSO4
1μl フォワードプライマー(配列番号98)、
1μl リバースプライマー(配列番号99)、
1μl gDNA、および
n.H2Oを用いて25μlに調製。
【0270】
PCRサイクル:(1)94℃、5分;(2)94℃、1分;(3)50℃、1分;(4)68℃、1分30秒;(5)68℃、10分;(6)8℃、停止;サイクル2〜4を40回繰り返した。
【0271】
最終的に得られたアンプリコン(ほぼ1260bp)を1%アガロースゲル上で泳動させ、適当なバンドを切り出し、Qiagenゲル抽出キットを用いて精製し、そしてカラムを30μl H2Oで溶出した。該アンプリコンを、次の反応混合物を用いてpGEM Teasy中にライゲートした:
5μl 2×ライゲーションバッファー
1μl pGEM Teasyベクター
1、2または3μlのいずれかのインサート
1μl T4 DNAリガーゼ
反応液はn.H2Oを用いて10μlに調製した。
ライゲーション反応を一晩、冷蔵庫内でインキュベートした。
【0272】
2μlの各ライゲーション反応液を42℃の熱ショックによりpromega96選択細胞中に形質転換した。形質転換後、細胞をSOC中で1時間37℃にて、220rpmでインキュベートした。次いで50および150μlアリコートをLB-Amp(100μg/ml)、IPTG-Xgalプレート上にまいて、37℃にて一晩放置した。陽性クローンを青色/白色スクリーニングにより同定して単離し、そして上記プライマーを用いて2031 ORインサートの正しい挿入についてPCRによりスクリーニングした。陽性クローンをMWGに送付して配列分析をした。
【0273】
11.2 2031 ORのCbhB-Zeoベクター中へのクローニング
pGem Teasy中の2031 ORのプラスミドDNA(11.1に記載した通り)を一晩37℃にてNheIにより消化した。次いで2031 ORインサート断片をQiagenゲル抽出キットを用いてゲル精製し、CbhB-Zeoベクター中にライゲートした。このベクターは、A. fumigatus CbhBプロモーターおよびターミネーターおよびゼオシン耐性遺伝子をもつpUC19から構築した。
【0274】
ライゲーション:
1μlのT4 DNAリガーゼ、
1μlの10×リガーゼバッファー、
1μlのCbhBベクター(線状化しかつアルカリホスファターゼ処理した)、
1μlのインサート、および
6μlのn.H2O。
ライゲーション反応は冷蔵庫内で一晩放置した。
【0275】
2μlの各ライゲーション反応物を、2.5Kvolt、200Ω、25μFにてエレクトロポレーションによりGenehog細胞中に形質転換した。形質転換後、細胞をSOC中で1時間37℃、220rpmにてインキュベートした。次いで50および150μlアリコートをLB-Amp(100μg/ml)プレート上にまいて37℃にて一晩放置した。陽性クローンを単離し、そしてPCRによりインサートの正しい挿入について上記のようにスクリーニングした。陽性クローンをMWGに送付して配列分析した。
【0276】
11.3 Mycobank突然変異体2031中への形質転換
CbhB-Zeo-2031プラスミドを、ScaIを用いて一晩37℃にて消化した。次いで線状化プラスミドを1%アガロースゲル上で泳動させ、Qiagenゲル抽出キットを用いて精製した。プラスミドDNAを30μlのnH2Oに溶出した。
【0277】
Mycobank突然変異体2031 AF293胞子を6時間37℃、300rpmにて膨潤させ、3500rpmにて5分間遠心分離し、そして氷冷nH2O中に再懸濁した。胞子を再び遠心機で3500rpmにて5分間処理し、次いで12.5mlのYED培地に再懸濁し、1時間30℃、100rpmにてインキュベートした。次いで胞子を計数し、EBバッファーに5×107胞子/mlの最終濃度となるよう再懸濁した。次いで50μlの膨潤胞子を1〜10μlの線状化CbhB-Zeo-2031プラスミドDNAを用いて1Kvolt、400Ω、25μFにて形質転換した。胞子をYEDバッファーに移し、90分間37℃、100rpmにて放置した。次いで100および200μlアリコートをCM-ゼオシン(200μg/ml) プレート上にまいて、37℃にて2〜3日間インキュベートした。
【0278】
CM-Zeoプレート上の陽性形質転換体を5mlのSABブロス中に拾い、そして一晩37℃、220rpmにてインキュベートした。次いでバイオマスをWhatman濾紙上で濾過して回収した。DNAをFast prepキットを用いて抽出し、Qiagen miniprep DNAカラム上でクリーンアップした。DNAをカラムから30μlのnH2Oで溶出させた。
【0279】
PCRスクリーニングを、次のプライマーセットを用いて実施した:
セットA:Ox7race_for(配列番号51)+CbhBtR(配列番号100)
セットB:Ox6race_rev(配列番号50)+CbhBpF(配列番号101)
【0280】
PCR反応:
12.5μl 2×Reddyミックス、
1μl セットAまたはBからの各プライマー、および
1μl プラスミドDNA
水を用いて25uLに調製した。
【0281】
PCRサイクル:(1)94℃、5分;(2)94℃、1分;(3)56℃、1分;(4)72℃、1分30秒;(5)72℃、10分;(6)8℃、一時停止;サイクル(2)〜(4)を40回繰り返した。
【0282】
CbhB-Zeo-2031を有することが実証されたMycobank突然変異体2031中の陽性形質転換体を、再一倍体化プロセスによって、形質転換していないmycobank突然変異体2031と比較したハイグロマイシン上で増殖するそれらの能力を試験した。本発明者らは、致死性2031表現型がCbhB-Zeo-2031プラスミドの挿入によりレスキューされることを見出し、2031 ORの必須性を確証した。
【0283】
読者の関心は、本出願に関係して本明細書と同時にまたは先立って出願されたおよび公的審査に対して本明細書とともに公開された全報文および文書に関係があり、そして全てのかかる報文および文書の内容は本明細書に参照により組み込まれる。
【0284】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴の全て、および/またはそこで開示されたいずれかの方法またはプロセスの全ては、かかる特徴および/またはステップの少なくともいくつかがお互いに排他的である組み合わせを除いて、いずれの組み合わせでも組合わせることができる。
【0285】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示されたそれぞれの特徴は、特に断りのない限り、同じ、等価のまたは類似の目的を果たす代わりの特徴により置き換えることができる。従って、特に断りがなければ、開示されたそれぞれの特徴は、一般的な一連の等価のまたは類似した特徴の一例に過ぎない。
【0286】
本発明は、先に記載の実施形態の詳細に限定されるものでない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴の、いずれかの新規の1つ、またはいずれかの新規の組み合わせ、またはかかる開示されたいずれかの方法またはプロセスのステップのいずれかの新規の1つ、またはいずれかの新規の組み合わせに及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0287】
【図1−1】真菌性および細菌性2031およびOYEファミリーオキシドレダクターゼに対応するアミノ酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図1−2】真菌性および細菌性2031およびOYEファミリーオキシドレダクターゼに対応するアミノ酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図1−3】真菌性および細菌性2031およびOYEファミリーオキシドレダクターゼに対応するアミノ酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図1−4】真菌性および細菌性2031およびOYEファミリーオキシドレダクターゼに対応するアミノ酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図2−1】真菌性2031ファミリーオキシドレダクターゼに対応する核酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図2−2】真菌性2031ファミリーオキシドレダクターゼに対応する核酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図2−3】真菌性2031ファミリーオキシドレダクターゼに対応する核酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図2−4】真菌性2031ファミリーオキシドレダクターゼに対応する核酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図2−5】真菌性2031ファミリーオキシドレダクターゼに対応する核酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図2−6】真菌性2031ファミリーオキシドレダクターゼに対応する核酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図2−7】真菌性2031ファミリーオキシドレダクターゼに対応する核酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図2−8】真菌性2031ファミリーオキシドレダクターゼに対応する核酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図2−9】真菌性2031ファミリーオキシドレダクターゼに対応する核酸配列のマルチプル配列アラインメントを示す。
【図3】Aは組換え2031 ORの発現を示す。Bは精製した組換え2031 ORを示す。
【図4】A. fumigatus 2031 ORと類似タンパク質との間の関係を示す系統樹である。この系統樹は、OYEタンパク質から区別することができる2031 OR系統分岐群を示す。
【図5】組換え2031 ORによる、一連の基質の還元を示す。
【図6】スクリーニングにより同定した2種の化合物による2031 ORの抑制を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真菌の必須タンパク質または遺伝子を標的化する抗真菌剤を同定する方法であって、
候補物質を
(i) 配列番号3に示した配列を含むNADH:フラビンオキシドレダクターゼタンパク質、
(ii) (i)の相同体でありかつ配列番号8、12、14、19、24、42、44、83もしくは85に示した配列を含むNADH:フラビンオキシドレダクターゼタンパク質、
(iii) (i)もしくは(ii)と50%同一性を有するタンパク質、
(iv) 少なくとも50アミノ酸長を有する(i)、(ii)もしくは(iii)の断片を含むタンパク質、
(v) (i)、(ii)、(iii)もしくは(iv)をコードする配列を含むポリヌクレオチド、または
(vi) (v)のコード配列と少なくとも70%同一性を有する配列を含むポリヌクレオチド
と接触させるステップ、および
上記候補物質が(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)と結合するまたはそれをモジュレートするかどうかを確認するステップ
を含み、ここで(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)と結合するまたはそれをモジュレートすることは上記候補物質が抗真菌剤であることを示す、上記方法。
【請求項2】
(iii)または(iv)がオキシドレダクターゼ活性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)、(ii)、(iii)または(iv)が図1および2に示した領域1〜11により規定される1以上のモチーフを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
酸化還元反応を候補物質の存在下および不在下で行い上記候補物質が請求項1〜3のいずれか1項に規定したタンパク質のオキシドレダクターゼ活性を抑制するかどうかを確認するステップを含み、上記酸化還元反応は、候補物質の不在下で上記タンパク質が電子受容体の還元を触媒する条件のもとで、上記タンパク質をNADHまたはNADPH、および電子受容体と接触させることによって行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(iii)が次の配列:配列番号6、10、16、22、27、30、33、35、38、40のいずれかを含むタンパク質である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(i)または(ii)が、Aspergillus flavus;Aspergillus fumigatus;Aspergillus nidulans;Aspergillus niger;Aspergillus parasiticus;Aspergillus terreus;Blumeria graminis;Candida albicans;Candida cruzei;Candida glabrata;Candida parapsilosis;Candida tropicalis;Colletotrichium trifolii;Cryptococcus neoformans;Encephalitozoon cuniculi;Fusarium graminarium;Fusarium solani;Fusarium sporotrichoides;Leptosphaeria nodorum;Magnaporthe grisea;Mycosphaerella graminicola;Neurospora crassa;Phytophthora capsici;Phytophthora infestans;Plasmopara viticola;Pneumocystis jiroveci;Puccinia coronata;Puccinia graminis;Pyricularia oryzae;Pythium ultimum;Rhizoctonia solani;Schizzosaccharomyces pombe;Trichophyton interdigitale;Trichophyton rubrum;またはUstilago maydisのオキシドレダクターゼである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
同定した抗真菌剤を農芸または医薬組成物に製剤化することをさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
真菌を同定した抗真菌剤と接触させることにより、真菌を死滅させるかまたは増殖を低減させることをさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
抗真菌剤を同定または取得するための、請求項1〜6のいずれか1項に規定した(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)の使用。
【請求項10】
真菌感染症を予防または治療するための医薬品の製造における、請求項1〜6のいずれかの方法により同定した抗真菌剤の使用。
【請求項11】
サンプル中の真菌の存在を検出する方法であって、上記サンプルにおける請求項1〜3、5または6のいずれか1項に規定したタンパク質またはポリヌクレオチドの存在を検出するステップを含む上記方法。
【請求項12】
サンプルが真菌感染症を有する疑いのあるヒト、動物または植物個体由来である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜3、5または6のいずれか1項に規定した、単離されたタンパク質またはポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項1〜3、5または6のいずれか1項に規定したポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項15】
請求項1〜3、5もしくは6のいずれか1項に規定したポリヌクレオチドまたは請求項14に記載のベクターを含む組換え細胞。
【請求項16】
請求項1〜3、5もしくは6のいずれか1項に規定したポリヌクレオチドまたは請求項14に記載のベクターからタンパク質を発現させることを含む、請求項1〜3、5または6のいずれか1項に規定したタンパク質を得る方法。
【請求項17】
請求項14に規定したベクターの複製またはヌクレオチドの縮合によるポリヌクレオチドの合成を含む、請求項1〜3、5または6のいずれか1項に規定したポリヌクレオチドを得る方法。
【請求項18】
請求項1〜3、5または6のいずれか1項に規定したポリヌクレオチドを遺伝子導入した生物。
【請求項19】
請求項1〜3、5または6のいずれか1項に規定したポリヌクレオチドまたはタンパク質を遺伝子操作によって非機能化したまたは抑制した生物。
【請求項20】
請求項1〜3、5または6のいずれか1項に規定したタンパク質に特異的である抗体。
【請求項21】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により同定した抗真菌剤を投与することを含む、真菌感染症の予防または治療方法。
【請求項22】
請求項1〜3、5または6のいずれか1項に規定したタンパク質またはポリヌクレオチドを投与することを含む、真菌感染症の予防または治療方法。
【請求項23】
請求項1〜3、5または6のいずれか1項に規定したポリヌクレオチドまたはタンパク質の発現または活性を抑制することを含む、真菌を死滅させるかまたは増殖を低減させる方法。
【請求項24】
真菌がヒト、動物または植物個体に感染している、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜3、5または6のいずれか1項に規定したタンパク質またはポリヌクレオチドの発現または活性の抑制により、死滅したかまたはその増殖が低減した真菌。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図2−8】
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【図2−9】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−526769(P2007−526769A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553680(P2006−553680)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000623
【国際公開番号】WO2005/080588
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506280649)エフ2ジー リミテッド (5)
【Fターム(参考)】