説明

3次元形状測定方法

【課題】簡単に合成できると共に測定できない箇所が生じない3次元形状測定方法を得る。
【解決手段】定盤10の平坦な定盤面12に多数のマーク14を形成すると共に、多数のマーク14から大きさと間隔との違いにより少なくとも3つのマーク14を特定可能に形成する。また、各マーク14の大きさと間隔とを記憶する。そして、定盤面12に定盤面12より小さな被測定物1を載置して、被測定物1の部分領域を形状測定器2により少なくとも3つのマーク14と共に光学的に3次元測定して測定値を得る。その後、形状測定器2を移動して、少なくとも3つのマーク14と共に被測定物1の他の測定箇所の部分領域を光学的に3次元測定して測定値を得て、記憶したマーク14の大きさ及び間隔と測定したマーク14の大きさ及び間隔とに基づいて、両測定値を同一座標系に変換して合成する(ステップ100〜200)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の外形形状を光学的に3次元で測定する3次元形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光学的に3次元形状を測定する方法として、モアレトポグラフィに代表されるような縞を利用し、被測定物上に縞状パターンを投影し、被測定物の形状により変形した縞模様と基準の縞模様を重ね合わせ、その差周波数として生じる等高線を示すモアレ縞を解析することにより、被測定物の3次元形状を測定する方法や、被測定物にスリット光を照射すると共に、スリット光を偏向して被測定物を走査し、被測定物からの反射光を受光して、被測定物の表面形状に基づくスリット光の変形の程度から三角測量の原理により3次元形状を測定する方法等が知られている。
【0003】
被測定物が小さい場合は、被測定物全体をCCDカメラで撮像して解析しても、十分な測定精度が得られるが、被測定物が大きい場合、一度で被測定物全体を撮像したのでは、十分な解像度が得られない場合がある。
【0004】
そのような場合には、被測定物の一部を撮像して3次元形状を測定し、次に、場所を変えて、被測定物の他の一部を撮像して3次元形状を測定し、これを繰り返して全体の3次元形状を測定し、分けて測定した測定値を一つの基準座標系の測定値に合成している。
【0005】
合成する際、特許文献1にあるように、被測定物にターゲットを貼り付けて、3次元形状測定の際に、ターゲットを含めて撮像すると共に、場所を変えて撮像する際には共通のターゲットを含めて撮像して、ターゲットに基づいて、2つの3次元形状測定データを合成するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−220510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、こうした従来の方法では、被測定物に多くのターゲットを貼り付けなければならず、作業が煩わしいと共に、ターゲットを貼り付けた箇所の形状を測定できないという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、簡単に合成できると共に、測定できない箇所が生じない3次元形状測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の方法を取った。即ち、
定盤の平坦な定盤面に多数のマークを形成すると共に、多数の前記マークから大きさと間隔との違いにより少なくとも3つの前記マークを特定可能に形成し、
前記定盤面に前記定盤面より小さな被測定物を載置して、
前記被測定物の部分領域を3次元形状測定手段により少なくとも3つの前記マークと共に光学的に3次元測定して測定値を得て、その後、更に、前記3次元形状測定手段を移動して、少なくとも3つの前記マークと共に前記被測定物の他の部分領域を光学的に3次元測定して測定値を得て、前記マークの大きさ及び間隔に基づいて、前記部分領域が異なる前記両測定値を同一座標系に変換して合成することを特徴とする3次元形状測定方法がそれである。
【0010】
また、定盤の平坦な定盤面に多数のマークを形成すると共に、多数の前記マークから大きさと間隔との違いにより少なくとも3つの前記マークを特定可能に形成し、かつ、前記各マークの大きさと間隔とを記憶し、
前記定盤面に前記定盤面より小さな被測定物を載置して、
前記被測定物の部分領域を3次元形状測定手段により少なくとも3つの前記マークと共に光学的に3次元測定して測定値を得て、その後、前記3次元形状測定手段を移動して、少なくとも3つの前記マークと共に前記被測定物の他の測定箇所の部分領域を光学的に3次元測定して測定値を得て、記憶した前記マークの大きさ及び間隔と測定した前記マークの大きさ及び間隔とに基づいて、前記両測定値を同一座標系に変換して合成することを特徴とする3次元形状測定方法がそれである。
【0011】
更に、定盤の平坦な定盤面に多数のマークを形成すると共に、多数の前記マークから大きさと間隔との違いにより少なくとも3つの前記マークを特定可能に形成し、
前記定盤面に前記定盤面より小さな被測定物を載置して、
前記被測定物の部分領域を3次元形状測定手段により少なくとも3つの前記マークと共に光学的に3次元測定して測定値を得て、その後、更に、前記3次元形状測定手段を移動して、先の前記部分領域の同じ3つの前記マークと共に前記被測定物の他の部分領域を光学的に3次元測定して測定値を得て、先の前記部分領域の前記マークの大きさと間隔及び他の部分領域の前記マークの大きさと間隔に基づいて、前記部分領域が異なる前記両測定値を同一座標系に変換して合成することを特徴とする3次元形状測定方法がそれである。
【0012】
その際、前記マークは、円形の有底孔を機械加工して形成、あるいは印刷により形成、あるいは、円形のシールを貼り付けて形成したものでもよい。また、前記3次元形状測定手段による少なくとも3つの前記マークの前記測定値に基づいて、前記定盤面を認識し、前記部分領域が異なる前記両測定値の前記定盤面を同一平面上に補正してから、前記マークの大きさ及び間隔とに基づいて、前記両測定値を同一座標系に変換して合成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の3次元形状測定方法によると、定盤面上に設けたマークにより、簡単に合成できると共に、被測定物には貼り付けないので、測定できなくなる箇所が生じることはないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態としての3次元形状測定方法の実施に用いる形状側定器の概略構成図である。
【図2】本実施形態の定盤の定盤面上に形成されるマークの配置図である。
【図3】本実施形態の制御装置において行われる3次元形状測定処理のフローチャートである。
【図4】本実施形態の定盤面上に載置された被測定物を部分領域に分割して測定する説明図である。
【図5】第2実施形態の制御装置において行われる3次元形状測定処理のフローチャートである。
【図6】第2実施形態の制御装置において行われる合成処理のフローチャートである。
【図7】第2実施形態での定盤面上に載置された被測定物を部分領域に分割して測定する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、1は被測定物であり、例えば、塑性加工されたプレス成形品等の3次元形状の外形を有するものである。この被測定物1の3次元形状を光学的に測定する形状測定器2を備え、この形状測定器2は、CCDカメラ4とフリンジプロジェクター6と制御装置8とを備えている。CCDカメラ4とフリンジプロジェクター6とは、制御装置8に接続されている。
【0016】
形状測定器2は、フリンジプロジェクター6が複数の格子を被測定物1の表面に投影し、CCDカメラ4がこの被測定物1の外形形状に応じて変形した格子を撮像する。そして、この変形格子と基準格子とに基づいて、制御装置8が被測定物1の3次元形状を測定し、3次元形状の測定値を得るものである。
【0017】
形状測定器2は、CCDカメラ4により撮像する領域Sが広ければ解像度が低下して測定精度が粗くなり、撮像する領域Sが狭ければ十分な解像度が得られて測定精度が精密になる。従って、必要な測定精度を得ようとすると、CCDカメラ4により撮像する領域Sの面積が限定され、被測定物1の部分領域を測定することになる。
【0018】
形状測定器2は、3次元の部分座標系に基づいた測定値を出力する。部分座標系は、形状測定器2が有する座標系であり、形状測定器2を移動して別の箇所を測定した際には、それらの測定値の部分座標系が異なり、そのままでは、それらの測定値を合成して、1つの測定値とすることはできない。
【0019】
本実施形態では、3次元形状測定の際、被測定物1は定盤10上に載置される。定盤10には、平坦な定盤面12に多数のマーク14が形成されている。マーク14は定盤面12に穿設された円筒状の有底孔で、マーク14の大きさと中心間隔とを種々のものに変えて形成されており、隣り合う三角形をなす3つのマーク14を選択した場合、多数のマーク14の中からその3つのマーク14を特定できるように設けられている。尚、マーク14の深さは、全て同じで、本実施形態では、4mmであるが、マーク14は有底孔に限らず、例えば、有底孔に黒色のブッシュを挿入して定盤面12とのコントラストを確保するようにしてもよい。マーク14としての有底孔を機械加工することにより、マーク14の円形縁の真円度を容易に確保できると共に、マーク14の位置精度をも容易に確保できる。あるいは、定盤面12に印刷や薄いシールを貼ることによりマーク14を形成してもよい。
【0020】
図2に示すように、マーク14は、円形の直径を複数種類、例えば、本実施形態では、8mm、12mm、16mmの3種類で形成している。また、マーク14は定盤面12上で横方向(X方向)と縦方向(Y方向)とに並べて配置されており、本実施形態では、横方向(X方向)に直径が同じマーク14を並べて配置し、縦方向(Y方向)に異なる直径のマーク14を並べると共に、異なる直径のマーク14を繰り返し配置している。
【0021】
例えば、図2に示すように、定盤10の左上隅のマーク14aを基準点として、横方向(X方向)に直径が同じ8mmのマーク14を、それぞれ異なる中心間隔Px11,Px12,Px13,Px14,Px15,……で基準点のマーク14aから所定の数のマーク14を横方向(X方向)に沿って一直線上に並べて配置している。
【0022】
また、定盤10の左上隅のマーク14aを基準点として、縦方向(Y方向)に中心間隔Py11及び一部が異なる中心間隔Py51等で直径が12mmのマーク14を、横方向(X方向)にそれぞれ異なる中心間隔Px21,Px22,Px23,Px24,Px25,……で横方向(X方向)に沿って並べて配置している。
【0023】
更に、縦方向(Y方向)に中心間隔Py12及び一部が異なる中心間隔Py52等で直径が16mmのマーク14を、横方向(X方向)それぞれ異なる中心間隔Px31,Px32,Px33,Px34,Px35,……で横方向(X方向)に沿って並べて配置している。
【0024】
このようにして、隣り合う三角形をなす3つのマーク14を選択した場合、マーク14の大きさ(直径)と隣り合うマーク14との横方向(X方向)と縦方向(Y方向)との中心間隔Px,Pyとに基づいて、他のマーク14から3つのマーク14を特定することができるように配置されている。
【0025】
そして、マーク14の大きさ(直径)及び隣り合うマーク14との横方向(X方向)と縦方向(Y方向)との中心間隔Px,Pyは、それぞれ予め制御装置8に記憶されている。本実施形態では、定盤10の定盤面12をXY平面とすると共に、定盤10の左上隅のマーク14aの中心を原点とし、原点から定盤面12に垂直な方向をZ方向とする3次元座標系を形成して、制御装置8に記憶している。原点は、定盤10の左上隅のマーク14aの中心に限らず、他のマーク14の中心でもよく、あるいは、定盤10の左上の角でもよい。
【0026】
次に、制御装置8で行われる3次元形状測定処理について、図3のフローチャートによって説明する。
まず、3次元形状の測定の際には、被測定物1を定盤10の定盤面12上に載置する。その際、被測定物1が定盤面12からはみ出ないような大きさの定盤10が用いられ、また、被測定物1を載置しても、定盤面12上の多くのマーク14が視認できるような大きさの定盤10が用いられる。
【0027】
本実施形態では、被測定物1は3次元形状に成形されたプレス成形品で、幅に対して長手方向が長く、CCDカメラ4により被測定物1の全体を一度に撮像して、3次元形状測定を行ったのでは十分な測定精度が得られない。
【0028】
そこで、図4に示すように、CCDカメラ4により被測定物1の一部分を撮像する領域を複数に、本実施形態では5つの第1〜第5部分領域S1〜S5に分割して形状測定器2により被測定物1を撮像する。その際、各第1〜第5部分領域S1〜S5には、少なくとも隣り合う三角形をなす3つのマーク14を、被測定物1の陰になることなく含むように、第1〜第5部分領域S1〜S5が決定される。
【0029】
本実施形態では、各第1〜第5部分領域S1〜S5に共通するマーク14や定盤10の左上隅のマーク14aを含む必要はなく、また、各第1〜第5部分領域S1〜S5で重なり合う共通の領域を設ける必要もないが、重なり合う領域がないと測定から洩れる箇所が生じる。
【0030】
撮像したデータは、制御装置8に記憶される。形状測定器2により第1〜第5部分領域S1〜S5を撮像する際には、形状測定器2を測定者が移動して撮像するか、あるいは、形状測定器2をロボットのアーム先端に取り付けて、ロボットにより移動するようにしてもよい。移動は平行移動である必要はなく、また、移動量を測定する必要もなく、各第1〜第5部分領域S1〜S5の各面積が同じである必要もない。
【0031】
そして、3次元形状測定処理では、この撮像したデータから、まず、第1部分領域S1の3次元測定値Ps1(s1xn,s1yn,s1zn)を算出する(ステップ100)。添字nはn個の測定点があることを示す。
【0032】
次に、第1部分領域S1の測定値Ps1(s1xn,s1yn,s1zn)からマーク14を認識する(110)。マーク14は全て円形の有底孔であり、撮像したデータから容易に認識でき、認識したマーク14の中心位置を算出する。
【0033】
認識したマーク14の中心位置は、全て定盤面12上にあることから、定盤面12を認識する(ステップ115)。認識した定盤面12と、制御装置8に記憶している3次元座標系での定盤面12とのずれから、測定値Ps1(s1xn,s1yn,s1zn)を、制御装置8に記憶している3次元座標系のXY平面に変換する。即ち、Z方向から見た状態の測定値に変換する。その際、平面は一致するが、制御装置8に記憶している3次元座標系での原点とはまだ一致させることができない。尚、定盤面12の認識には、少なくとも三角形をなす3つのマーク14の中心位置があれば足りる。
【0034】
そして、認識した多くのマーク14のうち、被測定物1に遮られない、図4に示すように、隣り合う三角形をなす3つのマーク14-1,14-2,14-3を選ぶ。隣り合う三角形をなす3つのマーク14の大きさ(直径)と隣り合うマーク14の中心間隔Pを算出する(ステップ120)。
【0035】
尚、本実施形態では、隣り合う三角形をなす3つのマーク14-1,14-2,14-3を選んでいるが、これに限らず、被測定物1に遮られない三角形をなす3つのマーク14を選んでもよい。三角形をなす3つのマーク14により、後述するように、定盤面12を特定できればよく、間に被測定物1がある離れた位置にあるマーク14を選んでもよい。
【0036】
撮像したデータから算出した3つのマーク14の三角形と、定盤面12上の3つのマーク14の三角形とは、相似関係にある。本実施形態では、隣り合う三角形をなす3つのマーク14を選択した場合、2つのマーク14は大きさが同じで、他の1つは大きさが異なる。また、3つのマーク14により形成される三角形のそれぞれの辺の長さの比を算出すれば、他のマーク14から3つのマーク14を特定することができる。
【0037】
測定値Ps1(s1xn,s1yn,s1zn)からは、制御装置8に記憶している3次元座標系の横方向(X方向)と縦方向(Y方向)とを特定できないので、まず、隣り合う三角形をなす3つのマーク14-1,14-2,14-3の大きさ(直径)と三角形の各辺に相当する中心間隔Pを算出する。また、制御装置8に記憶された隣り合う三角形をなすマーク14との横方向(X方向)と縦方向(Y方向)との中心間隔Px,Pyから、三角形の各辺に相当する中心間隔Pを算出する。
【0038】
そして、マーク14の大きさ(直径)と三角形のそれぞれの辺の長さの比とに基づいて、撮像した隣り合う三角形をなす3つのマーク14-1,14-2,14-3が、制御装置8に記憶されているマーク14のいずれに該当するかを特定する(ステップ130)。
【0039】
尚、各マーク14毎に、隣り合うマーク14と結んだ辺のなす角度をそれぞれ予め制御装置8に記憶し、3つのマーク14により形成される三角形のそれぞれの辺のなす角度を算出しても、他のマーク14から3つのマーク14を特定することができる。
【0040】
特定した3つのマーク14-1,14-2,14-3の各中心位置をXY平面上で回転させて、特定した3つのマーク14-1,14-2,14-3による三角形を、制御装置8に記憶されている3つのマーク14の三角形に重ね合わせるように、測定値Ps1(s1xn,s1yn,s1zn)を補正して、補正値を得る(ステップ140)。尚、その際、制御装置8に記憶されているマーク14の中心間隔Px,Pyに基づいて、同じ大きさの三角形となるように、測定値Ps1(s1xn,s1yn,s1zn)を補正する。
【0041】
この補正値は、制御装置8に記憶されている3次元座標系に基づく値であり、撮像したデータに定盤面12の左上隅のデータがなくても、制御装置8に記憶されているデータから、定盤面12の左上隅のマーク14aを原点とする3次元測定の絶対値を得ることができる。
【0042】
測定値Ps1(s1xn,s1yn,s1zn)には、定盤面12やマーク14の測定値も含まれているので、これらの定盤面12やマーク14の測定データを削除する(ステップ145)。
【0043】
更に、他の第2〜第5部分領域S2〜S5がある場合には(ステップ150)、第2〜第5部分領域S2〜S5についても同様に繰り返し実行して、各第2〜第5部分領域S2〜S5毎にマーク14を認識すると共に、大きさ・間隔を算出し、定盤面12を認識すると共に、制御装置8に記憶されているマーク14に基づいて、定盤面12の左上隅のマーク14aを原点とする3次元座標系に補正した補正値を得る。
【0044】
続いて、第1〜第5部分領域S1〜S5の測定値Ps1〜Ps5を、この共通の3次元座標系で合成する処理を実行する(ステップ200)。合成処理では、各第1〜第5部分領域S1〜S5の撮像したデータに定盤面12の左上隅のデータがなくても、容易に合成できる。また、5つの第1〜第5部分領域S1〜S5に分割する場合に限らず、複数に分割すればよく、制御装置8に記憶されたマーク14の中心間隔Px,Pyの精度に基づくので、6つ以上に分割しても合成による測定精度の低下を招くことはない。
【0045】
尚、本実施形態では、第1〜第5部分領域S1〜S5により、被測定物1を3次元測定したが、これに限らず、例えば、第1部分領域S1と第4部分領域S4とを撮像して、同様に3次元測定値を得ることにより、第2、第3部分領域S2,S3を測定することなく、第1部分領域S1の孔と第4部分領域S4の孔との距離Lを測定することも可能である。
【0046】
このように、本実施形態の3次元形状測定方法によると、定盤面12上に設けたマーク14により、簡単に合成できると共に、被測定物1には貼り付けないので、測定できなくなる箇所が生じることはない。
【0047】
次に、前述した実施形態と異なる第2実施形態について、図4〜図6によって説明する。尚、前述した実施形態と同じ部材やステップには同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
本第2実施形態では、予め制御装置8にマーク14の大きさとマーク14の中心間隔Px,Py等を記憶しない。前述した定盤10の定盤面12に同様に被測定物1を載置して、形状測定器2で測定する。
【0049】
第2実施形態では、図7に示すように、被測定物1はパイプの曲げ加工成形品で、CCDカメラ4により被測定物1の全体を一度に撮像して、3次元形状測定を行ったのでは十分な測定精度が得られない。
【0050】
そこで、CCDカメラ4により被測定物1を撮像する領域を複数に分割し、本第2実施形態では3つの第1〜第3部分領域S1〜S3に分割して形状測定器2により被測定物1を撮像する。その際、各第1〜第3部分領域S1〜S3は、被測定物1の陰になることなく、少なくとも3つのマーク14を含んで撮像できるように決定される。
【0051】
また、隣同士の第1〜第3部分領域S1〜S3では、それぞれの第1〜第3部分領域S1〜S3に共通の3つのマーク14が含まれるように決定される。第1部分領域S1には3つのマーク14s1-1,14s1-2,14s1-3が含まれ、第2部分領域S2には同じマーク14s2-1,14s2-2,14s2-3が含まれる。更に、第2部分領域S2には他の3つのマーク14s2-4,14s2-5,14s2-6が含まれ、第3部分領域S3には同じマーク14s3-4,14s3-5,14s3-6が含まれる。
【0052】
3次元形状測定処理では、この撮像したデータから、まず、第1部分領域S1の測定値Ps1(s1xn,s1yn,s1zn)を算出する(ステップ100)。添字nはn個の測定点があることを示す。
【0053】
次に、第1部分領域S1の測定値Ps1(s1xn,s1yn,s1zn)からマーク14を認識する(110)。マーク14は全て円形の有底孔であり、撮像したデータから容易に認識でき、認識したマーク14の中心位置を算出する。
【0054】
認識した多くのマーク14のうち、例えば、三角形をなす3つのマーク14の中心位置から、定盤面12を認識する(ステップ115)。そして、認識したマーク14の大きさと隣り合うマーク14との中心間隔Pを算出する(120)。
【0055】
更に、他の部分領域S2,S3がある場合には(ステップ150)、引き続き繰り返し実行して、各部分領域S2,S3毎にマーク14を認識すると共に、定盤面12を認識し、更に、マーク14の大きさ・間隔を算出する。
【0056】
続いて、第1〜第3部分領域S1〜S3の測定値Ps1〜Ps3を、共通の3次元座標系で合成する処理を実行する(ステップ200a)。合成処理では、図6に示すように、まず、共通のマーク14を特定する(210)。
【0057】
ステップ115の処理により認識した第1部分領域S1の定盤面12と、第2部分領域S2の定盤面12とは同一平面上にある。そこで、まず、第1部分領域S1の定盤面12に第2部分領域S2の定盤面12を同一面上とするように、第2部分領域S2の測定値Ps2(s2xn,s2yn,s2zn)を補正する。これにより、両測定値Ps1,Ps2では、第1部分領域S1での隣り合う3つのマーク14による三角形と、第2部分領域S2での隣り合う3つのマーク14による三角形とが、相似関係になる。
【0058】
第1部分領域S1の3つのマーク14s1-1,14s1-2,14s1-3による三角形と、第2部分領域S2の同じマーク14s2-1,14s2-2,14s2-3による三角形とは相似関係にある。
【0059】
前述したと同様に、マーク14の大きさ(直径)と三角形のそれぞれの辺の長さの比とに基づいて、第1部分領域S1の3つのマーク14s1-1,14s1-2,14s1-3と第2部分領域S2の3つのマーク14s2-1,14s2-2,14s2-3とが相似関係であることを認識できる。尚、3つのマーク14により形成される三角形のそれぞれの辺のなす角度を算出しても、他のマーク14から3つのマーク14を特定することができる。
【0060】
特定した第2部分領域S2の3つのマーク14s2-1,14s2-2,14s2-3の各中心位置を定盤面12上で回転させて、特定した3つのマーク14s2-1,14s2-2,14s2-3による三角形を、第1部分領域S1の3つのマーク14s1-1,14s1-2,14s1-3の三角形に重ね合わせるように、第2部分領域S2の測定値Ps2(s2xn,s2yn,s2zn)を変換する(ステップ220)。尚、その際、マーク14の中心間隔Pに基づいて、同じ大きさの三角形となるように、測定値Ps2(s2xn,s2yn,s2zn)を変換する。
【0061】
即ち、第1部分領域S1の測定値Ps1から算出した第1部分領域S1の3つのマーク14s1-1,14s1-2,14s1-3の中心座標位置(x11,y11,z11)(x12,y12,z12)(x13,y13,z13)と、第2部分領域S2の測定値Ps2から算出した同じ3つのマーク14s2-1,14s2-2,14s2-3の中心位置座標(x21,y21,z21)(x22,y22,z22)(x23,y23,z23)とから、第2部分領域S2の測定値Ps2の部分座標系を、第1部分領域S1の部分座標系に変換する
例えば、マーク14s1-1を基準として、第1部分領域S1のマーク14s1-1に、第2部分領域S2のマーク14s2-1を重ね合わせるために、平行移動する変換成分と、第1部分領域S1のマーク14s1-2,14s1-3及び第2部分領域S2のマーク14s2-2,14s2-3マーカーとが同じ位置座標になるように回転移動して重ね合わせる変換成分とを含む。
【0062】
次に、ステップ115の処理により認識した第2部分領域S2の定盤面12と、第3部分領域S3の定盤面12とは同一平面上にある。第2部分領域S2の定盤面12に第3部分領域S3の定盤面12を同一面上とするように、第3部分領域S3の測定値Ps3(s3xn,s3yn,s3zn)を補正する。これにより、両測定値Ps2,Ps3では、第2部分領域S2での隣り合う3つのマーク14による三角形と、第3部分領域S3での隣り合う3つのマーク14による三角形とが、相似関係になる。
【0063】
第2部分領域S2の3つのマーク14s2-4,14s2-5,14s2-6による三角形と第3部分領域S3の同じマーク14s3-4,14s3-5,14s3-6は相似関係にある。前述したと同様に、マーク14の大きさ(直径)と三角形のそれぞれの辺の長さの比とに基づいて、第2部分領域S2の3つのマーク14s2-4,14s2-5,14s2-6と第3部分領域S3の3つのマーク14s3-4,14s3-5,14s3-6とが相似関係であることを特定できる(ステップ230)。
【0064】
特定した第3部分領域S3の3つのマーク14s3-4,14s3-5,14s3-6の各中心位置を定盤面12上で回転させて、特定した3つのマーク14s3-4,14s3-5,14s3-6による三角形を、第2部分領域S2の3つのマーク14s2-4,14s2-5,14s2-6の三角形に重ね合わせるように、第3部分領域S3の測定値Ps3(s3xn,s3yn,s3zn)を変換する。即ち、まず、第3部分領域S3の測定値Ps3の部分座標系を、第2部分領域S2の部分座標系に変換する
第2部分領域S2の部分座標系に変換に変換した第3部分領域S3の測定値Ps3を、ステップ220の処理と同様に、第1部分領域S1の部分座標系に変換する(ステップ240)。そして、測定値Psには、定盤面12やマーク14の測定値も含まれているので、これらの定盤面12やマーク14の測定データを削除し(ステップ250)、一旦本制御処理を終了する。これにより、各測定値Ps1〜Ps3は、第1部分領域S1の座標系に変換され、被測定物1の全体を解像度よく、十分な精度で容易に測定できる。
【0065】
このように、本第2実施形態の3次元形状測定方法によっても、定盤面12上に設けたマーク14により、簡単に合成できると共に、被測定物1には貼り付けないので、測定できなくなる箇所が生じることはない。
【0066】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0067】
1…被測定物 2…形状測定器
4…カメラ 6…フリンジプロジェクター
8…制御装置 10…定盤
12…定盤面 14…マーク
S1〜S5…部分領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤の平坦な定盤面に多数のマークを形成すると共に、多数の前記マークから大きさと間隔との違いにより少なくとも3つの前記マークを特定可能に形成し、
前記定盤面に前記定盤面より小さな被測定物を載置して、
前記被測定物の部分領域を3次元形状測定手段により少なくとも3つの前記マークと共に光学的に3次元測定して測定値を得て、その後、更に、前記3次元形状測定手段を移動して、少なくとも3つの前記マークと共に前記被測定物の他の部分領域を光学的に3次元測定して測定値を得て、前記マークの大きさ及び間隔に基づいて、前記部分領域が異なる前記両測定値を同一座標系に変換して合成することを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項2】
定盤の平坦な定盤面に多数のマークを形成すると共に、多数の前記マークから大きさと間隔との違いにより少なくとも3つの前記マークを特定可能に形成し、かつ、前記各マークの大きさと間隔とを記憶し、
前記定盤面に前記定盤面より小さな被測定物を載置して、
前記被測定物の部分領域を3次元形状測定手段により少なくとも3つの前記マークと共に光学的に3次元測定して測定値を得て、その後、前記3次元形状測定手段を移動して、少なくとも3つの前記マークと共に前記被測定物の他の測定箇所の部分領域を光学的に3次元測定して測定値を得て、記憶した前記マークの大きさ及び間隔と測定した前記マークの大きさ及び間隔とに基づいて、前記両測定値を同一座標系に変換して合成することを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項3】
定盤の平坦な定盤面に多数のマークを形成すると共に、多数の前記マークから大きさと間隔との違いにより少なくとも3つの前記マークを特定可能に形成し、
前記定盤面に前記定盤面より小さな被測定物を載置して、
前記被測定物の部分領域を3次元形状測定手段により少なくとも3つの前記マークと共に光学的に3次元測定して測定値を得て、その後、更に、前記3次元形状測定手段を移動して、先の前記部分領域の同じ3つの前記マークと共に前記被測定物の他の部分領域を光学的に3次元測定して測定値を得て、先の前記部分領域の前記マークの大きさと間隔及び他の部分領域の前記マークの大きさと間隔に基づいて、前記部分領域が異なる前記両測定値を同一座標系に変換して合成することを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項4】
前記マークは、円形の有底孔を機械加工して形成、あるいは印刷により形成、あるいは、円形のシールを貼り付けて形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の3次元形状測定方法。
【請求項5】
前記3次元形状測定手段による少なくとも3つの前記マークの前記測定値に基づいて、前記定盤面を認識し、前記部分領域が異なる前記両測定値の前記定盤面を同一平面上に補正してから、前記マークの大きさ及び間隔とに基づいて、前記両測定値を同一座標系に変換して合成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の3次元形状測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−47876(P2011−47876A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198232(P2009−198232)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(394017929)
【Fターム(参考)】