説明

3次元相対座標計測装置およびその方法

【課題】撮影点におけるカメラの位置および姿勢を事前に把握することなく相対座標を計測することができる3次元相対座標計測装置を提供する。
【解決手段】3次元相対座標計測装置90は、第1の視点より3点の基準点が撮像装置で撮像された第1の取得画像を取得する画像取得部100と、各画素に対する画素視点投影角の情報を保持し、情報を用いて、第1の取得画像に投影される3点の基準点に対応する画素視点投影角である3つの第1の基準視点投影角を取得する視点投影角抽出部120と、3つの第1の基準視点投影角と3点の基準点の相対座標とを用いて、第1の取得画像の撮像面である第1の撮像面と3点の基準点を含む基準平面とのなす第1の傾斜角を算出する傾斜角算出部130aと、第1の傾斜角を用いて、3点の基準点のいずれかと対象点との相対座標を計測する相対座標計測部130dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元座標系において、相対座標が既知である3点の基準点のいずれかと、座標が未知である1点の対象点との相対座標を計測する3次元相対座標計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像から相対座標を計測する方法として、ステレオ法が知られている。
【0003】
ステレオ法は、異なる位置に置かれた2つのカメラで撮像する、または、1つのカメラで異なる2つの位置から撮影することにより、2つの画像を得る。そして、ステレオ法は、人間の両眼視のように、視差に基づく画像の微妙な違いから、相対座標情報を得る。
【0004】
特許文献1では、ステレオ法により、精度の高い測量を行うことができる写真計測システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−221072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、傾斜角センサ等の検知機器を用いることにより、撮影点におけるカメラの位置および姿勢を事前に把握していることが前提となる。
【0007】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、撮影点におけるカメラの位置および姿勢を事前に把握することなく相対座標を計測することができる3次元相対座標計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る相対座標計測装置は、3次元座標系における相対座標が既知である3点の第1の基準点のいずれかと、前記3次元座標系における座標が未知である1点の対象点との相対座標を計測する3次元相対座標計測装置であって、第1の視点より前記3点の第1の基準点が第1の撮像装置で撮像された第1の取得画像を取得する画像取得部と、各画素に対する第1の画素視点投影角の情報を保持し、前記情報を用いて、前記第1の取得画像に投影される前記3点の第1の基準点に対応する前記第1の画素視点投影角である3つの第1の基準視点投影角を取得する視点投影角抽出部とを備え、前記第1の画素視点投影角は、前記第1の取得画像における各画素の座標である第1の画素2次元座標に投影される前記3次元座標系の各点と前記第1の視点とを結ぶ線分と、前記第1の撮像装置の光軸とのなす角であり、さらに、前記3つの第1の基準視点投影角と前記3点の第1の基準点の相対座標とを用いて、前記第1の取得画像の撮像面である第1の撮像面と前記3点の第1の基準点を含む第1の基準平面とのなす第1の傾斜角を算出する傾斜角算出部と、前記第1の傾斜角を用いて、前記3点の第1の基準点のいずれかと前記対象点との相対座標を計測する計測部とを備える。
【0009】
これにより、視点投影角を用いることによって、撮影点におけるカメラの位置および姿勢を事前に把握することなく相対座標を計測することができる。
【0010】
また、前記3点の第1の基準点は、前記3次元座標系における相対座標が既知である3点以上の基準点のうちのいずれか3点であり、前記画像取得部は、前記第1の視点より前記3点の第1の基準点と前記対象点とが前記第1の撮像装置で撮像された前記第1の取得画像を取得し、第2の視点より、前記3点以上の基準点のうちのいずれか3点である3点の第2の基準点と前記対象点とが、前記第1の撮像装置と同一又は異なる第2の撮像装置で撮像された第2の取得画像を取得し、前記視点投影角抽出部はさらに、各画素に対する第2の画素視点投影角の情報を保持し、前記第2の画素視点投影角の情報を用いて、前記第2の取得画像に投影される前記3点の第2の基準点に対応する前記第2の画素視点投影角である3つの第2の基準視点投影角を取得し、前記第2の画素視点投影角は、前記第2の取得画像における各画素の座標である第2の画素2次元座標に投影される前記3次元座標系の各点と前記第2の視点とを結ぶ線分と、前記第2の撮像装置の光軸とのなす角であり、前記傾斜角算出部はさらに、前記3つの第2の基準視点投影角と前記3点の第2の基準点の相対座標とを用いて、前記第2の取得画像の撮像面である第2の撮像面と前記3点の第2の基準点を含む第2の基準平面とのなす第2の傾斜角を算出し、前記計測部は、前記3点の第1の基準点と前記3点の第2の基準点との相対位置関係と、前記第1の傾斜角と、前記第2の傾斜角とを用いて、前記3点の第1の基準点および前記3点の第2の基準点のいずれかと前記対象点との相対座標を計測してもよい。
【0011】
上記により、2枚の画像を使用して、視点投影角を用いることにより、各撮影点におけるカメラの相対姿勢関係を事前に把握することなく、また、各撮影点におけるカメラの相対位置関係を確定させることなく3点の基準点のいずれかと対象点との相対座標を計測することができる。
【0012】
また、前記傾斜角算出部は、前記3つの第1および第2の基準視点投影角と前記3点の第1および第2の基準点とを用いて、前記第1の視点と前記第1の取得画像に投影される前記3点の第1の基準点のそれぞれとを結ぶ直線上にある前記3点の第1の基準点を含む前記第1の基準平面を決定し、前記第2の視点と前記第2の取得画像に投影される前記3点の第2の基準点のそれぞれとを結ぶ直線上にある前記3点の第2の基準点を含む前記第2の基準平面を決定してもよい。
【0013】
また、前記視点投影角抽出部はさらに、前記第1の取得画像に投影される前記対象点に対応する前記第1の画素視点投影角である第1の対象視点投影角を取得し、前記第2の取得画像に投影される前記対象点に対応する前記第2の画素視点投影角である第2の対象視点投影角を取得し、前記計測部は、前記第1の対象視点投影角と、前記第1の傾斜角とを用いて、前記3次元座標系における、前記第1の視点と前記第1の取得画像に投影される前記対象点とを通る第1のベクトルを算出し、前記第2の対象視点投影角と、前記第2の傾斜角とを用いて、前記3次元座標系における、前記第2の視点と前記第2の取得画像に投影される前記対象点とを通る第2のベクトルを算出し、前記相対位置関係を用いて、前記3次元座標系における、前記第1のベクトルと前記第2のベクトルとの最接近点の座標を、前記3点の第1の基準点及び前記3点の第2の基準点のいずれかと前記対象点との相対座標として算出してもよい。
【0014】
また、前記3点の第1の基準点のうち少なくとも一つは、前記3点の第2の基準点と異なってもよい。
【0015】
また、前記対象点は前記第1の視点であってもよい。
【0016】
上記により、1枚の画像を使用して、視点投影角を用いることにより、撮影点におけるカメラの姿勢を事前に把握することなく、3点の基準点のいずれかと撮影点との相対座標を計測することができる。
【0017】
また、前記傾斜角算出部は、前記3つの第1の基準視点投影角と前記3点の第1の基準点とを用いて、前記第1の視点と前記第1の取得画像に投影される前記3点の第1の基準点のそれぞれとを結ぶ直線上にある前記3点の第1の基準点を含む前記第1の基準平面を決定してもよい。
【0018】
上記により、傾斜角算出部によって、撮影点におけるカメラの姿勢を算出することができる。
【0019】
また、前記計測部は、前記3つの第1の基準視点投影角のうち2つの角と、前記第1の傾斜角とを用いて、前記第1の基準平面における、前記2つの角に対応する前記3点の第1の基準点のうち2点とを通る2本のベクトルを算出し、前記2本のベクトルの最接近点の座標を、前記3点の第1の基準点のいずれかと前記対象点との相対座標として算出してもよい。
【0020】
なお、本発明は、このような3次元相対座標計測装置として実現することができるだけでなく、このような3次元相対座標計測装置が備える特徴的な構成部の動作をステップとする3次元相対座標計測方法、または、それらのステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、撮影点におけるカメラの位置および姿勢を事前に把握することなく相対座標を計測することができる3次元相対座標計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1Aは、本発明に係る3次元相対座標計測時における、3次元相対座標計測装置を含むシステムの構成を示す図である。
【図1B】図1Bは、本発明に係る画像のピクセルキャリブレーション時における、3次元相対座標計測装置を含むシステムの構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明に係る3次元相対座標計測装置の特徴的な機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明に係る画像のピクセルキャリブレーションの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明に係る視点投影角を説明する図である。
【図5A】図5Aは、本発明に係る歪み補正前において、キャリブレーション板を撮影した際の画像を示す図である。
【図5B】図5Bは、本発明に係る歪み補正後において、キャリブレーション板を撮影した際の画像を示す図である。
【図6】図6は、本発明に係るキャリブレーション板と視点との距離を算出するための処理を説明する図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1に係る3次元相対座標計測装置による、相対座標計測の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の実施の形態1に係る視点、撮像面、基準点、対象点の関係を3次元的に示す図である。
【図9A】図9Aは、本発明の実施の形態1に係る第1の撮像面に投影される基準点および対象点を示す図である。
【図9B】図9Bは、本発明の実施の形態1に係る第2の撮像面に投影される基準点および対象点を示す図である。
【図10】図10は、本発明に係る傾斜角算出部が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、本発明に係る、図10のフローチャートに示される処理を説明する図である。
【図12】図12は、本発明に係る、図11をZ−X平面上に投影した際の図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態2に係る3次元相対座標計測装置による、相対座標計測の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】図14は、本発明の実施の形態2に係る視点、撮像面、基準点の関係を3次元的に示す図である。
【図15】図15は、本発明の実施の形態2に係る第1の撮像面に投影される基準点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
まず、本発明に係る3次元相対座標計測装置を含むシステムの構成を、本発明の実施の形態に係る3次元相対座標計測時と画像のピクセルキャリブレーション時とに分けて説明する。
【0025】
図1Aは、本発明に係る3次元相対座標計測時における、3次元相対座標計測装置を含むシステムの構成を示す図である。なお、図1Aは、2つの視点から、2枚の画像を取得する際におけるシステムの構成を示している。本発明に係る3次元相対座標計測装置90は、ケーブル30を介して、カメラ10と接続される。ケーブル30は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ケーブルである。このことにより、3次元相対座標計測装置90は、カメラ10によって撮像された画像データ60を、ケーブル30を介して取得することができる。なお、ケーブル30は、USB以外のケーブルを用いてもよい。また、画像データ60は、無線や記録媒体経由で取得してもよい。
【0026】
カメラ10は、基準構造物40と対象構造物50とが共に写るように、それぞれ異なる第1の視点Mおよび第2の視点Mにおいて撮像する。ここで、MおよびMは、カメラ10の撮影レンズの主点の位置に対応している。また、図1A中、2点鎖線で書かれているOおよびOは、それぞれMおよびMに視点があるときの撮影レンズの光軸(カメラの光軸)を示している。なお、1つの視点から、1枚の画像を取得する際には、カメラ10は、基準構造物40が写るように、第1の視点において撮像すればよい。基準構造物40は、3次元座標系において、相対座標が既知である3点の基準点A、B、Cを有している。言い換えると、点A、B、Cによって定義される三角形を基準構造物40と呼ぶ。
【0027】
対象構造物50は、3次元座標系において、座標が未知である対象点Wを有している。なお、1つの視点から、1枚の画像を取得する際には、対象構造物50は使用しなくてもよい。
【0028】
図1Bは、本発明に係る画像のピクセルキャリブレーション時における、3次元相対座標計測装置を含むシステムの構成を示す図である。本発明に係る3次元相対座標計測装置90は、ケーブル30を介して、カメラ10と接続される。ケーブル30は、例えば、USBケーブルである。このことにより、3次元相対座標計測装置90は、カメラ10によって撮像された画像データ61を、ケーブル30を介して取得することができる。なお、ケーブル30は、USB以外のケーブルを用いてもよい。また、画像データ61は、無線や記録媒体経由で取得してもよい。
【0029】
カメラ10は、キャリブレーション板70が写るように、視点Mにおいて撮像する。ここで、Mは、カメラ10の撮影レンズの主点の位置に対応している。また、図1B中、2点鎖線で書かれているOは、Mに視点があるときの撮影レンズの光軸(カメラの光軸)を示している。
【0030】
キャリブレーション板70は、剛性が高い透明な板であり、表面には碁盤の目が記されている。また、キャリブレーション板70には、糸71によって錘72が取り付けられている。
【0031】
3次元相対座標計測装置90は、例えば、コンピュータである。なお、本実施の形態では、3次元相対座標計測時と画像のピクセルキャリブレーション時とで共通のコンピュータを使用しているが、別々のコンピュータとしてもよい。また、コンピュータは2台以上使用してもよい。
【0032】
図2は、本発明に係る3次元相対座標計測装置の特徴的な機能構成を示すブロック図である。
【0033】
3次元相対座標計測システム90は、本発明に係る3次元相対座標計測部20および画像のピクセルキャリブレーション部80を備える。
【0034】
また、本発明に係る3次元相対座標計測部20は、画像取得部100、2次元座標抽出部110、視点投影角抽出部120、演算部130および表示部140を備える。さらに、画像のピクセルキャリブレーション部80は、調整部200を備える。
【0035】
調整部200は、視点Mより、キャリブレーション板70、糸71および錘72が撮像された画像データ61から、画像ピクセルの歪み補正を行い、任意の画像ピクセル(画素)の視点投影角(本発明の第1および第2の画素視点投影角に相当する)を算出する。
【0036】
画像取得部100は、第1の視点Mより、3点の基準点、または、3点の基準点と対象点とがカメラ(本発明の第1のおよび第2の撮像装置に相当する)で撮像された画像データ60を第1の取得画像として取得する。また、画像取得部100は、第2の視点Mより、3点の基準点と対象点とがカメラで撮像された画像データ60を第2の取得画像として取得する。
【0037】
2次元座標抽出部110は、画像取得部100によって取得された第1の取得画像に投影される3点の基準点、または、3点の基準点および対象点の2次元座標を抽出する。また、2次元座標抽出部110は、画像取得部100によって取得された第2の取得画像に投影される3点の基準点および対象点の2次元座標を抽出する。
【0038】
視点投影角抽出部120は、予め調整部200によって算出された任意の画像ピクセルの視点投影角を保持し、保持する任意の画像ピクセルの視点投影角の中から、2次元座標抽出部110によって抽出された2次元座標に対応する視点投影角を、任意の画像ピクセルの視点投影角の中から抽出する。なお、視点投影角の定義については、後で図4を用いて説明する。
【0039】
ここで、演算部130は、さらに、傾斜角算出部130a、ベクトル算出部130b、変換ベクトル算出部130cおよび相対座標計測部130dを備える。
【0040】
傾斜角算出部130aは、3点の基準点の相対座標並びに視点投影角抽出部120で抽出された視点投影角を用いて、それぞれ第1の傾斜角および第2の傾斜角を算出する。
【0041】
ベクトル算出部130bは、視点投影角抽出部120で抽出された視点投影角を用いて、それぞれ第1のベクトルおよびベクトル2を算出する。また、ベクトル算出部130bは、視点投影角抽出部120で抽出された視点投影角および傾斜角算出部130aで算出された第1の傾斜角を用いて、2本のベクトルを算出する。
【0042】
変換ベクトル算出部130cは、傾斜角算出部130aで算出された、第1の傾斜角および第2の傾斜角と、ベクトル算出部130bで算出されたベクトル2とを用いて、第2のベクトルを算出する。
【0043】
相対座標計測部130dは、ベクトル算出部130bで算出された第1のベクトルと変換ベクトル算出部130cで算出された第2のベクトルとを用いて、3点の基準点のいずれかと対象点との相対座標を計測する。また、相対座標計測部130dは、ベクトル算出部130bで算出された2本のベクトルを用いて、3点の基準点のいずれかと撮影点との相対座標を計測する。
【0044】
表示部140は、例えば、画像取得部100によって取得された取得画像の表示を行ったり、2次元座標抽出部110により抽出された2次元座標を表示したり、視点投影角抽出部120によって抽出された視点投影角を表示したり、演算部130によって行われた各種演算結果を表示したりする。
【0045】
次に、以上のように構成された本実施形態における3次元相対座標計測装置を含むシステムの動作について説明する。
【0046】
前提として、3次元相対座標計測部20が相対座標計測を行う前に、画像のピクセルキャリブレーションを行う必要がある。
【0047】
図3は、本発明に係る画像のピクセルキャリブレーションの処理手順を示すフローチャートである。画像のピクセルキャリブレーションとは、撮像面の中心点である光学中心位置Cを設定し(S101)、歪み補正を行い(S102)、任意の画像ピクセル(画素)の視点投影角θ(本発明の第1および第2の画素視点投影角に相当する)を算出する(S103)ことである。ここで、任意の画像ピクセルの視点投影角θとは、図4に示すように、画像上の任意の画像ピクセルPの2次元座標(本発明の第1および第2の画素2次元座標に相当する)に投影される3次元空間上の任意の点Pと視点Mとを結ぶ線分と、カメラの光軸O(本発明の第1および第2の撮像装置の光軸に相当する)とのなす角のことである。なお、図4において、カメラの光軸Oと撮像面とは直交するので、視点Mと、カメラの光軸Oと撮像面の交点である光学中心位置Cとの距離xと、例えば、光学中心位置Cを原点とする、任意の画像ピクセルPの2次元座標とを用いて、任意の画像ピクセルPの視点投影角θを算出することができる。
【0048】
まず、光学中心位置Cの設定を行う(S101)。はじめに、剛性が高い透明な板(以下、キャリブレーション板70と記載)には、糸71によって錘72が取り付けられている。キャリブレーション板70は水準器などにより、水平が保たれているものとする。また、キャリブレーション板70の表面には碁盤の目が記されているものとする。次に、上記キャリブレーション板70を上からカメラ10で撮像する。そして、撮像面を、(1)キャリブレーション板70と糸71との取り付け位置と、錘72と糸71との取り付け位置とが重なるように、(2)糸71の取り付け位置を中心に、碁盤の目の表示が対称になるように調整したとき、キャリブレーション板70上の糸71の取り付け位置が光学中心位置Cとなる。
【0049】
次に、調整部200は、画像の歪み補正を行う(S102)。図5Aに示すように、歪み補正前においては、キャリブレーション板70を撮影したときの画像は、カメラ10の撮影レンズの特性により、図5Aのように碁盤の目が歪んだ画像となる。調整部200は、撮像した画像に正規化処理を行うことにより、撮像した画像を図5Bに示すような画像に調整する。
【0050】
最後に、調整部200は、図4に示すように、任意の画像ピクセルPの視点投影角θを算出する(S103)。
【0051】
図6は、本発明に係るキャリブレーション板と視点との距離を算出するための処理を説明する図である。
【0052】
まず、調整部200は、図5Bに示すような、キャリブレーション板70を撮影した歪み補正後の画像である、移動前の板の画像を取得する。次に、調整部200は、キャリブレーション板70を水平に保ったまま、キャリブレーション板70を視点Mに距離y接近させたときのキャリブレーション板70を撮像した歪み補正後の画像である、移動後の板の画像を取得する。そして、調整部200は、移動前の板の画像と移動後の板の画像を用いて、例えば、光学中心位置Cを原点とする、点P’、及び点P’の2次元座標を抽出する。
【0053】
ここで、視点Mと光学中心位置Cとを結ぶ直線と、キャリブレーション板70の表面との交点をCとする。また、キャリブレーション板70表面の任意の点をPとする。また、視点MとPとを結ぶ直線と、撮像面との交点をP’とする。また、移動前のキャリブレーション板70表面のPに対応する、移動後のキャリブレーション板70表面の点をPとする。また、視点MとPとを結ぶ直線と、撮像面との交点をP’とする。また、点Pと点P’とを通る直線と、移動前のキャリブレーション板70の表面との交点をQとする。
【0054】
このとき、線分PQの長さdは、式1で表される。
【0055】
【数1】

【0056】
ここで、dは線分Cの長さ、dは線分P’P’の長さ、dは線分C’の長さを示す。
【0057】
また、点Qの視点投影角θは、式2で表される。
【0058】
【数2】

【0059】
したがって、キャリブレーション板70と視点Mとの距離zは、式3で表される。
【0060】
【数3】

【0061】
ここで、dは、線分CQの長さを示す。
【0062】
そして、キャリブレーション板70と視点Mとの距離zを用いて、例えば、図6におけるP’の視点投影角θは、式4で表される。
【0063】
【数4】

【0064】
視点Mと光学中心位置Cとを結ぶ線分の長さxは、式5で表される。
【0065】
【数5】

【0066】
したがって、任意のピクセル点Pの視点投影角θは、式6にて算出することができる。
【0067】
【数6】

【0068】
ここで、dは、線分CPの長さを示す。
【0069】
つまり、光学中心位置Cを原点とする、任意の画像ピクセルPの2次元座標は既知であるため、任意の画像ピクセルPの視点投影角θを算出することができる。
【0070】
このようにして、光学中心位置Cを設定し、歪み補正を行い、任意の画像ピクセルの視点投影角θを算出されることにより、画像のピクセルキャリブレーションが完了する。
【0071】
以上、画像のピクセルキャリブレーション手法について、実施の形態に基づいて説明したが、画像のピクセルキャリブレーション手法は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0072】
例えば、本実施の形態では、キャリブレーション板70には碁盤の目が記されているものとしていたが、キャリブレーション板には、間隔が既知である印が記されているものとしてもよい。
【0073】
また、本実施の形態では、キャリブレーション時に糸及び錘を用いる例を述べたが、糸及び錘の代わりに、キャリブレーション板と垂直に加工された筒状の構造を通した、ランプ光源からの光線またはレーザ光を用いてもよい。
【0074】
次に、3次元相対座標計測部20が相対座標計測を行う動作について説明する。
【0075】
(実施の形態1)
実施の形態1では、2枚の画像を使用して、3次元相対座標計測部20が、3点の基準点のいずれかと対象点との相対座標を計測する動作について説明する。
【0076】
図7は、本発明の実施の形態1に係る3次元相対座標計測装置による、相対座標計測の処理手順を示すフローチャートである。
【0077】
まず、画像取得部100は、図8に示すように、第1の取得画像および第2の取得画像を取得する(S110)。ここで、第1の取得画像および第2の取得画像は、第1の視点Mおよび第2の視点Mより、座標が既知である3点の基準点A,B,Cと、座標が未知である対象点Wとが共に写るようにカメラ(本発明の第1および第2の撮像装置に相当する)で撮像された画像データ60である。
【0078】
なお、本実施例では、説明の簡略化のため、第1の取得画像および第2の取得画像に含まれる3点の基準点が同一である場合を例に説明するが、第1の取得画像および第2の取得画像に含まれる3点の基準点は異なってもよい。
【0079】
次に、2次元座標抽出部110は、図9Aに示すように、例えば、第1の取得画像における光学中心位置Cp1を原点として、第1の取得画像に投影される基準点A、B,Cである点A01,B01、C01の座標(3点の第1の基準2次元座標)を第1の取得画像から抽出する。また、2次元座標抽出部110は、第1の取得画像に投影される対象点Wである点W01の座標(第1の対象2次元座標)を第1の取得画像から抽出する(S120)。同様に、2次元座標抽出部110は、図9Bに示すように、例えば、第2の取得画像における光学中心位置Cp2を原点として、第2の取得画像に投影される基準点A、B,Cである点A02,B02、C02の座標(3点の第2の基準2次元座標)を第2の取得画像から抽出する。また、2次元座標抽出部110は、第2の取得画像に投影される対象点Wである点W02の座標(第2の対象2次元座標)を第2の取得画像から抽出する(S120)。
【0080】
また、視点投影角抽出部120は、予め調整部200によって算出された任意の画像ピクセルの視点投影角を保持し、保持する任意の画像ピクセルの視点投影角の中から、2次元座標抽出部110によって抽出された3点の第1および第2の基準2次元座標並びに第1および第2の対象2次元座標に対応する任意の画像ピクセルの視点投影角を、3つの第1および第2の基準視点投影角並びに第1および第2の対象視点投影角として抽出する(S130)。
【0081】
そして、傾斜角算出部130aは、第1および第2の取得画像の撮像面である第1および第2の撮像面と、基準点を含む基準平面(第1および第2の基準平面)とのなす角(第1および第2の傾斜角)を算出する(S140)。
【0082】
図10は、本発明に係る傾斜角算出部が行う処理手順を示すフローチャートである。また、図11は、本発明に係る、図10のフローチャートに示される処理を説明する図である。以下、主に図10および図11に基づいて、第1の傾斜角を算出する過程を説明する。
【0083】
まず、傾斜角算出部130aは、相対座標が既知である3点の基準点A,B,Cのうちいずれか1点、例えば、点Aを原点とするX−Y−Z座標系(第1の3次元座標系)を設定する(S141)。このとき、傾斜角算出部130aは、X軸およびY軸は、第1の視点Mより撮像された第1の撮像面と平行になるように設定する。また、傾斜角算出部130aは、Z軸は、第1の視点Mより撮像された第1の撮像面と垂直になるように設定する。なお、このときのX−Y平面を、第1の変換平面とも呼ぶ。
【0084】
次に、傾斜角算出部130aは、相対座標が既知である3点の基準点A,B,Cと同等な第1の仮想点BおよびCの座標を設定する(S142)。ここで、点Bは点Bに相当し、点Cは点Cに相当する。例えば、本実施の形態では、点Bの座標を(B1x,0,0)、点Cの座標を(0,C1y,0)と設定する。
【0085】
そして、傾斜角算出部130aは、点BおよびCを、X軸まわりに角度α1n、Y軸まわりに角度β1n、Z軸まわりに角度γ1n、細かく別々に回転させた複数の第1の変換基準点である、点B1n’(B1nx’,B1ny’,B1nz’)および点C1n’(C1nx’,C1ny’,C1nz’)を算出する(S143)。ここで、n=1、2、3・・・である。
【0086】
次に、傾斜角算出部130aは、視点投影角抽出部120より抽出された視点投影角を用いて、点B1n’および点C1n’を、X−Y平面に投影させた複数の第1の変換投影基準点である、点B1n”(B1nx”,B1ny”,0)および点C1n”(C1nx”,C1ny”,0)を算出する(S144)。ここで、n=1、2、3・・・である。
【0087】
ここで、視点投影角抽出部120により抽出された、点B01のZ−X面の視点投影角をε1x、点B01のZ−Y面の視点投影角をε1y、点C01のZ−X面の視点投影角をφ1x、点C01のZ−Y面の視点投影角をφ1yとする。第1の撮像面における基準点A、B,Cである点A01,B01、C01を結ぶ三角形A010101と、点A、点B1n” 点C1n”を結ぶ三角形A、B1n” C1n”が相似となるときには、図12に示すように、∠B1n’Mp1および∠B1n”Mp1はε1xとなる。
【0088】
したがって、B1nx”は、式7にて算出することができる。
【0089】
【数7】

【0090】
同様にして、B1ny”、C1nx”およびC1ny”は、式8〜式10にて算出することができる。
【0091】
【数8】

【0092】
【数9】

【0093】
【数10】

【0094】
最後に、傾斜角算出部130aは、第1の撮像面における基準点A、B、Cである点A01,B01、C01を結ぶ三角形A010101と、点A、点B1n”、点C1n”を結ぶ三角形AB1n”C1n”とが最も相似となる第1の変換投影基準点B”およびC”を決定することにより、第1の傾斜角(α,β,γ)を算出することができる(S145)。
【0095】
具体的な相似比較計算法として、線分A0101を、線分AB1n”と同じ長さにして、点A01を点Aと一致させるように点B01および点C01を移動させたとき、線分B011n”の長さと線分C011n”の長さとの和が最小となるように、第1の傾斜角(α,β,γ)を算出する方法がある。
【0096】
ただし、相似比較計算法は、上記の方法に限られない。例えば、線分A0101を、線分AB1n”と同じ長さにして、線分A0101を線分AB1n”と一致させるように点C01を移動させたとき、点C01と点C1n”とのずれ量が最小となるように、第1の傾斜角(α,β,γ)を算出してもよい。
【0097】
同様にして、傾斜角算出部130aは、第2の撮像面と、基準点を含む平面とのなす角である第2の傾斜角(α,β,γ)を算出することができる。
【0098】
このようにして、第1の傾斜角および第2の傾斜角が算出される。
【0099】
以上、傾斜角の算出について、実施の形態に基づいて説明したが、傾斜角の算出は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0100】
例えば、本実施の形態では、傾斜角算出部130aは、座標が既知である3点の基準点A,B,Cのうちいずれか1点を原点とするX−Y−Z座標系を設定していたが、原点は、座標が既知である3点の基準点以外から選定してもよい。
【0101】
また、例えば、基準点A、B、Cがある時、点Aを点Aの視点投影角線上のある位置に置き、点Bを点Bの視点投影角線上のある指定ピッチで、かつある範囲間を順次スライドさせた時、あるピッチの時の点Bによる線分ABを元に相似形であることで点Cを求めていき、点Cが線分ABを軸とした円周上にあることがわかる。点Cの視点投影角上に最接近した条件を記憶しておき、点Bを順次スライドさせてその時の点Cの最接近点を算出し、最も接近した時が求める傾斜角としてもよい。
【0102】
また、例えば、基準点A、B、Cがあり、それぞれの各点間の長さが既知の時、点Aを点Aの視点投影角線上のある位置に置き、その時の点Bを点Bの視点投影角線上に置くか近傍に置き、その場合に点Cが線分ABを軸とした円周上にあることがわかるので、点Cの視点投影角線上に最接近した条件を記憶しておき、点Aをある範囲で上記の計算を行ったときの各点が視点投影角線上に最も接近した時が求める傾斜角としてもよい。
【0103】
再度、図7を用いて、本発明の実施の形態1に係る3次元相対座標計測装置による、相対座標計測の処理手順の説明を行う。
【0104】
図7において、傾斜角の算出(S140)が完了した後、ベクトル算出部130bは、第1のベクトルおよびベクトル2を算出する(S150)。
【0105】
まず、第1の撮像面における対象点Wである点W01の第1の対象2次元座標を、三角形A、B”、C”が存在する第1の変換平面上に相似形により換算した点を、W(W1x,W1y,0)とする。
【0106】
次に、点Wと第1の視点Mを結ぶ線分上の点を、W’(W1x’,W1z’,W1z’)としたとき、第1のベクトルは、視点投影角抽出部120により抽出された、点W01のZ−X面の視点投影角η1xおよび点W01のZ−Y面の視点投影角η1yとW1z’とを用いて、(W1x−W1z’tanη1x,W1y−W1z’tanη1y,W1z’)と算出することができる。
【0107】
同様にして、ベクトル算出部130bは、ベクトル2を算出することができる。
【0108】
そして、変換ベクトル算出部130cは、点A、B”、C”のうちいずれか2点を結ぶ線分、例えば、線分AB”と、点A、B”、C” のうち、線分AB”に対応する線分AB”とを抽出する。そして、変換ベクトル算出部130cは、傾斜角算出部130aで求めた第1の傾斜角(α,β,γ)および第2の傾斜角(α,β,γ)を用いて、線分AB”と線分AB”とが重なりあうように、ベクトル2を移動させることで、第2のベクトルを算出する(S160)。
【0109】
最後に、相対座標計測部130dは、第1のベクトルと第2のベクトルとの最接近点の座標を算出することにより、基準点のうちいずれか1点である原点Aと対象点Wとの相対座標を算出する(S170)。
【0110】
なお、上述したベクトル算出部130b、変換ベクトル算出部130c及び相対座標計測部130dは、本発明の計測部に相当する。
【0111】
このようにして、基準点のうちいずれかと対象点との相対座標が算出される。
【0112】
(実施の形態2)
実施の形態2では、1枚の画像を使用して、3次元相対座標計測部20が、3点の基準点のいずれかと撮影点(本発明の第1の視点に相当する)との相対座標を計測する動作について説明する。
【0113】
図13は、本発明の実施の形態2に係る3次元相対座標計測装置による、相対座標計測の処理手順を示すフローチャートである。
【0114】
まず、画像取得部100は、図14に示すように、第1の取得画像を取得する(S210)。ここで、第1の取得画像は、第1の視点Mより、座標が既知である3点の基準点A,B,Cが共に写るようにカメラ(本発明の第1の撮像装置に相当する)で撮像された画像データ60である。
【0115】
次に、2次元座標抽出部110は、図15に示すように、例えば、第1の取得画像における光学中心位置Cp1を原点として、第1の取得画像に投影される基準点A、B,Cである点A01,B01、C01の座標(3点の第1の基準2次元座標)を第1の取得画像から抽出する(S220)。
【0116】
また、視点投影角抽出部120は、予め調整部200によって算出された任意の画像ピクセルの視点投影角を保持し、保持する任意の画像ピクセルの視点投影角の中から、2次元座標抽出部110によって抽出された3点の第1の基準2次元座標に対応する任意の画像ピクセルの視点投影角を、3つの第1の基準視点投影角として抽出する(S230)。
【0117】
そして、傾斜角算出部130aは、第1の取得画像の撮像面である第1の撮像面と、基準点を含む第1の基準平面とのなす角(第1の傾斜角)を算出する(S240)。
【0118】
なお、第1の傾斜角を算出する際の、傾斜角算出部130aが行う処理手順は、図10におけるS141〜S145と同様であるため、説明は省略する。
【0119】
また、ベクトル算出部130bは、2本のベクトルを算出する(S250)。
【0120】
ここで、2本のベクトルとは、例えば、(S145)において決定したB”と、そのときの点B1n’に対応するB’とを結ぶ直線B’B”及び(S145)において決定したC”と、そのときの点C1n’に対応するC’とを結ぶ直線C’C”のことである。
【0121】
最後に、相対座標計測部130dは、2本のベクトルの最接近点の座標を算出することにより、基準点のうちいずれか1点である点Aと撮影点との相対座標を算出する(S260)。
【0122】
また、例えば、基準点A、B、Cがあり、それぞれの各点間の長さが既知の時、点Aを点Aの視点投影角線上のある位置に置き、その時の点Bを点Bの視点投影角線上に置くか近傍に置き、その場合に点Cが線分ABを軸とした円周上にあることがわかるので、点Cの視点投影角線上に最接近した条件を記憶しておき、点Aをある範囲で上記の計算を行ったときの各点が視点投影角線上に最も接近した時が求める傾斜角としてもよい。この場合、点Aと点Bと点Mを結ぶ三角形ABMについて、線分ABの長さ並びに∠MAB及び∠MBAが既知であるため、三角形ABMを用いて、基準点のうちいずれか1点と撮影点との相対座標を算出することができる。また、視点Mから線分ABを見たとして∠AMBが視点投影角により既知であるので、同様に、三角形ABMを用いて、基準点のうちいずれか1点と撮影点との相対座標を算出することができる。
【0123】
このようにして、基準点のうちいずれかと撮影点との相対座標が算出される。
【0124】
以上、本発明の実施の形態に係る3次元相対座標計測装置について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0125】
本実施の形態では、視点投影角抽出部120は、予め調整部200によって算出された任意の画像ピクセルの視点投影角を保持し、保持する任意の画像の視点投影角の中から、2次元座標抽出部110によって抽出された2次元座標に対応する基準および対象視点投影角を抽出していた。しかし、例えば、視点投影角抽出部120は、式6を保持し、保持する式6を用いて、2次元座標抽出部110によって抽出された2次元座標と歪み補正式とを用いて基準および対象視点投影角を算出してもよい。この場合、調整部200は、式5により、視点Mと光学中心位置Cとの距離xを求めておく必要がある。
【0126】
また、本実施の形態では、2次元座標抽出部110において、第1および第2の取得画像における3点の基準点および対象点の2次元座標を抽出していたが、例えば、画像取得部100が上記2次元座標を抽出してもよい。この場合には、2次元座標抽出部110は不要となる。
【0127】
また、本実施の形態では、傾斜角算出部130aにおいて、2つの異なる3次元座標系を設定することにより、第1の傾斜角および第2の傾斜角を算出したが、1つの3次元座標系のみを設定することより、第1の傾斜角および第2の傾斜角を算出してもよい。この場合、ベクトル算出部130bにおいて、第1の対象視点投影角と第1の傾斜角を用いて、1つの3次元座標系における点Mと点W01とを通る第1のベクトルを算出する。また、ベクトル算出部130bにおいて、第2の対象視点投影角と第2の傾斜角を用いて、1つの3次元座標系における点Mと点W02とを通る第2のベクトルを算出する。したがって、この場合には、変換ベクトル算出部130cは不要となる。
【0128】
また、本実施の形態では、傾斜角算出部130aにおいて、2つの異なる3次元座標系を設定することにより、第1の傾斜角および第2の傾斜角を算出する場合においても、変換ベクトル算出部130cの代わりにベクトル算出部130bで演算を行ってもよい。
【0129】
また、本実施の形態では、2つの視点から撮影を行ったが、3つ以上の視点から撮影を行ったり、相対座標が既知である基準点の数を4点以上に増やしたりしてもよい。
【0130】
また、相対座標が既知である4点以上の基準点を用いる場合、2つの画像の各々には、この4点以上の基準点のうち、少なくとも3点の基準点が撮影されていればよい。また、各画像に撮影される少なくとも3点の基準点の組み合わせは異なってもよい。また、4点以上の基準点は同一平面に配置されるのではなく、立体的に配置されていることが好ましい。例えば、三角錐、又は四角錐の頂点のうち4点以上を基準点として用いることができる。これにより、広範囲で安定的な角度検出を行える。例えば、上述した3点の基準点のみを用いる場合では、3点の基準点を含む平面と視点との角度が無いと誤差が発生しやすくなる。一方で、例えば、2つの視点から、上記三角錐の異なる面を撮影することで、このような場合でも安定して角度検出を行える。
【0131】
この場合、傾斜角は、異なる基準変面(第1および第2の基準平面)に対する角度である。また、相対座標計測部130dは、3点の第1の基準点と3点の第2の基準点との相対位置関係を用いて、対象点の相対座標を算出する。具体的には、相対座標計測部130dは、当該相対位置関係を用いて、2本のベクトルの最接近点を算出する。また、この相対位置関係は、傾斜角算出時に計算されてもよい。言い換えると、算出される傾斜角はどちらかの基準平面に合わせたものであってもよい。または、算出される傾斜角は、3次元座標系で統一された角度で算出されてもよい。
【0132】
また、相対座標が既知である基準点の数を多く用いて、非線形近似計算を行うことにより、第1の傾斜角および第2の傾斜角を算出してもよい。
【0133】
また、例えば、相対座標が既知である3点の基準点A、B、Cと、第1の撮像面における基準点A、B,Cである点A01,B01、C01とのうち、点Aと点A01、点Bと点B01、点Cと点C01のそれぞれが対応づけられない場合には、特別なマーカーやラインを使用することにより、対応関係を識別することができる。
【0134】
また、基準点の回転による反転(裏返り)および誤った解(傾斜角)の算出を防ぐために相対座標が既知の検証用の基準点を用いてもよい。
【0135】
また、誤った解を算出しないために制限(例えば、回転条件)を加えてもよい。
【0136】
また、本発明の実施の形態に係る、3次元相対座標計測装置の機能の一部または全てを、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0137】
さらに、構成要素間の接続関係は、本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0138】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を上記3次元計測装置が並列または時分割に処理してもよい。
【0139】
さらに、本発明は上記プログラムであってもよいし、上記プログラムが記録された非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。また、上記プログラムは、インターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【0140】
また、上記3次元計測装置の構成は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、本発明に係る3次元計測装置は、上記構成の全てを必ずしも備える必要はない。言い換えると、本発明に係る3次元計測装置は、本発明の効果を実現できる最小限の構成のみを備えればよい。
【0141】
同様に、上記の3次元計測装置による3次元計測方法は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、本発明に係る3次元計測装置による3次元計測方法は、上記ステップの全てを必ずしも含む必要はない。言い換えると、本発明に係る3次元計測方法は、本発明の効果を実現できる最小限のステップのみを含めばよい。
【0142】
また、上記のステップが実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。
【0143】
また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0144】
さらに、本発明の主旨を逸脱しない限り、本実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、3次元相対座標計測、例えば機械的および電気的に相対座標を計測することができない環境において、2点間の間隔を自動測定する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0146】
10 カメラ
20 3次元相対座標計測部
30 ケーブル
40 基準構造物
50 対象構造物
60、61 画像データ
70 キャリブレーション板
71 糸
72 錘
80 画像のピクセルキャリブレーション部
90 3次元相対座標計測装置
100 画像取得部
110 2次元座標抽出部
120 視点投影角抽出部
130 演算部
130a 傾斜角算出部
130b ベクトル算出部
130c 変換ベクトル算出部
130d 相対座標計測部
140 表示部
200 調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元座標系における相対座標が既知である3点以上の基準点のうちのいずれか3点である3点の第1の基準点及び前記3点以上の基準点のうちのいずれか3点である3点の第2の基準点のいずれかと、前記3次元座標系における座標が未知である1点の対象点との相対座標を計測する3次元相対座標計測装置であって、
第1の視点より前記3点の第1の基準点と前記対象点とが第1の撮像装置で撮像された第1の取得画像を取得し、第2の視点より前記3点の第2の基準点と前記対象点とが前記第1の撮像装置と同一又は異なる第2の撮像装置で撮像された第2の取得画像を取得する画像取得部と、
各画素に対する第1の画素視点投影角の情報を保持し、前記第1の画素視点投影角の情報を用いて、前記第1の取得画像に投影される前記3点の第1の基準点である3点の第1の画像基準点に対応する前記第1の画素視点投影角である3つの第1の基準視点投影角と、前記第1の取得画像に投影される前記対象点に対応する前記第1の画素視点投影角である第1の対象視点投影角とを取得し、各画素に対する第2の画素視点投影角の情報を保持し、前記第2の画素視点投影角の情報を用いて、前記第2の取得画像に投影される前記3点の第2の基準点である3点の第2の画像基準点に対応する前記第2の画素視点投影角である3つの第2の基準視点投影角と、前記第2の取得画像に投影される前記対象点に対応する前記第2の画素視点投影角である第2の対象視点投影角とを取得する視点投影角抽出部とを備え、
前記第1の画素視点投影角は、前記第1の取得画像における各画素の座標である第1の画素2次元座標に投影される前記3次元座標系の各点と前記第1の視点とを結ぶ線分と、前記第1の撮像装置の光軸とのなす角であり、
前記第2の画素視点投影角は、前記第2の取得画像における各画素の座標である第2の画素2次元座標に投影される前記3次元座標系の各点と前記第2の視点とを結ぶ線分と、前記第2の撮像装置の光軸とのなす角であり、
さらに、
前記3つの第1の基準視点投影角と前記3点の第1の基準点の相対座標とを用いて、前記第1の取得画像の撮像面である第1の撮像面と前記3点の第1の基準点を含む第1の基準平面とのなす第1の傾斜角を算出し、前記3つの第2の基準視点投影角と前記3点の第2の基準点の相対座標とを用いて、前記第2の取得画像の撮像面である第2の撮像面と前記3点の第2の基準点を含む第2の基準平面とのなす第2の傾斜角を算出する傾斜角算出部と、
前記第1の対象点投影角の方向に延び、かつ、前記第1の取得画像に投影される前記対象点を通る第1の直線を算出し、前記第2の対象点投影角の方向に延び、かつ、前記第2の取得画像に投影される前記対象点を通る第2の直線を算出するとともに、前記第1の傾斜角および前記第2の傾斜角を用いて当該第1の直線及び当該第2の直線を同一の前記3次元座標系に変換し、前記3点の第1の基準点と前記3点の第2の基準点との相対位置関係を用いて、前記3次元座標系における、前記第1の直線と前記第2の直線との最接近点の座標を、前記3点の第1の基準点及び前記3点の第2の基準点のいずれかと前記対象点との相対座標として算出する計測部とを備える
3次元相対座標計測装置。
【請求項2】
前記3点の第1の基準点のうち少なくとも一つは、前記3点の第2の基準点と異なる
請求項1に記載の3次元相対座標計測装置。
【請求項3】
3次元座標系における相対座標が既知である3点以上の基準点のうちのいずれか3点である3点の第1の基準点及び前記3点以上の基準点のうちのいずれか3点である3点の第2の基準点のいずれかと、前記3次元座標系における座標が未知である1点の対象点との相対座標を計測する3次元相対座標計測方法であって、
第1の視点より前記3点の第1の基準点と前記対象点とが第1の撮像装置で撮像された第1の取得画像を取得し、第2の視点より前記3点の第2の基準点と前記対象点とが前記第1の撮像装置と同一又は異なる第2の撮像装置で撮像された第2の取得画像を取得する画像取得ステップと、
各画素に対する第1の画素視点投影角の情報を保持し、前記第1の画素視点投影角の情報を用いて、前記第1の取得画像に投影される前記3点の第1の基準点である3点の第1の画像基準点に対応する前記第1の画素視点投影角である3つの第1の基準視点投影角と、前記第1の取得画像に投影される前記対象点に対応する前記第1の画素視点投影角である第1の対象視点投影角とを取得し、各画素に対する第2の画素視点投影角の情報を保持し、前記第2の画素視点投影角の情報を用いて、前記第2の取得画像に投影される前記3点の第2の基準点である3点の第2の画像基準点に対応する前記第2の画素視点投影角である3つの第2の基準視点投影角と、前記第2の取得画像に投影される前記対象点に対応する前記第2の画素視点投影角である第2の対象視点投影角とを取得する視点投影角抽出ステップとを含み、
前記第1の画素視点投影角は、前記第1の取得画像における各画素の座標である第1の画素2次元座標に投影される前記3次元座標系の各点と前記第1の視点とを結ぶ線分と、前記第1の撮像装置の光軸とのなす角であり、
前記第2の画素視点投影角は、前記第2の取得画像における各画素の座標である第2の画素2次元座標に投影される前記3次元座標系の各点と前記第2の視点とを結ぶ線分と、前記第2の撮像装置の光軸とのなす角であり、
さらに、
前記3つの第1の基準視点投影角と前記3点の第1の基準点の相対座標とを用いて、前記第1の取得画像の撮像面である第1の撮像面と前記3点の第1の基準点を含む第1の基準平面とのなす第1の傾斜角を算出し、前記3つの第2の基準視点投影角と前記3点の第2の基準点の相対座標とを用いて、前記第2の取得画像の撮像面である第2の撮像面と前記3点の第2の基準点を含む第2の基準平面とのなす第2の傾斜角を算出する傾斜角算出ステップと、
前記第1の対象点投影角の方向に延び、かつ、前記第1の取得画像に投影される前記対象点を通る第1の直線を算出し、前記第2の対象点投影角の方向に延び、かつ、前記第2の取得画像に投影される前記対象点を通る第2の直線を算出するとともに、前記第1の傾斜角および前記第2の傾斜角を用いて当該第1の直線及び当該第2の直線を同一の前記3次元座標系に変換し、前記3点の第1の基準点と前記3点の第2の基準点との相対位置関係を用いて、前記3次元座標系における、前記第1の直線と前記第2の直線との最接近点の座標を、前記3点の第1の基準点及び前記3点の第2の基準点のいずれかと前記対象点との相対座標として算出する計測ステップとを含む
3次元相対座標計測方法。
【請求項4】
請求項3に記載の3次元相対座標計測方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−15519(P2013−15519A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143314(P2012−143314)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【分割の表示】特願2011−541976(P2011−541976)の分割
【原出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(501156350)株式会社ベイビッグ (7)
【Fターム(参考)】