説明

3次元関心領域設定方法,画像取得装置およびプログラム

【課題】 表示された3次元画像に、容易で、しかも目的とする関心領域に適合した3次元関心領域の設定を行う3次元関心領域設定方法,画像取得装置およびプログラムを実現する。
【解決手段】 ステップS1では3次元画像を取得し、ステップS2では3次元画像を上限値および下限値を有する閾値により2値化処理して3次元2値画像を作成し、ステップS3〜10では必要に応じてこの3次元2値画像を画像処理して、3次元関心領域に適合した最適な3次元連続領域の形成および設定を行い、この3次元連続領域で3次元画像計測を行うこととしているので、3次元関心領域に適合した3次元連続領域を、容易に取得することができ、ひいては精度の高い画像計測を行うことを実現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3次元関心領域設定方法,画像取得装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、X線CT装置等の断層像イメージング(imaging)装置では、2次元断層像に加え、連続した撮影位置のこれら2次元断層像から立体的な3次元画像を形成および表示し診断に用いる。操作者は、この立体的な3次元画像を用いることにより、奥行き情報を含む幅広い知見を取得することができる。ここで、操作者は、2次元断層像と同様に、3次元画像中に3次元関心領域を設定し、画像計測あるいは画像抽出等を行う。
【0003】
一方、この3次元関心領域の設定は、球、直方体あるいは楕円体等の立体の領域を、3次元画像の関心領域にフィッティング(fitting)して形成するか、あるいは別の方法として、2次元断層像中に設定された複数の点を結んで求められる多角形状の領域(トレース(trace)図形)を、この2次元断層像面と直交する方向に連続する複数の2次元断層像中に設定し、これら複数の多角形を重ねたものとして形成する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002―282235号公報、(第1頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記背景技術によれば、3次元関心領域の設定は、容易でないと同時に、目的とする関心領域に適合したものとならない。すなわち、目的とする関心領域が複雑な形状を有する際に、立体図形を用いて3次元関心領域を設定すると、目的とする関心領域との一致は良いものとはならず、また、複数の多角形状の領域を重ねて3次元関心領域を設定すると、多くの時間および工数が必要となる。
【0005】
これらのことから、表示された3次元画像に、容易で、しかも目的とする関心領域に適合した3次元関心領域の設定を行う3次元関心領域設定方法,画像取得装置およびプログラムをいかに実現するかが重要となる。
【0006】
この発明は、上述した背景技術による課題を解決するためになされたものであり、表示された3次元画像に、容易で、しかも目的とする関心領域に適合した3次元関心領域の設定を行う3次元関心領域設定方法,画像取得装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の観点の発明にかかる3次元関心領域設定方法は、3次元画像を取得し、濃淡画素から構成される前記3次元画像を、閾値に基づいて2値化処理した3次元2値画像を作成し、前記閾値および前記2値化処理を調整しつつ、前記3次元2値画像を繰り返し作成および表示して前記3次元2値画像の2値領域を最適化し、前記最適化された2値領域を用いて3次元関心領域を領域抽出し、前記3次元関心領域を、前記3次元画像の関心領域として領域設定する。
【0008】
この第1の観点による発明では、3次元画像の画素を2値化処理し、この3次元2値画像の2値領域を最適化し、この最適化された2値領域を用いて3次元関心領域の領域抽出を行ってから関心領域の領域設定を行う。
【0009】
また、第2の観点の発明にかかる3次元関心領域設定方法は、第1の観点において、前記閾値が、上限値および下限値を備えることを特徴とする。
この第2の観点の発明では、3次元画像の中間値を有する画素値領域を、3次元2値画像として作成する。
【0010】
また、第3の観点の発明にかかる3次元関心領域設定方法は、第1または2の観点において、前記最適化が、前記閾値を入力し、前記閾値により分類される濃淡画素値領域に2値を割り当てることを特徴とする。
【0011】
この第3の観点の発明では、3次元2値画像を作成する際の画素値の閾値を、操作者が自由に決定し、また2値の割り当ても操作者が自由に決定する。
また、第4の観点の発明にかかる3次元関心領域設定方法は、第1ないし3のいずれか1つの観点において、前記最適化が、前記2値領域を、前記3次元画像に重ねて表示することを特徴とする。
【0012】
この第4の観点の発明では、3次元画像の目的とする関心領域を、適格に2値領域に反映する。
また、第5の観点の発明にかかる3次元関心領域設定方法は、第1ないし4のいずれか1つの観点において、前記領域抽出が、前記2値領域に画像処理を施すことを特徴とする。
【0013】
この第5の観点の発明では、領域抽出により、2値領域を一層目的とする関心領域に適合させる。
また、第6の観点の発明にかかる3次元関心領域設定方法は、第5の観点において、前記画像処理が、論理フィルタ処理、モフォロジフィルタ処理、空間フィルタ処理、アフィン変換処理および多次座標変換処理の少なくとも1つを行うことを特徴とする。
【0014】
この第6の観点の発明では、画像処理により、3次元2値画像の位置、形状、大きさあるいは滑らかさ等の表面形状を変化させ、目的とする関心領域に適合したものあるいは画像計測等の後処理を精度良く行えるものとする。
【0015】
また、第7の観点の発明にかかる3次元関心領域設定方法は、第1ないし6のいずれか1つの観点において、前記領域抽出が、前記3次元関心領域を、手動で変形あるいは編集することを特徴とする。
【0016】
この第7の観点の発明では、領域抽出により、画像処理では上手く行うことができない3次元2値画像と目的とする関心領域の適合を行う。
また、第8の観点の発明にかかる3次元関心領域設定方法は、第1ないし7のいずれか1つの観点において、前記領域設定が、前記2値領域のいずれか一方の画素値領域を関心領域とすることを特徴とする。
【0017】
この第8の観点の発明では、領域設定により、2値領域が例えば閉領域からなる際に、この閉領域の内側あるいは外側のいずれか1つを自由に関心領域とする。
また、第9の観点の発明にかかる画像取得装置は、3次元画像を取得する3次元画像取得手段と、濃淡画素から構成される前記3次元画像を、閾値に基づいて2値化処理し、3次元2値画像を作成する3次元2値画像作成手段と、前記閾値および前記2値化処理を調整しつつ、前記3次元2値画像を繰り返し作成および表示し、前記3次元2値画像の2値領域を最適化する2値領域最適化手段と、前記最適化された2値領域を用いて3次元関心領域を領域抽出する領域抽出手段と、前記3次元関心領域を、前記3次元画像の関心領域として設定する領域設定手段と、を備える。
【0018】
また、第10の観点の発明にかかる画像取得装置は、第9の観点において、前記閾値が、上限値および下限値を備えることを特徴とする。
また、第11の観点の発明にかかる画像取得装置は、第9または10の観点において、前記2値領域最適化手段が、前記閾値を入力する入力手段および前記閾値により分類される濃淡画素値領域に2値を割り当てる割当手段を備えることを特徴とする。
【0019】
また、第12の観点の発明にかかる画像取得装置は、第9ないし11のいずれか1つの観点において、前記2値領域最適化手段が、前記2値領域を、前記3次元画像に重ねて表示することを特徴とする。
【0020】
また、第13の観点の発明にかかる画像取得装置は、第9ないし12のいずれか1つの観点において、前記領域抽出手段が、前記2値領域に画像処理を施す画像処理手段を備えることを特徴とする。
【0021】
また、第14の観点の発明にかかる画像取得装置は、第13の観点において、前記画像処理手段が、前記3次元2値画像に、論理フィルタ処理を行う3次元論理フィルタ、モフォロジフィルタ処理を行う3次元モフォロジフィルタ、空間フィルタ処理を行う3次元空間フィルタ、アフィン変換処理を行う3次元アフィン変換および多次座標変換処理を行う多次座標変換の少なくとも1つを備えることを特徴とする。
【0022】
また、第15の観点の発明にかかる画像取得装置は、第9ないし14のいずれか1つの観点において、前記領域抽出手段が、前記3次元関心領域を、手動で変形あるいは編集する手動領域抽出手段を備えることを特徴とする。
【0023】
また、第16の観点の発明にかかる画像取得装置は、第9ないし15のいずれか1つの観点において、前記領域設定手段が、前記設定の際に、前記2値領域の2値のいずれか一方の値を関心領域とする関心領域選択手段を備えることを特徴とする。
【0024】
また、第17の観点の発明にかかる画像取得装置は、第9ないし16のいずれか1つの観点において、前記画像取得装置が、断層像イメージング装置あるいは超音波探傷装置であることを特徴とする。
【0025】
また、第18の観点の発明にかかる画像取得装置は、第9ないし17のいずれか1つの観点において、前記画像取得装置が、通信回線を介して接続される画像処理装置を有する際に、前記画像処理装置に前記3次元画像取得手段、前記3次元2値画像作成手段、前記2値領域最適化手段、前記領域抽出手段および前記領域設定手段を備えることを特徴とする。
【0026】
また、第19の観点の発明にかかるプログラムは、画像取得装置あるいは画像処理装置のコンピュータを、3次元画像を取得する3次元画像取得手段、濃淡画素から構成される前記3次元画像を、閾値に基づいて2値化処理し、3次元2値画像を作成する3次元2値画像作成手段、前記閾値および前記2値化処理を調整しつつ、前記3次元2値画像を繰り返し作成および表示し、前記3次元2値画像の2値領域を最適化する2値領域最適化手段、前記最適化された2値領域を用いて3次元関心領域を領域抽出する領域抽出手段、前記3次元関心領域を、前記3次元画像の関心領域として領域設定する領域設定手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、3次元画像の画素値を2値化処理し、この3次元2値画像の2値領域を最適化し、この最適化された2値領域を用いて3次元関心領域の領域抽出を行ってから関心領域の領域設定を行うこととしているので、3次元関心領域の領域設定を、容易に、しかも目的とする関心領域に適合したものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる3次元関心領域設定方法および画像取得装置を実施するための最良の形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態にかかる画像取得装置であるX線CT装置100のブロック(block)図である。このX線CT装置100は、操作コンソール(console)1、撮影テーブル(table)10、走査ガントリ(gantry)20とを含む。
【0030】
操作コンソール1は、操作者の入力を受け付ける入力装置2と、画像再構成処理などを行う中央処理装置3と、走査ガントリ20で取得した投影データ(data)を収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、投影データから再構成したCT画像を表示するモニタ(monitor)6と、プログラム(program)、データあるいはX線CT画像を記憶する記憶装置7とを有する。
【0031】
撮影テーブル10は、被検体を乗せて走査ガントリ20の空洞部に出し入れするクレードル(cradle)12を有する。クレードル12は、撮影テーブル10に内臓するモータで昇降およびテーブル直線移動が行われる。
【0032】
走査ガントリ20は、X線管21と、X線コントローラ(controller)22と、コリメータ(collimator)23と、多列X線検出器24と、データ収集装置DAS(Data Acquisition System)25と、被検体の体軸の回りにX線管21などを回転させる回転部コントローラ26と、制御信号などを前記操作コンソール1や投影テーブル10とやり取りする制御コントローラ29とを有する。また、チルトコントローラ(tiltcontroller)27により、走査ガントリ20はz方向の前方および後方に約±30度ほど傾斜できる。
【0033】
実施の形態におけるX線CTシステム(system)の構成は概ね上記のとおりである。この構成のX線CT装置100において、投影データの収集は例えば次のように行われる。
【0034】
まず、被検体を走査ガントリ20の回転部15の空洞部に位置させた状態でz軸方向の位置を固定し、X線管21からのX線ビーム(beam)を被検体に照射し(X線の投影)、その透過X線を多列X線検出器24で検出する。そして、この透過X線の検出を、X線管21と多列X線検出器24を被検体の周囲を回転させながら(すなわち、投影角度であるビュー(view)角度を変化させながら)複数N(例えば、N=1000)のビュー方向で、360度分データ収集を行う。
【0035】
検出された各透過X線は、DAS(データ収集部)25でディジタル(digital)値に変換されて投影データとしてデータ収集バッファ5を介して操作コンソール1に転送される。この動作を1スキャン(scan)とよぶ。そして、順次z軸方向にスキャン位置を所定量だけ移動して、次のスキャンを行っていく。このようなスキャン方式はコンベンショナルスキャン(conventionalscan)方式またはアキシャルスキャン(axialscan)方式とよばれる。なお、投影角度の変化に同期して撮影テーブル10を所定速度で移動させ、スキャン位置を移動させながら、すなわちX線管21と多列X線検出器24とが被検体の周囲をらせん状に周回しながら、投影データを収集する方式を、ヘリカルスキャン(helicalscan)方式とよぶ。本発明は、コンベンショナルスキャン方式およびヘリカルスキャン方式のいずれにも適用できる。
【0036】
操作コンソール1は、走査ガントリ20から転送されてくる投影データを中央処理装置3のハードディスク(harddisk)に格納するとともに、例えば、所定の再構成関数と重畳演算を行い、逆投影処理により断層画像を再構成する。ここで、操作コンソール1は、スキャン処理中に走査ガントリ20から順次転送されてくる投影データからリアルタイムに断層画像を再構成し、常に最新の断層画像をモニタ6に表示させることが可能である。さらに、ハードディスクに格納されている投影データを呼び出して改めて画像再構成を行わせることも可能である。
【0037】
また、操作コンソール1は、複数の連続する2次元断層像を重ねて3次元画像を作成する3次元画像取得手段、この濃度画素から構成される3次元画像を、入力装置2から入力される閾値に基づいて2値化処理し、3次元2値画像を作成する3次元2値画像作成手段、さらにこの閾値および2値化処理を調整しつつ、3次元2値画像を繰り返し作成および表示し、この3次元2値画像の2値領域を最適化する2値領域最適化手段、この最適化された2値領域を用いて3次元関心領域を領域抽出する領域抽出手段、この抽出された3次元関心領域を、表示される3次元画像の3次元画像に関心領域として領域設定する領域設定手段およびこの3次元関心領域で面積計算等の画像計測を行う画像計測手段を有する。
【0038】
以下、本実施の形態における操作コンソール1の3次元画像取得手段、3次元2値画像作成手段、2値領域最適化手段、領域抽出手段、領域設定手段および画像計測手段の処理内容を、実施の形態1では処理内容を中心に説明し、また実施の形態2および3ではこれら処理を具体的な3次元画像に適用した場合について説明する。
(実施の形態1)
図2は、実施の形態1の操作コンソール1の処理動作を示すフローチャート(flowchart)である。
【0039】
本実施の形態1では、操作コンソール1は、3次元画像を3次元画像取得手段から取得し、3次元関心領域を適切に切り出す基となる、2値化処理のための閾値である上限値および下限値を決めて3次元2値画像を作成する。なお、これら閾値は、2値領域最適化手段により、3次元2値画像を3次元表示して形状などを確認しながら、2値領域を調節して最適化する。また、操作コンソール1は、この3次元2値画像に、必要に応じて画像処理を施し3次元関心領域とする。
【0040】
ステップS1では、操作者は、X線CT装置100を用いて被検体の関心部位を撮影し、3次元画像取得手段により、3次元画像を取得する。なお、取得される3次元画像は、X線CT装置100のコンベンショナルスキャンあるいはアキシャルスキャンを用いて、z方向に位置をずらしながら収集した2次元断層像を、z方向に積重ねた3次元画像でも良いし、ヘリカルスキャンでz方向に連続して収集した断層像情報を、z方向に積重ねた3次元画像でも良いし、シネスキャン(cinescan)で取得された断層像を時系列に並べてXy軸および時間軸をなすt軸からなる3次元画像を用いても良い。
【0041】
ステップS2では、操作者は、2値領域最適化手段により、3次元画像を3次元表示し、3次元関心領域が正しく抽出されるように閾値の下限値である下限CT値、閾値の上限値である上限CT値を設定し、表示確認を繰り返し、最適な3次元2値画像の取得を行う。
【0042】
ここで、2値領域最適化手段は、閾値により分類される多値からなる画素値の各濃淡画素値領域に、2値、例えば0あるいは1を割り当てる割当手段を有する。一例として、操作者は、割当手段により、上限CT値および下限CT値に挟まれる濃淡画素値領域に1を割り当て、上限CT値を越える濃淡画素値領域および下限CT値を越えない濃淡画素値領域に0を割り当てる。
【0043】
また、2値領域最適化手段は、モニタ6に3次元表示された3次元2値画像を表示すると共に、原画像である3次元画像を重ねて3次元表示することで、原画像を確認しつつ、閾値が適正か否かを確認して最適値を決定することができる。
【0044】
ステップS3では、操作者は、領域抽出手段により、3次元ラベリング(labeling)を行い、同一の画素値が連続する位置に存在する領域である3次元連続領域を、3次元連続領域ごとに番号付け、色付けなどで分類・表示し、3次元関心領域を設定する際の基になる3次元連続領域を選択する。
【0045】
領域抽出手段は、2値化処理された3次元画像に3次元ラベリングを行うことにより、この3次元画像を、同一の画素値からなる複数の3次元連続領域に分類されたものとする。ここで、3次元表示する際に、番号付け・色付け等を行うことにより、操作者は、3次元連続領域の表示を視覚的に分類しながら見ることができ、関心のある3次元連続領域のみを選択し易くすることができる。なお、この3次元ラベリングは、3次元ラベリング用近傍フィルタを、3次元2値画像に対して処理することによりなされる。
【0046】
ステップS4では、操作者は、関心のある3次元関心領域が他の関心のない3次元領域とつながっているかどうかを判定する。ここで、操作者は、3次元関心領域が他の関心のない3次元領域とつながっている場合には(ステップS4肯定)、画像処理を行い関心のない3次元領域を切り離し(ステップS5)、3次元関心領域が他の関心のない3次元領域とつながっていない場合には(ステップS4否定)、つぎのステップに移行する。
【0047】
なお、領域抽出手段は、3次元2値画像に画像処理を行う画像処理手段を有し、この画像処理手段は、3次元論理フィルタ(filter)、3次元モフォロジフィルタ、3次元空間フィルタ、3次元アフィン(Affine)変換および多次座標変換等を有する。また、領域抽出手段は、手動で3次元2値画像を、変形あるいは編集する手動領域抽出手段を有する。この手動領域抽出手段は、例えば、モニタ6に表示されるカーソル等を用いて、表示された3次元2値画像の3次元連続領域に、後述する切り離し処理、穴埋め処理、外部領域抽出処理あるいは3次元殻域抽出処理等の各処理を行う。
【0048】
ステップS5では、操作者は、3次元論理フィルタ等の画像処理手段を用いて、関心のない3次元領域を切断するか、もしくは手動領域抽出手段により、手動で関心のない3次元領域を切断する。その後、操作者は、ステップS3に移行し、ステップS5で作成された3次元関心領域を用いてステップS3の処理を行う。
【0049】
図4は、ステップS5で行われる、画像処理手段を用いて関心のない3次元領域を切断する切り離し処理の動作を示すフローチャートである。まず、操作者は、ステップS2で作成された3次元2値画像を表示する(ステップS31)。図5(a)は、3次元関心領域および関心のない3次元領域がつながって存在する例を示す画像である。図5(a)では、左右の球体状の3次元領域は、つながって存在し同一の3次元連続領域をなし、この3次元連続領域内部は画素値1を有し、この3次元連続領域外部は画素値0を有する。そして、左右の球体状の3次元連続領域の一方は、関心のない3次元領域であるとする。なお、この図は、2次元画像を用いて示しているが3次元画像でも全く同様である。
【0050】
その後、操作者は、画像処理手段の3次元論理フィルタを用いて、図5(a)に示す3次元連続領域が2つの3次元領域に切り離される迄N画素分の画像収縮を行う(ステップS32)。なお、この画像収縮は、対象となる3次元領域の境界画素を1層分ずつ繰り返し取り省く処理であり、Nは、繰り返し行われる画像収縮の回数である。図5(b)は、3次元関心領域および関心のない3次元領域が切り離された例を示す画像である。
【0051】
その後、操作者は、画像処理手段はの3次元論理フィルタを用いて、切り離された3次元領域の画素の排他的膨張を、繰り返し行われた画像収縮の回数、すなわちN回分行う(ステップS33)。図5(c)は、3次元関心領域および関心のない3次元領域が切り離された状態で、図5(a)に示す左右に存在する球体状の個別の3次元領域とほぼ同じ大きさになった状態を示す画像である。
【0052】
図2に戻りステップS6では、操作者は、3次元関心領域の境界,表面が充分滑らかかどうかを判定する。ここで、操作者は、3次元関心領域の境界,表面が充分滑らかでない場合には(ステップS6否定)、画像処理を行い3次元関心領域の境界,表面を充分滑らかにし(ステップS7)、3次元関心領域の境界画素,表面が充分滑らかである場合には(ステップS6肯定)、つぎのステップに移行する。
【0053】
なお、2値領域最適化手段が、2値化処理のための最適化を、ステップS1で取得した3次元画像のS/Nがあまり良くない状態で行った場合には、3次元関心領域の表面は凸凹しており、滑らかではなくなる。この場合、後述する3次元画像計測を行う際の精度が悪くなる可能性がある。このため、3次元関心領域の表面はある程度滑らかである必要がある。
【0054】
ステップS7では、操作者は、画像処理手段の3次元論理フィルタまたは3次元モフォロジフィルタ等を用いて、3次元関心領域の境界,表面を滑らかにする。例えば、3次元論理フィルタで(1)突起除去フィルタをかける。(2)膨張フィルタをM回かけた後、収縮フィルタをM回かける。(3)収縮フィルタをM回かける。(4)拡大フィルタをM回かける等の方法がある。その後、操作者は、ステップS6に移行し、ステップS7で作成された3次元関心領域情報を用いてステップS6の処理を行う。
【0055】
ステップS8では、操作者は、3次元関心領域の大きさが適切かどうかを判定する。ここで、操作者は、3次元関心領域の大きさが適切でない場合には(ステップS8否定)、画像処理により大きさを調整し(ステップS9)、3次元関心領域の大きさが適切である場合には(ステップS8肯定)、次のステップに移行する。
【0056】
なお、3次元関心領域が大きすぎたり、小さすぎたりした場合には、後述する3次元画像計測で余計な領域まで測定してしまったり、測定すべき領域が欠けてしまったりする可能性がある。このため、3次元関心領域の大きさはある程度調整しておく必要がある。
【0057】
ステップS9では、操作者は、画像処理手段の3次元論理フィルタまたは3次元モフォロジフィルタ等を用いて、3次元関心領域の膨張,収縮を行い、大きさを調節する。その後、操作者は、ステップS8に移行し、ステップS9で作成された3次元関心領域情報を用いてステップS8の処理を行う。
【0058】
なお、3次元関心領域が大きすぎたり、小さすぎたりした場合には、例えば3次元論理フィルタまたは3次元モフォロジフィルタの膨張フィルタまたは収縮フィルタで調整を行うことができる。この際、原画像であるステップS1で取得した3次元画像と重ねて表示しながら3次元関心領域の膨張,収縮などを行うと調整が容易となる。
【0059】
ステップS10では、操作者は、関心領域が、殻状の3次元関心領域の境界の内部領域または外部領域かどうかを判定する。ここで、操作者は、関心領域が、殻状の3次元関心領域の内壁あるいは外壁の内部領域または外部領域である場合には(ステップS10肯定)、画像処理により、穴埋め処理や外部領域抽出処理等を行い(ステップS11)、関心領域が、殻状の3次元関心領域の境界の内部領域または外部領域でない場合には(ステップS10否定)、次のステップに移行する。
【0060】
なお、肺野の境界の殻領域、あるいは頭部頭蓋骨の境界の殻領域等を測定したい場合には、殻状の3次元関心領域の境界の内部領域または外部領域を指定する必要が生じる。
ステップS11では、操作者は、画像処理手段により、穴埋め処理や外部領域抽出処理などを、2値反転および3次元ラベリングを用いて行う。図5は、操作者が、画像処理手段を用いて、3次元関心領域である殻状の3次元連続領域の内壁の内部領域のみを抽出する穴埋め処理の動作を示すフローチャートである。まず、操作者は、ステップS8で作成された3次元2値画像を表示する(ステップS41)。図7(a)は、3次元関心領域が、殻状の3次元連続領域の内部領域である例を示す画像である。図7(a)では、殻状の3次元連続領域は画素値が1、殻状の3次元連続領域の内側および外側の3次元連続領域は画素値が0となっている。なお、この図は、2次元画像を用いて示しているが3次元画像でも全く同様である。
【0061】
その後、操作者は、画像処理手段により、3次元連続領域の2値反転を行う(ステップS42)。図7(b)は、図7(a)に2値反転処理を行った画像である。殻状の3次元連続領域は画素値が0、殻状の3次元連続領域の内側および外側の3次元連続領域は画素値が1となる。
【0062】
その後、操作者は、画像処理手段により、2値反転処理を行った3次元連続領域に3次元ラベリングを行い(ステップS43)、3次元連続領域ごとの番号付けを行う。図7(c)は、図7(b)の2値の反転処理を行った3次元連続領域に番号付けを行った画像である。殻状の3次元連続領域は領域番号が“0”、殻状の3次元連続領域の外側の3次元連続領域は領域番号が“1”、殻状の3次元連続領域の内側の3次元連続領域は領域番号が“2”となる。
【0063】
その後、操作者は、画像処理手段により、領域番号“2”の3次元連続領域の画素値を1とし、領域番号“1”の3次元連続領域の画素値を0とする(ステップS44)。図7(d)は、領域番号“2”の3次元連続領域に画素値1を、領域番号“1”の3次元連続領域に画素値0を代入した3次元2値画像を示している。
【0064】
その後、操作者は、画像処理手段により、ステップ44で求めた3次元2値画像と、ステップ42で取得した2値反転処理した3次元2値画像との画素値の論理積を行い(ステップS45)、穴埋めした3次元2値画像を取得して本処理を終了する。ここで、この3次元2値画像は、殻状の3次元連続領域の内壁を境界とする2つの3次元連続領域、すなわち3次元関心領域と関心のない3次元領域とからなる3次元2値画像となっている。図7(e)は、殻状の3次元連続領域が図7(a)に示される場合に、ステップS45で取得される殻状の3次元連続領域の内壁で区別される2つの3次元連続領域を示している。
【0065】
図8は、操作者が、画像処理手段により、3次元関心領域である殻状の3次元連続領域の外壁の外部領域のみを抽出する外部領域抽出処理を行う例を示すフローチャートである。まず、操作者は、ステップS8で作成された3次元2値画像を表示する(ステップS51)。図9(a)は、殻状の3次元連続領域が存在する例を示す画像である。殻状の3次元連続領域は画素値が1、殻状の3次元連続領域の内側および外側の3次元連続領域は画素値が0となっている。なお、この図は、2次元画像を用いて示しているが3次元画像でも全く同様である。
【0066】
その後、操作者は、画像処理手段により、3次元連続領域の2値反転を用いて2値の反転処理を行う(ステップS52)。図9(b)は、図9(a)に2値反転処理を行った画像である。殻状の3次元連続領域は画素値が0、殻状の3次元連続領域の内側および外側の3次元連続領域は画素値が1となる。
【0067】
その後、操作者は、画像処理手段により、2値反転処理を行った3次元連続領域に3次元ラベリングを行い(ステップS53)、3次元連続領域ごとに番号付けを行う。図9(c)は、図9(b)の2値の反転処理を行った3次元連続領域の番号付けを行った画像である。殻状の3次元連続領域は領域番号が“0”、殻状の3次元連続領域の外側の3次元連続領域は領域番号が“1”、殻状の3次元連続領域の内側の3次元連続領域は領域番号が“2”となる。
【0068】
その後、操作者は、画像処理手段により、領域番号“2”の3次元連続領域の画素値を0とし、領域番号“1”の3次元連続領域の画素値を1とし(ステップS54)、本処理を終了する。図9(d)は、領域番号“2”の3次元連続領域に画素値0を、領域番号“1”の3次元連続領域に画素値1を代入した3次元2値画像を示している。ここで、この3次元2値画像は、殻状の3次元連続領域の外壁で区別される2つの3次元連続領域からなる3次元2値画像となっている。
【0069】
ここで、図6に示すような穴埋め処理を行ったり、図8に示すような外部領域抽出処理を行ったりすることにより、殻状の3次元連続領域の境界の内部領域または外部領域を3次元関心領域にすることができる。
【0070】
図3に移りステップS12では、操作者は、3次元関心領域が、殻状の3次元連続領域かどうかを判定する。ここで、操作者は、3次元関心領域が、殻状の3次元連続領域である場合には(ステップS12肯定)、画像処理により、殻状の3次元連続領域の抽出を行い(ステップS13)、3次元関心領域が、殻状の3次元連続領域でない場合には(ステップS13否定)、次のステップに移行する。
【0071】
なお、3次元連続領域の外部領域を3次元関心領域としたい場合には、多くの場合に、この3次元連続領域の外壁から決まった距離までの領域である殻状の3次元連続領域としたいことがある。
【0072】
ステップS13では、操作者は、画像処理手段により、3次元連続領域を3次元論理フィルタ等を用いて殻状の3次元連続領域とする。図10は、3次元連続領域から殻状の3次元連続領域を抽出する3次元殻領域抽出処理を示すフローチャートである。まず、操作者は、ステップS10で作成された3次元2値画像を表示する(ステップS61)。図11(a)は、球体状の3次元連続領域が存在する例を示す画像である。図11(a)では、球体状の3次元連続領域は画素値が0、球体状の3次元連続領域の外部領域に当たる3次元連続領域は画素値が1となっている。なお、この図では、2次元画像を用いて示しているが3次元画像でも全く同様である。
【0073】
その後、操作者は、画像処理手段により、球体状の3次元連続領域に3次元論理フィルタを用いて、画素値が1の領域に画像収縮を行う(ステップS62)。図11(b)は、図11(a)に示す球体状の3次元連続領域に画像収縮を行った例である。3次元論理フィルタは、画素値が1である球体状の3次元連続領域の外側辺縁部を、目的とする殻状の3次元連続領域の画素数の厚さだけ減縮する。なお、図11(b)では、収縮された球体状の3次元連続領域の外側辺縁部を実線で示し、元となる球体状の3次元連続領域を点線で示してある。
【0074】
その後、操作者は、画像処理手段により、画像収縮を行った球体状の3次元連続領域と、ステップS61で取得した原画像にある球体状の3次元連続領域との画素値の排他的論理和および2値の反転処理を行い(ステップS63)、本処理を終了する。図11(c)は、画素値の排他的論理和および2値の反転処理を行った3次元連続領域を示す図である。画素値が1である3次元連続領域は、目的とする厚さの殻状の3次元関心領域を形成している。
【0075】
ステップS14では、操作者は、ステップS4〜13で行われた画像処理の結果として取得された3次元連続領域を表示し、同時に原画像の3次元画像を重ねて表示し、3次元画像中の関心となる領域が、この3次元連続領域と一致することを確認し、この3次元連続領域を3次元関心領域と決定する。
【0076】
ステップS15では、操作者は、この3次元関心領域で3次元画像計測を行う。この3次元画像計測では、3次元関心領域の体積、形状等の計測が行われる。ここで、3次元関心領域に適合された3次元連続領域のみを画像計測することで、3次元関心領域の画像特性を正確に把握することができる。
【0077】
上述してきたように本実施の形態1では、3次元画像を取得し、3次元画像を上限値および下限値を有する閾値により2値化処理して3次元2値画像を作成し、必要に応じてこの3次元2値画像を画像処理して、3次元関心領域に適合した最適な3次元連続領域の形成および設定を行い、この3次元連続領域で3次元画像計測を行うこととしているので、3次元関心領域に適合した3次元連続領域を、容易に取得することができ、ひいては精度の高い画像計測を行うことができる。
(実施の形態2)
ところで、上記実施の形態1では、3次元関心領域設定処理を、3次元画像に含まれる画像を限定せず説明を行ったが、本実施の形態2では、具体的に肺野部を3次元関心領域として設定する場合について説明する。
【0078】
なお、ハードウェア(hardware)の構成は、図1に示したものと全く同様であるので詳しい説明を省略する。
図12は、肺野部の3次元関心領域設定処理の流れを示すフローチャートである。
【0079】
ステップS71では、操作者は、2次元連続断層像情報を、中央処理装置3に入力する(ステップS71)。ここで、操作者は、X線CT装置100のヘリカルスキャンを用いて取得されるz方向に連続な連続断層像またはコンベンショナルスキャンを用いて取得されるz方向に連続な連続断層像を入力し、これらz方向に連続な連続断層像を重ね合わせて3次元画像とする。図13(a)は、肺野内部のz方向に連続な連続断層像およびこれらを重ね合わせた3次元画像を模式的に示した図である。この図では、3次元画像を構成する各2次元断層像がAi(i=1,2‥)で示され、この3次元画像に描出される左右の肺、血管(大文字のVで示される)および肺野内部の血管分枝(小文字のvで示される)が模式的に示されている。なお、図中に示される血管候補領域Vaは、後述する病変部領域検出処理において説明される。
【0080】
ステップS72では、操作者は、2値領域最適化手段により、ステップS71で入力した原画像である3次元画像から3次元2値画像を作成し、この3次元2値画像を原画像に重ねて3次元表示し、2値化処理の閾値の調整を、原画像との比較および確認をしながら行う。なお、操作者は、閾値の調整を、入力装置2からキーボード(keyboard)等の変更しやすいユーザインターフェース(userinterface)を用いて行う。図13(b)は、2値化処理された左右の肺野および肺野に存在する血管の分枝の3次元2値画像を模式的に示したものである。
【0081】
ステップS73では、操作者は、領域抽出手段により、この3次元2値画像を、3次元ラベリングして複数の3次元連続領域に分ける。図13(c)は、肺野を含む3次元2値画像に3次元ラベリングを行った例である。図13(c)では、左右の肺野に領域番号“1”および“2”が割り当てられ、背景部分には領域番号“0”が割り当てられている。
【0082】
ステップS74では、操作者は、手動領域抽出手段により、複数の3次元連続領域から3次元関心領域の領域番号を手動で選択する。図13(d)は、領域番号“1”の肺野が選択された例である。ここでは、領域番号“1”の左の肺野部分のみが3次元2値画像として表示される。
【0083】
なお、この選択の際に、操作者は画像計測手段によりラベリングされた各3次元連続領域の体積を求め、これら体積から決定されるある規準値より小さな体積の領域はノイズ(noise)として除去することもできる。また、この規準値を、キーボード等の変更しやすいユーザインターフェースを用いて変更可能とし、操作者による調整を容易なものとすることもできる。
【0084】
ステップS75では、操作者は、3次元論理フィルタ等の画像処理手段を用いて、選択された3次元連続領域の膨張,収縮を行い3次元2値画像の表面を滑らかにする。なお、後述する病変部領域検出処理により、肺の太い血管の除去処理などを行うことにより、より効果的なものにすることもできる。
【0085】
ステップS76では、表面が滑らかにされた3次元連続領域を、3次元関心領域として設定し、本処理を終了する。
図14は、図12の肺野部の3次元関心領域設定処理のうち、ステップS75で行われる3次元関心領域を滑らかにする処理の一例である病変部領域検出処理の詳細を示すフローチャートである。
【0086】
ステップS81では、操作者は、X線CT装置100のスキャンにより取得された、被検体の体軸方向に連続した2次元連続断層像情報を、中央処理装置3に入力する。
ステップS82では、閾値および2値化処理の設定を行い、肺の全体を抽出できるようなCT値範囲(例えば−200以下)の画素値を1とし、それ以外の画素値を0とするような2値化処理を行なう。これにより、肺内部および背景(空気)の領域が画素値1となり、それ以外が画素値0となる。ここで、図15は、2値化処理を行った3次元画像を構成する1つの2次元断層像(図13(a)に示すAi)の例である。図15は、画素値1を有する肺および背景(空気)以外の画素値0を有する領域がハッチング(hatching)で示されている2値断層像情報である。図15で、“入り江”状血管領域Laというのは肺へ入る肺動脈などの太い血管の部分である。
【0087】
なお、図16は、図15に示す2値断層像情報をそのまま用いて、2値化処理された3次元関心領域の抽出を行った場合の例である。図16の“入り江”状血管領域Laに示される様に、この3次元関心領域の抽出では、“入り江”状血管領域La、細かい血管領域vおよび病変部候補領域等が2値化処理で抽出されてしまう。このため以下の処理では、まず“入り江”状血管領域Laを3次元論理フィルタなどにより埋めて細かい血管領域vと病変部候補領域を取り出す。
【0088】
図14に戻りステップS83では、操作者は、図15の画素値1の領域に対し3次元論理フィルタによりN画素膨張処理およびN画素収縮処理を行ない、ノイズとなる微小領域を取り除く(例えば、細かい血管の直径が5画素程度であれば、N=5。但し、Nの値は、1画素サイズに依存して変化させる)。次に、操作者は、3次元ラベリング処理により各3次元連続領域に領域番号をつける。これにより、背景(空気部分)と推定できる3次元連続領域を除去し、図15に示す肺野部だけが画素値1の領域とする。
【0089】
ステップS84では、画素値1の領域に対し3次元論理フィルタによりM画素拡大処理およびM画素収縮処理を行ない、肺野領域にしたい“入り江”状血管領域Laを埋める(例えば、太い血管の直径が15画像程度であれば、M=10。但し、Mの値は、1画素サイズに依存して変化させる)。図17に示すように、肺から“入り江”状血管領域Laがなくなる。これにより、3次元関心領域が求められる。更にこの3次元関心領域において3次元画像計測を行う。
【0090】
ステップS85では、上記ステップS84で画素値1になった領域を各断層像から画素間演算の論理積AND処理で切り出し、その切り出した領域(マスク領域)について血管を抽出できるようなCT値範囲、すなわち造影された血管のCT値はおよそ100〜200、造影されてない血管のCT値はおよそ40〜50なので、例えば−500〜+1000、を画素値1とし、それ以外を画素値0とするような2値化処理を行なう。これにより、図13(a)に示すように、肺の血管候補領域Vaが画素値1となり、それ以外が画素値0となる。ここで、肺の血管候補領域Vaを3次元モデル(model)化する。
【0091】
ステップS86では、操作者は、肺の血管候補領域Vaに対し3次元論理フィルタにより、L画素膨張処理およびL画素収縮処理を行ない、データ上では切れていた複数の血管候補領域、例えばv1,v2,v3,・・・を接続修復する(例えば、L=1〜3とする。但し、Lの値は、1画素サイズ(Size)に依存して変化させる。)。
【0092】
ステップS87では、操作者は、3次元ラベリング処理により、血管候補領域Vaを血管候補Vbに区分する。図18は、複数の血管候補Vbに区分された血管候補領域Vaを示す図である。ここで、操作者は、各血管候補Vbを含む血管候補領域Vaの全画素を被う直方体の領域である外接直方体Bの体積を計算し、最も体積の大きい血管候補Vbを血管Vと判定する。他のラベル領域は、ノイズ領域として除去する。図19は、血管Vと判定された最も体積の大きい血管候補Vbを示す図である。なお、図18には、後述する病変部候補領域Caも図示されている。
【0093】
また、操作者は、血管Vに対して3次元論理フィルタによりP画素収縮処理を行ない、末梢部の血管を消去する。Pは、末梢部の血管の太さに1〜2画素を加えた値とする。(例えば、P=4〜5。但し、Pの値は、1画素サイズに依存して変化させる)。これにより、図20に示すように、血管Vの末梢部に孤立した病変部候補領域Caが残る。なお、図20では、消去された末梢部の血管を点線で示している。
【0094】
つづいて、操作者は、その病変部候補領域Caの球体度βを計算する。また、病変部候補領域Caと複数の2次元断層像情報Aiとを基に病変部候補領域Caの3次元データを抽出し、その平均CT値を計算する。そして、病変部候補領域Caの球体度βと平均CT値とを基に末梢部病変部領域を検出する。
【0095】
ここで、図21(a)に示すように病変部Cは、略球形状であり、図21(b)に示すように血管Vは、ほぼ円柱状である事が多い。そこで、例えば、球体度βが0.8より大きく且つ平均CT値が0〜+200ならば病変部領域と判断し、そうでないなら病変部領域でない判断する。
【0096】
なお、球体度βは下記のように定める。病変部領域検出方法では、3次元形状特徴パラメータ(parameter)として、球体度を用いることができる。ここで、球体度βまたはβ'は、表面積をSとし、体積をVとするとき、
β=6×π1/2×(V/S3/2
β'=β2=36×π×(V2/S3
である。球体度βまたはβ'が1に近いほど病変部である確率が高い。
【0097】
上記の処理の後に収縮処理して残った血管Vに対して、操作者は3次元論理フィルタによりQ画素収縮処理を行ない、主幹部の血管を消去する。Qは、主幹部の血管の太さに1〜2画素を加えPを減算した値とする(例えば、Q=7〜8。但し、Qの値は、1画素サイズに依存して変化させる)。これにより、図18に示すように、血管Vの主幹部に孤立した病変部候補領域Cbが残る。次に、その病変部候補領域Cbの球体度βを計算する。また、病変部候補領域Cbと複数の2次元断層像情報Aiとを基に病変部候補領域Cbの3次元画像を抽出し、その平均CT値を計算する。そして、病変部候補領域Cbの球体度βと平均CT値とを基に主幹部病変部領域を検出する。
【0098】
上述してきたように本実施の形態2では、肺野部の3次元関心領域に基づき、3次元画像計測、領域分類することができる。
(実施の形態3)
ところで、上記実施の形態2では、肺野部の例を用いて3次元関心領域設定処理を示したが、実施の形態3では頭部の頭蓋骨内側に存在する薄殻領域の3次元関心領域設定処理について説明する。
【0099】
図22は、頭部の頭蓋骨内側に存在する薄殻領域の3次元関心領域設定処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS161では、操作者は、2次元連続断層像情報を、中央処理装置3に入力する。ここで、操作者は、X線CT装置100のヘリカルスキャンを用いて取得される2次元連続断層像情報またはコンベンショナルスキャンを用いて取得される2次元連続断層像情報を入力し、これら2次元連続断層像を重ね合わせて3次元画像とする。
【0100】
ステップS162では、操作者は、2値領域最適化手段により、原画像である3次元画像から3次元2値画像を作成し、この3次元2値画像を原画像に重ねて3次元表示し、2値化処理の閾値の調整を、原画像との比較および確認をしながら行う。図23(a)は、頭蓋骨の3次元画像から作成された3次元2値画像の例である。この3次元2値画像では、画素値1を有する頭蓋骨部分および画素値0を有する頭蓋骨内外部を含んでいる。
【0101】
ステップS162では、操作者は、頭蓋骨の内部を埋める処理を行う。これは、図6に示した穴埋め処理と全く同様の方法により行われ、頭蓋骨の内部領域を抽出する。図23(b)は、図23(a)に示す3次元2値画像から、画素値1を有する頭蓋骨の内部領域を抽出した図である。なお、図中の点線は、頭蓋骨の外部形状を示している。
【0102】
ステップS164では、操作者は、頭蓋骨内部領域の境界部分に位置する薄殻を抽出する薄殻領域抽出処理を行う。これは、図10に示した3次元殻領域抽出処理と全く同様の方法により、例えば頭蓋骨の内側約3mm幅の薄殻領域を抽出する。図23(c)は、図23(b)に示す画素値1を有する頭蓋骨の内部領域から、画素値1を有する3次元殻領域を抽出した図である。
【0103】
ステップS165では、操作者は、この薄殻領域を、3次元関心領域として原画像である3次元画像に設定する。
ステップS166では、操作者は、画像計測手段により、この3次元関心領域の3次元画像計測を行い、本処理を終了する。ここで、原画像である3次元画像に3次元関心領域を設定し、例えば、操作者は、出血の可能性のあるCT値範囲を設定し、その領域を2値化表示したり、体積測定、平均CT値などの計測を行う。
【0104】
上述してきたように本実施の形態3では、頭部の3次元関心領域に基き、3次元画像計測、関心領域内の条件をみたす領域表示などが行える。
また、本実施の形態1〜3では、画像取得装置としてX線CT装置100を用いた例を示したが、画像取得装置は、X線CT装置に限定されず、断層像イメージング装置である磁気共鳴イメージング装置あるいは超音波イメージング装置等、さらに超音波探傷装置等を用いることもできる。
【0105】
また、本実施の形態1〜3では、3次元画像としてX線CT装置100で取得される2次元連続断層像情報を重ねた例を示したが、3次元画像は、リモートセンシングによる多次元画像、シミュレーション画像による多次元画像等を用いることもできる。
【0106】
また、本実施の形態1〜3では、X線CT装置100の操作コンソール1において、3次元画像取得手段、3次元2値画像作成手段、2値領域最適化手段、領域抽出手段および領域設定手段を機能させることとしたが、X線CT装置100が通信回線を介して接続される画像処理装置を有する際に、この画像処理装置において、前記3次元画像取得手段、前記3次元2値画像作成手段、前記2値領域最適化手段、前記領域抽出手段および前記領域設定手段を機能させることもできる。
【0107】
また、本実施の形態1〜3では、領域抽出手段の画像処理手段で主として3次元論理フィルタを用いた例を示したが、他の画像処理手段、例えば3次元空間フィルタ、3次元アフィン変換あるいは多次座標変換を用いることもできる。
【0108】
また、本実施の形態1〜3では、領域抽出手段の画像処理手段で3次元論理フィルタを用いたが、同様に3次元モフォロジフィルタを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】画像取得装置であるX線CT装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる3次元関心領域設定処理の動作を示すフローチャートである(その1)。
【図3】実施の形態1にかかる3次元関心領域設定処理の動作を示すフローチャートである(その2)。
【図4】実施の形態1にかかる切り離し処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1にかかる切り離し処理の3次元2値画像を示す説明図である。
【図6】実施の形態1にかかる穴埋め処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1にかかる穴埋め処理の3次元2値画像を示す説明図である。
【図8】実施の形態1にかかる外部領域抽出処理の動作を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態1にかかる外部領域抽出処理の3次元2値画像を示す説明図である。
【図10】実施の形態1にかかる3次元殻領域抽出処理の動作を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態1にかかる3次元殻領域抽出処理の3次元2値画像を示す説明図である。
【図12】実施の形態2にかかる肺野部の3次元関心領域設定処理の動作を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態2にかかる3次元関心領域設定処理の3次元2値画像を示す説明図である。
【図14】実施の形態2にかかる3次元関心領域設定処理の一部をなす病変部領域検出処理の動作を示すフローチャートである。
【図15】実施の形態2にかかる病変部領域検出処理の肺野部の全体を描出する2値化断層画像の説明図である。
【図16】実施の形態2にかかる病変部領域検出処理の肺野部の背景を削除した2値化断層画像の説明図である。
【図17】実施の形態2にかかる病変部領域検出処理の肺野部の不要領域を埋めた2値化断層画像の説明図である。
【図18】実施の形態2にかかる病変部領域検出処理の肺野部の血管候補領域に外接する直方体を示す説明図である。
【図19】実施の形態2にかかる病変部領域検出処理の肺野部から抽出した血管の説明図である。
【図20】実施の形態2にかかる病変部領域検出処理の肺野部の末梢部に存在する病変部候補領域の説明図である。
【図21】実施の形態2にかかる病変部領域検出処理の病変部と血管の形状の違いを示す説明図である。
【図22】実施の形態3にかかる頭部の3次元関心領域設定処理の動作を示すフローチャートである。
【図23】実施の形態3にかかる3次元関心領域設定処理の3次元2値画像を示す説明図である。
【符号の説明】
【0110】
1 操作コンソール
2 入力装置
3 中央処理装置
5 データ収集バッファ
6 モニタ
10 撮影テーブル
12 クレードル
15 回転部
20 走査ガントリ
21 X線管
22 X線コントローラ
23 コリメータ
24 X線検出器
26 回転部コントローラ
27 チルトコントローラ
29 制御コントローラ
100 X線CT装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元画像を取得し、
濃淡画素から構成される前記3次元画像を、閾値に基づいて2値化処理した3次元2値画像を作成し、
前記閾値および前記2値化処理を調整しつつ、前記3次元2値画像を繰り返し作成および表示して前記3次元2値画像の2値領域を最適化し、
前記最適化された2値領域を用いて3次元関心領域を領域抽出し、
前記3次元関心領域を、前記3次元画像の関心領域として領域設定する3次元関心領域設定方法。
【請求項2】
前記閾値は、上限値および下限値を備えることを特徴とする請求項1に記載の3次元関心領域設定方法。
【請求項3】
前記最適化は、前記閾値を入力し、前記閾値により分類される濃淡画素値領域に2値を割り当てることを特徴とする請求項1または2に記載の3次元関心領域設定方法。
【請求項4】
前記最適化は、前記2値領域を、前記3次元画像に重ねて表示することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の3次元関心領域設定方法。
【請求項5】
前記領域抽出は、前記2値領域に画像処理を施すことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の3次元関心領域設定方法。
【請求項6】
前記画像処理は、論理フィルタ処理、モフォロジフィルタ処理、空間フィルタ処理、アフィン変換処理および多次座標変換処理の少なくとも1つを行うことを特徴とする請求項5に記載の3次元関心領域設定方法。
【請求項7】
前記領域抽出は、前記3次元関心領域を、手動で変形あるいは編集することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の3次元関心領域設定方法。
【請求項8】
前記領域設定は、前記2値領域のいずれか一方の画素値領域を関心領域とすることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の3次元関心領域設定方法。
【請求項9】
3次元画像を取得する3次元画像取得手段と、
濃淡画素から構成される前記3次元画像を、閾値に基づいて2値化処理し、3次元2値画像を作成する3次元2値画像作成手段と、
前記閾値および前記2値化処理を調整しつつ、前記3次元2値画像を繰り返し作成および表示し、前記3次元2値画像の2値領域を最適化する2値領域最適化手段と、
前記最適化された2値領域を用いて3次元関心領域を領域抽出する領域抽出手段と、
前記3次元関心領域を、前記3次元画像の関心領域として領域設定する領域設定手段と、
を備える画像取得装置。
【請求項10】
前記閾値は、上限値および下限値を備えることを特徴とする請求項9に記載の画像取得装置。
【請求項11】
前記2値領域最適化手段は、前記閾値を入力する入力手段および前記閾値により分類される濃淡画素値領域に2値を割り当てる割当手段を備えることを特徴とする請求項9または10に記載の画像取得装置。
【請求項12】
前記2値領域最適化手段は、前記2値領域を、前記3次元画像に重ねて表示することを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1つに記載の画像取得装置。
【請求項13】
前記領域抽出手段は、前記2値領域に画像処理を施す画像処理手段を備えることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1つに記載の画像取得装置。
【請求項14】
前記画像処理手段は、前記2値領域に、論理フィルタ処理を行う3次元論理フィルタ、モフォロジフィルタ処理を行う3次元モフォロジフィルタ、空間フィルタ処理を行う3次元空間フィルタ、アフィン変換処理を行う3次元アフィン変換および多次座標変換処理を行う多次座標変換の少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項13に記載の画像取得装置。
【請求項15】
前記領域抽出手段は、前記3次元関心領域を、手動で変形あるいは編集する手動領域抽出手段を備えることを特徴とする請求項9ないし14のいずれか1つに記載の画像取得装置。
【請求項16】
前記領域設定手段は、前記領域設定の際に、前記2値領域の2値のいずれか一方の値を関心領域とする関心領域選択手段を備えることを特徴とする請求項9ないし15のいずれか1つに記載の画像取得装置。
【請求項17】
前記画像取得装置は、断層像イメージング装置あるいは超音波探傷装置であることを特徴とする請求項9ないし16のいずれか1つに記載の画像取得装置。
【請求項18】
前記画像取得装置は、通信回線を介して接続される画像処理装置を有する際に、前記画像処理装置に前記3次元画像取得手段、前記3次元2値画像作成手段、前記2値領域最適化手段、前記領域抽出手段および前記領域設定手段を備えることを特徴とする請求項9ないし17のいずれか1つに記載の画像取得装置。
【請求項19】
画像取得装置あるいは画像処理装置のコンピュータを、
3次元画像を取得する3次元画像取得手段、
濃淡画素から構成される前記3次元画像を、閾値に基づいて2値化処理し、3次元2値画像を作成する3次元2値画像作成手段、
前記閾値および前記2値化処理を調整しつつ、前記3次元2値画像を繰り返し作成および表示し、前記3次元2値画像の2値領域を最適化する2値領域最適化手段、
前記最適化された2値領域を用いて3次元関心領域を領域抽出する領域抽出手段、
前記3次元関心領域を、前記3次元画像の関心領域として領域設定する領域設定手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2006−325629(P2006−325629A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149171(P2005−149171)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】