説明

4−ヘテロアリールメチル置換されたフタラジノン誘導体

式(I)の化合物[式中、AとBは、一緒になって、置換されてもよい縮合芳香環を表し、Dは、式(i)(式中、Y1はCHおよびNから選択され、Y2はCHおよびNから選択され、Y3はCH、CFおよびNから選択される)および式(ii)(式中、QはOまたはSである)から選択され、RDは式(C)であり、ここでRN1はHおよび置換されてもよいC1-10アルキルから選択され、Xは単結合、NRN2、CRC3RC4およびC=Oから選択され、RN2はHおよび置換されてもよいC1-10アルキルから選択され、RC3とRC4は、独立にH、R、C(=O)ORから選択され、ここでRは置換されてもよいC1-10アルキル、置換されてもよいC5-20アリールもしくは置換されてもよいC3-20ヘテロシクリルであり、YはNRN3およびCRC1RC2から選択され、RC1およびRC2は、独立にH、R、C(=O)ORから選択され、ここでRは置換されてもよいC1-10アルキル、置換されてもよいC5-20アリールもしくは置換されてもよいC3-20ヘテロシクリルであり、RC1とRC2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されてもよいスピロ縮合C5-7炭素環または複素環を形成してもよく、Xが単結合であるとき、RN1とRC2は、それらが結合している窒素および炭素原子と一緒になって、置換されてもよいC5-7複素環を形成してもよく、XがCRC3RC4であるとき、RC2とRC4は、RC1およびRC3で置換された原子間に二重結合が生じるように、一緒になって追加の結合を形成してもよい]。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフタラジノン誘導体、およびその医薬としての使用に関する。特に、本発明は、酵素ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ-1(これはポリ(ADP-リボース)シンターゼやポリADP-リボシルトランスフェラーゼとしても知られ、一般にPARP-1と呼ばれる)の活性を阻害するためのこれらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の酵素PARP-1(113kDaのマルチドメインタンパク質)は、DNA一本鎖または二本鎖の切断部を認識してそれに迅速に結合する能力により、DNA損傷のシグナル伝達に関わるとされている(D'Amoursら, Biochem. J., 342, 249-268 (1999))。
【0003】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼのファミリーには現在約18種のタンパク質が含まれ、それらはすべてその触媒ドメインが特定のレベルの相同性を示すが、それらの細胞機能は異なっている(Ameら, Bioessays., 26(8), 882-893 (2004))。このファミリーのうちで、DNA鎖切断部の発生によりその触媒活性が刺激されるのは今のところPARP-1(創設メンバー)とPARP-2のみであり、そのためこれらは該ファミリー中でも独特である。
【0004】
今や、PARP-1は、遺伝子増幅、細胞分裂、分化、アポトーシス、DNA塩基切除修復ならびにテロメアの長さおよび染色体の安定性に及ぼす影響を含めて、種々のDNA関連機能に関わることが知られている(d'Adda di Fagagnaら, Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999))。
【0005】
PARP-1がDNA修復および他のプロセスをモジュレートする機構に関する研究から、細胞核内でのポリ(ADP-リボース)鎖の形成におけるその重要性が明らかにされた(Althaus, F.R.およびRichter, C., ADP-Ribosylation of Proteins: Enzymology and Biological Significance, Springer-Verlag, Berlin (1987))。DNA結合型の、活性化されたPARP-1は、NAD+を利用して、種々の核標的タンパク質(トポイソメラーゼ、ヒストンおよびPARPそのものを含む)上でポリ(ADP-リボース)を合成する(Rhunら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 245, 1-10 (1998))。
【0006】
ポリ(ADP-リボシル)化はまた、悪性形質転換と関連している。例えばPARP-1活性は、SV40形質転換線維芽細胞の単離された核においてより高く、また白血病細胞および結腸癌細胞のいずれもが、対応する正常な白血球および結腸粘膜に比べ高い酵素活性を示す(Miwaら, Arch. Biochem. Biophys., 181, 313-321 (1977)、Burzio, ら, Proc. Soc. Exp. Bioi. Med., 149, 933-938 (1975)、およびHiraiら, Cancer Res., 43, 3441-3446 (1983))。より最近では、良性の前立腺細胞に比べて悪性の前立腺腫瘍において、著しく増大したレベルの活性PARP(主にPARP-1)がより高レベルの遺伝的不安定性と関連していることが確認された(Mcnealyら, Anticancer Res., 23, 1473-1478 (2003))。
【0007】
DNA修復におけるポリ(ADP-リボシル)化の機能的な役割を明らかにするために、数種の低分子量のPARP-1阻害剤が使用された。アルキル化剤で処理した細胞では、PARPの阻害がDNA鎖切断の顕著な増加、および細胞の死滅をもたらす(Durkaczら, Nature, 283, 593-596 (1980)、Berger, N.A., Radiation Research, 101, 4-14 (1985))。
【0008】
その後、かかる阻害剤は、致死的であり得る損傷の修復を抑制することにより、放射線応答の効果を増強することが示された(Ben-Hurら, British Journal of Cancer, 49 (補遺 VI)、34-42 (1984)、Schlickerら, Int. J. Radiat. Bioi., 75、91-100 (1999))。PARP阻害剤は、低酸素性腫瘍細胞を放射線感受性にするのに効果的であると報告されている(US 5,032,617、US 5,215,738およびUS 5,041,653)。特定の腫瘍細胞株では、PARP-1(およびPARP-2)活性の化学的阻害はまた、ごく低線量の放射線に著しく感受性となることと関連している(Chalmers, Clin. Oncol., 16(1), 29-39 (2004))。
【0009】
さらに、PARP-1ノックアウト(PARP-/-)動物は、アルキル化剤およびγ線照射に応答してゲノムの不安定性を示す(Wangら, Genes Dev., 9, 509-520 (1995)、Menissier de Murciaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 7303-7307 (1997))。より最近のデータは、PARP-1およびPARP-2が、ゲノム安定性の維持において重複性の機能と非重複性の機能の両方を有することを示しており、そのためこのいずれもが興味深い標的となる(Menissier de Murciaら, EMBO. J., 22(9), 2255-2263 (2003))。
【0010】
PARP-1の役割は、特定の血管疾患、敗血症性ショック、虚血性障害および神経毒性においても実証されている (Cantoniら, Biochim. Biophys. Acta, 1014、1-7 (1989)、Szaboら, J. Clin. Invest., 100, 723-735 (1997))。DNAの鎖切断(これはその後PARP-1により認識される)をもたらす酸素ラジカルDNA損傷は、PARP-1阻害剤研究が示すように、かかる疾患状態の主な寄与因子である (Cosiら, J. Neurosci. Res., 39, 38-46 (1994)、Saidら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 93, 4688-4692 (1996))。最近では、PARPが出血性ショックの発病においてある役割を果たすことが実証された(Liaudetら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 97(3)、10203-10208 (2000))。
【0011】
哺乳動物細胞への効率的なレトロウイルス感染がPARP-1活性の阻害により遮断されることも実証された。このような組換えレトロウイルスベクター感染の阻害は、種々の異なる細胞型において生じることが示された(Gakenら, J. Virology, 70(6), 3992-4000 (1996))。こうして、抗ウイルス療法および癌治療に使用するためにPARP-1の阻害剤が開発された(WO 91/18591)。
【0012】
さらに、PARP-1阻害は、ヒト線維芽細胞における老化特性の発症を遅延させると推測されている(RattanおよびClark, Biochem. Biophys. Res. Comm., 201(2)、665-672 (1994))。このことはPARPがテロメア機能の制御において果たす役割と関連している可能性がある(d'Adda di Fagagnaら, Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999))。
【0013】
PARP阻害剤はまた、炎症性腸疾患(Szabo C., Role of poly(ADP-ribose) Polymerase Activation in the Pathogenesis of Shock and Inflammation, In PARP as a Therapeutic Target; 編J. Zhang, 2002、 CRC Pressより; 169-204)、潰瘍性大腸炎(Zingarelli, Bら, Immunology, 113(4), 509-517 (2004))およびクローン病 (Jijon, H.B.ら, Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 279, G641-G651 (2000)) の治療に好適であると考えられている。
【0014】
本発明者らの何人かは以前に、PARP阻害剤として作用する1(2H)-フタラジノン化合物の一群を記載した(WO 02/36576)。これらの化合物は、一般式:
【化1】

【0015】
[式中、AとBは一緒になって、場合により置換されてもよい縮合芳香環を表し、RCは-L-RLとして表される]で表される。多数の例は式:
【化2】

【0016】
[式中、Rは1以上の任意選択の置換基を表す]で表される。
【0017】
本発明者らの何人かは、WO 03/093261において、上記化合物のうちのある特定の群を記載したが、これはRがメタ位にある上記の一般式で表され、開示された例は以下から選択されるR基を有する:
【化3】

【発明の開示】
【0018】
本発明者らは今回、上記とは異なる置換基を有する化合物が、驚くべきレベルのPARP活性の阻害を示し、かつ/または放射線療法および種々の化学療法に対する腫瘍細胞の感受性の増強作用を示すことを見出した。さらに、本発明の化合物の安定性は、一般的にWO 03/093261に例示された化合物と比べて改善されている。本発明の化合物の一部はまた、水性媒体およびリン酸緩衝溶液の両方において良好な溶解性を示す−溶解性の向上は、静脈注射経路による投与のため、または小児用の経口製剤(例えば液体および小型錠剤の形態)のため、本化合物を製剤化するのに有用であり得る。本発明の化合物の経口バイオアベイラビリティーを高めることが可能である。
【0019】
したがって、本発明の第1の態様は、式(I)の化合物(その異性体、塩、溶媒和物、化学的保護形態、およびプロドラッグも含まれる)を提供する:
【化4】

【0020】
[式中、
AとBは、一緒になって、場合により置換されてもよい縮合芳香環を表し、
Dは、以下の(i)および(ii)から選択され、
【化5】

【0021】
(ここで、Y1はCHおよびNから選択され、Y2はCHおよびNから選択され、Y3はCH、CFおよびNから選択される)
【化6】

【0022】
(ここで、QはOまたはSである)
RDは、
【化7】

【0023】
(ここで、
RN1は、Hおよび場合により置換されてもよいC1-10アルキルから選択され、
Xは、単結合、NRN2、CRC3RC4およびC=Oから選択され、
RN2は、Hおよび場合により置換されてもよいC1-10アルキルから選択され、
RC3およびRC4は、独立に、H、R、C(=O)ORから選択され、ここでRは場合により置換されてもよいC1-10アルキル、場合により置換されてもよいC5-20アリールまたは場合により置換されてもよいC3-20ヘテロシクリルであり、
Yは、NRN3およびCRC1RC2から選択され、
RC1およびRC2は、独立に、H、R、C(=O)ORから選択され、ここでRは場合により置換されてもよいC1-10アルキル、場合により置換されてもよいC5-20アリールまたは場合により置換されてもよいC3-20ヘテロシクリルであり、RC1とRC2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、場合により置換されてもよいスピロ縮合したC5-7炭素環または複素環を形成してもよく、そして
Xが単結合であるときには、RN1とRC2は、それらが結合している窒素原子および炭素原子と一緒になって、場合により置換されてもよいC5-7複素環を形成することができ、
また、XがCRC3RC4であるときには、RC2およびRC4は、RC1およびRC3で置換された原子間に二重結合が生じるように、一緒になって追加の結合を形成することができる)である]。
【0024】
Dの可能性としては次のものがある:
【化8】


【0025】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の化合物および製薬上許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
本発明の第3の態様は、ヒトまたは動物の治療方法における、第1の態様の化合物の使用を提供する。
【0027】
本発明の第4の態様は、下記の医薬の調製における本発明の第1の態様で定義した化合物の使用を提供する:
(a) 細胞性PARP(PARP-1および/またはPARP-2)の活性を阻害することによりポリ(ADP-リボース)鎖形成を妨げるための医薬、
(b) 次の疾患を治療するための医薬:血管疾患;敗血症性ショック;脳および心血管の両方の虚血性障害;脳および心血管の両方の再灌流障害;神経毒性(脳卒中およびパーキンソン病のための急性および慢性治療を含む);出血性ショック;関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎およびクローン病のような炎症性疾患;多発性硬化症;糖尿病の二次作用、ならびに心血管手術後の細胞毒性の急性治療またはPARPの活性の阻害により改善される疾患の急性治療のための医薬、
(c) 癌治療における補助剤として、または電離放射線もしくは化学療法剤を用いた治療のために腫瘍細胞の感受性を増強するための補助剤として使用するための医薬。
【0028】
特に、本発明の第1の態様において定義した化合物は、抗癌併用療法において(または補助剤として)、アルキル化剤、例えばメタンスルホン酸メチル(MMS)、テモゾロミドおよびダカルバジン(DTIC)と共に、またトポイソメラーゼ-1阻害剤、例えばトポテカン、イリノテカン、ルビテカン、エキサテカン、ルルトテカン(Lurtotecan)、ギメテカン、ジフロモテカン(ホモカンプトセシン類)と共に、ならびに7-置換型非シラテカン、7-シリルカンプトセシン、BNP 1350、および非カンプトセシン型トポイソメラーゼ-I阻害剤、例えばインドロカルバゾール、また二重トポイソメラーゼ-IおよびII阻害剤、例えばベンゾフェナジン、XR 11576/MLN 576およびベンゾピリドインドールと共に使用することができる。かかる組合せ物は、その特定の薬剤の好ましい投与方法に応じて、例えば静注調製物としてまたは経口投与により投与することができる。
【0029】
本発明のさらなる他の態様は、治療を必要とする被験体に、治療に有効な量の第1の態様で定義した化合物を、好ましくは医薬組成物の形態で、投与することを含む、PARPの阻害により改善される疾患の治療を提供し、また、治療を必要とする被験体に、治療に有効な量の第1の態様で定義した化合物を、好ましくは医薬組成物の形態で、放射線療法(電離放射線)または化学療法剤と同時にまたは逐次的に、投与することを含む癌の治療を提供する。
【0030】
本発明のさらなる態様では、本化合物は、相同組換え(HR)依存性DNA二本鎖切断(DSB)修復活性に欠陥がある癌を治療するための医薬の製造において、またはHR依存性DNA DSB修復活性に欠陥がある癌を有する患者に治療上有効な量の本化合物を投与することを含む、前記患者の治療において、使用することができる。
【0031】
HR依存性DNA DSB修復経路は、相同的な機構を介してDNA中の二本鎖切断(DSB)を修復して、連続的なDNA二重らせんを再形成させる(K.K. KhannaおよびS.P. Jackson, Nat. Genet. 27(3): 247-254 (2001))。HR依存性DNA DSB修復経路の成分としては、限定するものではないが、ATM (NM_000051)、RAD51 (NM_002875)、RAD51L1 (NM_002877)、RAD51C (NM_002876)、RAD51L3 (NM_002878)、DMC1 (NM_007068)、XRCC2 (NM_005431)、XRCC3 (NM_005432)、RAD52 (NM_002879)、RAD54L (NM_003579)、RAD54B (NM_012415)、BRCA1 (NM_007295)、BRCA2 (NM_000059)、RAD50 (NM_005732)、MRE11A (NM_005590)およびNBS1 (NM_002485)が挙げられる。HR依存性DNA DSB修復経路に関与する他のタンパク質としてはEMSY (Hughes-Daviesら, Cell, 115, pp523-535)のような調節因子がある。HR成分は、Woodら, Science, 291, 1284-1289 (2001)にも記載されている。
【0032】
HR依存性DNA DSB修復に欠陥がある癌は、正常細胞と比較して、DNA DSBを該経路を介して修復する能力が低下しているかまたは破壊されている1個以上の癌細胞を含むか、または該癌細胞からなる。すなわち、前記1個以上の癌細胞では、HR依存性DNA DSB修復経路の活性が低下しているかまたは完全に破壊されている。
【0033】
HR依存性DNA DSB修復に欠陥がある癌を有する個体の1個以上の癌細胞では、HR依存性DNA DSB修復経路の1以上の成分の活性が破壊されている。HR依存性DNA DSB修復経路の成分は当技術分野で詳細に特徴付けされており(例えばWoodら, Science, 291, 1284-1289 (2001)を参照されたい)、上に挙げた成分が含まれる。
【0034】
ある好ましい実施形態では、癌細胞はBRCA1および/またはBRCA2欠損表現型を有し、すなわち癌細胞においてBRCA1および/またはBRCA2活性が低下しているか、または破壊されている。この表現型の癌細胞はBRCA1および/またはBRCA2に欠陥があり、すなわち前記の癌細胞では、例えばコード核酸における変異もしくは多型により、または調節因子をコードする遺伝子(例えばBRCA2調節因子をコードするEMSY遺伝子(Hughes-Daviesら, Cell, 115, 523-535))の増幅、変異もしくは多型により、あるいは遺伝子プロモーターのメチル化のような後成的な機構により、BRCA1および/またはBRCA2の発現および/または活性が低下しているか、または完全に破壊されている。
【0035】
BRCA1およびBRCA2は既知の腫瘍抑制因子であり、その野生型対立遺伝子はヘテロ接合性の保因者の腫瘍においてしばしば失われている(Jasin M., Oncogene, 21(58), 8981-93 (2002)、Tuttら, Trends Mol Med., 8(12), 571-6, (2002))。BRCA1および/またはBRCA2の突然変異と乳癌との関連性は当技術分野で詳しく特徴付けされている(Radice, P.J., Exp Clin Cancer Res., 21(補遺3), 9-12 (2002))。BRCA2結合因子をコードするEMSY遺伝子の増幅もまた乳癌および卵巣癌と関連することが知られている。
【0036】
BRCA1および/またはBRCA2中の変異の保持者はまた、卵巣、前立腺および膵臓の癌のリスクが増大している。
【0037】
ある好ましい実施形態では、個体は、BRCA1および/またはBRCA2またはその調節因子における1以上の変異(例えば、突然変異や多型)についてヘテロ接合である。BRCA1およびBRCA2における変異の検出は当技術分野でよく知られており、例えばEP 699 754、EP 705 903、Neuhausen, S.L.およびOstrander, E.A., Genet. Test, 1, 75-83 (1992)、Janatova M.ら, Neoplasma, 50(4), 246-50 (2003)に記載されている。BRCA2結合因子EMSYの増幅の確認は、Hughes-Daviesら, Cell, 115, 523-535)に記載されている。
【0038】
癌と関連している突然変異や多型は、変異核酸配列の存在を検出することにより核酸レベルで、または変異(すなわち、突然変異または対立遺伝子変異)ポリペプチドの存在を検出することによりタンパク質レベルで、検出することができる。
【0039】
定義
本明細書において「芳香環」という用語は通常の意味で用いられ、環式芳香族構造、すなわち非局在化π電子軌道を有する環式構造を言う。
【0040】
主要なコアに縮合している芳香環、すなわち-A-B-により形成される芳香環は、さらに縮合した芳香環を有しうる(例えばナフチルまたはアントラセニル基をもたらす)。芳香環は、炭素原子のみを有するか、または炭素原子と1個以上のヘテロ原子(限定するものではないが窒素、酸素、および硫黄原子が含まれる)を含みうる。芳香環は好ましくは5または6個の環原子を有する。
【0041】
芳香環は場合により置換されていてもよい。置換基自体がアリール基を有する場合には、このアリール基はそれが結合しているアリール基の一部であるとは見なされない。例えば、ビフェニル基は本明細書ではフェニル基で置換されたフェニル基(単一の芳香環からなるアリール基)と見なされる。同様に、ベンジルフェニル基はベンジル基で置換されたフェニル基(単一の芳香環からなるアリール基)と見なされる。
【0042】
好ましい実施形態の一群では、芳香族基は単一の芳香環を有し、この芳香環は5または6個の環原子を有するものであり、該環原子は炭素、窒素、酸素、および硫黄から選択され、またこの環は場合により置換されてもよい。こうした基の例としては、ベンゼン、ピラジン、ピロール、チアゾール、イソオキサゾール、およびオキサゾールが挙げられるがこれらに限らない。2-ピロンも芳香環と見なすことができるが、あまり好ましくはない。
【0043】
芳香環が6個の原子を有する場合、好ましくは環原子の少なくとも4個、または5個もしくは全部が炭素である。他の環原子は窒素、酸素および硫黄から選択され、窒素と酸素が好ましい。適当な基としては、ヘテロ原子なし(ベンゼン)、1個の窒素環原子(ピリジン)、2個の窒素環原子(ピラジン、ピリミジンおよびピリダジン)、1個の酸素環原子(ピロン)、ならびに1個の酸素原子と1個の窒素環原子(オキサジン)を有する環が挙げられる。
【0044】
芳香環が5個の環原子を有する場合、好ましくは環原子の少なくとも3個は炭素である。残りの環原子は窒素、酸素および硫黄から選択される。適当な環としては、1個の窒素環原子(ピロール)、2個の窒素環原子(イミダゾール、ピラゾール)、1個の酸素環原子(フラン)、1個の硫黄環原子(チオフェン)、1個の窒素と1個の硫黄環原子(イソチアゾール、チアゾール)、ならびに1個の窒素原子および1個の酸素環原子(イソオキサゾールまたはオキサゾール)を有する環が挙げられる。
【0045】
芳香環は、環のあらゆる可能な位置において1個以上の置換基を有し得る。こうした置換基は、ハロ、ニトロ、ヒドロキシ、エーテル、チオール、チオエーテル、アミノ、C1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールから選択される。芳香環はまた、一緒になって環を形成する1以上の置換基を有し得る。特にこれらは式-(CH2)m-または-O-(CH2)p-O-で表されるものであってもよく、式中、mは2、3、4または5であり、pは1、2または3である。
【0046】
スピロ縮合環: 本明細書で用いる「スピロ縮合環」という用語は、単一の炭素原子で分子の残部に縮合している炭素環または複素環を言う。環自体は炭素環原子のみを有し、そのことにより炭素環であってよく、または1個以上のヘテロ原子を有し、そのことにより複素環であってもよい。C5-7炭素環および複素環の例を本明細書に記載する。
【0047】
窒素含有C5-7複素環: 本明細書で用いる「窒素含有C5-7複素環」という用語は、ヘテロシクリルに関連して下に定義するような、少なくとも1個の窒素環原子を有するC5-7複素環を言う。
【0048】
アルキル: 本明細書で用いる「アルキル」という用語は、(特に断らない限り)1〜20個の炭素原子を有する炭化水素化合物の1個の炭素原子から1個の水素原子を除くことにより得られる一価の基を言い、これは脂肪族または脂環式であってよく、また飽和もしくは不飽和(例えば部分不飽和、完全不飽和)であり得る。したがって、「アルキル」という用語には、以下に説明する下位群であるアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、などが含まれる。
【0049】
アルキル基に関連して、接頭辞(例えばC1-4、C1-7、C1-20、C2-7、C3-7など)は炭素原子の数、または炭素原子の数の範囲を表す。例えば本明細書で用いる「C1-4アルキル」という用語は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を言う。アルキル基の例としては、C1-4アルキル(「低級アルキル」)、C1-7アルキル、およびC1-20アルキルが挙げられる。最初の接頭辞は他の制限により変化しうることに留意されたい。例えば、不飽和アルキル基については最初の接頭辞は少なくとも2でなければならなず、環式アルキル基については最初の接頭辞は少なくとも3でなければならない、といった具合である。
【0050】
(無置換の)飽和アルキル基の例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)、ヘプチル(C7)、オクチル(C8)、ノニル(C9)、デシル(C10)、ウンデシル(C11)、ドデシル(C12)、トリデシル(C13)、テトラデシル(C14)、ペンタデシル(C15)、およびエイコデシル(C20)が挙げられるが、これらに限らない。
【0051】
(無置換の)飽和線状アルキル基の例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル) (C5)、n-ヘキシル(C6)、およびn-ヘプチル(C7)が挙げられるが、これらに限らない。
【0052】
(無置換の)飽和分枝状アルキル基の例としては、イソプロピル(C3)、イソブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、イソペンチル(C5)、およびneo-ペンチル(C5)が挙げられるが、これらに限らない。
【0053】
アルケニル: 本明細書で用いる「アルケニル」とい用語は、1以上の炭素-炭素二重結合を有するアルキル基を言う。アルケニル基の例としては、C2-4アルケニル、C2-7アルケニル、C2-20アルケニルが挙げられる。
【0054】
(無置換の)不飽和アルケニル基の例としては、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(1-メチルビニル、-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)、およびヘキセニル(C6)が挙げられるが、これらに限らない。
【0055】
アルキニル: 本明細書で用いる「アルキニル」という用語は1以上の炭素-炭素三重結合を有するアルキル基を言う。アルキニル基の例としては、C2-4アルキニル、C2-7アルキニル、C2-20アルキニルが挙げられる。
【0056】
(無置換の)不飽和アルキニル基の例としては、エチニル(エチニル、-C≡CH)および2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)が挙げられるが、これらに限らない。
【0057】
シクロアルキル: 本明細書で用いる「シクロアルキル」という用語は、シクリル基でもあるアルキル基を言う。すなわち、この用語は、炭素環式化合物の炭素環の脂環式環原子から水素原子を除くことにより得られる一価の基を言い、この炭素環は飽和または不飽和(例えば部分不飽和、完全不飽和)であってもよく、この基は(特に断らない限り)3〜20個の環原子を含めて、3〜20個の炭素原子を有する。したがって、「シクロアルキル」という用語には、下位群であるシクロアルケニルおよびシクロアルキニルが含まれる。好ましくは、各々の環は3〜7個の環原子を有する。シクロアルキル基の基の例としては、C3-20シクロアルキル、C3-15シクロアルキル、C3-10シクロアルキル、C3-7シクロアルキルが挙げられる。
【0058】
シクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、以下から誘導されるものが挙げられる:
飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、メチルシクロプロパン(C4)、ジメチルシクロプロパン(C5)、メチルシクロブタン(C5)、ジメチルシクロブタン(C6)、メチルシクロペンタン(C6)、ジメチルシクロペンタン(C7)、メチルシクロヘキサン(C7)、ジメチルシクロヘキサン(C8)、メンタン(C10);
不飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロペン(C3)、シクロブテン(C4)、シクロペンテン(C5)、シクロヘキセン(C6)、メチルシクロプロペン(C4)、ジメチルシクロプロペン(C5)、メチルシクロブテン(C5)、ジメチルシクロブテン(C6)、メチルシクロペンテン(C6)、ジメチルシクロペンテン(C7)、メチルシクロヘキセン(C7)、ジメチルシクロヘキセン(C8);
飽和多環式炭化水素化合物:
ツジャン(C10)、カラン(C10)、ピナン(C10)、ボルナン(C10)、ノルカラン(C7)、ノルピナン(C7)、ノルボルナン(C7)、アダマンタン(C10)、デカリン(デカヒドロナフタレン)(C10);
不飽和多環式炭化水素化合物:
カンフェン(C10)、リモネン(C10)、ピネン(C10);
芳香環を有する多環式炭化水素化合物:
インデン(C9)、インダン(例えば2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)、アセアントレン(C16)、コラントレン(C20)。
【0059】
ヘテロシクリル: 本明細書で用いる「ヘテロシクリル」という用語は、複素環式化合物の環原子から水素原子を除くことにより得られる一価の基を言い、この基は(特に断らない限り)3〜20個の環原子を有し、そのうち1〜10個が環ヘテロ原子である。好ましくは、各々の環は3〜7個の環原子を有し、そのうち1〜4個が環ヘテロ原子である。
【0060】
この意味で、接頭辞(例えばC3-20、C3-7、C5-6など)は、炭素原子であれヘテロ原子であれ、環原子の数、または環原子の数の範囲を表す。例えば、本明細書で用いる「C5-6ヘテロシクリル」という用語は、5または6個の環原子を有するヘテロシクリル基を言う。ヘテロシクリル基の例としては、C3-20ヘテロシクリル、C5-20ヘテロシクリル、C3-15ヘテロシクリル、C5-15ヘテロシクリル、C3-12ヘテロシクリル、C5-12ヘテロシクリル、C3-10ヘテロシクリル、C5-10ヘテロシクリル、C3-7ヘテロシクリル、C5-7ヘテロシクリル、およびC5-6ヘテロシクリルが挙げられる。
【0061】
単環式ヘテロシクリル基の例としては、限定するものではないが、以下から誘導されるものが挙げられる:
N1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
O1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
S1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)、およびジオキセパン(C7);
O3:トリオキサン(C6);
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソオキサゾール(C5)、ジヒドロイソオキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1:オキサジアジン(C6);
O1S1:オキサチオール(C5)およびオキサチアン(チオキサン)(C6);ならびに、
N1O1S1:オキサチアジン(C6)。
【0062】
置換された(非芳香族)単環式ヘテロシクリル基の例としては、環式の糖から誘導されたもの、例えば、フラノース類(C5)、例えばアラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース、およびキシロフラノース、ならびにピラノース類(C6)、例えばアロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース、およびタロピラノースが挙げられる。
【0063】
スピロC3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル: 本明細書で用いる「スピロC3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル」という用語は、両方の環に共通の単一原子を介して別の環と結合したC3-7シクロアルキルまたはC3-7ヘテロシクリル環を言う。
【0064】
C5-20アリール: 本明細書で用いる「C5-20アリール」という用語は、C5-20芳香族化合物の芳香族環原子から水素原子を除くことにより得られる一価の基を言い、前記化合物は1つの環、または2以上の環(例えば、縮合環)を有し、かつ5〜20個の環原子を有し、ここで少なくとも1つの前記環は芳香環である。好ましくは、各々の環は5〜7個の環原子を有する。
【0065】
環原子は、「カルボアリール基」がそうであるように、全てが炭素原子であってよく、その場合、この基のことを便宜的に「C5-20カルボアリール」基と呼ぶことがある。
【0066】
環ヘテロ原子を有しないC5-20アリール基(すなわちC5-20カルボアリール基)の例としては、限定するものではないが、ベンゼン(すなわちフェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、およびピレン(C16)から誘導されるものが挙げられる。
【0067】
あるいはまた、環原子には、限定するものではないが、酸素、窒素、および硫黄を含む1個以上のヘテロ原子が含まれてもよく、「ヘテロアリール基」などがそうである。この場合、この基のことを便宜上「C5-20ヘテロアリール」基と呼ぶことができ、ここで「C5-20」は、炭素原子であれヘテロ原子であれ、環原子を意味する。好ましくは、各々の環は5〜7個の環原子を有し、そのうち0〜4個が環ヘテロ原子である。
【0068】
C5-20ヘテロアリール基の例としては、限定するものではないが、フラン(オキソール)、チオフェン(チオール)、ピロール(アゾール)、イミダゾール(1,3-ジアゾール)、ピラゾール (1,2-ジアゾール)、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、テトラゾールおよびオキサトリアゾールから誘導されるC5ヘテロアリール基、ならびにイソオキサジン、ピリジン(アジン)、ピリダジン(1,2-ジアジン)、ピリミジン(1,3-ジアジン、例えばシトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)およびトリアジンから誘導されるC6ヘテロアリール基が挙げられる。
【0069】
ヘテロアリール基は、炭素原子またはヘテロ環原子を介して結合することができる。
【0070】
縮合環を含むC5-20 ヘテロアリール基の例としては、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドールから誘導されるC9 ヘテロアリール基;キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジンから誘導されるC10 ヘテロアリール基;アクリジンおよびキサンテンから誘導されるC14 ヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限らない。
【0071】
上記のアルキル、ヘテロシクリル、およびアリール基は、単独であれ別の置換基の一部であれ、それ自体が、それ自体および以下に記載する追加の置換基から選択される1個以上の基で置換されていてもよい。
【0072】
ハロ: -F、-Cl、-Br、および-I。
【0073】
ヒドロキシ: -OH。
【0074】
エーテル: -OR、ここでRはエーテル置換基、例えばC1-7アルキル基(C1-7アルコキシ基とも言う)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも言う)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも言う)であり、好ましくはC1-7アルキル基である。
【0075】
ニトロ: -NO2
【0076】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル): -CN。
【0077】
アシル(ケト): -C(=O)R、ここでRはアシル置換基、例えば、H、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシルまたはC1-7アルカノイルとも言う)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも言う)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも言う)であり、好ましくはC1-7アルキル基である。アシル基の例としては、限定するものではないが、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(ブチリル)、および-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が挙げられる。
【0078】
カルボキシ(カルボン酸): -COOH。
【0079】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル): -C(=O)OR、ここでRはエステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。エステル基の例としては、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3、および-C(=O)OPhが挙げられるが、これらに限らない。
【0080】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド): -C(=O)NR1R2、ここでR1およびR2は独立に、アミノ基について定義したようなアミノ置換基である。アミド基の例としては、限定するものではないが、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3、および-C(=O)N(CH2CH3)2、ならびに、R1およびR2が、それらの結合している窒素原子と一緒になって、複素環式構造を形成するアミド基、例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、およびピペラジニルカルボニルにおける前記アミド基が挙げられる。
【0081】
アミノ: -NR1R2、ここでR1およびR2は独立に、アミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノまたはジ-C1-7アルキルアミノとも言う)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはHまたはC1-7アルキル基であり、あるいは「環式」アミノ基の場合には、R1とR2は、それらが結合している窒素原子と一緒に4〜8個の環原子を有する複素環を形成する。アミノ基の例としては、-NH2、-NHCH3、-NHCH(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、および-NHPhが挙げられるが、これらに限らない。環式アミノ基の例としては、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、パーハイドロジアゼピニル、モルホリノ、およびチオモルホリノが挙げられるが、これらに限らない。特に、環式アミノ基は、本明細書に定義した置換基のいずれか(例えばカルボキシ、カルボキシレートおよびアミド)により、その環を置換されたものであり得る。
【0082】
アシルアミド(アシルアミノ): -NR1C(=O)R2、ここでR1はアミド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはHもしくはC1-7アルキル基であり、最も好ましくはHであり、かつR2はアシル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。アシルアミド基の例としては、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3、および-NHC(=O)Phが挙げられるがこれに限らない。R1およびR2は、例えば、スクシンイミジル、マレイミジル、およびフタルイミジルにおけるように、一緒になって環式構造を形成してもよい:
【化9】

【0083】
ウレイド: -N(R1)CONR2R3、ここでR2およびR3は独立に、アミノ基について定義したようなアミノ置換基であり、かつR1はウレイド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくは水素もしくはC1-7アルキル基である。ウレイド基の例としては、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2、-NMeCONEt2および-NHCONHPhが挙げられるが、これらに限らない。
【0084】
アシルオキシ(逆エステル): -OC(=O)R、ここでRは、アシルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。アシルオキシ基の例としては、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Ph、-OC(=O)C6H4F、および-OC(=O)CH2Phが挙げられるが、これらに限らない。
【0085】
チオール: -SH。
【0086】
チオエーテル(スルフィド): -SR、ここでRは、チオエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも言う)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。C1-7アルキルチオ基の例としては、-SCH3および-SCH2CH3が挙げられるが、これらに限らない。
【0087】
スルホキシド(スルフィニル): -S(=O)R、ここでRは、スルホキシド置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホキシド基の例としては、-S(=O)CH3および-S(=O)CH2CH3が挙げられるが、これらに限らない。
【0088】
スルホニル(スルホン): -S(=O)2R、ここでRは、スルホン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホン基の例としては、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3、-S(=O)2CH2CH3、および4-メチルフェニルスルホニル(トシル)が挙げられるが、これらに限らない。
【0089】
チオアミド(チオカルバミル): -C(=S)NR1R2、ここでR1およびR2は独立に、アミノ基について定義したようなアミノ置換基である。アミド基の例としては、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH3)2、および-C(=S)NHCH2CH3が挙げられるが、これらに限らない。
【0090】
スルホンアミノ: -NR1S(=O)2R、ここでR1はアミノ基について定義したようなアミノ置換基であり、かつ、Rはスルホンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホンアミノ基の例としては、-NHS(=O)2CH3、-NHS(=O)2Phおよび-N(CH3)S(=O)2C6H5が挙げられるが、これらに限らない。
【0091】
上に述べたように、上に列記した置換基(例えばC1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリール)を形成する基は、それ自体が置換されていてもよい。したがって、上の定義は置換された置換基を包含する。
【0092】
さらに好ましいもの
本発明の各々の態様に以下の好ましいものを適宜当てはめることができる。
【0093】
本発明では、-A-B-で表される縮合芳香環は、好ましくは炭素環原子のみからなり、したがってベンゼン、ナフタレンであってよく、さらに好ましくはベンゼンである。上記のように、こうした環は置換されていてもよいが、ある実施形態では好ましくは置換されていない。
【0094】
-A-B-で表される縮合芳香環が置換基を有するならば、その置換基は好ましくは、中央の環の炭素原子に対しβ-位の、中央の環に結合している原子に結合する。したがって、縮合芳香環がベンゼン環であるならば、置換の好ましい位置は、下の式中で*により表される位置であり、これは通常、フタラジノン部分の5-位と呼ばれる:
【化10】

【0095】
置換基は好ましくはアルコキシ、アミノ、ハロまたはヒドロキシ基であり、さらに好ましくはC1-7アルコキシ基(例えば-OMe)である。
【0096】
置換基がハロであるならば、それはフタラジノン部分の6-、7-、または8-位にあってもよく、好ましくは8-位にある。ハロは好ましくはクロロまたはフルオロであり、より好ましくはフルオロである。
【0097】
好ましくは、Dは、フェニレン、フルオロフェニレン、ピリジレン、フルオロピリジレン、フラニレンおよびチオフェニレンから選択される。
【0098】
より好ましくはDは以下から選択される:
【化11】

【0099】
最も好ましくはDは以下から選択される:
【化12】

【0100】
最も好ましくはDは次のものである:
【化13】

【0101】
好ましくは、Xは単結合、NRN2およびCRC3RC4から選択され、かつYはCRC1RC2である。
【0102】
ある実施形態では、XがNRN2である。こうした実施形態では、RC1およびRC2は好ましくはHであり、さらにRN2がHであることが好ましい。他の実施形態では、XはCRC3RC4である。こうした実施形態では、RC1およびRC2は好ましくはHであり、さらにRC3およびRC4がHであることが好ましい。
【0103】
ある実施形態では、Xは好ましくは単結合であり、そのことによりRDは五員環となる。こうした化合物では、RN1、RC1およびRC2の少なくとも1つが水素でないことが好ましい。こうした好ましい化合物の一部では、RN1、RC1およびRC2の1つのみが水素ではない。こうした好ましい化合物のうちの他の化合物では、RN1、RC1およびRC2の2つまたは3つが水素ではない。
【0104】
RC1またはRC2について好ましい基としては、限定するものではないが、好ましくは置換されていないC1-4アルキル、例えばメチル、エチル、プロピルが挙げられ、このときいくつかの化合物についてはメチルが好ましい。
【0105】
RN1が水素でない場合には、RC1は好ましくはメチルであってよく、このときRC2は好ましくはHおよびメチルから選択され、より好ましくはメチルである。
【0106】
RN1が水素である場合には、好ましくはRC2も水素であり、かつRC1は、好ましくはその末端においてカルボキシ基またはアミド基で置換されている、C1-4アルキル(例えばメチル)である。アミド基のアミノ置換基は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、好ましくは環式である。アミド基の環式部分は、好ましくはC5-7窒素含有複素環式基、例えば、ピロリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピペリジニル、モルホリノであり、このいずれもが、上に記載のようにさらに置換されていてもよい。特に、置換基には、限定するものではないが、ヒドロキシル、置換および無置換のC1-4アルキル(例えばメチル、ヒドロキシメチル、メトキシ-エチル、ジメチルアミノ-エチル)、およびC5-7ヘテロシクリル(例えばN-ピペリジニル、モルホリノ)が含まれうる。
【0107】
RN1の好ましい基としては、C1-4アルキル(例えばメチル)、好ましくはその末端をカルボキシまたはアミド基、およびさらにエステル基で置換されたC1-4アルキルが挙げられるが、これらに限らない。アミド基のアミノ置換基は、それらが結合しているN原子と一緒になって、好ましくは環式である。アミド基の環式部分は、好ましくはC5-7窒素含有複素環式基、例えば、ピロリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピペリジニル、モルホリノであり、このいずれもが、上に記載のようにさらに置換されていてもよい。特に、置換基は、限定するものではないが、ヒドロキシル、置換および無置換のC1-4アルキル(例えばメチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、メトキシ-エチル、ジメチルアミノ-エチル)、ならびにC5-7ヘテロシクリル(例えばN-ピペリジニル、モルホリノ)を含みうる。
【0108】
適宜に、上記の好ましいものを互いに組み合わせることができる。
【0109】
ある実施形態では、YはNRN3であり、こうした実施形態では、Xは好ましくはC=Oである。これらの実施形態では、RN1およびRN2は好ましくはHおよびC1-4アルキルから選択され、より好ましくは両方ともHである。
【0110】
含まれる他の形態
上に含まれるものとして、こうした置換基のよく知られているイオン形態、塩、溶媒和物、および保護形態がある。例えば、カルボン酸(-COOH)と言う場合、これにはそのアニオン性(カルボキシレート)形態(-COO-)、塩または溶媒和物、ならびに慣用の保護形態も含まれる。同様に、アミノ基と言う場合、これにはそのアミノ基のプロトン化された形態(-N+HR1R2)、塩または溶媒和物、例えば、塩酸塩、ならびにアミノ基の慣用の保護形態も含まれる。同様に、ヒドロキシル基という場合、これにはそのアニオン性形態(-O-)、塩または溶媒和物、ならびにヒドロキシル基の慣用の保護形態も含まれる。
【0111】
異性体、塩、溶媒和物、保護形態、およびプロドラッグ
特定の化合物は、1以上の特定の幾何異性体、光学異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、エピマー異性体、立体異性体、互変異性体、配座異性体、またはアノマー異性体として存在することができ、これには、限定するものではないが、cis型およびtrans型;E体およびZ体;c体、t体、およびr体;endo型およびexo型;R体、S体、およびmeso体;D体およびL体;d体およびl体;(+)型および(-)型;ケト型、エノール型、およびエノラート型;syn体およびanti体;シンクリナル体およびアンチクリナル体;α型およびβ型;アキシアル型およびエクアトリアル型;舟型、いす型、ねじれ型、エンベロープ型、および半いす型;ならびにその組み合わせが挙げられ、これ以後、まとめて「異性体」と呼ぶ。
【0112】
化合物が結晶形態であれば、それは数種の異なる多形として存在し得る。
【0113】
互変異性体について以下に説明する場合を除き、本明細書で用いる「異性体」という用語から、特に構造異性体(または構成異性体)(すなわち単に原子の空間的な位置ではなく、原子間の結合が異なる異性体)は除外されることに留意されたい。例えば、メトキシ基-OCH3への言及はその構造異性体であるヒドロキシメチル基-CH2OHへの言及と解釈されるべきでない。同様に、オルト-クロロフェニルへの言及はその構造異性体であるメタ-クロロフェニルへの言及と解釈されるべきでない。しかしながら、あるクラスの構造体を言及するとき、それはそのクラスに含まれる構造異性体を含み得る(例えば、C1-7アルキルには、n-プロピルおよびiso-プロピルが含まれ、ブチルにはn-、iso-、sec-、およびtert-ブチルが含まれ、メトキシフェニルにはオルト-、メタ-、およびパラ-メトキシフェニルが含まれる)。
【0114】
上の除外は、例えば以下の互変異性の対の場合のように、互変異性体(例えばケト-、エノール-、およびエノラート型など)には適用されない:ケト/エノール、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾ、およびニトロ/aci-ニトロ。
【0115】
本発明に特に関連するのは以下に示す互変異性体の対である:
【化14】

【0116】
「異性体」という用語には、特に、1以上の同位体置換を有する化合物が含まれることに留意されたい。例えば、Hは、1H、2H(D)、および3H(T)を含めて、どのような同位体であってもよく、Cは12C、13C、および14Cを含めて、どのような同位体であってもよく、Oは16Oおよび18Oを含めて、どのような同位体であってもよい、など。
【0117】
特に断らない限り、特定の化合物への言及は、その(全体的または部分的)ラセミ混合物および他の混合物を含めて、あらゆるそのような異性体を包含する。かかる異性体の調製方法(例えば不斉合成)および分離方法(例えば分別結晶およびクロマトグラフィー手法)は、当技術分野で知られているか、または本明細書に教示する方法もしくは公知の方法を公知の様式で応用することにより容易に得られる。
【0118】
特に断らない限り、特定の化合物への言及は、例えば以下で述べるような、そのイオン形態、塩、溶媒和物、および保護された形態、ならびにその種々の多形を包含する。
【0119】
活性化合物の対応する塩、例えば製薬上許容される塩を調製し、精製し、かつ/または取り扱うことが都合がよいか、または望ましいことがある。製薬上許容される塩の例はBergeら、“Pharmaceutically Acceptable Salts”, J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977)に載っている。
【0120】
例えば、当該化合物がアニオン性であるか、またはアニオン性となり得る官能基(例えば、-COOHは-COO-となりうる)を有するならば、適当なカチオンを用いて塩を形成させることができる。適当な無機カチオンの例としては、限定するものではないが、Na+やK+のようなアルカリ金属イオン、Ca2+やMg2+のようなアルカリ土類カチオン、およびAl3+のような他のカチオンが挙げられる。適当な有機カチオンの例としては、限定するものではないが、アンモニウムイオン(すなわち、NH4+)および置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2+、NHR3+、NR4+)が挙げられる。いくつかの適当な置換アンモニウムイオンの例は、以下から誘導されるものである:エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、ならびにリシンやアルギニンのようなアミノ酸。一般的な四級アンモニウムイオンの例はN(CH3)4+である。
【0121】
当該化合物がカチオン性であるか、またはカチオン性となり得る官能基(例えば、-NH2は-NH3+となり得る)を有するならば、適当なアニオンを用いて塩を形成させることができる。適当な無機アニオンの例としては、限定するものではないが、以下の無機酸から誘導されるものが挙げられる:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、および亜リン酸。適当な有機アニオンの例としては、限定するものではないが、以下の有機酸から誘導されるものが挙げられる:酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、乳酸、リンゴ酸、パモ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、桂皮酸、ピルビン酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、吉草酸、およびグルコン酸。適当なポリマー性アニオンの例としては、限定するものではないが、以下のポリマー酸から誘導されるものが挙げられる:タンニン酸、カルボキシメチルセルロース。
【0122】
活性化合物の対応する溶媒和物を調製し、精製し、かつ/または取り扱うことが都合がよいか、または望ましいことがある。「溶媒和物」という用語は本明細書では慣用の意味合いで使われ、溶質(例えば活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒の複合体を言う。溶媒が水であれば、便宜的に溶媒和物のことを水和物、例えば、一水和物、二水和物、三水和物、などと呼ぶことができる。
【0123】
活性化合物を化学的に保護された形態として調製と、精製し、かつ/または取り扱うことが都合がよいか、または望ましいことがある。本明細書で用いる「化学的に保護された形態」という用語は、1以上の反応性官能基が望ましくない化学反応から保護されている化合物、すなわち保護された基もしくは保護基 (マスクされた基もしくはマスキング基またはブロックされた基もしくはブロッキング基とも言う) の形態の化合物を言う。反応性官能基を保護することにより、保護された基に影響を与えることなく、保護されていない他の反応性官能基が関わる反応を行うことができる;保護基は、通常、分子の残部に実質的に影響を与えることなく、後続の工程で除去することができる。例えば、“Protective Groups in Organic Synthesis” (T. Green and P. Wuts; 第3版; John Wiley and Sons, 1999)を参照されたい。
【0124】
例えば、ヒドロキシ基はエーテル(-OR)またはエステル(-OC(=O)R)として保護することができ、例えば、t-ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)、またはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリルまたはt-ブチルジメチルシリルエーテル、またはアセチルエステル(-OC(=O)CH3、-OAc)として保護することができる。
【0125】
例えば、アルデヒドまたはケトン基は、それぞれアセタールまたはケタールとして保護することができ、このときカルボニル基(>C=O)は、例えば一級アルコールとの反応により、ジエーテル(>C(OR)2)に変換される。アルデヒドまたはケトン基は、酸の存在下に大過剰の水を用いて加水分解することにより容易に再生成される。
【0126】
例えば、アミン基は、例えば、アミドまたはウレタンとして保護することができ、例えば、メチルアミド(-NHCO-CH3)、ベンジルオキシアミド(-NHCO-OCH2C6H5、-NH-Cbz)として、t-ブトキシアミド(-NHCO-OC(CH3)3、-NH-Boc)、2-ビフェニル-2-プロポキシアミド(-NHCO-OC(CH3)2C6H4C6H5、-NH-Bpoc)として、9-フルオレニルメトキシアミド(-NH-Fmoc)として、6-ニトロベラトリルオキシアミド(-NH-Nvoc)として、2-トリメチルシリルエチルオキシアミド(-NH-Teoc)として、2,2,2-トリクロロエチルオキシアミド(-NH-Troc)として、アリルオキシアミド(-NH-Alloc)として、2(-フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(-NH-Psec)として、または、適当であれば、N-オキシド(>NO・)として保護することができる。
【0127】
例えば、カルボン酸基は、エステルとして、例えば、C1-7アルキルエステル(例えばメチルエステル、t-ブチルエステル)、C1-7ハロアルキルエステル(例えばC1-7トリハロアルキルエステル)、トリC1-7アルキルシリル-C1-7アルキルエステル、またはC5-20アリール-C1-7アルキルエステル(例えばベンジルエステル、ニトロベンジルエステル)として;あるいはアミドとして、例えば、メチルアミドとして保護することができる。
【0128】
例えば、チオール基は、チオエーテル(-SR)として、例えば、ベンジルチオエーテル、アセトアミドメチルエーテル(-S-CH2NHC(=O)CH3)として保護することができる。
【0129】
活性化合物をプロドラッグの形態として調製し、精製し、かつ/または取り扱うことが都合がよいか、または望ましいことがある。本明細書で用いる「プロドラッグ」という用語は、(例えばin vivoで)代謝されたときに所望の活性化合物を生じる化合物を言う。典型的には、プロドラッグは不活性であるか、または活性化合物ほど活性ではないが、有利な取扱い、投与または代謝特性を提供し得る。
【0130】
例えば一部のプロドラッグは、活性化合物のエステル(例えば生理学的に許容される代謝的に不安定なエステル)である。代謝中に、このエステル基(-C(=O)OR)が切断され、活性薬物が生じる。かかるエステルは、例えば、親化合物中の任意のカルボン酸基(-C(=O)OH)のエステル化により形成することができ、適当であれば親化合物中に存在する任意の他の反応基を先に保護し、必要であればエステル化の後に脱保護を行う。かかる代謝的に不安定なエステルの例としては、限定するものではないが、Rが以下である化合物が挙げられる:C1-20アルキル(例えば-Me、-Et)、C1-7アミノアルキル(例えばアミノエチル、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル、2-(4-モルホリノ)エチル)、およびアシルオキシ-C1-7アルキル(例えばアシルオキシメチル、アシルオキシエチル、例えばピバロイルオキシメチル;アセトキシメチル、1-アセトキシエチル、1-(1-メトキシ-1-メチル)エチル-カルボキシルオキシエチル、1-(ベンゾイルオキシ)エチル、イソプロポキシ-カルボニルオキシメチル、1-イソプロポキシ-カルボニルオキシエチル、シクロヘキシル-カルボニルオキシメチル、1-シクロヘキシル-カルボニルオキシエチル、シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシメチル、1-シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシエチル、(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル、1-(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル;(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル;および1-(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチル)。
【0131】
さらなる適当なプロドラッグ形態としては、ホスホネートおよびグリコレート塩が挙げられる。特に、ヒドロキシ基(-OH)は、亜リン酸クロロジベンジルとの反応、およびそれに続く水素化によりホスホネート基-O-P(=O)(OH)2を形成することでホスホネートプロドラッグとすることができる。かかる基は、代謝中にホスファターゼ酵素により切断されてヒドロキシ基を有する活性薬物を生じる。
【0132】
また、一部のプロドラッグは酵素的に活性化されて、活性化合物を生じるか、またはさらなる化学反応により活性化合物をもたらすような化合物を生じる。例えばプロドラッグは、糖誘導体もしくは他のグリコシドコンジュゲートであってよく、またはアミノ酸エステル誘導体であり得る。
【0133】
頭字語
便宜上、多くの化学基がよく知られた略記号で表され、限定するものではないが、次のものが挙げられる:メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、n-ブチル(nBu)、tert-ブチル(tBu)、n-ヘキシル(nHex)、シクロヘキシル(cHex)、フェニル(Ph)、ビフェニル(biPh)、ベンジル(Bn)、ナフチル(naph)、メトキシ(MeO)、エトキシ(EtO)、ベンゾイル(Bz)、およびアセチル(Ac)。
【0134】
便宜上、多くの化合物がよく知られた略記号で表され、限定するものではないが、次のものが挙げられる:メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソ-プロパノール(i-PrOH)、メチルエチルケトン(MEK)、エーテルまたはジエチルエーテル(Et2O)、酢酸(AcOH)、ジクロロメタン(塩化メチレン、DCM)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)。
【0135】
合成
本発明の式Iの化合物:
【化15】

【0136】
は、式2の前駆体:
【化16】

【0137】
から合成することができ、式中のOProtは保護されたヒドロキシ基を表す。示される種々の置換基は、式Iの化合物について定義したものと同一であるか、またはそれらの定義された基の保護された形態または前駆体でありうる(これらは所望の化合物を得るのにさらなる変換を要する)。本発明の化合物の合成は、標準方法(例えば塩基触媒法、HBTUカップリング)を用いて、ヒドロキシ基保護基の除去と、それに続くアミド結合の形成により、進行する。
【0138】
式2の化合物は、式3または式4の化合物:
【化17】

【0139】
を、それぞれ式5または式6の化合物:
【化18】

【0140】
とカップリングさせることにより合成することができる。
【0141】
尿素結合形成反応は標準条件下で行う。式5および式6の化合物は公知の方法により合成することができ、例を以下に記載する。同じことが式3および式4の化合物にも当てはまる。
【0142】
使用
本発明は、活性化合物を提供し、特にPARP-1活性を阻害する活性がある化合物を提供する。
【0143】
本明細書で用いる「活性」という用語は、PARP-1活性を阻害することのできる化合物に関するもので、特に、その活性を本来備えている化合物(薬物)と、かかる化合物のプロドラッグ (プロドラッグ自体はその活性が全くないか、ほとんどない) の両方が含まれる。
【0144】
ある特定の化合物によりもたらされるPARP-1阻害を評価するために便利に使用できるアッセイを、下の実施例において説明する。
【0145】
本発明はさらに、細胞中のPARP-1活性を阻害する方法を提供し、該方法は、細胞を、好ましくは製薬上許容される組成物の形態の、有効な量の活性化合物と接触させることを含む。かかる方法はin vitroまたはin vivoで行うことができる。
【0146】
例えば、細胞のサンプルをin vitroで増殖させ、該細胞を活性化合物と接触させ、該化合物がその細胞に及ぼす影響を観察することができる。「影響」の例として、ある特定の時間内に達成されたDNA修復の量を決定することができる。活性化合物が細胞に影響を及ぼすことが見出されたときには、この影響を、同じ細胞型の細胞を有する患者の治療方法において前記化合物の有効性の予後または診断マーカーとして使用することができる。
【0147】
症状の治療に関して本明細書で用いる「治療」という用語は、一般に、ヒトであれ動物 (例えば獣医用途において) であれ、何らかの望まれる治療効果(例えば、症状の進行の抑制) が得られる治療および治療法を言い、これには進行速度の低下、進行速度の停止、症状の改善、および症状の治癒が含まれる。予防手段としての治療(すなわち予防法)も含まれる。
【0148】
本明細書で用いる「補助剤(adjunct)」という用語は、既知の治療手段と併用される活性化合物の使用に関係する。かかる手段としては種々の癌の治療に用いられる薬物および/または電離放射線の細胞毒性レジメンが挙げられる。特に、本活性化合物は、数種の癌化学療法処置(これには癌治療に使われるトポイソメラーゼクラスの毒物および既知のアルキル化剤の大部分が含まれる)の作用を増強することが分かっている。
【0149】
活性化合物はまた、例えばin vitroにおいて既知の化学療法剤または電離放射線療法に対して細胞を感受性にするために、PARPを阻害するための細胞培養添加剤として使用することができる。
【0150】
活性化合物はまた、例えば候補宿主が問題の化合物を用いる治療から恩恵を受ける可能性が高いかを判断するために、in vitroアッセイの一部として使用することができる。
【0151】
投与
活性化合物または活性化合物を含む医薬組成物は、全身的/末梢的にかかわらず、または望まれる作用部位にかかわらず、任意の適当な投与経路により被験者に投与することができる。そうした投与経路としては、限定するものではないが、経口(例えば摂取により);局所(例えば経皮、鼻腔、眼、バッカル、および舌下を含む);肺(例えばエアロゾルを口または鼻を介して用いる吸入または吹送療法による);直腸;膣;非経口(例えば、皮下、皮内、筋内、静脈内、動脈内、心臓内、髄腔内、脊髄内、嚢内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下、および胸骨内を含む注射による);デポー剤の(例えば皮下または筋内の)インプラントによる経路が挙げられる。
【0152】
被験体は、真核生物、動物、脊椎動物、哺乳動物、齧歯類(例えばモルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科動物(例えばマウス)、イヌ科動物(例えばイヌ)、ネコ科動物(例えばネコ)、ウマ科動物(例えばウマ)、霊長類、類人猿(例えばサルまたは類人猿)、サル(例えばマーモセット、ヒヒ)、類人猿(例えばゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)、またはヒトでありうる。
【0153】
製剤
活性化合物を単独で投与することも可能であるが、これを医薬組成物(例えば製剤)として提供することが好ましく、該組成物は、上に定義した少なくとも1種の活性化合物を、1種以上の製薬上許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、増量剤、バッファー、安定化剤、保存剤、滑沢剤、または当業者によく知られた他の材料、および場合により他の治療薬または予防薬と共に含む。
【0154】
したがって、本発明はさらに、上に定義した医薬組成物、ならびに、上に定義した少なくとも1種の活性化合物を、本明細書に記載する1種以上の製薬上許容される担体、賦形剤、バッファー、アジュバント、安定化剤、または他の材料と一緒に混合することを含む医薬組成物の製造方法を提供する。
【0155】
本明細書で用いる「製薬上許容される」という用語は、過度の細胞毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わず、理にかなった利益/リスク比に見合っており、被験体(例えばヒト)の組織と接触させて使用するのに無理のない医学的判断の範囲内で適している化合物、物質、組成物および/または剤形に関係する。各々の担体、賦形剤なども製剤の他の成分と適合可能であるという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0156】
適当な担体、希釈剤、賦形剤などは標準的な製剤学の書籍に見出すことができる。例えば、“Handbook of Pharmaceutical Additives,” 第2版 (M. Ash and I. Ash編), 2001 (Synapse Information Resources, Inc., Endicott, New York, USA)、“Remington's Pharmaceutical Sciences,” 第20版, pub. Lippincott, Williams & Wilkins, 2000; および“Handbook of Pharmaceutical Excipients,” 第2版, 1994を参照されたい。
【0157】
製剤は、単位投与剤形として適宜提供することができ、製薬技術分野で周知のどのような方法で調製してもよい。かかる方法は、活性化合物を、1種以上の補助成分を構成する担体と接触させる工程を含む。一般に製剤は、活性化合物を液状担体もしくは微細な固形担体またはその両方と均一かつ密接に接触させ、必要であればその後、製品に成形することにより調製する。
【0158】
製剤は、液剤、溶液剤、懸濁液剤、乳濁液剤、エリキシル剤、シロップ剤、錠剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、粉剤、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、アンプル剤、坐剤、ペッサリー剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、クリーム剤、スプレー剤、ミスト剤、フォーム剤、ローション剤、オイル剤、ボーラス剤、舐剤、またはエアロゾル剤の形態であり得る。
【0159】
経口投与(例えば摂取による)に適した製剤は、各々が所定量の活性化合物を含有する、カプセル剤、カシェ剤または錠剤のような分離した単位として、粉剤または顆粒剤として、水性または非水性液体中の溶液剤もしくは懸濁液剤として、または水中油型乳濁液剤もしくは油中水型液体乳濁液剤として、ボーラス剤として、舐剤として、またはペースト剤として提供され得る。
【0160】
錠剤は、慣用の手段(例えば圧縮または成形)により、場合により1種以上の補助成分を用いて、製造することができる。圧縮錠剤は、場合により1種以上の結合剤(例えばポビドン、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増量剤もしくは希釈剤(例えば乳糖、微晶質セルロース、リン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ)、崩壊剤(例えばデンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤もしくは分散助剤もしくは湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、ならびに保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸)と混合した、粉剤または顆粒剤のような自由流動形態の活性化合物を、適当な打錠機で圧縮することにより調製することができる。成形錠剤は、粉末化された化合物を不活性な液状希釈剤で湿らせた混合物を適当な打錠機で成形することにより製造することができる。錠剤は場合によりコーティングまたは刻み目を施してもよく、また、所望の放出特性を得るために、例えば種々の割合でヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いるなどして、錠剤に含まれる活性化合物の遅延放出もしくは制御放出をもたらすように製剤化することもできる。錠剤には場合により、胃とは別の腸の部位での放出を達成するために、腸溶コーティングを施してもよい。
【0161】
局所投与(例えば経皮、鼻腔、眼、バッカル、および舌下)に適した製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁液剤、ローション剤、粉剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤、またはオイル剤として製剤化され得る。あるいはまた、製剤には、パッチ剤または包帯剤、例えば活性化合物および場合により1種以上の賦形剤または希釈剤を含浸させた包帯または絆創膏が含まれうる。
【0162】
口腔内への局所投与に適した製剤としては、活性化合物を香味基剤(通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント)中に含むロゼンジ剤、活性化合物を不活性な基剤(例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムなど)中に含む芳香錠、および活性化合物を適当な液状担体中に含む洗口剤が挙げられる。
【0163】
眼への局所投与に適した製剤には、活性化合物が適当な担体(特に活性化合物のための水性溶媒)中に溶解または懸濁されている点眼剤が含まれる。
【0164】
鼻腔投与に適した製剤としては、担体が固形物の場合、例えば約20〜約500ミクロンの範囲の粒径の粗末剤が挙げられ、これは鼻から吸い込む様式で(すなわち鼻の近くに保持した粉末容器から鼻孔への急激な吸入により)投与される。担体が経鼻スプレーまたは点鼻剤として投与するための、またはネブライザーによるエアロゾル投与のための液体である場合には、適当な製剤として活性化合物の水性溶液剤または油性溶液剤が挙げられる。
【0165】
吸入による投与に適した製剤としては、適当な推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適当なガスを用いて、加圧パックからのエアロゾルスプレーとして提供される製剤が挙げられる。
【0166】
皮膚からの局所投与に適した製剤としては、軟膏剤、クリーム剤、および乳濁液剤が挙げられる。軟膏剤に配合するときには、活性化合物を、場合によりパラフィン系のまたは水混和性の軟膏基剤のいずれかと共に用いることができる。あるいはまた、活性化合物は、水中油型クリーム基剤を用いてクリーム剤に配合することもできる。所望であれば、クリーム基剤の水相は、例えば少なくとも約30%w/wの多価アルコール、すなわち2個以上のヒドロキシル基を有するアルコール、例えばプロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物を含み得る。局所用製剤は望ましくは、活性化合物が皮膚または他の患部に吸収されるまたは浸透するのを促進する化合物を含み得る。かかる皮膚浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連の類似物質が含まれる。
【0167】
局所用乳濁液剤として製剤化するときには、油相は、単に乳化剤(乳濁化剤とも言う)を含むか、または油相は、少なくとも1種の乳化剤と、脂肪または油との、または脂肪と油の両方との混合物を含みうる。好ましくは、親水性乳化剤を、安定化剤として作用する親油性乳化剤と共に配合する。油と脂肪の両方を含めることも好ましい。乳化剤(1種以上)は一緒になって、安定化剤と共にまたは安定化剤なしで、いわゆる乳化ワックスを形成し、このワックスが油および/または脂肪と一緒になって、クリーム製剤の油性分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基剤を形成する。
【0168】
適当な乳化剤および乳濁液安定化剤としては、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。乳濁液剤で使用される大部分の油中の活性化合物の溶解性は非常に低いことがあるので、製剤用の適当な油または脂肪の選択は所望の美容特性を達成するように行う。したがってクリーム剤は、チューブまたは他の容器からの漏出を避けるための適度な稠度を有するとともに、好ましくは脂っぽくなく、しみにならず、洗い落とせる製品であるべきである。直鎖または分枝鎖、一もしくは二塩基性アルキルエステル、例えばジイソアジピン酸エステル、ステアリン酸イソセチル、ココナッツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、またはCrodamol CAPとして知られている分枝鎖エステルの混合物を使用することができ、最後の3種が好ましいエステルである。これらは、要求される特性に応じて、単独でまたは併用して使用することができる。あるいはまた、白色軟パラフィンおよび/もしくは流動パラフィンのような高融点の脂質または他のミネラルオイルを使用することができる。
【0169】
直腸投与に適した製剤は、例えば、カカオ脂またはサリチレートを含む適当な基剤を用いて、坐剤として提供することができる。
【0170】
膣投与に適した製剤は、活性化合物の他に、当技術分野で好適であることが知られている担体を含む、ペッサリー剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー製剤として提供することができる。
【0171】
非経口投与(例えば、皮膚、皮下、筋内、静脈内および皮内を含む注射による)に適した製剤には、以下のものが含まれる:水性および非水性の等張性で発熱物質フリーの滅菌注射溶液(これは抗酸化剤、バッファー、保存剤、安定化剤、静菌剤、および製剤を意図される受容者の血液と等張にする溶質を含み得る)、ならびに水性および非水性の無菌性懸濁液(これらは懸濁化剤および増粘剤を含み得る)、ならびに化合物が血液成分もしくは1以上の臓器を標的とするように設計されたリポソームまたは他の微粒子系。かかる製剤に用いるための適当な等張性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射液、リンガー溶液、または乳酸加リンガー注射液が挙げられる。典型的には、溶液剤中の活性化合物の濃度は、約1 ng/mL〜約10μg/mL、例えば約10 ng/mL〜約1μg/mLである。製剤は単回用量または複数回用量密封容器、例えばアンプルやバイアルで提供することができ、使用の直前に無菌の液状担体(例えば注射用の水)を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。即座の注射用溶液および懸濁液は、無菌の粉剤、顆粒剤および錠剤から調製することができる。製剤は、活性化合物が血液成分もしくは1以上の臓器を標的とするように設計されたリポソームまたは他の微粒子系の形態であり得る。
【0172】
用量
活性化合物、および活性化合物を含む組成物の適当な用量は、患者によって変化し得ることが理解されよう。最適用量の決定には、一般的に、本発明の治療のあらゆるリスクまたは有害な副作用に対して治療効果のレベルのバランスをとることが必要である。選択される用量レベルは種々の要因に依存し、こうした要因としては、限定するものではないが、当該特定化合物の活性、投与経路、投与期間、化合物の排出速度、治療の持続期間、併用される他の薬剤、化合物、および/または物質、ならびに患者の年齢、性別、体重、症状、全身的な健康状態、および以前の病歴が挙げられる。一般的に用量は、実質的に有害な副作用を引き起こすことなく所望の効果をもたらす、作用部位での局所濃度を達成する用量であるが、最終的に化合物の量および投与経路は医師の判断に任される。
【0173】
in vivo投与は、治療過程全体にわたり連続的に、断続的に(例えば適当な時間間隔で分割用量として)または1回用量で行われうる。最も効果的な投与手段と用量を決定する方法は当業者によく知られており、治療に使用する製剤、治療の目的、治療される標的細胞、および治療される被験者に応じて変わる。単回投与または複数回投与を行うことができ、このとき用量レベルと投与パターンは治療に当たっている医師により選択される。
【0174】
一般に、活性化合物の適当な用量は、1日当たり、被験体のキログラム体重当たり、約100μg〜約250mgの範囲である。活性化合物が塩、エステル、プロドラッグなどであるときには、投与される量は親化合物に基づいて計算され、そのため使用される実際の量は比例して増える。
【実施例】
【0175】
一般的な実験方法
分取HPLC
サンプルは、Waters 600 LCポンプ、Genesis AQ 120A 4μ 500mm×4.6mmカラムおよびMicromass ZQ質量分析計を備え、陽イオンエレクトロスプレーイオン化モードで運転する、Waters社の質量に基づいた精製システムを用いて精製した。移動相のA(水中の0.1%ギ酸)およびB(アセトニトリル中の0.1%ギ酸)を以下の濃度勾配で用いた:

流速:2.0mL/分。
【0176】
分析HPLC-MS
分析HPLCは典型的にはSpectra System P4000ポンプおよびJones Genesis C18カラム(4μm、50mm×4.6mm)を用いて行った。移動相A(水中の0.1%ギ酸)およびB(アセトニトリル中の0.1%ギ酸)を以下に記載する濃度勾配で用いた。検出は、254 nm UVおよび210〜600nmの範囲のPDAでTSP UV 6000LP検出器を用いて行った。質量分析計は、エレクトロスプレーイオン化モードで運転するWaters社のZMD LC-MSシステムNo. LD352であった。
【0177】

流速:1.0mL/分。
【0178】
NMR
1H NMRおよび13C NMRは、典型的には、Bruker DPX 300分光計をそれぞれ300 MHzおよび75 MHzで用いて記録した。化学シフトはテトラメチルシラン内部標準と比較するδスケールで100万分の1(ppm)で表した。特に断らない限り、すべてのサンプルはDMSO-d6中に溶解させた。
【0179】
実施例1
【化19】

【0180】
[式中、Xは単結合またはNHである]。
【0181】
化合物1は、WO 03/093261(参照により本明細書に組み入れる)の実施例23に記載のように合成した。
【0182】
(a) 4-(4-フルオロ-3-イソシアナト-ベンジル)-2H-フタラジン-1-オン(2)
無水DCM(1.6L)およびトリエチルアミン(4.62mL、40.86mmol)中の4-(3-アミノ-4-フルオロ-ベンジル)-2H-フタラジン-1-オン(1)(4.0g、14.8mmol)の懸濁液に、無水DCM(327mL)中のトリホスゲン(2.75g、9.28mmol)の予備調製溶液を滴下して加え、室温で70分間撹拌した。次いでこの反応混合物を真空下で濃縮乾固させ、灰色の固形物を得た。LC-MS分析にて単一ピーク、(収量は定量的とみなした)、精製は行わず。m/z (LC-MS、ESP)、RT=4.49分、(M+MeOH) 328.0。
【0183】
(b) {3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ウレイド}-アミノエチルエステル(4)
無水DCM (16.7mL)中の適当なアミノエステル(3)(0.026g、0.17mmol)の溶液に、トリエチルアミン(24μL、0.170mmol)および4-(4-フルオロ-3-イソシアナト-ベンジル)-2H-フタラジン-1-オン(2)(0.05g、0.17mmol)を添加した。この反応混合物を2時間撹拌し、次いで水で洗浄し(2×15mL)、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、対応するウレイドエステルを得た。対応するウレイドエステルは、精製を要することなく使用した。
【0184】
(c) 3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-置換イミダゾリジン-2,4-ジオン(5)
(i) 塩基触媒法(5a-5e、5g-5i)
無水ジメチルアセトアミド(0.5mL)中の該当する{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ウレイドエステル(4)(0.065mmol)に、水酸化ナトリウム (2.6mg、0.065mmol)を加え、これを50℃で30分加熱した。次いで反応混合物をDCM (2mL)で希釈し、ブライン(2.5mL)で洗浄した。粗製のサンプルを分取HPLCに供した。
【0185】
(ii) HBTUカップリング法(5f、5j)
エタノール(0.5mL)中の{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ウレイドエステル(4)(0.065mmol)に、水酸化ナトリウム(2.6mg、0.065mmol)を加え、室温で30分撹拌した。次いでこの反応混合物を塩酸(0.065mmol)の添加により中和し、乾燥状態になるまで真空濃縮した。
【0186】
次に、得られた固形物をDCM(0.5mL)中に懸濁し、N'N'ジイソプロピルエチルアミン(10.5μL、0.06mmol)およびヘキサフルオロリン酸 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム(0.024g、0.06mmol)で処理した。この反応混合物を18時間撹拌し、次いで分取HPLCに供した。
【化20】


【0187】
実施例2
【化21】

【0188】
[式中、Xは単結合またはNHである]。
【0189】
化合物6は、WO 03/093261(参照により本明細書に組み入れる)の実施例1に記載のように合成した。
【0190】
(a) 4-(3-イソシアナト-ベンジル)-2H-フタラジン-1-オン(7)
乾燥DCM (415mL)およびトリエチルアミン(1.5mL、10.9mmol)中の4-(3-アミノ-ベンジル)-2H-フタラジン-1-オン(6)(1.0g、4.0mmol)の溶液に、乾燥DCM (85mL)中のトリホスゲン (0.73g、2.5mmol)の予備調製溶液を30分にわたり滴下して加えた。さらに2時間後、この反応混合物を濃縮乾固させ、淡黄色の粉末を得た。LC-MS分析にて単一ピーク、(収量は定量的とみなした)、精製は行わず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.90分、(M+MeOH) 310.0。
【0191】
(b) {3-[5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ウレイド}-アミノエチルエステル(8)
無水DCM (16.7mL)中の該当するアミノエステル(0.026g、0.17mmol)の溶液に、トリエチルアミン(24μL、0.170mmol)および4-(3-イソシアナト-ベンジル)-2H-フタラジン-1-オン(7) (0.05g、0.17mmol)を加えた。この反応混合物を2時間撹拌し、次いで水(2×15mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、対応するウレイドエステルを得た。対応するウレイドエステルは、特に精製を必要とすることなく使用した。
【0192】
(c) 3-[5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-置換イミダゾリジン-2,4-ジオン(9)
無水ジメチルアセトアミド(0.5mL)中の該当する{1-[3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニルカルバモイル]-置換}-カルバミン酸エステル(0.065mmol)に、水酸化ナトリウム(2.6mg、0.065mmol)を加え、50℃で0.5〜6時間加熱した。次いで反応混合物をDCM (2mL)で希釈し、ブライン(2.5mL)で洗浄した。粗製のサンプルを分取HPLCに供した。
【化22】

【0193】
実施例3
【化23】

【0194】
(a) カルボニルメチル-アミノ酢酸ビス(tert-ブチルシリルエステル) (11)
ビス(トリメチルシリル)-トリフルオロアセトアミド(45mL、169mmol)中の(カルボキシメチル-アミノ)-酢酸 (10)(0.6g、4.51mmol)の懸濁液を、完全に溶解するまで(約1時間)加熱した。次いで反応混合物を真空濃縮して、黄色い油状物(1.6g)を得た。油状物は、特に精製を必要とすることなく使用した。
【0195】
(b) {3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸(12)
無水ジオキサン(180mL)中の4-(4-フルオロ-3-イソシアナト-ベンジル)-2H-フタラジン-1-オン(2) (4.51mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(617μL、4.51mmol)を、その後カルボニルメチル-アミノ酢酸ビス(tert-ブチルシリルエステル) (11)(1.25g、4.51mmol)を加えた。この懸濁液を室温で48時間撹拌した。
【0196】
この反応混合物を濃縮乾固させ、次いで水(150mL)で希釈し、水酸化ナトリウム水溶液(約2N、10mL)を用いてpH10に調整した。次いで水相を酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。2N HClを用いて水相のpHを1へと酸性にし、酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。次に後者の酢酸エチル層を合わせて、MgSO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮して、黄色の固形物を得た。LC-MS分析にて92%ピーク(1.0g、57%)、精製は行わす。m/z (LC-MS、ESN)、RT=3.47分、(M-H) 409.0。
【0197】
(c) {3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-アセトアミド類(13)
乾燥DCM(0.5mL)中の{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸(12)(0.05g、0.122mmol)の懸濁液に、該当するアミン(0.150mmol)をN'N'ジイソプロピルエチルアミン(0.150mmol)およびヘキサフルオロリン酸 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム(0.057g、0.150mmol)と共に加え、室温で7時間撹拌した。この反応混合物を18時間撹拌し、その後分取HPLCに供した。
【化24】

【0198】
実施例4
【化25】

【0199】
(a) 2-メチル-4-ニトロ-ピリジン-1-オール (15)
2-ピコリン-N-オキシド(14)(21.9g、0.2mmol)を、温度を40℃より低く保ちながら濃硫酸(76mL)に加えた。この混合物を5℃に冷却し、反応温度を10℃以下に保ちながら、発煙硝酸(60mL)を15分にわたり滴下した。滴下が完了したら反応混合物を100℃で1.5時間加熱した。次いで反応混合物を室温まで冷却し、氷(約500g)上におき、得られた緑/黄色溶液を、炭酸ナトリウムの添加(1時間にわたり約205gの添加)により中和した。次いで混合物を濾過し水(2L)で洗浄した。その後、固形ケークをDCM (500mL)に溶解させ、Na2SO4で乾燥させた。このDCM溶液にヘキサン(100mL)を加え、黄色懸濁物を得、これを濾取して乾燥させた。LC-MS分析にて単一ピーク(25.40g 82.5%)、精製を行わず粗製として次の工程に用いた。
【0200】
(b) 酢酸4-ニトロ-ピリジン-2-イルメチルエステル (16)
窒素雰囲気下で110℃の無水酢酸(60mL、0.635mol)に2-メチル-4-ニトロ-ピリジン-1-オール(15)(17.1g、111mmol)を1分にわたり少しずつ加えた。溶液は約2分後に暗化し始め、これを加熱して100〜120℃に30分保ち、次いで80℃へと冷ました。エタノール(60mL)を加え、溶液を真空濃縮し、残留物を水(140mL)でスラリー化し、この混合物をNaHCO3 (約40g)で中和した。水性の液体を酢酸エチル(4×100mL)で抽出し、合わせた抽出物をブライン(2×100mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空濃縮し、粗製オイルを得た。この物質をヘキサン:TBME 2:1の溶離液を用いたフラッシュクロマトグラフィーに供した。茶色の油状物が分離された。LC-MS分析にて単一ピーク、(6.44g 30%)、m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.65分、(M+H) 197。
【0201】
(c) (4-ニトロ-ピリジン-2-イル)-メタノール (17)
メタノール(5mL)中の酢酸4-ニトロ-ピリジン-2-イルメチルエステル (16)(0.49g、2.5mmol)の溶液に、水酸化ナトリウム水溶液(2N、1.6mL)を加え、反応を30分撹拌し、次いで真空濃縮した。残留物を水(10 mL)で希釈し酢酸エチル(2×10mL)で抽出した。合わせた抽出物をブライン(10mL)で洗浄し、真空濃縮して粗製オイルを得、これを静置することにより固化させた。LC-MS分析にて単一ピーク、(0.13g 33%)、m/z (LC-MS、ESP)、RT=2.67分、(M+H) 155。
【0202】
(d) 4-ニトロ-ピリジン-2-カルバルデヒド (18)
窒素下で−78℃に冷却したDCM (2mL)中の塩化オキサリル(0.533g、4.18mmol)の溶液に、ジメチルスルホキシド(0.593mL、8.37mmol)を滴下した。30分後に、温度を−78℃に保ちながらDCM(2mL)中の(4-ニトロ-ピリジン-2-イル)-メタノール (17)(0.129、0.837mmol)を滴下した。2時間後にこの混合物を−55℃へと昇温させた。その後トリエチルアミン(1.74mL、12.55mmol)を加え、混合物を2時間にわたり室温へと昇温させた。次いでブライン(10mL)を加え、この混合物をDCM (4×10mL)で抽出した。その後、合わせた有機相をMgSO4で乾燥させ、真空濃縮し、油状物を得た。この物質は、定量的に変換されたものと仮定して、精製の必要なしに直接使用した。
【0203】
(e) 3-(4-ニトロ-ピリジン-2-イルメチレン)-3H-イソベンゾフラン-1-オン (19)
10℃に冷却したTHF (4mL)中の(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イル)-ホスホン酸ジメチルエステル(0.202g、0.837mmol)の溶液に、4-ニトロ-ピリジン-2-カルバルデヒド(0.837mmol)を窒素雰囲気下で加えた。10分にわたりトリエチルアミン(0.174mL、1.25mmol)を滴下し、次いでこれを室温で18時間撹拌した。黄色の懸濁物を水(9mL)に注ぎ、次いで濾過し、固形物を水(2×2mL)、ヘキサン(2×2mL)、次いでジエチルエーテル(2×2mL)で洗浄し、真空で乾燥させて0.73gの所望の生成物を得た。LC-MS分析にて2つのピーク、(0.13g、2工程で18%)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=4.26分(M+H) 269、& RT=4.52分(M+H) 269。
【0204】
(f) 4-(4-アミノ-ピリジン-2-イルメチル)-2H-フタラジン-1-オン (20)
ヒドラジン一水和物(0.25g、5.0mmol)中の3-(4-ニトロ-ピリジン-2-イルメチレン)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(0.67g、2.5mmol)の懸濁液を90℃で1時間加熱し、その後室温に冷却した。エタノール(5mL)を加え、次いで塩化アンモニウム(0.16g、3.0mmol)および鉄粉末(0.28g、5.0mmol)を加え、この混合物を90℃で3時間加熱した。この反応混合物を熱い状態のままセライトで濾過し、これを酢酸エチル(20mL)で洗浄した。濾液を真空濃縮し、次いで酢酸エチル(10mL)で希釈し、ブライン(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空乾燥させて、表題の化合物を淡黄色の粉末として得た。LC-MS分析にて単一ピーク、(0.20g、収率31%)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=1.58 (M+H) 253。
【0205】
(g) 1,5,5-置換-3-[2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-ピリジン-4-イル]-イミダゾリジン-2,4-ジオン(23)
無水DCM(16.7mL)中の該当するアミノエステルイソシアネート(0.026g、0.17mmol)の溶液に、トリエチルアミン(24μL、0.170mmol)および4-(4-アミノ-ピリジン-2-イルメチル)-2H-フタラジン-1-オン(21)(0.05g、0.17mmol)を加えた。この反応混合物を8時間撹拌し、真空濃縮し、対応するウレイドエステルを得た。無水ジメチルアセトアミド(0.5mL)、次いで水酸化ナトリウム(2.6mg、0.065mmol)を加え、混合物を50℃で30分加熱した。次いでこの反応混合物をDCM (2mL)で希釈し、ブライン(2.5mL)で洗浄した。粗製のサンプルを分取HPLCに供した。
【0206】
(xi) 1,5,5-置換-3-[2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-ピリジン-4-イル]-イミダゾリジン-2,4-ジオン(23)への別経路
(a) 4-(4-イソシアナト-ピリジン-2-イルメチル)-2H-フタラジン-1-オン(22)
無水DCM(160mL)およびトリエチルアミン(0.46mL、4.09mmol)中の4-(4-アミノ-ピリジン-2-イルメチル)-2H-フタラジン-1-オン(21) (0.40g、1.48mmol)の懸濁液に、無水DCM (30mL)中のトリホスゲン (0.27g、0.93mmol)の予備調製溶液を滴下により加えた。反応を室温で6時間撹拌した。次いで反応混合物を真空下で濃縮乾固させ、灰色の固形物を得た。LC-MS分析にて単一ピーク、(収量は定量的とみなした)、精製は行わず。m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.79分、(M+MeOH) 329.0。
【0207】
(b) 無水DCM(16.7mL)中の該当するアミノエステル(0.026g、0.17mmol)の溶液に、トリエチルアミン(24μL、0.170mmol)および4-(4-イソシアナト-ピリジン-2-イルメチル)-2H-フタラジン-1-オン(22)(0.05g、0.18mmol)を加えた。この反応混合物を8時間撹拌し、真空濃縮して、対応する粗製のウレイドエステルを得た。無水ジメチルアセトアミド(0.5mL)を加え、次いで水酸化ナトリウム (2.6mg、0.065mmol)を加え、50℃で30分加熱した。次に反応混合物を分取HPLCに供した。
【化26】

【0208】
実施例5
【化27】

【0209】
(a) 4-ニトロ-チオフェン-2-カルバルデヒド (25)
濃硝酸(15mL)に濃硫酸(15mL)を加え、この混合物を−10℃に冷却し、反応温度を−5℃〜0℃に保ちながら、2-チオフェンカルボキシアルデヒド(24)(10.0g、89.2mmol)を15分にわたり滴下した。この混合物をさらに1時間撹拌し、その後、水(200mL)に注ぎ、DCM (3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、真空濃縮した。粗製オイルを、ヘキサン:エーテル 10:1の溶離液を用いたフラッシュクロマトグラフィーに供した。所望の異性体 (ヘキサン:エーテル 2:1中でrf 0.32)を回収した。LC-MS分析にて単一ピーク、(11.5g、収率82%)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.55 分、msにおいてイオン化は観察されず、1H NMR (300 MHz、D6-DMSO) 10.0 (1H、s)、9.2 (1H、s)、8.6 (1H、s)。
【0210】
(b) 3-(4-ニトロ-チオフェン-2-イルメチレン)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(26)
THF (30mL)中の(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イル)-ホスホン酸ジメチルエステル(3.85g、15.9mmol)の溶液に、窒素下で4-ニトロ-チオフェン-2-カルバルデヒド(25) (2.5g、15.9mmol)を加えた。10分にわたりトリエチルアミン(2.2mL 15.9mmol)を滴下し、次いでこれを室温で4時間撹拌した。黄色の懸濁物を水(80mL)に注ぎ、次いで濾過し、固形物を水(15mL)、ヘキサン(10mL)、次いでジエチルエーテル(10mL)で洗浄し、その後真空乾燥させて4.1gの所望の生成物を得た。LC-MS分析にて2つのピーク、(4.1g、94%)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=4.71分(M+H) 274、& RT=4.84分(M+H) 274。
【0211】
(c) 4-(4-ニトロ-チオフェン-2-イルメチル)-2H-フタラジン-1-オン(27)
ヒドラジン一水和物(0.6mL、12.0mmol)中の3-(4-ニトロ-チオフェン-2-イルメチレン)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(26) (1.95g、5.17mmol)の懸濁物を90℃で1時間加熱し、次いで室温に冷却した。この混合物を濾過し、濾過ケークを水(3×40 mL)、ヘキサン(2×40 mL)で洗浄し、50℃で真空乾燥させた。LC-MS分析にて2つのピーク、(1.0g、61%)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=4.05分(M+H) 289、& RT=3.71分(M+H) 289。
【0212】
(d) 4-(4-アミノ-チオフェン-2-イルメチル)-2H-フタラジン-1-オン(28)
窒素雰囲気下のエタノール(25mL)中の4-(4-ニトロ-チオフェン-2-イルメチル)-2H-フタラジン-1-オン(27) (0.90g、5.71mmol)の懸濁液に、水(18mL)中の塩化アンモニウム(0.31g、5.7mmol)の溶液を滴下した。得られた溶液を5分撹拌した後、鉄粉末(0.64g、11.5mmol)を一まとめとして加えた。黄色の混合物を80℃で3時間撹拌した。この反応混合物を熱いうちにセライトで濾過し、これを酢酸エチル(80mL)で洗浄した。これを真空濃縮し、次いで酢酸エチル(20mL)で希釈し、ブライン(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空乾燥させて、表題の化合物を明るい黄色の粉末として得た。LC-MS分析にて単一ピーク、(0.68g、純度84%)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=2.94 (M+H) 258。
【0213】
(e) 置換{3-[5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-チオフェン-3-イル]-ウレイド}-酢酸エチルエステル(29)
窒素下のDCM(1.5mL)中の4-(4-アミノ-チオフェン-2-イルメチル)-2H-フタラジン-1-オン(28)(75mg、0.29mmol)の懸濁液に、該当するイソシアネート(0.380mmol)を加えた。3時間の撹拌後に反応を水でクエンチ(反応停止)し、得られた析出物を濾過し、乾燥させた。分離した固形物を、精製する必要なく使用した。
【0214】
(f) {1-[3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル) フェニルカルバモイル置換イミダゾリジン-2,4-ジオン(30)
無水ジメチルアセトアミド(0.5mL)中の該当する{3-[5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-チオフェン-3-イル]-ウレイド}-酢酸エチルエステル (29)(0.065mmol)に、水酸化ナトリウム (2.6mg、0.065mmol)を加え、50℃で0.5〜6時間加熱した。次いで反応混合物をDCM(2mL)で希釈し、ブライン(2.5mL)で洗浄した。粗製のサンプルを分取HPLCに供した。
【化28】

【0215】
実施例6
【化29】

【0216】
a) 2-(tert-ブトキシカルボニルメチル-アミノ)-プロピオン酸メチルエステル (33A)
乾燥DMF(50mL)中のクロロ酢酸tert-ブチル(31) (4.5g、29.7mmol)の溶液に、ヒューニッヒ塩基(Hunig's base) (6.28mL、36.0mmol)を加え、その後、炭酸カリウム(5.24g、38.0mmol)を加えた。この混合物を90℃で加熱し、その後、DMF (10mL)に溶解させたDL-アラニンメチルエステル (32A)(4.55g、37.2mmol)を1時間にわたり滴下した。加熱をさらに1時間継続し、反応を室温へと冷却した。次いで反応混合物を水(70mL)で希釈し、DCM(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮乾固させた。得られた油状物をヘキサン/酢酸エチル5:1の溶離液を用いたフラッシュクロマトグラフィーで精製した。「アニスアルデヒド染色」で青く染色し、Rfは0.19であった。3.5gの無色の油状物が得られた。これを純度100%と仮定して、さらなる分析を行わずに次のステップに使用した。
【0217】
「アニスアルデヒド染色」処方− 135mLの無水エタノールに5mLの濃硫酸、1.5mLの氷酢酸および3.7mLのp-アニスアルデヒドを加えた。次いでこの溶液を確実に均一になるように激しく撹拌した。
【0218】
b) {3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸tert-ブチルエステル (35A)
活性型4Åモレキュラーシーブ (約5g)の存在下で、乾燥DCM (80mL)中の4-(3-イソシアナト-ベンジル)-2H-フタラジン-1-オン(2)(3.12mmol)の懸濁物に2-(tert-ブトキシカルボニルメチル-アミノ)-プロピオン酸メチルエステル (33A)(1.07g、4.7mmol)を加えた。次に反応を周囲温度で48時間撹拌した。HPLC分析は、環化ウレアおよび非環化ウレアの1:1比の混合物を示した。混合物を濾過し、真空濃縮した。その後、粗製オイルを、ヘキサン:酢酸エチル 1:1の溶離液を用いたフラッシュクロマトグラフィーに供した。Rf=0.09。LC-MS分析にて単一ピーク、(1.3g、純度95%)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.66分(M+H) 481 −カラムで環化した化合物。
【0219】
c) {3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸(36A)
乾燥DCM (20mL)中の{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸tert-ブチルエステル(35A)(1.3g、2.7mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(2mL、約27mmol)を2分にわたり滴下した。一晩撹拌した後に反応混合物を濃縮乾固させ、フラッシュクロマトグラフィーに供した。溶離液は酢酸エチル中の1%酢酸とした。表題の化合物を白色の固形物として単離した。LC-MS分析にて単一ピーク、(0.680mg、純度100%)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESN)、RT=2.95分(M-H) 423。
【0220】
d) ライブラリー化合物の合成
DCM (5mL)中の{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸(36A)(145mg、0.34mmol)の懸濁液に、HBTU (0.32g、0.85mmol)、ヒューニッヒ塩基 (0.85mmol)および該当するアミン(0.85mmol)を加えた。この反応混合物を18時間撹拌し、次いで得られた化合物を分取HPLCにより精製した。
【化30】

【0221】
e) 同様の経路として、DL-アラニンメチルエステルの代わりに2-アミノ-2-メチル-プロピオン酸メチルエステルを用いると、{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5,5-ジメチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸(36B)が得られ、次いでこれを上のd)に記載のようにして該当するアミンとカップリングさせた。得られた化合物を分取HPLCにより精製した。
【化31】


【0222】
ロング法:Waters製 ZQ LC-MS システム No. LAA 254をエレクトロスプレーイオン化モードで運転;移動相A:水中の0.1%ギ酸;移動相B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸;カラム:Genesis C18 4μm 50×4.6mm
濃度勾配:

【0223】
流速:2.0mL/分。
【0224】
f) 1-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-[1,3,5]トリアジナン-2,4,6-トリオン (38)
【化32】

【0225】
乾燥DMA (1mL)中の4-(3-イソシアナト-ベンジル)-2H-フタラジン-1-オン(2)(0.37mmol) の懸濁液に、アロファン酸エチル(52mg、0.34g)を加えた。この懸濁液を160℃で1時間加熱し、次いで室温に冷まして暗褐色の懸濁物を得た。固形物を濾過してサンプリングし、これは純度約80%、RT=3.56分であることがわかった。次いでこの物質を分取HPLC精製により精製した。
【0226】

【0227】
ロング法(上記参照)。
【0228】
g) 2-{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-アセトアミド (40a)
【化33】

【0229】
(i) {3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸メチルエステル(39)
メタノール(4mL)中の{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸 (36A)(0.04g、0.094 mmol)の溶液に濃硫酸(1mL)を加え、70℃で90分撹拌し、その後室温に冷ました。次いでこの反応混合物を真空濃縮し、水(10mL)で希釈し、酢酸エチルで抽出(2×10mL)した。次いで有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮して無色の油状物を得た。LC-MSにて単一ピーク、(52mg、純度95%)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.24分(M+H) 439。
【0230】
(ii) {3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5 メチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸 (40a)
{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸メチルエステル (39)(0.03g、0.068 mmol)を、メタノール中の7Nアンモニア溶液(2mL、14mmol)中に溶解させ、密封チューブに入れた。次いでこの反応を60℃で18時間加熱した。得られた溶液を真空濃縮し、1mLシリカカートリッジに吸着させた。この物質を未希釈の酢酸エチルで溶離させた。RFは0.65であり、純粋なアミド生成物を得た。LC-MSにて単一ピーク、(8mg、純度100%)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=2.84分(M+H) 424。
【0231】
h) 2-{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-N-メチル-アセトアミド (40b) および2-{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-N,N-ジメチル-アセトアミド (40c)
【化34】

【0232】
DCM (0.5mL)中の{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸(36A)、(14mg、0.032mmol) の懸濁液に、HBTU (15mg、0.04mmol)、ヒューニッヒ塩基(0.85mmol)およい該当するアミン(0.05mmol)を加えた。反応混合物を18時間撹拌し、次いで分取HPLC精製に供した。
【0233】

【0234】
ロング法(上記参照)。
【0235】
i) 2-{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5,5-ジメチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-アセトアミド (40d)
【化35】

【0236】
(i) {3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5,5-ジメチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸メチルエステル
メタノール(2mL)中の{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5,5-ジメチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸(36B)(0.044g、0.10 mmol) の溶液に濃硫酸(0.25mL)を加え、70℃で90分加熱し、その後室温に冷却した。次いで反応混合物を真空濃縮し、水(5mL)で希釈し、酢酸エチル(2×10mL)で抽出した。その後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空濃縮して、無色の油状物を得た。LC-MSにて単一ピーク、(42mg、純度91%)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.31分(M+H) 453。
【0237】
(ii) 2-{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5,5-ジメチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-アセトアミド (40d)
{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5,5-ジメチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸メチルエステル(0.025g、0.055 mmol)を、メタノール中の7Nアンモニア溶液(3mL、21mmol)に溶解させ、密封チューブ内で60℃で18時間加熱した。得られた溶液を真空濃縮し、分取HPLC精製に供した。
【0238】

【0239】
ロング法(上記参照)。
【0240】
j) 2-{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5,5-ジメチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-N-メチル-アセトアミド (40e)および2-{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5,5-ジメチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-N,N-ジメチル-アセトアミド (40f)
【化36】

【0241】
DCM(1mL)中の{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5,5-ジメチル-2,4-ジオキソ-イミダゾリジン-1-イル}-酢酸(36B)(20mg、0.045mmol)の懸濁液に、HBTU (19mg、0.05mmol)、ヒューニッヒ塩基(0.85mmol)および該当するアミン(0.06mmol)を加えた。反応混合物を18時間撹拌し、分取HPLC精製に供した。
【0242】

【0243】
ロング法(上記参照)。
【0244】
実施例7
【化37】

【0245】
(a) 2-{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ウレイド}コハク酸 (42)
(i) 活性型4Åモレキュラーシーブ (約2g)の存在下で、乾燥DCM (30mL)中の4-(3-イソシアナト-ベンジル)-2H-フタラジン-1-オン(2)(1.4g、4.75mmol)の懸濁液に、DL-アスパラギン酸 (0.60g、5.0mmol)を加え、その後トリエチルアミン(10.0mmol)を加えた。この反応を室温で18時間撹拌した。次いで反応混合物を重炭酸塩溶液(20mL)で希釈し、混合物を濾過して不要のウレア副生成物を除いた。表題の化合物は水相に含まれ、これをDCM(2×10mL)で洗浄した。次いで水層を真空濃縮し、ベージュ色の固形物を得た。HPLCはこれが成分41および42の混合物であることを示した。
【0246】
(ii) 成分41および42の混合物を水(100mL)およびHCl (約1mL、1N)で希釈し、開放ビーカーで加熱し、蒸発乾固させた。この操作から茶色の固形物が得られ、LC-MSによると表題化合物の純度は90%より高かった。LC-MSにて単一ピーク、(1.8g、純度90%)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=3.54分(M+H) 411。
【0247】
(b) ライブラリー化合物の合成
DCM (5mL)中の{1-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-2,5-ジオキソ-イミダゾリジン-4-イル}-酢酸(42)(145mg、0.34mmol)の懸濁液に、HBTU (0.32g、0.85mmol)、ヒューニッヒ塩基 (0.85mmol)および該当するアミン(0.85mmol)を加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌し、その後、分取HPLC精製により精製した。
【化38】

【0248】
実施例8
【化39】

【0249】
(a) 2-{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ウリド}-プロピオン酸 (45)
乾燥DCM(40mL)中の4-(3-イソシアナト-ベンジル)-2H-フタラジン-1-オン(2)(1.4g、4.7mmol)の懸濁液に、D-アスパラギン酸(0.455g、5.0mmol)を加え、その後トリエチルアミン(1.4mL、10.0mmol)を加えた。この反応を室温で4日間撹拌した。次いで反応混合物を濾過した。濾液を水(20mL)で希釈し、DCM (2×20mL)で2回洗浄した。合わせたDCM層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで真空濃縮して粗製オイルを得、これを未希釈の酢酸エチルを溶離液として用いたフラッシュクロマトグラフィーに供して不純物を除き、その後、酢酸エチル/メタノール1:1の溶離液を用いたフラッシュクロマトグラフィーに供して所望の成分を得た。(酢酸エチル:メタノール1:1においてRf 0.2)。LC-MS分析にて単一ピーク、(0.79g)、さらなる精製を必要とせず、m/z (LC-MS、ESP)、RT=2.70 (M+H) 384。
【0250】
(b) 3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-5-メチル-イミダゾリジン-2,4-ジオン(5b')
塩化トリメチルアセチル(240mg、2.0mmol)とトリエチルアミン(0.35mL、2.5mmol)をあらかじめ混合した溶液に、2-{3-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ウリド}-プロピオン酸(45)(0.76g、2.0mmol)を加えた。この反応を室温で4日間撹拌し、徐々に所望の生成物へと反応を進行させた。次いで反応混合物を真空濃縮し、粗製の物質を分取HPLCに供した(40mgを単離した、純度95%、RT(分):4.35)。
【0251】
実施例9
前記化合物の阻害活性を評価するために、以下のアッセイを用いてIC50値を決定した(Dillonら、JBS., 8(3), 347-352 (2003))。
【0252】
Hela細胞の核抽出物から単離された哺乳動物PARPを、96ウェルFlashPlates (商標) (NEN、UK)上でZバッファー(25mM Hepes (Sigma);12.5mM MgCl2 (Sigma);50mM KCl (Sigma);1mM DTT (Sigma);10%グリセロール(Sigma) 0.001% NP-40 (Sigma);pH7.4) と共にインキュベートし、種々の濃度の前記阻害剤を加えた。すべての化合物をDMSOで希釈して10〜0.01μMの最終アッセイ濃度を得たが、このときのDMSOの最終濃度はウェル当たり1%であった。ウェル当たりの合計アッセイ容積は40μLであった。
【0253】
30℃で10分間のインキュベーション後に、NAD (5μM)、3H-NADおよび30merの二本鎖オリゴDNAを含む10μLの反応混合物を添加することにより反応を開始させた。酵素活性%を計算するために、化合物ウェル(未知)と並行して、指定した陽性反応および陰性反応ウェルを実施した。次にプレートを2分間振とうし、30℃で45分インキュベートした。
【0254】
インキュベートした後に、50μLの30%酢酸を各ウェルに加えることにより反応をクエンチした。次いでプレートを室温で1時間撹拌した。
【0255】
シンチレーション計測のためにプレートをTopCount NXT(商標)(Packard、UK)に移した。記録した値は、各ウェルの30秒計測後の1分当たりのカウント数(cpm)である。
【0256】
次いで、各化合物の酵素活性%を、次の等式を用いて計算する:
【数1】

【0257】
IC50値(酵素活性の50%が阻害される濃度)を計算し、これを種々の濃度の範囲(通常は10μMから下限は0.001μMまで)にわたり決定した。かかるIC50値を比較値として用いて、化合物の効力増加を確認する。
【0258】
試験したすべての化合物はIC50が0.1μM未満であった。次の化合物はIC50が0.01μM未満であった:5e-5j、9a、9c、13a-d、35B、37Aa-Ac、37Ba、37Bb、37Be-Bg、37Bi、37Bl、39、40a、43a、43c、43d、43f、43g、5b'。
【0259】
化合物の増強係数(potentiation factor)(PF50)は、対照細胞増殖のIC50を、PARP阻害剤を添加した細胞増殖のIC50で割った比として計算する。対照細胞および化合物処理細胞の両方の増殖阻害曲線は、アルキル化剤メタンスルホン酸メチル(MMS)の存在下でのものである。試験化合物を0.2または0.5マイクロモル/Lの一定濃度で使用した。MMSの濃度は0〜10μg/mLの範囲であった。細胞増殖は、スルホローダミンB (SRB)アッセイ(Skehan, P.ら, (1990) New colorimetric cytotoxicity assay for anticancer-drug screening. J. Natl. Cancer Inst. 82、1107-1112)を用いて評価した。2,000個のHeLa細胞を、平底96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに100μLの容積で播種し、37℃で6時間インキュベートした。細胞の培地を、培地のみ、または0.5、1もしくは5μMの最終濃度でPARP阻害剤を含む培地と交換した。細胞をさらに1時間増殖させ、その後、種々の濃度の(典型的には0、1、2、3、5、7および10μg/mL)のMMSを、未処理細胞またはPARP阻害剤処理細胞のいずれかに加えた。PARP阻害剤のみで処理した細胞を用いて、PARP阻害剤による増殖阻害を評価した。
【0260】
細胞をさらに16時間放置した後に、培地を交換し、細胞を37℃でさらに72時間増殖させた。次いで培地を除き、100μLの氷冷10%(w/v)トリクロロ酢酸を用いて細胞を固定した。プレートを4℃で20分間インキュベートし、次いで水で4回洗浄した。次いで各ウェルの細胞を、1%酢酸中の0.4%(w/v) SRBの溶液100μLで20分間染色し、その後1%酢酸で4回洗浄した。次いでプレートを室温で2時間乾燥させた。各ウェルに100μLの10mM Tris塩基を加えることにより、染色細胞からの染料を可溶化した。プレートを穏やかに振とうし、室温で30分静置した後に、Microquantマイクロタイタープレートリーダーで564nMの光学密度を測定した。
【0261】
試験した化合物のほとんどは、200nMでのPF50が1以上であった。
【0262】
溶解度アッセイ
本発明の化合物の溶解度を評価するために使用できる典型的なアッセイは以下のとおりである。化合物の溶解度は、水およびpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で評価する。いずれのサンプルも、室温で20時間(振とうして)溶媒中に平衡化させる。この期間の後に、サンプルを視覚的に調べて、溶解していない固形物の有無を判別する。サンプルを必要に応じて遠心分離または濾過して不溶性物質を除き、これらの溶液を、水性およびDMSOサンプルの両方をDMSOで同様の濃度へと希釈して、DSの溶解度を求めるために分析した。サンプルのHPLCから得られるピーク(ダイオードアレイ検出器を使用)の面積を、DMSO溶液(サンプルと同じ濃度に希釈)からのピーク面積と比較し、最初の溶解に用いたサンプルの重量を考慮して定量する。試験に使用するレベルでは、サンプルはDMSOに完全に溶解するものと仮定する。
【0263】
ピーク面積の比を比較し、かつ元のサンプルの濃度を知ることにより、溶解度を計算することができる。
【0264】
サンプルの調製:
約1mgのサンプルを4-mLガラスバイアルに正確に計量し、正確に1.0mLの水、水性バッファーまたはDMSOをピペットで加える。各バイアルを最大2分間、超音波処理して固形物の溶解を助ける。サンプルをオービタルシェーカーで振とうしながら20時間、室温に保つ。この期間の後にバイアルを検査して、溶解していない固形物の有無を確認する。必要であれば不溶性物質を除去するためにサンプルを遠心分離するか、または0.45μmフィルターを通して濾過し、濾液を分析して溶解している化合物の濃度を決定するが、その前にすべてのサンプルを適宜にDMSOで希釈する。以下に示す方法を用いてHPLCに20μLを注入し、その際すべてのサンプルを2回繰り返す。この方法を用いて決定することのできる最大溶解度は、名目上は1.0mg/mL(採取した物質の重量を、使用した溶媒の容積で割った値)である。
【0265】
分析手法:
サンプルは、Waters製のMicromass ZQ装置(または同等の装置)を、典型的には以下の試験パラメーターと共に使用して、LC/MSに供する。
陽イオンモードでのWaters Micromass ZQ
スキャニングはm/z 100から800まで
移動相A − 0.1%ギ酸水溶液
移動相B − アセトニトリル中の0.1%ギ酸
カラム − Jones Chromatography Genesis 4μ C18カラム、4.6×50mm
流速 2.0mL/分
注入容積 20μLループに30μL注入
濃度勾配 − 95%A/5%Bから開始、4分後に95%Bに上げ、そこで4分間固定、次いで開始条件に戻す。(必要であれば、よりよいピーク分離を得るためにこの条件を改変することもできる。)
210nmから400nmまでのPDA検出スキャニング。
【0266】
サンプルの定量:
水性希釈物の入ったサンプルバイアルの初期検査により、本化合物がそのバッファー中にその濃度で溶けるか否かが示される。もしその化合物が可溶性でなければ、これをHPLC/MSにより溶液状態で得られる濃度に反映させるべきである。もし溶液が透明であれば、化合物の分解が起こっていない限り(これはクロマトグラムで視認することができるはずである)、水性溶媒中の濃度はDMSO中の濃度と同程度であるはずである。
【0267】
サンプルはDMSO中で完全に溶解性であり、したがってそのサンプルから得られるピークの大きさは100%溶解性を反映するものと仮定する。すべてのサンプルの希釈が同じであったと仮定すると、溶解度(mg/mLで表す)=(PBS溶液からの面積/DMSO溶液からの面積)×(DMSO溶液/希釈液中の元の重量)。
【0268】
安定性アッセイ
本発明の化合物の安定性を評価するために使用できる典型的なアッセイは以下のとおりである。化合物の安定性を種々の水性溶液およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で評価する。サンプルを、公称pH2、7.4(PBS)、および9にて試験する。これらのpH値は、消化中の胃腸管(約pH2〜最高で約pH9)で、および血漿中(公称のpH7.4)で直面する条件を反映するように選択される。サンプルをメタノール/DMSOに溶解してストック溶液を調製する。次にストック溶液を希釈して、公称pHが2、7.4および9の水性溶液を得る。サンプルを直ちに分析して、純度および存在し得る関連化合物の初期値を得る。次いでサンプルを(通常は)室温に保ち、2時間、6時間、24時間および2日(公称)経過後に再度分析する。
【0269】
試験期間中の本化合物のこの水性バッファー中での安定性は、初期のサンプルのクロマトグラムを所定時間の経過後の水性バッファー中のそれと比較することにより評価することができる。
【0270】
サンプルの調製と分析:
約5〜6mgのサンプルを正確に測定して4mLガラスバイアルに入れ、約2mLのメタノールをそれに加える。この有機溶媒中で完全な溶液状態でなければ、さらに0.5〜1.0mLのDMSOを加える。最終的な溶液濃度は約2.0mg/mLとすべきである。次いでこの2mg/mL有機溶液を、(a)水(「初期」サンプルとして使用するため)、(b) 約pH2の非常に希薄なHCl、(c) pH7.4のPBS、または(d) 約pH9の非常に希薄なNaOHで、1+3に希釈する。次に各希釈物のpHを調べて記録する。所望の値に近似しない場合は、適宜に希薄な酸またはアルカリでpHを調整してもよい。これらの希釈物は「初期」サンプルの後に間隔をおいて調製し、HPLC分析に起因する遅延を考慮する。すべてのサンプルはHPLCに注入する前にDMSOで50/50に希釈すべきである。
【0271】
サンプルを最初に2時間、室温に保って、その後サンプルの一部を上記のように注入の前にDMSOで50/50に希釈する。以下に示す方法を用いて20μLをHPLCに注入するが、すべてのサンプルを2回の反復実験に供する。これを6時間、24時間、および2日(公称の時間間隔)後に繰り返す。
【0272】
分析手法:
サンプルは、Waters製のMicromass ZQ装置(または同等の装置)を、典型的には以下の試験パラメーターと共に使用して、LC/MSに供する。
陽イオンモードでのWaters Micromass ZQ
スキャニングはm/z 150から900まで
移動相A − 0.1%ギ酸水溶液
移動相B − アセトニトリル中の0.1%ギ酸
カラム − Jones Chromatography Genesis 4μ C18カラム、4.6×50mm
流速 2.0mL/分
注入容積 20μLループに30μL注入
濃度勾配 − 95%A/5%Bから開始、5分後に95%Bに上げ、そこで4分間固定、次いで初期条件に戻る。(必要であれば、よりよいピーク分離を得るためにこの条件を改変することもできる。)
210〜400nmにてPDA検出スキャニング。
【0273】
安定性の評価:
任意の所定の時間間隔後の種々のpHにおけるサンプルのクロマトグラムピーク面積を、ゼロ時間での初期分析からのそれと比較する。DSピークは初期サンプルのパーセンテージとして定量すべきであり、それらの値を集計する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物。
【化1】

[式中、
AとBは、一緒になって、場合により置換されてもよい縮合芳香環を表し、
Dは、以下の(i)および(ii)から選択され、
【化2】

(ここで、Y1はCHおよびNから選択され、Y2はCHおよびNから選択され、Y3はCH、CFおよびNから選択される)
【化3】

(ここで、QはOまたはSである)
RDは、
【化4】

(ここで、
RN1は、Hおよび場合により置換されてもよいC1-10アルキルから選択され、
Xは、単結合、NRN2、CRC3RC4およびC=Oから選択され、
RN2は、Hおよび場合により置換されてもよいC1-10アルキルから選択され、
RC3およびRC4は、独立に、H、R、C(=O)ORから選択され、ここでRは場合により置換されてもよいC1-10アルキル、場合により置換されてもよいC5-20アリールまたは場合により置換されてもよいC3-20ヘテロシクリルであり、
Yは、NRN3およびCRC1RC2から選択され、
RC1およびRC2は、独立に、H、R、C(=O)ORから選択され、ここでRは場合により置換されてもよいC1-10アルキル、場合により置換されてもよいC5-20アリールまたは場合により置換されてもよいC3-20ヘテロシクリルであり、RC1とRC2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、場合により置換されてもよいスピロ縮合したC5-7炭素環または複素環を形成してもよく、そして
Xが単結合であるときには、RN1とRC2は、それらが結合している窒素原子および炭素原子と一緒になって、場合により置換されてもよいC5-7複素環を形成することができ、
また、XがCRC3RC4であるときには、RC2およびRC4は、RC1およびRC3で置換された原子間に二重結合が生じるように、一緒になって追加の結合を形成することができる)である。]
【請求項2】
-A-B-により表される縮合芳香環がベンゼンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
縮合ベンゼン環がハロで置換されている、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Dが、フェニレン、フルオロフェニレン、ピリジレン、フルオロピリジレン、フラニレンおよびチオフェニレンから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
Dが
【化5】

から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Dが
【化6】

から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Dが
【化7】

である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Xが、単結合、NRN2およびCRC3RC4から選択され、かつYがCRC1RC2である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
Xが単結合である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
RN1、RC1およびRC2の少なくとも1つが水素ではない、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
RC1およびRC2の少なくとも1つがC1-4アルキルから選択される、請求項9または10に記載の化合物。
【請求項12】
RN1が、その末端をカルボキシ基、アミド基またはエステル基で置換されたC1-4アルキルである、請求項9〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
前記アミド基のアミノ置換基が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、環状である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
XがNR2であり、かつRC1、RC2およびRN2がHである、請求項8に記載の化合物。
【請求項15】
XがCRC3RC4であり、かつRC1、RC2、RC3およびRC4がHである、請求項8に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物および製薬上許容される担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項17】
ヒトまたは動物の治療方法における、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項18】
(a) 細胞性PARP(PARP-1および/またはPARP-2)の活性を阻害することによりポリ(ADP-リボース)鎖形成を妨げるための医薬、
(b) 次の疾患を治療するための医薬:血管疾患;敗血症性ショック;脳および心血管の両方の虚血性障害;脳および心血管の両方の再灌流障害;神経毒性(脳卒中およびパーキンソン病のための急性および慢性治療を含む);出血性ショック;関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎およびクローン病のような炎症性疾患;多発性硬化症;糖尿病の二次作用、ならびに心血管手術後の細胞毒性の急性治療またはPARPの活性の阻害により改善される疾患の急性治療のための医薬、
(c) 癌治療における補助剤として、または電離放射線もしくは化学療法剤を用いた治療のために腫瘍細胞の感受性を増強するための補助剤として使用するための医薬、
の調製における、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項19】
相同組換え(HR)依存性DNA二本鎖切断(DSB)修復活性に欠陥がある癌の治療のための医薬の調製における、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項20】
PARPの阻害により改善される疾患の治療方法であって、治療を必要とする被験体に、治療に有効な量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。

【公表番号】特表2009−512671(P2009−512671A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536123(P2008−536123)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003889
【国際公開番号】WO2007/045877
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(503160629)クドス ファーマシューティカルズ リミテッド (23)
【出願人】(503406022)メイブリッジ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】