4輪駆動装置
【課題】
この発明は、横置きエンジンの側方にトランスアクスルケースを結合した駆動装置にトランスファケースを結合する4輪駆動装置において、完成時のシール性を確保しつつも、変速機の検査時におけるシール性も確保することができる4輪駆動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
段部9Dに装着される密閉オイルシール61は、環状のゴム部材で形成され、内部には断面略コ字状の金属製の芯金61aを設けている。そして、密閉オイルシール61には、内側径方向に延びるリップ部61bを設けている。
この発明は、横置きエンジンの側方にトランスアクスルケースを結合した駆動装置にトランスファケースを結合する4輪駆動装置において、完成時のシール性を確保しつつも、変速機の検査時におけるシール性も確保することができる4輪駆動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
段部9Dに装着される密閉オイルシール61は、環状のゴム部材で形成され、内部には断面略コ字状の金属製の芯金61aを設けている。そして、密閉オイルシール61には、内側径方向に延びるリップ部61bを設けている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、4輪駆動装置に関し、特に、トランスアクスルケースとトランスファケースとの結合部における構造を改良した4輪駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の4輪駆動装置として、従来から横置きエンジンの側方に変速機と差動装置を収容したトランスアクスルケースを結合したFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車の駆動装置を基調として、トランスファ中空軸等を収容したトランスファケースを結合するものが知られている。
【0003】
また、これらトランスアクスルケースとトランスファケース間には、結合した完成状態で、少なくとも内部に充填したオイルが互いに移動しないようにシールを行うシール部材を配置することも知られている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、トランスファケース組付け時のシール部材の損傷を防止するため、オイルの移動を防止する第一のシール部材(分離シール)を、トランスファケースとトランスファ中空軸の間に配置して共通化を図ると共に、各ケース内部のオイルの外部への漏れや外部からのダストや雨水の侵入を防止する第二のシール部材(密閉シール)を、アクスルケースとトランスファケースとの結合部における対峙面に配置するものが提案されている。
【0005】
そして、この特許文献1の第二のシール部材は、トランスファケースの組付け状態でシール状態を確保しなければならないため、組付け方向であるトランスファ中空軸の軸方向(車幅方向)に対して付勢力(圧接力)を発生するように設定するとともに、組付け時にトランスファ中空軸のスプライン等で損傷するおそれがないようにトランスファケース側に装着されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−118411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、変速機として自動変速機が組み込まれたトランスアクスルユニットでは、トランスファケース組付け前の組立て作業完了時に、モータリング状態(モータによって回転負荷を与えた状態)で、各種変速段の動作確認の検査を行う必要がある。
【0008】
しかし、前述の4輪駆動装置では、トランスアクスルケースのトランスファケースとの結合部にシール部材を設けていないことから、この検査時にトランスアクスルケース内からオイルが漏れてしまうという問題がある。
【0009】
この対策としては、前述の第二のシール部材をトランスアクスルケースのトランスファケース側に装着し、第二のシール部材と検査装置の検査治具との間でシール性を確保することが考えられる。
【0010】
しかし、この方法によると、検査装置の検査治具がトランスアクスルケース内の差動装置に対して、車幅方向から差し込まれ、差動装置のピニオンギヤと一体回転するように構成したものであるため、第二のシール部材に、車幅方向すなわち検査治具の軸方向からの圧接力が作用し、検査治具が回転すると検査治具との間で摺動が生じ、第二のシール部材を損傷するおそれが生じるという問題がある。
【0011】
また、このようなシール構造であれば、検査治具の差し込み量により、第二のシール部材の圧接力が変化してしまい、シール性にバラツキが生じ、安定した検査も行えないといった問題も生じる。
【0012】
そこで、本発明は、横置きエンジンの側方にトランスアクスルケースを結合した駆動装置にトランスファケースを結合する4輪駆動装置において、完成時のシール性を確保しつつも、変速機の検査時におけるシール性も確保することができる4輪駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の4輪駆動装置は、出力軸が車幅方向に延びるように配置したエンジンに変速機および差動装置を収容したトランスアクスルケースを結合し、該トランスアクスルケースにトランスファ装置を収容したトランスファケースを結合する4輪駆動装置において、前記トランスアクスルケースに回転自在に支持され、前記出力軸と平行に延びるスプライン結合部を有するデフケースと、前記トランスファケースに回転自在に支持され、前記出力軸と平行に延びて該デフケースのスプライン結合部と噛合するスプライン部を有するトランスファ中空軸と、前記トランスファケースにおけるトランスアクスルケース結合側に、前記トランスファ中空軸と同芯状に形成された端側円筒部と、前記トランスアクスルケースにおけるトランスファケース結合側に形成されて、該トランスファケースの端側円筒部を嵌合支持する嵌合孔部と、該嵌合孔部のトランスファケース側に同芯状に形成された拡径段部と、該拡径段部に装着され、前記端側円筒部をトランスファケースの嵌合孔部で嵌合支持した際に、内側径方向に延びるリップ部で端側円筒部の外周面に圧接するシール部材とを備えたものである。
【0014】
上記構成によれば、トランスアクスルケースの拡径段部にシール部材を装着し、このシール部材の内側径方向に延びるリップ部でトランスファケースの端側円筒部の外周面を圧接することになる。
【0015】
このため、例えば、変速機の検査時に検査治具をトランスアクスルケースの嵌合孔部から差し込んで検査を行う場合に、拡径段部に装着したシール部材のリップ部が径方向から検査治具に当接することになるため、検査治具の差し込み方向と直交する方向からシールすることになり、検査治具が回転した際に、シール部材が圧接状態で摺動することはない。
【0016】
また、トランスファケースを組付けた状態でも、シール部材のリップ部が、トランスファケースの外周面に圧接されるため、ケース内外のシール性を確保することができる。
【0017】
なお、このシール部材のリップ部は、拡径段部から内側径方向に延びるリップ部を有するものであれば、どのような形状であってもよく、断面T字形状、L字形状のシール部材であってもよい。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記シール部材を、芯金入りで断面略コ字状に形成し、前記リップ部の先端を、軸方向で見てトランスアクスルケース側に向くように形成したものである。
【0019】
上記構成によれば、拡径段部に装着するシール部材は、高い剛性を持って所定のコ字断面形状を維持して、リップ部の先端をトランスアクスルケース側に向かせることになる。
【0020】
このため、トランスファケースの組み付け時、又は検査治具の差し込み時にリップ部の先端がトランスファケース等に引っ掛かることを防止できる。
【0021】
よって、シール部材は、リップ部を内側径方向に向けるように構成していても、検査時及び組付け時に不用意な「めくれ」が防止でき、製品品質の安定化を図ることができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、前記トランスファケースの端側円筒部に、トランスファケース外形より小径に形成したインロー嵌合部を設け、該インロー嵌合部で、前記トランスアクスルケースの嵌合孔部に対してインロー嵌合すると共に、前記シール部材のリップ部を、該インロー嵌合部の延長部に圧接させたものである。
【0023】
上記構成によれば、トランスファケースの端側円筒部に小径に形成したインロー嵌合部で、トランスアクスルケースの嵌合孔部にインロー嵌合するとともに、このインロー嵌合部の延長部に、シール部材のリップ部が圧接してシールすることになる。
【0024】
このため、小径のインロー嵌合部の延長部を利用してシールすることで、シール部材の径をさほど大きくすることなく、シール部材を構成できる。
【0025】
よって、シール部材自体をコンパクトに構成することができる。
【0026】
この発明の一実施態様においては、前記拡径段部の軸方向長さを、前記シール部材の軸方向長さと略一致するように設定したものである。
【0027】
上記構成によれば、拡径段部にシール部材を装着した状態で、シール部材が拡径段部から軸方向に突出したり、又は拡径段部の奥まった位置に存在することがない。
【0028】
このため、検査治具を差し込んだ際、又はトランスファケースを組み付けた際に、シール部材に対して余計な圧縮力を与えたり、又はシール部材にガタツキが生じるといったおそれを、回避することができる。
【0029】
よって、シール部材に負荷等を与えることなく、シール性能を長期間に亘って安定的に維持することができる。
【0030】
この発明の一実施態様においては、前記拡径段部の隣接位置に、前記デフケースを軸支するベアリングを設けたものである。
【0031】
上記構成によれば、ベアリングを介してデフケースの回転位置が確実に軸支されるため、デフケースを介して支持される検査治具の回転位置の変動もベアリングの近傍では少なくなる。
【0032】
このため、隣接する拡径段部に装着されるシール部材と検査治具との相対変位量も少なく、シール部材によるシールを安定して維持できる。
【0033】
よって、拡径段部の隣接位置にベアリングを設けることにより、検査時におけるシール性をも向上することができる。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、シール部材は、変速機の検査時には、内側径方向に延びるリップ部で検査治具に当接するため、検査治具の差し込み方向と直交する方向からシールすることになり、検査治具が回転した際に、圧接状態で摺動することはない。
【0035】
また、トランスファケースを組付けた状態でも、シール部材のリップ部がトランスファケースの外周面に圧接することで、ケース内外のシール性を確保することができる。
【0036】
したがって、横置きエンジンの側方にトランスアクスルケースを結合した駆動装置にトランスファケースを結合する4輪駆動装置において、完成時のシール性を確保しつつも、変速機の検査時におけるシール性も確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【0038】
図1に、本発明の実施形態に係る4輪駆動車の動力伝達経路のスケルトン図を示す。なお、図中の三角形はベアリングを示している。
【0039】
この4輪駆動車は、車両前部のエンジンルーム内に横置きに配置したエンジン1で前輪を常時駆動するFF(フロントエンジン・フロントドライブ)の駆動装置の構成を基調としている。
【0040】
横置き配置したエンジン1のクランクシャフト2は車幅方向に延び、このクランクシャフト2にトルクコンバータ3を直列に連結している。このトルクコンバータ3のタービンシャフト4には自動変速機6を直列に連結し、この自動変速機6の出力軸7も車幅方向に延び、この出力軸7には出力ギヤ8を設けている。
【0041】
エンジン1の左端部には、前述のトルクコンバータ3と自動変速機6を収納するトランスアクスルケース9を結合している。このトランスアクスルケース9はトルクコンバータ3のケース9aと自動変速機6のケース9bとで構成している。また、このトランスアクスルケース9には、前輪用の差動装置(フロントデフ)10を収容している。
【0042】
フロントデフ10のデフケース11の外周にはリングギヤ12を組み付け、前述の出力ギヤ8と噛合させている。デフケース11内の左右のピニオンギヤ13L,13Rにはそれぞれ車幅方向に延びる左右の前輪駆動軸14L,14Rを連結している。
【0043】
各駆動軸14L,14Rの端部には自在継手15,15を介してそれぞれ左右の前輪車軸16L,16Rを連結している。また、この各車軸16L,16Rにはそれぞれ図示しない左右の前輪を接続している。
【0044】
また、前述のトランスアクスルケース9は、前述のデフケース11を左右のベアリング17L,17Rを介して回転自在に支持している。
【0045】
トランスアクスルケース9の右側面には、トランスファケース21を結合している。このトランスファケース21はドライブギアケース21aとフロントキャリア21bとで構成している(図2参照)。
【0046】
トランスファケース21は右の前輪駆動軸14Rの右端部をベアリング22を介して回転自在に支持し、またトランスファ20のトランスファ中空軸23を一対のベアリング24a,24bを介して回転自在に支持している。
【0047】
このトランスファ中空軸23は右の前輪駆動軸14Rの周囲に同軸状に配置され、フロントデフケース11の右側端部に連結している。また、トランスファ中空軸23の外周には後輪用の駆動ギヤ25を組み付けている。
【0048】
また、トランスファケース21には、さらにトランスファ軸26及びピニオン軸27をベアリングを介して回転自在に支持している。このトランスファ軸26は、前輪駆動軸14L,14Rやトランスファ中空軸23と並行に車幅方向に延び、一方ピニオン軸27は、トランスファ軸26と直交して車体前後方向に延びている。
【0049】
トランスファ軸26には従動ギヤ28を設け、前述の駆動ギヤ25と噛合させている。このトランスファ軸26にはハイポイド型リングギヤ29を設け、このリングギヤ29がピニオン軸27の前端に設けたハイポイド型ピニオンギヤ30と噛合するように構成している。ピニオン軸27の後端には自在継手31を介してプロペラシャフト32を連結している。
【0050】
プロペラシャフト32の後端部には、後輪側のピニオン軸33を連結している。このピニオン軸33は、ハイポイド型ピニオンギヤ34を有し、このピニオンギヤ34が後輪用の差動装置(リヤデフ)35のデフケース36に設けたハイポイド型リングギヤ37と噛合している。
【0051】
リヤデフケース36内の左右のピニオンギヤ38L,38Rには、それぞれ車幅方向に延びる左右の後輪駆動軸39L,39Rを連結している。そして各駆動軸39L,39Rには自在継手40,40を介してそれぞれ左右の後輪車軸41L,41Rを連結している。さらに各車軸41L,41Rには、それぞれ図示しない左右の後輪を接続している。
【0052】
以上のような構成により、左右の前輪駆動軸14L,14Rで前輪を常時駆動すると共に、トランスファ20を経由して後輪に対してもエンジン駆動力を伝達している。
【0053】
各駆動軸14L,14R,39L,39Rと、対応する各ピニオンギヤ13L,13R,38L,38Rとは、それぞれスプライン嵌合によって連結している。また、トランスファ中空軸23と、フロントデフケース11の右側端部もスプライン嵌合によって連結している。
【0054】
例えば、図2に示すように、右の前輪駆動軸14Rのトランスアクスルケース9側の端部(左端部)の外周面には、外向きスプライン(駆動軸側スプライン)51を形成している。また、図3に示すように、フロントデフ10の右のピニオンギヤ13Rにトランスファケース21側に(右側に)延びる中空軸部13aを設け、この中空軸部13aの内周面には、内向きスプライン(ピニオン側スプライン)52を形成している。
【0055】
トランスアクスルケース9とトランスファケース21との結合時には、駆動軸14Rをピニオンギヤ13Rの中空軸部13aに右から左に差し込んで、上記スプライン51,52同士を噛み合わせることで(スプライン嵌合)、駆動軸14Rをピニオンギヤ13Rに連結するようにしている。
【0056】
同様に、図3に示すように、トランスファ中空軸23の左端部の外周面には、外向きスプライン(中空軸側スプライン)53を形成している。フロントデフケース11の右部に右側に延びる中空軸部11aを設け、この中空軸部11aの内周面には、内向きスプライン(デフケース側スプライン)54を形成している。この中空軸部11aはピニオンギヤ13Rの中空軸部13aより大径で且つピニオンギヤ13Rの中空軸部13aと同軸状に設けている。
【0057】
トランスアクスルケース9とトランスファケース21との結合時には、トランスファ中空軸23をデフケース11の中空軸部11aに右から左に差し込んで、上記スプライン53,54同士を噛み合わせることで(スプライン嵌合)、トランスファ中空軸23をフロントデフケース11に連結するようにしている。
【0058】
前述のトランスアクスルケース9及びトランスファケース21には、それぞれ複数のシール部材61,71,72,73,74を配設している。
【0059】
まず、図3に示すように、両ケース9,21の結合部においては、トランスアクスルケース9の嵌合孔部9Cの周縁に単一の密閉オイルシール61を配設している。また、トランスファケース21の左端部の内面とトランスファ中空軸23外周面との間には、分離オイルシール71を配設している。さらに、図2に示すように、トランスアクスルケース9の左端部の内面と左の前輪駆動軸14Lの外周面との間には、左端オイルシール72を配設している。また、トランスファケース21の右端部の内面とトランスファ中空軸23の外周面との間には内部オイルシール73を配設している。そして、トランスファケース21の右端部の内面と右の前輪駆動軸14Rの外周面との間には、右端オイルシール74を配設している。
【0060】
前述の密閉オイルシール61は、トランスアクスルケース9及びトランスファケース21内のオイルが両ケース9,21の結合部から外部に漏洩するのを防ぎ、また、外部からケース9,21内にダストや雨水が浸入するのを防いでいる。
【0061】
前述の分離オイルシール71は、トランスファケース21内のハイポイドギヤ用オイルがトランスファ中空軸23の外側を通ってケース21の左端部から外部に漏洩するのを防ぎ、また、トランスアクスルケース9内の自動変速機用オイル(ATF)と、トランスファケース21内のハイポイドギヤ用オイルとの混合を防いでいる。
【0062】
前述の左端オイルシール72は、トランスアクスルケース9内の自動変速機用オイルが左駆動軸14Lの外側を通ってケース9の左端部から外部に漏洩するのを防いでいる。また、内部オイルシール73は、右駆動軸14Rとトランスファ中空軸23との間隙を通ってトランスファケース21内に浸入してきたトランスアクスルケース9内の自動変速機用オイルがそれ以上にトランスファケース21内に浸入するのを防いでいる。そして、右端オイルシール74は、トランスファケース21内のオイルが右駆動軸14Rの外側を通ってケース21の右端部から外部に漏洩するのを防いでいる。
【0063】
本実施形態では、密閉オイルシール61が特徴を有しており、この構造について、詳しく説明する。
【0064】
密閉オイルシール61は、トランスアクスルケース9の嵌合孔部9Cの周縁に、同芯状に形成した環状の段部9Dに装着している。
【0065】
この段部9Dは、図5に示すように、嵌合孔部9Cの内周面9E(インロー嵌合面)に対して一段拡径して形成しており、その軸方向長さL(車幅方向長さ)を密閉オイルシール61の軸方向長さ(車幅方向長さ)と略一致する長さに設定している。
【0066】
段部9Dに装着される密閉オイルシール61は、環状のゴム部材で形成され、内部には断面略コ字状の金属製の芯金61aを設けている。そして、密閉オイルシール61には、内側径方向に延びるリップ部61bを設けている。
【0067】
このリップ部61bは、径内方側に対して付勢力を有し、何らシールをしていない状態では、径内方側に起立するように設定している(図5の破線で示す状態)。また、このリップ部61bの先端は、ややトランスアクスルケース9内方側に向って傾斜するように設定している。
【0068】
このように、リップ部61bが径内方側に付勢力を有することから、図3に示すように、トランスファケース21結合状態において、リップ部61bの先端がトランスファケース21の結合部である端側円筒部21Fに対して圧接することになる。具体的には、端側円筒部21Fの側端部に形成したインロー嵌合部21Gの延長部21Hの外周面に対して、リップ部61bが径外方から当接し、シール性を確保している。
【0069】
このため、密閉オイルシール61は、各ケース9,21の結合状態において、前述のように、各ケース9,21からオイルが外部に漏洩するのを防ぎ、外部からダストや雨水が浸入するのを防いでいる。
【0070】
また、この密閉オイルシール61は、トランスファケース21の組み付け前の自動変速機6の動作確認検査の際に、検査治具との間でシール性を確保するように構成している。
【0071】
図4は、自動変速機6の検査時における、トランスアクスルケース9の結合部と検査治具(中間軸J)との結合状態を示した図である。
【0072】
自動変速機6の動作確認検査は、通常、トランスアクスルケース9内に自動変速機6とフロントデフ10等を収容した組み立て状態で、自動変速機用オイルを投入して行う。トルクコンバータ3の入力側から入力部である駆動モータ(図示せず)によって回転駆動力を与えて、フロントデフ10の出力側に動力吸収部である負荷モータ(図示せず)を連結して(モータリング状態)、このときの伝達駆動力を検出することで、各種変速段の検査を行う。
【0073】
動力吸収部の負荷モータとフロントデフ10とは、ピニオンギヤ13Rにスプライン結合される中間軸J(検査治具)を介して連結される。
【0074】
この中間軸Jは、ピニオンギヤ13Rのスプライン(ピニオン側スプライン)52と嵌合するスプライン結合部J1と、同芯状に外周側に突出して密閉オイルシール61に当接しトランスアクスルケース9の嵌合孔部9Cに嵌合する嵌合部J2とを有する。
【0075】
検査時において、密閉オイルシール61は、中間軸Jの嵌合部J2の外周面でリップ部61bが径外方側から圧接してシールを行う。このため、トランスアクスルケース9内に投入された自動変速機用オイルの漏洩を防ぐことができる。
【0076】
特に、図5に示すように、中間軸Jは、検査時に回転することでその位置が周方向に揺動する(矢印で示す)が、このとき、密閉オイルシール61のリップ部61bが径外方から圧接するため、その揺動に対してリップ部61bが追従してシール切れのおそれを無くしている。この追従は、断面コ字状の芯金61aが入っていることから、さらに付勢力が強化され、より確実に生じる。
【0077】
また、密閉オイルシール61のリップ部61bは、中間軸Jの差し込み方向と直交する方向でシールを行うため、密閉オイルシール61が中間軸Jによって加圧された状態で回転摺動するおそれもないため、密閉オイルシール61の損傷等も防ぐことができ、完成時のシール性を悪化させることもない。
【0078】
さらに、密閉オイルシール61が、径方向でシールを行うことで、中間軸Jの差し込み量によってシール性のバラツキが生じるおそれもない。
【0079】
このように、本実施形態では、一つの密閉オイルシール61を、検査時においては、検査治具の中間軸Jに対して径外方側から圧接するように設定し、組み立て完成時においても、トランスファケース21の結合部である端側円筒部21Fに対して径外方側から圧接するように設定したことにより、単一のオイルシール部材によって、完成時のシール性を確保しつつも、検査時のおけるシール性も確保することができる。
【0080】
特に、本実施形態では、密閉オイルシール61の内部に断面コ字状の芯金61aを設け、リップ部61bの先端を軸方向で見てトランスアクスルケース9内方側に向けて傾斜させている。このため、検査時及び組み立て時において、嵌合孔部9Cに中間軸Jやトランスファケース21の端側円筒部21Fを差し込む際に、不用意に「めくれる」おそれを防止することができ、製品品質の安定化を図ることができる。
【0081】
また、本実施形態では、密閉オイルシール61のリップ部61bをトランスファケース21の端側円筒部21Fの外形よりも小径に形成したインロー嵌合部21Gの延長部21Hに圧接させている。
【0082】
このため、密閉オイルシール61の径を、さほど大きくすることなく、シールを行うことができ、密閉オイルシール61自体もコンパクトに構成することができる。また、各ケース9,21同士がインロー嵌合で強固に結合される隣接位置で、シールすることになるため、シール性能自体も向上する。
【0083】
また、本実施形態では、段部9Dの軸方向長さLを、密閉オイルシール61の車幅方向長さと略一致するように設定している。このため、密閉オイルシール61が段部9Dから車幅方向に突出したり、又は段部9Dの奥まった位置に存在することがない。
【0084】
よって、トランスファケース21を組み付けた際に、密閉オイルシール61に対して余計な圧縮力を与えたり、又は密閉オイルシール61にガタツキが生じるといったおそれを、回避することができ、密閉オイルシール61に負荷等を与えることなく、シール性能を長期間に亘って安定的に維持することができる。
【0085】
さらに、本実施形態では、図5にも示すように、段部9Dの隣接位置には、デフケース11を軸支するベアリング17Rを設けている。
【0086】
このため、デフケース11の回転位置が確実に軸支されるため、デフケース11介して支持される中間軸Jの回転位置の変動もベアリング17Rの近傍では少なくなる。
【0087】
よって、隣接する段部9Dに装着される密閉オイルシール61と中間軸Jとの相対変位量も少なくなり、リップ部61bによるシールを安定して維持することができ、検査時におけるシール性も向上することができる。
【0088】
次に、他の実施形態について、図6で説明する。この実施形態は、密閉オイルシール61を、嵌合孔部9Cよりも外周側に位置する段部9Eに装着して、トランスファケース21の端側円筒部21Fのインロー嵌合部21Gとは別の外方側に位置する外周面21Iに当接するように構成したものである。なお、その他の構成要素については、前述の実施形態と同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0089】
この実施形態も、前述の実施形態と同様に、密閉オイルシール61のリップ部61bを径内方側に向けて圧接することで、単一のオイルシール部材で、完成時のシール性を確保しつつも、検査時のおけるシール性も確保するものである。
【0090】
もっとも、この実施形態では、トランスファケース21の端側円筒部21Fの外周面21Iに、密閉オイルシール61のリップ部61bが圧接するように構成している。
【0091】
具体的には、トランスアクスルケース9の嵌合孔部9Cの外方側に、拡径の段部9Eを形成し、この段部9Eに密閉オイルシール61を嵌め込み装着して、密閉オイルシール61のリップ部61bを、トランスファケース21の端側円筒部21Fの外周面21Iに圧接するようにしている。
【0092】
このため、本実施形態では、インロー嵌合で確実にケース9,22同士が結合され、その外側で密閉オイルシール61がシールを行うことになる。
【0093】
よって、インロー嵌合によるラビリンス効果によってケース9,22内のシール性を確実に確保した上で、さらに密閉オイルシール61によるシールを行うことになり、よりシール性を高めることができる。
【0094】
また、嵌合孔部9Cから離間した位置で、密閉オイルシール61を装着しているため、検査時及び組み立て時に、中間軸J等が誤って接触しても、密閉オイルシール61がトランスファケース21内に落ち込むおそれを回避することができる。
【0095】
その他の作用効果は、前述の実施形態と同様である。
【0096】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明の拡径段部は、実施形態の段部9D,段部9Fに対応し、
以下、同様に、
シール部材は、実施形態の密閉オイルシール61に対応し、
デフケースのスプライン結合部は、デフケース側スプライン54に対応し、
トランスファ中空軸のスプライン部は、中空軸側スプライン53に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる4輪駆動装置に適用する実施形態を含むものである。
【0097】
特に、密閉オイルシール61の断面形状は、前述の実施形態の形状に限定されるものではなく、径内方側にリップ部が延びる形状であれば、L字状、T字形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態に係る4輪駆動装置のスケルトン図。
【図2】フロントデフ及びトランスファ周辺の断面図。
【図3】トランスアクスルケースとトランスファケースの結合部周辺の詳細断面図。
【図4】検査治具を差し込んだ際のトランスアクスルケースの詳細断面図。
【図5】密閉オイルシールの動きを説明する詳細断面図。
【図6】他の実施形態の図3に対応する詳細断面図。
【符号の説明】
【0099】
1…エンジン
6…自動変速機(変速機)
9…トランスアクスルケース
9C…嵌合孔部
9D…段部(拡径段部)
9F…段部(拡径段部)
11…デフケース
17R…ベアリング
21…トランスファケース
21F…端側円筒部
21G…インロー嵌合部
21H…延長部
23…トランスファ中空軸
54…デフケース側スプライン(デフケースのスプライン結合部)
53…中空軸側スプライン(トランスファ中空軸のスプライン部)
61…密閉オイルシール(シール部材)
61a…芯材
61b…リップ部
【技術分野】
【0001】
この発明は、4輪駆動装置に関し、特に、トランスアクスルケースとトランスファケースとの結合部における構造を改良した4輪駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の4輪駆動装置として、従来から横置きエンジンの側方に変速機と差動装置を収容したトランスアクスルケースを結合したFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車の駆動装置を基調として、トランスファ中空軸等を収容したトランスファケースを結合するものが知られている。
【0003】
また、これらトランスアクスルケースとトランスファケース間には、結合した完成状態で、少なくとも内部に充填したオイルが互いに移動しないようにシールを行うシール部材を配置することも知られている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、トランスファケース組付け時のシール部材の損傷を防止するため、オイルの移動を防止する第一のシール部材(分離シール)を、トランスファケースとトランスファ中空軸の間に配置して共通化を図ると共に、各ケース内部のオイルの外部への漏れや外部からのダストや雨水の侵入を防止する第二のシール部材(密閉シール)を、アクスルケースとトランスファケースとの結合部における対峙面に配置するものが提案されている。
【0005】
そして、この特許文献1の第二のシール部材は、トランスファケースの組付け状態でシール状態を確保しなければならないため、組付け方向であるトランスファ中空軸の軸方向(車幅方向)に対して付勢力(圧接力)を発生するように設定するとともに、組付け時にトランスファ中空軸のスプライン等で損傷するおそれがないようにトランスファケース側に装着されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−118411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、変速機として自動変速機が組み込まれたトランスアクスルユニットでは、トランスファケース組付け前の組立て作業完了時に、モータリング状態(モータによって回転負荷を与えた状態)で、各種変速段の動作確認の検査を行う必要がある。
【0008】
しかし、前述の4輪駆動装置では、トランスアクスルケースのトランスファケースとの結合部にシール部材を設けていないことから、この検査時にトランスアクスルケース内からオイルが漏れてしまうという問題がある。
【0009】
この対策としては、前述の第二のシール部材をトランスアクスルケースのトランスファケース側に装着し、第二のシール部材と検査装置の検査治具との間でシール性を確保することが考えられる。
【0010】
しかし、この方法によると、検査装置の検査治具がトランスアクスルケース内の差動装置に対して、車幅方向から差し込まれ、差動装置のピニオンギヤと一体回転するように構成したものであるため、第二のシール部材に、車幅方向すなわち検査治具の軸方向からの圧接力が作用し、検査治具が回転すると検査治具との間で摺動が生じ、第二のシール部材を損傷するおそれが生じるという問題がある。
【0011】
また、このようなシール構造であれば、検査治具の差し込み量により、第二のシール部材の圧接力が変化してしまい、シール性にバラツキが生じ、安定した検査も行えないといった問題も生じる。
【0012】
そこで、本発明は、横置きエンジンの側方にトランスアクスルケースを結合した駆動装置にトランスファケースを結合する4輪駆動装置において、完成時のシール性を確保しつつも、変速機の検査時におけるシール性も確保することができる4輪駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の4輪駆動装置は、出力軸が車幅方向に延びるように配置したエンジンに変速機および差動装置を収容したトランスアクスルケースを結合し、該トランスアクスルケースにトランスファ装置を収容したトランスファケースを結合する4輪駆動装置において、前記トランスアクスルケースに回転自在に支持され、前記出力軸と平行に延びるスプライン結合部を有するデフケースと、前記トランスファケースに回転自在に支持され、前記出力軸と平行に延びて該デフケースのスプライン結合部と噛合するスプライン部を有するトランスファ中空軸と、前記トランスファケースにおけるトランスアクスルケース結合側に、前記トランスファ中空軸と同芯状に形成された端側円筒部と、前記トランスアクスルケースにおけるトランスファケース結合側に形成されて、該トランスファケースの端側円筒部を嵌合支持する嵌合孔部と、該嵌合孔部のトランスファケース側に同芯状に形成された拡径段部と、該拡径段部に装着され、前記端側円筒部をトランスファケースの嵌合孔部で嵌合支持した際に、内側径方向に延びるリップ部で端側円筒部の外周面に圧接するシール部材とを備えたものである。
【0014】
上記構成によれば、トランスアクスルケースの拡径段部にシール部材を装着し、このシール部材の内側径方向に延びるリップ部でトランスファケースの端側円筒部の外周面を圧接することになる。
【0015】
このため、例えば、変速機の検査時に検査治具をトランスアクスルケースの嵌合孔部から差し込んで検査を行う場合に、拡径段部に装着したシール部材のリップ部が径方向から検査治具に当接することになるため、検査治具の差し込み方向と直交する方向からシールすることになり、検査治具が回転した際に、シール部材が圧接状態で摺動することはない。
【0016】
また、トランスファケースを組付けた状態でも、シール部材のリップ部が、トランスファケースの外周面に圧接されるため、ケース内外のシール性を確保することができる。
【0017】
なお、このシール部材のリップ部は、拡径段部から内側径方向に延びるリップ部を有するものであれば、どのような形状であってもよく、断面T字形状、L字形状のシール部材であってもよい。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記シール部材を、芯金入りで断面略コ字状に形成し、前記リップ部の先端を、軸方向で見てトランスアクスルケース側に向くように形成したものである。
【0019】
上記構成によれば、拡径段部に装着するシール部材は、高い剛性を持って所定のコ字断面形状を維持して、リップ部の先端をトランスアクスルケース側に向かせることになる。
【0020】
このため、トランスファケースの組み付け時、又は検査治具の差し込み時にリップ部の先端がトランスファケース等に引っ掛かることを防止できる。
【0021】
よって、シール部材は、リップ部を内側径方向に向けるように構成していても、検査時及び組付け時に不用意な「めくれ」が防止でき、製品品質の安定化を図ることができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、前記トランスファケースの端側円筒部に、トランスファケース外形より小径に形成したインロー嵌合部を設け、該インロー嵌合部で、前記トランスアクスルケースの嵌合孔部に対してインロー嵌合すると共に、前記シール部材のリップ部を、該インロー嵌合部の延長部に圧接させたものである。
【0023】
上記構成によれば、トランスファケースの端側円筒部に小径に形成したインロー嵌合部で、トランスアクスルケースの嵌合孔部にインロー嵌合するとともに、このインロー嵌合部の延長部に、シール部材のリップ部が圧接してシールすることになる。
【0024】
このため、小径のインロー嵌合部の延長部を利用してシールすることで、シール部材の径をさほど大きくすることなく、シール部材を構成できる。
【0025】
よって、シール部材自体をコンパクトに構成することができる。
【0026】
この発明の一実施態様においては、前記拡径段部の軸方向長さを、前記シール部材の軸方向長さと略一致するように設定したものである。
【0027】
上記構成によれば、拡径段部にシール部材を装着した状態で、シール部材が拡径段部から軸方向に突出したり、又は拡径段部の奥まった位置に存在することがない。
【0028】
このため、検査治具を差し込んだ際、又はトランスファケースを組み付けた際に、シール部材に対して余計な圧縮力を与えたり、又はシール部材にガタツキが生じるといったおそれを、回避することができる。
【0029】
よって、シール部材に負荷等を与えることなく、シール性能を長期間に亘って安定的に維持することができる。
【0030】
この発明の一実施態様においては、前記拡径段部の隣接位置に、前記デフケースを軸支するベアリングを設けたものである。
【0031】
上記構成によれば、ベアリングを介してデフケースの回転位置が確実に軸支されるため、デフケースを介して支持される検査治具の回転位置の変動もベアリングの近傍では少なくなる。
【0032】
このため、隣接する拡径段部に装着されるシール部材と検査治具との相対変位量も少なく、シール部材によるシールを安定して維持できる。
【0033】
よって、拡径段部の隣接位置にベアリングを設けることにより、検査時におけるシール性をも向上することができる。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、シール部材は、変速機の検査時には、内側径方向に延びるリップ部で検査治具に当接するため、検査治具の差し込み方向と直交する方向からシールすることになり、検査治具が回転した際に、圧接状態で摺動することはない。
【0035】
また、トランスファケースを組付けた状態でも、シール部材のリップ部がトランスファケースの外周面に圧接することで、ケース内外のシール性を確保することができる。
【0036】
したがって、横置きエンジンの側方にトランスアクスルケースを結合した駆動装置にトランスファケースを結合する4輪駆動装置において、完成時のシール性を確保しつつも、変速機の検査時におけるシール性も確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【0038】
図1に、本発明の実施形態に係る4輪駆動車の動力伝達経路のスケルトン図を示す。なお、図中の三角形はベアリングを示している。
【0039】
この4輪駆動車は、車両前部のエンジンルーム内に横置きに配置したエンジン1で前輪を常時駆動するFF(フロントエンジン・フロントドライブ)の駆動装置の構成を基調としている。
【0040】
横置き配置したエンジン1のクランクシャフト2は車幅方向に延び、このクランクシャフト2にトルクコンバータ3を直列に連結している。このトルクコンバータ3のタービンシャフト4には自動変速機6を直列に連結し、この自動変速機6の出力軸7も車幅方向に延び、この出力軸7には出力ギヤ8を設けている。
【0041】
エンジン1の左端部には、前述のトルクコンバータ3と自動変速機6を収納するトランスアクスルケース9を結合している。このトランスアクスルケース9はトルクコンバータ3のケース9aと自動変速機6のケース9bとで構成している。また、このトランスアクスルケース9には、前輪用の差動装置(フロントデフ)10を収容している。
【0042】
フロントデフ10のデフケース11の外周にはリングギヤ12を組み付け、前述の出力ギヤ8と噛合させている。デフケース11内の左右のピニオンギヤ13L,13Rにはそれぞれ車幅方向に延びる左右の前輪駆動軸14L,14Rを連結している。
【0043】
各駆動軸14L,14Rの端部には自在継手15,15を介してそれぞれ左右の前輪車軸16L,16Rを連結している。また、この各車軸16L,16Rにはそれぞれ図示しない左右の前輪を接続している。
【0044】
また、前述のトランスアクスルケース9は、前述のデフケース11を左右のベアリング17L,17Rを介して回転自在に支持している。
【0045】
トランスアクスルケース9の右側面には、トランスファケース21を結合している。このトランスファケース21はドライブギアケース21aとフロントキャリア21bとで構成している(図2参照)。
【0046】
トランスファケース21は右の前輪駆動軸14Rの右端部をベアリング22を介して回転自在に支持し、またトランスファ20のトランスファ中空軸23を一対のベアリング24a,24bを介して回転自在に支持している。
【0047】
このトランスファ中空軸23は右の前輪駆動軸14Rの周囲に同軸状に配置され、フロントデフケース11の右側端部に連結している。また、トランスファ中空軸23の外周には後輪用の駆動ギヤ25を組み付けている。
【0048】
また、トランスファケース21には、さらにトランスファ軸26及びピニオン軸27をベアリングを介して回転自在に支持している。このトランスファ軸26は、前輪駆動軸14L,14Rやトランスファ中空軸23と並行に車幅方向に延び、一方ピニオン軸27は、トランスファ軸26と直交して車体前後方向に延びている。
【0049】
トランスファ軸26には従動ギヤ28を設け、前述の駆動ギヤ25と噛合させている。このトランスファ軸26にはハイポイド型リングギヤ29を設け、このリングギヤ29がピニオン軸27の前端に設けたハイポイド型ピニオンギヤ30と噛合するように構成している。ピニオン軸27の後端には自在継手31を介してプロペラシャフト32を連結している。
【0050】
プロペラシャフト32の後端部には、後輪側のピニオン軸33を連結している。このピニオン軸33は、ハイポイド型ピニオンギヤ34を有し、このピニオンギヤ34が後輪用の差動装置(リヤデフ)35のデフケース36に設けたハイポイド型リングギヤ37と噛合している。
【0051】
リヤデフケース36内の左右のピニオンギヤ38L,38Rには、それぞれ車幅方向に延びる左右の後輪駆動軸39L,39Rを連結している。そして各駆動軸39L,39Rには自在継手40,40を介してそれぞれ左右の後輪車軸41L,41Rを連結している。さらに各車軸41L,41Rには、それぞれ図示しない左右の後輪を接続している。
【0052】
以上のような構成により、左右の前輪駆動軸14L,14Rで前輪を常時駆動すると共に、トランスファ20を経由して後輪に対してもエンジン駆動力を伝達している。
【0053】
各駆動軸14L,14R,39L,39Rと、対応する各ピニオンギヤ13L,13R,38L,38Rとは、それぞれスプライン嵌合によって連結している。また、トランスファ中空軸23と、フロントデフケース11の右側端部もスプライン嵌合によって連結している。
【0054】
例えば、図2に示すように、右の前輪駆動軸14Rのトランスアクスルケース9側の端部(左端部)の外周面には、外向きスプライン(駆動軸側スプライン)51を形成している。また、図3に示すように、フロントデフ10の右のピニオンギヤ13Rにトランスファケース21側に(右側に)延びる中空軸部13aを設け、この中空軸部13aの内周面には、内向きスプライン(ピニオン側スプライン)52を形成している。
【0055】
トランスアクスルケース9とトランスファケース21との結合時には、駆動軸14Rをピニオンギヤ13Rの中空軸部13aに右から左に差し込んで、上記スプライン51,52同士を噛み合わせることで(スプライン嵌合)、駆動軸14Rをピニオンギヤ13Rに連結するようにしている。
【0056】
同様に、図3に示すように、トランスファ中空軸23の左端部の外周面には、外向きスプライン(中空軸側スプライン)53を形成している。フロントデフケース11の右部に右側に延びる中空軸部11aを設け、この中空軸部11aの内周面には、内向きスプライン(デフケース側スプライン)54を形成している。この中空軸部11aはピニオンギヤ13Rの中空軸部13aより大径で且つピニオンギヤ13Rの中空軸部13aと同軸状に設けている。
【0057】
トランスアクスルケース9とトランスファケース21との結合時には、トランスファ中空軸23をデフケース11の中空軸部11aに右から左に差し込んで、上記スプライン53,54同士を噛み合わせることで(スプライン嵌合)、トランスファ中空軸23をフロントデフケース11に連結するようにしている。
【0058】
前述のトランスアクスルケース9及びトランスファケース21には、それぞれ複数のシール部材61,71,72,73,74を配設している。
【0059】
まず、図3に示すように、両ケース9,21の結合部においては、トランスアクスルケース9の嵌合孔部9Cの周縁に単一の密閉オイルシール61を配設している。また、トランスファケース21の左端部の内面とトランスファ中空軸23外周面との間には、分離オイルシール71を配設している。さらに、図2に示すように、トランスアクスルケース9の左端部の内面と左の前輪駆動軸14Lの外周面との間には、左端オイルシール72を配設している。また、トランスファケース21の右端部の内面とトランスファ中空軸23の外周面との間には内部オイルシール73を配設している。そして、トランスファケース21の右端部の内面と右の前輪駆動軸14Rの外周面との間には、右端オイルシール74を配設している。
【0060】
前述の密閉オイルシール61は、トランスアクスルケース9及びトランスファケース21内のオイルが両ケース9,21の結合部から外部に漏洩するのを防ぎ、また、外部からケース9,21内にダストや雨水が浸入するのを防いでいる。
【0061】
前述の分離オイルシール71は、トランスファケース21内のハイポイドギヤ用オイルがトランスファ中空軸23の外側を通ってケース21の左端部から外部に漏洩するのを防ぎ、また、トランスアクスルケース9内の自動変速機用オイル(ATF)と、トランスファケース21内のハイポイドギヤ用オイルとの混合を防いでいる。
【0062】
前述の左端オイルシール72は、トランスアクスルケース9内の自動変速機用オイルが左駆動軸14Lの外側を通ってケース9の左端部から外部に漏洩するのを防いでいる。また、内部オイルシール73は、右駆動軸14Rとトランスファ中空軸23との間隙を通ってトランスファケース21内に浸入してきたトランスアクスルケース9内の自動変速機用オイルがそれ以上にトランスファケース21内に浸入するのを防いでいる。そして、右端オイルシール74は、トランスファケース21内のオイルが右駆動軸14Rの外側を通ってケース21の右端部から外部に漏洩するのを防いでいる。
【0063】
本実施形態では、密閉オイルシール61が特徴を有しており、この構造について、詳しく説明する。
【0064】
密閉オイルシール61は、トランスアクスルケース9の嵌合孔部9Cの周縁に、同芯状に形成した環状の段部9Dに装着している。
【0065】
この段部9Dは、図5に示すように、嵌合孔部9Cの内周面9E(インロー嵌合面)に対して一段拡径して形成しており、その軸方向長さL(車幅方向長さ)を密閉オイルシール61の軸方向長さ(車幅方向長さ)と略一致する長さに設定している。
【0066】
段部9Dに装着される密閉オイルシール61は、環状のゴム部材で形成され、内部には断面略コ字状の金属製の芯金61aを設けている。そして、密閉オイルシール61には、内側径方向に延びるリップ部61bを設けている。
【0067】
このリップ部61bは、径内方側に対して付勢力を有し、何らシールをしていない状態では、径内方側に起立するように設定している(図5の破線で示す状態)。また、このリップ部61bの先端は、ややトランスアクスルケース9内方側に向って傾斜するように設定している。
【0068】
このように、リップ部61bが径内方側に付勢力を有することから、図3に示すように、トランスファケース21結合状態において、リップ部61bの先端がトランスファケース21の結合部である端側円筒部21Fに対して圧接することになる。具体的には、端側円筒部21Fの側端部に形成したインロー嵌合部21Gの延長部21Hの外周面に対して、リップ部61bが径外方から当接し、シール性を確保している。
【0069】
このため、密閉オイルシール61は、各ケース9,21の結合状態において、前述のように、各ケース9,21からオイルが外部に漏洩するのを防ぎ、外部からダストや雨水が浸入するのを防いでいる。
【0070】
また、この密閉オイルシール61は、トランスファケース21の組み付け前の自動変速機6の動作確認検査の際に、検査治具との間でシール性を確保するように構成している。
【0071】
図4は、自動変速機6の検査時における、トランスアクスルケース9の結合部と検査治具(中間軸J)との結合状態を示した図である。
【0072】
自動変速機6の動作確認検査は、通常、トランスアクスルケース9内に自動変速機6とフロントデフ10等を収容した組み立て状態で、自動変速機用オイルを投入して行う。トルクコンバータ3の入力側から入力部である駆動モータ(図示せず)によって回転駆動力を与えて、フロントデフ10の出力側に動力吸収部である負荷モータ(図示せず)を連結して(モータリング状態)、このときの伝達駆動力を検出することで、各種変速段の検査を行う。
【0073】
動力吸収部の負荷モータとフロントデフ10とは、ピニオンギヤ13Rにスプライン結合される中間軸J(検査治具)を介して連結される。
【0074】
この中間軸Jは、ピニオンギヤ13Rのスプライン(ピニオン側スプライン)52と嵌合するスプライン結合部J1と、同芯状に外周側に突出して密閉オイルシール61に当接しトランスアクスルケース9の嵌合孔部9Cに嵌合する嵌合部J2とを有する。
【0075】
検査時において、密閉オイルシール61は、中間軸Jの嵌合部J2の外周面でリップ部61bが径外方側から圧接してシールを行う。このため、トランスアクスルケース9内に投入された自動変速機用オイルの漏洩を防ぐことができる。
【0076】
特に、図5に示すように、中間軸Jは、検査時に回転することでその位置が周方向に揺動する(矢印で示す)が、このとき、密閉オイルシール61のリップ部61bが径外方から圧接するため、その揺動に対してリップ部61bが追従してシール切れのおそれを無くしている。この追従は、断面コ字状の芯金61aが入っていることから、さらに付勢力が強化され、より確実に生じる。
【0077】
また、密閉オイルシール61のリップ部61bは、中間軸Jの差し込み方向と直交する方向でシールを行うため、密閉オイルシール61が中間軸Jによって加圧された状態で回転摺動するおそれもないため、密閉オイルシール61の損傷等も防ぐことができ、完成時のシール性を悪化させることもない。
【0078】
さらに、密閉オイルシール61が、径方向でシールを行うことで、中間軸Jの差し込み量によってシール性のバラツキが生じるおそれもない。
【0079】
このように、本実施形態では、一つの密閉オイルシール61を、検査時においては、検査治具の中間軸Jに対して径外方側から圧接するように設定し、組み立て完成時においても、トランスファケース21の結合部である端側円筒部21Fに対して径外方側から圧接するように設定したことにより、単一のオイルシール部材によって、完成時のシール性を確保しつつも、検査時のおけるシール性も確保することができる。
【0080】
特に、本実施形態では、密閉オイルシール61の内部に断面コ字状の芯金61aを設け、リップ部61bの先端を軸方向で見てトランスアクスルケース9内方側に向けて傾斜させている。このため、検査時及び組み立て時において、嵌合孔部9Cに中間軸Jやトランスファケース21の端側円筒部21Fを差し込む際に、不用意に「めくれる」おそれを防止することができ、製品品質の安定化を図ることができる。
【0081】
また、本実施形態では、密閉オイルシール61のリップ部61bをトランスファケース21の端側円筒部21Fの外形よりも小径に形成したインロー嵌合部21Gの延長部21Hに圧接させている。
【0082】
このため、密閉オイルシール61の径を、さほど大きくすることなく、シールを行うことができ、密閉オイルシール61自体もコンパクトに構成することができる。また、各ケース9,21同士がインロー嵌合で強固に結合される隣接位置で、シールすることになるため、シール性能自体も向上する。
【0083】
また、本実施形態では、段部9Dの軸方向長さLを、密閉オイルシール61の車幅方向長さと略一致するように設定している。このため、密閉オイルシール61が段部9Dから車幅方向に突出したり、又は段部9Dの奥まった位置に存在することがない。
【0084】
よって、トランスファケース21を組み付けた際に、密閉オイルシール61に対して余計な圧縮力を与えたり、又は密閉オイルシール61にガタツキが生じるといったおそれを、回避することができ、密閉オイルシール61に負荷等を与えることなく、シール性能を長期間に亘って安定的に維持することができる。
【0085】
さらに、本実施形態では、図5にも示すように、段部9Dの隣接位置には、デフケース11を軸支するベアリング17Rを設けている。
【0086】
このため、デフケース11の回転位置が確実に軸支されるため、デフケース11介して支持される中間軸Jの回転位置の変動もベアリング17Rの近傍では少なくなる。
【0087】
よって、隣接する段部9Dに装着される密閉オイルシール61と中間軸Jとの相対変位量も少なくなり、リップ部61bによるシールを安定して維持することができ、検査時におけるシール性も向上することができる。
【0088】
次に、他の実施形態について、図6で説明する。この実施形態は、密閉オイルシール61を、嵌合孔部9Cよりも外周側に位置する段部9Eに装着して、トランスファケース21の端側円筒部21Fのインロー嵌合部21Gとは別の外方側に位置する外周面21Iに当接するように構成したものである。なお、その他の構成要素については、前述の実施形態と同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0089】
この実施形態も、前述の実施形態と同様に、密閉オイルシール61のリップ部61bを径内方側に向けて圧接することで、単一のオイルシール部材で、完成時のシール性を確保しつつも、検査時のおけるシール性も確保するものである。
【0090】
もっとも、この実施形態では、トランスファケース21の端側円筒部21Fの外周面21Iに、密閉オイルシール61のリップ部61bが圧接するように構成している。
【0091】
具体的には、トランスアクスルケース9の嵌合孔部9Cの外方側に、拡径の段部9Eを形成し、この段部9Eに密閉オイルシール61を嵌め込み装着して、密閉オイルシール61のリップ部61bを、トランスファケース21の端側円筒部21Fの外周面21Iに圧接するようにしている。
【0092】
このため、本実施形態では、インロー嵌合で確実にケース9,22同士が結合され、その外側で密閉オイルシール61がシールを行うことになる。
【0093】
よって、インロー嵌合によるラビリンス効果によってケース9,22内のシール性を確実に確保した上で、さらに密閉オイルシール61によるシールを行うことになり、よりシール性を高めることができる。
【0094】
また、嵌合孔部9Cから離間した位置で、密閉オイルシール61を装着しているため、検査時及び組み立て時に、中間軸J等が誤って接触しても、密閉オイルシール61がトランスファケース21内に落ち込むおそれを回避することができる。
【0095】
その他の作用効果は、前述の実施形態と同様である。
【0096】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明の拡径段部は、実施形態の段部9D,段部9Fに対応し、
以下、同様に、
シール部材は、実施形態の密閉オイルシール61に対応し、
デフケースのスプライン結合部は、デフケース側スプライン54に対応し、
トランスファ中空軸のスプライン部は、中空軸側スプライン53に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる4輪駆動装置に適用する実施形態を含むものである。
【0097】
特に、密閉オイルシール61の断面形状は、前述の実施形態の形状に限定されるものではなく、径内方側にリップ部が延びる形状であれば、L字状、T字形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態に係る4輪駆動装置のスケルトン図。
【図2】フロントデフ及びトランスファ周辺の断面図。
【図3】トランスアクスルケースとトランスファケースの結合部周辺の詳細断面図。
【図4】検査治具を差し込んだ際のトランスアクスルケースの詳細断面図。
【図5】密閉オイルシールの動きを説明する詳細断面図。
【図6】他の実施形態の図3に対応する詳細断面図。
【符号の説明】
【0099】
1…エンジン
6…自動変速機(変速機)
9…トランスアクスルケース
9C…嵌合孔部
9D…段部(拡径段部)
9F…段部(拡径段部)
11…デフケース
17R…ベアリング
21…トランスファケース
21F…端側円筒部
21G…インロー嵌合部
21H…延長部
23…トランスファ中空軸
54…デフケース側スプライン(デフケースのスプライン結合部)
53…中空軸側スプライン(トランスファ中空軸のスプライン部)
61…密閉オイルシール(シール部材)
61a…芯材
61b…リップ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸が車幅方向に延びるように配置したエンジンに変速機および差動装置を収容したトランスアクスルケースを結合し、該トランスアクスルケースにトランスファ装置を収容したトランスファケースを結合する4輪駆動装置において、
前記トランスアクスルケースに回転自在に支持され、前記出力軸と平行に延びるスプライン結合部を有するデフケースと、
前記トランスファケースに回転自在に支持され、前記出力軸と平行に延びて該デフケースのスプライン結合部と噛合するスプライン部を有するトランスファ中空軸と、
前記トランスファケースにおけるトランスアクスルケース結合側に、前記トランスファ中空軸と同芯状に形成された端側円筒部と、
前記トランスアクスルケースにおけるトランスファケース結合側に形成されて、該トランスファケースの端側円筒部を嵌合支持する嵌合孔部と、
該嵌合孔部のトランスファケース側に同芯状に形成された拡径段部と、
該拡径段部に装着され、前記端側円筒部をトランスファケースの嵌合孔部で嵌合支持した際に、内側径方向に延びるリップ部で端側円筒部の外周面に圧接するシール部材とを備えた
4輪駆動装置。
【請求項2】
前記シール部材を、芯金入りで断面略コ字状に形成し、
前記リップ部の先端を、軸方向で見てトランスアクスルケース側に向くように形成した
請求項1記載の4輪駆動装置。
【請求項3】
前記トランスファケースの端側円筒部に、トランスファケース外形より小径に形成したインロー嵌合部を設け、
該インロー嵌合部で、前記トランスアクスルケースの嵌合孔部に対してインロー嵌合すると共に、
前記シール部材のリップ部を、該インロー嵌合部の延長部に圧接させた
請求項1又は2記載の4輪駆動装置。
【請求項4】
前記拡径段部の軸方向長さを、前記シール部材の軸方向長さと略一致するように設定した
請求項1〜3記載の4輪駆動装置。
【請求項5】
前記拡径段部の隣接位置に、前記デフケースを軸支するベアリングを設けた
請求項1〜4記載の4輪駆動装置。
【請求項1】
出力軸が車幅方向に延びるように配置したエンジンに変速機および差動装置を収容したトランスアクスルケースを結合し、該トランスアクスルケースにトランスファ装置を収容したトランスファケースを結合する4輪駆動装置において、
前記トランスアクスルケースに回転自在に支持され、前記出力軸と平行に延びるスプライン結合部を有するデフケースと、
前記トランスファケースに回転自在に支持され、前記出力軸と平行に延びて該デフケースのスプライン結合部と噛合するスプライン部を有するトランスファ中空軸と、
前記トランスファケースにおけるトランスアクスルケース結合側に、前記トランスファ中空軸と同芯状に形成された端側円筒部と、
前記トランスアクスルケースにおけるトランスファケース結合側に形成されて、該トランスファケースの端側円筒部を嵌合支持する嵌合孔部と、
該嵌合孔部のトランスファケース側に同芯状に形成された拡径段部と、
該拡径段部に装着され、前記端側円筒部をトランスファケースの嵌合孔部で嵌合支持した際に、内側径方向に延びるリップ部で端側円筒部の外周面に圧接するシール部材とを備えた
4輪駆動装置。
【請求項2】
前記シール部材を、芯金入りで断面略コ字状に形成し、
前記リップ部の先端を、軸方向で見てトランスアクスルケース側に向くように形成した
請求項1記載の4輪駆動装置。
【請求項3】
前記トランスファケースの端側円筒部に、トランスファケース外形より小径に形成したインロー嵌合部を設け、
該インロー嵌合部で、前記トランスアクスルケースの嵌合孔部に対してインロー嵌合すると共に、
前記シール部材のリップ部を、該インロー嵌合部の延長部に圧接させた
請求項1又は2記載の4輪駆動装置。
【請求項4】
前記拡径段部の軸方向長さを、前記シール部材の軸方向長さと略一致するように設定した
請求項1〜3記載の4輪駆動装置。
【請求項5】
前記拡径段部の隣接位置に、前記デフケースを軸支するベアリングを設けた
請求項1〜4記載の4輪駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2006−290216(P2006−290216A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115458(P2005−115458)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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