説明

5−フルオロシトシン製剤およびその使用

本開示は、5-フルオロシトシンの徐放製剤を提供する。別の態様において、真菌症を治療する方法が提供される。この方法は、5-フルオロシトシンを含む組成物の真菌治療有効量を、それを必要とする被験体に投与するステップを含んでなる。さらに別の態様において、癌を治療する方法が提供される。この方法は、癌細胞中で5-フルオロシトシンを5-フルオロウラシルに変換し得るシトシンデアミナーゼの発現を誘導する発現ベクターの十分量と、5-フルオロシトシンを含む組成物の癌治療有効量とを、それを必要とする被験体に対して投与するステップを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年6月30日に出願された米国仮出願番号第61/077,142号に基づく優先権を主張し、該仮出願の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、5-フルオロシトシン製剤、ならびに真菌症、ニューモシスティス・カリニ肺炎および他の感染症または癌を治療するために5-フルオロシトシン製剤を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ピリミジン類似体である5-フルオロシトシン(5-FC)は、抗真菌活性を有する合成薬剤(アンコボン(Ancobon)(登録商標))であり、癌の治療に使用することもできる。アンコボン(登録商標)は薬剤の半減期が短い即時放出性カプセル剤であり、体から迅速に除去されるため、この薬剤の有効濃度を維持するためには1日に4〜16回の高頻度の投与が必要とされる。
【0004】
さらに、5-FCは血中薬剤濃度の最小トラフレベルまたはそれ以上において有効であり、アンコボンを頻回投与しても、その即時放出特性により、薬剤濃度がこの有効濃度を下回る期間がある。
【0005】
5-FCは、1957年に初めて合成された。この薬剤には固有の抗真菌能はないが、感受性真菌細胞によって取り込まれた後、5-フルオロウラシル(5-FU)に変換され、これがさらに代謝物に変換されて、その一部が真菌のRNAおよびDNA合成に干渉する。5-FCを用いた単剤療法は、耐性発現の頻度が高いため限界がある。5-FCは、アンホテリシンBと組み合わせて、重度の全身性真菌症(クリプトコッカス症、カンジダ症、クロモブラストミコーシスおよびアスペルギルス症など)を治療するために使用することができる。最近、5-FCは新たなアゾール系抗真菌剤と組み合わされており、癌治療に対する新たな方法においても重要な役割を果たしている。5-FCの重篤な副作用としては、肝毒性と骨髄抑制が挙げられる。投与時に一過性の悪心が起こるが、これは特定の投与中、投与を数分間に延ばすことにより改善することができる。胃腸症状も観察される。大部分の患者では、これらの副作用は濃度依存性であって、予測可能であり、おそらく5-FC濃度を100μg/ml未満に維持するように綿密にモニタリングすることにより回避可能であり、また薬剤投与の中止または用量の低減によって回復可能である。5-FCは経口投与後に十分に吸収され、脳を含む体組織中に十分に浸透し、主に腎臓によって排出される。腎不全の場合は、大幅な用量の調整を行わなければならない。5-FCの最も重大な薬剤間相互作用は、5-FCと腎毒性薬剤、特にアンホテリシンBとの同時投与によって起こる。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、真菌、癌、感染症および他の疾患の治療において有用なプロドラッグの持続放出/徐放(遅延放出と呼ばれる場合もある)製剤を提供する。徐放製剤は、投与頻度の低減および副作用の低減により投与の患者コンプライアンスを改善するために役立つ。本開示の徐放製剤は、現在入手可能な即時投与製剤(例えばアンコボン(登録商標))と比較して延長されたTmaxを与える。
【0007】
本開示は、徐放性5-FC製剤を提供する。適切に投与される場合、この徐放性5-FC製剤は、5-FCの最高血中濃度約1〜200μg/ml(例えば、約1〜100μg/ml、約20〜90μg/ml、約30〜80μg/ml、約40〜70μg/mlまたは約80〜120μg/ml)を与える。本開示により約1〜200μg/mlの間の任意の値が考えられることを理解されたい。1つの実施形態において、上記の5-FC濃度は、1投与当たり約1〜5gの徐放投与製剤を、1日3〜4回(例えば1日3回)投与することによって得られる。1つの実施形態において、上記の5-FC濃度は、本開示の徐放投与製剤を用いて1日1〜4回(約50〜200mg/kg/日)投与することによって得られる。1つの実施形態において、上記の5-FC濃度は、本開示の徐放投与製剤を用いて1日1〜3回(約50〜200mg/kg/日)投与することによって得られる。1つの実施形態において、上記の5-FC濃度は、本開示の徐放投与製剤を用いて1日1〜2回(約50〜250mg/kg/日)投与することによって得られる。1つの実施形態において、上記の5-FC濃度は、本開示の徐放投与製剤を用いて1日2〜4回(約50〜250mg/kg/日)投与することによって得られる。1つの実施形態において、上記の5-FC濃度は、本開示の徐放(すなわち徐放)投与製剤を用いて、1日2〜3回(約50〜250mg/kg/日)投与することによって得られる。1つの実施形態において、本開示の5-FC製剤は、数ヶ月間または数年間、被験体を毎月7日間治療するために用いられる。別の実施形態において、上記の用量は、約1〜5gの1日3〜4回投与であってよい。さらに別の実施形態において、本開示の5-FC製剤は、約2〜8g(例えば、約6〜7g)が1日2回以上投与される。他の実施形態において、上記の用量は、50〜200mg/kgで1日1回、25〜100mg/kgで1日2回、約16〜67mg/kgで1日3回、または12〜50mg/kgで1日4回投与される。この場合も先と同様に、1日当たり1〜250(例えば75〜175)mg/kgの間の任意の用量(所望の量および血清濃度を達成するように調整された、または腎機能の低下について調整された投与スケジュール)が含まれ得ることが認められる。さらに別の実施形態において、5-FC製剤は、徐放製剤での500mg 5-FCの単回投与後の摂食したヒト被験体において、以下の1つ以上を与える:(i)5-FCのCmax:約2.0μg/ml〜約10.0μg/ml(例えば、約2.0〜9.5μg/ml、約3.0〜8.0μg/ml、約3.0〜6.0μg/ml、約3.5〜8.0μg/ml、または約2.5〜4.5μg/ml);(ii)tmedian:約3時間以上(例えば、約3〜12時間、約3〜10時間、約4〜12時間、約4〜10時間、約5〜12時間、約5〜10時間、約6〜12時間、または約6〜10時間、または約6〜8時間);(iii)AUC:約20〜80μg*時間/mL(例えば、約25〜75μg*時間/mL、約30〜70μg*時間/mL、約30〜65μg*時間/mL、約30〜60μg*時間/mL、または約35〜65μg*時間/mL);および(iv)t1/2:約3〜8時間(例えば、約3〜7時間、約4〜8時間、または約4〜7時間)。1つの実施形態において、5-FCの用量は、被験体、組織または細胞内のシトシンデアミナーゼ活性に基づいて調整される。さらに別の実施形態において、5-FC製剤は、徐放製剤での100〜1000mg 5-FCの単回投与後の摂食したヒト被験体において、以下の1つ以上を与える:(i)5-FCのCmax:約2.0μg/ml〜約10.0μg/ml(複数回の500mg投与について直線的に測定);(ii)tmedian:約3時間以上(例えば、約3〜12時間、約3〜10時間、約4〜12時間、約4〜10時間、約5〜12時間、約5〜10時間、約6〜12時間、または約6〜10時間、または約6〜8時間);(iii)AUC:約20〜80μg*時間/mL(複数回の500mg投与について直線的に測定);および(iv)t1/2:約3〜8時間(例えば、約3〜7時間、約4〜8時間、または約4〜7時間)。1つの実施形態において、本開示は、5-FCを含む経口医薬組成物であって、該医薬組成物が改変放出型(例えばモノリシック(monolithic)固形錠剤型)であり、5-FCを被験体の上部胃腸管に長時間にわたって放出する、上記医薬組成物を提供する。この組成物は、親水性マトリックス形成性ポリマー(例えばカーボポール(例えばカーボポール71-G)、ポリビニルアセテートとポビドンのコポリマー(コリドン-SR(登録商標))、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、およびポリエチレンオキシド(PolyOx)の1種以上)をさらに含み得る。この親水性ポリマーは、上記組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセント(またはそれ以上)を構成し得る。1つの実施形態において、5-FCは、錠剤または用量当たり約100mg〜約1000mgの量で存在する。別の実施形態において、上記の組成物は、約275nmでのUV検出を伴う5-FC USP(米国薬局方)法を用い、USP II型溶解装置(パドル法)により、37℃において、900ml脱イオン水中にて75rpmで測定すると、約4〜12時間(例えば、約6〜10時間)以内に約80%を超える5-FCの放出速度を示す。さらに別の実施形態において、5-FCは上記の医薬組成物中に約500mgの量で存在し、この場合、当該医薬組成物を摂食した被験体(例えば摂食したヒト被験体)に経口投与した後、この組成物は以下の1つ以上を示す:(i)5-FCのCmax:約2.0μg/ml〜約10.0μg/ml(例えば、約2.0〜9.5μg/ml、約3.0〜8.0μg/ml、約3.0〜6.0μg/ml、約3.5〜8.0μg/ml、または約2.5〜4.5μg/ml);(ii)tmedian:約3時間以上(例えば、約3〜12時間、約3〜10時間、約4〜12時間、約4〜10時間、約5〜12時間、約5〜10時間、約6〜12時間、または約6〜10時間、または約6〜8時間);(iii)AUC:約20〜80μg*時間/mL(例えば、約25〜75μg*時間/mL、約30〜70μg*時間/mL、約30〜65μg*時間/mL、約30〜60μg*時間/mL、または約35〜65μg*時間/mL);および(iv)t1/2:約3〜8時間(例えば、約3〜7時間、約4〜8時間、または約4〜7時間)。さらに別の実施形態において、摂食した被験体に対する5-FC医薬組成物の経口投与(約150mg/Kg/日の投与スケジュール)の7日後、この組成物は(i)5-FCの平均血漿濃度:約20〜100μg/ml、約30〜80μg/ml、約20〜70μg/ml、約30〜80μg/ml、約5〜50μg/ml、約5〜40μg/ml、約5〜30μg/ml、または約5〜約20μg/mlを示す。さらに別の実施形態において、摂食した被験体に対する5-FC医薬組成物の経口投与(約175mg/Kg/日の投与スケジュール)の7日後、この組成物は、5-FCの平均血漿濃度:約40〜120μg/ml、約50〜110μg/ml、約50〜約110μg/ml、または約60〜約100μg/mlを示す。1つの実施形態において、摂食したヒトの総AUCは、5-FCの現在の即時放出製剤と生物学的に同等であるか、現在の即時放出製剤の約70〜120%の範囲内である。
【0008】
また本開示は、徐放用の5-FCを含む製剤を有する組成物も提供する。1つの実施形態において、この製剤は、約40〜50% w/wの5-フルオロシトシン、約10〜20% w/wの親水性ポリマー、約5〜15% w/wの結合剤、約10〜30% w/wの希釈剤、および約0.5〜1.5%の滑沢剤を含む。幾つかの実施形態において、上記の製剤を含む核錠は、約1〜3% w/wのコーティングをさらに含み得る。上記の製剤は、約275nmでのUV検出を伴う5-FC USP法を用い、USP II型溶解装置(パドル法)により、37℃において、900ml脱イオン水中にて75rpmで測定すると、約4〜約12時間以内に約80%を超えるin vitro溶解による5-FC放出速度を示す。別の実施形態において、摂食した被験体(例えば摂食したヒト被験体)に単回経口投与した後、この組成物は以下の1つ以上を示す:(i)5-FCのCmax:約2.0μg/ml〜約10.0μg/ml(例えば、約2.0〜9.5μg/ml、約3.0〜8.0μg/ml、約3.0〜6.0μg/ml、約3.5〜8.0μg/mL、または約2.5〜4.5μg/ml);(ii)tmedian:約3時間以上(例えば、約3〜12時間、約3〜10時間、約4〜12時間、約4〜10時間、約5〜12時間、約5〜10時間、約6〜12時間、または約6〜10時間、または約6〜8時間);(iii)AUC:約20〜80μg*時間/mL(例えば、約25〜75μg*時間/mL、約30〜70μg*時間/mL、約30〜65μg*時間/mL、約30〜60μg*時間/mL、または約35〜65μg*時間/mL);および(iv)t1/2:約3〜8時間(例えば、約3〜7時間、約4〜8時間、または約4〜7時間)。
【0009】
本開示は、5-フルオロシトシン(5-FC)を含む経口徐放製剤を提供し、該製剤は食物によりバイオアベイラビリティの増強を与え、投与後、摂食状態におけるAUCの、絶食状態におけるAUCに対する比が:(i)約1.5〜約3.0;(ii)約1.8〜約2.5;および(iii)約1.9〜約2.3からなる群から選択される値を有する。1つの実施形態において、この製剤は、少なくとも1種の親水性マトリックス形成性ポリマー(例えば、カーボポール、ポリビニルアセテートとポビドンベースのポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、およびポリエチレンオキシド(PolyOx)の1種以上)をさらに含む。さらに別の実施形態において、親水性マトリックス形成性ポリマーは、組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成する。他の実施形態において、5-FCは、約100mg〜約2000mgの量で存在する。さらに別の実施形態において、親水性ポリマーは組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成し、5-FCは約100mg〜約2000mgの量で存在する。1つの実施形態において、上記の組成物は、約275〜285nmでのUV検出を伴う5-FC USP法を用い、USP II型溶解装置(パドル法)により、37℃において、900ml水中にて75rpmで測定すると、約4〜約12時間以内に約80%を超える5-FCのin vitro溶解速度を示す。
【0010】
また本開示は、5-フルオロシトシンを含む経口徐放製剤であって、投与後、Cmax(摂食)/Cmax(絶食)比が、(i)約1.5〜約3.0および(ii)約1.8〜約2.4からなる群から選択される値を有する、上記経口徐放製剤も提供する。1つの実施形態において、この製剤は、少なくとも1種の親水性マトリックス形成性ポリマー(例えば、カーボポール、ポリビニルアセテートとポビドンベースのポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、およびポリエチレンオキシド(PolyOx)の1種以上)をさらに含む。さらに別の実施形態において、親水性マトリックス形成性ポリマーは、組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成する。他の実施形態において、5-FCは、約100mg〜約2000mgの量で存在する。さらに別の実施形態において、親水性ポリマーは組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成し、5-FCは約100mg〜約2000mgの量で存在する。1つの実施形態において、上記の組成物は、約275〜285nmでのUV検出を伴う5-FC USP法を用い、USP II型溶解装置(パドル法)により、37℃において、900ml水中にて75rpmで測定すると、約4〜約12時間以内に約80%を超える5-FCのin vitro溶解速度を示す。
【0011】
また本開示は、5-フルオロシトシンを含む経口徐放製剤であって、該製剤が、食物によりバイオアベイラビリティの増強を与え、投与後、摂食状態におけるAUC0-infが、フルシトシン即時放出型の絶食状態におけるAUCの約70%を超える、上記経口徐放製剤も提供する。1つの実施形態において、この製剤は、少なくとも1種の親水性マトリックス形成性ポリマー(例えば、カーボポール、ポリビニルアセテートとポビドンベースのポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、およびポリエチレンオキシド(PolyOx)の1種以上)をさらに含む。さらに別の実施形態において、親水性マトリックス形成性ポリマーは、組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成する。他の実施形態において、5-FCは、約100mg〜約2000mgの量で存在する。さらに別の実施形態において、親水性ポリマーは組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成し、5-FCは約100mg〜約2000mgの量で存在する。1つの実施形態において、上記の組成物は、約275〜285nmでのUV検出を伴う5-FC USP法を用い、USP II型溶解装置(パドル法)により、37℃において、900ml水中にて75rpmで測定すると、約4〜約12時間以内に約80%を超える5-FCのin vitro溶解速度を示す。さらに別の実施形態において、摂食状態におけるAUCは、フルシトシン即時放出型の絶食状態におけるAUCの約125%未満である。さらに他の実施形態において、摂食状態におけるAUCは、フルシトシン即時放出型についての絶食状態におけるAUCの約80〜100%である。さらに他の実施形態において、摂食状態におけるAUCは、フルシトシン即時放出型についての絶食状態におけるAUCの約83〜95%である。
【0012】
また本開示は、5-フルオロシトシンを含む経口徐放製剤であって、投与後、摂食状態におけるCmaxがフルシトシン即時放出型の絶食状態におけるCmaxの約90%未満となる、上記経口徐放製剤も提供する。1つの実施形態において、摂食状態におけるCmaxは、フルシトシン即時放出型の絶食状態におけるCmaxの約30%を超える。さらに他の実施形態において、摂食状態におけるCmaxは、フルシトシン即時放出型についての絶食状態におけるCmaxの約50〜85%である。1つの実施形態において、この製剤は、少なくとも1種の親水性マトリックス形成性ポリマー(例えば、カーボポール、ポリビニルアセテートとポビドンベースのポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、およびポリエチレンオキシド(PolyOx)の1種以上)をさらに含む。さらに別の実施形態において、親水性マトリックス形成性ポリマーは、組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成する。他の実施形態において、5-FCは、約100mg〜約2000mgの量で存在する。さらに別の実施形態において、親水性ポリマーは組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成し、5-FCは約100mg〜約2000mgの量で存在する。1つの実施形態において、この組成物は、約275〜285nmでのUV検出を伴う5-FC USP法を用い、USP II型溶解装置(パドル法)により、37℃において、900ml水中にて75rpmで測定すると、約4〜約12時間以内に約80%を超える5-FCのin vitro溶解速度を示す。
【0013】
本開示は、本開示の改変放出製剤(例えばモノリシック固形錠剤)を投与することによる、真菌感染症を治療する方法を提供する。
【0014】
また本開示は、本開示の医薬組成物を、哺乳動物の癌を治療するためのシトシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドと併用して投与することによる、哺乳動物の癌、感染症または他の疾患を治療する方法も提供する。1つの実施形態において、このポリペプチドは癌または腫瘍に局所的である(例えば、このポリペプチドは被験体中で全身的または広範囲に分布していない)。
【0015】
本開示は、本開示の医薬組成物製剤を、哺乳動物の癌を治療するためのシトシンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドと併用して投与することによる、哺乳動物の癌、感染症または他の疾患を治療する方法を提供する。この文脈において、ポリヌクレオチドは、天然または合成ヌクレオチドで構成されていてよく、オリゴヌクレオチドであってよく、RNAまたはDNAであってよく、また一本鎖または二本鎖であってよい。1つの態様において、このポリヌクレオチドは遺伝子送達系(GDS)を用いて送達される。遺伝子送達系は、標的癌細胞または他の疾患細胞もしくは疾患関連細胞に異種ポリヌクレオチドを送達することができる任意の方法または製剤である。遺伝子送達系の例は:金粒子などの不活性担体を用いた注射、エレクトロポレーション、流体力学的ストレス、ソノポレーション、または他の物理的方法によって送達されるポリヌクレオチド単独;合成非ウイルス送達系と共に製剤化され、注射または注入などの様々な経路によって送達されるポリヌクレオチドであり、これらは全て当業者に周知である(例えば、LiおよびHuang, Gene Therapy, 13:1313-1319, 2006を参照のこと)。上記のGDSは、本開示の医薬組成物を投与する前に哺乳動物の腫瘍細胞、他の疾患細胞または疾患関連細胞にポリヌクレオチド(1つまたは複数)を送達することができる。別の態様において、シトシンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドは、腫瘍または疾患組織に感染し得ることが知られている多様なサルモネラ(Salmonella)、クロストリジウム(Clostridium)またはリステリア(Listeria)細菌型などの細菌であるGDSによって送達される。別の態様において、シトシンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドは、ウイルスベクターまたはウイルス由来ベクターであるGDSによって送達される。ウイルスベクターは、複製ウイルスベクターまたは非複製ウイルスベクターであってよく、ウイルス粒子としてまたはウイルスベクターをコードするポリヌクレオチド(1つまたは複数)として送達することが可能であり、アデノウイルスベクター、麻疹ベクター、ヘルペスベクター、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含む)、ラブドウイルスベクター(水疱性口内炎(Vesicular Stomatitis)ウイルスベクターなど)、レオウイルスベクター、Seneca Valleyウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(動物ポックスベクターもしくはワクシニア由来ベクターなど)、パルボウイルスベクター(AAVベクターなど)、アルファウイルスベクター、または当業者に公知の他のウイルスベクターであってよい(例えば、「遺伝子医薬における概念(Concepts in Genetic Medicine)」 Boro DropulicおよびBarrie Carter編, Wiley, 2008, Hoboken, NJ.;「ヒト遺伝子治療の発展(The Development of Human Gene Therapy)」 Theodore Friedmann編, Cold Springs Harbor Laboratory Press, Cold springs Harbor, New York, 1999;「遺伝子および細胞治療(Gene and Cell Therapy)」 Nancy Smyth Templeton編, Marcel Dekker Inc., New York, New York, 2000;および「遺伝子治療:治療メカニズムと戦略(Gene Therapy: Therapeutic Mechanism and Strategies)」 Nancy Smyth TempletoneおよびDanilo D Lasic編, Marcel Dekker, Inc., New York, New York, 2000も参照のこと;これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0016】
1つの実施形態において、ウイルスベクターは、複製哺乳動物細胞のみに感染し得る複製能のあるレトロウイルスベクターであってよい。レトロウイルスは様々な方法で分類されているが、命名法は、この10年で標準化されている(World Wide Web (www)上のncbi.nlm.nih.gov/ICTVdb/ICTVdB/にあるICTVdB(The Universal Virus Database, v4)、および教科書「レトロウイルス(Retroviruses)」 Coffin, HughsおよびVarmus編, Cold Spring Harbor Press 1997を参照のこと;これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)。複製能のあるレトロウイルスベクターは、オルトレトロウイルスベクター、またはより典型的にはガンマレトロウイルスベクターを包含し得る。1つの態様において、複製能のあるレトロウイルスベクターは、シトシンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドの5'側に内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む。1つの実施形態において、シトシンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドは、レトロウイルスベクターのENVポリヌクレオチドの3'側にある。
【0017】
別の実施形態において、真菌症を治療する方法が提供される。この方法は、5-フルオロシトシンを含む持続放出製剤の真菌治療有効量を、それを必要とする被験体に投与するステップを含んでなる。
【0018】
さらに別の実施形態において、癌を治療する方法が提供される。この方法は、癌細胞中で5-FCを5-フルオロウラシル(5-FU)に脱アミノ化するシトシンデアミナーゼの発現を誘導する発現ベクターの十分量と、5-フルオロシトシンを含む徐放製剤の癌治療有効量とを、それを必要とする被験体に対して、約1〜200μg/ml(例えば、約30〜120μg/ml、20〜90μg/ml、30〜80μg/ml、および典型的には約40〜70μg/ml)の血清濃度が達成されるように投与するステップを含んでなる。本開示により約1〜200μg/mlの間の任意の値が考えられることを理解されたい。1つの実施形態においては、本開示の徐放製剤を用いて1日1〜4回(約50〜250mg/kg/日)投与を行い、上記の5-FCの血清濃度が得られる。他の実施形態において、この用量は、1日1回 50〜200mg/kgで、1日2回 25〜100mg/kgで、1日3回 約16〜67mg/kgで、または1日4回 12〜50mg/kgで投与される。この場合も先と同様に、1日当たり1〜200(例えば10〜100)mg/kgの間の任意の用量(所望の量および血清濃度を達成するように調整された投与スケジュール)が含まれ得ることが認められる。1つの実施形態において、本開示の5-FC製剤は、数ヶ月間または数年間、被験体を毎月7日間治療するために用いられる。別の実施形態において、この用量は、約1〜5gの1日3〜4回投与であってよい。さらに別の実施形態において、本開示の5-FC製剤は、約2〜8g(例えば6〜7g)が1日2回以上で投与される。1つの態様において、5-FCの用量は、被験体、組織または細胞内のシトシンデアミナーゼ活性に基づいて調整される。例えば、より有効な転写もしくは翻訳またはシトシンデアミナーゼ活性の改善を与えるポリヌクレオチドを作製することができる。このような場合、標準的なまたは比較的有効性の低いシトシンデアミナーゼの投与を受ける被験体と比べて低用量の5-FCを被験体に与えて、5-FCの有効治療量を達成することができる。
【0019】
別の実施形態において、本開示は、感染細胞または他の疾患細胞(細胞増殖性障害など)を有する被験体を治療する方法を提供する。この方法は、a)レトロウイルスGAGタンパク質をコードする核酸配列;レトロウイルスPOLタンパク質をコードする核酸配列;レトロウイルスエンベロープをコードする核酸配列;レトロウイルス(例えばオルトレトロウイルス)ポリヌクレオチド配列または異種プロモーター配列の5'末端もしくは3'末端または5'末端および3'末端に長い末端反復(Long-Terminal Repeat(LTR))配列を含むレトロウイルスポリヌクレオチド配列;シトシンデアミナーゼ活性を含むポリペプチドをコードする異種核酸配列に機能的に連結した内部リボソーム侵入部位(IRES)を含むカセットであって、3'LTR配列の5'側および/またはレトロウイルスエンベロープをコードする配列の3'側に位置する上記カセット;標的細胞における逆転写、パッケージングおよび組込みのためのシス作用配列、を含む複製能のあるレトロウイルスの治療有効量を被験体に接触させるステップ;およびb)細胞増殖性障害(例えば、脳腫瘍、肺癌、結腸・直腸癌、乳癌、前立腺癌、尿路癌、子宮癌、リンパ腫、口腔癌、膵臓癌、白血病、黒色腫、胃癌および卵巣癌、HIV感染細胞集団、他のウイルスまたは細菌感染細胞集団、または自己免疫細胞集団)の部位において、シトシンデアミナーゼによって毒性薬物に変換される5-FCの有効量を被験体に投与するステップ、を含んでなる。別の実施形態において、複製能のあるレトロウイルスは、組織特異的プロモーター(例えばプロバシン、組換えプロバシンまたは二重アンドロゲン応答エレメントプロモーターなどのアンドロゲン応答プロモーター)を含んでいてよく、このプロモーターは、上記のレトロウイルスが、このプロモーターが活性である細胞中でのみ複製することができるようにさせる。別の実施形態において、複製能のあるレトロウイルスは、IRESエレメントを含まない。別の実施形態において、複製能のあるレトロウイルスは、このレトロウイルスが、癌性の細胞においてのみ、または主に癌性の細胞において複製することができるようにさせるマイクロRNA標的配列を含み得る。別の実施形態において、レトロウイルスは、造血細胞、肝細胞または筋細胞などの特定の組織に特異的なmiRNAの「標的」配列を含むことにより組織特異的となり(BellおよびKirin, Nature Biotech., 26:1347, 2008、参照により本明細書中に組み込まれる)、このため上記のウイルスはこれらの組織中で発現しない。あるいはまた、このウイルスは、普遍的に発現されるが腫瘍細胞(例えばlet-7)中では発現が低い標的を含み得る。
【0020】
本開示は、癌、感染症、過剰増殖性疾患または真菌症を治療するための組成物および方法を提供する。1つの実施形態において、この方法は、少なくとも1〜2日間以内に約1〜200(例えば10〜100)μg/mlの血清濃度を得るのに十分な5-FCの初回負荷用量と、約1〜200μg/mlの血清濃度を維持するのに十分な5-FCの複数回の徐放用量とを含む。複数回の徐放用量は、典型的には約1〜200μg/ml(例えば、約30〜120μg/ml、20〜90μg/ml、30〜80μg/mlおよび典型的には約40〜70μg/ml)の5-FCの最高血中濃度を得るように投与される。本開示により約1〜200μg/mlの間の任意の値が考えられることを理解されたい。1つの実施形態において、5-FCの血清濃度は、本開示の投与製剤を用いて1日1〜4回投与する(約50〜250mg/kg/日を分割量で与える)ことによって得られる。他の実施形態において、上記の用量は、約50〜200mg/kgで1日1回、約25〜100mg/kgで1日2回、約16〜67mg/kgで1日3回、または約12〜50mg/kgで1日4回投与される。この場合も先と同様に、1日当たり1〜250(例えば10〜100)mg/kgの間の任意の用量(所望の量および血清濃度を達成するように調整された投与スケジュール)が含まれ得ることが認められる。別の実施形態において、複数回の徐放用量は、定常状態の濃度または初回負荷用量の血中濃度曲線下面積の75%〜125%の血清濃度を維持する。
【0021】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細を、添付図面および下記の説明に示す。他の特徴、目的および利点は、説明、図面および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1Aは、pH7の溶解媒体におけるプロトタイプ製剤の溶解速度を示す。
【図1B】図1Bは、pH7の溶解媒体におけるプロトタイプ製剤の溶解速度を示す。
【図1C】図1Cは、pH7の溶解媒体におけるプロトタイプ製剤の溶解速度を示す。
【図1D】図1Dは、pH7の溶解媒体におけるプロトタイプ製剤の溶解速度を示す。
【図2】図2は、500mg 5-フルオロシトシンの単回投与を受けた雄犬についての平均濃度を示す(線形プロット)。
【図3】図3は、500mg 5-フルオロシトシンの単回投与を受けた雄犬についての平均濃度を示す(片対数プロット)。
【図4】図4は、500mg 5-FC XR TIDの投与を受けた雄犬についての平均濃度を示す(線形プロット)。
【図5】図5は、食物と共に500mg 5-FC TIDの投与を受けたイヌについての予測濃度および実測濃度を示す(線形プロット)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。従って、例えば「薬剤(an agent)」への言及は複数のかかる薬剤を包含し、「癌細胞(the cancer cell)」への言及は1以上の癌細胞に対する言及を包含する、などである。
【0024】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または均等の方法および材料を、本明細書に開示される方法および組成物の実施において使用することができるが、例示的方法、装置および材料は本明細書に記載されている。
【0025】
さらに、「または(or)」の使用は、特に指定のない限り「および/または(and/or)」を意味する。同様に、「含む(comprise)、(comprises)、(comprising)、(include)、(includes)および(including)」は互換可能であり、限定を意図するものではない。
【0026】
様々な実施形態の記載において用語「含む(comprising)」が使用される場合、当業者は一部の特定の場合において、「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」または「〜からなる(consisting of)」という語を用いて実施形態を代替的に記載することができると理解するであろうということを、さらに理解されたい。
【0027】
上記のおよび本明細書全体を通して論じられる刊行物はいずれも、本出願の出願日前の開示内容についてのみ提供される。本明細書は、先の開示を理由として、本発明者らがかかる開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されてはならない。
【0028】
「曲線下面積(AUC)」という用語は、血漿中薬剤濃度対時間のプロットを指す。AUCは通常、0から無限大までの時間間隔について与えられる。AUC(0〜無限大)は、吸収速度に関係なく、体に吸収された薬剤の総量を表す。これは、同用量の2種類の製剤が同用量の薬剤を体に放出するか否かを決定しようとする場合に有用である。徐放剤のAUCと比較した非持続放出剤形のAUCは、バイオアベイラビリティ測定の基準としての役割を果たす。
【0029】
「パーセントバイオアベイラビリティ」という用語は、非持続放出形態で送達された同じ薬剤と比較した、徐放製剤から吸収された薬剤の割合を表す。これは、典型的には、非持続放出製剤としての同じ薬剤に関するAUCと対比した徐放製剤のAUCから計算される。
【0030】
本出願において使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬剤と比べて細胞に対する細胞毒性が低く、且つ酵素的に活性化されるかより活性な親型に変換され得る薬剤活性物質の前駆体型または誘導体型を指す。例えば、Wilman, 「癌化学療法におけるプロドラッグ(Prodrugs in Cancer Chemotherapy)」 Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 第615回ベルファスト会議(1986);Stellaら, 「プロドラッグ:標的化薬剤送達への化学的アプローチ(Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery)」 Directed Drug Delivery, Borchardら(編), pp. 247-267, Humana Press (1985);およびDachsら 「癌の遺伝子指向性酵素プロドラッグ治療のための研究から臨床まで(From bench to bedside for gene-directed enzyme prodrug therapy of cancer)」 Anticancer Drugs 16:349-359 2005を参照のこと。本開示のプロドラッグとしては、限定するものではないが、硫酸塩含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸改変プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、場合により置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは場合により置換された フェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性な細胞毒性のない薬剤に変換し得る5-フルオロシトシンプロドラッグおよび他の5-フルオロウリジンプロドラッグが挙げられる。本開示において使用されるプロドラッグ型に誘導体化し得る細胞毒性薬剤の例としては、限定するものではないが、上記の化学療法剤が挙げられる。
【0031】
In vivoで変換されて、本開示の5-FCの生物学的、薬学的または治療的活性型を与える任意の化合物はプロドラッグである。プロドラッグの様々な例および形態は、当技術分野において周知である。プロドラッグの例は、とりわけ、「プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)」 H. Bundgaard編, (Elsevier, 1985); Methods in Enzymology, Vol. 42, pp. 309-396, K. Widderら編(Academic Press, 1985);A Textbook of Drug Design and Development, Krosgaard-LarsenおよびH. Bundgaard編, 第5章, 「プロドラッグの設計と応用(Design and Application of Prodrugs)」 H. Bundgaard著, pp. 113-191, 1991);H. Bundgaard, Advanced Drug Delivery Reviews, Vol. 8, p.1-38 (1992);H. Bundgaardら, Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 77, p. 285 (1988);およびNogrady (1985) Medicinal Chemistry A Biochemical Approach, Oxford University Press, New York, 388-392頁)に見出される。5-FCのプロドラッグの例としては、限定するものではないが、5-フルオロシチジン-一リン酸、二リン酸もしくは三リン酸;5-フルオロシチジン;5-フルオロ-2'デオキシフルオロシトシン;シチジンまたは1、2もしくは3リン酸を有するシチジンが挙げられる。また光活性化可能な5-FC、その塩またはエステルも考えられる。かかる光活性化可能な化合物は、例えば紫外線(腫瘍部位内に注入されて遠隔的または一時的に活性化させることができる光を含む)の照射で切断可能な感光性リンカーを含み得る。
【0032】
本明細書で使用される用語「Cmax」は、薬剤投与後の最高観測血漿濃度を意味する。
【0033】
本明細書で使用される用語「Tmax」は、最高観測血漿濃度の時点を意味する。
【0034】
本明細書で使用される用語「Tmedian」は、AUCの1/2に達する時点を意味する。
【0035】
薬剤の血漿半減期(T1/2)は、血漿濃度を半減させる(例えば100mg/Lから50mg/Lに減少させる)ために必要な時間である。
【0036】
持続放出もしくは遅延放出(SR)、徐放(ER、XR、もしくはXL)、時間放出もしくは時限放出、制御放出(CR)、または連続放出(CR)丸薬は、徐々に溶解して長時間にわたって薬剤を放出するように製剤化された錠剤またはカプセル剤である。本出願において、「持続放出」または「徐放」という用語は、これらの種類の全ての製剤を表す。持続放出錠剤またはカプセル剤の利点は、これらが同じ薬剤の即時放出製剤よりも服用頻度を低減させ得る場合が多く、またこれらが極めて均一な血流中の薬剤濃度を与える点である。持続放出錠剤および製剤は、活性成分が不溶性物質のマトリックス中または小胞コンパートメント中に埋め込まれまたはカプセル化されて、溶解する薬剤がマトリックスから徐々に送達され、または小胞コンパートメントの崩壊もしくは分解によって送達されるように製剤化される。一部のSR製剤では、マトリックスが物理的に膨潤してゲルを形成し、これにより薬剤は必然的に最初にマトリックス中で溶解し、その後外面を通って出ていくこととなる。
【0037】
現在市販されている5-FCは、経口投与後に血流中で2.4〜4.8時間の半減期を有する即時放出性カプセル剤(アンコボン(登録商標)、250mgカプセル剤と500mgカプセル剤)である。このため、治療濃度を維持するため、患者に1日4回(QID)投与する必要がある。長期投与中の、投与の2時間後の公知の治療濃度は、クリプトコッカス感染(criptococcal infection)については血清中で30〜80μg/ml(あるいはカンジダ(Candida)については40〜60μg/ml)であることが推奨されている(これが最高濃度である)。毒性は、通常は100μg/mlを超えた場合に生じる(Vermesら, Chemotherapy, pp. 86-94, 2000)。
【0038】
5-FCの薬物動態は、広範囲に研究および検討されている。5-FCは、極めて迅速に且つほぼ完全に吸収される:経口投与後、76〜89%が生物学的に利用可能である。腎機能が正常な患者では、血清中および他の体液中で1〜2時間以内に最高濃度に達する。5-FCは、サイズが小さく水溶性であるため、また血清タンパク質にそれほど多くは結合されないという事実から、腎臓で迅速に除去される。5-FCは、肝臓では最小限にしか代謝されない。腎排出は糸球体濾過を介し、尿細管再吸収または尿細管分泌は起こらない。血清中の5-FCの半減期は、腎機能が正常な患者では約2〜5時間だが、重度の腎不全に罹患している患者では85時間まで延長される可能性がある。
【0039】
経口投与後のバイオアベイラビリティは、経口投与後と静脈投与後の血清濃度の曲線下面積を比較することによって評価されている。結果は、経口投与による吸収が76%〜89%であることを示した。正常な被験体に2グラムの経口用量を投与すると2時間以内に30〜40μg/mlの最高血清濃度に達した。他の研究では、アンホテリシンBと組み合わせた5-FCの6週間レジメン(150mg/kg/日を6時間毎に分割用量で与える)を受けた腎機能が正常な患者では、投与の1〜2時間後の平均血清濃度が約70〜80μg/mlであることが示された。大部分の5-FCは、ほとんど尿細管再吸収されることなく糸球体濾過によって腎臓を介して排出される。5-FCは、腸バクテリアシトシンデアミナーゼにより(本開示の異種ウイルスベクターの非存在下で)脱アミノ化されて5-フルオロウラシルになる。5-FCに対する5-フルオロウラシルの血中濃度曲線下面積(AUC)率は約4%である。
【0040】
5-FCの半減期は、腎不全の患者では延長される;腎摘出された患者または無尿患者における平均半減期は85時間(範囲:29.9〜250時間)であった。5-FCの排出速度定数とクレアチニンクリアランスとの間には線形相関が見られた。クレアチニンクリアランスが40mL/分超の成人患者では、即時放出(IR)5-FCの、6時間毎に37.5mg/kgの標準用量を一般的に用いる。クレアチニンクリアランスが20〜40mL/分の場合、推奨用量は12時間毎に37.5mg/kgである。クレアチニンクリアランスが20mL/分未満の患者では、5-FCの用量は1日1回約37.5 mg/kgである。
【0041】
In vitro研究では、血中で見られる治療濃度範囲にわたって2.9%〜4%の5-FCがタンパク質に結合していることが示された。5-FCは血液脳関門を容易に越え、脳脊髄液中で臨床的に有意な濃度に達する。
【0042】
このため、5-フルオロシトシンを用いる従来の治療は、薬剤が体から迅速に除去されるため、1日の投与量を多くする必要がある。典型的な従来のヒト投与は、1日当たり5-フルオロシトシン約8グラムであり、通常は1日4回等用量で投与する(例えば用量当たり約2グラムで、この用量は、悪心を回避するため15分間毎に約250mgとして服用される)。このような真菌感染症の治療、または癌治療との組み合わせを必要とする被験体のコンプライアンスを得るのは困難である。
【0043】
本開示は、徐放用製剤中に5-FCを含む組成物(5-FC-SR;5-FC-ERまたは5-FC-XRと互換的に使用される)を提供する。5-FC-ER組成物は、1種以上の親水性化合物、1種以上の結合剤、および1種以上の医薬希釈剤を含む。5-FC-ERは、摂食したヒト被験体に500mg FCの単回用量で投与すると以下の特徴の1つ以上を与える:(i)5-FCのCmax:約2.0μg/ml〜約10.0μg/ml(例えば、約2.0〜9.5μg/ml、約3.0〜8.0μg/ml、約3.0〜6.0μg/ml、約3.5〜8.0μg/ml、または約2.5〜4.5μg/ml);(ii)tmedian:約3時間以上(例えば、約3〜12時間、約3〜10時間、約4〜12時間、約4〜10時間、約5〜12時間、約5〜10時間、約6〜12時間、または約6〜10時間、または約6〜8時間);(iii)AUC:約20〜80μg*時間/mL(例えば、約25〜75μg*時間/mL、約30〜70μg*時間/mL、約30〜65μg*時間/mL、約30〜60μg*時間/mL、または約35〜65μg*時間/mL);および(iv)t1/2:約3〜8時間(例えば、約3〜7時間、約4〜8時間、または約4〜7時間)。1つの実施形態において、この製剤は、摂食した被験体に投与すると、約4〜約8時間胃内に留まる。
【0044】
5-FCは、5-FC-ER中で均一に分散し得る。幾つかの実施形態において、5-FCは、約100mg〜約2000mg;約100mg〜約1500mg;約100mg〜約1200mg;約100mg〜約1000mg;約100mg〜約900mg;約100mg〜約800mg;約100mg〜約700mg;約100mg〜約600mg;約100mg〜約500mg;または約100mg〜約250mgの量で組成物中に存在する。幾つかの実施形態において、5-FCは、約200mg〜約2000mgの量で組成物中に存在する。別の実施形態において、5-FCは、約250mg、500mg、750mg、1000mg、1250mg、1500mg、1750mgまたは2000mgの量で組成物中に存在する。
【0045】
1つの実施形態において、1種以上の親水性化合物は5-FC-ER中に約5重量%〜約40重量%の量で存在し;1種以上の結合剤は5-FC-ER中に約0.5重量%〜約30重量%の量で存在し;さらに1種以上の医薬希釈剤は5-FC-ER中に約10重量%〜約40重量%の量で存在する。別の実施形態において、1種以上の親水性化合物は5-FC-ER中に約8重量%〜約31重量%の量で存在し;1種以上の結合剤は5-FC-ER中に約5重量%〜約25重量%の量で存在し;さらに1種以上の医薬希釈剤は5-FC-ER中に約15重量%〜約30重量%の量で存在する。別の実施形態において、1種以上の親水性化合物は5-FC-ER中に約10重量%〜約20重量%の量で存在し;1種以上の結合剤は5-FC-ER中に約10重量%〜約25重量%の量で存在し;1種以上の医薬希釈剤は5-FC-ER中に約15重量%〜約30重量%の量で存在する。幾つかの実施形態において、1種以上の親水性化合物は5-FC-ER中に約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約22重量%、約24重量%、約26重量%、約28重量%、または約30重量%の量で存在し;1種以上の結合剤は5-FC-ER中に約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、または約22重量%の量で存在し;1種以上の医薬希釈剤は5-FC-ER中に約10重量%、約20重量%、約30重量%または約40重量%の量で存在する。1つの実施形態において、1種以上の親水性化合物は5-FC-ER中に約8重量%、約12重量%、または約20重量%の量で存在し;1種以上の結合剤は5-FC-ER中に約5重量%、約10重量%、または約15重量%の量で存在し;1種以上の医薬希釈剤は5-FC-ER中に約10重量%、約25重量%、または約30重量%の量で存在する。
【0046】
5-FC-ERは、1種以上の親水性化合物を含む。この親水性化合物は、液体に曝されると5-FCを持続速度で放出するゲルマトリックスを形成する。ゲルマトリックスからの5-FCの放出速度は、胃腸管内でのゲルマトリックス成分と水相成分との間の薬剤の分配係数に依存する。本開示の組成物では、5-FCと親水性化合物との重量比は、一般に、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1または約6:1の範囲内である。
【0047】
親水性ポリマーマトリックス形成性化合物は、当技術分野において親水性であることが知られている任意の化合物である。例示的親水性化合物としては、限定するものではないが、ガム、セルロースエーテル、アクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、タンパク質由来化合物、およびこれらの混合物が挙げられる。例示的ガムとしては、限定するものではないが、ヘテロ多糖ガムおよびホモ多糖ガム(キサンタン、トラガカント、ペクチン、アカシア、カラヤ、アルギン酸、寒天、グアー、ヒドロキシプロピルグアー、カラギーナン、ローカストビーンガム、およびジェランガムなど)が挙げられる。例示的セルロースエーテルとしては、限定するものではないが、ヒドロキシアルキルセルロースおよびカルボキシアルキルセルロースが挙げられる。幾つかの実施形態において、セルロースエーテルとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびこれらの混合物が挙げられる。例示的アクリル樹脂としては、限定するものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレートおよびメチルメタクリレートのポリマーおよびコポリマーが挙げられる。幾つかの実施形態において、親水性化合物はガムである。他の実施形態において、親水性化合物はヘテロ多糖ガムである。他の実施形態において、親水性化合物はキサンタンガムまたはその誘導体である。キサンタンガムの誘導体としては、限定するものではないが、例えば、脱アシル化キサンタンガム、キサンタンガムのカルボキシメチルエステル、およびキサンタンガムのプロピレングリコールエステルが挙げられる。特定の実施形態において、親水性ポリマーマトリックス形成性化合物は、カーボポール71G、コリドン SRまたはこれらの組み合わせである。
【0048】
別の態様において、5-FC-ERは、1種以上の結合剤をさらに含む。1つの実施形態において、結合剤は、液体の存在下で親水性化合物を架橋してゲルマトリックスを形成することができる化合物である。本明細書中で使用される「液体」は、例えば、胃腸液およびin vitro溶解試験に用いられるような水溶液を包含する。5-FC-ERは、通常、結合剤を約3重量%〜約20重量%の量で含む。1つの実施形態において、5-FC-ERは、通常、結合剤を約3重量%〜約10重量%の量で含む。幾つかの実施形態において、1種以上の結合剤は、5-FC-ER中に、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または約13重量%の量で存在する。1つの実施形態において、5-FC-ERは、結合剤を約6重量%〜約7重量%(およびこれらの間の任意の数値)の量で含む。
【0049】
例示的結合剤としては、ホモ多糖が挙げられる。例示的ホモ多糖としては、限定するものではないが、ガラクトマンナンガム(グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC;例えばクルセル(Klucel)EXF)およびローカストビーンガムなど)が挙げられる。他の実施形態において、結合剤は、アルギン酸誘導体、HPCまたは微結晶性セルロース(MCC)である。
【0050】
幾つかの実施形態において、5-FC-ERが1種以上の親水性化合物と1種以上の結合剤とを含む場合、親水性化合物と結合剤との重量比は、約1:9〜約9:1、約1:8〜約8:1、約1:7〜約7:1、約1:6〜約6:1、約1:5〜約5:1、約1:4〜約4:1、約1:3〜約3:1、または約1:2〜約2:1である。
【0051】
5-FC-ERが1種以上の親水性化合物と1種以上の結合剤とを含む場合、5-FCと、1種以上の親水性化合物および1種以上の結合剤の合計との重量比は、約1:1〜約12:1、約1:1〜約4:1、約1:1〜約3:1、または約1:1〜約2:1である。
【0052】
5-FC-ERは、1種以上の当技術分野で公知の医薬希釈剤をさらに含み得る。例示的医薬希釈剤としては、限定するものではないが、単糖、二糖、多価アルコールおよびこれらの混合物が挙げられる。幾つかの実施形態において、医薬希釈剤としては、例えば、デンプン、マンニトール、ラクトース、デキストロース、スクロース、微結晶性セルロース、ソルビトール、キシリトール、フルクトースおよびこれらの混合物が挙げられる。幾つかの実施形態において、医薬希釈剤は水溶性である。水溶性医薬希釈剤の非限定的な例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、またはこれらの混合物が挙げられる。他の実施形態において、医薬希釈剤は非水溶性である。非水溶性医薬希釈剤の非限定的な例としては、リン酸二カルシウムまたはリン酸三カルシウムが挙げられる。幾つかの実施形態において、医薬希釈剤と親水性化合物との重量比は、通常、約1:1〜約4:1、約1:1〜約3:1、約1:1〜約2:1およびこれらの間の任意の範囲である。幾つかの実施形態において、医薬希釈剤と親水性化合物との重量比は、通常、約1:1〜約2:1である。
【0053】
幾つかの実施形態において、5-FC-ERは、通常、1種以上の医薬希釈剤を約15%〜約30%の量で含む。幾つかの実施形態において、5-FC-ERは、1種以上の医薬希釈剤を、約15重量%、約20重量%、約25重量%、または約30重量%の量で含む。
【0054】
他の実施形態において、本明細書に記載する組成物にコーティング(例えばオパドライ(Opadry)(登録商標))を添加してもよいが、これは必要条件ではない。
【0055】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載する組成物は、第2の親水性化合物をさらに含む。
【0056】
5-FCの徐放製剤は、経口投与可能な固形製剤である。経口固形製剤の非限定的な例としては、マトリックス錠剤、保護コーティング錠剤ならびに複数の顆粒を含む錠剤およびカプセル剤が挙げられる。幾つかの実施形態において、錠剤は親水性コーティングを有する。
【0057】
大部分の活性薬剤成分について、所望の治療効果を生じさせようとする場合に標的組織に到達させなければならない当該活性薬剤の治療濃度がある。通常、徐放医薬剤形は、活性薬剤成分が、患者の体内で一度に少しずつ長期間にわたって吸収および/または使用のために利用され得るようにする。この活性薬剤が患者の体によって代謝されあるいは除去される場合、患者の標的組織において当該薬剤成分がかかる最小治療濃度に到達するまでに相当な時間がかかる可能性がある。これを克服するため、活性薬剤成分の初期急速放出用量を与えてかかる最小治療濃度を迅速に達成することが有用であり得る。標的組織においてかかる最小治療濃度を超えると、徐放剤形は、標的組織から代謝されあるいは除去される活性薬剤の量を補うのに十分な量の活性薬剤成分を送達することによってこの最小治療濃度を維持することができる。
【0058】
本開示の別の実施形態は、混合徐放/急速放出医薬カプセル剤であり、これは患者の標的組織中で活性薬剤の最小治療濃度を迅速に達成するための活性薬剤成分の急速放出と、当該標的組織中で長期間にわたって活性薬剤をかかる最小治療濃度以上に維持するするための活性薬剤成分の徐放用量の両方を与えることができる。本開示の混合徐放/急速放出カプセル剤の急速放出部分は、カプセル殻に別個のインタクトな急速放出部分用の投与単位形態(例えばペレット剤、錠剤、小型カプセル剤など)を含めることによって達成することができる。
【0059】
1つの実施形態において、本開示の経口投与用の徐放/急速放出医薬錠剤またはカプセル剤は、少なくとも以下の2つの層を含み得る:(1)第1の粒子混合物の第1層(この第1の粒子混合物は本明細書中の上記の徐放性組成物と同じである);および(2)上記の第1の粒子混合物と同じ活性薬剤成分を含む第2の粒子混合物の第2層。混合徐放/急速放出医薬錠剤の第1層は、本明細書の上記の徐放医薬組成物と同様に活性薬剤成分の徐放を与える。第2層は、活性薬剤成分を含む第2の粒子混合物(この第2の粒子混合物は、層が胃腸管中で溶解すると迅速に分散するように製剤化されている)を与えることによって活性薬剤成分の急速放出部分を提供する。第2の混合物は、胃腸管においてかかる迅速な分散を達成するように製剤化された活性薬剤成分と、1種以上の医薬担体との混合物である。
【0060】
本開示の混合徐放/急速放出錠剤は、必要に応じて、異なる活性薬剤成分を本明細書中の上記の第1の粒子混合物および第2の粒子混合物に組み込むことにより、第1の活性薬剤成分の急速放出と第2の活性薬剤成分の徐放とを投与単位形態で提供することができる。
【0061】
本開示の混合徐放/急速放出錠剤は、胃腸管部分で溶解して、そこで急速放出(第2の粒子)混合物の活性薬剤成分がすぐに利用、吸収され、あるいはその活性が利用される標的組織に運ばれるように作製されている。
【0062】
錠剤またはカプセル剤は、多層設計を含むことができる。幾つかの実施形態において、5-FC組成物および製剤は、1つの錠剤またはカプセル剤中に即時放出層と徐放層と含み得る。このような即時放出(IR)/徐放(ER)治療の組み合わせは、5-FCプロファイルを改善するために役立つであろう。即時放出層に含まれる5-FCは、通常、約1mg〜約500mg(例えば約200mg)の量で存在する。
【0063】
幾つかの実施形態において、上記の多層剤形は、医薬崩壊剤をさらに含む。崩壊剤は、即時放出層からの5-FCの溶解および吸収を促進する。医薬崩壊剤の非限定的な例としては、クロスカルメロースナトリウム、グリコール酸デンプン、クロスポビドン、および非修飾デンプンが挙げられる。1つの実施形態において、崩壊剤は、剤形の第1層(すなわち即時放出層)中にある。
【0064】
幾つかの実施形態において、本開示の多層錠剤は、最初に即時放出層混合物と徐放層混合物を別々に調製することによって調製する。徐放性核錠は通常の方法で圧縮し、マトリックス錠剤核またはマトリックス錠剤層を生成する。本開示の即時放出層は、最初に5-FCを1種以上の希釈剤(例えば微結晶性セルロース)と混合することによって調製する。その後この混合物を、場合により1種以上の崩壊剤と混合する。この混合物をステアリン酸マグネシウムと混合する。最後に、即時放出層混合物と徐放層混合物を圧縮して多層(例えば二層)錠剤とする。別の実施形態において、即時放出層を徐放性核錠の周囲にコーティングすることができる。
【0065】
適切に投与される場合(例えば50〜250mg/Kg/日の毎日投与(少なくとも5半減期間、1〜4回に分割されて投与される))、5-FC-ER製剤は、5-FCの平均血中濃度約1〜200μg/ml(例えば、約20〜120μg/ml、30〜80μg/ml、または約40〜70μg/ml)を与える。本開示により約1〜200μg/mlの間の任意の値が考えられることを理解されたい。1つの実施形態において、上記の5-FC濃度は、本開示の徐放投与製剤を用いて1日1〜4回(約50〜200mg/kg/日)投与することによって得られる。他の実施形態において、この用量は、1日1回 50〜200mg/kgで、1日2回 25〜100mg/kgで、1日3回 約16〜67mg/kgで、または1日4回 12〜50mg/kgで投与される。この場合も先と同様に、1日当たり1〜200(例えば10〜100)mg/kgの間の任意の用量(所望の量および血清濃度を達成するように調整された投与スケジュール)が含まれ得ることが認められる。1つの実施形態において、5-FCの用量は、被験体、組織または細胞内のシトシンデアミナーゼ活性に基づいて調整される。
【0066】
本開示は、5-FCを含む経口医薬組成物であって、該医薬組成物が改変放出型(例えばモノリシック固形錠剤、ペレット剤、顆粒剤など)であり、5-FCを被験体の上部胃腸管に長時間にわたって放出する、上記医薬組成物を提供する。この組成物は、親水性ポリマー(例えばカーボポール(例えばカーボポール71-G)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、コリドン、およびポリエチレンオキシド(PolyOx)の1種以上)をさらに含み得る。この親水性ポリマーは、上記組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成し得る。1つの実施形態において、5-FCは、錠剤または用量当たり約100mg〜約2000mgの量で存在する。別の実施形態において、上記の組成物は、約275nmでのUV検出を伴う5-FC USP法を用いて、USP II型溶解装置(パドル法)により、37℃において、900ml脱イオン水中にて75rpmで測定すると、約4〜12時間以内に約80%を超える5-FCのin vitro溶解速度を示す。さらに別の実施形態において、5-FCは上記の医薬組成物中に約500mgの量で存在し、当該組成物を摂食した被験体に経口投与した後、この組成物は以下を示す:(i)5-FCのCmax:約2.0μg/ml〜約10.0μg/ml(例えば、約2.0〜9.5μg/ml、約3.0〜8.0μg/ml、約3.0〜6.0μg/ml、約3.5〜8.0μg/ml、または約2.5〜4.5μg/ml);(ii)tmedian:約3時間以上(例えば、約3〜12時間、約3〜10時間、約4〜12時間、約4〜10時間、約5〜12時間、約5〜10時間、約6〜12時間、または約6〜10時間、または約6〜8時間);(iii)AUC:約20〜80μg*時間/mL(例えば、約25〜75μg*時間/mL、約30〜70μg*時間/mL、約30〜65μg*時間/mL、約30〜60μg*時間/mL、または約35〜65μg*時間/mL);および(iv)t1/2:約3〜8時間(例えば、約3〜7時間、約4〜8時間、または約4〜7時間)。
【0067】
さらに別の実施形態において、摂食した被験体に5-FCを含む医薬組成物を2mg経口投与すると、この組成物は、(i)5-FCのCmax:約5〜80μg/ml、約5〜70μg/ml、約5〜60μg/ml、約5〜50μg/ml、約5〜40μg/ml、約5〜30μg/ml、または約5〜約20μg/ml、および(ii)最高血中濃度到達時間(tmax):約4〜約10時間(例えば5-FCの最大放出に到達するまで3〜7時間)を示す。
【0068】
製剤が、急速放出と徐放/持続放出の両方を含む場合、急速放出部分は約1〜2時間のtmaxを含み、徐放部分は3〜12時間のtmaxを含む。急速放出-徐放の組み合わせを含む治療方法では、迅速に治療濃度に達し、1〜12時間にわたって持続する。
【0069】
本開示の5-FC-ERの投与は、5-フルオロシトシンの徐放を可能とし、このため悪心または胃腸症状を回避するために1回用量を分割して服用する必要なく、1日当たりの投与回数の低減(1、2または3回まで)および/または1日当たりの総量の低減を可能とする。このことは、薬剤治療への患者コンプライアンスの改善および副作用の低減を可能とする。
【0070】
さらに、本明細書中に記載されるモノリシック製剤および他の一般に用いられる遅延放出(あるいは徐放と呼ばれる場合もある)担体および送達剤が考えられる。
【0071】
本開示の改変放出(徐放)製剤(例えば、錠剤、顆粒剤、ペレット剤、カプセル剤など)は、典型的には単位剤形当たり約25、50、100、200、250、300、400、500、750、1000、1250、1500、1750、または2000mgの活性剤(例えば5-FC)を含む。組成物が5-FCおよび第2の活性剤(例えばロイコボリン)を含む場合、各々の活性剤の量が所望の範囲内(例えば、各活性剤について25〜500mg/組成物)に入るように改変することができる。
【0072】
1つの実施形態において、本開示の組成物は、上部胃腸管(胃を含む)における吸収を促進するようにコーティングで最適化されている。このような吸収は、大腸における細菌シトシンデアミナーゼによる5-FCの代謝を妨げるであろう。
【0073】
別の態様において、組成物は、所望の源以外の源からのシトシンデアミナーゼの発現を特異的に阻害するsiRNA分子またはアンチセンス分子を含み得る。このようなsiRNA分子またはアンチセンス分子は、シトシンデアミナーゼのコーディング配列間の相違を検討することによって容易に設計することができる。例えば、複製能のあるレトロウイルスベクターのシトシンデアミナーゼがヒト化シトシンデアミナーゼまたは酵母シトシンデアミナーゼである場合、細菌シトシンデアミナーゼを特異的に阻害するsiRNAは、結腸中の細菌および真菌による結腸における望ましくない代謝を妨げるであろう。
【0074】
本発明の徐放製剤は、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、乳剤、懸濁剤の形態で使用することが可能であり、選択される投与経路によって異なる。液剤または乳剤については、好適な担体として、例えば、水溶液もしくはアルコール/水溶液、乳液または懸濁液(生理食塩水および緩衝媒体を含む)が挙げられる。本明細書の他の箇所に記載されるように、本開示の医薬組成物は、当業者に公知の従来の添加剤(例えば安定化剤、緩衝剤、塩、防腐剤、充填剤、香味増強剤など)を含み得る。例示的緩衝剤としては、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などが挙げられる。例示的防腐剤としては、EDTA、EGTA、BHA、BHTなどが挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルは、様々な添加剤、防腐剤または液体、栄養素もしくは電解質補給剤を含み得る(概説としてRemington's Pharmaceutical Science, 第16版, Mack編, 1980を参照のこと)。
【0075】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、所望の薬理作用を誘導するのに必要なプロドラッグおよび/または他の生物学的物質の量を意味する。この量は、特定の活性物質の有効性、個々の被投与体の年齢、体重、および応答ならびに被投与体の症状の性質および重篤度によって大きく変化し得る。考慮し得る他の要因としては、ベクターからのシトシンデアミナーゼポリヌクレオチドの発現率と、5-FCに対するシトシンデアミナーゼの活性が挙げられる。このため、上記のプロドラッグまたは活性物質の量に臨界的上限または下限はない。本開示の方法において使用される治療有効量は、当業者が容易に決定することができる。
【0076】
別の態様において、真菌症を治療する方法が提供される。1つの実施形態において、この方法は、真菌治療有効量の5-FCを含む徐放製剤(例えば、胃滞留時間を増加させた5-FCを含むモノリシック改変放出剤形(MMR))を、それを必要とする被験体に投与するステップを含んでなる。この方法は、任意の適用可能な真菌症(脳真菌症、内臓真菌症、膣真菌症、口腔真菌症、足真菌症である真菌症および/またはカンジダ属の種(Candida spp.)、クリプトコッカス属の種(Cryptococcus spp.)、スポロスリックス属の種(Sporothrix spp.)、アスペルギルス属の種(Aspergillus spp.)、クラドスポリウム属の種(Cladosporium spp.)、エクソフィアラ属の種(Exophila spp.)およびフィアロフォラ属の種(Phialophora spp.)の中から選択される真菌による感染である真菌症など)を治療するために用いることができる。
【0077】
5-フルオロシトシンを含む徐放製剤を用いて真菌症を治療する場合、別の抗真菌剤を同時投与することが有利であり得る。任意の適切な抗真菌剤(アンホテリシンBおよびアゾール系抗真菌剤(例えばフルコナゾールおよびイトラコナゾール)など)を、5-フルオロシトシン含有徐放製剤と同時投与することができる。かかる付加的剤は、改変放出形態の一部として(例えば、モノリシック固形剤の上または中に層化して)徐放製剤中にコンパートメント化してもよいし、または別個に投与してもよい。
【0078】
別の実施形態において、感染症を治療する方法が提供される。この方法は、感染細胞中でシトシンデアミナーゼの発現を誘導する発現ベクターの十分量と、5-フルオロシトシンを含む徐放製剤の感染治療有効量とを、それを必要とする被験体に投与するステップを含んでなる。この方法は、任意の適用可能な非真菌性感染症(ウイルス、細菌およびマイコプラズマに基づく疾患など)を治療するために用いることができる。このような疾患の例としては、HIV感染、HBV感染、HCV感染、HPV感染、ヘルペスウイルス感染、結核、ニューモシスティス・カリニ感染が挙げられる。真菌症の治療と同様に、5-フルオロシトシンを含む徐放製剤の投与によって、感染症の治療のための5-フルオロシトシンの徐放が可能となり、これにより1日当たりの投与回数の低減(1、2または3回まで)が可能となる。また、製剤の増強または5-FCを5-FUに変換するシトシンデアミナーゼの活性の増強による1日当たりの総投与量の低減も得られる。このことは、薬剤治療への患者コンプライアンスの改善および副作用の低減を可能とする。1つの実施形態において、感染症の被験体(該被験体の感染細胞が異種シトシンデアミナーゼを含む)を治療するのに有用な5-FCの用量は、シトシンデアミナーゼ遺伝子を使用しない真菌感染症の治療に用いられる用量と比較して1〜1,000倍低減することができる。
【0079】
5-フルオロシトシンを含む徐放製剤を使用して感染症を治療する場合、別の抗感染症剤を同時投与することが有利であり得る。任意の適切な抗感染症剤(例えば、限定するものではないが、抗生物質、および抗ウイルス薬(バルシクロビル(valcyclovir)、ネベラピン(neverapin)、抗HIV薬コンボス(combos)、リボビリン(ribovirin)など)が挙げられる)を、5-フルオロシトシン含有徐放製剤と同時投与することができる。かかる付加的剤は、徐放製剤中に層化してコンパートメント化してもよいし、または別個に投与してもよい。
【0080】
別の実施形態において、過剰増殖性疾患を治療する方法が提供される。この方法は、過剰増殖細胞中でシトシンデアミナーゼの発現を誘導する発現ベクターの十分量と、5-フルオロシトシンを含む徐放製剤の増殖治療有効量とを、それを必要とする被験体に投与するステップを含んでなる。この方法は、任意の適用可能な過剰増殖性疾患(例えば、慢性関節リウマチ、クローン病、慢性閉塞性肺疾患、良性前立腺過形成などを含む様々な自己免疫疾患)を治療するために用いることができる。真菌症の治療と同様に、5-フルオロシトシンを含む徐放製剤の投与によって、過剰増殖性疾患の治療のための5-フルオロシトシンの徐放が可能となり、これにより1日当たりの投与回数の低減(1、2または3回まで)が可能となる。また、製剤の増強または5-FCを5-FUに変換するシトシンデアミナーゼの活性の増強による1日当たりの総投与量の低減も得られる。このことは、薬剤治療への患者コンプライアンスの改善および副作用の低減を可能とする。1つの実施形態において、過剰増殖性疾患の被験体(該被験体の過剰増殖細胞が異種シトシンデアミナーゼを含む)を治療するのに有用な5-FCの用量は、シトシンデアミナーゼ遺伝子を使用しない過剰増殖性疾患の治療に用いられる用量と比較して1〜1,000倍低減することができる。
【0081】
5-フルオロシトシンを含む徐放製剤を用いて過剰増殖性疾患を治療する場合、別の抗増殖疾患剤を同時投与することが有利であり得る。任意の適切な抗増殖疾患剤(限定するものではないが、メトトレキサート、シクロホスファミド、他の抗癌剤、ロイコボリンおよびステロイド剤など)を、5-フルオロシトシン含有徐放製剤と同時投与することができる。かかる付加的剤は、徐放製剤中にコンパートメント化(例えばモノリシック形態中に層化)してもよいし、または別個に投与してもよい。
【0082】
さらに別の実施形態において、癌を治療する方法が提供される。この方法は、癌細胞中でシトシンデアミナーゼの発現を誘導する発現ベクターの十分量と、5-フルオロシトシンを含む徐放製剤の癌治療有効量とを、それを必要とする被験体に投与するステップを含んでなる。この方法は、任意の適用可能な癌(副腎癌、膀胱癌、骨癌、骨髄癌、脳腫瘍(例えば多形神経膠芽腫)、乳癌、頸癌、胆嚢癌、結節腫、胃腸管癌(例えば、結腸癌および直腸癌)、心臓腫瘍、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、筋肉腫、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、前立腺癌、唾液腺癌、皮膚癌(例えば黒色腫)、脾臓癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌および子宮癌など)を治療するために用いることができる。治療対象の癌としては、脳腫瘍、肺癌、結腸・直腸癌、乳癌、前立腺癌、尿路癌、子宮癌、リンパ腫、口腔癌、膵臓癌、白血病、黒色腫、胃癌および卵巣癌への転移などの固形腫瘍が挙げられる。また上記の製剤は、イヌなどのペットおよび農業用動物の疾患を治療するために使用することもできる。イヌにおいては、5-FCの製剤をシトシンデアミナーゼの遺伝子を含むベクターと同時に投与して、脳腫瘍、リンパ腫、肥満細胞腫および線維肉腫を治療することができる。真菌症の治療と同様に、5-フルオロシトシンを含む徐放製剤の投与によって、癌の治療のための5-フルオロシトシンの徐放が可能となり、これにより1日当たりの投与回数の低減(1、2または3回まで)が可能となる。また、製剤の増強または5-FCを5-FUに変換するシトシンデアミナーゼの活性の増強による1日当たりの総投与量の低減も得られる。このことは、薬剤治療への患者コンプライアンスの改善および副作用の低減を可能とする。1つの実施形態において、癌の被験体(該被験体の癌が異種シトシンデアミナーゼを含む)を治療するのに有用な5-FCの用量は、シトシンデアミナーゼ遺伝子を使用しない癌の治療に用いられる用量と比較して1〜1,000倍低減することができる。
【0083】
5-フルオロシトシンを含む徐放製剤を用いて癌を治療する場合、別の抗癌剤を同時投与することが有利であり得る。任意の適切な抗癌剤(例えば、限定するものではないが、ロイコボリン、ブスルファン、シスプラチン、マイトマイシンC、カルボプラチン;抗有糸分裂剤(例えばコルヒチン、ビンブラスチン、パクリタキセルおよびドセタキセル);トポイソメラーゼI阻害剤(例えばカンプトテシンおよびトポテカン);トポイソメラーゼII阻害剤(例えばドキソルビシンおよびエトポシド);RNA/DNA代謝拮抗剤(例えば5-アザシチジン、5-フルオロウラシルおよびメトトレキサート);DNA代謝拮抗剤(例えば5-フルオロ-2'-デオキシ-ウリジン、ara-C、ヒドロキシウレアおよびチオグアニン);EGFR阻害剤(例えばイレッサ(登録商標)(ゲフィチニブ)およびタルセバ(登録商標)(エルロチニブ));プロテアソーム阻害剤;抗体(例えばキャンパス、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、アバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)、またはリツキサン(登録商標)(リツキシマブ));ステロイド剤およびアルキル化剤(例えばテモダール、メルファラン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ビンクリスチン、ミトグアゾン、エピルビシン、アクラルビシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、エリプチニウム、フルダラビン、オクトレオチド、レチノイン酸、タモキシフェン、グリベック(登録商標)(イマチニブメシラート)およびアラノシン)が挙げられる)を、5-フルオロシトシン含有徐放製剤と同時投与することができる。かかる付加的剤は、徐放製剤中にコンパートメント化(例えばモノリシック製剤中に層化)してもよいし、または別個に投与してもよい。
【0084】
プロドラッグ5-FCは、微生物に固有の酵素、あるいは生物中に組換え導入されている酵素の作用によって細胞毒性薬に変換される。例えば、酵母または細菌のシトシンデアミナーゼは、無害な抗生物質であるプロドラッグ5-FCを、細胞毒性化学療法剤5-フルオロウラシル(5-FU)に変換する。ヒト(および一般に哺乳動物)では、顕著なシトシンデアミナーゼ活性を有する酵素をコードする天然の遺伝子を有するものは知られていない。酵母および細菌のシトシンデアミナーゼは、遺伝子送達を用いた癌治療において重要視されており、ウイルスベクターによってこの酵素を送達した後に5-FCを用いた治療を行うと、この酵素によって5-FCが細胞毒性薬に変換される(Millerら, Can Res 62:773-780 (2002);Kievitら, Can Res 59:1417-1421 (1999))。
【0085】
癌治療の1つの送達機構は、内部リボソーム侵入部位(IRES)の下流に位置するシトシンデアミナーゼを含む複製能のあるレトロウイルスベクター(例えば、哺乳動物オルトレトロウイルスベクター)に基づく。例えば、Kasaharaらに付与された米国特許第6,899,871号は、脳腫瘍などの細胞増殖障害の治療に有用なベクターについて記載している(米国特許第6,899,871号の開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0086】
癌細胞のトランスフェクションに用いられるシトシンデアミナーゼ遺伝子は、5-フルオロシトシンから5-フルオロウラシルへの変換を触媒する任意の適用可能なシトシンデアミナーゼをコードし得る。その後、5-フルオロウラシルは癌細胞中で5-フルオロ-デオキシウリジン一リン酸(FdUMP)(ならびに5-FdUTPなどの他の活性代謝物)に変換されてチミジル酸シンターゼの阻害をもたらし、または5-FUが5-フルオロウリジン一リン酸(FUMP)、5-FUTPおよびさらにRNAに組み込まれることによってRNA構造およびプロセスを破壊して、最終的に細胞死を引き起こす。適切なシトシンデアミナーゼとしては、細菌および真菌に由来するもの、例えば大腸菌(Huberら、PNAS 91 8302-8306 1994)、カンジダ・ケフィール(Candida kefyr)(例えば米国特許第7,141,404号参照))またはサッカロマイセス・セレヴィシエ(Kievitら、前掲)に由来するシトシンデアミナーゼが挙げられ、また改良型組換えシトシンデアミナーゼ(例えば、コドン-ヒト化シトシンデアミナーゼおよび/または安定化シトシンデアミナーゼ)も使用することができる。
【0087】
癌細胞をシトシンデアミナーゼでトランスフェクトするために使用する発現ベクターは、任意の適用可能な発現ベクター(DNAプラスミド、合成剤(1種または複数)と共に製剤化されたポリヌクレオチド発現ベクター、細菌ベクター、またはウイルスベクターなど)であってよい。(例えば、「遺伝子医薬における概念(Concepts in Genetic Medicine)」 Boro DropulicおよびBarrie Carter編, Wiley, 2008, Hoboken, NJ.;「ヒト遺伝子治療の発展(The Development of Human Gene Therapy)」 Theodore Friedmann編, Cold Springs Harbor Laboratory Press, Cold springs Harbor, New York, 1999;「遺伝子および細胞治療(Gene and Cell Therapy)」 Nancy Smyth Templeton編, Marcel Dekker Inc., New York, New York, 2000および「遺伝子治療:治療メカニズムと戦略(Gene Therapy: Therapeutic Mechanism and Strategies)」 Nancy Smyth TempletoneおよびDanilo D Lasic編, Marcel Dekker, Inc., New York, New York, 2000)。本発明の1つの態様において、レトロウイルスベクターを使用することができる。レトロウイルスベクターとしては、複製能のあるレトロウイルスベクター(例えば、米国特許第6,410,313号および第6,899,871号参照)および複製欠損レトロウイルスベクター(例えば、米国特許第5,716,826号、第5,830,458号、第5,997,859号、第6,133,029号、第6,241,982号、第6,410,326号、第6,495,349号、第6,531,307号および第6,569,679号参照)が挙げられる。癌細胞の形質導入は、例えば、シトシンデアミナーゼ遺伝子を含む発現ベクターの直接注射・注入または全身投与によって行うことができる。癌細胞へのシトシンデアミナーゼ発現の標的化は、適切な組織特異的プロモーターまたはマイクロRNAを発現ベクターに含めることによって促進することができる。別の実施形態において、レトロウイルスは、特定の組織(造血細胞、肝細胞または筋細胞など)に特異的な、miRNA配列に対する「標的」配列を含めることによって組織特異的となる(BellおよびKirin, Nature Biotech., 26:1347, 2008, 参照により本明細書に組み込まれる)ため、このウイルスはこれらの組織中では発現しない。別法として、このウイルスは、普遍的に発現するが腫瘍細胞中では発現が低い標的(例えばlet-7)を含み得る。
【0088】
本明細書中に記載される方法は、任意の哺乳動物種(ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスターおよびウマなど)において使用することができる。ヒトが好ましい。
【0089】
本明細書中に記載される方法によれば、5-フルオロシトシンを含む徐放製剤は、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて、適切な経路によって被投与体に投与することができる。5-フルオロシトシンを含む徐放製剤の有効量が投与される。有効量は、投与条件下で所望の治療効果を達成するのに十分な量、例えば真菌感染症を減少させもしくは除去し、非真菌感染症を減少させもしくは除去し、または癌細胞もしくは過剰増殖性疾患細胞の成長を遅延させ、減少させもしくは除去するのに十分な量である。
【0090】
別の実施形態において、5-FCまたは5-FCとロイコボリンとを含む組成物の用量は、シトシンデアミナーゼ活性に基づいて改変することができる。例えば、プロモーター、マイクロRNAまたはシトシンデアミナーゼの配列の種類を変更することにより、シトシンデアミナーゼの活性および発現を改変し得る。かかる実施形態において、5-FCの用量を調整することができる(例えば、活性および/または発現が高い場合、5-FC用量を低減することができる)。
【0091】
別の実施形態において、本開示の5-FC組成物は、シトシンデアミナーゼを含む複製能のあるレトロウイルスと組み合わせて使用することができる;ウイルス力価は、複製能のあるレトロウイルスを含む被験体から決定することが可能であり、5-FCの用量は、感染単位数もしくは形質転換単位数および/またはシトシンデアミナーゼの発現に基づいて改変し得る。さらに他の実施形態において、本開示の5-FCまたは5-FCとロイコボリンの組成物の用量は、腫瘍サイズに基づいて決定することができる。例えば、シトシンデアミナーゼ遺伝子に連結されたIRESを含む複製能のあるレトロウイルスを有する腫瘍の注射は、約49日間の伝播後に、約75%の形質導入効率をもたらし得る。この情報により、より大型の腫瘍(例えば、ヒトを含むより大型の動物において生じる腫瘍)を治療するための用量ガイドラインを決定することができる。例えば、体積1.0〜1.5cm3の腫瘍における6x103pfuの用量は、常に大部分の細胞の形質導入をもたらす。別の実施形態において、ウイルスベクターの用量は、脳重量1グラム当たり約103〜107形質転換単位(TU)である。シトシンデアミナーゼ遺伝子の活性および発現が既知である場合、適切な用量は、形質転換単位数と組み合わせて腫瘍細胞に基づいて個々の被験体において決定および調整することができる。
【0092】
当業者に明らかな上記の本発明の実施態様の改変は、下記の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。本明細書中で言及される全ての特許および刊行物は、本発明が関連する技術分野における当業者の技術水準を示している。本開示において引用される全ての参考文献は、各参考文献の全体が参照により個々に組み込まれるかのように、参照により本開示に組み込まれる。
【実施例1】
【0093】
材料。本明細書中に記載される剤形を調製するために使用する材料は、以下のとおりに入手した。フルシトシン(5-FC)(米国薬局方(USP))は、Scinopharm (台湾)から購入した;カーボポール71-Gは、Noveon(Cleveland, Ohio, USA)から購入した;HPMC、NF(Benecel(登録商標) MP874、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)およびHPC、NF(Klucel(登録商標)-HXF、ヒドロキシプロピルセルロース)は、Aqualon(Wilmington, Delaware, USA)から購入した;コリドン(登録商標)-SR(PVA-PVPコポリマー、ポリビニルアセテートとポビドンベースのマトリックス遅延ポリマー)は、BASF(Ludwigshafen am Rhein, Rhineland-Palatinate, Germany)から購入した;直接圧縮可能なリン酸二カルシウム, NF(Emcompress(登録商標))は、JRS Pharma(Patterson, New York, USA)から購入した;マルトデキストリンは、Grains Processing Corp.(GPC, Muscatine, Iowa)から購入した;ステアリン酸マグネシウム NFは、Spectrum Chemicals(Gardena, California, USA)から購入し、直接圧縮可能な無水ラクトース(DCL-21)は、DMV(Veghel, The Netherlands)から購入する。重炭酸ナトリウム(USP-等級2)は、Church and Dwight(Princeton, NJ)から購入した。アビセル(登録商標)(微結晶性セルロース-NFのブランド)は、FMC(Philadelphia, PA)から購入する。
【0094】
1つの実施形態において、胃滞留時間を増加させた5-FCを含むモノリシック改変放出剤形(MMR)を記載する。MMRを上部胃腸管(例えば胃)に制限するため、大きさと形状の組み合わせと共に生体接着性および浮力を利用した。
【0095】
一般的な錠剤化法により、以下の基本手順に従って剤形を調製した。フルシトシン(5-FC)と希釈剤(ラクトース、微結晶性セルロース、マルトデキストリンまたはリン酸二カルシウム)を混合し、その後適当な大きさのブレンダー中で混合した。親水性または生体接着性ポリマー(カーボポール、HPC、HPMC、PolyOxなど)を加え、15分間以上十分に混合した。ステアリン酸マグネシウムを使用する場合、これを加えて3分間混合した。結果として得られた混合物は、10工程を有する半自動打錠機(ten station semi-automatic tablet press)を用いて圧縮して丸縁の押形を有する凹面を形成し、やや平らなカプレット形の錠剤を与えた。結果として得られた剤形を、以下に記載のとおり、in vitro溶解、溶媒取り込み速度、および生体接着性についてアッセイした。
【表1】

【実施例2】
【0096】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表2】

【実施例3】
【0097】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表3】

【実施例4】
【0098】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表4】

【実施例5】
【0099】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表5】

【実施例6】
【0100】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表6】

【実施例7】
【0101】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表7】

【実施例8】
【0102】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表8】

【実施例9】
【0103】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表9】

【実施例10】
【0104】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表10】

【実施例11】
【0105】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表11】

【実施例12】
【0106】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表12】

【実施例13】
【0107】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表13】

【実施例14】
【0108】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表14】

【実施例15】
【0109】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表15】

【実施例16】
【0110】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表16】

【実施例17】
【0111】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表17】

【実施例18】
【0112】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表18】

【実施例19】
【0113】
以下の成分を用いて上記の方法を繰り返した:
【表19】

【0114】
イヌ研究では、カーボポール非コーティング錠剤を使用した。
【0115】
ヒト研究では、カーボポールコーティング錠剤を使用した。
【実施例20】
【0116】
実施例1〜19の錠剤は、美観のため、即時放出性のHPMCベースのコーティング材料(例えばオパドライ(Colorcon)でコーティングしても良い。実施例19で調製した核錠のコーティング錠剤の実施例を以下に示す。
【表20】

【0117】
実施例20の錠剤は、単回投与ヒト薬物動態(PK)研究に使用し、また「カーボポール」製剤としても示した。
【実施例21】
【0118】
実施例13で調製した核錠のコーティング錠剤を以下に示す。
【表21】

【0119】
実施例21の錠剤は、単回投与ヒトPK研究に使用し、また「コリドン」製剤としても示した。
【実施例22】
【0120】
フルシトシンUSP溶解試験。In-vitroにおける放出速度を測定するため、USP 31に記載されるアンコボン(登録商標)の溶解法を、わずかな改変を加えて用いた。本結果において報告されるデータは全て、特定の時点における平均溶解速度である(n=4または8)。
【0121】
新剤形のin-vitro薬剤放出速度の評価において使用したin vitro溶解測定パラメータを表Aに示す。
【表22】

【0122】
上記の方法を用いた平均溶解速度(%薬剤放出)の結果を表Bに示し、溶解曲線の編成を図1に示す。
【表23】



【0123】
上記の溶解結果は、全ての製剤が、長時間にわたって5-FCの徐放プロファイルを示したことを示していた。
【実施例23】
【0124】
膨潤速度および浸食速度の試験法。マトリックス錠剤の胃滞留は、胃内で小片に分解しないように許容し得る機械的強度を長時間有しながら、摂取後に胃液を吸収することによって急速に膨潤する錠剤に依存している。錠剤への溶媒取り込み速度(すなわち膨潤速度)および錠剤浸食速度(すなわち機械的強度の尺度)は、摂食した胃のpHを模擬するpH4.1のSGF溶媒中に浸漬した後に測定した。秤量したサンプルを、37±0.2℃においてpH4.1の緩衝剤を含む溶解器(USP I型またはII型溶解装置)の中に置いた。選択された時間間隔(例えば、1時間、2時間、3時間、5時間、8時間、12時間、および24時間)後、各溶解バスケットを引き上げ、錠剤から過剰な水を除去するために拭き、寸法(長さと幅)を3回(in triplicate)測定した。その後、化学天秤上で錠剤を計量した(乾燥を防ぐため溶媒から引き上げてから10分以内)。次いで湿ったサンプルを乾燥器中で100℃超にて24時間以上乾燥させ、デシケーター中で冷却して、最後に一定重量が得られるまで計量した(最終乾燥重量)。湿塊の重量増加は溶媒取り込みを示す。吸収された液体(Q)による重量増加は式1に従って評価した。
【数1】

【0125】
式中、WWとWfは、それぞれ、乾燥前の水和したサンプルの質量と、乾燥し部分的に浸食された同じサンプルの最終質量である。
【0126】
上記の装置のパーセント浸食(E)は、式2を用いて評価した。
【数2】

【0127】
式中、WIは初期の開始乾燥重量である。各時点について3種の異なるサンプルを測定し、また個々の時点について新たなサンプルを使用した。全ての実験は、各比較薬剤につき3個の錠剤を使用して3回行った。
【0128】
溶解プロファイルに基づき、実施例18(オイドラギット(Eudragit)/ECプロトタイプ、マルトデキストリンを含む)、実施例13(コリドン)、および実施例19(カーボポールプロトタイプ)の組成物をさらなる研究のために選択した。摂取後の錠剤の膨潤が迅速であるほど、上部胃腸(GI)管内にマトリックス錠剤が滞留する確率が向上する。上記の3種のプロトタイプのうち、カーボポールプロトタイプは、水中で30分でその乾燥重量の約50%を吸収することにより、他の2種よりも迅速に膨潤し、8時間でその乾燥重量のほぼ250%まで水を吸収し続ける。コリドンとオイドラギットプロトタイプは、いずれも極めてゆっくりと長時間にわたって水を吸収(8時間でその乾燥重量の約50%まで水を吸収)する点において、非常に類似した挙動をする。これらの結果から、カーボポール錠剤は膨潤型マトリックスであるが、他の2種のプロトタイプはそれほど膨潤しなかったことがわかる。これらの3種のプロトタイプについて、浸食速度は、カーボポール>コリドン≒オイドラギットプロトタイプ製剤であった。
【0129】
錠剤サイズは胃内の滞留の要因であるため、この型の製剤については、浸食速度が遅い方が好ましい。溶解条件(USP I、バスケット)下の錠剤の浸食速度は、E率(錠剤重量減少(乾燥重量)の%)によって表される。
【0130】
データから、USP I溶解条件下では、カーボポールプロトタイプは浸食されるのが8時間超と最も遅く(8時間で錠剤重量が約30%減少)、一方、他の2種のプロトタイプは比較的急速に浸食されたことが示された。これらの3種のプロトタイプについての浸食速度は、カーボポール<コリドン<オイドラギットプロトタイプ製剤であった。
【0131】
HPMC錠剤も5-FCの遅延放出マトリックス錠剤としての役割を果たすことができたが、カーボポールは、生体接着性錠剤であるという追加の利点を有する。錠剤が小さいほど比較的容易に嚥下し得るという利点を有しつつ、上部胃腸管(GI)での十分な滞留時間を提供する。
【実施例24】
【0132】
様々なpH条件における溶解。製剤開発ラウンドにおいて様々なプロトタイプを順位付けするための溶解試験は全て、アンコボン(登録商標)のUSPモノグラフに記載されるとおり、溶解媒体として脱イオン水を使用して実施した。フルシトシン-XR錠剤プロトタイプの溶解プロファイルに何か変化があるか否かを試験するため、3種の最終候補を、2種の異なるpH条件(pH1.2(SGF)およびpH4.1(USP酢酸緩衝液))で溶解について試験した。この結果は表Cに挙げ、様々なpH条件における3種のプロトタイプの溶解プロファイルを示す。
【表24】

【0133】
3種のプロトタイプの溶解プロファイルにおけるpHの影響はわずかに異なるが、一般に、薬剤放出速度はより酸性の溶媒中で上昇する。個々のマトリックス錠剤の挙動を以下にまとめる。
【0134】
実施例18(オイドラギット/エトセルベースの錠剤):pHの影響はこのプロトタイプにおいて最大であった。pHが低下するにつれて、薬剤放出速度はpH7で7時間(95%超放出)から、pH4.1で5時間、pH1.2で3時間にまで上昇した。このことは、マトリックス錠剤成分がpH範囲に対して感受性が低いとされていることを考慮すると普通ではない。
【0135】
実施例13(コリドンベースのマトリックス錠剤):溶解媒体のpHがpH7からpH4.1まで変化し、その後pH1.2まで変化すると、薬剤の完全放出がわずかに増加した。薬剤の完全放出は、pH1.2では約9時間で達成されたが、pH7では11時間超を要した。
【0136】
実施例19(カーボポールベースのマトリックス錠剤):溶解プロファイルは、pH7およびpH4.1においては変化せず、プロファイル全体について実質的に重なっていた。pH1.2では、放出速度はわずかに速く、pH4.1またはpH 7における放出速度のいずれと比較しても、より線形の放出速度を有していた。
【実施例25】
【0137】
以下に記載するとおり、ヒトにおいて、実施例20(コーティングしたカーボポール)および実施例21(コーティングしたコリドン)の2種の製剤の特性を、アンコボン(登録商標)(基準製剤)と比較して決定するため、臨床試験を実施した。製剤Aは実施例20に示す処方のカーボポール、製剤Bは実施例21に示す処方のコリドンである。
【表25】

【0138】
「絶食」処理は、薬剤投与の研究をする前に最低限10時間の一晩絶食(カロリー摂取をしないと定義される)し、さらにその後4時間以上絶食し続けることを求められた被験体を含む。投与の1時間前から1時間後まで、水(投与と共に与えられる場合を除く)の摂取は認められなかった。他の全ての時間は、所望の通りに水を摂取することが許可され、十分な水分補給が奨励された。投与の約4時間後と約9時間後に標準的な食事が一様に提供され、投与の約12〜13時間後に夜食が提供された。
【0139】
「摂食」処理は、10時間以上一晩絶食することを求められた被験体を含む。被験体には、予定された投与時間の30分前に、標準的な高脂肪の朝食が与えられ、これは30分以内に実質的にまたは完全に摂取された。朝食は、バタートースト2枚、目玉焼き2個、ベーコン2切れ、1人分のハッシュポテト、および240 mLの全乳で構成されていた。被験体は、投与後4時間以上絶食するよう求められた。投与の1時間前から1時間後まで、水(投与と共に与えられる場合を除く)の摂取は認められなかった。他の全ての時間は、所望の通りに水を摂取することが許可され、十分な水分補給が奨励された。投与の約4時間後と約9時間後に標準的な食事が一様に提供され、投与の約12〜13時間後に夜食が提供された。
【0140】
血液を、K3 EDTAを含む(5mLの)冷却真空管に採取し、氷浴中に保存した後に遠心分離した(4℃において約2500rpmで10分間)。遠心分離後、2個の血漿アリコート(第1アリコートは1mL以上の血漿を含み、第2アリコートはその残りを含む)を抜き出し、適切にラベルしたポリプロピレンバイアルに入れた。サンプル採取から60分以内に、上記のアリコートを-20℃±10℃以下に設定されたフリーザーに入れ、分析のために業者に送るまで保存した。
【0141】
ヒト血漿からサンプルアリコートを抽出することにより、公知の標準物質に基づいて5-フルオロシトシンを定量した。安定同位体標識した内部標準を加えた後、サンプルをアセトニトリル中のタンパク質沈殿で処理した。上清の一部を取り、96ウェルプレート中に密閉した。サンプルは、APCI源を用いたAB|MDS Sciex API 4000三連四重極型質量分析計と連動した親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)を利用するLC-MS/MSによって分析した。多重反応モニタリング(MRM)モードで陰イオンをモニターした。結果を表D(表Dsub1-5に基づく)にまとめる。
【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【表31】

【0142】
これらのデータから、絶食個体におけるアンコボン(登録商標)についてのAUC(57.3μg.h/ml)は、カーボポール(54.3μg.h/ml)およびコリドン(47.7μg.h/ml)製剤を投与された摂食個体と比較してほとんど変化しないが、Tmaxは、1.63時間(アンコボン)から5.62時間(カーボポール)および7.86時間(コリドン)へとシフトすることが示される。
【実施例26】
【0143】
単回投与療法および複数回投与療法を評価するため、動物においてさらなる研究を行った。この研究には、3匹の雄のビーグル犬を使用した。1日目、これらの犬は、一晩絶食後の単回経口投与として、実施例19に示す製剤を用いて500mgの5-フルオロシトシン、参照製剤でアンコボン(登録商標)の投与を受けた。5日目、これらの犬は、一晩絶食後の単回経口投与として、徐放(5-FC-ER)錠剤製剤(実施例19に示される)中の500mg 5-フルオロシトシンの投与を受けた。1日目および5日目は、投与後4時間絶食を続けた。8日目には、これらの犬は500mg 5-FC-ERの単回経口投与を受け、9日目〜12日目には、これらの犬は500mg 5-FC-ERの1日3回投与(3回の投与の間は7時間間隔)を受けた。14日目、これらの犬は、摂食の30分以上後の単回経口投与として、基準製剤アンコボン(登録商標)中の500mg 5-フルオロシトシンの投与を受けた。全ての用量は約25mLの水と共に投与された。
【0144】
血液サンプル(2mL)を、直接静脈穿刺によって頸静脈から採取した。抗凝血剤としてへパリンを使用した。遠心分離後、血漿を-70±10℃で分析まで保存した。
【0145】
1日目は、投与前および投与の0.25、0.5、0.75、1、2、4、8、12および24時間後にサンプルを採取した。5日目は、投与前および投与の0.25、0.5、1、2、4、8、12、24および48時間後にサンプルを採取した。8日目は、投与前および0.5、1、2、4、8、12および24時間にサンプルを採取した。9日目〜12日目は、9日目の最初の投与の0、7、14、24、31、38、48、55、62、72、82、86時間後および96および120時間後(12日目の最後の投与の10および48時間後)の各投与の前にサンプルを採取した。
【0146】
5-フルオロシトシンの測定。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)法を使用して血漿サンプル中の5-フルオロシトシンの濃度を測定した。較正範囲は、サンプル量0.2mLにつき1〜100μg/mlであった。定量の下限値は1μg/mLであった。
【0147】
WinNonlin 5.0.1を使用して非コンパートメント薬物動態パラメータを計算した。Excel 2003を使用して平均値を計算し、グラフを作成した。最高測定濃度およびその関連時間として、最高濃度(Cmax)および最高濃度到達時間(Tmax)を決定した。線形台形評価を用いて、0〜24時間の血漿濃度曲線下面積(AUC0-24)および0時間〜最終測定可能濃度でのAUC(AUC0-t)を計算した。定量限界(1μg/mL)以下と報告される全ての値は、計算のためにゼロと見なした。半減期(t1/2)の値は、最後の3個〜5個の非ゼロ値を用いて計算した。AUC0-∞の値は、AUC0-tからの外挿とt1/2の逆数を用いて評価した。AUC0-∞およびt1/2に関する結果は、データと適合させる相関係数が≧0.8であった場合に信頼性があると考えた。
【0148】
複数回投与フェーズ(9日目〜12日目)から得たデータを、8日目に行った食後の500mgの5-FC ERの単回投与での平均値を用いた予測と比較した。Excelを使用して単回投与の中間濃度を内挿し、4.95時間の半減期(ke=0.140時間-1)を用いた外挿によって24時間後の濃度を決定した。予測単回投与濃度は7時間まで差し引かれ、複数回投与間の予測濃度に達するまで加算した。
【0149】
アンコボン(登録商標)を用いて処理した一匹の犬は、経口投与の直後に嘔吐した。5-FC XRで処理した犬は嘔吐しなかった。5-フルオロシトシンの血漿濃度。表EおよびFは、それぞれ単回投与後および複数回投与間の、5-フルオロシトシンの平均濃度および関連する標準偏差を示す。図2および図3は、5-フルオロシトシンの単回投与を受けた犬についての平均濃度の線形プロットおよび片対数プロットを示す。
【0150】
アンコボン(登録商標)では、食物を与えて投与した後および食物を与えずに投与した後の、5-フルオロシトシン濃度の血漿プロファイルは類似していた。しかし、5-FC ERでは、食物を与えて投与すると、最高血漿濃度が実質的に上昇した。アンコボン(登録商標)と比較すると、5-FC ERでは、食物を与えて投与されるかあるいは絶食状態で投与されるかに関わらず、5-フルオロシトシンの最高平均濃度が生じるのは遅かった。食物を与えて投与する場合、5-FC ERの平均血漿濃度はアンコボン(登録商標)の平均血漿濃度と類似していたが、絶食状態では、5-FC ERを投与した場合の平均血漿濃度は、アンコボン(登録商標)を投与した場合の平均血漿濃度よりも、8時間のサンプリング時間(両製剤について平均濃度が類似していた)まで低くなる傾向にあった。
【0151】
5-フルオロシトシンの薬物動態パラメータ。表Gは、単回経口投与後の、5-フルオロシトシンの薬物動態パラメータについての平均値および関連する標準偏差を示す。
【0152】
食物の存在は、アンコボン(登録商標)についてのCmax値には最小限の影響しか与えないか、または全く影響を与えなかった。食物を与えて投与した場合の平均Cmaxは、食物を与えなかった場合の平均Cmaxを5%上回るにすぎなかった。しかし、5-FC ERについての平均Cmaxは、食物を与えなかった場合の平均Cmaxの約2倍高かった。
【0153】
食物がAUC値に与える影響は、両製剤で類似していた。食物を与えて投与した場合、アンコボンについての平均AUC0-t、AUC0-24およびAUC0-∞は、食物を与えずに投与した場合の対応値よりもそれぞれ32%、16%および33%高かった。5-FC ERについては、食物を与えて投与した場合の平均AUC0-t、AUC0-24およびAUC0-∞値は、食物を与えずに投与した場合の対応値よりもそれぞれ34%、34%および25%高かった。
【0154】
食物を与えて投与した場合、平均Tmaxは絶食時の対応値と比較して、アンコボン(登録商標)では25%短く、5-FC ERでは20%長かった。動物数が少ないことおよびサンプリング時間の間隔(特に2時間後)を考慮すると、食物を与えて投与した場合および食物を与えずに投与した場合の結果は、食物がTmaxに見かけの影響を与えることなく類似していると考えることができる。
【0155】
食物を与えて投与した場合、絶食状態と比較して、平均t1/2値はアンコボン(登録商標)では長く、5-FC ERでは短かった。動物数が少ないことおよびサンプリング時間の間隔を考慮すると、t1/2のこれらの見かけの変化は、食物に起因する真の変化を反映しているかどうかは分からない。アンコボン(登録商標)(食物を与えて投与した場合にCmaxがほとんど変化しない)では、見かけのt1/2の増加は、恐らくAUC値の増加に関与している。5-FC ERでは、食物を与えて投与した場合のt1/2の見かけの減少は、食物を与えて投与した場合のCmaxの大幅な増加によるAUCへの寄与の一部を相殺する。
【0156】
これらの結果は、食物が、5-FC ERの投与後の、Cmaxで測定される5-フルオロシトシンへの最高曝露は増加させるが、アンコボン(登録商標)の投与後のCmaxにはほとんどまたは全く影響を与えないことを示している。AUC0-tによって測定される総曝露は、アンコボン(登録商標)および5-FC ERの両方で、食物を与えて投与した場合に約1/3増加した。
【0157】
表Hは、Cmax、Tmax、AUC0-tおよびAUC0-∞について、5-FC ERをアンコボン(登録商標)に対して比較した比を示す。これらは、製剤の相対的バイオアベイラビリティの尺度である。AUC0-tによって測定されるバイオアベイラビリティの全ての範囲について、両製剤が絶食状態で投与される場合、5-FC ERはアンコボン(登録商標)の88%であり、また両製剤が摂食状態で投与される場合、5-FC ERはアンコボン(登録商標)の85%であった。CmaxおよびTmaxは、製剤からの5-フルオロシトシンの放出速度および吸収速度の尺度である。絶食状態では、5-FC ERのCmaxは、アンコボン(登録商標)のCmaxの48%であり、5-FC ERでは2時間または4時間、アンコボン(登録商標)では2時間でTmaxが生じた。摂食状態では、5-FC ERのCmaxはアンコボン(登録商標)のCmaxの88%であり、5-FC ERでは4時間、アンコボン(登録商標)では1時間または2時間でTmaxが生じた。これらの結果は、特に摂食状態において、アンコボン(登録商標)と比較して、5-FC ERから5-フルオロシトシンが長時間放出および吸収されていることを示していた。
【0158】
5日目の5-フルオロシトシンの平均濃度(食物の後に5-FC ERを投与)を使用して、9日目〜12日目に用いられる1日3回(TID)投与スケジュールで期待し得る濃度を予測した。予測の結果を図5に示す。9日目〜12日目の最初の投与の前に採取されたサンプルでは、実測濃度と予測濃度との間に優れた相関関係があった。また、9日目の日中最小投与前値と、13日目および14日目(96および120時間)に採取された投与後サンプルにおいて、非常に優れた相関関係があった。10、11および12日目の日中、測定濃度は、予測濃度より低くなる傾向にあった。5-FC ERからの5-フルオロシトシンの放出に食物が影響を及ぼすため、投与に関連した食物の量およびタイミングの変化が、比較的低い測定濃度に関与し得る可能性がある。全体的には、予測濃度はTID投与中の測定濃度とかなりよく一致していた。
【0159】
食物は、5-FC ERの投与後の、Cmaxで測定される5-フルオロシトシンへの最高曝露を増加させたが、アンコボン(登録商標)の投与後のCmaxにはほとんどまたは全く影響を与えなかった。AUC0-tで測定される総曝露は、アンコボン(登録商標)と5-FC ERの両方について、食物を与えて投与した場合に約1/3増加した。AUC0-tで測定される相対的バイオアベイラビリティについては、両製剤が絶食状態で投与される場合、5-FC ERはアンコボン(登録商標)の88%であり、両製剤が摂食状態で投与される場合、5-FC ERはアンコボン(登録商標)の85%であった。特に摂食状態において、アンコボン(登録商標)と比較して、5-FC ERからの5-フルオロシトシンの長時間の放出および吸収があった。全体的に、単回投与から予測される濃度は、TID投与中の測定濃度とかなりよく一致していた。
【表32】

【表33】

【表34】

【表35】

【実施例27】
【0160】
多形神経膠芽腫治療。シトシンデアミナーゼコーディング配列に連結されたIRESカセットを含む組換えレトロウイルスベクターは、被験体の腫瘍中に経頭蓋的に注射することができる。外科医は、ガドリニウム増強MRIスキャン上の増強領域に対応する腫瘍領域を同定するために定位(フレームベースまたはニューロナビゲーション)技術を用いる。穿頭孔を開け、Nashold針を腫瘍に挿入する。針が腫瘍中に入ったことを確認するために凍結切片を得た後、1mlのレトロウイルスベクターを針穴から注入する。3分後、針をゆっくりと引き抜いて挿入部位を閉じる。ベクターは複製能のあるウイルスであるため、脳に複数回注射を行う必要性は限られる。各患者は、単回注射のみを受けるが、異なる腫瘍および癌の部位には時間的または空間的に(別に)注射しても良い。
【0161】
5-FCは、通常、腎機能が正常な患者においては十分に耐容される。真菌感染症を治療するために用いられる5-FCの標準用量は、50〜150mg/kg/日(4分割量で投与)である。動物試験では、5-FCは500mg/kgで腹腔内に1日1回投与された。この用量は、平方メートル当たりのベースでヒトでは約50mg/kgに相当する。しかしながら、多くの研究で、経口投与後の血清フルシトシン濃度の変動が実証されているため、開始用量または勾配用量として中程度の用量の100mg/kg/日を選択し、最高血漿濃度を決定して、それにより5-FC投与を最適化する。所望の5-FCの血漿濃度を得るための初期投与の後、徐放製剤(ポリマーカプセル化、SiO2カプセル化、またはアルギン酸カプセル化されたモノリシック改変放出剤形(MMR))を投与することができる。この徐放処方物は、上述の製剤のいずれかを含み得る。徐放製剤の目的は、標準アンコボン(登録商標)を用いた大量投与レジメンに典型的に起因する患者コンプライアンスと有害な副作用の問題を改善することである。
【0162】
用量は、長期の薬剤維持の最中またはその前の、最高血清フルシトシン濃度のモニタリングに基づいて調整することができる。
【0163】
1回用量は、〜106 TU/ml(すなわち形質転換単位(TU)は、標準的なベクター力価試験においてトランスフェクト細胞中に存在するレトロウイルスゲノムの数を指す)を含む。5-FCの最初の投与の後、最高5-FC血漿濃度を決定し、最高濃度を50〜80μg/mlの範囲内で維持するように5-FCの用量を調整する。忍容性が認められる場合は、1日4回以下の投与で7日間徐放投与を繰り返す。腫瘍応答は、Macdonald基準を用いて評価する。標準的な用量漸増アルゴリズムに従う。各用量レベル(106、107、108、TU/ml)で3人の患者を評価する。一患者内での用量漸増はしない。
【0164】
5-FCは、約1〜250mg/kg/日(例えば、1日当たり約1〜200mg/kg、約1〜175mg/kg、約1〜150mg/kg、または約1〜100mg/kg)で、1回以上の分割量で投与される。最高血清濃度は、フルシトシン投与の1〜2時間後に採血することにより測定することができる。検体は分割し、半分は投与に関する即時情報を得るためにその場で使用し、別の半分は後の相関研究のため中央検査室に送った。最高フルシトシン濃度は約50〜80μg/mlでなければならない。
【0165】
本発明の多数の実施形態を記載してきた。それでもなお、本発明の精神および範囲から逸れることなく様々な改変を行い得ることが理解される。従って、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-FCを含む経口医薬組成物であって、モノリシック(monolithic)固形錠剤型であり、5-FCを被験体の上部胃腸管に長時間にわたって放出する、前記医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の親水性マトリックス形成ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
親水性マトリックス形成ポリマーが、カーボポール、ポリビニルアセテートとポビドンベースのポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、およびポリエチレンオキシド(PolyOx)の1種以上である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
親水性マトリックス形成ポリマーが、組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
5-FCが約100mg〜約2000mgの量で存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
親水性ポリマーが組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成し、5-FCが約100mg〜約2000mgの量で存在する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
約275〜285nmでのUV検出を伴う5-FC USP(米国薬局方)法を用い、USP II型溶解装置(パドル法)により、37℃において、900ml水中にて75rpmで測定して、約4〜約12時間以内に約80%を超える5-FCのin vitro溶解速度を示す、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
摂食した被験体に対する単回用量の経口投与後、組成物が、(i)tmedian:約3時間以上;(ii)tmax:約3時間以上;および(iii)t1/2:約3〜8時間;を示す、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
5-FCが医薬組成物中に約500mgの量で存在し、摂食した被験体に対する500mgの医薬組成物の単回経口投与後に、以下:(i)5-FCのCmax:約2.0μg/ml〜約10.0μg/ml;(ii)tmax:約3時間以上;(iii)AUC:約20〜80μg*時間/mL;および(iv)t1/2:約3〜8時間;の1つ以上を示す、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
2gの前記組成物の単回投与後に、摂食したヒト被験体のAUCが、15〜40μg*時間/mLのAUCを24時間にわたって与える、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項11】
2グラムの5-FCを投与された摂食したヒト被験体のAUCが、100〜150μg*時間/mLのAUCを24時間にわたって与える、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
2グラムの5-FCを投与された摂食したヒト被験体のAUCが、120〜150μg*時間/mLのAUCを24時間にわたって与える、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
摂食したヒト被験体に2グラムの5-FCを投与すると、24時間の血清中の5-FC濃度が、約5〜15時間は10μg/mlを上回る、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項14】
摂食したヒト被験体に2グラムの5-FCを投与すると、24時間の血清中の5-FC濃度が、5時間以上は10μg/mlを上回る、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
摂食したヒト被験体に2グラムの5-FCを投与すると、24時間の血清中の5-FC濃度が、7時間以上は10μg/mlを上回る、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
摂食したヒト被験体に対して2グラムの5-FCを投与すると、24時間の血清中の5-FC濃度が、10時間以上は10μg/mlを上回る、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
摂食したヒト被験体に対して1〜250mg/Kg/日を分割投与で約7日間もしくは約5半減期またはそれ以上の間連日投与した後に、24時間の5-FCの平均血清濃度が約1〜200μg/mlである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項18】
摂食したヒト被験体に対して1〜250mg/Kg/日を分割投与で6週間反復投与した後に、24時間の5-FCの平均血清濃度が約1〜200μg/mlである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
摂食したヒト被験体に対して1〜250mg/Kg/日を分割投与で7日間もしくは約5半減期またはそれ以上の間連日投与した後に、24時間の5-FCの平均血清濃度が約30〜80μg/mlである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
摂食したヒト被験体に対して1〜250μg/Kg/日を分割投与で7日間もしくは約5半減期またはそれ以上の間連日投与した後に、24時間の5-FCの平均血清濃度が約40〜70μg/mlである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記組成物が1日当たり1〜4回投与される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項22】
摂食したヒトにおける総AUCが、現在の5-FCの即時放出製剤の約75〜125%である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
ヒトの治療のため、1日当たり製剤が1〜4回投与される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することによって真菌感染症を治療する方法。
【請求項25】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の医薬組成物を、哺乳動物の癌を治療するためのシトシンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドと併用して投与することによって、哺乳動物の癌を治療する方法。
【請求項26】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の医薬組成物を、哺乳動物の癌を治療するためのシトシンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドと併用して投与することによって、哺乳動物の癌を治療する方法。
【請求項27】
以前にシトシンデアミナーゼ遺伝子治療を受けたことのある哺乳動物の癌を治療する方法であって、該哺乳動物に製薬上有効量の請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項28】
シトシンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドがウイルスベクターによって送達される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
シトシンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドが非ウイルスベクターによって送達される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
ウイルスベクターがレトロウイルスベクターである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
レトロウイルスベクターが、複製能のない(non-replication competent)レトロウイルスベクターである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
レトロウイルスベクターが、複製能のあるレトロウイルスベクターである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
レトロウイルスベクターが、組換え複製能のあるレトロウイルスベクターである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
複製能のあるレトロウイルスベクターが、腫瘍レトロウイルスベクターを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
複製能のあるレトロウイルスベクターが、シトシンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドの5'側に内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む、請求項32〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
シトシンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドが、ENVポリヌクレオチドの3'側にある、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
真菌感染症が、カンジダ属の種(Candida spp.)、クリプトコッカス属の種(Cryptococcus spp.)、スポロスリックス属の種(Sporothrix spp.)、アスペルギルス属の種(Aspergillus spp.)、クラドスポリウム属の種(Cladosporium spp.)、エクソフィアラ属の種(Exophila spp.)およびフィアロフォラ属の種(Phialophora spp.)からなる群から選択される真菌による感染である、請求項24に記載の方法。
【請求項39】
真菌治療有効量のアンホテリシンBの投与をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
真菌治療有効量のフルコナゾールまたはイトラコナゾールの投与をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項41】
真菌症が足真菌症である、請求項24に記載の方法。
【請求項42】
ロイコボリンの投与をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項43】
癌細胞中で5-フルオロシトシンを5-フルオロウラシルに変換し得るシトシンデアミナーゼを含む発現ベクターの十分量と、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物の癌治療有効量とを、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、癌を治療する方法。
【請求項44】
癌が固形腫瘍を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
組成物を1日3回投与する、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
組成物を1日2回投与する、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
組成物を1日1回投与する、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
発現ベクターがレトロウイルスベクターである、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
レトロウイルスベクターが、複製能のあるレトロウイルスベクターである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
レトロウイルスベクターが、複製欠損レトロウイルスベクターである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
ロイコボリンを投与するステップをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
癌に罹患している被験体を治療する方法であって、以下:
腫瘍サイズを同定するステップ;
シトシンデアミナーゼをコードするポリヌクレオチドに連結されたIRESを有するカセットを含む複製能のあるレトロウイルスベクターの治療単位数を決定するステップ;
該腫瘍サイズおよび治療単位に基づいて5-FC製剤の用量を計算するステップ;
複製能のあるレトロウイルスベクターを被験体に投与するステップ;
5-FC製剤の該用量を投与するステップ
を含む、前記方法。
【請求項53】
前記用量が、1日当たり1〜4回投与される約1〜250mg/kgを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記用量が、1日当たり1〜4回投与される約50〜150mg/kgを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記用量が、1日当たり1〜4回投与される約75〜175mg/kgを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記用量が、1日当たり2〜4回投与される約37.5mg/kgを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
5-FC製剤が、5-FCプロドラッグを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
被験体の腎機能を測定するステップをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
被験体のクレアチニンクリアランスを測定するステップをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
5-フルオロシトシン(5-FC)を含む経口徐放製剤であって、食物と共に投与するとバイオアベイラビリティが増強し、投与後、摂食状態におけるAUCの絶食状態におけるAUCに対する比が、(i)約1.5〜約3.0;(ii)約1.8〜約2.5;および(iii)約1.9〜約2.3;からなる群から選択される値を有する、前記経口徐放製剤。
【請求項61】
少なくとも1種の親水性マトリックス形成性ポリマーをさらに含む、請求項60に記載の経口徐放製剤。
【請求項62】
親水性マトリックス形成性ポリマーが、カーボポール、ポリビニルアセテートとポビドンベースのポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、およびポリエチレンオキシド(PolyOx)の1種以上である、請求項61に記載の経口徐放製剤。
【請求項63】
親水性マトリックス形成性ポリマーが、組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成する、請求項62に記載の経口徐放製剤。
【請求項64】
5-FCが、約100mg〜約2000mgの量で存在する、請求項61〜63のいずれか1項に記載の経口徐放製剤。
【請求項65】
親水性ポリマーが、組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成し、5-FCが約100mg〜約2000mgの量で存在する、請求項62に記載の経口徐放製剤。
【請求項66】
組成物が、約275〜285nmでのUV検出を伴う5-FC USP法を用い、USP II型溶解装置(パドル法)により、37℃において、900ml水中にて75rpmで測定して、約4〜約12時間以内に約80%を超える5-FCのin vitro溶解速度を示す、請求項60に記載の経口徐放製剤。
【請求項67】
5-フルオロシトシンを含む経口徐放製剤であって、投与後、Cmax(摂食時)/Cmax(絶食時)の比が、(i)約1.5〜約3.0および(ii)約1.8〜約2.4からなる群から選択される値を有する、前記経口徐放製剤。
【請求項68】
少なくとも1種の親水性マトリックス形成性ポリマーをさらに含む、請求項67に記載の経口徐放製剤。
【請求項69】
親水性マトリックス形成性ポリマーが、カーボポール、ポリビニルアセテートとポビドンベースのポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、およびポリエチレンオキシド(PolyOx)の1種以上である、請求項68に記載の経口徐放製剤。
【請求項70】
親水性マトリックス形成性ポリマーが、組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成する、請求項69に記載の経口徐放製剤。
【請求項71】
5-FCが、約100mg〜約2000mgの量で存在する、請求項67〜70のいずれか1項に記載の経口徐放製剤。
【請求項72】
親水性ポリマーが、組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成し、5-FCが約100mg〜約2000mgの量で存在する、請求項68に記載の経口徐放製剤。
【請求項73】
組成物が、約275〜285nmでのUV検出を伴う5-FC USP法を用い、USP II型溶解装置(パドル法)により、37℃において、900ml水中にて75rpmで測定して、約4〜約12時間以内に約80%を超える5-FCのin vitro溶解速度を示す、請求項67に記載の経口徐放製剤。
【請求項74】
5-フルオロシトシンを含む経口徐放製剤であって、食物と共に投与するとバイオアベイラビリティが増強し、投与後、摂食状態におけるAUC0-infが、フルシトシン即時放出型の絶食状態におけるAUCの約70%を超える、前記経口徐放製剤。
【請求項75】
前記摂食状態におけるAUCが、フルシトシン即時放出型の絶食状態におけるAUCの約125%未満である、請求項74に記載の製剤。
【請求項76】
前記摂食状態におけるAUCが、フルシトシン即時放出型の絶食状態におけるAUCの約80〜100%である、請求項74に記載の製剤。
【請求項77】
前記摂食状態におけるAUCが、フルシトシン即時放出型の絶食状態におけるAUCの約83〜95%である、請求項74に記載の製剤。
【請求項78】
少なくとも1種の親水性マトリックス形成性ポリマーをさらに含む、請求項74に記載の経口徐放製剤。
【請求項79】
親水性マトリックス形成性ポリマーが、カーボポール、ポリビニルアセテートとポビドンベースのポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、およびポリエチレンオキシド(PolyOx)の1種以上である、請求項78に記載の経口徐放製剤。
【請求項80】
親水性マトリックス形成性ポリマーが、組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成する、請求項79に記載の経口徐放製剤。
【請求項81】
5-FCが、約100mg〜約2000mgの量で存在する、請求項74〜80のいずれか1項に記載の経口徐放製剤。
【請求項82】
親水性ポリマーが組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成し、5-FCが約100mg〜約2000mgの量で存在する、請求項78に記載の経口徐放製剤。
【請求項83】
組成物が、約275〜285nmでのUV検出を伴う5-FC USP法を用い、USP II型溶解装置(パドル法)により、37℃において、900ml水中にて75rpmで測定して、約4〜約12時間以内に約80%を超える5-FCのin vitro溶解速度を示す、請求項74に記載の経口徐放製剤。
【請求項84】
5-フルオロシトシンを含む経口徐放製剤であって、投与後、摂食状態におけるCmaxが、フルシトシン即時放出型の絶食状態におけるCmaxの約90%未満である、前記経口徐放製剤。
【請求項85】
前記摂食状態におけるCmaxが、フルシトシン即時放出型の絶食状態におけるCmaxの約30%を超える、請求項84に記載の製剤。
【請求項86】
前記摂食状態におけるCmaxが、フルシトシン即時放出型についての絶食状態におけるCmaxの約50〜85%である、請求項84に記載の製剤。
【請求項87】
少なくとも1種の親水性マトリックス形成性ポリマーをさらに含む、請求項84に記載の経口徐放製剤。
【請求項88】
親水性マトリックス形成性ポリマーが、カーボポール、ポリビニルアセテートとポビドンベースのポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、およびポリエチレンオキシド(PolyOx)の1種以上である、請求項87に記載の経口徐放製剤。
【請求項89】
親水性マトリックス形成ポリマーが、組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成する、請求項88に記載の経口徐放製剤。
【請求項90】
5-FCが約100mg〜約2000mgの量で存在する、請求項84〜89のいずれか1項に記載の経口徐放製剤。
【請求項91】
親水性ポリマーが組成物の約10重量パーセント〜約40重量パーセントを構成し、5-FCが約100mg〜約2000mgの量で存在する、請求項87に記載の経口徐放製剤。
【請求項92】
組成物が、約275〜285nmでのUV検出を伴う5-FC USP法を用い、USP II型溶解装置(パドル法)により、37℃において、900ml水中にて75rpmで測定して、約4〜約12時間以内に約80%を超える5-FCのin vitro溶解速度を示す、請求項84に記載の経口徐放製剤。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−526918(P2011−526918A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516833(P2011−516833)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/049322
【国際公開番号】WO2010/002937
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(510337436)トカジェン インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】