説明

Aβ関連障害の処置のための方法およびその組成物

本発明は、治療上有効量のCK1モジュレーターを、それを必要とする患者に投与することを含む、Aβペプチド関連障害、例えば、アルツハイマー病を処置する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2006年10月25日に出願された米国仮出願番号60/854,333に基づく優先権を主張し、その全体を引用により本明細書の一部とする。
【0002】
技術分野
本発明は、アミロイド-β(AベータまたはAβ)ペプチドの過剰産生を含む疾患、例えば、アルツハイマー病(AD)の処置におけるCK1阻害剤の新規使用に関する。
【背景技術】
【0003】
Aβがアルツハイマー病の発症における原因物質であることは、広く受け入れられている。Aβペプチドは、アミロイド-β前駆体タンパク質(アルツハイマー病関連前駆体タンパク質またはAPP)の代謝産物であり、主に、40乃至42アミノ酸からなり、それぞれ、Aβ1-40 (“Aβ40”)およびAβ1-42 (“Aβ42”)と呼ばれる。Aβ40およびAβ42は、APPのC末端付近で生じる2つの酵素学的切断により産生される。この切断に関与する酵素であるアスパルチルプロテアーゼベータ-セクレターゼ(“BACE”)およびプレセニリン依存性プロテアーゼγ-セクレターゼ(“γ-セクレターゼ”)は、それぞれ、AβのN末端およびC末端を産生する。Aβのアミノ末端は、596番目のメチオニン残基と597番目のアスパラギン酸残基の間で、β-セクレターゼ切断により形成される(APP 695アイソフォームに基づき番号付与)。γ-セクレターゼは、さまざまな位置(このβ-セクレターゼ切断産物のC末端の38-、40-または43-番目の残基)で切断し、Aβペプチドを放出する。第3の酵素α-セクレターゼは、β-およびγ-切断サイトの間の前駆体タンパク質を切断し、したがって、Aβ産生を妨害し、非病原性であるP3として既知の約3 kDaのペプチドを放出する。β-およびα-セクレターゼ切断はまた、それぞれ、sAPPβおよびsAPPαとして既知である、APPの可溶性分泌末端断片を生じる。sAPPα断片は、神経保護的であることが示されている。これらのセクレターゼはまた、他の重要なタンパク質のプロセッシングに関与し得る。例えば、γ-セクレターゼはまた、Notch-1タンパク質を切断する。
【0004】
正常な個体では、Aβペプチドは、2つの主要な形態、すなわち、多数のAβ-40 (また、Aβ1-40として既知である)型および少数のAβ42 (また、Aβ1-42として既知である)型で見出され、それぞれ、異なるCOOH末端を有する。ADの主な組織学的病変は、罹患した脳領域で生じる老人斑および神経原線維変化である。老人斑は、Aβペプチド、主に、Aβ40およびAβ42からなる。健康な神経細胞は、Aβ42と比較して少なくとも10倍のAβ40を産生するが、プラークは、より大きな割合の溶解性が低いAβ42を含む。家族性アルツハイマー病の最も一般的な形態を患う患者は、Aβ42型の量の増加を示す。Aβ40型は、アミロイドプラークの早期沈着に関連しない。対照的に、Aβ42型は、実質プラーク(parenchymal plaques)で、早期に、主に蓄積し、Aβ42が家族性アルツハイマー病患者におけるアミロイドプラーク沈着で、重要な役割を果たす強い証拠が存在する。神経原線維変化は、凝集したtauタンパク質からなり、ADにおけるそれらの役割は、はっきりしていない。AD症状は、プラークよりも脳全体のAβと最も強い相関を示す。AD症例の約10%は、APPまたはプレセニリン1およびプレセニリン2遺伝子における突然変異の常染色体優性遺伝から生じる。両方の場合において、全AβまたはAβ42対Aβ40の増加した産生が生じる。
【0005】
上記したとおり、アルツハイマー病は、神経毒性ペプチドAβの蓄積と関連することが広く信じられている。Aβは、BACEおよびγ-セクレターゼによるAPPの一連の切断により産生されるが、これらの酵素の選択的阻害剤を開発する主な努力は、限定的な成功をもたらしているのみである。例えば、多くのγ-セクレターゼ阻害剤は、それらが、正常な発生において重要なタンパク質であるNotchの切断を阻害するという欠点に悩まされている。
【0006】
BACEおよびγ-セクレターゼに加えて、カゼインキナーゼ1 (“CK1”)はまた、Aβ-40およびAβ-42ペプチドの産生に関与している。例えば、CK1δ□ mRNAは、AD脳のサンプルでアップレギュレートされることが示されており(Yasojima, K. et al. (2000) Brain Res 865, 116-20)、tauとの病的結合に関与し得る(Schwab, C. et al., (2000) Neurobiol Aging 21, 503-10)。興味深いことに、アルツハイマーの分野で最も研究されたキナーゼの1つであるグリコーゲンシンターゼキナーゼ3 (GSK-3)は、それらがプライミングキナーゼにより前リン酸化された場合のみ、その基質をリン酸化し得て、CK1は、数個のGSK-3プライミングキナーゼ(PKA、CK1、CK2、Cdk5およびDYRK1A)の1つである(例えば、Meijer, L. et al., (2004) Trends Pharmacol Sci 25, 471-80を参照のこと)。また、CK1がCdk5(ADに関与する他のプロテインキナーゼ)の上流の制御因子であることが示されている(Liu, F. et al., (2001) Proc Natl Acad Sci U S A 98, 11062-8)。さらに、CK1は、BACEをリン酸化し、その細胞内局在を制御する(Pastorino, L., Ikin, A. F., Nairn, A. C., Pursnani, A. & Buxbaum, J. D. (2002) Mol Cell Neurosci 19, 175-85.)。CK1はまた、PS2をリン酸化することが示されている(Walter, J., Grunberg, J., Schindzielorz, A. & Haass, C. (1998) Biochemistry 37, 5961-7)。
【0007】
マウスでは、CK1は、単量体として機能するように見える8個の遺伝子(α、γ1、γ2、γ3、δ、ε1、ε2およびε3)のファミリーからなる。ファミリーのメンバーは、40から180個のアミノ酸のサイズからなる可変C末端領域に結合した、高度に保存された290個のN末端触媒ドメイン残基を含む。異なるアイソフォームは、異なる神経細胞集団で発現するおよび/または異なる神経細胞集団に向けること、したがって、異なる基質に対する接近方法を有し得ることが可能である。CK1の制御に関しては、ほとんど知られていない。CK1は、基本的に活性化しているが、特定のアイソフォーム(特に、CK1δおよびε)は、それらのC末端領域での阻害性自己リン酸化により制御される(Zhai, L. et al., (1995) J Biol Chem 270, 12717-24)。特に、CK1εのC末端領域は、複数の部位でリン酸化され、酵素活性は、神経細胞での代謝型グルタミン酸受容体の刺激に応答して、セリン/スレオニンホスファターゼ、カルシニューリンの活性化を含むシグナル伝達経路による脱リン酸化後に、増加し得ることが示されている(Liu, F., et al., (2001) Proc Natl Acad Sci U S A 98, 11062-8; Liu, S. J. et al., (2003) J Neurochem 87, 1333-44)。
【0008】
CK1は、細胞質および核の両方に局在し; CK1のC末端領域は、個々のアイソフォームの異なる細胞内局在(例えば、核対細胞質)を促進することが示されている。多くのタンパク質が、非神経組織でCK1アイソフォームと相互作用し、特定のシグナル伝達経路へのその標的化を生じることが見出されている(Amit, S., et al. (2002) Genes Dev 16, 1066-76; Cong, F., et al., (2004) Mol Cell Biol 24, 2000-11; Davidson, G., et al., (2005) Nature 438, 867-72)。
【0009】
CK1と細胞膜および細胞骨格の結合が、また、報告されている(Ahmed, K. (1994) Cell Mol Biol Res 40, 1-11; Vancura, A. et al., (1994) J Biol Chem 269, 19271-8; Walter, J., Schnolzer, M., Pyerin, W., Kinzel, V. & Kubler, D. (1996) J Biol Chem 271, 111-9)。神経では、CK1は、転写因子およびあるシナプス小胞タンパク質を含むさまざまなタンパク質をリン酸化する(Issinger, O. G. (1993) Pharmacol Ther 59, 1-30; Gross, S. D. et al. (1995) J Cell Biol 130, 711-24)。主に脳で発現するCK1δおよびCKε(Gross, S. D. & Anderson, R. A. (1998) Cell Signal 10, 699-711)は、ドーパミンシグナル伝達(DARPP-32リン酸化)、サーカディアンリズム(mPerリン酸化)および脳受容体シグナル伝達(Desdouits, F.,et al.. (1995) Proc Natl Acad Sci U S A 92, 2682-5; Kloss, B., et al. (2001) Neuron 30, 699-706; Singh, T. J. et al. (1995) FEBS Lett 358, 267-72)を含むが、これらに限定されないいくつかの重要な脳過程に関与している。
【発明の概要】
【0010】
発明の要約
我々は、本発明において、驚くべきことに、構成的活性型CK1εが、β-アミロイドの形成を増加させ、CK1阻害剤が、内在的レベルのCK1を発現する細胞および構成的活性型CK1εを過剰発現する細胞で産生されるβ-アミロイドペプチドの形成を減少させ得ることを発見した。重要なことに、CK1活性の阻害がβ-アミロイド形成を減少させる条件下で、Notch切断の阻害は観察されない。実験は、CK1の影響が、γ-セクレターゼ切断サイトのレベルで生じることを証明している。したがって、CK1は、ADを含むAβ関連障害のための新規薬剤標的を提供する。本発明はまた、CK1活性および/またはCK1遺伝子発現のモジュレーターを同定するための、ならびにヒトおよび家畜の患者でのAβ関連障害の処置のためにそのようなモジュレーターを使用するための方法を提供する。本発明はまた、該モジュレーターを含む医薬組成物を提供する。
【0011】
本願は、CK1が、ADを含むが、これに限定されないAβペプチドの過剰生産により特徴づけられる状態(本明細書では、総称して“Aβ関連障害”と呼ぶ)を処置するための新規治療薬の開発に関する適当な標的であることの発見に関する。したがって、1つの局面では、本発明は、a) インビトロもしくはインビボで、候補モジュレーターのCK1の活性を阻害する、および/またはCK1遺伝子発現を阻害する能力をアッセイすることを含み、さらに、b) 同定したCK1阻害モジュレーターの、アルツハイマー病の動物モデルで、および/またはアルツハイマー病を患う対象での臨床試験で観察される病理学的影響を回復に向かわせる能力をアッセイすることを含み得るアルツハイマー病を含むAβ関連障害の処置に有用なモジュレーターを同定する方法に関する。
【0012】
例えば、本発明は、例えば、下記の方法のいずれかにしたがって、処置を必要とする対象にAβペプチドの蓄積を阻害するか、または減少させるのに有効な量のCK1モジュレーター、好ましくは、CK1εモジュレーターを投与することを含む、アルツハイマー病を含むAβ関連障害を処置するか、制御するか、または管理する方法(方法1)に関し、ここで、該モジュレーターは、例えば、該対象のCK1酵素活性を阻害する、および/またはCK1遺伝子発現を阻害するか、またはCK1細胞内局在を修飾するか、またはCK1タンパク質安定性を調節する:
【0013】
1.1 Aβ関連障害が、とりわけ、脳で、異常なタンパク質凝集体の蓄積、例えば、アミロイド斑および神経原線維変化、例えば、tauもしくはアミロイドタンパク質、例えば、Aβの沈殿により特徴づけられるすべての疾患である、方法1;
【0014】
1.2 疾患が、アルツハイマー病、進行性核上麻痺、ダウン症候群、記憶および認知障害、認知症、アミロイドニューロパシー、脳の炎症、神経および脳損傷、脳血管アミロイドーシス、アミロイドーシスを伴う脳出血、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン疾患ならびに/またはtauもしくはアミロイドタンパク質、例えば、Aβの異常な発現または蓄積に関連する血管の、神経学的な、および/または神経変性疾患から選択される、方法1または1.1;
【0015】
1.3 該疾患が、アルツハイマー病である、上記のいずれかの方法;
【0016】
1.4 該モジュレーターが、CK1阻害剤である、上記のいずれかの方法;
【0017】
1.5 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのインドリン-2-オン誘導体、例えば、IC261である、上記のいずれかの方法;
【0018】
1.6 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのトリアリールイミダゾール、例えば、D4476またはSB-431542またはSB-203580である、上記1-1.4のいずれかの方法;
【0019】
1.7 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのイソキノリンスルホンアミド、例えば、CK1-7である、上記1-1.4のいずれかの方法;
【0020】
1.8 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形での5,6-ジクロロ-1-ベータ-D-リボフラノシルベンズイミダゾール(DRB)である、上記1-1.4のいずれかの方法;
【0021】
1.9 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのピロロアゼピン誘導体、例えば、ヒメニアルディシンである、上記1-1.4のいずれかの方法;
【0022】
1.10 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのアミノピリミジン-インドール、例えば、マタイレシノールである、上記1-1.4のいずれかの方法;
【0023】
1.11 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形での5-ヨードツベルシジンである、上記1-1.4のいずれかの方法;
【0024】
1.12 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのメリジアニンEである、上記1-1.4のいずれかの方法;
【0025】
1.13 該モジュレーターが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAアプタマーおよび二本鎖RNAからなる群から選択される任意の1個またはそれ以上の物質を含み、ここで、該物質が、CK1遺伝子発現を阻害するように設計される、上記1-1.4のいずれかの方法;
【0026】
1.14 該モジュレーターが、CK1に対する抗体、またはその断片を含む、上記1-1.4のいずれかの方法;
【0027】
1.15 該抗体が、例えば、CK1キナーゼ活性を阻害するか、CK1細胞内局在を修飾するか、またはCK1タンパク質安定性を調節することができる、上記1-1.4のいずれかの方法;
【0028】
1.16 さらに、有効量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を投与することを含む、上記のいずれかの方法;
【0029】
1.17 該アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が、遊離または薬学的に許容される塩形でのドネペジル(Aricept)、リバスチグミン(Exelon)、およびガランタミン(Reminyl)から選択される、方法1.16;
【0030】
1.18 下記の組成物1-1.17のいずれかにしたがって、組成物を投与することを含む、上記1-1.4、1.16または1.17のいずれかの方法;
【0031】
1.19 該CK1モジュレーターが、CK1εを特異的に調節する、上記のいずれかの方法;
【0032】
1.20 CK1モジュレーターが、100 μM未満のIC50でCK1活性を阻害することができる化合物である、上記のいずれかの方法であって、例えば、CK1活性が、例えば、Agostinis P, et al. FEBS Lett. 1989 Dec 18;259(1):75-8に開示されているとおり、β-カゼインA2タンパク質のSer-22で、CK1リン酸化サイトに基づくペプチド(例えば、Asp-Asp-Asp-Glu-Glu-Ser-Ile-Thr-Arg-Arg、配列番号1)をリン酸化するCK1酵素の活性と定義される、方法。
【0033】
他の局面では、本発明は、処置を必要とする対象に、有効量のCK1モジュレーター、例えば、上記した1-1.15のいずれかの方法に記載したモジュレーターを含む医薬組成物を投与することを含む、アルツハイマー病を含むAβ関連障害を処置する方法に関する。さまざまな態様で、該医薬組成物は、上記したCK1モジュレーターのいずれかを含む。
【0034】
他の局面では、本発明は、例えば、下記の組成物のいずれかにしたがって; 薬学的に許容される希釈剤または担体と組合わせるか、もしくはそれらと結合させた; 例えば、処置を必要とする対象にAβペプチドの蓄積を阻害するか、または減少させることにより、アルツハイマー病を含むAβ関連障害を処置するのに十分な量でCK1モジュレーターを含む医薬組成物(組成物1)に関し、ここで、該モジュレーターは、例えば、CK1の酵素活性を阻害するか、またはCK1タンパク質安定性もしくは細胞内局在を修飾するか、および/またはCK1遺伝子発現を阻害し得る:
【0035】
1.1 Aβ関連障害が、とりわけ、脳で、異常なタンパク質凝集体の蓄積、例えば、アミロイド斑および神経原線維変化、例えば、tauもしくはアミロイドタンパク質、例えば、Aβの沈殿により特徴づけられるすべての疾患である、組成物1;
【0036】
1.2 疾患が、アルツハイマー病、進行性核上麻痺、ダウン症候群、記憶および認知障害、認知症、アミロイドニューロパシー、脳の炎症、神経および脳損傷、脳血管アミロイドーシス、アミロイドーシスを伴う脳出血、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン疾患ならびに/またはtauもしくはアミロイドタンパク質、例えば、Aβの異常な発現または蓄積に関連する血管の、神経学的な、および/または神経変性疾患から選択される、組成物1または1.1;
【0037】
1.3 該疾患が、アルツハイマー病である、上記のいずれかの組成物;
【0038】
1.4 該モジュレーターが、CK1阻害剤である、上記のいずれかの組成物;
【0039】
1.5 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのインドリン-2-オン誘導体、例えば、IC261である、上記のいずれかの組成物;
【0040】
1.6 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのトリアリールイミダゾール、例えば、D4476またはSB-431542またはSB-203580である、上記1-1.4のいずれかの組成物;
【0041】
1.7 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのイソキノリンスルホンアミド、例えば、CK1-7である、上記1-1.4のいずれかの組成物;
【0042】
1.8 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形での5,6-ジクロロ-1-ベータ-D-リボフラノシルベンズイミダゾール(DRB)である、上記1-1.4のいずれかの組成物;
【0043】
1.9 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのピロロアゼピン誘導体、例えば、ヒメニアルディシンである、上記1-1.4のいずれかの組成物;
【0044】
1.10 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのアミノピリミジン-インドール、例えば、マタイレシノールである、上記1-1.4のいずれかの組成物;
【0045】
1.11 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形での5-ヨードツベルシジンである、上記1-1.4のいずれかの組成物;
【0046】
1.12 該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのメリジアニンEである、上記1-1.4のいずれかの組成物;
【0047】
1.13 該モジュレーターが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAアプタマーおよび二本鎖RNAからなる群から選択される任意の1個またはそれ以上の物質を含み、ここで、該物質が、CK1遺伝子発現を阻害するように設計される、上記1-1.4のいずれかの組成物;
【0048】
1.14 該モジュレーターが、CK1に対する抗体、またはその断片を含む、上記1-1.4のいずれかの組成物;
【0049】
1.15 該抗体が、例えば、CK1キナーゼ活性を阻害するか、CK1細胞内局在を修飾するか、またはCK1タンパク質安定性を調節することができる、上記1-1.4のいずれかの組成物;
【0050】
1.16 さらに、有効量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含む、上記のいずれかの組成物;
【0051】
1.17 該アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が、遊離または薬学的に許容される塩形でのドネペジル、リバスチグミン、およびガランタミンから選択される、組成物1.16;
【0052】
1.18 CK1モジュレーターが、100 μM未満のIC50でCK1活性を阻害することができる化合物である、上記のいずれかの組成物であって、例えば、CK1活性が、例えば、Agostinis P, et al. FEBS Lett. 1989 Dec 18;259(1):75-8に開示されているとおり、β-カゼインA2タンパク質のSer-22で、CK1リン酸化サイトに基づくペプチド(例えば、Asp-Asp-Asp-Glu-Glu-Ser-Ile-Thr-Arg-Arg、配列番号1)をリン酸化するCK1酵素の活性と定義される、組成物。
【0053】
他の局面では、本発明は、CK1モジュレーターを用いた処置のための適当な候補であり得る、アルツハイマー病を含むAβ関連障害を患う対象を診断する方法に関するものであり、該対象からの生物学的サンプル中の、このタンパク質のレベルを検出することを含み、ここで、正常なコントロールと比較して増加したレベルを有する患者が、CK1モジュレーター処置のための適当な候補であり得る。
【0054】
また他の局面では、本発明は、CK1モジュレーターを用いた処置のための適当な候補であり得る、アルツハイマー病を含むAβ関連障害を患う対象を診断する方法に関するものであり、該対象からの生物学的サンプル中の、このタンパク質のmRNAレベルをアッセイすることを含み、ここで、正常なコントロールと比較して増加したレベルを有する患者が、CK1モジュレーター処置のための適当な候補であり得る。
【0055】
また他の局面では、
(a) 対象でのCK1 mRNAおよび/またはタンパク質レベルをアッセイし; そして
(b) コントロールと比較して、増加したレベルのCK1 mRNAおよび/またはタンパク質レベルを有する対象に、Aβ関連障害の病理学的影響を処置するのに十分な量のCK1モジュレーターを、例えば、Aβ斑の形成を減少させるのに十分な量で、例えば、上記した1-1.20のいずれかの方法にしたがって投与することを含む、アルツハイマー病を含むAβ関連障害を処置する方法を提供する。
【0056】
また、本発明の他の局面では、患者に由来する体内組織サンプルで、CK1もしくは関連制御ポリペプチド、もしくはCK1基質をコードするポリヌクレオチドの発現、またはCK1もしくは関連制御ポリペプチド、もしくはCK1基質もしくはそれらの断片のレベルを検出するのに必要な構成要素を含むアッセイ法およびキットを提供し、該キットは、例えば、該ポリペプチドもしくは基質、もしくはそれらの断片に結合する抗体、または該ポリヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを含む。好ましい態様では、そのようなキットはまた、キットの構成要素が使用されるべき手順を詳述した指示書を含む。
【0057】
本発明はまた、アルツハイマー病を含むAβ関連障害の処置用もしくは軽減用医薬の製造におけるCK1モジュレーターの使用に関し、例えば、該モジュレータは、1-1.20のいずれかの方法で説明したとおりであり、該医薬は、1-1.18のいずれかの組成物にしたがった組成物である。
【0058】
発明の詳細な説明
本明細書に記載した発明は、記載した特定の方法論、プロトコール、および試薬が変わり得るので、これらに限定することを意図するものではない。また、本明細書で使用する用語は、特定の態様を記載することのみを目的とするものであり、いかなる方法でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0059】
他に指示がなければ、本明細書で使用するすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと類似もしくは同等のすべての方法および材料を、本発明の実施または試験において使用し得るが、好ましい方法、装置および材料を本明細書に記載する。本明細書で言及したすべての出版物は、出版物で報告され、本発明に関連して使用し得る材料および方法論を記載および開示するために、引用により本明細書の一部とする。
【0060】
本発明の実施に際して、分子生物学における多くの慣用的技術を使用し得る。これらの技術は既知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II, and III, 1997 (F. M. Ausubel ed.); Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II, 1985 (D. N. Glover ed.); Oligonucleotide Synthesis, 1984 (M. L. Gait ed.); Nucleic Acid Hybridization, 1985, (Hames and Higgins); Transcription and Translation, 1984 (Hames and Higgins eds.); Animal Cell Culture, 1986 (R. I. Freshney ed.); Immobilized Cells and Enzymes, 1986 (IRL Press); Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series, Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, 1987 (J. H. Miller and M. P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory); およびMethods in Enzymology Vol. 154 and Vol. 155 (Wu and Grossman, and Wu, eds., respectively)で説明される。
【0061】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形は、内容が明確に他のことを示していなければ、複数参照を含む。したがって、例えば、“抗体”に対する参照は、当業者に既知の1個またはそれ以上の抗体およびその等価物などに対する参照であるなどである。
【0062】
“Aβ”、“Aβペプチド”、“アミロイドβ”などの用語は同義であり、上記したとおり、ベータアミロイド前駆体タンパク質(β-APP)に由来する約38-43アミノ酸の1個またはそれ以上のペプチドコンポーネントを意味する。
【0063】
“CK1”なる用語は、ポリペプチドカゼインキナーゼ1(Desjardins PR et al, 1972 Dec 50(12):1249-59; Matsumura S. and Takeda M. Biochim Biophys Acta. 1972 Nov 10;289(1):237-41; Gross SD and Anderson RA. Cell Signal. 1998 Nov;10(10):699-711)を意味する。該用語は、ヒトまたはすべての他の種由来のホモログ、部分形態、アイソフォーム、前駆体型、全長ポリペプチド、CK1配列を含む融合タンパク質または上記のいずれかの断片を含むが、これらに限定されない、本ポリペプチドのいずれかのおよびすべての形態を意味する。実際に、多くのCK1アイソフォームが同定され、α、γ1、γ2、γ3、δ、ε1、ε2、ε3アイソフォームを含むが、これらに限定されない。CK1およびそのさまざまなアイソフォームは、当業者に既知であり、開示されており、例えば、GenBank受託番号P48729、P48730、BC006490、P49674、Q9Y6M4、P78368、Q9HCP0(2006年10月16日現在)、米国特許第6,555,328号; 第6,800,283号; 第6,060,296号; Fish et al. J. Biol. Chem. 270:14875-14883, 1995; Guo et al. Int. J. Mol. Med. 10:227-230, 2002; Kusuda et al. Genomics 32:140-143, 1996を参照のこと(それらの全体を引用により本明細書の一部とする)。また、該用語は、すべての種の自然に生じる起源から、例えば、DNAライブラリーから、および発現系を含む遺伝学的に改変した宿主細胞から単離されるか、または、例えば、自動ペプチド合成機を用いた化学合成もしくは該方法の組合わせにより産生されたCK1を意味することを意図する。該ポリペプチドを単離し、製造する方法は、当分野で理解されている。
【0064】
“処置”および“処置する”なる語句は、疾患の症状の予防および処置または軽減ならびに疾患の原因の処置を包含するものとして理解されるべきである。
【0065】
“Aβ関連障害の病理学的影響”、“Aβ関連障害の症状”などの用語は、記憶障害(軽い忘却から重篤で衰弱性の記憶損失の範囲にあり得る)、神経変性、老人斑および/もしくは神経原線維変化の形成および/または存在ならびに神経細胞欠損を意味するが、これらに限定されない。
【0066】
CK1を“調節する”物質(例えば、CK1モジュレーター)の能力は、CK1の酵素活性を阻害するか、または該タンパク質の細胞内局在を調節するか、または該タンパク質の安定性を変えるか(例えば、リン酸化、グリコシル化などのような翻訳後修飾による)、および/またはCK1遺伝子発現を阻害する物質の能力を意味するが、これらに限定されない。そのような調節はまた、他のタンパク質、例えば、関連制御タンパク質またはCK1により修飾されるタンパク質および/またはCK1基質がCK1と相互作用する能力に影響を与えることを含み得る。
【0067】
本明細書で使用する“核酸配列”は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、およびそれらの断片もしくは部分、ならびに一本鎖もしくは二本鎖であり得るゲノムもしくは合成起源のDNAまたはRNAを意味し、センスもしくはアンチセンス鎖を示す。本明細書で使用する“ポリヌクレオチド”は、DNAまたはRNAを意味する。
【0068】
本明細書で使用する“二本鎖RNA”なる用語は、RNAi仲介遺伝子サイレンシングのための任意のそしてすべての慣用的な技術を包含することを意味する。そのような技術は、当業者に既知であり、遺伝子発現をノックダウンするために、dsRNA、siRNAおよびshRNAの使用を含むが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で使用する“アンチセンス”なる用語は、特定のDNAもしくはRNA配列に相補的なヌクレオチド配列を意味する。“アンチセンス鎖”なる用語は、“センス鎖”に相補的な核酸鎖に関連して使用される。アンチセンス分子は、興味のある遺伝子を、ウイルスプロモーターに逆方向に連結させ、相補鎖の合成を可能にする合成を含む、すべての方法により産生し得る。細胞に導入されると、この転写鎖は、細胞により産生された天然の配列に結合し、二本鎖を形成する。これらの二本鎖は、次いで、さらなる転写または翻訳を妨害する。“負の”なる表示は、ときに、アンチセンス鎖に関連して使用され、“正の”は、ときに、センス鎖に関連して使用される。
【0070】
本明細書で意図するアンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、RNAアプタマー、リボザイムおよび二本鎖RNAは、“CK1の核酸配列に向けられ”ており、その結果、選択されたCK1のヌクレオチド配列は、CK1遺伝子発現の遺伝子特異的阻害を生み出す。例えば、CK1ヌクレオチド配列の知識は、mRNAに対する最も強いハイブリダイゼーションを提供するアンチセンス分子を設計するために使用し得る。同様に、リボザイムは、CK1の特異的なヌクレオチド配列を認識し、それを切断するように合成し得る(Cech. J. Amer. Med Assn. 260:3030 (1988))。遺伝子発現の標的化阻害における使用のための、該分子の設計のための技術は、当業者に既知である。
【0071】
本明細書で使用する“サンプル”なる用語は、最も広い意味で使用される。対象からの生物学的サンプルは、血液、尿またはCK1タンパク質レベル、活性または遺伝子発現をアッセイし得る他の生物学的物質を含み得る。生物学的サンプルは、神経材料、例えば、脳生検およびとりわけ皮質もしくは新皮質生検(例えば、中前頭回(ブロードマン領域8); 下前頭回(ブロードマン領域44); 前帯状回(ブロードマン領域32); 上側頭回、中側頭回、および下側頭回(各々、ブロードマン領域22、21、および20); 嗅内皮質(ブロードマン領域36/28); 下頭頂小葉(ブロードマン領域7); および一次視覚野(ブロードマン領域17))または非神経サンプル、例えば、血液細胞、脳脊髄液、または皮膚生検(例えば、Aβペプチドに関して、Joachim CL et al., Nature, 1989 Sep 21;341(6239):226-30に記載されたとおり)を含み得て、そこから、全RNAを、慣用的なガラスチップマイクロアレイ技術、例えば、Affymetrixチップ、RT-PCRまたは他の慣用的な方法を用いて、遺伝子発現プロファイリングのために精製し得る。
【0072】
本明細書で使用するとき、“抗体”なる用語は、抗原決定基に結合可能なインタクト分子およびそれらの断片、例えば、Fa、F(ab')2、およびFvを意味する。CK1ポリペプチドに結合する抗体は、インタクトポリペプチドまたは免疫抗原として興味のある小分子ペプチドを含む断片を用いて製造し得る。動物を免役するために使用するポリペプチドまたはペプチドは、RNAの翻訳に由来するか、または化学的に合成し得て、必要であれば、担体タンパク質に結合し得る。ペプチドに化学的に結合する通常使用される担体は、ウシ血清アルブミンおよびチログロブリンを含む。結合ペプチドは、次いで、動物(例えば、マウス、ラットまたはウサギ)を免役するために使用される。
【0073】
本明細書で使用する“ヒト化抗体”なる用語は、アミノ酸が、ヒト抗体により類似するように、非抗原結合領域で置換されているが、なお、もとの結合能力を保持する抗体分子を意味する。
【0074】
“治療上有効量”は、Aβ関連障害を処置するのに十分な薬剤(例えば、CK1モジュレーター)の量である。例えば、CK1モジュレーターの治療上有効量は、アルツハイマー病で見られるAβペプチドの病的蓄積を予防する量であり得る。
【0075】
本明細書で使用する“CK1活性の分子制御因子”、“関連制御タンパク質”、“関連制御ポリペプチド”などの用語は、慣用的な方法、例えば、本明細書に記載した方法を用いて、当業者により同定され得る、CK1の制御に関与するポリペプチドを意味する。
【0076】
本明細書で定義した“Aβ関連障害”は、健全なコントロールのレベルと比較して、(すべての大きさの)Aβペプチドの異常なレベルにより特徴づけられる、すべての身体的もしくは精神的障害を含むが、これらに限定されない。そのような障害は、早期発症型アルツハイマー病、晩期発症型認知症、および家族性アルツハイマー病(FAD)を含むアルツハイマー病のいずれかの、およびすべての形態、軽度認知機能障害ならびにAβの異常な産生により仲介されるか、またはそれらに影響を受けるすべての他の状態、例えば、遺伝性脳出血(脳アミロイド血管症)、ダウン症候群、またはパーキンソン病を含むが、これらに限定されない。
【0077】
“対象”は、すべてのヒトまたは非ヒト生物を意味する。
【0078】
本発明は、構成的活性型CK1εの過剰発現が、Aβペプチド産生の増加を生じるという驚くべき発見に基づく。この観察は、いくつかの構造的に非類似なCK1阻害剤が、内在性のAβペプチド産生をかなり減少させるというさらなる発見を生じた。したがって、CK1は、CK1タンパク質が関与することが以前は知られていなかった疾患状態であるアルツハイマー病の処置用治療薬の開発に関する有用な薬剤標的である。
【0079】
したがって、1つの局面では、本発明は、a) インビトロまたはインビボでの、CK1の活性を調節し、および/またはCK1遺伝子発現を調節する候補モジュレーターの能力をアッセイすることを含み、さらに、b) アルツハイマー病の動物モデルで、および/またはアルツハイマー病を患う対象での臨床試験で観察される病理学的影響を回復に向かわせる、同定したモジュレーターの能力をアッセイすることを含み得る、アルツハイマー病を含むが、これらに限定されない、Aβ関連障害を処置するのに有用なモジュレーターを同定する方法に関する。特定の局面では、該モジュレーターは、CK1の活性を阻害し、および/またはCK1遺伝子発現を阻害し得る。
【0080】
慣用的なスクリーニングアッセイ(インビトロおよびインビボ)を、CK1キナーゼ活性および/またはCK1遺伝子発現のモジュレーター(例えば、阻害剤)を同定するために使用し得る。CK1活性レベルは、慣用的な酵素活性アッセイ法を使用し、対象からの生物学的サンプルを用いて、該対象でアッセイし得る。例えば、CK1活性は、精製した組み換えCK1酵素(例えば、慣用的なバキュロウイルス技術を用いて産生される)および基質として、βカゼイン A2タンパク質のSer-22残基におけるCK1リン酸化サイトに基づく合成ペプチド(Asp-Asp-Asp-Glu-Glu-Ser-Ile-Thr-Arg-Arg)(配列番号1)(例えば、Agostinis P, et al. FEBS Lett. 1989 Dec 18;259(1):75-8に記載されている)を用いてアッセイし得る。このペプチドは、それが、CK1によりリン酸化されるが、他の典型的なSer-Thrキナーゼ、例えば、カゼインキナーゼ-2 (CK-2)、PKAおよびPKCによりリン酸化されないことが既知であるので、特異的なCK1活性を同定するのに有用である。CK1のリン酸化は、このペプチドのSer-6(βカゼイン A2タンパク質のSer-22に相当する)で生じ、Thr-8は、影響を受けない。ペプチドのKmは、βカゼイン A2タンパク質(40 μM)よりも高く、Vmaxは、かなり類似している(Agostinis P, et al. FEBS Lett. 1989 Dec 18;259(1):75-8)。CK1の酵素活性は、放射性標識ATPの存在下、組み換え酵素(CK1)およびペプチド基質を用いて、37℃で30分間のインキュベーション後、測定し得る。次いで、この活性を、増加した濃度の試験される化合物の存在下、所望により、ポジティブコントロールとして、既知のCK1阻害剤を用いて、再評価し得る。これらの化合物のIC50値は、用量応答曲線から概算し得て; 該ペプチドのKmが、天然のタンパク質よりも高いことを踏まえると、マイクロモル範囲(100 μM未満)の阻害を有する化合物は、さらなるアッセイのために特に関心がある。
【0081】
CK1遺伝子発現(例えば、mRNAレベル)は、また、例えば、慣用的なノーザン解析、リアルタイムPCRまたは市販で入手可能なマイクロアレイを含む、当業者に既知の方法を用いて決定し得る。さらに、CK1の試験化合物による調節(例えば、阻害)および/または関連制御タンパク質レベルおよび/またはCK1基質は、ELISA抗体に基づくアッセイまたは蛍光標識反応アッセイを用いて検出し得る。これらの技術は、ハイスループットスクリーニングのために容易に利用可能であり、当業者に既知である。これらの研究から集めたデータは、Aβ関連障害の処置のための治療的有用性を有するモジュレーターを同定するために使用し得る。例えば、アルツハイマー病を処置する可能性のある有用なモジュレーターは、次いで、慣用的な方法にしがって、慣用的なアルツハイマー病の生きた動物モデルで、および/またはアルツハイマー病を患うヒトでの臨床試験で、さらにアッセイし得て、該モジュレーターの、インビボでアルツハイマー病の病理学的影響を予防するか、または軽減する能力を評価し得る。
【0082】
本明細書に開示した方法による解析のための候補モジュレーターは、CK1を阻害することが既知な化学的化合物およびすべてのレベルで本タンパク質における効果がまだ特徴づけられていない化合物を含む。調節活性を有することが既知の化合物は、当業者に既知の動物モデルで、または臨床試験で、直接アッセイし得る。
【0083】
CK1阻害活性を有するすべての化合物は、必ずしも特異的にCK1のみを阻害する化合物のみではないが、有用な治療薬であることが証明され得る。例えば、混合CK1阻害剤(例えば、CK1のいくつかのアイソフォームを阻害し得るが、他は阻害しない化合物)は、本発明において有用であり得る。
【0084】
CK1阻害剤は、しばしば、少なくとも1個のイミダゾール環(すなわち、5員環中に2個の窒素原子を含む、複素環化合物)または1個のピロリン環(すなわち、5員環中に1個の窒素原子を含む、複素環化合物)を有する化合物を含むが、これらに限定されない。いくつかの場合には、1個もしくは2個の窒素原子を含む5員環は、縮合するか、または窒素原子を欠いているか(ベンゼン)、もしくは1個の窒素原子を含んでいるか(ピリジン)、もしくは2個の窒素原子を含んでいる(ピリミジン)、少なくとも1個の6員環で置換される。
【0085】
本発明において有用なCK1特異的阻害剤を含む既知のCK1阻害剤は、下記を含むが、これらに限定されない:
【0086】
a. IC261: 遊離または薬学的に許容される塩形での(3E)-3-[(2,4,6-トリメトキシフェニル)メチルイデン]-1H-インドール-2-オン; Behrend et al., Oncogene 19: 5303-5313 (2000), Mashhoon et al., J Biol Chem 275: 20052-20060 (2000)に開示され、Calbiochemから入手可能である;
【0087】
b. 例えば、米国特許第6,465,593号(引用により、本明細書の一部とする)に開示されたトリアリールイミダゾール; 例えば、D4476: 例えば、Rena et al. EMBO Reports 5:60-65 (2004)に開示され、Calbiochemから入手可能な、遊離または薬学的に許容される塩形での4-(4-(2,3-ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン-6-イル)-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)ベンズアミド; および/またはSB-431542: 例えば、Inman et al., Molecular Pharmacology 62:65-74 (2002)に開示され、Sigma-Aldrich Chemical Co.から入手可能な、遊離または薬学的に許容される塩形での4-(4-(ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)ベンズアミド; またはSB-203580: 例えば、Godl, K. et al PNAS USA 2003 Dec 23;100(26):15434-9に開示され、BioSource Internationalから入手可能な、遊離または薬学的に許容される塩形での4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)-1H-イミダゾール;
【0088】
c. CK1-7: Chijiwa et al., J Biol Chem 264: 4924-4927 (1989)に開示されている;
【0089】
d. 遊離または薬学的に許容される塩形でのN-(2-アミノエチル)-5-クロロナフタレン-1-スルホンアミド、例えば、HCl塩; Inagaki, M., et al. 1986. Mol. Pharmacol. 29: 577. Turner, E.J.H., et al. 2003. Br. J. Haematol. 120: 894に開示され、Calbiochemから入手可能である;
【0090】
e. 例えば、Meggio F. et al. Eur J Biochem. 1990 Jan 12; 187(1):89-94に開示され、そしてCalbiochemから入手可能な、遊離または薬学的に許容される塩形での5,6-ジクロロ-1-ベータ-D-リボフラノシルベンズイミダゾール(DRB);
【0091】
f. 例えば、Meijer L, et al. Chem Biol. 2000 Jan;7(1):51-63に開示され、そしてBIOMOL Internationalから入手可能な、遊離または薬学的に許容される塩形でのピロロアゼピン誘導体、例えば、ヒメニアルジシン;
【0092】
g. 例えば、Yokoyama, T et al. Biol Pharm Bull. 2003 Mar; 26(3):371-4に開示され、そしてCayman Chemicalから入手可能な、遊離または薬学的に許容される塩形でのアミノピリミジン-インドール、例えば、マタイレシノール;
【0093】
h. 例えば、Massillon, D., Biochem J. 1994 Apr 1;299 (Pt 1):123-8に開示され、そしてBIOMOL Internationalから入手可能な、遊離または薬学的に許容される塩形での5-ヨードツベルシジン; および
【0094】
i. 例えば、Gompel, M. et al. Bioorg Med Chem Lett. 2004 Apr 5;14(7):1703-7に開示された、遊離または薬学的に許容される塩形での臭素化3-(2-アミノピリミジン)-インドール、例えば、メリジアニン、例えば、メリジアニンE。
【0095】
考え得るCK1モジュレーターは、本明細書で開示した化合物の代謝産物であり得ることを、本明細書では意図する。さらに、CK1モジュレーターを、モジュレーターの活性を最適化するように、例えば、安定性を改善するために、血液脳関門を超えた送達を改善するために、親油性を改善するために、および/または細胞毒性を減少させるために、化学的に置換し得ることを、本明細書では意図する。この種の化学修飾は、当業者に既知の慣用的な方法にしたがい、達成し得る。
【0096】
他の局面では、本発明は、アルツハイマー病を含むAβ関連障害を処置する方法に関し、処置を必要とする対象にAβの蓄積を阻害するのに有効なCK1モジュレーターの量を含む医薬組成物を投与することを含む。そのようなモジュレーターは、CK1ポリペプチドに向けられた抗体またはその断片を含む。ある態様では、医薬組成物は、ヒトCK1ポリペプチドまたはヒトCK1ポリペプチドの部分に高度に選択的な抗体を含む。CK1に対する抗体は、対象でタンパク質の凝集を生じ、したがって、キナーゼの活性を阻害するか、または減少させ得る。そのような抗体はまた、例えば、直接活性部位と相互作用することによるか、または活性部位への基質の接近を妨害することにより、CK1活性を阻害するか、または減少させ得る。CK1抗体はまた、CK1の制御に関与し得て、キナーゼ活性のために必要であるタンパク質-タンパク質相互作用を妨害することにより、CK1活性を阻害するために使用し得る。CK1抗体はまた、例えば、細胞拡散または特定の細胞コンパートメントへの接近に影響を与えることにより、CK1細胞内局在に影響を与え得る。阻害活性を有する抗体、例えば、本明細書に記載した抗体は、当業者に既知の標準的なアッセイにしたがい、製造および同定し得る。
【0097】
CK1抗体はまた、本明細書に記載した処置法と共に、診断的に使用し得る。例えば、当業者は、対象でのCK1のレベルを定量するために、慣用的な方法にしたがい、これらの抗体を使用し得て; 増加したレベルは、対象でのAβ関連障害もしくは傾向を示し得て、次いで、患者は、CK1阻害剤で、例えば、上記の1-1.20のいずれかの方法にしたがい、処置され得る。さらに、例えば、異なるCK1レベルは、アルツハイマー病のさまざまな臨床形態もしくは重篤度を示し得る。そのような情報はまた、下記の一部の患者を同定するために有用であり得る: 慣用的な治療を用いた処置に対して応答し得るか、または応答し得ない患者; 特定の治療が禁忌であり得る患者; および/またはCK1モジュレーターを用いた治療が好ましい患者。したがって、対象で、CK1のメッセンジャーレベルを定量することは、診断のために、および適当な治療を決定するのに有用であり; 適当なコントロール個体と比較して、このタンパク質の増加したmRNAレベルを有する対象は、CK1阻害剤を用いた処置のための適当な候補であると考えられることを、本明細書では意図する。
【0098】
他の局面では、本発明は、
(a) CK1のポリヌクレオチドまたはその断片;
(b) (a)のそれに相補的なヌクレオチド配列;
(c) CK1ポリペプチド、またはその断片; または
(d) CK1ポリペプチドに対する抗体
を含む、診断キットに関する。当然のことながら、すべてのそのようなキットにおいて、(a)、(b)、(c)または(d)は、実質的な構成要素を含み得る。また、該キットは、上記したCK1関連制御タンパク質またはCK1により修飾されたタンパク質および/またはCK1基質のレベルを検出するために設計された構成要素(a)-(d)を含み得ることを意図する。
【0099】
同様に、CK1タンパク質レベルもしくはキナーゼ活性をモニターし、および/またはCK1遺伝子発現(mRNAレベル)を検出することを、臨床試験手順の一部として、例えば、上記方法1-1.20にしたがい、例えば、ある処置レジメンの効果を決定するために、使用し得ることを、本明細書では意図する。例えば、慣用的な治療を受けるアルツハイマー病の患者を評価し、CK1レベル、活性および/または遺伝子発現レベルが望まれるよりも高い患者(すなわち、コントロール患者でのレベルよりも高いレベルの患者)を同定し得る。これらのデータに基づき、患者の投与レジメンを調整し、および/または投与される薬剤の型を修飾し得る。上記したとおり、患者のCK1レベルをモニターすることは、患者の身体的および/または精神的状態の定量的評価を提供し得ることを、本明細書では意図する。
【0100】
患者の治療を最適化するために考慮される因子は、処置される特定の状態、処置される特定のほ乳類、個々の患者の臨床状態、活性化合物の送達部位、活性化合物の特定の型、投与方法、投与計画、および医療従事者に既知の他の因子を含む。投与される治療上有効量の活性化合物は、そのような考慮をもとに制御され、Aβ関連障害、好ましくは、アルツハイマー病の処置のために必要な最小量である。
【0101】
CK1に対する適当な抗体または関連制御タンパク質または基質は、商業的な起源から取得し得るか、または慣用的な方法にしたがい製造し得る。例えば、特異的に、1個またはそれ以上の異なる発現遺伝子エピトープを認識できる抗体の産生方法が、本明細書に記載されている。そのような抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化もしくはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab')2断片、Fab発現ライブラリーにより産生される断片、抗イディオタイプ(抗-Id)抗体、および上記のいずれかのエピトープ結合断片を含むが、これらに限定されない。
【0102】
本明細書に記載したCK1ポリペプチドに対する抗体の製造のために、例えば、さまざまな宿主動物を、ポリペプチド、もしくはその部分での注射により免疫し得る。そのような宿主動物は、ウサギ、マウスおよびラットを含むが、これらに限定されない。フロイント(完全および不完全)、ゲル状鉱物、例えば、水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油状エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG (カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)を含むが、これらに限定されない、さまざまなアジュバントを、宿主の種類に依存して、免疫応答を増加させるために使用し得る。
【0103】
ポリクローナル抗体は、抗原、例えば、標的遺伝子産物、またはその抗原性官能誘導体で免疫した動物の血清に由来する抗体分子の異種集団である。ポリクローナル抗体の産生のために、宿主動物、例えば、上記した動物を、また、上記したアジュバントで補充したポリペプチド、またはその部分での注射により免疫し得る。
【0104】
特定の抗原に対する抗体の同種集団であるモノクローナル抗体は、持続した細胞株の培養により抗体分子の産生を提供する、すべての技術により取得し得る。これらは、Kohler and Milsteinのハイブリドーマ技術(1975, Nature 256:495-497; および米国特許第4,376,110号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., 1983, Immunology Today 4:72; Cole et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030)、およびEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)を含むが、これらに限定されない。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびすべてのそのサブクラスを含む、すべての免疫グロブリンクラスであり得る。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養し得る。インビボでのmAbの高い力価の産生により、これは、現在、好ましい産生の方法である。
【0105】
さらに、適当な抗原特異性を有するマウス抗体分子からの遺伝子を適当な生物学的活性を有するヒト抗体分子からの遺伝子と共にスプライシングすることにより、“キメラ抗体”(Morrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci., 81:6851-6855; Neuberger et al., 1984, Nature, 312:604-608; Takeda et al., 1985, Nature, 314:452-454)の産生のために開発された技術を使用し得る。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子であり、例えば、マウスmAbに由来する可変もしくは超可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子である。
【0106】
あるいは、一本鎖抗体の産生のために記載された技術(米国特許第4,946,778号; Bird, 1988, Science 242:423-426; Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; およびWard et al., 1989, Nature 334:544-546)を、異なって発現する遺伝子一本鎖抗体を産生するために適合させ得る。一本鎖抗体は、アミノ酸架橋により、Fv領域の重鎖および軽鎖断片を結合させることにより形成され、一本鎖ポリペプチドを生じる。
【0107】
最も好ましくは、“ヒト化抗体”の産生に有用な技術を、本明細書に開示したポリペプチドに対する抗体、断片、誘導体、および機能的等価物を産生するように適応させ得る。そのような技術は、米国特許第5,932,448号; 第5,693,762号; 第5,693,761号; 第5,585,089号; 第5,530,101号; 第5,910,771号; 第5,569,825号; 第5,625,126号; 第5,633,425号; 第5,789,650号; 第5,545,580号; 第5,661,016号;および第5,770,429号に開示されており、そのすべての開示を、それらの全体で引用により本明細書の一部とする。
【0108】
特定のエピトープを認識する抗体断片は、既知の技術により作製し得る。例えば、そのような断片は、抗体分子のペプシン消化により産生し得るF(ab')2断片およびF(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することにより作製し得るFab断片を含むが、これらに限定されない。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築し得て(Huse et al., 1989, Science, 246:1275-1281)、望む特異性を有するモノクローナルFab断片の素早い、容易な同定を可能にする。
【0109】
本明細書に記載した抗体の検出は、標準的なELISA、FACS解析、およびインビトロもしくはインビボで使用される標準的なイメージング技術を用いて達成し得る。検出は、抗体を検出可能物質に結合させる(すなわち、物理的に結合させる)ことにより、容易にし得る。検出可能物質の例は、さまざまな酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質を含む。適当な酵素の例は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、(3-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含み; 適当な補欠分子族の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み; 適当な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンを含み; 発光物質の例は、ルミノールを含み; 生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンを含み、そして、適当な放射性物質の例は、125I、131I、35Sまたは3Hを含む。
【0110】
検出の容易さのために特に好ましいのは、サンドウィッチアッセイであり、その中には、多くの変形が存在し、そのすべては、本発明に包含されることを意図する。例えば、典型的な上記のアッセイでは、非標識抗体を固相基質に固定し、試験するサンプルを、結合分子と接触させる。適当な期間(抗体-抗原二元複合体の形成を可能にするのに十分な時間)のインキュベーション後、検出可能シグナルを誘導できるレポーター分子で標識した二次抗体を加え、抗体-抗原-標識抗体の三元複合体の形成のために十分な時間、インキュベートする。次いで、すべての未反応物質を洗浄し、抗原の存在をシグナルの観察により決定するか、または既知の抗原量を含むコントロールサンプルと比較することにより定量し得る。上記のアッセイにおける変形は、サンプルおよび抗体を、結合抗体に同時に加える同時のアッセイ、または標識抗体および試験するサンプルを最初に結合させ、インキュベートし、未標識表面結合抗体に加えるリバースアッセイを含む。これらの変形は、当業者に既知であり、軽微な変形の可能性は、容易に明らかである。本明細書で使用する“サンドウィッチアッセイ”は、基本的なtwo-site技術におけるすべての変形を包含することを意図する。本発明のイムノアッセイのために、唯一の制限因子は、標識抗体が、CK1ポリペプチドまたは関連制御タンパク質、基質またはその断片に特異的な抗体であることである。
【0111】
最も通常使用されるレポーター分子は、酵素、フルオロホアまたは放射線核種含有分子である。酵素イムノアッセイの場合には、酵素を、通常、グルタルアルデヒドまたは過ヨード酸塩により、二次抗体と結合させる。しかしながら、容易に認識されるように、当業者に既知のさまざまなライゲーション技術が存在する。通常使用される酵素は、とりわけ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、グルコールオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼを含む。特定の酵素と共に使用される基質は、一般に、相当する酵素による加水分解で、検出可能な色変化の産生のために選択される。例えば、p-ニトロフェニルホスフェートは、アルカリホスファターゼ複合体と共に使用するために適当であり; ペルオキシダーゼ複合体のために、1,2-フェニレンジアミンまたはトルイジンが通常使用される。上記した発色性基質よりも蛍光生成物を産生する蛍光発生基質を使用することが、また可能である。次いで、適当な基質を含む溶液を、三次複合体に加える。基質を、二次抗体に結合させた酵素と反応させ、定性的な視覚シグナルを生じ、さらに、通常は、分光光度的に定量し得て、血清サンプル中に存在する興味のあるポリペプチドまたはポリペプチド断片の量の評価を提供する。
【0112】
あるいは、蛍光化合物、例えば、フルオレセインおよびローダミンを、それらの結合能力を変えることなく、化学的に抗体と結合させ得る。特定の波長の光での照射により活性化されると、蛍光色素標識抗体は、光エネルギーを吸収し、分子の励起状態を誘導し、その後、特徴的なより長い波長で光を放出する。発光は、光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色として現れる。免疫蛍光およびEIA技術は、当分野で十分に確立されており、特に、本発明の方法のために好ましい。しかしながら、他のレポーター分子、例えば、放射性同位体、化学発光もしくは生物発光分子を、また、使用し得る。必要とされる使用に適合させるように手順を変える方法は、当業者に、容易に明らかである。
【0113】
本発明の医薬組成物はまた、核酸レベルで、CK1の発現を阻害する物質を含み得る。そのような分子は、CK1核酸の適当なヌクレオチド配列に向けられたリボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、RNAアプタマーおよび/または二本鎖RNAを含む。これらの阻害分子は、過度の負荷もしくは実験なしに、当業者に既知の慣用的な技術を用いて作製し得る。例えば、遺伝子発現の修飾(例えば、阻害)は、本明細書に記載したポリペプチドをコードする遺伝子の制御領域、すなわち、プロモーター、エンハンサー、およびイントロンに対するアンチセンス分子、DNAまたはRNAを設計することにより取得し得る。例えば、転写開始点、例えば、開始点から-10と+10位の間に由来するオリゴヌクレオチドを使用し得る。それにもかかわらず、遺伝子のすべての領域を、アンチセンス分子を設計するために使用して、mRNAに対する最大のハイブリダイゼーションを提供するものを作製し得て、そのような適当なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、当業者に既知の標準的なアッセイ手順により作製し、同定し得る。
【0114】
同様に、遺伝子発現の阻害は、“三重らせん”塩基対方法論を用いて達成し得る。三重らせん対は、二重らせんが、ポリメラーゼ、転写因子、または制御分子に結合するために十分に開裂する能力の阻害を生じるため、有用である。三重らせんDNAを用いた最近の治療法の進歩は、文献(Gee, J.E. et al. (1994) In: Huber, B.E. and B. I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, N.Y.)に記載されている。これらの分子はまた、転写産物がリボソームに結合するのを妨げることによりmRNAの翻訳を妨害するように設計し得る。
【0115】
酵素的RNA分子であるリボザイムは、また、RNAの特異的切断を触媒することにより、遺伝子発現を阻害するために使用し得る。リボザイム作用の機構は、リボザイム分子の相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、その後のエンドヌクレアーゼ的切断を含む。使用し得る例は、遺伝子配列、例えば、CK1遺伝子のエンドヌクレアーゼ的切断を特異的かつ効率的に触媒するように設計し得る、改変“ハンマーヘッド”または“ヘアピン”モチーフリボザイム分子を含む。
【0116】
すべての潜在的なRNA標的内の特定のリボザイム切断サイトは、最初、リボザイム切断サイトに関する標的分子を探索することにより同定し、それは、下記の配列を含む: GUA、GUUおよびGUC。いったん同定されると、切断サイトを含む標的遺伝子の領域に相当する15から20個のリボヌクレオチドの短いRNA配列を、オリゴヌクレオチドを操作不能にし得る二次構造特徴に関して評価し得る。候補標的の適合性を、また、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対する接近可能性を試験することにより評価し得る。
【0117】
リボザイム法は、細胞をリボザイムに曝すか、または細胞内で、そのような小分子RNAリボザイム分子の発現を誘導することを含む(Grassi and Marini, 1996, Annals of Medicine 28: 499-510; Gibson, 1996, Cancer and Metastasis Reviews 15: 287-299)。本明細書に記載した少なくとも1個の遺伝子に相当するmRNAを標的とするハンマーヘッドおよびヘアピンリボザイムの細胞内発現は、該遺伝子によりコードされたタンパク質を阻害するために使用し得る。
【0118】
リボザイムは、リボザイム配列を組み込んだRNAオリゴヌクレオチドの形態で、細胞に直接送達するか、または望むリボザイムRNAをコードする発現ベクターとして、細胞に導入し得る。リボザイムは、通常、mRNAを切断し、それにより、細胞内のmRNAの存在量を修飾することにおいて触媒的に有効な十分な数で、インビボで発現させ得る(Cotten et al., 1989 EMBO J. 8:3861-3866)。特に、慣用的で既知の規則にしたがって設計し、例えば、標準的なホスホラミダイト化学により合成したDNA配列をコードするリボザイムを、tRNAをコードする遺伝子のアンチコドンステムおよびループにおける制限酵素サイトに連結し、次いで、当分野で通常の方法により、興味のある細胞に形質転換し、発現させ得る。好ましくは、誘導性プロモーター(例えば、グルココルチコイドまたはテトラサイクリン応答エレメント)は、また、この構築体に導入され、その結果、リボザイム発現は、選択的に制御され得る。飽和的使用のために、高度におよび構成的に活性なプロモーターを使用し得る。tDNA遺伝子(すなわち、tRNAをコードする遺伝子)は、それらの小サイズ、高い転写率、および異なる種類の組織でのユビキタスな発現のために、本出願において有用である。
【0119】
したがって、リボザイムは、通常、実質的にすべてのmRNA配列を切断するように設計し得て、細胞は、制御可能かつ触媒的に有効な量のリボザイムを発現させるために、通常、そのようなリボザイム配列をコードするDNAで形質転換し得る。したがって、細胞内の実質的にすべてのmRNA種の存在量(abundance)を、修飾するか、または変化させ得る。
【0120】
リボザイム配列は、アンチセンスヌクレオチドに関して記載したものと実質的に同じ方法で修飾し得て、例えば、リボザイム配列は、修飾塩基部分を含み得る。
【0121】
RNAアプタマーはまた、RNAの存在量もしくは活性を修飾するために、細胞に導入し、発現させ得る。RNAアプタマーは、特異的にそれらの翻訳を阻害し得るタンパク質、例えば、TatおよびRev RNA (Good et al., 1997, Gene Therapy 4: 45-54)のための特異的なRNAリガンドである。
【0122】
遺伝子発現の遺伝子特異的阻害は、また、慣用的なRNAi技術を用いて達成し得る。そのような技術を記載した多くの文献が存在し、例えば、WO 99/32619; Miller et al. Cell Mol Neurobiol 25:1195-207 (2005); Lu et al. Adv Genet 54:117-42 (2005)を含む。
【0123】
本発明のアンチセンス分子、三重らせんDNA、RNAアプタマーおよびリボザイムは、核酸分子の合成のための当業者に既知のすべての方法により、製造し得る。これらは、化学的にオリゴヌクレオチドを合成する方法、例えば、固相ホスホラミダイト化学合成法を含む。あるいは、RNA分子は、本明細書に記載したポリペプチドの遺伝子をコードするDNA配列のインビトロおよびインビボ転写により作製し得る。そのようなDNA配列は、適当なRNAポリメラーゼプロモーター、例えば、T7またはSP6を有するさまざまなベクターに組み込み得る。あるいは、アンチセンスRNAを構成的にもしくは誘導的に合成するcDNA構築体を、細胞株、細胞、または組織に導入し得る。
【0124】
ベクターは、多くの利用可能な手段により、細胞または組織に導入し得て、インビボ、インビトロまたはエクスビボで使用し得る。エクスビボ治療のために、ベクターを、患者から取得した幹細胞に導入し、同じ患者に戻す自家移植のために、クローン的に増殖させ得る。トランスフェクションおよびリポゾーム注射による送達は、当業者に既知の方法を用いて達成し得る。
【0125】
CK1の遺伝子発現を阻害する上記方法に加えて、本明細書は、当業者が、CK1(を含むが、これらに限定されない)を含む、本明細書に記載したポリペプチドのインビボ転写を阻害するための小分子もしくは他の天然産物を同定および使用し得ることを意図する。例えば、当業者は、慣用的な方法を用いて、細胞株の培養培地からのサンプルに容易に適用し得る、CK1のためのアッセイを確立し得る。このアッセイを用いて、細胞株は、CK1を発現する細胞株を発見するようにスクリーニングされ、例えば、96ウェルプレートで培養される。細胞株でのCK1の制御が、インビボでの組織での発現に近接する程、細胞株でのCK1発現の小分子修飾因子がまた、インビボでCK1を修飾し得る可能性が高まる。細胞株で、遺伝子発現のいくつかの修飾因子、例えば、デキサメタゾン、ホルボールエステルの効果の比較により、使用される最も適当な細胞株の選択を可能にする。その後、スクリーニングは、単に、一定の時間、各ウェルに加えた異なる化合物で細胞を培養し、次いで、CK1活性/mRNAレベルをアッセイすることからなり得る。
【0126】
上記のアッセイでCK1の検出を容易にするために、ルシフェラーゼまたは他の市販で入手可能な蛍光タンパク質を、適当なマーカータンパク質として、CK1のプロモーターに遺伝学的に融合させ得る。CK1のATGの上流配列、すなわち、CK1のプロモーターは、NCBIゲノム配列に対するBLASTで、GenBankヒトCK1配列GI:33873527 (例えば、2006年9月8日現在)からの配列を用いることにより、ゲノム配列データから同定し得る。ヒトゲノムDNAからの2kbまたはより長い断片を増幅するための2組の入れ子(nested)PCRプライマーは、容易に設計し、試験し得る。プロモーター断片は、ヒト細胞での発現のために設計されたすべてのプロモーターレスレポーター遺伝子ベクター(例えば、Clontechプロモーターレス増強蛍光タンパク質ベクターpECFP-1、pEGFP-1、またはpEYFP)に、容易に挿入し得る。次いで、スクリーニングは、適当な時間、各ウェルに加えられた異なる化合物と共に細胞を培養し、その後、レポーター遺伝子活性をアッセイすることから成り得る。次いで、有望な化合物を、例えば、インビボアルツハイマー病モデルを用いて、インビボでのCK1活性および/またはmRNAレベルにおける影響をアッセイする。例えば、適当な培養時間、培養条件、レポーターアッセイ、およびインビボでCK1の転写を阻害するのに有用な小分子もしくは他の天然産物を同定するのに使用される他の方法論のようなさらなる方法の詳細が、当業者に既知である。
【0127】
さらに、CK1のcDNAおよび/またはタンパク質は、インビボで、例えば、神経系の組織で、CK1により修飾され得る他のタンパク質を同定するために使用し得る。したがって、同定したタンパク質は、例えば、アルツハイマー病を処置するための薬剤スクリーニングに関して使用し得る。CK1の下流もしくは上流にある遺伝子(とりわけ、翻訳後修飾の場合に関連する遺伝子)を同定するために、例えば、特異的なCK1阻害剤を用いて、アルツハイマー病の動物を処置し、該動物を殺し、適当な組織を除去し、これらの細胞から全RNAを単離し、コントロール動物(薬剤を投与されていない動物)と比較して変えられたメッセンジャーレベルを同定するために、標準的なマイクロアレイアッセイ技術を使用する、慣用的な方法を使用し得ることを意図する。
【0128】
CK1の過剰発現は、Aβペプチド産生の増加を誘導するという知見に基づき、慣用的なインビトロもしくはインビボアッセイは、例えば、CK1の過剰発現またはCK1の増加した安定性を生じる可能性のある遺伝子を同定するために使用し得る。したがって、同定した遺伝子によりコードされたこれらの関連制御タンパク質は、アルツハイマー病の処置のための有力な治療薬であり得る薬剤をスクリーニングするために使用し得る。例えば、慣用的なレポーター遺伝子アッセイを使用し得て、そこでは、CK1のプロモーター領域は、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、LacZ)の上流に位置し、構築体を適当な細胞(例えば、HEK293、CHOまたはHela細胞株)にトランスフェクトし、次いで、細胞を、慣用的な技術を用いて、レポーター遺伝子の発現の検出により、CK1プロモーターの活性化を生じる上流の遺伝子に関してアッセイし得る。
【0129】
当業者は、Aβ関連障害、例えば、アルツハイマー病を処置する方法として、例えば、慣用的な方法にしたがい、これらのタンパク質に対する抗体を設計することにより、および/またはそのようなタンパク質に関する遺伝子を標的とする阻害性アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイムおよびRNAアプタマーを設計することにより、関連制御タンパク質またはCK1により修飾されるタンパク質またはCK1基質に関する遺伝子の機能および/または発現を阻害できることが、本明細書では意図される。該障害の処置のために、そのような阻害物質を含む医薬組成物が、また、意図される。
【0130】
アルツハイマー病を含むAβ関連障害を処置するのに有用な本明細書に開示した医薬組成物は、そのような障害の症状を処置するために、治療上有効量で患者に投与される。“治療上有効量”は、Aβ関連障害を処置するのに十分な薬剤(例えば、CK1モジュレーター)の量である。例えば、CK1モジュレーターの治療上有効量は、アルツハイマー病で見られるAβペプチドの病的蓄積を減らすか、または予防することが示された量、および/またはそのような蓄積の病理学的影響を減らすか、または予防する量である。アルツハイマー病を患う個体の身体的および/または精神的状態の改善は、臨床的認知症尺度(CDR)評価、ミニメンタルステート試験(MMSE)、ミニコグ試験、ならびにポジトロン断層法(PET)、核磁気共鳴画像法(MRI)およびコンピューター断層法(CT)を含む(が、これらに限定されない)、当業者に既知の技術および技術の組合わせにより測定し得る。さらなる診断テストは、さまざまな生化学的マーカーおよび活性に関する体液および組織の試験を含み得る。
【0131】
好ましくは、本明細書に記載した処置の方法での使用のための本発明の化合物は、CK1の阻害剤である。本クラスの化合物は、構造的に類似しない化合物を包含し得て、上記したCK1阻害剤(a)-(i)を含む(が、これらに限定されない)ことを本明細書では意図する。他の適当なCK1阻害剤は、当業者に明らかである。また、CK1阻害剤は、CK1アイソフォーム、例えば、CK単量体酵素α、γ1、γ2、γ3、δ、ε1、ε2およびε3のいずれか、またはすべてに作用し得ることを意図する。
【0132】
CK1モジュレーターは、単一治療剤として本明細書に開示した方法で使用し得るが、それらはまた、他の活性剤と組合わせて、またはそれらとの共投与のために使用し得ることを、本明細書では意図する。例えば、任意の1個またはそれ以上のCK1モジュレーターを、アルツハイマー病の処置のために有用であることが証明された慣用的な薬剤と共に、同時に(simultaneously)、連続して、または同時に(contemporaneously)、投与し得る。これらの薬剤は、コリンエステラーゼ阻害剤、例えば、Razadyne(登録商標)(以前は、Reminyl(登録商標)として知られていた)(ガランタミン)、Exelon(登録商標)(リバスチグミン)、Aricept(登録商標)(ドネペジル)、およびCognex(登録商標)(タクリン)ならびにNamenda(登録商標)(メマンチン)、N-メチルD-アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニストを含む。さらに、アルツハイマー病の処置のために、まだFDAにより承認されていないが、最近、Aβレベルに影響を与えることが示された薬剤を、本明細書に記載し、意図したCK1モジュレーターと組合わせて、またはCK1モジュレーターとの共投与のために、使用し得る。これらの薬剤は、Gleevec(未同定標的)、GSK3βモジュレーター/阻害剤(例えば、LiCl、ケンパウロン)、およびCDK5モジュレーター/阻害剤(例えば、ロスコビチン)のような薬剤を含む。
【0133】
本発明はまた、
(i) 上記したすべての疾患もしくは状態の処置での、または上記した処置の方法での使用のためのCK1モジュレーター;
(ii) 上記した疾患もしくは状態を処置するための医薬の製造における、または上記した処置の方法での使用ための医薬の製造におけるCK1モジュレーターの使用; および
(iii) 上記した疾患もしくは状態の処置での使用のための、または上記した処置の方法での使用のための、薬学的に許容される希釈剤または担体と組合わせるか、または結合させたCK1モジュレーターを含む、医薬組成物
を提供する。
【0134】
本発明の調節物質は、医薬組成物として投与し得る。本発明による使用のためのそのような医薬組成物は、1個またはそれ以上の生理学的に許容される担体または賦形剤を用いた慣用的な方法で、製剤し得る。
【0135】
したがって、化合物ならびにそれらの生理学的に許容される塩および溶媒和物は、吸入もしくは注入(insufflation)(口または鼻を介して)による投与または局所的、経口、口腔、非経腸もしくは直腸投与のために製剤し得る。
【0136】
経口投与のために、医薬組成物は、例えば、薬学的に許容される賦形剤、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース); 増量剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム); 滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ); 崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム); または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)と共に、慣用的な手段により製造される錠剤もしくはカプセルの形態を取り得る。錠剤は、当業者に既知の方法で被覆し得る。経口投与のための液体製剤は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液の形態で服用され得るか、またはそれらは、使用前の水もしくは他の適当なビヒクルでの形成のための乾燥生成物として提供し得る。そのような液体製剤は、医薬的に許容される添加剤、例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用油); 乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア); 非水性ビヒクル(例えば、へんとう油、油状エステル、エチルアルコールまたは分画植物油); および保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸)と共に、慣用的な手段により製造し得る。製剤はまた、必要に応じて、緩衝塩、香味剤、着色剤および甘味剤を含み得る。
【0137】
経口投与のための製剤は、適当には、活性化合物の制御放出を提供するように製剤し得る。
【0138】
口腔投与のために、組成物は、慣用的な方法で製剤された錠剤またはトローチ剤の形態を取り得る。
【0139】
吸入による投与のために、本発明による使用のための化合物は、便利には、適当な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスの使用と共に、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で送達される。加圧型エアロゾルの場合には、用量単位形は、定量を送達するための弁を提供することにより、決定し得る。吸入器での使用のために、化合物の粉末混合物および適当な粉末ベース、例えば、ラクトースまたはスターチを含む、例えば、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジを製剤し得る。
【0140】
化合物は、注射による、例えば、ボーラス注入または持続注入による、非経腸投与のために製剤し得る。注射のための製剤は、単位用量形で、例えば、アンプルで、または複数投与容器で、添加保存剤と共に提供し得る。組成物は、油状もしくは水性ビヒクルでの懸濁液、溶液またはエマルジョンとして、そのような形態を取り得て、製剤助剤(formulatory agents)、例えば、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤を含み得る。あるいは、有効成分は、使用前に、適当なビヒクル、例えば、滅菌無ピロゲン水と形成するための粉末形態であり得る。
【0141】
化合物はまた、直腸用組成物、例えば、坐剤または停留かん腸、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドのような慣用的な坐剤の基剤を含むもので製剤し得る。
【0142】
上記した製剤に加えて、化合物はまた、デボー製剤として製剤し得る。そのような持続性製剤は、埋込み(implantation)(例えば、皮下もしくは筋肉内に)または筋肉内注射で、投与し得る。したがって、例えば、化合物を、適当なポリマーまたは疎水性物質と共に(例えば、許容される油状物中のエマルジョンとして)、またはイオン交換樹脂と共に、または難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として、製剤し得る。
【0143】
組成物は、所望により、有効成分を含有した1個またはそれ以上の単位用量形を含み得る、パックまたはディスペンサー装置で提供し得る。パックは、例えば、金属またはプラスチックホイルを含み得て、例えば、ブリスターパックを含む。パックまたはディスペンサー装置は、投与のための指示書を伴い得る。
【0144】
本発明の使用のために適当な医薬組成物は、有効成分を、意図する目的を達成するのに有効な量で含む組成物を含む。有効量の決定は、当業者の能力の範囲内である。
【0145】
すべての化合物のために、治療上有効量は、最初に、例えば、適当な細胞の細胞培養アッセイで、または動物モデルで概算し得る。動物モデルはまた、適当な濃度範囲および投与経路を決定するのに使用し得る。IC50 (すなわち、症状の最大半分の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む、循環血漿濃度範囲を達成するための投与量を、動物モデルで、決定し、製剤し得る。次いで、そのような情報を、ヒトでの有用な投与量および投与経路を決定するために使用し得る。
【0146】
治療上有効量のCK1モジュレーターに関して、治療効果および毒性を、細胞培養または実験動物での標準的な医薬手順、例えば、ED50(集団の50%に治療上有効な量)およびLD50(集団の50%に致死的な量)により決定し得る。毒性および治療効果間の用量比は、治療指標であり、それは、比率LD50/ED50として示し得る。大きな治療指標を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物実験から得たデータは、ヒトでの使用のための投与量範囲を決定するのに使用される。そのような組成物中に含まれる用量は、毒性をほとんど有しないか、または全く有しないED50を含む循環濃度の範囲内にあるのが好ましい。投与量は、使用される投与型、患者の重篤度、および投与経路に依存して、この範囲内で変わる。
【0147】
正確な投与量は、処置を必要とする対象に関連する因子を考慮して、臨床医(practitioner)により決定される。投与量および投与は、十分なレベルの活性部分を提供するか、または望む効果を維持するために調整される。考慮され得る因子は、疾患状態の重篤度、対象の一般的な健康、対象の年齢、体重、および性別、食事、投与の時間および頻度、薬剤の組合わせ、反応感度、および治療に対する耐容性/応答を含む。持続性医薬組成物は、特定の製剤の半減期および除去率に依存して、3から4日毎、毎週、または2週間毎に1回、投与され得る。
【0148】
本発明の実施に際して使用される投与量は、当然に、例えば、処置される特定の疾患もしくは状態、使用される特定のCK1モジュレーター、投与形態、および望まれる治療に依存して変わり得る。本発明における使用のためのCK1モジュレーターは、経口、非経腸、経皮、または吸入を含む、すべての適当な経路により投与し得るが、好ましくは、経口投与である。一般に、例えば、上記した疾患の処置のための満足のいく結果は、約0.01から10.0 mg/kgのオーダーの用量で、経口投与で得られることが示される(モジュレーターは、遊離もしくは薬学的に許容される塩形で提供され得るが、すべての重量は、遊離形のCK1モジュレーターの相当物として提供される)。大型ほ乳類、特に、ヒトでは、経口投与のための示された1日投与量は、それに応じて、約0.75から750 mg、例えば、50-500 mgの範囲内であり、慣用的に、1日1回で、または1日に2から4回の分割投与で、または徐放性製剤で投与される。したがって、経口投与のための単位用量形は、例えば、約0.2から250 mg、例えば、約0.2または2.0から50、75、100または200 mgのCK1モジュレーターを、薬学的に許容される希釈剤またはそのための担体と共に、含み得る。
【0149】
下記の実施例は、さらに本発明を例示するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0150】
実施例
本明細書に記載した実施例に関連する材料および方法は、下記で提供する:
【0151】
方法
プラスミド: 4つのCK1アイソフォームに相当する完全長cDNAを、標準的なPCRおよび分子技術を用いて、ラットオリゴヌクレオチド-dT cDNAライブラリーからpCDNA 3.1 / Myc-6His A+プラスミド(Invitrogen)へサブクローン化する。CK1構成的活性型構築体は、PCRにより完全長cDNAから得られ、pCDNA 3.1 / Myc-6His A+プラスミド(Invitrogen)にクローン化する。サブクローン化したDNA断片を、慣用的な方法にしたがい、シークエンシングにより体系的に確認する。CK1αは、アミノ酸279で切断されており; CK1δは、アミノ酸271で切断されており; CK1εは、アミノ酸271で切断されており; CK1γは、アミノ酸307で切断されている。C99過剰発現プラスミドは、pCDN4プラスミドに、β-セクレターゼ切断後に産生されるAPPの膜結合C末端をコードするAPP DNA断片をサブクローン化することにより、構築される。
【0152】
抗体: Myc 9E10 (Covance)、切断Notch 1 (Val1744) (Cell Signaling Technology)、ベータCTFおよびAPP(ポリクローナルCT695) (Zymed)、ベータ-アクチン(Cell Signaling Technology)。
【0153】
キナーゼ阻害剤: CKI-7 (Japan)、IC-261 (Calbiochem)、D4476 (Calbiochem)、DAPT (Calbiochem)、Gleevec (Sequoia sciences, UK)、L-685,458 (EMD Biosciencesで、市販で入手可能である)。ストックは、慣用的な方法にしたがい、ジメチルスルホキシド(Sigma Aldrich)中に製造する。
【0154】
細胞培養: トランスフェクトしたN2A-APP695細胞を、報告されたとおり、増殖させる(Xu, H., et al., (1998) Nat Med 4, 447-51)。N2A-APP695細胞を、製造者(American Type Culture Colleciton)の指示にしたがい、5%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するDMEM/Opti-MEM培地中、ウェルあたり3 x 105細胞の濃度で、12ウェルディッシュに播種する。経時的実験のために、細胞を、1-24時間、薬剤に曝す。
【0155】
トランスフェクション: N2A-APP695細胞のトランスフェクションは、標準的な方法により行う。細胞を、60%コンフルエンスまで増殖させ、次いで、製造者のプロトコールにしたがい、FUGENE6を用いて、関連する構築体をトランスフェクトする(Roche Applied Bioscience)。トランスフェクション後、細胞を、100 μlのRIPAバッファーで回収し、氷上で30分間、インキュベートし、4℃で20分間、13,000 rpmで遠心分離する。上清を集め、製造者の指示にしたがい、BCA (Pierce)定量にかける。等しい量の細胞抽出物を、MESバッファーと共に、4-12% ビス-トリスアクリルアミドゲル(Invitrogen)に載せ、適当な抗体を用いて、ウエスタンブロット解析にかける。免疫沈降アッセイのために、培地を、抗体4G8 (Signet)でインキュベートし、Aβおよび完全長βAPPを検出する。薬剤を、新鮮培地(0.5%ウシ胎仔血清)で細胞培養に加え; 培地および細胞を、関連時間で集める。
【0156】
Aβ定量: 培地から全Aβ(AβのN末端に特異的な被覆モノクローナル抗体)の固定後、Aβ40/42ペプチド決定は、Aβ40またはAβ42のC末端に特異的なウサギポリクローナル抗体を用いて、サンドウィッチELISA (BioSource International)により成される。すべての場合に、Aβレベルを、全タンパク質レベルに標準化する。
【0157】
免疫沈降/ウエスタン解析: 免疫検出は、ウエスタンブロット解析が、Netzer, WJ et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Oct 14; 100(21):12444-9に記載された電気転写(electrotransfer)後、0.2% グルタルアルデヒド(Sigma)を含むPBSで45分間、フッ化ポリビニリデン(PVDF)膜(Invitrogen, Life Technologies)を使用することを除き、Xu, H., et al., (1998) Nat Med 4, 447-51に以前報告されたとおり、標準的な方法を用いて、実施される。
【0158】
N2A-APP695細胞でのmNotchΔEトランスフェクションおよびNotch-1切断アッセイ: APP Swedish突然変異体を安定的に過剰発現するN2A細胞に、mNotchE (Notch細胞外ドメインの大部分を欠いた切断Notch-1)を過剰発現させるために、一時的にトランスフェクトする(Kopan, R., et al. (1996) Proc Natl Acad Sci U S A 93, 1683-8)。培養物を、異なる阻害剤で3時間、プレインキュベートする。mNotchΔEを、Cell Signalingから入手可能な切断Notch 1抗体(NICD)を用いたウエスタンブロット解析により、細胞ライセートで検出する。
【0159】
実施例1
インシリコ解析は、APP、BACEおよびγ-セクレターゼにおける保存されたCK1コンセンサスリン酸化サイトを明らかにする
AD関連タンパク質(APP、BACE、PS1、PS2、Aph-1、PEN2およびNicastrin)に相当するヒト、ラットおよびマウスアミノ酸配列を、当業者に既知の異なるコンピューターツール(computational tools)(例えば、ELM-motifs、NetPhos 2.0)を用いて、推定上のCK1リン酸化サイトの存在に関してスクリーニングする。このAPP、BACE、PS1、PS2、Aph-1、PEN2およびNicastrinにおける細胞内ドメインのインシリコ解析は、特に、PS1およびPS2における、多くの保存された推定上のリン酸化サイトの存在を明らかにする(データは、示していない)。
【0160】
興味深いことに、ADに関与する2個のキナーゼ(Cdk5/p35、およびGSK3-β)の同様のインシリコ解析は、ヒト、ラットおよびマウス配列における、多くの保存された推定上のリン酸化サイトの存在を示す。実際に、我々は、Cdk5で7個、p35で15個、およびGSK3-βで24個の推定上のサイトを発見した(データは、示していない)。
【0161】
実施例2
構成的活性型CK1εの過剰発現は、Aβペプチド産生の増加を生じる
我々は、CK1の4つのアイソフォーム、すなわち、CK1α、CK1β、CK1δおよびCK1εのAPPプロセッシングを制御する能力を、構成的活性型アイソフォームの各々を過剰発現させることにより試験した。構成的活性型突然変異体は、各々のアイソフォームのC末端自己阻害領域を欠失させることにより作製し、発現レベルを、APPを安定的に発現するN2A細胞(N2A-APP695細胞)での一過的なトランスフェクションの後に調べ、データを、これらのレベルに基づき標準化する。データは、CK1ε-271のみが、Aβペプチド産生の実質的な増加を誘導することができることを示す。わずかの効果はまた、CK1δ-271で観察される(データは、示していない)。
【0162】
我々は、次いで、APPを安定的に発現するN2A細胞(N2A-APP695細胞)で、構成的活性型CK1ε(CK1-271)と全長CK1ε(CK1ε-FL)を過剰発現させたときの効果を比較した。データは、CK1ε-271が、それぞれ、105%および109%のAβ-40およびAβ-42レベルの増加を誘導することを示す(データは、示していない)。対照に、全長CK1εは、弱い活性を示し、それぞれ、42%および31%のAβ-40およびAβ-42ペプチドレベルの増加を誘導する(データは、示していない)。Aβペプチド免疫沈降およびウエスタンブロッティング解析で確認されたこれらの結果は(データは、示していない)、CK1活性がAβペプチド制御のために必要とされることを示す。
【0163】
実施例3
N2A-APP695細胞で構成的活性型CK1εの過剰発現後のAβペプチド産生におけるCK1阻害剤の効果
我々は、CK1ε-271を一過的に発現するN2A-APP695細胞で、Aβ40およびAβ42ペプチド産生における選択的CK1阻害剤IC261の効果を調べた。APP-695を安定的に発現するN2A細胞を、CK1ε-271で一過的にトランスフェクトする。トランスフェクションの48時間後、細胞を、CK1阻害剤IC261の非存在下または増加した濃度のCK1阻害剤IC261の存在下でインキュベートする。細胞上清を、インキュベーションの3時間後に収集し、Aβ40/Aβ42 ELISAアッセイにかける。結果は、3時間のIC261でのインキュベーションが、Aβ40およびAβ42ペプチド濃度の劇的な減少を生じることを示す。IC261の効果は、5 μMで、ほぼ最大である。IC261は、時間依存的な効果を示し、より長い時間IC261に曝されると、Aβ40およびAβ42ペプチド濃度のより大きな減少を生じる。IC261の非特異的な効果を除外するために、2つの他のCK1阻害剤、CKI-7およびD4476を試験する。両阻害剤は、CK1ε-271過剰発現細胞で、Aβ40およびAβ42産生の、かなりのおよび用量依存的な減少を生じる(データは、示していない)。
【0164】
実施例4
内在性Aβペプチド産生のCK1阻害剤による制御
我々は、次いで、APP-695を発現するN2A細胞におけるAβペプチド産生に関して、3つの異なるクラスのCK1阻害剤、CKI-7、IC-261、およびD4476 (Chijiwa, T., et al. (1989) J Biol Chem 264, 4924-7; Mashhoon, N., et al. (2000) J Biol Chem 275, 20052-60; Rena, G., et al. (2004) EMBO Rep 5, 60-5)の効果を調べた。データは、Aβ40およびAβ42ペプチド産生が、3つの阻害剤の各々を用いた3時間のインキュベーション後、減少することを示す(データは、示していない)。該減少は、下記の2つの異なる方法を用いて測定する:サンドウィッチELISAおよび免疫沈降後のウエスタンブロッティング解析(データは、示していない)。我々は、3時間、50 μMでのインキュベーションで、下記の減少を観察した:IC261(Aβ40およびAβ42ペプチド各々に関して、48%および52.4%の減少)、D4476(Aβ40およびAβ42ペプチド各々に関して、42%および54.1%の減少)、ならびにCKI-7(Aβ40およびAβ42ペプチド各々に関して、14.8%および24%の減少) (データは、示していない)。これらの結果は、基底条件下で、内在性CK1がAβペプチド産生の制御に参加することを証明する。
【0165】
Aβペプチド産生における阻害効果が細胞毒性による可能性を除外するために、我々は、細胞生存における薬剤の効果を調べた。培地を集め、非放射性CytoTox96キット(Promega)を用いて、細胞溶解で放出される安定な細胞質酵素であるラクテートデヒドロゲナーゼのレベルに関して、試験する。薬剤処理細胞から得た値を、DMSOおよび非処理細胞で得た値と比較する。毒性は、試験される最大濃度(50 μM)を用いて、インキュベーションの24時間後でさえ、CKI-7に関して観察されない。わずかな毒性(1倍未満)が、試験されるより高量(50 μM)を用いた、インキュベーションの24時間後においてのみ、D4476に関して観察される。毒性の影響は、インキュベーションの12時間後、IC261で観察されない。
【0166】
D4476化合物は、最近、CK1阻害剤であることが記載され、他の2つよりもインビトロで、より有力かつより選択的であることが記載されている(Rena, G., et al. (2004) EMBO Rep 5, 60-5.)。しかしながら、50 μMの濃度が、細胞株でのCK1活性に関する効果を観察するのに必要とされ(Rena, G., et al. (2004) EMBO Rep 5, 60-5)、これは、細胞透過性が限定的であり得ることを示す。それらの実験で使用される50 μMの濃度は、N2A-APP695細胞を用いて得られた我々の結果と一致する。
【0167】
重要なのは、D4476化合物のためのSMILE string notationを用いて、我々は、D4476に非常に類似した化合物、すなわち、SB-431542(それは、D4476およびSB-431542に関して、Aβペプチド形成における非常に類似した特性を示す) (Sigma Aldrich)を同定した(データは、示していない)。
【0168】
実施例5
APP、βCTFおよびAβレベルにおけるCK1阻害剤D4476の効果
N2A-APP695細胞でのAPP、βCTFおよびAβペプチドレベルにおけるD4476の効果を比較する。N2A細胞を、0、1、5または50 μMのD4476濃度で3時間、インキュベートする。細胞抽出物を、βCTFもしくはAPP抗体を用いたウエスタンブロッティング解析、またはAβ40 ELISAアッセイにかける。N2A細胞を、APP-C99包含プラスミドで、一時的にトランスフェクトする。トランスフェクションの24時間後、細胞を、さまざまな濃度のD4476で3時間、インキュベートする。細胞ライセートを、SDS-PAGEおよびウエスタンブロッティング解析またはAβ40 ELISAアッセイにより解析する。少なくとも3回の実験のデータ(平均 ± S.E.M.)を、コントロール条件(薬剤なし)と比較する(Prism)。
【0169】
結果は、D4476 (50 μM)を用いたCK1の阻害が、それがAPP発現レベルに影響を与えない条件下で、βCTFレベルをかなり増加させ、Aβペプチド産生をかなり減少させることを示す。これらの結果は、CK1活性がAPPのγ-セクレターゼ切断サイトのレベルでAβペプチド形成を制御し、Aβペプチド産生のために必要であることを強く示す。この結論は、APP-C99を完全長APPタンパク質の代わりに発現させる実験により支持される。D4476は、C99の切断を阻害し、その結果、用量依存的な方法で、Aβペプチド産生を減少させた。これらの効果は、わずか5 μMのD4476で明らかである(データは、示していない)。
【0170】
実施例6
Notch切断は、CK1阻害剤により影響を受けない
いくつかのプロテインキナーゼおよびプロテインホスファターゼは、アルツハイマー病の進行、特に、β-アミロイド形成の制御に関与している。これらは、プロテインキナーゼ、PKA、PKC、GSK3-βおよびCDK5、ならびにプロテインホスファターゼPP1/PP2AおよびPP2Bを含む。早期の研究は、PKAおよびPKCの活性化、またはPP1/PP2AおよびPP2Bの阻害が、β-アミロイドの形成における劇的な減少および/またはα-セクレターゼ切断産物、sAPPαの量の増加を引き起こすことを証明する。不運なことに、これらの効果は、増加した発癌リスクと関連している。実際に、ADの処置のために開発されたγ-セクレターゼ阻害剤の主要な副作用は、Notch(γ-セクレターゼ基質として機能する、I型膜貫通タンパク質)の切断の阻害であり; CDK5阻害(ロスコビチンによる)およびGSK3阻害(ケンパウロンによる)は、少なくとも部分的に、Notch切断阻害と関連する。したがって、CK1阻害剤がAβペプチド産生を減少させ、Notch切断に影響を与えることなくTauを制御し得ることを示す我々のデータは、CK1阻害剤がアルツハイマー治療の強力な候補であることを示す。したがって、我々は、Notch切断におけるCK1阻害剤の効果を調べた。簡潔には、N末端切断mNotchΔE-myc cDNAを含むプラスミドで一時的にトランスフェクトしたN2A細胞を、1、10 μMの濃度のDAPT、1、10 μMの濃度のL-685,458、5、50 μMの濃度のD4476または1、10 μMの濃度のGleevecで、3時間、インキュベートする。細胞ライセートを、慣用的なSDS-PAGE解析および抗Notch(NICD切断産物)、抗-Aβ、抗-mycおよび抗-アクチン抗体を用いたウエスタンブロッティングにより解析する。少なくとも3回の実験のデータ(平均 ± S.E.M.)を、コントロール条件(薬剤なし)と比較する(Prism)。(**, P<0.01; one-tailedスチューデントt検定、95%有意レベル)。結果は、Notchを過剰発現するN2A細胞では、DAPTによるNotch切断の全阻害が存在することを示す。対照に、Notch切断は、D4476、IC261またはCKI-7により影響を受けず(データは、示していない)、さらに、ADの処置のためのCK1および特にCK1ε阻害剤を開発する可能性に対する関心を支える。
【0171】
まとめると、本明細書で開示したデータは、構成的に活性なCK1εがβ-アミロイドの形成を増加させ、異なるクラスのCK1阻害剤が、内在性レベルのCK1を発現するN2A-APP695細胞、および構成的に活性なCK1εを過剰発現するN2A-APP695細胞で産生されるβ-アミロイドペプチドの形成を減少させ得ることを証明する。重要なことに、CK1活性の阻害がβ-アミロイド形成を減少させる条件下で、Notch切断の阻害は、観察されない。CK1活性は、APPのγ-セクレターゼ切断サイトのレベルで、Aβペプチド形成を制御し得る。構造的に関連しないCK1阻害剤がAβペプチド産生をかなり減少させ得るという観察は、これらの阻害剤がCK1以外の共通の標的を介して作用するという可能性を大いに減少させる。この結論はさらに、構成的に活性なCK1がAβペプチド形成を増加させるという事実により支持され、γ-セクレターゼ活性の制御のためのCK1活性の必要性を確認する。
【0172】
実施例7
抗AD剤の新規標的としてのCK1活性の分子制御因子
CK1εのカルボキシ末端領域でのリン酸化がCK1ε酵素活性の阻害と関連していることは、十分に確立されている。逆に、カルシニューリン(または、PP2B)によるCK1εの脱リン酸化は、CK1活性の活性化を生じるCK1活性の抑制を生じるCK1εのリン酸化およびPP2B/CK1カスケードの活性化に関与するシグナル伝達経路の性質は、まだ特徴づけられていない。PP2B/CK1経路の活性化のための1つの既知のメカニズムは、グルタミン酸集団I mGluR/Gq/ PLC-IP3-Ca2+カスケードを含む。いったん、CK1εがAβを制御するメカニズムが発見されると、さらに、3つの異なるCK1εアイソフォーム、すなわち、CK1ε1、CK1ε2およびCK1ε3(各々は、異なる遺伝子の発現から生じる)の特異的な制御を研究することに関心がある。Aβペプチド形成における構成的に活性なCK1εの影響を試験するために使用される領域(N末端の271アミノ酸)は、3つのアイソフォーム間で100%同一であり; このために、本研究は、3つのアイソフォームの内の1つ(CK1ε1)にのみ焦点をあてている。しかしながら、差異はC末端領域で存在し、これは、C末端領域が制御領域であるという事実に基づき、キナーゼ活性制御の観点で差異を生じ得る。したがって、CK1活性のそのような分子制御因子の同定は、抗AD剤の開発のための新規標的を提供し得る。新規治療標的を示すこれらのCK1制御因子を同定するためのリン酸化研究、免疫沈降研究、および膜分画研究のようないくつかのストラテジーを、これらの制御因子分子を明らかにするために使用し得る。例えば、当業者は、インビトロでCK1をリン酸化する能力に関して、多くのキナーゼを試験することにより、キナーゼプロファイリング型の実験を実施し得る。見出されたキナーゼは、細胞株で、それらの活性(または発現レベル)を調節することにより、および免疫沈降後のインビトロCK1活性を試験することにより、それらのCK1制御の役割に関して試験され得る。いったん確認されると、これらのキナーゼは、Aβペプチド産生に影響するそれらの能力に関して試験され得る。同様の型の実験を、CK1制御ホスファターゼを同定するために実施し得る。他の可能性は、CK1結合タンパク質を探索し、異なる系で、例えば、インビトロまたは細胞株で、CK1活性を制御するそれらの能力に関して、同定した候補を試験することであるだろう。CK1結合タンパク質は、CK1免疫沈降、SDS-PAGEおよびクマシー染色後の質量分析解析により同定し得る。タンパク質-タンパク質相互作用を同定するのを助けるすべての他の方法、例えば、酵母ツーハイブリッド系、ほ乳類ツーハイブリッド系、GSTプルダウンを、また、CK1制御因子を同定するために使用し得る。
【0173】
実施例8
抗AD剤の新規標的としてのCK1基質
CK1がβ-アミロイド形成を制御する基質の同定は、まだ特徴づけられていない。本明細書は、さらに、そのような基質の同定が抗AD剤の開発のための新規標的を提供し得ることを意図するものである。これらの新規標的を同定するために、リン酸化研究、免疫沈降研究、および膜分画研究のようないくつかのストラテジーを使用し得る。例えば、リン酸化研究は、2Dゲル電気泳動解析を含み得る。簡潔には、APPを含む膜分画を精製し、インビトロCK1リン酸化を行うことにより放射活性物質で標識し、次いで、2Dゲル電気泳動により解析する。得たプロファイルを、CK1リン酸化工程を除く、同じ実験条件で得たプロファイルと比較する。プロファイルの差異は、CK1標的タンパク質を示し得る。これらの推定上の標的は、質量分析解析により単離され、Aβペプチド産生におけるそれらの役割は、細胞系、例えば、N2A-APP695細胞で、それらの発現を調節することにより試験される。同様の結果は、APP共沈タンパク質から得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とする対象に、Aβ(アミロイド−β)ペプチドの蓄積を阻害するか、または減少させるのに有効な量のCK1モジュレーターを投与することを含む、Aβ関連障害を処置する方法。
【請求項2】
該Aβ関連障害が、アルツハイマー病である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該CK1モジュレーターが、該対象でCK1のキナーゼ活性を阻害する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該CK1モジュレーターが、該対象でCK1遺伝子発現を阻害する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
該CK1モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのIC261、D4476、CK1-7、A3、SB-431542、DRB、ハイメニアルディシン、マタイレジノール、5-ヨードツベルジシン、メリジアニン、およびSB-203580からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのD4476である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのIC261である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
該モジュレーターが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAアプタマーおよび二本鎖RNAからなる群から選択される任意の1個またはそれ以上の物質を含み、ここで、該物質が、CK1遺伝子発現を阻害できる、請求項1、2または4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該モジュレーターが、1個またはそれ以上のCK1に対する抗体、またはその断片を含み、ここで、該抗体またはその断片が、CK1キナーゼ活性、CK1安定性またはCK1細胞内局在を調節できる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該抗体またはその断片が、CK1キナーゼ活性を阻害するか、CK1安定性を減少させるか、またはCK1細胞内局在を修飾できる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
処置を必要とする対象に、Aβペプチドの蓄積を阻害するか、または減少させるのに有効な量のCK1モジュレーターを含む医薬組成物を投与することを含む、Aβ関連障害を処置する方法。
【請求項12】
該Aβ関連障害が、アルツハイマー病である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該CK1モジュレーターが、該対象でCK1のキナーゼ活性を阻害する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
該CK1モジュレーターが、該対象でCK1遺伝子発現を阻害する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
該CK1モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのIC261、D4476、CK1-7、A3、SB-431542、DRB、ハイメニアルディシン、マタイレジノール、5-ヨードツベルジシン、メリジアニン、およびSB-203580からなる群から選択される、請求項11から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのD4476である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのIC261である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
該モジュレーターが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAアプタマーおよび二本鎖RNAからなる群から選択される任意の1個またはそれ以上の物質を含み、ここで、該物質が、CK1遺伝子発現を阻害できる、請求項11、12または14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
該モジュレーターが、1個またはそれ以上のCK1に対する抗体、またはその断片を含み、ここで、該抗体またはその断片が、CK1キナーゼ活性、CK1安定性またはCK1細胞内局在を調節できる、請求項11から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
該抗体またはその断片が、CK1キナーゼ活性を阻害するか、CK1安定性を減少させるか、またはCK1細胞内局在を修飾できる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
候補モジュレーターのCK1活性を阻害する能力をアッセイすることを含む、Aβペプチドの蓄積の減少を介してAβ関連障害を処置するのに有用なモジュレーターを同定する方法。
【請求項22】
該方法がさらに、同定したCK1阻害モジュレーターの、Aβ関連障害の動物モデルで、および/またはAβ関連障害を患う対象での臨床試験で観察される病理学的影響を回復に向かわせる能力をアッセイすることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
該Aβ関連障害が、アルツハイマー病である、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
候補モジュレーターのCK1遺伝子発現を阻害する能力をアッセイすることを含む、Aβ関連障害を処置するのに有用なモジュレーターを同定する方法。
【請求項25】
該方法がさらに、同定したCK1阻害モジュレーターの、Aβ関連障害の動物モデルで、および/またはAβ関連障害を患う対象での臨床試験で観察される病理学的影響を回復に向かわせる能力をアッセイすることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
該Aβ関連障害が、アルツハイマー病である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
処置を必要とする対象でのAβ関連障害の処置において、Aβペプチドの蓄積を減少させるか、または阻害することにおける使用のためのCK1モジュレーターを含む、医薬組成物。
【請求項28】
該Aβ関連障害が、アルツハイマー病である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
該モジュレーターが、CK1のキナーゼ活性を阻害する、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
該モジュレーターが、CK1遺伝子発現を阻害する、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項31】
該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのIC261、D4476、CK1-7、A3、SB-431542、DRB、ハイメニアルディシン、マタイレジノール、5-ヨードツベルジシン、メリジアニン、およびSB-203580からなる群から選択される、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項32】
該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのD4476である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項33】
該モジュレーターが、遊離または薬学的に許容される塩形でのIC261である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項34】
該モジュレーターが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAアプタマーおよび二本鎖RNAからなる群から選択される任意の1個またはそれ以上の物質を含み、ここで、該物質が、CK1遺伝子発現を阻害するように設計される、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項35】
該モジュレーターが、1個またはそれ以上のCK1に対する抗体、またはその断片を含み、ここで、該抗体またはその断片が、CK1キナーゼ活性を阻害するか、CK1安定性に影響を与えるか、またはCK1細胞内局在を修飾できる、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項36】
Aβ関連障害の症状を有する対象を処置する方法であって、該対象からの生物学的サンプル中のCK1のmRNAレベルをアッセイし(ここで、コントロールと比較して、増加したレベルのCK1を有する対象は、CK1モジュレーター処置のための適当な候補であり得る)、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法にしたがいそのような適当な候補を処置することを含む、方法。
【請求項37】
Aβ関連障害の症状を有する対象を処置する方法であって、該対象からの生物学的サンプル中のCK1タンパク質のレベルを検出し(ここで、コントロールと比較して、増加したレベルのCK1を有する対象は、CK1モジュレーター処置のための適当な候補であり得る)、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法にしたがいそのような適当な候補を処置することを含む、方法。
【請求項38】
(a) 対象でのCK1 mRNAおよび/またはタンパク質レベルをアッセイし; そして
(b) コントロールと比較して、増加したレベルのCK1 mRNAおよび/またはタンパク質レベルを有する対象に、Aβ関連障害の病理学的影響を処置するのに十分な量のCK1モジュレーターを投与すること
を含む、Aβ関連障害を処置する方法。
【請求項39】
該Aβ関連障害が、アルツハイマー病である、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
(a) CK1のポリヌクレオチドまたはその断片;
(b) (a)のそれに相補的なヌクレオチド配列;
(c) CK1ポリペプチド、またはその断片; または
(d) CK1ポリペプチドに対する抗体
を含む、生物学的サンプル中のCK1のmRNAレベルおよび/またはタンパク質レベルを検出するための診断キットであって、構成要素(a)、(b)、(c)または(d)が、実質的な構成要素を含み得る、キット。
【請求項41】
Aβ関連障害の処置または改善用医薬の製造における、請求項1から11のいずれか1項に記載のCK1モジュレーターの使用。
【請求項42】
該Aβ関連障害が、アルツハイマー病である、請求項41に記載の使用。

【公表番号】特表2010−507666(P2010−507666A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534630(P2009−534630)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/022519
【国際公開番号】WO2008/066626
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(596171834)ザ ロックフェラー ユニヴァーシティ (11)
【Fターム(参考)】