ACTINOMADURA色素タンパク質および関連種の発酵および精製
本発明は、Actinomadura種21G792により産生される活性な色素タンパク質を産生および精製する方法を提供する。色素タンパク質は、医薬組成物の開発、および癌または細菌感染などの疾患の治療に有用である。Actinomadura種21G792色素タンパク質は、アポタンパク質と9員エンジインを含む発色団の非共有結合複合体である。本発明は、Actinomadura種21G792発色団の新規なアイソフォームおよびその新規なアイソフォームを含む色素タンパク質を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(配列表)
本願は、本明細書中に記載される核酸およびアミノ酸配列を定める配列表を含む。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、Actinomadura種21G792により産生される活性な色素タンパク質を産生および精製する方法を提供する。色素タンパク質は、医薬組成物の開発、および癌または細菌感染などの疾患の治療に有用である。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
Actinomycetalesのメンバーにより産生される強力な細胞毒性ポリケチドの一種であるエンジイン(enediyne)は、癌の治療に用いられてきた。エンジイン薬物の典型的な作用形態は、一本鎖および二本鎖DNA開裂を介する。DNA開裂は、エンジイン環のバーグマン型環芳香族化により生成されたジラジカルによるデオキシリボース糖骨格からの水素引き抜き反応により誘導される。現在、癌の臨床治療用に2つのエンジインが承認されている:CD33モノクローナル抗体と結合したカリケアマイシン(Mylotarg(登録商標)、米国)およびポリ(スチレン−co−マレイン酸)結合ネオカルチノスタチン(日本)。
【0004】
エンジイン天然産物は、2つのサブカテゴリーに分類することができる。第1のサブクラスは、ビシクロ[7,3,0]ドデカジイン(すなわち、9員)エンジインコアまたはその前駆体によって特徴付けられ、第2のサブクラスは、ビシクロ[7,3,1]トリデカジイン(すなわち、10員)エンジインコアによって特徴付けられる。9員エンジインの例としては、ネオカルチノスタチン、C−1027、ケダルシジン、マクロモマイシン、N1999A2およびマデュロペプチンが挙げられる。10員サブクラスの例としては、カリケアマイシン、エスペラマイシン、ダイネミシンおよびナメナマイシンが挙げられる。9員と10員のエンジインを区別する更なる特徴は、N1999A2を除いて、全ての9員エンジインがエンジイン−タンパク質複合体として産生され、エンジイン発色団が、非共有結合により不活性アポタンパク質に結合することである。このため、9員エンジインは、多くの場合、色素タンパク質と呼ばれる。アポタンパク質は、不安定な9員エンジイン発色団を安定させ、標的とする細胞毒性発色団をクロマチンに送達する重要な役割を果たすと考えられている。
【0005】
いくつかのアポタンパク質のアミノ酸配列は、アポタンパク質を直接配列決定するかまたはクローン化DNA配列からアミノ酸を推定することにより決定されている。現在までに同定されているアポタンパク質は、小さな酸性タンパク質(108〜114個のアミノ酸、aa)であり、これらはプレアポタンパク質から32〜34aaのアミノ末端リーダーペプチドを除去して生成される。2つの色素タンパク質(ネオカルチノスタチンおよびC−1027)の生合成経路が、クローニングされ、配列決定されている。これらの場合、アポタンパク質をコードする遺伝子は、関連する発色団の生合成に必要な遺伝子でクラスター化された。
【0006】
色素タンパク質複合体のアポタンパク質成分は、薬物特性の指令変化の魅力的な標的を提示する。例えば、アポタンパク質アミノ酸または核酸配列が見つかった場合、部位特異的突然変異誘発法などの確立された分子生物学的技術を用いて、アポタンパク質の発色団結合モチーフを変更し、その天然型発色団をより強くまたは弱く結合する、合理的に変化したアポタンパク質を作成することができる。さらに、このようなアポタンパク質への変化により、例えば、毒性が減少した色素タンパク質または効力もしくは安定性が増加した発色団をもたらすことができる。また、アポタンパク質を全体的に操作することにより、結合特異性が大きく変化したアポタンパク質、すなわち、エンジイン発色団とは大きく異なる分子の標的薬物送達手段として機能する能力を得ることが可能である。同様に、エンジイン発色団は改変の標的である。発色団を変更させる1つの方法は、その生合成に関与する遺伝子を操作することである。
【0007】
従って、新規な色素タンパク質、ならびに遺伝子およびそれらの合成に関与するタンパク質の分離および特性付けが必要とされている。さらに、色素タンパク質を効率的に産生し、精製する方法が望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、陸生放線菌であるActinomadura種21G792(NRRL30778)により産生された新規な非常に強力な抗癌色素タンパク質に関する。Actinomadura種21G792色素タンパク質は、アポタンパク質と9員エンジインを含む発色団の非共有結合複合体である。本発明は、Actinomadura種21G792発色団の新規なアイソフォームおよびその新規なアイソフォームを含む色素タンパク質を提供する。特に、本発明は、下記の構造:
【0009】
【化2】
および
【0010】
【化3】
を有する発色団を含む活性名色素タンパク質を提供する。
【0011】
構造[1]および[2]は、別名、それぞれ発色団−bおよび発色団−cと呼ばれる。
【0012】
別の局面では、本発明は、改善された色素タンパク質収率をもたらす発酵プロセスを提供する。発酵プロセスは、色素タンパク質産生を最大にし、色素タンパク質の不安定性および分解を最少にするように調合される培地を組み込む。
【0013】
別の局面では、本発明は、Actinomadura種21G792色素タンパク質を精製する方法を提供する。大規模発酵から色素タンパク質を得るのに適切な測定可能な精製法を開示する。また、色素タンパク質のアイソフォームを分離する方法も開示する。
【0014】
本発明は、実質的に純粋な形態のActinomadura種21G792色素タンパク質およびアポタンパク質、ならびに色素タンパク質を含む医薬組成物、および色素タンパク質を投与する方法を提供する。ある種の色素タンパク質のアイソフォームは、癌性細胞および腫瘍の治療に有用であることが示されている。
【0015】
本発明は、さらに、生物活性を変更したActinomadura種21G792色素タンパク質(アポタンパク質および発色団種を含む)の変異体を産生し、精製する方法を提供する。このような変異アポタンパク質は、変化した発色団結合特性、変化した標的特異性、またはそれらの組み合わせを有することができる。
【0016】
本発明は、大量のアポタンパク質および発色団の産生を提供することは理解される。さらに、本発明は、エンジイン関連化合物を産生することができる他の生物の同定、または例えば、Actinomadura種21G792などのエンジイン関連化合物を産生することができる生物における色素タンパク質の合成に関与する遺伝子の同定をもたらすことができることは承認される。さらに、本発明は、例えば、毒性が減少し、効力が増加し、または安定性が増加したアポタンパク質の改変バージョンの産生を提供することは承認される。また、Actinomadura種21G792アポタンパク質の操作は、変化した結合特性、すなわち、21G792エンジイン発色団とは異なった発色団の標的化された薬物送達ビヒクルとして機能する能力を有するアポタンパク質へと導くことができることは理解される。最後に、Actinomadura種21G792色素タンパク質を含む医薬組成物を開発し、細菌感染または癌性増殖を有する哺乳動物、好ましくはヒトに投与することができることは承認される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
エンジイン抗生物質は、一般に、Streptomyces属、Micromonospora属、およびActinomadura属を含むがこれらに限定されないActinomycetales目に属する種々の生物により産生される。本発明は、Agricultural Research Service Culture Collection(NRRL,1815 North University Street,Peoria,Ill.,61064)に寄託されたActinomadura種21G792により産生される新規な色素タンパク質に関する。これらの寄託物は、ブダペスト条約による条件に基づいて作成された。Actinomadura種21G792には、受入番号NRRL30778が与えられている。このような現在知られている生物のうち、Actinomadura種21G792は、ATCC39144として寄託されたActinomadura株(米国特許第4,546,084号)と最も類似していると思われる。16S rDNA配列によって評価されるように、これらの株は、近縁種または近縁亜種である。
【0018】
本発明は、新規な色素タンパク質および発色団を提供する。Actinomadura種21G792は複数の関連する発色団を産生することが発見された。発色団は、個別に、アポタンパク質と複合体を作り、複数の関連した色素タンパク質を形成する。したがって、本発明は、図6に示されるように、発色団−b、発色団−c、および発色団−dを提供する。少なくとも発色団−bおよび発色団−cは、抗腫瘍活性および抗菌活性を有する。
【0019】
本発明は、Actinomadura種21G792を発酵および培養するための方法を提供する。Actinomadura種21G792の培養は、多様な液体培地で行なうことができる。Actinomadura種21G792色素タンパク質の産生に有用な培地には、デキストリン、ショ糖、糖蜜、グリセロールなどの同化可能な炭素源;タンパク質、タンパク質加水分解物、ポリペプチド、アミノ酸、コーンスティーブリカーなどの同化可能な窒素源;ならびにカリウム、ナトリウム、鉄、マグネシウム、アンモニウム、カルシウム、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、塩化物などの無機陰イオンおよび陽イオンが含まれる。ボロン、モリブデン、銅などの微量元素は、多くの場合、上記培地の他の組成の構成要素の不純物として供給される。例えば、通常の窒素源マルトン(Martone)J−1には、鉄、マグネシウム、および他の微量金属が含まれる。
【0020】
ある種のハロゲン化物塩の介在が改善された増殖および色素タンパク質産生における有意な増加をもたらすことが見つかった。以前には、ヨウ化物塩の含有の有益な効果が、ヨウ素含有発色団の産生について観察されたが、ヨウ素を含まないActinomadura種21G792の産生に対するハロゲン化物の効果は期待されなかった。また、臭化物の介在は、改善された増殖および色素タンパク質収率をもたらした。しかしながら、塩化物イオンの量の変化では明らかな効果はなかった。
【0021】
Actinomadura種21G792の培養では、糖蜜および加水分解スターチなどのグルコースを含む複合糖質を用いることができる。大規模発酵に関しては、一貫性のある結果に到達するために、規定の炭素源を含む培地を用いることが望ましい。グルコースに加えて、試験管発酵における増殖および色素タンパク質産生を支持する有用な炭素源には、ショ糖およびマルトリン(maltrin)も含まれる。良好な色素タンパク質収率を支持しない炭素源には、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンノース、マンニトール、グリセロール、大豆油、および綿実油が含まれる。大規模発酵において、グルコースは、好ましい炭素源である。グルコース、ショ糖、およびフルクトースを含む大規模発酵では、(たとえショ糖が試験管発酵で同化可能であるとしても)グルコースだけが発酵過程で利用された。
【0022】
Actinomadura種21G792に対する有用な窒素源はペプトンである。しかしながら、非動物性由来の窒素源は、一般に、医薬品の生産には望まれる。種々の非動物性窒素源が試験され、このうち、マルコール・マルトン(Marcor Martone)J−1が特に良好な結果を与えた(実施例を参照されたい)。同程度の収率を与える他の好ましい非動物性窒素源には、マルコール・マルトンJ−1、マルコール・ビーン・ペプトン(Marcor Bean Peptone)、アンバーファーム(Amberferm)4415、ハイ・ソイ・ティー(Hy Soy T)が挙げられる。有用ではあるが低収率を与え得る非動物性窒素源の他の例には、アンバーファーム4000、アンバーファーム4015、コーン加水分解物、小麦加水分解物(DMV International #WGE80M)、およびファルマデジア(Pharmamedia)が挙げられる。窒素源が、大豆加水分解物(DMV International #SE50MAF)または75%大豆加水分解物と25%小麦加水分解物の混合物のときには生成物は検出されなかった。
【0023】
生物活性なタンパク質含有産物を得るためには、発酵培地に分泌または放出されるタンパク質を分解するストレスを避けることが重要である。大規模発酵では、一般に、機械的な撹拌または混合、およびスパージャーによる空気(または酸素)の導入を伴い、良好な収率を得るためには注意深い消泡剤の選択が必要である。本発明によれば、プルロニック(Pluronic)L−61、プルラコール(Pluracol)P2000(ポリプロピレングリコール)およびアンタロックス(Antarox)17−R2界面活性剤は、アポタンパク質と生物活性分子との混合物の産生に有用であることが確認されている。界面活性剤は、特に、Actinomadura種21G792、ケダルシジン、およびC−1027などのエンジイン含有色素タンパク質に有用である。試験された界面活性剤の中で、プルロニックL−61は、Actinomadura種21G792色素タンパク質の最大収率をもたらした。また、色素タンパク質は、プルラコールP2000(ポリプロピレングリコール)およびアンタロックス17−R2を用いても産生されるが、量は減少していた。ほとんど色素タンパク質を得られない界面活性剤は、プルロニックL−31、プルロニックL−81、プルロニックL−101、クレロール(Clerol)FBA 515B、クレロールFBA 265、クレロールFBA 975−US、クレロール5074、およびアンタロックスBL−214であった。
【0024】
本発明の特定の態様では、発酵培地は、8.75g/Lグルコース・一水和物、0.01g/L硫酸鉄・7水和物、0.02g/L硫酸マグネシウム・7水和物、2.0g/L炭酸カルシウム(ミシシッピ(Mississippi)(商標)ライム(Lime))、4.0g/Lマルコール・マルトンJ−1、2g/L酢酸ナトリウム・3水和物、0.5g/Lヨウ化カリウム、および0.5g/LプルロニックL−61を含む。
【0025】
本発明の別の態様では、発酵培地は、8.75g/Lグルコース・一水和物、0.01g/L硫酸鉄、0.02g/L硫酸マグネシウム・7水和物、2.0g/L炭酸カルシウム(Mississippi(商標)Lime)、4.0g/Lマルコー・マルトンJ−1、2g/L酢酸ナトリウム・3水和物、0.5g/L臭化ナトリウム、および0.5g/LプルロニックL−61を含む。
【0026】
また、本発明は、実質的に純粋なタンパク質およびポリペプチドを提供する。用語「実施的に純粋な」とは、本明細書中で使用するとき、所定のポリペプチドに関して、ポリペプチドが他の生物学的な高分子を実質的に含まないことを意味する。例えば、実質的に純粋なポリペプチドは、乾燥重量で少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約95%、または約99%純粋である。純度は、当該技術分野において知られている任意の適切な標準的方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定可能である。実質的に純粋なタンパク質には、アポタンパク質とエンジイン発色団の複合体である、実質的に純粋な色素タンパク質が含まれることは承認される。
【0027】
本発明の態様では、色素タンパク質は、陰イオン交換クロマトグラフィーによって、発酵培地またはActinomadura種21G792の抽出物から精製される。この方法は、色素タンパク質の有効濃度を提供し、(他の不純物のうち)発酵中に産生される望ましくない色素の大部分を除去する。一態様では、陰イオン交換樹脂は、DEAEセファロースFFである。色素タンパク質を含むクロマトグラフィー装填物は、pH8.3に調整され、陰イオン交換樹脂に適用される。色素タンパク質種は、移動相のイオン強度を増加させることによって溶出される。特定の態様では、色素タンパク質は、0.25M NaCl段階勾配を用いて溶出され、大部分の活性物質は、最初の2カラム容積で回収される。装填体積およびカラムサイズに依存して、浄化した発酵ブロスから色素タンパク質を精製する場合、その濃度は10倍を超え得る。
【0028】
本発明の別の態様では、Actinomadura種21G792色素タンパク質は、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製される。この精製法は、色素タンパク質とアポタンパク質とを分離し、他のタンパク質および非タンパク質成分を除去し、色素タンパク質の有効濃度を許容する。この固体支持体は、任意の有機、無機または複合材料、多孔性、超多孔性または非多孔性であってもよく、これは、例えば、ポリ(アルケングリコール類)(ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール))、アルカン類、アルケン類、アルキン類、アリール類、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルまたは支持体に疎水性を与える他の分子を用いて誘導かされるクロマトグラフィーに適合している。特定の例では、フェニルセファロースHPは、約pH8.2で用いられ、色素タンパク質は、100mM NaClまでの勾配で溶出される。
【0029】
マトリックス(例えば、陰イオン交換、疎水性相互作用)への色素タンパク質の結合に依存する分別は、多くの場合、カラムを用いて行われるが、代わりにバッチプロセスで行うことができる。例えば、イオン交換カラムクロマトグラフィーに代わる方法として、セファデックス(Sephadex)A50などの適切な陰イオン交換体への色素タンパク質種のバッチプロセス結合を用いることができる。バッチプロセスでは、色素タンパク質を含む溶液(例えば、保存用に、1M Tris pH8.3の追加の50分の1容積によって緩衝化された浄化した発酵ブロス)は、20mM Tris pH8.3で平衡化されたセファデックスA50スラリーに対する、室温で一晩撹拌して吸着させたバッチである。この溶液が浄化した発酵ブロスである場合、セファデックスA50と浄化した発酵ブロスの有用な体積比は1:15である。完全な結合の測定に応じて、セファデックスは、ろ過によって回収され、例えば、12体積の20mM Tris pH8.3を用いて洗浄される。色素タンパク質種は、30分撹拌後、20mM Tris、250mM NaCl pH8.3を用いてバッチ様式で溶出される。次に、ろ過物は、次の精製工程に適している結合条件に調整される。例えば、次の工程がフェニルセファロースHPに結合する場合、フェニルセファロースHPに対する結合条件は、1.5M濃度まで固体の硫酸アンモニウムを添加し、0.45μmろ過によって得ることができる。
【0030】
本発明の更なる態様では、Actinomadura種21G792色素タンパク質は、高分子量および低分子量のタンパク質成分を除去するサイズ排除クロマトグラフィーによって精製される。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーは、分子量によって種を分離するためのサイズ排除樹脂を用いる。他の手段には、限定されないが、適切な排除メンブレンを用いた限外ろ過および疎水性技術が含まれる。適切なマトリックスには、セファクリル(Sephacryl)S−200、スーパーロース(Superose)12、セファロース(Sepharose)S−300、スーパーデックス(Superdex)、トリスアクリル(Trisacryl)、アクリルアミド、セファデックスまたは所望サイズ範囲に試料を分別することができる、当業者に知られている同様の樹脂が含まれる。ゲルろ過は、約2℃〜約25℃の温度で行うことができる。適切なバッファーは、約0.1〜約1.0Mの塩、好ましくはNaClを約7〜約8.5のpHで含む。一態様では、クロマトグラフィーマトリックスの分離範囲は、約3×103の下限を有する。別の態様では、クロマトグラフィーマトリックスの分離範囲は、約106の上限を有する。本発明の特定の態様では、サイズ排除マトリックスは、約3×103〜約7×105の分離範囲を有するスーパーデックス75である。分離マトリックスがスーパーデックス75である場合、色素タンパク質調製物は、pH8.2で20mM Tris、100mM NaClを用いて分離することができる。当業者は、特定のマトリックスとともに使用されるバッファーを最適化することができる。回収した色素タンパク質を含む分画は、所望の通り、例えば、収率を最大にするかまたは不純物を最少にするようにプールすることができる。
【0031】
好ましい態様では、2以上の精製法を連続して用いる。色素タンパク質の濃縮は、各精製工程において、カラム容積(CV)およびプールされる溶出されたCVの数に依存して達成可能である。あるいはまたはさらに、色素タンパク質は、当該技術分野において知られている他の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、微小濃縮などによって濃縮することができる。
【0032】
本発明によれば、1以上の色素タンパク質種を単離または精製することができる。本発明の態様では、Actinomadura種21G792は、色素タンパク質収率のために選択される発酵条件を用いて増殖される。典型的には、色素タンパク質種は、上記で概説したような3工程プロセスによって精製される。色素タンパク質種は、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって分離可能である。提供される実施例では、フェニルセファロースクロマトグラフィーにより2つの色素タンパク質(3つの色素タンパク質を含む)ピークを得た。さらに、アポタンパク質の相対量は減少した。
【0033】
色素タンパク質の成分および発色団生合成経路の成分、またはそれらの成分の前駆体(すなわち、プレアポタンパク質)は、色素タンパク質生合成遺伝子クラスターと呼ばれる隣接する一連の読み取り枠(orf)(複数)によりコードされる。したがって、本発明は、Actinomadura種21G792色素タンパク質生合成遺伝子クラスターのorfをコードする単離された核酸(表1を参照されたい)、またはそれらの発現された(すなわち、処理された)断片(例えば、アポタンパク質;配列番号150)を提供する。一態様では、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号118、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号140、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、または配列番号150のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有する核酸を提供する。好ましい態様では、該核酸は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、または配列番号149のヌクレオチド配列を含む。本発明の核酸が相補配列を含むことは承認される。
表1
21G792色素タンパク質遺伝子クラスターの読み取り枠
【0034】
【表1A】
【0035】
【表1B】
【0036】
【表1C】
【0037】
【表1D】
【0038】
【表1E】
本発明は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、または配列番号149に特異的にハイブリダイズする(または特異的に結合する)核酸を提供する。また、核酸コードの縮退がなかったら、前述した配列に特異的に結合するであろう核酸も企図される。該核酸は、完全なタンパク質(例えば、完全なorf)またはそれらの断片をコードするために十分な長さを有するものであり得る。また、修飾されたタンパク質をコードする核酸も含まれる。タンパク質修飾の例としては、限定されないが、抗体、抗体断片、受容体リガンドなどの標的分子との融合が挙げられる。
【0039】
前記核酸は、プローブおよびプライマーをさらに含む。ある種の態様では、プローブまたはプライマーは変性していてもよい。さらに、それらの用途に従って、プローブおよびプライマーは一本鎖または二本鎖であってもよい。プローブおよびプライマーは、例えば、少なくとも約12個のヌクレオチドの長さ、好ましくは少なくとも約15個のヌクレオチドの長さ、より好ましくは少なくとも約18個のヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含み、本発明のブライマーを用いて生成され得るPCR増幅産物をさらに含む。
【0040】
ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションとは、プローブがその標的部分配列と選択的にハイブリダイズし、他の配列とのハイブリダイゼーションはより少ないかまたは全くない条件をいう。また、サザンハイブリダイゼーションおよびノーザンハイブリダイゼーションなどの核酸ハイブリダイゼーション実験に関連して、ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよびストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件は配列依存的であり、異なる環境パラメータにおいては異なることも理解される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が得られるように、ハイブリダイゼーションおよび洗浄液容量ならびに温度を調整することは当該技術分野において周知である。ストリンジェンシーは、用いられているプローブのサイズおよびヌクレオチド含有量などのパラメータに依存する。一般的な説明および例については、Sambrookら,1989,Molecular Cloning−−A Laboratory Manual(2nd ed.)Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Press,NY、および他の文献を参照されたい。核酸のハイブリダイゼーションに関する別のガイドは、Tijssen,1993,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes,part I,chapter 2,Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays,Elsevier,N.Y.に見出される。
【0041】
好ましいストリンジェントな条件は、プローブに約90%を超える相補的である配列にプローブがハイブリダイゼーションできるが、約70%未満相補的である配列にはハイブリダイゼーションできないものである。一般に、高ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、規定されたイオン強度およびpHで特定の配列の熱融解点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、(規定されたイオン強度およびpH下で)標的配列の50%が完全にマッチしたプローブにハイブリダイズする温度である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブのTmと等しくなるように選択される。
【0042】
サザンまたはノーザンブロットにおいてフィルター上に100を超える相補的残基を有する相補的核酸のハイブリダイゼーションのためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては、ハイブリダイゼーションを一晩実施して42℃で1mgのヘパリンを有する50%ホルムアミドが挙げられる。非常にストリンジェントな洗浄条件の例としては、約15分間72℃の0.15M NaClが挙げられる。ストリンジェントな洗浄条件の例としては、15分間65℃の0.2倍のSSC洗浄が挙げられる(Sambrookら,1989を参照されたい)。多くの場合、高ストリンジェントな洗浄の前に低ストリンジェントな洗浄を行い、バックグラウンドプローブシグナルを除去する。例えば、100個を超えるヌクレオチドの二重鎖に対する中程度のストリンジェントな洗浄の例としては、15分間45℃の1倍のSSCが挙げられる。例えば、100個を超えるヌクレオチドの二重鎖に対する低ストリンジェントな洗浄の例としては、15分間40℃の4〜6倍のSSCが挙げられる。一般に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおいて関係のないプローブについて観察したものよりも2倍(以上)であるシグナル対ノイズ比は、特異的なハイブリダイゼーションの検出を指示する。
【0043】
コードするポリペプチドが実質的に同一である場合、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸はなお実質的に同一である。これは、例えば、遺伝子コードによって許される最大のコドン縮退を用いて核酸のコピーを生成する場合に起こる。したがって、本発明のヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、または配列番号149またはそれらの断片であって、長さが少なくとも約50個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約100個のヌクレオチドである断片と少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%同一であるヌクレオチドの配列を含む。
【0044】
また、本発明は、発色団遺伝子クラスターによってコードされる1以上のタンパク質を産生する方法に関する。このようなタンパク質は、宿主細胞内に配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、または配列番号149を含む1以上の核酸を発現させることによって産生されてもよい。例えば、前述の核酸の1以上は、核酸を調節管理して発現に影響を与えるように操作可能に連結し、宿主細胞内での発現のためにベクターに組み込むようにすることができる。本発明の一態様では、アポタンパク質またはプレアポタンパク質が産生される。
【0045】
本発明において有用な管理要素は、オペレーター配列およびリボソーム結合部位を任意に含むプロモータを含む。また、宿主細胞の増殖に関して、アポタンパク質またはプレアポタンパク質の発現の調節を可能にするような他の調節配列が望ましい場合がある。調節配列は当業者に知られ、例として、調節化合物の存在を含む化学的または物理的刺激に応答して遺伝子を発現させたり、発現させないようにするものが挙げられる。また、他のタイプの調節要素が、ベクター、例えばエンハンサー配列に存在してもよい。種々の発現ベクターが当該技術分野において知られ、例えば、コスミド、PI、YAC、BAC、PAC、HACがある。
【0046】
また、選択可能なマーカーは、組換え発現ベクターに含むようにすることができる。形質転換細胞株の選択に有用であり、一般に、形質転換細胞を適切な選択培地で培養する場合に、発現によりそれらの細胞に選択可能な表現型を与える遺伝子を含む種々のマーカーが知られている。このようなマーカーは、例えば、プラスミドに抗生物質耐性または感受性を与える遺伝子を含む。
【0047】
上述したベクターは、タンパク質発現に適した任意の原核または真核細胞に挿入することができる。宿主細胞には、限定されないが、Actinomadura、Streptomyces、Micromonospora、Actinomyces、Nonomurea、Pseudomonasなどが含まれる。宿主細胞としては、Actinomadura、Streptomyces、およびMicromonosporaなどのエンジインを自然に発現する種または株(例えば、細菌株)が好ましい(例えば、Pfeiferら,2001,Science 291,1790−2;Martinezら,2004,Appl.Environ.Microbiol.70,2452−63を参照されたい)。一態様では、タンパク質がE.coliにおいて発現される。発現産物の回収は、当業者に周知の標準的な方法に従って行なうことができる。したがって、例えば、タンパク質は、単離を容易にする有用なタグ(例えば、His6タグ)を用いて発現させることができる。他の標準的なタンパク質精製技術は適切であり当業者に周知である(例えば、Quadriら,1998,Biochemistry 37,1585−95;Nakanoら,1992,Mol.Gen.Genet.232,313−21を参照されたい)。色素タンパク質遺伝子クラスター全体が発現される場合、色素タンパク質を回収することができる。発現のためにある種のorfを選択することによって、色素タンパク質に関連する化合物を産生することができる。例えば、orf23の発現によってプレアポタンパク質を産生することができる。
【0048】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、もしくは配列番号149またはそれらの断片を含む核酸分子をプローブとして用いてもよい。このようなプローブは、本発明の核酸の同定に有用である。下記の実施例に記載の方法と同様の方法を含む任意の適切な方法によりヌクレオチド配列をプローブとして用いてもよい。本明細書中において記載するように、dNDP−グルコース−4,6−デヒドラターゼ(DH)プローブを用いて、アポタンパク質または他の発色団に関連するタンパク質をコードする遺伝子または遺伝子クラスターを有する可能性があるActinomadura種21G792ゲノムDNAのコスミドクローンを同定した。同様に、本発明の核酸を用いて、他の生物において、アポタンパク質および発色団に関連するタンパク質、特に、9員環エンジイン発色団をコードするorfを同定することができる。このような生物は、一般に、例えば、真菌、バチルス、シュードモナス、粘液細菌およびシアノバクテリアなどの二次代謝産物を産生する生物を含む。好ましくは、該核酸を用いて、限定されないが、アクチノミセス属、ストレプトミセス属またはミクロモノスポラ属の生物を含む放線菌目(Taxonomic Outline of the Procaryotic Genera:Bergey’s Manual(登録商標) of Systematic Bacteriology,2nd Edition)の生物の遺伝子を同定する。より好ましくは、該核酸を用いて、Actinomadura種および亜種の遺伝子を同定する。
【0049】
また、本発明は、実施的に純粋なタンパク質およびポリペプチドを提供する。用語「実施的に純粋な」とは、本明細書中で使用するとき、所定のポリペプチドに関して、ポリペプチドが他の生物学的な高分子を実質的に含まないことを意味する。例えば、実質的に純粋なポリペプチドは、乾燥重量で少なくとも75%、80%、85%、95%、または99%純粋である。純度は、当該技術分野において知られている任意の適切な標準的方法、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析により測定することができる。実質的に純粋なタンパク質には、アポタンパク質がエンジイン分子と複合化する色素タンパク質を含むことは承認される。このような結合は、例えば、水素結合等の共有または非共有結合により行なうことができる。
【0050】
本発明のタンパク質およびポリペプチドは、Actinomadura種21G792の色素タンパク質遺伝子クラスターのorfによってコードされるものを含む。好ましい態様では、該タンパク質およびポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号118、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号140、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、または配列番号150を含むものである。特定の好ましい態様では、該タンパク質は、21G792プレアポタンパク質(配列番号64)またはアポタンパク質(配列番号150)である(図7)。21G792プレアポタンパク質およびアポタンパク質のアミノ酸組成を表2に示す。
表2
Actinomadura種21G792アポタンパク質のアミノ酸組成
【0051】
【表2A】
【0052】
【表2B】
また、本発明のタンパク質またはポリペプチドが、前述の好ましいタンパク質およびポリペプチドと実質的に同じアミノ酸配列を有するものをさらに含むことは承認される。本明細書中においては、実質的に同じアミノ酸配列は、PearsonおよびLipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,2444−8に従ったFASTA検索法により測定した場合、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の相同性を有し、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号118、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号140、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、または配列番号150と少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%同一である配列を含む配列であると定義される。
【0053】
このようなタンパク質は、特に、保存アミノ酸置換がある場合には、Actinomadura種21G792と同様の活性を有する。保存アミノ酸置換は、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、またはそれらの断片の1以上のアミノ酸を変更することによるアミノ酸組成の変化として定義される。この置換は、一般に同様の特性(例えば、酸性、塩基性、芳香族性、サイズ、正荷電もしくは負荷電、極性、非極性)を有するアミノ酸の置換であり、関連ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の性質(例えば、電荷、等電点、親和性、親和力、配座、溶解性)または活性を実質的に変更しない。典型的な保存置換は、以下のアミノ酸の群内で選択され、この群には、限定されないが、
(1)疎水性:メチオニン(M)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I);
(2)親水性:システイン(C)、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
(3)酸性:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
(4)塩基性:ヒスチジン(H)、リジン(K)、アルギニン(R);
(5)芳香族性:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)およびトリプトファン(W);
(6)鎖配向に影響する残基:gly、pro
が含まれる。したがって、また、本発明は、特に、アミノ酸置換が保存置換である場合、アミノ酸配列が配列番号64または配列番号150と実質的に同じである21G792アポタンパク質と同様のアミノ酸組成を有するアポタンパク質およびポリペプチドも包含する。
【0054】
本発明は、例えば、1以上の無作為または標的変異、欠失、または挿入の導入により、Actinomadura種21G792色素タンパク質遺伝子クラスターの1以上のorfに変更を与える。このようにして、該発色団、アポタンパク質、またはそれらの両方を修飾して、例えば、毒性の減少、効力の増加、または安定性の増加を示す色素タンパク質を作成してもよい。ある種のエンジイン発色団は、該発色団に特異的な部位でDNAを開裂させることが認識される。さらに、種々の色素タンパク質は、ヒストンに対する固有のタンパク質分解活性を有する。したがって、また、Actinomadura種21G792アポタンパク質および/または発色団の操作によっても特異性が変化した色素タンパク質を提供することができる。あるいは、アポタンパク質を修飾して、最適な活性分子のための担体または送達ビヒクルとすることができる。また、本発明は、別の生体分子と連結することが可能な修飾されたActinomadura種21G792発色団またはアポタンパク質/発色団複合体も提供する。一態様では、該生体分子は、発色団または色素タンパク質を特異的に標的とすることを可能にする。このような生体分子は、例えば、細胞表面分子または受容体のための抗体または他のリガンドとすることができる。
【0055】
例えば、変化したActinomadura種21G792アポタンパク質をコードする核酸を発現ベクターおよび宿主細胞に挿入し、該宿主細胞をアポタンパク質の発現に適した条件下で培養し、当該アポタンパク質を宿主細胞または培地から回収することができる。好ましくは、宿主細胞は、変化したアポタンパク質と複合体を形成することができるエンジイン発色団または他の分子を産生することが可能である。このような細胞の例としては、放線菌目の生物を産生する種々の抗生物質、特に、Actinomaduraおよびストレプトミセスなどの生物を産生するエンジインが挙げられる。宿主細胞は、大腸菌および酵母などの共通宿主をさらに含む。もちろん、上記変化したアポタンパク質を、Actinomadura種21G792において発現することができる。1つの態様では、上記変化したアポタンパク質を宿主細胞において過剰発現する。いずれかの他の内在性アポタンパク質が宿主細胞に存在する場合、変化したアポタンパク質をより高いレベルで発現し、他のアポタンパク質を過小発現するか、または標識を用いて該変化したアポタンパク質を発現し、このような精製を容易にする。好ましい態様では、変化したアポタンパク質をコードする核酸は、相同組み替えにより、内在性アポタンパク質遺伝子と置換される。次に、このようにして、変化したアポタンパク質を、エンジインまたは他の分子、例えば、活性剤との複合体において単離し、そのような複合体を、例えば、癌細胞株に対してスクリーニングして、生物活性を決定することができる。
【0056】
さらに別の態様では、a)変化したアポタンパク質を宿主細胞において発現し、エンジインまたは他の分子と複合化することなく回収し、b)次に、変化したアポタンパク質を種々のエンジインまたは他の分子に曝し、c)条件に合った技術を用いて、アポタンパク質が該エンジインまたは他の分子と複合体を形成するかどうかを決定し、場合によりd)生物活性に関して、該複合体をスクリーニングする。さらに別の態様では、変化したアポタンパク質を宿主細胞において発現し、エンジインまたは他の分子と複合化することなく回収し、次に、変化したアポタンパク質を種々のエンジインまたは他の分子に曝し、生物活性に関して、該複合体をスクリーニングする。
【0057】
別の例では、修飾発色団生合成経路をコードする核酸を発現する。
【0058】
Actinomadura種21G792生合成クラスターから発現されたポリペプチドの機能は、ORF配列と既知のタンパク質および配列モチーフとを比較することにより推定することができる。(表3)
表3
21G792色素タンパク質遺伝子クラスターのORFについて推定された機能
【0059】
【表3A】
【0060】
【表3B】
【0061】
【表3C】
【0062】
【表3D】
【0063】
【表3E】
【0064】
【表3F】
【0065】
【表3G】
【0066】
【表3H】
【0067】
【表3I】
【0068】
【表3J】
【0069】
【表3K】
【0070】
【表3L】
それらの機能と一致させて、集中的生合成経路が、Actinomadura種21G792エンジインの合成のために提供される。複合体の4つの主要成分(エンジインコア、マヅロサミン、2−ヒドロキシ−3,6−ジメチル安息香酸、および3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−プロパン酸)が別々に産生され、集合的に最終の生物活性産物を形成する。
【0071】
3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−プロパン酸部分の生合成。エンジインの3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−プロピオン酸由来部分(図9)を産生させるために、まず、チロシンをorf18の遺伝子産物によってβ−チロシンに変換する。Orf18は、いくつかのヒスチジンおよびフェニルアラニンアンモニアリアーゼと高い類似性を示すが、β−チロシンからβ−チロシンへの変換を触媒するC−1027生合成経路のSgcC4との類似性が最も高い(73%の同一性、84%の類似性)。(Liuら,2002,Science,297,1170−73、Van Lanenら,2005,J.Am.Chem.Soc.,127,11594−5)。次に、β−チロシンをorf17遺伝子産物のアデニル化(A)ドメインによって、アミノアシルアデニレートとして活性化し、隣接するペプチジル担体タンパク質(peptidyl carrier protein:PCP)上のホスホパンテテイニル補欠分子群のスルフィドリル基に伝達し、β−チロシニル−S−Orf17を形成する。Orf17は、多様な非リボソームペプチドシンテターゼ(nonribosomal peptide synthetase:NRPS)と類似する。推定されたアミノ酸配列の配列分析に基づいて、Orf17は、3つの機能ドメイン、縮合(C)ドメイン、Aドメイン、およびPCPドメインを含む(図10)。KonzおよびMarahiel,1999,Chem.Biol.,6,R39−R47を参照されたい。Aドメインの基質特異性コードをA4Aドメイン構造モチーフとA5Aドメイン構造モチーフとの間の領域から抽出し、特異性コードDPCQVMVIAK(表4)を示した。また、表4は、C1027生合成クラスター由来のSgcC1(Challisら,2000,Chem.Biol.7,211−24)およびグラミシジン生合成クラスター由来のGrsA(Stachelhausら,1999,Chem.Biol,6,493−505)の基質および基質特異性コードも示す。
表4
アデニル化ドメイン基質特異性コードの比較
【0072】
【表4】
Orf17は、C−1027生合成クラスター由来のSgcC1に最も類似している(41%の同一性、49%の類似性)。II型非リボソームペプチドシンテターゼ(NRPS)をコードするSgcC1は、孤立Aドメインから成る。この酵素のインビトロ特徴付けでは、単一のPCPドメインから成るII型NPRSであるSgcC2上に載せる前に、β−チロシンを特異的に活性化することが示されている。(Van Lanenら,2005)。SgcC1およびOrf17の基質特異性コードの比較により、該コードが著しく類似していることは明らかである(Orf17のDPCQVMVIAKとSgcC1のDPAQLMLIAK)。両方の酵素が同じ基質を活性化するため、この類似性は驚くべきことではない。興味深いことに、orf17の終止コドンは、orf18の初めと3bp重複しており、これら2つの遺伝子の発現が翻訳共役している可能性があることを示している。orf18が同時に発現してβ−チロシンを供給することなくorf17が発現することにより、その意図される基質を供給することなくOrf17遺伝子産物が産生されるため、これらの遺伝子の発現を調節することは予想外のことではない。
【0073】
一度チオエステル結合によりOrf17のPCP上に載せられると、次に、β−チロシニル−S−Orf17は、Orf15によってメチル化され、3−アミノ−3−(4−メトキシ−フェニル)−プロパニル−S−Orf17を生じる。Orf15は、多くのS−アデノシルメチオニン(SAM)依存性O−メチルトランスフェラーゼと高い類似性を示し、SAM依存性メチルトランスフェラーゼ(モチーフI−VVDVGTFTG、配列番号166;モチーフ2−PAADLVFL、配列番号167;モチーフ3−LLRPGGLLVA、配列番号168)に共通する3つの配列モチーフを有する。KaganおよびClarke,(1994)Arc.Biochem.Biophys.,310,417−427。Actinomadura種21G792エンジインは単一のO−メチル基を有するため、Orf15が、この反応を触媒する可能性が最も高い酵素である。続いて、この酵素につながれた中間体は、Orf39によってヒドロキシル化され、3−アミノ−3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−プロパニル−S−Orf17をもたらす。BlastP分析は、Orf39が、フェノール性基質のヒドロキシル化に関与する多くのヒドロキシラーゼに類似するヒドロキシラーゼであることを示す。これは、インビトロで塩素化□−チロシニル−S−PCP中間体をヒドロキシル化することが分かっているC−1027生合成クラスターのSgcCに際立って類似している(73%の同一性、82%の類似性)。(Liuら,2002;Van Lanenら,2005)。ヒドロキシル化に続いて、orf19遺伝子産物が芳香族環のC−2位置を塩素化して、3−アミノ−3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−プロパニル−S−Orf17をもたらす。Orf19は、二次代謝に関与するいくつかのアルキルハリダーゼと相同であり、最も顕著には、PCP結合β−チロシンの塩素化を行なうことが分かっているC−1027生合成クラスター由来のSgcC3である(58%の同一性、70%の類似性)。(Liuら,2002;Van Lanenら,2005)。
【0074】
Actinomadura種21G792エンジインに組み込まれたβ−チロシン誘導体は、アミノ基の代わりにヒドロキシル基を持つため、酸化的脱アミノ反応により、3−アミノ−3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−プロパニル−S−Orf17中間体のアミノ基をOrf21と置き換えることが予想できる。BlastP分析により、Orf21がいくつかの推定FADおよびNADPH依存性モノオキシゲナーゼ/ヒドロキシラーゼとの類似性を示すことが明らかになり、ドメイン分析により、多くのモノオキシゲナーゼに共通のFAD結合ドメインを含むことが示される。このドメインはアミノ酸オキシダーゼに共通しており、酸化的脱アミノ反応が十分に裏付けされているため、Orf21はこの形質転換を行なう有力な候補である。しかしながら、FADおよびNADPH依存性モノオキシゲナーゼ/ヒドロキシラーゼに類似するOrf42を含むこの反応を潜在的に触媒し得る候補が他にもいくつか存在することに留意することが重要である。さらに、P450ヒドロキシラーゼに類似する2つのOrf(Orf25およびOrf27)が生合成クラスターに存在し、P450ヒドロキシラーゼも酸化的脱アミノ反応に関係しているため、これらの酵素のうちの1つもこの工程を触媒する可能性がある。(Liら,2000,J.Bacteriol.182,4087−95)酸化的脱アミノ反応に続いて、Orf21または他の候補酵素のうちの1つにより導入されると思われるケトンの還元が発生する可能性がある。このような反応を触媒できることが最も明白な酵素は、ポリケチド生合成で用いられるものに類似するケトレダクターゼである。Actinomadura種21G792エンジイン生合成クラスターの検査では、ケトレダクターゼのような酵素との類似性を示すいかなる酵素も同定されなかった。必要な還元を触媒する可能性がある未知の機能を有するいくつかの酵素がクラスターに存在するか、または酸化的脱アミノ反応の触媒に関与する酵素も還元反応を触媒する可能性がある。あるいは、現在の生合成経路外でコードされた酵素が、予想される還元を触媒し得る。ケト還元に続いて、チロシン誘導体3−(2−クロロ−3−ヒドキシ−4−メトキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−プロパニル−S−Orf17がActinomadura種21G792エンジイン複合体に組み込まれる。このActinomadura種21G792エンジインの成分の最終産物への組み込みについては以下で検討する。
【0075】
この合成経路は限定を目的とするものではなく単なる例示である。これをモデルとして用いることで、当業者は、他の多くの合成方式を設計し、Actinomadura種21G792発色団の3−(2−クロロ−3−ヒドキシ−4−メトキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−プロパニル成分またはこの成分の誘導体を産生することができる。
【0076】
マヅロサミン部分の生合成。Actinomadura種21G792エンジイン生合成経路の分析により、マヅロサミン(4−アミノ−4−デオキシ−3−C−メチル−β−リボピラノース)生合成に関与する5つの遺伝子が同定された(図11)。全てのデオキシ糖と同様に、マヅロサミン(MDA)生合成における第1の工程は、グルコース−dNDPシンターゼによるD−グルコース−1−リン酸塩(G−I−P)の活性化である。Trefzerら,1999,Nat.Prod.Rep.16,283−99。いくつかのグルコース−dNDPシンターゼと相同であるOrf43は、G−1−Pの活性化に関与する。これは、GenBankデータベース内のタンパク質に対するOrf43の配列相同性に基づいて、dTDPまたはdUDP−グルコースの形成を触媒すると思われる。
【0077】
次に、dNDP−糖デヒドロゲナーゼと相同性が高い酵素であるOrf37は、第一級アルコールを酸化させ、dNDP−D−グルクロン酸を産生する。次に、予想されるdNDP−グルクロン酸デカルボイクスラーゼであるOrf38は、dNDP−D−グルクロン酸をdNDP−キシロースに変換する。orf38から増幅された断片をプローブとして用い、マヅロサミンの生合成が4,6−デオキシグルコース中間体を含むdNDP−グルコース−4,6−デヒドラターゼを伴い得るという予測に基づいてActinomadura種21G792エンジイン生合成クラスターを含む第1のコスミドを同定した(実施例を参照されたい)。しかしながら、UDP−グルクロン酸デカルボキシラーゼおよびTDP−グルコース−4,6−デヒドラターゼアミノ酸配列とOrf38の配列の比較では、Deckerらによりグルコース−4,6−デヒドラターゼ遺伝子を増幅するために用いるPCRプライマーの設計に用いられた同類アミノ酸モチーフもOrf38およびグルクロン酸デカルボキシラーゼ配列中に存在することが示される(図12)。(Deckerら,1994,FEMS Micro.Lett.,141,195−201)。結果として、これらのプライマーを用いてグルクロン酸デカルボキシラーゼが増幅されたことは驚くべきことではない。さらに、orf37の終止コドンがorf38の開始コドンと重複しており、これらのorfが翻訳共役している可能性があることに留意されたい。
【0078】
dNDP−グルクロン酸の脱カルボキシル化に続いて、dNDP−D−キシロースのC−3ヒドロキシルが、Orf49によってエピマー化され、dNDP−L−キシロースを産生する。Orf49は、Thermobifida fusca(受入番号AAZ55273.1)由来の未同定タンパク質に最も類似し、その次に最も密接な関係がある同族体は、オビエドマイシンの生合成に関与するStreptomyces antibioticus ATCC 11891由来の推定NDP−糖エピメラーゼであるovmXである(40%の同一性、53%の類似性)。(Lomboら,2004,Chembiochem 5,1181−7)。
【0079】
エピマー化に続いて、orf40の遺伝子産物は、dNDP−L−キシロースの3位炭素をメチル化する。Orf40は、多数のNDP−ヘキソースC−メチルトランスフェラーゼと有意な類似性を示し、多様なSAM依存性メチルトランスフェラーゼに共通する3つの配列モチーフ(モチーフ1−IVEIGCNDG、配列番号169;モチーフ2−GPADVLYG、配列番号170;モチーフ3−LLKPDGIFVF、配列番号171)を有する。(KaganおよびClarke,1994,Arc.Biochem.Biophys.,310,417−27)。結果として、Orf40は、このメチル化を行なうと予想される。他のC−メチル化がActinomadura種21G792エンジインの2−ヒドロキシ−3,6−ジメチル−安息香酸(HDBA)部分の生合成において発生し、C−メチルトランスフェラーゼは、そのメチル化(Orf33)を触媒すると予想され、HDBA炭素骨格の生成に関与するポリケチドシンターゼとともに小さなオペロンを形成すると思われ、結果として、Orf40はその形質転換には加わらないと予想される。
【0080】
次に、メチル化dNTP−糖は、C−4がアミノ基転移してdNTP−マヅロサミンを形成する。この反応は、D−forosamineの形成においてデオキシ糖中間体のC−4アミノ基転移を行なうことが分かっているスピノシン生合成クラスター由来のSpnRとの相同性が高い(55%の同一性、68%の類似性)Orf36により触媒されると思われる。(Zhaoら,2005,JACS,127,7692−3)Actinomadura種21G792エンジインのマヅロサミン成分の最終産物への組み込みについては下記で検討する。
【0081】
この合成経路は限定を目的とするものではなく単なる例示である。これをモデルとして用いることで、当業者は、他の多くの合成方式を設計し、Actinomadura種21G792エンジインのMDA成分またはこの成分の誘導体を産生することができる。
【0082】
2−ヒドロキシ−3,6−ジメチル−安息香酸部分の生合成。Actinomadura種21G792エンジインの2−ヒドロキシ−3,6−ジメチル安息香酸(HDBA)成分は、2つの遺伝子産物、反復I型ポリケチドシンターゼ(PKS)であるOrf32、およびSAM依存性C−メチルトランスフェラーゼであるOrf33により合成される可能性が最も高い(図13)。最近まで、芳香族ポリケチドの生合成についての細菌の理論的枠組みは、反復II型PKSを必要としていた。(Shenら,2003,Curr.Opin.Chem Biol.7,285−95)Actinomadura種21G792エンジイン生合成クラスターの検査では、II型PKSと相同する遺伝子の存在は明らかにされなかった。しかしながら、Orf32は、ネオカルチノスタチンのナフトエ酸部分の産生に関与する反復I型PKSであるNcsBに高い類似性を示し(47%の同一性、59%の類似性)、真菌を元にするいくつかの6−メチルサリチル酸シンターゼにも高い類似性を示した。(Liuら,2005,Chem.Biol.,293−302)Orf32は、ケトシンターゼ(KS)、アシルトランスフェラーゼ(AT)、デヒドラターゼ(DH)、ケトレダクターゼ(KR)およびアシル担体タンパク質(ACP)を含むタイプIのPKSに共通する5つのドメインから成る。これは、繰返し型デアルボキシラーゼ縮合を行い、その後にC−4の選択的ケト還元および脱水、ならびにC−2のケト還元を行なうことにより、1つのアセチル補酵素A(coA)および3つのマロニルcoAから直鎖テトラケチドの形成を触媒する。次いで、新生テトラケチド中間体は、非酵素分子内アルドール縮合により、環化6−メチルサリチル(6MSA)酸中間体を形成する。
【0083】
その後、orf33の遺伝子産物は、6MSA中間体のC−3位置をメチル化してHDBAを形成する。Orf33は、N−、C−およびO−メチルトランスフェラーゼを含む多種多様のSAM依存性メチルトランスフェラーゼに類似する。その分類と一致させて、Orf33は、多種多様のSAM依存性メチルトランスフェラーゼに共通する3つの配列モチーフを有する(モチーフ1−VLDLGGGDG、配列番号172;モチーフ2−DGCDAILY、配列番号173;モチーフ3−ALPEGGVCVV、配列番号174)。(KaganおよびClarke,1994)生合成クラスターに存在する他のメチルトランスフェラーゼがこの反応を触媒する可能性があり、Orf33は、Orf32のすぐ上流に位置し、HDBAの産生に充てられる小さなオペロンの一部であるため、結果として、この反応を起こす可能性が最も高い酵素である。PKSからの環化ポリケチドの放出には、多くのポリケチドの場合と同様にチオエステラーゼは必要としない。むしろ、それは、6−メチルサリチル酸生合成について報告されているものに似たケテン経路を介して放出される。SpencerおよびJordan,(1992)Biochem.J.,288,839−846。
【0084】
Orf32からの放出に続いて、HDBAが、orf31の遺伝子産物によりアリールアデニレートとして活性化される。Orf31は、多数のアリール酸AMPリガーゼに類似する。これらのタイプの酵素の最も研究された例は、親鉄剤生合成の調査によるものである。多くの親鉄剤の場合、サリチル酸塩または2’、3’−ジヒドロキシベンゾエートなどのアリール酸は、親鉄剤の非リボソームペプチドコアのアセンブリにおける第1の工程としてアデニル化される(CrosaおよびWalsh,2002,Microbiol Mol.Biol.Rev.,66,223−49を検討のために参照されたい)。アリール酸をアデニレートとして活性化することに加えて、これらの酵素はまた、いわゆるアリール担体タンパク質(ArCP)のホスホパンテテイニル補欠分子群のスルフィドリル基にアリール酸を転移する。親鉄剤バチルスバクチン(bacillibactin)の生合成に関与する2’,3’−ジヒドロキシベンゾエート−AMPリガーゼ(DhbE)の結晶構造と、NPRS GrsAアデニル化ドメインおよび蛍ルシフェラーゼを含む他のアデニル化酵素の結晶構造との比較により、アリール酸活性化ドメインがアミノ酸活性化ドメインには存在しない特徴的配列を含むことが明らかになった。(Mayら,2002,PNAS99,12120−5)。DhbEでは、通常アミノ酸活性化ドメイン(YxFDxS)に存在するいわゆるコアA4モチーフが配列モチーフHNYPLSSPGに置き換えられる。アミノ酸活性化ドメインでは、不変Asp残基がアミノ酸基質の□−アミノ基を安定させ、アリール酸活性化ドメインでは、Asp残基は、DHBAまたはサリチル酸の2’−ヒドロキシル基と水素結合する同類中性Asnに置き換えられる。(Mayら,2002)。HDBAは2’−ヒドロキシルを有するため、Orf31がアリール酸活性化A4モチーフを有することが予想される。Orf31配列の検査により、アリール酸を活性化する酵素と整合するモチーフHNFPLASPG(配列番号175)が明らかになった(図14)。
【0085】
NRPSアミノ酸活性化ドメイン(Stachelhausら,1999,Chem.Biol.,6,493−505;Challisら,2000,Chem.Biol.7,211−24)に関しては、A4コアモチーフとA5コアモチーフとの間の領域からアリール酸活性化ドメインの基質特異性コードを抽出することができる。(Mayら,2002)。表5は、Orf31基質特異性コードと、下記の二次代謝産物の生合成に関与する他のアリール酸活性化ドメインの基質特異性コードとの比較を示す:ヴァージニアマイシン(VisB、受入番号BAB83672)、プリスチナマイシン(SnbA、受入番号CAA67140)、ミコバクチン(MbtA、受入番号CAB03759)、エルシニアバクチン(YbtE、受入番号AAC69591)、ピオケリン(PchD、受入番号AAD55799)、ネオカルチノスタチン(NcsB2、受入番号AAM77987)、ビブリオバクチン(VibE、受入番号O07899)、バルニバクチン(Vva1301、受入番号BAC97327)、バチルスバクチン(DhbE、受入番号AAC44632)、およびミクソケリン(MxcE、受入番号AF299336)。GrsAフェニルアラニン活性化アデニル化ドメインに準じて位置番号を付している(Stachelhausら,1999)。2’,3’−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)とサリチル酸の活性化の区別に関与すると提示されている残基をアスタリスクで特定している。Orf31で見られる位置と対応する各位置の残基は、灰色の影を付けている。HPA、3−ヒドロキシピコリン酸。
【0086】
Orf31基質特異性コードと他のアリール酸活性化酵素および3−ヒドロキシピコリン酸を活性化する2つの酵素のコードとの比較により、Orf31がサリチル酸またはHDBAのいずれかを活性化することが示される。(表5)。
表5
アリール酸活性化ドメイン基質特異性コードに比較
【0087】
【表5A】
【0088】
【表5B】
サリチル酸またはHDBAの活性化後、Orf31は、orf16によってコードされるArCPに結合したホスホパンテテイニル補欠分子群のスルフィドリル基への活性化アリール酸の転移を触媒する。Orf16は、二次代謝に関与する多くのPCPおよびArCPに類似する(約30〜40%同一)小さなタンパク質(95aa)であり、不変セリン残基(GTFFQLRGQSI;配列番号176)を含む特徴的な4’−ホスホパンテイン付着モチーフを有する。ArCPへの付着の後、下記で検討されるように、サリチル酸塩誘導体は、Actinomadura種21G792エンジイン複合体への組み込みに期待される。
【0089】
この合成経路は限定を目的とするものではなく単なる例示である。これをモデルとして用いることで、当業者は、他の多くの合成スキームを設計し、Actinomadura種21G792発色団の2−ヒドロキシ−3,6−ジメチル安息香酸成分またはこの成分の誘導体を産生することができる。
【0090】
エンジインコア生合成。少なくとも14個の遺伝子が、図15に概略を示すActinomadura種21G792エンジインコア生合成におけるそれらの役割をサポートするように機能することが推定されるActinomadura種21G792エンジイン生合成クラスター内で同定された。Orf5は、ネオカルチノスタチン(NcsE)、C−1027(SgcE)およびカリケアマイシン(CalE8)の生合成に関与するエンジインPKSとの全体的な配列相同性を示す反復I型PKSをコードする。(Liuら,2005;Liuら,2002;Ahlertら,2002、Science,297,1173−76)。先に同定したエンジインPKSと同様に、Orf5は、6個のドメイン:KS、AT、ACP、KR、DH、およびいわゆる「末端ドメイン」(TD)からなる(図16)。TDは、4’−ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼとの相同性を示す。結果として、TDは、翻訳後にACP活性部位セリンを4’−ホスホバンテテインで修飾することにより、エンジインPKSの自動活性化を触媒すると見られている。(Zazopolousら,2003,Nature Biotech.,21,187−90)。Orf5は、1つのアセチルcoAおよび7つのマロニルcoAから新生直鎖ポリ不飽和ポリケチド中間体を繰り返し産生すると予想される。直鎖中間体は、Orf5から放出され、および/または全てのエンジイン生合成クラスターに見られるチオエステラーゼタンパク質群との類似性を示すOrf6により環化されると考えられる。上記参照。このタンパク質群は、Pseudomonas種株CBS−3の4−ヒドロキシベンゾイルcoAチオエステラーゼとの相同性に基づいて、チオエステラーゼとして機能すると予測される。上記参照。
【0091】
ポリケチド中間体は、いくつかの遺伝子産物(Orf1−4、7、8、11、12、14)によりさらに処理され、エンジインコアを与える(図15)。これらの遺伝子産物は、エンジイン生合成クラスターでの保存性が高い。Orf5および6に加えて、Orf1−4の同族体が現在までに研究されてきた全てのエンジイン生合成経路に見られ(上記参照)、Orf7、8、11、12および14の同族体は、9員エンジインC−1027およびネオカルチノスタチン生合成クラスターと共通する(Liuら,2005;Liuら,2002)。Orf1−4、11および14は、機能が公知のいずれのタンパク質とも相同性を有さないが、Orf7、8および12は、種々のオキシドレラクターゼと似ている。興味深いことに、orf11およびorf12と同様に、orf2−8は翻訳共役されていると思われるため(例えば、orf2の終止コドンはorf3の開始コドンと重複し、orf3の終止コドンは開始コドンまたはorf4と重複する、など)、これらの遺伝子の大半の発現は共調整することができる。
【0092】
エンジインコア(図15)は、エンジインコアのC13〜C14エポキシドからの末端アミドの産生に関与していると思われる少なくとも3つの遺伝子産物、Orf30、Orf41およびOrf24によりさらに修飾される。orf30は、予想されるエポキシドヒドロラーゼをコードし、orf41は、アルコールデヒドロゲナーゼをコードし、orf24は、アミノトランスフェラーゼをコードする。その後、完全に修飾されたエンジインコア部分は他の発色団成分で覆われて、活性代謝体を産生する。
【0093】
この合成経路は限定を目的とするものではなく単なる例示である。これをモデルとして用いることで、当業者は、他の多くの合成方式を設計し、Actinomadura種21G792発色団のエンジインコアまたはこの成分の誘導体を産生することができる。
【0094】
Actinomadura種21G792発色団のアセンブリ(図17)。Actinomadura種21G792エンジインの生合成は、分子複合体の個々の成分のアセンブリについて集中的方法を必要とするエンジイン生合成の現在の理論的枠組みに従う。(Liuら,2005;Liuら,2002;Ahlertら,2002)。各成分の産生に続いて、それら成分がエンジインコアに体系的に結合し、最終的に図17において概略を示すような最終分子を得る。エンジインコアの3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−プロパニル部分への付着は、Orf17の縮合ドメインにより触媒されていると思われる。Orf17によるこの反応の触媒作用は、通常、NRPSの縮合ドメインに起因する一般的なペプチド結合形成活性と整合する。エーテル結合形成を介して3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−プロパニル部分の芳香族環をエンジインコアに付着するために用いられるメカニズムは不明であるが、C5〜C6エポキシドの開環と同時に起こり、および/またはActinomadura種21G792エンジイン生合成クラスター内に含まれるP450またはモノオキシゲナーゼをコードするorfのうちの1以上に関連し得る。マヅロサミン部分は、O−グリコシド結合を介してエンジインコアと結合する。天然物生合成に関与する多種多様のグリコシルトランスフェラーゼとの配列類似性が高いorf29の遺伝子産物は、この伝達を触媒する。Orf29は、C−1027エンジインコアのグリコシル化を触媒すると考えられているC−1027生合成経路からのSgcA6と最も類似している(43%の同一性、57%の類似性)。(Liuら,2002)。最後に、タイプIのNPRS縮合ドメインであるOrf20は、非リボソームペプチド生合成でのペプチド結合形成に似た反応において、Orf16のホスホパテテインの腕からマヅロサミンのアミノ基にHDBA部分を伝達する。
【0095】
これをモデルとして用いて、当業者は、他の多くの合成スキームを設計し、Actinomadura種21G792発色団、特に発色団−bおよび発色団−c、ならびにこれらの発色団の誘導体を産生することができる。
【0096】
本発明は、Actinomadura種21G792発色団生合成成分を含む新規な生合成経路であって、Actinomadura種21G792発色団の変異体が産生されるように1以上の成分が突然変異しているか、または異なるエンジイン発色団の生合成経路からの成分で置換もしくは付加されている経路を提供する。標準的な分子遺伝子技術を用いて、先に示したような個々のorfまたはorfの組み合わせを操作して、Actinomadura種21G792発色団および/または色素タンパク質の新規な生物活性類似体を産生することができる。1つの好ましい態様では、新規な発色団は、Actinomadura種21G792アポタンパク質と同時発現する。別の態様では、Actinomadura種21G792発色団は、Actinomadura種21G792アポタンパク質の変異体と同時発現する。さらに別の態様では、新規な発色団は、Actinomadura種21G792アポタンパク質の変異体と同時発現する。
【0097】
本発明の一態様では、Actinomadura種21G792におけるorf15の不活性化により、通常は当該分子のβ−チロシニル部分に見られるO−メチルが欠失した類似体が産生される。(例えば、図10参照)この変化により、O−メチルの代わりにヒドロキシル基が残る(下記のR1参照)。ヒドロキシル基置換を行なう理由の1つは、標準的な合成化学技術による類似体のさらなる化学誘導体化のための化学的な手かがりとしてそれを用いることである。同様に、orf19によりコードされたハロゲナーゼの不活性化によりPCP結合β−チロシンの塩素化を防ぎ、その結果、Actinomadura種21G79類似体からClがなくなる(下記のR2参照)。下記のR3基は、通常、CH3であり、dNDP−L−キシロースの3−炭素をメチル化するorf40の産物の不活性化によりHに変化させることができる。
【0098】
【化4】
Actinomadura種21G792発色団のR4基は、
【0099】
【化5】
(R5と示す)であり、ここでR5は、アミド窒素で糖部分と連結する。orf32の不活性化により、HDBA部分が欠失したエンジイン類似体が産生され(例えば、図13、17を参照されたい)、またはorf20の不活性化の結果、R5がNH2により置換される。さらに、R4部分は修飾されてもよい。例えば、
【0100】
【化6】
(R6と示す)は、orf33を不活性化することにより得られる。
【0101】
別の態様では、orf32は上述のように不活性化され、突然変異体を用いて、HDBA部分が他のアリール酸に置き換えられたActinomadura種21G792エンジイン類似体のライブラリーを作成する。アリール酸は、orf32突然変異体に各種の天然アリール酸、N−アセチルシステアミン連結
アリール酸、またはメチルチオグリコレート等、他のチオエステル担体と連結したアリール酸を発酵ブロスに与えることにより導入される(例えば、Jacobsenら(1997)Science 277,367−9を参照されたい)。Actinomadura種21G792分子複合体への成分の添加に関与する各orfを単独または他のorfと組み合わせて突然変異させて、生物学的試験のための大規模なActinomadura種21G792エンジイン類似体のライブラリーを作成することができる。
【0102】
よって、本発明は、下記の式を有する化合物を提供する:
【0103】
【化7】
式中、R1はOHまたはOCH3であり;R2はClまたはHであり;R3はCH3またはHであり;R4はNH2、R5、およびR6から選択される。さらに、特定の天然アリール酸、N−アセチルシステアミン連結アリール酸、またはメチルチオグリコレート等の他のチオエステル担体に連結したアリール酸を付加した発酵ブロスで突然変異体orf32を培養することにより、エンジイン類似体を産生することができ、ここで、R4は、
【0104】
【化8】
または
【0105】
【化9】
であり、
式中、R1’はH、CH3、OH、OCH3、Cl、C3H7、またはNO2であり;R2’はH、CH2、NH2、OH、F、OCH3、F、Cl、NO2、OC2H5、またはNC2H6であり;R3’はH、CH3、Cl、CH3、NH2、OH、F、COH、OCH3、Cl、OC2H5、またはNO2であり;R4’はOHまたはOCH3である。
【0106】
他の態様では、異なる二次代謝経路からの1以上のorfをActinomadura種21G792に導入することができる。選択されたorfを、相同組換えにより、または例えば、ファージのint/attP機能(例えば、pSET152または同様のベクター)により媒介された部位特異的組込により、宿主染色体に導入することができる。あるいは、選択されたorfを自己複製ベクター上に導入することができる。一度発現すると、遺伝子産物は、Actinomadura種21G792発色団を修飾し続ける。例えば、C−1027生合成遺伝子クラスター由来のsgcA、sgcA1、sgcA2、sgcA3、sgcA4、sgcA5およびsgcA6を、1つ以上のマヅロサミン生合成orfが不活性であるActinomadura種21G792株に導入し、マヅロサミンの代わりにC−1027デオキシアミノ糖またはその誘導体を含むActinomadura種21G792エンジイン類似体を産生することが可能である。
【0107】
本発明はまた、Actinomadura種21G792の色素タンパク質生合成クラスターから他の二次代謝産物を産生する微生物に遺伝子を導入して、その生物により産生された同種の二次代謝産物を修飾することを可能にする。例えば、異なるエンジイン発色団(例えば、C−1027発色団)の類似体は、その発色団の生合成経路を発現する宿主であって、Actinomadura種21G792の色素タンパク質生合成経路から1以上の成分が置換または付加された宿主を提供することにより産生される。
【0108】
Actinomadura種21G792色素タンパク質の類似体を作ることに加えて、負の調節因子を不活性化し、正の調節因子の発現レベルまたは遺伝子コピー数を増加することにより発酵タイターを増加することもできる。Actinomadura種21G792生合成クラスターは、GenBankデータベースに含まれる配列との相同性に基づいて推定転写調節因子と同定された少なくとも8個のorf(orf9、10、46、50、52、55、62および63)を含む。これらの調節因子の機能を体系的にテストして、どの調節因子が正の調節因子であり、どれが負の調節因子であるかを特定することができる。それらの結果に基づいて、これらの遺伝子のうちの1つ以上を合理的に変形し、Actinomadura種21G792色素タンパク質の発酵タイターを増加することができる。
【0109】
典型的には、有毒な二次代謝産物を産生する生物は、その産生する生物に自己耐性を与える1以上の遺伝子を有する。これらの遺伝子の産物は、通常、有毒な代謝体を化学的に修飾、隔離または輸送することにより耐性を与える。ある場合には、該代謝体の標的は、本質的に、当該代謝体に対する感受性が低いかまたは当該標的を修飾して当該代謝体に対する感受性を低くする。Actinomadura種21G792生合成クラスターは、自己耐性に関与している可能性がある遺伝子産物を産生する少なくとも2つのorfを含む。Actinomadura種21G792複合体のアポタンパク質成分をコードするorf23は、活性発色団を隔離することにより上記産生する生物のDNAを発色団による開裂から保護することに関与していると思われる。orf22の遺伝子産物は、多くの膜貫通排出タンパク質と同様のタンパク質をコードし、C−1027発色団−アポタンパク質複合体の排出ポンプとして作用すると考えられているC−1027生合成経路からのSgcBに最も類似する(Liuら(2005)Chem.Biol.,293−302)。orf22およびorf23を用いることにより、Actinomadura種21G792色素タンパク質に潜在的に耐性を与えることができる。1つの態様では、Actinomadura種21G792生合成経路を異種発現するように選択された細胞にこれらのorfを導入することにより、その細胞が高度なActinomadura種21G792色素タンパク質を産生することを可能にし、その有毒作用に対する免疫を有するようにすることができる。別の態様では、Actinomadura種21G792の生体内転換のために選択されたドナー細胞にこれらのorfを導入することができる。このような細胞は、それ以外の場合では、Actinomadura種21G792の極度の毒性により生体内転換が発生する前に殺傷される。
【0110】
Actinomadura種21G792生合成クラスター全体、または選択された部分は、細菌等の異種宿主中で発現することができる。有用な細菌の例としては、例えば、ストレプトミセス属、Actinomadura属、Nonomurea属、ミクロモノスポラ属、エシェリキア属、およびシュードモナス属のメンバーが挙げられる。(例えば、Pfeiferら,2001;Martinezら,2004参照)該生合成クラスターはまた、酵母等の真核宿主中でも異種発現することができる。一態様では、該Actinomadura種21G792生合成クラスターは、高度な二次代謝産物の産生のためにすでに修飾された生物中で有利に発現されることにより、Actinomadura種21G792色素タンパク質の産生レベルを、Actinomadura種21G792を用いて通常達成することができるレベルよりも上げることができる。(例えば、Rodriguezら,2003,J.Ind.Microbiol.Biotechnol.30,480−8を参照されたい)。別の態様では、Actinomadura種21G792色素タンパク質類似体の生成を促進するために、上記Actinomadura種21G792生合成クラスターは、特に遺伝子操作を受けやすい生物中で有利に発現される(例えば、Bentleyら,2002,Nature 417,141−7;Binnieら,1997,Trends Biotechnol.15,315−20を参照されたい)。
【0111】
Actinomadura種21G792色素タンパク質生合成経路の全てまたは一部をコードする組換えDNAを伝達するために有用な様々な方法が当該技術分野で知られている。種々の宿主においてこのようなDNAを伝達および発現するために用いることができる広範な宿主域を有するプラスミドが入手可能である(例えば、ストレプトミセス用のpIJ101(Kieserら,1982、Mol.Gen.Genet.185:223−8)、アクチノミセス用のpJRD215(Yeungら,1994,J.Bacteriol.176:4173−6))。このようなベクターを伝達するための方法には、共役、電気穿孔法およびプロトプラスト形質転換が含まれる。Escherichia coli中での複製およびE.coliからストレプトミセス等のグラム陽性細菌種への接合伝達が可能なシャトルベクターも用いることができる(例えば、Mazodierら,1989,J.Bacteriol.171:3583−5;Kieserら,2000,Practical Streptomyces genetics.A laboratory manual.John Iines Foundation,Norwich,United Kingdom)。
【0112】
色素タンパク質を含む医薬組成物であって、色素タンパク質が本発明のアポタンパク質および発色団の複合体を含み、好ましくは、当該発色団がActinomadura種21G792により産生される医薬組成物を調製することが望ましい場合がある。好ましくは、該ポリペプチドは、非共有結合により発色団に結合する。一般に、医薬組成物の調製には、本質的にピロゲンおよびヒトまたは動物に有害な任意の他の不純物を有さない医薬組成物の調整を伴う。適切なバッファーを用いて複合体を安定にし、標的細胞による取り込みを許容することも望ましい場合がある。
【0113】
本発明の水性組成物は、医薬的に許容される担体または水培地中でさらに分散した色素タンパク質を有効量含む。このような組成物は植菌とも呼ばれる。「医薬的または薬理学的に許容される」という文言は、動物またはヒトに適切に投与した際に、副作用、アレルギーまたは他の有害反応を生じない組成物を指す。
【0114】
本明細書中で使用するとき、「医薬的に許容される担体」には、任意および全ての溶剤、分散培地、被覆剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤などが含まれる。医薬活性物質に対するこのような培地および薬剤の使用は当該技術分野において周知である。任意の従来の培地または薬剤が上記色素タンパク質に適さない場合を除いて、治療用組成物にいてそれを用いることが企図される。抗菌または抗腫瘍薬剤を含む補助的な活性成分も前記組成物に組み込んでもよい。
【0115】
本発明の1つの態様では、本発明の発色団は、細胞により、例えば、飲作用によって取り込まれる。他の態様では、上記発色団は、特定の細胞または細胞タイプの標的となるように修飾される。このような一態様では、色素タンパク質を、モノクローナル抗体または他のタンパク性担体を標的構成単位として用いるポリマーまたは複合体の形態で、標的組織に送達させてもよい。種々のポリマー系および抗体複合体送達システムが知られ、自然発生的なC−1027エンジインを伴う化学療法方針において現在利用されている。本発明では、色素タンパク質を、例えば、化学的に修飾して、治療、特には、化学療法に有用なポリ(スチレン−co−マレイン酸)−接合色素タンパク質を形成してもよい。(例えば、MaedaおよびKonno,1997,Neocarzinostatin:the Past,Present,and Future of an Anticancer Drug,H.Maeda,K.Edo,N.Ishida,Eds.,Springer−Verlag,New York,pp.227−267を参照されたい)。
【0116】
疎水性および親水性セグメントの両方を含むポリマーミセルは、化学療法薬剤の治療指数を増大するために最近開発された新たな薬物送達システムである(Yokoyamaら,1990,Cancer Res.50:1693−700;Kabanovら,1989,FEBS Lett.258:343−5)。ミセルの大きさを調節して浸透性および保持(EPF)効果を向上させることで、ミセル粒子が正常な組織においてよりも腫瘍組織においてより血管に浸透できるようにすることができる(Maeda,2001,Adv Enzyme Regul.41:189−207)。これにより、腫瘍組織における薬物分布を有利なものにすることができるため、インビボでの有効性が増大すると期待される。上記21G792色素タンパク質をブロック共重合体溶液と混合することにより、特別に設計されたミセルに非共有結合的に組み込むことができる。結果得られた薬物の代謝的安定性を有意に増大させることができ(Yokoyamaら,1991,Cancer Res.51:3229−36)、これは、癌化学療法における21G792色素タンパク質の送達に潜在的に有利である。
【0117】
色素タンパク質(すなわち、アポタンパク質または発色団)は、細胞または病原体への送達のために、化学的リンカーまたは他の関連する方法を用いて、タンパク質に複合化することができる。21G792色素タンパク質中の発色団をアジ化ナトリウムおよび第2級アミンと反応させて一連の誘導体を生じている。これらの誘導体は、C−5に、天然の発色団中のヒドロキシル基と置き換わるアジドまたは第2級アミノ基を含む。一方の末端にアミノ基を有し、他端にカルボキシル基を有するリンカーを用いてモノクローナル抗体および発色団を接続し、標的薬物の送達のための発色団−抗体複合体を形成することができる。上記C−5ヒドロキシル基と置き換わるリンカーのアミノ基は、腫瘍組織においてより酸性度が高い条件下で上記複合体を加水分解して発色団に戻すように設計される。例示的な連結を図30に示す。
【0118】
さらに、色素タンパク質をモノクローナル抗体と複合化して、モノクローナル抗体(MAb)−色素タンパク質複合体を形成してもよい。抗原に対して高い親和性を有し、好ましくは悪性細胞の表面の抗原決定基に対する特異性を有するする抗体は、標的部分として自然な選択である。抗体により媒介される色素タンパク質の腫瘍細胞への特異的送達は、それらの抗腫瘍効果を単に増大させるだけでなく、正常な組織による標的以外の取り込みを防ぐことにより、治療指数を増大させることが期待される。本発明において用いられ得るこのような抗体担体の例としては、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、それらの生物学的に活性な断片、およびそれらの遺伝子または酵素が操作された対応物が挙げられる。好ましくは、そのような抗体は、癌等の増殖性疾患における標的細胞および/または組織上で発現された細胞表面抗原に向けられる。抗CD33モノクローナル抗体は、このアプローチに有用なMabの例示であり、急性骨髄性白血病の患者の状況を含む様々な状況において、色素タンパク質を癌性組織に到達させ得る。(例えば、Sieversら,1999,Blood 93,3678−84を参照されたい)有用なモノクローナル抗体複合体の別の例としては、例えば、抗CD22モノクローナルタンパク質がB細胞リンパ腫を標的とする送達のためにエンジインと接合されるPCT国際公開第WO03/029623号に記載のものが挙げられる。前述したように、いくつかのMAb−C−1027複合体は、有望な抗癌剤として評価段階にある。(Brukner,2000,Curr.Opinion Oncologic,Endocrine&Met.Invest.Drugs 2,344)。抗体担体以外の他のタンパク性担体は、ホルモン、成長因子、抗体の模倣体、およびそれらの遺伝子または酵素が操作された対応物を含み、以下において単独でまたはまとめて「担体」と呼ぶ。担体の本質的特性は、その不要な細胞に関連する抗原または受容体を認識して結合した後に内在化する能力である。本発明に適用可能な担体の例としては、全体として本明細書中に援用される米国特許第5,053,394号および同第5,773,001号に開示されるものが挙げられる。本発明での使用が好ましい担体は、抗体および抗体の模倣体である。
【0119】
多数の非免疫グロブリンタンパク質の骨組みが、抗体の特異性を有する抗原エピトープに結合する抗体の模倣体を生成するために用いられている。(PCT国際公開第WO00/34784号)。例えば、免疫グロブリン群に関連する「ミニボディ」骨組みが、3つのβ鎖をモノクローナル抗体の重鎖可変ドメインから取り除くことにより設計されている(Tramontanoら,1994,J.Mol.Recognit.7:9−24)。このタンパク質は61残基を含み、2つの超可変ループを提示するために用いることができる。これら2つのループはランダム化され、抗原結合のために選ばれた産物であるが、今までのところ、この枠組みは、溶解性の問題のため実用性が幾分限られていると思われる。ループを表示するために用いられる他の枠組みは、テンダミスタット(哺乳動物のα−アミラーゼを特異的に阻害し、2つのジスルフィド結合により、74残基、6鎖ベータシートサンドイッチをまとめて保持したタンパク質)である(McConnellおよびHoess,1995,J.Mol.Biol.250:460−70)。この骨組みは、3つのループを含むが、ランダム化の可能性に関しては、現在まで、それらのループのうちの2つについてしか調べられていない。
【0120】
他のタンパク質を枠組みとしてテストし、αへリックス表面上のランダム化した残基(Nordら,1997,Nat.Biotechnol.15,772−7;Nordら,1995,Protein Eng.8,601−8)、アルファイルへリックス束内のαへリックス間のループ(KuおよびSchultz,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92,6552−6)、および小型のプロテアーゼ阻害剤などのジスルフィド架橋により拘束されたループ(Marklandら,1996,Biochemistry 35,8045−57;Marklandら,1996,Biochemistry 35,8058−67;RottgenおよびCollins,1995,Gene 164,243−50;Wangら,1995,J.Biol.Chem.270,12250−6)を表示するために用いられている。
【0121】
標的分子および色素タンパク質は、化学的架橋によってまたは組換えDNA技術の適用等による遺伝子融合を介して共有結合的に関連付けられてもよい。後者のアプローチでは、アポタンパク質は、そのC末端またはN末端を、細胞を標的とするタンパク質分子のN末端またはC末端に融合させてもよい。細胞を標的とする分子が抗体である場合、アポタンパク質のC末端は、当該抗体の軽鎖および/または重鎖のN末端と融合させることが好ましい。化学的架橋のために、いくつかの共通タンパク質−抗体リンカーは、琥珀酸エステルと他のジカルボン酸、グルタルアルデヒドと他のジアルデヒドである。そのようなリンカーは他にも当該技術分野において周知である。
【0122】
治療用組成物の溶液を界面活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)と適切に混合した水で調製してもよい。また、分散物をグリセロール、ポリエチレングリコール液、それらの混合物、およびオイルで調製してもよい。通常の保存および使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含む。
【0123】
本発明の治療用組成物は、溶液または懸濁液のいずれかの注入可能な組成形態で有利に投与される;また、注入の前に液体で溶解または懸濁するために適した固形を調製してもよい。これらの調製物はまた乳化してもよい。このような目的のための典型的な組成物は、医薬的に許容可能な担体を含む。例えば、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水1ミリリットルにつき、10mg、25mg、50mgまたは最大で約100mgのヒト血清アルブミンを含んでもよい。他の医薬的に許容される担体は、水性溶液、塩を含む非毒性賦形剤、防腐剤、緩衝剤等を含む。
【0124】
非水性溶剤の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、およびオレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステルがある。水性担体には、水、アルコール/水性溶液、食塩水、ナトリウム塩化物などの非経口剤、リンゲルデキストロースなどが含まれる。静脈内投与剤には、流体および栄養補充剤が含まれる。防腐剤には、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤および不活性ガスが含まれる。医薬組成物の種々の成分のpHおよび正確な濃度は、周知のパラメータに応じて調節される。
【0125】
経口投与にはさらなる製剤が適切である。経口製剤には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどの典型的な賦形剤が含まれる。前記組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤または粉末の形態を取る。経路が局所的である場合、前記形態はクリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)またはスプレーであってもよい。
【0126】
本発明の治療用組成物は、伝統的な医薬調製物を含んでもよい。本発明に従った治療用組成物の投与は、その経路が標的組織にとって有効である限り、任意の一般的経路を介して行なわれる。これには、経口投与、経鼻投与、口腔投与、直腸投与、膣内投与または局所投与が含まれる。局所投与は、化学療法により誘発された脱毛症または他の皮膚過剰増殖性疾患を防ぐ皮膚癌の治療に特に有利である。あるいは、投与は、同所性、皮内、皮下、筋内、腹腔内または静脈注射である。このような組成物は、通常、生理学的に許容される担体、緩衝剤または他の賦形剤を含む医薬的に許容可能な組成物として投与される。肺疾患の治療については、好ましい経路は、エアロゾールによる肺への送達である。エアロゾールの量は、約0.01mlと0.5mlの間である。同様に、結腸関連の疾患の治療に好ましい方法は浣腸である。浣腸の量は、約1mlと100mlの間である。
【0127】
治療用組成物の有効量は、意図する目的に基づいて決定される。「単位用量」または「投与量」という用語は、被検者における使用に適した物理的に個別の単位を意味し、各単位は、その投与、すなわち、適切な経路および治療計画に関して上述したような所望の応答を生じるように算出された所定量の治療用組成物を含む。治療回数および単位用量の両方に応じた投与量は、保護が所望されるものに依存する。
【0128】
また、治療用組成物の正確な量も医師の判断に依存し、各個人に特有のものである。用量に影響する要因には、患者の物理的および臨床状態、投与経路、意図する治療の目的(症状の緩和対治癒)ならびに特定の治療用物質の効力、安定度および毒性が含まれる。
【0129】
本出願の全体で、様々の刊行物は、括弧内の名称またはナンバーによって参照される。全体としてこれらの刊行物の開示は、本出願が関連する当該技術分野の状況をより十分に説明するために本明細書中に参照により援用される。
【実施例】
【0130】
本明細書に開示されている本発明の原理の改変は当業者によってなされてもよいことは理解および期待されるべきであり、このような変更は本発明の範囲に含まれるものであることが意図される。
【0131】
下記の本発明の実施例は、本発明をさらに例示するために記載され、決して本発明を制限するものとして解釈してはならない。
【0132】
実施例1
色素タンパク質およびアポタンパク質の単離および特徴付け
実施例1−種子培養
Actinomadura種21G792は、ATCC培地172(デキストロース1%、可溶性スターチ2%、酵母エキス0.5%、およびN−ZアミンタイプA0.5%、CaCO30.1% pH7.3)において72時間増殖させた細胞から調製された冷凍全細胞(冷凍栄養菌糸、FVM)として保存された。グリセロールが20%になるまで添加し、前記細胞を−150℃で冷凍した。
【0133】
1.0%デキストロース;2.0%可溶性スターチ;0.5%酵母エキス;0.5%N−ZアミンタイプA(Sheffield);および0.1%CaCO3を含む、pHが6.9である種培地を調製した。25mm×150mmのガラス培養試験管、7mlの種培地および2つのガラスビーズに、ATCC寒天培地#172(ATCC Media Handbook,初版,1984年)上で培養したActinomadura種21G792の細胞を植菌した。この寒天培養培地からの十分な接種材料を用いて、72時間成長させた後に混濁種を得た。2インチ長のジャイロ・ロータリーシェイカーを用いて、第1種の試験管を28℃、250rpmで72時間インキュベートした。次に、第1種(約14%接種材料)を用いて、50mlの培地#172を含む250mlの三角フラスコに植菌した。ジャイロ・ロータリーシェイカー(2”ストローク)を用いて、これら第2種フラスコを28℃、250rpmで48時間インキュベートした。
【0134】
実施例2
実施例2−発酵
2.0%ショ糖;0.5%糖蜜;0.5%CaCO3;0.2%ペプトン;0.002%硫酸マグネシウム−7H2O;0.001%硫酸鉄−7H20;0.05%臭化ナトリウム;および0.2%酢酸ナトリウムを含む、pHが6.9である発酵産生培地を調製した。50mlの発酵産生培地をそれぞれ含む60個の250mlの三角フラスコを用意し、2ml(4.0%)の第2種発酵で植菌し、ジャイロ・ロータリーシェイカー(2”ストローク)を用いて28℃、250rpmでインキュベートした。次に、記載されるように、発酵をおよそ72〜96時間続けて、更なる処理のために回収した。
【0135】
合わせたブロス全部(60×50ml)を3800rpmで30分間遠心分離した。次に、上清を凍結乾燥し、残留粉末を少量(例えば、300ml)のH2Oに懸濁した。その後、この褐色溶液を、暗所にて4℃のH2Oに6LのセファデックスG75を含むガラスカラムに装填した。40mlの画分を各々回収し、生化学的誘導アッセイ(biochemical induction assay:BIA)で試験した。次に、最も濃い(potent)画分を合わせ(15画分、全体で600ml)、凍結乾燥した。次いで、この灰色粉末をH2O(4ml)に溶解し、HPLCによって分析すると、2つの主要なピークを含んでおり、1つがアポタンパク質に対応し、他が色素タンパク質に対応していた。
【0136】
上記の溶液をTosoHaas DEAE 5PWカラム(13um粒径、21.5mm×15cmのサイズ)上で、4ml/分の流速のバッファーシステム(30分間は一定の0.05MのTris−HClを用いた0〜0.5Mの直線勾配NaCl)を用いて、調製用HPLCクロマトグラフィーに供した。アポタンパク質および色素タンパク質のそれぞれのピークを回収し、ピアス・ダイアリシス・カセット(Pierce Dialysis Cassette)(7000MWCO)を用いて脱塩し、凍結乾燥した。次に、得られたアポタンパク質および色素タンパク質の粉末を同じ調製用HPLC条件で再精製し、脱塩し、および凍結乾燥した。色素タンパク質(灰色粉末、10.5mg)およびアポタンパク質(白色の粉末、19.8mg)の最終産物を分析用HPLCによって分析した(それぞれ、図1および図3)。色素タンパク質およびアポタンパク質の紫外線吸収(UV)スペクトルを図2および図4に示す。
【0137】
アポタンパク質の分子量は、MALDI−MSによって12.92409kDaであると測定された。MALDIスベクトルを図5に示す。
【0138】
実施例3
実施例3−接種材料
1リットルの無菌接種材料培地を、下記の成分:5.0g/Lフィトン(BBL)、5.0g/L酵母エキス(Bacto)、40g/L可溶性スターチ、20g/Lグルコース、1.28g/L硫酸マグネシウム・7水和物、0.025M MOPSを用いて、パリロット規模の発酵のために調製した。約1mLの種培養を無菌フラスコに移し、その後、シェーカーに置き、30℃、200rpmでインキュベートした。フラスコの内容物全部を48〜72時間のインキュベーション後に発酵槽に移した。
【0139】
実施例4
実施例4−パイロット規模の発酵
色素タンパク質発酵は、生産菌として、Actinomadura種菌21G792を用いて、100Lのパイロット発酵槽中で行った。下記の培地:グルコース・一水和物、2.75g/L;硫酸鉄・7水和物、0.01g/L;硫酸マグネシウム・7水和物、0.02g/L;炭酸カルシウム(ミシシッピ(商標)ライム)、2.0g/L;マルコー・マルトンJ−1、4.0g/L;酢酸ナトリウム・3水和物、2g/L;ヨウ化カリウム、0.5g/L;プルロニックL−61、0.5g/Lは、純粋で65Lまで調製された。培養液のpHは、硫酸を用いて7.0に調整した。次に、この培地を滅菌し、発酵温度まで冷却し、その後、追加量のグルコース・一水和物(約6g/L)および1リットルの接種材料を発酵槽に移した。
【0140】
発酵温度は、適切な値(30℃)に調節され、細胞増殖および生産を支持し、適切な撹拌、圧力、および給気で行われ、飽和値の20%を超える溶存酸素を維持した。この実施例では、発酵を250rpm、5psig、および30lpmに調節した。
【0141】
バッチを第4日目に集菌した。色素タンパク質の濃度は、集菌時には152mg/Lであった。集菌したマッシュ(mash)は、1Lの遠心分子ボトルを受け入れる遠心分離機による遠心分離によって浄化した。用いた遠心分離条件は、7000rpm、20℃、および20分/サイクルであった。上清は、更に生産物を回収するために集めた。
【0142】
実施例5
実施例5−パイロット規模の発酵
Actinomadura種菌21G792を用いた色素タンパク質発酵は、下記の培地:グルコース・一水和物、8.75g/L;硫酸鉄・7水和物、0.01g/L;硫酸マグネシウム・7水和物、0.02g/L;炭酸カルシウム(Mississippi(商標)Lime)、2.0g/L;マルコー・マルトンJ−1、4.0g/L;酢酸ナトリウム・3水和物、2g/L;ヨウ化カリウム、0.5g/L;プルロニックL−61、0.5g/L中で行った。このバッチを70時間で回収し、約60mg/Lの色素タンパク質を生産した。
実施例6
実施例6−色素タンパク質アッセイ
このアッセイ法は、発酵ブロスのUV吸収成分から色素タンパク質を分離し、色素およびアポタンパク質形態を解析する。機器は、2996PDA検出器、ミレニアム・クロマトグラフィーコントロールおよび分析用ソフトウェアを装備したウォーターズ・アライアンス(Waters Alliance)2695である。カラムは、TOSOH BiosciencesまたはSUPELCOから提供されるTSKフェニル5PW 粒径10μm 7.5×7.5mmである。移動相は、A:1.5M硫酸アンモニウム、20mM Tris pH7.8〜8.3、B:20mM Tris 100mM NaCl pH7.8〜8.3である。作動時間は、流速1mL/分で30分である。検出は、230nmであり、4.8nmバンド幅で200〜400nmの範囲でスペクトルを回収する。勾配溶出は、0〜3分の100%A保持、3〜23分の100%Bまでの直線、23〜24分の100%Aまでの直線、24〜30分までの100%A保持としてプログラムされる。注入量は、100μL以下である。経過途中の試料は、0.45μmでろ過する以外は、さらに浄化せずに適用される。色素タンパク質およびアポタンパク質のピークは、参照の標準的な保持時間およびスペクトルと比較することによって同定される。色素タンパク質については18分、アポタンパク質については20分の保持時間が典型的である。積分された色素タンパク質ピークの定量は、下記:
mg/mL色素タンパク質=希釈因子*(成分領域μV秒×7.55×10−6μg/μV*秒)/注入量μl)
の通りに行う。
【0143】
実施例7
実施例7−色素タンパク質アッセイ
このアッセイ法は、分子サイズに基づいて、発酵ブロスおよび他の汚染タンパク質の他のUV吸収成分から色素タンパク質を分離する。色素タンパク質およびアポタンパク質は、共溶出を形成する。機器は、2996PDA検出器、ミレニアム・クロマトグラフィーコントロールおよび分析用ソフトウェアを装備したウォーターズ・アライアンス2695である。カラムは、BioRadから提供されるBioSil SEC 125、7.8×300mmである。移動相は、A:20mM Tris、100mM NaCl、pH7.8〜8.3である。検出は、230nmであり、4.8nmバンド幅で200〜400nmの範囲でスペクトルを回収する。作動時間は、流速1mL/分で20分である。溶出は、定組成(iosocratic)である。注入量は、100μL以下である。経過途中の試料は、0.45μmでろ過する以外は、さらに浄化せずに適用される。色素タンパク質ピークは、参照の標準的な保持時間およびスペクトルと比較することによって同定される。色素タンパク質については7.8分の保持時間が典型的である。積分された色素タンパク質ピークの定量は、下記:
mg/mL色素タンパク質=希釈因子*(成分領域μV秒×7.55×10−6μg/μV*秒)/注入量μl)
の通りに行う。
【0144】
実施例8
実施例8−生化学的誘導アッセイ
生化学的誘導アッセイは、E.coli BR513−80のSOS応答を誘導するDNA損傷剤を同定する。BR513−80は、λPLプロモータおよびlacZ遺伝子の翻訳融合を含む。λPLプロモータは、DNA損傷剤への曝露後のSOS応答の一部として活性化され、β−ガラクトシダーゼの合成を導く。β−ガラクトシダーゼ活性は、Fast Blue RR塩と反応して、赤/紫色を生じさせる6−ブロモ−2−ナフチル−β−D−ガラクトピラノシド(BNG)の開裂によって検出される。
【0145】
固形培地の基底層は、LBE(Bacto Tryptone 10g/L、酵母エキス 5g/L、NaCl 10g/L、1M Tris Base 5mL/L)、または15g/L寒天、0.2%グルコース、および1/125に希釈した「E」溶液を含む同等物を用いて調製される。(「E」溶液は、5g硫酸マグネシウム・7水和物、50gクエン酸・一水和物、250g二塩基性リン酸カリウム、および87.5gリン酸アンモニウムナトリウムをこの順番で1Lの脱イオン化H2Oに希釈させたものを含む。)約170mlの基底層培地をNunc BioAssayプレートごとに用い、または50mLを150mmペトリディッシュごとに用いる。
【0146】
BR513−80の一晩培養物をLBEブロスまたは同等物で1:20に希釈し、希釈した培養物の吸光度を600nmで測定する。希釈していない培養物の吸光度を算出し、培養物の体積(mL)を得るために5.7をこの値で割り、40mL軟寒天当たりの接種材料として用いる。典型的には、この体積は約0.9〜1.3mLである。算出した培地体積を軟寒天中で混ぜ、基底層(Nunc BioAssayプレート当たり40ml、150mmペトリディッシュ当たり20mL)全面に均一に注ぎ、少なくとも10〜15分間凝固させるようにする。
【0147】
アッセイすべき試料および標準は、軟寒天の表面に直接重層して10μLのアリコートで適用される。有用な標準には、ブレオマイシンが10、5、2.5、および0.31μg/mLで、カリケアマイシンγ1が1000、100、10、1および0.1ng/mLで含まれる。アッセイプレートは、約37℃でおよそ3時間インキュベートされ、SOS応答を誘導する。
【0148】
色素/基質重層は、87mgのファースト・ブルー(Fast Blue)RR塩および13mgのBNGを2mLのDMSOに溶解させ、40mLの溶解した1%軟寒天と混合することによって調製される。インキュベーション時間後、40mLの色素/基質混合物(150mmディッシュについては20mL)をBIAプレートの表面全体に均一に注ぎ、凝固させる。誘導応答を室温で15〜20分後であるかまたは約37℃で10分後にスコアにする。
【0149】
下記は、採点基準を例示する:4+ 円形 20−25mm 赤/紫色の誘導ゾーン、透明な中心領域の有無;3+ 円形 15−20mm 赤/紫色の誘導ゾーン、透明な中心領域の有無;2+ 10−15mm 赤/紫色の誘導ゾーン、透明な中心領域の有無;1+ 淡い赤色のゾーン、透明な中心領域の有無;T 毒性ゾーン(細菌が死滅した透明領域および色の変化なし);N/R 赤/紫色の誘導ゾーンなし;透明な毒性ゾーンなし
実施例9
実施例9−色素タンパク質の精製
この実施例は、およそ90%純粋なBIA活性色素タンパク質を単離するための測定可能な精製プロセスを提供する。このプロセスによって単離された化合物をSDS−ゲル電気詠動移動、UVスペクトル、並びにサイズ排除および疎水性相互作用分析用カラムの両方を用いるHPLC保持時間により分析した。発酵条件は、色素タンパク質生産のために最適化しなかった。
【0150】
浄化した発酵ブロスの350mLから色素タンパク質は、DEAEセファロースFFイオン交換クロマトグラフィー、フェニルセファロースHP疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびスーパーデックス75サイズ排除クロマトグラフィーからなる測定可能な3工程手順を用いて精製された。それぞれ約61、69および82%の工程収率は、結果として全体で色素タンパク質の30%のプロセス回収をもたらし、約90%純粋であり、この材料の残部は不活性なアポタンパク質である。
【0151】
DEAEセファロースFF陰イオン交換−クロマトグラフィー装填物は、360mLの浄化したブロスに7mLの1M Tris pH8.3の添加によって調製された。次に、この装填物は、5カラム容積の20mM Tris pH8.3で平衡にした5mL HiTrap DEAEセファロースFFカラムに流速10mL/分で適用された。吸光度を230、280および310nmでモニターした。カラムの流出物を単一分画として回収した。吸光度が基準に達するまで、20mM Tris pH8.3を用いてカラムを洗浄した。色素タンパク質種は、10CV(2CVの5分画として回収した;表6、D1〜D5を参照されたい)において0.25M NaCl、20mM Tris pH8.3に移動相を進めることによって溶出させた。第2溶出段階は、1M NaCl、20mM Tris pH8.3を用いて行い、カラムを洗浄した。図18は溶出プロフィールを示す。
【0152】
フェニルセファロースHPクロマトグラフィー−クロマトグラフィー装填物は、10.6gの硫酸アンモニウムを第1段階の保存溶出物47.5mLに添加して調製し、硫酸アンモニウムの濃度を1.5Mにした。装填物の体積(硫酸アンモニウムを添加後)を算出すると53.7mLであった。装填物のpHは、硫酸アンモニウムを添加後に、1mLの1M Tris pH8.3を用いて7.8から8.06に上昇させた。透明な茶色の溶液は、0.45μmのナイロンシリンジフィルター(2.3cm径)を通過させて簡単にろ過し、52.7mLを5mL HiTrapフェニルセファロースHPカラムに5mL/分で適用した。カラムを5CVの1.5M硫酸アンモニウム、20mM Tris pH8.2で予め平衡にした。吸光度を230、280および310nmでモニターした。色素タンパク質のアポタンパク質から分離が、100mM NaCl、20mM Tris pH8.2に対して、20CVの直線勾配溶出全体で起こる。単一のCV分画を勾配を通して回収し、UV吸収による色素タンパク質ピークとして選ばれた2つの分画(表6ではP9〜P10で示される)を貯めた。色素タンパク質は、アポタンパク質の前に溶出し、2つのピークは2CVによって分離されている。図19は、溶出プロフィールを示す。
【0153】
スーパーデックス75クロマトグラフィー−硫酸アンモニウムを9.5mlのフェニルセファロースプールに添加し、80%の濃度(560g固体/1Lのフェニルセファロースプール)にした。硫酸アンモニウム添加後に形成した沈殿物を1インチ径の0.45μmナイロンシリンジフィルター上に捕捉し、1mLの20mM Tris、100mM NaCl pH8.2を用いて固体の抽出を繰り返すことによって回収した。抽出物の0.8mL部分は、40mM Tris 200mM NaClに平衡にしたスーパーデックス75カラムに適用し、回収した1mL分画を用いて、1.5CV全体で溶出させた。吸光度は、流速0.5mL/分で230、280および310nmでモニターされた。色素タンパク質プール(3ml)を3つの分画として選択し、表6ではS6〜S8として示した。図20は、溶出プロフィールを示す。
表6
パイロット規模の発酵ブロスからの色素タンパク質およびアポタンパク質の収量
【0154】
【表6A】
【0155】
【表6B】
表7
色素タンパク質の経過途中の回収率
【0156】
【表7】
各精製段階でおよび全過程で回収した色素タンパク質の量を表7に示す。最終純度は、分画S6に関する2つのHPLC技術(フェニル5PWおよびBioSil SEC125)によって評価された(図20)。結果を図21および22に示し、色素タンパク質調製物には10%のアポタンパク質を含んでいる。また、各段階での純度は、クーマシー染色を用いたSDS−PAGEによって示される(図23および24)。1本のバンドが最終プールについて観察される(図24、レーン3)。
実施例10
実施例10−発色団類の分離および構造解明
ハロゲン化物を含む、Actinomadura種21G792の発酵培養物を調製した。色素タンパク質は、順次適用およびDEAEセファロースFF、フェニルセファロースFF、およびスーパーデックス75クロマトグラフィーカラムから活性分画の回収によって、浄化した発酵ブロスから得た。活性分画ピークAおよびBへの色素タンパク質ならびに不活性なアポタンパク質ピークの分離は、1.5M硫酸アンモニウムからできている結合バッファーおよび0.1M NaClのプログラムされた20CV勾配終了を用いてフェニルセファロース工程中にもたらされた(図25)。3つのピークはクロマトグラフで同定され(図25)、各ピークに対応する分画をプールした。各分画に存在するエンジイン発色団は、Jupiter C4 300A 4.6×250mmカラム(Phenomenex)を用いた逆相クロマトグラフィーによって分析された。この方法は、色素タンパク質溶液のアポタンパク質担体成分からアセトニトリル有機変性剤を用いたエンジインのインライン抽出に依存している(図26)。ピークAは、2つの発色団種(発色団−cおよび発色団−d)を生じ、一方、ピークBは、単一の発色団種(発色団−b)を生じた。
【0157】
3つの発色団種の全てが単離され、それらのHRMSおよびNMRデータを回収した。推定構造は、さらに、高分解能MS/MS断片化データによって確かめられた。(図6)。発色団−cおよび−dは、可能性としては、ジラジカルへのシクロ芳香族化、続くプロトン化および脱水和(水の喪失)に起因する発色団−bの分解産物である。発色団−cおよび−dが、単離中に生産される加工物でないことを確かめるために、粗活性画分混合物のLC−NMRも行った。LC−NMRからのNMRデータは、推定構造と一致している。
実施例11
Actinomadura種21G792遺伝子クラスター
実施例11−Actinomadura種21G792アポタンパク質のDNA単離および配列決定
Hopwoodら(1985),Genetic manipulations of Streptomyces.A Laboratory Manual.Norwich:John Innes Foundationに記載の手順を改良して、ゲノムDNAをActinomadura種21G792から単離した。10mlのMYM培地(4g/lマルトース、4g/l酵母エキス、10g/l麦芽エキス、pH7.0)および2〜6mmガラスビーズを含む25mm×150mmの種試験管におよそ1mlの凍結菌糸体グリセロールストックを植菌した。この培養物を28℃、200rpmで5日間増殖した。次に、これらの細胞を3000xgで10分間遠心分離によりぺレット化した。上清を捨て、ペレットを5mg/mlリゾチームおよび0.1mg/ml RNaseを含む300μlのT50−E20(Tris50mM−EDTA−20mM)に懸濁し、37℃で1時間、15分毎に穏やかに混合しながらインキュベートした。その後、50μlの10%SDSを添加し、試料を完全に混合した。次に、85μlの5mM NaClを添加し、試料を再度完全に混合した。次いで、試料を400μlフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(50/49/1)を用いて抽出した。試料を完全にボルテックスした後、10,000xgで20分間室温で遠心分離した。遠心分離後、水相を取り出し、新しい微小遠心管に入れた。等体積の室温イソプロパノールを試料に添加し、反転により完全に混合した。試料を室温で5分間放置した。次に、試料を12,000xgで30分間、4℃で遠心分離した。イソプロパノールを試験管から注意深く注ぎ出し、DNAペレットを1mlの低70%エタノールでリンスした。氷中に5分間放置した後、70%エタノールを試験管から注ぎ出し、DNAを10分間、空気乾燥させた。DNAを0.3mlの滅菌水に溶解させた。DNAの完全性および濃度は、アガロースゲル電気泳動によって評価された。
【0158】
Escherichia coli;プラスミドおよび小規模コスミドDNA調製:製造者の仕様書に従って、キアプレップ・スピン・ミニプレップキット(Qiaprep Spin MiniPrep Kit)(Qiagen Inc,カリフォルニア州ヴァレンシア(Valencia,CA),米国)を用いて、プラスミドDNAおよび小規模コスミドDNA調製を行なった。コスミド:製造者の仕様書に従って、キアゲン・ラージ・コンストラクトキット(Qiagen Large Construct Kit)(Qiagen Inc,カリフォルニア州ヴァレンシア,米国)を用いてコスミドDNAを単離した。
【0159】
製造者の仕様書に従って、pWEBコスミド・クローニングキット(Cosmid Cloning Kit)(Epicentre Technologies,ウィスコンシン州マディソン(Madison,WI),米国)を用いてActinomadura種21G792ゲノムライブラリーを構築した。一般的なライブラリー構築の手順は以下の通りである。10μgのゲノムDNAをハミルトン(Hamilton)HPLC/GCシリンジを通過させて、30〜45kbの断片に無作為に分断した。分断後、該キットに含まれる末端修復酵素の混合物を用いて、断片化したDNAの末端修復し、平滑末端にした断片を生成した。次に、直鎖T7 DNA(約40Kb)を用いて1%低融点アガロースゲル上で、分子量マーカーとして機能するように、分断および末端修復したDNAを分離した。T7 DNAとほぼ等しいサイズのゲノムDNAをゲルから切り取り、このDNAをアガロースから溶離した。次いで、精製したDNAをpWEBベクターに連結した。連結後、pWEBコスミド・クローニングキットに提供されるマックスプラックス・ラムダ・パッケージング・エクストラクツ(MaxPlax Lambda Packaging Extracts)を用いて、該連結挿入DNAをラムダファージ粒子にパッケージ化した。次に、ファージ抽出物のタイターを測定し、1ミリリッター当たりのコロニー形成単位を決定した。ファージ抽出物のタイターを決定後、適量の抽出物を用いて、E.coli EPI100宿主細胞を感染させ、感染した細胞は、50μg/mlのカナマイシンを含むDifco Luria寒天プレートに置き、プレート当たりおよそ200コロニーの細胞密度を得た。
【0160】
ライブラリースクリーニング戦略および方法;dNDP−グルコース−4,6−デヒドラターゼプローブ生成。一般に、特定の抗生物質を産生する必要がある遺伝子は、産生する生物のゲノムにおいてクラスター化される。さらに、アポタンパク質遺伝子を対応する発色団の生合成経路に関与するタンパク質をコードする遺伝子でクラスター化する必要がある(Liuら,2002,Science 297:1170−3)。Actinomadura種21G792により産生された発色団は、エンジインコアに結合するアミノ糖4−アミノ−4−デオキシ−3−C−メチル−β−リボピラノースを含む。dNDP−D−グルコース−4,6−デヒドラターゼ(DH)は、この糖の生合成の一工程を触媒するが期待されるため、DHプローブを用いて生合成クラスターを単離した。
【0161】
DHプローブを生成するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、Actinomadura種21G792のゲノムDNA由来のDH遺伝子断片を増幅した。期待される約500bpのDH遺伝子断片(デヒドラ1:5’−CSGGSGSSGCSGGSTTCATSGG(配列番号152)およびデヒドラ2:5’−GGGWRCTGGYRSGGSCCGTAGTTG(配列番号153))のためのプライマーは、Deckerら,1996,FEMS Microbiol.Lett.141,195−201に記載されるものと同一であった。ジャンプスタート(JumpStart)REDTaqレディー・ミックス(Ready Mix)PCRリアクション・ミックス(Reaction Mix)(Sigma−Aldrich Corp,ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))を製造者の仕様書に従って用いてPCRを実施した。これらのプライマーは、0.5μMの最終濃度で用いた。PCRは、Biometra T勾配サーモサイクラーで行なった。開始の変性温度は、4分間96℃であった。その後の30サイクルは次の通りであった:変性温度96℃(45秒)、アニーリング温度66℃(45秒)、伸長温度72℃(3分)。最後に、最終伸長温度は10分間72℃であった。
【0162】
トポ(TOPO)TAクローニングキット(Invitrogen Corp,カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))を製造者が推奨するとおりに用いて、約500bpのアンプリコンをpCR2.1にクローニングした。クローニング反応物の一部(2.5μl)を用いてE.coli TOP10細胞(Invitrogen Corp,カリフォルニア州カールズバッド)を形質転換し、その後、組換えクローンの青/白スクリーニングを容易にするために、それらを50μg/mlカナマイシン、40μg/ml X−galおよび0.2mM IPTGを含むDifco Luria Agar上に置いた。20個の白コロニーを採取して、それらのプラスミドDNAを単離した。これらのクローンの配列決定により、2種のDH遺伝子断片がクローン化されたことが明らかになった。推定されるアミノ酸配列の比較により、1つのDH断片(プラスミドp34598に含まれる)がカリケアマイシン生合成に関与するDHに最も類似していることが明らかになった。カリケアマイシン構造は2つのアミノ糖を含むため、p34598に含まれるDH断片もアミノ糖の産生に関与している可能性があり、そのため、色素タンパク質遺伝子クラスターのプローブとして選ばれることが予測された。
【0163】
コロニーハイブリダイゼーション:p34598DH断片を用いたコロニーハイブリダイゼーションで、Actinomadura種21G792ゲノムライブラリーをスクリーニングした。SambrookおよびRussell(2001)、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(3rd ed.)に記載されるように、組換えコロニーDNAをNytran SuPerChargeナイロン膜ディスク(Schleicher & Schuell BioScience,Inc.,ニューハンプシャー州キーン(Keene,NH))に移した。PCRおよびプライマー(デヒドラ1およびデヒドラ2)を用いてp34598の挿入部分を増幅してDHプローブを調製した。この増幅されたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分離し、530bp断片をアガロースから単離した。次に、Megaprime DNA Labelingキットを製造者の仕様書(Amersham Bioscience,ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway,NJ))に従って用いて、この断片を[α−32P]dCTP(3000Ci/mmol Amersham Bioscience,ニュージャージー州ピスカタウェイ)で標識した。DNA試料が固相化されたナイロンメンブレンを6×SSCで洗浄し、次に、予め温めた(65℃)プリハイブリダイゼーション溶液(6×SSC/5×デンハート試薬/0.5%(w/v)SDSおよび100μg/mlの変性分断ニシン精子DNA)を含むハイブリダイゼーションボトルに入れ、2時間「プレハイブリダイズ」した。その後、変性プローブを添加し、65℃で一晩ハイブリダイゼーションを続けた。翌日、上記メンブレンを、一度、予め温めた(65℃)2×SSC/0.1%SDS(洗浄液1)を用いて1時間洗浄し、さらに、一度、予め温めた(65℃)1×SSC/0.1%SDS(洗浄液2)を用いて1時間洗浄した。次に、このナイロンメンブレンをサランラップに包み、コダック(Kodak)X−omat ARフィルムに4時間露光した。この露光したフィルムをコダックX−omat 2000Aプロセッサーを用いて現像した。22個のコロニーがプローブにハイブリダイズしたことが分かった。これらのコロニーを採取して、50μg/mlカナマイシンを含むDifco Luriaブロスで増殖させた。この培養物からコスミドDNAを精製し、Not Iで切断した。制限消化物をアガロースゲル電気泳動により分離し、SambrookおよびRusse11(2001)に記載されるように、DNAをNytran SuPerChargeナイロンメンブレンに移した。コロニーハイブリダイゼーションで用いた条件と同じ条件で、p34598インサートを再度プローブとして用いてこのメンブレンを探査した。9個のコスミドがプローブに明確にハイブリダイズした。このプローブにハイブリダイズしたコスミドおよび適切なサイズの断片は次の通りであった:21gB:15〜20kb、21gC:15〜20kb、21gD:8〜12kb、21gF:15〜20kb、21gG:3〜4kb、21gI:1.2〜2.5kb、21gK:15〜20kb、21gL:2.5〜3kb、21gV:2〜2.5kb。
【0164】
アポタンパク質特異的オリゴヌクレオチドプローブハイブリダイゼーション:エドマンタンパク質配列決定を用いて、アポタンパク質の最初の38個のアミノ酸残基であるN末端DTVTVNYDDVGYPSDIAVTIDAPATAGVGDTATFEVSV(配列番号154))を決定した。どのコスミドがアポタンパク質遺伝子配列を含むのかを確実に特定するために、アポタンパク質N末端の38個のアミノ酸(aa)配列の4〜12番目の残基に基づく変性オリゴヌクレオチドをプローブとして用いてハイブリダイゼーション実験を行なった。具体的には、このオリゴヌクレオチドの配列は、5’−ACSGTSAACTACGACGACGTSGGNTAC(配列番号155)であった。
【0165】
DHプローブにハイブリダイズしたコスミドをNot Iで消化し、ナイトラン・スーパーチャージ(Nytran SuPerCharge)ナイロンメンブレンに移した。キナーゼマックス5’−エンド−ラベリングキット(KinaseMax 5’End−Labeling Kit)を製造者(Ambion Inc.,テキサス州オースティン(Austin,TX))の推奨する通りに用いて、このオリゴヌクレオチドを[γ−32P]dATP(6000Ci/mmol;Amersham Bioscience,ニュージャージー州ピスカタウェイ)で末端標識した。製造者の使用説明書(Ambion Inc.,テキサス州オースティン)に従ってヌクアウェイ・スピン・カラムキット(NucAway Spin Column Kit)を用いて、組み込まれなかった放射性ヌクレオチドを除去した。6×SSC、5×デンハート試薬、0.05%ピロリン酸ナトリウム、0.5%SDSおよび100μg/mlの分断変性サケ精子DNAを含む溶液で、DNA担持ナイロンメンブレンを3時間50℃で「プレハイブリダイズ」した。この工程に続いて、プレハイブリダイゼーション溶液を6×SSC、0.5%リン酸ナトリウム、1×デンハート試薬および100μg/ml酵母tRNAを含む7mlの予め温めた(50℃)ハイブリダイゼーション溶液と交換した。標識したプローブをこの溶液に添加し、ハイブリダイゼーションを50℃で22時間インキュベートした。次に、そのハイブリダイゼーション溶液を捨て、メンブレンを20mlの室温TMACL洗浄バッファー(3M TMACL、50mM Tris、0.2%SDS)で簡単にリンスした。次に、さらに50mlの予め温めた(67℃)TMACL洗浄バッファーを用いて55分間67℃で洗浄した。最終の洗浄として、50mlの予め温めた(50℃)洗浄液1を用いて10分間50℃でメンブレンを洗浄した。次いで、メンブレンをサランラップに包み、コダックX−omat ARフィルムに24時間露光した。
【0166】
コスミド21gD、21gGおよび21gKがプローブにハイブリダイズした。21gDおよび21gKのDNAを含むレーンで約4.5kbのシグナルを観察し、21gGのDNAを含むレーンで、約5.2kbのシグナルを観察した。このハイブリダイゼーションの結果を確認するために、21gDコスミドDNAをアポタンパク質の98bp断片を増幅するように設計されたテンプレートおよび変性PCRプライマーとして用いてPCRを行なった。PCRプライマーCP−FWD3(5’−ACSGTSAAYTAYGAYGAYGT;配列番号156)およびCP−REV4(5’−ACYTCRAASGTSGCSGTRTC;配列番号157)は、アポタンパク質の36aa配列から推定された逆方向翻訳されたDNA配列を用いて設計された。ジャンプスタートREDTaqレディー・ミックスPCRリアクション・ミックス(Sigma−Aldrich Corp,ミズーリ州セントルイス)を製造者の仕様書に従って用いてPCRを行なった。これらのプライマーは2.0μMの最終濃度で用いた。PCRは、Biometra T勾配サーモサイクラーで行なった。開始の変性温度は、4分間96℃であった。その次の5サイクルは次の通りであった:変性温度96℃(45秒)、アニーリング温度40℃(45秒)、伸長温度72℃(2分)。次の30サイクルは以下の通りであった:変性温度96℃(30秒)、アニーリング温度55.7〜72.0℃(45秒;範囲内で8つの温度をテストした)、伸長温度72℃(2分)。最後に、最終伸長温度は10分間72℃であった。これらの条件でいくつかのバンドが生成された;しかしながら、55.7℃、58.6℃および61.4℃のアニーリング温度を用いると、およそ100bpの強いバンドが生成された。トポTAクローニングキット(Invitrogen Corp,カリフォルニア州カールズバッド)を製造者が推奨する通りに用いて、約100bpのアンプリコンをpCR2.1にクローニングした。クローニング反応物の一部(2.5μL)を用いてE.coli TOP10細胞(Invitrogen Corp,カリフォルニア州カールズバッド)を形質転換し、その後、組換えクローンの青/白スクリーニングを容易にするために、それらを50μg/mlカナマイシン、40μg/ml X−galおよび0.2mM IPTGを含むDifco Luria Agar上に置いた。10個の白コロニーを採取して、それらのプラスミドDNAを単離した。これらのクローンの配列決定により、4個のクローン(p35546、p35547、p35550、p35554)は、推定されるアミノ酸配列が36aaアポタンパク質断片の配列と正確に一致するDNAに含まれていることが明らかになり、これにより、アポタンパク質をコードする遺伝子がコスミド21gDに含まれていることが確認された。
【0167】
コスミド21gDにおける完全なアポタンパク質DNA配列の解明。アポタンパク質をコードする遺伝子の全配列を決定するために、上記で増幅した98bpのPCR産物のDNA配列から配列決定プライマーを設計した。コスミド21gDをテンプレートとして用いる初回の配列決定には次のプライマーを用いた:ApoSeqCode1:5’−GGCTACCCGTCGGACATCG(配列番号158);ApoSeqCode2:5’−GGACATCGCCGTGACCATCG(配列番号159);ApoSeqComp1:5’−CCGGCGCGTCGATGGTCAC(配列番号160);ApoSeqComp2:5’−CTCGAAGGTGGCGGTGTC(配列番号161)。
【0168】
初回目の配列決定では、約1440bpの配列を生成した。コドン選択プログラムを用いて、小さな498bp読み取り枠(open reading frame:ORF)を同定した。このorfの推定されたアミノ酸配列と、Actinomadura種21G792アポタンパク質の部分アミノ酸配列(エドマンタンパク質配列決定法により決定)とを比較し、これらの2つのアミノ酸配列が同一であったため、このORFがアポタンパク質をコードすることが確認された。さらに、推定されたアミノ酸配列の分子量12926Daは、高解像度MALDI MSにより決定されたアポタンパク質の分子量12924.09と良好に一致していた。また、アポタンパク質のDNA配列は、さらに、アポタンパク質をコードするorf(aseAと示す)の側面に配置したプライマーを用いた両方のDNA株の広範囲な配列決定によって確認した。
【0169】
リーダーペプチドおよびアポタンパク質を含むプレアポタンパク質の推定されたアミノ酸配列は、配列番号64に提供される。プレアポタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、配列番号63に提供される。アポタンパク質の推定されたアミノ酸配列は、配列番号150に提供される。アポタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、配列番号149に提供される。最後に、プレアポタンパク質のDNA配列、対応するアミノ酸配列、推定された上流のリボソーム結合部位、およびリーダーペプチドとアポタンパク質との間の境界部位を記載する図を図7に提供する。
実施例12
実施例12−Actinomadura種21G792色素タンパク質の生合成クラスターの残りのDNA単離および配列決定
Actinomadura種21G792アポタンパク質遺伝子クラスターの遠位配列の同定。Actinomadura種21G792アポタンパク質遺伝子クラスターのコスミド21gDに存在する部分に隣接する配列を下記に記載するように同定した。コスミド21gDとともに、これらの配列が、Actinomadura種21G792色素タンパク質の生合成クラスター全体、すなわち、色素タンパク質のアセンブルに関与する遺伝子を実質的に構成する考えられる。読み取り枠の位置は表1に特定している。GenBank配列寄託物を比較することで、コードされたタンパク質の機能が推定された(表3)。読み取り枠の構成を図8に示している。
【0170】
まず、プライマー21gDpr1FWD(5’−GCTCGTCGGGTTCTTCTAC;配列番号162)および21gDpr1REV(5’−GACTTCGCGATAGCTCTC;配列番号163)を用いて、タイプIIのペプチドシンテターゼ縮合ドメイン(orf20;図7)の一部を含むコスミドの端部の904bp断片を増幅することによりコスミド21gDからプローブを生成した。PCR増幅は、製造者の推奨に従って5%DMSOを含むKODポリメラーゼ(Novagen)を用いて行なった。プライマーは、0.5mMの濃度で用いた。コスミド21gDはテンプレートDNAとして用いた。サイクル条件は次の通りであった:96℃、2分間を1サイクル、次に、96℃、1分間、61.2℃、1分間、および72℃、2分間を30サイクル、その後、72℃、10分間を1サイクル。アガロースゲル電気泳動によりPCR反応を調べ、904bpのバンドを先に記載したようにアガロースから溶離した。4,6−デヒドラターゼプローブについて先に記載したように、904bpのアンプリコンを用いてActinomadura種21G792ゲノムコスミドライブラリーを調べた。このプローブにハイブリダイズした38個のコロニーを培養し(50μg/mlのカナマイシンを含む5mlのDifco Luriaブロス)、コスミドDNAを精製した。pWEBベクターに含まれる配列決定プライマー部位を用いて、精製されたコスミドの末端配列を決定した。DNA配列の分析では、1つのコスミド(41417)がコスミド21gDと1184bp重複することが示された。その後、コスミド41417の全体について配列を決定し、読み取り枠を同定し、コードされたタンパク質の機能を推定した。
【0171】
(コスミド21gDを同定するために用いた)p34598でクローニングされた推定dNDP−D−グルコース−4,6−デヒドラターゼ断片にハイブリダイズした先に同定されているコスミドをスクリーニングしてコスミド21gDの他端から遠位にある生合成クラスターの部分を同定した。これらのコスミドは、コスミド21gDの5’末端の1043bp産物(産物は、完全な生合成クラスターの70,572〜71,614番目のヌクレオチドに対応する)を増幅するように設計されたPCRプライマーを用いてスクリーニングした。プライマー21gDendFWD(5’−GCGACGAAGGACCCGAAGG;配列番号164)および21gDendREV(5’−CACGCTGGCCCGCCCCTTC;配列番号165)を用いて各コスミドをスクリーニングしたが、標準的な25μlのPCR反応物(KOD Hot Startポリメラーゼ;Novagen,カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA),米国)において、0.5μMの各プライマーとともに、10〜100ngの各コスミドをテンプレートとして用いた。期待される1043bpのDNA断片の増幅を支持するコスミドは、コスミド21gBおよび21gCだけであった。これらコスミドの末端配列決定により、コスミド21gBがコスミド21gDと17,411ヌクレオチド重複し、コスミド21gCはコスミド21gDと22,796ヌクレオチド重複していることが明らかになった。コスミド21gBは、知られているクラスター配列との重複がより少なく、それにより、コスミド21gCよりも配列伸長が長くなる可能性がより高いことを示したため、配列決定用に選ばれた。配列決定により、コスミド21gBが、18,442bpの配列伸長を示した33,133bpの挿入部分を含んでおり、塩基対の総数が90,573に決定されることが明らかになった(図8)。前述同様に、コスミドを配列決定し、読み取り枠を同定し、コードされたタンパク質の機能を推定した。
実施例13
21G792色素タンパク質の生物学的特性
実施例13−インビトロ抗腫瘍活性
p53/p21チェックポイントにより、ゲノムの完全性を監視し、DNAが損傷した場合に細胞周期の進行を阻害する。p21遺伝子の欠失によるチェックポイントが分裂すると、結果的に、DNA損傷に応じて阻止できなくなり、最終的にはアポトーシスによる細胞死に繋がる。このチェックポイントが無くなることは癌細胞の特徴であるため、一対の細胞株(p21+/+)が損傷していないp21遺伝子有し、1つのメンバー(p21−/−)がp21遺伝子に欠失を有する同系統の細胞株の対を用いて、p21が欠損した細胞においてアポトーシスを選択的に誘発する分子を同定することにより、潜在的な抗腫瘍化合物についてスクリーニングすることができる。
【0172】
Actinomadura種21G792色素タンパク質を同系統の細胞株の対(p21+/+およびp21−/−)に添加した。表8に示すように、色素タンパク質は、p21−/−細胞に非常に選択的であり、これは、p21+/+細胞に対して、IC50が13倍高いためである。また、表9に示すように、色素タンパク質は、ヒト腫瘍細胞株パネルにおいて優れた効力を示し、これは、IC50が1〜47ng/mlの範囲にあるためである。しかしながら、アポタンパク質だけは不活性であった。
表8
Actinomadura種21G792色素タンパク質に対するP21−/−細胞の感受性
【0173】
【表8】
表9
ヒト腫瘍細胞株に対するActinomadura種21G792色素タンパク質の効力
【0174】
【表9】
実施例14
実施例14−色素タンパク質により誘導されるDNA損傷
Trevigen,Inc.から入手したCOMETアッセイを用いてDNA損傷を検出した。HCT116 p21+/+および−/−細胞を種々の量の21G792色素タンパク質およびミトザントロンに晒した。図27に示すように、色素タンパク質により誘導される用量依存的なDNA鎖崩壊は、p21が豊富な細胞およびp21が欠損した細胞の両方において、>100ng/mlの濃度で発生する。
【0175】
実施例15
実施例15−色素タンパク質により誘導されるDNA開裂
超らせんφX174 DNAを、種々の濃度の21G792色素タンパク質でインキュベートし、ゲル電気泳動で分析した。色素タンパク質が一本鎖崩壊および二本差鎖崩壊を誘導し、その反応が24時間継続し続け、カリケアマイシンとは異なり、DNA開裂に還元剤(ジチオスレイトール、DTT)が必要とされないことが観察された。ゲル電気泳動を図28に示す。ニックとはDNAの一本鎖崩壊を意味し、線状とは二本鎖切断を意味する。
【0176】
実施例16
実施例16−色素タンパク質によるヒストンH1の消化
色素タンパク質エンジインがヒストンを開裂することは先に示したが(Zeinら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90,8009−12;Zeinら,1995,Chem & Biol 2,451−5;Zeinら,1995,Biochem 34,11591−7)、この活性については議論の余地があるが(Heydら,2000,J.Bacteriol.182,1812−8)、アポタンパク質のタンパク質分解活性によるものと考えられていた。種々の濃度の色素タンパク質を用いて、50mMのTris−Cl、pH7.5、37℃で一晩ヒストンH1をインキュベートした。(図29)SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行なった後に、ゲルコード・ブルー(GelCode Blue)(Pierce Biotechnology,Inc,イリノイ州ロックフォード(Rockford,IL))によりゲルを染色してヒストンの消化を評価した。ヒストンH1の消化は、DNAの添加により阻害されが、これは、DNA開裂に必要なメカニズム(例えば、フリーラジカルに基づくメカニズム)と同じメカニズムがタンパク質の消化にも関与していることを示す。これに合わせて、フリーラジカルスカベンジャー、30mMのグルタチオンまたはN−アセチルシステイン(図示せず)の添加により、ヒストンの消化が阻害されたが、プロテアーゼ阻害剤を加えても阻害されなかった。タンパク質を含まないエンジインであるカリケアマイシンは、ヒストンH1を開裂しなかったが、これは、この活性には、無傷の発色団−タンパク質複合体が必要であることを示している。
実施例17
実施例17−色素タンパク質による消化の特異性
色素タンパク質によるヒストンの消化の選好順序は、H1>H2A>H2B>H3>H4である(図30)。また、色素タンパク質は、ミエリン塩基性タンパク質などの他の塩基性タンパク質を開裂するが、ウシ血清アルブミンなどの中性/酸性タンパク質は開裂しない。このことは、ヒストン開裂活性に発色団のアポタンパク質成分が必要であることを説明し得る:酸性アポタンパク質は、静電相互作用により、ヒストンおよび他の塩基性タンパク質に発色団を送達し、発色団がフリーラジカルに基づくメカニズムにより塩基性タンパク質を開裂できるようにすることができる。
【0177】
実施例18
実施例18−色素タンパク質によるHeLa細胞内のヒストンH1の消化
色素タンパク質によるヒストンの消化が無傷な細胞内で発生するかどうかを調べるために、化合物を用いて一晩37℃でHeLa細胞をインキュベートした。抗ヒストンH1抗体(Santa Cruz Biotechnologies)を用いたSDS−PAGEおよびタンパク質イムノブロットにより細胞溶解物を分析した。細胞を色素タンパク質でインキュベートした結果、細胞内のヒストンH1が減少した(図31)。ブレオマイシン、別のDNA損傷剤、またはカリケアマイシンでは効果が見られなかった。これは、色素タンパク質が無傷な細胞内でヒストンを消化できること示している。この活性は、染色質内のヒストンを消化し、DNAをより開裂し易くすることで抗腫瘍効果に寄与することが可能である。これは色素タンパク質エンジインに固有の活性であると思われる。
【0178】
実施例19
実施例19−G1/Sチェックポイントの色素タンパク質誘導
HCT116(p21+/+およびp21−/−)細胞を種々の濃度で色素タンパク質に晒した。図32Aに示すように、色素タンパク質に晒した結果、全てのテスト濃度についてp53チェックポイントが活性化した。p21タンパク質の誘導は、p21+/+細胞にしか見られなかった。Actinomadura種21G792色素タンパク質によるDNA損傷チェックポイントの活性化は、p53タンパク質の転写活性化にとって重要であることが知られているp53内のセリン−15アミノ酸残基のリン酸化反応を実証することにより確認された(図32B)。さらに、ポリADPリボースホスホリラーゼ(PARP)の開裂により示されるように、Actinomadura種21G792色素タンパク質を用いて処理した場合、アポトーシスの誘導は、p21+/+細胞と比較して、p21−/−細胞において選択的に観察された(図23B)。このことは、p21−/−細胞のIC50の値がより低いことと一致する。
【0179】
実施例20
実施例20−色素タンパク質種の活性
2つの実験では、ピーク「A」(発色団−cおよび−dを含む色素タンパク質)、ピーク「B」(発色団−bを含む色素タンパク質)および全ての色素タンパク質のアイソフォームの調製物の活性は、HCT116結腸癌腫細胞および80S14細胞(HCT116のP21−/−変異体)において測定された。発色団cの効力(発色団−dは有意な活性はない)は、常に、発色団bの効力の約3分の1であった。発色団−bと−cの両方について、アポタンパク質の誘導は、p21+/+細胞と比較して、p21−/−細胞において選択的に観察された;表10を参照されたい。
表10
色素タンパク質調製物の活性
【0180】
【表10】
実施例21
実施例21−インビボ抗腫瘍活性
ヒト腫瘍細胞株または断片LoVo(結腸癌);HCT116(結腸);HT29(結腸);LOX(メラノーマ);HN5(頭部および頸部);およびPC−3(前立腺)を無胸腺(ヌード)マウスの皮下に移植し、腫瘤の形成を可能にした。腫瘍が90〜200mgの大きさに達したときに、生理食塩水調節ビヒクルまたは生理食塩水中で作成した種々の濃度のActinomadura種21G792色素タンパク質をマウスの静脈内に投与した。マウスは、5日目および9日目に、さらに投与を受け、相対的な腫瘍の成長が観察された。その結果を図33および図34のグラフに示す。色素タンパク質を受けたマウスについては、最大80%の腫瘍成長の阻害が観察された。
【0181】
実施例22
実施例22−色素タンパク質の毒性
毒性試験により、骨髄抑制を除いて、Actinomadura種21G792色素タンパク質はヌードマウスにおいては良好な耐容性を示すことが示唆されている。具体的には、1、5、および9日目に、生理食塩水調節ビヒクルまたは種々の服用量の色素タンパク質を6匹のヌードマウスの静脈内に投与した。マウスの顕微鏡試験により、色素タンパク質を受けた全てのマウスが骨髄壊死を示し、最大量の色素タンパク質を受けたマウスは最も重い病変を生じることが示された。臨床病理学実験により、最大量の色素タンパク質を受けたマウスは、白血球およびリンパ球の数が最も少なかったことが明らかになった。しかしながら、腸、神経、脊髄、肝臓または注射部位には有害な作用は観察されなかった。顕微鏡所見および臨床病理学的要約を表11および12に提供する。
表11
顕微鏡所見要約
【0182】
【表11】
表12
臨床的病理学
【0183】
【表12】
実施例23
実施例23−P−GP(MDR−1)による色素タンパク質の輸送
ヒトPGP(MDR1)は、細胞膜を横切る多数の薬物を輸送することができるATP依存性排出ポンプである。このタンパク質の高発現は、腫瘍の多剤耐性に関連づけられている。表13に示すように、Actinomadura種21G792色素タンパク質は、乏しいMDR1基質であり、臨床的に関連するレベルのMDR1を発現する細胞(KB−8−5細胞)は、前記複合体に対する感受性を維持する。とりわけ、タンパク質成分を有さないカリケアマイシンは、MDR1にとって良好な基質である。色素タンパク質のタンパク質成分は、MDR1によって媒介される薬物流出から発色団を恐らくは保護し、多くの場合、MDR1を発現する結腸細胞株において有益な抗腫瘍効果に関与し得る。
表 P−GP発現細胞E13に対するActinomadura種21G792発色団およびカリケアマイシンのIC50
【0184】
【化10】
実施例24
実施例24−HCT116細胞におけるFITC−タグ化した色素タンパク質の取り込み
色素タンパク質が細胞に入り、その生物活性を働かせるメカニズムを測定するために、製造者の推奨に従って、EZ−Label蛍光標識キット(Pierce Biotechnology)を用いて色素タンパク質に蛍光タグ(FITC)で標識した。標識時に生物活性の損失は見られなかった。HCT116結腸癌腫細胞による標識した物質の取り込みを蛍光顕微鏡検査により調べた。最適な細胞の培養時間は3〜6時間であった。標識の大半が細胞質に現れたが、弱い染色も細胞核で観察された(図35)。核内蓄積は少なかったが、上記複合体の抗力を考慮すると、その量は、生物活性には十分である可能性が高い。
【0185】
実施例25
実施例25−HCT116細胞におけるFITC標識アポタンパク質および色素タンパク質の取り込み
無傷な発色団とアポタンパク質の複合体が細胞侵入および核侵入に必要であるかどうかを決定するために、色素タンパク質およびアポタンパク質をFITCで標識した。標識された物質の取り込みを蛍光顕微鏡によって調べた。アポタンパク質および色素タンパク質の両方に関して、取り込みが類似しており(図36)、これは、細胞侵入が、無傷な発色団−タンパク質複合体には依存していないことを示唆している。
実施例26
実施例26−FITC−タグ化色素タンパク質の取り込み:標識されていない複合体との競合)
色素タンパク質の細胞への侵入が飽和(例えば、細胞表面受容体依存的)プロセスによって媒介されるかどうかを決定するために、10倍過剰の標識されていない試薬が存在しないまたは存在する場合(それぞれ、無標識色素タンパク質またはアポタンパク質)、HCT116細胞をFITC標識色素タンパク質(図37、右パネル)またはアポタンパク質(図37、左パネル)でインキュベートした。細胞を蛍光顕微鏡(左)またはフローサイトメトリー(右)により分析した。標識の競合は観察されなかったが、これは、標識された物質の取り込みが受容体に媒介されたプロセスでなかったことを示唆している。さらに、フローサイトメトリーヒストグラムで観察された単一の均一ピークは、全ての細胞によって標識された試薬の均等な取り込みを示した。ヒストグラム中の数字は、平均チャネル数(FITC蛍光)である。
【0186】
実施例27
実施例27−HCT116細胞によるFITC−タグ化アポタンパク質の取り込みに対するエネルギー枯渇および微小管破壊の効果
上記の実験は、色素タンパク質の細胞への侵入が受容体によって媒介されたプロセスではないことを示唆している。タンパク質複合体が細胞に入る他の手段は、細胞表面の小胞がくびれて、該細胞の細胞質内で自由なピノソームを形成する飲作用である。飲作用は、機能チューブリン細胞骨格網を必要とするエネルギー依存プロセスであるため、アジ化ナトリウム、エネルギー脱共役剤、およびノコダゾール(チューブリン細胞骨格を破壊する薬剤)の細胞の取り込みに対する効果を調べた。アジ化ナトリウムまたはノコダゾールが存在しないまたは存在する場合に、HCT116細胞をFITC標識されたアポタンパク質で処理した。これらの処理はともに、標識の取り込みを阻害した(図38)。ノコダゾールの濃度(100nM)が微小管を破壊するに十分であることが示された(右パネル)。これらのデータは、アポタンパク質の取り込みが微小管ネットワークを利用するエネルギー依存性プロセスであることを示唆している。データでは、受容体に媒介されるプロセスが除外されると思われるので、飲作用が関与している可能性が最も高い。
【0187】
本出願は、全ての目的に対して、参照により全体として本明細書中に援用される、2006年6月21日に出願された米国仮特許出願第60/815、697号に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】Actinomadura種21G792色素タンパク質のHPLCクロマトグラムである。HPLCの分析条件は、下記の通りである。カラム:TosoHaas DEAE 5 PW(粒径10μm、サイズ7.5mm×7.5cm)。バッファー:0〜0.5M直線勾配NaCl、一定の0.05M Tris−HClで25分間、流速0.8ml/分。
【図2】Actinomadura種21G792色素タンパク質のUVスペクトルである。
【図3】21G792アポタンパク質のHPLCクロマトグラムである。HPLCの分析条件は下記の通りある。カラム:VYDACタンパク質C4(300A、サイズ3.0×100mm)。溶媒:H2Oに含まれる10〜30%のアセトニトリル、一定の0.05%TFAで6分間、2ml/分。
【図4】21G792色素タンパク質のUVスペクトルである。
【図5】アポタンパク質の分子量測定(MALDI−MSで12.92409kDa)を示す。
【図6】Actinomadura種21G792発色団(発色団−b、−c、および−d)の構造を示す。
【図7】21G792プレアポタンパク質およびアポタンパク質のヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列を提示する。推測されるリボソーム結合部位は枠内に示し、リーダーペプチドには下線を引いている。斜線は、リーダーペプチドおよびアポタンパク質の開裂部位を示す。
【図8】Actinomadura種21G792色素タンパク質遺伝子クラスターの読み取り枠を示す。コスミド41417上に位置する遺伝子は、orfの矢印上に直線で示している。コスミド21gD上に位置するものは、小さな点からなる破線で示しており、コスミド21gB上に位置するものについては、大きな点からなる破線で示している。各コスミドの同定に用いるプローブの位置は、黒いバーベル状の印しで示している。PstI(P)およびEcoRI(E)制限部位にはラベルを付している。
【図9】Actinomadura種21G792発色団のチロシン誘導成分(3−[2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル]−3−ヒドロキシ−プロピオン酸)の合成経路を示す。
【図10A】orf17遺伝子産物の構造ドメインを示す。縮合(C)、アデニル化(A)およびぺプチジル担体タンパク質(peptidyl−carrier protein:PCP)ドメインのコアモチーフは、枠内に入れてラベルを付している。orf17遺伝子産物のAドメイン基質特異性コードおよびC−1027生合成経路のSgcC4に寄与する残基は、太字にし、下線を引いている。同一の残基には、アスタリスクを付しており、コロンは保存残基を示し、セミコロンは半保存残基を示す。
【図10B】orf17遺伝子産物の構造ドメインを示す。縮合(C)、アデニル化(A)およびぺプチジル担体タンパク質(peptidyl−carrier protein:PCP)ドメインのコアモチーフは、枠内に入れてラベルを付している。orf17遺伝子産物のAドメイン基質特異性コードおよびC−1027生合成経路のSgcC4に寄与する残基は、太字にし、下線を引いている。同一の残基には、アスタリスクを付しており、コロンは保存残基を示し、セミコロンは半保存残基を示す。
【図11】Actinomadura種21G792発色団のマヅロサミン(4−アミノ−4−デオキシ−3−C−メチル−β−リボピラノース)成分の合成経路を表す。
【図12】Orf38とdNDP−グルコース−4,6−デヒドラターゼおよびUDP−グルクロン酸デカルボキシラーゼとのアラインメントを示す。このアラインメントに含まれるグルコース−4,6−デヒドラターゼ配列は、Streptomyces neyagawaensisコンカナマイシンA遺伝子クラスター(AAZ94396)のOrf5、Streptomyces argillaceusミトラマイシン遺伝子クラスター(CAA71847)のMtmE、およびStreptomyces spectabilisスペクチノマイシン遺伝子クラスター(AAD31797)のSpcEである。上記アラインメントに含まれるグルクロン酸デカルボキシラーゼ配列は、Pisum sativum(BAB40967)のUxs1、Arabidopsis thaliana(AAK70882)のUxs3、Arabidopsis thaliana(AAK70880)のUxs1、Arabidopsis thaliana(AAK70881)のUxs2、Mus musculus(AAK85410)のUxs1、およびCryptococcus neoformans(AAK59981)のUxs1である。同一の残基には、アスタリスクを付しており、コロンは保存残基を示し、セミコロンは半保存残基を示す。
【図13】Actinomadura種21G792発色団の2−ヒドロキシ−3,6−ジメチル安息香酸成分の合成経路を示す。
【図14】Orf31のA4およびA5コアモチーフ間の領域と10個のアリール酸AMPリガーゼのアラインメントを示す。構造上のアンカーには黒色の影を付けている。カルボキシ酸結合ポケットの推測される構成には灰色の影を付けている。DHBAの活性とサリチル酸の区別に関与していることが推測されている残基は、番号記号で特定される。同一の残基にはアスタリスクを付し、コロンは保存残基を示し、セミコロンは半保存残基を示す。
【図15】Actinomadura種21G792発色団のエンジインコアの生成の生合成経路を示す。
【図16】ドメイン構成、ならびにOrf5とSgcEおよびNcsEエンジインPKSとの比較を示す。aa、アミノ酸;KS、ケトシンターゼ;AT、アセチルトランスファーゼ;ACP、アシル担体タンパク質;KR、ケトレダクターゼ;DH、デヒドラターゼ;TD、末端ドメイン。
【図17】Actinomadura種21G792発色団の4つの成分の集合ルートを表す。
【図18】DEAEセファロース陰イオン交換カラムからのActinomadura種21G792色素タンパク質の溶出プロフィールを示すクロマトグラムである。
【図19】フェニルセファロースHPカラムからのActinomadura種21G792色素タンパク質の溶出プロフィールを示すクロマトグラムである。
【図20】スーパーデックス75サイズ分画カラムからのActinomadura種21G792色素タンパク質の溶出プロフィールを示す。
【図21A】スーパーデックス75分画6のフェニル5PWクロマトグラム(吸光度230nm)(パネルA)を示す。
【図21B】色素タンパク質およびアポタンパク質ピークについての吸光度スペクトル(パネルB)を示す。
【図22A】スーパーデックス75分画6のBioSil SEC125クロマトグラム(パネルA)を示す。
【図22B】共溶出した色素タンパク質およびアポタンパク質についての吸光度スペクトル(パネルB)を示す。
【図23】ブロスからの色素タンパク質含有試料および種々の段階の精製からの関連するカラム分画のSDS−PAGE分析を示す。タンパク質を還元条件下で分離し、染色(クーマシー)した。31と36.5kDaの間に移動している顕著なバンドは、色素タンパク質として同定される。レーン1および18:MW標準;レーン2:浄化したブロス(DEAE装填);レーン3:DEAE分画D3;レーン7:フェニルセファロースプール8;レーン8:フェニルセファロース分画P9(色素タンパク質);レーン9:フェニルセファロース分画P10(色素タンパク質);レーン10:フェニルセファロース分画P11;レーン11:フェニルセファロース分画P14(アポタンパク質);レーン12:フェニルセファロース分画P15(アポタンパク質);レーン13:スーパーデックス75装填(2μl);レーン14:スーパーデックス分画S5;レーン15:スーパーデックス分画S6;レーン16:スーパーデックス分画S7;レーン17:スーパーデックス分画S8。
【図24】陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、およびサイズ排除クロマトグラフィーによって連続して精製したActinomadura種21G792色素タンパク質(分画S6)のSDS−PAGE分析を示す。37.0と28.9kDaの間に移動している顕著なバンドは、色素タンパク質として同定される。レーン1および5:MW標準;レーン2:色素タンパク質の参照標準;レーン3:スーパーデックス75分画S6;レーン4:参照標準とスーパーデックス75分画S6の混合物。
【図25】関連した色素タンパク質アイソフォームを含む色素タンパク質の分離を示す。色素タンパク質調製物は、フェニルセファロースHPを用いて分離された。ピークBは、発色団−bを含む色素タンパク質−bに対応する。ピークAは、発色団−cおよび−dを含む色素タンパク質−cおよび−dを含む。アポタンパク質は、色素タンパク質種とは別に溶出する。
【図26】フェニルセファロースプール(図25のピークAおよびB)のエンジイン組成物を示す。
【図27】21G792色素タンパク質誘導の用量依存的DNA鎖切断が、p21が豊富なHCT116ヒト結腸癌細胞およびp21が欠損したHCT116ヒト結腸癌細胞において、>100ng/mlの色素タンパク濃度で発生することを示すグラフである。
【図28】21G792色素タンパク質が一本鎖切断および二本鎖切断を誘導し、24時間以上反応を継続し続け、DNA開裂がチオール剤を必要としなかったことを示すDNA開裂アッセイである。
【図29】Actinomadura種21G792色素タンパク質によるヒストンH1の消化、およびDNAによる阻害を表す。プロテアーゼ阻害剤は、PMSF、ロイペプチン、アプロチニン、およびペプスタチンAである。アポタンパク質は不活性である。
【図30】Actinomadura種21G792色素タンパク質による消化に対するヒストンH1、H2A、H2B、H3、およびH4の相対感度を示す。ミエリン塩基性タンパク質などの塩基性タンパク質は、中性/酸性タンパク質ではないが、これも開裂しやすい。
【図31】ブレオマイシンおよびカリケアマイシンではなく、Actinomadura種21G792色素タンパク質で治療された細胞内のヒストンH1の減少を示す。
【図32A】HCT116細胞を種々の濃度で色素タンパク質に曝すことによりp53/p21チェックポイントの活性が得られることを示すタンパク質イムノブロットである。
【図32B】ポリ−ADP−リボースホスホリラーゼ(ParP)の開裂でのp53のセリン−15アミノ酸残基のリン酸化反応を示す。
【図33】無胸腺(ヌード)マウスにおける、皮下に注射されたLoVo(結腸癌);HCT116(結腸);HT29(結腸);LOX(メラノーマ);HN5(頭部および頸部);およびPC−3(前立腺)細胞の腫瘍に対する21G792色素タンパク質のインビボ効力を示す一連のグラフである。
【図34】無胸腺(ヌード)マウスにおける、皮下に注射されたLoVo(結腸癌);HCT116(結腸);HT29(結腸);LOX(メラノーマ);HN5(頭部および頸部);およびPC−3(前立腺)細胞の腫瘍に対する21G792色素タンパク質のインビボ効力を示す一連のグラフである。
【図35】FITC標識されたActinomadura種21G792色素タンパク質のHCT116細胞による取り込みを示す。
【図36】FITC標識されたActinomadura種21G792色素タンパク質およびアポタンパク質のHCT116細胞による取り込みを示す。
【図37】10倍濃度の非標識色素タンパク質の存在下で、標識Actinomadura種21G792色素タンパク質の取り込みを示す。
【図38】エネルギー脱共役剤(アジ化ナトリウム)またはチューブリン破壊剤(ノコダゾール)のHCT116細胞によるActinomadura種21G792アポタンパク質の取り込みに対する効果を示す。
【図39】Actinomadura種21G792発色団の誘導体に対するモノクローナル抗体の連結を示す。
【技術分野】
【0001】
(配列表)
本願は、本明細書中に記載される核酸およびアミノ酸配列を定める配列表を含む。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、Actinomadura種21G792により産生される活性な色素タンパク質を産生および精製する方法を提供する。色素タンパク質は、医薬組成物の開発、および癌または細菌感染などの疾患の治療に有用である。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
Actinomycetalesのメンバーにより産生される強力な細胞毒性ポリケチドの一種であるエンジイン(enediyne)は、癌の治療に用いられてきた。エンジイン薬物の典型的な作用形態は、一本鎖および二本鎖DNA開裂を介する。DNA開裂は、エンジイン環のバーグマン型環芳香族化により生成されたジラジカルによるデオキシリボース糖骨格からの水素引き抜き反応により誘導される。現在、癌の臨床治療用に2つのエンジインが承認されている:CD33モノクローナル抗体と結合したカリケアマイシン(Mylotarg(登録商標)、米国)およびポリ(スチレン−co−マレイン酸)結合ネオカルチノスタチン(日本)。
【0004】
エンジイン天然産物は、2つのサブカテゴリーに分類することができる。第1のサブクラスは、ビシクロ[7,3,0]ドデカジイン(すなわち、9員)エンジインコアまたはその前駆体によって特徴付けられ、第2のサブクラスは、ビシクロ[7,3,1]トリデカジイン(すなわち、10員)エンジインコアによって特徴付けられる。9員エンジインの例としては、ネオカルチノスタチン、C−1027、ケダルシジン、マクロモマイシン、N1999A2およびマデュロペプチンが挙げられる。10員サブクラスの例としては、カリケアマイシン、エスペラマイシン、ダイネミシンおよびナメナマイシンが挙げられる。9員と10員のエンジインを区別する更なる特徴は、N1999A2を除いて、全ての9員エンジインがエンジイン−タンパク質複合体として産生され、エンジイン発色団が、非共有結合により不活性アポタンパク質に結合することである。このため、9員エンジインは、多くの場合、色素タンパク質と呼ばれる。アポタンパク質は、不安定な9員エンジイン発色団を安定させ、標的とする細胞毒性発色団をクロマチンに送達する重要な役割を果たすと考えられている。
【0005】
いくつかのアポタンパク質のアミノ酸配列は、アポタンパク質を直接配列決定するかまたはクローン化DNA配列からアミノ酸を推定することにより決定されている。現在までに同定されているアポタンパク質は、小さな酸性タンパク質(108〜114個のアミノ酸、aa)であり、これらはプレアポタンパク質から32〜34aaのアミノ末端リーダーペプチドを除去して生成される。2つの色素タンパク質(ネオカルチノスタチンおよびC−1027)の生合成経路が、クローニングされ、配列決定されている。これらの場合、アポタンパク質をコードする遺伝子は、関連する発色団の生合成に必要な遺伝子でクラスター化された。
【0006】
色素タンパク質複合体のアポタンパク質成分は、薬物特性の指令変化の魅力的な標的を提示する。例えば、アポタンパク質アミノ酸または核酸配列が見つかった場合、部位特異的突然変異誘発法などの確立された分子生物学的技術を用いて、アポタンパク質の発色団結合モチーフを変更し、その天然型発色団をより強くまたは弱く結合する、合理的に変化したアポタンパク質を作成することができる。さらに、このようなアポタンパク質への変化により、例えば、毒性が減少した色素タンパク質または効力もしくは安定性が増加した発色団をもたらすことができる。また、アポタンパク質を全体的に操作することにより、結合特異性が大きく変化したアポタンパク質、すなわち、エンジイン発色団とは大きく異なる分子の標的薬物送達手段として機能する能力を得ることが可能である。同様に、エンジイン発色団は改変の標的である。発色団を変更させる1つの方法は、その生合成に関与する遺伝子を操作することである。
【0007】
従って、新規な色素タンパク質、ならびに遺伝子およびそれらの合成に関与するタンパク質の分離および特性付けが必要とされている。さらに、色素タンパク質を効率的に産生し、精製する方法が望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、陸生放線菌であるActinomadura種21G792(NRRL30778)により産生された新規な非常に強力な抗癌色素タンパク質に関する。Actinomadura種21G792色素タンパク質は、アポタンパク質と9員エンジインを含む発色団の非共有結合複合体である。本発明は、Actinomadura種21G792発色団の新規なアイソフォームおよびその新規なアイソフォームを含む色素タンパク質を提供する。特に、本発明は、下記の構造:
【0009】
【化2】
および
【0010】
【化3】
を有する発色団を含む活性名色素タンパク質を提供する。
【0011】
構造[1]および[2]は、別名、それぞれ発色団−bおよび発色団−cと呼ばれる。
【0012】
別の局面では、本発明は、改善された色素タンパク質収率をもたらす発酵プロセスを提供する。発酵プロセスは、色素タンパク質産生を最大にし、色素タンパク質の不安定性および分解を最少にするように調合される培地を組み込む。
【0013】
別の局面では、本発明は、Actinomadura種21G792色素タンパク質を精製する方法を提供する。大規模発酵から色素タンパク質を得るのに適切な測定可能な精製法を開示する。また、色素タンパク質のアイソフォームを分離する方法も開示する。
【0014】
本発明は、実質的に純粋な形態のActinomadura種21G792色素タンパク質およびアポタンパク質、ならびに色素タンパク質を含む医薬組成物、および色素タンパク質を投与する方法を提供する。ある種の色素タンパク質のアイソフォームは、癌性細胞および腫瘍の治療に有用であることが示されている。
【0015】
本発明は、さらに、生物活性を変更したActinomadura種21G792色素タンパク質(アポタンパク質および発色団種を含む)の変異体を産生し、精製する方法を提供する。このような変異アポタンパク質は、変化した発色団結合特性、変化した標的特異性、またはそれらの組み合わせを有することができる。
【0016】
本発明は、大量のアポタンパク質および発色団の産生を提供することは理解される。さらに、本発明は、エンジイン関連化合物を産生することができる他の生物の同定、または例えば、Actinomadura種21G792などのエンジイン関連化合物を産生することができる生物における色素タンパク質の合成に関与する遺伝子の同定をもたらすことができることは承認される。さらに、本発明は、例えば、毒性が減少し、効力が増加し、または安定性が増加したアポタンパク質の改変バージョンの産生を提供することは承認される。また、Actinomadura種21G792アポタンパク質の操作は、変化した結合特性、すなわち、21G792エンジイン発色団とは異なった発色団の標的化された薬物送達ビヒクルとして機能する能力を有するアポタンパク質へと導くことができることは理解される。最後に、Actinomadura種21G792色素タンパク質を含む医薬組成物を開発し、細菌感染または癌性増殖を有する哺乳動物、好ましくはヒトに投与することができることは承認される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
エンジイン抗生物質は、一般に、Streptomyces属、Micromonospora属、およびActinomadura属を含むがこれらに限定されないActinomycetales目に属する種々の生物により産生される。本発明は、Agricultural Research Service Culture Collection(NRRL,1815 North University Street,Peoria,Ill.,61064)に寄託されたActinomadura種21G792により産生される新規な色素タンパク質に関する。これらの寄託物は、ブダペスト条約による条件に基づいて作成された。Actinomadura種21G792には、受入番号NRRL30778が与えられている。このような現在知られている生物のうち、Actinomadura種21G792は、ATCC39144として寄託されたActinomadura株(米国特許第4,546,084号)と最も類似していると思われる。16S rDNA配列によって評価されるように、これらの株は、近縁種または近縁亜種である。
【0018】
本発明は、新規な色素タンパク質および発色団を提供する。Actinomadura種21G792は複数の関連する発色団を産生することが発見された。発色団は、個別に、アポタンパク質と複合体を作り、複数の関連した色素タンパク質を形成する。したがって、本発明は、図6に示されるように、発色団−b、発色団−c、および発色団−dを提供する。少なくとも発色団−bおよび発色団−cは、抗腫瘍活性および抗菌活性を有する。
【0019】
本発明は、Actinomadura種21G792を発酵および培養するための方法を提供する。Actinomadura種21G792の培養は、多様な液体培地で行なうことができる。Actinomadura種21G792色素タンパク質の産生に有用な培地には、デキストリン、ショ糖、糖蜜、グリセロールなどの同化可能な炭素源;タンパク質、タンパク質加水分解物、ポリペプチド、アミノ酸、コーンスティーブリカーなどの同化可能な窒素源;ならびにカリウム、ナトリウム、鉄、マグネシウム、アンモニウム、カルシウム、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、塩化物などの無機陰イオンおよび陽イオンが含まれる。ボロン、モリブデン、銅などの微量元素は、多くの場合、上記培地の他の組成の構成要素の不純物として供給される。例えば、通常の窒素源マルトン(Martone)J−1には、鉄、マグネシウム、および他の微量金属が含まれる。
【0020】
ある種のハロゲン化物塩の介在が改善された増殖および色素タンパク質産生における有意な増加をもたらすことが見つかった。以前には、ヨウ化物塩の含有の有益な効果が、ヨウ素含有発色団の産生について観察されたが、ヨウ素を含まないActinomadura種21G792の産生に対するハロゲン化物の効果は期待されなかった。また、臭化物の介在は、改善された増殖および色素タンパク質収率をもたらした。しかしながら、塩化物イオンの量の変化では明らかな効果はなかった。
【0021】
Actinomadura種21G792の培養では、糖蜜および加水分解スターチなどのグルコースを含む複合糖質を用いることができる。大規模発酵に関しては、一貫性のある結果に到達するために、規定の炭素源を含む培地を用いることが望ましい。グルコースに加えて、試験管発酵における増殖および色素タンパク質産生を支持する有用な炭素源には、ショ糖およびマルトリン(maltrin)も含まれる。良好な色素タンパク質収率を支持しない炭素源には、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンノース、マンニトール、グリセロール、大豆油、および綿実油が含まれる。大規模発酵において、グルコースは、好ましい炭素源である。グルコース、ショ糖、およびフルクトースを含む大規模発酵では、(たとえショ糖が試験管発酵で同化可能であるとしても)グルコースだけが発酵過程で利用された。
【0022】
Actinomadura種21G792に対する有用な窒素源はペプトンである。しかしながら、非動物性由来の窒素源は、一般に、医薬品の生産には望まれる。種々の非動物性窒素源が試験され、このうち、マルコール・マルトン(Marcor Martone)J−1が特に良好な結果を与えた(実施例を参照されたい)。同程度の収率を与える他の好ましい非動物性窒素源には、マルコール・マルトンJ−1、マルコール・ビーン・ペプトン(Marcor Bean Peptone)、アンバーファーム(Amberferm)4415、ハイ・ソイ・ティー(Hy Soy T)が挙げられる。有用ではあるが低収率を与え得る非動物性窒素源の他の例には、アンバーファーム4000、アンバーファーム4015、コーン加水分解物、小麦加水分解物(DMV International #WGE80M)、およびファルマデジア(Pharmamedia)が挙げられる。窒素源が、大豆加水分解物(DMV International #SE50MAF)または75%大豆加水分解物と25%小麦加水分解物の混合物のときには生成物は検出されなかった。
【0023】
生物活性なタンパク質含有産物を得るためには、発酵培地に分泌または放出されるタンパク質を分解するストレスを避けることが重要である。大規模発酵では、一般に、機械的な撹拌または混合、およびスパージャーによる空気(または酸素)の導入を伴い、良好な収率を得るためには注意深い消泡剤の選択が必要である。本発明によれば、プルロニック(Pluronic)L−61、プルラコール(Pluracol)P2000(ポリプロピレングリコール)およびアンタロックス(Antarox)17−R2界面活性剤は、アポタンパク質と生物活性分子との混合物の産生に有用であることが確認されている。界面活性剤は、特に、Actinomadura種21G792、ケダルシジン、およびC−1027などのエンジイン含有色素タンパク質に有用である。試験された界面活性剤の中で、プルロニックL−61は、Actinomadura種21G792色素タンパク質の最大収率をもたらした。また、色素タンパク質は、プルラコールP2000(ポリプロピレングリコール)およびアンタロックス17−R2を用いても産生されるが、量は減少していた。ほとんど色素タンパク質を得られない界面活性剤は、プルロニックL−31、プルロニックL−81、プルロニックL−101、クレロール(Clerol)FBA 515B、クレロールFBA 265、クレロールFBA 975−US、クレロール5074、およびアンタロックスBL−214であった。
【0024】
本発明の特定の態様では、発酵培地は、8.75g/Lグルコース・一水和物、0.01g/L硫酸鉄・7水和物、0.02g/L硫酸マグネシウム・7水和物、2.0g/L炭酸カルシウム(ミシシッピ(Mississippi)(商標)ライム(Lime))、4.0g/Lマルコール・マルトンJ−1、2g/L酢酸ナトリウム・3水和物、0.5g/Lヨウ化カリウム、および0.5g/LプルロニックL−61を含む。
【0025】
本発明の別の態様では、発酵培地は、8.75g/Lグルコース・一水和物、0.01g/L硫酸鉄、0.02g/L硫酸マグネシウム・7水和物、2.0g/L炭酸カルシウム(Mississippi(商標)Lime)、4.0g/Lマルコー・マルトンJ−1、2g/L酢酸ナトリウム・3水和物、0.5g/L臭化ナトリウム、および0.5g/LプルロニックL−61を含む。
【0026】
また、本発明は、実質的に純粋なタンパク質およびポリペプチドを提供する。用語「実施的に純粋な」とは、本明細書中で使用するとき、所定のポリペプチドに関して、ポリペプチドが他の生物学的な高分子を実質的に含まないことを意味する。例えば、実質的に純粋なポリペプチドは、乾燥重量で少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約95%、または約99%純粋である。純度は、当該技術分野において知られている任意の適切な標準的方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定可能である。実質的に純粋なタンパク質には、アポタンパク質とエンジイン発色団の複合体である、実質的に純粋な色素タンパク質が含まれることは承認される。
【0027】
本発明の態様では、色素タンパク質は、陰イオン交換クロマトグラフィーによって、発酵培地またはActinomadura種21G792の抽出物から精製される。この方法は、色素タンパク質の有効濃度を提供し、(他の不純物のうち)発酵中に産生される望ましくない色素の大部分を除去する。一態様では、陰イオン交換樹脂は、DEAEセファロースFFである。色素タンパク質を含むクロマトグラフィー装填物は、pH8.3に調整され、陰イオン交換樹脂に適用される。色素タンパク質種は、移動相のイオン強度を増加させることによって溶出される。特定の態様では、色素タンパク質は、0.25M NaCl段階勾配を用いて溶出され、大部分の活性物質は、最初の2カラム容積で回収される。装填体積およびカラムサイズに依存して、浄化した発酵ブロスから色素タンパク質を精製する場合、その濃度は10倍を超え得る。
【0028】
本発明の別の態様では、Actinomadura種21G792色素タンパク質は、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製される。この精製法は、色素タンパク質とアポタンパク質とを分離し、他のタンパク質および非タンパク質成分を除去し、色素タンパク質の有効濃度を許容する。この固体支持体は、任意の有機、無機または複合材料、多孔性、超多孔性または非多孔性であってもよく、これは、例えば、ポリ(アルケングリコール類)(ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール))、アルカン類、アルケン類、アルキン類、アリール類、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルまたは支持体に疎水性を与える他の分子を用いて誘導かされるクロマトグラフィーに適合している。特定の例では、フェニルセファロースHPは、約pH8.2で用いられ、色素タンパク質は、100mM NaClまでの勾配で溶出される。
【0029】
マトリックス(例えば、陰イオン交換、疎水性相互作用)への色素タンパク質の結合に依存する分別は、多くの場合、カラムを用いて行われるが、代わりにバッチプロセスで行うことができる。例えば、イオン交換カラムクロマトグラフィーに代わる方法として、セファデックス(Sephadex)A50などの適切な陰イオン交換体への色素タンパク質種のバッチプロセス結合を用いることができる。バッチプロセスでは、色素タンパク質を含む溶液(例えば、保存用に、1M Tris pH8.3の追加の50分の1容積によって緩衝化された浄化した発酵ブロス)は、20mM Tris pH8.3で平衡化されたセファデックスA50スラリーに対する、室温で一晩撹拌して吸着させたバッチである。この溶液が浄化した発酵ブロスである場合、セファデックスA50と浄化した発酵ブロスの有用な体積比は1:15である。完全な結合の測定に応じて、セファデックスは、ろ過によって回収され、例えば、12体積の20mM Tris pH8.3を用いて洗浄される。色素タンパク質種は、30分撹拌後、20mM Tris、250mM NaCl pH8.3を用いてバッチ様式で溶出される。次に、ろ過物は、次の精製工程に適している結合条件に調整される。例えば、次の工程がフェニルセファロースHPに結合する場合、フェニルセファロースHPに対する結合条件は、1.5M濃度まで固体の硫酸アンモニウムを添加し、0.45μmろ過によって得ることができる。
【0030】
本発明の更なる態様では、Actinomadura種21G792色素タンパク質は、高分子量および低分子量のタンパク質成分を除去するサイズ排除クロマトグラフィーによって精製される。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーは、分子量によって種を分離するためのサイズ排除樹脂を用いる。他の手段には、限定されないが、適切な排除メンブレンを用いた限外ろ過および疎水性技術が含まれる。適切なマトリックスには、セファクリル(Sephacryl)S−200、スーパーロース(Superose)12、セファロース(Sepharose)S−300、スーパーデックス(Superdex)、トリスアクリル(Trisacryl)、アクリルアミド、セファデックスまたは所望サイズ範囲に試料を分別することができる、当業者に知られている同様の樹脂が含まれる。ゲルろ過は、約2℃〜約25℃の温度で行うことができる。適切なバッファーは、約0.1〜約1.0Mの塩、好ましくはNaClを約7〜約8.5のpHで含む。一態様では、クロマトグラフィーマトリックスの分離範囲は、約3×103の下限を有する。別の態様では、クロマトグラフィーマトリックスの分離範囲は、約106の上限を有する。本発明の特定の態様では、サイズ排除マトリックスは、約3×103〜約7×105の分離範囲を有するスーパーデックス75である。分離マトリックスがスーパーデックス75である場合、色素タンパク質調製物は、pH8.2で20mM Tris、100mM NaClを用いて分離することができる。当業者は、特定のマトリックスとともに使用されるバッファーを最適化することができる。回収した色素タンパク質を含む分画は、所望の通り、例えば、収率を最大にするかまたは不純物を最少にするようにプールすることができる。
【0031】
好ましい態様では、2以上の精製法を連続して用いる。色素タンパク質の濃縮は、各精製工程において、カラム容積(CV)およびプールされる溶出されたCVの数に依存して達成可能である。あるいはまたはさらに、色素タンパク質は、当該技術分野において知られている他の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、微小濃縮などによって濃縮することができる。
【0032】
本発明によれば、1以上の色素タンパク質種を単離または精製することができる。本発明の態様では、Actinomadura種21G792は、色素タンパク質収率のために選択される発酵条件を用いて増殖される。典型的には、色素タンパク質種は、上記で概説したような3工程プロセスによって精製される。色素タンパク質種は、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって分離可能である。提供される実施例では、フェニルセファロースクロマトグラフィーにより2つの色素タンパク質(3つの色素タンパク質を含む)ピークを得た。さらに、アポタンパク質の相対量は減少した。
【0033】
色素タンパク質の成分および発色団生合成経路の成分、またはそれらの成分の前駆体(すなわち、プレアポタンパク質)は、色素タンパク質生合成遺伝子クラスターと呼ばれる隣接する一連の読み取り枠(orf)(複数)によりコードされる。したがって、本発明は、Actinomadura種21G792色素タンパク質生合成遺伝子クラスターのorfをコードする単離された核酸(表1を参照されたい)、またはそれらの発現された(すなわち、処理された)断片(例えば、アポタンパク質;配列番号150)を提供する。一態様では、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号118、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号140、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、または配列番号150のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有する核酸を提供する。好ましい態様では、該核酸は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、または配列番号149のヌクレオチド配列を含む。本発明の核酸が相補配列を含むことは承認される。
表1
21G792色素タンパク質遺伝子クラスターの読み取り枠
【0034】
【表1A】
【0035】
【表1B】
【0036】
【表1C】
【0037】
【表1D】
【0038】
【表1E】
本発明は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、または配列番号149に特異的にハイブリダイズする(または特異的に結合する)核酸を提供する。また、核酸コードの縮退がなかったら、前述した配列に特異的に結合するであろう核酸も企図される。該核酸は、完全なタンパク質(例えば、完全なorf)またはそれらの断片をコードするために十分な長さを有するものであり得る。また、修飾されたタンパク質をコードする核酸も含まれる。タンパク質修飾の例としては、限定されないが、抗体、抗体断片、受容体リガンドなどの標的分子との融合が挙げられる。
【0039】
前記核酸は、プローブおよびプライマーをさらに含む。ある種の態様では、プローブまたはプライマーは変性していてもよい。さらに、それらの用途に従って、プローブおよびプライマーは一本鎖または二本鎖であってもよい。プローブおよびプライマーは、例えば、少なくとも約12個のヌクレオチドの長さ、好ましくは少なくとも約15個のヌクレオチドの長さ、より好ましくは少なくとも約18個のヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含み、本発明のブライマーを用いて生成され得るPCR増幅産物をさらに含む。
【0040】
ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションとは、プローブがその標的部分配列と選択的にハイブリダイズし、他の配列とのハイブリダイゼーションはより少ないかまたは全くない条件をいう。また、サザンハイブリダイゼーションおよびノーザンハイブリダイゼーションなどの核酸ハイブリダイゼーション実験に関連して、ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよびストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件は配列依存的であり、異なる環境パラメータにおいては異なることも理解される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が得られるように、ハイブリダイゼーションおよび洗浄液容量ならびに温度を調整することは当該技術分野において周知である。ストリンジェンシーは、用いられているプローブのサイズおよびヌクレオチド含有量などのパラメータに依存する。一般的な説明および例については、Sambrookら,1989,Molecular Cloning−−A Laboratory Manual(2nd ed.)Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Press,NY、および他の文献を参照されたい。核酸のハイブリダイゼーションに関する別のガイドは、Tijssen,1993,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes,part I,chapter 2,Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays,Elsevier,N.Y.に見出される。
【0041】
好ましいストリンジェントな条件は、プローブに約90%を超える相補的である配列にプローブがハイブリダイゼーションできるが、約70%未満相補的である配列にはハイブリダイゼーションできないものである。一般に、高ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、規定されたイオン強度およびpHで特定の配列の熱融解点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、(規定されたイオン強度およびpH下で)標的配列の50%が完全にマッチしたプローブにハイブリダイズする温度である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブのTmと等しくなるように選択される。
【0042】
サザンまたはノーザンブロットにおいてフィルター上に100を超える相補的残基を有する相補的核酸のハイブリダイゼーションのためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては、ハイブリダイゼーションを一晩実施して42℃で1mgのヘパリンを有する50%ホルムアミドが挙げられる。非常にストリンジェントな洗浄条件の例としては、約15分間72℃の0.15M NaClが挙げられる。ストリンジェントな洗浄条件の例としては、15分間65℃の0.2倍のSSC洗浄が挙げられる(Sambrookら,1989を参照されたい)。多くの場合、高ストリンジェントな洗浄の前に低ストリンジェントな洗浄を行い、バックグラウンドプローブシグナルを除去する。例えば、100個を超えるヌクレオチドの二重鎖に対する中程度のストリンジェントな洗浄の例としては、15分間45℃の1倍のSSCが挙げられる。例えば、100個を超えるヌクレオチドの二重鎖に対する低ストリンジェントな洗浄の例としては、15分間40℃の4〜6倍のSSCが挙げられる。一般に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおいて関係のないプローブについて観察したものよりも2倍(以上)であるシグナル対ノイズ比は、特異的なハイブリダイゼーションの検出を指示する。
【0043】
コードするポリペプチドが実質的に同一である場合、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸はなお実質的に同一である。これは、例えば、遺伝子コードによって許される最大のコドン縮退を用いて核酸のコピーを生成する場合に起こる。したがって、本発明のヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、または配列番号149またはそれらの断片であって、長さが少なくとも約50個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約100個のヌクレオチドである断片と少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%同一であるヌクレオチドの配列を含む。
【0044】
また、本発明は、発色団遺伝子クラスターによってコードされる1以上のタンパク質を産生する方法に関する。このようなタンパク質は、宿主細胞内に配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、または配列番号149を含む1以上の核酸を発現させることによって産生されてもよい。例えば、前述の核酸の1以上は、核酸を調節管理して発現に影響を与えるように操作可能に連結し、宿主細胞内での発現のためにベクターに組み込むようにすることができる。本発明の一態様では、アポタンパク質またはプレアポタンパク質が産生される。
【0045】
本発明において有用な管理要素は、オペレーター配列およびリボソーム結合部位を任意に含むプロモータを含む。また、宿主細胞の増殖に関して、アポタンパク質またはプレアポタンパク質の発現の調節を可能にするような他の調節配列が望ましい場合がある。調節配列は当業者に知られ、例として、調節化合物の存在を含む化学的または物理的刺激に応答して遺伝子を発現させたり、発現させないようにするものが挙げられる。また、他のタイプの調節要素が、ベクター、例えばエンハンサー配列に存在してもよい。種々の発現ベクターが当該技術分野において知られ、例えば、コスミド、PI、YAC、BAC、PAC、HACがある。
【0046】
また、選択可能なマーカーは、組換え発現ベクターに含むようにすることができる。形質転換細胞株の選択に有用であり、一般に、形質転換細胞を適切な選択培地で培養する場合に、発現によりそれらの細胞に選択可能な表現型を与える遺伝子を含む種々のマーカーが知られている。このようなマーカーは、例えば、プラスミドに抗生物質耐性または感受性を与える遺伝子を含む。
【0047】
上述したベクターは、タンパク質発現に適した任意の原核または真核細胞に挿入することができる。宿主細胞には、限定されないが、Actinomadura、Streptomyces、Micromonospora、Actinomyces、Nonomurea、Pseudomonasなどが含まれる。宿主細胞としては、Actinomadura、Streptomyces、およびMicromonosporaなどのエンジインを自然に発現する種または株(例えば、細菌株)が好ましい(例えば、Pfeiferら,2001,Science 291,1790−2;Martinezら,2004,Appl.Environ.Microbiol.70,2452−63を参照されたい)。一態様では、タンパク質がE.coliにおいて発現される。発現産物の回収は、当業者に周知の標準的な方法に従って行なうことができる。したがって、例えば、タンパク質は、単離を容易にする有用なタグ(例えば、His6タグ)を用いて発現させることができる。他の標準的なタンパク質精製技術は適切であり当業者に周知である(例えば、Quadriら,1998,Biochemistry 37,1585−95;Nakanoら,1992,Mol.Gen.Genet.232,313−21を参照されたい)。色素タンパク質遺伝子クラスター全体が発現される場合、色素タンパク質を回収することができる。発現のためにある種のorfを選択することによって、色素タンパク質に関連する化合物を産生することができる。例えば、orf23の発現によってプレアポタンパク質を産生することができる。
【0048】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、もしくは配列番号149またはそれらの断片を含む核酸分子をプローブとして用いてもよい。このようなプローブは、本発明の核酸の同定に有用である。下記の実施例に記載の方法と同様の方法を含む任意の適切な方法によりヌクレオチド配列をプローブとして用いてもよい。本明細書中において記載するように、dNDP−グルコース−4,6−デヒドラターゼ(DH)プローブを用いて、アポタンパク質または他の発色団に関連するタンパク質をコードする遺伝子または遺伝子クラスターを有する可能性があるActinomadura種21G792ゲノムDNAのコスミドクローンを同定した。同様に、本発明の核酸を用いて、他の生物において、アポタンパク質および発色団に関連するタンパク質、特に、9員環エンジイン発色団をコードするorfを同定することができる。このような生物は、一般に、例えば、真菌、バチルス、シュードモナス、粘液細菌およびシアノバクテリアなどの二次代謝産物を産生する生物を含む。好ましくは、該核酸を用いて、限定されないが、アクチノミセス属、ストレプトミセス属またはミクロモノスポラ属の生物を含む放線菌目(Taxonomic Outline of the Procaryotic Genera:Bergey’s Manual(登録商標) of Systematic Bacteriology,2nd Edition)の生物の遺伝子を同定する。より好ましくは、該核酸を用いて、Actinomadura種および亜種の遺伝子を同定する。
【0049】
また、本発明は、実施的に純粋なタンパク質およびポリペプチドを提供する。用語「実施的に純粋な」とは、本明細書中で使用するとき、所定のポリペプチドに関して、ポリペプチドが他の生物学的な高分子を実質的に含まないことを意味する。例えば、実質的に純粋なポリペプチドは、乾燥重量で少なくとも75%、80%、85%、95%、または99%純粋である。純度は、当該技術分野において知られている任意の適切な標準的方法、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析により測定することができる。実質的に純粋なタンパク質には、アポタンパク質がエンジイン分子と複合化する色素タンパク質を含むことは承認される。このような結合は、例えば、水素結合等の共有または非共有結合により行なうことができる。
【0050】
本発明のタンパク質およびポリペプチドは、Actinomadura種21G792の色素タンパク質遺伝子クラスターのorfによってコードされるものを含む。好ましい態様では、該タンパク質およびポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号118、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号140、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、または配列番号150を含むものである。特定の好ましい態様では、該タンパク質は、21G792プレアポタンパク質(配列番号64)またはアポタンパク質(配列番号150)である(図7)。21G792プレアポタンパク質およびアポタンパク質のアミノ酸組成を表2に示す。
表2
Actinomadura種21G792アポタンパク質のアミノ酸組成
【0051】
【表2A】
【0052】
【表2B】
また、本発明のタンパク質またはポリペプチドが、前述の好ましいタンパク質およびポリペプチドと実質的に同じアミノ酸配列を有するものをさらに含むことは承認される。本明細書中においては、実質的に同じアミノ酸配列は、PearsonおよびLipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,2444−8に従ったFASTA検索法により測定した場合、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の相同性を有し、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号118、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号140、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、または配列番号150と少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%同一である配列を含む配列であると定義される。
【0053】
このようなタンパク質は、特に、保存アミノ酸置換がある場合には、Actinomadura種21G792と同様の活性を有する。保存アミノ酸置換は、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、またはそれらの断片の1以上のアミノ酸を変更することによるアミノ酸組成の変化として定義される。この置換は、一般に同様の特性(例えば、酸性、塩基性、芳香族性、サイズ、正荷電もしくは負荷電、極性、非極性)を有するアミノ酸の置換であり、関連ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の性質(例えば、電荷、等電点、親和性、親和力、配座、溶解性)または活性を実質的に変更しない。典型的な保存置換は、以下のアミノ酸の群内で選択され、この群には、限定されないが、
(1)疎水性:メチオニン(M)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I);
(2)親水性:システイン(C)、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
(3)酸性:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
(4)塩基性:ヒスチジン(H)、リジン(K)、アルギニン(R);
(5)芳香族性:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)およびトリプトファン(W);
(6)鎖配向に影響する残基:gly、pro
が含まれる。したがって、また、本発明は、特に、アミノ酸置換が保存置換である場合、アミノ酸配列が配列番号64または配列番号150と実質的に同じである21G792アポタンパク質と同様のアミノ酸組成を有するアポタンパク質およびポリペプチドも包含する。
【0054】
本発明は、例えば、1以上の無作為または標的変異、欠失、または挿入の導入により、Actinomadura種21G792色素タンパク質遺伝子クラスターの1以上のorfに変更を与える。このようにして、該発色団、アポタンパク質、またはそれらの両方を修飾して、例えば、毒性の減少、効力の増加、または安定性の増加を示す色素タンパク質を作成してもよい。ある種のエンジイン発色団は、該発色団に特異的な部位でDNAを開裂させることが認識される。さらに、種々の色素タンパク質は、ヒストンに対する固有のタンパク質分解活性を有する。したがって、また、Actinomadura種21G792アポタンパク質および/または発色団の操作によっても特異性が変化した色素タンパク質を提供することができる。あるいは、アポタンパク質を修飾して、最適な活性分子のための担体または送達ビヒクルとすることができる。また、本発明は、別の生体分子と連結することが可能な修飾されたActinomadura種21G792発色団またはアポタンパク質/発色団複合体も提供する。一態様では、該生体分子は、発色団または色素タンパク質を特異的に標的とすることを可能にする。このような生体分子は、例えば、細胞表面分子または受容体のための抗体または他のリガンドとすることができる。
【0055】
例えば、変化したActinomadura種21G792アポタンパク質をコードする核酸を発現ベクターおよび宿主細胞に挿入し、該宿主細胞をアポタンパク質の発現に適した条件下で培養し、当該アポタンパク質を宿主細胞または培地から回収することができる。好ましくは、宿主細胞は、変化したアポタンパク質と複合体を形成することができるエンジイン発色団または他の分子を産生することが可能である。このような細胞の例としては、放線菌目の生物を産生する種々の抗生物質、特に、Actinomaduraおよびストレプトミセスなどの生物を産生するエンジインが挙げられる。宿主細胞は、大腸菌および酵母などの共通宿主をさらに含む。もちろん、上記変化したアポタンパク質を、Actinomadura種21G792において発現することができる。1つの態様では、上記変化したアポタンパク質を宿主細胞において過剰発現する。いずれかの他の内在性アポタンパク質が宿主細胞に存在する場合、変化したアポタンパク質をより高いレベルで発現し、他のアポタンパク質を過小発現するか、または標識を用いて該変化したアポタンパク質を発現し、このような精製を容易にする。好ましい態様では、変化したアポタンパク質をコードする核酸は、相同組み替えにより、内在性アポタンパク質遺伝子と置換される。次に、このようにして、変化したアポタンパク質を、エンジインまたは他の分子、例えば、活性剤との複合体において単離し、そのような複合体を、例えば、癌細胞株に対してスクリーニングして、生物活性を決定することができる。
【0056】
さらに別の態様では、a)変化したアポタンパク質を宿主細胞において発現し、エンジインまたは他の分子と複合化することなく回収し、b)次に、変化したアポタンパク質を種々のエンジインまたは他の分子に曝し、c)条件に合った技術を用いて、アポタンパク質が該エンジインまたは他の分子と複合体を形成するかどうかを決定し、場合によりd)生物活性に関して、該複合体をスクリーニングする。さらに別の態様では、変化したアポタンパク質を宿主細胞において発現し、エンジインまたは他の分子と複合化することなく回収し、次に、変化したアポタンパク質を種々のエンジインまたは他の分子に曝し、生物活性に関して、該複合体をスクリーニングする。
【0057】
別の例では、修飾発色団生合成経路をコードする核酸を発現する。
【0058】
Actinomadura種21G792生合成クラスターから発現されたポリペプチドの機能は、ORF配列と既知のタンパク質および配列モチーフとを比較することにより推定することができる。(表3)
表3
21G792色素タンパク質遺伝子クラスターのORFについて推定された機能
【0059】
【表3A】
【0060】
【表3B】
【0061】
【表3C】
【0062】
【表3D】
【0063】
【表3E】
【0064】
【表3F】
【0065】
【表3G】
【0066】
【表3H】
【0067】
【表3I】
【0068】
【表3J】
【0069】
【表3K】
【0070】
【表3L】
それらの機能と一致させて、集中的生合成経路が、Actinomadura種21G792エンジインの合成のために提供される。複合体の4つの主要成分(エンジインコア、マヅロサミン、2−ヒドロキシ−3,6−ジメチル安息香酸、および3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−プロパン酸)が別々に産生され、集合的に最終の生物活性産物を形成する。
【0071】
3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−プロパン酸部分の生合成。エンジインの3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−プロピオン酸由来部分(図9)を産生させるために、まず、チロシンをorf18の遺伝子産物によってβ−チロシンに変換する。Orf18は、いくつかのヒスチジンおよびフェニルアラニンアンモニアリアーゼと高い類似性を示すが、β−チロシンからβ−チロシンへの変換を触媒するC−1027生合成経路のSgcC4との類似性が最も高い(73%の同一性、84%の類似性)。(Liuら,2002,Science,297,1170−73、Van Lanenら,2005,J.Am.Chem.Soc.,127,11594−5)。次に、β−チロシンをorf17遺伝子産物のアデニル化(A)ドメインによって、アミノアシルアデニレートとして活性化し、隣接するペプチジル担体タンパク質(peptidyl carrier protein:PCP)上のホスホパンテテイニル補欠分子群のスルフィドリル基に伝達し、β−チロシニル−S−Orf17を形成する。Orf17は、多様な非リボソームペプチドシンテターゼ(nonribosomal peptide synthetase:NRPS)と類似する。推定されたアミノ酸配列の配列分析に基づいて、Orf17は、3つの機能ドメイン、縮合(C)ドメイン、Aドメイン、およびPCPドメインを含む(図10)。KonzおよびMarahiel,1999,Chem.Biol.,6,R39−R47を参照されたい。Aドメインの基質特異性コードをA4Aドメイン構造モチーフとA5Aドメイン構造モチーフとの間の領域から抽出し、特異性コードDPCQVMVIAK(表4)を示した。また、表4は、C1027生合成クラスター由来のSgcC1(Challisら,2000,Chem.Biol.7,211−24)およびグラミシジン生合成クラスター由来のGrsA(Stachelhausら,1999,Chem.Biol,6,493−505)の基質および基質特異性コードも示す。
表4
アデニル化ドメイン基質特異性コードの比較
【0072】
【表4】
Orf17は、C−1027生合成クラスター由来のSgcC1に最も類似している(41%の同一性、49%の類似性)。II型非リボソームペプチドシンテターゼ(NRPS)をコードするSgcC1は、孤立Aドメインから成る。この酵素のインビトロ特徴付けでは、単一のPCPドメインから成るII型NPRSであるSgcC2上に載せる前に、β−チロシンを特異的に活性化することが示されている。(Van Lanenら,2005)。SgcC1およびOrf17の基質特異性コードの比較により、該コードが著しく類似していることは明らかである(Orf17のDPCQVMVIAKとSgcC1のDPAQLMLIAK)。両方の酵素が同じ基質を活性化するため、この類似性は驚くべきことではない。興味深いことに、orf17の終止コドンは、orf18の初めと3bp重複しており、これら2つの遺伝子の発現が翻訳共役している可能性があることを示している。orf18が同時に発現してβ−チロシンを供給することなくorf17が発現することにより、その意図される基質を供給することなくOrf17遺伝子産物が産生されるため、これらの遺伝子の発現を調節することは予想外のことではない。
【0073】
一度チオエステル結合によりOrf17のPCP上に載せられると、次に、β−チロシニル−S−Orf17は、Orf15によってメチル化され、3−アミノ−3−(4−メトキシ−フェニル)−プロパニル−S−Orf17を生じる。Orf15は、多くのS−アデノシルメチオニン(SAM)依存性O−メチルトランスフェラーゼと高い類似性を示し、SAM依存性メチルトランスフェラーゼ(モチーフI−VVDVGTFTG、配列番号166;モチーフ2−PAADLVFL、配列番号167;モチーフ3−LLRPGGLLVA、配列番号168)に共通する3つの配列モチーフを有する。KaganおよびClarke,(1994)Arc.Biochem.Biophys.,310,417−427。Actinomadura種21G792エンジインは単一のO−メチル基を有するため、Orf15が、この反応を触媒する可能性が最も高い酵素である。続いて、この酵素につながれた中間体は、Orf39によってヒドロキシル化され、3−アミノ−3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−プロパニル−S−Orf17をもたらす。BlastP分析は、Orf39が、フェノール性基質のヒドロキシル化に関与する多くのヒドロキシラーゼに類似するヒドロキシラーゼであることを示す。これは、インビトロで塩素化□−チロシニル−S−PCP中間体をヒドロキシル化することが分かっているC−1027生合成クラスターのSgcCに際立って類似している(73%の同一性、82%の類似性)。(Liuら,2002;Van Lanenら,2005)。ヒドロキシル化に続いて、orf19遺伝子産物が芳香族環のC−2位置を塩素化して、3−アミノ−3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−プロパニル−S−Orf17をもたらす。Orf19は、二次代謝に関与するいくつかのアルキルハリダーゼと相同であり、最も顕著には、PCP結合β−チロシンの塩素化を行なうことが分かっているC−1027生合成クラスター由来のSgcC3である(58%の同一性、70%の類似性)。(Liuら,2002;Van Lanenら,2005)。
【0074】
Actinomadura種21G792エンジインに組み込まれたβ−チロシン誘導体は、アミノ基の代わりにヒドロキシル基を持つため、酸化的脱アミノ反応により、3−アミノ−3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−プロパニル−S−Orf17中間体のアミノ基をOrf21と置き換えることが予想できる。BlastP分析により、Orf21がいくつかの推定FADおよびNADPH依存性モノオキシゲナーゼ/ヒドロキシラーゼとの類似性を示すことが明らかになり、ドメイン分析により、多くのモノオキシゲナーゼに共通のFAD結合ドメインを含むことが示される。このドメインはアミノ酸オキシダーゼに共通しており、酸化的脱アミノ反応が十分に裏付けされているため、Orf21はこの形質転換を行なう有力な候補である。しかしながら、FADおよびNADPH依存性モノオキシゲナーゼ/ヒドロキシラーゼに類似するOrf42を含むこの反応を潜在的に触媒し得る候補が他にもいくつか存在することに留意することが重要である。さらに、P450ヒドロキシラーゼに類似する2つのOrf(Orf25およびOrf27)が生合成クラスターに存在し、P450ヒドロキシラーゼも酸化的脱アミノ反応に関係しているため、これらの酵素のうちの1つもこの工程を触媒する可能性がある。(Liら,2000,J.Bacteriol.182,4087−95)酸化的脱アミノ反応に続いて、Orf21または他の候補酵素のうちの1つにより導入されると思われるケトンの還元が発生する可能性がある。このような反応を触媒できることが最も明白な酵素は、ポリケチド生合成で用いられるものに類似するケトレダクターゼである。Actinomadura種21G792エンジイン生合成クラスターの検査では、ケトレダクターゼのような酵素との類似性を示すいかなる酵素も同定されなかった。必要な還元を触媒する可能性がある未知の機能を有するいくつかの酵素がクラスターに存在するか、または酸化的脱アミノ反応の触媒に関与する酵素も還元反応を触媒する可能性がある。あるいは、現在の生合成経路外でコードされた酵素が、予想される還元を触媒し得る。ケト還元に続いて、チロシン誘導体3−(2−クロロ−3−ヒドキシ−4−メトキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−プロパニル−S−Orf17がActinomadura種21G792エンジイン複合体に組み込まれる。このActinomadura種21G792エンジインの成分の最終産物への組み込みについては以下で検討する。
【0075】
この合成経路は限定を目的とするものではなく単なる例示である。これをモデルとして用いることで、当業者は、他の多くの合成方式を設計し、Actinomadura種21G792発色団の3−(2−クロロ−3−ヒドキシ−4−メトキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−プロパニル成分またはこの成分の誘導体を産生することができる。
【0076】
マヅロサミン部分の生合成。Actinomadura種21G792エンジイン生合成経路の分析により、マヅロサミン(4−アミノ−4−デオキシ−3−C−メチル−β−リボピラノース)生合成に関与する5つの遺伝子が同定された(図11)。全てのデオキシ糖と同様に、マヅロサミン(MDA)生合成における第1の工程は、グルコース−dNDPシンターゼによるD−グルコース−1−リン酸塩(G−I−P)の活性化である。Trefzerら,1999,Nat.Prod.Rep.16,283−99。いくつかのグルコース−dNDPシンターゼと相同であるOrf43は、G−1−Pの活性化に関与する。これは、GenBankデータベース内のタンパク質に対するOrf43の配列相同性に基づいて、dTDPまたはdUDP−グルコースの形成を触媒すると思われる。
【0077】
次に、dNDP−糖デヒドロゲナーゼと相同性が高い酵素であるOrf37は、第一級アルコールを酸化させ、dNDP−D−グルクロン酸を産生する。次に、予想されるdNDP−グルクロン酸デカルボイクスラーゼであるOrf38は、dNDP−D−グルクロン酸をdNDP−キシロースに変換する。orf38から増幅された断片をプローブとして用い、マヅロサミンの生合成が4,6−デオキシグルコース中間体を含むdNDP−グルコース−4,6−デヒドラターゼを伴い得るという予測に基づいてActinomadura種21G792エンジイン生合成クラスターを含む第1のコスミドを同定した(実施例を参照されたい)。しかしながら、UDP−グルクロン酸デカルボキシラーゼおよびTDP−グルコース−4,6−デヒドラターゼアミノ酸配列とOrf38の配列の比較では、Deckerらによりグルコース−4,6−デヒドラターゼ遺伝子を増幅するために用いるPCRプライマーの設計に用いられた同類アミノ酸モチーフもOrf38およびグルクロン酸デカルボキシラーゼ配列中に存在することが示される(図12)。(Deckerら,1994,FEMS Micro.Lett.,141,195−201)。結果として、これらのプライマーを用いてグルクロン酸デカルボキシラーゼが増幅されたことは驚くべきことではない。さらに、orf37の終止コドンがorf38の開始コドンと重複しており、これらのorfが翻訳共役している可能性があることに留意されたい。
【0078】
dNDP−グルクロン酸の脱カルボキシル化に続いて、dNDP−D−キシロースのC−3ヒドロキシルが、Orf49によってエピマー化され、dNDP−L−キシロースを産生する。Orf49は、Thermobifida fusca(受入番号AAZ55273.1)由来の未同定タンパク質に最も類似し、その次に最も密接な関係がある同族体は、オビエドマイシンの生合成に関与するStreptomyces antibioticus ATCC 11891由来の推定NDP−糖エピメラーゼであるovmXである(40%の同一性、53%の類似性)。(Lomboら,2004,Chembiochem 5,1181−7)。
【0079】
エピマー化に続いて、orf40の遺伝子産物は、dNDP−L−キシロースの3位炭素をメチル化する。Orf40は、多数のNDP−ヘキソースC−メチルトランスフェラーゼと有意な類似性を示し、多様なSAM依存性メチルトランスフェラーゼに共通する3つの配列モチーフ(モチーフ1−IVEIGCNDG、配列番号169;モチーフ2−GPADVLYG、配列番号170;モチーフ3−LLKPDGIFVF、配列番号171)を有する。(KaganおよびClarke,1994,Arc.Biochem.Biophys.,310,417−27)。結果として、Orf40は、このメチル化を行なうと予想される。他のC−メチル化がActinomadura種21G792エンジインの2−ヒドロキシ−3,6−ジメチル−安息香酸(HDBA)部分の生合成において発生し、C−メチルトランスフェラーゼは、そのメチル化(Orf33)を触媒すると予想され、HDBA炭素骨格の生成に関与するポリケチドシンターゼとともに小さなオペロンを形成すると思われ、結果として、Orf40はその形質転換には加わらないと予想される。
【0080】
次に、メチル化dNTP−糖は、C−4がアミノ基転移してdNTP−マヅロサミンを形成する。この反応は、D−forosamineの形成においてデオキシ糖中間体のC−4アミノ基転移を行なうことが分かっているスピノシン生合成クラスター由来のSpnRとの相同性が高い(55%の同一性、68%の類似性)Orf36により触媒されると思われる。(Zhaoら,2005,JACS,127,7692−3)Actinomadura種21G792エンジインのマヅロサミン成分の最終産物への組み込みについては下記で検討する。
【0081】
この合成経路は限定を目的とするものではなく単なる例示である。これをモデルとして用いることで、当業者は、他の多くの合成方式を設計し、Actinomadura種21G792エンジインのMDA成分またはこの成分の誘導体を産生することができる。
【0082】
2−ヒドロキシ−3,6−ジメチル−安息香酸部分の生合成。Actinomadura種21G792エンジインの2−ヒドロキシ−3,6−ジメチル安息香酸(HDBA)成分は、2つの遺伝子産物、反復I型ポリケチドシンターゼ(PKS)であるOrf32、およびSAM依存性C−メチルトランスフェラーゼであるOrf33により合成される可能性が最も高い(図13)。最近まで、芳香族ポリケチドの生合成についての細菌の理論的枠組みは、反復II型PKSを必要としていた。(Shenら,2003,Curr.Opin.Chem Biol.7,285−95)Actinomadura種21G792エンジイン生合成クラスターの検査では、II型PKSと相同する遺伝子の存在は明らかにされなかった。しかしながら、Orf32は、ネオカルチノスタチンのナフトエ酸部分の産生に関与する反復I型PKSであるNcsBに高い類似性を示し(47%の同一性、59%の類似性)、真菌を元にするいくつかの6−メチルサリチル酸シンターゼにも高い類似性を示した。(Liuら,2005,Chem.Biol.,293−302)Orf32は、ケトシンターゼ(KS)、アシルトランスフェラーゼ(AT)、デヒドラターゼ(DH)、ケトレダクターゼ(KR)およびアシル担体タンパク質(ACP)を含むタイプIのPKSに共通する5つのドメインから成る。これは、繰返し型デアルボキシラーゼ縮合を行い、その後にC−4の選択的ケト還元および脱水、ならびにC−2のケト還元を行なうことにより、1つのアセチル補酵素A(coA)および3つのマロニルcoAから直鎖テトラケチドの形成を触媒する。次いで、新生テトラケチド中間体は、非酵素分子内アルドール縮合により、環化6−メチルサリチル(6MSA)酸中間体を形成する。
【0083】
その後、orf33の遺伝子産物は、6MSA中間体のC−3位置をメチル化してHDBAを形成する。Orf33は、N−、C−およびO−メチルトランスフェラーゼを含む多種多様のSAM依存性メチルトランスフェラーゼに類似する。その分類と一致させて、Orf33は、多種多様のSAM依存性メチルトランスフェラーゼに共通する3つの配列モチーフを有する(モチーフ1−VLDLGGGDG、配列番号172;モチーフ2−DGCDAILY、配列番号173;モチーフ3−ALPEGGVCVV、配列番号174)。(KaganおよびClarke,1994)生合成クラスターに存在する他のメチルトランスフェラーゼがこの反応を触媒する可能性があり、Orf33は、Orf32のすぐ上流に位置し、HDBAの産生に充てられる小さなオペロンの一部であるため、結果として、この反応を起こす可能性が最も高い酵素である。PKSからの環化ポリケチドの放出には、多くのポリケチドの場合と同様にチオエステラーゼは必要としない。むしろ、それは、6−メチルサリチル酸生合成について報告されているものに似たケテン経路を介して放出される。SpencerおよびJordan,(1992)Biochem.J.,288,839−846。
【0084】
Orf32からの放出に続いて、HDBAが、orf31の遺伝子産物によりアリールアデニレートとして活性化される。Orf31は、多数のアリール酸AMPリガーゼに類似する。これらのタイプの酵素の最も研究された例は、親鉄剤生合成の調査によるものである。多くの親鉄剤の場合、サリチル酸塩または2’、3’−ジヒドロキシベンゾエートなどのアリール酸は、親鉄剤の非リボソームペプチドコアのアセンブリにおける第1の工程としてアデニル化される(CrosaおよびWalsh,2002,Microbiol Mol.Biol.Rev.,66,223−49を検討のために参照されたい)。アリール酸をアデニレートとして活性化することに加えて、これらの酵素はまた、いわゆるアリール担体タンパク質(ArCP)のホスホパンテテイニル補欠分子群のスルフィドリル基にアリール酸を転移する。親鉄剤バチルスバクチン(bacillibactin)の生合成に関与する2’,3’−ジヒドロキシベンゾエート−AMPリガーゼ(DhbE)の結晶構造と、NPRS GrsAアデニル化ドメインおよび蛍ルシフェラーゼを含む他のアデニル化酵素の結晶構造との比較により、アリール酸活性化ドメインがアミノ酸活性化ドメインには存在しない特徴的配列を含むことが明らかになった。(Mayら,2002,PNAS99,12120−5)。DhbEでは、通常アミノ酸活性化ドメイン(YxFDxS)に存在するいわゆるコアA4モチーフが配列モチーフHNYPLSSPGに置き換えられる。アミノ酸活性化ドメインでは、不変Asp残基がアミノ酸基質の□−アミノ基を安定させ、アリール酸活性化ドメインでは、Asp残基は、DHBAまたはサリチル酸の2’−ヒドロキシル基と水素結合する同類中性Asnに置き換えられる。(Mayら,2002)。HDBAは2’−ヒドロキシルを有するため、Orf31がアリール酸活性化A4モチーフを有することが予想される。Orf31配列の検査により、アリール酸を活性化する酵素と整合するモチーフHNFPLASPG(配列番号175)が明らかになった(図14)。
【0085】
NRPSアミノ酸活性化ドメイン(Stachelhausら,1999,Chem.Biol.,6,493−505;Challisら,2000,Chem.Biol.7,211−24)に関しては、A4コアモチーフとA5コアモチーフとの間の領域からアリール酸活性化ドメインの基質特異性コードを抽出することができる。(Mayら,2002)。表5は、Orf31基質特異性コードと、下記の二次代謝産物の生合成に関与する他のアリール酸活性化ドメインの基質特異性コードとの比較を示す:ヴァージニアマイシン(VisB、受入番号BAB83672)、プリスチナマイシン(SnbA、受入番号CAA67140)、ミコバクチン(MbtA、受入番号CAB03759)、エルシニアバクチン(YbtE、受入番号AAC69591)、ピオケリン(PchD、受入番号AAD55799)、ネオカルチノスタチン(NcsB2、受入番号AAM77987)、ビブリオバクチン(VibE、受入番号O07899)、バルニバクチン(Vva1301、受入番号BAC97327)、バチルスバクチン(DhbE、受入番号AAC44632)、およびミクソケリン(MxcE、受入番号AF299336)。GrsAフェニルアラニン活性化アデニル化ドメインに準じて位置番号を付している(Stachelhausら,1999)。2’,3’−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)とサリチル酸の活性化の区別に関与すると提示されている残基をアスタリスクで特定している。Orf31で見られる位置と対応する各位置の残基は、灰色の影を付けている。HPA、3−ヒドロキシピコリン酸。
【0086】
Orf31基質特異性コードと他のアリール酸活性化酵素および3−ヒドロキシピコリン酸を活性化する2つの酵素のコードとの比較により、Orf31がサリチル酸またはHDBAのいずれかを活性化することが示される。(表5)。
表5
アリール酸活性化ドメイン基質特異性コードに比較
【0087】
【表5A】
【0088】
【表5B】
サリチル酸またはHDBAの活性化後、Orf31は、orf16によってコードされるArCPに結合したホスホパンテテイニル補欠分子群のスルフィドリル基への活性化アリール酸の転移を触媒する。Orf16は、二次代謝に関与する多くのPCPおよびArCPに類似する(約30〜40%同一)小さなタンパク質(95aa)であり、不変セリン残基(GTFFQLRGQSI;配列番号176)を含む特徴的な4’−ホスホパンテイン付着モチーフを有する。ArCPへの付着の後、下記で検討されるように、サリチル酸塩誘導体は、Actinomadura種21G792エンジイン複合体への組み込みに期待される。
【0089】
この合成経路は限定を目的とするものではなく単なる例示である。これをモデルとして用いることで、当業者は、他の多くの合成スキームを設計し、Actinomadura種21G792発色団の2−ヒドロキシ−3,6−ジメチル安息香酸成分またはこの成分の誘導体を産生することができる。
【0090】
エンジインコア生合成。少なくとも14個の遺伝子が、図15に概略を示すActinomadura種21G792エンジインコア生合成におけるそれらの役割をサポートするように機能することが推定されるActinomadura種21G792エンジイン生合成クラスター内で同定された。Orf5は、ネオカルチノスタチン(NcsE)、C−1027(SgcE)およびカリケアマイシン(CalE8)の生合成に関与するエンジインPKSとの全体的な配列相同性を示す反復I型PKSをコードする。(Liuら,2005;Liuら,2002;Ahlertら,2002、Science,297,1173−76)。先に同定したエンジインPKSと同様に、Orf5は、6個のドメイン:KS、AT、ACP、KR、DH、およびいわゆる「末端ドメイン」(TD)からなる(図16)。TDは、4’−ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼとの相同性を示す。結果として、TDは、翻訳後にACP活性部位セリンを4’−ホスホバンテテインで修飾することにより、エンジインPKSの自動活性化を触媒すると見られている。(Zazopolousら,2003,Nature Biotech.,21,187−90)。Orf5は、1つのアセチルcoAおよび7つのマロニルcoAから新生直鎖ポリ不飽和ポリケチド中間体を繰り返し産生すると予想される。直鎖中間体は、Orf5から放出され、および/または全てのエンジイン生合成クラスターに見られるチオエステラーゼタンパク質群との類似性を示すOrf6により環化されると考えられる。上記参照。このタンパク質群は、Pseudomonas種株CBS−3の4−ヒドロキシベンゾイルcoAチオエステラーゼとの相同性に基づいて、チオエステラーゼとして機能すると予測される。上記参照。
【0091】
ポリケチド中間体は、いくつかの遺伝子産物(Orf1−4、7、8、11、12、14)によりさらに処理され、エンジインコアを与える(図15)。これらの遺伝子産物は、エンジイン生合成クラスターでの保存性が高い。Orf5および6に加えて、Orf1−4の同族体が現在までに研究されてきた全てのエンジイン生合成経路に見られ(上記参照)、Orf7、8、11、12および14の同族体は、9員エンジインC−1027およびネオカルチノスタチン生合成クラスターと共通する(Liuら,2005;Liuら,2002)。Orf1−4、11および14は、機能が公知のいずれのタンパク質とも相同性を有さないが、Orf7、8および12は、種々のオキシドレラクターゼと似ている。興味深いことに、orf11およびorf12と同様に、orf2−8は翻訳共役されていると思われるため(例えば、orf2の終止コドンはorf3の開始コドンと重複し、orf3の終止コドンは開始コドンまたはorf4と重複する、など)、これらの遺伝子の大半の発現は共調整することができる。
【0092】
エンジインコア(図15)は、エンジインコアのC13〜C14エポキシドからの末端アミドの産生に関与していると思われる少なくとも3つの遺伝子産物、Orf30、Orf41およびOrf24によりさらに修飾される。orf30は、予想されるエポキシドヒドロラーゼをコードし、orf41は、アルコールデヒドロゲナーゼをコードし、orf24は、アミノトランスフェラーゼをコードする。その後、完全に修飾されたエンジインコア部分は他の発色団成分で覆われて、活性代謝体を産生する。
【0093】
この合成経路は限定を目的とするものではなく単なる例示である。これをモデルとして用いることで、当業者は、他の多くの合成方式を設計し、Actinomadura種21G792発色団のエンジインコアまたはこの成分の誘導体を産生することができる。
【0094】
Actinomadura種21G792発色団のアセンブリ(図17)。Actinomadura種21G792エンジインの生合成は、分子複合体の個々の成分のアセンブリについて集中的方法を必要とするエンジイン生合成の現在の理論的枠組みに従う。(Liuら,2005;Liuら,2002;Ahlertら,2002)。各成分の産生に続いて、それら成分がエンジインコアに体系的に結合し、最終的に図17において概略を示すような最終分子を得る。エンジインコアの3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−プロパニル部分への付着は、Orf17の縮合ドメインにより触媒されていると思われる。Orf17によるこの反応の触媒作用は、通常、NRPSの縮合ドメインに起因する一般的なペプチド結合形成活性と整合する。エーテル結合形成を介して3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−プロパニル部分の芳香族環をエンジインコアに付着するために用いられるメカニズムは不明であるが、C5〜C6エポキシドの開環と同時に起こり、および/またはActinomadura種21G792エンジイン生合成クラスター内に含まれるP450またはモノオキシゲナーゼをコードするorfのうちの1以上に関連し得る。マヅロサミン部分は、O−グリコシド結合を介してエンジインコアと結合する。天然物生合成に関与する多種多様のグリコシルトランスフェラーゼとの配列類似性が高いorf29の遺伝子産物は、この伝達を触媒する。Orf29は、C−1027エンジインコアのグリコシル化を触媒すると考えられているC−1027生合成経路からのSgcA6と最も類似している(43%の同一性、57%の類似性)。(Liuら,2002)。最後に、タイプIのNPRS縮合ドメインであるOrf20は、非リボソームペプチド生合成でのペプチド結合形成に似た反応において、Orf16のホスホパテテインの腕からマヅロサミンのアミノ基にHDBA部分を伝達する。
【0095】
これをモデルとして用いて、当業者は、他の多くの合成スキームを設計し、Actinomadura種21G792発色団、特に発色団−bおよび発色団−c、ならびにこれらの発色団の誘導体を産生することができる。
【0096】
本発明は、Actinomadura種21G792発色団生合成成分を含む新規な生合成経路であって、Actinomadura種21G792発色団の変異体が産生されるように1以上の成分が突然変異しているか、または異なるエンジイン発色団の生合成経路からの成分で置換もしくは付加されている経路を提供する。標準的な分子遺伝子技術を用いて、先に示したような個々のorfまたはorfの組み合わせを操作して、Actinomadura種21G792発色団および/または色素タンパク質の新規な生物活性類似体を産生することができる。1つの好ましい態様では、新規な発色団は、Actinomadura種21G792アポタンパク質と同時発現する。別の態様では、Actinomadura種21G792発色団は、Actinomadura種21G792アポタンパク質の変異体と同時発現する。さらに別の態様では、新規な発色団は、Actinomadura種21G792アポタンパク質の変異体と同時発現する。
【0097】
本発明の一態様では、Actinomadura種21G792におけるorf15の不活性化により、通常は当該分子のβ−チロシニル部分に見られるO−メチルが欠失した類似体が産生される。(例えば、図10参照)この変化により、O−メチルの代わりにヒドロキシル基が残る(下記のR1参照)。ヒドロキシル基置換を行なう理由の1つは、標準的な合成化学技術による類似体のさらなる化学誘導体化のための化学的な手かがりとしてそれを用いることである。同様に、orf19によりコードされたハロゲナーゼの不活性化によりPCP結合β−チロシンの塩素化を防ぎ、その結果、Actinomadura種21G79類似体からClがなくなる(下記のR2参照)。下記のR3基は、通常、CH3であり、dNDP−L−キシロースの3−炭素をメチル化するorf40の産物の不活性化によりHに変化させることができる。
【0098】
【化4】
Actinomadura種21G792発色団のR4基は、
【0099】
【化5】
(R5と示す)であり、ここでR5は、アミド窒素で糖部分と連結する。orf32の不活性化により、HDBA部分が欠失したエンジイン類似体が産生され(例えば、図13、17を参照されたい)、またはorf20の不活性化の結果、R5がNH2により置換される。さらに、R4部分は修飾されてもよい。例えば、
【0100】
【化6】
(R6と示す)は、orf33を不活性化することにより得られる。
【0101】
別の態様では、orf32は上述のように不活性化され、突然変異体を用いて、HDBA部分が他のアリール酸に置き換えられたActinomadura種21G792エンジイン類似体のライブラリーを作成する。アリール酸は、orf32突然変異体に各種の天然アリール酸、N−アセチルシステアミン連結
アリール酸、またはメチルチオグリコレート等、他のチオエステル担体と連結したアリール酸を発酵ブロスに与えることにより導入される(例えば、Jacobsenら(1997)Science 277,367−9を参照されたい)。Actinomadura種21G792分子複合体への成分の添加に関与する各orfを単独または他のorfと組み合わせて突然変異させて、生物学的試験のための大規模なActinomadura種21G792エンジイン類似体のライブラリーを作成することができる。
【0102】
よって、本発明は、下記の式を有する化合物を提供する:
【0103】
【化7】
式中、R1はOHまたはOCH3であり;R2はClまたはHであり;R3はCH3またはHであり;R4はNH2、R5、およびR6から選択される。さらに、特定の天然アリール酸、N−アセチルシステアミン連結アリール酸、またはメチルチオグリコレート等の他のチオエステル担体に連結したアリール酸を付加した発酵ブロスで突然変異体orf32を培養することにより、エンジイン類似体を産生することができ、ここで、R4は、
【0104】
【化8】
または
【0105】
【化9】
であり、
式中、R1’はH、CH3、OH、OCH3、Cl、C3H7、またはNO2であり;R2’はH、CH2、NH2、OH、F、OCH3、F、Cl、NO2、OC2H5、またはNC2H6であり;R3’はH、CH3、Cl、CH3、NH2、OH、F、COH、OCH3、Cl、OC2H5、またはNO2であり;R4’はOHまたはOCH3である。
【0106】
他の態様では、異なる二次代謝経路からの1以上のorfをActinomadura種21G792に導入することができる。選択されたorfを、相同組換えにより、または例えば、ファージのint/attP機能(例えば、pSET152または同様のベクター)により媒介された部位特異的組込により、宿主染色体に導入することができる。あるいは、選択されたorfを自己複製ベクター上に導入することができる。一度発現すると、遺伝子産物は、Actinomadura種21G792発色団を修飾し続ける。例えば、C−1027生合成遺伝子クラスター由来のsgcA、sgcA1、sgcA2、sgcA3、sgcA4、sgcA5およびsgcA6を、1つ以上のマヅロサミン生合成orfが不活性であるActinomadura種21G792株に導入し、マヅロサミンの代わりにC−1027デオキシアミノ糖またはその誘導体を含むActinomadura種21G792エンジイン類似体を産生することが可能である。
【0107】
本発明はまた、Actinomadura種21G792の色素タンパク質生合成クラスターから他の二次代謝産物を産生する微生物に遺伝子を導入して、その生物により産生された同種の二次代謝産物を修飾することを可能にする。例えば、異なるエンジイン発色団(例えば、C−1027発色団)の類似体は、その発色団の生合成経路を発現する宿主であって、Actinomadura種21G792の色素タンパク質生合成経路から1以上の成分が置換または付加された宿主を提供することにより産生される。
【0108】
Actinomadura種21G792色素タンパク質の類似体を作ることに加えて、負の調節因子を不活性化し、正の調節因子の発現レベルまたは遺伝子コピー数を増加することにより発酵タイターを増加することもできる。Actinomadura種21G792生合成クラスターは、GenBankデータベースに含まれる配列との相同性に基づいて推定転写調節因子と同定された少なくとも8個のorf(orf9、10、46、50、52、55、62および63)を含む。これらの調節因子の機能を体系的にテストして、どの調節因子が正の調節因子であり、どれが負の調節因子であるかを特定することができる。それらの結果に基づいて、これらの遺伝子のうちの1つ以上を合理的に変形し、Actinomadura種21G792色素タンパク質の発酵タイターを増加することができる。
【0109】
典型的には、有毒な二次代謝産物を産生する生物は、その産生する生物に自己耐性を与える1以上の遺伝子を有する。これらの遺伝子の産物は、通常、有毒な代謝体を化学的に修飾、隔離または輸送することにより耐性を与える。ある場合には、該代謝体の標的は、本質的に、当該代謝体に対する感受性が低いかまたは当該標的を修飾して当該代謝体に対する感受性を低くする。Actinomadura種21G792生合成クラスターは、自己耐性に関与している可能性がある遺伝子産物を産生する少なくとも2つのorfを含む。Actinomadura種21G792複合体のアポタンパク質成分をコードするorf23は、活性発色団を隔離することにより上記産生する生物のDNAを発色団による開裂から保護することに関与していると思われる。orf22の遺伝子産物は、多くの膜貫通排出タンパク質と同様のタンパク質をコードし、C−1027発色団−アポタンパク質複合体の排出ポンプとして作用すると考えられているC−1027生合成経路からのSgcBに最も類似する(Liuら(2005)Chem.Biol.,293−302)。orf22およびorf23を用いることにより、Actinomadura種21G792色素タンパク質に潜在的に耐性を与えることができる。1つの態様では、Actinomadura種21G792生合成経路を異種発現するように選択された細胞にこれらのorfを導入することにより、その細胞が高度なActinomadura種21G792色素タンパク質を産生することを可能にし、その有毒作用に対する免疫を有するようにすることができる。別の態様では、Actinomadura種21G792の生体内転換のために選択されたドナー細胞にこれらのorfを導入することができる。このような細胞は、それ以外の場合では、Actinomadura種21G792の極度の毒性により生体内転換が発生する前に殺傷される。
【0110】
Actinomadura種21G792生合成クラスター全体、または選択された部分は、細菌等の異種宿主中で発現することができる。有用な細菌の例としては、例えば、ストレプトミセス属、Actinomadura属、Nonomurea属、ミクロモノスポラ属、エシェリキア属、およびシュードモナス属のメンバーが挙げられる。(例えば、Pfeiferら,2001;Martinezら,2004参照)該生合成クラスターはまた、酵母等の真核宿主中でも異種発現することができる。一態様では、該Actinomadura種21G792生合成クラスターは、高度な二次代謝産物の産生のためにすでに修飾された生物中で有利に発現されることにより、Actinomadura種21G792色素タンパク質の産生レベルを、Actinomadura種21G792を用いて通常達成することができるレベルよりも上げることができる。(例えば、Rodriguezら,2003,J.Ind.Microbiol.Biotechnol.30,480−8を参照されたい)。別の態様では、Actinomadura種21G792色素タンパク質類似体の生成を促進するために、上記Actinomadura種21G792生合成クラスターは、特に遺伝子操作を受けやすい生物中で有利に発現される(例えば、Bentleyら,2002,Nature 417,141−7;Binnieら,1997,Trends Biotechnol.15,315−20を参照されたい)。
【0111】
Actinomadura種21G792色素タンパク質生合成経路の全てまたは一部をコードする組換えDNAを伝達するために有用な様々な方法が当該技術分野で知られている。種々の宿主においてこのようなDNAを伝達および発現するために用いることができる広範な宿主域を有するプラスミドが入手可能である(例えば、ストレプトミセス用のpIJ101(Kieserら,1982、Mol.Gen.Genet.185:223−8)、アクチノミセス用のpJRD215(Yeungら,1994,J.Bacteriol.176:4173−6))。このようなベクターを伝達するための方法には、共役、電気穿孔法およびプロトプラスト形質転換が含まれる。Escherichia coli中での複製およびE.coliからストレプトミセス等のグラム陽性細菌種への接合伝達が可能なシャトルベクターも用いることができる(例えば、Mazodierら,1989,J.Bacteriol.171:3583−5;Kieserら,2000,Practical Streptomyces genetics.A laboratory manual.John Iines Foundation,Norwich,United Kingdom)。
【0112】
色素タンパク質を含む医薬組成物であって、色素タンパク質が本発明のアポタンパク質および発色団の複合体を含み、好ましくは、当該発色団がActinomadura種21G792により産生される医薬組成物を調製することが望ましい場合がある。好ましくは、該ポリペプチドは、非共有結合により発色団に結合する。一般に、医薬組成物の調製には、本質的にピロゲンおよびヒトまたは動物に有害な任意の他の不純物を有さない医薬組成物の調整を伴う。適切なバッファーを用いて複合体を安定にし、標的細胞による取り込みを許容することも望ましい場合がある。
【0113】
本発明の水性組成物は、医薬的に許容される担体または水培地中でさらに分散した色素タンパク質を有効量含む。このような組成物は植菌とも呼ばれる。「医薬的または薬理学的に許容される」という文言は、動物またはヒトに適切に投与した際に、副作用、アレルギーまたは他の有害反応を生じない組成物を指す。
【0114】
本明細書中で使用するとき、「医薬的に許容される担体」には、任意および全ての溶剤、分散培地、被覆剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤などが含まれる。医薬活性物質に対するこのような培地および薬剤の使用は当該技術分野において周知である。任意の従来の培地または薬剤が上記色素タンパク質に適さない場合を除いて、治療用組成物にいてそれを用いることが企図される。抗菌または抗腫瘍薬剤を含む補助的な活性成分も前記組成物に組み込んでもよい。
【0115】
本発明の1つの態様では、本発明の発色団は、細胞により、例えば、飲作用によって取り込まれる。他の態様では、上記発色団は、特定の細胞または細胞タイプの標的となるように修飾される。このような一態様では、色素タンパク質を、モノクローナル抗体または他のタンパク性担体を標的構成単位として用いるポリマーまたは複合体の形態で、標的組織に送達させてもよい。種々のポリマー系および抗体複合体送達システムが知られ、自然発生的なC−1027エンジインを伴う化学療法方針において現在利用されている。本発明では、色素タンパク質を、例えば、化学的に修飾して、治療、特には、化学療法に有用なポリ(スチレン−co−マレイン酸)−接合色素タンパク質を形成してもよい。(例えば、MaedaおよびKonno,1997,Neocarzinostatin:the Past,Present,and Future of an Anticancer Drug,H.Maeda,K.Edo,N.Ishida,Eds.,Springer−Verlag,New York,pp.227−267を参照されたい)。
【0116】
疎水性および親水性セグメントの両方を含むポリマーミセルは、化学療法薬剤の治療指数を増大するために最近開発された新たな薬物送達システムである(Yokoyamaら,1990,Cancer Res.50:1693−700;Kabanovら,1989,FEBS Lett.258:343−5)。ミセルの大きさを調節して浸透性および保持(EPF)効果を向上させることで、ミセル粒子が正常な組織においてよりも腫瘍組織においてより血管に浸透できるようにすることができる(Maeda,2001,Adv Enzyme Regul.41:189−207)。これにより、腫瘍組織における薬物分布を有利なものにすることができるため、インビボでの有効性が増大すると期待される。上記21G792色素タンパク質をブロック共重合体溶液と混合することにより、特別に設計されたミセルに非共有結合的に組み込むことができる。結果得られた薬物の代謝的安定性を有意に増大させることができ(Yokoyamaら,1991,Cancer Res.51:3229−36)、これは、癌化学療法における21G792色素タンパク質の送達に潜在的に有利である。
【0117】
色素タンパク質(すなわち、アポタンパク質または発色団)は、細胞または病原体への送達のために、化学的リンカーまたは他の関連する方法を用いて、タンパク質に複合化することができる。21G792色素タンパク質中の発色団をアジ化ナトリウムおよび第2級アミンと反応させて一連の誘導体を生じている。これらの誘導体は、C−5に、天然の発色団中のヒドロキシル基と置き換わるアジドまたは第2級アミノ基を含む。一方の末端にアミノ基を有し、他端にカルボキシル基を有するリンカーを用いてモノクローナル抗体および発色団を接続し、標的薬物の送達のための発色団−抗体複合体を形成することができる。上記C−5ヒドロキシル基と置き換わるリンカーのアミノ基は、腫瘍組織においてより酸性度が高い条件下で上記複合体を加水分解して発色団に戻すように設計される。例示的な連結を図30に示す。
【0118】
さらに、色素タンパク質をモノクローナル抗体と複合化して、モノクローナル抗体(MAb)−色素タンパク質複合体を形成してもよい。抗原に対して高い親和性を有し、好ましくは悪性細胞の表面の抗原決定基に対する特異性を有するする抗体は、標的部分として自然な選択である。抗体により媒介される色素タンパク質の腫瘍細胞への特異的送達は、それらの抗腫瘍効果を単に増大させるだけでなく、正常な組織による標的以外の取り込みを防ぐことにより、治療指数を増大させることが期待される。本発明において用いられ得るこのような抗体担体の例としては、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、それらの生物学的に活性な断片、およびそれらの遺伝子または酵素が操作された対応物が挙げられる。好ましくは、そのような抗体は、癌等の増殖性疾患における標的細胞および/または組織上で発現された細胞表面抗原に向けられる。抗CD33モノクローナル抗体は、このアプローチに有用なMabの例示であり、急性骨髄性白血病の患者の状況を含む様々な状況において、色素タンパク質を癌性組織に到達させ得る。(例えば、Sieversら,1999,Blood 93,3678−84を参照されたい)有用なモノクローナル抗体複合体の別の例としては、例えば、抗CD22モノクローナルタンパク質がB細胞リンパ腫を標的とする送達のためにエンジインと接合されるPCT国際公開第WO03/029623号に記載のものが挙げられる。前述したように、いくつかのMAb−C−1027複合体は、有望な抗癌剤として評価段階にある。(Brukner,2000,Curr.Opinion Oncologic,Endocrine&Met.Invest.Drugs 2,344)。抗体担体以外の他のタンパク性担体は、ホルモン、成長因子、抗体の模倣体、およびそれらの遺伝子または酵素が操作された対応物を含み、以下において単独でまたはまとめて「担体」と呼ぶ。担体の本質的特性は、その不要な細胞に関連する抗原または受容体を認識して結合した後に内在化する能力である。本発明に適用可能な担体の例としては、全体として本明細書中に援用される米国特許第5,053,394号および同第5,773,001号に開示されるものが挙げられる。本発明での使用が好ましい担体は、抗体および抗体の模倣体である。
【0119】
多数の非免疫グロブリンタンパク質の骨組みが、抗体の特異性を有する抗原エピトープに結合する抗体の模倣体を生成するために用いられている。(PCT国際公開第WO00/34784号)。例えば、免疫グロブリン群に関連する「ミニボディ」骨組みが、3つのβ鎖をモノクローナル抗体の重鎖可変ドメインから取り除くことにより設計されている(Tramontanoら,1994,J.Mol.Recognit.7:9−24)。このタンパク質は61残基を含み、2つの超可変ループを提示するために用いることができる。これら2つのループはランダム化され、抗原結合のために選ばれた産物であるが、今までのところ、この枠組みは、溶解性の問題のため実用性が幾分限られていると思われる。ループを表示するために用いられる他の枠組みは、テンダミスタット(哺乳動物のα−アミラーゼを特異的に阻害し、2つのジスルフィド結合により、74残基、6鎖ベータシートサンドイッチをまとめて保持したタンパク質)である(McConnellおよびHoess,1995,J.Mol.Biol.250:460−70)。この骨組みは、3つのループを含むが、ランダム化の可能性に関しては、現在まで、それらのループのうちの2つについてしか調べられていない。
【0120】
他のタンパク質を枠組みとしてテストし、αへリックス表面上のランダム化した残基(Nordら,1997,Nat.Biotechnol.15,772−7;Nordら,1995,Protein Eng.8,601−8)、アルファイルへリックス束内のαへリックス間のループ(KuおよびSchultz,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92,6552−6)、および小型のプロテアーゼ阻害剤などのジスルフィド架橋により拘束されたループ(Marklandら,1996,Biochemistry 35,8045−57;Marklandら,1996,Biochemistry 35,8058−67;RottgenおよびCollins,1995,Gene 164,243−50;Wangら,1995,J.Biol.Chem.270,12250−6)を表示するために用いられている。
【0121】
標的分子および色素タンパク質は、化学的架橋によってまたは組換えDNA技術の適用等による遺伝子融合を介して共有結合的に関連付けられてもよい。後者のアプローチでは、アポタンパク質は、そのC末端またはN末端を、細胞を標的とするタンパク質分子のN末端またはC末端に融合させてもよい。細胞を標的とする分子が抗体である場合、アポタンパク質のC末端は、当該抗体の軽鎖および/または重鎖のN末端と融合させることが好ましい。化学的架橋のために、いくつかの共通タンパク質−抗体リンカーは、琥珀酸エステルと他のジカルボン酸、グルタルアルデヒドと他のジアルデヒドである。そのようなリンカーは他にも当該技術分野において周知である。
【0122】
治療用組成物の溶液を界面活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)と適切に混合した水で調製してもよい。また、分散物をグリセロール、ポリエチレングリコール液、それらの混合物、およびオイルで調製してもよい。通常の保存および使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含む。
【0123】
本発明の治療用組成物は、溶液または懸濁液のいずれかの注入可能な組成形態で有利に投与される;また、注入の前に液体で溶解または懸濁するために適した固形を調製してもよい。これらの調製物はまた乳化してもよい。このような目的のための典型的な組成物は、医薬的に許容可能な担体を含む。例えば、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水1ミリリットルにつき、10mg、25mg、50mgまたは最大で約100mgのヒト血清アルブミンを含んでもよい。他の医薬的に許容される担体は、水性溶液、塩を含む非毒性賦形剤、防腐剤、緩衝剤等を含む。
【0124】
非水性溶剤の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、およびオレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステルがある。水性担体には、水、アルコール/水性溶液、食塩水、ナトリウム塩化物などの非経口剤、リンゲルデキストロースなどが含まれる。静脈内投与剤には、流体および栄養補充剤が含まれる。防腐剤には、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤および不活性ガスが含まれる。医薬組成物の種々の成分のpHおよび正確な濃度は、周知のパラメータに応じて調節される。
【0125】
経口投与にはさらなる製剤が適切である。経口製剤には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどの典型的な賦形剤が含まれる。前記組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤または粉末の形態を取る。経路が局所的である場合、前記形態はクリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)またはスプレーであってもよい。
【0126】
本発明の治療用組成物は、伝統的な医薬調製物を含んでもよい。本発明に従った治療用組成物の投与は、その経路が標的組織にとって有効である限り、任意の一般的経路を介して行なわれる。これには、経口投与、経鼻投与、口腔投与、直腸投与、膣内投与または局所投与が含まれる。局所投与は、化学療法により誘発された脱毛症または他の皮膚過剰増殖性疾患を防ぐ皮膚癌の治療に特に有利である。あるいは、投与は、同所性、皮内、皮下、筋内、腹腔内または静脈注射である。このような組成物は、通常、生理学的に許容される担体、緩衝剤または他の賦形剤を含む医薬的に許容可能な組成物として投与される。肺疾患の治療については、好ましい経路は、エアロゾールによる肺への送達である。エアロゾールの量は、約0.01mlと0.5mlの間である。同様に、結腸関連の疾患の治療に好ましい方法は浣腸である。浣腸の量は、約1mlと100mlの間である。
【0127】
治療用組成物の有効量は、意図する目的に基づいて決定される。「単位用量」または「投与量」という用語は、被検者における使用に適した物理的に個別の単位を意味し、各単位は、その投与、すなわち、適切な経路および治療計画に関して上述したような所望の応答を生じるように算出された所定量の治療用組成物を含む。治療回数および単位用量の両方に応じた投与量は、保護が所望されるものに依存する。
【0128】
また、治療用組成物の正確な量も医師の判断に依存し、各個人に特有のものである。用量に影響する要因には、患者の物理的および臨床状態、投与経路、意図する治療の目的(症状の緩和対治癒)ならびに特定の治療用物質の効力、安定度および毒性が含まれる。
【0129】
本出願の全体で、様々の刊行物は、括弧内の名称またはナンバーによって参照される。全体としてこれらの刊行物の開示は、本出願が関連する当該技術分野の状況をより十分に説明するために本明細書中に参照により援用される。
【実施例】
【0130】
本明細書に開示されている本発明の原理の改変は当業者によってなされてもよいことは理解および期待されるべきであり、このような変更は本発明の範囲に含まれるものであることが意図される。
【0131】
下記の本発明の実施例は、本発明をさらに例示するために記載され、決して本発明を制限するものとして解釈してはならない。
【0132】
実施例1
色素タンパク質およびアポタンパク質の単離および特徴付け
実施例1−種子培養
Actinomadura種21G792は、ATCC培地172(デキストロース1%、可溶性スターチ2%、酵母エキス0.5%、およびN−ZアミンタイプA0.5%、CaCO30.1% pH7.3)において72時間増殖させた細胞から調製された冷凍全細胞(冷凍栄養菌糸、FVM)として保存された。グリセロールが20%になるまで添加し、前記細胞を−150℃で冷凍した。
【0133】
1.0%デキストロース;2.0%可溶性スターチ;0.5%酵母エキス;0.5%N−ZアミンタイプA(Sheffield);および0.1%CaCO3を含む、pHが6.9である種培地を調製した。25mm×150mmのガラス培養試験管、7mlの種培地および2つのガラスビーズに、ATCC寒天培地#172(ATCC Media Handbook,初版,1984年)上で培養したActinomadura種21G792の細胞を植菌した。この寒天培養培地からの十分な接種材料を用いて、72時間成長させた後に混濁種を得た。2インチ長のジャイロ・ロータリーシェイカーを用いて、第1種の試験管を28℃、250rpmで72時間インキュベートした。次に、第1種(約14%接種材料)を用いて、50mlの培地#172を含む250mlの三角フラスコに植菌した。ジャイロ・ロータリーシェイカー(2”ストローク)を用いて、これら第2種フラスコを28℃、250rpmで48時間インキュベートした。
【0134】
実施例2
実施例2−発酵
2.0%ショ糖;0.5%糖蜜;0.5%CaCO3;0.2%ペプトン;0.002%硫酸マグネシウム−7H2O;0.001%硫酸鉄−7H20;0.05%臭化ナトリウム;および0.2%酢酸ナトリウムを含む、pHが6.9である発酵産生培地を調製した。50mlの発酵産生培地をそれぞれ含む60個の250mlの三角フラスコを用意し、2ml(4.0%)の第2種発酵で植菌し、ジャイロ・ロータリーシェイカー(2”ストローク)を用いて28℃、250rpmでインキュベートした。次に、記載されるように、発酵をおよそ72〜96時間続けて、更なる処理のために回収した。
【0135】
合わせたブロス全部(60×50ml)を3800rpmで30分間遠心分離した。次に、上清を凍結乾燥し、残留粉末を少量(例えば、300ml)のH2Oに懸濁した。その後、この褐色溶液を、暗所にて4℃のH2Oに6LのセファデックスG75を含むガラスカラムに装填した。40mlの画分を各々回収し、生化学的誘導アッセイ(biochemical induction assay:BIA)で試験した。次に、最も濃い(potent)画分を合わせ(15画分、全体で600ml)、凍結乾燥した。次いで、この灰色粉末をH2O(4ml)に溶解し、HPLCによって分析すると、2つの主要なピークを含んでおり、1つがアポタンパク質に対応し、他が色素タンパク質に対応していた。
【0136】
上記の溶液をTosoHaas DEAE 5PWカラム(13um粒径、21.5mm×15cmのサイズ)上で、4ml/分の流速のバッファーシステム(30分間は一定の0.05MのTris−HClを用いた0〜0.5Mの直線勾配NaCl)を用いて、調製用HPLCクロマトグラフィーに供した。アポタンパク質および色素タンパク質のそれぞれのピークを回収し、ピアス・ダイアリシス・カセット(Pierce Dialysis Cassette)(7000MWCO)を用いて脱塩し、凍結乾燥した。次に、得られたアポタンパク質および色素タンパク質の粉末を同じ調製用HPLC条件で再精製し、脱塩し、および凍結乾燥した。色素タンパク質(灰色粉末、10.5mg)およびアポタンパク質(白色の粉末、19.8mg)の最終産物を分析用HPLCによって分析した(それぞれ、図1および図3)。色素タンパク質およびアポタンパク質の紫外線吸収(UV)スペクトルを図2および図4に示す。
【0137】
アポタンパク質の分子量は、MALDI−MSによって12.92409kDaであると測定された。MALDIスベクトルを図5に示す。
【0138】
実施例3
実施例3−接種材料
1リットルの無菌接種材料培地を、下記の成分:5.0g/Lフィトン(BBL)、5.0g/L酵母エキス(Bacto)、40g/L可溶性スターチ、20g/Lグルコース、1.28g/L硫酸マグネシウム・7水和物、0.025M MOPSを用いて、パリロット規模の発酵のために調製した。約1mLの種培養を無菌フラスコに移し、その後、シェーカーに置き、30℃、200rpmでインキュベートした。フラスコの内容物全部を48〜72時間のインキュベーション後に発酵槽に移した。
【0139】
実施例4
実施例4−パイロット規模の発酵
色素タンパク質発酵は、生産菌として、Actinomadura種菌21G792を用いて、100Lのパイロット発酵槽中で行った。下記の培地:グルコース・一水和物、2.75g/L;硫酸鉄・7水和物、0.01g/L;硫酸マグネシウム・7水和物、0.02g/L;炭酸カルシウム(ミシシッピ(商標)ライム)、2.0g/L;マルコー・マルトンJ−1、4.0g/L;酢酸ナトリウム・3水和物、2g/L;ヨウ化カリウム、0.5g/L;プルロニックL−61、0.5g/Lは、純粋で65Lまで調製された。培養液のpHは、硫酸を用いて7.0に調整した。次に、この培地を滅菌し、発酵温度まで冷却し、その後、追加量のグルコース・一水和物(約6g/L)および1リットルの接種材料を発酵槽に移した。
【0140】
発酵温度は、適切な値(30℃)に調節され、細胞増殖および生産を支持し、適切な撹拌、圧力、および給気で行われ、飽和値の20%を超える溶存酸素を維持した。この実施例では、発酵を250rpm、5psig、および30lpmに調節した。
【0141】
バッチを第4日目に集菌した。色素タンパク質の濃度は、集菌時には152mg/Lであった。集菌したマッシュ(mash)は、1Lの遠心分子ボトルを受け入れる遠心分離機による遠心分離によって浄化した。用いた遠心分離条件は、7000rpm、20℃、および20分/サイクルであった。上清は、更に生産物を回収するために集めた。
【0142】
実施例5
実施例5−パイロット規模の発酵
Actinomadura種菌21G792を用いた色素タンパク質発酵は、下記の培地:グルコース・一水和物、8.75g/L;硫酸鉄・7水和物、0.01g/L;硫酸マグネシウム・7水和物、0.02g/L;炭酸カルシウム(Mississippi(商標)Lime)、2.0g/L;マルコー・マルトンJ−1、4.0g/L;酢酸ナトリウム・3水和物、2g/L;ヨウ化カリウム、0.5g/L;プルロニックL−61、0.5g/L中で行った。このバッチを70時間で回収し、約60mg/Lの色素タンパク質を生産した。
実施例6
実施例6−色素タンパク質アッセイ
このアッセイ法は、発酵ブロスのUV吸収成分から色素タンパク質を分離し、色素およびアポタンパク質形態を解析する。機器は、2996PDA検出器、ミレニアム・クロマトグラフィーコントロールおよび分析用ソフトウェアを装備したウォーターズ・アライアンス(Waters Alliance)2695である。カラムは、TOSOH BiosciencesまたはSUPELCOから提供されるTSKフェニル5PW 粒径10μm 7.5×7.5mmである。移動相は、A:1.5M硫酸アンモニウム、20mM Tris pH7.8〜8.3、B:20mM Tris 100mM NaCl pH7.8〜8.3である。作動時間は、流速1mL/分で30分である。検出は、230nmであり、4.8nmバンド幅で200〜400nmの範囲でスペクトルを回収する。勾配溶出は、0〜3分の100%A保持、3〜23分の100%Bまでの直線、23〜24分の100%Aまでの直線、24〜30分までの100%A保持としてプログラムされる。注入量は、100μL以下である。経過途中の試料は、0.45μmでろ過する以外は、さらに浄化せずに適用される。色素タンパク質およびアポタンパク質のピークは、参照の標準的な保持時間およびスペクトルと比較することによって同定される。色素タンパク質については18分、アポタンパク質については20分の保持時間が典型的である。積分された色素タンパク質ピークの定量は、下記:
mg/mL色素タンパク質=希釈因子*(成分領域μV秒×7.55×10−6μg/μV*秒)/注入量μl)
の通りに行う。
【0143】
実施例7
実施例7−色素タンパク質アッセイ
このアッセイ法は、分子サイズに基づいて、発酵ブロスおよび他の汚染タンパク質の他のUV吸収成分から色素タンパク質を分離する。色素タンパク質およびアポタンパク質は、共溶出を形成する。機器は、2996PDA検出器、ミレニアム・クロマトグラフィーコントロールおよび分析用ソフトウェアを装備したウォーターズ・アライアンス2695である。カラムは、BioRadから提供されるBioSil SEC 125、7.8×300mmである。移動相は、A:20mM Tris、100mM NaCl、pH7.8〜8.3である。検出は、230nmであり、4.8nmバンド幅で200〜400nmの範囲でスペクトルを回収する。作動時間は、流速1mL/分で20分である。溶出は、定組成(iosocratic)である。注入量は、100μL以下である。経過途中の試料は、0.45μmでろ過する以外は、さらに浄化せずに適用される。色素タンパク質ピークは、参照の標準的な保持時間およびスペクトルと比較することによって同定される。色素タンパク質については7.8分の保持時間が典型的である。積分された色素タンパク質ピークの定量は、下記:
mg/mL色素タンパク質=希釈因子*(成分領域μV秒×7.55×10−6μg/μV*秒)/注入量μl)
の通りに行う。
【0144】
実施例8
実施例8−生化学的誘導アッセイ
生化学的誘導アッセイは、E.coli BR513−80のSOS応答を誘導するDNA損傷剤を同定する。BR513−80は、λPLプロモータおよびlacZ遺伝子の翻訳融合を含む。λPLプロモータは、DNA損傷剤への曝露後のSOS応答の一部として活性化され、β−ガラクトシダーゼの合成を導く。β−ガラクトシダーゼ活性は、Fast Blue RR塩と反応して、赤/紫色を生じさせる6−ブロモ−2−ナフチル−β−D−ガラクトピラノシド(BNG)の開裂によって検出される。
【0145】
固形培地の基底層は、LBE(Bacto Tryptone 10g/L、酵母エキス 5g/L、NaCl 10g/L、1M Tris Base 5mL/L)、または15g/L寒天、0.2%グルコース、および1/125に希釈した「E」溶液を含む同等物を用いて調製される。(「E」溶液は、5g硫酸マグネシウム・7水和物、50gクエン酸・一水和物、250g二塩基性リン酸カリウム、および87.5gリン酸アンモニウムナトリウムをこの順番で1Lの脱イオン化H2Oに希釈させたものを含む。)約170mlの基底層培地をNunc BioAssayプレートごとに用い、または50mLを150mmペトリディッシュごとに用いる。
【0146】
BR513−80の一晩培養物をLBEブロスまたは同等物で1:20に希釈し、希釈した培養物の吸光度を600nmで測定する。希釈していない培養物の吸光度を算出し、培養物の体積(mL)を得るために5.7をこの値で割り、40mL軟寒天当たりの接種材料として用いる。典型的には、この体積は約0.9〜1.3mLである。算出した培地体積を軟寒天中で混ぜ、基底層(Nunc BioAssayプレート当たり40ml、150mmペトリディッシュ当たり20mL)全面に均一に注ぎ、少なくとも10〜15分間凝固させるようにする。
【0147】
アッセイすべき試料および標準は、軟寒天の表面に直接重層して10μLのアリコートで適用される。有用な標準には、ブレオマイシンが10、5、2.5、および0.31μg/mLで、カリケアマイシンγ1が1000、100、10、1および0.1ng/mLで含まれる。アッセイプレートは、約37℃でおよそ3時間インキュベートされ、SOS応答を誘導する。
【0148】
色素/基質重層は、87mgのファースト・ブルー(Fast Blue)RR塩および13mgのBNGを2mLのDMSOに溶解させ、40mLの溶解した1%軟寒天と混合することによって調製される。インキュベーション時間後、40mLの色素/基質混合物(150mmディッシュについては20mL)をBIAプレートの表面全体に均一に注ぎ、凝固させる。誘導応答を室温で15〜20分後であるかまたは約37℃で10分後にスコアにする。
【0149】
下記は、採点基準を例示する:4+ 円形 20−25mm 赤/紫色の誘導ゾーン、透明な中心領域の有無;3+ 円形 15−20mm 赤/紫色の誘導ゾーン、透明な中心領域の有無;2+ 10−15mm 赤/紫色の誘導ゾーン、透明な中心領域の有無;1+ 淡い赤色のゾーン、透明な中心領域の有無;T 毒性ゾーン(細菌が死滅した透明領域および色の変化なし);N/R 赤/紫色の誘導ゾーンなし;透明な毒性ゾーンなし
実施例9
実施例9−色素タンパク質の精製
この実施例は、およそ90%純粋なBIA活性色素タンパク質を単離するための測定可能な精製プロセスを提供する。このプロセスによって単離された化合物をSDS−ゲル電気詠動移動、UVスペクトル、並びにサイズ排除および疎水性相互作用分析用カラムの両方を用いるHPLC保持時間により分析した。発酵条件は、色素タンパク質生産のために最適化しなかった。
【0150】
浄化した発酵ブロスの350mLから色素タンパク質は、DEAEセファロースFFイオン交換クロマトグラフィー、フェニルセファロースHP疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびスーパーデックス75サイズ排除クロマトグラフィーからなる測定可能な3工程手順を用いて精製された。それぞれ約61、69および82%の工程収率は、結果として全体で色素タンパク質の30%のプロセス回収をもたらし、約90%純粋であり、この材料の残部は不活性なアポタンパク質である。
【0151】
DEAEセファロースFF陰イオン交換−クロマトグラフィー装填物は、360mLの浄化したブロスに7mLの1M Tris pH8.3の添加によって調製された。次に、この装填物は、5カラム容積の20mM Tris pH8.3で平衡にした5mL HiTrap DEAEセファロースFFカラムに流速10mL/分で適用された。吸光度を230、280および310nmでモニターした。カラムの流出物を単一分画として回収した。吸光度が基準に達するまで、20mM Tris pH8.3を用いてカラムを洗浄した。色素タンパク質種は、10CV(2CVの5分画として回収した;表6、D1〜D5を参照されたい)において0.25M NaCl、20mM Tris pH8.3に移動相を進めることによって溶出させた。第2溶出段階は、1M NaCl、20mM Tris pH8.3を用いて行い、カラムを洗浄した。図18は溶出プロフィールを示す。
【0152】
フェニルセファロースHPクロマトグラフィー−クロマトグラフィー装填物は、10.6gの硫酸アンモニウムを第1段階の保存溶出物47.5mLに添加して調製し、硫酸アンモニウムの濃度を1.5Mにした。装填物の体積(硫酸アンモニウムを添加後)を算出すると53.7mLであった。装填物のpHは、硫酸アンモニウムを添加後に、1mLの1M Tris pH8.3を用いて7.8から8.06に上昇させた。透明な茶色の溶液は、0.45μmのナイロンシリンジフィルター(2.3cm径)を通過させて簡単にろ過し、52.7mLを5mL HiTrapフェニルセファロースHPカラムに5mL/分で適用した。カラムを5CVの1.5M硫酸アンモニウム、20mM Tris pH8.2で予め平衡にした。吸光度を230、280および310nmでモニターした。色素タンパク質のアポタンパク質から分離が、100mM NaCl、20mM Tris pH8.2に対して、20CVの直線勾配溶出全体で起こる。単一のCV分画を勾配を通して回収し、UV吸収による色素タンパク質ピークとして選ばれた2つの分画(表6ではP9〜P10で示される)を貯めた。色素タンパク質は、アポタンパク質の前に溶出し、2つのピークは2CVによって分離されている。図19は、溶出プロフィールを示す。
【0153】
スーパーデックス75クロマトグラフィー−硫酸アンモニウムを9.5mlのフェニルセファロースプールに添加し、80%の濃度(560g固体/1Lのフェニルセファロースプール)にした。硫酸アンモニウム添加後に形成した沈殿物を1インチ径の0.45μmナイロンシリンジフィルター上に捕捉し、1mLの20mM Tris、100mM NaCl pH8.2を用いて固体の抽出を繰り返すことによって回収した。抽出物の0.8mL部分は、40mM Tris 200mM NaClに平衡にしたスーパーデックス75カラムに適用し、回収した1mL分画を用いて、1.5CV全体で溶出させた。吸光度は、流速0.5mL/分で230、280および310nmでモニターされた。色素タンパク質プール(3ml)を3つの分画として選択し、表6ではS6〜S8として示した。図20は、溶出プロフィールを示す。
表6
パイロット規模の発酵ブロスからの色素タンパク質およびアポタンパク質の収量
【0154】
【表6A】
【0155】
【表6B】
表7
色素タンパク質の経過途中の回収率
【0156】
【表7】
各精製段階でおよび全過程で回収した色素タンパク質の量を表7に示す。最終純度は、分画S6に関する2つのHPLC技術(フェニル5PWおよびBioSil SEC125)によって評価された(図20)。結果を図21および22に示し、色素タンパク質調製物には10%のアポタンパク質を含んでいる。また、各段階での純度は、クーマシー染色を用いたSDS−PAGEによって示される(図23および24)。1本のバンドが最終プールについて観察される(図24、レーン3)。
実施例10
実施例10−発色団類の分離および構造解明
ハロゲン化物を含む、Actinomadura種21G792の発酵培養物を調製した。色素タンパク質は、順次適用およびDEAEセファロースFF、フェニルセファロースFF、およびスーパーデックス75クロマトグラフィーカラムから活性分画の回収によって、浄化した発酵ブロスから得た。活性分画ピークAおよびBへの色素タンパク質ならびに不活性なアポタンパク質ピークの分離は、1.5M硫酸アンモニウムからできている結合バッファーおよび0.1M NaClのプログラムされた20CV勾配終了を用いてフェニルセファロース工程中にもたらされた(図25)。3つのピークはクロマトグラフで同定され(図25)、各ピークに対応する分画をプールした。各分画に存在するエンジイン発色団は、Jupiter C4 300A 4.6×250mmカラム(Phenomenex)を用いた逆相クロマトグラフィーによって分析された。この方法は、色素タンパク質溶液のアポタンパク質担体成分からアセトニトリル有機変性剤を用いたエンジインのインライン抽出に依存している(図26)。ピークAは、2つの発色団種(発色団−cおよび発色団−d)を生じ、一方、ピークBは、単一の発色団種(発色団−b)を生じた。
【0157】
3つの発色団種の全てが単離され、それらのHRMSおよびNMRデータを回収した。推定構造は、さらに、高分解能MS/MS断片化データによって確かめられた。(図6)。発色団−cおよび−dは、可能性としては、ジラジカルへのシクロ芳香族化、続くプロトン化および脱水和(水の喪失)に起因する発色団−bの分解産物である。発色団−cおよび−dが、単離中に生産される加工物でないことを確かめるために、粗活性画分混合物のLC−NMRも行った。LC−NMRからのNMRデータは、推定構造と一致している。
実施例11
Actinomadura種21G792遺伝子クラスター
実施例11−Actinomadura種21G792アポタンパク質のDNA単離および配列決定
Hopwoodら(1985),Genetic manipulations of Streptomyces.A Laboratory Manual.Norwich:John Innes Foundationに記載の手順を改良して、ゲノムDNAをActinomadura種21G792から単離した。10mlのMYM培地(4g/lマルトース、4g/l酵母エキス、10g/l麦芽エキス、pH7.0)および2〜6mmガラスビーズを含む25mm×150mmの種試験管におよそ1mlの凍結菌糸体グリセロールストックを植菌した。この培養物を28℃、200rpmで5日間増殖した。次に、これらの細胞を3000xgで10分間遠心分離によりぺレット化した。上清を捨て、ペレットを5mg/mlリゾチームおよび0.1mg/ml RNaseを含む300μlのT50−E20(Tris50mM−EDTA−20mM)に懸濁し、37℃で1時間、15分毎に穏やかに混合しながらインキュベートした。その後、50μlの10%SDSを添加し、試料を完全に混合した。次に、85μlの5mM NaClを添加し、試料を再度完全に混合した。次いで、試料を400μlフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(50/49/1)を用いて抽出した。試料を完全にボルテックスした後、10,000xgで20分間室温で遠心分離した。遠心分離後、水相を取り出し、新しい微小遠心管に入れた。等体積の室温イソプロパノールを試料に添加し、反転により完全に混合した。試料を室温で5分間放置した。次に、試料を12,000xgで30分間、4℃で遠心分離した。イソプロパノールを試験管から注意深く注ぎ出し、DNAペレットを1mlの低70%エタノールでリンスした。氷中に5分間放置した後、70%エタノールを試験管から注ぎ出し、DNAを10分間、空気乾燥させた。DNAを0.3mlの滅菌水に溶解させた。DNAの完全性および濃度は、アガロースゲル電気泳動によって評価された。
【0158】
Escherichia coli;プラスミドおよび小規模コスミドDNA調製:製造者の仕様書に従って、キアプレップ・スピン・ミニプレップキット(Qiaprep Spin MiniPrep Kit)(Qiagen Inc,カリフォルニア州ヴァレンシア(Valencia,CA),米国)を用いて、プラスミドDNAおよび小規模コスミドDNA調製を行なった。コスミド:製造者の仕様書に従って、キアゲン・ラージ・コンストラクトキット(Qiagen Large Construct Kit)(Qiagen Inc,カリフォルニア州ヴァレンシア,米国)を用いてコスミドDNAを単離した。
【0159】
製造者の仕様書に従って、pWEBコスミド・クローニングキット(Cosmid Cloning Kit)(Epicentre Technologies,ウィスコンシン州マディソン(Madison,WI),米国)を用いてActinomadura種21G792ゲノムライブラリーを構築した。一般的なライブラリー構築の手順は以下の通りである。10μgのゲノムDNAをハミルトン(Hamilton)HPLC/GCシリンジを通過させて、30〜45kbの断片に無作為に分断した。分断後、該キットに含まれる末端修復酵素の混合物を用いて、断片化したDNAの末端修復し、平滑末端にした断片を生成した。次に、直鎖T7 DNA(約40Kb)を用いて1%低融点アガロースゲル上で、分子量マーカーとして機能するように、分断および末端修復したDNAを分離した。T7 DNAとほぼ等しいサイズのゲノムDNAをゲルから切り取り、このDNAをアガロースから溶離した。次いで、精製したDNAをpWEBベクターに連結した。連結後、pWEBコスミド・クローニングキットに提供されるマックスプラックス・ラムダ・パッケージング・エクストラクツ(MaxPlax Lambda Packaging Extracts)を用いて、該連結挿入DNAをラムダファージ粒子にパッケージ化した。次に、ファージ抽出物のタイターを測定し、1ミリリッター当たりのコロニー形成単位を決定した。ファージ抽出物のタイターを決定後、適量の抽出物を用いて、E.coli EPI100宿主細胞を感染させ、感染した細胞は、50μg/mlのカナマイシンを含むDifco Luria寒天プレートに置き、プレート当たりおよそ200コロニーの細胞密度を得た。
【0160】
ライブラリースクリーニング戦略および方法;dNDP−グルコース−4,6−デヒドラターゼプローブ生成。一般に、特定の抗生物質を産生する必要がある遺伝子は、産生する生物のゲノムにおいてクラスター化される。さらに、アポタンパク質遺伝子を対応する発色団の生合成経路に関与するタンパク質をコードする遺伝子でクラスター化する必要がある(Liuら,2002,Science 297:1170−3)。Actinomadura種21G792により産生された発色団は、エンジインコアに結合するアミノ糖4−アミノ−4−デオキシ−3−C−メチル−β−リボピラノースを含む。dNDP−D−グルコース−4,6−デヒドラターゼ(DH)は、この糖の生合成の一工程を触媒するが期待されるため、DHプローブを用いて生合成クラスターを単離した。
【0161】
DHプローブを生成するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、Actinomadura種21G792のゲノムDNA由来のDH遺伝子断片を増幅した。期待される約500bpのDH遺伝子断片(デヒドラ1:5’−CSGGSGSSGCSGGSTTCATSGG(配列番号152)およびデヒドラ2:5’−GGGWRCTGGYRSGGSCCGTAGTTG(配列番号153))のためのプライマーは、Deckerら,1996,FEMS Microbiol.Lett.141,195−201に記載されるものと同一であった。ジャンプスタート(JumpStart)REDTaqレディー・ミックス(Ready Mix)PCRリアクション・ミックス(Reaction Mix)(Sigma−Aldrich Corp,ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))を製造者の仕様書に従って用いてPCRを実施した。これらのプライマーは、0.5μMの最終濃度で用いた。PCRは、Biometra T勾配サーモサイクラーで行なった。開始の変性温度は、4分間96℃であった。その後の30サイクルは次の通りであった:変性温度96℃(45秒)、アニーリング温度66℃(45秒)、伸長温度72℃(3分)。最後に、最終伸長温度は10分間72℃であった。
【0162】
トポ(TOPO)TAクローニングキット(Invitrogen Corp,カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))を製造者が推奨するとおりに用いて、約500bpのアンプリコンをpCR2.1にクローニングした。クローニング反応物の一部(2.5μl)を用いてE.coli TOP10細胞(Invitrogen Corp,カリフォルニア州カールズバッド)を形質転換し、その後、組換えクローンの青/白スクリーニングを容易にするために、それらを50μg/mlカナマイシン、40μg/ml X−galおよび0.2mM IPTGを含むDifco Luria Agar上に置いた。20個の白コロニーを採取して、それらのプラスミドDNAを単離した。これらのクローンの配列決定により、2種のDH遺伝子断片がクローン化されたことが明らかになった。推定されるアミノ酸配列の比較により、1つのDH断片(プラスミドp34598に含まれる)がカリケアマイシン生合成に関与するDHに最も類似していることが明らかになった。カリケアマイシン構造は2つのアミノ糖を含むため、p34598に含まれるDH断片もアミノ糖の産生に関与している可能性があり、そのため、色素タンパク質遺伝子クラスターのプローブとして選ばれることが予測された。
【0163】
コロニーハイブリダイゼーション:p34598DH断片を用いたコロニーハイブリダイゼーションで、Actinomadura種21G792ゲノムライブラリーをスクリーニングした。SambrookおよびRussell(2001)、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(3rd ed.)に記載されるように、組換えコロニーDNAをNytran SuPerChargeナイロン膜ディスク(Schleicher & Schuell BioScience,Inc.,ニューハンプシャー州キーン(Keene,NH))に移した。PCRおよびプライマー(デヒドラ1およびデヒドラ2)を用いてp34598の挿入部分を増幅してDHプローブを調製した。この増幅されたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分離し、530bp断片をアガロースから単離した。次に、Megaprime DNA Labelingキットを製造者の仕様書(Amersham Bioscience,ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway,NJ))に従って用いて、この断片を[α−32P]dCTP(3000Ci/mmol Amersham Bioscience,ニュージャージー州ピスカタウェイ)で標識した。DNA試料が固相化されたナイロンメンブレンを6×SSCで洗浄し、次に、予め温めた(65℃)プリハイブリダイゼーション溶液(6×SSC/5×デンハート試薬/0.5%(w/v)SDSおよび100μg/mlの変性分断ニシン精子DNA)を含むハイブリダイゼーションボトルに入れ、2時間「プレハイブリダイズ」した。その後、変性プローブを添加し、65℃で一晩ハイブリダイゼーションを続けた。翌日、上記メンブレンを、一度、予め温めた(65℃)2×SSC/0.1%SDS(洗浄液1)を用いて1時間洗浄し、さらに、一度、予め温めた(65℃)1×SSC/0.1%SDS(洗浄液2)を用いて1時間洗浄した。次に、このナイロンメンブレンをサランラップに包み、コダック(Kodak)X−omat ARフィルムに4時間露光した。この露光したフィルムをコダックX−omat 2000Aプロセッサーを用いて現像した。22個のコロニーがプローブにハイブリダイズしたことが分かった。これらのコロニーを採取して、50μg/mlカナマイシンを含むDifco Luriaブロスで増殖させた。この培養物からコスミドDNAを精製し、Not Iで切断した。制限消化物をアガロースゲル電気泳動により分離し、SambrookおよびRusse11(2001)に記載されるように、DNAをNytran SuPerChargeナイロンメンブレンに移した。コロニーハイブリダイゼーションで用いた条件と同じ条件で、p34598インサートを再度プローブとして用いてこのメンブレンを探査した。9個のコスミドがプローブに明確にハイブリダイズした。このプローブにハイブリダイズしたコスミドおよび適切なサイズの断片は次の通りであった:21gB:15〜20kb、21gC:15〜20kb、21gD:8〜12kb、21gF:15〜20kb、21gG:3〜4kb、21gI:1.2〜2.5kb、21gK:15〜20kb、21gL:2.5〜3kb、21gV:2〜2.5kb。
【0164】
アポタンパク質特異的オリゴヌクレオチドプローブハイブリダイゼーション:エドマンタンパク質配列決定を用いて、アポタンパク質の最初の38個のアミノ酸残基であるN末端DTVTVNYDDVGYPSDIAVTIDAPATAGVGDTATFEVSV(配列番号154))を決定した。どのコスミドがアポタンパク質遺伝子配列を含むのかを確実に特定するために、アポタンパク質N末端の38個のアミノ酸(aa)配列の4〜12番目の残基に基づく変性オリゴヌクレオチドをプローブとして用いてハイブリダイゼーション実験を行なった。具体的には、このオリゴヌクレオチドの配列は、5’−ACSGTSAACTACGACGACGTSGGNTAC(配列番号155)であった。
【0165】
DHプローブにハイブリダイズしたコスミドをNot Iで消化し、ナイトラン・スーパーチャージ(Nytran SuPerCharge)ナイロンメンブレンに移した。キナーゼマックス5’−エンド−ラベリングキット(KinaseMax 5’End−Labeling Kit)を製造者(Ambion Inc.,テキサス州オースティン(Austin,TX))の推奨する通りに用いて、このオリゴヌクレオチドを[γ−32P]dATP(6000Ci/mmol;Amersham Bioscience,ニュージャージー州ピスカタウェイ)で末端標識した。製造者の使用説明書(Ambion Inc.,テキサス州オースティン)に従ってヌクアウェイ・スピン・カラムキット(NucAway Spin Column Kit)を用いて、組み込まれなかった放射性ヌクレオチドを除去した。6×SSC、5×デンハート試薬、0.05%ピロリン酸ナトリウム、0.5%SDSおよび100μg/mlの分断変性サケ精子DNAを含む溶液で、DNA担持ナイロンメンブレンを3時間50℃で「プレハイブリダイズ」した。この工程に続いて、プレハイブリダイゼーション溶液を6×SSC、0.5%リン酸ナトリウム、1×デンハート試薬および100μg/ml酵母tRNAを含む7mlの予め温めた(50℃)ハイブリダイゼーション溶液と交換した。標識したプローブをこの溶液に添加し、ハイブリダイゼーションを50℃で22時間インキュベートした。次に、そのハイブリダイゼーション溶液を捨て、メンブレンを20mlの室温TMACL洗浄バッファー(3M TMACL、50mM Tris、0.2%SDS)で簡単にリンスした。次に、さらに50mlの予め温めた(67℃)TMACL洗浄バッファーを用いて55分間67℃で洗浄した。最終の洗浄として、50mlの予め温めた(50℃)洗浄液1を用いて10分間50℃でメンブレンを洗浄した。次いで、メンブレンをサランラップに包み、コダックX−omat ARフィルムに24時間露光した。
【0166】
コスミド21gD、21gGおよび21gKがプローブにハイブリダイズした。21gDおよび21gKのDNAを含むレーンで約4.5kbのシグナルを観察し、21gGのDNAを含むレーンで、約5.2kbのシグナルを観察した。このハイブリダイゼーションの結果を確認するために、21gDコスミドDNAをアポタンパク質の98bp断片を増幅するように設計されたテンプレートおよび変性PCRプライマーとして用いてPCRを行なった。PCRプライマーCP−FWD3(5’−ACSGTSAAYTAYGAYGAYGT;配列番号156)およびCP−REV4(5’−ACYTCRAASGTSGCSGTRTC;配列番号157)は、アポタンパク質の36aa配列から推定された逆方向翻訳されたDNA配列を用いて設計された。ジャンプスタートREDTaqレディー・ミックスPCRリアクション・ミックス(Sigma−Aldrich Corp,ミズーリ州セントルイス)を製造者の仕様書に従って用いてPCRを行なった。これらのプライマーは2.0μMの最終濃度で用いた。PCRは、Biometra T勾配サーモサイクラーで行なった。開始の変性温度は、4分間96℃であった。その次の5サイクルは次の通りであった:変性温度96℃(45秒)、アニーリング温度40℃(45秒)、伸長温度72℃(2分)。次の30サイクルは以下の通りであった:変性温度96℃(30秒)、アニーリング温度55.7〜72.0℃(45秒;範囲内で8つの温度をテストした)、伸長温度72℃(2分)。最後に、最終伸長温度は10分間72℃であった。これらの条件でいくつかのバンドが生成された;しかしながら、55.7℃、58.6℃および61.4℃のアニーリング温度を用いると、およそ100bpの強いバンドが生成された。トポTAクローニングキット(Invitrogen Corp,カリフォルニア州カールズバッド)を製造者が推奨する通りに用いて、約100bpのアンプリコンをpCR2.1にクローニングした。クローニング反応物の一部(2.5μL)を用いてE.coli TOP10細胞(Invitrogen Corp,カリフォルニア州カールズバッド)を形質転換し、その後、組換えクローンの青/白スクリーニングを容易にするために、それらを50μg/mlカナマイシン、40μg/ml X−galおよび0.2mM IPTGを含むDifco Luria Agar上に置いた。10個の白コロニーを採取して、それらのプラスミドDNAを単離した。これらのクローンの配列決定により、4個のクローン(p35546、p35547、p35550、p35554)は、推定されるアミノ酸配列が36aaアポタンパク質断片の配列と正確に一致するDNAに含まれていることが明らかになり、これにより、アポタンパク質をコードする遺伝子がコスミド21gDに含まれていることが確認された。
【0167】
コスミド21gDにおける完全なアポタンパク質DNA配列の解明。アポタンパク質をコードする遺伝子の全配列を決定するために、上記で増幅した98bpのPCR産物のDNA配列から配列決定プライマーを設計した。コスミド21gDをテンプレートとして用いる初回の配列決定には次のプライマーを用いた:ApoSeqCode1:5’−GGCTACCCGTCGGACATCG(配列番号158);ApoSeqCode2:5’−GGACATCGCCGTGACCATCG(配列番号159);ApoSeqComp1:5’−CCGGCGCGTCGATGGTCAC(配列番号160);ApoSeqComp2:5’−CTCGAAGGTGGCGGTGTC(配列番号161)。
【0168】
初回目の配列決定では、約1440bpの配列を生成した。コドン選択プログラムを用いて、小さな498bp読み取り枠(open reading frame:ORF)を同定した。このorfの推定されたアミノ酸配列と、Actinomadura種21G792アポタンパク質の部分アミノ酸配列(エドマンタンパク質配列決定法により決定)とを比較し、これらの2つのアミノ酸配列が同一であったため、このORFがアポタンパク質をコードすることが確認された。さらに、推定されたアミノ酸配列の分子量12926Daは、高解像度MALDI MSにより決定されたアポタンパク質の分子量12924.09と良好に一致していた。また、アポタンパク質のDNA配列は、さらに、アポタンパク質をコードするorf(aseAと示す)の側面に配置したプライマーを用いた両方のDNA株の広範囲な配列決定によって確認した。
【0169】
リーダーペプチドおよびアポタンパク質を含むプレアポタンパク質の推定されたアミノ酸配列は、配列番号64に提供される。プレアポタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、配列番号63に提供される。アポタンパク質の推定されたアミノ酸配列は、配列番号150に提供される。アポタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、配列番号149に提供される。最後に、プレアポタンパク質のDNA配列、対応するアミノ酸配列、推定された上流のリボソーム結合部位、およびリーダーペプチドとアポタンパク質との間の境界部位を記載する図を図7に提供する。
実施例12
実施例12−Actinomadura種21G792色素タンパク質の生合成クラスターの残りのDNA単離および配列決定
Actinomadura種21G792アポタンパク質遺伝子クラスターの遠位配列の同定。Actinomadura種21G792アポタンパク質遺伝子クラスターのコスミド21gDに存在する部分に隣接する配列を下記に記載するように同定した。コスミド21gDとともに、これらの配列が、Actinomadura種21G792色素タンパク質の生合成クラスター全体、すなわち、色素タンパク質のアセンブルに関与する遺伝子を実質的に構成する考えられる。読み取り枠の位置は表1に特定している。GenBank配列寄託物を比較することで、コードされたタンパク質の機能が推定された(表3)。読み取り枠の構成を図8に示している。
【0170】
まず、プライマー21gDpr1FWD(5’−GCTCGTCGGGTTCTTCTAC;配列番号162)および21gDpr1REV(5’−GACTTCGCGATAGCTCTC;配列番号163)を用いて、タイプIIのペプチドシンテターゼ縮合ドメイン(orf20;図7)の一部を含むコスミドの端部の904bp断片を増幅することによりコスミド21gDからプローブを生成した。PCR増幅は、製造者の推奨に従って5%DMSOを含むKODポリメラーゼ(Novagen)を用いて行なった。プライマーは、0.5mMの濃度で用いた。コスミド21gDはテンプレートDNAとして用いた。サイクル条件は次の通りであった:96℃、2分間を1サイクル、次に、96℃、1分間、61.2℃、1分間、および72℃、2分間を30サイクル、その後、72℃、10分間を1サイクル。アガロースゲル電気泳動によりPCR反応を調べ、904bpのバンドを先に記載したようにアガロースから溶離した。4,6−デヒドラターゼプローブについて先に記載したように、904bpのアンプリコンを用いてActinomadura種21G792ゲノムコスミドライブラリーを調べた。このプローブにハイブリダイズした38個のコロニーを培養し(50μg/mlのカナマイシンを含む5mlのDifco Luriaブロス)、コスミドDNAを精製した。pWEBベクターに含まれる配列決定プライマー部位を用いて、精製されたコスミドの末端配列を決定した。DNA配列の分析では、1つのコスミド(41417)がコスミド21gDと1184bp重複することが示された。その後、コスミド41417の全体について配列を決定し、読み取り枠を同定し、コードされたタンパク質の機能を推定した。
【0171】
(コスミド21gDを同定するために用いた)p34598でクローニングされた推定dNDP−D−グルコース−4,6−デヒドラターゼ断片にハイブリダイズした先に同定されているコスミドをスクリーニングしてコスミド21gDの他端から遠位にある生合成クラスターの部分を同定した。これらのコスミドは、コスミド21gDの5’末端の1043bp産物(産物は、完全な生合成クラスターの70,572〜71,614番目のヌクレオチドに対応する)を増幅するように設計されたPCRプライマーを用いてスクリーニングした。プライマー21gDendFWD(5’−GCGACGAAGGACCCGAAGG;配列番号164)および21gDendREV(5’−CACGCTGGCCCGCCCCTTC;配列番号165)を用いて各コスミドをスクリーニングしたが、標準的な25μlのPCR反応物(KOD Hot Startポリメラーゼ;Novagen,カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA),米国)において、0.5μMの各プライマーとともに、10〜100ngの各コスミドをテンプレートとして用いた。期待される1043bpのDNA断片の増幅を支持するコスミドは、コスミド21gBおよび21gCだけであった。これらコスミドの末端配列決定により、コスミド21gBがコスミド21gDと17,411ヌクレオチド重複し、コスミド21gCはコスミド21gDと22,796ヌクレオチド重複していることが明らかになった。コスミド21gBは、知られているクラスター配列との重複がより少なく、それにより、コスミド21gCよりも配列伸長が長くなる可能性がより高いことを示したため、配列決定用に選ばれた。配列決定により、コスミド21gBが、18,442bpの配列伸長を示した33,133bpの挿入部分を含んでおり、塩基対の総数が90,573に決定されることが明らかになった(図8)。前述同様に、コスミドを配列決定し、読み取り枠を同定し、コードされたタンパク質の機能を推定した。
実施例13
21G792色素タンパク質の生物学的特性
実施例13−インビトロ抗腫瘍活性
p53/p21チェックポイントにより、ゲノムの完全性を監視し、DNAが損傷した場合に細胞周期の進行を阻害する。p21遺伝子の欠失によるチェックポイントが分裂すると、結果的に、DNA損傷に応じて阻止できなくなり、最終的にはアポトーシスによる細胞死に繋がる。このチェックポイントが無くなることは癌細胞の特徴であるため、一対の細胞株(p21+/+)が損傷していないp21遺伝子有し、1つのメンバー(p21−/−)がp21遺伝子に欠失を有する同系統の細胞株の対を用いて、p21が欠損した細胞においてアポトーシスを選択的に誘発する分子を同定することにより、潜在的な抗腫瘍化合物についてスクリーニングすることができる。
【0172】
Actinomadura種21G792色素タンパク質を同系統の細胞株の対(p21+/+およびp21−/−)に添加した。表8に示すように、色素タンパク質は、p21−/−細胞に非常に選択的であり、これは、p21+/+細胞に対して、IC50が13倍高いためである。また、表9に示すように、色素タンパク質は、ヒト腫瘍細胞株パネルにおいて優れた効力を示し、これは、IC50が1〜47ng/mlの範囲にあるためである。しかしながら、アポタンパク質だけは不活性であった。
表8
Actinomadura種21G792色素タンパク質に対するP21−/−細胞の感受性
【0173】
【表8】
表9
ヒト腫瘍細胞株に対するActinomadura種21G792色素タンパク質の効力
【0174】
【表9】
実施例14
実施例14−色素タンパク質により誘導されるDNA損傷
Trevigen,Inc.から入手したCOMETアッセイを用いてDNA損傷を検出した。HCT116 p21+/+および−/−細胞を種々の量の21G792色素タンパク質およびミトザントロンに晒した。図27に示すように、色素タンパク質により誘導される用量依存的なDNA鎖崩壊は、p21が豊富な細胞およびp21が欠損した細胞の両方において、>100ng/mlの濃度で発生する。
【0175】
実施例15
実施例15−色素タンパク質により誘導されるDNA開裂
超らせんφX174 DNAを、種々の濃度の21G792色素タンパク質でインキュベートし、ゲル電気泳動で分析した。色素タンパク質が一本鎖崩壊および二本差鎖崩壊を誘導し、その反応が24時間継続し続け、カリケアマイシンとは異なり、DNA開裂に還元剤(ジチオスレイトール、DTT)が必要とされないことが観察された。ゲル電気泳動を図28に示す。ニックとはDNAの一本鎖崩壊を意味し、線状とは二本鎖切断を意味する。
【0176】
実施例16
実施例16−色素タンパク質によるヒストンH1の消化
色素タンパク質エンジインがヒストンを開裂することは先に示したが(Zeinら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90,8009−12;Zeinら,1995,Chem & Biol 2,451−5;Zeinら,1995,Biochem 34,11591−7)、この活性については議論の余地があるが(Heydら,2000,J.Bacteriol.182,1812−8)、アポタンパク質のタンパク質分解活性によるものと考えられていた。種々の濃度の色素タンパク質を用いて、50mMのTris−Cl、pH7.5、37℃で一晩ヒストンH1をインキュベートした。(図29)SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行なった後に、ゲルコード・ブルー(GelCode Blue)(Pierce Biotechnology,Inc,イリノイ州ロックフォード(Rockford,IL))によりゲルを染色してヒストンの消化を評価した。ヒストンH1の消化は、DNAの添加により阻害されが、これは、DNA開裂に必要なメカニズム(例えば、フリーラジカルに基づくメカニズム)と同じメカニズムがタンパク質の消化にも関与していることを示す。これに合わせて、フリーラジカルスカベンジャー、30mMのグルタチオンまたはN−アセチルシステイン(図示せず)の添加により、ヒストンの消化が阻害されたが、プロテアーゼ阻害剤を加えても阻害されなかった。タンパク質を含まないエンジインであるカリケアマイシンは、ヒストンH1を開裂しなかったが、これは、この活性には、無傷の発色団−タンパク質複合体が必要であることを示している。
実施例17
実施例17−色素タンパク質による消化の特異性
色素タンパク質によるヒストンの消化の選好順序は、H1>H2A>H2B>H3>H4である(図30)。また、色素タンパク質は、ミエリン塩基性タンパク質などの他の塩基性タンパク質を開裂するが、ウシ血清アルブミンなどの中性/酸性タンパク質は開裂しない。このことは、ヒストン開裂活性に発色団のアポタンパク質成分が必要であることを説明し得る:酸性アポタンパク質は、静電相互作用により、ヒストンおよび他の塩基性タンパク質に発色団を送達し、発色団がフリーラジカルに基づくメカニズムにより塩基性タンパク質を開裂できるようにすることができる。
【0177】
実施例18
実施例18−色素タンパク質によるHeLa細胞内のヒストンH1の消化
色素タンパク質によるヒストンの消化が無傷な細胞内で発生するかどうかを調べるために、化合物を用いて一晩37℃でHeLa細胞をインキュベートした。抗ヒストンH1抗体(Santa Cruz Biotechnologies)を用いたSDS−PAGEおよびタンパク質イムノブロットにより細胞溶解物を分析した。細胞を色素タンパク質でインキュベートした結果、細胞内のヒストンH1が減少した(図31)。ブレオマイシン、別のDNA損傷剤、またはカリケアマイシンでは効果が見られなかった。これは、色素タンパク質が無傷な細胞内でヒストンを消化できること示している。この活性は、染色質内のヒストンを消化し、DNAをより開裂し易くすることで抗腫瘍効果に寄与することが可能である。これは色素タンパク質エンジインに固有の活性であると思われる。
【0178】
実施例19
実施例19−G1/Sチェックポイントの色素タンパク質誘導
HCT116(p21+/+およびp21−/−)細胞を種々の濃度で色素タンパク質に晒した。図32Aに示すように、色素タンパク質に晒した結果、全てのテスト濃度についてp53チェックポイントが活性化した。p21タンパク質の誘導は、p21+/+細胞にしか見られなかった。Actinomadura種21G792色素タンパク質によるDNA損傷チェックポイントの活性化は、p53タンパク質の転写活性化にとって重要であることが知られているp53内のセリン−15アミノ酸残基のリン酸化反応を実証することにより確認された(図32B)。さらに、ポリADPリボースホスホリラーゼ(PARP)の開裂により示されるように、Actinomadura種21G792色素タンパク質を用いて処理した場合、アポトーシスの誘導は、p21+/+細胞と比較して、p21−/−細胞において選択的に観察された(図23B)。このことは、p21−/−細胞のIC50の値がより低いことと一致する。
【0179】
実施例20
実施例20−色素タンパク質種の活性
2つの実験では、ピーク「A」(発色団−cおよび−dを含む色素タンパク質)、ピーク「B」(発色団−bを含む色素タンパク質)および全ての色素タンパク質のアイソフォームの調製物の活性は、HCT116結腸癌腫細胞および80S14細胞(HCT116のP21−/−変異体)において測定された。発色団cの効力(発色団−dは有意な活性はない)は、常に、発色団bの効力の約3分の1であった。発色団−bと−cの両方について、アポタンパク質の誘導は、p21+/+細胞と比較して、p21−/−細胞において選択的に観察された;表10を参照されたい。
表10
色素タンパク質調製物の活性
【0180】
【表10】
実施例21
実施例21−インビボ抗腫瘍活性
ヒト腫瘍細胞株または断片LoVo(結腸癌);HCT116(結腸);HT29(結腸);LOX(メラノーマ);HN5(頭部および頸部);およびPC−3(前立腺)を無胸腺(ヌード)マウスの皮下に移植し、腫瘤の形成を可能にした。腫瘍が90〜200mgの大きさに達したときに、生理食塩水調節ビヒクルまたは生理食塩水中で作成した種々の濃度のActinomadura種21G792色素タンパク質をマウスの静脈内に投与した。マウスは、5日目および9日目に、さらに投与を受け、相対的な腫瘍の成長が観察された。その結果を図33および図34のグラフに示す。色素タンパク質を受けたマウスについては、最大80%の腫瘍成長の阻害が観察された。
【0181】
実施例22
実施例22−色素タンパク質の毒性
毒性試験により、骨髄抑制を除いて、Actinomadura種21G792色素タンパク質はヌードマウスにおいては良好な耐容性を示すことが示唆されている。具体的には、1、5、および9日目に、生理食塩水調節ビヒクルまたは種々の服用量の色素タンパク質を6匹のヌードマウスの静脈内に投与した。マウスの顕微鏡試験により、色素タンパク質を受けた全てのマウスが骨髄壊死を示し、最大量の色素タンパク質を受けたマウスは最も重い病変を生じることが示された。臨床病理学実験により、最大量の色素タンパク質を受けたマウスは、白血球およびリンパ球の数が最も少なかったことが明らかになった。しかしながら、腸、神経、脊髄、肝臓または注射部位には有害な作用は観察されなかった。顕微鏡所見および臨床病理学的要約を表11および12に提供する。
表11
顕微鏡所見要約
【0182】
【表11】
表12
臨床的病理学
【0183】
【表12】
実施例23
実施例23−P−GP(MDR−1)による色素タンパク質の輸送
ヒトPGP(MDR1)は、細胞膜を横切る多数の薬物を輸送することができるATP依存性排出ポンプである。このタンパク質の高発現は、腫瘍の多剤耐性に関連づけられている。表13に示すように、Actinomadura種21G792色素タンパク質は、乏しいMDR1基質であり、臨床的に関連するレベルのMDR1を発現する細胞(KB−8−5細胞)は、前記複合体に対する感受性を維持する。とりわけ、タンパク質成分を有さないカリケアマイシンは、MDR1にとって良好な基質である。色素タンパク質のタンパク質成分は、MDR1によって媒介される薬物流出から発色団を恐らくは保護し、多くの場合、MDR1を発現する結腸細胞株において有益な抗腫瘍効果に関与し得る。
表 P−GP発現細胞E13に対するActinomadura種21G792発色団およびカリケアマイシンのIC50
【0184】
【化10】
実施例24
実施例24−HCT116細胞におけるFITC−タグ化した色素タンパク質の取り込み
色素タンパク質が細胞に入り、その生物活性を働かせるメカニズムを測定するために、製造者の推奨に従って、EZ−Label蛍光標識キット(Pierce Biotechnology)を用いて色素タンパク質に蛍光タグ(FITC)で標識した。標識時に生物活性の損失は見られなかった。HCT116結腸癌腫細胞による標識した物質の取り込みを蛍光顕微鏡検査により調べた。最適な細胞の培養時間は3〜6時間であった。標識の大半が細胞質に現れたが、弱い染色も細胞核で観察された(図35)。核内蓄積は少なかったが、上記複合体の抗力を考慮すると、その量は、生物活性には十分である可能性が高い。
【0185】
実施例25
実施例25−HCT116細胞におけるFITC標識アポタンパク質および色素タンパク質の取り込み
無傷な発色団とアポタンパク質の複合体が細胞侵入および核侵入に必要であるかどうかを決定するために、色素タンパク質およびアポタンパク質をFITCで標識した。標識された物質の取り込みを蛍光顕微鏡によって調べた。アポタンパク質および色素タンパク質の両方に関して、取り込みが類似しており(図36)、これは、細胞侵入が、無傷な発色団−タンパク質複合体には依存していないことを示唆している。
実施例26
実施例26−FITC−タグ化色素タンパク質の取り込み:標識されていない複合体との競合)
色素タンパク質の細胞への侵入が飽和(例えば、細胞表面受容体依存的)プロセスによって媒介されるかどうかを決定するために、10倍過剰の標識されていない試薬が存在しないまたは存在する場合(それぞれ、無標識色素タンパク質またはアポタンパク質)、HCT116細胞をFITC標識色素タンパク質(図37、右パネル)またはアポタンパク質(図37、左パネル)でインキュベートした。細胞を蛍光顕微鏡(左)またはフローサイトメトリー(右)により分析した。標識の競合は観察されなかったが、これは、標識された物質の取り込みが受容体に媒介されたプロセスでなかったことを示唆している。さらに、フローサイトメトリーヒストグラムで観察された単一の均一ピークは、全ての細胞によって標識された試薬の均等な取り込みを示した。ヒストグラム中の数字は、平均チャネル数(FITC蛍光)である。
【0186】
実施例27
実施例27−HCT116細胞によるFITC−タグ化アポタンパク質の取り込みに対するエネルギー枯渇および微小管破壊の効果
上記の実験は、色素タンパク質の細胞への侵入が受容体によって媒介されたプロセスではないことを示唆している。タンパク質複合体が細胞に入る他の手段は、細胞表面の小胞がくびれて、該細胞の細胞質内で自由なピノソームを形成する飲作用である。飲作用は、機能チューブリン細胞骨格網を必要とするエネルギー依存プロセスであるため、アジ化ナトリウム、エネルギー脱共役剤、およびノコダゾール(チューブリン細胞骨格を破壊する薬剤)の細胞の取り込みに対する効果を調べた。アジ化ナトリウムまたはノコダゾールが存在しないまたは存在する場合に、HCT116細胞をFITC標識されたアポタンパク質で処理した。これらの処理はともに、標識の取り込みを阻害した(図38)。ノコダゾールの濃度(100nM)が微小管を破壊するに十分であることが示された(右パネル)。これらのデータは、アポタンパク質の取り込みが微小管ネットワークを利用するエネルギー依存性プロセスであることを示唆している。データでは、受容体に媒介されるプロセスが除外されると思われるので、飲作用が関与している可能性が最も高い。
【0187】
本出願は、全ての目的に対して、参照により全体として本明細書中に援用される、2006年6月21日に出願された米国仮特許出願第60/815、697号に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】Actinomadura種21G792色素タンパク質のHPLCクロマトグラムである。HPLCの分析条件は、下記の通りである。カラム:TosoHaas DEAE 5 PW(粒径10μm、サイズ7.5mm×7.5cm)。バッファー:0〜0.5M直線勾配NaCl、一定の0.05M Tris−HClで25分間、流速0.8ml/分。
【図2】Actinomadura種21G792色素タンパク質のUVスペクトルである。
【図3】21G792アポタンパク質のHPLCクロマトグラムである。HPLCの分析条件は下記の通りある。カラム:VYDACタンパク質C4(300A、サイズ3.0×100mm)。溶媒:H2Oに含まれる10〜30%のアセトニトリル、一定の0.05%TFAで6分間、2ml/分。
【図4】21G792色素タンパク質のUVスペクトルである。
【図5】アポタンパク質の分子量測定(MALDI−MSで12.92409kDa)を示す。
【図6】Actinomadura種21G792発色団(発色団−b、−c、および−d)の構造を示す。
【図7】21G792プレアポタンパク質およびアポタンパク質のヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列を提示する。推測されるリボソーム結合部位は枠内に示し、リーダーペプチドには下線を引いている。斜線は、リーダーペプチドおよびアポタンパク質の開裂部位を示す。
【図8】Actinomadura種21G792色素タンパク質遺伝子クラスターの読み取り枠を示す。コスミド41417上に位置する遺伝子は、orfの矢印上に直線で示している。コスミド21gD上に位置するものは、小さな点からなる破線で示しており、コスミド21gB上に位置するものについては、大きな点からなる破線で示している。各コスミドの同定に用いるプローブの位置は、黒いバーベル状の印しで示している。PstI(P)およびEcoRI(E)制限部位にはラベルを付している。
【図9】Actinomadura種21G792発色団のチロシン誘導成分(3−[2−クロロ−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル]−3−ヒドロキシ−プロピオン酸)の合成経路を示す。
【図10A】orf17遺伝子産物の構造ドメインを示す。縮合(C)、アデニル化(A)およびぺプチジル担体タンパク質(peptidyl−carrier protein:PCP)ドメインのコアモチーフは、枠内に入れてラベルを付している。orf17遺伝子産物のAドメイン基質特異性コードおよびC−1027生合成経路のSgcC4に寄与する残基は、太字にし、下線を引いている。同一の残基には、アスタリスクを付しており、コロンは保存残基を示し、セミコロンは半保存残基を示す。
【図10B】orf17遺伝子産物の構造ドメインを示す。縮合(C)、アデニル化(A)およびぺプチジル担体タンパク質(peptidyl−carrier protein:PCP)ドメインのコアモチーフは、枠内に入れてラベルを付している。orf17遺伝子産物のAドメイン基質特異性コードおよびC−1027生合成経路のSgcC4に寄与する残基は、太字にし、下線を引いている。同一の残基には、アスタリスクを付しており、コロンは保存残基を示し、セミコロンは半保存残基を示す。
【図11】Actinomadura種21G792発色団のマヅロサミン(4−アミノ−4−デオキシ−3−C−メチル−β−リボピラノース)成分の合成経路を表す。
【図12】Orf38とdNDP−グルコース−4,6−デヒドラターゼおよびUDP−グルクロン酸デカルボキシラーゼとのアラインメントを示す。このアラインメントに含まれるグルコース−4,6−デヒドラターゼ配列は、Streptomyces neyagawaensisコンカナマイシンA遺伝子クラスター(AAZ94396)のOrf5、Streptomyces argillaceusミトラマイシン遺伝子クラスター(CAA71847)のMtmE、およびStreptomyces spectabilisスペクチノマイシン遺伝子クラスター(AAD31797)のSpcEである。上記アラインメントに含まれるグルクロン酸デカルボキシラーゼ配列は、Pisum sativum(BAB40967)のUxs1、Arabidopsis thaliana(AAK70882)のUxs3、Arabidopsis thaliana(AAK70880)のUxs1、Arabidopsis thaliana(AAK70881)のUxs2、Mus musculus(AAK85410)のUxs1、およびCryptococcus neoformans(AAK59981)のUxs1である。同一の残基には、アスタリスクを付しており、コロンは保存残基を示し、セミコロンは半保存残基を示す。
【図13】Actinomadura種21G792発色団の2−ヒドロキシ−3,6−ジメチル安息香酸成分の合成経路を示す。
【図14】Orf31のA4およびA5コアモチーフ間の領域と10個のアリール酸AMPリガーゼのアラインメントを示す。構造上のアンカーには黒色の影を付けている。カルボキシ酸結合ポケットの推測される構成には灰色の影を付けている。DHBAの活性とサリチル酸の区別に関与していることが推測されている残基は、番号記号で特定される。同一の残基にはアスタリスクを付し、コロンは保存残基を示し、セミコロンは半保存残基を示す。
【図15】Actinomadura種21G792発色団のエンジインコアの生成の生合成経路を示す。
【図16】ドメイン構成、ならびにOrf5とSgcEおよびNcsEエンジインPKSとの比較を示す。aa、アミノ酸;KS、ケトシンターゼ;AT、アセチルトランスファーゼ;ACP、アシル担体タンパク質;KR、ケトレダクターゼ;DH、デヒドラターゼ;TD、末端ドメイン。
【図17】Actinomadura種21G792発色団の4つの成分の集合ルートを表す。
【図18】DEAEセファロース陰イオン交換カラムからのActinomadura種21G792色素タンパク質の溶出プロフィールを示すクロマトグラムである。
【図19】フェニルセファロースHPカラムからのActinomadura種21G792色素タンパク質の溶出プロフィールを示すクロマトグラムである。
【図20】スーパーデックス75サイズ分画カラムからのActinomadura種21G792色素タンパク質の溶出プロフィールを示す。
【図21A】スーパーデックス75分画6のフェニル5PWクロマトグラム(吸光度230nm)(パネルA)を示す。
【図21B】色素タンパク質およびアポタンパク質ピークについての吸光度スペクトル(パネルB)を示す。
【図22A】スーパーデックス75分画6のBioSil SEC125クロマトグラム(パネルA)を示す。
【図22B】共溶出した色素タンパク質およびアポタンパク質についての吸光度スペクトル(パネルB)を示す。
【図23】ブロスからの色素タンパク質含有試料および種々の段階の精製からの関連するカラム分画のSDS−PAGE分析を示す。タンパク質を還元条件下で分離し、染色(クーマシー)した。31と36.5kDaの間に移動している顕著なバンドは、色素タンパク質として同定される。レーン1および18:MW標準;レーン2:浄化したブロス(DEAE装填);レーン3:DEAE分画D3;レーン7:フェニルセファロースプール8;レーン8:フェニルセファロース分画P9(色素タンパク質);レーン9:フェニルセファロース分画P10(色素タンパク質);レーン10:フェニルセファロース分画P11;レーン11:フェニルセファロース分画P14(アポタンパク質);レーン12:フェニルセファロース分画P15(アポタンパク質);レーン13:スーパーデックス75装填(2μl);レーン14:スーパーデックス分画S5;レーン15:スーパーデックス分画S6;レーン16:スーパーデックス分画S7;レーン17:スーパーデックス分画S8。
【図24】陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、およびサイズ排除クロマトグラフィーによって連続して精製したActinomadura種21G792色素タンパク質(分画S6)のSDS−PAGE分析を示す。37.0と28.9kDaの間に移動している顕著なバンドは、色素タンパク質として同定される。レーン1および5:MW標準;レーン2:色素タンパク質の参照標準;レーン3:スーパーデックス75分画S6;レーン4:参照標準とスーパーデックス75分画S6の混合物。
【図25】関連した色素タンパク質アイソフォームを含む色素タンパク質の分離を示す。色素タンパク質調製物は、フェニルセファロースHPを用いて分離された。ピークBは、発色団−bを含む色素タンパク質−bに対応する。ピークAは、発色団−cおよび−dを含む色素タンパク質−cおよび−dを含む。アポタンパク質は、色素タンパク質種とは別に溶出する。
【図26】フェニルセファロースプール(図25のピークAおよびB)のエンジイン組成物を示す。
【図27】21G792色素タンパク質誘導の用量依存的DNA鎖切断が、p21が豊富なHCT116ヒト結腸癌細胞およびp21が欠損したHCT116ヒト結腸癌細胞において、>100ng/mlの色素タンパク濃度で発生することを示すグラフである。
【図28】21G792色素タンパク質が一本鎖切断および二本鎖切断を誘導し、24時間以上反応を継続し続け、DNA開裂がチオール剤を必要としなかったことを示すDNA開裂アッセイである。
【図29】Actinomadura種21G792色素タンパク質によるヒストンH1の消化、およびDNAによる阻害を表す。プロテアーゼ阻害剤は、PMSF、ロイペプチン、アプロチニン、およびペプスタチンAである。アポタンパク質は不活性である。
【図30】Actinomadura種21G792色素タンパク質による消化に対するヒストンH1、H2A、H2B、H3、およびH4の相対感度を示す。ミエリン塩基性タンパク質などの塩基性タンパク質は、中性/酸性タンパク質ではないが、これも開裂しやすい。
【図31】ブレオマイシンおよびカリケアマイシンではなく、Actinomadura種21G792色素タンパク質で治療された細胞内のヒストンH1の減少を示す。
【図32A】HCT116細胞を種々の濃度で色素タンパク質に曝すことによりp53/p21チェックポイントの活性が得られることを示すタンパク質イムノブロットである。
【図32B】ポリ−ADP−リボースホスホリラーゼ(ParP)の開裂でのp53のセリン−15アミノ酸残基のリン酸化反応を示す。
【図33】無胸腺(ヌード)マウスにおける、皮下に注射されたLoVo(結腸癌);HCT116(結腸);HT29(結腸);LOX(メラノーマ);HN5(頭部および頸部);およびPC−3(前立腺)細胞の腫瘍に対する21G792色素タンパク質のインビボ効力を示す一連のグラフである。
【図34】無胸腺(ヌード)マウスにおける、皮下に注射されたLoVo(結腸癌);HCT116(結腸);HT29(結腸);LOX(メラノーマ);HN5(頭部および頸部);およびPC−3(前立腺)細胞の腫瘍に対する21G792色素タンパク質のインビボ効力を示す一連のグラフである。
【図35】FITC標識されたActinomadura種21G792色素タンパク質のHCT116細胞による取り込みを示す。
【図36】FITC標識されたActinomadura種21G792色素タンパク質およびアポタンパク質のHCT116細胞による取り込みを示す。
【図37】10倍濃度の非標識色素タンパク質の存在下で、標識Actinomadura種21G792色素タンパク質の取り込みを示す。
【図38】エネルギー脱共役剤(アジ化ナトリウム)またはチューブリン破壊剤(ノコダゾール)のHCT116細胞によるActinomadura種21G792アポタンパク質の取り込みに対する効果を示す。
【図39】Actinomadura種21G792発色団の誘導体に対するモノクローナル抗体の連結を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素タンパク質を生産する放線菌、臭化物およびヨウ化物から選択されるハロゲン化物、ならびにプルロニック(Pluronic)L−61、プルラコール(Pluracol)P2000(ポリプロピレングリコール)およびアンタロックス(Antarox)17−R2から選択される界面活性剤を含む発酵培養物。
【請求項2】
前記放線菌が、Actinomadura種21G792である、請求項1に記載の発酵培養物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、プルロニックL−61である、請求項1に記載の発酵培養物。
【請求項4】
前記放線菌がActinomadura種21G792であり、前記界面活性剤がプルロニックL−61である、請求項1に記載の発酵培養物。
【請求項5】
プルロニックL−61が、約0.1〜10gm/Lの量で存在する、請求項1〜4のいずれか1項以上に記載の発酵培養物。
【請求項6】
プルロニックL−61が、約5gm/Lで存在する、請求項1〜4のいずれか1項以上に記載の発酵培養物。
【請求項7】
前記ハロゲン化物が、約1〜15mMの濃度で存在する、請求項1〜6のいずれか1項以上に記載の発酵培養物。
【請求項8】
前記ハロゲン化物が、約3〜5mMの濃度で存在する、請求項1〜6のいずれか1項以上に記載の発酵培養物。
【請求項9】
臭化物およびヨウ化物から選択されるハロゲン化物、ならびにプルロニックL−61、プルラコールP2000(ポリプロピレングリコール)およびアンタロックス17−R2から選択される界面活性剤を含む培地中でActinomadura種21G792を発酵させることを含む色素タンパク質を生産する方法。
【請求項10】
Actinomadura種21G792の色素タンパク質を精製する方法であって、Actinomadura種21G792の色素タンパク質を含む流体を得ること、および該流体と、
(a)陰イオン交換クロマトグラフィーマトリックス、
(b)疎水性相互作用クロマトグラフィーマトリックス、
(c)サイズ排除クロマトグラフィーマトリックス
の1以上とを接触させること、
および精製した色素タンパク質を回収することを含む方法。
【請求項11】
Actinomadura種21G792の色素タンパク質を精製する方法であって、(a)該Actinomadura種21G792の色素タンパク質を含む流体を得ること、(b)該流体と陰イオン交換クロマトグラフィーマトリックスとを接触させること、(c)該流体と疎水性相互作用クロマトグラフィーマトリックスとを接触させること、(d)該流体とサイズ排除クロマトグラフィーマトリックスとを接触させること、および(e)精製した色素タンパク質を回収することを含む方法。
【請求項12】
前記色素タンパク質は、タンパク質全体を基準にして約80%以上の純度で回収される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記色素タンパク質は、タンパク質全体を基準にして約90%以上の純度で回収される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記陰イオン交換クロマトグラフィーマトリックスは、DEAEセファロースである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィーマトリックスは、フェニルセファロースである、請求項11または12に記載の方法。前記サイズ排除クロマトグラフィーマトリックスは、約3×103〜約7×105の分離範囲を有する、請求項11、12、または13に記載の方法。
【請求項16】
下記の式:
【化1】
を有する精製された発色団。
【請求項17】
請求項16に記載の発色団を含む精製された色素タンパク質。
【請求項18】
請求項16に記載の精製された発色団を含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項17に記載の精製された色素タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項9、10または11に記載の方法によって得ることができる精製された色素タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項1】
色素タンパク質を生産する放線菌、臭化物およびヨウ化物から選択されるハロゲン化物、ならびにプルロニック(Pluronic)L−61、プルラコール(Pluracol)P2000(ポリプロピレングリコール)およびアンタロックス(Antarox)17−R2から選択される界面活性剤を含む発酵培養物。
【請求項2】
前記放線菌が、Actinomadura種21G792である、請求項1に記載の発酵培養物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、プルロニックL−61である、請求項1に記載の発酵培養物。
【請求項4】
前記放線菌がActinomadura種21G792であり、前記界面活性剤がプルロニックL−61である、請求項1に記載の発酵培養物。
【請求項5】
プルロニックL−61が、約0.1〜10gm/Lの量で存在する、請求項1〜4のいずれか1項以上に記載の発酵培養物。
【請求項6】
プルロニックL−61が、約5gm/Lで存在する、請求項1〜4のいずれか1項以上に記載の発酵培養物。
【請求項7】
前記ハロゲン化物が、約1〜15mMの濃度で存在する、請求項1〜6のいずれか1項以上に記載の発酵培養物。
【請求項8】
前記ハロゲン化物が、約3〜5mMの濃度で存在する、請求項1〜6のいずれか1項以上に記載の発酵培養物。
【請求項9】
臭化物およびヨウ化物から選択されるハロゲン化物、ならびにプルロニックL−61、プルラコールP2000(ポリプロピレングリコール)およびアンタロックス17−R2から選択される界面活性剤を含む培地中でActinomadura種21G792を発酵させることを含む色素タンパク質を生産する方法。
【請求項10】
Actinomadura種21G792の色素タンパク質を精製する方法であって、Actinomadura種21G792の色素タンパク質を含む流体を得ること、および該流体と、
(a)陰イオン交換クロマトグラフィーマトリックス、
(b)疎水性相互作用クロマトグラフィーマトリックス、
(c)サイズ排除クロマトグラフィーマトリックス
の1以上とを接触させること、
および精製した色素タンパク質を回収することを含む方法。
【請求項11】
Actinomadura種21G792の色素タンパク質を精製する方法であって、(a)該Actinomadura種21G792の色素タンパク質を含む流体を得ること、(b)該流体と陰イオン交換クロマトグラフィーマトリックスとを接触させること、(c)該流体と疎水性相互作用クロマトグラフィーマトリックスとを接触させること、(d)該流体とサイズ排除クロマトグラフィーマトリックスとを接触させること、および(e)精製した色素タンパク質を回収することを含む方法。
【請求項12】
前記色素タンパク質は、タンパク質全体を基準にして約80%以上の純度で回収される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記色素タンパク質は、タンパク質全体を基準にして約90%以上の純度で回収される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記陰イオン交換クロマトグラフィーマトリックスは、DEAEセファロースである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィーマトリックスは、フェニルセファロースである、請求項11または12に記載の方法。前記サイズ排除クロマトグラフィーマトリックスは、約3×103〜約7×105の分離範囲を有する、請求項11、12、または13に記載の方法。
【請求項16】
下記の式:
【化1】
を有する精製された発色団。
【請求項17】
請求項16に記載の発色団を含む精製された色素タンパク質。
【請求項18】
請求項16に記載の精製された発色団を含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項17に記載の精製された色素タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項9、10または11に記載の方法によって得ることができる精製された色素タンパク質を含む医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公表番号】特表2009−541331(P2009−541331A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516582(P2009−516582)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/014568
【国際公開番号】WO2007/149560
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/014568
【国際公開番号】WO2007/149560
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]