説明

Apo(a)遺伝子における多型はアセチルサリチル酸治療に対する応答性を予測する

リポタンパク質(a)(Lp(a))は、単一のアポリポタンパク質B−100分子に対するジスルフィド結合を通じてコレステロールリッチの脂質と一緒に共有結合された単一のアポリポタンパク質(a)(Apo(a))分子からなる血漿複合体である。高レベルのLp(a)は増大した心血管系のリスクおよび心血管系イベント、例えば、心筋梗塞および発作を、特にLDL−Cも上昇している場合にともなっている。本発明は、ヒトApo(a)遺伝子中のヌクレオチド多型、およびヒト被験体がアセチルサリチル酸での処置に応答するか否かを決定する工程における、Apo(a)ヌクレオチド多型の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセチルサリチル酸治療に対するヒト被験体の応答性を評価するための、アポリポタンパク質(a)(Apo(a))遺伝子におけるヌクレオチド変化を分析するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リポタンパク質(a)(Lp(a))は、単一のアポリポタンパク質B−100分子に対するジスルフィド結合を通じてコレステロールリッチの脂質と一緒に共有結合された単一のアポリポタンパク質(a)(Apo(a))分子からなる血漿複合体である(非特許文献1)。正常な生理学におけるLp(a)の生物学的機能は、不明確なままであるが、高レベルのLp(a)は増大した心血管系のリスクおよび心血管系イベント、例えば、心筋梗塞および発作を、特にLDL−Cも上昇している場合にともなっている(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。
【0003】
なかでもアポリポタンパク質(a)遺伝子座は、ヒトゲノムでは最も多型である。Apo(a)の遺伝子のバリエーションは、広範なLp(a)値を伴っており、Lp(a)の遺伝力のかなりの部分を占めている(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)。近年では、Apo(a)遺伝子におけるいくつかの単一ヌクレオチド多型(SNPs)が特定されており、心血管系の障害、例えば、心筋梗塞および発作および/または薬物応答、例えば、スタチン類に対する応答に関連している(特許文献1を参照のこと)。
【0004】
将来の心血管系イベントのリスクの増大している被験体はしばしば、心血管系イベントのリスクを低減するためにアセチルサリチル酸(アスピリン)を処方される。しかし、アセチルサリチル酸は、全ての被験体で有効なのではなく、心血管系イベントに対する一次予防としてのアセチルサリチル酸(アスピリン)の使用は、データが少ない女性では特に、議論の余地があった(非特許文献11)。
【0005】
従って、薬剤選択設計および治療を改善することが継続して必要である。それに関しては、SNP類は、アセチルサリチル酸および/または他の抗血小板および/または抗血栓剤などの特定の薬剤での処置にもっとも適した患者を特定するために用いられ得る(しばしば、「薬理遺伝学」と呼ばれる)。同様に、SNP類は、毒性の副作用を発症する可能性が増大している患者、またはその処置に対して応答がない可能性に起因して、特定の処置から患者を除外するために用いられ得る。そうすることによって、このようなSNP類は、個々の被験体の所定の介入のリスク比に対して利点を規定するのに有用であり得る。薬理遺伝学はまた、薬物開発および選択プロセスを補助するための薬理学的研究に用いられ得る。(非特許文献12;非特許文献13;特許文献2;および非特許文献14)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0272054号明細書
【特許文献2】国際公開第97/40462号パンフレット,Spectra Biomedical
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Marcovinaら.Handbook of lipoprotein testing Rifaiら、編集:AACC Press,Washington,D.C.,2000;p.819
【非特許文献2】Berglund et al.,Arterioscler Thromb Vasc Biol 24,2219(2004)
【非特許文献3】Hobbs et al.,Curr Opin Lipidol 10,225(1999)
【非特許文献4】Danesh et al.,Circulation 102,1082(2000)
【非特許文献5】Ridker et al.,JAMA 297,611(2007)
【非特許文献6】Danik et al.,JAMA 296,1363(2006)
【非特許文献7】Broeckel et al.,Nat Genet 30,210(2002)
【非特許文献8】Boerwinkle et al.,J Clin Invest 90,52(1992)
【非特許文献9】Mooser et al.,Am J Hum Genet 61,402(1997)
【非特許文献10】Schmidt et al.,Eur J Hum Genet 14 190(2006)
【非特許文献11】Ridker et al.,N Engl J Med 352,1293;2005
【非特許文献12】Linder et al.,Clinical Chemistry,43,254(1997)
【非特許文献13】Marshall,Nature Biotechnology,15,1249(1997)
【非特許文献14】Schafer et al.,Nature Biotechnology,16,3(1998)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、将来の心血管系イベントのリスクを低減するためのアセチルサリチル酸処置に対するヒト被験体の応答を評価する方法に部分的には関する。本発明は、Apo(a)遺伝子における新規なヌクレオチド多型によって、ヒト被験体がアセチルサリチル酸での処置、特定の用量のアセチルサリチル酸、または別の抗血小板もしくは抗血栓剤に応答するかしないかに関して推論が可能になるという知見に一部は基づく。本発明によって、治療の開始の前に、アセチルサリチル酸での処置に対して応答する被験体および応答しない被験体を特定することが可能になる。本発明によってまた、特定の被験体について心血管系イベントのリスクを下げるという最高の利点をもたらす可能性が最も高い剤を抗血小板および抗血栓剤の中から選択することが可能になる。開示された多型はまた、心血管系イベントおよび関連の病理の診断および処置における使用のための、診断試薬の設計および治療剤の開発のための標的として有用である。
【0009】
本発明の局面によれば、将来の心血管系イベントのリスクを低減するためのアセチルサリチル酸処置に対するヒト被験体の応答性の評価のための方法が提供される。この方法は、ヒト被験体のアポリポタンパク質(a)(Apo(a))遺伝子の染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置で単一ヌクレオチド多型の同一性を確認する工程を包含する。いくつかの重要な実施形態では、染色体6:160880877の位置のシトシンまたはグアニンによって特徴付けられる多型の存在は、アセチルサリチル酸処置に対する応答性を示す。他の重要な実施形態では、染色体6:160880877の位置のチミンまたはアデニンによって特徴付けられる多型性の存在は、アセチルコリン酸処置に対する非応答性を示す。
【0010】
当業者に周知である、任意の種々の検出方法を使用してもよい。一般的方法としては、被験体から得た核酸と核酸プローブとを接触させる工程、または被験体から得た核酸を配列決定する工程を包含する。このような方法の例としては限定はしないが、対立遺伝子特異的プローブハイブリダイゼーション、対立遺伝子特異的プライマー伸長、対立遺伝子特異的増幅、5’ヌクレアーゼ消化、分子ビーコンアッセイ、オリゴヌクレオチド連結アッセイ、サイズ分析および一本鎖高次構造多型が挙げられる。いくつかの重要な実施形態では、多型の同一性は、被験体から得た核酸を配列決定することによって決定される。
【0011】
本発明の別の局面によれば、あるアッセイが提供される。このアッセイは、ある剤と、染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)でヌクレオチドのシトシンまたはグアニンを有する(Apo(a))遺伝子によってコードされる単離されたアポリポタンパク質(a)(Apo(a))タンパク質とを接触する工程と、この単離されたApo(a)タンパク質に、またはリポタンパク質(a)(Lp(a))に対するこの剤の結合を評価する工程と、コントロールに対する結合を比較する工程と、を包含する。ある実施形態では、このコントロールは、この単離されたApo(a)タンパク質にもしくはLp(a)に、またはLp(a)に対するアセチルサリチル酸の結合の測定、あるいは血小板とのアセチルサリチル酸相互作用の測定を包含する。
【0012】
本発明の別の局面によれば、あるアッセイが提供される。このアッセイは、ある剤と、染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)でヌクレオチドのチミンまたはアデニンを有するApo(a)遺伝子によってコードされる単離されたApo(a)タンパク質とを接触する工程と、この単離されたApo(a)タンパク質に対するこの剤の結合を評価する工程と、コントロールに対する結合を比較する工程と、を包含する。いくつかの実施形態では、このコントロールは、この単離されたApo(a)タンパク質に、もしくはLp(a))に、または血小板に対するアセチルサリチル酸の結合の測定、あるいは血小板とのアセチルサリチル酸の相互作用の測定を包含する。
【0013】
本発明の別の局面によれば、処置の方法が提供される。この方法は、ヒト被験体が染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)でシトシンまたはグアニンによって特徴付けられるApo(a)多型を有することに基づいてこのヒト被験体を選択する工程と、この被験体が多型を有する理由で将来の心血管系イベントのリスクを低減するためにこの被験体に対してアセチルサリチル酸を投与することとを包含する。いくつかの実施形態では、この被験体はまた、血中のLp(a)のレベルが上昇している。
【0014】
本発明の別の局面によれば、処置の方法が提供される。この方法は、ヒト被験体が染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)でチミンまたはアデニンによって特徴付けられるApo(a)多型を有することに基づいてこのヒト被験体を選択する工程と、この被験体が多型を有する理由で将来の心血管系イベントのリスクを低減するためにこの被験体に対してアセチルサリチル酸以外の抗血栓剤を投与することと、を包含する。いくつかの実施形態では、この被験体はまた、血中のLp(a)のレベルが上昇している。
【0015】
抗血栓剤は、チエノピリジンであっても、またはチエノピリジン誘導体であってもよい。チエノピリジンまたはチエノピリジン誘導体の例としては限定はしないが、クロピドグレル、クロピドグレル重硫酸塩、チクロピジン、プラスグレル(CS−747またはLY640315)、SR25989、およびPCR4099が挙げられる。抗血栓剤としてはまた、限定はしないが、セノキサパリンナトリウム、キメラガトラン、アブシキシマブ、オチロフィバンが挙げられる。他の抗血栓剤の例としてはまた、プラスミノーゲンアクチベータ(例えば、アクチベース、アルテプラーゼ)(不活性なプラスミノーゲンのプラスミンへの変換を触媒する)が挙げられる。これは、プレカリクレイン、キニノーゲン、第XII因子、第XIIIa因子、プラスミノーゲンプロアクチベータ、および組織プラスミノーゲン活性化因子TPA)、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アニソイル化プラスミノーゲン−ストレプトキナーゼアクチベータ複合体、プロ−ウロキナーゼ(Pro−UK)、rTPA(アルテプラーゼまたはアクチバーゼ;rは組み換えを意味する)、rPro−UK、アボキナーゼ、エミナーゼ、セレプターゼ、アナグレリド、塩酸アナグレリド、ビバリルジン、ダルテパリンナトリウム、ダナパロイドナトリウム、塩酸ダゾキシベン、硫酸エフェガトラン、エノキサパリンナトリウム、イフェトロバン、イフェトロバンナトリウム、チンザパリンナトリウム、レタプラーゼ、トリフェナグレル、ワルファリン、デキストラン、アミノカプロン酸(Amicar)、およびトラネキサム酸(Amstat)、スルフィンピラゾン、ジピリダモール、クロフィブラート、カルバミン酸ピリジノール、PGE、グルカゴン、抗セロトニン薬、カフェイン、テオフィリンペントキシフィリン、およびチクロピジンの相互作用により生じる可能性がある。抗血栓剤としてはまた、限定はしないが、PAR−1およびPAR−2レセプターを含む血小板レセプター、ならびにトロンビンの血小板レセプター、およびP2Y12などの血小板ADPレセプターに特異的に結合する抗血栓剤が挙げられる。
【0016】
本発明の別の局面によれば、将来の心血管系イベントのリスクを減らすためのアセチルサリチル酸処理に対するヒト被験体の応答性を評価するための方法が提供される。本発明は、ヒト被験体のアポリポタンパク質(a)(Apo(a))遺伝子の染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置で単一ヌクレオチド多型(SNP)と連鎖または連鎖不均衡である遺伝子マーカーの有無を検出する工程を包含する。この遺伝子マーカーは対立遺伝子、SNP、制限酵素断片長多型(RFLP)、無作為増幅多型DNA(RAPD)、増幅断片長多型(AFLP)、または単純配列リピート(SSR)であってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記遺伝子マーカーは、染色体6:160849894(NCBIビルド128;rs9457931 dbSNP@NCBI)の位置でSNPである。いくつかの実施形態では、上記遺伝子マーカーは、染色体6:160830272(NCBIビルド128;rs9457927 dbSNP@NCBI)の位置でSNPである。いくつかの実施形態では、上記連鎖は、Kringle(Kr)IV2型ドメインの16、17または18リピートの間である。
【0018】
いくつかの重要な実施形態では、染色体6:160880877の位置のシトシンまたはグアニンによって特徴付けられる多型の存在は、アセチルサリチル酸に対する応答性を示す。他の重要な実施形態では、染色体6:160880877の位置のチミンまたはアデニンによって特徴付けられる多型の存在は、アセチルサリチル酸に対する非応答性を示す。ある実施形態では、この方法は、被験体由来の血液サンプル中のリポタンパク質(a)(Lp(a))のレベルを決定する工程をさらに包含する。
【0019】
本発明のさらに別の局面によれば、処置の方法が提供される。この方法は、染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)でのシトシンまたはグアニンによって特徴付けられるApo(a)多型と連鎖するか、または連鎖不均衡である遺伝子マーカーをヒト被験体が有することに基づいてこのヒト被験体を選択する工程と、この被験体が多型を有する理由で将来の心血管系イベントのリスクを低減するためにこの被験体に対してアセチルサリチル酸を投与することと、を包含する。
【0020】
上記遺伝子マーカーは、対立遺伝子、SNP、制限酵素断片長多型(RFLP)、無作為増幅多型DNA(RAPD)、増幅断片長多型(AFLP)、または単純配列リピート(SSR)であってもよい。いくつかの実施形態では、上記ヒト被験体はまた、血液中のリポタンパク質(a)(Lp(a))の上昇した値を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、上記遺伝子マーカーは、染色体6:160849894(NCBIビルド128;rs9457931 dbSNP@NCBI)の位置でSNPである。いくつかの実施形態では、上記遺伝子マーカーは、染色体6:160830272(NCBIビルド128;rs9457927 dbSNP@NCBI)の位置でSNPである。いくつかの実施形態では、上記連鎖は、Kringle(Kr)IV2型ドメインの16、17または18リピートの間である。
【0022】
本発明のさらに別の局面によれば、処置の方法が提供される。この方法は、染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)のチミンまたはアデニンによって特徴付けられるApo(a)多型と連鎖するか、または連鎖不均衡である遺伝子マーカーをヒト被験体が有することに基づいてこのヒト被験体を選択する工程と、この被験体が多型を有する理由で将来の心血管系イベントのリスクを低減するためにこの被験体に対してアセチルサリチル酸以外の抗血栓剤を投与することと、を包含する。いくつかの実施形態では、このヒト被験体はまた、血液中のリポタンパク質(a)(Lp(a))の上昇した値を有する。
【0023】
上記遺伝子マーカーは、対立遺伝子、SNP、制限酵素断片長多型(RFLP)、無作為増幅多型DNA(RAPD)、増幅断片長多型(AFLP)、または単純配列リピート(SSR)であってもよい。いくつかの実施形態では、上記ヒト被験体はまた、血液中のリポタンパク質(a)(Lp(a))の上昇した値を有する。
【0024】
本発明のなお別の局面によれば、将来の心血管系イベントのヒト被験体のリスクを評価するための方法が提供される。この方法は、ヒト被験体のApo(a)遺伝子の染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置での単一ヌクレオチド多型の同一性を確認する工程と、このヒト被験体由来の血液サンプル中のリポタンパク質(a)(Lp(a))のレベルを測定する工程とを包含する。いくつかの実施形態では、ヒト被験体のApo(a)遺伝子の染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置でのシトシンまたはグアニンによって特徴づけられる多型の存在、およびこの被験体由来の血液サンプル中のLp(a)のレベルの上昇の存在は、この被験体が将来の心血管系イベントのリスク増大にあることを示す。
【0025】
以下の実施形態は、別段示さない限り、本明細書に示される本発明の種々の局面に等しくあてはまる。
【0026】
上記の心血管系イベントは、心筋梗塞、発作、急性冠症候群、心筋虚血、慢性安定狭心症、不安定狭心症、心血管系死亡、冠動脈再狭窄、冠ステント再狭窄、冠ステント再血栓症、血管再生、血管形成術、一過性虚血性発作、肺塞栓症、血管閉塞または静脈血栓症であってもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記の方法は、被験体由来の血液サンプル中のLp(a)のレベルを測定する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態では、この被験体は、血中のLp(a)のレベルが上昇している。Lp(a)のレベルは、被験体由来の血液サンプル中で約10mg/dl、約15mg/dl以上、約20mg/dl、約25mg/dl以上、約30mg/dl、約35mg/dl以上、約40mg/dl、約45mg/dl以上、約50mg/dlであってもよい。Lp(a)のレベルを測定するためには任意の種々の方法が使用され得る。このような方法は、当業者に公知である。Lp(a)のレベルを測定するための方法の例は、Danik et al.,JAMA 296,1363(2006)に記載される。
【0028】
本発明のこれらおよび他の局面は、下にさらに詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】Lp(a)とrs3798220の遺伝子型との関係を示す1セットのグラフである。A)WHSからのコーカサス人女性の研究参加者の間のLp(a)のレベル(中央値=10.3mg/dL)、B)A)と同様にrs3798220の3つの遺伝子型の間のLp(a)のレベル。3つの遺伝子型についての四分位範囲(IQR)および中央値は、ボックスおよびその中央のラインによって示す。ウィスカーは、中央値からIQRの1.5倍である範囲ではLp(a)の範囲にわたり、ウィスカーを超える過剰なLp(a)値は丸で示す。C)ヘテロ接合性の遺伝子型を有するコーカサス人女性のLp(a)値(中央値=79.3mg/dL)。低Lp(a)および高Lp(a)を有する小集団中のLp(a)の分布についてのモデルは、それぞれあてはめ対数正規分布および正規分布によって示される。D)rs3798220についてのヘテロ接合性遺伝子型を有するPHSからのコーカサス人男性の間のLp(a)分布(中央値=66.9mg/dL、WHSからのサンプルについてとは異なるアッセイで測定、方法を参照のこと)。
【図1B】Lp(a)とrs3798220の遺伝子型との関係を示す1セットのグラフである。A)WHSからのコーカサス人女性の研究参加者の間のLp(a)のレベル(中央値=10.3mg/dL)、B)A)と同様にrs3798220の3つの遺伝子型の間のLp(a)のレベル。3つの遺伝子型についての四分位範囲(IQR)および中央値は、ボックスおよびその中央のラインによって示す。ウィスカーは、中央値からIQRの1.5倍である範囲ではLp(a)の範囲にわたり、ウィスカーを超える過剰なLp(a)値は丸で示す。C)ヘテロ接合性の遺伝子型を有するコーカサス人女性のLp(a)値(中央値=79.3mg/dL)。低Lp(a)および高Lp(a)を有する小集団中のLp(a)の分布についてのモデルは、それぞれあてはめ対数正規分布および正規分布によって示される。D)rs3798220についてのヘテロ接合性遺伝子型を有するPHSからのコーカサス人男性の間のLp(a)分布(中央値=66.9mg/dL、WHSからのサンプルについてとは異なるアッセイで測定、方法を参照のこと)。
【図1C】Lp(a)とrs3798220の遺伝子型との関係を示す1セットのグラフである。A)WHSからのコーカサス人女性の研究参加者の間のLp(a)のレベル(中央値=10.3mg/dL)、B)A)と同様にrs3798220の3つの遺伝子型の間のLp(a)のレベル。3つの遺伝子型についての四分位範囲(IQR)および中央値は、ボックスおよびその中央のラインによって示す。ウィスカーは、中央値からIQRの1.5倍である範囲ではLp(a)の範囲にわたり、ウィスカーを超える過剰なLp(a)値は丸で示す。C)ヘテロ接合性の遺伝子型を有するコーカサス人女性のLp(a)値(中央値=79.3mg/dL)。低Lp(a)および高Lp(a)を有する小集団中のLp(a)の分布についてのモデルは、それぞれあてはめ対数正規分布および正規分布によって示される。D)rs3798220についてのヘテロ接合性遺伝子型を有するPHSからのコーカサス人男性の間のLp(a)分布(中央値=66.9mg/dL、WHSからのサンプルについてとは異なるアッセイで測定、方法を参照のこと)。
【図1D】Lp(a)とrs3798220の遺伝子型との関係を示す1セットのグラフである。A)WHSからのコーカサス人女性の研究参加者の間のLp(a)のレベル(中央値=10.3mg/dL)、B)A)と同様にrs3798220の3つの遺伝子型の間のLp(a)のレベル。3つの遺伝子型についての四分位範囲(IQR)および中央値は、ボックスおよびその中央のラインによって示す。ウィスカーは、中央値からIQRの1.5倍である範囲ではLp(a)の範囲にわたり、ウィスカーを超える過剰なLp(a)値は丸で示す。C)ヘテロ接合性の遺伝子型を有するコーカサス人女性のLp(a)値(中央値=79.3mg/dL)。低Lp(a)および高Lp(a)を有する小集団中のLp(a)の分布についてのモデルは、それぞれあてはめ対数正規分布および正規分布によって示される。D)rs3798220についてのヘテロ接合性遺伝子型を有するPHSからのコーカサス人男性の間のLp(a)分布(中央値=66.9mg/dL、WHSからのサンプルについてとは異なるアッセイで測定、方法を参照のこと)。
【図2A】アスピリン治療による、rs3798220またはLp(a)の上昇からのリスクの減弱を示す1セットのグラフである。偶発的な血管疾患を有するコーカサス人WHS参加者の累積画分のカプラン−マイヤー推定値。A)主要な血管イベントの複合的エンドポイントについてWHSのトライアルの間、rs3798220遺伝子型およびアスピリンまたはプラシーボの割り当てによって層別化した、B)Aと同じだが、ただし心筋梗塞の指標について、C)Aと同じだが、ただし虚血性発作のエンドポイントについて、およびD)rs3798220(TT遺伝子型)のマイナーな対立遺伝子の非キャリアのうち、主な血管イベントの複合的エンドポイントについて90パーセンタイル(65.1mg/dL)より上または下のLp(a)値、およびアスピリンまたはプラシーボ割り当てによって層別化した。
【図2B】アスピリン治療による、rs3798220またはLp(a)の上昇からのリスクの減弱を示す1セットのグラフである。偶発的な血管疾患を有するコーカサス人WHS参加者の累積画分のカプラン−マイヤー推定値。A)主要な血管イベントの複合的エンドポイントについてWHSのトライアルの間、rs3798220遺伝子型およびアスピリンまたはプラシーボの割り当てによって層別化した、B)Aと同じだが、ただし心筋梗塞の指標について、C)Aと同じだが、ただし虚血性発作のエンドポイントについて、およびD)rs3798220(TT遺伝子型)のマイナーな対立遺伝子の非キャリアのうち、主な血管イベントの複合的エンドポイントについて90パーセンタイル(65.1mg/dL)より上または下のLp(a)値、およびアスピリンまたはプラシーボ割り当てによって層別化した。
【図2C】アスピリン治療による、rs3798220またはLp(a)の上昇からのリスクの減弱を示す1セットのグラフである。偶発的な血管疾患を有するコーカサス人WHS参加者の累積画分のカプラン−マイヤー推定値。A)主要な血管イベントの複合的エンドポイントについてWHSのトライアルの間、rs3798220遺伝子型およびアスピリンまたはプラシーボの割り当てによって層別化した、B)Aと同じだが、ただし心筋梗塞の指標について、C)Aと同じだが、ただし虚血性発作のエンドポイントについて、およびD)rs3798220(TT遺伝子型)のマイナーな対立遺伝子の非キャリアのうち、主な血管イベントの複合的エンドポイントについて90パーセンタイル(65.1mg/dL)より上または下のLp(a)値、およびアスピリンまたはプラシーボ割り当てによって層別化した。
【図2D】アスピリン治療による、rs3798220またはLp(a)の上昇からのリスクの減弱を示す1セットのグラフである。偶発的な血管疾患を有するコーカサス人WHS参加者の累積画分のカプラン−マイヤー推定値。A)主要な血管イベントの複合的エンドポイントについてWHSのトライアルの間、rs3798220遺伝子型およびアスピリンまたはプラシーボの割り当てによって層別化した、B)Aと同じだが、ただし心筋梗塞の指標について、C)Aと同じだが、ただし虚血性発作のエンドポイントについて、およびD)rs3798220(TT遺伝子型)のマイナーな対立遺伝子の非キャリアのうち、主な血管イベントの複合的エンドポイントについて90パーセンタイル(65.1mg/dL)より上または下のLp(a)値、およびアスピリンまたはプラシーボ割り当てによって層別化した。
【図3−1】ヒスパニックでない白人のうちKrIV2r数の分布を示している1セットの棒グラフである。
【図3−2】ヒスパニックでない白人のうちKrIV2r数の分布を示している1セットの棒グラフである。
【図4】ヒスパニックでない白人のうちKrIV2rの数によるLp(a)値の分布を示している1セットのプロットである。
【図5】ヒスパニックでない白人のうちrs3798220遺伝子型によって有意に異なるLp(a)のレベルを有するkrIV2r(すなわち対立遺伝子)の数を示しているプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は一部は、将来の心血管イベントのリスクを低減するためのアセチルサリチル酸処理に対する被験体の応答性に関連するApo(a)遺伝子におけるSNPに関する。本発明はまた、Apo(a)遺伝子単独での多型の使用、またはアセチルサリチル酸処理に対するヒト被験体の応答を評価するためのリポタンパク質(a)(Lp(a))のレベルと組み合わせた使用に、およびそれに基づく処置の方法に関する。本発明はまた、新規な抗血栓剤を特定および設計することに関する。
【0031】
本明細書において用いる場合、「推定する、評価する(evaluate)」または「推定、評価(すること、する工程)(evaluating)」という用語は、アセチルサリチル酸処置に対する被験体の応答に関して用いる場合、被験体の核酸サンプル中のヒト被験体のApo(a)遺伝子の染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置でヌクレオチドの同一性を分析するプロセスを用いてアセチルサリチル酸処置に対する応答についての結果を描写すること、および染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置でヌクレオチド出現(単数または複数)の既知の関係に対して単一ヌクレオチド多型(SNP)の出現を比較することを意味する。ヌクレオチド出現は、核酸分子を直接調査することによって、またはApo(a)遺伝子によってコードされるポリペプチドを間接的に調査することによって、特定できる。
【0032】
アセチルサリチル酸処理に対する応答とは、被験体のそれ以外は統計学的に類似のプール中で、ヒト被験体のアポリポタンパク質(a)(Apo(a))遺伝子の染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置でシトシンまたはグアニンによって特徴づけられる多型を有する、アセチルサリチル酸処置に対する被験体が、アセチルサリチル酸処置のない被験体よりも将来の心血管系イベントを有する可能性が少ないということを意味する。
【0033】
隣接する配列の状況では、染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置でアセチルサリチル酸応答性に関連する対立遺伝子は、University of CaliforniaのSanta Cruz Genome Browserによれば以下である:
【0034】
【化1】

【0035】
(プラス(「+」)鎖は、上部の鎖であって、マイナス(「−」)鎖は、下部の鎖である)
染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置でアセチルサリチル酸非応答性に関連する対立遺伝子は、University of CaliforniaのSanta Cruz Genome Browserによれば以下である:
【0036】
【化2】

【0037】
(プラス(「+」)鎖は、上部の鎖であって、マイナス(「−」)鎖は、下部の鎖である)
Apo(a)遺伝子SNPは、米国特許出願公開第2005272054号でrs3798220 hCV25930271の名称で記載されている。Apo(a)遺伝子SNPはまた、その内容全体が本明細書において参照によって援用されている、米国特許出願公開第2005/0272054号A1に記載のプライマー配列CGAATCTCATGTTCAGGAAAATA(配列番号5)のマッチによって見出され得る。
【0038】
ヒト被験体という用語は、心血管系イベントを有していたヒト、心血管イベントを発症すると疑われるヒト、または将来の心血管系イベントの素因があるかまたはそのリスクがあり得る無症状のヒトを包含する。従って、いくつかの実施形態では、このヒト被験体はすでに、例えば、心筋梗塞などの一次的(第一の)心血管イベントを有していたか、または血管形成術を行っていた。一次的な心血管系イベントを有していたヒト被験体は、二次(第二)心血管系イベントのリスクが上昇している。いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、一次的心血管系イベントを有していなかったが、心血管系イベントを有するリスクが増大している。なぜなら、そのヒト被験体は、心血管系イベントを有する1つ以上の危険因子があるからである。いくつかの実施形態では、この被験体はすでに将来の心血管系イベントのリスクを低減するための治療を用いて処置されている。この治療は、下に言及される任意の治療剤であってもよい。さらに他の実施形態では、この被験体は、一次的心血管系事象を有していて、1つ以上の他の危険因子を有する。いくつかの実施形態では、このヒト被験体は、将来の心血管系イベントのリスクを低減するために治療中である(例えば、スタチン治療などの抗脂質治療)。いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、急性冠症候群の真ん中にあり、処置の決定は、即自的な心血管系イベントを管理するため、およびイベントの再発を防ぐために行われている。
【0039】
心血管系イベントの危険因子の例としては以下が挙げられる:高脂血症、肥満、真性糖尿病、高血圧、高血圧前症、全身性炎症のマーカーの値(単数または複数)の上昇、年齢、心血管系イベントの家族歴、および喫煙。心血管系イベントのリスクの程度は、ヒト被験体が有する危険因子の多さおよび重症度または大きさに依存する。リスクチャートおよび予測アルゴリズムは、危険因子の存在および重症度に基づきヒト被験体の心血管系イベントのリスクを評価するために利用可能である。このような例の1つは、フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)リスク予測スコアである。ヒト被験体は、その被験体が10年計算のフラミンガム心臓研究リスクスコアが5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%より大きい場合に心血管系イベントを有するリスクが増大している。
【0040】
ヒト被験体における心血管系イベントのリスクを評価するための別の方法は、CRPのような全身性炎症のマーカーの値の測定をフラミンガム心臓研究リスク予測スコアへ組み込んでいる、全体的なリスクスコアである。ヒト被験体において心血管系イベントのリスクを評価する他の方法としては、冠動脈カルシウム・スキャン、心臓核磁気共鳴画像化、および/または磁気共鳴血管造影法が挙げられる(Ridker et al.,JAMA 297,611,2007)。
【0041】
高脂血症は、高コレステロール血症および/または高トリグリセリド血症である。高コレステロール血症のヒト被験体および高トリグリセリド血症のヒト被験体は、心血管系イベントの頻度が増大している。高コレステロール血症のヒト被験体とは、高コレステロール血症のヒト被験体について確立された現行の基準があてはまる被験体である。高トリグリセリド血症のヒト被験体とは、高トリグリセリド血症のヒト被験体について確立された現行の基準があてはまる被験体である。高コレステロール血症の被験体は、160mg/dLを超えるLDL値、または130mg/dLを超えるLDL値、および以下からなる群より選択される少なくとも2つの危険因子を有する:雄性、早熟性心疾患の家族歴、喫煙、高血圧、低LDL(35mg/dL未満)、真性糖尿病、高インスリン血症、腹部肥満、高リポタンパク質、および心血管系イベントの個人歴。高トリグリセリド血症のヒト被験体は、250mg/dL以上のトリグリセリド(TG)値を有する。
【0042】
高血圧は、140mmHgを超える収縮期血圧、および/もしくは90mmHgを超える拡張期血圧、またはその両方として定義される。高血圧前症は、115〜140mmHgの収縮期血圧、および/または80〜90mmHgの拡張期血圧として定義される。
【0043】
肥満は過剰な脂肪組織量の状態である。肥満症の直接の測定ではないが、肥満を計測するための最も広範に用いられる方法は、ボディ・マス・インデックス(BMI)であって、これは質量/高さ(kg/m)に等しい(例えば、Harrison’s Principles of Experimental Medicine,第15版,McGraw−Hill,Inc.,N.Y.−本明細書において以降は「Harrison’s」を参照のこと)。実質的な罹患率のデータに基づいて、30というBMIが男性および女性の両方の肥満の閾値として最も一般に用いられる。25〜30のBMIは、高血圧および耐糖能異常などの肥満によって影響される危険因子の存在において特に、医学的に重要かつ、治療の介入の価値があるとみなされるべきである。多くの場合体重の増加と等しいとみられるが、そうである必要はない。無駄肉がないが極めて筋肉質の個体は、脂肪症の増大がなくとも恣意的な標準によって過剰体重である場合がある。肥満を定量するための他のアプローチとしては、形態測定(皮下脂肪)、比重測定(水面下秤量)、コンピュータ断層撮影法(CT)、または磁気共鳴画像(MRI)、および/または電気インピーダンスが挙げられる。
【0044】
真性糖尿病は、125mg/dL以上の空腹時血漿グルコース値を有するヒト被験体で確立される。
【0045】
全身性炎症のマーカーの上昇した値(単数または複数)とは、健康なヒト被験体集団(すなわち、疾患の兆候も症状もないヒト被験体)の平均を上回る値である。全身性炎症のマーカーがCRPである場合、1以上のCRP値は上昇した値とみなされる。
【0046】
将来の心血管系イベントのリスクを低減するための治療としては、限定はしないが、食餌および/または運動および/または以下を用いる治療が挙げられる:抗脂質剤類、抗炎症剤類、抗血栓剤類、線維素溶解剤類、抗血小板剤類、直接トロンビンインヒビター類、糖タンパク質IIb/IIIaレセプターインヒビター類、細胞接着分子に結合して、白血球がこのような分子に取り付く能力を阻害する薬剤類(例:抗細胞接着分子抗体類)、α−アドレナリン遮断薬類、β−アドレナリン遮断薬類、シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター類、アンジオテンシン系インヒビター、抗不整脈薬類、カルシウムチャネル遮断薬類、利尿薬類、変力薬類、血管拡張剤類、昇圧剤類、チアゾリジンジオン類、カナビノイド−1受容体遮断薬類、および/またはこれらの任意の組み合わせ。
【0047】
抗脂血症剤とは、総コレステロールを低下させ、LDLCを低下させ、トリグリセリド類を低下させ、および/またはHDLCを増大させる剤である。抗脂血症剤としては、スタチン類および非スタチン抗脂血症剤類、および/またはこれらの組み合わせが挙げられる。スタチン類は、ヒトの総コレステロール、LDLCおよびトリグリセリドのレベルを低下させる効果があることが証明されている医薬品の一クラスである。スタチン類は、コレステロールの合成の段階で作用する。HMG−CoAリダクターゼ遺伝子の阻害を通じ、細胞により合成されるコレステロールの量を低下させることによって、スタチン類は、肝細胞によるLDLCの取り込みの増大に至る事象のサイクルを開始する。LDLCの取り込みが増大するにつれて、血中の総コレステロールおよびLDLCの値が低下する。両因子の血中レベルが低いほど、それに伴ってアテローム性動脈硬化および心疾患のリスクが低く、スタチン類はアテローム性動脈硬化による罹患率および死亡率の低減に広く用いられている。
【0048】
スタチン類の例としては、限定はしないが、シンバスタチン(Zocor)、ロバスタチン(Mevacor)、プラバスタチン(Pravachol)、フルバスタチン(Lescol)、アトロバスタチン(Lipitor)、セリバスタチン(Baycol)、ロスバスタチン(Crestor)、ピチバスタチン、およびその他多数が挙げられる。
【0049】
非スタチン抗脂血症剤としては、限定はしないが、フィブリン酸誘導体類(フィブラート)、胆汁酸捕捉剤または樹脂、ニコチン酸薬剤類、コレステロール吸収インヒビター類、アシル−補酵素A:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)インヒビター類、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)インヒビター類、LDLレセプターアンタゴニスト類、ファルネソイドXレセプター(FXR)アンタゴニスト類、ステロール調節結合タンパク質切断活性化タンパク質(SCAP)活性化因子類、ミクロソームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)インヒビター類、スクアレン合成酵素インヒビター類、およびペルオキシソーム増殖活性化レセプター(PPAR)アゴニスト類が挙げられる。
【0050】
フィブリン酸誘導体の例としては限定はしないが、ゲムフィブロジル(Lopid)、フェノフィブラート(Tricor)、クロフィブラート(Atromid)およびベサフィブラートが挙げられる。
【0051】
胆汁酸捕捉剤または樹脂類の例としては限定はしないが、コレセベラム(WelChol)、コレスチラミン(QuestranまたはPrevalite)およびコレスチポール(Colestid)、DMD−504、GT−102279、HBS−107、およびS−8921が挙げられる。
【0052】
ニコチン酸剤の例としては限定はしないが、ナイアシンおよびプロブコールが挙げられる。
【0053】
コレステロール吸収インヒビターの例としては限定はしないが、エゼチミブ(Zetia)が挙げられる。
【0054】
ACATインヒビターの例としては限定はしないが、アバシミブ(Avasimibe)、CI−976(Parke Davis)、CP−113818(Pfizer)、PD−138142−15(Parke Davis)、F1394、ならびに米国特許第6,204,278号、同第6,165,984号、同第6,127,403号、同第6,063,806号、同第6,040,339号、同第5,880,147号、同第5,621,010号、同第5,597,835号、同第5,576,335号、同第5,321,031号、同第5,238,935号、同第5,180,717号、同第5,149,709号,および同第5,124,337号に記載されるその他多数のインヒビターが挙げられる。
【0055】
CETPインヒビターの例としては、限定はしないが、トルセロラピブ、CP−529414、CETi−l、JTT−705、ならびに
【0056】
【化3】

【0057】
に記載される他の多数のインヒビターが挙げられる。
【0058】
FXRアンタゴニストの一例は、ググルステロン(Guggulsterone)である。SCAP活性化因子の一例は、GW532(GlaxoSmithKline)である。
【0059】
MTPインヒビターの例としては限定はしないが、インプリタピド(implitapide)およびR−103757が挙げられる。
【0060】
スクアレン合成酵素インヒビターの例としては限定はしないが、ザラゴジン酸が挙げられる。
【0061】
PPARアゴニストの例としては限定はしないが、GW−409544、GW−501516、およびLY−510929が挙げられる。
【0062】
本発明は、Apo(a)遺伝子の多型を特定する工程を包含する。多型とは、集団中に存在する対立遺伝子改変体である。多型は、ある遺伝子座に存在する単一ヌクレオチドの相違であってもよいし、またはある遺伝子のある位置での1つまたは2〜3個のヌクレオチドの挿入または欠失であってもよい。従って、単一ヌクレオチド多型(SNP)は、ヒトゲノムなどのゲノム中の特定の遺伝子座での、代表的には4つ全てのヌクレオチドに満たない、1つまたは2つ、3つまたは4つのヌクレオチド(すなわち、アデニン、シトシン、グアニン、またはチミン)の集団中での存在によって特徴づけられる。
【0063】
当業者は核酸分子が二本鎖分子であってもよいこと、および一本の鎖の特定の部位に対して、ならびに相補的な鎖の上の対応する部位に対して言及することを容易に認識するであろう。SNP位置を定義するのにおいて、SNP対立遺伝子、またはヌクレオチド配列とは、ある核酸分子の1本の鎖上の特定の部位でのアデニン、チミン(ウリジン)、シトシン、またはグアニンを指し、またその核酸分子の相補鎖上の対応する部位のチミン(ウリジン)、アデニン、グアニン、またはシトシンを(それぞれ)定義する。従って、特定のSNP位置、SNP対立遺伝子、またはヌクレオチド配列について言及するためには、いずれかの鎖を参照する必要がある場合がある。プローブおよびプライマーは、いずれかの鎖にハイブリダイズするように設計してもよいし、本明細書に開示されるSNP遺伝子型決定方法は一般にいずれかの鎖を標的してもよい。
【0064】
Apo(a)遺伝子中のヌクレオチドの同一性を決定することは、例えば、ヌクレオチドを含む核酸分子に、それぞれ、選択的にハイブリダイズするかまたは近いオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーとともにこの核酸サンプルをインキュベートすること、およびプライマーまたはプローブの選択的ハイブリダイゼーションを検出することによって行うことができる。プローブの選択的ハイブリダイゼーションは、例えば、プローブを検出可能に標識すること、およびサザンブロット分析などのブロット型の分析を用いて標識の存在を検出することによって、検出され得る。プライマーの選択的なハイブリダイゼーションは、例えば、プライマー伸長反応を行うこと、およびプライマーを含むプライマー伸長反応産物を検出することによって検出され得る。所望の場合、プライマー伸長反応は、ポリメラーゼ連鎖反応として行ってもよい。この方法は、1つ以上のヌクレオチドを特定する工程を包含し得る。
【0065】
多くの分析手順を用いて、本発明の多型位置で改変体ヌクレオチドの有無を検出し得る。一般には、対立遺伝子改変の検出には、変異識別技術、必要に応じて増幅反応および必要に応じてシグナル発生システムを要する。多数の変異検出技術が、そのいくつかはPCRに基づくのだが、多数のシグナル発生システムと組み合わせて用いられ得る。対立遺伝子バリエーションの検出のための多くの現行の方法は、Nollau et al.,Clin.Chem.43,1114−1120,1997によって;ならびに標準的な教科書中に、例えば、「Laboratory Protocols for Mutation Detection」、編集U.Landegren,Oxford University Press,1996、および「PCR」、第2版、Newton & Graham,BIOS Scientific Publishers Limited,1997に概説される。Apo(a)遺伝子のSNP検出および遺伝子型決定方法および試薬は、その内容全体が本明細書において参照によって援用される米国特許出願公開第2005/0272054号A1に記載される。
【0066】
配列相同性を共有する2つの分子の2つのヌクレオチド配列または2つのアミノ酸配列の同一性パーセントを決定するために、その配列を最適比較目的で整列させる(例えば、最適アラインメントのためにはギャップを第一および第二の核酸またはアミノ酸配列の一方または両方に導入してもよく、比較目的のためには非相同性配列を無視してもよい)。いくつかの実施形態では、参照配列の長さのうち少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%またはそれ以上を比較目的のために整列させる。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。最初の配列中のある位置が、第二の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占有されるならば、その分子は、その位置で同一である(本明細書において用いる場合、アミノ酸または核酸の「同一性」とは、アミノ酸または核酸の「相同性」に等しい)。2つの配列の間の同一性パーセントとは、その2つの配列の最適アラインメントのために導入されることを要する、ギャップの数および各々のギャップの長さを考慮して、その配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0067】
2つの配列間の配列の比較および同一性のパーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成され得る。(Computational Molecular Biology、Lesk,A.M.編、Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.編、Academic Press,New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1、Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編集,Humana Press, New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;およびSequence Analysis Primer,Gribskov,M.およびDevereux,J.編、M Stockton Press,New York,1991)。いくつかの実施形態において、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(J.Mol.Biol.(48):444−453 1970))を用いて決定される。
【0068】
いくつかの実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の同一性のパーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスならびに40、50、60、70、または80というギャップウェイトおよび1、2、3、4、5、または6という長さウェイトを用いてGCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラム(Devereux,J.ら、Nucleic Acids Res.12(1):387(1984))を用いて決定される。他の実施形態では、2つのアミノ酸配列または2つのヌクレオチド配列の間の同一性のパーセントは、PAM120ウェイト残基表、ギャップ長ペナルティー12およびギャップペナルティー4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)へ組み込まれているE.MyersおよびW.Millerのアルゴリズム(CABIOS,4:11−17(1989))を用いて決定される。
【0069】
SNPを分析するために、選択的SNP対立遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドを用いることが、適切であり得る。標的配列における単一ヌクレオチド変化を検出するそのようなオリゴヌクレオチドは、「対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド」、「対立遺伝子特異的プローブ」または「対立遺伝子特異的プライマー」のような用語によって呼ばれてもよい。多型を分析するための対立遺伝子特異的プローブの設計および使用は、例えば、Mutation Detection A Practical Approach,Cottonら編,Oxford University Press,1998;Saikiら,Nature 324,163〜166(1986);Dattagupta,欧州特許235,726号;およびSaiki,国際公開第89/11548号に記載される。
【0070】
各々の対立遺伝子特異的なプライマーまたはプローブの設計は、変数、例えば、標的核酸分子中のSNP位置に隣接するヌクレオチド配列の正確な組成、ならびにそのプライマーまたはプローブの長さに依存するが、プライマーおよびプローブの使用における別の要因は、そのプローブまたはプライマーと、標的配列との間のハイブリダイゼーションが実施される条件のストリンジェンシーである。高いストリンジェンシー条件ほど、より低いイオン強度の緩衝液および/またはより高い反応温度を利用し、そして安定な二重鎖を形成するためには、プローブ/プライマーと標的配列との間のより完全な一致を必要とする傾向がある。しかし、そのストリンジェンシーが高すぎる場合、ハイブリダイゼーションは、全く生じないかもしれない。対照的に、低いストリンジェンシー条件ほど、より高いイオン強度の緩衝液および/またはより低い反応温度を利用し、そしてプローブ/プライマーと標的配列との間でよりミスマッチの多い塩基による安定な二重鎖の形成が可能になる。例としてであって限定としてではないが、対立遺伝子特異的プローブを用いる高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件についての例示的な条件は、以下のとおりである:5×標準的生理食塩水リン酸EDTA(SSPE)、0.5%NaDodSO(SDS)を含む溶液を用いる55℃でのプレハイブリダイゼーション、同じ溶液中にある標的核酸分子とともに同じ温度でプローブをインキュベートすること、その後、2×SSPEおよび0.1% SDSを含む溶液を用いて55℃または室温で洗浄すること。
【0071】
中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を、例えば、約46℃にて50mMのKClを含む溶液を用いて、対立遺伝子特異的プライマー伸長反応のために用いてもよい。あるいは、この反応は、高温、例えば、60℃にて行ってもよい。別の実施形態では、オリゴヌクレオチド連結アッセイ(OLA)反応(この反応では、2つのプローブが、それらが標的配列と完全に相補的な場合に連結される)のために適切な中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、約100mMのKClの溶液を、46℃という温度にて利用し得る。
【0072】
ハイブリダイゼーションベ−スのアッセイでは、ある個体由来の標的DNAのセグメントにハイブリダイズするが、別の個体由来の対応するセグメントには、その2つの個体由来の個々のDNAセグメントにおける異なる多型形態(例えば、選択的SNP対立遺伝子/ヌクレオチド)の存在に起因してハイブリダイズしない、対立遺伝子特異的プローブを設計してもよい。ハイブリダイゼーション条件は、対立遺伝子間のハイブリダイゼーション強度における検出可能な有意な差異が存在し、かつ好ましくは、本質的には二成分の応答が存在し、それによって、プローブが対立遺伝子のうちの一方のみにハイブリダイズするかまたは一方の対立遺伝子に対して有意により強くハイブリダイズするのに充分なほど、ストリンジェントであるべきである。プローブは、SNP部位を含む標的配列にハイブリダイズしてその結果そのSNP部位がそのプローブの配列に沿ったどこかに整列するように設計されてもよいが、そのプローブは、好ましくは、標的配列のセグメントにハイブリダイズして、その結果、そのSNP部位が、そのプローブの中心位置(例えば、そのプローブのいずれかの末端から少なくとも3ヌクレオチド離れているそのプローブ内の位置)と整列するように設計される。このプローブ設計によって、一般的には、異なる対立遺伝子形態の間でのハイブリダイゼーションにおける良好な識別が達成される。
【0073】
ヌクレオチド配列(ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド)はRNAであってもよいし、またはDNAであってもよく、これは1つの遺伝子もしくはその一部、cDNA、合成ポリデオキシリボ核酸配列などであってもよく、一本鎖または二本鎖であっても、DNA/RNAハイブリッドであってもよい。種々の実施形態では、オリゴヌクレオチド(例えば、プローブまたはプライマー)を含むポリヌクレオチドは、ヌクレオシドもしくはヌクレオチドアナログ、またはリン酸ジエステル結合以外の骨格結合を含んでもよい。一般に、ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、天然に存在する、2’−デオキシリボースに連結されたアデニン、シトシン、グアニンもしくはチミンのようなデオキシリボヌクレオチド、またはリボースに連結されたアデニン、シトシン、グアニンもしくはウラシルのようなリボヌクレオチドである。しかし、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドとしてはまた、天然には存在しない合成ヌクレオチドまたは天然に存在するヌクレオチドの修飾型を含む、ヌクレオチドアナログを含んでもよい。そのようなヌクレオチドアナログは、当技術分野において周知でありかつ市販されており、そのようなヌクレオチドアナログを含むポリヌクレオチドについても同様である(各々が参照として本明細書に組み入れられる、Linら、Nucl.Acids Res.22:5220〜5234(1994);Jellinekら、Biochemistry 34:11363〜11372(1995);Pagratisら、Nature Biotechnol.15:68〜73(1997))。
【0074】
ポリヌクレオチドのヌクレオチドの共有結合は一般にリン酸ジエステル結合である。しかし、この共有結合はまた、チオジエステル結合、ホスホロチオエート結合、ペプチド様結合、またはヌクレオチドと結合して合成ポリヌクレオチドを生成する際に有用な、当業者に公知の任意の他の結合を含む、任意の多数の他の結合である場合もある(例えば各々が参照として本明細書に組み入れられる、Tam et al.,Nucl.Acids Res.22:977−986,1994;EckerおよびCrooke,BioTechnology 13:351360,1995を参照のこと)。天然に存在しないヌクレオチドアナログ、またはヌクレオチドもしくはアナログを連結する結合を組み入れることは、このポリヌクレオチドが、例えば組織培地を含む、ヌクレアーゼ活性を含み得る環境に曝露される場合に、または生きている被験体への投与の際に特に有用な場合がある。なぜなら修飾型ポリヌクレオチドは、分解に対する感受性が低い場合があるためである。
【0075】
天然に存在するヌクレオチドおよびリン酸ジエステル結合を含むポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは化学的に合成することができるほか、適切なポリヌクレオチドをテンプレートとして用いる組換えDNA法を用いて作製することができる。これとは対照的に、ヌクレオチドアナログ、またはリン酸ジエステル結合以外の共有結合を含むポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは一般に化学的に合成されるが、T7ポリメラーゼなどの酵素は、ある種のヌクレオチドアナログをポリヌクレオチド中に取り込むことが可能なので、このようなポリヌクレオチドを適切なテンプレートから組換え的に生成させるために用いてもよい(Jellinek et al.、前出、1995)。従って、ポリヌクレオチドという用語は本明細書において用いる場合、天然に存在する核酸分子であって、細胞から単離され得る核酸分子、および合成の分子であって、例えば、化学合成の方法によって、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などによる酵素的な方法によって調製され得る合成分子を包含する。
【0076】
核酸の試験サンプルは、簡便には血液のサンプル、気管支肺胞洗浄液、喀痰、または被験体(例えば、ヒト)から得られる他の体液もしくは組織である。試験サンプルはその試験サンプル中の配列に相当する核酸配列に等しくてもよい、すなわち対立遺伝子バリエーションの分析前に、任意の従来の技術、例えば、PCRを用いてサンプル核酸の中の領域の全てまたは一部を最初に増幅してもよいことが理解されるであろう。
【0077】
種々の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはオリゴペプチドを検出可能に標識することが有用である場合がある。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの検出可能な標識は、当該分野で周知である。検出可能な標識の特に非限定的な例としては、化学発光標識、放射性標識、酵素、ハプテンまたは固有のオリゴヌクレオチド配列さえ挙げられる。
【0078】
多型を特定する方法はまた、特異的な結合対メンバーを用いて行ってもよい。本明細書において用いる場合、「特異的な結合対メンバー」という用語は、特異的な結合対の別のメンバーに対して特異的に結合するかまたは選択的にハイブリダイズする分子をいう。特異的な結合対メンバーとしては、例えば、プローブ、プライマー、ポリヌクレオチド、抗体などが挙げられる。例えば、特異的結合対メンバーとしては、多型遺伝子座を含む標的ポリヌクレオチドに対して選択的にハイブリダイズするか、またはテンプレートとして標的ポリヌクレオチドを用いて生成される増幅産物にハイブリダイズする、プライマーもしくはプローブが挙げられる。
【0079】
本明細書において用いる場合、「特異的な相互作用」または「特異的に結合する」などの用語は、2つの分子が、生理学的条件下で比較的安定な複合体を形成することを意味する。この用語は本明細書において、例えば、多型部位を含むポリヌクレオチドに結合する抗体の相互作用;または多型部位を含むコドンによってコードされるアミノ酸を含むポリペプチドに結合する抗体の相互作用を含む、種々の相互作用を指して用いられる。
【0080】
本発明の方法によれば、抗体は、多型部位を含むコドンによってコードされる特定のアミノ酸を含むポリペプチドに選択的に結合し得る。あるいは、抗体は、例えば、プライマー伸長アッセイを用いて多型部位で特定のヌクレオチド出現についてのみ多型部位に組み込まれている特定の修飾されたヌクレオチドに優先的に結合し得る。
【0081】
特異的な相互作用は一般に、例えば、ヒトまたは他の脊椎動物もしくは無脊椎動物などの生きた個体に生じる条件を含む、生理学的条件下で、ならびに哺乳動物細胞または別の脊椎動物生物体もしくは無脊椎動物生物体由来の細胞を維持するために用いられるような細胞培養で生じる条件下で安定である。2つの分子が特異的に相互作用するか否かを決定するための方法は、周知であって、これには、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などが挙げられる。
【0082】
サンプル中の特定の多型についてヌクレオチドの存在を検出するためには当該分野では多数の方法が公知である。このような方法は、Apo(a)遺伝子中の1つ以上の多型を含む、標的ポリヌクレオチドに対して選択的にハイブリダイズする、例えば、増幅プライマー対を含む、1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを利用し得る。
【0083】
対立遺伝子特異的プライマーが、一般には定常プライマーと一緒に、PCR反応などの増幅反応中で用いられ、これによって例えば、ARMS(商標)アッセイに用いられるのと同様に、特定の配列位置での1つの対立遺伝子の選択的な増幅を通じた対立遺伝子の間の識別が得られる。対立遺伝子特異的プライマーは好ましくは、17〜50ヌクレオチド、より好ましくは約17〜35ヌクレオチド、さらに好ましくは約17〜30ヌクレオチドである。
【0084】
対立遺伝子特異的プライマーは好ましくは、検出されるべき対立遺伝子と正確に対応するが、その誘導体であって、ここで、3’末端のヌクレオチドのほぼ6〜8が、検出されるべき対立遺伝子と対応しており、かつ残りのヌクレオチドのうち最大10まで、例えば、8、6、4、2または1がそのプライマーの特性に有意に影響することなく変化してもよい誘導体も考慮される。
【0085】
プライマーは、合成の任意の従来の方法を用いて製造され得る。このような方法の例は、標準的な教科書、例えば、「Protocols for Oligonucleotides and Analogues;Synthesis and Properties,」Methods in Molecular Biology Series;第20巻;編集Sudhir Agrawal,Humana ISBN:0−89603−247−7;1993;第1版に見出すことができる。必要に応じて、このプライマー(単数または複数)は、検出を容易にするために標識されてもよい。
【0086】
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブは、本明細書に規定される位置でApo(a)遺伝子多型を検出するために用いられ得る。このようなプローブの設計は、当該分野の通常技術の分子生物学者には明白であろう。このようなプローブは、任意の都合のよい長さ、例えば、最大50塩基、最大40塩基、さらに好都合なことには最大30塩基長、例えば、8〜25塩基または8〜15塩基長のいずれかである。一般には、このようなプローブは、遺伝子中の対応する野性型または改変遺伝子座に全体として相補的な塩基配列を含む。しかし、必要な場合、1つ以上のミスマッチを導入してもよく、ただし、オリゴヌクレオチドプローブの判別力は過度に影響されない。本発明のプローブは検出を容易にするための1つ以上の標識を担持し得る。
【0087】
本発明の方法を行うのに有用なオリゴヌクレオチドプローブは、例えば、多型の位置(その位置での特定のヌクレオチドの存在が、このプローブの選択的ハイブリダイゼーションの有無によって検出される)を含む、標的ポリヌクレオチドの一部に相補的であり、かつそれにまたがるオリゴヌクレオチドを含んでもよい。このような方法はさらに、標的ポリヌクレオチドおよびハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドとエンドヌクレアーゼとを接触させる工程と、多型部位に存在するヌクレオチドがプローブの対応するヌクレオチドに相補的であるか否かに依存して、プローブの切断産物の有無を検出する工程とを包含し得る。
【0088】
オリゴヌクレオチド連結アッセイはまた、多型位置でのヌクレオチド存在を特定するために用いられ得、ここでは1対のプローブが選択的に、多型の部位に上流にかつ隣接して、および下流にかつ隣接してハイブリダイズし、そのプローブの1つが多型のヌクレオチド出現に相補的な末端ヌクレオチドを含む。プローブの末端ヌクレオチドがヌクレオチド出現に相補的である場合、選択的ハイブリダイゼーションは、末端ヌクレオチドを含み、その結果、リガーゼの存在下で、上流および下流のオリゴヌクレオチドが連結される。従って、連結産物の有無は、多型の部位のヌクレオチド出現の指標である。
【0089】
オリゴヌクレオチドはまた、プライマーとして、例えば、プライマー伸長反応に有用である場合があり、ここでは伸長反応の産物(または産物がないこと)は、ヌクレオチド出現の指標である。さらに、SNPを含む標的ポリヌクレオチドの一部を増幅するために有用なプライマー対が有用である場合があり、ここでは増幅産物を試験して、多型部位でのヌクレオチド出現を決定する。特に有用な方法としては、ハイ・スループット方式へ、多重方式へ、またはその両方へ容易に適合可能な方法が挙げられる。このプライマー伸長または増幅産物は、当該分野で公知の種々の方法を用いて直接もしくは間接的に検出されても、および/または配列決定されてもよい。多型遺伝子座にまたがる増幅産物は、伝統的な配列の方法論(例えば、「ジデオキシ−媒介性連鎖終止法」(「Sanger法」としても公知)(Sanger,F.,et al.,J.Molec.Biol.94:441(1975);Prober et al.Science 238:336−340(1987))および「化学分解法」(「マキサム−ギルバート法」としても公知)(Maxam,A.M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)74:560(1977))(両方とも参照によって本明細書に援用される)を用いて配列決定されて、SNP遺伝座でのヌクレオチド出現が決定され得る。
【0090】
Apo(a)遺伝子中のヌクレオチドの同一性を決定し得る方法としては、「マイクロシーケンシング(microsequencing)」方法が挙げられる。マイクロシーケンシング法は、「所定の」部位で単一のヌクレオチドのみの同一性を決定する。このような方法は、標的ポリヌクレオチドにおける多型の存在および同一性を決定するのに特に有用性を有する。
【0091】
このようなマイクロシーケンシング法、および多型遺伝子座でのヌクレオチド出現を決定するための他の方法は、参照によって本明細書に援用されるBoyce−Jacinoらの、米国特許第6,294,336号に考察される。
【0092】
マイクロシーケンシング法は、Goelet,P.et al.(参照によって本明細書に援用される、国際公開第92/15712号)に開示されるGenetic Bit分析法を包含する。DNA中の多型部位をアッセイするための、さらなるプライマーガイドのヌクレオチド組み込み手順も記載されている(Komher,J.S.et al,Nucl.Acids.Res.17:7779−7784(1989);Sokolov,B.P.,Nucl.Acids Res.18:3671(1990);Syvanen,A.−C.,et al.,Genomics8:684−692(1990);Kuppuswamy,M.N.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:1143−1147(1991);Prezant,T.R.et al.,Hum.Mutat.1:159−164(1992);Ugozzoli,L.et al.,GATA 9:107−112(1992);Nyren,P.et al.,Anal.Biochem.208:171−175(1993);およびWallace,国際公開第89/10414)。これらの方法はGenetic Bit分析とは、それらが全て、多型部位の塩基の間で識別するために標識デオキシヌクレオチドの組み込みに依拠しているという点で異なる。このような方式では、このシグナルは、組み込まれたデオキシヌクレオチドの数に比例するので、同じヌクレオチドの実行で生じる多型は、その実行の長さに比例するシグナルを生じ得る(Syvanen,A.−C.,et al.Amer.J.Hum.Genet.52:46−59(1993))。
【0093】
別のマイクロシーケンシング方法は、Mundy,C.R.(米国特許第4,656,127)およびCohen,D.ら(仏国特許第2,650,840号;国際公開第91/02087号)に記載されており、これは、多型部位のヌクレオチドの同一性を決定するための溶液ベースの方法を考察している。米国特許第4,656,127号のMundyの方法にあるとおり、多型部位のすぐ3’側の対立遺伝子配列に相補的であるプライマーを使用する。
【0094】
配列を分析するためにゲル電気泳動を使用するのに生じる問題に対しては、マイクロシーケンシングの別方法が開発されている。Macevicz(米国特許第5,002,867)は、例えば、オリゴヌクレオチドプローブの複数の混合物とのハイブリダイゼーションを介して核酸配列を決定するための方法を記載している。このような方法によれば、標的ポリヌクレオチドの配列は、1つの位置で非改変体ヌクレオチドを、および他の位置で改変体ヌクレオチドを有するプローブのセットと標的が引き続きハイブリダイズすることを可能にすることによって決定される。Maceviczの方法は、標的とプローブのセットとをハイブリダイズすること、次いでそのセットの少なくとも1つのメンバーが標的にハイブリダイズし得る部位の数(すなわち、「マッチ」の数)を決定することによって標的のヌクレオチド配列を決定する。この手順は、プローブのあるセットの各々のメンバーが試験されるまで繰り返される。
【0095】
Boyce−Jacinoら、米国特許第6,294,336号では、SNPが標的に選択的に結合する最も3’側のヌクレオチドである部位でポリヌクレオチド標的に選択的に結合するプライマーを利用することによって、核酸分子(DNAまたはRNAのいずれか)の配列を決定するための固相配列決定方法が得られる。
【0096】
従って、上記の方法を用いて、アセチルサリチル酸応答関連のハプロタイプ対立遺伝子、またはアセチルサリチル酸応答関連SNPのヌクレオチド出現は、増幅反応、プライマー伸長反応、またはイムノアッセイを用いて特定できる。アセチルサリチル酸応答関連のハプロタイプ対立遺伝子、またはアセチルサリチル酸応答関連SNPのヌクレオチド出現はまた、結合対のメンバーがアセチルサリチル酸応答関連SNPにまたはその近くに特異的に結合する条件下で、サンプル中のポリヌクレオチドまたはサンプル由来のポリヌクレオチドと、アセチルサリチル酸応答関連SNPを含んでいるポリヌクレオチド領域に対して選択的にハイブリダイズする特異的な結合対のメンバーとを接触させることによって特定され得る。特異的な結合対のメンバーは、抗体であっても、またはポリヌクレオチドであってもよい。
【0097】
本発明の方法で用いられる抗体としては、Apo(a)遺伝子中の多型を包含するポリヌクレオチドに特異的に結合する抗体が挙げられる。さらに、抗体は、多型を含むコドンによってコードされるアミノ酸を含むポリペプチドに結合する。これらの抗体は、多型によって部分的にコードされるアミノ酸を含むポリペプチドに結合する。用いられ得る他の方法としては、例えば、IlluminaのInfiniumIIアッセイなどの抗体によって引き続き認識される改変ヌクレオチドを組み込む遺伝子型特定方法が挙げられる。
【0098】
この抗体は、多型遺伝子座を含むコドンによってコードされる第一のアミノ酸を含むポリペプチドには特異的に結合するが、Apo(a)遺伝子中の種々のヌクレオチドの出現を含むコドンによってコードされる第二のアミノ酸を含むポリペプチドには結合しないか、または結合が弱い。
【0099】
抗体としては、限定はしないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多価特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗−Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、および上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが挙げられる。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子のうち任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであってもよい。
【0100】
抗体は、抗体フラグメントを包含し、これには、限定はしないが、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)およびVLまたはVHドメインのいずれかを含むフラグメントが挙げられる。側鎖抗体を含む、抗原結合抗体フラグメントは、単独で、または以下の全体または一部と組み合わせて可変領域(単数または複数)を含んでもよい:ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメイン。また、ヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3ドメインとの可変領域(単数または複数)の任意の組み合わせも含む抗原結合フラグメントも含まれる。この抗体は、鳥類および哺乳動物を含む任意の動物由来であってもよい。好ましくは、この抗体は、ヒト、マウス(例えば、マウスおよびラット)、ロバ、シップ ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマまたはニワトリである。この抗体は、単価、二価、三価またはより大きい多価特異性の抗体であってもよい。
【0101】
この抗体は、当該分野で公知の任意の適切な方法によって生成してもよい。目的の抗原に対するポリクローナル抗体は、当該分野で周知の種々の手順によって生成され得る。例えば、本発明のポリペプチドは、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導するために、限定はしないがウサギ、マウス、ラットなどを含む種々の宿主動物に投与され得る。種々のアジュバントを用いて、その宿主の種に応じて、免疫学的応答を増大してもよく、アジュバントとしては、限定はしないが、フロイント(完全または不完全)、鉱物ゲル、例えば、水酸化アルミニウム、界面活性剤、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルジョン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、ジニトロフェノール、および潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびCorynebacterium parvumが挙げられる。このようなアジュバントはまた、当該分野で周知である。
【0102】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組み換えおよびファージディスプレイ技術、またはそれらの組み合わせの使用を含む、当該分野で公知の広範な種々の技術を用いて調製され得る。例えば、モノクローナル抗体は、当該分野で公知であり、例えば以下で教示される技術を含むハイブリドーマ技術を用いて産生され得る;Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版.1988);Hammerling,et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981)(この引用文献はその全体が参照によって本明細書に援用される)。本明細書において用いる場合、「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を通じて産生される抗体には限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを包含する単一クローン由来の抗体を指し、それを産生する方法ではない。
【0103】
全ての関連の表現型および遺伝子型の情報が得られた後、統計学的分析を行って、個体の表現型特徴を有する対立遺伝子または遺伝子型の存在の間になんらかの有意な相関があるか否かを確認する。対立遺伝子の頻度、Hardy−Weinbergの平衡統計学、およびSNPの間の連鎖不均衡(LD)を計算することができる。次いで、ハプロタイプを、例えば、EMアルゴリズムを用いて計算できる(Excoffier and Slatkin,Mol Biol Evol.1995 September;12(S):921−7)。頻度を推定するためにEMアプローチを用いないハプロタイプを推論するためには他の方法もある。これらの方法は、組み換えおよび合体(coalescent)を含む、進化史の再構築に基づいており、例えば、プログラムPHASE(Stephens,M.,Smith,N.,and Donnelly,P.American Journal of Human Genetics,68,978−989,2001)に示される。連鎖不均衡係数などの種々のパラメーターに加えて、対立遺伝子頻度、カイ二乗統計学および他の集団遺伝学のパラメーター、例えば、完全交配係数は、症例とコントロール群との間の民族的、祖先の、または他の系統的なバリエーションについて制御するために計算できる。
【0104】
好ましくは、データの調査およびクリーニングは最初に、遺伝子関連について統計学的試験を行う前に行う。サンプルの疫学的および臨床的なデータは、表およびグラフを用いて記述統計学によってまとめることができる。好ましくはデータの確認を行って、データ完成、不整合エントリー、およびアウトライナーについてチェックする。次いで、カイ二乗検定およびt検定(分布が正常でない場合はWilcoxon順位和検定)を用いて、それぞれ、分散および連続型変数について症例とコントロールとの間で有意な相違についてチェックしてもよい。遺伝子型決定の質を確認するために、Hardy−Weinberg不均衡試験を、症例とコントロールとで別々に行ってもよい。症例とコントロールとの両方におけるHardy−Weinberg不均衡(HWE)由来の有意な偏差は個々のマーカーについて、遺伝子型決定の誤差の指標であり得る。HWEがほとんどのマーカーで破られている場合、これは、さらに検討されるべき集団構造の指標である。さらに、Hardy−Weinberg不均衡の場合のみ、マーカーと疾患との遺伝的関連が示され得る(Genetic Data Analysis,Weir B.,Sinauer(1990))。
【0105】
単一のSNPの対立遺伝子が、表現型形質の症例またはコントロールの状態に関連しているか否かを試験するために、当業者は、症例とコントロールにおいて対立遺伝子頻度を比較し得る。標準的なカイ二乗検定およびフィッシャー正確検定を、2×2の表で行ってもよい(2つのSNP対立遺伝子×目的の分類形質中の2つの結果)。SNPの遺伝子型が関連するか否かを試験するために、カイ二乗検定を3×2の表で行ってもよい(3遺伝子型×2結果)。スコア検定も、遺伝子型関連性について行って、症例およびコントロールにおける3つの遺伝子型頻度(主要なホモ接合性、ヘテロ接合性、およびマイナーなホモ接合性)を対比し、かつ3つの異なる遺伝方式、すなわち、ドミナント(対比係数2、−1、−1)、アディティブ(対比係数1、0、−1)およびリセッシブ(対比係数1、1、−2)を用いて傾向について探す。マイナー対メジャーな対立遺伝子のオッズ比、ならびに野性型遺伝子型に対する異種接合性および同種接合性の改変体についてのオッズ比は、所望の信頼限界、通常は95%で計算する。
【0106】
コントロールから症例のマトリックスを識別するための値を有する多型は、もしあれば、任意の関係を記載する数学形式で示され、関連性(試験および効果)統計学を伴う場合がある。少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%、最も好ましくは95%の信頼区間、あるいは0.05未満の非有意性の確率で、多型マーカーとアセチルサリチル酸応答との関係を示す統計分析結果を用いてもよい。
【0107】
さらなる局面では、本発明の診断方法を用いて、アセチルサリチル酸処理の薬理遺伝学を評価して、さらなる心血管系イベントのリスクを低下する。従って、Apo(a)遺伝子の特定の対立遺伝子改変体を担持する個体は、アセチルサリチル酸処理などの異なる剤または治療に対して反応する能力が異なっている場合がある。これは、薬物治療に対する個体の応答に直接の影響を有し得る。本発明の診断方法は、アセチルサリチル酸処置に対する臨床的応答を予測するために、および治療用量を決定するために両方に有用であり得る。
【0108】
従って、本発明は、処置レジメンを選択または処方するための方法(例えば、アセチルサリチル酸の投与量および投与の頻度などの特定の処置レジメンを選択するための個々の方法に対してアセチルサリチル酸を投与するか否かを決定するか、またはアセチルサリチル酸治療に応答する可能性が少ないと予想される個体に対して別の抗血栓治療(すなわち、アセチルサリチル酸以外)を選択するための方法、ならびにアセチルサリチル酸治療から経験する毒性または他の所望されない副作用の確率を決定するための方法など)を提供する。本発明はまた、個体であって、アセチルサリチル酸治療または他の治療がその個体の遺伝子型に基づいて投与される個体を選択するための方法、ならびに個体の遺伝子型に基づいてアセチルサリチル酸治療または他の治療剤の臨床トライアルについて個体を選択する(例えば、アセチルサリチル酸治療に対して正に応答する可能性が最も高いトライアルに参加する個体を選択する)ための方法も提供する。
【0109】
本発明のSNPはまた、新規な治療標的を特定するために用いられ得る。例えば、多型またはその産物を含む遺伝子、ならびにこれらの多型またはその産物で直接または間接的に調節されるか、またはそれと相互作用する遺伝子またはそれらの産物を、治療剤の開発のために標的してもよい。本発明の方法は、Apo(a)遺伝子の1つ以上の改変体を選択的に標的する新規な薬物治療の開発で用いられる。特定の改変体と、疾患の発症に対する素因または薬物治療に対する応答との間の関係の特定は、新規薬物の設計に重要な影響を有し得る。薬物は、疾患プロセスに関与する改変体の生物学的活性を調節するために設計され得る。治療剤は、例えば、標的の遺伝子または遺伝子産物の機能またはレベルを調節する、低分子、タンパク質、タンパク質フラグメントまたはペプチド、抗体、核酸、またはそれらの誘導体もしくは模倣物から構成されてもよい。
【0110】
本発明の別の局面によれば、本発明の対立遺伝子特異的ヌクレオチドプローブ、および/または本発明の対立遺伝子特異的プライマーを含む診断キットが提供される。この診断キットは、本発明の方法における使用のための適切なパッケージおよび説明書を含み得る。このようなキットはさらに、適切な緩衝液(単数または複数)および熱安定性ポリメラーゼなどのポリメラーゼ(単数または複数)、例えばtaqポリメラーゼを含んでもよい。
【0111】
本発明の別の局面では、本発明の単一ヌクレオチド多型は、連鎖研究の遺伝子マーカーとして用いてもよい。これは特に、比較的高頻度の多型にあてはまる。低頻度の多型は特に、下記のようなハプロタイピイングに有用であり得る。ハプロタイプは、単一(父親または母親)の染色体上の多型部位(例えば、遺伝子内)に連鎖して見出される対立遺伝子のセットである。遺伝子内の組み換えがランダムである場合、2程度の多くのハプロタイプがある場合があり、ここで2は各々のSNPの対立遺伝子の数であって、nはSNPの数である。臨床応答に関係する変異または多型を特定するための1アプローチは、目的の集団中で特定され得る全てのハプロタイプを用いて関係性研究を行うことである。各々のハプロタイプの頻度は、その最もまれな対立遺伝子の頻度によって制限され、その結果対立遺伝子の頻度が低いSNPは、低頻度ハプロタイプのマーカーとして特に有用である。特定の臨床特徴に関連する特定の変異または多型は、集団内で低頻度である可能性が高いので、低頻度SNPはこれらの変異を特定するのに特に有用であり得る。
【0112】
本発明の別の局面によれば、処置の方法が提供される。処置の方法は、ヒト被験体が、染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)でのシトシンまたはグアニンによって特徴づけられるApo(a)多型を有することに基づいてこのヒト被験体を選択する工程と、この被験体がこの多型を有するせいで有害な心血管系イベントのリスクを低減するために、この被験体に対してアセチルサリチル酸またはアセチルサリチル酸以外の剤(例えば、抗血栓剤、例えば、チエノピリジンまたはチエノピリジン誘導体)の特定の用量を投与することを包含する。
【0113】
ヒト被験体の状態の好ましい決定は臨床的に有用である。臨床的な有用性の例としては、どの抗血栓薬物(単数または複数)を投与するかを決定すること、および/または薬物(単数または複数)の有効量を決定することを包含する。抗血栓剤の例は、上記される。
【0114】
本発明は、将来の心血管系イベントのリスクを低減するためのアセチルサリチル酸処置に対するヒト被験体の応答性を評価するための方法に関する。本発明の方法は、被験体のアセチルサリチル酸応答についての推論を単独でまたは組み合わせて可能にする、被験体のApo(a)遺伝子の6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)位置でヌクレオチドの同一性を決定することに一部は基づく。アセチルサリチル酸応答は、心血管系の障害のリスクの低下である場合がある。そのようなものとして、本発明の組成物および方法はまた、例えば、アセチルサリチル酸処置に対して、またはアセチルサリチル酸以外の抗血栓剤での処置に対して応答しやすいか、または応答する可能性が低い個体または患者を特定するために、有用である。本発明の組成物および方法は、個体または患者が、心血管系の障害のリスクを低減するためにアセチルサリチル酸またはアセチルサリチル酸以外の抗血栓剤の用量の変化を要し得ることを予測または決定するのに有用である。
【0115】
本発明の別の局面によれば、あるアッセイが提供される。このアッセイは、Apo(a)タンパク質(例えば、単離されたApo(a)タンパク質)に対して、または染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置でシトシンまたはグアニンを有する(Apo(a))遺伝子によってコードされるLp(a)に対して優先的に結合する剤についてスクリーニングする工程を包含する。
【0116】
本発明はまた、別のアッセイを提供する。このアッセイは、Apo(a)タンパク質(例えば、単離されたApo(a)タンパク質)に対して、または染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置でチミンまたはアデニンを有する(Apo(a))遺伝子によってコードされるLp(a)に対して優先的に結合する剤についてスクリーニングする工程を包含する。
【0117】
このスクリーニングアッセイは、優先的に多型に結合する抗血栓剤のなかで選択するために用いられ得る。既存の抗血栓剤のバージョンを変更することまたは作製すること、続いて、このようなバージョンが本発明のスクリーニングアッセイ中の1つまたは別の多型を優先的に結合する相対能力を試験することを通じて、合理的な薬物設計を行ってもよい。同様に既存のまたは新規な薬剤の化学的ライブラリーをこのような結合についてスクリーニングしてもよい。
【0118】
当業者は、スクリーニングの方法にはなじみがある。スクリーニングアッセイは、ある剤がLp(a)タンパク質に結合する能力を測定するアッセイを包含する。例えば、Lp(a)の多型に優先的に結合する剤をスクリーニングすることは、この剤とLp(a)の多型とを接触させる工程と、Lp(a)の多型に対するこの剤の結合を決定する工程と、この剤の結合をこの多型を含まないLp(a)の多型に対して比較する工程を包含し、ここでこの多型を含まないLp(a)の多型に対するこの剤の結合に対して比較した、Lp(a)の多型に対するこの剤の結合の増大は、この剤がLp(a)の多型における有効性が改善した抗血栓剤であることを示しており、ここでこの多型を含まないLp(a)の多型に対するこの剤の結合に対して比較した、Lp(a)の多型に対するこの剤の結合の減少は、この剤がLp(a)の多型における有効性が低下した抗血栓剤であることを示している。当業者は、この方法、ならびに限定はしないが、直接結合アッセイ、競合結合アッセイ、非競合結合アッセイ、機能的阻害アッセイ、ハイスループットスクリーニングアッセイなどを含む他のスクリーニング方法にはなじみがある。
【0119】
本発明は、以下の実施例を参照して例示されるが限定はされない。
【実施例】
【0120】
(実施例1)
リポタンパク質(a)[Lp(a)]は、コレステロールリッチの脂質と一緒に単一のアポリポタンパク質B−100分子に対するジスルフィド結合を通じて共有結合された単一の(Apo(a))分子からなる血漿画分である(1)。Lp(a)の生物学的画分は、未確認のままであるが(2、3)、高レベルのLp(a)は、特にLDL−Cも上昇しているときは、心血管系(CV)のリスクの増大に関連している(4〜6)。Lp(a)のコレステロール保有の局面は、脂質ベースの生物学に対する関連の心血管系リスクに見当がかなり集中していた(7〜11)。しかし、アポリポタンパク質(a)はまた、プラスミノーゲンに対して極めて相同性であって、アポリポタンパク質(a)中にタンパク質分解性活性が認識されないにもかかわらず、この相同性は、恒常性、血小板機能および血栓におけるLp(a)の役割に対する心血管系のリスクの別の検討に集中していた(12〜18)。
【0121】
アポリポタンパク質(a)遺伝子座はなかでも、ヒトゲノム中で最も多型である。アポリポタンパク質(a)の遺伝子型改変体は、広範なLp(a)値に関連しており、かつLp(a)の遺伝力の多くを占める(19〜22)。Lp(a)値に影響する公知のバリエーションのほとんどが、タンパク質のアミノ末端に向かって位置するKringle(Kr)IV2型ドメインの3〜40リピートの間の形態をとる(1、23)。この高い程度のKrIV2型の多型は、アポリポタンパク質(a)の単一のKrVドメインを認識するアッセイ試薬の近年の開発まで、血漿Lp(値)を測定するための課題であって、Kr IV2型リピートとは交差反応しない(24、25)。Lp(a)値と関連している他のアポリポタンパク質(a)遺伝子改変体としては、単一ヌクレオチド多型(SNP)、ならびに、挿入−欠失多型、とりわけ、プロモーター中の、ペンタヌクレオチド配列、TTTTAが挙げられる(26〜28)。さらに、アポリポタンパク質(a)遺伝子座の多型は、コピー数バリエーションを包含すると思われる(29)。
【0122】
近年、SNP rs3798220(アポリポタンパク質(a)のプラスミノーゲンプロテアーゼ様ドメイン中のイソロイシン〜メチオニン置換をコードする)は、Lp(a)値および一般的な心血管疾患の両方との関連の新規な候補として示唆されている(Luke et al.,submitted(30))。従って、この多型の遺伝子型は、低用量のアスピリンまたはプラシーボに無作為に割り当てられ、次に10年以上にわたって心血管系イベントの発生について追跡されたウーマン・ヘルス・スタディ(Women’s Health Study)(WHS)の当初健康な女性で26,274例のうちから確認された(31)。この設定によって、プロスペクティブ評価の機会はLp(a)値および血管のリスクに関連するrs3798220だけでなく、アスピリンとリスクに対する遺伝子的影響との間の相互作用も利用可能である。研究参加者のほとんどはコーカサス人であったが、異なる生物地理的祖先を有する集団のなかでも他のアポリポタンパク質(a)改変体の以前の比較で見出されるとおり、rs3798220とLp(a)値との間の関連に対する集団特異的な影響に取り組むには、非コーカサス人の参加者の数も十分であった(32〜36)。
【0123】
WHSにおける25,038例のコーカサス人参加者のうち、アポリポタンパク質(a)遺伝子におけるrs3798220のマイナーな対立遺伝子は、1.9%というマイナー対立遺伝子頻度について、904(3.6%)ヘテロ接合性および15(0.06%)ホモ接合性で担われた。これらの遺伝子型は、ヘテロ接合性のわずかな欠損およびマイナー対立遺伝子の過剰なホモ接合性に起因して、Hardy−Weinberg平衡から境界線の偏差を示す(p=0.048)。年齢、BMI、喫煙率、ホルモン補充療法の使用、および閉経状態、ならびに高血圧および糖尿病の頻度は、3つの遺伝子型クラスの間で異なることはなかった(表1)。しかし、マイナーな対立遺伝子のヘテロ接合性(79.3mg/dL)およびホモ接合性のキャリアにおける中央Lp(a)値(153.9mg/dL)は、非キャリアのLp(a)値よりもそれぞれ8倍および15倍高かった(10.0mg/dL,p<<0.001)(表1、図1A、B)。この効果は、Lp(a)値について調整した後の有意性の排除によって判定した場合、関連の血漿画分の総コレステロール、LCL−C、およびアポリポタンパク質Bのそれほどではないが有意な上昇の背景にあると考えられた。他の血漿バイオマーカー(炎症のマーカーおよび他の脂質画分を含む)はrs3798220遺伝子型には関連しなかった。マイナーな対立遺伝子のヘテロ接合性とホモ接合性のキャリアとを合わせた分析で、非キャリアでの臨床特徴と比較して、本質的に同一の結果が見出された(データ示さず)。
【0124】
コーカサス人のヘテロ接合性の間のLp(a)値の分布は非キャリアの間でそれとは全く異なっており、完全に二峰性のパターンを有し、これによってこの小集団を、27.9mg/dLより大きい(中央値92.4mg/dL、N=627)Lp(a)を有する第1群および27.9mg/dL未満(中央値5.0mg/dL、N=260)を有する第2群に層別化することが可能になった(図1A〜C)。マイナーな対立遺伝子の全てのホモ接合性キャリアは、27.9mg/dLより大きいLp(a)を有するが、Lp(a)分布の経常を評価するためにはこの群の個体は少なすぎた(図1B)。rs3798220ヘテロ接合性の間のLp(a)の二峰性の分布は、コーカサス人WHS女性での頻度と同様で、rs3798220のマイナーな対立遺伝子の頻度が1.8%であったフィジシィアンズ・ヘルス・スタディ(Physicians’ Health Study)(PHS)のコーカサス人男性1058例の第二の無関係の集団で確認された(図1D)。
【0125】
コーカサス人ヘテロ接合性の間のLp(a)値の二峰性の性質は、標準的な臨床特徴では説明できない。例えば、年齢、BMI、喫煙、糖尿病、閉経状態、高血圧、心疾患の家族歴、またはホルモン補充療法の使用に関して低または高いLp(a)を有するコーカサス人ヘテロ接合性女性の比較においては有意な相違は無かった。同様に、HDL−C、アポリポタンパク質A1、トリグリセリド、C反応性タンパク質、可溶性ICAM−I、フィブリノーゲン、クレアチニン、ホモシステイン、およびHbA1cは全て、ヘテロ接合性の2つの小集団中で比較可能であって、メジャーな対立遺伝子についてのホモ接合性の間のレベルと同様であった。さらに、米国にまたがる全体の地理的な割り当てでは、二峰性のLp(a)値の地域的な基礎は示唆されなかった。LDL−C、総コレステロール、およびアポリポタンパク質Bの値は、低Lp(a)を有するヘテロ接合性に比べて高Lp(a)を有するヘテロ接合性では有意に上昇していた(中央値:LDL−C,130.5mg/dL,対122.5mg/dL;総コレステロール,219.0mg/dL対210.4mg/dL;アポリポタンパク質B,109.9mg/dL対103.1mg/dL;全てp<0.01)、しかし相違は、ここでも、Lp(a)で調整後は有意ではなかった。従って、ヘテロ接合性全体のなかで観察されるこれらの脂質のより高い値は、Lp(a)中の増大によって説明され得る。二峰性の分布は、コーカサス人のヘテロ接合性WHS参加者の間で、これらの脂質のいずれでも観察されなかった。
【0126】
10年の追跡期間の間、総CVD複合エンドポイント初のイベントのうち825例を集団として経験した24,320例のコーカサス人の研究参加者のうち将来の血管イベントのリスクにおいて、ヘテロ接合性におけるrs3798220のマイナー対立遺伝子の単一のコピーによって、約50%の増大がもたらされた(表2;年齢調整したHR 1.50、95%CI:1.09〜2.05、p=0.012)。全体的な低発現率と一致してマイナー対立遺伝子の15のホモ接合性キャリアのうちイベントの発生したものはなく、従って、これらの2〜3個の個体は将来の疾患事象のリスクの分析から排除した。rs3798220の効果の大きさは、MI、虚血性発作および血管再生の特定のエンドポイントと同様であった。従って、主な血管イベント(非致死性MI、非致死性虚血性発作、および心血管系の死)のさらに臨床的に関連するエンドポイントについては、年齢調整した危険率は1.58であった(95%CI:1.07−2.33,p=0.021)。これらの効果は、伝統的な心血管系の危険因子について調整後も統計学的に有意なままであって、その結果、総血管イベントについての完全調節した危険率は、1.50(1.07−2.10,p=0.009)で、メジャーな血管イベントについて完全調整した危険率は1.54(CI:1.01−2.35,p=0.043)であった。ヘテロ接合性の間のリスクの増大のほぼすべてが、Lp(a)値が上昇したものに限定された(表2)。例えば、メジャーな心血管系イベントについては、高Lp(a)[1.78(CI:1.26−2.51,p=0.001)]を有するヘテロ接合性について年齢調整した危険率が大きく、かつ全てのヘテロ接合性についてよりも有意であったが、低Lp(a)[0.84(CI:0.84−1.77,p=0.65)]を有するヘテロ接合性についての危険率は少なく、非キャリアの間でリスクが統計学的に異なる(表2)。
【0127】
rs3798220のコーカサス人のヘテロ接合性の間の心血管系イベント発生のリスクの増大は、低用量アスピリン処置への割り当てではほとんど打ち消された(図2)。特に、ヘテロ接合性の間では、アスピリンに対するランダムな割り当ては、メジャーな血管系イベントの相対リスクの59%低下を伴っていた(95%CI:0.81−0.10,p=0.025)が、アスピリンに対する非キャリアのランダムな割り当てのなかでは、有意な影響を有さなかった(相対リスク低下9%、95%CI:0.023〜−0.09,p=0.31)(図2A)。正式には、アスピリンおよび遺伝子型の相互作用は、有意であった(p=0.05、年齢調整したモデル)。遺伝子型の亜群のなかでアスピリンの種々の効果も、MIおよび虚血性発作(急性プラーク破壊および閉塞性血栓に関連する臨床イベント)のエンドポイントについて観察された。従って、アスピリンなしのヘテロ接合性の正味の遺伝子効果は、主要な血管イベント発生の組み合わせ(年齢調整したHR 2.19,95% CI:1.39−3.46,p=0.0007)、ならびに別々に心筋梗塞(年齢調整したHR 2.43,95% CI:1.23−4.80,p=0.01)および虚血性発作(年齢調整したHR 2.41,95% CI:1.26−4.59,p=0.008)については全体的リスクのほぼ2倍であった(図2A〜C)。しかし、アスピリンの効果は、冠血管再生のエンドポイントについては減弱された(急性閉塞なしの背景にある疾患進行を伴う臨床イベント;相対リスク低下36%、95%CI:0.89〜−0.44,p=0.28)。
【0128】
rs3798220遺伝子型を有するアスピリンの相互作用は、一般にはアスピリンとLp(a)値の上昇との同様の相互作用に一部は関連すると考えられる。rs3798220のマイナーな対立遺伝子のコーカサス人の非キャリアのなかで、アスピリンは90パーセンタイルを超えるLp(a)値(65.1mg/dL)を有するもののうち血管イベントの相対リスクを低下したが、90パーセンタイル未満のLp(a)値を有するもののなかでは最小効果が観察された(図2D)。血管再生エンドポイントについては、Lp(a)値が90パーセンタイルを超えるコーカサス人のなかのアスピリン効果(相対リスク低下39%、95%CI:0.64−0.05、p=0.03)は、コーカサス人のヘテロ接合性のうちアスピリン効果に対する大きさに匹敵した。
【0129】
rs3798220のマイナー対立遺伝子の有病率はWHSの中でコーカサス人(MAF=1.9%)と非コーカサス人との間で顕著に異なった。詳細には、rs3798220でのバリエーションは、自己特定したアフリカ系アメリカ人の中ではほとんど存在しなかった(MAF=0.5%)。対照的に、マイナーな対立遺伝子は、アジア系アメリカ人(MAF=7.6%)、ヒスパニック(MAF=15.1%)、およびネイティブアメリカン(MAF=9.1%)についてコーカサス人の間よりも優勢であった(表3)。アフリカ系アメリカ人と、ヒスパニック、アジア系アメリカ人またはネイティブアメリカンの間、およびヒスパニックとアジア人との間で相違していたので、コーカサス人に比較して対立遺伝子頻度の相違は、全て有意であった。HapMapの遺伝子型決定プロジェクトで、マイナーな対立遺伝子がアジア人(CHB+JPT,MAF=5.6%)では検出されたが、コーカサス人(CEU)またはアフリカ人(YRI)(37)では検出されなかった。HapMapアジア人の間の頻度は、WHSのアジア系アメリカ人小集団での頻度と有意に異なることはなかった(p=0.59)。コーカサス人の間では、種々の程度の混合物に潜在的に関連する対立遺伝子頻度の局所的な相違は、米国にまたがる全体的な地理学的分類では検出できなかった。コーカサス人での知見とは対照的に、Lp(a)のレベルは、WHSのアジア系アメリカ人またはヒスパニックの小集団(その両方ともLp(a)分布を評価するために十分な数の参加者を有した)のヘテロ接合性において上昇もしておらず、二峰性でもなかった。同様に、これらの集団中でrs3798220とCVDの発生との間に関連があるとは考えられなかったが、力は限られていた。
【0130】
米国の初期の健康な女性でのこの大規模研究においては、アポリポタンパク質(a)遺伝子(30)中のrs3798220多型のマイナーな対立遺伝子のコーカサス人キャリアは、Lp(a)のレベルが大きく増大しており、同様に、主要な血管系イベントのリスクが倍であった。しかし、低用量アスピリンに無作為に割り当てられたヘテロ接合性の間では、将来の血管系イベントのリスクの増大は、効率的に無効にされた(相対的リスク低下、アスピリン59%、p=0.025)。非キャリアのなかでも、対照的に、アスピリン治療から利益があるという証拠は最小であった(相対リスク低下は、アスピリン9%、p=0.31)。アスピリンの抗血栓活性の状況では、この薬理学的結果は、以前に示唆されているように、プラスミノーゲンプロテアーゼ様ドメインまたはKrドメインのリジン結合機能をおそらく通じた、血栓におけるLp(a)の直接の役割と一致している(13、38)。rs3798220と心筋梗塞および発作との関連に対するアスピリンの効果が冠血管再生に対するその影響よりも大きいという知見によって、アスピリンと特定のアポリポタンパク質(a)対立遺伝子由来のLp(a)との間の相互作用が急性のプラーク破壊および疾患進行よりも血管閉塞により関係し得るという興味深い可能性が高まる。rs3798220の遺伝薬理学的効果がまた、アスピリンによるアポリポタンパク質(a)発現の潜在的な対立遺伝子依存性の減少に関与するか否かは未知のままである(39、40)。さらに、それらのデータによって、血管系疾患の予防および処置におけるアスピリンまたはチエノピリジンなどのアスピリン代替物の議論の余地のある選択に関する論点である、アスピリン治療からの利益が大きいかまたは少ない小集団を規定するための直接の遺伝子方法が得られる(31、41、42)。
【0131】
rs3798220によってコードされる非同義置換とLp(a)のレベルおよび心血管系のリスクとの間の複雑な関係の分子的基礎は、さらなる解明を要する。詳細には、Lp(a)のレベルおよび分布に対する遺伝子効果によって、アミノ酸置換によって授けられる内因性の生物学的活性に関連する効果(これもLp(a)の上昇に直接寄与する場合がある)から、Lp(a)値の増大に単に関するリスクおよびアスピリン応答に対する効果を識別することが困難になる。同様に、rs3798220とハプロタイプとの間の関係は、アポリポタンパク質(a)遺伝子座では明らかではなく、ただし、例えば、普通でない数の2型KringleIVドメインを有するコーカサス人でのアポリポタンパク質(a)遺伝子座の高発現対立遺伝子に対する連鎖に関与し得る(43,44)。この仮説によってさらに、特にrs3798220が異なる値のLp(a)を指向する2つ以上のハプロタイプに関連する場合、Lp(a)分布の二峰性パターンが説明され得る。
【0132】
対立遺伝子頻度分析は、アジア人でのrs3798220の少なくとも1つの起源と一致しているが、コーカサス人でのこの改変体の存在には取り組まない。コーカサス人でのrs3789220の頻度がそれほどでもないこと、および米国にまたがるその分布に明確な地域的バイアスがないことを考慮すれば、アジア系アメリカ人集団との混合は、説明しにくいと考えられる。しかし、非アフリカ人集団に対してプライベートなほとんどのバリエーションは、正の選択でなく確率過程を通じて生じている場合があり(45)、rs3798220とLp(a)値との関連は、コーカサス人および他の非アフリカ人集団におけるその有意に異なる頻度と組み合わせて、選択およびドリフトの両方が、その生物地理学的分布を担う場合がある可能性を上昇させる。これらのプロセスの両方が、アポリポタンパク質(a)遺伝子座での高レベルの集団特異的遺伝子バリエーションおよび発現、ならびにLp(a)機能についての推測と一致している(3)。
【0133】
Lp(a)の生物学的特性についての手掛かりを得ることは別にして、rs3798220とLp(a)値、心血管系のリスク、およびアスピリン処置の効果の関係は、一般的な複雑な疾患を理解するのにおける遺伝子的アプローチの可能性を示す。これに関しては、この結果によって、遺伝子バリエーションに起因するCVDリスクの特定のタイプを管理するための薬理学的ストラテジーだけでなく、遺伝子ベースのオーダーメード医療を通じた可能な最高の予測を伴って保健医療管理のより広範な望みが得られる。
【0134】
引用文献
【0135】
【化4】

【0136】
【化5】

【0137】
【化6】

【0138】
材料および方法
研究集団:10年間にわたって追跡した、登録時に少なくとも45歳の最初は健康な女性の間で行った、心血管系疾患の一次予防におけるアスピリン(隔日で経口100mg)およびプラシーボの無作為トライアルである、ウーマンズ・ヘルス・スタディ(Women’s Health Study)(WHS)由来の一次研究集団(1,2)。登録時、参加者は、ベースラインの臨床および人口学的情報を得た。28,345例のWHS参加者が血漿および遺伝子分析のために血液を供給した。これらのサンプルのなかで、Hitachi 917アナライザー(Roche Diagnostics,Indianapolis,ID.)上で、Kr IV2型リピートの数に影響されない濁度検定で、ベースラインのLp(a)値を測定した(3)。他の脂質画分、炎症バイオマーカーおよび他の血漿成分のベースラインの測定は、以前に記載されている(4)。追跡期間の間に調整した心血管系イベントの総発生には、プラーク破裂および血管閉塞、例えば、心筋梗塞(MI)、虚血性発作および心血管系死に代表的に関連するもの、ならびに経皮経管冠動脈形成術(PTCA)または冠動脈バイパスグラフト(CABG)による血管再生として規定される、背景にあるアテローム性動脈硬化症の進行に代表的には関係するものを包含した。主な心血管系イベントの発生は、心筋梗塞、虚血性発作または心血管系死として規定された。さらに、rs3798220と血漿Lp(a)値との間の関係は、フィジシャンズ・ヘルス・スタディ(Physicians Health Study)(PHS)に関与していた1058例のコーカサス人男性の独立した群で評価した(5)。これらのPHS参加者のうち、Lp(a)値は、標準的な臨床ELISAベースの方法を用いて決定した(6)。
【0139】
遺伝子型決定:WHS参加者におけるrs3798220の遺伝子型は、3ngのゲノムDNA由来の標的配列のPCR増幅と、引き続く対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチド連結とを組み合わせたオリゴヌクレオチド連結手順によって決定した(7)。次いで、2つの対立遺伝子の連結産物をハイブリダイゼーションによって分離して、別々に異なるLuminex(登録商標)100TM×MAPマイクロスフェア(Luminex,Austin,TX)に各々がカップリングされた特定のオリゴヌクレオチドを生成した。捕獲された産物をストレプトアビジンR−フィコエリトリン(Prozyme,San Leandro,CA)で蛍光標識して、マイクロスフェアスペクトルに基づいてソートして、Luminex(登録商標)100TM装置によって検出した(8)。PHS中のrs3798220の遺伝子型は、記載どおり(ABI,Foster City),蛍光ベースの、対立遺伝子特異的、リアルタイムDNA増幅方法で決定した(9)。それぞれWHSおよびPHS集団については、首尾よい遺伝子型決定のサンプルの画分は、96.3%および97.8%であった。遺伝子型決定のためのDNAサンプルの女性27,289例のうち、rs3798220遺伝子型、Lp(a)値、年齢および心血管系イベント発生頻度の完全確認は25,436で利用可能であった。これらのうち、24,320がコーカサス人、468例がアフリカ系アメリカ人、282例がアジア系アメリカ人、262例がヒスパニック、62例がネイティブアメリカン、および42例が祖先不明であった。
【0140】
統計学的方法:Hardy−Weinberg平衡からの偏差は、対数尤度比検定を用いて評価した。3つの遺伝子型クラスの間の臨床的共分散の相違は、正規分布した特徴についてのANOVA手順によって、非正規分布した特徴についてクラスカル−ワリス検定によって、および分類別特性についての割合のカイ二乗検定によって評価した。同様に、異なる生物地理的祖先の集団の対の間の対立遺伝子頻度に相違の有意差は、カイ二乗検定で決定した。Lp(a)値におけるおよびrs3798220対立遺伝子のマイナー対立遺伝子頻度における地理学的バイアスの分析のためには、登録時の住居の位置を米国の北部、南部、中西部、南西部、山地および西端の地域に相当する6つの群のうちの1つに分類した。Lp(a)のレベルまたは対立遺伝子頻度を説明するのにおけるこれらの割り当ての有意差は、ロジスティック回帰またはカイ二乗分析で決定した。rs3798220とCVDの発生のリスクとの間の関連の予測的評価は、年齢または伝統的なリスク共分散について調整したCox比例ハザードモデルで行った(年齢、血圧、糖尿病歴、喫煙状態、心筋梗塞の家族歴、LDL−CおよびHDL−C)。報告された全ての分析では、Coxモデルの比例の仮説は、拒絶できなかった(p>0.05)。アスピリン処置に関連するリスクの相違は、Coxモデルでの相互作用項を含むことによって、またはアスピリンもしくはプラシーボに対するその割り当てに従って、参加者を層別化する分析によって決定した。
【0141】
コーカサス人のrs3798220ヘテロ接合性の間のLp(a)のレベルの検討によって、明確な二峰性分布が明らかになった。1つのサブグループは、マイナーな対立遺伝子の非キャリアでも観察される近似的対数正規分布の低いLp(a)値を有したが、他のサブグループは、近似的な正規分布の高いLp(a)値を有した。従って、それらの参加者は、期待値最大化(EM)アルゴリズムを有するLp(a)にフィットした、独立した対数正規分布[低Lp(a)について]および正規分布[高Lp(a)について]の混合物として観察された二峰性の分布をモデリングすることによって低または高Lp(a)サブグループに分類された(10)。EMアルゴリズムにおける0.5という責任値に相当する27.9mg/dLのLp(a)値を用いて、低Lp(a)群から高Lp(a)群を識別した。この2分布モデルでの分類は、887例のうち806例の割り当て(91%)が少なくとも95%の確実性である責任値を有するという点で本質的に明白であった。
【0142】
材料および方法の引用文献:
【0143】
【化7】

【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
【表3】

【0147】
(実施例2)
欧州人−アメリカ人、アジア人−アメリカ人およびヒスパニック系アメリカ人におけるrs3798220を有するLD中のSNPバリエーションを決定するためのWHSサンプル中のLPA遺伝子座およびその近位の40個の追加のSNPの遺伝子型決定
本発明者らは、rs3798220遺伝子型および自己報告された祖先(欧州人−アメリカ人(すなわち、白人またはコーカサス人)、アジア人−アメリカ人、またはヒスパニック系アメリカ人)の両方に基づいて選択したWHS由来のサンプルのサブセット中のLPA(アポリポタンパク質(a)の遺伝子)および近隣の遺伝子座で40個の追加のSNPを遺伝子型決定した。次いで、本発明者らは、これらの新規なSNPとrs378220との間の連鎖不均衡(LD)を推定した。サンプルはランダムに選択したのではなく、rs3789220に基づいて選択したので、本発明者らは、サンプルから直接対立遺伝子頻度およびLDを簡単に見積もることはできず、rs379220に基づくサンプリングストラテジーを考慮して観察された遺伝子型と予想される遺伝子型との間の相違を最小にすることによって対立遺伝子頻度およびLDを推測しなければならなかった。その結果は下に示した:
1)2つのSNP(rs9457931 dbSNP@NCBI(染色体6:160849894 NCBIビルド128での単一ヌクレオチド多型)およびrs9457927 dbSNP@NCBI(染色体6:160830272 NCBIビルド128での単一ヌクレオチド多型))はWHSコーカサス人(欧州人−アメリカ人)のうちrs3798220を有するほぼ完全なLDにあった。両方のSNPが隣接するLPAL2遺伝子にある(リポタンパク質,Lp(a)−様2前駆体遺伝子、アポリポタンパク質(a)の遺伝子に隣接);
2)他のSNPは、LD〜rs3798220の範囲を有する;ならびに
3)非欧州人の小集団に極めて異なるLDのパターンがある。本発明者らは、これらの結果を解釈して、実施例1で本発明者が記載した効果が3つ全てのSNP(rs3798220、rs9457931、rs9457927)を担持する対立遺伝子に関係するということを示唆する。
(実施例3)
別個の祖先を有するダラス・ハート・スタディ(Dallas Heart Study)由来の3つのサブグループ中のrs3798220遺伝子型、Kringle IV2型リピートの数およびLp(a)発現の間の関係。
【0148】
本発明者らは、血漿Lp(a)のアポリポタンパク質(a)成分(すなわち、発現されたアポ(a)タンパク質)中のKr IV、2型リピート(KrIV2r’s)の数が以前に決定されている(Circulation.2005;111:1471−1479)ダラス・ハート・スタディ(DHS)(The American Journal of Cardiology Volume 93,Issue 12,15 Jun.2004,1473〜1480頁)中で遺伝子型決定されたrs3798220を有した(Circulation 2005;111:1471〜1479)。この集団は、男性および女性の両方を、非ヒスパニック白人(欧州人祖先)、黒人(アフリカ人祖先)およびヒスパニック交えて、全部で3529例のサンプルを包含した。この分析は、rs3798220のマイナー対立遺伝子と、発現されたKrIV2rの数との間の対応を、できるだけ祖先に依存して特定しようとしていた。この分析は、2つの方法で分析を行った。まず初めに、全ての個体を考慮して、各々の個体のKrIV2r対立遺伝子を(DNAレベルで)、発現された対立遺伝子に対して(タンパク質レベルで)等価であると仮定した。すなわち、1つのKrIV2rのみを発現した個体は、LPA遺伝子座でその対立遺伝子の2つのコピーを有すると仮定した(3529個体)。2番目に、本発明者らは、分析から、発現された唯一のKrIV2r対立遺伝子を有する668例を除いて、2つの明らかに別個のKrIV2r対立遺伝子(全部で2859)を有する個体のみを考慮した。その結果は両方に極めて類似であった。すなわち、1)非ヒスパニック白人のうち、rs3798220のマイナー対立遺伝子は、17KrIV2rリピートと強力に相関しており、16または18リピートに対してはそれより程度が劣った(ただし16、17および18リピートの間の相違は、KrIV2r数についてのアッセイの解に関連し得る)(図3);2)非ヒスパニック白人のうち、少数のKrIV2rを有する対立遺伝子は一般に、高レベルのLp(a)を発現する(図4);3)17のKrIV2rを発現する非ヒスパニックの白人は、高レベルのLp(a)を有し、さらに、また、rs3798220のマイナーな対立遺伝子の1コピーを担持する個体は、有意に十分高いレベルのLp(a)を有する(11頁、下の右側)(図5);および4)KrIV2r’の分布、発現レベルとのそれらの関係、およびrs3798220とのそれらの関係は、異なる祖先群で異なっており、その結果rs3798220および非ヒスパニック白人で観察されるLp(a)の過度の値の相関は、他の祖先の群では観察されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
将来の心血管系イベントのリスクを減らすためのアセチルサリチル酸処理に対するヒト被験体の応答性を評価するための方法であって:
ヒト被験体のアポリポタンパク質(a)(Apo(a))遺伝子の染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置で単一ヌクレオチド多型の同一性を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
染色体6:160880877の位置のシトシンまたはグアニンによって特徴付けられる多型の存在が、アセチルサリチル酸に対する応答性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験体由来の血液サンプル中のリポタンパク質(a)(Lp(a))のレベルを決定する工程をさらに包含する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体が、血中でLp(a)のレベルが上昇している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Lp(a)の前記レベルが前記被験体由来の前記血液サンプル中で約10mg/dl以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Lp(a)の前記レベルが前記被験体由来の前記血液サンプル中で約15mg/dl以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
Lp(a)の前記レベルが前記被験体由来の前記血液サンプル中で約20mg/dl以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
Lp(a)の前記レベルが前記被験体由来の前記血液サンプル中で約25mg/dl以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
染色体6:160880877の位置のチミンまたはアデニンによって特徴付けられる多型の存在が、アセチルサリチル酸に対する非応答性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記心血管系イベントが、心筋梗塞、発作、急性冠症候群、心筋虚血、慢性安定狭心症、不安定狭心症、心血管系死亡、冠動脈再狭窄、冠ステント再狭窄、冠ステント再血栓症、血管再生、血管形成術、一過性虚血性発作、肺塞栓症、血管閉塞または静脈血栓症である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記多型の同一性が、前記被験体から得た核酸と、核酸プローブとを接触することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記多型の同一性が、対立遺伝子特異的プローブハイブリダイゼーション、対立遺伝子特異的プライマー伸長、対立遺伝子特異的増幅、5’ヌクレアーゼ消化、分子ビーコンアッセイ、オリゴヌクレオチド連結アッセイ、サイズ分析、または一本鎖高次構造多型によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記多型の同一性が、前記被験体から得られた核酸を配列決定することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
アッセイであって、
ある薬剤と、染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)でヌクレオチドのシトシンまたはグアニンを有する(Apo(a))遺伝子によってコードされるアポリポタンパク質(a)(Apo(a))タンパク質とを接触させる工程と、
該単離されたApo(a)タンパク質に、またはリポタンパク質(a)(Lp(a))に対する該薬剤の結合を評価する工程と、
コントロールに対する結合を比較する工程と、
を包含する、アッセイ。
【請求項15】
アッセイであって、
ある薬剤と、染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)でヌクレオチドのチミンまたはアデニンを有するアポリポタンパク質(a)遺伝子によってコードされるApo(a)タンパク質とを接触させる工程と、
該単離されたApo(a)タンパク質に対する該薬剤の結合を評価する工程と、
コントロールに対する該結合を比較する工程と、
を包含する、アッセイ。
【請求項16】
前記コントロールが、前記単離されたApo(a)タンパク質に対する、Lp(a)に対するもしくは血小板に対するアセチルサリチル酸の結合の測定、または血小板とのアセチルサリチル酸の相互作用の測定を含む、請求項14または15のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項17】
ヒト被験体が染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)でシトシンまたはグアニンによって特徴付けられるApo(a)多型を有することに基づいて、該ヒト被験体を選択する工程と、
該被験体が多型を有する理由で、将来の心血管系イベントのリスクを低減するために該被験体に対してアセチルサリチル酸を投与する工程と、
を包含する、処置の方法。
【請求項18】
前記ヒト被験体がまた、血中でリポタンパク質(a)(Lp(a))のレベルが上昇している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
Lp(a)の前記レベルが、前記被験体由来の血液サンプル中で約10mg/dl以上である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
Lp(a)の前記レベルが、前記被験体由来の血液サンプル中で約15mg/dl以上である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
Lp(a)の前記レベルが、前記被験体由来の血液サンプル中で約20mg/dl以上である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
Lp(a)の前記レベルが、前記被験体由来の血液サンプル中で約25mg/dl以上である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記心血管系イベントが、心筋梗塞、発作、急性冠症候群、心筋虚血、慢性安定狭心症、不安定狭心症、心血管系死亡、冠動脈再狭窄、冠ステント再狭窄、冠ステント再血栓症、血管再生、血管形成術、一過性虚血性発作、肺塞栓症、血管閉塞または静脈血栓症である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
ヒト被験体が染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)でチミンまたはアデニンによって特徴付けられるApo(a)多型を有することに基づいて該ヒト被験体を選択する工程と、
該被験体が多型を有する理由で、将来の心血管系イベントのリスクを低減するために該被験体に対して抗血小板剤またはアセチルサリチル酸以外の抗血栓剤を投与する工程と、
を包含する、処置の方法。
【請求項25】
前記抗血栓剤がチエノピリジンまたはチエノピリジン誘導体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記チエノピリジンまたはチエノピリジン誘導体が、クロピドグレル、クロピドグレル重硫酸塩、チクロピジン、プラスグレル(CS−747またはLY640315)、SR25989、またはPCR4099である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗血栓剤が、セノキサパリンナトリウム、キメラガトラン、アブシキシマブまたはチロフィバンである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
将来の心血管系イベントのリスクを低減するための、アセチルサリチル酸処理に対するヒト被験体の応答を評価するための方法であって、
該ヒト被験体のアポタンパク質(a)(Apo(a))遺伝子の染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置で単一ヌクレオチド多型(SNP)と連鎖するかまたは連鎖不平衡にある遺伝子マーカーの有無を検出する工程、を包含する方法。
【請求項29】
前記遺伝子マーカーが、対立遺伝子、SNP、制限酵素断片長多型(RFLP)、無作為増幅多型DNA(RAPD)、増幅断片長多型(AFLP)、または単純配列リピート(SSR)である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記遺伝子マーカーが、染色体6:160849894(NCBIビルド128;rs9457931 dbSNP@NCBI)の位置でSNPである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記遺伝子マーカーが、染色体6:160830272(NCBIビルド128;rs9457927 dbSNP@NCBI)の位置でSNPである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記連鎖が、Kringle(Kr)IV2型ドメインの16、17または18リピートの間である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記染色体6:160880877の位置のシトシンまたはグアニンによって特徴付けられる多型の存在が、アセチルサリチル酸に対する応答性を示す、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記染色体6:160880877の位置のチミンまたはアデニンによって特徴付けられる多型の存在が、アセチルサリチル酸に対する非応答性を示す、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記被験体由来の血液サンプル中のリポタンパク質(a)(Lp(a))のレベルを決定する工程をさらに包含する、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記心血管系イベントが、心筋梗塞、発作、急性冠症候群、心筋虚血、慢性安定狭心症、不安定狭心症、心血管系死亡、冠動脈再狭窄、冠ステント再狭窄、冠ステント再血栓症、血管再生、血管形成術、一過性虚血性発作、肺塞栓症、血管閉塞または静脈血栓症である、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
処置の方法であって:
ヒト被験体が、染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)でシトシンまたはグアニンによって特徴付けられるApo(a)多型と連鎖するか、または連鎖不均衡である遺伝子マーカーを有することに基づいて、該被験体を選択する工程と、
該被験体が該多型を有する理由で、将来の心血管系イベントのリスクを低減するために該被験体に対してアセチルサリチル酸を投与する工程と、
を包含する、方法。
【請求項38】
処置の方法であって:
ヒト被験体が、染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)でチミンまたはアデニンによって特徴付けられるApo(a)多型と連鎖するかまたは連鎖不平衡にある遺伝子マーカーを有することに基づいて、該被験体を選択する工程と、
該被験体が該多型を有する理由で、将来の心血管系イベントのリスクを低減するために該被験体に対してアセチルサリチル酸以外の抗血栓剤を投与する工程と、
を包含する、方法。
【請求項39】
前記遺伝子マーカーが、対立遺伝子、SNP、制限酵素断片長多型(RFLP)、無作為増幅多型DNA(RAPD)、増幅断片長多型(AFLP)、または単純配列リピート(SSR)である、請求項37または38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記ヒト被験体がまた、血液中のリポタンパク質(a)(Lp(a))の上昇したレベルを有する、請求項37または38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記心血管系イベントが、心筋梗塞、発作、急性冠症候群、心筋虚血、慢性安定狭心症、不安定狭心症、心血管系死亡、冠動脈再狭窄、冠ステント再狭窄、冠ステント再血栓症、血管再生、血管形成術、一過性虚血性発作、肺塞栓症、血管閉塞または静脈血栓症である、請求項37または38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
将来の心血管系イベントのヒト被験体のリスクを評価するための方法であって:
該ヒト被験体のアポリポタンパク質(a)遺伝子の染色体6:160880877(2006年3月アセンブリ−NCBIビルド36.1;rs3798220 dbSNP@NCBI)の位置の単一ヌクレオチド多型の同一性を決定する工程と、
該ヒト被験体由来の血液サンプル中でリポタンパク質(a)(Lp(a))のレベルを決定する工程と、
を包含する、方法。
【請求項43】
前記染色体6:160880877の位置のシトシンまたはグアニンによって特徴付けられる多型の存在、および前記被験体由来の血液サンプル中のLp(a)のレベルの上昇の存在は、該被験体が将来の心血管系イベントのリスク増大にあることを示している、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
Lp(a)の前記レベルが前記被験体由来の前記血液サンプル中で約10mg/dl以上である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
Lp(a)の前記レベルが前記被験体由来の前記血液サンプル中で約15mg/dl以上である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
Lp(a)の前記レベルが前記被験体由来の前記血液サンプル中で約20mg/dl以上である、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
Lp(a)の前記レベルが前記被験体由来の前記血液サンプル中で約25mg/dl以上である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記心血管系イベントが、心筋梗塞、発作、心血管系死亡、冠動脈再狭窄、冠ステント再狭窄、冠ステント再血栓症、血管再生、肺塞栓症、または静脈血栓症である、請求項42に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−528262(P2010−528262A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507475(P2010−507475)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/005986
【国際公開番号】WO2008/140776
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(504412945)ザ ブライハム アンド ウイメンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (54)
【出願人】(509308034)アプレラ コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】