説明

Bi12XO20粒子、放射線光導電体および放射線検出器並びに放射線撮像パネル

【課題】収集電荷を向上させることが可能な放射線光導電体を製造するのに好適なBi12XO20粉子(ただし、XはSi,Ge,Tiからなる群より選ばれる少なくとも1種である)を提供する。
【解決手段】Bi12XO20粒子を製造する際に、Feを実質的に含まない原料、反応装置を用いることにより、Fe含有量を5ppm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Bi12XO20粒子(ただし、XはSi,Ge,Tiからなる群より選ばれる少なくとも1種である)、およびこのBi12XO20粒子を用いて製造される放射線光導電体、この放射線光導電体を用いた放射線検出器並びに放射線撮像パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療診断を目的とする放射線撮影において、放射線を検出して電気信号に変換する放射線検出器(放射線光導電体を主要部とするもの)を使用した放射線撮像パネル(放射線撮像装置)が知られている。放射線検出器としては、放射線を直接電荷に変換し電荷を蓄積する直接変換方式と、放射線を一度、蛍光体で光に変換し、その光を光導電層で電荷に変換し蓄積する間接変換方式がある。また、読取り方式からは、光の照射により電荷を発生する半導体材料を利用した放射線画像検出器により読み取る、いわゆる光読取方式と、放射線の照射により発生した電荷を蓄積し、その蓄積した電荷を薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)などの電気的スイッチを1画素ずつON・OFFすることにより読み取る方式(以下、TFT方式ともいう)に大別される。
【0003】
近年、化学安定性が良好で、毒性が低く、且つ高密度な放射線光導電体の材料として、組成式Bi12XO20(ただし、XはSi,Ge,Tiからなる群より選ばれる少なくとも1種である)で表されるBi含有酸化物が検討されている。Bi12XO20は高密度であることから放射線吸収率が大きく、放射線光導電体の材料として好適であり、Bi12XO20の多結晶体、あるいはBi12XO20粒子を樹脂バインダー等に分散された塗布膜等の態様で用いられている。
【0004】
Bi12XO20粒子の製造方法としては、液相法によりBi12XO20粒子を製造する方法が知られている。例えば非特許文献1には、Si源としてNa2O・XSiO2、Ge源としてのGeO2をアルカリ性水溶液に溶解させて調製した母液中に、Bi(NO3)3を溶解させた酸性のBi溶液を添加して沈殿を形成し、反応液のpHを調整後、適当な温度にしてBi12XO20を合成する方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献1には、Bi(NO3)3を溶解させた酸性のBi溶液と、Si源としてのNa2O・xSiO2や、Ge源としてのGeO2を溶解させて調製したアルカリ性のSiもしくはGe源溶液とを、アルカリ性の母液中に添加し、せん断型撹拌機を用いて混合・撹拌を行うことによって、Bi12XO20粒子を合成する方法が記載されている。
【0006】
ところで、Bi12XO20の一般式で表されるシレナイト構造の化合物においては、Xで表されるサイトに、1〜6価の様々なイオンが存在できることが知られている(非特許文献2)。つまり、Bi12XO20で表されるシレナイト化合物のXで表されるサイトには、様々なイオンが不純物として置換して混入されやすいことが予想される。また、Bi3+のサイトに3価のイオンが不純物として置換して混入される可能性があることも予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−248820号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.S.Horowitz, A.J.JacoBson, J.M.Mewsam ;“Solid State Ionics ”32/33, p678-690 (1989).
【非特許文献2】R.Oberschmid, Phys. Stat. Sol. 89 (1985) p263
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、Bi12XO20粒子を製造する場合、原材料や製造工程で用いられる器具等から不純物イオンが混入することが考えられる。一般に、半導体材料に不純物が混入すると、不純物準位を形成して、半導体物性に何らかの影響を与える可能性がある。しかしながら、Bi12XO20の放射線光電流特性に対しては、従来どのようなイオンがどのような影響を与えるかは知られていなかった。本発明者が鋭意検討を行った結果、不純物イオンの種類によっては、混在していても何らの影響を与えないものがある一方で、Bi12XO20粒子により製造した放射線光導電体の収集電荷に影響を及ぼす不純物イオンがあることがわかった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、収集電荷に悪影響を与える特定の金属の含有量を規定したBi12XO20粉子、このBi12XO20粉子を使用した放射線光導電体およびこの放射線光導電体を主要部とする放射線検出器並びに放射線撮像パネルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のBi12XO20(ただし、XはSi,Ge,Tiからなる群より選ばれる少なくとも1種である。以下、この記載は省略する。)粒子は、Fe含有量が5ppm以下であることを特徴とするものである。
Fe含有量は3ppm以下であることがより好ましく、さらには1ppm以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の放射線光導電体は、上記Bi12XO20粒子を用いて製造されたものであることを特徴とするものである。なお、放射線光導電体においてもFe含有量は5ppm以下であり、好ましくは3ppm以下、さらには1ppm以下であることが好ましい。
本発明の放射線検出器は、上記放射線光導電体と、該放射線光導電体に電界を印加する電極とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の放射線撮像パネルは、放射線照射によって放射線光導電層に発生したキャリアを、前記放射線光導電層に電界を印加することによって電荷として読み出す放射線撮像パネルであって、多数のスイッチング素子が配列されたアクティブマトリクス層と、画像情報を担持した電磁波の照射に応じて電荷を発生し、該電荷を前記アクティブマトリクス層によって読み出されるように配置された前記放射線光導電体からなる放射線光導電層とを有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の放射線撮像パネルは、放射線照射によって放射線光導電層に発生したキャリアを電荷として蓄積して静電潜像を形成し、前記電荷を光照射によって読み出す放射線撮像パネルであって、前記放射線光導電層に電界を印加する第1の電極と、前記放射線光導電体からなる放射線光導電層と、前記キャリアを電荷として蓄積する電荷輸送層と、前記光照射により該電荷輸送層に蓄積された電荷を取り出す読取用光導電層と、前記放射線光導電層に対して電界を印加する第2の電極と、前記読取用光導電層に取り出された電荷を検出する電流検出手段とを順に備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のBi12XO20粒子はFe含有量が5ppm以下であるため、収集電荷を向上させることが可能な放射線光導電体を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のBi12XO20粒子を製造する製造装置の一実施の形態を示す概略模式図である。
【図2】本発明のBi12XO20粒子を用いて製造される放射線光導電体を備えた放射線検出器の概略断面模式図である。
【図3】本発明の放射線光導電体を有する放射線撮像パネルの一実施の形態を示す概略断面模式図である。
【図4】本発明の放射線光導電体を有する放射線撮像パネルの別の実施の形態を示す概略断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のBi12XO20粒子の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、Bi元素を有する溶液とX元素を有する溶液とを用意し、反応容器にあらかじめ供給された母液に対して上記両溶液を添加して混合液を調製し、混合液の温度を、添加開始時の温度より上昇させることにより製造することができる。
【0018】
本発明のBi12XO20粒子の製造方法においては、用いる原料に含まれるFe元素は、そのほとんど全てがBi12XO20粒子中に取り込まれると考えられる。このことは、Fe原子がXサイトに置換しやすいこと(非特許文献2参照)、またBi3+とFe3+が何れも3価のイオンであることから、明らかである。従って、用いる全ての原料に含まれるFe元素の総和がBi12XO20粒子に取り込まれた場合に、Bi12XO20粒子中のFe含有量が5ppm以下となるような純度の原料を用いる必要がある。以下、それぞれの原料について説明する。
【0019】
Bi源としては、Feの含有量が、その全てが合成されたBi12XO20粒子に取り込まれた場合に、Bi12XO20粒子中のFe含有量が5ppm以下となる純度の化合物を用いる。すなわち、Bi源としては、Bi元素1molに対するFe元素の含有量が2.16×10-5mol以下のものであればよい。ただし、他の原料中にもFe元素が存在する場合には、さらにFe含有量が少ないBi源を用い、用いる原料に含まれるFe元素全てがBi12XO20粒子に取り込まれた場合であっても、Bi12XO20粒子中のFe含有量が5ppm以下となるように調整する。
【0020】
Bi元素を有する溶液は、Bi源となるBi含有化合物を溶媒に溶解させて調製する。具体的なBi含有化合物としては、硝酸ビスマス、炭酸ビスマス、酢酸ビスマス、リン酸ビスマス、三フッ化ビスマス、三塩化ビスマス、三臭化ビスマス、三ヨウ化ビスマス、水酸化ビスマス、オキシ炭酸ビスマス、オキシ塩化ビスマス、トリ-i-プロポキシビスマス(Bi(O-i-C37)3)、トリエトキシビスマス(Bi(OC25)3)、トリ-t-アミロキシビスマス(Bi(O-t-C511)3)、トリフェニルビスマス(Bi(C65)3)、トリス(ジピバロイルメタナト)ビスマス(Bi(C11192)3)、酸化ビスマスなどの化合物から適宜選択して用いることができる。低コストであることから、硝酸ビスマス、炭酸ビスマス、酢酸ビスマス、リン酸ビスマス、三フッ化ビスマス、三塩化ビスマス、三臭化ビスマス、三ヨウ化ビスマス、水酸化ビスマス、オキシ炭酸ビスマス、オキシ塩化ビスマス、酸化ビスマスがより好ましく、Bi含有量の変動が少ないことから、酸化ビスマスが特に好ましい。
【0021】
X源としては、Feの含有量が、その全てが合成されたBi12XO20粒子に取り込まれた場合に、Bi12XO20粒子のFe含有量が5ppm以下となる純度の化合物を用いる。具体的には、Si源としては、Si元素1molに対するFe元素の含有量が2.60×10-4mol以下のもの、Ge源としては、Ge元素1molに対するFe元素の含有量が2.56×10-4 mol以下のもの、Ti源としては、Ti元素1molに対するFe元素の含有量が2.57×10-4mol以下のものであればよい。ただし、他の原料中にもFe元素が存在する場合は、さらにFe含有量が少ないX源を用い、用いる原料に含まれるFe元素全てがBi12XO20粒子に取り込まれた場合であっても、Bi12XO20粒子中のFe含有量が5ppm以下となるように調整する。
【0022】
X元素を有する溶液の調製は、Bi元素と同様に、X源となるX元素含有化合物を溶媒に溶解させて調製する。具体的なX元素含有化合物としては、X元素がSiである場合、Si源としては、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、酢酸ケイ素、シュウ酸ケイ素、オルトケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、二ケイ酸ナトリウム、二ケイ酸カリウム、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム、ヘキサフルオロケイ酸カリウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素(結晶性)、二酸化ケイ素(アモルファス)、コロイダルシリカ、テトラメトキシシラン(Si(OCH3)4)、テトラエトキシシラン(Si(OC25)4)、テトラ-i-プロポキシシラン(Si(O-i-C37)4)、テトラ-n-プロポキシシラン(Si(O-n-C37)4)、テトラ-i-ブトキシシラン(Si(O-i-C49)4)、テトラ−n−ブトキシシラン(Si(O-n-C49)4)、テトラ-sec-ブトキシシラン(Si(O-sec-C49)4)、テトラ-t-ブトキシシラン(Si(O-t-C49)4)、SiH[N(CH3)2]3、SiH[N(C25)2]3などを好適に用いることができる。
【0023】
X元素がGeである場合、Ge源としては、四塩化ゲルマニウム、四臭化ゲルマニウム、四ヨウ化ゲルマニウム、酢酸ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、オルトゲルマニウム酸ナトリウム、オルトゲルマニウム酸カリウム、メタゲルマニウム酸ナトリウム、メタゲルマニウム酸カリウム、ゲルマニウム酸ナトリウム、ゲルマニウム酸カリウム、ゲルマニウム酸カルシウム、二ゲルマニウム酸ナトリウム、二ゲルマニウム酸カリウム、ヘキサフルオロゲルマニウム酸、ヘキサフルオロゲルマニウム酸アンモニウム、ヘキサフルオロゲルマニウム酸ナトリウム、ヘキサフルオロゲルマニウム酸カリウム、二酸化ゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム(Ge(OCH3)4)、テトラエトキシゲルマニウム(Ge(OC25)4)、テトラ-i-プロポキシゲルマニウム(Ge(O-i-C37)4)、テトラ-n-プロポキシゲルマニウム(Ge(O-n-C37)4)、テトラ-i-ブトキシゲルマニウム(Ge(O-i-C49)4)、テトラ-n-ブトキシゲルマニウム(Ge(O-n-C49)4)、テトラ-sec-ブトキシゲルマニウム(Ge(O-sec-C49)4)、テトラ-t-ブトキシゲルマニウム(Ge(O-t-C49)4)などを好適に用いることができる。
【0024】
X元素がTiである場合、Ti源としては、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、酢酸チタン、シュウ酸チタン、チタン酸ナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム、ヘキサフルオロチタン酸ナトリウム、ヘキサフルオロチタン酸カリウム、二酸化チタン、テトラメトキシチタン(Ti(OCH3)4)、テトラエトキシチタン(Ti(OC25)4)、テトラ-i-プロポキシチタン(Ti(O-i-C37)4)、テトラ-n-プロポキシチタン(Ti(O-n-C37)4)、テトラ-i-ブトキシチタン(Ti(O-i-C49)4)、テトラ-n-ブトキシチタン(Ti(O-n-C49)4)、テトラ-sec-ブトキシチタン(Ti(O-sec-C49)4)、テトラ-t-ブトキシチタン(Si(O-t-C49)4)、Ti[N(CH3)2]4、Ti[N(C25)2]4などを好適に用いることができる。
【0025】
上記のBi源及びX源を溶解させる溶媒は、Bi源、X源と同様に、Feの含有量が、その全てが合成されたBi12XO20粒子に取り込まれた場合に、Bi12XO20粒子のFe含有量が5ppm以下となる純度のものを用い、他の原料中にもFe元素が存在する場合は、用いる原料に含まれるFe元素全てがBi12XO20粒子に取り込まれた場合であっても、Bi12XO20粒子中のFe含有量が5ppm以下となるものを用いる。詳細には、水あるいはアルコールをはじめとする有機溶媒を適宜選択して用いることができるが、低コストであることから水を用いることが好ましい。なお、Bi元素はアルカリ性領域では水にほとんど溶解しないことから、得られた溶液が酸性になっていることが好ましい。溶液を酸性にするために用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸などといった無機酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸などといった有機酸を好適にあげることができる。これらの酸においても、用いる原料に含まれるFe元素全てがBi12XO20粒子に取り込まれた場合であっても、Bi12XO20粒子中のFe含有量が5ppm以下となるものを用いる。
【0026】
一方、この製造方法において、最終的にBi12XO20を沈殿として得るために、混合液はBiの溶解度が低いアルカリ性となっていることが好ましい。従って、X源を溶解した溶液はアルカリ性になっていることが好ましい。溶液をアルカリ性にするために用いるアルカリ性化合物としては、例えば、LiOH、KOH、NaOH、RbOH、アンモニア、NR4OH(Rはアルキル基)を好適にあげることができる。これらのアルカリ性化合物においても、用いる原料に含まれるFe元素全てがBi12XO20粒子に取り込まれた場合であっても、Bi12XO20粒子中のFe含有量が5ppm以下となるものを用いる。
【0027】
続いて、Bi12XO20粒子を調整する装置を図面と用いて説明する。
図1は、本発明のBi12XO20粒子の製造に好適な反応装置の概略断面図である。図1に示すように、反応装置1は、混合液を加熱・撹拌して反応させる反応容器11、反応容器11を加熱するための温度制御部12、反応液を撹拌するためのモーター13と撹拌部14、Bi元素を有する溶液を装填する溶液槽15aとこの溶液を反応容器11へと供給するための送液流路16a、X元素を有する溶液を装填する溶液槽15bとこの溶液を反応容器11へと供給するための送液流路16bとを具備している。撹拌部14内には撹拌羽根17が収容されており、モーター13を駆動すると撹拌羽根17を回転するように、モーター13と撹拌羽根17の間に撹拌軸19が装着されている。撹拌部14は撹拌羽根17の周りが衝立18によって囲まれており、Bi元素を有する溶液を供給するための送液流路16aの先端部、X元素を有する溶液を供給するための送液流路16bの先端部は、ともに衝立18内部に向けられて固定されている。
【0028】
反応装置1の反応容器11の内面、撹拌羽根17、衝立18、撹拌軸19、送液流路16a、送液流路16b、さらに図示は省略しているが、送液流路16aと送液流路16bを反応容器11内で固定するための部品は全て、Feフリーのもの、例えばテフロン(登録商標、以下テフロンに関する登録商標の記載は省略する)をはじめとする樹脂、アルミナ・石英をはじめとする金属酸化物、Pt、Tiをはじめとする化学的に安定な金属、ガラスなどの部材を使用することが好ましい。もしくは上記の部材でコーティングされているものを使用することが好ましい。上記の一部、例えば撹拌軸19の一部や、送液流路16aと送液流路16bを反応容器11内で固定するための部品がFeを含有する素材であっても、Bi12XO20粒子のFe含有量を5ppm以下とすることは可能であるが、Fe含有量を3ppm以下、さらには1ppm以下とする場合には、上記全ての部品、さらに反応液に接触していない部分、例えば撹拌軸19や反応容器11の反応液に接触していない部分も全てFeフリーのものを使用することが好ましい。
【0029】
続いて、Bi12XO20粒子を調整する手順を説明する。まず、Bi元素を有する溶液とX元素を有する溶液とをそれぞれ溶液槽15a、15bに装填し、反応容器11には撹拌部14がひたる程度以上の量の母液を装填する。ここで母液中には、Bi元素およびX元素が含まれていなくてもよいし、必要に応じてBi元素あるいはX元素の総供給量の一部が含まれていてもよい。母液はFeを含有しないものであれば、水、もしくはアルコールをはじめとする有機溶媒を用いてよいが、低コストであることから水を用いることが好ましい。最終的にBi12XO20を沈殿として得るために、混合液はBiの溶解度が低いアルカリ性となっていることが好ましい。従って、母液はアルカリ性になっていることが好ましく、上記で説明したアルカリ性化合物を適宜用いることが好ましい。
【0030】
次に、温度制御部12を作用させて、反応容器11中の母液を所望の温度とする。調製する混合液の温度は、25℃より高く75℃より低いことが好ましいため、母液の温度もこの温度範囲内とすることが好ましい。この温度範囲で混合液の調製を実施する場合は、数時間の反応でBi12XO20粒子を得ることが可能である。
【0031】
続いて、Bi元素を有する溶液とX元素を有する溶液を反応容器11内へと添加する。この時に、原料溶液を添加することによって反応容器11内の温度が変化しないように、溶液槽15a、15bおよび送液流路16a、16bを所望の温度としておくことが好ましい。
【0032】
反応容器11への両溶液の添加は、製造ロット間の組成のばらつきを軽減するため、混合液中のBi元素及びX元素の双方の物質量が、添加開始時から並行して増加するように実施することが好ましく、添加開始時から添加終了時までの間、母液に添加されるBi元素とX元素の物質量の比を実質上一定とすることが好ましい。
【0033】
上記製造に際しては、混合開始時の温度より混合液の温度を昇温させてBi12XO20粒子を製造することが好ましい。混合液の温度上昇は、添加開始後直ちに開始してもよいし、添加の途中もしくは添加完了後に開始してもよい。ただし、添加してすぐに生成する沈殿物の化学状態を均一にするために、添加が完了するまでは温度を一定に保ち、添加完了後に温度上昇の実施を開始するほうが好ましい。反応を比較的低い温度で開始させることにより、生成する核の数を十分に少なくすることができるため、比較的粒子サイズを大きくすることができ、その後昇温させることによって充分に結晶化させることが可能となる。
【0034】
上述の工程の後、液体成分の除去と洗浄を行い、最終的に乾燥することで目的とするBi12XO20粒子を得ることができる。液体成分の除去としては、常圧もしくは減圧下でのろ別法、遠心分離法などを用いることができる。洗浄には、水、温水、アルコール類などを用いることができる。乾燥は、加熱、減圧、風乾などの手法を用いることができる。
【0035】
グリーンシート法による多結晶膜の製造や、塗布膜の製造のように、バインダー等に粒子を分散させた塗布液を用いる場合には、塗布液中でBi12XO20粒子が凝集しにくく、且つ、沈降しにくい大きさであることが好ましい。Bi12XO20粒子及び分散させるバインダー等の密度等にもよるが、Bi12XO20粒子を塗布液内で沈降しにくくするためには、Bi12XO20粒子の平均粒径は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
以上のようにして、Bi12XO20粒子を製造することができる。
【0036】
次に、図2を参照して、本発明のBi12XO20粒子を用いて製造される放射線光導電体を備えた放射線検出器について説明する。図2は放射線検出器の概略断面模式図である。図2に示す放射線検出器20は、放射線光導電体24に電界を印加する電極23および25を備えたものであり、電極23、25の面に照射された放射線を放射線光導電体24によって検出するものである。
【0037】
電極23、25は、例えばITO(インジウム錫酸化物)や、AuあるいはPtなどの導電材料からなる。印加電界は、0.1〜20V/μmであり、好ましくは、2〜10V/μmである。放射線光導電体24は、本発明のBi12XO20粒子を用いて製造されたものである。放射線光導電体24の厚さは、検出する放射線の種類により適宜決めることができ、例えば医療診断用X線であれば、50〜1000μmの厚さが好ましい。
【0038】
Bi12XO20粒子を用いて放射線光導電体を製造する具体的な方法としては、公知のものを適宜適用することができ、例えば、Bi12XO20粒子をプレス機にて成型して膜化し、得られた膜を焼結させるプレス焼結法、Bi12XO20粒子をバインダーと溶剤とともに混練してスラリーを調製した後に塗布・乾燥してグリーンシート(バインダーを含んだ膜)を作製し、このグリーンシートを焼成して脱バインダー化及び粒子の焼結化を行う方法、Bi12XO20粒子をキャリアガスで巻き上げて、そのBi12XO20粒子の混じったキャリアガスを真空中で支持体に吹き付けてBi12XO20粒子を堆積させるエアロゾルデポジション法(AD法)、Bi12XO20粒子と有機バインダーあるいは無機バインダーと適当な溶剤とを混合してスラリーを調製し、このスラリーを塗布あるいは型に充填したのち、乾燥処理によって溶剤を留去する方法などにより製造することができる。なお、Bi12XO20粒子を用いて放射線光導電体を製造するに際しても、例えば、焼結化を行う場合は、加熱工程において外部からBi12XO20材料中へと原子拡散が起こる可能性があるため、プレスに用いる容器や、バインダー、溶剤、混練に用いる容器などはFeフリーのものを使用することが好ましい。
【0039】
本発明の放射線光導電体は、放射線の照射により発生した電荷を蓄積し、その蓄積した電荷を薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)などの電気的スイッチを1画素ずつON・OFFすることにより読み取る方式(以下、TFT方式という)の放射線撮像パネルや、光の照射により電荷を発生する半導体材料を利用した放射線画像検出器により読み取る、いわゆる光読取方式の放射線撮像パネルにも用いることができる。
【0040】
まず、前者のTFT方式の放射線撮像パネルについて、図3を参照して説明する。この放射線撮像パネル100は、図3に示すように、アクティブマトリクス基板40と、このアクティブマトリクス基板40上の略全面に形成された放射線光導電層30と、放射線光導電層30上に設けられた上部電極31とによって構成されている。
【0041】
放射線光導電層30は、本発明のBi12XO20粒子を用いて製造されたものである。上部電極31は、Au、Alなどの低抵抗の導電材料で構成されている。アクティブマトリクス基板40は、放射線光導電層30において発生した電荷を収集する収集電極41、収集電極41によって収集された電荷を蓄積する蓄積容量42および蓄積容量42に蓄積された電荷を読み出すためのTFTスイッチ43を有する多数の画素44とTFTスイッチ43をON/OFFするための多数の走査配線45と蓄積容量42に蓄積された電荷が読み出される多数のデータ配線46とを備えている。画素44は、アレイ状に配置されている。これにより、2次元の電磁波情報を一旦電荷蓄積容量に蓄積し、TFTスイッチ43を順次走査していくことで、2次元の電荷情報を簡単に読み出すことができる。なお、TFTスイッチ43としては、一般的には、アモルファスシリコンを活性層に用いたa−SiTFTが用いられる。
【0042】
次に、後者の光読取方式に用いられる放射線撮像パネルについて、図4を参照して説明する。図4は本発明の放射線光導電体を有する放射線撮像パネルの一実施の形態を示す断面図を示すものである。
【0043】
この放射線撮像パネル50は、記録用の放射線に対して透過性を有する第1の導電層51、この導電層51を透過した放射線の照射を受けることにより導電性を呈する記録用放射線導電層52、導電層51に帯電される電荷(潜像極性電荷;例えば負電荷)に対しては略絶縁体として作用し、かつ、電荷と逆極性の電荷(輸送極性電荷;上述の例においては正電荷)に対しては略導電体として作用する電荷輸送層53、読取用の読取光の照射を受けることにより導電性を呈する読取用光導電層54、読取光に対して透過性を有する第2の導電層55を、順に積層してなるものである。
【0044】
記録用放射線導電層52は、本発明のBi12XO20粒子を用いて製造されたものである。導電層51および55としては、例えば、透明ガラス板上に導電性物質を一様に塗布したもの(ネサ皮膜等)が用いられる。電荷輸送層53としては、PVK、TPDやディスコティック液晶等の有機系化合物等で構成される。読取用光導電層54には、a−Se、Se−Te、Se−As−Te等を主成分とする光導電性物質から構成される。
以下に本発明のBi12XO20粒子の製造を実施例によりさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0045】
(実施例1)
酸化ビスマス(高純度化学製、純度5N、Fe含有量:200ppb)279.6gを、474.4gの硝酸(和光純薬製、濃度61.1wt%)と純水とを用いて溶解し、1.2mol/Lの濃度でBi元素を有する溶液(Bi溶液:B-1)を1L調製した。別に、ケイ酸カリウム溶液(和光純薬製、モル比率:SiO/KO=3.9、濃度28.0%、Fe含有量:1500ppb)30.1gと水酸化カリウム溶液(和光純薬製、8N、Fe含有量:100ppb)587mLと純水とを混合し、0.1mol/Lの濃度でSi元素を有する溶液(Si溶液:S-1)を1L調製した。また、水酸化カリウム溶液(和光純薬製、8N、Fe含有量:100ppb)6.25mLと純水を用いて、500mLのアルカリ性母液(母液:M-1)を調製した。なお、溶液の調製において用いる器具は、Feの混入をさけるために、全て樹脂製のものを用いた。
【0046】
上記で調製した溶液を用いて、図1の反応装置1にてBi12SiO20粒子の合成を行った。なお、反応装置の反応容器11はテフロンコーティング/SUS、送液配管16a、16bはテフロン、溶液槽15a、15bから溶液を押し出すためのピストン(図示せず)はアルミナ、撹拌軸19は一部SUS(ステンレス鉱)が露出したものをそれぞれ用いた。ここで送液配管16a、16bを撹拌部17に固定するために、SUS製のビスを用いた。反応容器11中に母液(M-1)500mLを加え、撹拌部14を母液中(M-1)で1000rpmにて稼動させながら、母液(M-1)の温度を50℃に昇温した。次に、溶液槽15a中のBi溶液(B-1、50mL)と溶液槽15b中のSi溶液(S-1、50mL)とを、ピストンで押し出し、それぞれ送液流路16aと送液流路16bとを経由して、10mL/分の速度で5分間かけて、同時に撹拌部14の筒18の内部へと添加した。添加中、反応容器11内の混合液の温度は50℃に保たれていた。添加終了後、混合液の温度を2.5℃/分の速度で10分間かけて75℃へと昇温した。昇温終了後、75℃にて120分間撹拌を継続した。撹拌終了後、反応系全体を室温へと冷却し、得られた沈殿物をろ別し、純水で十分に洗浄した。得られた固形物を100℃にて12時間乾燥させることにより、Bi12SiO20粒子を得た。
【0047】
(実施例2)
実施例1において、送液配管16a、16bを撹拌部17に固定するために、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)材のビスを用いた以外は、実施例1と同様にしてBi12SiO20粒子を得た。
【0048】
(実施例3)
実施例1において、撹拌軸の表面をテフロンコーティングによって完全にFeフリーとした以外は、実施例2と同様にしてBi12SiO20粒子を得た。
【0049】
(実施例4)
ケイ酸カリウム溶液(和光純薬製、モル比率:SiO2/K2O=3.9、濃度28.0%、Fe含有量:1500ppb)15.1gと水酸化カリウム溶液(関東化学製、3N、Ultrapurグレード:Fe含有量1ppb)783mLと純水とを混合し、0.05mol/Lの濃度でSi元素を有する溶液(Si溶液:S−2)を1L調製した。また、水酸化カリウム溶液(関東化学製、3N、Ultrapurグレード:Fe含有量1ppb)16.7mLと純水を用いて、500mLのアルカリ性母液(母液:M−2)を調製した。Si溶液にS−2(100mL)、母液にM−2を用いたことと、Si溶液を20mL/分で5分間かけて添加した以外は、実施例2と同様にしてBi12SiO20粒子を得た。
【0050】
(実施例5)
水酸化カリウム溶液(関東化学製、3N、Ultrapurグレード:Fe含有量1ppb)200mLに対して、テトラエトキシシラン(TEOS、高純度化学製、6N、Fe含有量:0.5ppb)を10.42gとエタノール(関東化学製、ELグレード、Fe含有量:5ppb)40mLの混合物を添加し、80℃にて2時間撹拌する。ロータリーエバポレーターでエタノールを除去した後に、水酸化カリウム溶液596mLと純水を用いて、1LのSi溶液(Si−3)を調製した。Si溶液にS−3を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてBi12SiO20粒子を得た。
【0051】
(比較例1)
実施例1において、反応装置の反応容器、送液配管、ピストンをSUS素材のものを用いた以外は実施例1と同様にしてBi12SiO20粒子を得た。
【0052】
(比較例2)
比較例1において、反応装置の反応容器のみをテフロンコーティング/SUSのものを用いた以外は実施例1と同様にしてBi12SiO20粒子を得た。
【0053】
(比較例3)
比較例1において、反応装置の反応容器にテフロンコーティング/SUS、送液配管にテフロンを用いた以外は比較例1と同様にしてBi12SiO20粒子を得た。
【0054】
(Fe含有量の測定)
実施例1〜5,比較例1〜3で得られたBi12SiO20粒子を、ICP−MS装置(アジレントHP7500)を用いて、標準添加法にて測定した。Bi12SiO20粒子に含まれるFe量は、以下の放射線導電体においても変化しないので、ここで測定した値は放射線光導電体におけるFe含有量とみなすことができる。なお、放射線導電体から直接Fe含有量を測定するには、放射線光導電体からBi12SiO20を取り出した後にICP−MS装置にて測定する。放射線光導電体からBi12SiO20を取り出すには、プレス焼結法、グリーンシート法、AD法など、放射線光導電体がバルク体の場合は、研磨などによって表面に存在する電極などを除去することにより行う。スラリーを塗布あるいは型に充填したのち、乾燥処理によって溶剤を留去する方法などで製造した放射線光導電体の場合は、バインダを有機溶剤で除去し、Bi12SiO20粒子を取り出すことにより行う。
【0055】
(放射線検出部の作製)
線状ポリエステル樹脂(東洋紡製バイロン300)5gをメチルエチルケトン20gと混合して線状ポリエステル樹脂が完全に溶解するまで充分攪拌し、バインダー溶液を調製した。次にこのバインダー溶液の中に上記で得られたBi12SiO20粒子100gを投入し、ホモジナイザー分散装置にかけ、羽根の回転数3000回転/秒にて20分間分散し、Bi12SiO20分散液を調製した。シリコン系の離型剤を付与したポリエチレンテレフタレートフイルム250μm厚を離型剤のある面を上にして、水平においたガラス板上に置き固定した。この上にBi12SiO20分散液を垂らし、ドクターブレードを用いて塗布を行った。1時間このまま室温にて放置乾燥した後、このガラス板上に塗布されたものをガラス板ごと、乾燥オーブンに入れ、100℃にて30分間 温風乾燥を行った。このようにしてポリエチレンテレフタレート上に300μm厚のBi12SiO20分散塗布膜を完成させた。得られたBi12SiO20膜の両面に、蒸着器を用いてAu電極を全面に100nm厚で付設し放射線検出部を完成させた。
【0056】
(評価方法および評価結果)
上記で作製した放射線撮像パネルの検出部の両電極間に、2.5kV/μmの電界500Vの電圧を印加した後に1mR相当のX線(タングステン菅球、70kV圧)を0.08秒間で露光した。この時に電極間にながれた光電流を電流増幅器で電圧に変換し、デジタルオシロスコープで測定した。得られた電流・時間カーブより、X線照射時間の範囲において積分し、サンプルの面積当たりの収集電荷量として換算した。
【0057】
得られたBi12SiO20粒子のFe含有量の測定値、測定した収集電荷、反応装置、原料の詳細をまとめたものを表1に示す。なお、収集電荷は比較例1の収集電荷を1とした相対値で示した。
【0058】
【表1】

【0059】
(実施例6)
実施例1において、ケイ酸カリウム溶液に変えて、二酸化ゲルマニウム溶液(高純度化学製、純度:4N7、Fe含有量:3000ppb)10.5gを用い、0.1mol/Lの濃度でGe元素を有する溶液(Ge溶液:G-1)を1L調製し、この溶液を用いて実施例1と同様の手順でBi12GeO20粒子を得た。
【0060】
(実施例7)
実施例6において、送液配管16a、16bを撹拌部17に固定するために、PEEK材のビスを用い、撹拌軸の表面をテフロンコーティングによって完全にFeフリーとした以外は、実施例6と同様にしてBi12GeO20粒子を得た。
【0061】
(実施例8)
二酸化ゲルマニウム(高純度化学製、純度:4N7、Fe含有量:3000ppb)5.3gと水酸化カリウム溶液(関東化学製、3N、Ultrapurグレード:Fe含有量1ppb)783mLと純水とを混合し、0.05mol/Lの濃度でGe元素を有する溶液(Ge溶液:G−2)を1L調製した。また、水酸化カリウム溶液(関東化学製、3N、Ultrapurグレード:Fe含有量1ppb)16.7mLと純水を用いて、500mLのアルカリ性母液(母液:M−2)を調製した。Ge溶液にG−2(100mL)、母液にM−2を用いたことと、Ge溶液を20mL/分で5分間かけて添加した以外は、実施例2と同様にしてBi12GeO20粒子を得た。
【0062】
(実施例9)
実施例8において、二酸化ゲルマニウム溶液に変えてGe(O−i−Pr)4(高純度化学製、純度5N、Fe含有量:900ppb)を用いた以外は、実施例8と同様にしてBi12GeO20粒子を得た。
【0063】
(比較例4)
実施例6において、反応装置の反応容器、送液配管、ピストンをSUS素材のものに変更した以外は実施例6と同様にしてBi12GeO20粒子を得た。
【0064】
(比較例5)
比較例4において、反応装置の反応容器をテフロンコーティング/SUS、送液配管をテフロン用いた以外は比較例4と同様にしてBi12GeO20粒子を得た。
【0065】
実施例6〜9,比較例4および5で得られたBi12GeO20粒子のFe含有量を上記(Fe含有量の測定)と同様にして測定した。また、上記(放射線検出部の作製)と同様にして、放射線撮像パネルの検出部を完成させ、上記(評価方法および評価結果)と同様にして収集電荷量を求めた。得られたBi12GeO20粒子のFe含有量の測定値、測定した収集電荷、反応装置、原料の詳細をまとめたものを表2に示す。なお、収集電荷は比較例4の収集電荷を1とした相対値で示した。
【0066】
【表2】

【0067】
表1および2から明らかなように、Fe含有量が5ppm以下である実施例1〜9では、Fe含有量が100ppmである比較例1および4に比べて2倍以上の収集電荷が得られた。
上記の実施例および比較例ではFe含有量が収集電荷量に与える影響を示したが、収集電荷量に影響を与えない不純物の一例としてKの含有量と収集電荷の関係を調べた結果を以下の参考例で示す。
【0068】
(参考例1)
実施例2において、アルカリ種として水酸化カリウムに換えて、水酸化テトラメチルアンモニウム25%水溶液(TMAOH:和光純薬製、Fe含有量:5ppb)を用いた以外は、実施例2と同様にしてBi12SiO20粒子を得た。
【0069】
(参考例2)
参考例1において、ケイ酸カリウム溶液に変えてテトラエトキシシラン(TEOS、高純度化学製、6N、Fe含有量:0.5ppb)を用いた以外は、実施例1と同様にしてBi12SiO20粒子を得た。
【0070】
参考例1および2で得られたBi12SiO20粒子のFe含有量を上記(Fe含有量の測定)と同様にして測定するとともに、実施例2,参考例1および2で得られたBi12SiO20粒子のKの含有量を原子吸光法によって測定し、標準添加法によって定量した(内部標準=Co)。また、上記(放射線検出部の作製)と同様にして、放射線撮像パネルの検出部を完成させ、上記(評価方法および評価結果)と同様にして収集電荷量を求めた。得られたBi12SiO20粒子のFe含有量およびK含有量の測定値、測定した収集電荷、反応装置、原料の詳細をまとめたものを表2に示す。なお、収集電荷は実施例1の収集電荷を1とした相対値で示した。
【0071】
【表3】

【0072】
実施例2ではK含有量が参考例1および2に対して26倍以上と高濃度で含有しているにもかかわらず、収集電荷量には殆ど影響を与えておらず、収集電荷量はFe含有量に依存していることがわかる。
以上の結果から本発明のBi12XO20粉子を用いて製造された放射線光導電層を有する放射線検出器は収集電荷が高く、感度がよいことがわかる。
【符号の説明】
【0073】
1 反応装置
11 反応容器
12 温度制御部
13 モーター
14 撹拌部
15a,15b 溶液槽
16a,15b 送液流路
17 撹拌羽根
18 衝立
19 攪拌軸
20 放射線検出器
23,25 電極
24 放射線光導電体
50,100 放射線撮像パネル
30,52 放射線光導電体(放射線光導電層)
31,41,51,55 電極
53 電荷輸送層
54 読取用光導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe含有量が5ppm以下であることを特徴とするBi12XO20(ただし、XはSi,Ge,Tiからなる群より選ばれる少なくとも1種である)粒子。
【請求項2】
前記Fe含有量が3ppm以下であることを特徴とする請求項1記載のBi12XO20粒子。
【請求項3】
前記Fe含有量が1ppm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のBi12XO20粒子。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のBi12XO20粒子を用いて製造されたものであることを特徴とする放射線光導電体。
【請求項5】
請求項4記載の放射線光導電体と、該放射線光導電体に電界を印加する電極とを備えたことを特徴とする放射線検出器。
【請求項6】
放射線照射によって放射線光導電層に発生したキャリアを、前記放射線光導電層に電界を印加することによって電荷として読み出す放射線撮像パネルであって、
多数のスイッチング素子が配列されたアクティブマトリクス層と、画像情報を担持した電磁波の照射に応じて電荷を発生し、該電荷を前記アクティブマトリクス層によって読み出されるように配置された請求項4記載の放射線光導電体からなる放射線光導電層とを有することを特徴とする放射線撮像パネル。
【請求項7】
放射線照射によって放射線光導電層に発生したキャリアを電荷として蓄積して静電潜像を形成し、前記電荷を光照射によって読み出す放射線撮像パネルであって、
前記放射線光導電層に電界を印加する第1の電極と、請求項4記載の放射線光導電体からなる放射線光導電層と、前記キャリアを電荷として蓄積する電荷輸送層と、前記光照射により該電荷輸送層に蓄積された電荷を取り出す読取用光導電層と、前記放射線光導電層に対して電界を印加する第2の電極と、前記読取用光導電層に取り出された電荷を検出する電流検出手段とを順に備えたことを特徴とする放射線撮像パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−285304(P2010−285304A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138827(P2009−138827)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100111040
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 淑子
【Fターム(参考)】