C−erbB−2外部ドメイン:GP75
【課題】C−erbB−2オンコジーンを過剰発現する悪性腫瘍を同定するための方法および組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、腫瘍を有する哺乳類の生物的流体中にC−erbB−2遺伝子によりコードされた外部ドメイン糖タンパク質(gp75)又はその部分が検出されることに基づく。哺乳動物の生物学的液体中のC−erbB−2の外部ドメイン、糖たんぱく質gp75の検出およびgp75レベルの定量を行うことにより悪性腫瘍の診断および予防を行うことができる。
【解決手段】本発明は、腫瘍を有する哺乳類の生物的流体中にC−erbB−2遺伝子によりコードされた外部ドメイン糖タンパク質(gp75)又はその部分が検出されることに基づく。哺乳動物の生物学的液体中のC−erbB−2の外部ドメイン、糖たんぱく質gp75の検出およびgp75レベルの定量を行うことにより悪性腫瘍の診断および予防を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学工学及び免疫化学の分野におけるものである。特に、本発明は適当な宿主生物に発現された組換えDNA分子ならびにそのDNA分子から得られた新規な蛋白質及びポリペプチドに関するものであって、かかる蛋白質及びポリペプチドは組換え的に、合成的に又は、生物学的に生産された蛋白質及びポリペプチドをフラグメント化して生産することができるものである。本発明の組換えDNA分子は、ここで指定した糖蛋白質75(gp75)であるC−erbB−2オンコジ−ンの外部ドメインから得られる蛋白質及びポリペプチドをコード化するDNAによって特徴付けられる。これら血清学的に活性で、免疫原性及び/又は抗原性を有する蛋白質及びポリペプチドは、癌患者の体液中にあるgp75を免疫学的に検出するための試薬として有用であり、これらは診断医が患者の状態及び予後に関して重要な判断をすることを可能にするものであり、さらにこれらの蛋白質及びポリペプチドは、抗体の産生及び親和力による精製に用いる試薬として有用である。本発明の中心的な意義は、哺乳動物の体液中のgp75を検出するよう設定した診断アッセイにある。発現され、または合成的に若しくは生物学的に生産された本発明の蛋白質及びポリペプチドは、腫瘍形成活性に対する癌患者及び二次的な腫瘍形成攻撃に対する回復癌患者の免疫学的応答の増強を図るためのワクチンとして、さらに有用である。さらに、前記gp75蛋白質及びポリペプチドは、C−erbB−2発現細胞の腫瘍形成活性を抑制する治療において有用である。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物細胞の悪性腫瘍に関する機序は、これまでも、また現在も熾烈な研究主題である。最も有望な領域の一つは、オンコジーンがいかにして発現し、また発現を停止するかということを解明することである。オンコジーンの多数が、癌の発生において重要な役割を演じていることが明らかにされている。オンコジーンによってコード化されている蛋白質が異常に作用し、正常細胞の癌細胞への転換において何らかの役割を演じているようである。まず最初に、オンコジーンがレトロウイルス中に検出され、続いてそのウイルスのオンコジーン細胞同等物が見出された。まず、急速なガン発生に応答し易いレトロウイルス遺伝子が1970年代初めにロウス(Rous)肉腫ウイルス(RSV)に同定された。このウイルスは、ニワトリに癌を発生させるものであって、その遺伝子はsarcoma(肉腫)にちなんでsrcと命名された。1975年には、ウイルスのsrc遺伝子(v−src)が、すべてのニワトリ細胞中にほぼ正確なコピーを有することが見出された。v−srcの該細胞同等物は、c−srcである。
【0003】
オンコジーンのスコア(score)は、以前よリレトロウイルスから分離されており、この分離の対象となったウイルスは、ニワトリ、他の鳥類、ラット、マウス、猫又は猿に、癌、肉腫、白血病又はリンパ種を起こさせるものである。それぞれの場合において、オンコジーンは宿主動物の正常遺伝子と密接に関係しており、かつ正常蛋白質に類似のオンコジーン蛋白質をコードすることが見出された。
【0004】
また、オンコジーンは、人組織及び動物組織にも発見された。多種の腫瘍細胞のDNA中の遺伝子は、正常な培養細胞中にトランスフェクションにより導入された場合、それらを癌細胞に転換する。このようなオンコジーンは、プロト−オンコジーンの事実上のコピーでもある。プロト−オンコジーンをオンコジーンに転換する具体的な機序がいかなるものであろうとも、オンコジーンは、そのオンコジーンがコード化する蛋自質によって効果を発揮する。オンコジーンを誘導するプロト−オンコジーンの生成物は、細胞の成長及び分化の調節及び初期発生において重大な役割を有するように思われる。形質転換蛋白質は、細胞に関し根本的な効果を有する。というのは、それらは、基本的細胞プロセスを妨害するからである。
【0005】
アミノ酸へのリン酸分子の付加反応(リン酸化)を触媒する場合の酵素活性は、蛋白質機能の制御に重要であることが知られている。蛋白質をリン酸化する酵素は、蛋白質キナーゼ(ギリシア語Kinein“転位すること”に由来する。)と呼ばれている。公知の全オンコジーンのほぼ1/3は、チロシン残基に特異的な蛋白質キナーゼをコード化している。
【0006】
表皮成長因子(EGF)及び血小板由来成長因子(PDGF)を、分裂していない細胞の培養に加えた場合、細胞が分裂するよう刺激する。BGF及びPDGFは、細胞の原形質膜に理め込まれている特異的な蛋白質レセプターに結合することによって、そのシグナルを伝達する。EGFに対するレセプター蛋白質を分離した際に、EGF分子がそのレセプターと結合した時に刺激されるチロシンキナーゼ活性に関連していることが見出された。次いで、PDGFレセプターも同じ酵素機能があることが示された。
【0007】
チロシンキナーゼ活性を有するヒトプロト−オンコジーンは、3つの研究グループによって確認された:センバ(Semba)らのグループ、PNAS(USA),82:6497(1984)(遺伝子C−erbB−2を示している)、Coussensらのグループ、Science,230:1132(1985)(遺伝子HER2を示している)、Kingらのグループ,Science,229:974(1985)(遺伝子MAC117を示している)である。関連するラットの遺伝子(neuで示される)について、シェクター(Schecter)らにより報告されている(Science, 229:976(1985)。遺伝子の増幅及び/又は遺伝子の発現の増幅した翻訳が、腫瘍細胞及びセルラインにおいて観察されている。〔例えば、フクシゲ(Fukushige)ら,Mol. Cell. Biol.,6:955(1986)(遺伝子の増幅及び発現(elevated expression)(mRNA)がMKN−7胃セルラインで観察されたことを記載)、コーセンス(Coussens)らの前記論文(遺伝子の転写(elevated transcription)が、肝芽細胞腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、2種の神経芽細胞腫及びウィルムス(Wilms)癌から得られたセルラインで観察されたことを記載)、センバ(Semba)らの前記論文(遺伝子が人唾液腺癌で増幅されたことを記載)、キング(King)らの論文(増幅が乳ガンセルラインで観察されたことを記載)、ヨコタ(Yokota)ら、Lancet,I:756(1986)(遺伝子の増幅が胸部、腎臓及び胃の腺癌において観察されたことを記載)及びタル(Tal)ら、Cancer Res., 48:1517(1988)(遺伝子の散発性の増幅が各種組織の腺癌において見出されたことを記載)を参照のこと。〕
【0008】
C−erbB−2レセプターは、EGFレセプターと密接に関連しているとはいえ、相違もしている。EGFレセプターのように、C−erbB−2蛋白質は、細胞外ドメイン、2つの富システイン反復クラスター(cysteine−rich repeat clusters)を含む膜内外ドメイン及び細胞内キナーゼドメインを有するが、C−erbB−2タンパクは185,000ダルトン(185kd)の分子量を有するのに対して、EGFレセプターは約170kの分子量を有する〔シェクター(Schechter)ら、Nature,312:513(1984)〕。フンター(Hunter)は、Sci.Am.,251:70〜77(1984)で、C−erbB−2蛋白質(gpl85)はEGFレセプターのチロシンキナーゼ作用をまねるが、統制されていない方法においてであると仮定している。
【0009】
チロシンキナーゼは、そのc−src遺伝子の産生物がプロトタイプである機能グループと、細胞表面レセプターとして機能する機能グループの2つの機能グループに分けることができる。細胞成長因子またはそれらのレセプターと関連したものとして、少なくとも12の哺乳動物のチロシンキナーゼが同定されている。これらオンコジーンのうち3つは、成長因子〔血小板由来成長因子(PDGF)を伴うc−sis、線維芽細胞成長因子(FGF)を伴うhst及びint2〕と強い相同性を共有している。その他のものは、配位子が同定されている成長因子レセプター〔表皮成長因子(EGF)レセプターを伴うC−erbB、コロニー刺激因子(CSF−1)レセプターを伴うfms〕と強い相同性を共有している。残りの7つ、即ち、eph,C−erbB−2,c−kit,met,ret,c−ros及びtrkは、配位子を伴うレセプターであるかも知れないが、現時点ではその配位子は同定されていない。
【0010】
今日、細胞のあるものは、それら細胞表面レセプターにおける変化によって腫瘍を形成するようになるという証拠が明らかにされてきている。これらの変化は、遺伝子の再配列、点突然変異またはDNA,RNAまたはタンパクレベルでの遺伝子増幅からなるということがいえる〔ドレビン(Drebin)ら、oncogene,2:387(1988);バーグマン(Bargmann)ら、Cel1,45:649(1986);デル(Der),Clin.Chem.,33:641(1987)〕。上記で引用したレセプターは、正常細胞の表面に存在し、一定のオンコジーンの過剰発現(overexpression)が、腫瘍形成活性と関連することが示されてきたとはいえ、そのようなことは、C−erbB−2の場合においてである。
【0011】
今日、細胞を悪性化する能力を有するC−erbB−2オンコジーンが、非常に高いレベルである腫瘍中に存在しているということが認められている〔ザウ(Zhou)ら、Cancer Research,47:6123(1987);バーガー(Berger)ら、CancerResearch 48:1238(1988);クラウス(Kraus)ら,The EMBO Journal,6(3):605(1987);及びスラモン(Slamon)ら、Science,235:177(1987)〕。C−erbB−2オンコジーンの発現及び細胞の外膜におけるその所在は、ガンと密接に関連していると思われ〔クラウス(Kraus)らの上記文献、スラモン(Slamon)らの上記文献、ドレビン(Drebin)ら、Cell,41:695(1985);及びジ・フィオレ(Di Fiore)ら、Science,237:178(1987)〕、事実、それは、少なくともある場合においては、ガン発育の主要な事象であるかも知れない〔ミュラー(Mullar)ら、Cell,54:105(1988)〕。正常細胞表面上のC−erbB−2蛋白質の過剰発現は、それら正常細胞を変化させるかまたはそうでなければ腫瘍細胞として振舞うように思われる〔ドレビン(Drebin)らの上記文献、ジ・フィオレDi Fiore)らの上記文献、及びフジャック(Hudzaik)ら、PNAS(USA),84;7159(1987)〕。
【0012】
更に、C−erbB−2オンコジーンが高いレベルで発現する患者は、非常に乏しい臨床的予後しか有しないということが示されている〔スラモン(Slamon)ら、Science,235:177(1987)〕。C−erbB−2の過剰発現と乏しい予後のこの関係は診断評価及び予後評価の両方の情報を提供することができる〔クラウス(Kraus)ら,TheEMBO Journal,6:605(1987);及びスラモン(Slamon)らの上記文献〕。患者に要求される臨床治療の範囲の決定は、C−erbB−2オンコジーンまたは蛋白質の過剰発現を測定できる能力に基づいて行なうことができる。
【0013】
組織の薄片の評価または組織病理学によって腫瘍組織中に発現されたC−erbB−2を検出するのに、抗体が使用され得る。有用な予後の指標が得られうるということが、方法論によって実証された〔ビヨバー(Vijver)ら、Mol.and Cell.Biol.7:2019(1987);ドウ(Zhou)ら、Cancer Res.,47:6123(1987);バーガー(Berger)ら、CancerRes.,48:1238(1988);クラウス(Kraus)ら、上記文献(1987);及びスラモン(Slamon)ら、上記文献〕。しかしながら、組織がすぐに手に入らないか、またはそれが望ましいものでないか、または、腫瘍から組織を取り出すことができない場合が多い。従って、便利でかつ患者に傷を与えない迅速で正確な診断上の検査方法が、医療技術において必要とされている。本出願で特許請求されている発明は、哺乳動物におけるC−erbB−2の過剰発現を検出する、組織を傷つけることのない診断測定方法を提供することによって、前記要求に応えるものである。
【0014】
スミス(Smith)らは、Science,238:1704(1987)で、過剰の可溶性膜レセプター(CD4抗原)がHIV−1の感染力を遮断することを報告している。
可溶性のCD4の分泌型は、その膜内外ドメイン及び細胞質ドメインを欠いている多種のCD4をコードするベクターとの哺乳動物細胞の形質移入(トランスフェクション)によって産生される。この産生した可溶性CD4は、HIV−1の膜糖タンパク(gp120)を完全なCD4に匹敵する親和力と特異性で結びつけていると報告されている。
【0015】
ウェバーとギル(Weber and Gill)は、Science,224:294(1984)で、培養したヒト表皮腫A431細胞が、彼らがEGFレセプターの細胞表面ドメインと関連していると決定した可溶性105kd蛋白質を生産することを報告した。彼らはさらに、可溶性105kd蛋白質は摸結合完全レセプターからは得られないが、単独でその細胞によって生産されることを決定した。
ヒアリング等(Hearing et al.)は、J.Immunol.,137(1):379(1986)で、精製されたマウス黒色腫−特異性抗原によるマウスの免疫化は、同系の宿主に、マウス黒色腫の二次的な接種に対する耐性を与えることを証明した。
【0016】
ベルナルド等(Bernards et al.)は、PNAS(USA),84:6854(1987)で、外部ドメイン、膜内外アンカードメイン及び“neu”オンコ遺伝子といわれるヒトC−erbB−2ガン遺伝子と同等の約50のアミノ酸のラット細胞内ドメインを発現する遺伝子組換えワクシニアウイルスは、マウスを免疫するために使用した時に、neu発現腫瘍細胞の二次的な接種に対して防御をもたらすことを証明している。ラットのneu蛋白質の外側のドメイン(外部ドメイン)が、担ガンマウス(NFS株)における高度に免疫原性な決定因子であることが、そこでは注目される。
【0017】
アロンソン等(Aronson et al.)の“A Human Gene Related to but Distinct from EGF Receptor Gene”〈米国特許出願第6−836,414号;1986年3月5日出願)と題されたNTIS(National Technical Information Service)出願では、遺伝子の族をコード化するチロシンキナーゼの1種であり、ヒト乳ガンにおいて増輻される、v−erbB関連ヒト遺伝子のクローニング、単離および部分的特性表示を記載している。前記の遺伝子はC−erbB−2であると決定された。この出願はその目的として、前記の遺伝子によってコードされた蛋白質生産物に向けられる抗体と、腫瘍の検出のための前記の抗体を含む診断用キット;その遺伝子によってコードされた生産物;異種ベクターシステムにおいてその蛋白質を発現することが可能なcDNAクローン;その遺伝子を発現することのできる形質転換細胞または微生物;および前記の遺伝子または蛋白質を検出することのできる核酸プローブおよび/または抗体試薬キットを提供することを記載している。前記の出願はさらに、毒物と接合した遺伝子生産物に特異的な抗体の治療的用途を示唆し、もし配位子がv−erbB関連遺伝子に存在するならば、それをターゲット物質として使うことができることを示唆している。
【0018】
クライン等(Cline et al.)は、米国特許第4,699,877号(1984年11月20日出願)で、オンコジーンの発現生産物を目的として、生理的試料が分析されることを特徴とする、腫瘍の存在を検出するための方法と組成物を記載している。
ジ・フィオレ(Di Fiore et al.)はScience,237:178(1987)で広範囲にわたる多様なヒト腫瘍が、増幅されたあるいは過剰発現された(overexpressed)erbB−2遺伝子を含むことを指摘している。erbB−2蛋白質による形質転換に配位子−レセプターの相互作用は必要ないことを確立するためにジ・フィオレ等は、NH2−末端の621個のアミノ酸(外部ドメインから)をコードする配列を除いた構造物を作った。彼らの発見は、NH2−末端の切断が何であっても、erbB−2蛋白質の形質転換活性を増加することを示唆した(180頁に記載がある)。
【0019】
アバウト−ピラック等(About−Pirak et al.)は、J.Natl.Cancer Inst.,80(20):1605(1988)でEGFレセプターの細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体が試験管内でヒトの口の類表皮腫細胞のクローン形成を減少させることを報告している。抗−EGFレセプター抗体をシスプラチンと共に添加した時、これらの物質の抗腫瘍効果は生体内で相乗性を示した。
ベルガー等(Berger et al.)は、Cancer Res.,48:1238(1988)で、原発性ヒト乳ガンからの51個のDNA試料のうち13個(26%)がC−erbB−2遺伝子の多コピーを含むことを報告し、C−erbB−2蛋白質の発現と乳ガンの予後に使われるパラメーター(結節の状態と核のグレード)の間に統計的に顕著な相関関係があることを観察した。ベルガー等は、最近の研究が、検査された原発性乳ガンの33%までに、C−erbB−2が増幅されており〔King等、上記文献;Slamon等、上記文献;van de Vijver等、supra;そしてVenter等、Lancet2:69(1987)〕そして、ヒト乳ガンセルラインの25%までに、C−erbB−2が増幅されていることを〔Kraus等,上記文献〕示していることを指摘した。
【0020】
スラモン等(Slamon et al.)は上記文献(1987)で、C−erbB−2遺伝子の増幅が、腋窩リンパ節のガンの存在と、乳ガン患者のエストロジェンレセプターの状態と乳ガン患者中の原発性腫瘍の大きさとに相関関係を持つことを示した。その研究で、調査された189の原発性ヒト乳ガンうち30%に、C−erbB−2が2倍から20倍以上、増幅されていることが見出された。スラモン等は、C−erbB−2遺伝子の増幅は、乳ガン患者において、生存期間と再発までの時間の両方にとって顕著な予測指標となることを結論づけた。患者の腫瘍からのDNA中に該遺伝子の多数のコピーを有する患者は、生存期間が短いだけではなく、再発までの時間が短いため、より不幸な結末となった。
【0021】
スラモンら(Slamon,et al.,Cancer Cells 7/Molecular Diagnostics of Human Cancer,p.371)(コールドスプリングハーバーラボ.1989)は、ヒト乳癌腫瘍から産生される数種のcDNAクローンの配列決定により、ラットneu遺伝子と異なり,膜内外ドメインにおける変異は遺伝子産物の変化に不可欠なものではないことが示されたと報告した。その代わり、上記のデータは正常産物の過剰発現(overexpression)を含む変化と一致している。
【0022】
ドレビンら(Drebin et al.,Cell,41:695(1985))は、neu gp185に対するモノクローン抗体はneu−形質転換NIH 3T3細胞を非形質転換表現型に復帰させることが、足場非依存性増殖により明らかになったことを報告した。ドレビンら(Drebin et al,Oncogene,2:387(1988))は、gp185の細胞表面外部ドメインと反応するモノクローン抗体は試験管内及び生体内で直接に腫瘍増殖を禁止すると述べている。
マスコら(Masuko et al.,Japn.J.Cancer Res.,80:10(1989))は、ヒトC−erbB−2遺伝子一形質移入NIH 3T3細胞に対してモノクローン産生したネズミ1gMについて、胃癌、結腸癌及び肝臓癌細胞セルラインを含む上皮腫瘍セルラインの一部と反応するが、いかなる非上皮セルラインとも反応しないと記載している。
【0023】
ヤーデンとワインベルクは(Yarden and Weinberg,PNAS(USA),86:3179(1989))は、モデル系としてneuオンコジーンを用いて、成長因子レセプターを想起させる構造を有するオンコジーンコード膜内外チロシンキナーゼに対する仮想的配位子の検出へのいくつかの実験的アプローチを開発した。そこには、resオンコ遺伝子による形質転換された線維芽細胞が分泌したneu−コードオンコ蛋白質の配位子の候補が示唆されている。
【0024】
以下の論文は、オンコジーンの一般的記載、治療薬としてのモクローン抗体の使用、及びC−erbB−2オンコジーンについての情報を提供する。デール(Der,Clin.Chem.33(5);641(1987));ビショップ(Bishop,Science,235:305(1987));ヘンリック及びウェスターマーク(Henrik and Westermark,Cell.37:9(1984));デュースベルク(Duesberg,Science,228:669(1985));シベリー(ShiveIy,J.Clin.Immunoassay,7(1):112(1984));ファンデビジャー(van de Vilver,Oncogenes2:175(1988));及びハンター(Hunter,Sci.Am.251:70(1984))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
方法及び組成物はC−erbB−2を過剰発現する悪性腫瘍を同定するために提供される。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本出願により特許請求されている発明は、腫瘍荷(tumor burden)を運搬する哺乳類の生物的流体(biological fluid)中におけるC−erbB−2遺伝子によりコードされた外部ドメイン糖タンパク質(gp75)又はその部分の検出に基づく。該発明は、哺乳類の生物的流体中のgp75を検出及び定量し、それにより腫瘍を検出しその増殖を定量する特殊な治療検出法を提供し、また腫瘍性疾患の治療及び予後に価値のある情報を提供する。宿主の体液中のgp75の上昇した値、即ち、正常バックグラウンドバインデング値以上の値は、C−erbB−2の過剰発現を示す。(典型的なバックグラウンドバインデング値は、一連の正常ヒト血清に対して1.68%と図10には示されている。)
【0027】
C−erbB−2増殖と関係する他の癌の中で乳癌又は卵巣腺癌のような腫瘍性疾患の愚者の生存は、患者の生物的流体をgp75又はその部分の存在について検査することにより決定できる。
さらに、本発明は患者の体液中のgp75タンパク/ポリペプチドに対する抗体を検出及び定量する検査法を提供する。患者の体液中のgp75タンパク/ポリペプチドの値を測定する本発明の検査法の結果と特に相関する上記検査法の結果は、診断し、患者の状態をモニターして治療方針を決定し、そして予後を作成する際に重要な情報を提供する。
【0028】
さらにまた、本発明は、患者の体液中のgp75に対する仮想の配位子の値を検出及び定量する検査法を提供する。同様に、本明細書で提供されるような、患者の体液中のgp75タンパク/ポリペプチド及びその抗体の値を検出及び定量する方法の結果と特に相関する上記の情報は、治療及び予後に重要であり、患者の状態をモニターする際及び治療方針を決定する際に有用である。
【0029】
上記の背景技術において示したように、C−erbB−2の増幅は、長期間の生存の可能性の減少及び疾患の再発時期の早期化と相関していることがわかっている。本発明の検査法は手術の前後において有用である。上記のC−erbB−2の増幅を示す患者は、疾患のかなりの初期の段階であっても、生存の可能性を増加させるためにより厳密に治療する方がよいであろう。さらに、腫瘍を取り除く手術後における患者の生物的流体中にgp75が存在することは、例えば、系統的な化学療法又は放射線療法の介入をすぐに必要とする転移を示すものである。
本発明は、C−erbB−2過剰発現(overexpress)腫瘍の検出についての非侵入性診断検定及び予診検定に関する.上記の要求を満たすものである。
【0030】
さらに、本発明はC−erbB−2オンコジーン(以後、gp75遺伝子という)の外部ドメインDNA配列又はそのフラグメントによりコードされる新規な蛋白質及びポリペプチドに関するものであり、かつgp75遺伝子又はそのフラグメントを好適な発現べクターに遺伝子組換えすること、このような発現ベクターで宿主を形質転換すること、及び組換え、合成又は他の生物学的手段によりgp75蛋白質及びポリペプチドを生産することに関する。このような組換gp75蛋白質及びポリペプチドはグリコシル化又は非グリコシル化のいずれをも行うことができるが、グリコシル化するのが好ましい。又、ここに記載の方法により実質的に純品となるまで精製することができる。本発明は、さらに合成又は生物学的に製造したgp75蛋白質及びポリペプチドに関する。
【0031】
上記gp75蛋白質及びポリペプチドの用途の1つはワクチンである。さらに、gp75エピトープを免疫系に効率的に与えるワクチンは、gp75又はgp185を過剰発現する強化細胞膜を含むことができる。このような細胞膜は、C−erbB−2を過剰発現させるために形質転換した組換宿主、好ましくはトランケート内部ドメインを有する形にC−erbB−2を過剰発現するものから誘導、又は人癌細胞系から誘導することができる。さらに、本発明により提供される抗イディオタイプ抗体は、ワクチンとして有効である。
【0032】
gp75蛋白質及びポリペプチドの別の用途は、腫瘍活性を弱める治療剤であり、このものを単独で又は化学療法剤と組合せて使用することができる。
gp75蛋白質及びポリペプチドのさらに別の用途は、親和性結合研究においてC−erbB−2に対する推定上のリガンド(配位子)を検出することである。仮に哺乳動物の生物学的流体中に該リガンドが検出されると、次にこれを本発明のgp75蛋白質及びポリペプチドを用いて精製できるかも知れない。例えば、gp75蛋白質及びポリペプチドは、遺伝子工学によって生産されたリガンドを精製する方法において使用できるかも知れない。
【0033】
さらに、本発明は、gp75蛋白質又はポリペプチドをコードするだけでなく、人に対して免疫原性を有さずかつ人の体液中の抗体に典型的には反応しない蛋白質/ポリペプチドのアミノ酸配列をもコードするDNA配列を含む組換えDNA分子に関する。このようなDNA配列の例は、ベータガラクトシダーゼのアルファペプチドコード領域である。さらに、本出願では、実質的に純粋で、かつ天然生成物を含まない組換え融合蛋白質/ポリペプチドをクレームする。
【0034】
さらに、本発明は、gp75遺伝子又はそのフラグメントを含む精製、単離DNA分子に関する。さらに本発明は、gp75蛋白質及びポリペプチドに対する抗体の診断及び治療上の使用に関する。さらに本発明は、gp75蛋白質及びポリペプチドに対するような抗体に対する非イディオタイプ抗体に関する。
さらに本発明は、組換により、合成により又は他の生物学的方法により製造した本発明のgp75蛋自質及びポリペプチド及び/又はこれに対する抗体を用いたgp75用診断検定に関する。
【0035】
本発明は、また、本発明の検定を具体化したテストキットを提供するものであり、該テストキットは、抗体gp75蛋白質/ポリペプチド及び/又はC−erbB−2の無傷(intact)外部ドメインに対する抗体を含む(ここで無傷とは、gp75が細胞表面で発現することを意味する。)。これらの検定は固相検定とすることができるが、これに限定されるものではなく、液相形態でも行うことができ、エリサ法に基づく粒状検定や、例えばアビジン/ビオチン法を用いた増幅した又は非増幅の放射又は螢光検定とすることもできる。
【0036】
本発明はさらに、本発明の診断検定におけるgp75蛋白質/ポリペプチドを置換することができるgp75蛋白質/ポリペプチド認識モノクローナル抗体に対する抗イディオタイプを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1は、CHO細胞から発現した組換C−erbB−2細胞外ドメイン蛋白質(gp75)のイムノアフィニティークロマトグラムを示す。濃縮CHO上清を0.5×5.0cmのイムノアフィニティーカラムに流速0.2μl/分で流した。次に、カラム溶離液の280nm(A280nm)における吸収がベースラインに到達するまでカラムにPBSを0.5μl/分の速度で流してカラムを洗浄した。特異結合物質が図中の矢印で示した、流速0.2μl/分、pH2.5の100mMグリシン−HC1の段階的グラジエントで溶離した。
【0038】
図2Aは、図1に示した組換的に生産したC−erbB−2 gp75のイムノアフィニティーカラムフラクションのSDS−PAGEを示す。各フラクションのサンプルをラムリ(Laemmli)サンプルバッファー中で調製し、10%ポリアクリルアミドゲル上で行った。ゲルをコーマシー(Coomassie)ブルーR−250で染色した。
図2Bは、ウェスタンブロットである。図2Aで使用したゲルと同じゲルを使用し、分離したタンパク質は電気泳動により0.22μmのニトロセルロース膜に移した。E.coliで発現した組換フラグメントgp185に対して生起させたウサギポリクローナル抗体(抗体92A)を使用して膜をプローブ分析した。ヤギ抗ウサギ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ抱合体及びインドファン基質(Vio−medics,Worcester,MA)を使用して特異的に結合した抗体を可視化した。各レーンには以下のように負荷した。レーン1:濃縮CHO上清;レーン2:予備染色分子量標準(Bethesda Research Laboratories,Gaithersburg,MD>;及びレーン3から7:免疫アフィニティカラムフラクション1から5(図2Aに示したのと同様)。
【0039】
図3は、クローニングベクターpFRSVの部分制限地図である。このベクターは、SV40初期領域プロモーターによって駆動される転写ユニット及び複製開始点(origin)、並びにSV40大T抗原挟持配列(5´mRNAスプライシング>及び初期領域ポリアデニル化部位を有している。第2の転写カセットは、突然変移体DHFR遺伝子、即ちメトレキセート(MTX)耐性をコードする優勢選択マーカーを含んでいる。最初のSV40ori/プロモーターから下流に位置する唯一のEcoRI部位に、前記2.2kb c−erbB−2secフラグメントをサブクローン化してpFRSV−c−erbB−2secを生成した。
【0040】
図4は、以下のように各レーンに負荷したSDS−PAGEである。レーン1及び9:Std;レーン2から6:抗−c−erbB−2 TAb 252に結合するために、NIH3T3 c−erbB−2形質移入体により発現されたc−erbB−2の可溶フラグメントをgp75と競合させる;レーン2から6:NIH3T3−c−erbB−2からの細胞溶解物を増加量で10μgの抗−c−erbB−2 TAb 252と共に7時間インキュベートし、その後gp75発現CHO細胞から回収したin vitroラベル化上清の400μlのインキュベートを10時間行った;レーン7:アイソトープ適合非特異的コントロールのマウスミエローマmAb、(IgG1)により免疫沈降させたin vitroラベル化gp75 CHOクローンからの溶解物;レーン8:TAb 252により免疫沈降させたCHO−gp75からの溶解物。
【0041】
図5は、組織培養上清からのgp75の放射活性免疫沈降を示す。レーン1及び12:分子量マーカー;レーン3から6:12倍に濃縮され9.2ウサギポリクローナルにより沈降されたSKBR3細胞からの上清−レーン3;レーン4:A−29ネズミ抗−c−erbB−2ハイブリドーマペアレント;レーン5:TAb 252ネズミ抗−c−erbB−2モノクローナル;レーン6:Amershamネズミ抗−EGFレセプターモノクローナル;レーン7から10:6倍に濃縮されたc−erbB−2腫瘍遺伝子により形質転換された3T3細胞からの上清;培地は沈降可能シグナルを可視化するのに充分なまでには濃縮しなかった。
【0042】
図6は、c−erbB−2陽性及び陰性細胞系からの上清の放射活性免疫沈降を示す。レーン1及び12:分子量マーカー;レーン2及び4:12倍に濃縮されTAb 252により沈降されたMDA435からの上清;レーン3及び5:Amersham抗−EGFレセプター抗体で沈降された同じ上清;レーン6及び7;TAb 252及び抗−EGFレセプター抗体でそれぞれ沈降されたMDA468培養からの12倍に濃縮された上清;レーン8及び9:無関係;レーン10及び11:12倍に濃縮されTAb 252及び抗−EGFレセプター抗体で沈降された形質移入3T3細胞からのコントロール上清。
【0043】
図7は、TAb 259を捕獲抗体として、TAb 256を放射活性標識第2抗体として使用したサンドウィッチIRMAアッセイにおける、部分的に精製したgp185及びgp75タンパク質の標準曲線を示す。このアッセイにより、形質移入したNIH3T3細胞から部分的に精製した全c−erbB−2タンパク質並びに形質移入CHO細胞の上清から精製された外部ドメインタンパク質の両方を検出することができる。このアッセイは、部分精製gp75を標準として使用した場合、約100倍感度が向上する。
【0044】
図8は、TAb 259/256サンドウィッチIRMAアッセイで試験した場合における、c−erbB−2形質移入NIH3T3細胞により生起された腫瘍を有するヌードマウス血清中に出現した抗原の検出を示す。血清はすべて1:5(容量/容量)の希釈で試験し、このアッセイにおける血清の前(プレ)腫瘍プールのバックグラウンド結合は1.7%である。このアッセイにおいてgp75蛋白質を使用した標準曲線は、図7のものと同等のものである。マウス中、シグナルは500から1000mm3の範囲の腫傷サイズで検出することができ、腫瘍が3000から10,000mm3に達するまで増加し続ける。
【0045】
図9は、c−erbB−2遺伝子により形質移入されたNIH3T3細胞により生起された腫瘍を有するマウスから得られTAb 252又はPBS又はlgG1により処理されTAb 259/256サンドウィッチ1RMAで試験されたヌードマウス血清の分析を示す。血清は、1月の実験期間の間を通じて種々の採血日から得、1;5の希釈において試験した。マウスは、その血清を試験した時点において、TAb 252、c−erbB−2の外部ドメインと反応性を有するMAb、IgG1又はPBSによる2から8回の処理(100−500μg/処理)を受けていた。アッセイにおいて6種の前腫瘍血清を試験し、平均結合を調べた。アッセイにおけるバックグラウンドカットオフ(background cut−off)は、前腫瘍血清の平均+2標準偏差分この平均より上、即ち2.2%と決定した。PBS処理マウスは、1001から3000mm3の腫瘍容量において有意にバックグラウンドを上回る抗原を発生し(n=7)、一方、TAb 252処理マウスは同じ腫瘍容量において極くわずかの検出可能抗原しか発生しなかった(n=5)。より大きな腫瘍容量においても、TAb処理マウスからの血清における発生抗原の検出可能性は(n=9)、PBS処理マウスからの血清と比較して(n=8)、やはり抑制されている。
【0046】
図10は1:5の希釈度(容量/容量)において、TAb 259/256サンドウィッチIRMAにおける、正常な志願者からの12人の血清に対する試験結果を示す。これらの血清を使用し、1.68%のバックグラウンドバインディングレベル(background binding level)が決定される(平均+2の標準偏差)。
【0047】
図11は1:5の希釈度において、TAB 259/256IRMA検定における、20人の乳癌患者からの連続的な出血に対する試験結果を示す。一連の試料が疾患および治療の経過を通じて採取された。1−4の患者に対しては、腫瘍の外科手術による切除の1日前の、最初の診断時に試料〔a〕が採取された。5−10の患者の試料〔a〕は腫瘍の外科手術による切除の数日後に採取され、11−20の患者の試料〔a〕は最初の、またはつぎの再発時に採取された。残余の試料〔b−f〕(各患者に対し4または5)は治療期間中いろいろな間隔で採取され、疾患または治療に対する応答の特別な状態には相応しない。この検定に対するバックグラウンドカットオフ(background cut−off)は1.68%であった。
【0048】
図12はTAb 259/256IRMA検定における、乳癌患者からの3人の血清をgp75標準および正常な人の血清と比較した滴定曲線を示す。血清はすべて1:5の希釈度において試験され、検定中のバックグラウンドカットオフは1.6%である。患者19aに対しては、初期の腫瘍が切除されて約1−1/2年後に患考19に転移があらわれた時に血清の試料がとり出された。患者19はこの試料が採取されて1−1/2年後に死亡した。初期の腫瘍が診断された7ヶ月後に肝臓および骨髄への転移についての最初の減退があった時に患者7から7eの血清試料がとり出された。患者7は、この最後の試料がとり出された6日後に死亡した。患者4fの試料は、初期の腫瘍が診断された2年後に肝臓および結節への転移についての最初の減退があった時にとり出された。患者4はこの〔f〕試料がとり出された6ヶ月後に死亡した。
【0049】
図13はC−erbB−2遣伝子で形質移入(トランスフェクション)されるNIH3T3細胞から溶解物へのTAb 251の結合に拮抗するいろいろな細胞溶解液の能力が試験された拮抗検定結果を示す。SKOV3、BT474およびNIH3T3tラインはすべてgp185蛋白質を過剰に表現し、これらのラインからの溶解物は増加する蛋白質濃度と拮抗する。対照のNIH3T3溶解物は拮抗することがない。
【0050】
図14はC−erbB−2遺伝子のgp75部分でトランスフェクションされたCHO細胞系からの上澄液がNIH3T3t細胞から溶解物へのTAb 251の結合と拮抗する拮抗検定に対する結果を示す。トランスフェクションされたCHO細胞からの上澄液は拮抗することがない。
【0051】
図15はC−erbB−2でトランスフェクションされたNIH3T3細胞によって誘導された動物が持つ腫瘍からのヌードマウスの血清はNIH3T3t細胞から溶解物へのTAb 251の結合と拮抗し得ることを表わす試験結果を示す。1100mm3よりも大きなサイズの腫瘍を持ったマウス2−4は拮抗することができるが、マウス1の血清および血清のプレ腫瘍プールはこの検定において拮抗しない。
【0052】
図16はC−erbB−2遺伝子の完全なヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。〔カウスセンス等、上記(Coussen et al.supra)〕。gp75外部ドメインは約アミノ酸ナンバー22(セリン:ser−22)から約アミノ酸ナンバー653(セリン;ser−653)までを含む(このアミノ酸はそれらの上に黒わくで印がつけられている)。
【0053】
本発明の多くの面を強調する概念は、C−erbB−2で過剰発現された細胞がC−erbB−2外部ドメイン(gp75)を宿主の哺乳動物の体液中に放つということの発見である。実施例1、4、5および6はこの発見に導く証拠を略述する。可溶性のC−erbB−2誘導体(gp75)は安定して変形されgp75で表現された細胞の上澄液中に見出された。この蛋白質は約75Kの分子量を有することおよびNIH3T3t(C−erbB−2で表現された細胞)中に存在する蛋白質と拮抗することがわかった。(実施例1)実施例4、5および7はC−erbB−2外部ドメインに特有な親和性結合を有する発生した抗原の検出を、それぞれC−erbB−2トランスフェクションされたNIH3T3細胞(NIH3T3t)によって誘導されたヌードマウスの持つ腫瘍の血清において、および人の腫瘍培養上澄液において、および乳癌患者からの人の血清において、詳しく述べている。この発見は人および他の哺乳動物における腫瘍疾患の診断および治療のための新規な方法および組成物の開発への道を開いた。
【0054】
アッセイ
哺乳類、好ましくはヒトの体液中の三つの異なる実体を検出し、定量するためのアッセイが、ここに提供される。この場合、これらの実体は、以下のとおりである。gp75タンパク質/ポリペプチド;gp75タンパク質/ポリペプチドの抗体;及びC−erbB−2に対する推定配位子(リガンド)。夫々のアッセイは患者の症状に関する重要に情報を与え、且つ新生物性疾患に関して哺乳類をスクリーニングし、新生物性疾患を診断し、その疾患の進行を監視するのに個別に有益であり、且つその疾患の進行を予測し、そして適切な治療プロトコルを決定することに有益である。しかしながら、これらのアッセイの一つ以上からの結果、好ましくは三つの全てに関する試験結果の相関関係は、患者の症状に関する最良のプロフィールを与える。
【0055】
例えば、患者は大きな腫瘍を示すことがあるが、患者のgp75の量は比較的少ないことがある。読み取りの低さはgp75タンパク質/ポリペプチドの抗体の患者による発生のためによるものであり得るが、腫瘍の小さいことのためではない。
データを相関させる方法の別の例は、gp75に対する推定リガンドの関係に関して患者の状態の広範な所見を与える。患者は多量の循環gp75タンパク質/ポリペプチドを示すことがあるが、患者が推定リガンドを生産していない場合には、新生物性疾患を有していない。リガンドがない場合、C−erbB−2細胞表面レセプターはそれにより非制御増殖を開始するように刺激され得ない。こうして、リガンド対gp75の比は、プロトオンコジーンがオンコジーンに活性化される機構であるリガンド/レセプター複合体のモデルのもとに有意である。
【0056】
哺乳類体液中のgp75タンパク質/ポリペプチドに関するアッセイ
哺乳類、好ましくはヒトの体液中のgp75タンパク質/ポリペプチドを検出し、その中のこのようなgp75タンパク質/ポリペプチドの量を定量するための非観血的診断アッセイが提供される。gp75タンパク質/ポリペプチドという用語は、この状況下で体液中の標的抗原として使用される。何となれば、放出された(shed)gp75タンパク質は患者の体液中で種々のフラグメントに分解されることがあり、これらのフラグメントがタンパク質(50個より多いアミノ酸を有する)及びポリペプチド(50個より少ないアミノ酸)を構成するからである。
このようなアッセイは、新生物性疾患の状態を監視する貴重な手段を与える。予測を改良することに加えて、症状の知識は、担当医師が個々の患者に最適の治療を選ぶことを可能にする。例えば、再発の高い可能性がある患者は、全身の化学療法及び/または放射線療法を通常伴なって激しく治療し得る。再発の可能性が少ない場合には、それ程積極的ではない治療が選択し得る。更に積極的な治療養生によりひき起こされる重度の患者の窮迫のために、このような積極的な治療を要するこれらの愚者を高い確度でもって見分けることが望ましい。
【0057】
本発明は、充実性腫瘍及び造血性癌の両方を含む多種の新生物性疾患をスクリーニングするのに有益である。新生物性疾患の例は、腺癌及びメラノーマの如き癌;神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫の如き中胚葉腫瘍;アソステオサルコーマ(asosteosarcomas)、ユーイングサルコーマ、及び種々の白血病の如きサルコーマ;及びリンパ腫を含む。胸、卵巣、特に結腸及び胃を含む胃腸管、肝臓、甲状腺、前立腺、脳、膵臓、尿管(膀胱を含む)、及び唾液腺の腫瘍が、特に関係がある。前立腺、卵巣及び胸の腫瘍が、更に特別な関係がある。更に詳しくは、胸及び卵巣の腺癌が広く研究され、C−erbB−2を過剰発現することを確かめられた。
本発明の方法によりgp75を分析するのに特に関係がある体液は、血清、精液、胸部浸出液、唾液、尿、シトゾル、血漿及び髄液を含む。血清が本発明の方法によリスクリーニングするのに好ましい体液である。
【0058】
C−erbB−2オンコジーン(gp75)の外部領域(外部ドメイン)の構造を知るため、このタンパク質を特異的に認識する幾つかのモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が生成し得る。gp75はC−erbB−2増幅に関連する腫瘍の表面から特異的且つ特別に放出され、しかも哺乳類の生体液中に自由に存在するので、そのタンパク質の量を検出し定量することが可能である。C−erbB−2オンコジーンの外部領域への特別につくられたモノクローナル抗体の結合を定量化し得る現行の抗体検出技術を利用して、癌患者の体液中の外部領域の量を測定することができる。このようなアッセイは腫瘍を検出し、それらの増殖を定量化し、ヒトの疾患の診断及び予後を助けるのに使用し得る。そのアッセイは、哺乳類の体液中のgp75を検出し定量化するために適当にラベルし得るモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の使用を伴なう。
【0059】
本発明の主題は、宿主中の正常な細胞または宿主から新たに取り出された細胞の群中の悪性細胞の存在の可能性を評価するための方法及び組成物を提供する。好ましい方法は、第一段階として、精製量のC−erbB−2オンコジーンの外部領域を得、それを免疫原として使用してマウスまたはその他の適当な宿主中でモノクローナル抗体を生成することを伴なう。モノクローナル抗体はgp75のエピトープと特異的に反応すべきである。また、膜表面でC−erbB−2を発現する全無傷細胞が抗原源として使用し得る。外部領域の異なるエピトープを認識するために多数のモノクローナル抗体を生成することが可能であり、これらのモノクローナル抗体は単独で使用でき、またはカクテルとして組合せて使用してアッセイの特異性及び感度を増大することができる。免疫原として全外部領域を使用することの他に、このタンパク質のフラグメント、または組換えDNA手段により生成されたタンパク質が、また、特異的なモノクローナル抗体を生成するのに使用し得る。また、外部領域配列内の種々の配列に相当するポリペプチドが免疫原の源として使用し得る。全ての場合、生成された抗体は、それらが腫瘍細胞及び非腫瘍細胞の両方の表面に存在する他のタンパク質との極めて制限された交差反応性を有するような特異性を有する。それらは、例えば、多くの正常細胞の表面に存在するEGFレセプターと反応しない。診断アッセイそのものは、典型的には、ヒト宿主からの少量の体液、好ましくは血清を得ることを伴なう。次いで、血清中のC−erbB−2外部領域の存在が、幾つかの良く特定された抗体診断アッセイを用いて定量化し得る。これらはウエスタンブロット、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、RIAアッセイ(放射性免疫測定法)、または二重抗体サンドイッチアッセイであってもよく、これらは全て診断業界で普通に使用される。全ての場合、結果の解釈は、抗体または抗体の組合せがC−erbB−2に無関係である血清中に存在するその他のタンパク質及びタンパク質フラグメントと交差反応しないという仮定に基く。これらの方法は、C−erbB−2外部領域の存在が背景に上記されたように腫瘍の存在と強い相関関係を有するという事実に基く。これらのアッセイは腫瘍の存在を検出し、腫瘍の持続される増殖を検出し、癌転移の存在を検出し、また外科手術、癌の化学療法また放射線療法後の全腫瘍組織の不在または除去を確かめるのに使用し得る。更に、それは癌化学療法及び腫瘍再発を監視するのに使用し得る。
【0060】
実施例3は、本発明の好ましい診断方法−二重サンドイッチ免疫ラジオメトリック測定法(IRMA)のフォーマットを説明する。体液中のgp75の検出のための多くのその他のフォーマットが勿論利用でき、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を含む。ELISA試験の一つの型の代表は、マイクロタイタプレートがgpタンパク質/ポリペプチドの抗体またはC−erbB−2を発現、好ましくは過剰発現する全細胞(即ち、無傷gp75)の抗体で塗布され、これに患者の血清の試料が添加されるフォーマットである。抗原を抗体に結合させるインキュベーションの期間の後に、プレートが洗浄され、酵素に結合される別の組の抗gp75抗体が添加され、インキュベートされて反応を行ない、次いでプレートが再度洗浄される。その後、酵素基質がマイクロタイタプレートに添加され、酵素が基質上で作用するのに充分な期間にわたってインキュベートされ、最終調製物の吸光度が測定ざれる。吸光度の大きな変化は陽性結果を示す。
【0061】
また、gp75タンパク質及び/またはポリペプチドの抗体が患者の体液中のgp75の存在を検出し定量化するのに使用し得ることが、診断アッセイの当業者に明らかである。一つのこのような実施態様に於いて、競合イムノアッセイが使用され、その場合、gp75タンパク質/ポリペプチドがラベルされ、体液が添加され、gp75タンパク質/ポリペプチドに特異的な抗体へのラベルしたgp75の結合を競合する。このようなアッセイはgp75タンパク質/ポリペプチドを検出するのに使用し得る。
【0062】
別の実施態様に於いて、イムノメトリックアッセイが使用でき、この場合、gp75タンパク質またはポリペプチドのラベルした抗体が使用される。このようなアッセイに於いて、抗原結合された抗体と複合体形成するラベルした抗体の量は体液中のgp75の量に直接比例する。本発明のアッセイに使用するためのモノクローナル抗体は、当業界で公知の方法、特にNature、256巻、495〜497頁(1975年)に記載されているコーラー(Kohler)及びミルスタイン(Milstein)の方法により得ることができる。
【0063】
このような診断方法は、哺乳類、好ましくはヒトの体液中のgp75に関して測定するたあの試験キットで具体化でき、その場合、このような試験キットはgp75タンパク質及び/またはボリペプチドのポリクローナル抗体及び/またはモノクローナル抗体、及び/またはC−erbB−2を発現する全細胞(即ち、無傷gp75)の抗体を含むことができる。更に、このような診断試験キットは、サンドイッチフォーマットに関して別の組のポリクローナル抗体及び/またはモノクローナル抗体を含むことができ、その場合、前記の第二組の抗体が適当にラベルされる。
【0064】
好適な特異性を有する抗体が一旦調製された時、多種の免疫測定法が特定の抗体−抗原複合体の形成を測定するのに利用できる。多数の競合タンパク質結合アッセイ及び非競合タンパク質結合アッセイが科学文献及び特許文献に記載されており、多数のこのようなアッセイが商業的に利用できる。血清抗原を検出するのに適したイムノアッセイの例は、米国特許第3,791,932号;同第3,817,837号;同第3,839,153号;第3,850,752号;同第3,850,578号;同第3,853,987号;同第3,867,517号;同第3、879,262号;第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;及び同第4,098,876号明細書に記載されたアッセイを含む。
【0065】
アッセイに使用される抗体は、ラベルされてもよく、またラベルされなくてもよい。ラベルされていない抗体は凝集に使用でき、種々のラベルを用いてラベルされた抗体は多種のアッセイに使用し得る。
或種の技術では、抗体ではなく抗原またはそのフラグメントをラベルし、抗体に関してラベルした抗原と試料中の抗原との間の競合を有することが有益である。この状況下で、ラベルした抗原またはラベルしたフラグメントと最高の感度及び精度を与える量の抗体との組合せを有するキットを提供することが普通である。
【0066】
その他の状況下で、固体担体を有することが望ましく、この場合、抗原または抗体が結合される。ポリエピトープ抗原が、担体に結合された抗体とアッセイ媒体中のラベルした抗体との間のブリッジとして利用できる。また、制限量の抗体に関して、ラベルした抗原と試料中の抗原との聞の競合を有することができる。
好適な検出手段は、放射性核種、酵素、螢光物質、化学発光物質、酵素基質またはコファクター、酵素インヒビター、粒子、色素等の使用を含む。このようなラベルした試薬は、放射性免疫測定法、酵素イムノアッセイ、例えば、ELISA、螢光イムノアッセイ、等の如き種々の公知のアッセイに使用し得る。例えば、米国特許第3,766,162号;同第3,791,932号;第3,817,837号;.及び同第4,233,402号明細書を参照のこと。
【0067】
gp75タンパク質/ポリペプチドの抗体に関する分析
上記の如く、患者の体液中のgp75タンパク質/ポリペプチドの抗体の量は、新生物性疾患についてスクリーニングし、その疾患の進行を監視し、予測すること及び治療のコースを決めることに重要なパラメータである。このような抗体を検出するのに代表的なアッセイは競合アッセイであり、その場合、ラベルしたgp75タンパク質/ポリペプチドがgp75タンパク質/ポリペプチドを認識するモノクローナル抗体と組合せて患者血清中の抗体により沈殿される。当業者は、上記のフォーマットのいずれかを適用してgp75の抗体の定量化のために抗gp75抗体を検出し得る。
【0068】
C−erbB−2の推定リガンドに関するアッセイ
C−erbB−2レセプターの推定リガンドの量を検出し定量化するためのアッセイが、新生物性疾患を診断しスクリーニングし、その疾患及び治療スケジュールの進行を監視し予測するのに同様に有益である。このようなアッセイは、gp75タンパク質/ポリペプチド及びその抗体に関する上記のアッセイの一つと関連して、更に好ましくはこのようなアッセイの両方に関連して特に有益である。
gp75タンパク質/ポリペプチドを利用するC−erbB−2リガンドに関するこのようなアッセイの代表的なフォーマットは、精製され、好ましくは実質的に純粋なgp75タンパク質/ポリペプチドをプラスチック表面またはその他の固体担体にこのような表面へのそれ自体の結合により、または補足抗gp75抗体により付着することを伴なう。未知の量のラベルされていないリガンドとのラベルしたリガンドの競合アッセイを利用して、gp75タンパク質/ポリペプチドへの結合に関するラベルされていないリガンドの濃度が通常の診断器具使用を利用して定量化し得る。
【0069】
別のフォーマット、ラベリング、及び一般にその他の改良(これらはgp75タンパク質/ポリペプチドに関するアッセイについて上記されたように当業者の知識の範囲内にある)がC−erbB−2の推定リガンドを検出し定量化するためのアッセイに同様に適用する。
【0070】
gp75タンパク質/ポリペプチドの抗体の抗イディオタイプ抗体
gp75タンパク質/ポリペプチドの抗体の抗イディオタイプ抗体が更に本発明の範囲内にある。上記のアッセイの夫々の場合に、このような抗イディオタイプ抗体がgp75タンパク質/ポリペプチドに代えて使用し得る。ワクチンの項目に更に記載されるように、このような抗イディオタイプ抗体は免疫原性薬剤として使用し得る。
【0071】
抗gp75抗体の抗イディオタイプ抗体は、方法の部、モノクローナルC−erbB−2抗体の調製に実質的に上記されたように調製され、その場合、初期免疫化はNIH3T3t細胞ではなく適当な抗gp75抗体による。融合プロトコルは同様にしてそれに従って行なわれる。スクリーニング方法は、免疫化に使用されるもとの抗gp75モノクローナルへの結合に関する一次スクリーン、及び競合アッセイ、例えば、ラジオメトリックアッセイを含む二次スクリーニングであり、その場合、適当なgp75タンパク質/ポリペプチドは放射能ラベルしたもとの抗gp75モノクローナルによる結合に関して融合中に生産された抗イディオタイプ抗体と競合する。
【0072】
試験キット
上記のアッセイは試験キットの形態で具体化し得る。前記の試験キットはgpタンパク質/ポリペプチドの抗体及び無傷のgp75(即ち、C−erbB−2を発現する細胞の表面上にある)の抗体を含み得る。前記の抗体はポリクローナル及び/またはモノクローナルであり得る。更に、前記の試験キットはgp75タンパク質/ポリペプチドを単独で、または上記の抗体と組合せて含み得る。上記のように、抗gp75抗体の抗イディオタイプ抗体がこのような試験キット中で適当なgp75タンパク質/ポリペプチドに代えて使用し得る。
【0073】
例は推定リガンドに関して分析するためのキットであり、その場合、gp75タンパク質/ポリペプチドが表面に塗布され、またはその上に捕捉されるか、あるいは抗gp75抗体の抗イディオタイプ抗体が表面上にそうして塗布される。また、このようなアッセイは上記のように競合アッセイとして処方し得る。勿論、このようなアッセイは固相アッセイに限定されないが、液相フォーマットであってもよく、また酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、粒子アッセイ、例えばアビジン/ビオチン技術を用いて増幅され、または増幅されないラジオメトリックアッセイまたはフルオルメトリックアッセイに基いてもよい。
【0074】
gp75タンパク質及びポリペプチドの調製
本発明のgp75タンパク質及びポリペプチドは種々の方法で調製し得る。gp75タンパク質を調製するのに好ましい方法は組換え手段による。本発明の代表的な組換え法は実施例1に後記される。
本発明のgp75タンパク質及びポリペプチドは、更に合成法または生物学的法により、即ち長いタンパク質及びポリペプチドを酵素及び/または化学的に切断することにより調製し得る。前記の合成法及び生物学的法は、項目、gp75タンパク質及びそのポリペプチド部分の合成的及び生物学的生産(Synthetic and Biologic Production of gp 75 Protein and PolypeptideProteins Thereof)のもとに詳細に後記される。このような方法はgp75ポリペプチドを調製するのに好ましい。
【0075】
gp75配列またはそのフラグメントのクローニング
実施例1に従ってつくられたプラスミドpFRSV−c−erbB−2secは、本発明に従って調製し得る多くの可能なDNA組換え分子の代表にすぎない。使用される制限エンドヌクレアーゼに応じて、c−erbB−2外部領域配列の全部または一部が本発明に従ってクローン化され、発現され、使用し得る。
本発明に有益な制限酵素は、生成されるDNAフラグメントがgp75配列の部分を含むような方法でDNAを切断する酵素を含んでもよい。好適な制限エンドヌクレアーゼは、本発明の範囲から逸脱しないで本明細書に記載された因子を考慮して当業者により選択し得る。
【0076】
実施例1に使用された代表的なクローニングビヒクルはpSV7186である。しかしながら、多種の宿主−クローニングビヒクルの組合せがgp75DNAをクローン化するのに有効に使用し得る。例えば、有益なクローニングビヒクルは、pBR322、その他のE.coliプラスミド及びそれらの誘導体の如き種々の既知の細菌プラスミド及びRP4の如き広範な宿主域プラスミド、ファージラムダの多数の誘導体、例えばNB989の如きファージDNA及びファージDNA発現調節配列を使用するように修飾されたプラスミドのようにプラスミドとファージDNAの組合せから誘導されたベクターの如き、染色体DNA配列、非染色体DNA配列及び合成DNA配列を含んでもよい。
【0077】
有益な宿主は、真核生物または原核生物、好ましくは真核生物であってもよく、E.coli株CAG456、JM103、N4830、X1776、X2282、HB101及びMRC1及びシュードモナス株、枯草菌及びその他のかん菌の株、酵母及びその他の真菌類の如き細菌宿主、並びに培養中の動物細胞または植物細胞、昆虫細胞の如き動物宿主または植物宿主及びその他の宿主を含む。本発明の好ましい宿主は酵母細胞、培養中の哺乳類細胞、好ましくはサル細胞及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。好ましいサル細胞は細胞系COS7からの細胞であり、好ましいCHO細胞は細胞系CHO−(dxb11)からの細胞である。勿論、宿主の全てが等しく有効であるとは限らない。宿主−クローニングビヒクルの組合せの特別な選択は、本発明の範囲から逸脱しないで本明細書に記載された原理を考慮した後に当業者によりなし得る。
【0078】
更に、夫々の特異的なベクター内で、種々の部位が単離された二本鎖DNAの挿入のために選択し得る。これらの部位は、通常、それらを切断する制限酵素またはエンドヌクレアーゼにより指示される。例えば、pBR322では、PstI部位はペニシリナーゼタンパク質のアミノ酸181及び182をコードするヌクレオチドトリプレット間のペリシリナーゼの遺伝子中に配置される。
【0079】
選択されたDNAフラグメントをクローニングビヒクルに挿入して組換えDNA分子を生成するのに選ばれる特別な部位は、種々の因子により決定される。これらは、発現されるタンパク質またはポリペプチドのサイズ及び構造、宿主細胞成分による細胞内酵素分解に対する所望のタンパク質またはポリペプチドの感受性及びそのタンパク質による汚染、開始コドン及び停止コドンの位置の如き発現特性、及び当業者により認識されるその他の因子を含む。これらの因子のいずれもが単独では特別なタンパク質またはポリペプチドに関する挿入部位の選択を絶対に制御しないが、むしろ選択部位はこれらの因子のバランスに影響し、全ての部位が所定のタンパク質に等しく有効であるとは限らない。
【0080】
勿論、クローニングビヒクルの選択された制限部位で挿入されるヌクレオチド配列または遺伝子フラグメントは、所望のタンパク質の実際の構造遺伝子の部分ではないヌクレオチドを含んでもよく、あるいはその構造遺伝子のフラグメントのみを含んでもよいことが理解されるべきである。どのようなDNA配列が挿入されようとも、形質転換宿主はgp75のエピトープを示すタンパク質またはポリペプチドを生産することのみが必要とされる。
【0081】
ハイブリッド遺伝子を含む組換えDNA分子は、宿主(形質転換体)が構造遺伝子またはそのフラグメントを発現しハイブリッドDNAがコードするタンパク質またはポリペプチドを生産することを可能にするように、宿主を形質転換するのに使用し得る。また、組換えDNA分子は、複製後の宿主がgp75DNA及びそのフラグメントの源として別の組換えDNA分子を生産することを可能にするように、宿主を形質転換するのに使用し得る。これらの使用のいずれかに適した宿主の選択は、当業界により認識される幾つかの因子により制御される。これらは、例えば、選択されたベクターとの適合性、同時生産物(co−product)の毒性、所望のタンパク質またはポリペプチドの回収の容易なこと、発現特性、生物学的安全性及びコストを含む。宿主の絶対的な選択は、これらの因子のいずれか単独から特別な組換えDNA分子またはタンパク質もしくはポリペプチドに関して、なし得ない。その代わり、これらの因子のバランスは、全ての宿主が特別な組換えDNA分子の発現に等しく有効であるとは限らないという認識により見つけることができる。
【0082】
grタンパク質/ポリペプチドの発現
宿主細胞がE.coliの如き原核生物である場合、DNA取込みの可能なコンピテント細胞は指数増殖後に回収され、続いて公知の操作により塩化カルシウム(CaCl2)法により処理された細胞から調製される。また、形質転換は、宿主細胞のプロトプラストを形成した後に行ない得る。
使用される宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム沈殿としてのDNAの形質移入法、マイクロインジェクションの如き通常の機械的操作、赤血球宿主またはリボソーム中に被包されたプラスミドの挿入、リゾボスファチジルコリンの如き薬剤による細胞の処理またはウイルスベクターの使用等が使用し得る。
【0083】
タンパク質またはポリペプチドの生産量は、二つの主要因子:その遺伝子または細胞内でそれを暗号化コード化するDNA配列のコピー数及びこれらの遺伝子及び配列のコピーが転写され翻訳される効率により支配される。転写及び翻訳(これらは一緒に発現を含む)の効率は、順に、通常所望の暗号配列の前方に配置されるヌクレオチド配列に依存する。
これらのヌクレオチド配列または発現調節配列は、特に、RNAポリメラーゼが相互作用して転写を開始する位置(プロモーター配列)及びリボソームがmRNA(転写の生産物)を結合し、それと相互作用して翻訳を開始する位置を規定する。このような発現調節配列の全てが等しい効率で作用するとは限らない。こうして、所望のタンパク質に特別な暗号配列をそれらの隣接ヌクレオチド配列から分離し、高レベルの発現を有利にするように既知の発現調節配列に代えてそれらを融合することが有利である。これが達成された場合、細胞内の遺伝子または配列のコピー数を増加し、それにより発現タンパク質の収率を更に改良するために、新たに処理されたDNAフラグメントがマルチコピープラスミドまたはバクテリオファージ誘導体中に挿入し得る。
【0084】
幾つかの発現調節配列が使用し得る。これらは、E.Coliのラクトースオペロンのオペレータ、プロモーター及びリボソーム結合配列及び相互作用配列(シャインーダルガルノ(Shine−Dalgarno)配列の如き配列を含む)(“lac系”)、E.coliのトリプトファンシンセターゼ系の相当する配列(“trp系”)、trp及びlacプロモーターの融合(“tac系”)、ファージ1の主要なオペレーター及びプロモーター領域(OLPL及びORPR)、及びファージλコートタンパクの調節領域を含む。これらの配列を含むDNAフラグメントは、lacオペロンまたはtrpオペロンを有する形質導入ファージから分離されたDNAまたはファージλもしくはfdのDNAから制限酵素による切断により切除される。次いで、これらのフラグメントは、必須の調節配列が暗号配列の開始コドンの極めて近くに、またはそのコドンと近位で接合し得るような分子の制限された集団を得るために、操作される。
【0085】
次いで、融合生産物が適当な宿主の形質転換のためのクローニングビヒクル中に挿入され、抗原生産量が測定される。こうして、最も有効な発現を示す細胞が選択される。また、開始コドンに結合されるlac、trpまたはλPL調節系を有するクローニングビヒクルが使用されて、gp75タンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含むフラグメントに融合されてもよく、その結果、その遺伝子または配列がクローニングビヒクルの開始コドンから正確に翻訳される。
【0086】
gp75タンパク質及びそのポリペプチドフラグメントの合成的及び生物学的生産
本発明のgp75タンパク質及びポリペプチドは、組換え手段によるだけでなく、合成手段及びその他の生物学的手段によっても生成し得る。所望のポリペプチドまたはタンパク質を調製するためのその他の生物学的手段は、所望のアミノ酸配列を含む長いgp75ポリペプチドまたはタンパク質を選択的タンパク質加水分解にかけることである。例えば、長いポリペプチドまたはタンパク質は化学試薬または酵素により切断し得る。ポリペプチドまたはタンパク質の合成による生成は、当業界で公知の方法によリアミノ酸の所望の鎖を化学的に合成することを必要とする。
【0087】
所望のアミノ酸配列を含む長いポリペプチドまたはタンパク質の部分は、下記の操作のいずれかにより切除し得る。
(a)タンパク質加水分解酵素、特にその基質がアミノ酸の所望の配列の直ぐ隣りの部位でタンパク質またはポリペプチドの切断を特異的に生じるこれらの酵素によるタンパク質または長いポリペプチドの消化。
(b)化学的手段によるタンパク質またはポリペプチドの切断。アミノ酸間の特別な結合は、特定の試薬との反応により切断し得る。その例は、下記のものを含む。メチオニンを伴なう結合は臭化シアンにより切断され;アスパラギニルグリシン結合はヒドロキシルアミンにより切断され;二つのシステイン残基間のジスルフィド結合は、例えばジチオスレイトールによる還元により切断される。
(c)タンパク質加水分解変化と化学変化の組合せ。勿論、上記のように、合成ポリペプチドをコードするDNAの小部分をクローン化して単細胞宿主によるペプチドの生産をもたらすことがまた可能であるべきである。
【0088】
生物学的に、または合成的に生産されたタンパク質及び一旦生産されたポリペプチドは、ゲル濾過、イオン交換または高速液体クロマトグラフィー、またはその他の好適な手段により精製し得る。
ポリペプチドの化学合成は、下記の刊行物に記載されている。メリフィールド(Merrifield)ら,J.Am.Chem.Soc.85巻、2149〜2156頁(1963);ケント(Kent)ら,“Synthetic Peptides in Biology andMedicine”,29ff.,アリタロ(Alitalo)ら編集、(Elsevier Science Publishers 1985年);ハウグ(Haug),ABL,40〜47頁(1987年、1月/2月);アンドリューズ(Andrews),Nature 319巻、429〜430頁(1月30日、1986年);ケント,“Biomedical Polymers”,213〜242頁、ゴールドバーグ(Goldberg)ら編集、(Academic Press 1980年);ミッチル(MitchelDら,J.Org.Chem.43巻、2845〜2852頁(1978年);タム(Tam)ら,Tet.Letters.,4033〜4036頁(1979年);モジュゾフ(Mojsov)ら,J.Org.Chem.45巻、555〜560頁(1980年);タムら、Tet Letters,2851〜2854頁(1981年);及びケントら、“Proceeding of the IV International Symposium on Methods of Protein Sequence Analysis(タンパク質配列分析の方法に関する第4回国際シンポジウムの会報)”(Brookhaven Press 1981年)。
【0089】
上記の刊行物に記載された“メリフィールド固相操作”は、カルボキシル末端アミノ酸からアミノ末端アミノ酸までのL−アミノ酸の適当な配列をつくるのに使用し得る。樹脂のクロロメチル基、ベンズヒドリルアミン基、またはその他の反応基への化学結合により適当な樹脂に付着された適当なカルボキシル末端アミノ酸から出発して、アミノ酸が夫々に関して下記の操作を用いて一つずつ付加される。
【0090】
(a)ペプチジル樹脂が塩化メチレンで洗浄される;
(b)その樹脂が塩化メチレン中の5%(v/v)のジイソプロピルエチルアミン(またはその他のヒンダード塩基)と室温で10分間混合することにより中和される;
(c)その樹脂が塩化メチレンで洗浄される;
(d)生長するペプチド鎖のモル量の6倍に等しい量のアミノ酸が、それを半分のモル数のカルボジイミド、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドと0℃で10分間合わせることにより活性化されてアミノ酸の対称酸無水物を生成する。使用されるアミノ酸は、ベンジルエステル(アスパラギン酸及びグルタル酸)、ベンジルエーテル(セリン、スレオニン、システイン、チロシン)、ベンジルオキシカルボニル基(リシン)またはペプチド合成に普通使用されるその他の保護基で保護された側鎖を有するN−α−ブチルオキシカルボニル誘導体として最初に与えられるべきである;
(e)活性化されたアミノ酸が室温で2時間にわたってペプチジル樹脂と反応させられて、成長するペプチド鎖の末端への新しいアミノ酸の付加を生じる;
(f)その樹脂が塩化メチレンで洗浄される;
(g)N−α−(ブチルオキシカルボニル)基が塩化メチレン中の30%(v/v)のトリフルオロ酢酸と室温で30分間反応させることにより直前に付加されたアミノ酸から除去される;
(h)その樹脂が塩化メチレンで洗浄される;
(i)必要とされるペプチド配列がつくられるまで工程a〜hが繰返される。次いで、10%(v/v)のアニソールを含む無水のフッ化水素酸と反応させることにより、ペプチドが樹脂から除去され、同時に側鎖保護基が除去される。続いて、ペプチドはゲル濾過、イオン交換、または高速液体クロマトグラフィー、またはその他の適当な手段により精製し得る。
【0091】
化学合成は固相樹脂を使用しないで行なうことができ、その場合、合成反応は完全に溶液中で行なわれる。反応、及び最終生成物は、特別なことがない限り実質的に同じである。
化学的ペプチド合成の技術は、自動ペプチド合成装置を使用すること、市販の保護されたアミノ酸を使用することを含む。このような合成装置は、例えば、バイオサーチ(Biosearch)(SanRafael,CA)型式9500及び9600、アプライド・バイオシステム・インコーポレーション(Applied Biosystems lnc.)(Foster City,CA)型式430、及びミリゲン(MilliGen)(ミリポア社の一部門)型式9050を含む。更に、デュポンズ・ランプ(Dupont’s Ramp)(高速自動化多重ペプチド合成)を使用して約25までのポリペプチドを一度に手動で合成し得る。
【0092】
本発明の合成ポリペプチドは、gp75の一つ以上のエピトープを含むことが好ましい。エピトープ(これは約3〜約11個のアミノ酸、更に通常約5〜約11個のアミノ酸であり得る)を形成するアミノ酸配列をその両側面にある少なくとも三つのアミノ酸に結合することによりこのようなポリペプチドを合成することが可能である。両側面の三つのアミノ酸は天然のgp75配列中のものと同じアミノ酸であってもよく、またその他のアミノ酸であってもよい。
【0093】
gp75の抗体
本発明の組換体、合成もしくは天然のgp75タンパク質及びポリペプチドは、診断アッセイだけでなく、gp75タンパク質/ポリペプチドのアフィニティ精製及び治療上の使用に関して用途を有する。背景に上記されたように、C−erbB−2の抗体は、試験管内及び生体内で腫瘍増殖を抑制することが示された〔ドレビンらの上記の文献(1985年)を参照のこと〕。
【0094】
ワクチン
本発明のgp75タンパクおよびポリペプチドが腫瘍性疾患に対して防御免疫を誘発でき、かつ腫瘍形成活性に対する抑制効果をもつワクチンに配合し得ることは容易に理解されよう。ポリペプチドは単量体または多量体形状で、gp75の1種以上のエピトープに対応する1種以上のアミノ酸を含むように、組換え手法であるいは生物学的に合成または調製することができる。次いで、これらのポリペプチドを、gp75に対する防御免疫性を誘起することのできるワクチンに配合できる。かかるポリペプチドの抗原性を高める方法は多量体構造への組込み、免疫原性の高いタンパクキャリヤ、例えばキーホールリンプレットヘモシアニン(KLH)、またはジフテリア毒素などへの結合、およびアジュバントまたは任意の他の免疫応答のエンハンサとの組合せでの投与などを包含する。
更に、gp75タンパク/ポリペプチドに対する抗体の抗イデオタイプ抗体もワクチンとして有用であり同様に処方し得ることも理解されよう。
【0095】
単量体または多量体形状のいずれかのgp75のエピトープに対応するアミノ酸配列を、化学的合成手段により、あるいは遺伝的に修飾された微生物またはその培養物を包含する生物起源から精製することにより得ることができる。〔ラーナー(Lerner),“シンセティックバクシンズ(Synthetic Vaccines)”,Sci.Am.,1983,248(2),pp.66−74参照〕。このポリペプチドは、例えば融合タンパクとして合成される場合における如く、アミノ酸配列中で他のタンパクのフラグメントを含む他のポリペプチドと結合するか、あるいは合成または天然起源の他の抗原性または非−抗原性のポリペプチドに結合することができる。
【0096】
“gp75のエピトープに対応する”なる用語は以下のような実際上の可能性を含むものと理解される。即ち、いくつかの例においては、天然にみられるタンパクおよびポリペプチドのアミノ酸配列の変動は抗原性であり得、かつ腫瘍性疾患に対する防御免疫および/または抗−腫瘍形成効果を与え得るという可能性を包含する。起こり得る配列変動はアミノ酸の置換、伸長、欠落、端部切除(truncations),挿入(interpolation)およびこれらの組合せを含むが、これに制限されない。このような変更は、これらの変更を含むタンパクまたはポリペプチドが免疫原性であり、しかもこのようなポリペプチドまたはタンパクが誘発する抗体が十分に天然に産するgp75タンパクおよびポリペプチドと交叉反応して、ワクチンとして投与された場合に防御免疫性および/または抗−腫瘍形成活性を与えるとすれば、本発明の意図する範囲内に含まれる。
このようなワクチン組成物は生理的に許容される媒体と組合せられ、該媒体としては免疫学的に許容される希釈剤および担体並びに一般的に使用されているアジュバント、例えばフロインド完全アジュバント、サポニン、ミョーバンなどが挙げられる。投与はgp75タンパクまたはポリペプチドの免疫学的に有効量、好ましくはレシピエントの体重1kg当たり免疫学的に活性なgp75タンパクおよび/またはポリペプチド0.01〜10.0μgなる単位投薬量を与えるような量で行われる。全予防投薬量は抗原0.1〜約100μgの範囲内であり得る。
投与経路、抗原投与量、注入の回数および頻度は、当業者が最適化し得る範囲内の事項である。
【0097】
gp75タンパクおよびポリペプチドの治療での使用
本発明のgp75タンパクおよびポリペプチドは、更に単独でもしくは化学療法薬と組合せて腫瘍性疾患の治療において使用できる。C−erbB−2の外部ドメインが、完全な(intact)分子として、体液中に注入されたという事実はそれ自体治療上の役に立つ。細胞に付着しない過剰のgp75は、背景の項で既に述べたように〔スミス(Smith)等、上記文献(1987)〕、CD4レセプタおよびHIV−1のgp120エンベロープタンパクに類似する様式で、C−erbB−2に対する推定リガンドのオンコジーンの細胞表面レセプタへの結合と競合し、かつこれを妨害する可能性がある。gp75タンパクおよびポリペプチドの治療上の効果を説明するためのもう一つの機序は、腫瘍形成を容易にするC−erbB−2表現細胞間のレセプタ/レセプタ相互作用を阻害もしくは破壊することであり得る。
【0098】
このような治療法は、患者にC−erbB−2外部ドメイン物質、そのフラグメントあるいはその配列の一部に由来するペプチドを投与することを含む。gp75タンパク/ポリペプチドの高い循環濃度は、上述の如く、腫瘍の成長を減衰もしくは排除することを期待できた。このgp75タンパク/ポリペプチドは生理的に許容される、非毒性の液状ビヒクルに分散させ、治療上有効な量で投与できる。投与経路および投与量は上記のワクチンの項で述べたのと同様である。
【0099】
定義
用語“gp75”とは、ここでは分子量約185キロダルトン(kd)の糖タンパク(gp185)即ちC−erbB−2の外部ドメインを構成する、分子量約75kdの糖タンパクを意味するものとする。用語“gp75”は正確には図16に示されたそのヌクレオチドおよびアミノ酸配列により定義され、gp75外部ドメインは大体アミノ酸番号22(セリン;Ser−22)からほぼアミノ酸番号653(セリン;Ser−653)までの領域(図16においてこれらアミノ酸はその上部の黒丸でマークされている〉を含み、これに対応するヌクレオチド配列をもつ。このアミノ酸配列はgp75のグリコシル化されていないバージョン(version)を表し、およその分子量69kdを有するものと思われる〔クッセンズ(Coussens)等の上記文献〕。用語“gp75”に含まれるものとしては、タンパク生成物の分子量に影響する種々の度合のグリコシル化をもつ酵母および高等真核生物による組換え技術により生成される糖タンパクであり、例えば少量のgp90は、以下の実施例1で示されるように、安定に形質転換されたgp75−表現CHO細胞中で生成された。
【0100】
“完全gp75(intact gp75)なる表現は細胞表面に発現されたgp75外部ドメインを意味するものとしてここでは定義する。従って、この完全gp75は依然として膜内外領域を介して該細胞に付着している。
“ポリペプチド”とはペプチド結合によって共有結合的に結合したアミノ酸の鎖であり、かつここでは50以下のアミノ酸を含むものと考える。“タンパク”とは、ここでは50以上のアミノ酸を含むポリペプチドであると定義する。
“gp75タンパクおよびポリペプチド”なる表現は、ここでは、図16に示したようなgp75外部ドメインDNA配列(ほぼ−Ser−22乃至ほぼSer−653をコードするヌクレオチド)により、あるいは該gp75DNA配列のフラグメントによってコードされるタンパクおよびポリペプチドを意味するものと定義する。“gp75タンパクおよびポリペプチド”なる表現は、該“gp75タンパクおよびポリペプチド”と実質的に同一のアミノ酸配列および実質的に同一の生物学的活性を有するタンパクおよびポリペプチドを包含するものと解釈すべきである。
【0101】
遺伝子コードの縮重のために、即ち1種以上のコドンが1種のアミノ酸をコードする〔例えば、コドンTTA、TTG、CTT、CTC、CTAおよびCTGは夫々アミノ酸のロイシン(L)をコードする〕ことから、一つのコドンが他のコドンで置換されている図16のヌクレオチド配列の変更は、本発明によれば実質的に等価なタンパクまたはポリペプチドを生成するものと理解される。gp75に対するヌクレオチド配列のこのようなすべての変更は、本発明の範囲内にはいる。
更に、図16のgp75DNA配列は天然に生ずるヌクレオチド配列の正確な構造のみを示していることを理解すべきである。僅かに修飾されたヌクレオチド配列が血清学的に類似の活性をもつ、免疫原性のおよび/または抗原性のタンパクおよびポリペプチドをコードすることが見出され、もしくはこれらをコードすべく当分野で公知の技術によって修飾し得ることが予想され、このようなヌクレオチド配列並びにタンパク/ポリペプチドは本発明の目的にとって等価であると考えられる。同等のコドンをもつDNAは本発明の範囲内にあり、例えば該gp75DNA配列に相同もしくは実質的に相同なタンパク/ポリペプチドをコードする合成DNA配列およびgp75タンパク/ポリペプチドをコードする配列とハイブリッド化されたDNA配列並びに遺伝子コードの縮重がなければ該gp75配列にハイブリッド化されるであろうこれらの配列が含まれる。更に、ここでいうgp75配列に相補的なDNA配列も本発明の範囲内にある。ここで示したようなDNA配列の上記の如き修飾並びに変更は、gp75配列またはそのタンパクと実質上同一である配列を与えるものと考えられる。
【0102】
典型的には、このような関連ヌクレオチド配列は、実質的に相同の定義にはいるものと実質的に同一である。
更に、gp75のアミノ酸配列は遺伝子技術により修飾し得ることを理解するであろう。1種以上のアミノ酸を削除もしくは置換することができる。このようなアミノ酸の変更は、特にこの変更がポリペプチドのエピトープ外の領域におけるものである場合には、タンパクまたはポリペプチドの血清学的、抗原性および/または免疫原性活性に何等検知し得る変化を生じ得ない。生成するタンパクまたはポリペプチドは実質的に同一のアミノ酸配列および実質的に同一の生物学的活性を有し、かつ本発明の範囲内にある。
好ましくは、該gp75タンパク/ポリペプチドが化学療法薬と共に投与された場合には、該薬品はアルキル化剤である。この方法にとって好ましい化学療法薬はシスプラチン、カルボプラチンおよびメファラン(mephalan)である。
【0103】
略 語
本明細書では以下のような略語を使用する。
ATCC:アメリカンティッスカルチャーコレクション(American Tissue Culture Collection)
BCA:ビシンコニン酸(bicinchoninic acid)
BSA:牛血清アルブミン
CHO:チャイニーズハムスター卵巣
DAB:ジアミノベンジン4塩酸塩
DHFR:ジヒドロフォレートリダクターゼ
DMEM:ドゥルベコ改良イーグル培地(Dulbecco modified Eaglemedium)
EDTA:エチレンジアミンテトラ酢酸
EGF:表皮増殖因子
EGFr:表皮増殖因子レセプタ
EGTA:エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸
ELISA:酵素標識イムノソーベントアッセイ
FACS:フルオレセント活性化細胞選別(fluorescent activatecd cell sorting)
【0104】
FBS:仔牛血清
FITC:フルオレセインイソチオシアネート
HAT:ハイポキサンチンアミノブテリンチミジン
HBSS:ハンクス液
HEPES:4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタン−スルホン酸
HPLC:高圧液体クロマトグラフ
HRP:セイヨウワサビペルオキシダーゼ
IRMA:イムノラジオメトリックアッセイ(immunoradiometric assey)
【0105】
MEM:最小必須培地
MTT:3−(4,5−ジメチルチアゾイル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド
MTX:メトトレキセート
NHS:Nーヒドロキシサクシンイミド
PBS:リン酸緩衝塩水
PEG:ポリエチレングリコール
PMSF:フェニルメチルスルホニルフルオライド
PNPP:p−ニトロフェニルホスフェート
RIA:ラジオイムノアッセイ
RPMI:ロスウェルパークメモリアルインスティチュート(Roswell Park Memorial Institute)1640培地
RT:室温
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
SDS−PAGE:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
TAB−MAB:モノクローナル抗体
TCA:トリクロロ酢酸
TMB:テトラメチルベンジジン
TRIS:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンあるいはアミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール
【0106】
セルライン
以下のセルラインを、以下に記載する実験で使用した。
SKBR3:ヒト乳癌セルライン。転移胸膜滲出液として得られ、ATCCカタログNo.HTB30として得た。
SKOV3:ヒト卵巣癌セルライン。転移腹水滲出液として得られ、ATCCから得た。カタログNo.HTB77。
MCF7:ヒト胸腺癌セルライン(胸膜滲出液由来)。ATCCから得た。カタログNo.HTB22。
MDA361:脳への転移腫瘍由来のヒト乳癌セルライン。ATCCから得た。カタログNo.HTB27。
MDA435:転移胸膜滲出液由来のヒト乳癌セルライン。ATCCから得られる。カタログNo.HTB129。
MDA468:転移胸膜滲出液由来で増幅されたEGFrを含む乳癌セルライン。ATCCから得た。力タログNo.HTB132。
NIH3T3:S.アーロンソン(Aaronson)(NIH)から得た二十日ネズミ繊維芽細胞セルライン(Science,1987,237,p.178)。
NIH3T3t:C−erbB−2オンコジーンと共に移入された二十日ネズミ繊維芽細胞セルライン。S.アーロンソン(NIH)から入手した(Science,1987,237,p.178)。
HBL100:この比較的正常なヒトミルク由来の乳癌セルラインはSV−40で不死化されており、ATCCから得た。カタログNo.HTBI24。
COS7:SV−40形質転換アフリカ産グリーンモンキー細胞。ATCCから入手した。カタログNo.CRL1651。
CHO−(dxbl1):チャイニーズハムスター卵巣細胞。UCSFセルカルチャーファシリティ(Cell culture facility)から入手。
【0107】
増殖培地
ここに記載する実験における、指定したセルラインの増殖のために以下の増殖培地を使用した。
SKBR3,MDA435,DA468:これらの細胞は最小必須培地(MEM)〔ギブコバイオロMジカルズ社(Gibco Biologicals Inc.),N.Y.〕、10%の熱失活させた仔牛血清、0.29μ・g/μlのL−グルタミン中で培養した。
SKOV3:細胞は、イスコブズ改良ダルベッコ培地(lscove’s Modified Dulbecco’sMedium(IMDM)、10%熱失活仔牛血清、0.29μg/μlL−グルタミン中で培養した。
MDA361:細胞は、RPMI1640、10%熱失活仔牛血清、1μg/μl牛膵臓インシュリン、0.29μg/μlL−グルタミン中で培養した。
HBL100:細胞はマッコイ(McCoys)5A培地、10%熱失活仔牛血清、0.29μg/μlL−グルタミン中で培養した。
COS7:細胞は、10%仔牛血清(ギブコ)、100μMのL−グルタミン、100単位/mlのペニシリンおよび100μg/μlのストレプトマイシンを補充したダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中に定常的に保持した。
CHO−(dxbl1):細胞は10%FBS、L−グルタミンおよび抗生物質を補充したα−MEM中に維持した。
NIH3T3:これら細胞はDMEM+4%FBS、2mMグルタミン中に維持した。
NIH3T3t
MGF7
【0108】
文 献
以下の文献は本明細書中で、著名または編者および年号で言及した参照文献である。
アウステル(Ausutel)等(編)、カレントプロトコールズ(Current Protocols),in Mol.Biol.,vol.2,(ウィリーインタサイエンス(Willeylnterscience),1988)。
・クッセンズ(Coussens)等,Science,1985,230,p.1138
・ジフィオレ(Di Fiore)等,ibid,1987,237,p.178
・グラハム&ファンデルエブ(Graham and Van der Eb)(編),J.Virol.,1973,52,P.456
・ホーラン−ハンド(Horan−Hand)等,Cancer Res.,1983,43,p.728
・ホルビッチ(Horwich)等,J.Cell Bio1.,1985,100,P.1515
・スー(Hsu)等,J.Histochem.,1981,.29,p.577
・キング(King)等,Science,1985,229,p.974
・ラエムリ(Laemmli),Nature,1970,227,p.680
・マニアティス(Maniatis)等,モレキュラークローニング(Molecular Cloning):アラボラトリーマニュアル(ALaboratory Manual),コールドスプリングハーバーラボラトリ,1982
・マッコングローグ(McConglogue),哺乳類細胞用の遺伝子伝達ベクタ(Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells),pp.79−84(CSH出版、1987)
・スラモン(Slamon)等,“ヒト乳癌におけるHER−2/neuプロトーオンコジーヌの研究(Studies of the HER−2/neu proto−oncogene in human breast cancer)”,癌細胞7/ヒト癌の分子論的診断(Cancer Cell7/Molecular Diagnostics of Human Cancer),pp.371−384,(CSH,NY,1989)
・トービン(Towbin)等,PNAS,1979,76,p.4350
・ゾラー&スミス(Zoller and Smith),Methods Enzymol.,1987,154,p.329
【0109】
方法
以下の方法を下記実施例において使用した。
タンパク分析
4%アクリルアミド濃縮用ゲルと、10%解像ゲル(resolving gel)(両者共に0.2%SDSを含む)を使用して、ラエムリ(Laemmli)〔Nature,1970,227,pp.680−685;この論文を本発明の参考文献とする〕により記載されたように、SDS−PAGEによりタンパクを分析した。サンプルを50μlのサンプルバッファー〔63mMのトリス(TRIS),pH6.8、10%のグリセロール、5%の2−メルカプトエタノール、および2.3%のSDS〕中に適用し、20mAなる定電流条件で4時間電気泳動させた。タンパクの分子量は既知の分子量をもつ標準タンパクに対する各タンパクの易動度から評価した。タンパクの濃度はクーマシー青色色素−結合アッセイ(バイオラドラボラトリーズ(Bio−Rad Laboratories),リッチモンドCA)を利用して測定した。
【0110】
ウェスタンブロット
適当な抗体によって同定される抗原を特徴付けするために、トービン(Towbin)等(Proc.Natl,Acad.Sci.,USA,1979,76,pp.4350−4354;この論文を本発明の参考文献とする)により記載されたようなウェスタンブロット法の改良法を利用したが、ここではタンパクはSDS−PAGEゲルからニトロセルロースフィルタに移され、かつ適当なモノクローナル抗体で同定された。ニトロセルロースフィルタに移した後、過剰なタンパク結合サイトを、3%BSA含有PBS中に該フィルタを浸漬することにより遮断した。1%のBSAおよび1〜2×107カウント/分(cpm)のヨウ素化抗体を含む30μlのPBS中で該シートを1時間インキュベートすることによりこの抗原を配置させた。次いで、このフィルタを洗浄し、乾燥し、かつオートラジオグラフィーに付した。(この手順により100ピコグラム(pg)程度までのタンパクを検出することができる)。
【0111】
抗体の調製
ポリクローナル抗体:92の調製
ニュージランド白兎を、C−erbB−2タンパクの81%のN−末端に該当するE.コリ組換え抗原50〜200μgで免疫した。初期免疫はフロインド完全抗原に1:1(v/v)の割合で乳化した該抗原からなっており、これは2箇所の皮下部分に注射された。後の追加免疫は不完全アジュバントに乳化した該抗原で2度に渡り2週間隔で行った。これら動物の耳静脈から2週毎に採血し、gp185表現細胞溶解物に対しウェスタンブロット法で、(以下に述べる)ELISAを基に細胞に対する反応性により、放射性標識した細胞溶解物からのgpl85タンパクの免疫沈降により、および放射性標識したA431細胞溶解物からのgp170タンパクの免疫沈降により該血清をアッセイした。これらの血清は2度の追加免疫後のウェスタンブロット法によりgp185との強い反応性をもつことが明らかとなりおよびEGFレセプタタンパクとの交叉反応性を示すことが立証された。
【0112】
ポリクローナル抗体:9.2の調製
C−erbB−2タンパクのC−末端における14アミノ酸からなるペプチドに対する兎ポリクローナル抗血清を作成した。上述と同様の免疫化を利用した。この抗血清はC−erbB−2タンパクを発現する細胞の膜処方物から約185kdのタンパクを特異的に沈殿させる。これは該EGFレセプタと交叉反応しない。
【0113】
モノクローナルC−erbB−2抗体の調製
C−erbB−2オンコジーン、NIH3T3t(親切にもDr.S.アーロンソン(NIH)により提供された)を移入した2×106〜1×107NIH3T3細胞〔ディフィオレ(Di Fiore)等,Sciene,1987,237,pp.178−182〕または完全フロインドアジュバント中に1:1(v/v)の割合で乳化した同数のSKBR3細胞のいずれかで、腹腔内および皮下経路でBalb/cマウスを免疫した。これらの動物を、不完全アジュバントに乳化した細胞で2〜4週毎に追加免疫した。2週毎に血清を集め、(以下に述べる)ELISAアッセイで、ホルマリンで固定したNIH3T3またはNIH3T3t細胞に対する反応性につきテストした。正の力価を示す動物を細胞のPBS溶液で腹腔内または静脈内経路で追加免疫し、細胞融合のために4日後に動物を殺した。脾細胞を、ケーラー&ミルシュタイン(Kohler and Milstein)(Nature,1975,256,pp.495−497)の手順に記載されたようにPEG4000を用いて、1:1〜7.5:1の比率でP3−X63Ag8.653ミエローマ細胞と融合させた。融合細胞を緩かに洗浄し、RPMI中で1〜4×106細胞/μlの密度で96−ウェルをもつプレートに塗布した。融合の24時間後にウェルをHAT培地で満たし、次いで3日毎に2〜3週間に亘りこの操作を続けた。形成コロニーが肉眼でみえるようになる10〜14日後に、培養上澄をELISAアッセイにおける反応性についてテストした。良好な成長を示したクローンを24ウェルを備えたプレートに展開し、7〜10日後に再度スクリーニングした。次いで正のウェルを、流動選別解析(flow sorting analysis)により生きたNIH3T3およびNIH3T3t細胞に対する外部ドメイン反応性につきアッセイした。ELISAアッセイおよび流動選別解析両方に対して正であるハイブリドーマ(親ハイブリドーマという)を、限界希釈クローニングまたは表面免疫グロブリン表現の流動選別解析に基いた脾臓支持細胞を含む96−ウェルを備えたプレートへの単一細胞付着によりクローニングした。成長がみられたウェルをELISAで再度テストし、更に1〜3回再クローニング処理した。
【0114】
ハイブリドーマクローンからの上澄を、イソタイプおよびサブイソタイプ、流動選別解析によるNIH3T3t上での表面発現gp185に対する反応性、および移入細胞からの標識gpl85プロテインの免疫沈降につきテストした。正のハイブリドーマを育生し、プリスタンで感作したBalb/cマウス、Balb/cヌードマウスまたはIRCFlマウス中に腹水生産のために注入した。腹水をベーカーボンド(Bakerbond)ABxカラム上でのHPLCで精製し、精製されたモノクローナル抗体(TAb#という)をPBSに対して透析し、−20℃にて保存した。全精製抗体を放射状免疫拡散法によるイソタイプおよびサブイソタイプにつき(15%未満の汚染イソタイプ)、流動選別解析による、gp185表現セルラインの細胞表面染色性につき、移入または非移入NIH3T3細胞に対するELISAアッセイ、標識C−erbB−2発現セルラインからのgpl85の放射性免疫沈降、放射性標識されたA−431細胞から放射性標識された170KDタンパクが沈殿しなかったことによる密接に関連したEGFレセプタタンパクとの交叉反応性の欠如につきテストし、かつSDS−PAGEおよびゲルデンシトメトリーによる解析を行った(全精製タンパクは90%以上免疫グロブリンである)。すべてのモノクローナル抗体は、ウエスタンブロット法によるgp185タンパクの認識を示さなかった。今日までに発展したMAbsおよびその反応性の概要を第1表に総める。A29はモノクローナル抗体、TAB250−254に対する親ハイブリドーマである。初期のいくつかの実験においては、表に示したように、A29ハイブリドーマからの上澄を使用した。
【0115】
【表1】
【0116】
流動選別解析
NIH3T3およびNIH3T3t(あるいは他のC−erbB−2表現セルライン)細胞を、DMEM十4%FBS中で80%の集密度で育生した。細胞をパックスベルセン(Puck’s Versene)で収穫し、2度冷FACSバッファー(HBSS(フェノールレッドを含まない)、2%FBS、0.2%ナトリウムアジド、10mM HEPES)で洗浄した。細胞を12×75mmのガラス試験管当たり0.5〜1.0×106細胞なる密度で分配し(細胞は90%以上生存性でなければならない)、ペレット化し、上澄を除去した。これらの試験管を氷上に置き、試験管1本当たり100μlの上澄または精製抗体を加えた。各抗体または上澄をNlH3T3細胞並びにNIH3T3t細胞両方に対してテストした。この抗体を氷上で1時間該細胞と共にインキュベートした。細胞を冷FACSバッファーで2度洗浄し、100μlのFITC−複合山羊抗−マウスニ次抗体を添加した。氷上に1時間放置した後、該細胞を2度FACSバッファーで洗浄し、10%中性緩衝ホルマリンで再懸濁して、500μlとした。この再懸濁した細胞はホイルで包んで4℃にて3日まで保存できる。この標識細胞をクールタ(Coulter)EPICS541流動選別機で分析し、平均ピークチャンネル蛍光を5000細胞につき測定した。NIH3T3t細胞に対する反応性の平均ピークを、NIH3T3細胞に対する反応性の平均ピークと比較した。gp185の外部ドメインタンパクと反応する抗体について、該ピークは非重複性であった。
【0117】
抗体アッセイ
ポリスチレンプレート(96−ウェル)を、PBSで希釈したC−erbB−2表現細胞からの溶解物100ngを被覆した。この溶解物は、2〜3μlの冷溶解バッファ(0.15M Nacl,0.1%トライトン(Triton)X−100,0.1%デオキシコレート、0.1% SDS、10mMトリス(Tris)、pH7.4、1mMPMSF)を2x106〜1×107細胞に加え、氷上で15分間インキュベートすることにより調製した。溶解物を10,000gにて20〜30分間遠心処理し、上澄をタンパクについてアッセイし、分割し、−20℃で保存した。溶解物を加えたプレート(競合プレートという)を、室温にて一夜インキュベートし、次いでPBSで洗浄した。もう一つの96−ウェルプレート(インキュベーションプレート)を1%BSA(PBS溶液)で室温にて1時間遮断した(100μl/ウェル)。これらのプレートを洗浄し、抗原(gp75表現CHO細胞からの上澄、即ちマウス血清または細胞溶解処方物)を該ウェル中にて5ng/μlとなるようにTAb251と混合し、該プレートを室温にて2〜4時間インキュベートした。該競合プレートを同様に1%BSA/PBSで遮断し、洗浄し、100μlの該インキュベーション混合物を、該インキュベーションプレートから該競合プレートに移し、室温にて1時間インキュベートした。次いで、これらのプレートをPBS/0.05%ツイーン(Tween)20で洗浄し、ビオチン処理した(biotinylated)山羊抗−マウスIgG抗体を1:400なる希釈率(v/v)でウェル当たり100μl添加した。これらのプレートを室温にて30分間インキュベートし、洗浄し、100μlのストレパビジン(Strepavidin)−HRPコンジュゲートを1:8000なる希釈率(v/v)で加えた。更に室温にて30分間インキュベートした後、上記の如くアッシュ工程(ash step)を行い、TMB基質を100μl/ウェルで加えた。この基質は、5μlのTMB母液(1μg/μlの3,3´,5,5´−テトラメチルベンジジンのメタノール溶液)と5μlのシトレートバッファー、pH4.5および4μlの30%過酸化水素と混合することにより、使用の直前に調製した。室温にて暗所で15分間インキュベートした後、吸光度を450nmにて測定した。PBSと共に予めインキュートしたTAb 251を不競合コントロールとして使用して、溶解物で被覆した競合プレートに対する最大結合量を求めた。
【0118】
ELISAアッセイ
ポリスチレンの96−ウェルプレートを、100μl/ウェルの牛コラーゲン(1μg/μl滅菌PBS溶液)と共に37℃にて2時間前処理した。NIH3T3またはNIH3T3t細胞をDMEM+4%FBS中で80%集密度で育生し、温パックスベルセンで収穫し、洗浄し、予備処理した、かつ洗浄したコラーゲンプレート内で37℃にて一夜1×106細胞/μl、100μl/ウェルにて塗布した。プレートを穏やかに洗浄し、100μlの10%中性緩衝ホルマリンで1時聞処理した。プレートを再度PBSで洗浄し、1%BSA/PBSで37℃にて1時間遮断した。次いで、サンプルの上澄または抗体希釈物を、100μl/ウェルで、該被覆し、遮断し、かつ洗浄したプレートに加え、該プレートを37℃にて2時間インキュベートした。更にPBS洗浄工程を経た後、1:500なる希釈率のアルカリンホスファターゼ−複合山羊抗−マウスlgG Fc−特異的二次抗体を加え、プレートを37℃にて1時間インキュベートした。最後のPBS洗浄後、バイオラド(BioBad)基質(PNPP+ジエタノールアミン)を加え、室温にて10〜15分聞インキュベートした後、吸光度を405nmで測定した。
【0119】
イムノペルオキシダーゼ染色
使用したイムノペルオキシダーゼ染色法は、ヒュー(Heu)等のアビジン−ビオチンイムノペルオキシダーゼ法(J.Histochem.Cytochem.,1981,29,pp.577−580)およびホランーハンド(Horan−Hand)等(Cancer Res.,1983,43,pp.728−735)に記載の方法の改良法であった。これら文献を本発明の参考文献とする。
以下の実施例は本発明の十分な理解を助け、かつ例示のみの目的で与えられる。これらはいかなる意味においても本発明を何等限定するものではない。
【実施例】
【0120】
(実施例1)
(CHO細胞におけるC−erbB−2の発現)
(C−erbB−2ベクターの構築)
推定上のC−erbB−2たんぱく質の細胞外ドメインをコードするC−erbB−2cDNAの2.0kbフラグメントをNcoIおよびAatIIを用いオカヤマ・バーグクローニングベクターpSV7186(ファルマシア社から市販、cat#27−4948−01)から切り出し、T4DNAポリメラーゼで平滑末端化した後EcoRIリンカー(NEバイオラブス、cat#1078)とライゲーションした。このC−erbB−2cDNAはD.スラモン(Slamon)(UCLA)によって、胸にアデノカルシノーマを持つ女性の患者から始めて単離された(C−erbB−2の完全なヌクレオチド配列は図16参照)。EcoRIリンカー結合の部分C−erbB−2 cDNAをEcoRI消化したpFR400のSV40に基づく誘導体であるpFRSV(ホーウィック(Horwich)等、1985)にサブクローン化した。pFRSVを構築するためにpKSV10(ファルマシア社から市販、cat#27−4926−01)から2,6kbのPvuII/HpaIフラグメントを単離し、平滑末端化後PvuII消化したpFR400にクローン化した。pKSV−10のヌクレオチド5107番に位置するBglII部位を予め部位特異的突然変異誘発(ゾラー(Zoller)およびスミス(Smith),1987)でEcoRI部位とし、最終構築物pFRSV〕中のユニークなRIクローニング部位とする。またこのベクターは優性な選択可能マーカーDHFRを含んでおり、それをgp75C−erbB−2誘導体の増巾に使用した。pFRSV−C−erbB−2secと命名した最終構築物(図3)を大腸菌MC1061株にトランスホームし、そのプラスミドDNAをマニアチス(Maniatis)等(1982)の方法で単離した。
【0121】
(pFRSV−C−erbB−2secのトランスフェクション)
このプラスミドの発現をCOS7細胞およびリン酸カルシウム(CaPO4)トランスフェクション法(グラハム(Graham)およびヴァンデルエブ(van der Eb)1973)を用いてモニターした。トランスフェクションの24時間前細胞を100mm組織培養皿上1:10に分けた(約30〜50%集密度)0.49μl 2×HeBS中の20μg(10μl)のプラスミド構築物に0.5μlの0.25MCaCl2をゆっくり加え(オースベル(Ausubel)等編、1988参照)10秒間ボルテックスした後20〜30分間室温に放置し、DNAを沈殿化させた。それからこの沈殿をCOS7細胞の皿に加え、その細胞/沈殿混合物を37℃、5%CO2条件下15時間インキュベーションした。リン酸緩衝液(ギブコ)で細胞から沈殿を洗い落とし、完全生育培地(DMEM)中でインキュベーションしてからDNAの導入後48時間までC−erbB−2の発現5を検定した。
【0122】
CaPO4トランスフェクション法を用いることによりCHO細胞で安定したpFRSV−C−erbB−2secの発現が得られた(上述)。DNA沈殿は20μgのプラスミドDNAおよび4枚のCHO細胞の100mmディッシュを用い上述の方法で調製した。プラスミドの導入後72時間、各トランスフェクト化100mmディッシュを1:20に分け、10%の透析化ウシ胎児血清および20nM MTXを含むa−MEM(ヌクレオシドおよびヌクレオチドなし)中18日間培養した。段階的増巾を開始し、細胞を6日毎に濃度を増やしたMTX(100nM、2.5mM、12.5mMおよび50mM)に曝した。MTX中21日間の増殖後限界希釈によりMTX耐性集団をクローン化した。これらの集団の1つに由来する106個の細胞を以下のように増殖培地(上述)で希釈した:2×1:100、ついで2×1:10で希釈し96穴マイクロプレート(コスター製)のウェル当りおよそ1細胞とする。この細胞を50mM MTX中に維持しながら3週間に渡り、24穴および6穴マイクロプレートついで60mmディッシュへと連続的に拡げていった。それから放射能免疫沈殿法、免疫蛍光法、およびウエスタンブロット法を用いMTX耐性クローンのgp75発現を検定した。
【0123】
(免疫蛍光法)
抗−C−erbB−2TAb252またはその親ハイブリドーマA29の上清を用い、gp75の細胞内存在部分を検出した(上述の該MAbの調製法参照)。PBS/5mMEDTAを用いて細胞を分散させ、PBSで2回洗った後2μlの4%p−ホルムアルデヒド/PBS中37℃、10分間処理して固定した。この細胞をPBSで洗浄後0.6%n−オクチルーグルコシド/PBS中室温で5分間インキュベーションし、膜透過性としてから10μg/μlのいずれかの抗−C−erbB−2MAbを含む2%FBSおよび10mM HEPES(pH7.0)からなる1×HBSSに懸濁した。この一次抗体とのインキュベーションは氷中60分間行ない、ついでPBSで2回洗浄した。それから細胞をFITC−F(ab´)2抗マウスlgG(タゴ製、カタログ#4950)を含む100μlのHBSSに懸濁した。またトランスフェクトした細胞を非特異的マウスミエローマgIG1(リトンバイオネティクス製)で染色した。
【0124】
(放射能免疫沈殿法)
一時的トランスフェクション化または安定発現C−erbB−2sec細胞を60mmディッシュで80%集密度となるよう生育させてから、2μl無システイン培地中1時間かけて飢餓化した。ついで細胞を37℃、5%CO2条件下200mCiの35S−システイン(比活性=600Ci/mmol;アマーシャム社)で15時間かけてラベル化した。その上清を回収し1mM PMSF中−20℃で保存した。冷リン酸緩衝液で細胞を2回洗浄してからディッシュ当り0.4μlの1×RIPAバッファ〔0.15M NaCl、1%トリトンX−100(10μl/L)、1%デオキシコール酸ナトリウム(10g/L)、0.1%SDS(1g/L>、10mMトリスpH7.4、1mM PMSF〕に溶かした。その溶解物をプロテインA−セファロースを用いて清澄化した後(溶解物400μl当60μl)、10μlの溶解物をTCA沈殿して取込みをチェックした。この溶解物をサンプル当り4×106カウントで標準化し、振とう器を用い4℃で一晩抗体とインキュベートした。この上清を濃縮し、その等価量を一晩抗体とインキュベートした(振とう器を用い、4℃で)。一晩のインキュベーション後このサンプルを60μlのプロテインA−セファロースを用い4℃、30分間で沈殿化し、遠心で落とした後4回1×RIPAで洗浄した。最後の洗浄後吸着した免疫複合体を35μlの2×レムリバッファに懸濁し、5分間煮沸してから7%アクリルアミドゲルで電気泳動した。このゲルを固定化し、乾燥後一晩のフィルム露光に使用した。
【0125】
ウエスタンブロットには7%SDSアクリルアミドゲルで電気泳動し、トリス−グリシン−メタノールバッファを用いてニトロセルロースにプロッティングした。ブロッキングおよびインキュベーションは10%ミルクおよび2%BSA中で行った。検出には基質としてDABを用いたビオチン−アビジン法を使用した(0.1Mトリス、0.02%過酸化水素溶液中ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド)。このプロットは0.05Mトリス、0.25M塩化ナトリウム(NaCl)3mM EDTA、0.05%トウィーン20溶液で洗浄した。
【0126】
(CHO細胞における可溶性C−erbB−2誘導体(gp75)の検出)
先に述べたようにpFRSV−C−erbB−2sec構築物を安定にCHOd×11株に導入し、MTX濃度を段階的に増加して予期されるgp75の増巾の後に細胞溶解物および上清における抗−C−erbB−2TAb 252との反応性を検定した。先に示されたRIP分析を用い、細胞溶解物中にgp75の主要部分が検出された。gp75安定発現CHO集団の上清には実質的により少ない量が検出された。免疫蛍光法を行なうことによりこの構築物が疎水性の膜透過ドメインを含まないことからgp75が生成し、かつgp75安定トランスフェクト化CHOの上清に分泌される理由を決定した。免疫蛍光分析によって1つのトランスフェクト化CHO集団のおよそ30%および第2の集団の10%が抗−C−erbB−2TAb 252と反応性を有し、またそのたんぱく質が特定のオルガネラ;たとえばリソソームや核に局在化していないことが示された。我々は各々のgp75発現CHO集団の限界希釈クローニングによるgp75の分泌画分を増加し得たと考えている。各MTX耐性(50mM)クローンを単離し、増巾後抗−C−erbB−2TAb 252を用いてgp75発現を検定した。免疫蛍光法、RIP分析およびウエスタン分析でgp75のクローニングおよび発現の成功が確認された。CHOクローンからの分泌gp75の発現レベルは非クローン化集団と比較して約10〜20倍大きかった。
【0127】
C−erbB−2の“可溶性”誘導体がインビトロで生成する可能性を試すため細胞外エピトープを認識する抗−C−erbB−2TAb 252に対する結合の競争を行った。この実験に用いた2種の細胞は全長C−erbB−2 cDNAで安定にトランスフェクトしたNIH−3T3(キング(King)等、1985)および先に述べたgp75発現CHOの1つである。予め35S−システインを用いてラベル化したクローンから上清を回収した。競争は−定量の抗−C−erbB−2抗体TAb252、一定量のラベル化gp75−CHO上清および種々の量の3T3−C−erbB−2非ラベル化細胞溶解物を用いて行った。SDS/PAGEにより非ラベル化3T3−C−erbB−2(gp185)濃度が増加するにつれて約75kdのRIPバンドの強度は逆比例して減少することが示された(図4)。このことは“可溶型”がこのたんぱく質の膜結合型を発現する細胞型から“放出”され、かつ種々の細胞型でグリコシル化に明確な不均一性が存在することを示している。gp75発現CHO細胞の上清はその結合についてNIH3T3t溶解物と競合した(図4)。
【0128】
(実施例2)
(組換えC−erbB−2たんぱく質の精製)
(プラスミドの精製)
バクテリアの1リットル培養においてOD600=0.8のとき細胞に200μg/μlのクロラムフェニコールを加えることによリプラスミドDNAを増巾した。37℃、一晩のインキュベーション後バクテリアをペレット化し、10μlの50mMスクロース、25mMトリスーHCl(pH8.0)、10mM EDTA溶液に懸濁した。この溶液10μlの10μg/mlリゾチーム溶液を加え、室温で10分間インキュベーションした。この混合物に40mlの0.2M NaOH、1%SDS溶液をゆっくり添加し、氷中で10分間インキュベーションした。それから30mlの3M酢酸ナトリウム(pH5.0)を加え、この混合物を氷中でもう10分間インキュベーションしてからベックマンSW27または同等物を用い20,000rpm、4℃で20分間遠心した。等容量のイソプロパノールを上清に加え、室温で20分間放置して沈殿化し、その沈殿をソーバール(Sor va11)を用い室温、12,000gで30分間遠心して沈降させた。このペレットを2.4mlのTEバッファ(10mMトリスHCl、pH7.4、1mM EDTA)に懸濁し、ついで4.2g塩化セシウム(CsCl)および0.4mlエチジウムプロミド(EtBr)(10μg/ml)と混合した。このサンプルをベックマンクィック−シールポリアロマーチューブ中CsCl溶液層約8ml〈密度=1,470g/ml,n=1.3780)の下5/8×3のところにロードし、ソーバールT127中20℃、50,000rpmで18時聞遠心した。
【0129】
(イムノアフィニティーゲルの調製)
モノクローナル抗体TAb254(該MAbの調製法については上記方法のセクション参照〉を業者の指示に従がいNHS活性化アフィニティーゲル(アフィ・プレップ10;バイオラッドラブス社、リッチモンド、CA)にカップリングした。簡単に云うと精製抗体4.5μgをカップリングバッファ(20mM HEPES,pH=7.5、150mM NaCl)に交換し限外濾過で最終容積1。0mlに濃縮した。この溶液を氷冷カップリングバッファで平衡化した2.0mlのゲルに加え、このスラリーを4℃で一晩混合した。カップリング後、このゲルを焼結ガラスフィルターで回収し、カップリングバッファで洗浄した。濾液サンプル中のたんぱく質をBCAたんぱく質検定法で検定した(ピアス社、ロックフォード、IL)。濾液全てから回収された総たんぱく質は1.2μgであった。それゆえIgG3.3μgがゲルにカップリングしたと考えられる。
【0130】
残存する反応部位を2−アミノエタノールでブロックした。カップリングバッファ中100mMの2−アミノエタノール5.0ml(pH8.5)をゲルに加え、そのスラリーを室温で2時間混合した。それからこのゲルをPBSで十分に洗浄し、4℃で保存した。アジ化ナトリウムを加え(最終濃度0,02%w/v)、バクテリアの繁殖を防いだ。
【0131】
(C−erbB−2細胞外ドメインの単離および精製)
可溶性C−erbB−2細胞外ドメインたんぱく質を精製するための出発物質としてトランスフェクト化CHO上清の10倍濃縮物を用いた。濃縮上清を融解し、以下に示す最終濃度となるようにプロテアーゼインヒビターを加えた。0.2mM PMSF,2.1μg/mlアプロチニン、2.5μg/mlペプスタチンA、1.0μg/mlロイペプチン、2mM EDTA、2mM EGTA。上清のpHは1.0N水酸化ナトリウム(NaOH)で7.0に調整した。いくつかの実験では限外濾過を用い上清をさらに4倍濃縮した。さらに上清を濃縮すると濁りを生じ、この濁りはクロマトグラフィー前遠心で除去した(10,000×g、20分間)。
【0132】
この上清を0.45mmメンブレンで濾過した後254イムノアフィニティーゲル(1.0mlベッド容積〉を充填した0.5×5cmカラムにロードした。このカラムは毎分0.2mlの流速で運転した。10mMリン酸ナトリウム、pH7.0、500mM塩化ナトリウム(NaCl)で非特異的結合物質を洗い流した。洗浄は280nmの吸収ベースラインが安定するまで行った。特異的結合物質は流速0.2ml/minの100mMグリシンーHCl(pH2.5)のステップグラジェントで溶出した。各1.0mlのフラクションを採取した。その後カラムはPBSで十分に洗浄した。サンプルロード、洗浄および溶出は4℃で行った(図1)。
【0133】
カラムフラクション中のC−erbB−2たんぱく質の存在はSDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析で測定した(図2Aおよび図2B参照)。ウエスタンブロット分析の場合抗原はポリクローナル抗体92Aの1/2000希釈物(この調製法は上述の方法のセクション参照)で検出した。ピーク反応性を含むフラクションを回収し、上述のプロテアーゼインヒビターを含むPBSに対して透析した。この透析物を限外濾過で濃縮した。最終的たんぱく質収量は標準物質としてウシガンマグロブリン(バイオラドラブス社、リッチモンド、CA)を用いたBCAたんぱく質検定法で測定した。
1回のクロマトグラフィーサイクルからの総たんぱく質収量は約90μgであった。このことはIRMAで測定された10倍濃縮上清500ml中の抗原活性の約90%に相当する。同じカラムで5回のサンプルロードおよび溶出サイクルを行ったが抗原結合容量のロスはなかった。溶出物プールのSDS−PAGEは約75kDの非常に接近した2つのバンドおよび90kDの1つのマイナーバンドを示した。これらのサイズの差はたんぱく質のグリコシル化の差またはたんぱく質分解の差によるものであろう。
【0134】
(実施例3)
(イムノラジオメトリックサンドイッチアッセイ(IRMA)) ヨードゲン法を用いTAb 251および255−265を10−20mCi/μgの比活性となるよう放射能ラベルした。イムロンエリムーバル96穴プレートをPBS(pH7.2)中10μg/mlの以下のTAb:251、255−265の1つを用い、4℃一晩でコーティングした。それからこのプレートをPBSで洗浄し、ついでPBS中1%BSAを用い、37℃1時間でこれをブロックした。さらに洗浄した後、PBSで希釈した100mlのサンプル(細胞溶解物または上清、部分精製gp185またはgp75たんぱく質または血清サンプル)をTAbコーティングウェルに加え、このプレートを37℃で2〜5時問インキュベートした。プレート洗浄後ウェルに放射能ラベルしたトレーサー抗体(1%BSA/PBSで200,000cpm/100mlに調整したもの)を添加した。室温での2〜24時間のインキュベーション後、このプレートを洗浄し、各ウェルをガンマカウンターで計数した。結合率(1%B)は以下の式で計算した。
%B=(サンプルcppm/全cpm)×100
アフィニティー精製したgp75たんぱく質(トランスフェクトCHO細胞系列由来)が使用可能な検定ではシグモイド曲線関数を用いて標準曲線を作製し、そこからng/mlで表わされるgp75等価物として未知濃度を測定した。
【0135】
第2表はモノクローナル抗体を組合せるとサンドイッチ・IRMA様式でgp75たんぱく質を検出し得ることを示している。準精製gp185もgp75標準物質と同様にIRMA様式のテストを行った。興味深いことに、捕獲抗体としてTAb 251およびラベル化抗体としてTAb 255を用いたこの様式のテストでC−erbB−2発現細胞系列溶解物およびC−erbB−2オンコジーンでトランスフェクトしたNIH3T3細胞から部分精製したgp185たんぱく質からのシグナルは検出できたがC−erbB−2誘導腫瘍を有するヌードマウス血清からのシグナルまたはgp75たんぱく質は検出できなかった。第3表にまとめた競争検定法に基づくこれらのデータは最終的検定様式がヌードマウス血清中のシグナルも検出するgp75たんばく質検出に必要であることを示している。gp75同様gp185に対しても適正な感度および特異性を示すこの最終的検定様式は捕獲抗体としてTAb 259およびトレーサー抗体としてTAb 256を用いる。この検定では0.5〜1ng/mlの感度で部分精製したgp75たんぱく質が検出され、部分精製したgp185、gp185を過剰発現する細胞溶解物中およびヌードマウス血清中のシグナルが検出された(第3表にまとめた)。gp75に対する感度を示す本検定の標準曲線を図7に示す。TAb 256/259IRMA検定を用いて細胞培養上清のシグナルを定量した。C−erbB−2たんぱく質ポジティブの細胞系列はこのIRMA検定で検出および定量される抗原を放出している。第4表は、コントロールNIH3T3細胞系列の放出抗原レベルがバックグランドレベルであり、一方gp185を過剰発現し、放射能免疫沈殿法で検出されるgp75を上清中に放出する細胞系列もサンドイッチ1RMAで検出可能で22〜70ng/mlのgp75等価物として定量される抗原を放出することを示している。放出される抗原のレベルは培養物の集密度およびC−erbB−2過剰発現のレベルに依存する。
【0136】
この様式の方法を用いて全てのマウスおよびヒト血清サンプル、および細胞上清および細胞溶解物を分析、定量した。競争およびサンドイッチ検定の結果を第3表にまとめた。この結果は部分精製したgp75外部ドメインたんぱく質の検出能とC−erbB−2誘導腫瘍を有するヌードマウス由来の血清サンプルまたはヒト胸部がん患者由来の血清サンプル中の放出抗原検出能の相関関係を示している。
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
(実施例4)
(ヌードマウス腫瘍増殖および治療〉
実験を開始する前にBalb/cヌードマウスを尾の静脈から放血させた。それからこの動物に200mlのPBS中5×106〜1×107個のNIH3T3t細胞を背中中央に沿って皮下注射した(0日目)。これらの細胞のは90%以上が注射後も生存していた。細胞注射から2〜3日後(腫瘍容積が10mm3に達する前)この処理動物に2〜3日毎にPBS、100〜500μg/300mlのIgGコントロール抗体またはTAb抗体を腹腔注射した。バーニアキャリパーを用いて腫瘍の長さ、巾および高さを測定し、容積を計算することにより増殖を測定した。腫瘍は3−4日毎に測定した。1〜2週間毎に尾の静脈から放血させた。この実験は28〜31日間続けた。実験の終りに最後の放血を行ない、腫瘍を測定し、次の免疫組織学的実験に用いるためこれを切り取った。
(ヌードマウス血清中の放出抗原の検出)
【0141】
図8では、1:5血清希釈物(v/v)のIRMA検定における結合シグナルの割合を血清採取時における腫瘍の大きさに関してグラフ化した。これらの血清はc−erbB−2トランスフェクトNIH3T3細胞によって誘導される腫瘍を有する動物に由来する。この検定法は腫瘍サイズが約3000mm3になるまでシグナルが増加しつづけ、その後一定になることを検出できた。非常に強いシグナルと血清量に限りがあることから血清を1/5〜1/625(v/v)に希釈して分析した。一番高い希釈率のときでもしばしば強いシグナルが検出できた。腫瘍含有マウスをPBSまたはIgG1コントロール抗体で処理した場合IRMA検定法で検出されたシグナルは未処理のマウスと同じであった(図9)。しかし、この動物はc−erbB−2外部ドメインを認識するTAbで処理したとき、この検定法で検出可能な放出抗原量は腫瘍サイズが3000mm3となるまで厳しく抑制された。腫瘍サイズが>3000mm3のときでさえ、シグナルはテストした血清の約半分に抑制された。これらのデータはc−erbB−2の外部ドメインまたはその一部分を認識する抗体はサンドイッチIRMA検定における検定可能シグナルのレベルを抑制することを示している。
【0142】
またヌードマウス中で生育させたgpl85たんぱく質を過剰発現するヒトの乳腺または卵巣細胞系列も第5表に示したとおりc−erbB−2IRMA検定で検出可能な抗原を放出した。このシグナルは腫瘍のサイズと相関関係を示した。MCF7誘導腫瘍は小さいままであり、c−erbB−2関連抗原を放出しなかった。MDA468細胞系列は実質的な腫瘍増殖(>2000mm3)を誘導し、実質的量のEGFvを有していたがサンドイッチIRMA検定で検出可能な抗原を放出しなかった(第5表)。
【0143】
【表5】
【0144】
この競争実験を使用しエクトドメイン反応性MAbであるTAb 251の結合についてトランスフェクトしたNIH3T3細胞の溶解物と競合するgp75抗原を検出した。図13はヒトの乳腺細胞系列BT−474およびヒト卵巣細胞系列SKOV3などc−erbB−2gp185を発現する細胞系列由来の溶解物がNIH3T3t溶解物と同レベルにNIH3T3t溶解物への結合を競争し得ることを示している。トランスフェクトされていないコントロール3T3細胞は競争できなかった。同様にgp75外部たんぱく質でトランスフェクトしたCHO細胞の上清はNIH3T3t溶解物への結合を争うことが示され(図14)、このことはTAb 251がエクトドメインを認識し、かつこの結合だけでMAbのgp185に対する結合と競争するのに十分であることを確証している。
【0145】
NIH3T3tトランスフェクトした細胞によって誘導される大きな腫瘍を有するマウス由来のヌードマウス血清は図15に示されているようにNIH3T3(c−erbB−2発現細胞)溶解物への結合を競争し得る。競争能は腫瘍の大きさに相関しているが、この検定法では1/160(v/v)以下の血清希釈物について非特異的妨害から区別できるシグナルを検出するのに十分な感度は得られていない。
【0146】
(実施例5)
(ヒト腫瘍細胞培養上清における放出されたC−erbB−2の検出)
ヒト胸部腫瘍細胞系列をTl50フラスコ中で培養し、15μlの無システインおよび無メチオニン培地中400mCiの35S−システインを用いてラベルした(ダルベッコ修正イーグル培地、DME H21 4.5g/lグルコース含有)。細胞は37℃で一晩かけてラベルした。24時間後、培地を回収し、プロテアーゼインヒビター(ロイペプチン1μg/μl、ベーリンガーマンハイム社、アプロチニン2.1μg/μl、シグマ社;ペプスタチンA2.5μg/μl、ベーリンガーマンハイム社;およびPMSFO.1mM、シグマ社)を加えてからアミコンセントリプレップ30を用い400μlになるまで濃縮した。
【0147】
免疫沈殿前、プロテインA−セファロースビーズの50%スラリー100μlと4℃で4時問インキュベーションすることにより非特異的プロテインA結合を取り除いた。このビーズおよび非特異的結合物をマイクロフユージによる30秒遠心で除去し、その上清を新しいチューブに移した。それから抗体(約10μlを含む20μl)を加え、この混合物を振とう器中4℃で24時間インキュベーションした。次の日、50μlのプロテインAスラリーをこのサンプルに加え振とう器中4℃で4時間インキュベーションした。次にビーズをマイクロフユージの30秒遠心でペレット化し、氷冷RIPAバッファ(100mMトリス−HCl、pH7.5、100mMNaCl、0.5%トリトンX−100、0.5%デオキシコール酸塩、10μg/μlウシ血清アルブミン、0.2mM PMSF)で5回洗浄した。3回目と4回目の洗浄の間にチューブを交換した。最後にペレットを1%ベーターメルカプトエタノールを含むレムリサンプルバッファ50μlに懸濁した。このサンプルを75℃で5分間加熱し、マイクロフユージの30秒間遠心した後7%SDSポリアクリルアミドゲルにロードした。
【0148】
泳動は約120mA−時間で停止し、蒸留水中10%酢酸、30%メタノール溶液で45分〜1時間かけてゲルの固定を行った。蒸留水で素早く洗浄した後、そのゲルを新鮮な蒸留水250μl中に1時間浸した。このゲルに90分間かけて250μlのエンハンス(デュポン社)を浸透させ、2%グリセリン溶液で平衡化してから濾紙上で乾燥させた。この乾燥したゲルで−80℃で3日間かけてコダックX−OMAT AR−5X線フィルムを感光させた。
【0149】
(ヒト腫瘍細胞の培地上清中の可溶性C−erbB−2誘導体(gp75)の検出)
図5は種々の抗体で濃縮沈殿化したSKBR3細胞の組織培養上清のオートラジオグラムを示している。細胞外ドメインと反応するC−erbB−2抗体(A29およびTAb 252)で処理したこれらのサンプル中には明確な約75kdの単一バンドが存在した。一方、C−erbB−2C−末端ペプチドに対して作製したウサギポリクローナル抗血清またはEGFレセプターに対して特異的なモノクローナル抗体(アマーシャム社)のいずれかで処理した上清にはバンドは出現しなかった。さらにSKBR3細胞由来の75kdのバンドの特異性はC−erbB−2オンコジーンでトランスフェクトした3T3細胞由来の同一分子量の分子種を沈殿化する同モノクローナル抗体、TAb 252の能力で示された(図6)。また、MDA468の上清由来の75kdバンドをTAb 252が沈殿させないことも図6に示されている。その細胞系列は大量のEGFレセプターを発現するが検出可能なレベルのC−erbB−2は発現しない。約105kdのより大きな分子がこれらの細胞から抗EGFレセプターモノクローナル抗体によって沈殿した。
沈殿化はC−erbB−2および検出可能なEGFレセプターを発現しない上清でも行ったが(図6)、75kdおよび110kdのいずれにもバンドは検出されなかった。
【0150】
(実施例6)
(ヒト血清中に放出された抗原の検出)
連続的採血が可能な胸部がん患者の20人のヒト血清をこの検定法で試験した。この検定で健康入の血清は1.68%のバックグランドレベルを示したが(図10)、3人の患者由来の血清(患者4、7および19)は有意にバックグランドレベル以上の放出抗原レベルを示した(図11)。これらの血清のシグナルはgp75標準物質と平行して希釈率をあげるに従がい減少した(図12)。別に88種の胸部がん血清もこの検定法でテストし、そのうちの13個の血清がバックグランドより有意に高い9.9〜1511ng/μlgp75等価物のレベルでポジティブであることが示された。サンドイッチgp75IRMAで測定した放出抗原量とセントコア社から市販されている診断検定法による値には相関関係はみられなかった(第6表〉。セントコア検定法は数年間市販されてきているヒト胸部がん診断用のFDA認可の検定法である。このセントコア検定法はムチンを測定するものでIRMAgp75検定でポジティブと判定された13名の胸部がん血清の各々はこの方法でもポジティブであった。しかしIRMAgp75検定は各患者でわずかに異なるgp75プロフィールを示すがムチンレベルのセントコア検定では各患者について差はでてこない。gp75レベルの差は患者ごとの病状の差を示している。
【0151】
(結論)
ハイブリッド微生物、組換えDNA分子およびたんぱく質/ポリペプチドおよび本発明のこれらのものに適用し得る方法などは先に示した好ましい態様物で述べたものに限定されないことを理解すべきである。ハイブリッド生物、組換えDNA分子およびたんぱく質/ポリペプチドは生産の過程、またはその後に従来法によってより利点の多いものに修正し得る。たとえばC−erbB−2配列の転写により有効なコントロール配列を使用する、望ましくない産物の合成を減少させる変異も導入する、宿主内のプロテアーゼレベルを減少させる、C−erbB−2配列を含む熱誘導可能なライソジェンを宿主染色体に組込む、あるいは細胞中の配列コピー数を増加させるか、または目的とするたんぱく質/ポリペプチドを生産する上で細胞の生産性を増加するその他の修正および操作を行ない得る。 これまで述べてきた事項に加えて本発明に種々の修正が可能なことはこれまでの説明から当業者にとって明白であろう。このような修正は特許請求の範囲内にあると考える。
【0152】
【表6】
【0153】
概 要
C−erbB−2オンコジーンを過剰発現する悪性腫瘍を同定するための方法および組成物が提供される。悪性腫瘍の診断および予防に有用な方法で腫瘍を有する哺乳動物の生物学的液体中のC−erbB−2の外部ドメイン、糖たんぱく質gp75の検出およびgp75レベルの定量を行う方法が提供される。
さらにC−erbB−2オンコジーン(gp75遺伝子)の外部ドメインDNA配列またはそのフラグメントによってコードされ、組換え的、合成的および他の生物学的に生産される新しいたんぱく質およびポリペプチドが公開される。このようなgp75たんぱく質は単独で、または化学療法試薬と組合せてがん治療に用いられるワクチンとして有用である。また診断や治療に有用なgp75たんぱく質に対する抗体も公開される。さらに本発明の検定法を行うテストキットも公開される。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】CHO細胞から発現した組換C−erbB−2細胞外ドメイン蛋白質(gp75)のイムノアフィニティークロマトグラムを示す。
【図2A】図1に示した組換的に生産したC−erbB−2 gp75のイムノアフィニティーカラムフラクションのSDS−PAGEを示す。
【図2B】E.coliで発現した組換フラグメントgp185に対して生起させたウサギポリクローナル抗体(抗体92A)を使用して膜をプローブ分析したウェスタンブロットである。
【図3】クローニングベクターpFRSVの部分制限地図である。
【図4】各レーンに負荷したSDS−PAGEである。
【図5】組織培養上清からのgp75の放射活性免疫沈降を示す。
【図6】c−erbB−2陽性及び陰性細胞系からの上清の放射活性免疫沈降を示す。
【図7】TAb 259を捕獲抗体として、TAb 256を放射活性標識第2抗体として使用したサンドウィッチIRMAアッセイにおける、部分的に精製したgp185及びgp75タンパク質の標準曲線を示す。
【図8】TAb 259/256サンドウィッチIRMAアッセイで試験した場合における、c−erbB−2形質移入NIH3T3細胞により生起された腫瘍を有するヌードマウス血清中に出現した抗原の検出を示す。
【図9】c−erbB−2遺伝子により形質移入されたNIH3T3細胞により生起された腫瘍を有するマウスから得られTAb 252又はPBS又はlgG1により処理されTAb 259/256サンドウィッチ1RMAで試験されたヌードマウス血清の分析を示す。
【図10】1:5の希釈度(容量/容量)において、TAb 259/256サンドウィッチIRMAにおける、正常な志願者からの12人の血清に対する試験結果を示す。
【図11】1:5の希釈度において、TAB 259/256IRMA検定における、20人の乳癌患者からの連続的な出血に対する試験結果を示す。
【図12】TAb 259/256IRMA検定における、乳癌患者からの3人の血清をgp75標準および正常な人の血清と比較した滴定曲線を示す。
【図13】C−erbB−2遣伝子で形質移入(トランスフェクション)されるNIH3T3細胞から溶解物へのTAb 251の結合に拮抗するいろいろな細胞溶解液の能力が試験された拮抗検定結果を示す。
【図14】C−erbB−2遺伝子のgp75部分でトランスフェクションされたCHO細胞系からの上澄液がNIH3T3t細胞から溶解物へのTAb 251の結合と拮抗する拮抗検定に対する結果を示す。
【図15】C−erbB−2でトランスフェクションされたNIH3T3細胞によって誘導された動物が持つ腫瘍からのヌードマウスの血清はNIH3T3t細胞から溶解物へのTAb 251の結合と拮抗し得ることを表わす試験結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学工学及び免疫化学の分野におけるものである。特に、本発明は適当な宿主生物に発現された組換えDNA分子ならびにそのDNA分子から得られた新規な蛋白質及びポリペプチドに関するものであって、かかる蛋白質及びポリペプチドは組換え的に、合成的に又は、生物学的に生産された蛋白質及びポリペプチドをフラグメント化して生産することができるものである。本発明の組換えDNA分子は、ここで指定した糖蛋白質75(gp75)であるC−erbB−2オンコジ−ンの外部ドメインから得られる蛋白質及びポリペプチドをコード化するDNAによって特徴付けられる。これら血清学的に活性で、免疫原性及び/又は抗原性を有する蛋白質及びポリペプチドは、癌患者の体液中にあるgp75を免疫学的に検出するための試薬として有用であり、これらは診断医が患者の状態及び予後に関して重要な判断をすることを可能にするものであり、さらにこれらの蛋白質及びポリペプチドは、抗体の産生及び親和力による精製に用いる試薬として有用である。本発明の中心的な意義は、哺乳動物の体液中のgp75を検出するよう設定した診断アッセイにある。発現され、または合成的に若しくは生物学的に生産された本発明の蛋白質及びポリペプチドは、腫瘍形成活性に対する癌患者及び二次的な腫瘍形成攻撃に対する回復癌患者の免疫学的応答の増強を図るためのワクチンとして、さらに有用である。さらに、前記gp75蛋白質及びポリペプチドは、C−erbB−2発現細胞の腫瘍形成活性を抑制する治療において有用である。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物細胞の悪性腫瘍に関する機序は、これまでも、また現在も熾烈な研究主題である。最も有望な領域の一つは、オンコジーンがいかにして発現し、また発現を停止するかということを解明することである。オンコジーンの多数が、癌の発生において重要な役割を演じていることが明らかにされている。オンコジーンによってコード化されている蛋白質が異常に作用し、正常細胞の癌細胞への転換において何らかの役割を演じているようである。まず最初に、オンコジーンがレトロウイルス中に検出され、続いてそのウイルスのオンコジーン細胞同等物が見出された。まず、急速なガン発生に応答し易いレトロウイルス遺伝子が1970年代初めにロウス(Rous)肉腫ウイルス(RSV)に同定された。このウイルスは、ニワトリに癌を発生させるものであって、その遺伝子はsarcoma(肉腫)にちなんでsrcと命名された。1975年には、ウイルスのsrc遺伝子(v−src)が、すべてのニワトリ細胞中にほぼ正確なコピーを有することが見出された。v−srcの該細胞同等物は、c−srcである。
【0003】
オンコジーンのスコア(score)は、以前よリレトロウイルスから分離されており、この分離の対象となったウイルスは、ニワトリ、他の鳥類、ラット、マウス、猫又は猿に、癌、肉腫、白血病又はリンパ種を起こさせるものである。それぞれの場合において、オンコジーンは宿主動物の正常遺伝子と密接に関係しており、かつ正常蛋白質に類似のオンコジーン蛋白質をコードすることが見出された。
【0004】
また、オンコジーンは、人組織及び動物組織にも発見された。多種の腫瘍細胞のDNA中の遺伝子は、正常な培養細胞中にトランスフェクションにより導入された場合、それらを癌細胞に転換する。このようなオンコジーンは、プロト−オンコジーンの事実上のコピーでもある。プロト−オンコジーンをオンコジーンに転換する具体的な機序がいかなるものであろうとも、オンコジーンは、そのオンコジーンがコード化する蛋自質によって効果を発揮する。オンコジーンを誘導するプロト−オンコジーンの生成物は、細胞の成長及び分化の調節及び初期発生において重大な役割を有するように思われる。形質転換蛋白質は、細胞に関し根本的な効果を有する。というのは、それらは、基本的細胞プロセスを妨害するからである。
【0005】
アミノ酸へのリン酸分子の付加反応(リン酸化)を触媒する場合の酵素活性は、蛋白質機能の制御に重要であることが知られている。蛋白質をリン酸化する酵素は、蛋白質キナーゼ(ギリシア語Kinein“転位すること”に由来する。)と呼ばれている。公知の全オンコジーンのほぼ1/3は、チロシン残基に特異的な蛋白質キナーゼをコード化している。
【0006】
表皮成長因子(EGF)及び血小板由来成長因子(PDGF)を、分裂していない細胞の培養に加えた場合、細胞が分裂するよう刺激する。BGF及びPDGFは、細胞の原形質膜に理め込まれている特異的な蛋白質レセプターに結合することによって、そのシグナルを伝達する。EGFに対するレセプター蛋白質を分離した際に、EGF分子がそのレセプターと結合した時に刺激されるチロシンキナーゼ活性に関連していることが見出された。次いで、PDGFレセプターも同じ酵素機能があることが示された。
【0007】
チロシンキナーゼ活性を有するヒトプロト−オンコジーンは、3つの研究グループによって確認された:センバ(Semba)らのグループ、PNAS(USA),82:6497(1984)(遺伝子C−erbB−2を示している)、Coussensらのグループ、Science,230:1132(1985)(遺伝子HER2を示している)、Kingらのグループ,Science,229:974(1985)(遺伝子MAC117を示している)である。関連するラットの遺伝子(neuで示される)について、シェクター(Schecter)らにより報告されている(Science, 229:976(1985)。遺伝子の増幅及び/又は遺伝子の発現の増幅した翻訳が、腫瘍細胞及びセルラインにおいて観察されている。〔例えば、フクシゲ(Fukushige)ら,Mol. Cell. Biol.,6:955(1986)(遺伝子の増幅及び発現(elevated expression)(mRNA)がMKN−7胃セルラインで観察されたことを記載)、コーセンス(Coussens)らの前記論文(遺伝子の転写(elevated transcription)が、肝芽細胞腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、2種の神経芽細胞腫及びウィルムス(Wilms)癌から得られたセルラインで観察されたことを記載)、センバ(Semba)らの前記論文(遺伝子が人唾液腺癌で増幅されたことを記載)、キング(King)らの論文(増幅が乳ガンセルラインで観察されたことを記載)、ヨコタ(Yokota)ら、Lancet,I:756(1986)(遺伝子の増幅が胸部、腎臓及び胃の腺癌において観察されたことを記載)及びタル(Tal)ら、Cancer Res., 48:1517(1988)(遺伝子の散発性の増幅が各種組織の腺癌において見出されたことを記載)を参照のこと。〕
【0008】
C−erbB−2レセプターは、EGFレセプターと密接に関連しているとはいえ、相違もしている。EGFレセプターのように、C−erbB−2蛋白質は、細胞外ドメイン、2つの富システイン反復クラスター(cysteine−rich repeat clusters)を含む膜内外ドメイン及び細胞内キナーゼドメインを有するが、C−erbB−2タンパクは185,000ダルトン(185kd)の分子量を有するのに対して、EGFレセプターは約170kの分子量を有する〔シェクター(Schechter)ら、Nature,312:513(1984)〕。フンター(Hunter)は、Sci.Am.,251:70〜77(1984)で、C−erbB−2蛋白質(gpl85)はEGFレセプターのチロシンキナーゼ作用をまねるが、統制されていない方法においてであると仮定している。
【0009】
チロシンキナーゼは、そのc−src遺伝子の産生物がプロトタイプである機能グループと、細胞表面レセプターとして機能する機能グループの2つの機能グループに分けることができる。細胞成長因子またはそれらのレセプターと関連したものとして、少なくとも12の哺乳動物のチロシンキナーゼが同定されている。これらオンコジーンのうち3つは、成長因子〔血小板由来成長因子(PDGF)を伴うc−sis、線維芽細胞成長因子(FGF)を伴うhst及びint2〕と強い相同性を共有している。その他のものは、配位子が同定されている成長因子レセプター〔表皮成長因子(EGF)レセプターを伴うC−erbB、コロニー刺激因子(CSF−1)レセプターを伴うfms〕と強い相同性を共有している。残りの7つ、即ち、eph,C−erbB−2,c−kit,met,ret,c−ros及びtrkは、配位子を伴うレセプターであるかも知れないが、現時点ではその配位子は同定されていない。
【0010】
今日、細胞のあるものは、それら細胞表面レセプターにおける変化によって腫瘍を形成するようになるという証拠が明らかにされてきている。これらの変化は、遺伝子の再配列、点突然変異またはDNA,RNAまたはタンパクレベルでの遺伝子増幅からなるということがいえる〔ドレビン(Drebin)ら、oncogene,2:387(1988);バーグマン(Bargmann)ら、Cel1,45:649(1986);デル(Der),Clin.Chem.,33:641(1987)〕。上記で引用したレセプターは、正常細胞の表面に存在し、一定のオンコジーンの過剰発現(overexpression)が、腫瘍形成活性と関連することが示されてきたとはいえ、そのようなことは、C−erbB−2の場合においてである。
【0011】
今日、細胞を悪性化する能力を有するC−erbB−2オンコジーンが、非常に高いレベルである腫瘍中に存在しているということが認められている〔ザウ(Zhou)ら、Cancer Research,47:6123(1987);バーガー(Berger)ら、CancerResearch 48:1238(1988);クラウス(Kraus)ら,The EMBO Journal,6(3):605(1987);及びスラモン(Slamon)ら、Science,235:177(1987)〕。C−erbB−2オンコジーンの発現及び細胞の外膜におけるその所在は、ガンと密接に関連していると思われ〔クラウス(Kraus)らの上記文献、スラモン(Slamon)らの上記文献、ドレビン(Drebin)ら、Cell,41:695(1985);及びジ・フィオレ(Di Fiore)ら、Science,237:178(1987)〕、事実、それは、少なくともある場合においては、ガン発育の主要な事象であるかも知れない〔ミュラー(Mullar)ら、Cell,54:105(1988)〕。正常細胞表面上のC−erbB−2蛋白質の過剰発現は、それら正常細胞を変化させるかまたはそうでなければ腫瘍細胞として振舞うように思われる〔ドレビン(Drebin)らの上記文献、ジ・フィオレDi Fiore)らの上記文献、及びフジャック(Hudzaik)ら、PNAS(USA),84;7159(1987)〕。
【0012】
更に、C−erbB−2オンコジーンが高いレベルで発現する患者は、非常に乏しい臨床的予後しか有しないということが示されている〔スラモン(Slamon)ら、Science,235:177(1987)〕。C−erbB−2の過剰発現と乏しい予後のこの関係は診断評価及び予後評価の両方の情報を提供することができる〔クラウス(Kraus)ら,TheEMBO Journal,6:605(1987);及びスラモン(Slamon)らの上記文献〕。患者に要求される臨床治療の範囲の決定は、C−erbB−2オンコジーンまたは蛋白質の過剰発現を測定できる能力に基づいて行なうことができる。
【0013】
組織の薄片の評価または組織病理学によって腫瘍組織中に発現されたC−erbB−2を検出するのに、抗体が使用され得る。有用な予後の指標が得られうるということが、方法論によって実証された〔ビヨバー(Vijver)ら、Mol.and Cell.Biol.7:2019(1987);ドウ(Zhou)ら、Cancer Res.,47:6123(1987);バーガー(Berger)ら、CancerRes.,48:1238(1988);クラウス(Kraus)ら、上記文献(1987);及びスラモン(Slamon)ら、上記文献〕。しかしながら、組織がすぐに手に入らないか、またはそれが望ましいものでないか、または、腫瘍から組織を取り出すことができない場合が多い。従って、便利でかつ患者に傷を与えない迅速で正確な診断上の検査方法が、医療技術において必要とされている。本出願で特許請求されている発明は、哺乳動物におけるC−erbB−2の過剰発現を検出する、組織を傷つけることのない診断測定方法を提供することによって、前記要求に応えるものである。
【0014】
スミス(Smith)らは、Science,238:1704(1987)で、過剰の可溶性膜レセプター(CD4抗原)がHIV−1の感染力を遮断することを報告している。
可溶性のCD4の分泌型は、その膜内外ドメイン及び細胞質ドメインを欠いている多種のCD4をコードするベクターとの哺乳動物細胞の形質移入(トランスフェクション)によって産生される。この産生した可溶性CD4は、HIV−1の膜糖タンパク(gp120)を完全なCD4に匹敵する親和力と特異性で結びつけていると報告されている。
【0015】
ウェバーとギル(Weber and Gill)は、Science,224:294(1984)で、培養したヒト表皮腫A431細胞が、彼らがEGFレセプターの細胞表面ドメインと関連していると決定した可溶性105kd蛋白質を生産することを報告した。彼らはさらに、可溶性105kd蛋白質は摸結合完全レセプターからは得られないが、単独でその細胞によって生産されることを決定した。
ヒアリング等(Hearing et al.)は、J.Immunol.,137(1):379(1986)で、精製されたマウス黒色腫−特異性抗原によるマウスの免疫化は、同系の宿主に、マウス黒色腫の二次的な接種に対する耐性を与えることを証明した。
【0016】
ベルナルド等(Bernards et al.)は、PNAS(USA),84:6854(1987)で、外部ドメイン、膜内外アンカードメイン及び“neu”オンコ遺伝子といわれるヒトC−erbB−2ガン遺伝子と同等の約50のアミノ酸のラット細胞内ドメインを発現する遺伝子組換えワクシニアウイルスは、マウスを免疫するために使用した時に、neu発現腫瘍細胞の二次的な接種に対して防御をもたらすことを証明している。ラットのneu蛋白質の外側のドメイン(外部ドメイン)が、担ガンマウス(NFS株)における高度に免疫原性な決定因子であることが、そこでは注目される。
【0017】
アロンソン等(Aronson et al.)の“A Human Gene Related to but Distinct from EGF Receptor Gene”〈米国特許出願第6−836,414号;1986年3月5日出願)と題されたNTIS(National Technical Information Service)出願では、遺伝子の族をコード化するチロシンキナーゼの1種であり、ヒト乳ガンにおいて増輻される、v−erbB関連ヒト遺伝子のクローニング、単離および部分的特性表示を記載している。前記の遺伝子はC−erbB−2であると決定された。この出願はその目的として、前記の遺伝子によってコードされた蛋白質生産物に向けられる抗体と、腫瘍の検出のための前記の抗体を含む診断用キット;その遺伝子によってコードされた生産物;異種ベクターシステムにおいてその蛋白質を発現することが可能なcDNAクローン;その遺伝子を発現することのできる形質転換細胞または微生物;および前記の遺伝子または蛋白質を検出することのできる核酸プローブおよび/または抗体試薬キットを提供することを記載している。前記の出願はさらに、毒物と接合した遺伝子生産物に特異的な抗体の治療的用途を示唆し、もし配位子がv−erbB関連遺伝子に存在するならば、それをターゲット物質として使うことができることを示唆している。
【0018】
クライン等(Cline et al.)は、米国特許第4,699,877号(1984年11月20日出願)で、オンコジーンの発現生産物を目的として、生理的試料が分析されることを特徴とする、腫瘍の存在を検出するための方法と組成物を記載している。
ジ・フィオレ(Di Fiore et al.)はScience,237:178(1987)で広範囲にわたる多様なヒト腫瘍が、増幅されたあるいは過剰発現された(overexpressed)erbB−2遺伝子を含むことを指摘している。erbB−2蛋白質による形質転換に配位子−レセプターの相互作用は必要ないことを確立するためにジ・フィオレ等は、NH2−末端の621個のアミノ酸(外部ドメインから)をコードする配列を除いた構造物を作った。彼らの発見は、NH2−末端の切断が何であっても、erbB−2蛋白質の形質転換活性を増加することを示唆した(180頁に記載がある)。
【0019】
アバウト−ピラック等(About−Pirak et al.)は、J.Natl.Cancer Inst.,80(20):1605(1988)でEGFレセプターの細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体が試験管内でヒトの口の類表皮腫細胞のクローン形成を減少させることを報告している。抗−EGFレセプター抗体をシスプラチンと共に添加した時、これらの物質の抗腫瘍効果は生体内で相乗性を示した。
ベルガー等(Berger et al.)は、Cancer Res.,48:1238(1988)で、原発性ヒト乳ガンからの51個のDNA試料のうち13個(26%)がC−erbB−2遺伝子の多コピーを含むことを報告し、C−erbB−2蛋白質の発現と乳ガンの予後に使われるパラメーター(結節の状態と核のグレード)の間に統計的に顕著な相関関係があることを観察した。ベルガー等は、最近の研究が、検査された原発性乳ガンの33%までに、C−erbB−2が増幅されており〔King等、上記文献;Slamon等、上記文献;van de Vijver等、supra;そしてVenter等、Lancet2:69(1987)〕そして、ヒト乳ガンセルラインの25%までに、C−erbB−2が増幅されていることを〔Kraus等,上記文献〕示していることを指摘した。
【0020】
スラモン等(Slamon et al.)は上記文献(1987)で、C−erbB−2遺伝子の増幅が、腋窩リンパ節のガンの存在と、乳ガン患者のエストロジェンレセプターの状態と乳ガン患者中の原発性腫瘍の大きさとに相関関係を持つことを示した。その研究で、調査された189の原発性ヒト乳ガンうち30%に、C−erbB−2が2倍から20倍以上、増幅されていることが見出された。スラモン等は、C−erbB−2遺伝子の増幅は、乳ガン患者において、生存期間と再発までの時間の両方にとって顕著な予測指標となることを結論づけた。患者の腫瘍からのDNA中に該遺伝子の多数のコピーを有する患者は、生存期間が短いだけではなく、再発までの時間が短いため、より不幸な結末となった。
【0021】
スラモンら(Slamon,et al.,Cancer Cells 7/Molecular Diagnostics of Human Cancer,p.371)(コールドスプリングハーバーラボ.1989)は、ヒト乳癌腫瘍から産生される数種のcDNAクローンの配列決定により、ラットneu遺伝子と異なり,膜内外ドメインにおける変異は遺伝子産物の変化に不可欠なものではないことが示されたと報告した。その代わり、上記のデータは正常産物の過剰発現(overexpression)を含む変化と一致している。
【0022】
ドレビンら(Drebin et al.,Cell,41:695(1985))は、neu gp185に対するモノクローン抗体はneu−形質転換NIH 3T3細胞を非形質転換表現型に復帰させることが、足場非依存性増殖により明らかになったことを報告した。ドレビンら(Drebin et al,Oncogene,2:387(1988))は、gp185の細胞表面外部ドメインと反応するモノクローン抗体は試験管内及び生体内で直接に腫瘍増殖を禁止すると述べている。
マスコら(Masuko et al.,Japn.J.Cancer Res.,80:10(1989))は、ヒトC−erbB−2遺伝子一形質移入NIH 3T3細胞に対してモノクローン産生したネズミ1gMについて、胃癌、結腸癌及び肝臓癌細胞セルラインを含む上皮腫瘍セルラインの一部と反応するが、いかなる非上皮セルラインとも反応しないと記載している。
【0023】
ヤーデンとワインベルクは(Yarden and Weinberg,PNAS(USA),86:3179(1989))は、モデル系としてneuオンコジーンを用いて、成長因子レセプターを想起させる構造を有するオンコジーンコード膜内外チロシンキナーゼに対する仮想的配位子の検出へのいくつかの実験的アプローチを開発した。そこには、resオンコ遺伝子による形質転換された線維芽細胞が分泌したneu−コードオンコ蛋白質の配位子の候補が示唆されている。
【0024】
以下の論文は、オンコジーンの一般的記載、治療薬としてのモクローン抗体の使用、及びC−erbB−2オンコジーンについての情報を提供する。デール(Der,Clin.Chem.33(5);641(1987));ビショップ(Bishop,Science,235:305(1987));ヘンリック及びウェスターマーク(Henrik and Westermark,Cell.37:9(1984));デュースベルク(Duesberg,Science,228:669(1985));シベリー(ShiveIy,J.Clin.Immunoassay,7(1):112(1984));ファンデビジャー(van de Vilver,Oncogenes2:175(1988));及びハンター(Hunter,Sci.Am.251:70(1984))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
方法及び組成物はC−erbB−2を過剰発現する悪性腫瘍を同定するために提供される。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本出願により特許請求されている発明は、腫瘍荷(tumor burden)を運搬する哺乳類の生物的流体(biological fluid)中におけるC−erbB−2遺伝子によりコードされた外部ドメイン糖タンパク質(gp75)又はその部分の検出に基づく。該発明は、哺乳類の生物的流体中のgp75を検出及び定量し、それにより腫瘍を検出しその増殖を定量する特殊な治療検出法を提供し、また腫瘍性疾患の治療及び予後に価値のある情報を提供する。宿主の体液中のgp75の上昇した値、即ち、正常バックグラウンドバインデング値以上の値は、C−erbB−2の過剰発現を示す。(典型的なバックグラウンドバインデング値は、一連の正常ヒト血清に対して1.68%と図10には示されている。)
【0027】
C−erbB−2増殖と関係する他の癌の中で乳癌又は卵巣腺癌のような腫瘍性疾患の愚者の生存は、患者の生物的流体をgp75又はその部分の存在について検査することにより決定できる。
さらに、本発明は患者の体液中のgp75タンパク/ポリペプチドに対する抗体を検出及び定量する検査法を提供する。患者の体液中のgp75タンパク/ポリペプチドの値を測定する本発明の検査法の結果と特に相関する上記検査法の結果は、診断し、患者の状態をモニターして治療方針を決定し、そして予後を作成する際に重要な情報を提供する。
【0028】
さらにまた、本発明は、患者の体液中のgp75に対する仮想の配位子の値を検出及び定量する検査法を提供する。同様に、本明細書で提供されるような、患者の体液中のgp75タンパク/ポリペプチド及びその抗体の値を検出及び定量する方法の結果と特に相関する上記の情報は、治療及び予後に重要であり、患者の状態をモニターする際及び治療方針を決定する際に有用である。
【0029】
上記の背景技術において示したように、C−erbB−2の増幅は、長期間の生存の可能性の減少及び疾患の再発時期の早期化と相関していることがわかっている。本発明の検査法は手術の前後において有用である。上記のC−erbB−2の増幅を示す患者は、疾患のかなりの初期の段階であっても、生存の可能性を増加させるためにより厳密に治療する方がよいであろう。さらに、腫瘍を取り除く手術後における患者の生物的流体中にgp75が存在することは、例えば、系統的な化学療法又は放射線療法の介入をすぐに必要とする転移を示すものである。
本発明は、C−erbB−2過剰発現(overexpress)腫瘍の検出についての非侵入性診断検定及び予診検定に関する.上記の要求を満たすものである。
【0030】
さらに、本発明はC−erbB−2オンコジーン(以後、gp75遺伝子という)の外部ドメインDNA配列又はそのフラグメントによりコードされる新規な蛋白質及びポリペプチドに関するものであり、かつgp75遺伝子又はそのフラグメントを好適な発現べクターに遺伝子組換えすること、このような発現ベクターで宿主を形質転換すること、及び組換え、合成又は他の生物学的手段によりgp75蛋白質及びポリペプチドを生産することに関する。このような組換gp75蛋白質及びポリペプチドはグリコシル化又は非グリコシル化のいずれをも行うことができるが、グリコシル化するのが好ましい。又、ここに記載の方法により実質的に純品となるまで精製することができる。本発明は、さらに合成又は生物学的に製造したgp75蛋白質及びポリペプチドに関する。
【0031】
上記gp75蛋白質及びポリペプチドの用途の1つはワクチンである。さらに、gp75エピトープを免疫系に効率的に与えるワクチンは、gp75又はgp185を過剰発現する強化細胞膜を含むことができる。このような細胞膜は、C−erbB−2を過剰発現させるために形質転換した組換宿主、好ましくはトランケート内部ドメインを有する形にC−erbB−2を過剰発現するものから誘導、又は人癌細胞系から誘導することができる。さらに、本発明により提供される抗イディオタイプ抗体は、ワクチンとして有効である。
【0032】
gp75蛋白質及びポリペプチドの別の用途は、腫瘍活性を弱める治療剤であり、このものを単独で又は化学療法剤と組合せて使用することができる。
gp75蛋白質及びポリペプチドのさらに別の用途は、親和性結合研究においてC−erbB−2に対する推定上のリガンド(配位子)を検出することである。仮に哺乳動物の生物学的流体中に該リガンドが検出されると、次にこれを本発明のgp75蛋白質及びポリペプチドを用いて精製できるかも知れない。例えば、gp75蛋白質及びポリペプチドは、遺伝子工学によって生産されたリガンドを精製する方法において使用できるかも知れない。
【0033】
さらに、本発明は、gp75蛋白質又はポリペプチドをコードするだけでなく、人に対して免疫原性を有さずかつ人の体液中の抗体に典型的には反応しない蛋白質/ポリペプチドのアミノ酸配列をもコードするDNA配列を含む組換えDNA分子に関する。このようなDNA配列の例は、ベータガラクトシダーゼのアルファペプチドコード領域である。さらに、本出願では、実質的に純粋で、かつ天然生成物を含まない組換え融合蛋白質/ポリペプチドをクレームする。
【0034】
さらに、本発明は、gp75遺伝子又はそのフラグメントを含む精製、単離DNA分子に関する。さらに本発明は、gp75蛋白質及びポリペプチドに対する抗体の診断及び治療上の使用に関する。さらに本発明は、gp75蛋白質及びポリペプチドに対するような抗体に対する非イディオタイプ抗体に関する。
さらに本発明は、組換により、合成により又は他の生物学的方法により製造した本発明のgp75蛋自質及びポリペプチド及び/又はこれに対する抗体を用いたgp75用診断検定に関する。
【0035】
本発明は、また、本発明の検定を具体化したテストキットを提供するものであり、該テストキットは、抗体gp75蛋白質/ポリペプチド及び/又はC−erbB−2の無傷(intact)外部ドメインに対する抗体を含む(ここで無傷とは、gp75が細胞表面で発現することを意味する。)。これらの検定は固相検定とすることができるが、これに限定されるものではなく、液相形態でも行うことができ、エリサ法に基づく粒状検定や、例えばアビジン/ビオチン法を用いた増幅した又は非増幅の放射又は螢光検定とすることもできる。
【0036】
本発明はさらに、本発明の診断検定におけるgp75蛋白質/ポリペプチドを置換することができるgp75蛋白質/ポリペプチド認識モノクローナル抗体に対する抗イディオタイプを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1は、CHO細胞から発現した組換C−erbB−2細胞外ドメイン蛋白質(gp75)のイムノアフィニティークロマトグラムを示す。濃縮CHO上清を0.5×5.0cmのイムノアフィニティーカラムに流速0.2μl/分で流した。次に、カラム溶離液の280nm(A280nm)における吸収がベースラインに到達するまでカラムにPBSを0.5μl/分の速度で流してカラムを洗浄した。特異結合物質が図中の矢印で示した、流速0.2μl/分、pH2.5の100mMグリシン−HC1の段階的グラジエントで溶離した。
【0038】
図2Aは、図1に示した組換的に生産したC−erbB−2 gp75のイムノアフィニティーカラムフラクションのSDS−PAGEを示す。各フラクションのサンプルをラムリ(Laemmli)サンプルバッファー中で調製し、10%ポリアクリルアミドゲル上で行った。ゲルをコーマシー(Coomassie)ブルーR−250で染色した。
図2Bは、ウェスタンブロットである。図2Aで使用したゲルと同じゲルを使用し、分離したタンパク質は電気泳動により0.22μmのニトロセルロース膜に移した。E.coliで発現した組換フラグメントgp185に対して生起させたウサギポリクローナル抗体(抗体92A)を使用して膜をプローブ分析した。ヤギ抗ウサギ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ抱合体及びインドファン基質(Vio−medics,Worcester,MA)を使用して特異的に結合した抗体を可視化した。各レーンには以下のように負荷した。レーン1:濃縮CHO上清;レーン2:予備染色分子量標準(Bethesda Research Laboratories,Gaithersburg,MD>;及びレーン3から7:免疫アフィニティカラムフラクション1から5(図2Aに示したのと同様)。
【0039】
図3は、クローニングベクターpFRSVの部分制限地図である。このベクターは、SV40初期領域プロモーターによって駆動される転写ユニット及び複製開始点(origin)、並びにSV40大T抗原挟持配列(5´mRNAスプライシング>及び初期領域ポリアデニル化部位を有している。第2の転写カセットは、突然変移体DHFR遺伝子、即ちメトレキセート(MTX)耐性をコードする優勢選択マーカーを含んでいる。最初のSV40ori/プロモーターから下流に位置する唯一のEcoRI部位に、前記2.2kb c−erbB−2secフラグメントをサブクローン化してpFRSV−c−erbB−2secを生成した。
【0040】
図4は、以下のように各レーンに負荷したSDS−PAGEである。レーン1及び9:Std;レーン2から6:抗−c−erbB−2 TAb 252に結合するために、NIH3T3 c−erbB−2形質移入体により発現されたc−erbB−2の可溶フラグメントをgp75と競合させる;レーン2から6:NIH3T3−c−erbB−2からの細胞溶解物を増加量で10μgの抗−c−erbB−2 TAb 252と共に7時間インキュベートし、その後gp75発現CHO細胞から回収したin vitroラベル化上清の400μlのインキュベートを10時間行った;レーン7:アイソトープ適合非特異的コントロールのマウスミエローマmAb、(IgG1)により免疫沈降させたin vitroラベル化gp75 CHOクローンからの溶解物;レーン8:TAb 252により免疫沈降させたCHO−gp75からの溶解物。
【0041】
図5は、組織培養上清からのgp75の放射活性免疫沈降を示す。レーン1及び12:分子量マーカー;レーン3から6:12倍に濃縮され9.2ウサギポリクローナルにより沈降されたSKBR3細胞からの上清−レーン3;レーン4:A−29ネズミ抗−c−erbB−2ハイブリドーマペアレント;レーン5:TAb 252ネズミ抗−c−erbB−2モノクローナル;レーン6:Amershamネズミ抗−EGFレセプターモノクローナル;レーン7から10:6倍に濃縮されたc−erbB−2腫瘍遺伝子により形質転換された3T3細胞からの上清;培地は沈降可能シグナルを可視化するのに充分なまでには濃縮しなかった。
【0042】
図6は、c−erbB−2陽性及び陰性細胞系からの上清の放射活性免疫沈降を示す。レーン1及び12:分子量マーカー;レーン2及び4:12倍に濃縮されTAb 252により沈降されたMDA435からの上清;レーン3及び5:Amersham抗−EGFレセプター抗体で沈降された同じ上清;レーン6及び7;TAb 252及び抗−EGFレセプター抗体でそれぞれ沈降されたMDA468培養からの12倍に濃縮された上清;レーン8及び9:無関係;レーン10及び11:12倍に濃縮されTAb 252及び抗−EGFレセプター抗体で沈降された形質移入3T3細胞からのコントロール上清。
【0043】
図7は、TAb 259を捕獲抗体として、TAb 256を放射活性標識第2抗体として使用したサンドウィッチIRMAアッセイにおける、部分的に精製したgp185及びgp75タンパク質の標準曲線を示す。このアッセイにより、形質移入したNIH3T3細胞から部分的に精製した全c−erbB−2タンパク質並びに形質移入CHO細胞の上清から精製された外部ドメインタンパク質の両方を検出することができる。このアッセイは、部分精製gp75を標準として使用した場合、約100倍感度が向上する。
【0044】
図8は、TAb 259/256サンドウィッチIRMAアッセイで試験した場合における、c−erbB−2形質移入NIH3T3細胞により生起された腫瘍を有するヌードマウス血清中に出現した抗原の検出を示す。血清はすべて1:5(容量/容量)の希釈で試験し、このアッセイにおける血清の前(プレ)腫瘍プールのバックグラウンド結合は1.7%である。このアッセイにおいてgp75蛋白質を使用した標準曲線は、図7のものと同等のものである。マウス中、シグナルは500から1000mm3の範囲の腫傷サイズで検出することができ、腫瘍が3000から10,000mm3に達するまで増加し続ける。
【0045】
図9は、c−erbB−2遺伝子により形質移入されたNIH3T3細胞により生起された腫瘍を有するマウスから得られTAb 252又はPBS又はlgG1により処理されTAb 259/256サンドウィッチ1RMAで試験されたヌードマウス血清の分析を示す。血清は、1月の実験期間の間を通じて種々の採血日から得、1;5の希釈において試験した。マウスは、その血清を試験した時点において、TAb 252、c−erbB−2の外部ドメインと反応性を有するMAb、IgG1又はPBSによる2から8回の処理(100−500μg/処理)を受けていた。アッセイにおいて6種の前腫瘍血清を試験し、平均結合を調べた。アッセイにおけるバックグラウンドカットオフ(background cut−off)は、前腫瘍血清の平均+2標準偏差分この平均より上、即ち2.2%と決定した。PBS処理マウスは、1001から3000mm3の腫瘍容量において有意にバックグラウンドを上回る抗原を発生し(n=7)、一方、TAb 252処理マウスは同じ腫瘍容量において極くわずかの検出可能抗原しか発生しなかった(n=5)。より大きな腫瘍容量においても、TAb処理マウスからの血清における発生抗原の検出可能性は(n=9)、PBS処理マウスからの血清と比較して(n=8)、やはり抑制されている。
【0046】
図10は1:5の希釈度(容量/容量)において、TAb 259/256サンドウィッチIRMAにおける、正常な志願者からの12人の血清に対する試験結果を示す。これらの血清を使用し、1.68%のバックグラウンドバインディングレベル(background binding level)が決定される(平均+2の標準偏差)。
【0047】
図11は1:5の希釈度において、TAB 259/256IRMA検定における、20人の乳癌患者からの連続的な出血に対する試験結果を示す。一連の試料が疾患および治療の経過を通じて採取された。1−4の患者に対しては、腫瘍の外科手術による切除の1日前の、最初の診断時に試料〔a〕が採取された。5−10の患者の試料〔a〕は腫瘍の外科手術による切除の数日後に採取され、11−20の患者の試料〔a〕は最初の、またはつぎの再発時に採取された。残余の試料〔b−f〕(各患者に対し4または5)は治療期間中いろいろな間隔で採取され、疾患または治療に対する応答の特別な状態には相応しない。この検定に対するバックグラウンドカットオフ(background cut−off)は1.68%であった。
【0048】
図12はTAb 259/256IRMA検定における、乳癌患者からの3人の血清をgp75標準および正常な人の血清と比較した滴定曲線を示す。血清はすべて1:5の希釈度において試験され、検定中のバックグラウンドカットオフは1.6%である。患者19aに対しては、初期の腫瘍が切除されて約1−1/2年後に患考19に転移があらわれた時に血清の試料がとり出された。患者19はこの試料が採取されて1−1/2年後に死亡した。初期の腫瘍が診断された7ヶ月後に肝臓および骨髄への転移についての最初の減退があった時に患者7から7eの血清試料がとり出された。患者7は、この最後の試料がとり出された6日後に死亡した。患者4fの試料は、初期の腫瘍が診断された2年後に肝臓および結節への転移についての最初の減退があった時にとり出された。患者4はこの〔f〕試料がとり出された6ヶ月後に死亡した。
【0049】
図13はC−erbB−2遣伝子で形質移入(トランスフェクション)されるNIH3T3細胞から溶解物へのTAb 251の結合に拮抗するいろいろな細胞溶解液の能力が試験された拮抗検定結果を示す。SKOV3、BT474およびNIH3T3tラインはすべてgp185蛋白質を過剰に表現し、これらのラインからの溶解物は増加する蛋白質濃度と拮抗する。対照のNIH3T3溶解物は拮抗することがない。
【0050】
図14はC−erbB−2遺伝子のgp75部分でトランスフェクションされたCHO細胞系からの上澄液がNIH3T3t細胞から溶解物へのTAb 251の結合と拮抗する拮抗検定に対する結果を示す。トランスフェクションされたCHO細胞からの上澄液は拮抗することがない。
【0051】
図15はC−erbB−2でトランスフェクションされたNIH3T3細胞によって誘導された動物が持つ腫瘍からのヌードマウスの血清はNIH3T3t細胞から溶解物へのTAb 251の結合と拮抗し得ることを表わす試験結果を示す。1100mm3よりも大きなサイズの腫瘍を持ったマウス2−4は拮抗することができるが、マウス1の血清および血清のプレ腫瘍プールはこの検定において拮抗しない。
【0052】
図16はC−erbB−2遺伝子の完全なヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。〔カウスセンス等、上記(Coussen et al.supra)〕。gp75外部ドメインは約アミノ酸ナンバー22(セリン:ser−22)から約アミノ酸ナンバー653(セリン;ser−653)までを含む(このアミノ酸はそれらの上に黒わくで印がつけられている)。
【0053】
本発明の多くの面を強調する概念は、C−erbB−2で過剰発現された細胞がC−erbB−2外部ドメイン(gp75)を宿主の哺乳動物の体液中に放つということの発見である。実施例1、4、5および6はこの発見に導く証拠を略述する。可溶性のC−erbB−2誘導体(gp75)は安定して変形されgp75で表現された細胞の上澄液中に見出された。この蛋白質は約75Kの分子量を有することおよびNIH3T3t(C−erbB−2で表現された細胞)中に存在する蛋白質と拮抗することがわかった。(実施例1)実施例4、5および7はC−erbB−2外部ドメインに特有な親和性結合を有する発生した抗原の検出を、それぞれC−erbB−2トランスフェクションされたNIH3T3細胞(NIH3T3t)によって誘導されたヌードマウスの持つ腫瘍の血清において、および人の腫瘍培養上澄液において、および乳癌患者からの人の血清において、詳しく述べている。この発見は人および他の哺乳動物における腫瘍疾患の診断および治療のための新規な方法および組成物の開発への道を開いた。
【0054】
アッセイ
哺乳類、好ましくはヒトの体液中の三つの異なる実体を検出し、定量するためのアッセイが、ここに提供される。この場合、これらの実体は、以下のとおりである。gp75タンパク質/ポリペプチド;gp75タンパク質/ポリペプチドの抗体;及びC−erbB−2に対する推定配位子(リガンド)。夫々のアッセイは患者の症状に関する重要に情報を与え、且つ新生物性疾患に関して哺乳類をスクリーニングし、新生物性疾患を診断し、その疾患の進行を監視するのに個別に有益であり、且つその疾患の進行を予測し、そして適切な治療プロトコルを決定することに有益である。しかしながら、これらのアッセイの一つ以上からの結果、好ましくは三つの全てに関する試験結果の相関関係は、患者の症状に関する最良のプロフィールを与える。
【0055】
例えば、患者は大きな腫瘍を示すことがあるが、患者のgp75の量は比較的少ないことがある。読み取りの低さはgp75タンパク質/ポリペプチドの抗体の患者による発生のためによるものであり得るが、腫瘍の小さいことのためではない。
データを相関させる方法の別の例は、gp75に対する推定リガンドの関係に関して患者の状態の広範な所見を与える。患者は多量の循環gp75タンパク質/ポリペプチドを示すことがあるが、患者が推定リガンドを生産していない場合には、新生物性疾患を有していない。リガンドがない場合、C−erbB−2細胞表面レセプターはそれにより非制御増殖を開始するように刺激され得ない。こうして、リガンド対gp75の比は、プロトオンコジーンがオンコジーンに活性化される機構であるリガンド/レセプター複合体のモデルのもとに有意である。
【0056】
哺乳類体液中のgp75タンパク質/ポリペプチドに関するアッセイ
哺乳類、好ましくはヒトの体液中のgp75タンパク質/ポリペプチドを検出し、その中のこのようなgp75タンパク質/ポリペプチドの量を定量するための非観血的診断アッセイが提供される。gp75タンパク質/ポリペプチドという用語は、この状況下で体液中の標的抗原として使用される。何となれば、放出された(shed)gp75タンパク質は患者の体液中で種々のフラグメントに分解されることがあり、これらのフラグメントがタンパク質(50個より多いアミノ酸を有する)及びポリペプチド(50個より少ないアミノ酸)を構成するからである。
このようなアッセイは、新生物性疾患の状態を監視する貴重な手段を与える。予測を改良することに加えて、症状の知識は、担当医師が個々の患者に最適の治療を選ぶことを可能にする。例えば、再発の高い可能性がある患者は、全身の化学療法及び/または放射線療法を通常伴なって激しく治療し得る。再発の可能性が少ない場合には、それ程積極的ではない治療が選択し得る。更に積極的な治療養生によりひき起こされる重度の患者の窮迫のために、このような積極的な治療を要するこれらの愚者を高い確度でもって見分けることが望ましい。
【0057】
本発明は、充実性腫瘍及び造血性癌の両方を含む多種の新生物性疾患をスクリーニングするのに有益である。新生物性疾患の例は、腺癌及びメラノーマの如き癌;神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫の如き中胚葉腫瘍;アソステオサルコーマ(asosteosarcomas)、ユーイングサルコーマ、及び種々の白血病の如きサルコーマ;及びリンパ腫を含む。胸、卵巣、特に結腸及び胃を含む胃腸管、肝臓、甲状腺、前立腺、脳、膵臓、尿管(膀胱を含む)、及び唾液腺の腫瘍が、特に関係がある。前立腺、卵巣及び胸の腫瘍が、更に特別な関係がある。更に詳しくは、胸及び卵巣の腺癌が広く研究され、C−erbB−2を過剰発現することを確かめられた。
本発明の方法によりgp75を分析するのに特に関係がある体液は、血清、精液、胸部浸出液、唾液、尿、シトゾル、血漿及び髄液を含む。血清が本発明の方法によリスクリーニングするのに好ましい体液である。
【0058】
C−erbB−2オンコジーン(gp75)の外部領域(外部ドメイン)の構造を知るため、このタンパク質を特異的に認識する幾つかのモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が生成し得る。gp75はC−erbB−2増幅に関連する腫瘍の表面から特異的且つ特別に放出され、しかも哺乳類の生体液中に自由に存在するので、そのタンパク質の量を検出し定量することが可能である。C−erbB−2オンコジーンの外部領域への特別につくられたモノクローナル抗体の結合を定量化し得る現行の抗体検出技術を利用して、癌患者の体液中の外部領域の量を測定することができる。このようなアッセイは腫瘍を検出し、それらの増殖を定量化し、ヒトの疾患の診断及び予後を助けるのに使用し得る。そのアッセイは、哺乳類の体液中のgp75を検出し定量化するために適当にラベルし得るモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の使用を伴なう。
【0059】
本発明の主題は、宿主中の正常な細胞または宿主から新たに取り出された細胞の群中の悪性細胞の存在の可能性を評価するための方法及び組成物を提供する。好ましい方法は、第一段階として、精製量のC−erbB−2オンコジーンの外部領域を得、それを免疫原として使用してマウスまたはその他の適当な宿主中でモノクローナル抗体を生成することを伴なう。モノクローナル抗体はgp75のエピトープと特異的に反応すべきである。また、膜表面でC−erbB−2を発現する全無傷細胞が抗原源として使用し得る。外部領域の異なるエピトープを認識するために多数のモノクローナル抗体を生成することが可能であり、これらのモノクローナル抗体は単独で使用でき、またはカクテルとして組合せて使用してアッセイの特異性及び感度を増大することができる。免疫原として全外部領域を使用することの他に、このタンパク質のフラグメント、または組換えDNA手段により生成されたタンパク質が、また、特異的なモノクローナル抗体を生成するのに使用し得る。また、外部領域配列内の種々の配列に相当するポリペプチドが免疫原の源として使用し得る。全ての場合、生成された抗体は、それらが腫瘍細胞及び非腫瘍細胞の両方の表面に存在する他のタンパク質との極めて制限された交差反応性を有するような特異性を有する。それらは、例えば、多くの正常細胞の表面に存在するEGFレセプターと反応しない。診断アッセイそのものは、典型的には、ヒト宿主からの少量の体液、好ましくは血清を得ることを伴なう。次いで、血清中のC−erbB−2外部領域の存在が、幾つかの良く特定された抗体診断アッセイを用いて定量化し得る。これらはウエスタンブロット、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、RIAアッセイ(放射性免疫測定法)、または二重抗体サンドイッチアッセイであってもよく、これらは全て診断業界で普通に使用される。全ての場合、結果の解釈は、抗体または抗体の組合せがC−erbB−2に無関係である血清中に存在するその他のタンパク質及びタンパク質フラグメントと交差反応しないという仮定に基く。これらの方法は、C−erbB−2外部領域の存在が背景に上記されたように腫瘍の存在と強い相関関係を有するという事実に基く。これらのアッセイは腫瘍の存在を検出し、腫瘍の持続される増殖を検出し、癌転移の存在を検出し、また外科手術、癌の化学療法また放射線療法後の全腫瘍組織の不在または除去を確かめるのに使用し得る。更に、それは癌化学療法及び腫瘍再発を監視するのに使用し得る。
【0060】
実施例3は、本発明の好ましい診断方法−二重サンドイッチ免疫ラジオメトリック測定法(IRMA)のフォーマットを説明する。体液中のgp75の検出のための多くのその他のフォーマットが勿論利用でき、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を含む。ELISA試験の一つの型の代表は、マイクロタイタプレートがgpタンパク質/ポリペプチドの抗体またはC−erbB−2を発現、好ましくは過剰発現する全細胞(即ち、無傷gp75)の抗体で塗布され、これに患者の血清の試料が添加されるフォーマットである。抗原を抗体に結合させるインキュベーションの期間の後に、プレートが洗浄され、酵素に結合される別の組の抗gp75抗体が添加され、インキュベートされて反応を行ない、次いでプレートが再度洗浄される。その後、酵素基質がマイクロタイタプレートに添加され、酵素が基質上で作用するのに充分な期間にわたってインキュベートされ、最終調製物の吸光度が測定ざれる。吸光度の大きな変化は陽性結果を示す。
【0061】
また、gp75タンパク質及び/またはポリペプチドの抗体が患者の体液中のgp75の存在を検出し定量化するのに使用し得ることが、診断アッセイの当業者に明らかである。一つのこのような実施態様に於いて、競合イムノアッセイが使用され、その場合、gp75タンパク質/ポリペプチドがラベルされ、体液が添加され、gp75タンパク質/ポリペプチドに特異的な抗体へのラベルしたgp75の結合を競合する。このようなアッセイはgp75タンパク質/ポリペプチドを検出するのに使用し得る。
【0062】
別の実施態様に於いて、イムノメトリックアッセイが使用でき、この場合、gp75タンパク質またはポリペプチドのラベルした抗体が使用される。このようなアッセイに於いて、抗原結合された抗体と複合体形成するラベルした抗体の量は体液中のgp75の量に直接比例する。本発明のアッセイに使用するためのモノクローナル抗体は、当業界で公知の方法、特にNature、256巻、495〜497頁(1975年)に記載されているコーラー(Kohler)及びミルスタイン(Milstein)の方法により得ることができる。
【0063】
このような診断方法は、哺乳類、好ましくはヒトの体液中のgp75に関して測定するたあの試験キットで具体化でき、その場合、このような試験キットはgp75タンパク質及び/またはボリペプチドのポリクローナル抗体及び/またはモノクローナル抗体、及び/またはC−erbB−2を発現する全細胞(即ち、無傷gp75)の抗体を含むことができる。更に、このような診断試験キットは、サンドイッチフォーマットに関して別の組のポリクローナル抗体及び/またはモノクローナル抗体を含むことができ、その場合、前記の第二組の抗体が適当にラベルされる。
【0064】
好適な特異性を有する抗体が一旦調製された時、多種の免疫測定法が特定の抗体−抗原複合体の形成を測定するのに利用できる。多数の競合タンパク質結合アッセイ及び非競合タンパク質結合アッセイが科学文献及び特許文献に記載されており、多数のこのようなアッセイが商業的に利用できる。血清抗原を検出するのに適したイムノアッセイの例は、米国特許第3,791,932号;同第3,817,837号;同第3,839,153号;第3,850,752号;同第3,850,578号;同第3,853,987号;同第3,867,517号;同第3、879,262号;第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;及び同第4,098,876号明細書に記載されたアッセイを含む。
【0065】
アッセイに使用される抗体は、ラベルされてもよく、またラベルされなくてもよい。ラベルされていない抗体は凝集に使用でき、種々のラベルを用いてラベルされた抗体は多種のアッセイに使用し得る。
或種の技術では、抗体ではなく抗原またはそのフラグメントをラベルし、抗体に関してラベルした抗原と試料中の抗原との間の競合を有することが有益である。この状況下で、ラベルした抗原またはラベルしたフラグメントと最高の感度及び精度を与える量の抗体との組合せを有するキットを提供することが普通である。
【0066】
その他の状況下で、固体担体を有することが望ましく、この場合、抗原または抗体が結合される。ポリエピトープ抗原が、担体に結合された抗体とアッセイ媒体中のラベルした抗体との間のブリッジとして利用できる。また、制限量の抗体に関して、ラベルした抗原と試料中の抗原との聞の競合を有することができる。
好適な検出手段は、放射性核種、酵素、螢光物質、化学発光物質、酵素基質またはコファクター、酵素インヒビター、粒子、色素等の使用を含む。このようなラベルした試薬は、放射性免疫測定法、酵素イムノアッセイ、例えば、ELISA、螢光イムノアッセイ、等の如き種々の公知のアッセイに使用し得る。例えば、米国特許第3,766,162号;同第3,791,932号;第3,817,837号;.及び同第4,233,402号明細書を参照のこと。
【0067】
gp75タンパク質/ポリペプチドの抗体に関する分析
上記の如く、患者の体液中のgp75タンパク質/ポリペプチドの抗体の量は、新生物性疾患についてスクリーニングし、その疾患の進行を監視し、予測すること及び治療のコースを決めることに重要なパラメータである。このような抗体を検出するのに代表的なアッセイは競合アッセイであり、その場合、ラベルしたgp75タンパク質/ポリペプチドがgp75タンパク質/ポリペプチドを認識するモノクローナル抗体と組合せて患者血清中の抗体により沈殿される。当業者は、上記のフォーマットのいずれかを適用してgp75の抗体の定量化のために抗gp75抗体を検出し得る。
【0068】
C−erbB−2の推定リガンドに関するアッセイ
C−erbB−2レセプターの推定リガンドの量を検出し定量化するためのアッセイが、新生物性疾患を診断しスクリーニングし、その疾患及び治療スケジュールの進行を監視し予測するのに同様に有益である。このようなアッセイは、gp75タンパク質/ポリペプチド及びその抗体に関する上記のアッセイの一つと関連して、更に好ましくはこのようなアッセイの両方に関連して特に有益である。
gp75タンパク質/ポリペプチドを利用するC−erbB−2リガンドに関するこのようなアッセイの代表的なフォーマットは、精製され、好ましくは実質的に純粋なgp75タンパク質/ポリペプチドをプラスチック表面またはその他の固体担体にこのような表面へのそれ自体の結合により、または補足抗gp75抗体により付着することを伴なう。未知の量のラベルされていないリガンドとのラベルしたリガンドの競合アッセイを利用して、gp75タンパク質/ポリペプチドへの結合に関するラベルされていないリガンドの濃度が通常の診断器具使用を利用して定量化し得る。
【0069】
別のフォーマット、ラベリング、及び一般にその他の改良(これらはgp75タンパク質/ポリペプチドに関するアッセイについて上記されたように当業者の知識の範囲内にある)がC−erbB−2の推定リガンドを検出し定量化するためのアッセイに同様に適用する。
【0070】
gp75タンパク質/ポリペプチドの抗体の抗イディオタイプ抗体
gp75タンパク質/ポリペプチドの抗体の抗イディオタイプ抗体が更に本発明の範囲内にある。上記のアッセイの夫々の場合に、このような抗イディオタイプ抗体がgp75タンパク質/ポリペプチドに代えて使用し得る。ワクチンの項目に更に記載されるように、このような抗イディオタイプ抗体は免疫原性薬剤として使用し得る。
【0071】
抗gp75抗体の抗イディオタイプ抗体は、方法の部、モノクローナルC−erbB−2抗体の調製に実質的に上記されたように調製され、その場合、初期免疫化はNIH3T3t細胞ではなく適当な抗gp75抗体による。融合プロトコルは同様にしてそれに従って行なわれる。スクリーニング方法は、免疫化に使用されるもとの抗gp75モノクローナルへの結合に関する一次スクリーン、及び競合アッセイ、例えば、ラジオメトリックアッセイを含む二次スクリーニングであり、その場合、適当なgp75タンパク質/ポリペプチドは放射能ラベルしたもとの抗gp75モノクローナルによる結合に関して融合中に生産された抗イディオタイプ抗体と競合する。
【0072】
試験キット
上記のアッセイは試験キットの形態で具体化し得る。前記の試験キットはgpタンパク質/ポリペプチドの抗体及び無傷のgp75(即ち、C−erbB−2を発現する細胞の表面上にある)の抗体を含み得る。前記の抗体はポリクローナル及び/またはモノクローナルであり得る。更に、前記の試験キットはgp75タンパク質/ポリペプチドを単独で、または上記の抗体と組合せて含み得る。上記のように、抗gp75抗体の抗イディオタイプ抗体がこのような試験キット中で適当なgp75タンパク質/ポリペプチドに代えて使用し得る。
【0073】
例は推定リガンドに関して分析するためのキットであり、その場合、gp75タンパク質/ポリペプチドが表面に塗布され、またはその上に捕捉されるか、あるいは抗gp75抗体の抗イディオタイプ抗体が表面上にそうして塗布される。また、このようなアッセイは上記のように競合アッセイとして処方し得る。勿論、このようなアッセイは固相アッセイに限定されないが、液相フォーマットであってもよく、また酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、粒子アッセイ、例えばアビジン/ビオチン技術を用いて増幅され、または増幅されないラジオメトリックアッセイまたはフルオルメトリックアッセイに基いてもよい。
【0074】
gp75タンパク質及びポリペプチドの調製
本発明のgp75タンパク質及びポリペプチドは種々の方法で調製し得る。gp75タンパク質を調製するのに好ましい方法は組換え手段による。本発明の代表的な組換え法は実施例1に後記される。
本発明のgp75タンパク質及びポリペプチドは、更に合成法または生物学的法により、即ち長いタンパク質及びポリペプチドを酵素及び/または化学的に切断することにより調製し得る。前記の合成法及び生物学的法は、項目、gp75タンパク質及びそのポリペプチド部分の合成的及び生物学的生産(Synthetic and Biologic Production of gp 75 Protein and PolypeptideProteins Thereof)のもとに詳細に後記される。このような方法はgp75ポリペプチドを調製するのに好ましい。
【0075】
gp75配列またはそのフラグメントのクローニング
実施例1に従ってつくられたプラスミドpFRSV−c−erbB−2secは、本発明に従って調製し得る多くの可能なDNA組換え分子の代表にすぎない。使用される制限エンドヌクレアーゼに応じて、c−erbB−2外部領域配列の全部または一部が本発明に従ってクローン化され、発現され、使用し得る。
本発明に有益な制限酵素は、生成されるDNAフラグメントがgp75配列の部分を含むような方法でDNAを切断する酵素を含んでもよい。好適な制限エンドヌクレアーゼは、本発明の範囲から逸脱しないで本明細書に記載された因子を考慮して当業者により選択し得る。
【0076】
実施例1に使用された代表的なクローニングビヒクルはpSV7186である。しかしながら、多種の宿主−クローニングビヒクルの組合せがgp75DNAをクローン化するのに有効に使用し得る。例えば、有益なクローニングビヒクルは、pBR322、その他のE.coliプラスミド及びそれらの誘導体の如き種々の既知の細菌プラスミド及びRP4の如き広範な宿主域プラスミド、ファージラムダの多数の誘導体、例えばNB989の如きファージDNA及びファージDNA発現調節配列を使用するように修飾されたプラスミドのようにプラスミドとファージDNAの組合せから誘導されたベクターの如き、染色体DNA配列、非染色体DNA配列及び合成DNA配列を含んでもよい。
【0077】
有益な宿主は、真核生物または原核生物、好ましくは真核生物であってもよく、E.coli株CAG456、JM103、N4830、X1776、X2282、HB101及びMRC1及びシュードモナス株、枯草菌及びその他のかん菌の株、酵母及びその他の真菌類の如き細菌宿主、並びに培養中の動物細胞または植物細胞、昆虫細胞の如き動物宿主または植物宿主及びその他の宿主を含む。本発明の好ましい宿主は酵母細胞、培養中の哺乳類細胞、好ましくはサル細胞及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。好ましいサル細胞は細胞系COS7からの細胞であり、好ましいCHO細胞は細胞系CHO−(dxb11)からの細胞である。勿論、宿主の全てが等しく有効であるとは限らない。宿主−クローニングビヒクルの組合せの特別な選択は、本発明の範囲から逸脱しないで本明細書に記載された原理を考慮した後に当業者によりなし得る。
【0078】
更に、夫々の特異的なベクター内で、種々の部位が単離された二本鎖DNAの挿入のために選択し得る。これらの部位は、通常、それらを切断する制限酵素またはエンドヌクレアーゼにより指示される。例えば、pBR322では、PstI部位はペニシリナーゼタンパク質のアミノ酸181及び182をコードするヌクレオチドトリプレット間のペリシリナーゼの遺伝子中に配置される。
【0079】
選択されたDNAフラグメントをクローニングビヒクルに挿入して組換えDNA分子を生成するのに選ばれる特別な部位は、種々の因子により決定される。これらは、発現されるタンパク質またはポリペプチドのサイズ及び構造、宿主細胞成分による細胞内酵素分解に対する所望のタンパク質またはポリペプチドの感受性及びそのタンパク質による汚染、開始コドン及び停止コドンの位置の如き発現特性、及び当業者により認識されるその他の因子を含む。これらの因子のいずれもが単独では特別なタンパク質またはポリペプチドに関する挿入部位の選択を絶対に制御しないが、むしろ選択部位はこれらの因子のバランスに影響し、全ての部位が所定のタンパク質に等しく有効であるとは限らない。
【0080】
勿論、クローニングビヒクルの選択された制限部位で挿入されるヌクレオチド配列または遺伝子フラグメントは、所望のタンパク質の実際の構造遺伝子の部分ではないヌクレオチドを含んでもよく、あるいはその構造遺伝子のフラグメントのみを含んでもよいことが理解されるべきである。どのようなDNA配列が挿入されようとも、形質転換宿主はgp75のエピトープを示すタンパク質またはポリペプチドを生産することのみが必要とされる。
【0081】
ハイブリッド遺伝子を含む組換えDNA分子は、宿主(形質転換体)が構造遺伝子またはそのフラグメントを発現しハイブリッドDNAがコードするタンパク質またはポリペプチドを生産することを可能にするように、宿主を形質転換するのに使用し得る。また、組換えDNA分子は、複製後の宿主がgp75DNA及びそのフラグメントの源として別の組換えDNA分子を生産することを可能にするように、宿主を形質転換するのに使用し得る。これらの使用のいずれかに適した宿主の選択は、当業界により認識される幾つかの因子により制御される。これらは、例えば、選択されたベクターとの適合性、同時生産物(co−product)の毒性、所望のタンパク質またはポリペプチドの回収の容易なこと、発現特性、生物学的安全性及びコストを含む。宿主の絶対的な選択は、これらの因子のいずれか単独から特別な組換えDNA分子またはタンパク質もしくはポリペプチドに関して、なし得ない。その代わり、これらの因子のバランスは、全ての宿主が特別な組換えDNA分子の発現に等しく有効であるとは限らないという認識により見つけることができる。
【0082】
grタンパク質/ポリペプチドの発現
宿主細胞がE.coliの如き原核生物である場合、DNA取込みの可能なコンピテント細胞は指数増殖後に回収され、続いて公知の操作により塩化カルシウム(CaCl2)法により処理された細胞から調製される。また、形質転換は、宿主細胞のプロトプラストを形成した後に行ない得る。
使用される宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム沈殿としてのDNAの形質移入法、マイクロインジェクションの如き通常の機械的操作、赤血球宿主またはリボソーム中に被包されたプラスミドの挿入、リゾボスファチジルコリンの如き薬剤による細胞の処理またはウイルスベクターの使用等が使用し得る。
【0083】
タンパク質またはポリペプチドの生産量は、二つの主要因子:その遺伝子または細胞内でそれを暗号化コード化するDNA配列のコピー数及びこれらの遺伝子及び配列のコピーが転写され翻訳される効率により支配される。転写及び翻訳(これらは一緒に発現を含む)の効率は、順に、通常所望の暗号配列の前方に配置されるヌクレオチド配列に依存する。
これらのヌクレオチド配列または発現調節配列は、特に、RNAポリメラーゼが相互作用して転写を開始する位置(プロモーター配列)及びリボソームがmRNA(転写の生産物)を結合し、それと相互作用して翻訳を開始する位置を規定する。このような発現調節配列の全てが等しい効率で作用するとは限らない。こうして、所望のタンパク質に特別な暗号配列をそれらの隣接ヌクレオチド配列から分離し、高レベルの発現を有利にするように既知の発現調節配列に代えてそれらを融合することが有利である。これが達成された場合、細胞内の遺伝子または配列のコピー数を増加し、それにより発現タンパク質の収率を更に改良するために、新たに処理されたDNAフラグメントがマルチコピープラスミドまたはバクテリオファージ誘導体中に挿入し得る。
【0084】
幾つかの発現調節配列が使用し得る。これらは、E.Coliのラクトースオペロンのオペレータ、プロモーター及びリボソーム結合配列及び相互作用配列(シャインーダルガルノ(Shine−Dalgarno)配列の如き配列を含む)(“lac系”)、E.coliのトリプトファンシンセターゼ系の相当する配列(“trp系”)、trp及びlacプロモーターの融合(“tac系”)、ファージ1の主要なオペレーター及びプロモーター領域(OLPL及びORPR)、及びファージλコートタンパクの調節領域を含む。これらの配列を含むDNAフラグメントは、lacオペロンまたはtrpオペロンを有する形質導入ファージから分離されたDNAまたはファージλもしくはfdのDNAから制限酵素による切断により切除される。次いで、これらのフラグメントは、必須の調節配列が暗号配列の開始コドンの極めて近くに、またはそのコドンと近位で接合し得るような分子の制限された集団を得るために、操作される。
【0085】
次いで、融合生産物が適当な宿主の形質転換のためのクローニングビヒクル中に挿入され、抗原生産量が測定される。こうして、最も有効な発現を示す細胞が選択される。また、開始コドンに結合されるlac、trpまたはλPL調節系を有するクローニングビヒクルが使用されて、gp75タンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含むフラグメントに融合されてもよく、その結果、その遺伝子または配列がクローニングビヒクルの開始コドンから正確に翻訳される。
【0086】
gp75タンパク質及びそのポリペプチドフラグメントの合成的及び生物学的生産
本発明のgp75タンパク質及びポリペプチドは、組換え手段によるだけでなく、合成手段及びその他の生物学的手段によっても生成し得る。所望のポリペプチドまたはタンパク質を調製するためのその他の生物学的手段は、所望のアミノ酸配列を含む長いgp75ポリペプチドまたはタンパク質を選択的タンパク質加水分解にかけることである。例えば、長いポリペプチドまたはタンパク質は化学試薬または酵素により切断し得る。ポリペプチドまたはタンパク質の合成による生成は、当業界で公知の方法によリアミノ酸の所望の鎖を化学的に合成することを必要とする。
【0087】
所望のアミノ酸配列を含む長いポリペプチドまたはタンパク質の部分は、下記の操作のいずれかにより切除し得る。
(a)タンパク質加水分解酵素、特にその基質がアミノ酸の所望の配列の直ぐ隣りの部位でタンパク質またはポリペプチドの切断を特異的に生じるこれらの酵素によるタンパク質または長いポリペプチドの消化。
(b)化学的手段によるタンパク質またはポリペプチドの切断。アミノ酸間の特別な結合は、特定の試薬との反応により切断し得る。その例は、下記のものを含む。メチオニンを伴なう結合は臭化シアンにより切断され;アスパラギニルグリシン結合はヒドロキシルアミンにより切断され;二つのシステイン残基間のジスルフィド結合は、例えばジチオスレイトールによる還元により切断される。
(c)タンパク質加水分解変化と化学変化の組合せ。勿論、上記のように、合成ポリペプチドをコードするDNAの小部分をクローン化して単細胞宿主によるペプチドの生産をもたらすことがまた可能であるべきである。
【0088】
生物学的に、または合成的に生産されたタンパク質及び一旦生産されたポリペプチドは、ゲル濾過、イオン交換または高速液体クロマトグラフィー、またはその他の好適な手段により精製し得る。
ポリペプチドの化学合成は、下記の刊行物に記載されている。メリフィールド(Merrifield)ら,J.Am.Chem.Soc.85巻、2149〜2156頁(1963);ケント(Kent)ら,“Synthetic Peptides in Biology andMedicine”,29ff.,アリタロ(Alitalo)ら編集、(Elsevier Science Publishers 1985年);ハウグ(Haug),ABL,40〜47頁(1987年、1月/2月);アンドリューズ(Andrews),Nature 319巻、429〜430頁(1月30日、1986年);ケント,“Biomedical Polymers”,213〜242頁、ゴールドバーグ(Goldberg)ら編集、(Academic Press 1980年);ミッチル(MitchelDら,J.Org.Chem.43巻、2845〜2852頁(1978年);タム(Tam)ら,Tet.Letters.,4033〜4036頁(1979年);モジュゾフ(Mojsov)ら,J.Org.Chem.45巻、555〜560頁(1980年);タムら、Tet Letters,2851〜2854頁(1981年);及びケントら、“Proceeding of the IV International Symposium on Methods of Protein Sequence Analysis(タンパク質配列分析の方法に関する第4回国際シンポジウムの会報)”(Brookhaven Press 1981年)。
【0089】
上記の刊行物に記載された“メリフィールド固相操作”は、カルボキシル末端アミノ酸からアミノ末端アミノ酸までのL−アミノ酸の適当な配列をつくるのに使用し得る。樹脂のクロロメチル基、ベンズヒドリルアミン基、またはその他の反応基への化学結合により適当な樹脂に付着された適当なカルボキシル末端アミノ酸から出発して、アミノ酸が夫々に関して下記の操作を用いて一つずつ付加される。
【0090】
(a)ペプチジル樹脂が塩化メチレンで洗浄される;
(b)その樹脂が塩化メチレン中の5%(v/v)のジイソプロピルエチルアミン(またはその他のヒンダード塩基)と室温で10分間混合することにより中和される;
(c)その樹脂が塩化メチレンで洗浄される;
(d)生長するペプチド鎖のモル量の6倍に等しい量のアミノ酸が、それを半分のモル数のカルボジイミド、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドと0℃で10分間合わせることにより活性化されてアミノ酸の対称酸無水物を生成する。使用されるアミノ酸は、ベンジルエステル(アスパラギン酸及びグルタル酸)、ベンジルエーテル(セリン、スレオニン、システイン、チロシン)、ベンジルオキシカルボニル基(リシン)またはペプチド合成に普通使用されるその他の保護基で保護された側鎖を有するN−α−ブチルオキシカルボニル誘導体として最初に与えられるべきである;
(e)活性化されたアミノ酸が室温で2時間にわたってペプチジル樹脂と反応させられて、成長するペプチド鎖の末端への新しいアミノ酸の付加を生じる;
(f)その樹脂が塩化メチレンで洗浄される;
(g)N−α−(ブチルオキシカルボニル)基が塩化メチレン中の30%(v/v)のトリフルオロ酢酸と室温で30分間反応させることにより直前に付加されたアミノ酸から除去される;
(h)その樹脂が塩化メチレンで洗浄される;
(i)必要とされるペプチド配列がつくられるまで工程a〜hが繰返される。次いで、10%(v/v)のアニソールを含む無水のフッ化水素酸と反応させることにより、ペプチドが樹脂から除去され、同時に側鎖保護基が除去される。続いて、ペプチドはゲル濾過、イオン交換、または高速液体クロマトグラフィー、またはその他の適当な手段により精製し得る。
【0091】
化学合成は固相樹脂を使用しないで行なうことができ、その場合、合成反応は完全に溶液中で行なわれる。反応、及び最終生成物は、特別なことがない限り実質的に同じである。
化学的ペプチド合成の技術は、自動ペプチド合成装置を使用すること、市販の保護されたアミノ酸を使用することを含む。このような合成装置は、例えば、バイオサーチ(Biosearch)(SanRafael,CA)型式9500及び9600、アプライド・バイオシステム・インコーポレーション(Applied Biosystems lnc.)(Foster City,CA)型式430、及びミリゲン(MilliGen)(ミリポア社の一部門)型式9050を含む。更に、デュポンズ・ランプ(Dupont’s Ramp)(高速自動化多重ペプチド合成)を使用して約25までのポリペプチドを一度に手動で合成し得る。
【0092】
本発明の合成ポリペプチドは、gp75の一つ以上のエピトープを含むことが好ましい。エピトープ(これは約3〜約11個のアミノ酸、更に通常約5〜約11個のアミノ酸であり得る)を形成するアミノ酸配列をその両側面にある少なくとも三つのアミノ酸に結合することによりこのようなポリペプチドを合成することが可能である。両側面の三つのアミノ酸は天然のgp75配列中のものと同じアミノ酸であってもよく、またその他のアミノ酸であってもよい。
【0093】
gp75の抗体
本発明の組換体、合成もしくは天然のgp75タンパク質及びポリペプチドは、診断アッセイだけでなく、gp75タンパク質/ポリペプチドのアフィニティ精製及び治療上の使用に関して用途を有する。背景に上記されたように、C−erbB−2の抗体は、試験管内及び生体内で腫瘍増殖を抑制することが示された〔ドレビンらの上記の文献(1985年)を参照のこと〕。
【0094】
ワクチン
本発明のgp75タンパクおよびポリペプチドが腫瘍性疾患に対して防御免疫を誘発でき、かつ腫瘍形成活性に対する抑制効果をもつワクチンに配合し得ることは容易に理解されよう。ポリペプチドは単量体または多量体形状で、gp75の1種以上のエピトープに対応する1種以上のアミノ酸を含むように、組換え手法であるいは生物学的に合成または調製することができる。次いで、これらのポリペプチドを、gp75に対する防御免疫性を誘起することのできるワクチンに配合できる。かかるポリペプチドの抗原性を高める方法は多量体構造への組込み、免疫原性の高いタンパクキャリヤ、例えばキーホールリンプレットヘモシアニン(KLH)、またはジフテリア毒素などへの結合、およびアジュバントまたは任意の他の免疫応答のエンハンサとの組合せでの投与などを包含する。
更に、gp75タンパク/ポリペプチドに対する抗体の抗イデオタイプ抗体もワクチンとして有用であり同様に処方し得ることも理解されよう。
【0095】
単量体または多量体形状のいずれかのgp75のエピトープに対応するアミノ酸配列を、化学的合成手段により、あるいは遺伝的に修飾された微生物またはその培養物を包含する生物起源から精製することにより得ることができる。〔ラーナー(Lerner),“シンセティックバクシンズ(Synthetic Vaccines)”,Sci.Am.,1983,248(2),pp.66−74参照〕。このポリペプチドは、例えば融合タンパクとして合成される場合における如く、アミノ酸配列中で他のタンパクのフラグメントを含む他のポリペプチドと結合するか、あるいは合成または天然起源の他の抗原性または非−抗原性のポリペプチドに結合することができる。
【0096】
“gp75のエピトープに対応する”なる用語は以下のような実際上の可能性を含むものと理解される。即ち、いくつかの例においては、天然にみられるタンパクおよびポリペプチドのアミノ酸配列の変動は抗原性であり得、かつ腫瘍性疾患に対する防御免疫および/または抗−腫瘍形成効果を与え得るという可能性を包含する。起こり得る配列変動はアミノ酸の置換、伸長、欠落、端部切除(truncations),挿入(interpolation)およびこれらの組合せを含むが、これに制限されない。このような変更は、これらの変更を含むタンパクまたはポリペプチドが免疫原性であり、しかもこのようなポリペプチドまたはタンパクが誘発する抗体が十分に天然に産するgp75タンパクおよびポリペプチドと交叉反応して、ワクチンとして投与された場合に防御免疫性および/または抗−腫瘍形成活性を与えるとすれば、本発明の意図する範囲内に含まれる。
このようなワクチン組成物は生理的に許容される媒体と組合せられ、該媒体としては免疫学的に許容される希釈剤および担体並びに一般的に使用されているアジュバント、例えばフロインド完全アジュバント、サポニン、ミョーバンなどが挙げられる。投与はgp75タンパクまたはポリペプチドの免疫学的に有効量、好ましくはレシピエントの体重1kg当たり免疫学的に活性なgp75タンパクおよび/またはポリペプチド0.01〜10.0μgなる単位投薬量を与えるような量で行われる。全予防投薬量は抗原0.1〜約100μgの範囲内であり得る。
投与経路、抗原投与量、注入の回数および頻度は、当業者が最適化し得る範囲内の事項である。
【0097】
gp75タンパクおよびポリペプチドの治療での使用
本発明のgp75タンパクおよびポリペプチドは、更に単独でもしくは化学療法薬と組合せて腫瘍性疾患の治療において使用できる。C−erbB−2の外部ドメインが、完全な(intact)分子として、体液中に注入されたという事実はそれ自体治療上の役に立つ。細胞に付着しない過剰のgp75は、背景の項で既に述べたように〔スミス(Smith)等、上記文献(1987)〕、CD4レセプタおよびHIV−1のgp120エンベロープタンパクに類似する様式で、C−erbB−2に対する推定リガンドのオンコジーンの細胞表面レセプタへの結合と競合し、かつこれを妨害する可能性がある。gp75タンパクおよびポリペプチドの治療上の効果を説明するためのもう一つの機序は、腫瘍形成を容易にするC−erbB−2表現細胞間のレセプタ/レセプタ相互作用を阻害もしくは破壊することであり得る。
【0098】
このような治療法は、患者にC−erbB−2外部ドメイン物質、そのフラグメントあるいはその配列の一部に由来するペプチドを投与することを含む。gp75タンパク/ポリペプチドの高い循環濃度は、上述の如く、腫瘍の成長を減衰もしくは排除することを期待できた。このgp75タンパク/ポリペプチドは生理的に許容される、非毒性の液状ビヒクルに分散させ、治療上有効な量で投与できる。投与経路および投与量は上記のワクチンの項で述べたのと同様である。
【0099】
定義
用語“gp75”とは、ここでは分子量約185キロダルトン(kd)の糖タンパク(gp185)即ちC−erbB−2の外部ドメインを構成する、分子量約75kdの糖タンパクを意味するものとする。用語“gp75”は正確には図16に示されたそのヌクレオチドおよびアミノ酸配列により定義され、gp75外部ドメインは大体アミノ酸番号22(セリン;Ser−22)からほぼアミノ酸番号653(セリン;Ser−653)までの領域(図16においてこれらアミノ酸はその上部の黒丸でマークされている〉を含み、これに対応するヌクレオチド配列をもつ。このアミノ酸配列はgp75のグリコシル化されていないバージョン(version)を表し、およその分子量69kdを有するものと思われる〔クッセンズ(Coussens)等の上記文献〕。用語“gp75”に含まれるものとしては、タンパク生成物の分子量に影響する種々の度合のグリコシル化をもつ酵母および高等真核生物による組換え技術により生成される糖タンパクであり、例えば少量のgp90は、以下の実施例1で示されるように、安定に形質転換されたgp75−表現CHO細胞中で生成された。
【0100】
“完全gp75(intact gp75)なる表現は細胞表面に発現されたgp75外部ドメインを意味するものとしてここでは定義する。従って、この完全gp75は依然として膜内外領域を介して該細胞に付着している。
“ポリペプチド”とはペプチド結合によって共有結合的に結合したアミノ酸の鎖であり、かつここでは50以下のアミノ酸を含むものと考える。“タンパク”とは、ここでは50以上のアミノ酸を含むポリペプチドであると定義する。
“gp75タンパクおよびポリペプチド”なる表現は、ここでは、図16に示したようなgp75外部ドメインDNA配列(ほぼ−Ser−22乃至ほぼSer−653をコードするヌクレオチド)により、あるいは該gp75DNA配列のフラグメントによってコードされるタンパクおよびポリペプチドを意味するものと定義する。“gp75タンパクおよびポリペプチド”なる表現は、該“gp75タンパクおよびポリペプチド”と実質的に同一のアミノ酸配列および実質的に同一の生物学的活性を有するタンパクおよびポリペプチドを包含するものと解釈すべきである。
【0101】
遺伝子コードの縮重のために、即ち1種以上のコドンが1種のアミノ酸をコードする〔例えば、コドンTTA、TTG、CTT、CTC、CTAおよびCTGは夫々アミノ酸のロイシン(L)をコードする〕ことから、一つのコドンが他のコドンで置換されている図16のヌクレオチド配列の変更は、本発明によれば実質的に等価なタンパクまたはポリペプチドを生成するものと理解される。gp75に対するヌクレオチド配列のこのようなすべての変更は、本発明の範囲内にはいる。
更に、図16のgp75DNA配列は天然に生ずるヌクレオチド配列の正確な構造のみを示していることを理解すべきである。僅かに修飾されたヌクレオチド配列が血清学的に類似の活性をもつ、免疫原性のおよび/または抗原性のタンパクおよびポリペプチドをコードすることが見出され、もしくはこれらをコードすべく当分野で公知の技術によって修飾し得ることが予想され、このようなヌクレオチド配列並びにタンパク/ポリペプチドは本発明の目的にとって等価であると考えられる。同等のコドンをもつDNAは本発明の範囲内にあり、例えば該gp75DNA配列に相同もしくは実質的に相同なタンパク/ポリペプチドをコードする合成DNA配列およびgp75タンパク/ポリペプチドをコードする配列とハイブリッド化されたDNA配列並びに遺伝子コードの縮重がなければ該gp75配列にハイブリッド化されるであろうこれらの配列が含まれる。更に、ここでいうgp75配列に相補的なDNA配列も本発明の範囲内にある。ここで示したようなDNA配列の上記の如き修飾並びに変更は、gp75配列またはそのタンパクと実質上同一である配列を与えるものと考えられる。
【0102】
典型的には、このような関連ヌクレオチド配列は、実質的に相同の定義にはいるものと実質的に同一である。
更に、gp75のアミノ酸配列は遺伝子技術により修飾し得ることを理解するであろう。1種以上のアミノ酸を削除もしくは置換することができる。このようなアミノ酸の変更は、特にこの変更がポリペプチドのエピトープ外の領域におけるものである場合には、タンパクまたはポリペプチドの血清学的、抗原性および/または免疫原性活性に何等検知し得る変化を生じ得ない。生成するタンパクまたはポリペプチドは実質的に同一のアミノ酸配列および実質的に同一の生物学的活性を有し、かつ本発明の範囲内にある。
好ましくは、該gp75タンパク/ポリペプチドが化学療法薬と共に投与された場合には、該薬品はアルキル化剤である。この方法にとって好ましい化学療法薬はシスプラチン、カルボプラチンおよびメファラン(mephalan)である。
【0103】
略 語
本明細書では以下のような略語を使用する。
ATCC:アメリカンティッスカルチャーコレクション(American Tissue Culture Collection)
BCA:ビシンコニン酸(bicinchoninic acid)
BSA:牛血清アルブミン
CHO:チャイニーズハムスター卵巣
DAB:ジアミノベンジン4塩酸塩
DHFR:ジヒドロフォレートリダクターゼ
DMEM:ドゥルベコ改良イーグル培地(Dulbecco modified Eaglemedium)
EDTA:エチレンジアミンテトラ酢酸
EGF:表皮増殖因子
EGFr:表皮増殖因子レセプタ
EGTA:エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸
ELISA:酵素標識イムノソーベントアッセイ
FACS:フルオレセント活性化細胞選別(fluorescent activatecd cell sorting)
【0104】
FBS:仔牛血清
FITC:フルオレセインイソチオシアネート
HAT:ハイポキサンチンアミノブテリンチミジン
HBSS:ハンクス液
HEPES:4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタン−スルホン酸
HPLC:高圧液体クロマトグラフ
HRP:セイヨウワサビペルオキシダーゼ
IRMA:イムノラジオメトリックアッセイ(immunoradiometric assey)
【0105】
MEM:最小必須培地
MTT:3−(4,5−ジメチルチアゾイル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド
MTX:メトトレキセート
NHS:Nーヒドロキシサクシンイミド
PBS:リン酸緩衝塩水
PEG:ポリエチレングリコール
PMSF:フェニルメチルスルホニルフルオライド
PNPP:p−ニトロフェニルホスフェート
RIA:ラジオイムノアッセイ
RPMI:ロスウェルパークメモリアルインスティチュート(Roswell Park Memorial Institute)1640培地
RT:室温
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
SDS−PAGE:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
TAB−MAB:モノクローナル抗体
TCA:トリクロロ酢酸
TMB:テトラメチルベンジジン
TRIS:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンあるいはアミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール
【0106】
セルライン
以下のセルラインを、以下に記載する実験で使用した。
SKBR3:ヒト乳癌セルライン。転移胸膜滲出液として得られ、ATCCカタログNo.HTB30として得た。
SKOV3:ヒト卵巣癌セルライン。転移腹水滲出液として得られ、ATCCから得た。カタログNo.HTB77。
MCF7:ヒト胸腺癌セルライン(胸膜滲出液由来)。ATCCから得た。カタログNo.HTB22。
MDA361:脳への転移腫瘍由来のヒト乳癌セルライン。ATCCから得た。カタログNo.HTB27。
MDA435:転移胸膜滲出液由来のヒト乳癌セルライン。ATCCから得られる。カタログNo.HTB129。
MDA468:転移胸膜滲出液由来で増幅されたEGFrを含む乳癌セルライン。ATCCから得た。力タログNo.HTB132。
NIH3T3:S.アーロンソン(Aaronson)(NIH)から得た二十日ネズミ繊維芽細胞セルライン(Science,1987,237,p.178)。
NIH3T3t:C−erbB−2オンコジーンと共に移入された二十日ネズミ繊維芽細胞セルライン。S.アーロンソン(NIH)から入手した(Science,1987,237,p.178)。
HBL100:この比較的正常なヒトミルク由来の乳癌セルラインはSV−40で不死化されており、ATCCから得た。カタログNo.HTBI24。
COS7:SV−40形質転換アフリカ産グリーンモンキー細胞。ATCCから入手した。カタログNo.CRL1651。
CHO−(dxbl1):チャイニーズハムスター卵巣細胞。UCSFセルカルチャーファシリティ(Cell culture facility)から入手。
【0107】
増殖培地
ここに記載する実験における、指定したセルラインの増殖のために以下の増殖培地を使用した。
SKBR3,MDA435,DA468:これらの細胞は最小必須培地(MEM)〔ギブコバイオロMジカルズ社(Gibco Biologicals Inc.),N.Y.〕、10%の熱失活させた仔牛血清、0.29μ・g/μlのL−グルタミン中で培養した。
SKOV3:細胞は、イスコブズ改良ダルベッコ培地(lscove’s Modified Dulbecco’sMedium(IMDM)、10%熱失活仔牛血清、0.29μg/μlL−グルタミン中で培養した。
MDA361:細胞は、RPMI1640、10%熱失活仔牛血清、1μg/μl牛膵臓インシュリン、0.29μg/μlL−グルタミン中で培養した。
HBL100:細胞はマッコイ(McCoys)5A培地、10%熱失活仔牛血清、0.29μg/μlL−グルタミン中で培養した。
COS7:細胞は、10%仔牛血清(ギブコ)、100μMのL−グルタミン、100単位/mlのペニシリンおよび100μg/μlのストレプトマイシンを補充したダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中に定常的に保持した。
CHO−(dxbl1):細胞は10%FBS、L−グルタミンおよび抗生物質を補充したα−MEM中に維持した。
NIH3T3:これら細胞はDMEM+4%FBS、2mMグルタミン中に維持した。
NIH3T3t
MGF7
【0108】
文 献
以下の文献は本明細書中で、著名または編者および年号で言及した参照文献である。
アウステル(Ausutel)等(編)、カレントプロトコールズ(Current Protocols),in Mol.Biol.,vol.2,(ウィリーインタサイエンス(Willeylnterscience),1988)。
・クッセンズ(Coussens)等,Science,1985,230,p.1138
・ジフィオレ(Di Fiore)等,ibid,1987,237,p.178
・グラハム&ファンデルエブ(Graham and Van der Eb)(編),J.Virol.,1973,52,P.456
・ホーラン−ハンド(Horan−Hand)等,Cancer Res.,1983,43,p.728
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・スー(Hsu)等,J.Histochem.,1981,.29,p.577
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・ラエムリ(Laemmli),Nature,1970,227,p.680
・マニアティス(Maniatis)等,モレキュラークローニング(Molecular Cloning):アラボラトリーマニュアル(ALaboratory Manual),コールドスプリングハーバーラボラトリ,1982
・マッコングローグ(McConglogue),哺乳類細胞用の遺伝子伝達ベクタ(Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells),pp.79−84(CSH出版、1987)
・スラモン(Slamon)等,“ヒト乳癌におけるHER−2/neuプロトーオンコジーヌの研究(Studies of the HER−2/neu proto−oncogene in human breast cancer)”,癌細胞7/ヒト癌の分子論的診断(Cancer Cell7/Molecular Diagnostics of Human Cancer),pp.371−384,(CSH,NY,1989)
・トービン(Towbin)等,PNAS,1979,76,p.4350
・ゾラー&スミス(Zoller and Smith),Methods Enzymol.,1987,154,p.329
【0109】
方法
以下の方法を下記実施例において使用した。
タンパク分析
4%アクリルアミド濃縮用ゲルと、10%解像ゲル(resolving gel)(両者共に0.2%SDSを含む)を使用して、ラエムリ(Laemmli)〔Nature,1970,227,pp.680−685;この論文を本発明の参考文献とする〕により記載されたように、SDS−PAGEによりタンパクを分析した。サンプルを50μlのサンプルバッファー〔63mMのトリス(TRIS),pH6.8、10%のグリセロール、5%の2−メルカプトエタノール、および2.3%のSDS〕中に適用し、20mAなる定電流条件で4時間電気泳動させた。タンパクの分子量は既知の分子量をもつ標準タンパクに対する各タンパクの易動度から評価した。タンパクの濃度はクーマシー青色色素−結合アッセイ(バイオラドラボラトリーズ(Bio−Rad Laboratories),リッチモンドCA)を利用して測定した。
【0110】
ウェスタンブロット
適当な抗体によって同定される抗原を特徴付けするために、トービン(Towbin)等(Proc.Natl,Acad.Sci.,USA,1979,76,pp.4350−4354;この論文を本発明の参考文献とする)により記載されたようなウェスタンブロット法の改良法を利用したが、ここではタンパクはSDS−PAGEゲルからニトロセルロースフィルタに移され、かつ適当なモノクローナル抗体で同定された。ニトロセルロースフィルタに移した後、過剰なタンパク結合サイトを、3%BSA含有PBS中に該フィルタを浸漬することにより遮断した。1%のBSAおよび1〜2×107カウント/分(cpm)のヨウ素化抗体を含む30μlのPBS中で該シートを1時間インキュベートすることによりこの抗原を配置させた。次いで、このフィルタを洗浄し、乾燥し、かつオートラジオグラフィーに付した。(この手順により100ピコグラム(pg)程度までのタンパクを検出することができる)。
【0111】
抗体の調製
ポリクローナル抗体:92の調製
ニュージランド白兎を、C−erbB−2タンパクの81%のN−末端に該当するE.コリ組換え抗原50〜200μgで免疫した。初期免疫はフロインド完全抗原に1:1(v/v)の割合で乳化した該抗原からなっており、これは2箇所の皮下部分に注射された。後の追加免疫は不完全アジュバントに乳化した該抗原で2度に渡り2週間隔で行った。これら動物の耳静脈から2週毎に採血し、gp185表現細胞溶解物に対しウェスタンブロット法で、(以下に述べる)ELISAを基に細胞に対する反応性により、放射性標識した細胞溶解物からのgpl85タンパクの免疫沈降により、および放射性標識したA431細胞溶解物からのgp170タンパクの免疫沈降により該血清をアッセイした。これらの血清は2度の追加免疫後のウェスタンブロット法によりgp185との強い反応性をもつことが明らかとなりおよびEGFレセプタタンパクとの交叉反応性を示すことが立証された。
【0112】
ポリクローナル抗体:9.2の調製
C−erbB−2タンパクのC−末端における14アミノ酸からなるペプチドに対する兎ポリクローナル抗血清を作成した。上述と同様の免疫化を利用した。この抗血清はC−erbB−2タンパクを発現する細胞の膜処方物から約185kdのタンパクを特異的に沈殿させる。これは該EGFレセプタと交叉反応しない。
【0113】
モノクローナルC−erbB−2抗体の調製
C−erbB−2オンコジーン、NIH3T3t(親切にもDr.S.アーロンソン(NIH)により提供された)を移入した2×106〜1×107NIH3T3細胞〔ディフィオレ(Di Fiore)等,Sciene,1987,237,pp.178−182〕または完全フロインドアジュバント中に1:1(v/v)の割合で乳化した同数のSKBR3細胞のいずれかで、腹腔内および皮下経路でBalb/cマウスを免疫した。これらの動物を、不完全アジュバントに乳化した細胞で2〜4週毎に追加免疫した。2週毎に血清を集め、(以下に述べる)ELISAアッセイで、ホルマリンで固定したNIH3T3またはNIH3T3t細胞に対する反応性につきテストした。正の力価を示す動物を細胞のPBS溶液で腹腔内または静脈内経路で追加免疫し、細胞融合のために4日後に動物を殺した。脾細胞を、ケーラー&ミルシュタイン(Kohler and Milstein)(Nature,1975,256,pp.495−497)の手順に記載されたようにPEG4000を用いて、1:1〜7.5:1の比率でP3−X63Ag8.653ミエローマ細胞と融合させた。融合細胞を緩かに洗浄し、RPMI中で1〜4×106細胞/μlの密度で96−ウェルをもつプレートに塗布した。融合の24時間後にウェルをHAT培地で満たし、次いで3日毎に2〜3週間に亘りこの操作を続けた。形成コロニーが肉眼でみえるようになる10〜14日後に、培養上澄をELISAアッセイにおける反応性についてテストした。良好な成長を示したクローンを24ウェルを備えたプレートに展開し、7〜10日後に再度スクリーニングした。次いで正のウェルを、流動選別解析(flow sorting analysis)により生きたNIH3T3およびNIH3T3t細胞に対する外部ドメイン反応性につきアッセイした。ELISAアッセイおよび流動選別解析両方に対して正であるハイブリドーマ(親ハイブリドーマという)を、限界希釈クローニングまたは表面免疫グロブリン表現の流動選別解析に基いた脾臓支持細胞を含む96−ウェルを備えたプレートへの単一細胞付着によりクローニングした。成長がみられたウェルをELISAで再度テストし、更に1〜3回再クローニング処理した。
【0114】
ハイブリドーマクローンからの上澄を、イソタイプおよびサブイソタイプ、流動選別解析によるNIH3T3t上での表面発現gp185に対する反応性、および移入細胞からの標識gpl85プロテインの免疫沈降につきテストした。正のハイブリドーマを育生し、プリスタンで感作したBalb/cマウス、Balb/cヌードマウスまたはIRCFlマウス中に腹水生産のために注入した。腹水をベーカーボンド(Bakerbond)ABxカラム上でのHPLCで精製し、精製されたモノクローナル抗体(TAb#という)をPBSに対して透析し、−20℃にて保存した。全精製抗体を放射状免疫拡散法によるイソタイプおよびサブイソタイプにつき(15%未満の汚染イソタイプ)、流動選別解析による、gp185表現セルラインの細胞表面染色性につき、移入または非移入NIH3T3細胞に対するELISAアッセイ、標識C−erbB−2発現セルラインからのgpl85の放射性免疫沈降、放射性標識されたA−431細胞から放射性標識された170KDタンパクが沈殿しなかったことによる密接に関連したEGFレセプタタンパクとの交叉反応性の欠如につきテストし、かつSDS−PAGEおよびゲルデンシトメトリーによる解析を行った(全精製タンパクは90%以上免疫グロブリンである)。すべてのモノクローナル抗体は、ウエスタンブロット法によるgp185タンパクの認識を示さなかった。今日までに発展したMAbsおよびその反応性の概要を第1表に総める。A29はモノクローナル抗体、TAB250−254に対する親ハイブリドーマである。初期のいくつかの実験においては、表に示したように、A29ハイブリドーマからの上澄を使用した。
【0115】
【表1】
【0116】
流動選別解析
NIH3T3およびNIH3T3t(あるいは他のC−erbB−2表現セルライン)細胞を、DMEM十4%FBS中で80%の集密度で育生した。細胞をパックスベルセン(Puck’s Versene)で収穫し、2度冷FACSバッファー(HBSS(フェノールレッドを含まない)、2%FBS、0.2%ナトリウムアジド、10mM HEPES)で洗浄した。細胞を12×75mmのガラス試験管当たり0.5〜1.0×106細胞なる密度で分配し(細胞は90%以上生存性でなければならない)、ペレット化し、上澄を除去した。これらの試験管を氷上に置き、試験管1本当たり100μlの上澄または精製抗体を加えた。各抗体または上澄をNlH3T3細胞並びにNIH3T3t細胞両方に対してテストした。この抗体を氷上で1時間該細胞と共にインキュベートした。細胞を冷FACSバッファーで2度洗浄し、100μlのFITC−複合山羊抗−マウスニ次抗体を添加した。氷上に1時間放置した後、該細胞を2度FACSバッファーで洗浄し、10%中性緩衝ホルマリンで再懸濁して、500μlとした。この再懸濁した細胞はホイルで包んで4℃にて3日まで保存できる。この標識細胞をクールタ(Coulter)EPICS541流動選別機で分析し、平均ピークチャンネル蛍光を5000細胞につき測定した。NIH3T3t細胞に対する反応性の平均ピークを、NIH3T3細胞に対する反応性の平均ピークと比較した。gp185の外部ドメインタンパクと反応する抗体について、該ピークは非重複性であった。
【0117】
抗体アッセイ
ポリスチレンプレート(96−ウェル)を、PBSで希釈したC−erbB−2表現細胞からの溶解物100ngを被覆した。この溶解物は、2〜3μlの冷溶解バッファ(0.15M Nacl,0.1%トライトン(Triton)X−100,0.1%デオキシコレート、0.1% SDS、10mMトリス(Tris)、pH7.4、1mMPMSF)を2x106〜1×107細胞に加え、氷上で15分間インキュベートすることにより調製した。溶解物を10,000gにて20〜30分間遠心処理し、上澄をタンパクについてアッセイし、分割し、−20℃で保存した。溶解物を加えたプレート(競合プレートという)を、室温にて一夜インキュベートし、次いでPBSで洗浄した。もう一つの96−ウェルプレート(インキュベーションプレート)を1%BSA(PBS溶液)で室温にて1時間遮断した(100μl/ウェル)。これらのプレートを洗浄し、抗原(gp75表現CHO細胞からの上澄、即ちマウス血清または細胞溶解処方物)を該ウェル中にて5ng/μlとなるようにTAb251と混合し、該プレートを室温にて2〜4時間インキュベートした。該競合プレートを同様に1%BSA/PBSで遮断し、洗浄し、100μlの該インキュベーション混合物を、該インキュベーションプレートから該競合プレートに移し、室温にて1時間インキュベートした。次いで、これらのプレートをPBS/0.05%ツイーン(Tween)20で洗浄し、ビオチン処理した(biotinylated)山羊抗−マウスIgG抗体を1:400なる希釈率(v/v)でウェル当たり100μl添加した。これらのプレートを室温にて30分間インキュベートし、洗浄し、100μlのストレパビジン(Strepavidin)−HRPコンジュゲートを1:8000なる希釈率(v/v)で加えた。更に室温にて30分間インキュベートした後、上記の如くアッシュ工程(ash step)を行い、TMB基質を100μl/ウェルで加えた。この基質は、5μlのTMB母液(1μg/μlの3,3´,5,5´−テトラメチルベンジジンのメタノール溶液)と5μlのシトレートバッファー、pH4.5および4μlの30%過酸化水素と混合することにより、使用の直前に調製した。室温にて暗所で15分間インキュベートした後、吸光度を450nmにて測定した。PBSと共に予めインキュートしたTAb 251を不競合コントロールとして使用して、溶解物で被覆した競合プレートに対する最大結合量を求めた。
【0118】
ELISAアッセイ
ポリスチレンの96−ウェルプレートを、100μl/ウェルの牛コラーゲン(1μg/μl滅菌PBS溶液)と共に37℃にて2時間前処理した。NIH3T3またはNIH3T3t細胞をDMEM+4%FBS中で80%集密度で育生し、温パックスベルセンで収穫し、洗浄し、予備処理した、かつ洗浄したコラーゲンプレート内で37℃にて一夜1×106細胞/μl、100μl/ウェルにて塗布した。プレートを穏やかに洗浄し、100μlの10%中性緩衝ホルマリンで1時聞処理した。プレートを再度PBSで洗浄し、1%BSA/PBSで37℃にて1時間遮断した。次いで、サンプルの上澄または抗体希釈物を、100μl/ウェルで、該被覆し、遮断し、かつ洗浄したプレートに加え、該プレートを37℃にて2時間インキュベートした。更にPBS洗浄工程を経た後、1:500なる希釈率のアルカリンホスファターゼ−複合山羊抗−マウスlgG Fc−特異的二次抗体を加え、プレートを37℃にて1時間インキュベートした。最後のPBS洗浄後、バイオラド(BioBad)基質(PNPP+ジエタノールアミン)を加え、室温にて10〜15分聞インキュベートした後、吸光度を405nmで測定した。
【0119】
イムノペルオキシダーゼ染色
使用したイムノペルオキシダーゼ染色法は、ヒュー(Heu)等のアビジン−ビオチンイムノペルオキシダーゼ法(J.Histochem.Cytochem.,1981,29,pp.577−580)およびホランーハンド(Horan−Hand)等(Cancer Res.,1983,43,pp.728−735)に記載の方法の改良法であった。これら文献を本発明の参考文献とする。
以下の実施例は本発明の十分な理解を助け、かつ例示のみの目的で与えられる。これらはいかなる意味においても本発明を何等限定するものではない。
【実施例】
【0120】
(実施例1)
(CHO細胞におけるC−erbB−2の発現)
(C−erbB−2ベクターの構築)
推定上のC−erbB−2たんぱく質の細胞外ドメインをコードするC−erbB−2cDNAの2.0kbフラグメントをNcoIおよびAatIIを用いオカヤマ・バーグクローニングベクターpSV7186(ファルマシア社から市販、cat#27−4948−01)から切り出し、T4DNAポリメラーゼで平滑末端化した後EcoRIリンカー(NEバイオラブス、cat#1078)とライゲーションした。このC−erbB−2cDNAはD.スラモン(Slamon)(UCLA)によって、胸にアデノカルシノーマを持つ女性の患者から始めて単離された(C−erbB−2の完全なヌクレオチド配列は図16参照)。EcoRIリンカー結合の部分C−erbB−2 cDNAをEcoRI消化したpFR400のSV40に基づく誘導体であるpFRSV(ホーウィック(Horwich)等、1985)にサブクローン化した。pFRSVを構築するためにpKSV10(ファルマシア社から市販、cat#27−4926−01)から2,6kbのPvuII/HpaIフラグメントを単離し、平滑末端化後PvuII消化したpFR400にクローン化した。pKSV−10のヌクレオチド5107番に位置するBglII部位を予め部位特異的突然変異誘発(ゾラー(Zoller)およびスミス(Smith),1987)でEcoRI部位とし、最終構築物pFRSV〕中のユニークなRIクローニング部位とする。またこのベクターは優性な選択可能マーカーDHFRを含んでおり、それをgp75C−erbB−2誘導体の増巾に使用した。pFRSV−C−erbB−2secと命名した最終構築物(図3)を大腸菌MC1061株にトランスホームし、そのプラスミドDNAをマニアチス(Maniatis)等(1982)の方法で単離した。
【0121】
(pFRSV−C−erbB−2secのトランスフェクション)
このプラスミドの発現をCOS7細胞およびリン酸カルシウム(CaPO4)トランスフェクション法(グラハム(Graham)およびヴァンデルエブ(van der Eb)1973)を用いてモニターした。トランスフェクションの24時間前細胞を100mm組織培養皿上1:10に分けた(約30〜50%集密度)0.49μl 2×HeBS中の20μg(10μl)のプラスミド構築物に0.5μlの0.25MCaCl2をゆっくり加え(オースベル(Ausubel)等編、1988参照)10秒間ボルテックスした後20〜30分間室温に放置し、DNAを沈殿化させた。それからこの沈殿をCOS7細胞の皿に加え、その細胞/沈殿混合物を37℃、5%CO2条件下15時間インキュベーションした。リン酸緩衝液(ギブコ)で細胞から沈殿を洗い落とし、完全生育培地(DMEM)中でインキュベーションしてからDNAの導入後48時間までC−erbB−2の発現5を検定した。
【0122】
CaPO4トランスフェクション法を用いることによりCHO細胞で安定したpFRSV−C−erbB−2secの発現が得られた(上述)。DNA沈殿は20μgのプラスミドDNAおよび4枚のCHO細胞の100mmディッシュを用い上述の方法で調製した。プラスミドの導入後72時間、各トランスフェクト化100mmディッシュを1:20に分け、10%の透析化ウシ胎児血清および20nM MTXを含むa−MEM(ヌクレオシドおよびヌクレオチドなし)中18日間培養した。段階的増巾を開始し、細胞を6日毎に濃度を増やしたMTX(100nM、2.5mM、12.5mMおよび50mM)に曝した。MTX中21日間の増殖後限界希釈によりMTX耐性集団をクローン化した。これらの集団の1つに由来する106個の細胞を以下のように増殖培地(上述)で希釈した:2×1:100、ついで2×1:10で希釈し96穴マイクロプレート(コスター製)のウェル当りおよそ1細胞とする。この細胞を50mM MTX中に維持しながら3週間に渡り、24穴および6穴マイクロプレートついで60mmディッシュへと連続的に拡げていった。それから放射能免疫沈殿法、免疫蛍光法、およびウエスタンブロット法を用いMTX耐性クローンのgp75発現を検定した。
【0123】
(免疫蛍光法)
抗−C−erbB−2TAb252またはその親ハイブリドーマA29の上清を用い、gp75の細胞内存在部分を検出した(上述の該MAbの調製法参照)。PBS/5mMEDTAを用いて細胞を分散させ、PBSで2回洗った後2μlの4%p−ホルムアルデヒド/PBS中37℃、10分間処理して固定した。この細胞をPBSで洗浄後0.6%n−オクチルーグルコシド/PBS中室温で5分間インキュベーションし、膜透過性としてから10μg/μlのいずれかの抗−C−erbB−2MAbを含む2%FBSおよび10mM HEPES(pH7.0)からなる1×HBSSに懸濁した。この一次抗体とのインキュベーションは氷中60分間行ない、ついでPBSで2回洗浄した。それから細胞をFITC−F(ab´)2抗マウスlgG(タゴ製、カタログ#4950)を含む100μlのHBSSに懸濁した。またトランスフェクトした細胞を非特異的マウスミエローマgIG1(リトンバイオネティクス製)で染色した。
【0124】
(放射能免疫沈殿法)
一時的トランスフェクション化または安定発現C−erbB−2sec細胞を60mmディッシュで80%集密度となるよう生育させてから、2μl無システイン培地中1時間かけて飢餓化した。ついで細胞を37℃、5%CO2条件下200mCiの35S−システイン(比活性=600Ci/mmol;アマーシャム社)で15時間かけてラベル化した。その上清を回収し1mM PMSF中−20℃で保存した。冷リン酸緩衝液で細胞を2回洗浄してからディッシュ当り0.4μlの1×RIPAバッファ〔0.15M NaCl、1%トリトンX−100(10μl/L)、1%デオキシコール酸ナトリウム(10g/L)、0.1%SDS(1g/L>、10mMトリスpH7.4、1mM PMSF〕に溶かした。その溶解物をプロテインA−セファロースを用いて清澄化した後(溶解物400μl当60μl)、10μlの溶解物をTCA沈殿して取込みをチェックした。この溶解物をサンプル当り4×106カウントで標準化し、振とう器を用い4℃で一晩抗体とインキュベートした。この上清を濃縮し、その等価量を一晩抗体とインキュベートした(振とう器を用い、4℃で)。一晩のインキュベーション後このサンプルを60μlのプロテインA−セファロースを用い4℃、30分間で沈殿化し、遠心で落とした後4回1×RIPAで洗浄した。最後の洗浄後吸着した免疫複合体を35μlの2×レムリバッファに懸濁し、5分間煮沸してから7%アクリルアミドゲルで電気泳動した。このゲルを固定化し、乾燥後一晩のフィルム露光に使用した。
【0125】
ウエスタンブロットには7%SDSアクリルアミドゲルで電気泳動し、トリス−グリシン−メタノールバッファを用いてニトロセルロースにプロッティングした。ブロッキングおよびインキュベーションは10%ミルクおよび2%BSA中で行った。検出には基質としてDABを用いたビオチン−アビジン法を使用した(0.1Mトリス、0.02%過酸化水素溶液中ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド)。このプロットは0.05Mトリス、0.25M塩化ナトリウム(NaCl)3mM EDTA、0.05%トウィーン20溶液で洗浄した。
【0126】
(CHO細胞における可溶性C−erbB−2誘導体(gp75)の検出)
先に述べたようにpFRSV−C−erbB−2sec構築物を安定にCHOd×11株に導入し、MTX濃度を段階的に増加して予期されるgp75の増巾の後に細胞溶解物および上清における抗−C−erbB−2TAb 252との反応性を検定した。先に示されたRIP分析を用い、細胞溶解物中にgp75の主要部分が検出された。gp75安定発現CHO集団の上清には実質的により少ない量が検出された。免疫蛍光法を行なうことによりこの構築物が疎水性の膜透過ドメインを含まないことからgp75が生成し、かつgp75安定トランスフェクト化CHOの上清に分泌される理由を決定した。免疫蛍光分析によって1つのトランスフェクト化CHO集団のおよそ30%および第2の集団の10%が抗−C−erbB−2TAb 252と反応性を有し、またそのたんぱく質が特定のオルガネラ;たとえばリソソームや核に局在化していないことが示された。我々は各々のgp75発現CHO集団の限界希釈クローニングによるgp75の分泌画分を増加し得たと考えている。各MTX耐性(50mM)クローンを単離し、増巾後抗−C−erbB−2TAb 252を用いてgp75発現を検定した。免疫蛍光法、RIP分析およびウエスタン分析でgp75のクローニングおよび発現の成功が確認された。CHOクローンからの分泌gp75の発現レベルは非クローン化集団と比較して約10〜20倍大きかった。
【0127】
C−erbB−2の“可溶性”誘導体がインビトロで生成する可能性を試すため細胞外エピトープを認識する抗−C−erbB−2TAb 252に対する結合の競争を行った。この実験に用いた2種の細胞は全長C−erbB−2 cDNAで安定にトランスフェクトしたNIH−3T3(キング(King)等、1985)および先に述べたgp75発現CHOの1つである。予め35S−システインを用いてラベル化したクローンから上清を回収した。競争は−定量の抗−C−erbB−2抗体TAb252、一定量のラベル化gp75−CHO上清および種々の量の3T3−C−erbB−2非ラベル化細胞溶解物を用いて行った。SDS/PAGEにより非ラベル化3T3−C−erbB−2(gp185)濃度が増加するにつれて約75kdのRIPバンドの強度は逆比例して減少することが示された(図4)。このことは“可溶型”がこのたんぱく質の膜結合型を発現する細胞型から“放出”され、かつ種々の細胞型でグリコシル化に明確な不均一性が存在することを示している。gp75発現CHO細胞の上清はその結合についてNIH3T3t溶解物と競合した(図4)。
【0128】
(実施例2)
(組換えC−erbB−2たんぱく質の精製)
(プラスミドの精製)
バクテリアの1リットル培養においてOD600=0.8のとき細胞に200μg/μlのクロラムフェニコールを加えることによリプラスミドDNAを増巾した。37℃、一晩のインキュベーション後バクテリアをペレット化し、10μlの50mMスクロース、25mMトリスーHCl(pH8.0)、10mM EDTA溶液に懸濁した。この溶液10μlの10μg/mlリゾチーム溶液を加え、室温で10分間インキュベーションした。この混合物に40mlの0.2M NaOH、1%SDS溶液をゆっくり添加し、氷中で10分間インキュベーションした。それから30mlの3M酢酸ナトリウム(pH5.0)を加え、この混合物を氷中でもう10分間インキュベーションしてからベックマンSW27または同等物を用い20,000rpm、4℃で20分間遠心した。等容量のイソプロパノールを上清に加え、室温で20分間放置して沈殿化し、その沈殿をソーバール(Sor va11)を用い室温、12,000gで30分間遠心して沈降させた。このペレットを2.4mlのTEバッファ(10mMトリスHCl、pH7.4、1mM EDTA)に懸濁し、ついで4.2g塩化セシウム(CsCl)および0.4mlエチジウムプロミド(EtBr)(10μg/ml)と混合した。このサンプルをベックマンクィック−シールポリアロマーチューブ中CsCl溶液層約8ml〈密度=1,470g/ml,n=1.3780)の下5/8×3のところにロードし、ソーバールT127中20℃、50,000rpmで18時聞遠心した。
【0129】
(イムノアフィニティーゲルの調製)
モノクローナル抗体TAb254(該MAbの調製法については上記方法のセクション参照〉を業者の指示に従がいNHS活性化アフィニティーゲル(アフィ・プレップ10;バイオラッドラブス社、リッチモンド、CA)にカップリングした。簡単に云うと精製抗体4.5μgをカップリングバッファ(20mM HEPES,pH=7.5、150mM NaCl)に交換し限外濾過で最終容積1。0mlに濃縮した。この溶液を氷冷カップリングバッファで平衡化した2.0mlのゲルに加え、このスラリーを4℃で一晩混合した。カップリング後、このゲルを焼結ガラスフィルターで回収し、カップリングバッファで洗浄した。濾液サンプル中のたんぱく質をBCAたんぱく質検定法で検定した(ピアス社、ロックフォード、IL)。濾液全てから回収された総たんぱく質は1.2μgであった。それゆえIgG3.3μgがゲルにカップリングしたと考えられる。
【0130】
残存する反応部位を2−アミノエタノールでブロックした。カップリングバッファ中100mMの2−アミノエタノール5.0ml(pH8.5)をゲルに加え、そのスラリーを室温で2時間混合した。それからこのゲルをPBSで十分に洗浄し、4℃で保存した。アジ化ナトリウムを加え(最終濃度0,02%w/v)、バクテリアの繁殖を防いだ。
【0131】
(C−erbB−2細胞外ドメインの単離および精製)
可溶性C−erbB−2細胞外ドメインたんぱく質を精製するための出発物質としてトランスフェクト化CHO上清の10倍濃縮物を用いた。濃縮上清を融解し、以下に示す最終濃度となるようにプロテアーゼインヒビターを加えた。0.2mM PMSF,2.1μg/mlアプロチニン、2.5μg/mlペプスタチンA、1.0μg/mlロイペプチン、2mM EDTA、2mM EGTA。上清のpHは1.0N水酸化ナトリウム(NaOH)で7.0に調整した。いくつかの実験では限外濾過を用い上清をさらに4倍濃縮した。さらに上清を濃縮すると濁りを生じ、この濁りはクロマトグラフィー前遠心で除去した(10,000×g、20分間)。
【0132】
この上清を0.45mmメンブレンで濾過した後254イムノアフィニティーゲル(1.0mlベッド容積〉を充填した0.5×5cmカラムにロードした。このカラムは毎分0.2mlの流速で運転した。10mMリン酸ナトリウム、pH7.0、500mM塩化ナトリウム(NaCl)で非特異的結合物質を洗い流した。洗浄は280nmの吸収ベースラインが安定するまで行った。特異的結合物質は流速0.2ml/minの100mMグリシンーHCl(pH2.5)のステップグラジェントで溶出した。各1.0mlのフラクションを採取した。その後カラムはPBSで十分に洗浄した。サンプルロード、洗浄および溶出は4℃で行った(図1)。
【0133】
カラムフラクション中のC−erbB−2たんぱく質の存在はSDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析で測定した(図2Aおよび図2B参照)。ウエスタンブロット分析の場合抗原はポリクローナル抗体92Aの1/2000希釈物(この調製法は上述の方法のセクション参照)で検出した。ピーク反応性を含むフラクションを回収し、上述のプロテアーゼインヒビターを含むPBSに対して透析した。この透析物を限外濾過で濃縮した。最終的たんぱく質収量は標準物質としてウシガンマグロブリン(バイオラドラブス社、リッチモンド、CA)を用いたBCAたんぱく質検定法で測定した。
1回のクロマトグラフィーサイクルからの総たんぱく質収量は約90μgであった。このことはIRMAで測定された10倍濃縮上清500ml中の抗原活性の約90%に相当する。同じカラムで5回のサンプルロードおよび溶出サイクルを行ったが抗原結合容量のロスはなかった。溶出物プールのSDS−PAGEは約75kDの非常に接近した2つのバンドおよび90kDの1つのマイナーバンドを示した。これらのサイズの差はたんぱく質のグリコシル化の差またはたんぱく質分解の差によるものであろう。
【0134】
(実施例3)
(イムノラジオメトリックサンドイッチアッセイ(IRMA)) ヨードゲン法を用いTAb 251および255−265を10−20mCi/μgの比活性となるよう放射能ラベルした。イムロンエリムーバル96穴プレートをPBS(pH7.2)中10μg/mlの以下のTAb:251、255−265の1つを用い、4℃一晩でコーティングした。それからこのプレートをPBSで洗浄し、ついでPBS中1%BSAを用い、37℃1時間でこれをブロックした。さらに洗浄した後、PBSで希釈した100mlのサンプル(細胞溶解物または上清、部分精製gp185またはgp75たんぱく質または血清サンプル)をTAbコーティングウェルに加え、このプレートを37℃で2〜5時問インキュベートした。プレート洗浄後ウェルに放射能ラベルしたトレーサー抗体(1%BSA/PBSで200,000cpm/100mlに調整したもの)を添加した。室温での2〜24時間のインキュベーション後、このプレートを洗浄し、各ウェルをガンマカウンターで計数した。結合率(1%B)は以下の式で計算した。
%B=(サンプルcppm/全cpm)×100
アフィニティー精製したgp75たんぱく質(トランスフェクトCHO細胞系列由来)が使用可能な検定ではシグモイド曲線関数を用いて標準曲線を作製し、そこからng/mlで表わされるgp75等価物として未知濃度を測定した。
【0135】
第2表はモノクローナル抗体を組合せるとサンドイッチ・IRMA様式でgp75たんぱく質を検出し得ることを示している。準精製gp185もgp75標準物質と同様にIRMA様式のテストを行った。興味深いことに、捕獲抗体としてTAb 251およびラベル化抗体としてTAb 255を用いたこの様式のテストでC−erbB−2発現細胞系列溶解物およびC−erbB−2オンコジーンでトランスフェクトしたNIH3T3細胞から部分精製したgp185たんぱく質からのシグナルは検出できたがC−erbB−2誘導腫瘍を有するヌードマウス血清からのシグナルまたはgp75たんぱく質は検出できなかった。第3表にまとめた競争検定法に基づくこれらのデータは最終的検定様式がヌードマウス血清中のシグナルも検出するgp75たんばく質検出に必要であることを示している。gp75同様gp185に対しても適正な感度および特異性を示すこの最終的検定様式は捕獲抗体としてTAb 259およびトレーサー抗体としてTAb 256を用いる。この検定では0.5〜1ng/mlの感度で部分精製したgp75たんぱく質が検出され、部分精製したgp185、gp185を過剰発現する細胞溶解物中およびヌードマウス血清中のシグナルが検出された(第3表にまとめた)。gp75に対する感度を示す本検定の標準曲線を図7に示す。TAb 256/259IRMA検定を用いて細胞培養上清のシグナルを定量した。C−erbB−2たんぱく質ポジティブの細胞系列はこのIRMA検定で検出および定量される抗原を放出している。第4表は、コントロールNIH3T3細胞系列の放出抗原レベルがバックグランドレベルであり、一方gp185を過剰発現し、放射能免疫沈殿法で検出されるgp75を上清中に放出する細胞系列もサンドイッチ1RMAで検出可能で22〜70ng/mlのgp75等価物として定量される抗原を放出することを示している。放出される抗原のレベルは培養物の集密度およびC−erbB−2過剰発現のレベルに依存する。
【0136】
この様式の方法を用いて全てのマウスおよびヒト血清サンプル、および細胞上清および細胞溶解物を分析、定量した。競争およびサンドイッチ検定の結果を第3表にまとめた。この結果は部分精製したgp75外部ドメインたんぱく質の検出能とC−erbB−2誘導腫瘍を有するヌードマウス由来の血清サンプルまたはヒト胸部がん患者由来の血清サンプル中の放出抗原検出能の相関関係を示している。
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
(実施例4)
(ヌードマウス腫瘍増殖および治療〉
実験を開始する前にBalb/cヌードマウスを尾の静脈から放血させた。それからこの動物に200mlのPBS中5×106〜1×107個のNIH3T3t細胞を背中中央に沿って皮下注射した(0日目)。これらの細胞のは90%以上が注射後も生存していた。細胞注射から2〜3日後(腫瘍容積が10mm3に達する前)この処理動物に2〜3日毎にPBS、100〜500μg/300mlのIgGコントロール抗体またはTAb抗体を腹腔注射した。バーニアキャリパーを用いて腫瘍の長さ、巾および高さを測定し、容積を計算することにより増殖を測定した。腫瘍は3−4日毎に測定した。1〜2週間毎に尾の静脈から放血させた。この実験は28〜31日間続けた。実験の終りに最後の放血を行ない、腫瘍を測定し、次の免疫組織学的実験に用いるためこれを切り取った。
(ヌードマウス血清中の放出抗原の検出)
【0141】
図8では、1:5血清希釈物(v/v)のIRMA検定における結合シグナルの割合を血清採取時における腫瘍の大きさに関してグラフ化した。これらの血清はc−erbB−2トランスフェクトNIH3T3細胞によって誘導される腫瘍を有する動物に由来する。この検定法は腫瘍サイズが約3000mm3になるまでシグナルが増加しつづけ、その後一定になることを検出できた。非常に強いシグナルと血清量に限りがあることから血清を1/5〜1/625(v/v)に希釈して分析した。一番高い希釈率のときでもしばしば強いシグナルが検出できた。腫瘍含有マウスをPBSまたはIgG1コントロール抗体で処理した場合IRMA検定法で検出されたシグナルは未処理のマウスと同じであった(図9)。しかし、この動物はc−erbB−2外部ドメインを認識するTAbで処理したとき、この検定法で検出可能な放出抗原量は腫瘍サイズが3000mm3となるまで厳しく抑制された。腫瘍サイズが>3000mm3のときでさえ、シグナルはテストした血清の約半分に抑制された。これらのデータはc−erbB−2の外部ドメインまたはその一部分を認識する抗体はサンドイッチIRMA検定における検定可能シグナルのレベルを抑制することを示している。
【0142】
またヌードマウス中で生育させたgpl85たんぱく質を過剰発現するヒトの乳腺または卵巣細胞系列も第5表に示したとおりc−erbB−2IRMA検定で検出可能な抗原を放出した。このシグナルは腫瘍のサイズと相関関係を示した。MCF7誘導腫瘍は小さいままであり、c−erbB−2関連抗原を放出しなかった。MDA468細胞系列は実質的な腫瘍増殖(>2000mm3)を誘導し、実質的量のEGFvを有していたがサンドイッチIRMA検定で検出可能な抗原を放出しなかった(第5表)。
【0143】
【表5】
【0144】
この競争実験を使用しエクトドメイン反応性MAbであるTAb 251の結合についてトランスフェクトしたNIH3T3細胞の溶解物と競合するgp75抗原を検出した。図13はヒトの乳腺細胞系列BT−474およびヒト卵巣細胞系列SKOV3などc−erbB−2gp185を発現する細胞系列由来の溶解物がNIH3T3t溶解物と同レベルにNIH3T3t溶解物への結合を競争し得ることを示している。トランスフェクトされていないコントロール3T3細胞は競争できなかった。同様にgp75外部たんぱく質でトランスフェクトしたCHO細胞の上清はNIH3T3t溶解物への結合を争うことが示され(図14)、このことはTAb 251がエクトドメインを認識し、かつこの結合だけでMAbのgp185に対する結合と競争するのに十分であることを確証している。
【0145】
NIH3T3tトランスフェクトした細胞によって誘導される大きな腫瘍を有するマウス由来のヌードマウス血清は図15に示されているようにNIH3T3(c−erbB−2発現細胞)溶解物への結合を競争し得る。競争能は腫瘍の大きさに相関しているが、この検定法では1/160(v/v)以下の血清希釈物について非特異的妨害から区別できるシグナルを検出するのに十分な感度は得られていない。
【0146】
(実施例5)
(ヒト腫瘍細胞培養上清における放出されたC−erbB−2の検出)
ヒト胸部腫瘍細胞系列をTl50フラスコ中で培養し、15μlの無システインおよび無メチオニン培地中400mCiの35S−システインを用いてラベルした(ダルベッコ修正イーグル培地、DME H21 4.5g/lグルコース含有)。細胞は37℃で一晩かけてラベルした。24時間後、培地を回収し、プロテアーゼインヒビター(ロイペプチン1μg/μl、ベーリンガーマンハイム社、アプロチニン2.1μg/μl、シグマ社;ペプスタチンA2.5μg/μl、ベーリンガーマンハイム社;およびPMSFO.1mM、シグマ社)を加えてからアミコンセントリプレップ30を用い400μlになるまで濃縮した。
【0147】
免疫沈殿前、プロテインA−セファロースビーズの50%スラリー100μlと4℃で4時問インキュベーションすることにより非特異的プロテインA結合を取り除いた。このビーズおよび非特異的結合物をマイクロフユージによる30秒遠心で除去し、その上清を新しいチューブに移した。それから抗体(約10μlを含む20μl)を加え、この混合物を振とう器中4℃で24時間インキュベーションした。次の日、50μlのプロテインAスラリーをこのサンプルに加え振とう器中4℃で4時間インキュベーションした。次にビーズをマイクロフユージの30秒遠心でペレット化し、氷冷RIPAバッファ(100mMトリス−HCl、pH7.5、100mMNaCl、0.5%トリトンX−100、0.5%デオキシコール酸塩、10μg/μlウシ血清アルブミン、0.2mM PMSF)で5回洗浄した。3回目と4回目の洗浄の間にチューブを交換した。最後にペレットを1%ベーターメルカプトエタノールを含むレムリサンプルバッファ50μlに懸濁した。このサンプルを75℃で5分間加熱し、マイクロフユージの30秒間遠心した後7%SDSポリアクリルアミドゲルにロードした。
【0148】
泳動は約120mA−時間で停止し、蒸留水中10%酢酸、30%メタノール溶液で45分〜1時間かけてゲルの固定を行った。蒸留水で素早く洗浄した後、そのゲルを新鮮な蒸留水250μl中に1時間浸した。このゲルに90分間かけて250μlのエンハンス(デュポン社)を浸透させ、2%グリセリン溶液で平衡化してから濾紙上で乾燥させた。この乾燥したゲルで−80℃で3日間かけてコダックX−OMAT AR−5X線フィルムを感光させた。
【0149】
(ヒト腫瘍細胞の培地上清中の可溶性C−erbB−2誘導体(gp75)の検出)
図5は種々の抗体で濃縮沈殿化したSKBR3細胞の組織培養上清のオートラジオグラムを示している。細胞外ドメインと反応するC−erbB−2抗体(A29およびTAb 252)で処理したこれらのサンプル中には明確な約75kdの単一バンドが存在した。一方、C−erbB−2C−末端ペプチドに対して作製したウサギポリクローナル抗血清またはEGFレセプターに対して特異的なモノクローナル抗体(アマーシャム社)のいずれかで処理した上清にはバンドは出現しなかった。さらにSKBR3細胞由来の75kdのバンドの特異性はC−erbB−2オンコジーンでトランスフェクトした3T3細胞由来の同一分子量の分子種を沈殿化する同モノクローナル抗体、TAb 252の能力で示された(図6)。また、MDA468の上清由来の75kdバンドをTAb 252が沈殿させないことも図6に示されている。その細胞系列は大量のEGFレセプターを発現するが検出可能なレベルのC−erbB−2は発現しない。約105kdのより大きな分子がこれらの細胞から抗EGFレセプターモノクローナル抗体によって沈殿した。
沈殿化はC−erbB−2および検出可能なEGFレセプターを発現しない上清でも行ったが(図6)、75kdおよび110kdのいずれにもバンドは検出されなかった。
【0150】
(実施例6)
(ヒト血清中に放出された抗原の検出)
連続的採血が可能な胸部がん患者の20人のヒト血清をこの検定法で試験した。この検定で健康入の血清は1.68%のバックグランドレベルを示したが(図10)、3人の患者由来の血清(患者4、7および19)は有意にバックグランドレベル以上の放出抗原レベルを示した(図11)。これらの血清のシグナルはgp75標準物質と平行して希釈率をあげるに従がい減少した(図12)。別に88種の胸部がん血清もこの検定法でテストし、そのうちの13個の血清がバックグランドより有意に高い9.9〜1511ng/μlgp75等価物のレベルでポジティブであることが示された。サンドイッチgp75IRMAで測定した放出抗原量とセントコア社から市販されている診断検定法による値には相関関係はみられなかった(第6表〉。セントコア検定法は数年間市販されてきているヒト胸部がん診断用のFDA認可の検定法である。このセントコア検定法はムチンを測定するものでIRMAgp75検定でポジティブと判定された13名の胸部がん血清の各々はこの方法でもポジティブであった。しかしIRMAgp75検定は各患者でわずかに異なるgp75プロフィールを示すがムチンレベルのセントコア検定では各患者について差はでてこない。gp75レベルの差は患者ごとの病状の差を示している。
【0151】
(結論)
ハイブリッド微生物、組換えDNA分子およびたんぱく質/ポリペプチドおよび本発明のこれらのものに適用し得る方法などは先に示した好ましい態様物で述べたものに限定されないことを理解すべきである。ハイブリッド生物、組換えDNA分子およびたんぱく質/ポリペプチドは生産の過程、またはその後に従来法によってより利点の多いものに修正し得る。たとえばC−erbB−2配列の転写により有効なコントロール配列を使用する、望ましくない産物の合成を減少させる変異も導入する、宿主内のプロテアーゼレベルを減少させる、C−erbB−2配列を含む熱誘導可能なライソジェンを宿主染色体に組込む、あるいは細胞中の配列コピー数を増加させるか、または目的とするたんぱく質/ポリペプチドを生産する上で細胞の生産性を増加するその他の修正および操作を行ない得る。 これまで述べてきた事項に加えて本発明に種々の修正が可能なことはこれまでの説明から当業者にとって明白であろう。このような修正は特許請求の範囲内にあると考える。
【0152】
【表6】
【0153】
概 要
C−erbB−2オンコジーンを過剰発現する悪性腫瘍を同定するための方法および組成物が提供される。悪性腫瘍の診断および予防に有用な方法で腫瘍を有する哺乳動物の生物学的液体中のC−erbB−2の外部ドメイン、糖たんぱく質gp75の検出およびgp75レベルの定量を行う方法が提供される。
さらにC−erbB−2オンコジーン(gp75遺伝子)の外部ドメインDNA配列またはそのフラグメントによってコードされ、組換え的、合成的および他の生物学的に生産される新しいたんぱく質およびポリペプチドが公開される。このようなgp75たんぱく質は単独で、または化学療法試薬と組合せてがん治療に用いられるワクチンとして有用である。また診断や治療に有用なgp75たんぱく質に対する抗体も公開される。さらに本発明の検定法を行うテストキットも公開される。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】CHO細胞から発現した組換C−erbB−2細胞外ドメイン蛋白質(gp75)のイムノアフィニティークロマトグラムを示す。
【図2A】図1に示した組換的に生産したC−erbB−2 gp75のイムノアフィニティーカラムフラクションのSDS−PAGEを示す。
【図2B】E.coliで発現した組換フラグメントgp185に対して生起させたウサギポリクローナル抗体(抗体92A)を使用して膜をプローブ分析したウェスタンブロットである。
【図3】クローニングベクターpFRSVの部分制限地図である。
【図4】各レーンに負荷したSDS−PAGEである。
【図5】組織培養上清からのgp75の放射活性免疫沈降を示す。
【図6】c−erbB−2陽性及び陰性細胞系からの上清の放射活性免疫沈降を示す。
【図7】TAb 259を捕獲抗体として、TAb 256を放射活性標識第2抗体として使用したサンドウィッチIRMAアッセイにおける、部分的に精製したgp185及びgp75タンパク質の標準曲線を示す。
【図8】TAb 259/256サンドウィッチIRMAアッセイで試験した場合における、c−erbB−2形質移入NIH3T3細胞により生起された腫瘍を有するヌードマウス血清中に出現した抗原の検出を示す。
【図9】c−erbB−2遺伝子により形質移入されたNIH3T3細胞により生起された腫瘍を有するマウスから得られTAb 252又はPBS又はlgG1により処理されTAb 259/256サンドウィッチ1RMAで試験されたヌードマウス血清の分析を示す。
【図10】1:5の希釈度(容量/容量)において、TAb 259/256サンドウィッチIRMAにおける、正常な志願者からの12人の血清に対する試験結果を示す。
【図11】1:5の希釈度において、TAB 259/256IRMA検定における、20人の乳癌患者からの連続的な出血に対する試験結果を示す。
【図12】TAb 259/256IRMA検定における、乳癌患者からの3人の血清をgp75標準および正常な人の血清と比較した滴定曲線を示す。
【図13】C−erbB−2遣伝子で形質移入(トランスフェクション)されるNIH3T3細胞から溶解物へのTAb 251の結合に拮抗するいろいろな細胞溶解液の能力が試験された拮抗検定結果を示す。
【図14】C−erbB−2遺伝子のgp75部分でトランスフェクションされたCHO細胞系からの上澄液がNIH3T3t細胞から溶解物へのTAb 251の結合と拮抗する拮抗検定に対する結果を示す。
【図15】C−erbB−2でトランスフェクションされたNIH3T3細胞によって誘導された動物が持つ腫瘍からのヌードマウスの血清はNIH3T3t細胞から溶解物へのTAb 251の結合と拮抗し得ることを表わす試験結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C−erbB−2たんぱく質(gp75)の外部ドメインまたは前記gp75の1又はそれ以上の領域をコードするDNA配列を含む組換えDNA分子であって、前記DNA配列が前記DNA分子中の発現コントロール配列に機能的に結合している組換えDNA分子。
【請求項2】
血清学的に活性な、すなわち抗原性および/または免疫原性を有する1又はそれ以上の部分を含む前記gp75の該1又はそれ以上の部分をコードする請求の範囲1記載の組換えDNA分子。
【請求項3】
請求の範囲1記載の組換えDNA分子で形質転換した原核性または真核性の単細胞宿主。
【請求項4】
真核性生物である請求の範囲3記載の単細胞宿主。
【請求項5】
前記組換えDNA分子が第1および第2の制限エンドヌクレアーゼ部位を含む組換えクローニングベヒクルであり、前記DNA配列が該第1および第2の制限部位の間に挿入されている請求の範囲3記載の単細胞宿主。
【請求項6】
大腸菌、シュードモナス、バチルス、イースト、他の菌類、および培養した動物、昆虫および植物細胞からなる群から選ぼれる請求の範囲3記載の単細胞宿主。
【請求項7】
イーストおよび培養した哺乳類細胞からなる群から選ばれる請求の範囲4記載の単細胞宿主。
【請求項8】
培養したモンキー細胞およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞からなる群から選ばれた哺乳類細胞である請求の範囲7記載の単細胞宿主。
【請求項9】
モンキー細胞が細胞系列COS7に由来し、またCHO細胞が細胞系列CHO−(dxb11)に由来する請求の範囲8記載の単細胞宿主。
【請求項10】
プラスミドpFRSV−C−erbB−2secである請求の範囲1記載の組換えDNA分子。
【請求項11】
gp75のアミノ酸配列の少なくとも1部を有するたんぱく質またはポリペプチドの原核または真核性宿主細胞における発現を助ける目的で使用する精製・単離されたDNA分子で、前記DNAが以下の(a)〜(b)から選ばれるDNA分子。
(a)gp75またはそのフラグメントをコードするDNA分子、
(b)(a)のDNA配列にハイプリダイズするDNA分子またはそのフラグメント、および
(c)遺伝子コードの縮退がなければ(a)および(b)で定義されたDNAにハイブリダイズするDNA分子、
【請求項12】
宿主が真核性生物である請求の範囲11記載の精製単離されたDNA分子。
【請求項13】
組換えgp75たんぱく質およびポリペプチド。
【請求項14】
グリコシル化された請求の範囲13記載の組換えたんぱく質およびポリペプチド。
【請求項15】
血清学的に活性な、すなわち免疫原性および、または抗原性を有する請求の範囲14記載の組換えgp75たんぱく質およびポリペプチド。
【請求項16】
実質的に純粋なgp75たんぱく質およびその全てのポリペプチド部分。
【請求項17】
請求の範囲14記載の組換えgp75たんぱく質およびポリペプチドに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体。
【請求項18】
請求の範囲17記載の抗体を投与することによる哺乳動物の悪性腫瘍の治療方法。
【請求項19】
以下の工程を含むgp75たんぱく質および/またはポリペプチドの産生方法。
a)単細胞宿主を請求の範囲1記載の組換えDNA分子で形質転換すること、
b)該単細胞宿主を培養し、該gp75たんぱく質および、またはポリペプチドを発現させること、及び
c)該gp75たんぱく質および/またはポリペプチドを抽出および単離すること。
【請求項20】
哺乳動物の体液をgp75の存在について試験する方法であって、gp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対する抗体を含む組成物を哺乳動物の体液サンプルに接触させ、該サンプル中のたんぱく質への該抗体の結合を測定することを含む方法。
【請求項21】
哺乳動物の体液が血清、精液、血漿、胸滲出物、尿唾液および脊髄液からなる群から選ばれるヒトの体液である請求の範囲20記載の方法。
【請求項22】
ヒトの体液が血清、血漿および精液からなる群から選ばれる請求の範囲21記載の方法。
【請求項23】
ヒトの体液が血清または血漿である請求の範囲22記載の方法。
【請求項24】
ヒトの体液中のgp75を検出するために免疫検定法を用いるC−erbB−2増幅に関連する悪性疾患の診断方法。
【請求項25】
悪性疾患が分泌機能を有する器官の腫瘍である請求の範囲24記載の方法。
【請求項26】
悪性疾患が上皮起源の腫瘍である請求の範囲24記載の方法。
【請求項27】
悪性疾患が唾液腺、胸腺、胸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、胃腸、尿道および肝臓からなる群から選ばれる組織の腫瘍に関するものである請求の範囲24記載の方法。
【請求項28】
組織が胸部、卵巣および前立腺からなる群から選ばれる請求の範囲27記載の方法。
【請求項29】
悪性疾患が胸部アデノカルシノーマおよび、または卵巣アデノカルシノーマである請求の範囲24記載の方法。
【請求項30】
1つの抗体はヒトのがん細胞系列上の本来のgp75外部ドメインに対するものであり、かつ別の抗体はNIH3T3t細胞系列上の本来のgp75外部ドメインに対するものを用いるサンドイッチ検定法を使用することを含む請求の範囲20記載の方法。
【請求項31】
アビジン/ピオチン法を用いて増巾し得ないか、もしくは増巾し得るサンドイッチ検定法、イライザ検定法またはこれらと等価な検定法の使用を含む請求の範囲20記載の方法。
【請求項32】
請求の範囲17記載の抗体を使用する哺乳動物体液中のgp75の存在を測定する方法。
【請求項33】
ヒトの体液サンプル中の抗原がgp75を認識する抗体への結合に関してラベル化したgp75たんぱく質またはそのポリペプチドと競合する請求の範囲20記載の方法。
【請求項34】
サンドイッチ法をgp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対する抗体を用いて行う請求の範囲33記載の方法。
【請求項35】
ヒトの体液中のgp75を検定するテストキットで、以下のa)及びb)を含むキット。
a)gp75たんぱく質および/またはポリペプチドに対する抗体、および/またはC−erbB−2を発現する細胞全体に対する抗体、および
b)検出手段
【請求項36】
ヒトの体液中のgp75たんぱく質および、またはポリペプチドを検定するテストキットで、以下のa)及びb)を含むキット。
a)gp75たんぱく質および、またはポリペプチドおよび、またはgp75たんぱく質、および、またはポリペプチドに対する抗イディオタイプ抗体、および
b)検出手段
【請求項37】
生理学的に許容可能で無毒のべヒクル中に分散した1つ以上の実質的に純粋なgp75たんぱく質および、またはポリペプチドの免疫原的量、すなわちC−erbB−2の増幅に関する悪性疾患に対してヒトを免疫化するのに有効な量を含むワクチン。
【請求項38】
生理学的に許容可能で無毒なべヒクル中に分散した表面にgp75を発現する細胞膜の免疫原的量;すなわちC−erbB−2の増巾に関する悪性疾患に対してヒトを免疫化するのに有効な量を含むワクチン。
【請求項39】
細胞膜がC−erbB−2を過剰生産するようトランスホームした細胞またはヒトのがん細胞系列に由来する請求の範囲38記載のワクチン。
【請求項40】
細胞膜が内部ドメインを切除した形のC−erbB−2を過剰発現するようトランスホームした組換え宿主に由来する請求の範囲39記載のワクチン。
【請求項41】
gp75たんぱく質および、またはポリペプチドとそれに結合するヒトには免疫原性を示さずかつヒト体液中の抗体とは一般に反応しないたんぱく質またはポリペプチドのアミノ酸配列を含む融合たんぱく質またはポリペプチド。
【請求項42】
gp75をコードするDNA配列を含む精製、単離したDNA分子。
【請求項43】
合成により調製したgp75たんぱく質およびポリペプチド。
【請求項44】
悪性疾患のスクリーニング悪性疾患の診断、悪性疾患患者の病状のモニターあるいは悪性疾患の経過の予知を行なう方法で、gp75たんぱく質および、またはポリペプチド、gp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対する抗体、およびこれらの検出レベルに相関するC−erbB−2に対するリガンドのレベルの検定および定量、および長期生存の可能性または再発の時期に関する患者の分類を含む方法。
【請求項45】
gp75たんぱく質/ポリペプチド、それらに対する抗体および、またはヒト体液におけるC−erbB−2に対するリガンドの存在を転移の指標とする腫瘍切除手術後に行なう請求の範囲44記載の方法。
【請求項46】
生理学的に許容可能で無毒なべヒクル中に分散した治療効果量のgp75たんぱく質および、またはポリペプチドの投与を含むC−erbB−2の増幅に関連する悪性疾患の治療方法。
【請求項47】
請求の範囲46記載の方法で、さらにgp75たんぱく質および、またはポリペプチドの投与と合せて治療効果量の化学療法試薬の投与を含む方法。
【請求項48】
化学療法試薬がアルキル化試薬である請求の範囲47記載の方法。
【請求項49】
化学療法試薬がシスプラチン、カルボプラチン、およびメファランからなる群から選ばれる請求の範囲47記載の方法。
【請求項50】
生理学的に許容可能で無毒のべヒクル中に分散したgp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対するモノクローナル抗体に対する治療効果量の抗イディオタイプ抗体の投与を含むC−erbB−2の増幅に関する悪性疾患の治療方法。
【請求項51】
gp75たんぱく質および、またはポリペプチドをgp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対するモノクローナル抗体に対する抗イディオタイプ抗体で置き換える請求の範囲33記載の方法。
【請求項52】
SDS−PAGEによる同定で約75キロダルトンの分子量を有するC−erbB−2たんぱく質のエクトドメインである実質的に純粋な糖たんぱく質またはその一部分。
【請求項53】
組換えDNA分子法で生産される請求の範囲52記載の糖たんぱく質。
【請求項54】
請求の範囲52記載の糖たんぱく質で、さらにグリコシル化され、かつSDS−PAGEによる同定で約90キロダルトンの分子量を有する糖たんぱく質。
【請求項55】
ヒトの体液中約75キロダルトンの分子量を有するC−erbB−2外部ドメイン糖たんぱく質を過剰発現するヒト腫瘍細胞の存在を検出する診断方法で、以下のa)及びb)を含む方法。
a)該体液を該糖たんぱく質に特異性を有する抗体と接触させること、および
b)該抗体に結合した糖たんぱく質の量を検出すること、ここで、正常細胞の結合レベルを越えた結合レベルの増加はC−erbB−2外部ドメインを過剰発現する腫瘍細胞の存在を示すものである。
【請求項56】
抗体がモノクローナル抗体である請求の範囲55記載の方法。
【請求項57】
診断法がサンドイッチ検定法、競争検定法、粒子検定法、放射能測定検定法、酵素結合免疫吸着検定法、放射能免疫沈殿検定法または螢光検定法の様式をとる請求の範囲55記載の方法。
【請求項58】
体液が血清、血漿、精液、胸部滲出液、唾液、尿または脊髄液である請求の範囲55記載の方法。
【請求項59】
がん細胞を有する疑いのあるヒト宿主の治療方法で、約75キロダルトンのC−erbB−2エクトドメイン糖たんぱく質に対する治療効果量の抗体を投与することを含む方法。
【請求項60】
gp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対する抗体に対する抗イディオタイプ抗体。
【請求項61】
gp75たんぱく質および/またはポリペプチドを用いたヒト体液中のC−erbB−2に対するリガンドの検出ならびに定量方法、
【請求項62】
gp75たんぱく質および/またはポリペプチドを用いたヒト体液中のgp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対する抗体の検出ならびに定量方法。
【請求項63】
gp75たんぱく質およびポリペプチドを用いたC−erbB−2に対するリガンドの精製方法。
【請求項64】
C−erbB−2発現細飽の表面上にある完全gp75に対する抗体とは交叉反応しない請求の範囲17記載の抗体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の体液を可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質の存在についてインビトロにおいて試験する方法であって、可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体を含む組成物を哺乳動物の体液サンプルに接触させ、該サンプル中のタンパク質への該抗体の結合を測定することを含み、前記抗体が細胞表面に発現されたC-erbB-2のインタクト細胞外ドメインに対して産生された抗体である、上記方法。
【請求項2】
哺乳動物の体液を可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質の存在についてインビトロにおいて試験する方法であって、可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体を含む組成物を哺乳動物の体液サンプルに接触させ、該サンプル中のタンパク質への該抗体の結合を測定することを含み、前記抗体が、組換え技術により、合成によりまたは他の生物学的方法により製造されたC-erbB-2細胞外ドメインに対して産生された抗体である、上記方法。
【請求項3】
ヒトの体液中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質を検定するテストキットであって、以下の(a)および(b)を含むキット:
(a)可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体、および
(b)前記抗体の前記可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質への結合を検出する検出手段、
ここで前記抗体は細胞表面に発現されたC-erbB-2のインタクト細胞外ドメインに対して産生された抗体である。
【請求項4】
ヒトの体液中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質を検定するテストキットであって、以下の(a)および(b)を含むキット:
(a)可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体、および
(b)前記抗体の前記可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質への結合を検出する検出手段、
ここで前記抗体は組換え技術により、合成によりまたは他の生物学的方法により製造されたC-erbB-2細胞外ドメインに対して産生された抗体である。
【請求項5】
ヒトの体液中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質を検定するテストキットであって、以下の(a)および(b)を含むキット:
(a)細胞表面に発現されたC-erbB-2のインタクト外部ドメインに対して産生された抗体であって、スクリーニングアッセイにより可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有することが見出された抗体、および
(b)前記抗体が前記可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質へ結合するか否かを検出する検出手段、
【請求項6】
ヒトの体液中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質を検定するテストキットであって、以下の(a)および(b)を含むキット:
(a)一以上のC-erbB-2外部ドメインエピトープを含むラベル化したタンパク質/ポリペプチドであって、組換え技術により、合成によりまたは他の生物学的方法により製造されたタンパク質/ポリペプチド、および
(b)(i)前記ラベル化したタンパク質/ポリペプチドと、
(ii)ヒトの体液中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質の
制限量の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体への競合的結合を検出する検出手段、
ここで前記抗体は細胞表面に発現されたC-erB-2のインタクト細胞外ドメインに対して産生された抗体であるか、組換え技術により、合成によりまたは生物学的方法により、製造されたC-erbB-2細胞外ドメインに対して産生された抗体である。
【請求項7】
患者体液中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質を検出及び定量することにより患者におけるC-erbB-2タンパク質を過剰発現するヒト腫瘍細胞の存在をインビトロにおいて検出する方法であって、以下の(a)および(b)を含む方法:
(a)体液試料を可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体と接触させること、および
(b)該抗体に結合した可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質の量を検出すること、ここで、正常体液中の結合レベルを超えた結合レベルの増加はC-erbB-2を過剰発現する腫瘍細胞の存在を示すものである。
ここで前記抗体は細胞表面に発現されたC-erB-2のインタクト細胞外ドメインに対して産生された抗体であるか、組換え技術により、合成によりまたは生物学的方法により製造されたC-erbB-2細胞外ドメインに対して産生された抗体である。
【請求項8】
ヒトの体液中のC-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体を検出及び定量するインビトロ検定方法であって、C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質/ポリペプチドまたは一以上のC-erB-2細胞外ドメインエピトープを含むタンパク質/ポリペプチドを用いること、及び前記C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質/ポリペプチドまたは一以上のC-erB-2細胞外ドメインエピトープを含むタンパク質/ポリペプチドが組換え技術により、合成によりまたは生物学的方法により製造されたものである、上記方法。
【請求項9】
前新生物形成性/新生物形成性疾患の患者の体液試料中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質のレベルの変化をインビトロにおいて検出する方法であって、前記患者から経時的に採取した体液試料中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質のレベルを免疫学的に検出及び定量し、それらのレベルを比較して変化を検出する、上記方法。
【請求項10】
前新生物形成性/新生物形成性疾患の患者の体液試料中のC-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性のレベルの変化をインビトロにおいて検出する方法であって、C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質/ポリペプチドまたは一以上のC-erB-2細胞外ドメインエピトープを含むタンパク質/ポリペプチドを用いて、前記患者から経時的に採取した体液試料中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質のレベルを免疫学的に検出及び定量し、それらのレベルを比較して変化を検出することを含み、前記C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質/ポリペプチドまたは一以上のC-erB-2細胞外ドメインエピトープを含むタンパク質/ポリペプチドが組換え技術により、合成によりまたは生物学的方法により製造されたものである、上記方法。
【請求項11】
ガン治療後に、あるいは患者から腫瘍を除去する手術後に行う、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
方法が、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、ELISA、RIA、ウェスタンブロット、粒子アッセイ、放射測定アッセイまたは蛍光分析アッセイの形式である、請求項1〜3及び8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
細胞表面上に発現されたC-erbB-2のインタクト細胞外ドメインに対し産生された抗体の使用を含み、前記抗体がスクリーニングアッセイにより可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有することが見出された抗体である、請求項1、7、9、11及び12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
検定が、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、ELISA、RIA、ウェスタンブロット、粒子アッセイ、放射測定アッセイまたは蛍光分析アッセイの形式で行われる、請求項3〜6のいずれか一項に記載のキット。
【請求項15】
細胞表面上に発現されたC-erbB-2のインタクト細胞外ドメインに対し産生された抗体の使用を含み、前記抗体がスクリーニングアッセイにより可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有することが見出された抗体である、請求項3または6に記載のキット。
【請求項1】
C−erbB−2たんぱく質(gp75)の外部ドメインまたは前記gp75の1又はそれ以上の領域をコードするDNA配列を含む組換えDNA分子であって、前記DNA配列が前記DNA分子中の発現コントロール配列に機能的に結合している組換えDNA分子。
【請求項2】
血清学的に活性な、すなわち抗原性および/または免疫原性を有する1又はそれ以上の部分を含む前記gp75の該1又はそれ以上の部分をコードする請求の範囲1記載の組換えDNA分子。
【請求項3】
請求の範囲1記載の組換えDNA分子で形質転換した原核性または真核性の単細胞宿主。
【請求項4】
真核性生物である請求の範囲3記載の単細胞宿主。
【請求項5】
前記組換えDNA分子が第1および第2の制限エンドヌクレアーゼ部位を含む組換えクローニングベヒクルであり、前記DNA配列が該第1および第2の制限部位の間に挿入されている請求の範囲3記載の単細胞宿主。
【請求項6】
大腸菌、シュードモナス、バチルス、イースト、他の菌類、および培養した動物、昆虫および植物細胞からなる群から選ぼれる請求の範囲3記載の単細胞宿主。
【請求項7】
イーストおよび培養した哺乳類細胞からなる群から選ばれる請求の範囲4記載の単細胞宿主。
【請求項8】
培養したモンキー細胞およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞からなる群から選ばれた哺乳類細胞である請求の範囲7記載の単細胞宿主。
【請求項9】
モンキー細胞が細胞系列COS7に由来し、またCHO細胞が細胞系列CHO−(dxb11)に由来する請求の範囲8記載の単細胞宿主。
【請求項10】
プラスミドpFRSV−C−erbB−2secである請求の範囲1記載の組換えDNA分子。
【請求項11】
gp75のアミノ酸配列の少なくとも1部を有するたんぱく質またはポリペプチドの原核または真核性宿主細胞における発現を助ける目的で使用する精製・単離されたDNA分子で、前記DNAが以下の(a)〜(b)から選ばれるDNA分子。
(a)gp75またはそのフラグメントをコードするDNA分子、
(b)(a)のDNA配列にハイプリダイズするDNA分子またはそのフラグメント、および
(c)遺伝子コードの縮退がなければ(a)および(b)で定義されたDNAにハイブリダイズするDNA分子、
【請求項12】
宿主が真核性生物である請求の範囲11記載の精製単離されたDNA分子。
【請求項13】
組換えgp75たんぱく質およびポリペプチド。
【請求項14】
グリコシル化された請求の範囲13記載の組換えたんぱく質およびポリペプチド。
【請求項15】
血清学的に活性な、すなわち免疫原性および、または抗原性を有する請求の範囲14記載の組換えgp75たんぱく質およびポリペプチド。
【請求項16】
実質的に純粋なgp75たんぱく質およびその全てのポリペプチド部分。
【請求項17】
請求の範囲14記載の組換えgp75たんぱく質およびポリペプチドに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体。
【請求項18】
請求の範囲17記載の抗体を投与することによる哺乳動物の悪性腫瘍の治療方法。
【請求項19】
以下の工程を含むgp75たんぱく質および/またはポリペプチドの産生方法。
a)単細胞宿主を請求の範囲1記載の組換えDNA分子で形質転換すること、
b)該単細胞宿主を培養し、該gp75たんぱく質および、またはポリペプチドを発現させること、及び
c)該gp75たんぱく質および/またはポリペプチドを抽出および単離すること。
【請求項20】
哺乳動物の体液をgp75の存在について試験する方法であって、gp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対する抗体を含む組成物を哺乳動物の体液サンプルに接触させ、該サンプル中のたんぱく質への該抗体の結合を測定することを含む方法。
【請求項21】
哺乳動物の体液が血清、精液、血漿、胸滲出物、尿唾液および脊髄液からなる群から選ばれるヒトの体液である請求の範囲20記載の方法。
【請求項22】
ヒトの体液が血清、血漿および精液からなる群から選ばれる請求の範囲21記載の方法。
【請求項23】
ヒトの体液が血清または血漿である請求の範囲22記載の方法。
【請求項24】
ヒトの体液中のgp75を検出するために免疫検定法を用いるC−erbB−2増幅に関連する悪性疾患の診断方法。
【請求項25】
悪性疾患が分泌機能を有する器官の腫瘍である請求の範囲24記載の方法。
【請求項26】
悪性疾患が上皮起源の腫瘍である請求の範囲24記載の方法。
【請求項27】
悪性疾患が唾液腺、胸腺、胸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、胃腸、尿道および肝臓からなる群から選ばれる組織の腫瘍に関するものである請求の範囲24記載の方法。
【請求項28】
組織が胸部、卵巣および前立腺からなる群から選ばれる請求の範囲27記載の方法。
【請求項29】
悪性疾患が胸部アデノカルシノーマおよび、または卵巣アデノカルシノーマである請求の範囲24記載の方法。
【請求項30】
1つの抗体はヒトのがん細胞系列上の本来のgp75外部ドメインに対するものであり、かつ別の抗体はNIH3T3t細胞系列上の本来のgp75外部ドメインに対するものを用いるサンドイッチ検定法を使用することを含む請求の範囲20記載の方法。
【請求項31】
アビジン/ピオチン法を用いて増巾し得ないか、もしくは増巾し得るサンドイッチ検定法、イライザ検定法またはこれらと等価な検定法の使用を含む請求の範囲20記載の方法。
【請求項32】
請求の範囲17記載の抗体を使用する哺乳動物体液中のgp75の存在を測定する方法。
【請求項33】
ヒトの体液サンプル中の抗原がgp75を認識する抗体への結合に関してラベル化したgp75たんぱく質またはそのポリペプチドと競合する請求の範囲20記載の方法。
【請求項34】
サンドイッチ法をgp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対する抗体を用いて行う請求の範囲33記載の方法。
【請求項35】
ヒトの体液中のgp75を検定するテストキットで、以下のa)及びb)を含むキット。
a)gp75たんぱく質および/またはポリペプチドに対する抗体、および/またはC−erbB−2を発現する細胞全体に対する抗体、および
b)検出手段
【請求項36】
ヒトの体液中のgp75たんぱく質および、またはポリペプチドを検定するテストキットで、以下のa)及びb)を含むキット。
a)gp75たんぱく質および、またはポリペプチドおよび、またはgp75たんぱく質、および、またはポリペプチドに対する抗イディオタイプ抗体、および
b)検出手段
【請求項37】
生理学的に許容可能で無毒のべヒクル中に分散した1つ以上の実質的に純粋なgp75たんぱく質および、またはポリペプチドの免疫原的量、すなわちC−erbB−2の増幅に関する悪性疾患に対してヒトを免疫化するのに有効な量を含むワクチン。
【請求項38】
生理学的に許容可能で無毒なべヒクル中に分散した表面にgp75を発現する細胞膜の免疫原的量;すなわちC−erbB−2の増巾に関する悪性疾患に対してヒトを免疫化するのに有効な量を含むワクチン。
【請求項39】
細胞膜がC−erbB−2を過剰生産するようトランスホームした細胞またはヒトのがん細胞系列に由来する請求の範囲38記載のワクチン。
【請求項40】
細胞膜が内部ドメインを切除した形のC−erbB−2を過剰発現するようトランスホームした組換え宿主に由来する請求の範囲39記載のワクチン。
【請求項41】
gp75たんぱく質および、またはポリペプチドとそれに結合するヒトには免疫原性を示さずかつヒト体液中の抗体とは一般に反応しないたんぱく質またはポリペプチドのアミノ酸配列を含む融合たんぱく質またはポリペプチド。
【請求項42】
gp75をコードするDNA配列を含む精製、単離したDNA分子。
【請求項43】
合成により調製したgp75たんぱく質およびポリペプチド。
【請求項44】
悪性疾患のスクリーニング悪性疾患の診断、悪性疾患患者の病状のモニターあるいは悪性疾患の経過の予知を行なう方法で、gp75たんぱく質および、またはポリペプチド、gp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対する抗体、およびこれらの検出レベルに相関するC−erbB−2に対するリガンドのレベルの検定および定量、および長期生存の可能性または再発の時期に関する患者の分類を含む方法。
【請求項45】
gp75たんぱく質/ポリペプチド、それらに対する抗体および、またはヒト体液におけるC−erbB−2に対するリガンドの存在を転移の指標とする腫瘍切除手術後に行なう請求の範囲44記載の方法。
【請求項46】
生理学的に許容可能で無毒なべヒクル中に分散した治療効果量のgp75たんぱく質および、またはポリペプチドの投与を含むC−erbB−2の増幅に関連する悪性疾患の治療方法。
【請求項47】
請求の範囲46記載の方法で、さらにgp75たんぱく質および、またはポリペプチドの投与と合せて治療効果量の化学療法試薬の投与を含む方法。
【請求項48】
化学療法試薬がアルキル化試薬である請求の範囲47記載の方法。
【請求項49】
化学療法試薬がシスプラチン、カルボプラチン、およびメファランからなる群から選ばれる請求の範囲47記載の方法。
【請求項50】
生理学的に許容可能で無毒のべヒクル中に分散したgp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対するモノクローナル抗体に対する治療効果量の抗イディオタイプ抗体の投与を含むC−erbB−2の増幅に関する悪性疾患の治療方法。
【請求項51】
gp75たんぱく質および、またはポリペプチドをgp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対するモノクローナル抗体に対する抗イディオタイプ抗体で置き換える請求の範囲33記載の方法。
【請求項52】
SDS−PAGEによる同定で約75キロダルトンの分子量を有するC−erbB−2たんぱく質のエクトドメインである実質的に純粋な糖たんぱく質またはその一部分。
【請求項53】
組換えDNA分子法で生産される請求の範囲52記載の糖たんぱく質。
【請求項54】
請求の範囲52記載の糖たんぱく質で、さらにグリコシル化され、かつSDS−PAGEによる同定で約90キロダルトンの分子量を有する糖たんぱく質。
【請求項55】
ヒトの体液中約75キロダルトンの分子量を有するC−erbB−2外部ドメイン糖たんぱく質を過剰発現するヒト腫瘍細胞の存在を検出する診断方法で、以下のa)及びb)を含む方法。
a)該体液を該糖たんぱく質に特異性を有する抗体と接触させること、および
b)該抗体に結合した糖たんぱく質の量を検出すること、ここで、正常細胞の結合レベルを越えた結合レベルの増加はC−erbB−2外部ドメインを過剰発現する腫瘍細胞の存在を示すものである。
【請求項56】
抗体がモノクローナル抗体である請求の範囲55記載の方法。
【請求項57】
診断法がサンドイッチ検定法、競争検定法、粒子検定法、放射能測定検定法、酵素結合免疫吸着検定法、放射能免疫沈殿検定法または螢光検定法の様式をとる請求の範囲55記載の方法。
【請求項58】
体液が血清、血漿、精液、胸部滲出液、唾液、尿または脊髄液である請求の範囲55記載の方法。
【請求項59】
がん細胞を有する疑いのあるヒト宿主の治療方法で、約75キロダルトンのC−erbB−2エクトドメイン糖たんぱく質に対する治療効果量の抗体を投与することを含む方法。
【請求項60】
gp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対する抗体に対する抗イディオタイプ抗体。
【請求項61】
gp75たんぱく質および/またはポリペプチドを用いたヒト体液中のC−erbB−2に対するリガンドの検出ならびに定量方法、
【請求項62】
gp75たんぱく質および/またはポリペプチドを用いたヒト体液中のgp75たんぱく質および、またはポリペプチドに対する抗体の検出ならびに定量方法。
【請求項63】
gp75たんぱく質およびポリペプチドを用いたC−erbB−2に対するリガンドの精製方法。
【請求項64】
C−erbB−2発現細飽の表面上にある完全gp75に対する抗体とは交叉反応しない請求の範囲17記載の抗体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の体液を可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質の存在についてインビトロにおいて試験する方法であって、可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体を含む組成物を哺乳動物の体液サンプルに接触させ、該サンプル中のタンパク質への該抗体の結合を測定することを含み、前記抗体が細胞表面に発現されたC-erbB-2のインタクト細胞外ドメインに対して産生された抗体である、上記方法。
【請求項2】
哺乳動物の体液を可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質の存在についてインビトロにおいて試験する方法であって、可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体を含む組成物を哺乳動物の体液サンプルに接触させ、該サンプル中のタンパク質への該抗体の結合を測定することを含み、前記抗体が、組換え技術により、合成によりまたは他の生物学的方法により製造されたC-erbB-2細胞外ドメインに対して産生された抗体である、上記方法。
【請求項3】
ヒトの体液中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質を検定するテストキットであって、以下の(a)および(b)を含むキット:
(a)可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体、および
(b)前記抗体の前記可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質への結合を検出する検出手段、
ここで前記抗体は細胞表面に発現されたC-erbB-2のインタクト細胞外ドメインに対して産生された抗体である。
【請求項4】
ヒトの体液中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質を検定するテストキットであって、以下の(a)および(b)を含むキット:
(a)可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体、および
(b)前記抗体の前記可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質への結合を検出する検出手段、
ここで前記抗体は組換え技術により、合成によりまたは他の生物学的方法により製造されたC-erbB-2細胞外ドメインに対して産生された抗体である。
【請求項5】
ヒトの体液中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質を検定するテストキットであって、以下の(a)および(b)を含むキット:
(a)細胞表面に発現されたC-erbB-2のインタクト外部ドメインに対して産生された抗体であって、スクリーニングアッセイにより可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有することが見出された抗体、および
(b)前記抗体が前記可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質へ結合するか否かを検出する検出手段、
【請求項6】
ヒトの体液中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質を検定するテストキットであって、以下の(a)および(b)を含むキット:
(a)一以上のC-erbB-2外部ドメインエピトープを含むラベル化したタンパク質/ポリペプチドであって、組換え技術により、合成によりまたは他の生物学的方法により製造されたタンパク質/ポリペプチド、および
(b)(i)前記ラベル化したタンパク質/ポリペプチドと、
(ii)ヒトの体液中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質の
制限量の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体への競合的結合を検出する検出手段、
ここで前記抗体は細胞表面に発現されたC-erB-2のインタクト細胞外ドメインに対して産生された抗体であるか、組換え技術により、合成によりまたは生物学的方法により、製造されたC-erbB-2細胞外ドメインに対して産生された抗体である。
【請求項7】
患者体液中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質を検出及び定量することにより患者におけるC-erbB-2タンパク質を過剰発現するヒト腫瘍細胞の存在をインビトロにおいて検出する方法であって、以下の(a)および(b)を含む方法:
(a)体液試料を可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体と接触させること、および
(b)該抗体に結合した可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質の量を検出すること、ここで、正常体液中の結合レベルを超えた結合レベルの増加はC-erbB-2を過剰発現する腫瘍細胞の存在を示すものである。
ここで前記抗体は細胞表面に発現されたC-erB-2のインタクト細胞外ドメインに対して産生された抗体であるか、組換え技術により、合成によりまたは生物学的方法により製造されたC-erbB-2細胞外ドメインに対して産生された抗体である。
【請求項8】
ヒトの体液中のC-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有する抗体を検出及び定量するインビトロ検定方法であって、C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質/ポリペプチドまたは一以上のC-erB-2細胞外ドメインエピトープを含むタンパク質/ポリペプチドを用いること、及び前記C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質/ポリペプチドまたは一以上のC-erB-2細胞外ドメインエピトープを含むタンパク質/ポリペプチドが組換え技術により、合成によりまたは生物学的方法により製造されたものである、上記方法。
【請求項9】
前新生物形成性/新生物形成性疾患の患者の体液試料中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質のレベルの変化をインビトロにおいて検出する方法であって、前記患者から経時的に採取した体液試料中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質のレベルを免疫学的に検出及び定量し、それらのレベルを比較して変化を検出する、上記方法。
【請求項10】
前新生物形成性/新生物形成性疾患の患者の体液試料中のC-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性のレベルの変化をインビトロにおいて検出する方法であって、C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質/ポリペプチドまたは一以上のC-erB-2細胞外ドメインエピトープを含むタンパク質/ポリペプチドを用いて、前記患者から経時的に採取した体液試料中の可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質のレベルを免疫学的に検出及び定量し、それらのレベルを比較して変化を検出することを含み、前記C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質/ポリペプチドまたは一以上のC-erB-2細胞外ドメインエピトープを含むタンパク質/ポリペプチドが組換え技術により、合成によりまたは生物学的方法により製造されたものである、上記方法。
【請求項11】
ガン治療後に、あるいは患者から腫瘍を除去する手術後に行う、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
方法が、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、ELISA、RIA、ウェスタンブロット、粒子アッセイ、放射測定アッセイまたは蛍光分析アッセイの形式である、請求項1〜3及び8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
細胞表面上に発現されたC-erbB-2のインタクト細胞外ドメインに対し産生された抗体の使用を含み、前記抗体がスクリーニングアッセイにより可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有することが見出された抗体である、請求項1、7、9、11及び12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
検定が、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、ELISA、RIA、ウェスタンブロット、粒子アッセイ、放射測定アッセイまたは蛍光分析アッセイの形式で行われる、請求項3〜6のいずれか一項に記載のキット。
【請求項15】
細胞表面上に発現されたC-erbB-2のインタクト細胞外ドメインに対し産生された抗体の使用を含み、前記抗体がスクリーニングアッセイにより可溶性C-erbB-2細胞外ドメインタンパク質に特異性を有することが見出された抗体である、請求項3または6に記載のキット。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−304807(P2006−304807A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197085(P2006−197085)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【分割の表示】特願平2−513165の分割
【原出願日】平成2年8月2日(1990.8.2)
【出願人】(501475170)バーレックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【分割の表示】特願平2−513165の分割
【原出願日】平成2年8月2日(1990.8.2)
【出願人】(501475170)バーレックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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