説明

CMP装置、研磨パッド及びCMP方法

【課題】高平坦性の確保と研磨傷の低減を両立可能なCMP技術を提案する。
【解決手段】実施形態に係わるCMP装置は、水溶性粒子を含んだ研磨パッド12の表面部にスラリーを供給する供給部15と、被研磨物14を保持した状態で被研磨物14を研磨パッド12の表面部に接触させる保持部13と、研磨パッド12の表面部に配置され、研磨パッド12の表面部の温度を設定する温度設定部17と、供給部15、保持部13及び温度設定部17の動作を制御する制御部18とを備える。制御部18は、研磨パッド12の表面部の温度を第1の温度範囲内に設定した状態で被研磨物14を研磨する第1の研磨工程を実行した後に、研磨パッド12の表面部の温度を第2の温度範囲内に設定した状態で被研磨物14を研磨する第2の研磨工程を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、CMP装置、研磨パッド及びCMP方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスにおいて、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)は、溝に埋め込まれた絶縁膜、金属膜、多結晶珪素膜などの平坦化に使用される。32nm世代以降の次世代デバイスでは、微細化に伴う露光工程でのフォーカスエラーの低減や歩留まりの改善のため、CMP工程での高平坦性の確保と研磨傷の低減を両立することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−140264号公報
【特許文献2】特開2004−243518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、高平坦性の確保と研磨傷の低減を両立可能なCMP技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、CMP装置は、水溶性粒子を含んだ研磨パッドの表面部にスラリーを供給する供給部と、被研磨物を保持した状態で前記被研磨物を前記研磨パッドの表面部に接触させる保持部と、前記研磨パッドの表面部に配置され、前記研磨パッドの表面部の温度を設定する温度設定部と、前記供給部、前記保持部及び前記温度設定部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記研磨パッドの表面部の温度を第1の温度範囲内に設定した状態で前記被研磨物を研磨する第1の研磨工程を実行した後に、前記研磨パッドの表面部の温度を第2の温度範囲内に設定した状態で前記被研磨物を研磨する第2の研磨工程を実行する。
【0006】
実施形態によれば、研磨パッドは、前記CMP装置に使用され、非水溶性の架橋重合体と、前記架橋重合体内の水溶性粒子とを備え、前記水溶性粒子の溶解度は、被研磨物の研磨中において変化する。
【0007】
実施形態によれば、CMP方法は、水溶性粒子を含んだ研磨パッドの表面部にスラリーを供給し、被研磨物を前記研磨パッドの表面部に接触させ、前記研磨パッドの表面部の温度を第1の温度範囲内に設定した状態で前記被研磨物を研磨する第1の研磨工程を実行した後に、前記研磨パッドの表面部の温度を第2の温度範囲内に設定した状態で前記被研磨物を研磨する第2の研磨工程を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】CMP装置を示す図。
【図2】CMP装置を示す図。
【図3】研磨パッドを示す図。
【図4】被研磨物を示す図。
【図5】管理テーブルを示す図。
【図6】トルク電流値の変化を示す図。
【図7】CMP装置の動作の第1の例を示すフローチャート。
【図8】研磨パッドの表面部の温度変化を示す図。
【図9】CMP方法を示す図。
【図10】CMP方法を示す図。
【図11】CMP方法を示す図。
【図12】CMP方法を示す図。
【図13】第1の研磨工程中の被研磨物を示す図。
【図14】第2の研磨工程中の被研磨物を示す図。
【図15】第2の研磨工程終了時の被研磨物を示す図。
【図16】CMP工程中の弾性率を示す図。
【図17】CMP装置の動作の第2の例を示すフローチャート。
【図18】研磨パッドの表面部の温度変化を示す図。
【図19】CMP方法を示す図。
【図20】CMP方法を示す図。
【図21】CMP方法を示す図。
【図22】CMP方法を示す図。
【図23】CMP装置の変形例を示す図。
【図24】CMP装置の動作の第3の例を示すフローチャート。
【図25】研磨パッドの表面部の温度変化を示す図。
【図26】CMP方法を示す図。
【図27】CMP方法を示す図。
【図28】CMP方法を示す図。
【図29】CMP方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
【0010】
実施形態は、例えば、半導体装置の製造方法における平坦化プロセスに使用されるCMP装置、研磨パッド及びCMP方法に関する。この平坦化プロセスでは、溝に埋め込まれた絶縁膜、金属膜、多結晶珪素膜などの高平坦性の確保及び研磨傷の低減が課題となる。
【0011】
しかし、平坦性と研磨傷は、研磨パッドの弾性率に対して相関を有する。例えば、研磨パッドの弾性率を上げると、平坦性が向上し、研磨傷が増加する。逆に、研磨パッドの弾性率を下げると、研磨傷が減少し、平坦性が劣化する。但し、研磨傷については、特に、研磨パッドの表面付近の弾性率との相関が高い。
【0012】
このトレードオフを改善するために、水溶性粒子を含んだ研磨パッドが開発されている。この技術によれば、水に晒されない研磨パッドの内部は、高弾性率、水に晒される表面部は、低弾性率、という状態を実現する。しかし、この技術では、被研磨物の研磨中において、研磨パッドの表面部は常に低弾性率であるため、超高平坦性が要求されるデバイスに対しては不十分である。
【0013】
また、研磨パッドの内部又は研磨パッドの裏面側に研磨パッドを冷却する配管を設け、研磨パッド全体の温度を制御することにより、CMPプロセス中の研磨パッド全体の弾性率を制御する技術が開発されている。しかし、この技術では、研磨パッドの表面部のみの弾性率を制御することはできないため、上述のトレードオフの改善には不十分である。
【0014】
そこで、実施形態では、溶解度が制御された水溶性粒子を含んだ研磨パッドと、研磨パッドの温度を制御可能な機構を有するCMP装置とを提案する。
【0015】
即ち、実施形態のCMP装置は、水溶性粒子を含んだ研磨パッドとペアで使用される。また、研磨パッドの表面部に、研磨パッドの表面部の温度を設定するための温度設定部を設ける。そして、研磨パッドの表面部の温度を第1の温度範囲内に設定した状態で被研磨物の研磨を実行した後に、研磨パッドの表面部の温度を第2の温度範囲内に設定した状態で被研磨物の研磨を実行する。
【0016】
これにより、被研磨物の研磨中において、水溶性粒子を含んだ研磨パッドは、2つの状態をとることになる。第1の状態は、研磨パッドの表面部の温度が第1の温度範囲内にあるときに生じ、研磨パッド全体の弾性率が高い状態である。また、第2の状態は、研磨パッドの表面部の温度が第2の温度範囲内にあるときに生じ、研磨パッドの表面部の弾性率が低く、表面部以外の部分の弾性率が高い状態である。
【0017】
第1の状態では、研磨パッドの表面部に露出した水溶性粒子の溶解度が0%又は低い状態に抑えられるため、研磨パッド全体の弾性率が高い。このため、被研磨物に対して高平坦性の確保を重視した研磨が実行される。
【0018】
尚、第1の状態では、高平坦性の確保の観点から、研磨パッドの表面部に露出した水溶性粒子の溶解度は、10%以下であるのが望ましい。
【0019】
また、第2の状態では、研磨パッドの表面部に露出した水溶性粒子の溶解度が高い状態であるため、研磨パッドの表面部では、弾性率が低く、表面部以外の部分では、水溶性粒子が露出しないため、水溶性粒子が溶解されることはなく、弾性率が高い。このため、被研磨物に対して研磨傷の低減を重視した研磨が実行される。
【0020】
ここで、第2の状態は、研磨パッドの表面部のみの弾性率を制御することにより実現するため、研磨パッドの表面部以外の部分の弾性率は高いままであり、この研磨により平坦性が劣化することはない。
【0021】
この2つの状態を被研磨物の研磨中に発生させることにより、高平坦性の確保と研磨傷の低減とを両立することが可能になる。
【0022】
尚、研磨パッドの表面部に露出した水溶性粒子の溶解度は、研磨パッドの表面部の温度の他に、研磨パッドの表面部に供給されるスラリー(例えば、研磨粒子、水などを含む)内に、予め、水溶性粒子と同じ又はそれと同じ性質を有する物質を含ませておくことによっても制御可能である。
【0023】
図1及び図2は、実施形態としてのCMP装置を示している。
図1は、CMP装置の斜視図であり、図2は、図1のCMP装置の側面図である。
【0024】
台座部(例えば、回転台)11は、例えば、回転駆動(右回り/左回り)される。水溶性粒子を含んだ研磨パッド12は、台座部11上に搭載される。
【0025】
研磨パッド12は、例えば、図3に示すように、非水溶性の架橋重合体(a water-insoluble crosslinked polymer)12aから構成される。架橋重合体12aは、発泡体(a foam)であり、水溶性粒子(water-soluble particles)12bは、架橋重合体12a内に充填される。このような研磨パッド12は、充填パッド(a filler pad)と呼ばれる。
【0026】
ここで、架橋重合体は、ポリウレタン、ポリスチレンなどであり、水溶性粒子は、デキストリンなどの多糖類や、脂肪鎖を含むセルロースなどである。
【0027】
保持部13は、被研磨物14を保持し、かつ、被研磨物14を保持した状態で被研磨物14を研磨パッド12の表面部に接触させる。保持部13は、例えば、回転駆動(右回り/左回り)される。
【0028】
台座部11及び保持部13は、被研磨物14の研磨量のむらをなくす観点から共に回転駆動されているのが望ましい。両者が回転駆動されるとき、保持部13の回転方向と台座部11の回転方向とは同じであるのが望ましい。
【0029】
被研磨物14は、例えば、図4に示すように、半導体装置である。ここでは、半導体基板14aと、半導体基板14a上のストッパ膜14bと、半導体基板14aの溝に埋め込まれた絶縁膜14cとを備える半導体装置を、被研磨物14の例として示す。
【0030】
図4において、ストッパ膜14bは、絶縁膜14cに対してエッチング選択比を有する材料から構成される。例えば、絶縁膜14cが酸化シリコン膜のとき、ストッパ膜14bは、窒化シリコン膜である。
【0031】
供給部15は、台座部11の上方、例えば、台座部11が円柱形のとき、円の中央部の上方に配置され、研磨パッド12の表面部にスラリーを供給する。スラリーは、例えば、研磨剤などの薬液、水などを含む。
【0032】
また、スラリー内に、予め、水溶性粒子と同じ又はそれと同じ性質を有する物質を含ませておくことにより、研磨パッド12の表面部に露出した水溶性粒子の溶解度を制御することもできる。水溶性粒子の溶解度が制御可能であることは、水溶性粒子の選択肢を広げることも意味する。
【0033】
さらに、水溶性粒子としてデキストリンなどの多糖類を用いるときは、その分子量を調整することによりスラリー内への溶解度を調整することも可能である。
【0034】
表面調整部16は、被研磨物14の研磨により、磨耗した、又は、研磨剤中に含まれる砥粒により目詰まりした研磨パッド12の表面部を、被研磨物14の研磨前の初期状態に戻す機能を有する。
【0035】
本例では、被研磨物14に対する1回のCMP工程により、研磨パッド12の表面部に露出した水溶性粒子が溶解されるため、表面調整部16は、その1回のCMP工程が終了する度に、研磨パッド12の表面部を初期状態に戻す。
【0036】
表面調整部16は、例えば、研磨パッド12の表面部を一定量だけ切削し、研磨パッド12の表面部に新たに水溶性粒子を露出させることにより、研磨パッド12の表面部を初期状態に戻す。
【0037】
温度設定部17は、研磨パッド12の表面部に配置され、研磨パッド12の表面部の温度を設定する。温度設定部17は、例えば、研磨パッド12の表面部に接触する熱交換体(接触機構)や、研磨パッド12の表面部に不活性気体(熱交換気体)を供給する非接触機構などを備える。
【0038】
温度設定部17が熱交換体から構成される場合、制御可能な研磨パッドの表面部の温度範囲を広く確保できるため、研磨パッド(水溶性粒子)12の種類の選択肢が広がる。また、温度設定部17が非接触機構により構成される場合、研磨パッド12に傷やむらが発生することがないため、結果として、被研磨物14の研磨傷をさらに低減できる。
【0039】
また、温度設定部17は、温度センサを有していてもよい。また、温度センサを温度設定部17以外の部分に設け、温度設定部17は、温度センサを有していなくてもよい。
【0040】
制御部18は、台座部11、保持部13、供給部15、表面調整部16及び温度設定部17の動作を制御する。制御部18は、研磨パッド12内の表面部に露出した水溶性粒子が完全に溶解し得る溶解閾値に基づき、温度設定部17により研磨パッド12の表面部の温度を設定する。
【0041】
スラリー内に無限に水溶性粒子が溶け込むことができると仮定した場合、研磨パッドの表面部の温度を溶解閾値以上にすると、研磨パッド12内の表面部に露出した水溶性粒子の溶解度は、100%になる。
【0042】
しかし、溶解閾値以上であっても、スラリー内に予め水溶性粒子と同じ又はそれと同じ性質を有する物質が含まれているときは、水溶性粒子が完全に溶解する前に飽和状態になり、研磨パッド12内の表面部に露出した水溶性粒子の溶解度が100%未満になることもある。
【0043】
制御部18は、この溶解閾値に基づき、温度設定部17により研磨パッド12の表面部の温度を設定するために、管理テーブル19を備える。
【0044】
管理テーブル19は、例えば、図5に示すように、スラリー、研磨パッド、水溶性粒子の溶解閾値に関する情報からなり、予め、制御部18内に記憶させておく。例えば、スラリー及び研磨パッドは、自由に交換可能であるため、本例のCMP装置を駆動させるに当たり、スラリー及び研磨パッドに関する入力情報を制御部18内にインプットする。
【0045】
制御部18は、その入力情報に基づき、溶解閾値を認識し、被研磨物14の研磨中において、上述の2つの状態を実現する。
【0046】
但し、この管理テーブル19は、一例であり、例えば、スラリー及び研磨パッドのうちの1つが固定されていれば、固定されていないほうの情報のみをインプットし、溶解閾値を決定してもよい。また、このような管理テーブル19を設けることなく、水溶性粒子の溶解閾値を、直接、制御部18にインプットしてもよい。
【0047】
また、制御部18は、トルク電流モニター部20を有する。
【0048】
トルク電流モニター部20は、研磨パッド12全体が高弾性率である第1の状態での第1の研磨工程、研磨パッド12の表面部のみが低弾性率である第2の状態での第2の研磨工程、さらに、研磨パッド12の表面部を初期状態に戻す研磨パッド12の表面調整工程の切り替えポイントを決めるために設けられる。
【0049】
即ち、台座部11及び保持部13がそれぞれ一定回転で駆動されるとき、台座部11又は保持部13を回転駆動するトルク電流値をモニターすることにより、上述の切り替えポイントを決めることができる。
【0050】
例えば、被研磨物14が図4に示す半導体装置のとき、絶縁膜14cの凹凸が存在している状態では上述の第1の研磨工程を実行し、絶縁膜14cの凹凸が無くなった状態では上述の第2の研磨工程を実行することが可能である。
【0051】
なぜなら、例えば、図6に示すように、絶縁膜14cの凹凸が小さくなるに従い、研磨パッド12と被研磨物14との接触抵抗によりトルク電流値が大きくなり、絶縁膜14cの凹凸が無くなった後にトルク電流値が最大値で一定になるからである。従って、そのトルク電流値の変化点(第1の変化点)P1を検出することにより、第1の研磨工程から第2の研磨工程に切り替えることが可能である。
【0052】
また、絶縁膜14cの凹凸が無くなった状態では上述の第2の研磨工程を実行し、ストッパ膜14bが露出した状態では、CMP工程を終了し、上述の表面調整工程を実行することが可能である。
【0053】
なぜなら、研磨パッド12と絶縁膜14cとの接触抵抗と、研磨パッド12とストッパ膜14bとの接触抵抗とは異なるからである。従って、例えば、図6に示すように、そのトルク電流値の変化点(第2の変化点)P2を検出することにより、第2の研磨工程から表面調整工程に切り替えることが可能である。
【0054】
尚、トルク電流値の変化点P1,P2を検出するには、例えば、一定の判断期間が必要であるため、各工程の切り替えは、この判断期間後に行うのが望ましい。
【0055】
また、トルク電流モニター部20の設置は、第1の研磨工程、第2の研磨工程及び表面調整工程を正しく切り替えるために望ましい。
【0056】
しかし、トルク電流モニター部20を設けることなく、これら工程の切り替えを行うことも可能である。例えば、経験則から、CMP工程における研磨時間をモニターすることにより、第1の研磨工程、第2の研磨工程及び表面調整工程を切り替えてもよい。
【0057】
図7は、CMP方法の第1の例を示している。
このフローチャートは、図1の制御部18により実行される。
【0058】
研磨パッド内の水溶性粒子は、温度設定部により設定される研磨パッドの表面部の温度範囲内において、温度上昇に従い、スラリー内への溶解度が上昇する物質である。
【0059】
また、水溶性粒子の溶解閾値(温度)Tc1は、その温度範囲内にあり、研磨パッドの表面部に露出した水溶性粒子は、溶解閾値Tc1以上でスラリー内に完全に溶解し得るものとする。
【0060】
このような前提において、例えば、図8に示すように、研磨パッドの表面部の温度を変化させる。即ち、第1の研磨工程では、研磨パッドの表面部の温度を溶解閾値Tc1よりも十分に低くする。また、第2の研磨工程では、研磨パッドの表面部の温度を溶解閾値Tc1以上にする。さらに、研磨パッドの表面調整工程では、研磨パッドの表面部の温度を再び溶解閾値Tc1よりも十分に低くする。
【0061】
以下、具体的動作について、図7のフローチャートと、図9〜図15の側面図とに基づいて説明する。
【0062】
まず、入力情報(例えば、スラリー、研磨パッドなど)に基づいて、溶解閾値Tc1を制御部内のレジスタに設定する(ステップST1)。
【0063】
また、図9に示すように、研磨パッド12を搭載する台座部11を回転させた後、研磨パッド12上に供給部15からスラリーを供給する。スラリーは、遠心力により、研磨パッド12の全体に広がる。
【0064】
この後、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第1の温度範囲(溶解閾値Tc1未満)に設定する(ステップST2)。
【0065】
そして、図10に示すように、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第1の温度範囲内に維持した状態で、保持部13に保持された被研磨物14を研磨パッド12に接触させ、被研磨物14を研磨する第1の研磨工程を実行する。この時、保持部13も、台座部11と同様に、回転させてもよい。
【0066】
第1の研磨工程では、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceが第1の温度範囲内に設定されているため、研磨パッド12の表面部に露出した水溶性粒子のスラリー内への溶解度は、0%又は低い状態(望ましくは、10%以下)である。
【0067】
このため、研磨パッド12全体の弾性率が高く保たれ、高平坦性を重視した研磨が実行される。また、図13に示すように、研磨パッド12には被研磨物14の絶縁膜14cの凸部が主に接触し、優先的に研磨される。このため、第1の研磨工程がある程度進行すると、被研磨物14の絶縁膜14cの凹凸が解消される。
【0068】
そして、図14に示すように、被研磨物14の絶縁膜14cの表面が平坦化されると、研磨パッド12と被研磨物14との接触面積(接触抵抗)が大きくなるため、トルク電流値に変化が現れる(図6の第1の変化点P1)。
【0069】
トルク電流モニター部は、CMP工程中、トルク電流値Itorqueをモニターしているため、この変化点(第1の変化点)P1を経過した後に、第1の研磨工程から第2の研磨工程に変更する(ステップST3)。
【0070】
即ち、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第2の温度範囲(溶解閾値Tc1以上)に設定する(ステップST4)。
【0071】
そして、図11に示すように、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第2の温度範囲内に維持した状態で、引き続き、被研磨物14を研磨する第2の研磨工程を実行する。
【0072】
第2の研磨工程では、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceが第2の温度範囲内に設定されているため、研磨パッド12の表面部に露出した水溶性粒子のスラリー内への溶解度は、高い状態(例えば、100%又はそれに近い状態)である。
【0073】
ここで、第2の研磨工程のおける水溶性粒子の溶解度は、第1の研磨工程における溶解度よりも高ければよい。即ち、被研磨物14の種類に応じて、第2の研磨工程のおける水溶性粒子の溶解度を調整するのが望ましい。
【0074】
このため、研磨パッド12の表面部の弾性率が低く保たれ、研磨傷の低減を重視した研磨が実行される。また、研磨パッド12の表面部以外の部分の弾性率が高く保たれるため、第2の研磨工程により高平坦性が劣化することはない。
【0075】
第2の研磨工程は、研磨傷の量や大きさが許容範囲になることを条件に、できるだけ短時間であるのが望ましい。
【0076】
また、図15に示すように、第2の研磨工程がある程度進行すると、被研磨物14のストッパ膜14bの表面が露出する。
【0077】
被研磨物14のストッパ膜14bの表面が露出すると、研磨パッド12と被研磨物14との接触抵抗が変化するため、トルク電流値にも変化が現れる(図6の第2の変化点P2)。
【0078】
トルク電流モニター部は、CMP工程中、トルク電流値Itorqueをモニターしているため、この変化点(第2の変化点)P2を経過した後に、第2の研磨工程を終了する(ステップST5)。
【0079】
そして、図12に示すように、保持部13を上昇させ、被研磨物14を研磨パッド12から離す。また、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第1の温度範囲(溶解閾値Tc1未満)内に維持した状態で、研磨パッド12の表面部を初期状態に戻す表面調整工程を実行する。
【0080】
即ち、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第1の温度範囲に設定した状態で(ステップST6)、表面調整部16を下降させ、表面調整部16により研磨パッド12の表面部を切削し、研磨パッド12の表面部に新たに水溶性粒子を露出させる(ステップST7)。
【0081】
ここで、表面調整工程では、研磨パッド12の温度が過度に変化することはないが、研磨パッド12の温度がTc1以上とならないように細心の注意を払う必要がある。
【0082】
以上、本例(実施例)によれば、図16に示すように、CMP工程中において、研磨パッド12の弾性率が変化する。しかも、第1の研磨工程では、研磨パッド12全体の弾性率が高い第1の状態を保持し、第2の研磨工程では、第1の状態から、研磨パッド12の表面部の弾性率のみを低くした第2の状態を保持する。
【0083】
従って、実施例によれば、CMP工程中に弾性率が一定である比較例1、及び、CMP工程中に研磨パッド全体の弾性率が変化する比較例2に比べて、高平坦性の確保と研磨傷の低減を共に向上させることができる。
【0084】
図17は、CMP方法の第2の例を示している。
このフローチャートは、図1の制御部18により実行される。
【0085】
研磨パッド内の水溶性粒子は、温度設定部により設定される研磨パッドの表面部の温度範囲内において、温度下降に従い、スラリー内への溶解度が上昇する物質である。
【0086】
また、水溶性粒子の溶解閾値(温度)Tc2は、その温度範囲内にあり、研磨パッドの表面部に露出した水溶性粒子は、溶解閾値Tc2以下でスラリー内に完全に溶解し得るものとする。
【0087】
このような前提において、例えば、図18に示すように、研磨パッドの表面部の温度を変化させる。即ち、第1の研磨工程では、研磨パッドの表面部の温度を溶解閾値Tc2よりも十分に高くする。また、第2の研磨工程では、研磨パッドの表面部の温度を溶解閾値Tc2以下にする。さらに、研磨パッドの表面調整工程では、研磨パッドの表面部の温度を再び溶解閾値Tc2よりも十分に高くする。
【0088】
以下、具体的動作について、図17のフローチャートと、図19〜図22の側面図とに基づいて説明する。
【0089】
まず、入力情報(例えば、スラリー、研磨パッドなど)に基づいて、溶解閾値Tc2を制御部内のレジスタに設定する(ステップST1)。
【0090】
また、図19に示すように、研磨パッド12を搭載する台座部11を回転させた後、研磨パッド12上に供給部15からスラリーを供給する。スラリーは、遠心力により、研磨パッド12の全体に広がる。
【0091】
この後、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第1の温度範囲(溶解閾値Tc2超過)に設定する(ステップST2)。
【0092】
そして、図20に示すように、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第1の温度範囲内に維持した状態で、保持部13に保持された被研磨物14を研磨パッド12に接触させ、被研磨物14を研磨する第1の研磨工程を実行する。この時、保持部13も、台座部11と同様に、回転させてもよい。
【0093】
第1の研磨工程では、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceが第1の温度範囲内に設定されているため、研磨パッド12の表面部に露出した水溶性粒子のスラリー内への溶解度は、0%又は低い状態(望ましくは、10%以下)である。
【0094】
このため、研磨パッド12全体の弾性率が高く保たれ、高平坦性を重視した研磨が実行される。また、図13に示すように、研磨パッド12には被研磨物14の絶縁膜14cの凸部が主に接触し、優先的に研磨される。このため、第1の研磨工程がある程度進行すると、被研磨物14の絶縁膜14cの凹凸が解消される。
【0095】
そして、図14に示すように、被研磨物14の絶縁膜14cの表面が平坦化されると、研磨パッド12と被研磨物14との接触面積(接触抵抗)が大きくなるため、トルク電流値に変化が現れる(図6の第1の変化点P1)。
【0096】
トルク電流モニター部は、CMP工程中、トルク電流値Itorqueをモニターしているため、この変化点(第1の変化点)P1を経過した後に、第1の研磨工程から第2の研磨工程に変更する(ステップST3)。
【0097】
即ち、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第2の温度範囲(溶解閾値Tc2以下)に設定する(ステップST4)。
【0098】
そして、図21に示すように、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第2の温度範囲内に維持した状態で、引き続き、被研磨物14を研磨する第2の研磨工程を実行する。
【0099】
第2の研磨工程では、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceが第2の温度範囲内に設定されているため、研磨パッド12の表面部に露出した水溶性粒子のスラリー内への溶解度は、高い状態(例えば、100%又はそれに近い状態)である。
【0100】
ここで、第2の研磨工程のおける水溶性粒子の溶解度は、第1の研磨工程における溶解度よりも高ければよい。即ち、被研磨物14の種類に応じて、第2の研磨工程のおける水溶性粒子の溶解度を調整するのが望ましい。
【0101】
このため、研磨パッド12の表面部の弾性率が低く保たれ、研磨傷の低減を重視した研磨が実行される。また、研磨パッド12の表面部以外の部分の弾性率が高く保たれるため、第2の研磨工程により高平坦性が劣化することはない。
【0102】
第2の研磨工程は、研磨傷の量や大きさが許容範囲になることを条件に、できるだけ短時間であるのが望ましい。
【0103】
また、図15に示すように、第2の研磨工程がある程度進行すると、被研磨物14のストッパ膜14bの表面が露出する。
【0104】
被研磨物14のストッパ膜14bの表面が露出すると、研磨パッド12と被研磨物14との接触抵抗が変化するため、トルク電流値にも変化が現れる(図6の第2の変化点P2)。
【0105】
トルク電流モニター部は、CMP工程中、トルク電流値Itorqueをモニターしているため、この変化点(第2の変化点)P2を経過した後に、第2の研磨工程を終了する(ステップST5)。
【0106】
そして、図22に示すように、保持部13を上昇させ、被研磨物14を研磨パッド12から離す。また、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第1の温度範囲(溶解閾値Tc2超過)内に維持した状態で、研磨パッド12の表面部を初期状態に戻す表面調整工程を実行する。
【0107】
即ち、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第1の温度範囲に設定した状態で(ステップST6)、表面調整部16を下降させ、表面調整部16により研磨パッド12の表面部を切削し、研磨パッド12の表面部に新たに水溶性粒子を露出させる(ステップST7)。
【0108】
ここで、表面調整工程では、研磨パッド12の温度が過度に変化することはないが、研磨パッド12の温度がTc2以下とならないように細心の注意を払う必要がある。
【0109】
以上、本例(実施例)においても、図16に示すように、CMP工程中において、研磨パッド12の弾性率が変化する。しかも、第1の研磨工程では、研磨パッド12全体の弾性率が高い第1の状態を保持し、第2の研磨工程では、第1の状態から、研磨パッド12の表面部の弾性率のみを低くした第2の状態を保持する。
【0110】
従って、実施例によれば、CMP工程中に弾性率が一定である比較例1、及び、CMP工程中に研磨パッド全体の弾性率が変化する比較例2に比べて、高平坦性の確保と研磨傷の低減を共に向上させることができる。
【0111】
図23は、図1のCMP装置の変形例を示している。
【0112】
この変形例が図1と異なる点は、温度設定部21が、冷却機構のみを備え、加熱機構を省略している点にある。
【0113】
これは、CMP工程中において、研磨パッド12と被研磨物14との間には摩擦熱が生じるからである。温度設定部21により研磨パッド12を加熱しなくても、研磨パッド12の温度は、摩擦熱により徐々に上昇する。この摩擦熱を利用することで加熱機構を省略し、温度設定部21の構成を簡略化することができる。
【0114】
この冷却機構は、例えば、研磨パッド12の表面部に接触する熱交換体(接触機構)や、研磨パッド12の表面部に不活性気体(熱交換気体)を供給する非接触機構などを備える。冷却機構が非接触機構により構成される場合、研磨パッド12に傷やむらが発生することがないため、結果として、被研磨物14の研磨傷をさらに低減できる。
【0115】
但し、本例を採用するときは、研磨パッド12と被研磨物14との間に生じる摩擦熱がCMP工程中においてどのように変化するかを予め検証しておく必要がある。
【0116】
即ち、第2の研磨工程を実行する前に、研磨パッド12の表面部の温度が溶解閾値以上になることが必要条件である。
【0117】
その他の構成要素については、図1のCMP装置と同じであるため、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0118】
図24は、CMP方法の第3の例を示している。
このフローチャートは、図23の制御部18により実行される。
【0119】
研磨パッド内の水溶性粒子は、温度設定部により設定される研磨パッドの表面部の温度範囲内において、温度上昇に従い、スラリー内への溶解度が上昇する物質である。
【0120】
また、水溶性粒子の溶解閾値(温度)Tc3は、その温度範囲内にあり、研磨パッドの表面部に露出した水溶性粒子は、溶解閾値Tc3以上でスラリー内に完全に溶解し得るものとする。
【0121】
このような前提において、研磨パッドの表面部の温度は、研磨パッドと被研磨物との摩擦熱により、例えば、図25に示すように、リニアに変化する。
【0122】
即ち、第1の研磨工程では、研磨パッドの表面部の温度は、摩擦熱により徐々に上昇するが、溶解閾値Tc3以上になることはない。
【0123】
また、第2の研磨工程では、研磨パッドの表面部の温度は、摩擦熱により溶解閾値Tc3以上に維持される。但し、研磨パッドの表面部の温度があまりに高くなり過ぎないように、摩擦熱と温度設定部による冷却とにより、溶解閾値Tc3以上で一定値に安定するように制御するのが望ましい。
【0124】
さらに、研磨パッドの表面調整工程では、研磨パッドの表面部の温度は、温度設定部による冷却により、溶解閾値Tc3未満に設定される。
【0125】
以下、具体的動作について、図24のフローチャートと、図26〜図29の側面図とに基づいて説明する。
【0126】
まず、入力情報(例えば、スラリー、研磨パッドなど)に基づいて、溶解閾値Tc3を制御部内のレジスタに設定する(ステップST1)。
【0127】
また、図26に示すように、研磨パッド12を搭載する台座部11を回転させた後、研磨パッド12上に供給部15からスラリーを供給する。スラリーは、遠心力により、研磨パッド12の全体に広がる。
【0128】
この時、研磨パッド12の表面部の温度(初期値)Tsurfaceは、第1の温度範囲(溶解閾値Tc3未満)にあるものと仮定する。
【0129】
この後、図27に示すように、保持部13に保持された被研磨物14を研磨パッド12に接触させ、被研磨物14を研磨する第1の研磨工程を実行する。この時、保持部13も、台座部11と同様に、回転させてもよい。
【0130】
第1の研磨工程では、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceは、摩擦熱により徐々に上昇する。しかし、例えば、温度設定部の冷却機構により、時間と温度上昇率との関係を制御すれば、溶解閾値Tc3以上になることはない(ステップST2)。
【0131】
従って、研磨パッド12の表面部に露出した水溶性粒子のスラリー内への溶解度は、0%又は低い状態(望ましくは、10%以下)である。
【0132】
このため、研磨パッド12全体の弾性率が高く保たれ、高平坦性を重視した研磨が実行される。また、図13に示すように、研磨パッド12には被研磨物14の絶縁膜14cの凸部が主に接触し、優先的に研磨される。このため、第1の研磨工程がある程度進行すると、被研磨物14の絶縁膜14cの凹凸が解消される。
【0133】
そして、図14に示すように、被研磨物14の絶縁膜14cの表面が平坦化されると、研磨パッド12と被研磨物14との接触面積(接触抵抗)が大きくなるため、トルク電流値に変化が現れる(図6の第1の変化点P1)。
【0134】
トルク電流モニター部は、CMP工程中、トルク電流値Itorqueをモニターしているため、この変化点(第1の変化点)P1を経過した後に、第1の研磨工程から第2の研磨工程に変更する(ステップST3)。
【0135】
即ち、研磨パッド12の表面部の温度上昇率を、冷却機構を弱めるか、又は、非動作にすることによって、摩擦熱により、一気に高め、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第2の温度範囲(溶解閾値Tc3以上)に設定する(ステップST4)。
【0136】
そして、図28に示すように、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを、摩擦熱及び冷却機構により、第2の温度範囲内に維持した状態で、引き続き、被研磨物14を研磨する第2の研磨工程を実行する。
【0137】
第2の研磨工程では、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceが第2の温度範囲内に設定されているため、研磨パッド12の表面部に露出した水溶性粒子のスラリー内への溶解度は、高い状態(例えば、100%又はそれに近い状態)である。
【0138】
ここで、第2の研磨工程のおける水溶性粒子の溶解度は、第1の研磨工程における溶解度よりも高ければよい。即ち、被研磨物14の種類に応じて、第2の研磨工程のおける水溶性粒子の溶解度を調整するのが望ましい。
【0139】
このため、研磨パッド12の表面部の弾性率が低く保たれ、研磨傷の低減を重視した研磨が実行される。また、研磨パッド12の表面部以外の部分の弾性率が高く保たれるため、第2の研磨工程により高平坦性が劣化することはない。
【0140】
第2の研磨工程は、研磨傷の量や大きさが許容範囲になることを条件に、できるだけ短時間であるのが望ましい。
【0141】
また、図15に示すように、第2の研磨工程がある程度進行すると、被研磨物14のストッパ膜14bの表面が露出する。
【0142】
被研磨物14のストッパ膜14bの表面が露出すると、研磨パッド12と被研磨物14との接触抵抗が変化するため、トルク電流値にも変化が現れる(図6の第2の変化点P2)。
【0143】
トルク電流モニター部は、CMP工程中、トルク電流値Itorqueをモニターしているため、この変化点(第2の変化点)P2を経過した後に、第2の研磨工程を終了する(ステップST5)。
【0144】
そして、図29に示すように、保持部13を上昇させ、被研磨物14を研磨パッド12から離す。また、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを、冷却機構により、第1の温度範囲(溶解閾値Tc3未満)内に設定した状態で、研磨パッド12の表面部を初期状態に戻す表面調整工程を実行する。
【0145】
即ち、研磨パッド12の表面部の温度Tsurfaceを第1の温度範囲に維持した状態で(ステップST6)、表面調整部16を下降させ、表面調整部16により研磨パッド12の表面部を切削し、研磨パッド12の表面部に新たに水溶性粒子を露出させる(ステップST7)。
【0146】
ここで、表面調整工程では、研磨パッド12の温度が過度に変化することはないが、研磨パッド12の温度がTc3以上とならないように細心の注意を払う必要がある。
【0147】
以上、本例(実施例)においても、図16に示すように、CMP工程中において、研磨パッド12の弾性率が変化する。しかも、第1の研磨工程では、研磨パッド12全体の弾性率が高い第1の状態を保持し、第2の研磨工程では、第1の状態から、研磨パッド12の表面部の弾性率のみを低くした第2の状態を保持する。
【0148】
従って、実施例によれば、CMP工程中に弾性率が一定である比較例1、及び、CMP工程中に研磨パッド全体の弾性率が変化する比較例2に比べて、高平坦性の確保と研磨傷の低減を共に向上させることができる。
【0149】
実施形態によれば、高平坦性の確保と研磨傷の低減を両立可能なCMP技術を提供できる。従って、この技術を、例えば、32nm世代以降の次世代デバイスや、広大なスペースを有する新規構造のデバイスなどの製造プロセスに適用することにより、高信頼性の半導体装置を製造することができる。
【0150】
・ 次世代デバイス
抵抗変化メモリ(例えば、Resistive Random Access Memory:ReRAM)などの次世代デバイスでは、メモリセルアレイの三次元化によりメモリ容量の増大を図る。このような次世代デバイスのメモリセルアレイ(三次元クロスポイント型)を実現するには、高平坦性の確保と研磨傷の低減を両立したCMP技術が不可欠である。従って、実施形態の適用により、次世代デバイスを実現可能にする。
【0151】
・ 新規構造のデバイス
近年では、微細化及び多層化された新規構造のデバイスが多く開発されている。実施形態のCMP技術をそのようなデバイスに適用することにより、高信頼性の半導体装置を実現できる。例えば、新規構造のデバイスでは、従来のデザインルールによる制約ができず、微細なスペースの埋め込みと共に、広大なスペースに埋め込まれた絶縁膜の高平坦性の確保も重要となる。従って、実施形態の適用により、このような新規構造のデバイスを実現可能にする。
【0152】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0153】
11: 台座部、 12: 研磨パッド、 12a: 架橋重合体、 12b: 水溶性粒子、 13: 保持部、 14: 被研磨物、 14a: 半導体基板、 14b: ストッパ膜、 14c: 絶縁膜、 15: 供給部、 16: 表面調整部、 17: 温度設定部、 18: 制御部、 19: 管理テーブル、 20: トルク電流モニター部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性粒子を含んだ研磨パッドの表面部にスラリーを供給する供給部と、被研磨物を保持した状態で前記被研磨物を前記研磨パッドの表面部に接触させる保持部と、前記研磨パッドの表面部に配置され、前記研磨パッドの表面部の温度を設定する温度設定部と、前記供給部、前記保持部及び前記温度設定部の動作を制御する制御部とを具備し、
前記制御部は、前記研磨パッドの表面部の温度を第1の温度範囲内に設定した状態で前記被研磨物を研磨する第1の研磨工程を実行した後に、前記研磨パッドの表面部の温度を第2の温度範囲内に設定した状態で前記被研磨物を研磨する第2の研磨工程を実行する
CMP装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記水溶性粒子が前記スラリー内に完全に溶解し得る溶解閾値に基づき前記温度設定部の動作を制御する請求項1に記載のCMP装置。
【請求項3】
前記第2の研磨工程において前記研磨パッドの表面部に露出した前記水溶性粒子の溶解度は、前記第1の研磨工程において前記研磨パッドの表面部に露出した前記水溶性粒子の溶解度よりも高い請求項1又は2に記載のCMP装置。
【請求項4】
前記研磨パッドを搭載する台座部をさらに具備し、
前記保持部及び前記台座部は、回転駆動され、
前記制御部は、前記保持部又は前記台座部を回転駆動するトルク電流値をモニターし、前記トルク電流値が第1の変化点を経過したと判断した後に、前記第1の研磨工程から前記第2の研磨工程に変更する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のCMP装置。
【請求項5】
前記研磨パッドの表面部の状態を調整する表面調整部をさらに具備し、
前記制御部は、前記トルク電流値が第2の変化点を経過したと判断した後に前記第2の研磨工程を終了し、前記研磨パッドの表面部の温度を前記第2の温度範囲内から前記第1の温度範囲内に変更した後に前記表面調整部により前記研磨パッドの表面部を初期状態に戻す表面調整工程を実行する
請求項4に記載のCMP装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のCMP装置に使用する研磨パッドにおいて、
非水溶性の架橋重合体と、前記架橋重合体内の水溶性粒子とを具備し、
前記水溶性粒子の溶解度は、被研磨物の研磨中において変化する
研磨パッド。
【請求項7】
水溶性粒子を含んだ研磨パッドの表面部にスラリーを供給し、
被研磨物を前記研磨パッドの表面部に接触させ、
前記研磨パッドの表面部の温度を第1の温度範囲内に設定した状態で前記被研磨物を研磨する第1の研磨工程を実行した後に、前記研磨パッドの表面部の温度を第2の温度範囲内に設定した状態で前記被研磨物を研磨する第2の研磨工程を実行する
CMP方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−178450(P2012−178450A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40468(P2011−40468)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】