説明

D/A変換回路及び圧電発振器

【課題】安定性と高速動作を維持し、デジタル入力信号のビット数が多くなっても比較的小さい面積で集積化可能なD/A変換回路及び圧電発振器を提供すること。
【解決手段】D/A変換回路1Aは、n個のクランプ電圧生成手段(クランプ回路12a〜12h)と、n個のクランプ電圧生成手段が生成するnビットのデジタル信号の電圧を加算する電圧加算手段(加算器20)と、を含む。n個のクランプ電圧生成手段の各々は、デジタル入力信号2の対応するビットの電圧に応じて、ハイレベル又はローレベルを出力するCMOSインバーター(PMOS15aとNMOS17aによるインバーター等)と、電源電位とグランド電位をそれぞれクリップして第1の電位と第2の電位を生成し、第1の電位と第2の電位をCMOSインバーターの出力のハイレベル及びローレベルとして供給する電圧クリップ手段(PMOS14a、NMOS18a等)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、D/A変換回路及び圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のLSIの高集積化・多機能化に伴い、D/A変換回路が組み込まれたLSIが広く使用されている。また、D/A変換の機能のみを有するLSIも存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、抵抗ストリング型のD/A変換回路の出力電圧により発振周波数が調整可能な圧電発振器が開示されている。抵抗ストリング型のD/A変換回路は、直列接続されたストリング抵抗と並列に接続されたスイッチング用のトランジスターのオン・オフを入力されたデジタル値に基づいて切り替え、ストリング抵抗群の両端から見た抵抗値を変換することによりアナログ信号を生成する。抵抗ストリング型のD/A変換回路には、回路構成があまり複雑にならずに容易に構成でき、高い安定性と高速動作を維持できるという利点がある。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、帰還フィードバックを用いたデルタシグマ変調器と低ビットの量子化器とからなるデルタシグマ変調型D/A変換装置が開示されている。デルタシグマ型D/A変換回路は、デジタル信号を高い周波数のクロックでオーバーサンプリングしながらΔΣ変調を行うことによって量子化雑音を広帯域に分布させ、高速の低ビットD/A変換を行った後にアナログのローパスフィルタで高周波領域の量子化雑音を除去することによってノイズの低いアナログ信号を得る。また、ΔΣ変調器を形成する帰還ループを2次以上の次数で多段構成することで量子化雑音の分布をさらに急峻することができ、帯域内の量子化雑音をさらに下げることができるため、帯域内で使用可能なレンジを向上させることができる。デルタシグマ型D/A変換回路によれば、抵抗ストリング型D/A変換回路に比べて小型で高い分解能を実現できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−124530号公報
【特許文献2】特開2008−035027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、抵抗ストリング型では、nビットのD/A変換回路を構成するためには(2n+1−2)個のスイッチング用トランジスターを設ける必要があり、分解能を上げるためにトランジスター数を増やすと、隣接するトランジスターへの電気的なリークを防止するために絶縁される素子分離領域が必要になってしまう。そのため、高い分解能を得ようとすると、ICチップの面積がとても大きくなってしまい小型化は困難になる。よって、抵抗ストリング型D/A変換回路は高い分解能を得るにはあまり適さない。
【0007】
また、デルタシグマ型D/A変換回路を、電源投入後のタイミングでD/A変換を初回のみ行ってアナログ値を決定するだけというようなトリミング用途で使おうとすると、応答性を高めるために動作速度を速くし、かつ雑音レベルも十分下げる必要がある。しかし、想定される動作スピード(周波数)の範囲内における量子化雑音を下げるために多段接続をすると高周波域に寄せ集められた量子化雑音が増加し、また発振の恐れもでてくるなど、帰還回路の安定性が悪くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、安定性と高速動作を維持し、デジタル入力信号のビット数が多くなっても比較的小さい面積で集積化可能なD/A変換回路を提供し、これを利用することで小型の圧電発振器を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、nビット(nは2以上の整数)のデジタル入力信号のビット値に応じた大きさのアナログ信号を出力するD/A変換回路であって、前記デジタル入力信号の各ビットに対応づけて、ハイレベル及びローレベルがともにクランプされた1ビットのデジタル信号をそれぞれ生成するn個のクランプ電圧生成手段と、前記n個のクランプ電圧生成手段が生成するnビットのデジタル信号の電圧を加算する電圧加算手段と、を含み、前記n個のクランプ電圧生成手段の各々は、前記デジタル入力信号の対応するビットの電圧に応じて、ハイレベル又はローレベルを出力するCMOSインバーターと、電源電位とグランド電位をそれぞれクリップして第1の電位と第2の電位を生成し、当該第1の電位と当該第2の電位を前記CMOSインバーターの出力のハイレベル及びローレベルとして供給する電圧クリップ手段と、を備える。
【0010】
本発明のD/A変換回路によれば、デジタル入力信号のビット数と同じ数のクランプ回路と1つの加算器があればD/A変換を実現することができる。従って、本発明のD/A変換回路は、抵抗ストリング型D/A変換回路と異なり、入力ビット数が多くなっても必要なトランジスターの数は線形に増えるだけなので、比較的小さい面積で集積化可能である。
【0011】
また、本発明のD/A変換回路は、デルタシグマ型D/A変換回路と異なり、帰還回路が存在しないので安定性と高速動作を維持することができる。
【0012】
さらに、本発明のD/A変換回路は、クランプ回路によりクランプされたハイレベル又はローレベルの各ビットが加算器に入力されるので、入力ビット数が増えても加算器の出力電圧を飽和させないように調整することが比較的容易である。
【0013】
(2)このD/A変換回路は、前記n個のクランプ電圧生成手段のうち、より上位のビットに対応づけられたクランプ電圧生成手段ほど、より高いハイレベルとより低いローレベルにクランプされた前記デジタル信号を出力するようにしてもよい。
【0014】
(3)このD/A変換回路は、前記電圧加算手段の加算結果の電圧を反転増幅する反転増幅手段を含むようにしてもよい。
【0015】
(4)このD/A変換回路は、前記電圧加算手段の加算結果の電圧を電流に変換する電圧電流変換手段を含むようにしてもよい。
【0016】
(5)本発明は、上記のいずれかのD/A変換回路と、圧電振動子と、前記圧電振動子を励振して発振信号を出力する発振回路と、前記D/A変換回路の出力に基づいて、前記発振信号の周波数を調整する発振周波数調整手段と、を含む、圧電発振器である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態のD/A変換回路の構成を示す図。
【図2】図2(A)はデジタル入力信号の各ビットの電圧レベルの一例を示す図であり、図2(B)はクランプ回路が出力するデジタル信号の各ビットの電圧レベルの一例を示す図。
【図3】デジタル入力信号のビット値と加算器の出力電圧値及びD/A変換回路の出力電圧値の関係の一例を示す図。
【図4】第1実施形態のD/A変換回路の変形例の構成を示す図。
【図5】第1実施形態のD/A変換回路を備えた圧電発振器の構成例を示す図。
【図6】オフセット調整回路の構成例を示す図。
【図7】図7(A)はオフセット調整データのビット値とD/A変換回路の出力電圧の関係の一例を示す図であり、図7(B)はオフセット調整データのビット値と基準電圧の関係の一例を示す図。
【図8】電圧制御発振回路の構成例を示す図。
【図9】MOSバリキャップのC−V特性の一例を示す図。
【図10】図10(A)は制御電圧の電圧値とMOSバリキャップのゲート端子の電圧値及びバックゲート端子の電圧値の関係の一例を示す図であり、図10(B)は制御電圧の電圧値と発振信号の周波数の関係の一例を示す図。
【図11】第2実施形態のD/A変換回路の構成を示す図。
【図12】デジタル入力信号のビット値と加算器の出力電圧の関係の一例を示す図。
【図13】第2実施形態のD/A変換回路を備えた圧電発振器の構成例を示す図。
【図14】センサー電源供給回路の構成例を示す図。
【図15】図15(A)はゲイン調整データのビット値とゲイン調整電流の関係の一例を示す図であり、図15(B)はゲイン調整データのビット値とセンサー電源の関係の一例を示す図。
【図16】発振回路の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0019】
1.第1実施形態
(1)D/A変換回路
図1は、第1実施形態のD/A変換回路の構成を示す図である。
【0020】
本実施形態のD/A変換回路1Aは、クランプ回路10、加算器20、反転増幅器30を含んで構成され、8ビットのデジタル入力信号2による8ビットコードの値(ビット値)に対応する出力電圧を生成する。なお、以下ではデジタル入力信号2のビット数が8であるものとして説明するが、以下の内容は任意のビット数のケースに一般化することができる。
【0021】
クランプ回路10は、8ビットのデジタル入力信号2(D7〜D0)の各ビットの電圧レベルをそれぞれ特定の電圧レベルに固定(クランプ)した8ビットのデジタル信号(D7a〜D0a)を生成する。
【0022】
具体的には、クランプ回路10は、同じ構成の8個のクランプ回路12a、12b、・・・、12hによって構成されている。8個のクランプ回路12a、12b、・・・、12hは、デジタル入力信号2(D7〜D0)の最上位ビット(MSB:Most Significant Bit)から最下位ビット(LSB:Least Significant Bit)までの各ビット、すなわちD7、D6、・・・、D0の電圧レベルをそれぞれ特定の電圧レベルにクランプする。
【0023】
クランプ回路12aは、3個のPチャネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)型電界効果トランジスター(以下、「PMOSトランジスター」と表記する)13a、14a、15a及び3個のNチャネルMOS型電界効果トランジスター(以下、「NMOSトランジスター」と表記する)16a、17a、18aによって構成されている。
【0024】
PMOSトランジスター13aのゲートとNMOSトランジスター16aのゲートにはデジタル入力信号2の最上位ビット7(D7)の電位が供給される。また、PMOSトランジスター13aのソースには一定の電源電位Vregが供給され、NMOSトランジスター16aのソースにはグランド電位(0V)が供給される。
【0025】
また、PMOSトランジスター13aのドレインとNMOSトランジスター16aのドレインが接続されている。すなわち、PMOSトランジスター13aとNMOSトランジスター16aにより、電源電位Vregをハイレベル、グランド電位をローレベルとして出力するインバーター回路が構成されている。
【0026】
PMOSトランジスター15aのゲートとNMOSトランジスター17aのゲートは、PMOSトランジスター13aのドレインとNMOSトランジスター16aのドレインに接続されている。また、PMOSトランジスター14aのドレインとPMOSトランジスター15aのソースが接続されており、NMOSトランジスター18aのドレインとNMOSトランジスター17aのソースが接続されている。
【0027】
また、PMOSトランジスター15aのドレインとNMOSトランジスター17aのドレインが接続されている。さらに、PMOSトランジスター14aのゲートとドレインが接続されており、NMOSトランジスター18aのゲートとドレインが接続されている。従って、PMOSトランジスター14a及びNMOSトランジスター18aは、ソース−ドレイン間に流れる電流が大きいほどソース−ドレイン間の電圧降下が大きくなるダイオードとして機能する。
【0028】
すなわち、PMOSトランジスター14a、15a及びNMOSトランジスター17a、18aにより、電源電位VregからPMOSトランジスター14aのソース−ドレイン間の電圧を引いた電位をハイレベル、グランド電位にNMOSトランジスター18aのドレイン−ソース間の電圧を加えた電位をローレベルとして出力するクランプ機能付きインバーター回路が構成されている。
【0029】
このように、クランプ回路12aは、PMOSトランジスター13aとNMOSトランジスター16aにより構成されるインバーター回路とPMOSトランジスター14a、15a及びNMOSトランジスター17a、18aにより構成されるクランプ機能付きインバーター回路が直列に接続された構成により、デジタル入力信号2の最上位ビット7(D7)に対して電圧レベルがクランプされたビットデータ(D7a)を出力するようになっている。
【0030】
同様に、クランプ回路12bは、PMOSトランジスター13bとNMOSトランジスター16bにより構成されるインバーター回路とPMOSトランジスター14b、15b及びNMOSトランジスター17b、18bにより構成されるクランプ機能付きインバーター回路が直列に接続された構成により、デジタル入力信号2のビット6(D6)に対して電圧レベルがクランプされたビットデータ(D6a)を出力するようになっている。
【0031】
同様に、クランプ回路12hは、PMOSトランジスター13hとNMOSトランジスター16hにより構成されるインバーター回路とPMOSトランジスター14h、15h及びNMOSトランジスター17h、18hにより構成されるクランプ機能付きインバーター回路が直列に接続された構成により、デジタル入力信号2の最下位ビット0(D0)に対して電圧レベルがクランプされたビットデータ(D0a)を出力するようになっている。
【0032】
図示を省略しているがクランプ回路12c、12d、12e、12f、12gについても同様に、それぞれ、デジタル入力信号2のビット5(D5)、ビット4(D4)、ビット3(D3)、ビット2(D2)、ビット1(D1)に対してそれぞれ電圧レベルがクランプされたビットデータD5a、D4a、D3a、D2a、D1aを出力するようになっている。
【0033】
加算器20は、8個の抵抗22a〜22h、オペアンプ23、抵抗24、25、26を含んで構成されている。
【0034】
8個の抵抗22a〜22hの一端にはそれぞれクランプ回路12a〜12hが出力するビットデータD7a〜D0aが供給され、抵抗22a〜22hの他端は、オペアンプ23の反転入力端子(−端子)に共通接続されている。
【0035】
抵抗24の一端には電源電位Vregが供給され、抵抗25の一端にはグランド電位が供給され、抵抗24の他端と抵抗25の他端はオペアンプ23の非反転入力端子(+端子)に共通接続されている。
【0036】
抵抗26の両端は、それぞれオペアンプ23の反転入力端子(−端子)と出力端子に接続されている。
【0037】
オペアンプ23の電源端子とグランド端子にはそれぞれ電源電位Vregとグランド電位(0V)が供給される。また、オペアンプ23の非反転入力端子(+端子)には、抵抗24と抵抗25により電源電位Vregとグランド電位(0V)の差の電圧が抵抗分圧された基準電位Vrefが供給される。抵抗24、25の抵抗値をそれぞれR11、R12とすると、基準電位Vref=R12/(R11+R12)Vregとなる。
【0038】
ここで、ビットデータD7a、D6a、・・・、D0aの電圧レベルをそれぞれV、V、・・・、V、8個の抵抗22a、22b、・・・、22hの抵抗値をそれぞれR、R、・・・R、抵抗26の抵抗値をR13とすると、加算器20の出力電圧の電圧値VADDERは次の式(1)により計算される。
【0039】
【数1】

【0040】
加算器20の出力電圧は、ビットD7a〜D0aがすべてローレベル(V7L〜V0L)の時に最大になり、ビットD7a〜D0aがすべてハイレベル(V7H〜V0H)の時に最小になる。そして、加算器20の出力電圧の最大値がVregよりも高いか、加算器20の出力電圧の最小値がグランド電位(0V)よりも低ければ加算器20の出力電圧が飽和するため線形性が確保できない。
【0041】
仮に、クランプ回路10によりクランプされなければ、加算器20に入力されるビットD7a〜D0aのハイレベル(V7H〜V0H)はすべてVregであり、ローレベル(V7L〜V0L)はすべて0Vであるが、本実施形態では、クランプ回路10によりクランプされるので、加算器20に入力されるビットD7a〜D0aのハイレベル(V7H〜V0H)はすべてVregよりも低く、ローレベル(V7L〜V0L)はすべて0Vよりも高い。
【0042】
そのため、抵抗値R13が一定であるとすると、式(1)より、本実施形態では、クランプされない場合と比較して抵抗値R〜Rを小さくすることができる。すなわち、本実施形態では、集積化する場合に抵抗22a〜22hのレイアウトサイズを小さくすることができる。そして、クランプ処理に必要なPMOSトランジスター14a〜14h及びNMOSトランジスター18a〜18hのレイアウトサイズは比較的小さくて済むため、一般的には、D/A変換回路1A全体としてのレイアウトサイズを小さくすることができる。
【0043】
反転増幅器30は、オペアンプ32、抵抗33、34を含んで構成されている。
【0044】
抵抗33の一端には加算器20の出力電圧(電圧値VADDER)が供給され、抵抗33の他端はオペアンプ32の反転入力端子(−端子)に接続されている。
【0045】
抵抗34の両端は、それぞれオペアンプ32の反転入力端子(−端子)と出力端子に接続されている。
【0046】
オペアンプ32の電源端子とグランド端子にはそれぞれ電源電位Vregとグランド電位(0V)が供給される。また、オペアンプ32の非反転入力端子(+端子)には基準電位Vrefが供給される。
【0047】
ここで、抵抗33、34の抵抗値をそれぞれR14、R15とすると、反転増幅器30の出力電圧(すなわちD/A変換回路の出力電圧)の電圧値VDACは次の式(2)により計算される。
【0048】
【数2】

【0049】
そして、式(2)に式(1)を代入すると次の式(3)が得られる。
【0050】
【数3】

【0051】
従って、V、V、・・・、VのハイレベルをそれぞれV7H、V6H、・・・、V0H、ローレベルをV7L、V6L、・・・、V0Lとすると、式(3)より、D/A変換回路の出力電圧(電圧値VDAC)の線形性を確保するためには、次の式(4)を満たすようにV7H〜V0H、V7L〜V0L、R〜Rを調整する必要がある。
【0052】
【数4】

【0053】
図2(A)は、デジタル入力信号2の各ビットの電圧レベルの一例を示しており、図2(B)は、クランプ回路10が出力するデジタル信号の各ビットの電圧レベルの一例を示している。
【0054】
図2(A)に示すように、デジタル入力信号2のビットD7〜D0のハイレベルはすべて3Vであり、ローレベルはすべて0Vである。
【0055】
これに対して、図2(B)に示すように、クランプ回路10が出力するデジタル信号のビットD7a〜D0aのハイレベル(V7H、V6H、・・・、V0H)は1.1V付近が最低電位になるように上位ビットほど低くなり、ローレベル(V7L、V6L、・・・、V0L)は1.1V付近が最高電位になるように上位ビットほど高くなる。すなわち、クランプ回路10が出力するデジタル信号のビットD7a〜D0aの電圧レベルは、1.1V付近を中心とする振幅(ハイレベルとローレベルの電位差)が上位ビットほど小さくなっている。
【0056】
図3は、デジタル入力信号2(D7〜D0)のビット値と加算器20の出力電圧値及びD/A変換回路1Aの出力電圧値の関係の一例を示す図である。
【0057】
図3において、横軸はデジタル入力信号2(D7〜D0)のビット値、縦軸は加算器20の出力電圧値又はD/A変換回路1Aの出力電圧値である。
【0058】
加算器20の出力電圧値は、基準電位Vref(1.1V程度)を中心としてデジタル入力信号2(D7〜D0)のビット値が0から255(=2−1)まで上昇するにつれてほぼ線形に減少する。反転増幅器30によって、基準電位Vrefを基準として加算器20の出力電圧が反転するので、D/A変換回路1Aの出力電圧値は、基準電位Vrefを中心としてデジタル入力信号2(D7〜D0)のビット値が0から255(=2−1)まで上昇するにつれてほぼ線形に上昇する。
【0059】
このように、本実施形態によれば、式(4)を満たすようにV7H〜V0H、V7L〜V0L、R〜Rを調整することにより、簡単な構成でありながら線形性のとれたD/A変換回路を実現することができる。
【0060】
図4は、第1実施形態のD/A変換回路の変形例の構成を示す図である。図4において、図1と同じ構成には同じ符号を付しており、その説明を省略する。
【0061】
図4に示す変形例のD/A変換回路1Aの構成は、図1に示した構成に対して、PMOSトランジスター13a〜13h、NMOSトランジスター16a〜16h、反転増幅器30が削除されている。そして、PMOSトランジスター15aのゲート端子とNMOSトランジスター17aのゲート端子、PMOSトランジスター15bのゲート端子とNMOSトランジスター17bのゲート端子、・・・、PMOSトランジスター15hのゲート端子とNMOSトランジスター17hのゲート端子には、それぞれデジタル入力信号2の各ビットD7、D6、・・・、D0が供給され、加算器20の出力電圧がD/A変換回路1Aの出力電圧になっている。
【0062】
すなわち、PMOSトランジスター13aとNMOSトランジスター16a、PMOSトランジスター13bとNMOSトランジスター16b、・・・、PMOSトランジスター13hとNMOSトランジスター16hによってそれぞれ構成される8個のインバーター回路がないので、ビットD7〜D0の電圧が図2(A)に示したハイレベルの電圧であればビットD7a〜D0aの電圧は図2(B)に示したローレベルの電圧になり、ビットD7〜D0の電圧が図2(A)に示したローレベルの電圧であればビットD7a〜D0aの電圧は図2(B)に示したハイレベルの電圧になる。従って、式(1)より、加算器20の出力電圧をD/A変換回路1Aの出力電圧とすれば、デジタル入力信号2(D7〜D0)のビット値の増加、減少に応じて、出力電圧がそれぞれ増加、減少するD/A変換回路を実現することができる。
【0063】
以上説明したように、第1実施形態のD/A変換回路によれば、デジタル入力信号2のビット数と同じ数のクランプ回路12a〜12hと1つの加算器20があればD/A変換を実現することができる。従って、第1実施形態のD/A変換回路は、入力ビット数が多くなっても必要なトランジスターの数は線形に増えるだけなので、比較的小さい面積で集積化可能である。
【0064】
また、第1実施形態のD/A変換回路は、デルタシグマ型D/A変換回路のような帰還回路が存在しないので安定性と高速動作を維持することができる。
【0065】
さらに、クランプ回路12a〜12hによりクランプされたハイレベル又はローレベルの各ビットが加算器に入力されるので、入力ビット数が増えても加算器の出力電圧を飽和させないように調整することが比較的容易である。
【0066】
なお、本実施形態における8個のクランプ回路12a〜12hは、本発明における「クランプ電圧生成手段」として機能する。また、PMOSトランジスター15a〜15hとNMOSトランジスター17a〜17hにより構成される8個のインバーター回路は、本発明における「CMOSインバーター」として機能する。また、PMOSトランジスター14a〜14h、NMOSトランジスター18a〜18hは、本発明における「電圧クリップ手段」として機能する。また、加算器20は、本発明における「電圧加算手段」として機能する。また、反転増幅器30は、本発明における「反転増幅手段」として機能する。
【0067】
(2)圧電発振器
図5は、D/A変換回路1Aを備えた圧電発振器の構成例を示す図である。
【0068】
本実施形態の圧電発振器100Aは、圧電振動子110と発振制御用IC(Integrated Circuit)200を含んで構成されている。
【0069】
圧電振動子110は、逆圧電効果を利用して一定の周波数で振動する圧電素子であり、例えば、水晶振動子やセラミック振動子、ニオブ酸リチウム振動子、タンタル酸リチウム振動子などの単結晶材料を用いた振動子や、酸化亜鉛圧電薄膜振動子、酸化アルミニウム圧電薄膜振動子などの圧電性薄膜を用いた振動子等である。
【0070】
発振制御用IC200は、D/A変換回路(DAC)1A、基準電圧発生器210、オフセット調整回路220、メモリーインターフェース(I/F)回路230、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)240、デコーダー250、電圧制御発振回路260を含んで構成されている。
【0071】
基準電圧発生器210は、電源端子(図示省略)から供給される電源電圧を所定の電圧レベルに変換するとともに安定化させて基準電圧211を発生させる。
【0072】
オフセット調整回路220は、D/A変換回路1Aの出力電圧に応じて基準電圧211のオフセットを調整し、所望の電圧レベルの基準電圧221を生成する。
【0073】
メモリーインターフェース回路230は、外部端子205、206、207を介して、それぞれチップセレクト信号、クロック信号、データ信号(アドレスデータ、リード/ライト制御信号、ライトデータ等)が入力され、EEPROM240やレジスター(図示省略)の所定のビットにライトデータを書き込む処理を行う。
【0074】
EEPROM240には、例えば、製品出荷時の検査工程において、メモリーインターフェース回路230を介して、基準電圧221が所望の電圧レベルになるように基準電圧211のオフセットを調整するためのデータ(オフセット調整データ)と電圧制御発振回路260の発振信号209の中心周波数を所望の周波数に調整するためのデータ(周波数調整データ)が書き込まれている。
【0075】
D/A変換回路1Aは、図1に示したデジタル入力信号2としてEEPROM240に記憶されたオフセット調整データが入力され、オフセット調整データに応じたレベルの電圧を出力する。
【0076】
デコーダー250は、EEPROM240に記憶された周波数調整データをnビットの制御信号251にデコードする。
【0077】
電圧制御発振回路260は、外部端子201、202を介して圧電振動子110と接続されており、圧電振動子110を所定の周波数範囲で発振させて発振信号209を出力する。ここで、制御信号251によって、発振信号209の中心周波数が所望の周波数になるように調整され、外部端子203を介して外部から供給される制御電圧208と基準電圧221の差に応じて、発振信号209の周波数が所定の周波数範囲で変化する。
【0078】
このように、圧電発振器100Aは、制御電圧に応じて出力周波数を制御可能な圧電発振器として機能する。
【0079】
図6は、オフセット調整回路220の構成例を示す図である。
【0080】
オフセット調整回路220は、オペアンプ225、抵抗226、227を含んで構成されている。
【0081】
抵抗226の一端には入力端子222を介して基準電圧211が供給され、抵抗226の他端はオペアンプ225の反転入力端子(−端子)に接続されている。
【0082】
抵抗227の両端は、それぞれオペアンプ225の反転入力端子(−端子)と出力端子に接続されている。
【0083】
また、オペアンプ225の非反転入力端子(+端子)には、入力端子223を介してD/A変換回路1Aの出力電圧が供給される。
【0084】
そして、オペアンプ225の出力電圧は、出力端子224を介して基準電圧221として出力される。
【0085】
ここで、基準電圧211の電圧値をVREF1、抵抗226、227の抵抗値をそれぞれR21、R22とすると、オペアンプ225の出力電圧(すなわち基準電圧221)の電圧値VREF2は次の式(5)により計算される。
【0086】
【数5】

【0087】
D/A変換回路1Aの出力電圧の電圧値VDACは、式(4)の条件のもとで式(3)により計算されるので、図7(A)に示すようにオフセット調整データのビット値の増減に対して線形に増減する。
【0088】
同様に、オフセット調整回路220の出力電圧(基準電圧221)の電圧値VREF2は、式(5)により計算されるので、図7(B)に示すようにオフセット調整データのビット値の増減に対して線形に増減する。
【0089】
図8は、電圧制御発振回路260の構成例を示す図である。
【0090】
図8に示すように、電圧制御発振回路260は、n個のNMOSトランジスター267−1〜267−nとn個のNMOSトランジスター268−1〜268−nを含む。
【0091】
NMOSトランジスター267−1〜267−nのソースにはグランド電位(0V)が供給され、各NMOSトランジスター267−k(1≦k≦n)には、kが大きいほど大きい容量値となるように重み付けされたキャパシターが接続されている。同様に、NMOSトランジスター268−1〜268−nのソースにはグランド電位(0V)が供給され、各NMOSトランジスター268−k(1≦k≦n)には、kが大きいほど大きい容量値となるように重み付けされたキャパシターが接続されている。
【0092】
各NMOSトランジスター267−k(1≦k≦n)のゲート端子と各NMOSトランジスター268−kのゲート端子には、入力端子263−kを介して、制御信号251のビット(k−1)が供給される。そして、制御信号251のビット(k−1)がローレベルであれば、NMOSトランジスター267−kと268−kがオンし、そのドレインに接続されたキャパシターが圧電振動子110の負荷として働く。
【0093】
すなわち、nビットの制御信号251のビット値が0〜2−1の範囲で増減すると圧電振動子110の負荷容量が線形に増減する。従って、EEPROM240に適切な周波数調整コードを書き込むことによって、出力端子264を介して出力される発振信号209の中心周波数が所望の周波数になるように調整することができる。
【0094】
また、電圧制御発振回路260は、圧電振動子110の負荷として働く2つのMOSバリキャップ265、266を含む。
【0095】
MOSバリキャップ265のゲート端子は外部端子201を介して圧電振動子110の一端に接続されており、MOSバリキャップ266のゲート端子は外部端子202を介して圧電振動子110の他端に接続されている。
【0096】
MOSバリキャップ265のゲート端子とMOSバリキャップ266のゲート端子には、入力端子262を介して基準電圧221が供給されるようになっている。また、MOSバリキャップ265のバックゲート端子とMOSバリキャップ266のバックゲート端子には入力端子261を介して制御電圧208が供給されるようになっている。
【0097】
図9は、MOSバリキャップ265、266のC−V特性の一例を示す図である。図9に示すように、ゲート端子とバックゲート端子の電位差が0〜VGB1の範囲で増減すれば、MOSバリキャップ265、266の容量値はC〜Cの範囲でほぼ線形に増減する。
【0098】
従って、MOSバリキャップ265、266の容量値がC〜Cの範囲で増減すれば、圧電振動子110の発振周波数(すなわち、出力端子264を介して出力される発振信号209の周波数)を線形に増減させることができる。
【0099】
図10(A)は、制御電圧208の電圧値とMOSバリキャップ265、266のゲート端子の電圧値及びバックゲート端子の電圧値の関係の一例を示す図である。また、図10(B)は、制御電圧208の電圧値と発振信号209の周波数の関係の一例を示す図である。
【0100】
図10(A)において、横軸は制御電圧208の電圧値、縦軸はバリキャップ265、266のゲート端子又はバックゲート端子の電圧値である。点線はオフセット調整前のMOSバリキャップ265、266のゲート端子の電圧値、実線はオフセット調整後のMOSバリキャップ265、266のゲート端子の電圧値をそれぞれ示している。一点鎖線は、MOSバリキャップ265、266のバックゲート端子の電圧値を示している。
【0101】
図10(B)において、横軸は制御電圧208の電圧値、縦軸は発振信号209の周波数である。点線はオフセット調整前の発振信号209の周波数、実線はオフセット調整後の発振信号209の周波数をそれぞれ示している。
【0102】
また、図10(A)及び図10(B)において、仕様上許される制御電圧208の電圧値の範囲はVCMIN〜VCMAXであるものとする。
【0103】
オフセット調整前は、図10(A)に示すように、制御電圧208の電圧値がVCMIN〜VC1の範囲ではゲート端子の電圧値がバックゲート端子の電圧値よりも高くなるため、ゲート端子とバックゲート端子の電位差が0よりも大きい。そのため、MOSバリキャップ265、266の容量値はCよりも大きくなる(図9参照)。従って、制御電圧208の電圧値がVCMINの時のゲート端子とバックゲート端子の電位差がVGB1よりも小さければ、制御電圧208の電圧値がVCMIN〜VC1の範囲で変化した時、MOSバリキャップ265、266の容量値は制御電圧208の電圧値に対してC〜Cの範囲で線形に増減する。
【0104】
一方、制御電圧208の電圧値がVC1〜VCMAXの範囲ではゲート端子の電圧値がバックゲート端子の電圧値よりも低くなるため、ゲート端子とバックゲート端子の電位差が0よりも小さい。そのため、MOSバリキャップ265、266の容量値は、Cよりも小さくなり(図9参照)、制御電圧208の電圧値に対して線形に変化しなくなる。
【0105】
従って、図10(B)に示すように、オフセット調整前は、発振信号209の周波数は、制御電圧208の電圧値がVCMIN〜VC1の範囲では制御電圧208の電圧値に対して線形に変化するが、VC1〜VCMAXの範囲では線形に変化しない。
【0106】
これに対して、オフセット調整後は、図10(A)に示すように、制御電圧208の電圧値がVCMIN〜VCMAXの全範囲において、ゲート端子の電圧値がバックゲート端子の電圧値よりも高くなるため、ゲート端子とバックゲート端子の電位差が0よりも大きい。そのため、MOSバリキャップ265、266の容量値はCよりも大きくなる(図9参照)。従って、制御電圧208の電圧値がVCMINの時のゲート端子とバックゲート端子の電位差がVGB1よりも小さければ、制御電圧208の電圧値がVCMIN〜VCMAXの範囲で変化した時、MOSバリキャップ265、266の容量値は制御電圧208の電圧値に対してC〜Cの範囲で線形に変化する。
【0107】
従って、図10(B)に示すように、オフセット調整後は、制御電圧208がVCMIN〜VCMAXの全範囲で発振信号209の周波数が線形に変化する。
【0108】
本実施形態によれば、第1実施形態のD/A変換回路を用いることにより、電源投入直後に行われる基準電圧のトリミングの精度と安定性、高速動作を両立することができるとともに、小型の圧電発振器を実現することができる。
【0109】
2.第2実施形態
(1)D/A変換回路
図11は、第2実施形態のD/A変換回路の構成を示す図である。
【0110】
本実施形態のD/A変換回路1Bは、クランプ回路10、加算器20、電圧−電流変換回路40を含んで構成され、8ビットのデジタル入力信号2による8ビットコードの値(ビット値)に対応する出力電流を生成する。なお、以下ではデジタル入力信号2のビット数が8であるものとして説明するが、以下の内容は任意のビット数のケースに一般化することができる。
【0111】
クランプ回路10及び加算器20は、それぞれ、図1に示したクランプ回路10及び加算器20と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0112】
電圧−電流変換回路40は、抵抗41、42、45a、45b、PMOSトランジスター43a、43b、47、NMOSトランジスター44a、44b、48、定電流源46を含んで構成されている。
【0113】
抵抗41の一端には電源電位Vregが供給され、抵抗42の一端にはグランド電位が供給され、抵抗41の他端と抵抗42の他端はNMOSトランジスター44aのゲートに共通接続されている。
【0114】
PMOSトランジスター43aのゲートとドレインが接続されており、PMOSトランジスター43aのソースには一定の電源電位Vregが供給される。また、PMOSトランジスター43aのドレインとNMOSトランジスター44aのドレインが接続されており、NMOSトランジスター44aのソースには、抵抗45aの一端が接続されている。
【0115】
同様に、PMOSトランジスター43bのゲートとドレインが接続されており、PMOSトランジスター43bのソースには一定の電源電位Vregが供給される。また、PMOSトランジスター43bのドレインとNMOSトランジスター44bのドレインが接続されており、NMOSトランジスター44bのソースには、抵抗45bの一端が接続されている。
【0116】
抵抗45aの他端と抵抗45bの他端は定電流源46の一端に共通接続されており、定電流源46の他端にはグランド電位(0V)が供給される。
【0117】
ここで、PMOSトランジスター43a、NMOSトランジスター44a、抵抗45aの接続関係とPMOSトランジスター43b、NMOSトランジスター44b、抵抗45bの接続関係は同じである。従って、定電流源46を流れる電流は、NMOSトランジスター44aのゲート電圧とNMOSトランジスター44bのゲート電圧の比に応じて、PMOSトランジスター43a、NMOSトランジスター44a、抵抗45aを流れる電流IとPMOSトランジスター43b、NMOSトランジスター44b、抵抗45bを流れる電流Iに分配される。
【0118】
NMOSトランジスター44aのゲートには、抵抗41と抵抗42により電源電位Vregとグランド電位(0V)の差の電圧が抵抗分圧された基準電位VrefBが供給される。抵抗41、42の抵抗値をそれぞれR14、R15とすると、基準電位VrefB=R15/(R14+R15)Vregとなる。一方、NMOSトランジスター44bのゲートには、加算器20の出力電圧が供給される。
【0119】
PMOSトランジスター47のゲートは、PMOSトランジスター43aのゲートとドレイン、NMOSトランジスター44aのドレインに接続されている。
【0120】
PMOSトランジスター47のソースには一定の電源電位Vregが供給され、NMOSトランジスター48のソースにはグランド電位(0V)が供給される。
【0121】
また、PMOSトランジスター47のドレインとNMOSトランジスター48のゲート、ドレインが接続されている。
【0122】
このPMOSトランジスター43aとPMOSトランジスター47によりカレントミラー回路が形成され、PMOSトランジスター43aに流れる電流Iと等しい電流IDACがPMOSトランジスター47とNMOSトランジスター48に流れる。
【0123】
図12は、デジタル入力信号2(D7〜D0)のビット値と加算器20の出力電圧の関係の一例を示す図である。図12において、横軸はデジタル入力信号2(D7〜D0)のビット値、縦軸は加算器20の出力電圧値である。
【0124】
図12に示すように、加算器20の出力電圧は、基準電圧VrefAを基準として、デジタル入力信号2(D7〜D0)のビット値の増加に対して線形に減少し、ビット値が0の時に最大値になり、ビット値が255の時に最小値になる。なお、基準電圧VrefAは、オペアンプ23の非反転入力端子(+端子)に供給される電圧であり、VrefA=R12/(R11+R12)Vregである。
【0125】
従って、図12に示すように、基準電圧VrefBが加算器20の出力電圧の最大値よりも高くなるように抵抗41、42の抵抗値R14、R15を調整すると、加算器20の出力電圧の増加に対して電流Iが線形に増加するとともに電流I(=IDAC)が線形に減少し、加算器20の出力電圧の減少に対して電流Iが線形に減少するとともに電流I(=IDAC)が線形に増加する。
【0126】
すなわち、D/A変換回路1Bは、デジタル入力信号2(D7〜D0)のビット値の増減に対して線形に増減する電流IDACを出力するD/A変換回路として機能する。
【0127】
第2実施形態のD/A変換回路によれば、第1実施形態のD/A変換回路と同様の効果を奏するとともに、簡単な構成でありながら線形性のとれた電流出力のD/A変換回路を実現することができる。
【0128】
なお、本実施形態における8個のクランプ回路12a〜12hは、本発明における「クランプ電圧生成手段」として機能する。また、PMOSトランジスター15a〜15hとNMOSトランジスター17a〜17hにより構成される8個のインバーター回路は、本発明における「CMOSインバーター」として機能する。また、PMOSトランジスター14a〜14h、NMOSトランジスター18a〜18hは、本発明における「電圧クリップ手段」として機能する。また、加算器20は、本発明における「電圧加算手段」として機能する。また、電圧−電流変換回路40は、本発明における「電圧電流変換手段」として機能する。
【0129】
(2)圧電発振器
図13は、D/A変換回路1Bを備えた圧電発振器の構成例を示す図である。
【0130】
本実施形態の圧電発振器100Bは、センサー素子120と発振制御用IC300を含んで構成されている。
【0131】
センサー素子120は、加えられた所定の物理量(圧力、角速度、加速度等)の大きさに応じて発振周波数が変化するセンサー素子であり、例えば、水晶振動子等の圧電振動子によって実現することができる。
【0132】
発振制御用IC300は、D/A変換回路(DAC)1B、バンドギャップレギュレーター310、センサー電源供給回路320、メモリーインターフェース(I/F)回路330、EEPROM340、発振回路350、カウンター360、機能ロジック370、データインターフェース(I/F)回路380を含んで構成されている。
【0133】
バンドギャップレギュレーター310は、電源端子(図示省略)から供給される電源電圧を所定の電圧レベルに変換するとともに安定化させて電源電圧311を発生させる。
【0134】
センサー電源供給回路320は、D/A変換回路1Bの出力電圧に応じて電源電圧311を所望の電圧レベルに調整し、発振回路350の電源電圧321を生成する。
【0135】
メモリーインターフェース回路330は、外部端子305、306、307を介して、それぞれチップセレクト信号、クロック信号、データ信号(アドレスデータ、リード/ライト制御信号、ライトデータ等)が入力され、EEPROM340やレジスター(図示省略)の所定のビットにライトデータを書き込む処理を行う。
【0136】
EEPROM340には、例えば、製品出荷時の検査工程において、メモリーインターフェース回路330を介して、電源電圧321が所望の電圧レベルになるようにセンサー電源供給回路のゲインを調整するためのデータ(ゲイン調整データ)が書き込まれている。
【0137】
D/A変換回路1Bは、図11に示したデジタル入力信号2としてEEPROM340に記憶されたゲイン調整データが入力され、ゲイン調整データに応じた大きさの電流を出力する。
【0138】
発振回路350は、外部端子301、302を介してセンサー素子120と接続されており、加えられた物理量の大きさに応じてセンサー素子120を所定の周波数範囲で発振させて発振信号351を出力する。また、外部端子308から入力される制御信号により、発振回路350の発振動作を停止させることができるようになっている。
【0139】
カウンター360は、発振信号351のN周期(例えば1周期)の時間をカウントする。
【0140】
機能ロジック370は、カウンター360のカウント値361に基づいて、発振信号351の周波数や当該周波数に対応する物理量の大きさを計算し、測定データ371を生成する。
【0141】
データインターフェース回路380は、測定データ371をシリアルデータに変換し、外部端子303を介して外部から入力されるシリアルクロック信号に同期して、当該シリアルデータを外部端子304を介して外部に送信する。データインターフェース回路380は、例えば、ICバスインターフェースに準拠してシリアルデータを送信する。
【0142】
このように、圧電発振器100Bは、センサー素子120に加わった所定の物理量の大きさを測定可能なセンサー(圧力センサー、角速度センサー、加速度センサー等)として機能する。
【0143】
図14は、センサー電源供給回路320の構成例を示す図である。
【0144】
センサー電源供給回路320は、オペアンプ325、抵抗326、327、NMOSトランジスター328を含んで構成されている。
【0145】
抵抗326の一端はオペアンプ325の反転入力端子(−端子)に接続されており、抵抗326の他端にはグランド電位(0V)が供給される。
【0146】
抵抗327の両端は、それぞれオペアンプ325の反転入力端子(−端子)と出力端子に接続されている。
【0147】
NMOSトランジスター328のドレインはオペアンプ325の反転入力端子(−端子)に接続されており、NMOSトランジスター328のドレインにはグランド電位(0V)が供給される。また、NMOSトランジスター328のゲートは、入力端子323を介してD/A変換回路1BのNMOSトランジスター48のゲートと接続されている。
【0148】
オペアンプ325の非反転入力端子(+端子)には、入力端子322を介して電源電圧311が供給される。
【0149】
そして、オペアンプ325の出力電圧は、出力端子324を介して電源電圧321として出力される。
【0150】
ここで、電源電圧311の電圧値をVREG、抵抗226、227の抵抗値をそれぞれR31、R32、NMOSトランジスター328を流れる電流(ゲイン調整電流)をIadjとすると、オペアンプ325の出力電圧(すなわち電源電圧321)の電圧値VOSCは次の式(6)により計算される。
【0151】
【数6】

【0152】
ここで、先に説明したようにNMOSトランジスター48のゲートとドレインが接続されているので、互いにゲートが接続されたNMOSトランジスター48とNMOSトランジスター328によりカレントミラー回路が形成され、ゲイン調整電流IadjはNMOSトランジスター48に流れる電流IDAC(=I)と等しい。
【0153】
すなわち、ゲイン調整電流Iadjは、図15(A)に示すようにゲイン調整データのビット値の増減に対して線形に増減する。
【0154】
そして、センサー電源供給回路320の出力電圧(電源電圧321)の電圧値VOSCは、式(6)により計算されるので、図15(B)に示すようにゲイン調整データのビット値の増減に対して線形に増減する。
【0155】
図16は、発振回路350の構成例を示す図である。
【0156】
図16に示すように、発振回路350は、PMOSトランジスター354とNMOSトランジスター355を含む。PMOSトランジスター354のソースには、電源端子352を介して、センサー電源供給回路320から電源電圧321(電圧値VOSC)が供給され、NMOSトランジスター355のソースにはグランド電位(0V)が供給される。そのため、PMOSトランジスター354とNMOSトランジスター355により形成されるインバーター回路の出力信号の振幅は、電源電圧321の電圧値VOSCの増減に応じて増減する。
【0157】
そして、センサー素子120の両端に、このインバーター回路の出力電圧とその反転電圧が加わることにより発振動作が行われるが、この発振周波数はインバーター回路の出力の振幅に対して線形になる。すなわち、電源電圧321の電圧値VOSCの増減に対して、発振周波数が線形に増減する。
【0158】
また、発振回路350は、PMOSトランジスター356とNMOSトランジスター357を含む。PMOSトランジスター356のソースには、電源端子352を介して、センサー電源供給回路320から電源電圧321(電圧値VOSC)が供給され、NMOSトランジスター357のソースにはグランド電位(0V)が供給される。
【0159】
そして、PMOSトランジスター354とNMOSトランジスター355により形成されるインバーター回路の出力信号は、PMOSトランジスター356とNMOSトランジスター357により形成されるインバーター回路に入力され、発振回路350は出力端子353を介して発振信号351を出力する。従って、発振信号351の周波数は、電源電圧321の電圧値VOSCの増減に対して線形に増減する。
【0160】
また、本実施形態では、外部端子308を介して、PMOSトランジスター358のゲートとNMOSトランジスター359のゲートに発振動作を停止させるか否かを制御する制御信号が供給される。この制御信号がハイレベルであればPMOSトランジスター358がオフ、NMOSトランジスター359がオンになるので発振動作が行われ、この制御信号がローレベルであればPMOSトランジスター358がオン、NMOSトランジスター359がオフになるので発振動作が停止する。
【0161】
本実施形態によれば、第2実施形態のD/A変換回路を用いることにより、電源投入直後に行われるセンサー電源のトリミングの精度と安定性、高速動作を両立することができるとともに、小型の圧電発振器を実現することができる。
【0162】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0163】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0164】
1A〜1B D/A変換回路、2 デジタル入力信号、10 クランプ回路、12a〜12h クランプ回路、13a〜13h PMOSトランジスター、14a〜14h PMOSトランジスター、15a〜15h PMOSトランジスター、16a〜16h NMOSトランジスター、17a〜17h NMOSトランジスター、18a〜18h NMOSトランジスター、20 加算器、22a〜22h 抵抗、23 オペアンプ、24〜26 抵抗、30 反転増幅器、32 オペアンプ、33〜34 抵抗、40 電圧−電流変換回路、41〜42 抵抗、43a〜43b PMOSトランジスター、44a〜44b NMOSトランジスター、45a〜45b 抵抗、46 定電流源、47 PMOSトランジスター、48 NMOSトランジスター、100A〜100B 圧電発振器、110 圧電振動子、120 センサー素子、200 発振制御用IC、201〜207 外部端子、208 制御電圧、209 発振信号、210 基準電圧発生器、211 基準電圧、220 オフセット調整回路、221 基準電圧、222〜223 入力端子、224 出力端子、225 オペアンプ、226〜227 抵抗、230 メモリーインターフェース回路、240 EEPROM、250 デコーダー、251 制御信号、260 電圧制御発振回路、261〜262 入力端子、263−1〜263−n 入力端子、264 出力端子、265〜266 MOSバリキャップ、267−1〜267−n NMOSトランジスター、268−1〜268−n NMOSトランジスター、300 発振制御用IC、301〜308 外部端子、310 バンドギャップレギュレーター、311 電源電圧、320 センサー電源供給回路、321 電源電圧、322〜323 入力端子、324 出力端子、325 オペアンプ、326〜327 抵抗、328 NMOSトランジスター、330 メモリーインターフェース回路、340 EEPROM、350 発振回路、351 発振信号、352 電源端子、353 出力端子、354 PMOSトランジスター、355 NMOSトランジスター、356 PMOSトランジスター、357 NMOSトランジスター、358 PMOSトランジスター、359 NMOSトランジスター、360 カウンター、361 カウント値、370 機能ロジック、371 測定データ、380 データインターフェース回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
nビット(nは2以上の整数)のデジタル入力信号のビット値に応じた大きさのアナログ信号を出力するD/A変換回路であって、
前記デジタル入力信号の各ビットに対応づけて、ハイレベル及びローレベルがともにクランプされた1ビットのデジタル信号をそれぞれ生成するn個のクランプ電圧生成手段と、
前記n個のクランプ電圧生成手段が生成するnビットのデジタル信号の電圧を加算する電圧加算手段と、を含み、
前記n個のクランプ電圧生成手段の各々は、
前記デジタル入力信号の対応するビットの電圧に応じて、ハイレベル又はローレベルを出力するCMOSインバーターと、
電源電位とグランド電位をそれぞれクリップして第1の電位と第2の電位を生成し、当該第1の電位と当該第2の電位を前記CMOSインバーターの出力のハイレベル及びローレベルとして供給する電圧クリップ手段と、を備える、D/A変換回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記n個のクランプ電圧生成手段のうち、より上位のビットに対応づけられたクランプ電圧生成手段ほど、より高いハイレベルとより低いローレベルにクランプされた前記デジタル信号を出力する、D/A変換回路。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記電圧加算手段の加算結果の電圧を反転増幅する反転増幅手段を含む、D/A変換回路。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記電圧加算手段の加算結果の電圧を電流に変換する電圧電流変換手段を含む、D/A変換回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のD/A変換回路と、
圧電振動子と、
前記圧電振動子を励振して発振信号を出力する発振回路と、
前記D/A変換回路の出力に基づいて、前記発振信号の周波数を調整する発振周波数調整手段と、を含む、圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−101212(P2011−101212A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254697(P2009−254697)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】