説明

DSRC車載器、路車間狭域無線通信システム、プログラム

【課題】DSRC車載器とDSRC路上機との路車間通信が行われた場合に、受信電波の強度の波形から、DSRC路上機の通信エリア内での路車間通信なのかDSRC路上機の通信エリア外での路車間通信なのかを正確に判定すること。
【解決手段】受信電波の強度が下側閾値からピークに到達するまでに増加した値の絶対値を下側閾値からピークに到達するまでに経過した時間で除算することで上昇勾配値を算出し、受信電波の強度がピークに達した後に下限閾値に到達するまでに減少した値の絶対値をピークに達した後に下側閾値に到達するまでに経過した時間で除算することで下降勾配値を算出する(S135)。下降勾配値が上昇勾配値以下である場合には(S140:NO)、当該DSRC車載器30がDSRC路上機20の通信エリア外に位置すると判定する(S160)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路上機と路上機の通信エリア内に位置する車載器との間で行う路車間通信に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の走行経路の近傍に設置された路側装置(いわゆる路上機)と車両に搭載された車載装置(いわゆる車載器)との間で路車間通信を行う路車間狭域無線通信(DSRC)システムが知られている。
【0003】
この種のDSRCシステムにおいては、各路上機は、所望のエリアに電波が届くように送信アンテナに指向性を持たせるとともに、適切な出力で電波を送信するよう設定される。一方、車載器は、受信下限閾値レベルよりも強い電波を受信した場合に、その電波の送信元の路上機との間で路車間通信を開始する。なお、通信エリア外の信号を除去するため、受信下限閾値レベルを設定している。
【0004】
また、特許文献1に記載の技術では、車載器が、受信下限閾値レベルをチャンネルごとに変更可能に構成されており、他チャンネルの受信下限閾値レベルを高く設定することによって他チャンネルの信号等の不要な信号を除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−172496号公報(第5頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のようなDSRCシステムにおいては、次のような問題があった。すなわち、所望の通信エリアに完全に合致した路上機の送信アンテナの指向性を設定することは困難であり、路上機が送信する電波が所望の通信エリアの外へ届くおそれがあった。さらに、車両や建物による電波の遮蔽や反射が発生しても路車間で確実に通信を実現するためには、路上機から送信する電波をある程度強く設定する必要があり、このことも路上機が送信する電波が所望の通信エリアの外へ届く一因となっていた。その結果、本線ではなく反対車線や側道といった通信エリア外を走行する車両に搭載された車載器と路上機とが通信するおそれがあった。なお、路上機が送信する電波に載せられたデータは、路上機の通信エリア外を走行する車両に搭乗する乗員にとっては関係のない情報であることが多い。しかし、上述のように通信が成立すると、上述のデータが車載器に受信されて車両の乗員に報知されることになる。なお、こうした問題は、特許文献1の技術では解決できない。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、DSRC車載器とDSRC路上機との路車間通信が行われた場合に、受信電波の強度の波形から、DSRC路上機の通信エリア内での路車間通信なのかDSRC路上機の通信エリア外での路車間通信なのかを正確に判定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係るDSRC車載器は、データが載せられた電波を本線道路の順車線上に予め設定される通信エリア内に送信可能なDSRC路上機との間で路車間通信を行う機能を備える。
【0009】
また、上述のDSRC車載器は、受信部と、検出部と、判定部と、を備える。このうちの受信部が、DSRC路上機から送信される電波を受信する。そして、検出部が、受信部が受信した電波の強度を検出する。さらに、判定部が、検出部によって検出された電波の強度が下側閾値を超えてから上側閾値を超えてピークに達した後に下側閾値まで減少した場合に、上述の電波の強度が下側閾値からピークに到達するまでに増加した値の絶対値を下側閾値からピークに到達するまでに経過した時間で除算することで第一算出値を算出する。また、判定部が、検出部によって検出された電波の強度がピークに達した後に下限閾値に到達するまでに減少した値の絶対値をピークに達した後に下側閾値に到達するまでに経過した時間で除算することで第二算出値を算出する。そして、判定部が、第二算出値が第一算出値以上である場合には、当該DSRC車載器がDSRC路上機の通信エリア内に位置すると判定し、一方、第二算出値が第一算出値未満である場合には、当該DSRC車載器がDSRC路上機の通信エリア外に位置すると判定する。
【0010】
このように構成された本発明のDSRC車載器によれば、例えば車載器を搭載する車両が本線道路の順車線を走行中であるなど、DSRC路上機とDSRC路上機の通信エリア内に位置するDSRC車載器とが路車間通信を行った場合に、そのことをDSRC車載器側で確実に認識することができる。また、例えば車載器を搭載する車両が反対車線を走行中であるなど、DSRC路上機とDSRC路上機の通信エリア外に位置するDSRC車載器とが路車間通信を行った場合に、そのことをDSRC車載器側で認識することができる。
【0011】
つまり、本発明のDSRC車載器によれば、DSRC路上機との路車間通信が行われた場合に、受信電波の強度の波形から、DSRC路上機の通信エリア内での路車間通信なのかDSRC路上機の通信エリア外での路車間通信なのかを正確に判定することができる。
【0012】
ところで、上述のようにDSRC路上機の通信エリアが本線道路の順車線上に設定される場合には、本線道路脇の側道が通信エリア外となる。しかし、側道は本線道路脇にあるために両者間の距離が短く、路上機が送信する電波が通信エリア外であっても届きやすい。
【0013】
そこで、請求項2のように、判定部が、検出部によって検出された電波の強度が下側閾値を超えてから上側閾値には到達せずにピークに達した後に下側閾値まで減少した場合には、当該DSRC車載器がDSRC路上機の通信エリア外に位置すると判定することが考えられる。
【0014】
このように構成すれば、例えば車載器を搭載する車両が本線道路脇の側道を走行中であるなど、DSRC路上機とDSRC路上機の通信エリア外に位置するDSRC車載器とが路車間通信を行った場合でも、そのことをDSRC車載器側で認識することができる。
【0015】
ところで、上述のように、DSRC路上機とDSRC路上機の通信エリア外に位置するDSRC車載器とが路車間通信を行うことで路上機が送信する電波に載せられたデータを受信した場合、その受信したデータは、路上機の通信エリア外を走行する車両に搭乗する乗員にとっては関係のない情報であることが多い。そして、上述のように通信が成立すると、上述のデータが車載器に受信されて車両の乗員に報知されることになる。
【0016】
そこで、DSRC路上機とDSRC路上機の通信エリア外に位置するDSRC車載器とが路車間通信を行うことで路上機が送信する電波に載せられたデータを受信した場合、その受信したデータを報知しないようにすることが考えられる。
【0017】
具体的には、請求項3のように、本発明のDSRC車載器は、さらに、データ受付部と、報知部と、報知制御部と、を備える。データ受付部が、受信部が受信した電波に載せられたデータを受け付ける。また、報知部は、データ受付部が受け付けたデータを報知可能である。そして、判定部によって当該DSRC車載器がDSRC路上機の通信エリア内に位置すると判定された場合には、報知制御部が、データ受付部が受け付けたデータを報知部に報知させる。一方、判定部によって当該DSRC車載器がDSRC路上機の通信エリア外に位置すると判定された場合には、報知制御部が、データ受付部が受け付けたデータを報知部に報知させないようにする。
【0018】
このように構成すれば、DSRC路上機とDSRC路上機の通信エリア外に位置するDSRC車載器とが路車間通信を行うことでDSRC路上機が送信する電波に載せられたデータを当該DSRC車載器が受信した場合でも、その受信したデータを乗員に報知しないようにすることができる。
【0019】
ところで、車載器が搭載される車両が渋滞などによって本線をスムーズに走行できない場合がある。このような場合、DSRC車載器がDSRC路上機の通信エリア内に位置するとともに、検出する電波の強度も良好であるにも拘わらず、検出する電波の強度が下側閾値までなかなか減少せずに、上述のような判定部による判定が実行できないという問題が生じるおそれがある。すると、受信したデータが乗員にとって有用である場合でも乗員に報知することができない。
【0020】
そこで、検出された電波の強度が下側閾値を超えてからの経過時間が、所定時間に到達したときには、データ受付部が受け付けたデータを報知するか否かの選択入力を受け付けるようにすることが考えられる。
【0021】
具体的には、請求項4のように、本発明のDSRC車載器は、さらに、選択入力部を備える。判定部が、検出部によって検出された電波の強度が下側閾値を超えた場合において、前記電波の強度が下側閾値を超えてからの経過時間が、所定時間に到達したか否かを判定する。そして、前記経過時間が所定時間に到達したと判定部によって判定された場合には、選択入力部が、データ受付部が受け付けたデータを報知するか否かの選択入力を受け付ける。そして、データ受付部が受け付けたデータを報知する旨の選択入力を選択入力部が受け付けた場合には、報知制御部が、データ受付部が受け付けたデータを前記報知部に報知させる。一方、データ受付部が受け付けたデータを報知しない旨の選択入力を選択入力部が受け付けた場合には、報知制御部が、データ受付部が受け付けたデータを報知部に報知させないようにする。
【0022】
このように構成すれば、車載器が搭載される車両が渋滞などによって本線をスムーズに走行できず、上述のような判定部による判定が実行できない場合でも、受信したデータを乗員に報知することができる。
【0023】
なお、本発明は、路車間狭域無線通信システムとしても実現可能である。具体的には、上記課題を解決するためになされた請求項5に係る路車間狭域無線通信システムは、データが載せられた電波を予め設定される通信エリア内に送信可能なDSRC路上機と、請求項1〜4の何れかに記載のDSRC車載器と、を備え、前記DSRC路上機と前記DSRC車載器との間で路車間通信を行うことを特徴とする。
【0024】
なお、上述したDSRC車載器の判定部としての機能をプログラムによって実現してもよい(請求項6)。このようなプログラムを、DSRC車載器が内蔵するコンピュータに実行させれば、そのDSRC車載器は、上述した本発明のDSRC車載器と同様の作用及び効果を奏する。また、プログラムはネットワーク等を用いて流通させることも可能である上、DSRC車載器におけるプログラムの入れ替えは、部品の入れ替えに比較して容易である。したがって、DSRC車載器の機能向上を容易に行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】通信システム1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】DSRC車載器30の無線部32が受信した電波の強度を示す説明図であり、(a)はDSRC車載器30を搭載した車両がDSRC路上機20の通信エリア内に位置する場合の受信電波の強度を示し、(b)はDSRC車載器30を搭載した車両がDSRC路上機20の通信エリア外に位置する場合の受信電波の強度を示す。
【図3】適正通信判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。なお、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
[1.通信システム1の構成の説明]
図1に示すように、路車間狭域無線通信システムとしての通信システム1は、DSRC(専用狭域通信)車載器30、イグニッションスイッチ80等を備えた車両側の装置が、図示しないETC(Electronic Toll Collection)路上機やDSRC路上機20等の路側の装置とデータのやりとりをするよう構成されている。なお、本実施形態においては、路上機20から車両に対して送信される情報をサービス情報とも呼ぶこととする。
【0027】
[1.1.DSRC路上機20の構成の説明]
図1に示すように、DSRC路上機20は、制御部21と、無線部22と、を備えている。制御部21は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイクロコンピュータとして構成されており、予め通信線を介して接続されたデータセンタ(図示省略)から送られた交通情報等のデータを載せた電波を、無線部22を制御して路上機アンテナから本線道路を含む所定の領域(通信エリア)に繰り返し送信する。
【0028】
ここで、通信エリアについて説明する。DSRC路上機20は、本線道路の道路脇に設置され、当該DSRC路上機20の設置場所に接近してくる車両に向けて電波を送信するように設定される。このことにより、DSRC路上機20の通信エリアは、DSRC路上機20の設置場所から本線道路の上流側に設定される。このとき通信エリアに接近する車両が走行する本線道路の車線を順車線とすると、通信エリアは本線道路の順車線上に設定される。また、本線道路の車線のうち順車線の反対側の車線である反対車線と本線道路に沿って設置される側道とは、DSRC路上機20の通信エリア外になる。
【0029】
[1.2.DSRC車載器30の構成の説明]
図1に示すように、DSRC車載器30は、路上機20からサービス情報を受信する。
具体的にDSRC車載器30は、車載器制御部31と、無線部32と、通信部34と、記憶部35と、表示部36と、スピーカ37と、入力操作部38と、ICカード制御部39と、ICカードコネクタ40とを備えている。
【0030】
車載器制御部31は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイクロコンピュータとして構成されており、このDSRC車載器30全体の制御を司る。
無線部32は、車載器アンテナを介して電波を送受信することによってDSRC車載器30とDSRC路上機20との通信を実現する。つまり、無線部32は、車載器制御部31からDSRC路上機20に送信するよう指令を受けたデータに応じて所定周波数の搬送波を変調して送信し、車載器アンテナを介して電波を受信すると、受信した電波を復調し、得られたデータを車載器制御部31に送る。
【0031】
また、無線部32は、受信電波の強度が下側閾値を越えた場合には、キャリア検出信号を車載器制御部31に出力する。なお、本実施形態では、下側閾値が−65dBmに設定されている。
【0032】
記憶部35は、周知の書込可能なメモリとして構成されており、車載器制御部31がこの記憶部35への書き込み、および読み出しを行う。なお、DSRC路上機20から受信した電波に載せられたデータについては、この記憶部35に車載器制御部31によって記憶される。また、表示部36は周知のディスプレイとして構成されており、車載器制御部31からの画像信号に応じた画像を表示させる。
【0033】
入力操作部38は、例えばスイッチやキーボード等、当該システムのユーザによる操作を受け付けるためのインタフェースとして構成されている。なお、入力操作部38を介して入力された操作は、車載器制御部31にて検出される。
【0034】
ICカード制御部39は、ICカードコネクタ40にセットされたICカード90の読み書きを行う。具体的には、ICカード制御部39は、車載器制御部31による指令に応じてICカード90の処理部91に対して所定のデータを読み書きする指令を送信し、この指令を受けた処理部91が、ICカード90の記憶部92に記憶されたデータの読み書きを実施する。
【0035】
このような処理によって、ICカード90に対して、利用した有料道路のインターチェンジや駐車場を特定するための情報の読み書きが実施される。また、ICカード90からは、ICカード90の所有者(ユーザ)を特定するための情報や、カードの有効期限等の情報が読み出されることになる。
【0036】
また、DSRC車載器30の無線部32が受信する電波の強度をモニタしながら走行し、横軸時間、縦軸電波強度のグラフを作ると、逆V型の波形となる。通信エリア内の場合は、図2(a)に例示するように、DSRC路上機20に向かっている際は緩やかな上り勾配で、路側機アンテナの真下手前で頂点に達し、このときの電力は極めて高い。そして、一気に急な下り勾配で落ちていく。このような、カーブが得られた場合は、通信エリア内だと判定し、受信情報をDSRC車載器30から使用者に伝えるとよい。一方、通信エリア外の場合は、図2(b)に例示するように、逆V型波形の形が緩やかな上り勾配から急な下り勾配への変化とはならず、それ以外の様々な勾配となり、かつ頂点の電力が低いので、このような波形の場合は、例え良好に通信できても、通信エリア外と判定し、受信情報をDSRC車載器30から使用者には伝えないようにする。
【0037】
なお、車載器制御部31は、判定部および報知制御部に該当する。また、無線部32は、受信部、検出部およびデータ受付部に該当する。また、表示部36およびスピーカ37は、報知部に該当する。また、入力操作部38は、選択入力部に該当する。
【0038】
[2.適正通信判定処理の説明]
次に、通信システム1のDSRC車載器30の車載器制御部31が実行する適正通信判定処理について図2および図3のフローチャートを参照して説明する。
【0039】
本処理はDSRC車載器30の電源状態がオンである場合に他の処理から独立して繰り返し実行される。
まず、キャリア検出信号を受信したか否かを判断する(S105)。このキャリア検出信号は、受信電波の強度が下側閾値を越えた場合に無線部32から出力される。なお、本実施形態では、上述のように下側閾値が−65dBmに設定されている。
【0040】
キャリア検出信号を受信していない場合には(S105:NO)、キャリア検出信号を受信するまで待機する。一方、キャリア検出信号を受信した場合には(S105:YES)、タイマーによる計時をスタートさせる(S110)。
【0041】
続いて、受信電波の強度がピークを超えたか否かを判断する(S115)。
受信電波の強度がピークを超えていない場合には(S115:NO)、受信電波の強度が下側閾値未満であるか否かを判断する(S145)。受信電波の強度が下側閾値未満である場合には(S145:YES)、路車間通信を行うまでの電波強度に達していないと判断してS105に戻る。
【0042】
また、受信電波の強度がピークを超えていない場合において(S115:NO)、受信電波の強度が下側閾値以上である場合に(S145:NO)、タイムアップであるか否かを判断する(S150)。すなわち、キャリア検出信号を受信してからの経過時間が所定時間以上であるか否かを判断する。タイムアップではない場合には(S150:NO)、引き続き受信電波の強度をモニタリングするためにS115に戻る。一方、タイムアップである場合には(S150:YES)、渋滞などによって受信電波の強度のモニタリングが適切に行えない状況であると判断してリターンする。
【0043】
ところで、S115にて受信電波の強度がピークを超えた場合には(S115:YES)、そのピーク値が上側閾値以上であるか否かを判断する(S120)。なお、本実施形態では、上側閾値が−45dBmに設定されている。
【0044】
受信電波のピーク値が上側閾値未満である場合には(S120:NO)、DSRC車載器30を搭載する車両が本線脇の側道を走行中であり、当該DSRC車載器30がDSRC路上機20の通信エリア外に位置すると判定し(S160)、リターンする。
【0045】
受信電波のピーク値が上側閾値未満である場合には(S120:NO)、受信電波の強度が下側閾値未満であるか否かを判断し(S157)、受信電波の強度が下側閾値未満である場合には(S157:YES)、DSRC車載器30を搭載する車両が本線脇の側道を走行中であり、当該DSRC車載器30がDSRC路上機20の通信エリア外に位置すると判定し(S160)、リターンする。一方、受信電波の強度が下側閾値以上である場合には(S157:NO)、タイムアップであるか否かを判断する(S165)。すなわち、キャリア検出信号を受信してからの経過時間が所定時間以上であるか否かを判断する。タイムアップではない場合には(S165:NO)、引き続き受信電波の強度をモニタリングするためにS165に戻る。一方、タイムアップである場合には(S165:YES)、渋滞などによって受信電波の強度のモニタリングが適切に行えない状況であると判断してリターンする。
【0046】
一方、受信電波のピーク値が上側閾値以上である場合には(S120:YES)、受信電波の強度が下側閾値未満であるか否かを判断する(S125)。
受信電波の強度が下側閾値以上である場合には(S125:NO)、タイムアップであるか否かを判断する(S130)。すなわち、キャリア検出信号を受信してからの経過時間が所定時間以上であるか否かを判断する。タイムアップではない場合には(S130:NO)、引き続き受信電波の強度をモニタリングするためにS125に戻る。一方、タイムアップである場合には(S130:YES)、渋滞などによって受信電波の強度のモニタリングが適切に行えない状況であると判断してリターンする。
【0047】
また、受信電波の強度が下側閾値未満である場合には(S125:YES)、上昇勾配値(第一算出値)および下降勾配値(第二算出値)を算出する(S135)。なお、上昇勾配値については、受信電波の強度が下側閾値からピークに到達するまでに増加した値の絶対値を下側閾値からピークに到達するまでに経過した時間で除算することで算出する。また、下降勾配値については、受信電波の強度がピークに達した後に下限閾値に到達するまでに減少した値の絶対値をピークに達した後に下側閾値に到達するまでに経過した時間で除算することで算出する。
【0048】
続いて下降勾配値が上昇勾配値よりも大きいか否かを判断する(S140)。
下降勾配値が上昇勾配値よりも大きい場合には(S140:YES)、DSRC車載器30を搭載する車両が本線道路の順車線を走行中であり、当該DSRC車載器30がDSRC路上機20の通信エリア内に位置すると判定し(S155、図2(a)参照)、リターンする。
【0049】
一方、下降勾配値が上昇勾配値以下である場合には(S140:NO)、DSRC車載器30を搭載する車両が反対車線を走行中であり、当該DSRC車載器30がDSRC路上機20の通信エリア外に位置すると判定し(S160、図2(b)参照)、リターンする。
【0050】
[3.データ報知処理の説明]
次に、通信システム1のDSRC車載器30の車載器制御部31が実行するデータ報知について説明する。
【0051】
適正通信判定処理によって当該DSRC車載器30がDSRC路上機20の通信エリア内に位置すると判定された場合には、車載器制御部31は、DSRC路上機20から受信した電波に載せられたデータを記憶部35から読み出して表示部36やスピーカ37を用いて報知させる。
【0052】
なお、適正通信判定処理によって当該DSRC車載器30がDSRC路上機20の通信エリア外に位置すると判定された場合には、車載器制御部31は、上述のような報知を実行しない。
【0053】
また、適正通信判定処理によって受信電波の強度のモニタリングが適切に行えない状況であると判断された場合には、車載器制御部31は、DSRC路上機20から受信した電波に載せられたデータを報知するか否かの選択入力を入力操作部38から受け付け、ユーザが所望する場合にはデータを記憶部35から読み出して表示部36やスピーカ37を用いて報知させる。
【0054】
[4.実施形態の効果]
本実施形態の通信システム1によれば、DSRC車載器30とDSRC路上機20との路車間通信が行われた場合に、受信電波の強度の波形から、DSRC路上機20の通信エリア内での路車間通信なのかDSRC路上機20の通信エリア外での路車間通信なのかを正確に判定することができる。
【0055】
また、本実施形態の通信システム1によれば、DSRC路上機20の通信エリア外に位置するDSRC車載器30が路車間通信を行うことでDSRC路上機20が送信する電波に載せられたデータをDSRC車載器30が受信した場合でも、その受信したデータを乗員に報知しないようにすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…通信システム、20…DSRC路上機、21…制御部、22…無線部、30…DSRC車載器、31…車載器制御部、32…無線部、34…通信部、34a…バッファ、35…記憶部、36…表示部、37…スピーカ、38…入力操作部、39…ICカード制御部、40…ICカードコネクタ、80…イグニッションスイッチ、90…ICカード、91…処理部、92…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データが載せられた電波を本線道路の順車線上に予め設定される通信エリア内に送信可能なDSRC路上機との間で路車間通信を行う機能を備えたDSRC車載器において、
前記DSRC路上機から送信される電波を受信する受信部と、
前記受信部が受信した電波の強度を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された電波の強度が下側閾値を超えてから上側閾値を超えてピークに達した後に前記下側閾値まで減少した場合に、前記電波の強度が前記下側閾値から前記ピークに到達するまでに増加した値の絶対値を前記下側閾値から前記ピークに到達するまでに経過した時間で除算することで第一算出値を算出するとともに、前記検出部によって検出された電波の強度が前記ピークに達した後に前記下限閾値に到達するまでに減少した値の絶対値を前記ピークに達した後に前記下側閾値に到達するまでに経過した時間で除算することで第二算出値を算出し、前記第二算出値が前記第一算出値以上である場合には、当該DSRC車載器が前記DSRC路上機の通信エリア内に位置すると判定し、一方、前記第二算出値が前記第一算出値未満である場合には、当該DSRC車載器が前記DSRC路上機の通信エリア外に位置すると判定する判定部と、
を備えることを特徴とするDSRC車載器。
【請求項2】
請求項1に記載のDSRC車載器において、
前記判定部は、前記検出部によって検出された電波の強度が前記下側閾値を超えてから前記上側閾値には到達せずにピークに達した後に前記下側閾値まで減少した場合には、当該DSRC車載器が前記DSRC路上機の通信エリア外に位置すると判定することを特徴とするDSRC車載器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のDSRC車載器において、
さらに、
前記受信部が受信した電波に載せられたデータを受け付けるデータ受付部と、
前記データ受付部が受け付けたデータを報知可能な報知部と、
前記判定部によって当該DSRC車載器が前記DSRC路上機の通信エリア内に位置すると判定された場合には、前記データ受付部が受け付けたデータを前記報知部に報知させ、一方、前記判定部によって当該DSRC車載器が前記DSRC路上機の通信エリア外に位置すると判定された場合には、前記データ受付部が受け付けたデータを前記報知部に報知させない報知制御部と、
を備えることを特徴とするDSRC車載器。
【請求項4】
請求項3に記載のDSRC車載器において、
前記判定部は、前記検出部によって検出された電波の強度が下側閾値を超えた場合において、前記電波の強度が前記下側閾値を超えてからの経過時間が、所定時間に到達したか否かを判定し、
さらに、
前記経過時間が所定時間に到達したと前記判定部によって判定された場合に、前記データ受付部が受け付けたデータを報知するか否かの選択入力を受け付ける選択入力部を備え、
前記報知制御部は、前記データ受付部が受け付けたデータを報知する旨の選択入力を前記選択入力部が受け付けた場合には、前記データ受付部が受け付けたデータを前記報知部に報知させ、一方、前記データ受付部が受け付けたデータを報知しない旨の選択入力を前記選択入力部が受け付けた場合には、前記データ受付部が受け付けたデータを前記報知部に報知させないこと
を特徴とするDSRC車載器。
【請求項5】
データが載せられた電波を本線道路の順車線上に予め設定される通信エリア内に送信可能なDSRC路上機と、
前記DSRC路上機との間で路車間通信を行う請求項1〜4の何れかに記載のDSRC車載器と、
を備える路車間狭域無線通信システム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1〜請求項4の何れかに記載のDSRC車載器の判定部として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−258520(P2010−258520A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103095(P2009−103095)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】