説明

FBGひずみセンサ

【課題】センサ全体を大型化することなく、簡単な構成で温度補償を行うことを実現したFBGひずみセンサを提供することを目的とする。
【解決手段】FBGひずみセンサ1は、FBG3が形成された光ファイバ2と、光ファイバ2を被測定部Wに固定するための温度補償部材11とを備えている。光ファイバ2と温度補償部材11とは、これらが当接する全面において接着剤12によって固定されている。一方、温度補償部材11と被測定部Wとは、温度補償部材11の両端部において接着剤13によって固定されている。温度補償部材11は、熱膨張係数がゼロである材料から形成されており、FBG3の伸縮が温度補償部材11によって拘束されている。したがって、雰囲気温度に応じたFBG3の熱膨張は温度補償部材11によって抑制された状態となっており、被測定部Wに生じるひずみのみがFBG3に印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被測定物のひずみ量を測定するFBGひずみセンサに係り、特に、測定時の雰囲気温度に応じた温度補償を行うための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ひずみ量を測定するひずみセンサとして、FBG(ファイバ・ブラッグ・グレーティング)を用いたFBGひずみセンサが用いられる。FBGとは、光ファイバのコアの屈折率を軸方向に沿った所定の長さ周期(グレーティング周期)で変化させた回折格子であって、光ファイバへの入射光に対し、グレーティング周期に応じた特定の波長(ブラッグ波長)の光のみを反射し、残りの光を透過するという特性を有している。FBGにひずみが発生するとグレーティング周期が変化し、それに伴ってブラッグ波長も変化するため、ブラッグ波長の変化量に基づいてひずみ量を測定することが可能となる。ここで、光ファイバは、ひずみ量の測定時における周囲温度である雰囲気温度に応じて熱膨張し、それに応じてグレーティング周期も変化するため、FBGのブラッグ波長は、雰囲気温度によって変化するという特性も有している。したがって、被測定物の正確なひずみ量を測定するためには、雰囲気温度に応じた温度補償を行うことが必要となる。
【0003】
例えば特許文献1には、検出素子部として形成された2つのFBGを用いて温度補償を行う光ファイバセンサが開示されている。これによれば、FBGの一方はひずみ量測定用として、被測定物である鋼索に固定される液晶ポリマ基板に対して密着するように設けられている。また、FBGの他方は温度補償用として、液晶ポリマ基板に対して弛んだ状態で設けられている。ひずみ量測定用FBGのブラッグ波長は、液晶ポリマ基板を介して印加される鋼索のひずみ量と、雰囲気温度に応じた光ファイバの熱膨張量とに起因して変化する。一方、弛んだ状態の温度補償用FBGには鋼索のひずみ量が印加されないため、そのブラッグ波長は、雰囲気温度に応じた光ファイバの熱膨張量に起因して変化する。すなわち、特許文献1に記載のセンサは、ひずみ量測定用FBGのブラッグ波長の変化量から温度補償用FBGのブラッグ波長の変化量を減算することによって温度補償を行い、鋼索のひずみ量を測定するものである。尚、これらの2つのFBGは直列または並列に配置可能となっており、直列に配置する場合、2つのFBGが一本の光ファイバに形成される。一方、FBGを並列に配置する場合は2本の光ファイバ、すなわち、ひずみ量測定用FBGが形成された光ファイバと、温度補償用FBGが形成された光ファイバとが液晶ポリマ基板に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−111319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の光ファイバセンサは、ひずみ量測定用と温度補償用との2つのFBGを必要とするため、センサ全体を小型化すること、またはセンサ全体の構成を簡単にすることが困難であるという問題点を有している。具体的には、特許文献1に記載の光ファイバセンサにおいて2つのFBGを直列に配置する場合、FBGが配置される部位の軸方向に沿った長さ寸法は必然的に大きくなるため、センサ全体を小型化することが困難となる。また、2つのFBGを並列に配置する場合、2本の光ファイバが液晶ポリマ基板に設けられるため、入射光の供給や反射光の検出を2本の光ファイバに対してそれぞれ行うことが必要となり、センサ全体の構成が複雑になる。
【0006】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、センサ全体を大型化することなく、簡単な構成で温度補償を行うことを実現したFBGひずみセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るFBGひずみセンサは、被測定部から印加されるひずみ量に応じて、入射光に対する反射光の波長と入射光に対する透過光の波長とを変化させるFBGを有する光ファイバを備え、反射光の波長の変化量または透過光の波長の変化量に基づいて、被測定部のひずみ量を測定するFBGひずみセンサにおいて、一方の面にFBGが固定され、他方の面を被測定部に固定可能な温度補償部材をさらに備え、温度補償部材は、熱膨張係数がゼロである材料から形成されることを特徴とするものである。
尚、熱膨張係数がゼロであるとは、零熱膨張ガラスのように熱膨張係数が完全にゼロである場合に限らず、熱膨張係数がほとんどゼロである場合を指し、例えば、熱膨張係数が±1×10−6/℃以下である場合を含む。
【0008】
被測定部と光ファイバのFBGとの間に温度補償部材を設けたので、被測定部に生じるひずみが温度補償部材を介してFBGに印加される。ここで、温度補償部材は熱膨張係数がゼロである材料から形成されているため、ひずみ量の測定時における雰囲気温度に応じて熱膨張することがない。このような温度補償部材にFBGを固定したので、FBGが温度補償部材に拘束された状態となり、雰囲気温度に応じたFBGの熱膨張が抑制される。すなわち、FBGには、雰囲気温度にかかわらず被測定部のひずみのみが印加される状態となっているため、一箇所の被測定部に対してひずみ測定及び温度補償を行うために、複数のFBGを用いることや複数の光ファイバを用いることを必要としない。したがって、FBGひずみセンサにおいて、センサ全体を大型化することなく、簡単な構成で温度補償を行うことが可能となる。
【0009】
温度補償部材は、平板状の部材であってもよい。FBGひずみセンサの構成がより簡単になるとともに高さ方向の寸法が抑えられるため、センサ全体を小型化することが可能となる。
被測定部に対して温度補償部材を固定可能な一対の取り付け部材をさらに備え、一対の取り付け部材は、FBGの長さ以上の間隔をおいて他方の面に配置されており、FBGは、一方の面において間隔の内側に対応する部位に配置されてもよい。
また、光ファイバ及び温度補償部材は長手方向をそれぞれ有し、温度補償部材の長手方向と光ファイバの長手方向とが互いに沿うように配置されてもよい。
一対の取り付け部材は、温度補償部材の両端部に配置されてもよい。
【0010】
また、上記FBGひずみセンサは、車両の衝突を検知する車両用センサに適用することが可能であり、この場合の車両用センサは、車両が複数の被測定部を有し、光ファイバが複数の被測定部に設けられる複数のFBGを有し、複数の被測定部の少なくとも1つから対応するFBGに印加されるひずみ量に基づいて、車両の衝突を検知するものである。一本の光ファイバを車両内に引き回せば、温度補償を行いつつ車両の衝突を複数個所で検知することが可能となるため、簡単な構成で車両用センサを構築することができる。また、車両内の狭い部位にセンサを配置することも容易である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、FBGを用いたひずみセンサにおいて、センサ全体を大型化することなく、簡単な構成で温度補償を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係るFBGひずみセンサの構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】実施の形態1に係るFBGひずみセンサにおけるFBGの構成を示す概略図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係るFBGセンサを用いた車両用センサの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、この発明の実施の形態について添付図に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1に、この発明の実施の形態1に係るFBGひずみセンサ1を概略的に示す。FBGひずみセンサ1は、光ファイバ2を利用して被測定部Wに発生するひずみを測定するセンサであって、光ファイバ2の一端側からは、図示しない光源から発せられる光が入射される。また、光ファイバ2は、光源からの入射光に対してブラッグ波長と呼ばれる特定の波長の光を反射するFBG(ファイバ・ブラッグ・グレーティング)3を有しており、FBG3が被測定部Wの上方側に配置されている。
【0014】
ここで、図2を参照すると、光ファイバ2は石英ガラス等から形成されており、図示しない光源からの入射光L1が伝播するコア4と、コア4の外周部を覆うクラッド5とから構成されている。FBG3は、コア4の屈折率を軸方向に沿った長さ周期Λ、すなわちグレーティング周期Λで変化させた回折格子であり、入射光L1に対してブラッグ波長の光のみを反射光L2として反射し、残りの光を透過光L3として透過させる。
【0015】
また、FBG3における長さ周期Λは、反射光L2の波長(ブラッグ波長)を規定する要素の1つとなっており、FBG3に軸方向のひずみが発生してグレーティング周期Λが変化すると、それに伴ってブラッグ波長も変化する。すなわち、ひずみの発生前後におけるブラッグ波長の変化量、具体的には、反射光L2の中心波長のシフト量に基づいて、FBG3のひずみ量を測定可能となっている。尚、一例として、FBG3は、光ファイバ2のコア4に紫外線等を照射することによって形成される。
【0016】
図1に戻って、FBGひずみセンサ1は、光ファイバ2と被測定部Wとの間に設けられた平板状の温度補償部材11を備えており、光ファイバ2は、温度補償部材11を介して被測定部Wに固定される。温度補償部材11は、図1の矢印Aで示される方向を長手方向とする長方形に形成されており、その一方の面である上部表面11aに光ファイバ2が固定されるとともに、他方の面である下部表面11b側を被測定部Wに固定可能となっている。また、温度補償部材11は、その長手方向(矢印A参照)と光ファイバ2の長手方向とが互いに沿うように配置されており、温度補償部材11の上部表面11aのほぼ中央にFBG3が位置している。
【0017】
光ファイバ2と温度補償部材11の上部表面11aとは、これらが当接する全面で接着剤12によって固定されている。一方、温度補償部材11の下部表面11bは、被測定部Wの上部表面Waに対し、長手方向に沿った両端部の二箇所で接着剤13によって固定されている。したがって、矢印Aで示す方向において被測定部Wにひずみが発生すると、そのひずみが二箇所の接着剤13を介して温度補償部材11に印加されるようになっている。また、温度補償部材11の上部表面11aには光ファイバ2が全面的に接着されているため、被測定部Wから温度補償部材11に印加されたひずみが、そのままFBG3に印加されるようになっている。
【0018】
尚、温度補償部材11の下部表面11bに設けられた一対の接着剤13は、それらの間隔d1がFBG3の長さd2以上となるように配置されており、FBG3は、上部表面11aにおいて接着剤13同士の間隔d1の内側に対応する部位に配置されている。また、これらの接着剤13は、被測定部Wに対して温度補償部材11を固定可能とするものであり、FBGひずみセンサ1における一対の取り付け部材を構成している。
【0019】
温度補償部材11は、熱膨張係数がゼロであるガラスを材料として形成されており、雰囲気温度の変化に伴う温度補償部材11の熱膨張が生じないようになっている。一方、光ファイバ2は正の熱膨張係数を有しており、雰囲気温度の変化に伴う熱膨張によって伸縮するようになっている。ここで、図2を用いて上述したように、FBG3からの反射光L2の波長であるブラッグ波長は、FBG3のグレーティング周期Λによって規定される。したがって、光ファイバ2が雰囲気温度に応じて伸縮すると、それに伴ってFBG3のグレーティング周期Λも変化するため、ブラッグ波長が変化することになる。
【0020】
しかしながら、光ファイバ2は、熱膨張係数がゼロである温度補償部材11に対し、これらが当接する全面で接着剤12によって固定されているため、FBG3の伸縮が温度補償部材11によって拘束された状態となっている。すなわち、雰囲気温度に応じたFBG3の熱膨張は、熱膨張が生じない温度補償部材11によって抑制されているため、FBG3には、雰囲気温度にかかわらず被測定部Wのひずみのみが印加される状態となっている。尚、この実施の形態1における光ファイバ2は正の熱膨張係数を有するものとして上述したが、温度補償部材11によってFBG3の熱膨張を抑制するという効果は、光ファイバ2が負の熱膨張係数を有している場合においても同様である。また、温度補償部材11の熱膨張係数は、例えば材料であるガラスの成分の調合等といった製造条件を調整することによってゼロとすることが可能となる。
【0021】
次に、この発明の実施の形態1に係るFBGひずみセンサ1を用いて、被測定部Wに発生したひずみを測定する場合の動作について説明する。
図1に示すように、まず、温度補償部材11の下部表面11bにおける両端に塗布された接着剤13により、FBGひずみセンサ1が被測定部Wの上部表面Waに固定される。次いで、光ファイバ2の一端側には、図示しない光源が接続される。また、光ファイバ2の一端側には、光源の他に、FBG3からの反射光L2(図2参照)が入力される図示しない測定器が接続される。この測定器は、被測定部Wでのひずみの発生前後における反射光L2の変化量、すなわちブラッグ波長のシフト量に基づいて、被測定部Wのひずみ量を算出するものである。
【0022】
被測定部WにFBGひずみセンサ1が固定されると、図示しない光源から光ファイバ2に入射光L1が入射される。入射光L1に対し、FBG3はブラッグ波長の光を反射光L2として反射し、残りの光を透過光L3として透過する(図2参照)。このような状態で、図1の矢印B1、B2で示されるように被測定部Wに軸方向Aに沿ったひずみが発生すると、そのひずみが二箇所の接着剤13、温度補償部材11、接着剤12を順次介してFBG3に印加される。被測定部WのひずみがFBG3に印加されてFBG3が伸張すると、FBG3のグレーティング周期Λ(図2参照)も伸張するため、反射光L2の波長(ブラッグ波長)も変化する。
【0023】
ここで、光ファイバ2は正の熱膨張係数を有しているため、ひずみの測定時における雰囲気温度に応じた熱膨張により、光ファイバ2は長手方向Aに沿った方向に伸張しようとする。しかしながら、光ファイバ2は、熱膨張係数がゼロである温度補償部材11に対し、これらが当接する全面で固定されており、FBG3の伸縮が温度補償部材11によって拘束されているため、FBG3の伸張が抑制されている。したがって、FBG3は、雰囲気温度に対する温度補償が行われた状態、すなわちFBG3が熱膨張することに起因するブラッグ波長のシフトが生じず、被測定部Wのひずみのみによってブラッグ波長がシフトする状態となっており、被測定部Wのひずみ量が雰囲気温度による誤差なく測定される。
【0024】
このように、被測定部Wと光ファイバ2のFBG3との間に温度補償部材11を設けたので、被測定部Wに生じるひずみが温度補償部材11を介してFBG3に印加される。温度補償部材11は熱膨張係数がゼロである材料から形成されているため、ひずみ量の測定時における雰囲気温度に応じて熱膨張することがない。このような温度補償部材11にFBG3を固定したので、FBG3が温度補償部材11に拘束された状態となり、雰囲気温度に応じたFBG3の熱膨張が抑制される。FBG3には、雰囲気温度にかかわらず被測定部Wのひずみのみが印加される状態となっているため、一箇所の被測定部Wに対してひずみの測定と温度補償とを行うために、複数のFBGを用いることや複数の光ファイバを用いること、すなわちひずみ量測定用FBG及び温度補償用FBGを用いることを必要としない。したがって、FBGひずみセンサ1において、センサ全体を大型化することなく、簡単な構成で温度補償を行うことが可能となる。
【0025】
また、温度補償部材11は平板状の部材としたので、FBGひずみセンサ1の構成がより簡単になるとともに高さ方向の寸法が抑えられるため、センサ全体をより小型化することが可能となる。
【0026】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係るFBGひずみセンサについて説明する。この実施の形態2に係るFBGひずみセンサは、車両の衝突を検知する車両用センサとして適用されたものである。尚、以下に説明する実施の形態において、図1、2に示される符号と同一の符号は同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
図3に示すように、車両用センサ21は、例えばエアバッグ等の機器を作動させるために車両30の衝突を検知するものであって、車両30は、例えばボディー31の前部、中間部及び後部における両側等、複数の箇所に被測定部Wを有している。
【0027】
また、ボディー31の内部には、各被測定部Wを通るように一本の光ファイバ2が引き回されており、光ファイバ2は、各被測定部Wに対応する複数の箇所に、実施の形態1と同様のFBG3を有している。各FBG3は、被測定部Wに張り付けられた温度補償部材11に固定されており、FBG3と温度補償部材11とがセンサ部22を形成している。各センサ部22は、図1に示されるFBGひずみセンサ1と同様の構成を有するものである。すなわち、車両用センサ21は、実施の形態1におけるFBGひずみセンサ1をボディー31の各被測定部Wにそれぞれ設置し、それらを一本の光ファイバ2を介して接続したものである。尚、光ファイバ2の一端には、図示しない光源と、ブラッグ波長の変化を検知する図示しない検知部とが接続されている。また、検知部は、車両30の図示しない制御部に電気的に接続されており、制御部に対してブラッグ波長の検知結果を出力可能となっている。
【0028】
以上のように構成される車両用センサ21において、車両30が衝突を起こして各被測定部Wの少なくとも一箇所にひずみが生じると、ひずんだ箇所に対応するFBG3におけるブラッグ波長の変化が検知される。図示しない制御部は、ブラッグ波長が変化したことを示す信号が入力されると、車両30が衝突したと判定してエアバッグ等を作動させる。尚、車両用センサ21では、実施の形態1におけるFBGひずみセンサ1と同様に、雰囲気温度に対する温度補償が行われるため、車両30内の温度変化に起因して誤作動を起こすこともない。
【0029】
このように、FBG3及び温度補償部材11を複数として車両30内の複数の被測定部Wに配置したので、一本の光ファイバ2を車両30内に引き回すだけで、温度補償を行いつつ車両30の衝突を検知することが可能となるため、簡単な構成で車両用センサ21を構築することができる。また、各センサ部は、実施の形態1と同様に小型化することが可能であるため、車両30内の狭い場所にも容易に設置することができる。
【0030】
実施の形態1、2における各センサは、FBG3からの反射光L2の波長の変化量に基づいて被測定部Wのひずみ量を測定するように構成されたが、この構成に限定されるものではなく、透過光L3の波長の変化量に基づいてひずみ量を測定することも可能である。透過光L3は、光ファイバ2に入射される入射光L1から反射光L2を除いたものとなるため、透過光L3からブラッグ波長のシフト量を求めることも可能となっている。したがって、透過光L3に基づいてひずみ量を測定するように構成した場合においても、実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。尚、被測定部Wのひずみ量を透過光L3に基づいて測定する場合には光ファイバ2の一端側に光源が接続され、他端側に測定器が接続される。
【0031】
実施の形態1、2における温度補償部材11は、図1の矢印Aで示される方向を長手方向とする長方形に形成されているが、温度補償部材11の形状を限定するものではない。被測定部Wのひずみ量をFBG3に印加可能であればよく、例えば、長手方向を有さない正方形等の多角形や円形等に形成とすることが可能である。また、温度補償部材は板状の部材に限定されるものでもなく、例えば筒状の部材や棒状の部材とすることも可能である。この場合においても、一箇所の被測定部Wに対するひずみ測定及び温度補償を単一のFBGで行うことができるため、センサ全体を大型化することなく、簡単な構成で温度補償を行うことが可能となる。
【0032】
実施の形態1における被測定部Wは矩形の部材として図1に示されているが、被測定部Wの形状を限定するものではなく、また、本発明に係るFBGひずみセンサが被測定部Wを含むことに限定するものでもない。本発明は、被測定部に固定可能なFBGひずみセンサに関するものであり、被測定部に固定される前の状態にあるFBGひずみセンサであってもよい。
【0033】
実施の形態1、2における温度補償部材11は、その両端部に塗布された一対の接着剤13によって被測定部Wに固定されたが、温度補償部材11と被測定部Wとの固定を接着によって行うこと、及びこれらの固定を温度補償部材の両端部となる二箇所で行うことに限定するものではない。被測定部Wに生じるひずみが温度補償部材11に印加されるように固定できればよく、例えば溶接等の他の固定方法を用いることや、両端部以外の部位を含む二箇所以上で固定することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 FBGひずみセンサ、2 光ファイバ、3 FBG、11 温度補償部材、11a 上部表面(温度補償部材の一方の面)、11b 下部表面(温度補償部材の他方の面)、13 接着剤(取り付け部材)、21 車両用センサ、30 車両、A (光ファイバ及び温度補償部材の)長手方向、d1 一対の取り付け部材の間隔、d2 FBGの長さ、L1 入射光、L2 反射光、W 被測定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定部から印加されるひずみ量に応じて、入射光に対する反射光の波長と前記入射光に対する透過光の波長とを変化させるFBGを有する光ファイバを備え、
前記反射光の波長の変化量または前記透過光の波長の変化量に基づいて、前記被測定部の前記ひずみ量を測定するFBGひずみセンサにおいて、
一方の面に前記FBGが固定され、他方の面を前記被測定部に固定可能な温度補償部材をさらに備え、
前記温度補償部材は、熱膨張係数がゼロである材料から形成されることを特徴とするFBGひずみセンサ。
【請求項2】
前記温度補償部材は、平板状の部材である請求項1に記載のFBGひずみセンサ。
【請求項3】
前記被測定部に対して前記温度補償部材を固定可能な一対の取り付け部材をさらに備え、
前記一対の取り付け部材は、前記FBGの長さ以上の間隔をおいて前記他方の面に配置されており、
前記FBGは、前記一方の面において前記間隔の内側に対応する部位に配置される請求項1または2に記載のFBGひずみセンサ。
【請求項4】
前記光ファイバ及び前記温度補償部材は長手方向をそれぞれ有し、
前記温度補償部材の長手方向と前記光ファイバの長手方向とが互いに沿うように配置される請求項1〜3のいずれか一項に記載のFBGひずみセンサ。
【請求項5】
前記一対の取り付け部材は、前記温度補償部材の両端部に配置される請求項1〜4のいずれか一項に記載のFBGひずみセンサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のFBGひずみセンサを用いて車両の衝突を検知する車両用センサであって、
前記車両は複数の被測定部を有し、
前記光ファイバは前記複数の被測定部に設けられる複数のFBGを有し、
前記複数の被測定部の少なくとも1つから対応する前記FBGに印加されるひずみ量に基づいて、前記車両の衝突を検知する車両用センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−225729(P2012−225729A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92741(P2011−92741)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】