説明

FBGセンサの計測方法及びその計測装置

【課題】ひずみや温度変化を好適に計測し得るFBGセンサの計測方法及びその計測装置を提供する。
【解決手段】FBGセンサ1からの反射光を光カプラ9を介して分割し、分割した反射光を、波長帯域が連続する2つのWDMフィルタ10,11に個別に入射させ、第一のWDMフィルタ10からの透過光と第二のWDMフィルタ11からの透過光を足し合わせて電圧VTに変換すると共に、第一のWDMフィルタ10からの反射光と第二のWDMフィルタ11からの反射光を足し合わせて電圧VRに変換し、無次元量R=(VR−VT)/(VT+VR)を算出し、予め測定したR値と波長特性の関係から波長を求め、ひずみまたは温度変化を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FBGセンサを用いてひずみまたは温度変化を検出するFBGセンサの計測方法及びその計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、対象物のひずみを計測する手段には、FBG(Fiber Bragg Grating)センサを用いて計測するものがあり(例えば、特許文献1参照)、FBGセンサは、特定の波長の光信号であるブラッグ波長を反射するものであるため、ブラッグ波長を利用することによりひずみ変化や温度変化を計測するようにしている。
【0003】
具体的にFBGセンサの計測装置の一例を示すと、FBGセンサの計測装置は、図14に示す如く、対象物(図示せず)にFBGセンサ1を配置する光ファイバ2と、光ファイバ2へ光を出力する光源3と、FBGセンサ1のブラッグ波長で発生した反射光を分離する光サーキュレータ4と、光サーキュレータ4からの反射光を入射させるWDM(Wavelength Division Multiplexing 波長分割多重)フィルタ5と、WDMフィルタ5からの透過光及び反射光を受ける光電変換部6と、光電変換部6からの電圧信号を処理する処理手段7とを備えるものがある。
【0004】
このようなFBGセンサ1の計測装置は、光サーキュレータ4からの反射光をWDMフィルタ5により透過光及び反射光に分割し、更に透過光及び反射光を光電変換部6によりそれぞれの電圧に変換して処理手段7によりひずみを算出している。
【特許文献1】特開2007−114072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、FBGセンサ1の反射波長の変化がWDMフィルタ5で計測し得る波長帯域内を超える場合には、WDMフィルタ5を、異なる波長帯域を有する他のWDMフィルタに交換しなけらればならないという問題があった。またWDMフィルタ5を他のWDMフィルタに交換する場合には、交換作業に時間がかかり、ひずみや温度変化の計測が一定時間中断するという問題があった。更にWDMフィルタ5を用いてブラッグ波長を測定する場合には、ひずみや温度変化を計測する方法に自由度がほとんどないという問題があった。更にまた、光ファイバ2に複数のFBGセンサ1を備え、複数のFBGセンサ1に対応するように複数のWDMフィルタ5を備えた構造であっても、FBGセンサ1の反射波長の変化がWDMフィルタ5で計測し得る波長帯域内を超えた場合には、同様に、異なる波長帯域を有する他のWDMフィルタに交換する必要があった。
【0006】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、FBGセンサの反射波長の変化がWDMフィルタで計測し得る波長帯域内を超える場合であっても、WDMフィルタを、異なる波長帯域を有する他のWDMフィルタに交換することなく、ひずみや温度変化を好適に計測し得るFBGセンサの計測方法及びその計測装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のFBGセンサの計測方法は、一つのFBGセンサに一つのWDMフィルタを適用してFBGセンサの反射波長の変化からひずみまたは温度変化を計測し、FBGセンサの反射波長の変化が前記WDMフィルタで計測可能な範囲を超える場合には、波長帯域が連続する他のWDMフィルタを前記WDMフィルタに連結して適用し、ひずみまたは温度変化を計測することを特徴とするものである。
【0008】
本発明のFBGセンサの計測方法は、FBGセンサからの反射光を光カプラを介して分割し、分割した反射光を、波長帯域が連続する2つのWDMフィルタに個別に入射させ、一方のWDMフィルタからの透過光と他方のWDMフィルタからの透過光を足し合わせて電圧VTに変換すると共に、一方のWDMフィルタからの反射光と他方のWDMフィルタからの反射光を足し合わせて電圧VRに変換し、無次元量R=(VR−VT)/(VT+VR)を算出し、予め測定したR値と波長特性の関係から波長を求め、ひずみまたは温度変化を計測することを特徴とするものである。
【0009】
本発明は、二つのFBGセンサと、波長帯域が連続する2つのWDMフィルタとを用いてひずみまたは温度変化を計測するFBGセンサの計測方法であって、
二つのFBGセンサの2点で計測する際には、二つのFBGセンサからの反射光を光スプリッタにより反射波長ごとに区分けするように反射光を分岐し、分岐した反射光を2つのWDMフィルタに個別に入射させて、一方のWDMフィルタからの透過光と反射光を夫々電圧に変換すると共に、他方のWDMフィルタからの透過光と反射光を夫々電圧に変換し、夫々の電圧を介して二つのFBGセンサの2点でひずみまたは温度変化を計測し、
二つのFBGセンサのうち一点で計測する際には、二つのFBGセンサからの反射光を光カプラを介して分割し、分割した反射光を2つのWDMフィルタに個別に入射させて、一方のWDMフィルタからの透過光と他方のWDMフィルタからの透過光を足し合わせて電圧VTに変換すると共に、一方のWDMフィルタからの反射光と他方のWDMフィルタからの反射光を足し合わせて電圧VRに変換し、夫々の電圧を介して二つのFBGセンサの1点でひずみまたは温度変化を計測することが好ましい。
【0010】
本発明のFBGセンサの計測方法は、R値の範囲を−0.8以上0.8以下とすることが好ましい。
【0011】
本発明のFBGセンサの計測装置は、FBGセンサを配置する光ファイバと、
該光ファイバへ光を連続的に出力する光源と、
前記FBGセンサのブラッグ波長で発生した反射光を分離する光サーキュレータと、
波長帯域が連続する2つのWDMフィルタと、
2つのWDMフィルタからの透過光または反射光を電圧に変換する光電変換部と、
光電変換部からの電圧を適用してひずみまたは温度変化を計測するひずみ演算部とを備え、
一つのFBGセンサに一つのWDMフィルタを適用してFBGセンサの反射波長の変化からひずみまたは温度変化を計測し、FBGセンサの反射波長の変化が前記WDMフィルタで計測可能な範囲を超える場合には、他のWDMフィルタを前記WDMフィルタに連結して適用し、ひずみまたは温度変化を計測するように構成したことを特徴とするものである。
【0012】
本発明のFBGセンサの計測装置は、FBGセンサを配置する光ファイバと、
該光ファイバへ光を連続的に出力する光源と、
前記FBGセンサのブラッグ波長で発生した反射光を分離する光サーキュレータと、
前記FBGセンサからの反射光を分割する第一の光カプラと、
光カプラで分割した反射光を個別に入射させ且つ波長帯域が連続する2つのWDMフィルタと、
一方のWDMフィルタからの透過光と他方のWDMフィルタからの透過光とを足し合わせる第二の光カプラと、
第二の光カプラからの透過光を電圧VTに変換する一方の光電変換部と、
一方のWDMフィルタからの反射光と他方のWDMフィルタからの反射光とを足し合わせる第三の光カプラと、
第三の光カプラからの反射光を電圧VRに変換する他方の光電変換部と、
一方の光電変換部からの電圧VTと、他方の光電変換部からの電圧VRとで無次元量R=(VR−VT)/(VT+VR)を算出し、予め測定したR値と波長特性の関係から波長を求め、ひずみまたは温度変化を計測するひずみ演算部とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明のFBGセンサの計測装置において、二つのFBGセンサを配置する光ファイバと、
該光ファイバへ光を連続的に出力する光源と、
二つのFBGセンサのブラッグ波長で発生した反射光を分離する光サーキュレータと、
二つのFBGセンサからの反射光を反射波長ごとに区分けする光スプリッタと、
二つのFBGセンサからの反射光を分割する第一の光カプラと、
光スプリッタと第一の光カプラを切り替える切替手段と、
光スプリッタまたは光カプラを介した反射光を個別に入射させ且つ波長帯域が連続する2つのWDMフィルタと、
光スプリッタを選択した際にWDMフィルタからの透過光及び反射光を処理する光電変換部と、
第一の光カプラを選択した際に一方のWDMフィルタからの透過光と他方のWDMフィルタからの透過光とを足し合わせる第二の光カプラと、
第二の光カプラからの透過光を電圧VTに変換する他の光電変換部と、
第一の光カプラを選択した際に一方のWDMフィルタからの反射光と他方のWDMフィルタからの反射光とを足し合わせる第三の光カプラと、
第三の光カプラからの反射光を電圧VRに変換する別の光電変換部と、
光スプリッタを選択した際には二つのFBGセンサの2点によるひずみまたは温度変化を計測し、光カプラを選択した際には二つのFBGセンサの1点によるひずみまたは温度変化を、2つのWDMフィルタの波長帯域で計測するひずみ演算部を備えることが好ましい。
【0014】
本発明のFBGセンサの計測装置において、ひずみ演算部は、R値の範囲を−0.8以上0.8以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明のFBGセンサの計測方法及びその計測装置によれば、1つのWDMフィルタに、波長帯域が連続する他のWDMフィルタを連結して波長帯域内を広げるので、WDMフィルタを他のWDMフィルタに交換することを不要にし、ひずみや温度変化を好適に計測することができる。また同時に他のWDMフィルタへの交換に伴うひずみや温度変化の計測の中断を抑制することができる。更に、WDMフィルタと他のWDMフィルタを連結して適用し得るので、ひずみや温度変化を計測する方法の自由度を向上させることができる。更にまた、光ファイバに複数のFBGセンサを備え、複数のFBGセンサに対応するように複数のWDMフィルタを備えた構造であっても、FBGセンサの反射波長の変化がWDMフィルタで計測し得る波長帯域内を超えた場合には、同様に、WDMフィルタに、波長帯域が連続する他のWDMフィルタを連結して波長帯域内を広げ、WDMフィルタから他のWDMフィルタへの交換を不要にすることができるという種々の優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1〜図9は本発明のFBGセンサの計測方法及びその計測装置を実施する形態の第一例であって、図14と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。また第一例は請求項2、4、6、8に対応するものである。
【0018】
第一例のFBGセンサの計測方法及びその計測装置は、図1に示す如く、対象物(図示せず)に1つのFBGセンサ1を配置する光ファイバ8と、光ファイバ8へ光を出力する光源3と、FBGセンサ1のブラッグ波長で発生した反射光を分離する光サーキュレータ4と、光サーキュレータ4からの反射光を入射させる第一の光カプラ9と、第一の光カプラ9からの反射光を受ける2つのWDM(Wavelength Division Multiplexing 波長分割多重)フィルタ10,11と、WDMフィルタ10,11からの透過光または反射光を入射させる第二の光カプラ12及び第三の光カプラ13と、第二の光カプラ12及び第三の光カプラ13からの透過光または反射光を受ける第一の光電変換部(光電変換器)14及び第二の光電変換部15と、第一の光電変換部14及び第二の光電変換部(光電変換器)15からの電圧信号を処理するひずみ演算部16とを備えている。
【0019】
FBGセンサ1は、光ファイバ8のコア部分に光軸方向に沿って一定の間隔で回折格子を形成しており、検査対象のひずみや温度変化により反射波長を変化させ、検査対象のひずみ変化及び温度変化を検出するようになっている。
【0020】
光ファイバ8は、光を導波するように、光源3から光サーキュレータ4までのライン、FBGセンサ1を備えて光サーキュレータ4より延在するライン、光サーキュレータ4から第一の光カプラ9までのライン、第一の光カプラ9から2つのWDMフィルタ10,11までのライン、WDMフィルタ10,11から第二の光カプラ12及び第三の光カプラ13までのライン、第二の光カプラ12及び第三の光カプラ13から第一の光電変換部14、第二の光電変換部15までのラインに敷設されている。
【0021】
光源3は、光ファイバ8へ光を連続的に出力する広帯域のものが適用されている。
【0022】
光サーキュレータ4は、光ファイバ8の入射光または反射光による導波の方向を制御するように構成されており、具体的には、光源3からの入射光をFBGセンサ1へ導波させると共に、FBGセンサ1からの反射光を第一の光カプラ9へ導波するようになっている。
【0023】
第一の光カプラ9は、光ファイバ8の分割器であって、光サーキュレータ4からの反射光を50:50で2分割するように構成されている。ここで光サーキュレータ4からの反射光を50:50で2分割し得るならば、第一の光カプラ9の代わりに他の構成手段を用いても良い。
【0024】
2つのWDMフィルタ10,11は、並列に配置され、第一の光カプラ9で分割された反射光を個別に受けるようになっている。またWDMフィルタ10,11は、透過率と反射率が変化する遷移帯域(波長帯域)を備え、この遷移帯域(波長帯域)により透過光と反射光を外部へ導波すると共に、2つのWDMフィルタ10,11の遷移帯域を連続させるように設定している。ここで1つのWDMフィルタの遷移帯域を基準化して示すと、図2のa、a’に示す如く、波長の所定範囲内(図2では波長(基準化)0〜50の間)で、1つのWDMフィルタの透過率(図2ではWDMフィルタの透過率a)が1から0へ変化するのに対し、同じWDMフィルタの反射率(図2ではWDMフィルタの反射率a’)が0から1へ変化し、透過率と反射率とが互いに入れ替わるような状態になっている。なお図2の他のWDMフィルタや並列のWDMフィルタについての説明は後述する。
【0025】
第二の光カプラ12は、光ファイバ8の結合器であって、第一のWDMフィルタ(一方のWDMフィルタ)10からの透過光と、第二のWDMフィルタ(他方のWDMフィルタ)11からの透過光を50:50で結合して一つの透過光にするように構成されている。また第三の光カプラ13は、第二の光カプラ12と同様に光ファイバ8の結合器であって、第一のWDMフィルタ10からの反射光と、第二のWDMフィルタ11からの反射光を50:50で結合して一つの反射光にするように構成されている。ここで、透過光もしくは反射光を50:50で結合し得るならば、第二の光カプラ12、第三の光カプラ13の代わりに他の構成手段を用いても良い。
【0026】
第一の光電変換部14は、第二の光カプラ12からの透過光を受け、透過光の光強度を電圧VTに変換するようになっている。または第二の光電変換部15は、第三の光カプラ13からの反射光を受け、反射光の光強度を電圧VRに変換するようになっている。
【0027】
ひずみ演算部16は、所定のプログラムや関数処理によって電圧VT及び電圧VRを処理するようになっている。
【0028】
以下本発明のFBGセンサの計測方法及びその計測装置を実施する形態の第一例の作用を説明する。
【0029】
対象物について、ひずみや温度変化を計測する際には、広帯域の光源3から計測光を光ファイバ8へ連続的に放射し(図3に示すステップS1)、計測光(入射光)を光サーキュレータ4によりFBGセンサ1に入射させ(ステップS2,S3)、対象物の計測位置から物理量の信号を発するようにFBGセンサ1でブラッグ波長の反射光を発生させる(ステップS4)。次に、発生した反射光を光サーキュレータ4に戻して(ステップS5)、光サーキュレータ4により分離する(ステップS6)。なお図3中、符号Aは、図4へフローが続くことを示している。
【0030】
次にFBGセンサ1からの反射光を第一の光カプラ9に入射させて(図4に示すステップS7)、2つのWDMフィルタ10,11に対応するように2つの反射光に分割し(ステップS8)、分割された一方の反射光を第一のWDMフィルタ10に入射させる(ステップS9)と共に、分割された他方の反射光を第二のWDMフィルタ11に入射させる(ステップS10)。
【0031】
第一のWDMフィルタ10では反射光が入射すると、第一のWDMフィルタ10の遷移帯域により透過光と反射光を生じ(ステップS11)、第二のWDMフィルタ11では反射光が入射すると、第二のWDMフィルタ11の遷移帯域により透過光と反射光を生じる(ステップS12)。
【0032】
続いて、第一のWDMフィルタ10からの透過光と他方のWDMフィルタ11からの透過光を第二の光カプラ12に入射させる(ステップS13)と共に、第一のWDMフィルタ10からの反射光と他方のWDMフィルタ11からの反射光を第三の光カプラ13に入射させる(ステップS14)。第二の光カプラ12では、2つの透過光を足し合わせて1つの透過光にし(ステップS15)、第三の光カプラ13で2つの反射光を足し合わせて1つの透過光にする(ステップS16)。ここで一つのWDMフィルタと他のWDMフィルタを連結する概念を図2により基準化して示すと、一つのWDMフィルタは透過光(図2では透過率a)と反射光(図2では透過率a’)を生じさせると共に、波長帯域(遷移帯域)が連続する他のWDMフィルタは透過光(図2では透過率b)と反射光(図2では透過率b’)を生じさせる。また一つのWDMフィルタと他のWDMフィルタとを連結した際には、波長帯域(遷移帯域)が連続するような透過光(図2では透過率c)と反射光(図2では透過率c’)を用いることができる。なお図4中、符号B、Cは、図5へフローが続くことを示している。
【0033】
次に、第二の光カプラ12からの透過光を第一の光電変換部14に導く(図5に示すステップS17)と共に、第三の光カプラ13からの反射光を第二の光電変換部15に導き(ステップS18)、第一の光電変換部14で透過光の光強度を電圧VTに変換し(ステップS19)、同時に第二の光電変換部15で反射光の光強度を電圧VRに変換する(ステップS20)。その後、透過光の電圧VTと反射光の電圧VRをひずみ演算部16に入力させる(ステップS21)。
【0034】
ひずみ演算部16では、無次元量R=(VR−VT)/(VT+VR)を用いて透過光の電圧VTと反射光の電圧VRによりR値が算出される(ステップS22)。ここで一つのWDMフィルタと他のWDMフィルタを連結する概念を図6のR値と波長の関係により基準化して示すと、一つのWDMフィルタのみの場合には1つのライン(図6ではラインA)になると共に、他のWDMフィルタのみの場合には他のライン(図6ではラインB)になる。これに対し、一つのWDMフィルタと他のWDMフィルタとを連結することにより、波長帯域(遷移帯域)が連続するような結合ライン(図6ではラインC)を得ることができる。またR値と波長の関係を示す具体的な例を示すと、図7、図8に示す如く、一つのWDMフィルタの場合のラインと、他のWDMフィルタの場合のラインと、一つのWDMフィルタと他のWDMフィルタを連結した場合のラインとを備えるものになる。この時、R値が−1.0から−0.8まで、及び0.8から1.0まではラインは、急激に変化して不規則になるため、WDMフィルタ10,11のR値の範囲を−0.8以上0.8以下として、R値−波長特性が滑らかな特性となるようにしている。
【0035】
また、ひずみ演算部16には、使用するFBGセンサ1に対して予めR値と波長特性の関係を測定した関数であって、図6のラインC、や図7、図8の連結したラインのような関数が入力されており、算出したR値を、予め測定したR値と波長特性の関係に適用して波長を求める(ステップS23)。波長を求めた後は、予め設定もしくは測定されたひずみと波長(ブラッグ波長)の関係(関数や対照テーブル)、予め設定もしくは測定された温度と波長(ブラッグ波長)の関係(関数や対照テーブル)を適用して、ひずみまたは温度変化を計測する(ステップS24)。
【0036】
ここで、ひずみまたは温度変化を計測するFBGセンサの計測装置及び計測方法は、2つのWDMフィルタ10,11を並列に用いる場合のみならず、3つ以上のWDMフィルタを並列に用いる場合でも良く、WDMフィルタの波長帯域が夫々連続するものならば特に制限されるものではない。この場合、光カプラ等の分割手段で複数に分割した反射光を、夫々のWDMフィルタで透過光と反射光にし、このうち2つのWDMフィルタからの透過光と反射光を上記第一例のように1つの透過光及び1つの反射光にする。そして、この1つの透過光及び1つの反射光に対し、更に別のWDMフィルタからの透過光及び反射光を同様に足し合わせ、1つの透過光及び1つの反射光にする。順次これを繰り返して、波長帯域が夫々連続する複数のWDMフィルタを連結し、波長帯域を広げることができる。また図9には、4つのWDMフィルタ(λ1〜4)を用いた場合における4つのWDMフィルタの個々のR値と波長の関係を示し、少なくとも4つのWDMフィルタの波長帯域が連続する必要があることを示している。
【0037】
而して、このように実施の形態の第一例によれば、第一のWDMフィルタ(一方のWDMフィルタ)10に、波長帯域が連続する第二のWDMフィルタ(他方のWDMフィルタ)11を連結して波長帯域内を広げるので、WDMフィルタ10,11を他のWDMフィルタに交換することを不要にし、ひずみや温度変化を好適に計測することができる。また同時に他のWDMフィルタへの交換に伴うひずみや温度変化の計測の中断を抑制することができる。更に第一のWDMフィルタ10と第二のWDMフィルタ11を連結して適用し得るので、ひずみや温度変化を計測する方法の自由度を向上させることができる。更にまた、光ファイバ8に複数のFBGセンサ1を備え、複数のFBGセンサ1に対応するように複数のWDMフィルタ10,11を備えた構造であっても、FBGセンサ1の反射波長の変化がWDMフィルタ10,11で計測し得る波長帯域内を超えた場合には、同様に、WDMフィルタ10に、波長帯域が連続する他のWDMフィルタ11を連結して波長帯域内を広げ、WDMフィルタ10,11から他のWDMフィルタへの交換を不要にすることができる。
【0038】
また、R値の範囲を−0.8以上0.8以下とすると、R値−波長特性が滑らかな特性(直線に近いライン)となり、電圧VT、電圧VRからのR値を介して適切な波長を求め、ひずみや温度変化を一層好適に計測することができる。ここで、R値の範囲を−0.8未満、または0.8より大きい範囲にした場合には、R値−波長特性が不規則なものとなり、滑らかな特性から外れるため、適切なR値を推定することができないという問題がある。
【0039】
図10〜図13は本発明のFBGセンサの計測方法及びその計測装置を実施する形態の第二例であって、図1〜図9と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。また第二例は請求項1、3、5、7に対応するものである。
【0040】
第二例のFBGセンサの計測方法及びその計測装置は、図10に示す如く、対象物(図示せず)に複数(二つの)のFBGセンサ1を配置する光ファイバ21と、光ファイバ21へ光を出力する光源3と、FBGセンサ1のブラッグ波長で発生した反射光を分離する光サーキュレータ4と、光サーキュレータ4からの反射光を入射させる第一の光カプラ9と、切替により光サーキュレータ4からの反射光を入射させる光スプリッタ22と、光スプリッタ22と第一の光カプラ9を切り替える切替手段23〜31と、第一の光カプラ9または光スプリッタ22からの反射光を受ける2つのWDM(Wavelength Division Multiplexing 波長分割多重)フィルタ10,11と、WDMフィルタ10,11からの透過光または反射光を入射させる第二の光カプラ12及び第三の光カプラ13と、WDMフィルタ10,11からの透過光及び反射光と共に第二の光カプラ12及び第三の光カプラ13からの透過光及び反射光を受ける複数の光電変換部32〜35と、複数の光電変換部32〜35からの電圧信号を処理するひずみ演算部36とを備えている。
【0041】
FBGセンサ1、光源3、光サーキュレータ4、第一の光カプラ9、第二の光カプラ12、第三の光カプラ13は第一例と同様に構成されており、光ファイバ21は、光を導波するように、光源3から光サーキュレータ4までのライン、二つのFBGセンサ1を備えて光サーキュレータ4より延在するラインを含めて光源3から光電変換部32〜35までのラインに敷設されている。
【0042】
光スプリッタ22は、光サーキュレータ4からの反射光を、二つのFBGセンサ1に対応して二つの波長帯域に分岐するように構成されている。ここで、反射光を二つのFBGセンサ1に対応して二つの波長帯域に分岐するものならば、光スプリッタ22の代わりに他の光学フィルタ等の構成手段を用いても良い。
【0043】
2つのWDMフィルタ10,11は、並列に配置され、第一の光カプラ9で分割された反射光、もしくは光スプリッタ22で分岐された反射光を個別に受けるようになっている。またWDMフィルタ10,11は、第一例と同様に透過率と反射率が変化する遷移帯域(波長帯域)を備え、この遷移帯域(波長帯域)により透過光と反射光を外部へ導波すると共に、2つのWDMフィルタ10,11の遷移帯域を連続させるように設定している。
【0044】
切替手段23〜31は、光サーキュレータ4から光スプリッタ22及び第一の光カプラ9までの間に位置する第一の光スイッチ23と、光スプリッタ22及び第一の光カプラ9から第一のWDMフィルタ10までの間に位置する第二の光スイッチ24と、光スプリッタ22及び第一の光カプラ9から第二のWDMフィルタ11までの間に位置する第三の光スイッチ25と、第一のWDMフィルタ10から第二の光カプラ12までの間に位置する第四の光スイッチ26と、第一のWDMフィルタ10から第三の光カプラ13までの間に位置する第五の光スイッチ27と、第二のWDMフィルタ11から第二の光カプラ12までの間に位置する第六の光スイッチ28と、第二のWDMフィルタ11から第三の光カプラ13までの間に位置する第七の光スイッチ29と、第二の光カプラ12から第三の光電変換部34までの間に位置する第八の光スイッチ30と、第三の光カプラ13から第四の光電変換部35までの間に位置する第九の光スイッチ31とを備えている。
【0045】
第一の光スイッチ23は、光サーキュレータ4からの反射光を光スプリッタ22側または第一の光カプラ9側へ切り替えるように構成され、第二の光スイッチ24は、光スプリッタ22側または第一の光カプラ9側からの反射光を切り替えるように構成され、第三の光スイッチ25は、光スプリッタ22側または第一の光カプラ9側からの反射光を切り替えるように構成され、第四の光スイッチ26は、第一のWDMフィルタ10からの透過光を第一の光電変換部32側(光スプリッタ22側)または第二の光カプラ12側(第一の光カプラ9側)へ切り替えるように構成され、第五の光スイッチ27は、第一のWDMフィルタ10からの反射光を第二の光電変換部33側(光スプリッタ22側)または第三の光カプラ13側(第一の光カプラ9側)へ切り替えるように構成され、第六の光スイッチ28は、第二のWDMフィルタ11からの透過光を第八の光スイッチ30側(光スプリッタ22側)または第二の光カプラ12側(第一の光カプラ9側)へ切り替えるように構成され、第七の光スイッチ29は、第二のWDMフィルタ11からの反射光を第九の光スイッチ31側(光スプリッタ22側)または第三の光カプラ13側(第一の光カプラ9側)へ切り替えるように構成され、第八の光スイッチ30は、第六の光スイッチ28側(光スプリッタ22側)または第二の光カプラ12側(第一の光カプラ9側)からの透過光を切り替えるように構成され、第九の光スイッチ31は、第七の光スイッチ29側(光スプリッタ22側)または第三の光カプラ13側(第一の光カプラ9側)からの反射光を切り替えるように構成されている。
【0046】
ここで、第一の光スイッチ23、第二の光スイッチ24、第三の光スイッチ25、第四の光スイッチ26、第五の光スイッチ27、第六の光スイッチ28、第七の光スイッチ29、第八の光スイッチ30、第九の光スイッチ31は、制御部(図示せず)を介して測定方法の切替に伴っていずれか一方または他方に一斉に切り替わるようにしても良いし、また手動等で適宜切り替えるようにしても良い。
【0047】
第一の光電変換部32は、第四の光スイッチ26を介して第一のWDMフィルタ10からの透過光を受け、透過光の光強度を電圧VTに変換するようになっている。また第二の光電変換部33は、第五の光スイッチ27を介して第一のWDMフィルタ10からの反射光を受け、反射光の光強度を電圧VRに変換するようになっている。
【0048】
第三の光電変換部34は、第六の光スイッチ28及び第八の光スイッチ30を介して第二のWDMフィルタ11からの透過光を受けるか、または第八の光スイッチ30を介して第二の光カプラ12からの透過光を受け、透過光の光強度を電圧VTに変換するようになっている。ここで、第三の光電変換部34は、第二のWDMフィルタ11からの透過光を受ける一つの光電変換部と、第二の光カプラ12からの透過光を受ける他の光電変換部としても良い。
【0049】
第四の光電変換部35は、第七の光スイッチ29及び第九の光スイッチ31を介して第二のWDMフィルタ11からの反射光を受けるか、または第九の光スイッチ31を介して第三の光カプラ13からの反射光を受け、反射光の光強度を電圧VRに変換するようになっている。ここで、第四の光電変換部35は、第二のWDMフィルタ11からの反射光を受ける一つの光電変換部と、第三の光カプラ13からの反射光を受ける他の光電変換部としても良い。
【0050】
ひずみ演算部36は、所定のプログラムや関数処理によって電圧VT及び電圧VRを処理するようになっている。
【0051】
以下本発明のFBGセンサの計測方法及びその計測装置を実施する形態の第二例の作用を説明する。
【0052】
対象物について、ひずみや温度変化を計測する際には、初めに、複数(二つの)のFBGセンサ1の複数点(2点)で夫々狭い波長帯域により測定する測定方法(図11では(i))を選択するか、または、複数(二つの)のFBGセンサ1の1点で広い波長帯域により測定する測定方法(図11では(ii))を選択するか判断する(図11のステップS31)。
【0053】
次にFBGセンサ1で複数点(2点)の計測方法を選択した際には、第一の光スイッチ23から第九の光スイッチ31までを全て光スプリッタ22側に切り換え、FBGセンサ1の1点の計測方法を選択した際には、第一の光スイッチ23から第九の光スイッチ31までを全て第一の光カプラ9側に切り換えるようにしている。
【0054】
続いてFBGセンサ1で複数点(2点)の計測方法を選択した際(図11では(i))には、以下のように処理する。
【0055】
最初に図3のフローの処理を行った後、二つのFBGセンサ1からの反射光を光サーキュレータ4から第一の光スイッチ23を介して光スプリッタ22に入射させ(図12のステップS33)、光スプリッタ22により反射光を、二つのFBGセンサ1に対応するように反射波長ごとに区分けして分岐させる(ステップS34)。ここで図11中の符号A’は図12のフローへ続くことを意味している。
【0056】
次に、分岐した一方の反射光を、第二の光スイッチ24を介して第一のWDMフィルタ10に入射させる(ステップS35)と共に、分岐した他方の反射光を、第三の光スイッチ25を介して第二のWDMフィルタ11に入射させる(ステップS36)。
【0057】
第一のWDMフィルタ10では反射光が入射すると、第一のWDMフィルタ10の遷移帯域により透過光と反射光を生じ(ステップS37)、第二のWDMフィルタ11では反射光が入射すると、第二のWDMフィルタ11の遷移帯域により透過光と反射光を生じる(ステップS38)。ここで図12中の符号B’,C’と符号B'’,C''は、夫々同じように図13の符号B’,C’のフローへ続くことを意味している。
【0058】
以下、一方のFBGセンサ1のデータとして第一のWDMフィルタ10からの透過光と反射光を処理する場合(図12の符号B’,C’)と、他方のFBGセンサ1のデータとして第二のWDMフィルタ11からの透過光と反射光を処理する場合(図12中の符号B'’,C'')とに分けて説明する。
【0059】
第一のWDMフィルタ10からの透過光と反射光を処理する場合(図12の符号B’,C’)には、図13のフローに示す如く、第一のWDMフィルタ10からの透過光を、第四の光スイッチ26を介して第一の光電変換部32に導く(ステップS41)と共に、第一のWDMフィルタ10からの反射光を、第五の光スイッチ27を介して第二の光電変換部33に導き(ステップS42)、第一の光電変換部32で透過光の光強度を電圧VTに変換し(ステップS43)、同時に第二の光電変換部33で反射光の光強度を電圧VRに変換する(ステップS44)。その後、透過光の電圧VTと反射光の電圧VRをひずみ演算部36に入力させる(ステップS45)。
【0060】
ひずみ演算部36では、無次元量R=(VR−VT)/(VT+VR)を用いて透過光の電圧VTと反射光の電圧VRによりR値が算出される(ステップS46)。この時、第二例のひずみ演算は、第一例と同様に、WDMフィルタ10,11のR値の範囲を−0.8以上0.8以下として、R値−波長特性が滑らかな特性となるようにしている。
【0061】
また、ひずみ演算部36には、第一例と同様に、使用するFBGセンサ1に対して予めR値と波長特性の関係を測定した関数が入力されており、算出したR値を、予め測定したR値と波長特性の関係に適用して波長を求める(ステップS47)。波長を求めた後は、予め設定もしくは測定されたひずみと波長(ブラッグ波長)の関係(関数や対照テーブル)、予め設定もしくは測定された温度と波長(ブラッグ波長)の関係(関数や対照テーブル)を適用して、一方のFBGセンサ1におけるひずみまたは温度変化を計測する(ステップS48)。
【0062】
一方、第二のWDMフィルタ11からの透過光と反射光を処理する場合(図12の符号B'’,C'')には、第一のWDMフィルタ10からの透過光と反射光を処理する場合と同様に図13のフローに示す如く、第二のWDMフィルタ11からの透過光を、第六の光スイッチ28及び第八の光スイッチ30を介して第三の光電変換部34に導く(ステップS41)と共に、第二のWDMフィルタ11からの反射光を、第七の光スイッチ29及び第九の光スイッチ31を介して第四の光電変換部35に導き(ステップS42)、第三の光電変換部34で透過光の光強度を電圧VTに変換し(ステップS43)、同時に第四の光電変換部35で反射光の光強度を電圧VRに変換する(ステップS44)。その後、透過光の電圧VTと反射光の電圧VRがひずみ演算部36に入力される(ステップS45)。
【0063】
ひずみ演算部36では、第一のWDMフィルタ10からの反射光と透過光を処理する場合と同様に処理し、他方のFBGセンサ1におけるひずみまたは温度変化を計測する(ステップS48)。
【0064】
その後、複数(2つの)のFBGセンサ1(複数の個所)で夫々狭い波長帯域により測定する測定方法(図11では(i))が適切である場合には、この測定方法を維持する。一方、ひずみや温度変化が大きく、反射波長の変化がWDMフィルタ10,11の波長帯域を越えた場合には、図11のステップS31に戻り、複数(二つの)のFBGセンサ1の1点で広い波長帯域により測定する測定方法(図11では(ii))に切り替える。
【0065】
次にFBGセンサ1の1点の計測方法を選択した際(図11では(ii))には、以下のように処理する。
【0066】
処理は図3〜図6のフローに従い、図3のフローの処理の後、二つのFBGセンサからの反射光を光サーキュレータ4から第一の光スイッチ23を介して第一の光カプラ9に入射させ(図4のステップS7)、2つのWDMフィルタ10,11に対応するように2つの反射光に分割し(ステップS8)、分割された一方の反射光を第二の光スイッチ24を介して第一のWDMフィルタ10に入射させる(ステップS9)と共に、分割された他方の反射光を第三の光スイッチ25を介して第二のWDMフィルタ11に入射させる(ステップS10)。
【0067】
第一のWDMフィルタ10では反射光が入射すると、第一のWDMフィルタ10の遷移帯域により反射光と透過光を生じ(ステップS11)、第二のWDMフィルタ11では反射光が入射すると、第二のWDMフィルタ11の遷移帯域により透過光と反射光を生じる(ステップS12)。
【0068】
続いて、第一のWDMフィルタ10からの透過光を、第四の光スイッチ26を介して第二の光カプラ12に入射させると共に、第二のWDMフィルタ11からの透過光を、第六の光スイッチ28を介して第二の光カプラ12に入射させる(ステップS13)。また、第一のWDMフィルタ10からの反射光を、第五の光スイッチ27を介して第三の光カプラ13に入射させると共に、第二のWDMフィルタ11からの反射光を、第七の光スイッチ29を介して第三の光カプラ13に入射させる(ステップS14)。第二の光カプラ12では、2つの透過光を足し合わせて1つの透過光にし(ステップS15)、第三の光カプラ13で2つの反射光を足し合わせて1つの反射光にする(ステップS16)。
【0069】
次に、第二の光カプラ12からの透過光を、第八の光スイッチ30を介して第三の光電変換部34に導く(図5に示すステップS17)と共に、第三の光カプラ13からの反射光を、第九の光スイッチ31を介して第四の光電変換部35に導き(ステップS18)、第三の光電変換部34で透過光の光強度を電圧VTに変換し(ステップS19)、同時に第四の光電変換部35で反射光の光強度を電圧VRに変換する(ステップS20)。その後、透過光の電圧VTと反射光の電圧VRをひずみ演算部36に入力させる(ステップS21)。
【0070】
ひずみ演算部36では、無次元量R=(VR−VT)/(VT+VR)を用いて透過光の電圧VTと反射光の電圧VRによりR値が算出される(ステップS22)。この時、第二例のひずみ演算は、第一例と同様に、WDMフィルタ10,11のR値の範囲を−0.8以上0.8以下として、R値−波長特性が滑らかな特性となるようにしている。
【0071】
また、ひずみ演算部36には、第一例と同様に、使用するFBGセンサ1に対して予めR値と波長特性の関係を測定した関数が入力されており、算出したR値を、予め測定したR値と波長特性の関係に適用して波長を求める(ステップS23)。波長を求めた後は、予め設定もしくは測定されたひずみと波長(ブラッグ波長)の関係(関数や対照テーブル)、予め設定もしくは測定された温度と波長(ブラッグ波長)の関係(関数や対照テーブル)を適用して、ひずみまたは温度変化を計測する(ステップS24)。
【0072】
ここで、ひずみまたは温度変化を計測するFBGセンサの計測装置及びその計測方法には、2つのWDMフィルタ10,11を並列に用いる構成のみならず、3つ以上のWDMフィルタを並列に用いる構成も良く、WDMフィルタの波長帯域が夫々連続するものならば特に制限されるものではない。
【0073】
その後、複数(二つの)のFBGセンサ1の1点で広い波長帯域により測定する測定方法(図11では(ii))が適切である場合には、この測定方法を維持する。一方、複数(二つの)のFBGセンサ1の複数点(2点)で測定する必要がある場合には、図11のステップS31に戻り、複数(二つの)のFBGセンサ1の複数点(2点)で夫々狭い波長帯域により測定する測定方法(図11では(i))に切り替える。
【0074】
而して、このように実施の形態の第二例によれば、一つのFBGセンサに一つのWDMフィルタを適用するように複数のFBGセンサ1の複数点で夫々狭い波長帯域により測定する測定方法と、一つのFBGセンサに2つのWDMフィルタを適用するように複数のFBGセンサ1の1点で広い波長帯域により測定する測定方法とを適用し得るので、ひずみや温度変化を好適に計測することができる。また、複数のFBGセンサ1の複数点で夫々狭い波長帯域により測定する測定方法と、複数のFBGセンサ1の1点で広い波長帯域により測定する測定方法とを必要に応じて選択し得るので、ひずみや温度変化を計測する方法の自由度を向上させることができる。
【0075】
また実施の形態の第二例によれば、波長帯域が連続する2つのWDMフィルタを連結し、二つのFBGセンサ1の1点で広い波長帯域により測定した場合には、第一例と同様な作用効果を得ることができる。
【0076】
尚、本発明のFBGセンサの計測装置及びその計測方法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明を実施する形態の第一例の構成を示すブロック図である。
【図2】WDMフィルタの遷移帯域を基準化して示すと共に、波長帯域が連続する一つのWDMフィルタと他のWDMフィルタとを連結した場合を示すグラフである。
【図3】第一例の処理を示すものであって最初のフローである。
【図4】第一例の処理を示すものであって図3から連続するフローである。
【図5】第一例の処理を示すものであって図4から連続するフローである。
【図6】R値と波長特性の関係を基準化して示す共に、波長帯域が連続する一つのWDMフィルタと他のWDMフィルタとを連結した場合を示すグラフである。
【図7】R値と波長特性の関係を具体的な一例で示すグラフである。
【図8】R値と波長特性の関係を具体的な他例で示すグラフである。
【図9】波長帯域が連続する4つのWDMフィルタであってR値と波長特性の関係を具体例で示すグラフである。
【図10】本発明を実施する形態の第二例の構成を示すブロック図である。
【図11】第二例の処理を示すものであって最初のフローである。
【図12】第二例の処理を示すものであって図11から連続するフローである。
【図13】第二例の処理を示すものであって図12から連続するフローである。
【図14】従来のFBGセンサの計測装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0078】
1 FBGセンサ
3 光源
4 光サーキュレータ
8 光ファイバ
9 第一の光カプラ
10 第一のWDMフィルタ(一方のWDMフィルタ)
11 第二のWDMフィルタ(他方のWDMフィルタ)
12 第二の光カプラ
13 第三の光カプラ
14 第一の光電変換部(一方の光電変換部)
15 第二の光電変換部(他方の光電変換部)
16 ひずみ演算部
21 光ファイバ
22 光スプリッタ
23 第一の光スイッチ(切替手段)
24 第二の光スイッチ(切替手段)
25 第三の光スイッチ(切替手段)
26 第四の光スイッチ(切替手段)
27 第五の光スイッチ(切替手段)
28 第六の光スイッチ(切替手段)
29 第七の光スイッチ(切替手段)
30 第八の光スイッチ(切替手段)
31 第九の光スイッチ(切替手段)
32 第一の光電変換部
33 第二の光電変換部
34 第三の光電変換部(他の光電変換部)
35 第四の光電変換部(別の光電変換部)
36 ひずみ演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つのFBGセンサに一つのWDMフィルタを適用してFBGセンサの反射波長の変化からひずみまたは温度変化を計測し、FBGセンサの反射波長の変化が前記WDMフィルタで計測可能な範囲を超える場合には、波長帯域が連続する他のWDMフィルタを前記WDMフィルタに連結して適用し、ひずみまたは温度変化を計測することを特徴とするFBGセンサの計測方法。
【請求項2】
FBGセンサからの反射光を光カプラを介して分割し、分割した反射光を、波長帯域が連続する2つのWDMフィルタに個別に入射させ、一方のWDMフィルタからの透過光と他方のWDMフィルタからの透過光を足し合わせて電圧VTに変換すると共に、一方のWDMフィルタからの反射光と他方のWDMフィルタからの反射光を足し合わせて電圧VRに変換し、無次元量R=(VR−VT)/(VT+VR)を算出し、予め測定したR値と波長特性の関係から波長を求め、ひずみまたは温度変化を計測することを特徴とするFBGセンサの計測方法。
【請求項3】
二つのFBGセンサと、波長帯域が連続する2つのWDMフィルタとを用いてひずみまたは温度変化を計測するFBGセンサの計測方法であって、
二つのFBGセンサの二点で計測する際には、二つのFBGセンサからの反射光を光スプリッタにより反射波長ごとに区分けするように反射光を分岐し、分岐した反射光を2つのWDMフィルタに個別に入射させて、一方のWDMフィルタからの透過光と反射光を夫々電圧に変換すると共に、他方のWDMフィルタからの透過光と反射光を夫々電圧に変換し、夫々の電圧を介して二つのFBGセンサの2点によるひずみまたは温度変化を計測し、
二つのFBGセンサのうち一点で計測する際には、二つのFBGセンサからの反射光を光カプラを介して分割し、分割した反射光を2つのWDMフィルタに個別に入射させて、一方のWDMフィルタからの透過光と他方のWDMフィルタからの透過光を足し合わせて電圧VTに変換すると共に、一方のWDMフィルタからの反射光と他方のWDMフィルタからの反射光を足し合わせて電圧VRに変換し、夫々の電圧を介して二つのFBGセンサの1点によるひずみまたは温度変化を、2つのWDMフィルタの波長帯域で計測することを特徴する請求項1又は2記載のFBGセンサの計測方法。
【請求項4】
R値の範囲を−0.8以上0.8以下としたことを特徴する請求項2記載のFBGセンサの計測方法。
【請求項5】
FBGセンサを配置する光ファイバと、
該光ファイバへ光を連続的に出力する光源と、
前記FBGセンサのブラッグ波長で発生した反射光を分離する光サーキュレータと、
波長帯域が連続する2つのWDMフィルタと、
2つのWDMフィルタからの透過光または反射光を電圧に変換する光電変換部と、
光電変換部からの電圧を適用してひずみまたは温度変化を計測するひずみ演算部とを備え、
一つのFBGセンサに一つのWDMフィルタを適用してFBGセンサの反射波長の変化からひずみまたは温度変化を計測し、FBGセンサの反射波長の変化が前記WDMフィルタで計測可能な範囲を超える場合には、他のWDMフィルタを前記WDMフィルタに連結して適用し、ひずみまたは温度変化を計測するように構成したことを特徴とするFBGセンサの計測装置。
【請求項6】
FBGセンサを配置する光ファイバと、
該光ファイバへ光を連続的に出力する光源と、
前記FBGセンサのブラッグ波長で発生した反射光を分離する光サーキュレータと、
前記FBGセンサからの反射光を分割する第一の光カプラと、
光カプラで分割した反射光を個別に入射させ且つ波長帯域が連続する2つのWDMフィルタと、
一方のWDMフィルタからの透過光と他方のWDMフィルタからの透過光とを足し合わせる第二の光カプラと、
第二の光カプラからの透過光を電圧VTに変換する一方の光電変換部と、
一方のWDMフィルタからの反射光と他方のWDMフィルタからの反射光とを足し合わせる第三の光カプラと、
第三の光カプラからの反射光を電圧VRに変換する他方の光電変換部と、
一方の光電変換部からの電圧VTと、他方の光電変換部からの電圧VRとで無次元量R=(VR−VT)/(VT+VR)を算出し、予め測定したR値と波長特性の関係から波長を求め、ひずみまたは温度変化を計測するひずみ演算部とを備えたことを特徴とするFBGセンサの計測装置。
【請求項7】
二つのFBGセンサを配置する光ファイバと、
該光ファイバへ光を連続的に出力する光源と、
二つのFBGセンサのブラッグ波長で発生した反射光を分離する光サーキュレータと、
二つのFBGセンサからの反射光を反射波長ごとに区分けする光スプリッタと、
二つのFBGセンサからの反射光を分割する第一の光カプラと、
光スプリッタと第一の光カプラを切り替える切替手段と、
光スプリッタまたは光カプラを介した反射光を個別に入射させ且つ波長帯域が連続する2つのWDMフィルタと、
光スプリッタを選択した際にWDMフィルタからの透過光及び反射光を処理する光電変換部と、
第一の光カプラを選択した際に一方のWDMフィルタからの透過光と他方のWDMフィルタからの透過光とを足し合わせる第二の光カプラと、
第二の光カプラからの透過光を電圧VTに変換する他の光電変換部と、
第一の光カプラを選択した際に一方のWDMフィルタからの反射光と他方のWDMフィルタからの反射光とを足し合わせる第三の光カプラと、
第三の光カプラからの反射光を電圧VRに変換する別の光電変換部と、
光スプリッタを選択した際には二つのFBGセンサの2点によるひずみまたは温度変化を計測し、光カプラを選択した際には二つのFBGセンサの1点によるひずみまたは温度変化を、2つのWDMフィルタの波長帯域で計測するひずみ演算部を備えたことを特徴する請求項5又は6記載のFBGセンサの計測装置。
【請求項8】
ひずみ演算部は、R値の範囲を−0.8以上0.8以下としたことを特徴する請求項6記載のFBGセンサの計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−43892(P2010−43892A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206843(P2008−206843)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【Fターム(参考)】