説明

IC冷却装置

【課題】 本発明の課題は、放熱に要する構成部材を減らし、ストレスやたわみの発生を抑えることにより、より効率的にICを冷却するIC冷却装置を提供することである。
【解決手段】 IC冷却装置は、IC1、伝熱支柱2、固定用スペーサ3、ばね4、冷却ブロック6、冷却パイプ7、ねじ24より構成される。図1のように、IC1上面のパッケージ部1aには、熱伝導材5aが塗布され、冷却ブロック6に設けられた伝熱支柱用挿入穴6aの伝熱支柱2との接触面にも熱伝導材5bが塗布されている。また、冷却ブロック6は、固定用スペーサ3により、プリント基板8に固定され、ばね4は、2本のねじ24、24と冷却ブロック6の上面2ヶ所に設けられたねじ穴6bにより、冷却ブロック6に取り付けられ、そのバネ圧により、伝熱支柱2の上面を下方へ押え付けるようにして固定されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ICを冷却するIC冷却装置に係り、詳細には、伝熱体と冷却体を利用することにより、効率的にICを放熱するIC冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】以下、従来のIC冷却装置について、図4R>4〜図6を参照して説明する。まず、図4は、従来技術におけるIC冷却装置の分解斜視図である。図4に示されるように、IC31は、熱伝導性接着材47により下部伝熱板45の底面部と接着されるパッケージ部31a、及び、後述するプリント基板38(図5参照)に配線接続され、各種信号等の送受信を行うリード部1bを主要部として構成される。
【0003】IC31は、熱伝導性接着材47を介して下部伝熱板45の底面に接着され、下部伝熱板45は、その上面を熱伝導材35dを介して上部伝熱板46の底面部に接着されている。さらに、下部伝熱板45には、ねじ48を通すためのねじ穴45aが2ヶ所に設けられている。ねじ穴45aと同様に、上部伝熱板46の2ヶ所に設けられた座ぐり穴にねじ48、48を2本通し、ねじ48で下部伝熱板45と上部伝熱板46は締結されている。
【0004】なお、上部伝熱板46は、皿ばね50とワッシャ51を介してねじ48により下部伝熱板45に結合しているが、上部伝熱板46の底面と下部伝熱板45の上面は、ねじ48による締付けによって接触せず、皿ばね50による押圧によって接触することとなる。
【0005】また、上部伝熱板46は、冷却パイプ52に対向するようにフランジ部の2ヶ所にねじ穴を設けている。このねじ穴にねじ49、49を2本通し、冷却パイプ52の側面に図のように設けられた2ヶ所のねじ穴に締付けることにより、冷却パイプ52は、熱伝導材35cを介して上部伝熱板46に固定して取り付けられる。
【0006】上述の構成により、IC31の発熱は、熱伝導性接着材47、下部伝熱板45、熱伝導材35d、上部伝熱板46、熱伝導材35c、冷却パイプ52と伝導し、最終的に冷媒44により装置外部に放出されることになる。
【0007】次に、図5は、IC31の実装形態の一例を示す図である。図5において、IC31をプリント基板38に実装する際に、IC31のリード部31bは、はんだ付けにより接合される。このため、IC31の発熱による熱ストレスや、上部伝熱板46と下部伝熱板45を取り付ける際に生じる機械的ストレス等により、リード部31bのはんだ剥れが生じる場合がある。
【0008】これを防ぐため、IC冷却装置の断面図(図6参照)に示すように、ねじ48と上部伝熱板46の間に皿ばね50、ワッシャ51を使用することにより、上部伝熱板46を下部伝熱板45に固着させず、皿ばね50がストレスやたわみを吸収できる構成になっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のIC冷却装置では、以下のような問題点があった。IC31から下部伝熱板45、上部伝熱板46、冷却パイプ52へと放熱する際の伝熱効率を上げるため、各部材の接触面積と面圧を極力大きくする必要がある。このため、全ての使用部材における平行度、垂直度を調整することにより、各部材の形状、仕上の精度を一定水準以上に保つ必要があり、使用部材が多い程、精度保持に伴うコストが向上する。
【0010】また、IC31の発熱は、熱伝導性接着材47、下部伝熱板45、熱伝導材45d、上部伝熱板46、熱伝導材35c、冷却パイプ52と伝導し、最終的に冷媒44により外部に放熱されるが、熱を媒介する部材が多いため、冷却効率が悪い。さらに、下部伝熱板45は、熱伝導性接着材47によってIC31と接着されているため、ICを交換する際に下部伝熱板45を同時に交換する必要があり、コスト的にも時間的にも非効率である。
【0011】本発明の課題は、放熱に要する構成部材を減らし、ストレスやたわみの発生を抑えることにより、より効率的にICを冷却するIC冷却装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、熱伝導材を介してICからの発熱を伝導させる伝熱体(例えば、伝熱支柱2)と、熱伝導材を介して前記伝熱体と熱伝導し、内部に冷媒を流して、前記伝熱体より当該冷媒に伝導された熱を当該冷媒を外部に排出することにより、放熱させる冷却パイプ(例えば、冷却パイプ7)と、内部に前記冷却パイプを有し、前記伝熱体及び熱伝導材を介して伝導される前記ICの発する熱を当該冷却パイプを流れる冷媒を外部に排出させることにより、前記ICを冷却する冷却体(例えば、冷却ブロック6)、を備えることを特徴としている。
【0013】請求項1記載の発明によれば、伝熱体は、熱伝導材を介してICからの発熱を伝導させ、冷却パイプは、熱伝導材を介して前記伝熱体と熱伝導し、内部に冷媒を流して、前記伝熱体より当該冷媒に伝導された熱を当該冷媒を外部に排出することにより放熱させ、冷却体は、内部に前記冷却パイプを有し、前記伝熱体及び熱伝導材を介して伝導される前記ICの発する熱を当該冷却パイプを流れる冷媒を外部に排出させることにより、前記ICを冷却する。
【0014】したがって、ICと冷却パイプが1組の伝熱体、熱伝導材のみを介して接触するため、2組の伝熱体、熱伝導材を介する場合に比べて、放熱効率を向上させ、より迅速にIC冷却を行うことができる。また、構成に必要な伝熱体、熱伝導材を減らすことができ、部材コストを削減できる。
【0015】請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記伝熱体は、前記冷却体に設けられた挿入穴(例えば、挿入穴6a)に挿入され、前記熱伝導材を介して前記ICと接触するように設けられ、当該ICの発熱を当該熱伝導材を介して前記冷却体内部の冷却パイプを流れる冷媒へ伝導させることを特徴としている。
【0016】請求項2記載の発明によれば、前記伝熱体は、前記冷却体に設けられた挿入穴に挿入され、熱伝導材を介して前記ICと接触するように設けられ、当該ICの発熱を熱伝導材を介して前記冷却体内部の冷却パイプを流れる冷媒へ伝導させる。
【0017】したがって、ICから伝熱体に伝わった熱を冷却パイプを用いて直接冷却できる。また、伝熱体と冷却体との接触面積が大きいため、放熱効率をより向上できる。
【0018】請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記伝熱体を上方より押さえ付けることにより、当該伝熱体の底面と対向する面を上面として取り付けられた前記ICを接触させる弾性体(例えば、ばね4)、を更に備えることを特徴としている。
【0019】請求項3記載の発明によれば、弾性体は、前記伝熱体を上方より押さえ付けることにより、当該伝熱体の底面と対向する面を上面として取り付けられた前記ICを接触させる。
【0020】したがって、弾性体を用いて伝熱体をICに押え付けることができ、組立時の機械的なストレスやIC発熱時の熱ストレスを抑えた冷却装置を容易に構成できる。
【0021】請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記伝熱体は、円柱形であることを特徴としている。
【0022】請求項4記載の発明によれば、前記伝熱体は、円柱形である。
【0023】したがって、伝熱体及び伝熱体挿入穴を円柱状に設けたことにより、伝熱体と伝熱体挿入穴を埋める熱伝導材の厚みを一定にでき、IC冷却装置組立時の熱伝導材、伝熱体等の加工が容易である。
【0024】請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記冷却体及び前記伝熱体と独立して着脱可能に設けられ、前記ICが適所に配設されたプリント基板(例えば、プリント基板8)、を更に備えることを特徴としている。
【0025】請求項5記載の発明によれば、プリント基板は、前記冷却体及び前記伝熱体と独立して着脱可能に設けられ、前記ICが適所に配設される。
【0026】したがって、プリント基板が着脱可能な構成をとることにより、伝熱体や冷却体とは別にICのみの交換を行うことができる。このため、IC交換の際に、同時に伝熱体等を交換する場合に比べて、コストや時間を節約でき、IC冷却装置を効率的に運用できる。
【0027】
【発明の実施の形態】図1〜3を参照して本実施の形態におけるIC冷却装置について説明する。図1は、本発明の一実施の形態におけるIC冷却装置の分解斜視図である。図1において、IC冷却装置は、IC1、伝熱支柱2、固定用スペーサ3、ばね4、冷却ブロック6、冷却パイプ7、ねじ24を主要部として構成される。
【0028】図1のように、IC1のパッケージ部1a上面には、熱伝導材5aが塗布され、冷却ブロック6に設けられた伝熱支柱用の挿入穴6aの伝熱支柱2との接触面にも熱伝導材5bが塗布されている。また、冷却ブロック6は、スペーサ3で、プリント基板8に固定されている。
【0029】ばね4は、2本のねじ24、24と冷却ブロック6の上面2ヶ所に設けられたねじ穴6bで、冷却ブロック6に取り付けられ、ばね4の引張力により、伝熱支柱2の上面を下方へ移動するようにして保持されている。これにより、伝熱支柱2の底面は、熱伝導材5aを介して、IC1のパッケージ部1aに圧接する。
【0030】次いで、図2は、冷却装置の実装形態の一例を示す図である。図2において、プリント基板8は、コネクタ9、ガイドレール10、固定ブロック11、固定アングル12、開閉型カプラ13a及び13b、引抜きプレート23で構成される。
【0031】図2のように、冷媒14が流れる冷却パイプ7は、プリント基板8縁部の引抜きプレート23に取り付けられた固定アングル12を介して固定ブロック11に取り付けられている。また、プリント基板8は、引抜きプレート23で引き出し、ガイドレール10で案内されて、装置との着脱が可能である。なお、プリント基板8の着脱は、開閉型カプラ25a、25b(図3参照)を外すことにより行う。
【0032】次に、図3は、本実施の形態における冷媒14の供給方法の一例を示す図である。図3において、開閉型カプラ(雄)25aは、ホース26aを介してイン側マニホールド27に接続され、同様に、開閉型カプラ(雄)25bは、ホース26bを介してオウト側マニホールド28に接続される。また、開閉型カプラ25a、25bは、開閉型カプラ13a(雌)、13b(雌)にそれぞれ接続される。
【0033】すなわち、冷媒14は、送水側マニホールド27からホース26a、開閉型カプラ(雄)25aを通して冷却ブロック6に供給される。そして、IC1の発熱が伝導した冷媒14は、開閉型カプラ25b、ホース26bを通り、排水側マニホールド28より冷却装置の外部に排出される。なお、冷却パイプ7の先端2ヶ所に設けられた開閉型カプラ13a、13bと開閉型カプラ25a、25bをそれぞれ接続し、それらの内部に設けられたバルブを調節することにより、冷媒14の供給量を調整できる。
【0034】以上のように、本発明に係るIC冷却装置によれば、IC1の発する熱は、熱伝導材5aにより伝熱支柱2を介して、冷却ブロック6に伝わる。一方、冷却ブロック6には、前段のように冷媒14がイン側マニホールド27より供給されるため、伝熱支柱2の伝導熱は、熱伝導材5bにより冷却ブロック6を介して冷媒14に伝わり、ここで熱吸収した冷媒14は、オウト側マニホールド28より排熱される。このように、従来の冷却装置31と比較して簡易な構成により、効率的なICの冷却が可能となる。
【0035】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、ICと冷却パイプが1組の伝熱体、熱伝導材のみを介して接触するため、2組の伝熱体、熱伝導材を介する場合に比べて、熱伝導効率を向上させ、より迅速にICを冷却できる。また、構成に必要な伝熱体、熱伝導材を減らすことができ、部材コストを削減できる。
【0036】請求項2記載の発明によれば、ICから伝熱体に伝わった熱を冷却パイプを用いて直接冷却できる。また、伝熱体と冷却体との接触面積が大きいため、放熱効率をより向上できる。
【0037】請求項3記載の発明によれば、弾性体を用いて伝熱体をICに押え付けることができ、組立時の機械的なストレスやIC発熱時の熱ストレスを抑えた冷却装置を容易に構成できる。
【0038】請求項4記載の発明によれば、伝熱体及び伝熱体挿入穴を円柱状に設けたことにより、伝熱体と伝熱体挿入穴を埋める熱伝導材の厚みを一定にでき、IC冷却装置組立時の熱伝導材、伝熱体等の加工が容易である。
【0039】請求項5記載の発明によれば、プリント基板が着脱可能な構成をとることにより、伝熱体や冷却体とは別にICのみの交換を行うことができる。このため、IC交換の際に、同時に伝熱体等を交換する場合に比べて、コストや時間を節約でき、IC冷却装置を効率的に運用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態におけるIC冷却装置1の分解斜視図である。
【図2】本実施の形態におけるIC冷却装置1の実装形態の一例を示す斜視図である。
【図3】本実施の形態におけるIC冷却装置1の冷媒14の供給方法を示す上面図である。
【図4】従来のIC冷却装置31の分解斜視図である。
【図5】従来のIC冷却装置31の実装形態の一例を示す斜視図である。
【図6】従来のIC冷却装置31の断面図である。
【符号の説明】
1 IC
1a パッケージ部
2 伝熱支柱
3 固定用スペーサ
4 ばね
5a、5b 熱伝導材
6 冷却ブロック
6a 挿入穴
6b ねじ穴
7 冷却パイプ
8 プリント基板
9 コネクタ
10 ガイドレール
11 固定ブロック
12 固定アングル
13a 開閉型カプラ(雌)
14 冷媒
23 引抜きプレート
24 ねじ
25a、25b 開閉型カプラ(雄)
26a、26b ホース
27 イン側マニホールド
28 オウト側マニホールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】熱伝導材を介してICからの発熱を伝導させる伝熱体と、熱伝導材を介して前記伝熱体と熱伝導し、内部に冷媒を流して、前記伝熱体より当該冷媒に伝導された熱を当該冷媒を外部に排出することにより、放熱させる冷却パイプと、内部に前記冷却パイプを有し、前記伝熱体及び熱伝導材を介して伝導される前記ICの発する熱を当該冷却パイプを流れる冷媒を外部に排出させることにより、前記ICを冷却する冷却体、を備えることを特徴とするIC冷却装置。
【請求項2】前記伝熱体は、前記冷却体に設けられた挿入穴に挿入され、前記熱伝導材を介して前記ICと接触するように設けられ、当該ICの発熱を当該熱伝導材を介して前記冷却体内部の冷却パイプを流れる冷媒へ伝導させることを特徴とする請求項1記載のIC冷却装置。
【請求項3】前記伝熱体を上方より押さえ付けることにより、当該伝熱体の底面と対向する面を上面として取り付けられた前記ICを接触させる弾性体、を更に備えることを特徴とする請求項1または2記載のIC冷却装置。
【請求項4】前記伝熱体は、円柱形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のIC冷却装置。
【請求項5】前記冷却体及び前記伝熱体と独立して着脱可能に設けられ、前記ICが適所に配設されたプリント基板、を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のIC冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2000−338173(P2000−338173A)
【公開日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−150230
【出願日】平成11年5月28日(1999.5.28)
【出願人】(000117744)安藤電気株式会社 (17)
【Fターム(参考)】