説明

III族窒化物半導体発光素子およびその製造方法

【課題】III 族窒化物半導体発光素子において、静電耐圧特性を向上させつつ、発光効率や信頼性を向上させること。
【解決手段】ESD層102は、n型コンタクト層101側から第1ESD層110、第2ESD層111、第3ESD層112の3層構造である。第1ESD層110は、Si濃度1×1016〜5×1017/cm3 、厚さ200〜1000nmピット密度1×108 /cm2 以下のn−GaNである。第2ESD層111は、厚さ50〜200nm、ピット密度2×108 /cm2 以上のノンドープのGaNである。第3ESD層112は、Si濃度(/cm3 )と膜厚(nm)の積で定義される特性値が0.9×1020〜3.6×1020(nm/cm3 )のn−GaNである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ESD層を備えたIII 族窒化物半導体発光素子およびその製造方法に関するものであり、特に良好な静電耐圧特性を維持しつつ、発光効率や信頼性を向上させたIII 族窒化物半導体発光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、III 族窒化物半導体発光素子において、n型コンタクト層と発光層との間に、n型コンタクト層側からi−GaN層、n−GaN層の順に積層させた構造のESD層を設けることで、静電耐圧特性を向上させる技術が知られている。
【0003】
たとえば特許文献1では、i−GaN層の厚さを150〜400nm、i−GaN層表面の二乗平均粗さ(RMS)を3〜12nmとし、n−GaN層を、Si濃度(/cm3 )と膜厚(nm)の積で定義される特性値が0.9×1020〜3.6×1020(nm/cm3 )であるようにESD層を形成することで、静電耐圧特性を向上できることが示されている。また、i−GaN層表面のRMSを3〜12nmとするには、i−GaN層の成長温度を800〜900℃とすればよいことが示されており、i−GaN層表面の粗さはピットに起因するものであることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−180495
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
静電耐圧特性を向上させるには、ESD層におけるi−GaN層の厚さはなるべく厚いことが望ましい。しかし、i−GaN層を厚く形成するほどピット径が大きくなってしまうため、特許文献1の方法では発光面積が狭くなって発光効率が低下するなどの問題が生じてしまう。
【0006】
また、i−GaN層のピット領域上に形成される層は、i−GaN層の平坦な領域上に形成される層とは厚さや組成が異なってしまうため、ピット領域上には設計とは異なる厚さ、組成の層が形成されてしまい、逆方向電流の増加、電流リーク、素子の信頼性の低下などの不具合を生じさせていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、静電耐圧特性を向上させつつ、発光効率の低下が防止された構造のIII 族窒化物半導体発光素子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、n型コンタクト層と発光層との間にESD層を有したIII 族窒化物半導体発光素子において、ESD層は、n型コンタクト層側から順に、第1ESD層、第2ESD層、第3ESD層が積層された構造であって、第1ESD層は、発光層側の表面に1×108 /cm2 以下のピットが形成され、厚さが200〜1000nm、Si濃度が1×1016〜5×1017/cm3 のGaNからなり、第2ESD層は、発光層側の表面に2×108 /cm2 以上のピットが形成され、厚さが50〜200nm、キャリア濃度が5×1017/cm3 以下のGaNからなり、第3ESD層は、Si濃度(/cm3 )と膜厚(nm)の積で定義される特性値が0.9×1020〜3.6×1020(nm/cm3 )のGaNからなる、ことを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子である。
【0009】
ここでIII 族窒化物半導体とは、一般式Alx Gay Inz N(x+y+z=1、0≦x、y、z≦1)で表される化合物半導体であり、Al、Ga、Inの一部を他の第13族元素であるBやTlで置換したもの、Nの一部を他の第15族元素であるP、As、Sb、Biで置換したものをも含むものとする。通常は、Gaを必須とするGaN、AlGaN、InGaN、AlGaInNを示す。
【0010】
第2ESD層は、キャリア濃度が5×1017/cm3 以下、ピット密度が2×108 /cm2 以上であれば、Siがドープされていてもよいし、ノンドープであってもよい。
【0011】
第1ESD層は複数の層で構成されていてもよい。Si濃度の平均が1×1016〜5×1017/cm3 であれば、厚さ方向に濃度勾配を有していてもよい。
【0012】
第3ESD層の特性値は、1.5×1020〜3.6×1020(nm/cm3 )とするのがより望ましく、さらに望ましいのは1.5×1020〜3.0×1020(nm/cm3 )である。また、第3ESD層の厚さは、25〜50nmであることが望ましい。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、第1ESD層と第2ESD層の厚さの合計は、300nm以上であることを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子である。
【0014】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、第1ESD層と第2ESD層との間に、厚さが50nm以下、Si濃度が1×1018/cm3 以上のGaNからなる第4ESD層を有することを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子である。
【0015】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明において、第1ESD層は、Si濃度が1×1016〜1.5×1017/cm3 の低濃度層と、Si濃度が1×1018/cm3 以上の高濃度層とが交互に複数回繰り返して積層された構造である、ことを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子である。
【0016】
第5の発明は、n型コンタクト層と発光層との間にESD層を有したIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法において、ESD層を形成する工程は、成長温度を900℃以上として、厚さ200〜1000nm、Si濃度1×1017〜1×1018/cm3 のGaNからなる第1ESD層をMOCVD法によって形成する工程と、第1ESD層上に、成長温度を800〜950℃として、厚さ50〜200nm、キャリア濃度5×1017/cm3 以下のGaNからなる第2ESD層をMOCVD法によって形成する工程と、第2ESD層上に、Si濃度(/cm3 )と膜厚(nm)の積で定義される特性値が0.9×1020〜3.6×1020(nm/cm3 )のGaNからなる第3ESD層をMOCVD法によって形成する工程と、を有することを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法である。
【0017】
第6の発明は、第5の発明において、第2ESD層の成長温度は、800〜900℃であることを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法である。
【0018】
第7の発明は、第5の発明または第6の発明において、第1ESD層の成長温度は、1000℃以上であることを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明のようにESD層を構成すると、静電耐圧特性を向上させつつ、発光効率や信頼性を向上させることができ、電流のリークを減少させることができる。
【0020】
また、第2の発明のように、第1ESD層と第2ESD層の厚さの合計を300nm以上とすれば、より静電耐圧特性を向上させることができる。
【0021】
また、第3、4の発明によると、上記効果に加えて順方向電圧を低減することができる。
【0022】
また、第5〜7の発明のIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法によれば、静電耐圧特性が良好で、発光効率や信頼性が高く、電流リークの少ない発光素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の発光素子1の構成を示した図。
【図2】発光素子1の製造工程を示した図。
【図3】逆方向電流を測定したグラフ。
【図4】明るさを比較したグラフ。
【図5】実施例2の発光素子2の構成を示した図。
【図6】実施例3の発光素子3の構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
図1は、実施例1の発光素子1の構成を示した図である。発光素子1は、サファイア基板100上にAlNからなるバッファ層(図示しない)を介して、III 族窒化物半導体からなるn型コンタクト層101、ESD層102、n型クラッド層103、発光層104、p型クラッド層105、p型コンタクト層106、が積層され、p型コンタクト層106上にp電極107が形成され、p型コンタクト層106側から一部領域がエッチングされて露出したn型コンタクト層101上にn型層108が形成された構造である。
【0026】
サファイア基板100の表面には、光取り出し効率を向上させるために凹凸加工が施されている。サファイア以外にも、SiC、ZnO、Si、GaNなどを成長基板として用いてもよい。
【0027】
n型コンタクト層101は、Si濃度が1×1018/cm3 以上のn−GaNである。n電極108とのコンタクトを良好とするために、n型コンタクト層101をキャリア濃度の異なる複数の層で構成してもよい。
【0028】
ESD層102は、n型コンタクト層101側から第1ESD層110、第2ESD層111、第3ESD層112の3層構造である。
【0029】
第1ESD層110は、Si濃度が1×1016〜5×1017/cm3 のn−GaNである。第1ESD層110の厚さは200〜1000nmである。また、第1ESD層110の表面110aには、貫通転位に起因して少数のピットが生じているが、そのピット密度は、1×108 /cm2 以下である。
【0030】
第2ESD層111は、ノンドープのGaNである。第2ESD層111の厚さは50〜200nmである。第2ESD層111の表面111aにもピットが生じており、そのピット密度は2×108 /cm2 以上である。第2ESD層111はノンドープであるが、残留キャリアによりキャリア濃度が1×1016〜1×1017/cm3 となっている。なお、第2ESD層111には、キャリア濃度が5×1017/cm3 以下となる範囲でSiがドープされていてもよい。
【0031】
第3ESD層112は、SiがドープされたGaNであり、Si濃度(/cm3 )と膜厚(nm)の積で定義される特性値が0.9×1020〜3.6×1020(nm/cm3 )である。たとえば、第3ESD層112の厚さを30nmとする場合にはSi濃度は3.0×1018〜1.2×1019/cm3 である。
【0032】
n型クラッド層103は、厚さ4.5nmのInGaN、2.5nmのi−GaNを順に積層させたものを単位として、この単位構造を15回繰り返し積層させた超格子構造である。
【0033】
発光層104は、厚さ2.5nmのAl0.07Ga0.93N、厚さ3.3nmのInGaN、厚さ0.6nmのi−GaN、厚さ0.6nmのAl0.25Ga0.75Nを順に積層させたものを単位として、この単位構造を8回繰り返し積層させたMQW構造である。
【0034】
p型クラッド層105は、厚さ3.5nmのp−AlGaN、厚さ1.7nmのp−InGaNを順に積層させたものを単位として、この単位構造を7回繰り返し積層させた構造である。p型不純物にはMgを用いている。
【0035】
p型コンタクト層106は、Mgをドープしたp−GaNである。p電極とのコンタクトを良好とするために、p型コンタクト層106をキャリア濃度の異なる複数の層で構成してもよい。
【0036】
発光素子1は、ESD層102を上記のような構成としたことで、良好な静電耐圧特性が得られ、かつ、発光効率、信頼性が向上し、電流リークが減少している。以下、ESD層102を上記のように構成した理由について説明する。
【0037】
まず、ESD層102では、第2ESD層111に密度2×108 /cm2 以上のピットを形成し、そのピットが形成された第2ESD層111上に第3ESD層を形成した構成としている。このような構成により良好な静電耐圧特性が得られることは、特許文献1にも示されている通りである。しかし、ピット径は第2ESD層111の厚さに依存していて、第2ESD層111の厚さとピット径とを独立に制御することができないので、第2ESD層111を厚くしてより良好な静電耐圧特性を得ようとすると、ピット径が拡大してしまい、発光面積が狭くなって発光効率が低下してしまい、また電流リークの増大や信頼性が低下してしまう。すなわち、特許文献1のESD層の構成では、静電耐圧特性と電流リーク、信頼性、および発光効率がトレードオフの関係にあった。
【0038】
そこで、ピット密度が1×108 /cm2 以下の良質な結晶の第1ESD層110を導入し、第1ESD層110上に第2ESD層111を形成する構成とし、第1ESD層110の厚さと第2ESD層111の厚さを制御することで、第1ESD層110と第2ESD層111の合計の厚さとピット径とを独立に制御することができるようにした。そして、第2ESD層111の厚さを50〜200nmとして、静電耐圧特性、発光効率が低下せず、電流リークが増大しないピット径となるようにし、第2ESD層111を薄くした分の厚さを補うために、第1ESD層110の厚さを200〜1000nmとすることで、良好な静電耐圧特性が得られるようにした。また、第1ESD層110にはSiをドープしてSi濃度1×1016〜5×1017/cm3 とし、第1ESD層110の導電性を第2ESD層111の導電性に合わせ、順方向電圧の上昇を防止した。
【0039】
なお、さらに静電耐圧特性、発光効率、および信頼性を向上させ、電流リークを減少させるためには、ESD層102の構成を以下のようにすることが望ましい。第1ESD層110の厚さは300〜700nm、Si濃度は5×1016〜5×1017/cm3 、ピット密度は1×107 /cm2 以下とすることが望ましい。また、第2ESD層111の厚さは50〜200nm、ピット密度は2×108 〜1×1010/cm2 とすることが望ましい。また、第3ESD層112の特性値は、1.5×1020〜3.6×1020nm/cm3 、厚さは25〜50nmであることが望ましい。
【0040】
次に、発光素子1の製造方法について図2を参照に説明する。
【0041】
まず、サファイア基板100を水素雰囲気中で加熱してクリーニングを行い、サファイア基板10表面の付着物を除去した。その後、MOCVD法によって、サファイア基板100上にAlNからなるバッファ層(図示しない)を介してGaNからなるn型コンタクト層101を形成した(図2(a))。キャリアガスには水素と窒素、窒素源にはアンモニア、Ga源にはTMG(トリメチルガリウム)、n型ドーパントガスにはSiH4 (シラン)を用いた。
【0042】
次に、以下のようにしてESD層102を形成した。まず、n型コンタクト層101上に、MOCVD法によって厚さ200〜1000nm、Si濃度1×1016〜5×1017/cm3 のn−GaNである第1ESD層110を形成した。成長温度は900℃以上とし、ピット密度が1×108 /cm2 以下の良質な結晶が得られるようにした。成長温度は1000℃以上とすると、さらに良質な結晶となり望ましい。
【0043】
次に、第1ESD層110上に、MOCVD法によって厚さ50〜200nmのノンドープGaNである第2ESD層111を形成した。成長温度は800〜950℃とし、キャリア濃度5×1017/cm3 以下、ピット密度2×108 /cm2 以上の結晶が得られるようにした。成長温度は800〜900℃とするとよりピット密度が増加し好ましい。
【0044】
次に、第2ESD層111上に、MOCVD法によってSi濃度(/cm3 )と膜厚(nm)の積で定義される特性値が0.9×1020〜3.6×1020(nm/cm3 )のn−GaNである第3ESD層112を形成した。成長温度は800〜950℃とした。以上の工程により、n型コンタクト層101上にESD層102を形成した(図2(b))。
【0045】
次に、ESD層102上に、MOCVD法によってn型クラッド層103、発光層104、p型クラッド層105、p型コンタクト層106を順次積層させた(図2(c))。Al源としてTMA(トリメチルアルミニウム)、In源としてTMI(トリメチルインジウム)、p型ドーパントガスとしてCp2 Mg(ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)を用いた。
【0046】
次に、熱処理によってMgを活性化した後、p型コンタクト層106表面側からドライエッチングを行ってn型コンタクト層101に達する溝を形成した。そして、p型コンタクト層106表面にRh/Ti/Au(p型コンタクト層106側からこの順に積層した構造)からなるp電極107、ドライエッチングによって溝底面に露出したn型コンタクト層101上にV/Al/Ti/Ni/Ti/Au(n型コンタクト層101側からこの順に積層させた構造)からなるn電極108を形成した。以上によって図1に示す発光素子1が製造される。
【0047】
図3は、発光素子1の逆方向電流を測定した結果を示すグラフである。また、比較のため、ESD層102の第1ESD層110と第2ESD層111に替えて、厚さが第1ESD層110と第2ESD層111の厚さの合計と等しいノンドープのGaN層とした比較例の発光素子についても逆方向電流を測定した。図3のように、発光素子1は比較例の発光素子に比べて逆方向電流が少なく、電流リークが防止されていることがわかる。
【0048】
図4は、発光素子1と比較例の発光素子について、駆動電流を350mAとした時の明るさを比較した結果である。発光素子1は、比較例の発光素子に比べて約2%明るく、発光効率が向上していることがわかった。
【実施例2】
【0049】
図5は、実施例2の発光素子2の構成を示した図である。実施例2の発光素子2は、発光素子1のESD層102に替えてESD層202を設けたものであり、このESD層202は、発光素子1のESD層102の第1ESD層110と第2ESD層111との間に、厚さが50nm以下、Si濃度が1×1018/cm3 以上のGaNからなる第4ESD層200を設けたものである。他の構成については発光素子1と同様である。第4ESD層200形成時の成長温度は、第1ESD層110の形成時と同様の950℃以上としてもよいし、第2ESD層111形成時と同様の800〜900℃としてもよい。
【0050】
このように、第1ESD層110と第2ESD層11との間に第4ESD層200を挿入した構造とすると、実施例1の発光素子1と同様に静電耐圧特性、発光効率、および信頼性を向上させることができ、さらに発光素子1に比べて順方向電圧を低減することができる。特に、大電流駆動時の順方向電圧を大きく低減することができる。
【0051】
なお、第4ESD層200は、厚さを25〜40nm、Si濃度を3×1017〜3×1018/cm3 とすればより望ましい。
【実施例3】
【0052】
図6は、実施例3の発光素子3の構成を示した図である。実施例3の発光素子3は、発光素子2のESD層202に替えてESD層302を設けたものであり、ESD層202における第1ESD層110を、以下に示す第1ESD層310に替えたものである。他の構成については発光素子2と同様である。
【0053】
第1ESD層310は、Si濃度が1×1016〜1.5×1017/cm3 の低濃度のn−GaN層と、Si濃度が3×1017/cm3 以上の高濃度のn−GaN層とが、交互に複数回繰り返して積層された構造である。低濃度のn−GaN層は、厚さ100〜200nm、Si濃度1×1016〜1.5×1017/cm3 であればより望ましく、高濃度のn−GaN層は、厚さ100〜200nm、Si濃度3×1017〜3×1018/cm3 であればより望ましい。
【0054】
第1ESD層110に替えて上記構造の第1ESD層310を設けると、実施例1の発光素子1と同様に静電耐圧特性、発光効率、および信頼性を向上させることができ、さらに発光素子1に比べて順方向電圧を低減することができる。特に、大電流駆動時の順方向電圧を大きく低減することができる。
【0055】
なお、ESD層302において、第4ESD層200を設けずに第1ESD層310上に直接第2ESD層111を設けた構成としてもよく、同様に発光素子1に比べて順方向電圧を低減することができる。
【0056】
なお、本発明はn型コンタクト層と発光層との間に設けたESD層に特徴を有するものであり、それ以外の構造については従来より知られている種々の構造を採用可能である。たとえば、基板として導電性の材料を用い、もしくはレーザーリフトオフなどによって基板を除去し、上下に電極を設けて縦方向に導通をとる構造の発光素子にも本発明は適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のIII 族窒化物半導体発光素子は、表示装置や照明装置などに利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
100:サファイア基板
101:n型コンタクト層
102、202、302:ESD層
103:n型クラッド層
104:発光層
105:p型クラッド層
106:p型コンタクト層
107:p電極
108:n電極
110:第1ESD層
111:第2ESD層
112:第3ESD層
200:第4ESD層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型コンタクト層と発光層との間にESD層を有したIII 族窒化物半導体発光素子において、
前記ESD層は、n型コンタクト層側から順に、第1ESD層、第2ESD層、第3ESD層が積層された構造であって、
前記第1ESD層は、前記発光層側の表面に1×108 /cm2 以下のピットが形成され、厚さが200〜1000nm、Si濃度が1×1016〜5×1017/cm3 のGaNからなり、
前記第2ESD層は、前記発光層側の表面に2×108 /cm2 以上のピットが形成され、厚さが50〜200nm、キャリア濃度が5×1017/cm3 以下のGaNからなり、
前記第3ESD層は、Si濃度(/cm3 )と膜厚(nm)の積で定義される特性値が0.9×1020〜3.6×1020(nm/cm3 )のGaNからなる、
ことを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1ESD層と前記第2ESD層の厚さの合計は、300nm以上であることを特徴とする請求項1に記載のIII 族窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1ESD層と前記第2ESD層との間に、厚さが50nm以下、Si濃度が1×1018/cm3 以上のGaNからなる第4ESD層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のIII 族窒化物半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1ESD層は、Si濃度が1×1016〜1.5×1017/cm3 の低濃度層と、Si濃度が1×1018/cm3 以上の高濃度層とが交互に複数回繰り返して積層された構造である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のIII 族窒化物半導体発光素子。
【請求項5】
n型コンタクト層と発光層との間にESD層を有したIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法において、
前記ESD層を形成する工程は、
成長温度を900℃以上として、厚さ200〜1000nm、Si濃度1×1016〜5×1017/cm3 のGaNからなる第1ESD層をMOCVD法によって形成する工程と、
前記第1ESD層上に、成長温度を800〜950℃として、厚さ50〜200nm、キャリア濃度5×1017/cm3 以下のGaNからなる第2ESD層をMOCVD法によって形成する工程と、
前記第2ESD層上に、Si濃度(/cm3 )と膜厚(nm)の積で定義される特性値が0.9×1020〜3.6×1020(nm/cm3 )のGaNからなる第3ESD層をMOCVD法によって形成する工程と、
を有することを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2ESD層の成長温度は、800〜900℃であることを特徴とする請求項に記載のIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1ESD層の成長温度は、1000℃以上であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−232485(P2010−232485A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79387(P2009−79387)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】