IL−21/IL−21Rアンタゴニストによって線維症を治療および予防する方法
本発明は、IL−21および/またはIL−21レセプター(IL−21R)のレベル(例えば、IL−21および/またはIL−21Rタンパク質および/またはmRNAの発現レベル、IL−21および/またはIL−21Rの活性レベル、IL−21とIL−21Rの相互作用のレベルなど)における変化を測定することによって、線維症および/または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するのに有用な組成物をスクリーニングする方法を提供する。本発明は更に、線維症および/または線維症に関連した状態を治療するためのIL−21またはIL−21Rのアンタゴニストを提供する。本明細書においては更に、IL−21および/またはIL−21Rのレベル(すなわち、IL−21および/またはIL−21Rの活性レベル、IL−21および/またはIL−21Rの発現レベル(例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物のレベル)、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベル)を測定することによって、線維症および/または線維症に関連した状態の経過(例えば治療過程)を診断、予知およびモニタリングする方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願においては、2005年4月14日に出願された米国仮出願第60/671,374号に対して優先権を主張し、その全体を引用することによって、本明細書の一部となす。
(発明の技術分野)
本発明は、線維症および線維症に関連した状態を治療および予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連する背景技術)
任意の器官の傷害は、一般的に、血小板に誘導された止血を伴う生理学的反応を引き起こし、続いて、炎症細胞および活性化された線維芽細胞の流入が起こる。これらの細胞型によって生成されたサイトカインは、新しい細胞外マトリックスおよび血管の形成を促進し、これらが集まって肉芽組織を形成する。線維組織の形成は、傷害の後の通常の有益な治癒の過程の一部である。しかし、線維症は、多様な組織の構造および機能を変えてしまう、傷害または炎症の後のコラーゲンマトリックスの異常な蓄積によって特徴づけられる状態である。腎臓、肝臓、肺、心臓、硬骨、骨髄および皮膚における進行性の線維症は、死亡の主な原因、または誘因となっている。
線維組織の増殖に関連した多くの病気が慢性的でしばしば衰弱させるものであり、例えば、強皮症などの皮膚疾患が含まれる。肺線維症を含めたいくつかは命にかかわるものであり得る。これは、現在の治療が重大な副作用を有し、一般的に線維症の進行を遅らせる、または食い止めるのに効果的ではないということも一因となっている。従って、新しい抗線維化薬剤への絶え間ないニーズがある。
【0003】
IL−21レセプター(IL−21R)は、クラスIサイトカインレセプターファミリーの中の新たに発見されたメンバーである(Parrish-Novakら、(2000) Nature 408:57-63;およびOzakiら、(2000) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97:11439-44参照)。IL−21レセプターは、IL−4レセプターα鎖(IL−4Rα)との配列および構造における有意な相同性を示し、ヒトおよびマウスのゲノムにおいてIL−4Rαに隣接する。一方、そのリガンドであるIL−21は、サイトカインIL−2、IL−4およびIL−15と有意な相同性を示す(Sivakumarら、(2004) Immunology 112:177-82;およびHabibら、(2003) J. Allergy Clin. Immunol. 112:1033-45参照)。このように、IL−21およびIL−21Rは、ガンマ鎖(γc)の機能的シグナル伝達を必要とするサイトカインおよびレセプターとの相同性により、γcに依存するサイトカインネットワークのメンバーとして新たに述べられているものである(VosshenrichおよびDi Santo (2001) Curr. Biol. 11:R175-77参照)。γcネットワークのメンバー全てが、宿主免疫において重要で独特な役割を示していることから、インビボでの抗原に誘発された免疫反応中におけるIL−21Rの新しい機能を詳しく調べることへの関心が高まってきている。
【0004】
IL−21の機能を調べた初期研究は、IL−21によって、NK細胞の膨張が中和される一方で、抗腫瘍免疫を含む抗原特異的なT細胞免疫が促進されることを示した(Maら、(2003) J. Immunol. 171:608-15;Kishidaら、(2003) Mol. Ther. 8:552-58;およびDi Carloら、(2004) J. Immunol. 172:1540-47参照)。研究の成果は、IL−21が、先天性免疫反応と適応的免疫反応との間の橋渡し的な役割を果たすことを示唆するものである(Collinsら、(2003) Immunol. Res. 28:131-40参照)。IL−21はまた、インビボでB細胞およびCD8+T細胞の機能を調節する(Ozakiら、(2002) Science 298:1630-34;Sutoら、(2002) Blood 100:4565-73;Mehtaら、(2003) J. Immunol. 170:4111-18;Peneら、(2004) J. Immunol. 172:5154-57;Jinら、(2004) J. Immunol. 173:657-65;およびZengら、(2005) J. Exp. Med. 201:139-48参照)。更なる研究は、IL−21が、ナイーブTH細胞がIFN−γ−分泌TH1細胞に分化するのを阻害し得るTH2サイトカインであることを示唆している(Wursterら、(2002) J. Exp. Med. 196:969-77参照)。実際に、IL−21による外部処理は、他のTH1/TH2に関連したサイトカインに影響を及ぼすことなくIFN−γの生成を強く阻害し、IL−21によるIFN−γの抑制が非常に特異的であることを示唆した。このように、そのTH1細胞の発達を抑制する能力により、IL−21はTH2反応を促進し得ると仮定された(Wursterら、既出)。にもかかわらず、TH2に依存するいかなる障害においても、TH2反応の発達へのIL−21Rシグナル伝達経路の関与についてはこれまで調査されなかった。
【0005】
住血吸虫症において、TH2サイトカインは、病気の発症において不可欠の役割を果たす(Wynn (2004) Nat. Rev. Immunol. 4:583-594;PearceおよびMacDonald (2002) Nat. Rev. Immunol. 2:499-511参照)。実際、IL−4/IL−13、IL−4RαおよびStat6が欠損したマウスすべてが、マンソン住血吸虫による感染後に、著しく障害のある肉芽腫の形成および肝線維症を示す(Chiaramonteら、(1999) J. Clin. Invest. 104:777-85;Kaplanら、(1998) J. Immunol. 160:1850-56;Jankovicら、(1999) J. Immunol. 163:337-42;およびFallonら、(2000) J. Immunol. 164:2585-91参照)。IL−21をTH2サイトカインとする最近の分類(Wursterら、(2002)、既出;およびMehtaら、(2005) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102:2016-21)、IL−4レセプターとIL−21レセプターの間の著しい類似性(Sivakumarら、既出;およびHabibら、既出)、そして、他のTH2サイトカイン主導の炎症性疾患の場合と同様、この疾患においても関連するIL−4Rα/Stat6シグナル伝達経路が重大な役割を果たすこと(Wynn (2003) Annu. Rev. Immunol. 21:425-56)を考えると、これらの研究から出てきた重要な疑問点は、IL−21Rのシグナル伝達が、TH2免疫の開始および/または維持において有意な役割を果たすかどうかということであった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防する方法、およびそれらの方法において有用な化合物および組成物をスクリーニングする方法を提供する。本発明はまた、線維症および/または線維症に関連した状態の経過(例えば治療過程)を診断、予知およびモニタリングする方法を提供する。これらの方法は、IL−21および/またはIL−21Rのレベル(すなわち、IL−21および/またはIL−21Rの活性レベル、IL−21および/またはIL−21Rの発現レベル(例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物のレベル)、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベル)を測定および/または調節することに関連付けられる。本発明は更に、線維症および/または線維症に関連した状態を治療するためのIL−21またはIL−21Rのアンタゴニストを提供する。
【0007】
一つの実施形態において、本発明は、被検体(例えばヒト)におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルを減少させる治療上有効量の薬剤を該被検体に投与する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防する方法を提供する。更なる実施形態において、該薬剤は、抗IL−21R抗体、抗IL−21抗体、抗IL−21R抗体の抗原結合性フラグメント、抗IL−21抗体の抗原結合性フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメントからなる群より選択されるIL−21/IL−21Rアンタゴニストである。別の更なる実施形態において、該薬剤は、IL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントは、配列番号2の第1番目〜第538番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第538番目のアミノ酸、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第1番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第529番目のアミノ酸、配列番号5の第20番目〜第529番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第236番目のアミノ酸および配列番号5の第20番目〜第236番目のアミノ酸からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、該IL−21Rの可溶性フラグメントは、IL−21ポリペプチドに結合する。
【0008】
別の実施形態において、該薬剤は、IL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントは、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25または配列番号27に示されるアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、該IL−21Rの可溶性フラグメントのアミノ酸配列は、配列番号11または配列番号13に示されるアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、該薬剤は、IL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントは、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24または配列番号26に示される核酸配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列によってコードされる。別の実施形態において、該IL−21Rの可溶性フラグメントは、配列番号12または配列番号16に示される核酸配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0009】
別の実施形態において、該薬剤は、IL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントは、IL−21Rの細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFcフラグメントを含む。更なる実施形態において、該IL−21Rの細胞外ドメインのアミノ酸配列は、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸または配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、該免疫グロブリンFcフラグメントは、機能変化(an altered function)を有する。別の更なる実施形態において、該免疫グロブリンFcフラグメントは、配列番号17の第244番目〜第467番目のアミノ酸のアミノ酸配列を有する。
別の実施形態において、該線維症または線維症に関連した障害は、肝臓、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、小腸、胆管または胃に影響を与える。更なる実施形態において、該線維症または線維症に関連した障害は、間質性肺線維症である。別の実施形態において、該線維症または線維症に関連した障害は、住血吸虫による感染の結果である。別の実施形態において、該線維症または線維症に関連した障害は、創傷治癒の結果である。更なる実施形態において、該創傷治癒は、外科的切開に起因する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも1つの追加の治療剤を被検体に投与する工程を更に含む。別の実施形態において、該少なくとも1つの追加の治療剤は、サイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性薬剤および細胞増殖抑制剤からなる群より選択される。更なる実施形態において、該少なくとも1つの追加の治療剤は、TNFアンタゴニスト、抗TNF剤、IL−12アンタゴニスト、IL−15アンタゴニスト、IL−17アンタゴニスト、IL−18アンタゴニスト、IL−22アンタゴニスト、T細胞除去剤、B細胞除去剤、シクロスポリン、FK506、CCI−779、エタネルセプト、インフリキシマブ、リツキシマブ、アダリムマブ、プレドニゾロン、アザチオプリン、金、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、ミノサイクリン、アナキンラ、アバタセプト、メトトレキサート、レフルノミド、ラパマイシン、ラパマイシンの類似体、Cox−2阻害剤、cPLA2阻害剤、NSAID、p38阻害剤、およびB7.1、B7.2、ICOSL、ICOSおよび/またはCD28のアンタゴニスト、ならびにCTLA4のアゴニストからなる群より選択される。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、(a)目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;(b)該目的の細胞または試料を化合物と接触させる工程;および(c)該化合物との接触の後に、該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程を含む、被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防するための化合物を同定する方法であって、接触させなかった目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルと比較して、接触させた該目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、被検体における線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するのに有用な化合物として該化合物を同定するものである、前記方法、を提供する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、(a)目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;(b)該目的の細胞または試料を化合物と接触させる工程;(c)該化合物との接触の後に、該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(d)該接触させた目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを、IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルと比較する工程を含む、被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防するための化合物を同定する方法であって、IL−21および/またはIL−21Rの該基準レベルと比較して、該接触させた目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、被検体における線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するのに有用な化合物として該化合物を同定するものである、前記方法、を提供する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、(a)第1時点において、被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)第2時点において、該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態の経過をモニタリングする方法であって、該第1時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルと比較して、該第2時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、該線維症または線維症に関連した状態の重症度が減少したことを示すものである、前記方法、を提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、(a)第1時点において、被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)第2時点において、該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態を予知する方法であって、該第1時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルと比較して、該第2時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、該被検体が該線維症または線維症に関連した状態になり得る可能性が減少したこと、または、該被検体において該線維症または線維症に関連した状態が悪化し得る可能性が減少したことを示すものである、前記方法、を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、(a)被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)該被検体由来の該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを、IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルと比較する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態を予知する方法であって、IL−21および/またはIL−21Rの該基準レベルと比較して、該被検体由来の該目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、該被検体が該線維症または線維症に関連した状態になり得る可能性が減少したこと、または、該被検体において該線維症または線維症に関連した状態が悪化し得る可能性が減少したことを示すものである、前記方法、を提供する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、(a)被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)該被検体由来の該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを、IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルと比較する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態を診断する方法であって、IL−21および/またはIL−21Rの該基準レベルと比較して、該被検体由来の該目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が高いことが、該被検体において線維症または線維症に関連した状態が存在することを示すものである、前記方法、を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
線維症の発症におけるIL−21/IL−21Rシグナル伝達経路の役割を調べるために、肺および肝臓の炎症の多様なモデルを使用して、機能的IL−21R(IL−21R-/-)が欠損したマウスおよび野生型マウスにおいて、免疫反応を比較した。一つのモデルにおいて、肺における一次性および二次性肉芽腫性炎症を調べるために、未処理の動物または抗原感作した動物に、生きている住血吸虫卵を静脈注射で投与した。別のモデルにおいて、マンソン住血吸虫セルカリアを用いてマウスを経皮的に感染させ、卵に誘導された炎症および線維症の進行を肝臓において観察した。別のモデルにおいて、マウスをN・ブラシリエンシス(N. brasILiensis)に感染させた。これらのモデルを使用して、急性および慢性の病気状態におけるタイプ2サイトカイン主導の病変に対するIL−21Rの影響を調べた。結果は、インビボでの極性化されたタイプ2反応の産生、特にタイプ2サイトカインに媒介される炎症および線維症におけるIL−21Rの重要な役割を示している。
【0018】
従って、本発明は、未処理のコントロール(例えば、線維症または線維症に関連した状態になっているコントロール被検体、線維症または線維症に関連した状態になっていないコントロール被検体)と比較して、または適切な基準レベルと比較して、IL−21および/またはIL−21Rのレベル(例えば、IL−21および/またはIL−21Rの発現レベル(例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物(すなわち、タンパク質および/またはmRNA)のレベル)、IL−21および/またはIL−21Rの活性レベル、IL−21とIL−21Rの相互作用のレベル等)を減少させる薬剤を使用して、被検体(例えばヒト、例えばヒトの患者)における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防する方法を提供する。IL−21および/またはIL−21Rのレベルを減少させる薬剤を同定することに関連して、「IL−21および/またはIL−21Rのレベル」を測定することには、(1)IL−21および/またはIL−21Rの発現レベルを測定すること(例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物(例えばタンパク質および/またはそれに対応するmRNA)のレベルを測定すること);(2)IL−21および/またはIL−21Rの活性レベルを測定すること;および(3)IL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを測定すること(例えば被検体(例えばヒトの患者、コントロール被検体等)由来の、例えば目的の細胞または試料において)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において更に詳しく述べられるように、線維症または線維症に関連した状態または障害を治療、改善および/または予防するのに有用な薬剤の例には、抗IL−21R抗体、抗IL−21R抗体の抗原結合性フラグメント、抗IL−21抗体、抗IL−21抗体の抗原結合性フラグメント、およびIL−21Rポリペプチドの可溶性フラグメントが含まれる。本発明は更に、線維症または線維症に関連した障害の治療過程をモニタリングし、それを診断および予知し、および線維症または線維症に関連した障害を治療するのに有用な化合物をスクリーニングする方法を提供する。
【0019】
本明細書において使用される「IL−21」または「IL−21R」とは、それぞれ、天然のIL−21またはIL−21Rレセプタータンパク質と実質的に同一である任意のポリペプチドを意味する。ヒトインターロイキン−21(IL−21)およびそのレセプター(IL−21R)をコードするヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、例えば、国際公開第WO00/53761号;国際公開第WO01/85792号;Parrish-Novakら、(2000) Nature 408:57-63;およびOzakiら、(2000) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97:11439-44に記載されている。望ましくは、IL−21ポリペプチドがIL−21Rを結合するか、またはIL−21RポリペプチドがIL−21を結合し、相互作用の際に、IL−21/IL−21R経路のシグナル伝達活性が、任意の標準方法による測定において、コントロールレベルよりも少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%よりも高い比率で増加する。IL−21Rは、「MU−1」、「NILR」および「zalphal1」としても知られている。
【0020】
IL−21および/またはIL−21Rのレベルを減少させる薬剤には、IL−21/IL−21R経路のシグナル伝達活性、IL−21および/またはIL−21Rの活性レベル、IL−21および/またはIL−21Rの発現レベル、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%減少させる任意の薬剤が包含される。必要に応じて、IL−21および/またはIL−21Rのレベルの減少は、線維症の減少のレベルを測定することによって評価される。IL−21とIL−21Rとの相互作用のレベルを減少させる薬剤には、IL−21とIL−21Rの相互作用を少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%減少させる任意の薬剤が包含される。IL−21および/またはIL−21Rの活性または発現のレベルを減少させる、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを減少させるこれら前述の薬剤(すなわち、IL−21および/またはIL−21Rのレベルを減少させる薬剤)は、本明細書において、IL−21および/またはIL−21Rの「アンタゴニスト」と言われることがある。
「IL−21遺伝子」または「IL−21R遺伝子」は、それぞれ、IL−21ポリペプチドまたはIL−21Rポリペプチドをコードする核酸として定義される。
【0021】
「線維症」は、線維組織の過剰産生または異常産生の結果として生じる任意の病的状態として定義される。線維症は、例えば腎臓、肺、肝臓、皮膚、中枢神経系、硬骨、骨髄、心臓血管系、内分泌器官または胃腸系を含む任意の器官においておこり得る。「線維症に関連した状態」とは、線維症に関連している任意の状態を意味する。このように、線維症に関連した状態は、線維症によって引き起こされたり、線維症を伴ったり、または線維症を引き起こし得る。
IL−21および/またはIL−21Rの活性のレベルの減少とは、未処置のコントロールまたは基準の試料(例えば基準レベル)におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルまたは生物活性と比較して、IL−21のレベルまたは生物活性が減少することを指し得る。このようなレベルまたは活性は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%減少され得る。IL−21および/またはIL−21Rの活性の減少はまた、タイプ2(「Th2」)サイトカインの発現および/または機能の減少と関連し得、これには、例えばIL−4、IL−13、AMCase、Ym1、およびFizz1/RELMαのレベルおよび活性における調節が含まれ得る。
【0022】
IL−21とIL−21Rとの相互作用のレベルの減少とは、未処理のコントロールまたは基準の試料におけるIL−21とIL−21Rとの相互作用のレベルと比較して、処理された細胞または試料における相互作用が減少することを指し得る。このような相互作用のレベルは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%減少され得る。相互作用のレベルは、例えばELIZAおよびウエスタンブロットなどのいくつかの周知の分子生物学の技術によって評価することができる。
IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物のレベルの減少とは、未処理のコントロールまたは基準の試料におけるIL−21および/またはIL−21Rの遺伝子またはタンパク質発現レベルと比較して、処理された細胞または試料におけるmRNAおよび/またはタンパク質発現レベルが減少することを指す。このような発現は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%減少され得る。発現のレベルは、例えばノーザンブロットまたはウエスタンブロットなどの多数の周知の分子生物学の技術によって評価することができる。
【0023】
「線維症を治療または改善する」とは、任意の標準方法による測定において、未処理のコントロールと比較して線維症のレベルが減少することを意味する。線維症の減少はまた、線維症または線維症に関連した状態に関連した任意の症状の減少によって測定され得る。本明細書に開示される実施例は、コントロールと比較して線維症のレベルが減少されたか否かを測定する方法の例を提供する。
「線維症に関連した状態(または障害)を治療または改善する」とは、このような状態がおこる前またはおこった後にそれを減少させることを意味する。相当する未処理のコントロールと比較して、任意の標準技術による測定において、このような減少または予防の程度は、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%または100%である。線維症に関連した状態の治療を受けている被検体とは、開業医が、そのような状態を有すると診断した者を言う。診断は、任意の適切な手段によって行うことができる。線維症に関連した状態の進行が予防されている被検体は、このような診断を受けていてもいなくとも良い。これらの被検体(例えば患者)は、線維症に関連した状態を診断するために標準試験にかけられていてもよく、または、試験をすることなく、1つ以上の危険因子の存在により高い危険にさらされているとして確認されていてもよいことを、当業者は理解するであろう。本明細書に開示された実施例は、コントロールと比較して線維症に関連した障害のレベルが減少されたか否かを測定する方法の例を提供する。
【0024】
「予防する」とは、そのような状態が進行しそうな被検体において、線維症または線維症に関連した状態の発症を遅らせること、あるいは、線維症または線維症に関連した状態の発症を妨げることを言う。
「有効量」とは、哺乳動物において線維症または線維症に関連した状態を治療、改善、減少、または予防するのに必要な化合物(単独または組合せ)の量を意味する。活性化合物の有効量は、被検体における投与経路、年齢、体重、および総体的な健康によって異なる。最終的には、担当医または獣医が、適切な量および用法・用量を決定することになる。
タンパク質またはポリペプチドに関連して「実質的に同一の」とは、例えば配列番号2、配列番号5、および配列番号11、13、15、17、19、21、23、25および27に示されるものなどの融合タンパク質などの基準のアミノ酸配列に対して、少なくとも75%、好ましくは85%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%、または99%までの同一性を有するタンパク質またはポリペプチドを意味する。タンパク質またはポリペプチドについて、比較配列の長さは、一般的に、少なくとも20個のアミノ酸、好ましくは少なくとも30個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも40個のアミノ酸、最も好ましくは50個のアミノ酸、あるいは、タンパク質またはポリペプチドの全長になるであろう。このような「実質的に同一の」タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸は、「実質的に同一の」核酸の例を構成する。遺伝子コードの冗長性のせいで、いくつかの核酸が所定のタンパク質またはポリペプチドをコードし得、このような核酸が、基準ポリペプチドに「実質的に同一の」ポリペプチドをコードするのであれば、本発明の範囲内にある、と認識される。
【0025】
本発明に関連する核酸は、DNAまたはRNAを含み得、全体または一部が合成であり得る。本明細書に示されるヌクレオチド配列への言及には、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、特定の配列(またはその相補体)を有するDNA分子が包含され、また、TがUで置換された特定の配列を有するRNA分子が包含される。
本発明に関連する単離されたポリヌクレオチドは、開示されたポリヌクレオチドをコードする配列に同一の、または類似する配列を有する核酸を同定および単離するために、ハイブリダイゼーションのプローブおよびプライマーとして使用することができる。核酸を同定および単離するためのハイブリダイゼーションの方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、サザンハイブリダイゼーション、原位置ハイブリッド形成、およびノーザンハイブリダイゼーションが含まれ、これらは当業者にとって周知である。
【0026】
ハイブリダイゼーション反応は、異なるストリンジェンシー条件下において実施され得る。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーには、任意の2つの核酸分子が互いにハイブリダイズする際の困難性が含まれる。好ましくは、ハイブリダイズする各ポリヌクレオチドは、その対応するポリヌクレオチドに、減少されたストリンジェントな条件下で、より好ましくはストリンジェントな条件下で、および最も好ましくは高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。ストリンジェンシー条件の例を、以下の表1に示す。高度にストリンジェントな条件とは、少なくとも、例えば条件A−Fと同等にストリンジェントであるものである。ストリンジェントな条件とは、少なくとも、例えば条件G−Lと同等にストリンジェントであるものである。そして、減少されたストリンジェントな条件とは、少なくとも、例えば条件M−Rと同等にストリンジェントであるものである。
【0027】
【表1】
1:ハイブリッドの長さは、ハイブリダイズするポリヌクレオチドのハイブリダイズされた領域について予測されるものである。ポリヌクレオチドを、未知の配列の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする場合、ハイブリッドの長さは、ハイブリダイズするポリヌクレオチドの長さであると推測される。知られている配列のポリヌクレオチドがハイブリダイズされる場合、ハイブリッドの長さは、ポリヌクレオチドの配列を並べ、その領域または最適な配列相補性の領域を特定することによって決定することができる。
2:ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液として、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)の代わりに、SSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaH2PO4および1.25mM EDTAであり、pH7.4である)を使用し得る。洗浄は、ハイブリダイゼーション完了後に15分間行われる。
TB*〜TR*:長さが50塩基対よりも少ないと予測されるハイブリッドについてのハイブリダイゼーション温度は、該ハイブリッドの融解温度(Tm)よりも5〜10℃低くするべきであって、ここで、Tmは、以下の方程式に従って決定される。長さが18塩基対よりも少ないハイブリッド:Tm(℃)=2(A塩基+T塩基の数)+4(G塩基+C塩基の数)。長さが18〜49塩基対のハイブリッド:Tm(℃)=81.5+16.6(log10Na+)+0.41(%G+C)−(600/N)、ここで、Nはハイブリッド中の塩基の数であり、Na+は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である(1×SSCのNa+=0.165M)。
ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションにおけるストリンジェンシー条件の更なる例は、Sambrook、J., E. F. FritschおよびT. Maniatis、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、第9および11章;およびCurrent Protocols in Molecular Biology、1995、F. M. Ausubelら編、John WILey & Sons, Inc.、第2.10節および第6.3-6.4節に記載されており、引用することによって、本明細書の一部となす。
【0028】
本発明に関連する単離されたポリヌクレオチドは、開示されたポリヌクレオチドの対立遺伝子多型をコードする配列を有するDNAを同定および単離するために、ハイブリダイゼーションのプローブおよびプライマーとして使用することができる。対立遺伝子多型は、開示されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと同一の、または有意に類似性を有するポリペプチドをコードする、開示されたポリヌクレオチドの天然の代替形態である。好ましくは、対立遺伝子多型は、開示されたポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも95%の同一性、最も好ましくは、少なくとも99%の同一性)を有する。あるいは、核酸のセグメントが、選択的なハイブリダイゼーション条件(例えば高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下で開示されたポリヌクレオチドにハイブリダイズする場合に、有意な類似性が存在する。
【0029】
本発明に関連する単離されたポリヌクレオチドはまた、開示されたポリヌクレオチドに相同性を有するポリペプチドをコードする配列を有するDNAを同定および単離するために、ハイブリダイゼーションのプローブおよびプライマーとして使用することができる。これらのホモログは、開示されたポリペプチドおよびポリヌクレオチドとは異なる種から単離されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドであるか、または、同種であるが、開示されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドに対して有意な配列類似性を有するものである。好ましくは、ポリヌクレオチドのホモログは、開示されたポリヌクレオチドに対して少なくとも50%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも75%の同一性、最も好ましくは、少なくとも90%の同一性)を有し、一方でポリペプチドのホモログは、開示されたポリペプチドに対して少なくとも30%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも45%の同一性、最も好ましくは、少なくとも60%の同一性)を有する。好ましくは、開示されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドのホモログは、哺乳類種から単離されたものである。
【0030】
二つの配列間の「相同性」または「配列同一性」の計算は、当業者に周知の手段によって行われる。例えば、配列同一性を計算するための一つの一般的な手段は、以下の通りである。配列は、最適な比較を行うためにアラインメントされる(例えば、最適なアラインメントのために、一番目および二番目のアミノ酸または核酸の配列の一方または両方において、ギャップが導入でき、比較の目的において、非相同の配列は無視することができる。好ましい実施形態において、比較目的でアラインメントされる参照配列の長さは、該参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、更により好ましくは少なくとも60%、そして更により好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第一配列におけるある位置が、第二配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置において同一である。二つの配列間の同一率は、その二つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要のあるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮に入れた、該配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0031】
配列の比較および二つの配列間の配列同一率の決定は、数学アルゴリズムを使用して達成できる。好ましい実施形態において、二つのアミノ酸配列間の同一率は、Needleman-Wunschアルゴリズム((1970) J. Mol. Biol. 48:444-53)を使用して決定され、これはGCGソフトウエアパッケージ(www.gcg.comにて入手可能)中のGAPプログラムに組み込まれており、Blossum 62マトリックスまたはPAM 250マトリックスが使用され、ギャップ重量は16、14、12、10、8、6または4、そして長さ重量は1、2、3、4、5または6が使用される。更に別の好ましい実施形態において、二つのヌクレオチド配列間の同一率は、GCGソフトウエアパッケージ(www.gcg.comにて入手可能)中のGAPプログラムを使用して決定され、NWSgapdna.CMPマトリックス、40、50、60、70、または80のギャップ重量および1、2、3、4、5または6の長さ重量が使用される。一つの好ましいパラメータのセットは、ギャップペナルティが12、ギャップ延長ペナルティが4、そしてフレームシフトギャップペナルティが5のBlossum 62スコアリング・マトリックスである。二つのアミノ酸配列またはヌクレオチド間の同一率はまた、MeyersとMillerのアルゴリズム((1989) CABIOS4:11-17)を使用しても決定され得、これはALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、PAM120荷重残基表を使用し、ギャップ長さペナルティが12、ギャップペナルティが4である。
【0032】
「実質的に純粋」は、例えば遺伝物質、関連タンパク質、膜、および細胞残屑などの天然に付随する成分から分離されている核酸、ポリペプチド、またはその他の分子として定義される。典型的には、天然に関連するタンパク質および天然の有機分子から、少なくとも60wt%、70wt%、80wt%、90wt%、95wt%、または99wt%まで遊離している場合、そのポリペプチドは実質的に純粋である。例えば、実質的に純粋なポリペプチドは、組み替え核酸を、通常はそのタンパク質を発現しない細胞中で発現させることにより、天然源から抽出することによって、または化学合成によって得られ得る。
用語「単離されたDNA」は、所定のDNAが由来する生体の天然ゲノム内のDNAの側方に位置する遺伝子およびその他のDNA配列から比較的、または実質的に遊離しているDNAとして定義される。従って、用語「単離されたDNA」は、例えば、cDNA、クローニングされたゲノムDNA、および合成DNAなどを包含する。
【0033】
「IL−21融合」ポリペプチドまたはタンパク質、または「IL−21R融合」ポリペプチドまたはタンパク質は、第2の相同アミノ酸配列に結合される、例えば配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸由来のIL−21R細胞外フラグメントなどの、IL−21またはIL−21Rアミノ酸配列の全部または一部として定義される。一つの実施形態において、第2の相同アミノ酸配列は、タグ配列である。一般的なタグ配列には、mycタグ、hisタグ、flagタグなどが含まれる。本発明の別の実施形態において、第2の相同アミノ酸配列は、例えばFcフラグメントなどの免疫グロブリン配列である。本明細書において更に詳しく述べられる、このような融合タンパク質および融合ポリペプチドは、「IL−21融合遺伝子」または「IL−21R融合遺伝子」と呼ばれる核酸配列によってコードされる。
スクリーニング方法において、「化合物」とは、天然のもの、または人工的なものにかかわらず、化学物質を指す。このような化合物には、例えば、ペプチド、ポリペプチド、合成有機分子、天然有機分子、核酸分子、ペプチド核酸分子、およびそれらの成分および誘導体が含まれ得る。例えば、本発明による有用な化合物は、IL−21のIL−21Rへの結合を減少させる。
【0034】
線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するのに使用するためのIL−21およびIL−21Rのアンタゴニストはまた、小分子より成り得る。用語「小分子」は、巨大分子ではない化合物を指す(例えば、Karp (2000) Bioinformatics Ontology 16:269-85;およびVerkman (2004) AJP-Cell Physiol. 286:465-74等参照)。このように、小分子はしばしば、例えば1000ダルトンよりも少ない化合物と考えられる(例えば、VoetおよびVoet、Biochemistry、第2版、N. Rose, WILey and Sons編、New York、14(1995)参照)。例えば、Davisら、(2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:5981-86では、葉酸塩、メトトレキサートおよび神経ペプチドを示すために小分子のフレーズを使用している一方、HalpinおよびHarbury (2004) PLos Biology 2:1022-30では、例えばDNA、RNAおよびペプチドなどの小分子の遺伝子産物を示すためにフレーズを用いている。天然および合成の小分子の例には、コレステロール、神経伝達物質、siRNA、および、例えばFCD(Fine Chemicals Database)、SMID(Small Molecule Interaction Database)、ChEBI(Chemical Entities of Biological Interest)およびCSD(Cambridge Structural Database)などの多数の市販されている小分子データベース(例えばAlfaranoら、(2005) Nuc. Acids Res. Database Issue 33:D416-24参照)にリストアップされている多様な化学物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
用語「医薬組成物」は、少なくとも1つの治療上または生物学的に活性の薬剤を含有し、被検体への投与に適切である、任意の組成物を意味する。これらの処方物のいずれもが、当技術分野において周知および受け入れられた方法によって調製され得る。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、(A.R.Gennaro編)、Lippincott WILliams & WILkins、Baltimore、MD(2005)参照。
本発明は、線維症に関連した状態の治療および予防のための標準的な療法に比べて有意な利点を提供する。本明細書に記載されるように、IL−21および/またはIL−21Rの活性または発現のレベルを減少させる、またはIL−21とIL−21Rの相互作用を減少させる(すなわち、IL−21および/またはIL−21Rの活性のレベルを減少させる)治療薬剤の投与の結果、線維症および線維症に関連した状態が改善、減少、または予防される。加えて、本発明が提供する化合物のスクリーニング方法によって、単に症状を和らげるよりもむしろ、損傷過程を変える新規の治療法を同定することが可能となる。
【0036】
(線維性障害)
肉芽組織の産生は、注意深く組織された過程であって、その過程においては、プロテアーゼ阻害剤および細胞外マトリックスタンパク質の発現が調節されず、プロテアーゼの発現が減少し、細胞外マトリックスの蓄積に至る。しかし、繊維性材料の異常な蓄積は、最終的に臓器不全に至る場合がある(例えばBorderら、(1994) New Engl. J. Med. 331:1286-92参照)。誘導されたものか自然発生のものかにかかわらず、線維性の状態の進行は、少なくとも部分的には、線維芽細胞の活性の刺激によって引き起こされる。炎症細胞および活性化された線維芽細胞の損傷を受けた器官への流入は、これらの細胞型の、主としてコラーゲンを含有する間質マトリックスと相互に作用する能力に依存する。線維症に影響され得る組織の例には、腎臓、肺、肝臓、皮膚、中枢神経系、硬骨、骨髄、心臓血管系の組織、内分泌器官、および胃腸系の組織が含まれる。
【0037】
本発明の方法および組成物は、例えば、内臓の線維症、皮膚または真皮の線維性障害、および眼における繊維性の状態などを含む、任意の組織に影響を与える、任意の線維症または線維症に関連した状態に対して有用である。内臓(例えば肝臓、肺、腎臓、心臓血管、胃腸管)の線維症は、肺線維症、特発性肺線維症、自己免疫線維症、骨髄線維症、肝硬変、肝内性肝静脈閉塞症、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性ネフロパシー、腎間質線維症、シクロスポリンを受ける被検体における腎線維症、同種移植の拒絶反応、HIVに関連したネフロパシーなどの障害において起こる。その他の線維症に関連した障害には、全身性硬化症、好酸球増加・筋痛症候群、および眼球内の線維症などの線維症に関連したCNS障害が含まれる。皮膚の線維性障害には、例えば、強皮症、限局性強皮症、ケロイド、肥厚性瘢痕、家族性の皮膚の膠原腫、およびコラーゲンタイプの結合織母斑が含まれる。眼における繊維性の状態には、糖尿病性網膜症、手術後の瘢痕(例えば、緑内障のフィルタリング手術後、および斜視の手術後)、および増殖性硝子体網膜症などの状態が含まれる。本発明の方法によって治療され得る更なる繊維性の状態は、例えば、関節リウマチ、長期の関節痛および悪化した関節に関連した疾患、全身性進行性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、限局性強皮症、レイノー症候群、および鼻茸に起因し得る。本明細書に記載される通り、IL−21/IL−21R経路のアンタゴニストは、線維症および線維症に関連した障害を治療または予防するため、またはこれらの障害に関連した1つ以上の症状を改善するために投与され得る。
【0038】
(IL−21またはIL−21Rのアンタゴニスト(IL−21/IL−21Rアンタゴニスト))
本発明のIL−21アンタゴニストまたはIL−21Rアンタゴニストは、それぞれ、IL−21またはIL−21R(例えばヒト、ウシ、ラット、マウス、馬、犬などの哺乳動物のIL−21またはIL−21R)と相互に作用し、IL−21および/またはIL−21Rのレベルを減少させる(例えば、IL−21および/またはIL−21Rに関連した1つ以上の生物活性を減少させる)。この相互作用が直接の結合を伴う場合、アンタゴニストは、高い親和性をもってIL−21またはIL−21Rに結合する(例えば、親和定数が少なくとも約107M-1、好ましくは約108M-1、より好ましくは約109M-1〜1010M-1またはそれ以上)。
IL−21および/またはIL−21Rのレベルは、望ましくは10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%まで減少する。アンタゴニストは、例えば、IL−21を中和することによってIL−21Rの活性を減少できる。アンタゴニストは、例えば配列番号11、13、15、17、19、21、23、25および27に示される融合タンパク質などの、免疫グロブリンFc領域などの非IL−21Rフラグメントに融合されるIL−21Rのフラグメントを含む融合タンパク質であり得る。その他のアンタゴニストの例には、抗IL−21抗体または抗IL−21R抗体、それらの抗原結合性フラグメント、IL−21Rの可溶性形態、ペプチド、抑制性のポリヌクレオチド(例えばsiRNA、SNP、アプタマーなど)、および小分子が挙げられる。
【0039】
一つの実施形態において、IL−21/IL−21Rアンタゴニストは、抗IL−21R抗体または抗IL−21抗体、あるいはそれらの抗原結合性フラグメントである。更なる実施形態において、抗体は中和抗体である。所望の場合、抗体は、IL−21またはIL−21R、あるいはそれらの抗原結合性フラグメント(例えばFab、F(ab’)2、Fvまたは単鎖のFvフラグメントなど)に結合するモノクローナル抗体または単一特異性抗体であり得る。抗体は、IL−21ポリペプチドまたはIL−21Rポリペプチドに対するヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはインビトロで産生された抗体であり得る。
【0040】
あるいは、IL−21アンタゴニストまたはIL−21Rアンタゴニストは、IL−21ポリペプチドまたはIL−21Rポリペプチドの全長(例えば変異配列)またはフラグメントであり得る(例えばヒト)。アンタゴニストの例には、例えば、IL−21ポリペプチドの抑制性IL−21レセプター結合ドメイン(例えばヒト)、あるいは、マウスまたはヒトIL−21Rの細胞外ドメインが含まれる。IL−21アンタゴニストは、天然のIL−21R(例えば、配列番号2(ヒト)または配列番号5(マウス)など)またはそのフラグメントと実質的に同一の(例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%、99%の配列同一性を有する)アミノ酸配列を有し得る(表2参照)。あるいは、アンタゴニストは、天然の哺乳動物のIL−21Rまたはそのフラグメント(例えば、配列番号1(ヒト)または配列番号4(マウス))と実質的に同一のヌクレオチド配列、または、ストリンジェントな条件、例えば高度にストリンジェントな条件下で前述のヌクレオチド配列の1つにハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を有し得る(表1参照)。
【0041】
【表2】
【0042】
必要に応じ、IL−21Rポリペプチドは、膜の固着(membrane anchoring)が不可能な可溶性ポリペプチドであり得る。このような可溶性ポリペプチドには、例えば、膜貫通ドメインの十分な部分が無い、または膜貫通ドメインが非機能的であるように修飾されているIL−21Rポリペプチドが含まれる。例えば、IL−21Rポリペプチドは、IL−21Rの可溶性フラグメントであり得る(例えば、配列番号2(ヒト)のおよそ第1番目〜第235番目、第1番目〜第236番目、第20番目〜第235番目、又は第20番目〜第236番目のアミノ酸からのアミノ酸配列、または配列番号5(マウス)のおよそ第1番目〜第236番目、又は第20番目〜第236番目のアミノ酸からのアミノ酸配列を含む、マウスまたはヒトIL−21Rの細胞外ドメインを含有するIL−21Rのフラグメントなど)。例となるIL−21アンタゴニストは、配列番号2の第20番目〜第538番目のアミノ酸(成熟ヒトIL−21R)、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸(ヒトIL−21Rの細胞外ドメイン)、配列番号2の第1番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第236番目のアミノ酸、または配列番号5の第20番目〜第236番目のアミノ酸と実質的に同一のアミノ酸配列を有し得る。
【0043】
本発明のIL−21アンタゴニストは、例えば表1に記載されたような高度にストリンジェントな条件下、配列番号1、配列番号4、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24または配列番号26に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズする核酸によってコードされ得る。IL−21Rタンパク質または融合タンパク質をコードする、しかし、遺伝子コードの縮重により配列番号1、4、10、12、14、16、18、20、22、24または26に示されるヌクレオチド配列と異なる単離されたポリヌクレオチドもまた、本発明に包含される。点突然変異または誘導された修飾によって引き起こされる、配列番号1、4、10、12、14、16、18、20、22、24または26に示されるヌクレオチド配列の変化物もまた、本発明に包含される。
【0044】
所望であれば、可溶性のIL−21Rポリペプチドは、ポリペプチドなどの第2部分(例えば免疫グロブリン鎖、GST、Lex−AまたはMBPのポリペプチド配列)を含み得るか、またはそれに融合され得る。例えば、融合タンパク質は、第2部分(例えば免疫グロブリン鎖、Fcフラグメント、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEを含む多様な免疫グロブリンアイソタイプの重鎖定常領域など)に融合されるIL−21Rの可溶性フラグメント(例えば、配列番号2(ヒト)の第1番目〜第235番目、第1番目〜第236番目、第20番目〜第235番目、もしくは第20番目〜第236番目のアミノ酸、または配列番号5(マウス)の第1番目〜第236番目もしくは第20番目〜第236番目のアミノ酸などの、マウスまたはヒトIL−21Rの細胞外ドメインを含有するフラグメント)などの、IL−21を結合し得るIL−21Rポリペプチドのフラグメントを含み得る。
【0045】
望ましくは、本発明のIL−21アンタゴニストは、例えば、IL−21ポリペプチドと相互に作用する、またはそれに結合する能力、γcまたはJAK1などのシグナル変換分子に関連する能力、リン酸化反応および/またはstatタンパク質(例えばStat5および/またはStat3)の活性化を刺激する能力、および、増殖、分化、エフェクター細胞機能、細胞溶解活性、サイトカイン分泌、および/またはT細胞(Th1およびTh2細胞を含む、CD8+およびCD4+T細胞)、NK細胞、B細胞、マクロファージ、および巨核球などの免疫細胞の生存を調節する(例えば刺激するまたは減少させる)能力を含む、天然のIL−21Rに関連した少なくとも1つの生物活性を減少させる。
【0046】
本発明によれば、IL−21ポリペプチドは、IL−2、IL−4およびIL−15に配列相同性を示すサイトカインである(Parrish-Novakら、(2000) Nature 408:57-63)。インターロイキンサイトカイン間での配列相同性が低いにもかかわらず、サイトカインは、共通の第2モチーフ、すなわち、ファミリーの典型である「4本ヘリックス束」構造を共有する。IL−21は、主に活性化されたCD4+T細胞中で発現され、NK細胞、B細胞およびT細胞に影響を与えることが報告されている(Parrish-Novakら、(2000)既出;およびKasaianら、(2002) Immunity 16:559-69参照)。IL-21は、IL−21R(「MU−1」、「NILR」および「zalphal1」とも呼ばれる)に結合する。IL−21の結合の際、IL−21Rの活性化により、Stat5および/またはStat3のシグナル伝達が引き起こされる(Ozakiら、(2000)既出)。
IL−21ポリペプチドのアミノ酸配列は公知である。例えば、ヒトIL−21のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、GenBank受託番NM_021803で入手可能である。開示されているヒトIL−21ヌクレオチド配列が、以下に示される:
【化1】
【0047】
開示されているヒトIL−21ポリペプチドのアミノ酸配列が、以下に示される:
【化2】
【0048】
このように、IL−21ポリペプチドとは、IL−21Rと相互に作用可能な、またはそれに結合可能であって、以下の特性のうちの一つを有するタンパク質のことを言う:(i)天然の哺乳動物のIL−21またはそのフラグメント(例えば、配列番号8(ヒト))と実質的に同一のアミノ酸配列;(ii)天然の哺乳動物のIL−21ヌクレオチド配列またはそのフラグメント(例えば、配列番号7(ヒト)またはそのフラグメント)と実質的に同一のヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列;(iii)例えば、配列番号7(ヒト)またはそのフラグメントなどの、天然のIL−21ヌクレオチド配列またはそのフラグメントに変性した(degenerate)ヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列;または(iv)ストリンジェントな条件下で、前述のヌクレオチド配列のうちの一つにハイブリダイズするヌクレオチド配列。
【0049】
前述の本発明の局面全てにおいて、IL−21ポリペプチドまたはIL−21Rポリペプチドは、それぞれIL−21RまたはIL−21に結合する、より高い親和性(突然変異のない配列に比較して)を有する結果となる天然のIL−21配列またはIL−21R配列(野生型)における突然変異を有する変異ポリペプチドとして提供され得る。このような突然変異は、例えばタンパク質分解耐性を高める(突然変異のない配列に比較して)のに有用であり得る。開示された配列のうちのいくつかのアミノ酸配列は、IL−21またはIL−21Rの構造または機能を有意に変えることなく変化させることができる。一般的に、類似の機能を有する残基が使用されるのであれば、IL−21タンパク質またはIL−21Rタンパク質の三次構造を形成する残基を置換することが可能である。他の場合において、重要でない領域において変更が起こるのであれば、残基の型は完全に無関係であり得る。このように、本発明は更に、実質的なIL−21型の生物活性を示すIL−21およびIL−21Rの改変体を含む。このような改変体には、欠失、挿入、逆位、繰り返し、およびタイプ置換(例えば、ある親水性残基を別のものに置換するが、強親水性残基から強疎水性残基へは置換しない)が含まれる。小さな変更または「ニュートラルな」アミノ酸置換は、タンパク質機能への影響が少ない場合が多い(Taylor (1986) J. Theor. Biol. 119:205-18参照)。同類置換には、脂肪族アミノ酸同士の置換、アミド残基同士の置換、塩基性残基同士の置換、および芳香族残基同士の置換が含まれ得るが、これらに限定されない。どのアミノ酸の変更が表現型的にサイレントである可能性が高いか(すなわち、機能に有意な影響を与える可能性が低い)についての更なるガイダンスは、Bowieら、(1990) Science 247:1306-10およびZvelebilら、(1987) J. Mol. Biol. 195:957-61において見ることが可能である。
【0050】
必要に応じ、IL−21またはIL−21Rアンタゴニストは、Fcフラグメント等の免疫グロブリン鎖、GSTまたはmyc等のエピトープ(タグ)配列、および、Lex−AまたはMBPポリペプチド配列等の更なる周知の配列などの第2部分に融合される、本明細書に記載されたIL−21またはIL−21Rポリペプチドまたはそのフラグメントを含有する融合タンパク質である。所望であれば、融合タンパク質には、第2部分(例えば、免疫グロブリン鎖、Fcフラグメント、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEを含む多様なアイソタイプの重鎖定常領域など)に融合される、IL−21Rの可溶性フラグメント(例えば、配列番号2(ヒト)のおよそ第1番目〜第235番目、第1番目〜第236番目、第20番目〜第235番目、もしくは第20番目〜第236番目のアミノ酸、または配列番号5(マウス)の第1番目〜第236番目もしくは第20番目〜第236番目のアミノ酸由来のマウスまたはヒトIL−21Rの細胞外ドメインを含有するIL−21Rのフラグメント、または、配列番号1または4にコードされるポリペプチドに同一、または実質的に同一のフラグメント等)などの、IL−21を結合可能なIL−21Rポリペプチドのフラグメントが含まれ得る。あるいは、Fcレセプター結合を減少させるために、ヒトFc配列は、天然の配列内において1つ以上のアミノ酸が突然変異されている(例えば、配列番号16の第254番目及び第257番目の残基が突然変異されている)。その他の実施形態において、融合タンパク質は、マウス免疫グロブリンFc鎖(例えばマウスIgG2a、またはマウスIgG2aの突然変異形態等のマウスIgGを含むがそれらに限定されない)に融合される、マウスIL−21Rの細胞外ドメイン(配列番号5(マウス)のおよそ第1番目〜第236番目又は第20番目〜第235番目のアミノ酸由来)を含み得る。
【0051】
本発明の方法において使用され得る拮抗的融合タンパク質の例を、図7−15に示す。融合タンパク質は、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25または配列番号27と実質的に同一のアミノ酸配列、または、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24または26と実質的に同一のヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を含み得る。ある典型的な融合タンパク質は、C末端において、リンカー(配列番号17の第236番目〜第243番目のアミノ酸に対応)によって、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc変異配列(配列番号17の第244番目〜第467番目のアミノ酸に対応)と融合した、ヒトIL−21R細胞外ドメイン(例えば、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸)を含有する。ヒトFc配列は、Fcレセプター結合を減少させるために、野生型配列から第254番目及び第257番目の残基が突然変異されている。ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号16および配列番号17として示されている。
【0052】
第2のポリペプチドは、好ましくは可溶性である。必要に応じ、第2のポリペプチドは、結合されたポリペプチドの半減期(例えば血清の半減期)を改善する。所望であれば、第2のポリペプチドは、融合ポリペプチドの第2のIL−21RまたはIL−21ポリペプチドとの関連性を促進する配列を含む。第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの少なくともある領域を含み得る。免疫グロブリン融合ポリペプチドは当技術分野において知られており、例えば、米国特許第5,225,538号、第5,428,130号、第5,514,582号、第5,714,147号および第5,455,165号に記載されている。
必要に応じ、第2のポリペプチドは、全長免疫グロブリンポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば重鎖、軽鎖、Fab、Fab2、FvまたはFc等)である。
【0053】
一つの例において、第2のポリペプチドは、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能よりも低いエフェクター機能を有する。Fcエフェクター機能は、例えば、Fcレセプター結合、補体結合、およびT細胞除去活性を含む(例えば米国特許第6,136,310号参照)。T細胞除去活性、Fcエフェクター機能、および抗体安定性を検査する方法は、当技術分野において知られている。一つの実施形態において、第2のポリペプチドは、Fcレセプターに対する親和性が低い、または親和性を有さない。別の実施形態において、第2のポリペプチドは、補体タンパク質C1qに対する親和性が低い、または親和性を有さない。
好ましい第2のポリペプチドの配列は、配列番号6のアミノ酸配列を含む。この配列は、Fc領域を含む。下線が引かれたアミノ酸は、野生型免疫グロブリン配列の対応する位置に見られるアミノ酸とは異なるものである:
【化3】
【0054】
融合タンパク質は、第1部分を第2部分に結合させるリンカー配列を更に含み得る。例えば、融合タンパク質は、約4〜20個のアミノ酸、より好ましくは5〜10個のアミノ酸、そして最も好ましくは約8個のアミノ酸の長さからなるペプチドリンカーを含み得る。ペプチドリンカー内のアミノ酸は、例えばGly、Ser、Asn、ThrおよびAlaを含み得る。このように、ペプチドリンカーは、Gly−Serエレメントから成り得る。その他の実施形態において、融合タンパク質は、式(Ser−Gly−Gly−Gly−Gly)yを有するペプチドリンカーを含み、ここで、「y」は1、2、3、4、5、6、7または8である。
その他の実施形態において、発現、検出および/または単離、または精製を促進するために、融合タンパク質のN末端またはC末端に、更にアミノ酸配列を追加し得る。例えば、IL−21/IL−21R融合タンパク質は、例えばGST(すなわちグルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、His、FLAGまたはmycタグなどの1つ以上の更なる部分に結合され得る。例えば、融合タンパク質は、GSTペプチドを更に含み得、その場合において、融合タンパク質配列は、GST配列のC末端に融合されている。このような融合タンパク質は、IL−21R/MU−1融合タンパク質の精製または同定を促進する。その他の実施形態において、発現、立体化学的柔軟性、検出および/または単離、または精製を促進するために、更なるアミノ酸配列は、融合タンパク質のN末端またはC末端に追加され得る。
【0055】
融合タンパク質はまた、そのN末端において、非相同のシグナル配列をも含み得る。例えば、天然のIL−21Rシグナル配列は、除去され、別のタンパク質由来のシグナル配列に置換され得る。ある宿主細胞(例えば哺乳動物の宿主細胞)において、非相同のシグナル配列を使用して、IL−21Rの発現および/または分泌が増加され得る。融合タンパク質に含有され得るシグナルペプチドは、MPLLLLLLLLPSPLHP(配列番号9)である。所望であれば、IL−21R/MU−1部分を含む第1のポリペプチド部分と第2のポリペプチド部分との間に、1つ以上のアミノ酸が更に挿入され得る。
本明細書に記載されたIL−21/IL−21Rアンタゴニストは、誘導体化され得るか、または、例えば別のペプチドまたはタンパク質(例えばFab’フラグメント)などの別の機能分子に結合され得る。例えば、融合タンパク質または抗体、または抗原結合部分が、例えば、とりわけ抗体(例えば二重特異性抗体または多重特異性抗体)、毒素、放射性同位体、細胞毒性薬、細胞増殖抑制剤などの1つ以上のその他の分子的実体に、機能的に結合され得る(例えば、化学的結合、遺伝子融合、非共有結合性会合ないしは別の方法によって)。
【0056】
本発明のキメラタンパク質または融合タンパク質は、標準的なDNA組み換え技術によって生成され得る。例えば、ライゲーションのための平滑末端または粘着末端、適切な末端を作り出すための制限酵素での消化、必要に応じた粘着末端の穴埋め、所望ではないライゲーションを避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素によるライゲーションなどを採用することにより、従来の技術に従って、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントをインフレームで結びつける。別の実施形態においては、融合遺伝子が、自動DNA合成装置を含む従来技術によって合成され得る。あるいは、キメラ遺伝子配列を産生するために後でアニールおよび再増幅され得る2つの連続した遺伝子フラグメント間の相補的なオーバーハングを引き起こすアンカープライマーを使用して、遺伝子フラグメントのPCR増幅が行われ得る(例えば、Ausubelら(既出)参照)。更に、融合部分(例えば免疫グロブリン重鎖のFc領域)をコードする多数の発現ベクターが市販されている。融合部分が免疫グロブリンタンパク質にインフレームで結合されるように、IL−21R/MU−1またはIL−21をコードする核酸が、このような発現ベクター内にクローニングされ得る。いくつかの実施形態において、IL−21R/MU−1またはIL−21融合ポリペプチドは、二量体または三量体などのオリゴマーとして存在する。当技術分野において知られている方法を使用して、IL−21R/MU−1またはIL−21モノマー、および/またはIL−21R/MU−1またはIL−21をコードする核酸が構築され得る。
【0057】
(核酸の生成)
IL−21RまたはIL−21ポリペプチド(そのフラグメントおよび融合を含む)を遺伝子組み換え的に生成するために、本発明の単離されたポリヌクレオチドが、Kaufmanら、(1991) Nuc. Acids Res. 19:4485-90に開示されているpMT2またはpED発現ベクターなどの発現調節配列に、作動可能に結合され得る。多数の適切な発現調節配列が、当技術分野において知られている。組み換えタンパク質を発現する一般的な方法もまた知られており、Kaufman (1990) Meth. Enzym. 185:537-66に例示されている。本明細書に定義される通り、「作動可能に結合され」とは、IL−21RまたはIL−21ポリペプチドが、ライゲーションされたポリヌクレオチド/発現調節配列により形質転換(トランスフェクト)されている宿主細胞によって発現されるように、酵素的または化学的にライゲーションされて、本発明の単離されたポリヌクレオチドと発現調節配列との間に共有結合を形成することを意味する。
【0058】
本明細書において使用される用語「ベクター」は、結合されている別の核酸を移送することが可能な核酸分子を指すことが意図される。ベクターの一つのタイプが「プラスミド」であり、これは、更なるDNAセグメントがライゲーションされ得る円形で二本鎖のDNAループを指す。別のタイプのベクターにはウイルスベクターがあり、ウイルスのゲノムに、更なるDNAセグメントがライゲーションされ得る。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自己複製が可能である(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクターおよび哺乳動物のエピソームベクターなど)。その他のベクター(例えば哺乳動物の非エピソームベクターなど)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノム内に統合され得、それによって宿主のゲノムと共に複製される。更に、ある種のベクターは、動作可能に結合された遺伝子の発現を指示することが可能である。このようなベクターは、本明細書において「組み換え発現ベクター」(または単純に「発現ベクター」)と称される。一般的に、DNA組み換え技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態をとる場合が多い。本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」は同じ意味で使用され得る。なぜならば、プラスミドは最も一般的に使用されるベクターの形態であるからである。しかし、本発明は、同等な機能を有するウイルスベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などの、その他の形態の発現ベクターをも含むことを意図する。
【0059】
本発明の組み換え発現構成体は、調節配列(すなわち、複製起点、目的のポリペプチド(またはペプチド)をコードする核酸配列の転写などのベクターの複製、またはコードされたポリペプチドの発現を調節する配列)ヒスチジン等のタグ配列、および選択可能なマーカー遺伝子などの、更なる配列を有し得る。用語「調節配列」は、転写、複製または翻訳をコントロールするプロモーター、エンハンサー、およびその他の任意の発現調節エレメント(例えばポリアデニル化信号、転写スプライス部位)を含むことが意図される。このような調節配列は、例えば、Goeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1990)に記載されている。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、宿主細胞の選択および所望のタンパク質発現のレベルを含む多様な要因に依存するであろうことが、当業者によって理解されるであろう。哺乳動物の宿主細胞においてタンパク質を発現するための好ましい調節配列には、FF−1aプロモーターおよびBGHポリA、サイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例えばアデノウイルスメジャーレイトプロモーター(AdMLP))、およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルスエレメントが含まれる。ウイルス性の調節エレメント、およびその配列は、例えば米国特許第5,168,062号、第4,510,245号および第4,968,615号に記載されている。
【0060】
本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点および終了配列など)および選択マーカー遺伝子などの、更なる配列を含み得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を促進する(例えば米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号(全てAxelら)参照)。例えば、選択マーカー遺伝子は典型的に、G418(ジェネティシン)、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの化合物に対する、選択マーカーでトランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞の耐性を与える。好ましい選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサートの選択/増幅と共にdhfr ̄宿主細胞内で使用するため)、neo遺伝子(G418選択のため)、および細菌に対するテトラサイクリンおよび/またはアンピシリン耐性を与える遺伝子が含まれる。
【0061】
プロモーター配列、終了配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子およびその他の必要に応じた配列を含む適切な調節配列を含有する適切なベクターが、選択、あるいは構成され得る。pTet−On(登録商標)およびpTet−Off(登録商標)(クローンテック社、カリフォルニア州パロアルト)等テトラサイクリン誘導可能なベクターなどの、誘導可能なプロモーター配列を有するベクターを使用することによって達成されるタンパク質の誘導可能な発現もまた、開示された方法において使用することができる。発現ベクターに関する更なる詳細については、例えば既出のSambrookらを参照されたい。例えば、核酸構成体の調製、突然変異生成、シークエンシング、細胞内へのDNAの導入、遺伝子発現、およびタンパク質の分析において核酸を操作するための多くの知られている技術およびプロトコルもまた、既出のSambrookらに詳しく記載されている。
【0062】
多くのタイプの細胞が、IL−21R/MU−1またはIL−21またはその融合タンパク質の発現に適切な宿主細胞として作用し得る。機能的IL−21R/MU−1またはIL−21タンパク質またはその融合を発現可能な、任意の細胞タイプが使用され得る。適切な哺乳動物の宿主細胞には、例えば、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓293細胞、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、3T3細胞、CV−1細胞、その他の形質転換された霊長類の細胞株、正常2倍体細胞、一次組織のインビトロでの培養に由来する細胞株、初代外植片、HeLa細胞、マウスL細胞、BHK細胞、HL−60細胞、U937細胞、HaK細胞、C3H10T1/2細胞、Rat2細胞、BaF3細胞、32D細胞、FDCP−1細胞、PC12細胞、M1x細胞、C2C12細胞が含まれる。
【0063】
IL−21RまたはIL−21ポリペプチドまたはその融合タンパク質はまた、1つ以上の昆虫発現ベクターにおいて、本発明の単離されたポリヌクレオチドを適切な制御配列に作動可能に結合し、昆虫の発現系を利用することによって生成することができる。バキュロウイルス/Sf9の発現系のための材料および方法は、キットの形態で市販されている(例えば、MAXBAC(登録商標)キット、インビトロジェン社、カリフォルニア州カールスバッド)。本明細書に記載されているポリペプチドの可溶性の形態もまた、上述のように適切な単離されたポリヌクレオチドを使用して、昆虫の細胞内で生成され得る。
【0064】
あるいは、IL−21RまたはIL−21ポリペプチドまたはその融合タンパク質は、酵母菌などの下等真核生物内で、または、細菌などの原核生物内で生成され得る。適切な酵母菌株には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリヴェロマイセス(Kluyveromyces)株、カンジダ菌、または、異種タンパク質を発現可能な任意の酵母菌株が含まれる。適切な細菌株には、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、または、異種タンパク質を発現可能な任意の細菌株が含まれる。細菌内での発現の結果、組み換えタンパク質を組み込んだ封入体が形成され得る。このように、活性の、またはより活性の材料を生成するためには、組み換えタンパク質のリフォールディングが必要な場合がある。細菌の封入体由来の正しくリフォールディングされた異種タンパク質を得るためのいくつかの方法が、当技術分野において知られている。これらの方法は、一般的に、封入体由来のタンパク質を可溶化し、次にカオトロピック剤を使用してタンパク質を完全に変性させる工程を伴う。タンパク質の一次アミノ酸配列にシステイン残基が存在する場合、しばしば、ジスルフィド結合の正しい形成を可能にする環境(酸化還元系)において、リフォールディングを達成することが必要である。リフォールディングの一般的な方法は、Kohno (1990) Meth. Enzym. 185:187-95、欧州特許第0433225号および米国特許第5,399,677号において開示されている。
【0065】
本発明のタンパク質(またはそのフラグメントまたは融合)はまた、例えば、トランスジェニックなウシ、ヤギ、ブタ、またはヒツジのミルクの成分として等、トランスジェニック動物の生成物として発現され得、これらは、例えば、IL−21RまたはIL−21またはその融合タンパク質をコードする等、ポリヌクレオチド配列を含有する体細胞または胚細胞によって特徴づけられる。従って、タンパク質は、その所望のタンパク質を発現するために必要な培養条件下で、培養で形質転換された宿主細胞を育てることにより調製することができる。結果として得られた発現されたタンパク質は、次に、培地または細胞抽出物から精製することができる。タンパク質の可溶性の形態は、ならし培地から精製することができる。本発明のIL−21Rタンパク質の膜に結合された形態は、発現細胞から総膜画分を調製し、TRITON(登録商標)X−100(EMDバイオサイエンス社、カリフォルニア州サンディエゴ)等の非イオン系洗剤を使用して膜を抽出することにより精製することができる。
【0066】
本明細書に記載されるポリペプチドは、当業者に知られている方法を使用して精製することができる。例えば、本発明のタンパク質は、AMICON(登録商標)またはPELLICON(登録商標)限外ろ過装置(ミリポア社、マサチューセッツ州ビレリカ)等、市販のタンパク質濃縮フィルターを使用して濃縮することができる。濃縮工程に続き、濃縮物は、ゲルろ過媒体等の精製マトリックスに適用することができる。あるいは、例えばペンダントしているジエチルアミノエチル(DEAE)またはポリエチレンイミン(PEI)基を有するマトリックスまたは基質などの、陰イオン交換樹脂が利用できる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質の精製に一般的に利用されるその他のタイプであってよい。あるいは、陽イオン交換工程が利用できる。適切な陽イオン交換には、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含む多様な不溶性マトリックスが含まれる。スルホプロピル基が好ましい(例えばS−SEPHAROSE(登録商標)カラム、シグマ・アルドリッチ社、ミズーリ州セントルイス)。培養上清からのIL−21R/MU−1タンパク質または融合タンパク質の精製はまた、コンカナバリンA−アガロース、AF−HEPARIN650、ヘパリン−TOYOPEARL(登録商標)またはチバクロンブルー3GA SEPHAROSE(登録商標)(トーソー・バイオサイエンス社、カリフォルニア州サンフランシスコ)等の親和性樹脂に対する;または、フェニルエーテル、ブチルエーテルまたはプロピルエーテル等の樹脂を使用した疎水性相互作用クロマトグラフィーによる;または免疫親和性クロマトグラフィーによる1つ以上のカラム工程を含む。最後に、IL−21R/MU−1またはIL−21タンパク質を更に精製するために、例えばペンダントしているメチル基またはその他の脂肪族基を有するシリカゲル等の、疎水性RP−HPLC媒体を利用した、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)の1つ以上の工程が利用され得る。本発明のタンパク質に対する抗体を含む親和性カラムもまた、知られている方法に従って精製において使用され得る。実質的に精製された単離された組み換えタンパク質を提供するために、前述の精製工程のいくつか、または全てはまた、多様な組み合わせで、またはその他の知られている方法と共に利用され得る。好ましくは、単離されたタンパク質は、その他の哺乳動物のタンパク質から実質的に遊離されるように精製される。
【0067】
(抗体の生成)
本発明のIL−21またはIL−21Rポリペプチドは、IL−21またはIL−21Rと特異的に反応してIL−21および/またはIL−21Rの発現または活性を調節するか、またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを調節する、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を得るために、動物に免疫性を与えるために使用できる。このような抗体は、例えば、IL−21R全体またはそのフラグメントを免疫原として使用して得ることができる。ペプチド免疫原は、カルボキシル末端にシステイン残基を更に含有し得、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等のハプテンに結合され得る。更なるペプチド免疫原が、チロシン残基を硫酸化チロシン残基で置換することにより産生され得る。このようなペプチドを合成する方法は、当技術分野において知られており、例えば、Merrifield (1963) J. Amer. Chem. Soc. 85:2149-54およびKrstenanskyおよびMao (1987) FEBS Lett. 211:10-16に記載されている。
【0068】
IL−21またはIL−21Rに対するヒトモノクローナル抗体(mAbs)は、マウス系よりもヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを使用して産生され得る。ヒトタンパク質由来のエピトープに特異的な親和性を有するヒトmAbsを分泌するハイブリドーマを生成するために、目的の抗原で免疫性が与えられたこれらトランスジェニックマウス由来の脾細胞が使用される(例えば、国際公開第WO91/00906号、第WO91/10741号、第WO92/03918号および第WO92/03917号、Lonbergら、(1994) Nature 368:856-59;Green ら、(1994) Nat. Genet. 7:13-21、Morrisonら、(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851-55;およびTuaillonら、(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:3720-24参照)。
【0069】
モノクローナル抗体はまた、当業者に知られているDNA組み換え技術に関するその他の方法によって産生され得る。特別な抗原特異性を有する抗体フラグメントを同定および単離するために、「組合せ抗体ディスプレイ」方法と称される一つの典型的な方法が開発されており、モノクローナル抗体を生成するために利用され得る(組合せ抗体ディスプレイに関する記述については、例えばSastryら、(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:5728-32;Huseら、(1989) Science 246:1275-81;およびOrlandiら、(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:3833-37参照)。上述の通り免疫原で動物に免疫性を与えた後、得られたB細胞プールの抗体のレパートリーがクローニングされる。免疫グロブリン分子の異なる集団の可変領域のDNA配列は、オリゴマープライマーおよびPCRの混合物を使用して得られ得る。例えば、5’リーダー(シグナルペプチド)配列および/またはフレームワーク1(FR1)配列、および保存3’定常領域プライマーに対するプライマーに対応する混合されたオリゴヌクレオチドプライマーが、多数のマウス抗体由来の重鎖および軽鎖の可変領域のPCR増幅に使用され得る(Larrickら、(1991) BioTechniques 11:152-56参照)。ヒト抗体由来のヒト重鎖および軽鎖可変領域を増幅するためにも、類似の戦略が使用され得る(Larrickら、(1991) Methods: Companion to Methods in Enzymology 2:106-10参照)。
【0070】
キメラ免疫グロブリン鎖を含むキメラ抗体もまた、当技術分野において知られているDNA組み換え技術によって生成され得る。例えば、マウス(またはその他の種)のモノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子は、マウスFcをコードする領域を除去するために制限酵素を使用して切断され、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子の対応部分が置換される(PCT/US86/02269;欧州特許第184,187号;欧州特許第171,496号;欧州特許第173,494号;WO86/01533;米国特許第4,816,567号;欧州特許第125,023号;Betterら、(1988) Science 240:1041-43;Liuら、(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:3439-43;Liuら、(1987) J. Immunol. 139:3521-26;Sunら、(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:214-18;Nishimuraら、(1987) Canc. Res. 47:999-1005;Woodら、(1985) Nature 314:446-49;およびShawら、(1988) J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-59参照)。
【0071】
所望であれば、抗体または免疫グロブリン鎖は、当技術分野において知られている方法によってヒト化され得る。ヒト化された免疫グロブリン鎖を含むヒト化抗体は、抗原結合に直接に関与しないFv可変領域の配列を、ヒトFv可変領域由来の対応する配列で置換することによって産生され得る。ヒト化抗体を産生する一般的な方法は、Morrison (1985) Science 229:1202-07;Oiら、(1986) BioTechniques 4:214-21;および米国特許番号5,585,089、5,693,761および5,693,762によって提供され、これらの全てが、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。これらの方法には、重鎖または軽鎖のうちの少なくとも1つ由来の免疫グロブリンFv可変領域の全部または一部をコードする核酸配列を単離、操作および発現する工程が含まれる。このような核酸のソースは当業者に周知であり、例えば、所定の標的に対する抗体を生成するハイブリドーマから得られ得る。ヒト化抗体またはそのフラグメントをコードする組み換えDNAは、次に適切な発現ベクター内にクローニングされ得る。
【0072】
ヒト化またはCDRグラフト化抗体分子または免疫グロブリンは、CDRグラフト化またはCDR置換によって生成され得、ここで、免疫グロブリン鎖のうちの1つ、2つ、または全てのCDRが置換され得る。例えば、米国特許番号5,225,539;Jonesら、(1986) Nature 321:552-25;Verhoeyanら、(1988) Science 239:1534-36;およびBeidlerら、(1988) J. Immunol. 141:4053-60参照。これらは全て、その全体を引用することによって、本明細書の一部となす。米国特許番号5,225,539には、本発明のヒト化抗体を調製するために使用され得るCDRグラフト化方法が記載されている(英国特許公開第2188638号も参照されたい)。特定のヒト抗体のCDR全てが、非ヒトCDRの少なくとも一部で置換され得るか、またはCDRのいくつかのみが非ヒトCDRで置換され得る。ヒト化抗体を所定の抗原に結合させるのに必要なCDRの数を置換しさえすればよい。
【0073】
定常領域等、抗体のその他の部分を欠失、追加、または置換等することによって改変されているモノクローナル抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体もまた、本発明の範囲内にある。例えば、抗体は以下のようにして改変され得る:(i)定常領域を欠失させる;(ii)定常領域を別の定常領域、例えば、抗体の半減期、安定性および親和性を増加させることが意図される定常領域、または、別の種または別のクラスの抗体由来の定常領域などで置換する;または(iii)例えば、特に糖鎖付加部位の数、エフェクター細胞の機能、Fcレセプター(FcR)結合、補体結合を変えるために、定常領域内の1つ以上のアミノ酸を改変する。
【0074】
抗体の定常領域を変える方法は、当技術分野において知られている。変えられた機能(例えば、細胞上のFcR等のエフェクターリガンド、または補体のC1成分に対する変えられた親和性)を有する抗体は、抗体の定常領域内の少なくとも1つ以上のアミノ酸残基を別の残基で置換することによって生成され得る(例えば、欧州特許公開第388,151号、米国特許第5,624,821号および第5,648,260号参照。これらは全て、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす)。類似のタイプの変化が、マウス免疫グロブリンおよびその他の種由来の免疫グロブリンにも適用され得る。例えば、特定の残基を側鎖に適切な機能性を有する残基で置換することによって、または、グルタメートまたはアスパルテート等の荷電された官能基あるいは多分フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンまたはアラニン等の芳香族非極性残基を導入することによって、FcR(例えばFcγR1)またはC1q結合への抗体のFc領域(例えばヒトIgG等のIgG)の親和性を変えることが可能である(例えば米国特許第5,624,821号参照)。
【0075】
抗原によるチャレンジに応えて、その動物の内因性抗体よりもむしろ完全にヒト抗体を生成するように改変されたトランスジェニック非ヒト動物を使用して、IL−21および/またはIL−21Rに対するヒト抗体が、更に生成され得る。例えば国際公開第WO94/02602号参照。非ヒト宿主における免疫グロブリン重鎖および軽鎖をコードする内因性遺伝子は、機能しないようにされており、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖をコードする活性の遺伝子座が、宿主のゲノムに挿入される。ヒト遺伝子は、例えば、必要なヒトDNAセグメントを含有する酵母菌の人工染色体を使用して組み込まれる。そして、改変の全てよりも少ない種類の改変を含有する中間のトランスジェニック動物を異種交配することによって、所望の改変全てを提供する動物が、後代として得られる。このような非ヒト動物の一つの実施形態がマウスであり、XENOMOUSE(登録商標)と称され、国際公開第WO96/33735号および第WO96/34096号に開示されている。この動物は、完全にヒトの免疫グロブリンを分泌するB細胞を生成する。抗体は、例えばポリクローナル抗体の調製としての目的の免疫原での免疫付与後に該動物から直接に得られるか、あるいは、モノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ等、該動物由来の不死化B細胞から直接に得られる。更に、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子が、抗体を直接得るために回収および発現され得、あるいは、例えば単鎖Fv分子等の抗体のアナログを得るために更に改変され得る。
【0076】
IL−21および/またはIL−21Rの活性を調節するために、その他のタンパク質結合分子も利用することができる。このようなタンパク質結合分子には、小モジュラー免疫薬学的(small modular immunopharmaceutical、SMIP(登録商標))薬物(Trubion Pharmaceuticals社、ワシントン州シアトル)が含まれる。SMIPは、抗原やカウンターレセプター等の同種構造のための結合ドメイン;システイン残基を1つ有する、または有さないヒンジ領域のポリペプチド;および免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインから構成される単鎖ポリペプチドである(www.trubion.comも参照のこと)。SMIP、その使用および適用については、例えば米国特許出願公開第2003/0118592号、第2003/0133939号、第2004/0058445号、第2005/0136049号、第2005/0175614号、第2005/0180970号、第2005/0186216号、第2005/0202012号、第2005/0202023号、第2005/0202028号、第2005/0202534号、および第2005/0238646号、ならびにそれに関連するパテントファミリーメンバーに開示されており、それらは全て、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
本明細書において述べられている通り、IL−21RまたはIL−21またはその融合タンパク質に結合する中和抗体または非中和抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、線維症および線維症に関連した状態等の免疫状態の治療において有用であり得る。
従って、本発明は、IL−21またはIL−21Rまたはその融合タンパク質と特異的に反応する抗体を含む組成物を更に提供する。
【0077】
(スクリーニングアッセイ)
本発明のIL−21RまたはIL−21ポリペプチドまたは融合タンパク質はまた、IL−21またはIL−21Rに結合可能で、例えばIL−21および/またはIL−21Rの活性レベル、IL−21および/またはIL−21Rの発現レベル(例えばIL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物のレベル等)、および/またはIL−21とIL−21R間の相互作用のレベル等のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを調節可能な薬剤をスクリーニングするために使用され得る。支持体から離れていても固定されていても良い、本発明のタンパク質またはその結合パートナーを使用した結合アッセイは、当技術分野において周知である。本発明のIL−21RまたはIL−21ポリペプチドまたは融合タンパク質に対する結合パートナーおよび/またはリガンド(天然または合成、例えば試験化合物)を同定するために、精製された細胞ベースまたはタンパク質ベース(無細胞)のスクリーニングアッセイが使用され得る。例えば、IL−21Rはキャリア上に精製された形態で固定され得、IL−21Rに対する潜在的リガンドの結合が測定され得る。
【0078】
(IL−21に関連した、線維症および線維症に関連した障害の進行を診断、予知およびモニタリングする方法)
本発明は、IL−21および/またはIL−21Rのレベルを検出および/または測定すること等により、IL−21および/またはIL−21Rに関連した障害、すなわち、線維症または線維症に関連した状態または障害の進行を診断、予知およびモニタリングする(例えば治療過程をモニタリングする)方法を提供する。ここで、「IL−21および/またはIL−21Rのレベル」のフレーズおよびそれに相当する語句は、(1)IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物の発現レベル(例えば、目的の細胞または試料内におけるIL−21および/またはIL−21Rタンパク質および/またはmRNAのレベル);(2)IL−21タンパク質および/またはIL−21Rタンパク質の活性レベル(例えば、Th2サイトカイン発現および/または目的の細胞または試料内の機能);および(3)IL−21とIL−21Rの相互作用のレベル(例えば、目的の細胞または試料内において)を含むが、これらに限定されない。例えば、本発明は、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物および/または活性の上方調節または下方調節の検出、および/またはIL−21のIL−21R等との相互作用の測定による診断、予知およびモニタリングの方法を提供する(ヒトの被検体におけるこのような方法の使用を含むが、これに限定されない)。IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルを生成するまたは得るために、IL−21および/またはIL−21Rのレベルはまた、基準の目的の細胞または試料において測定され得る。または、このような基準レベルは、その他の方法を通じて入手され得るか、あるいは当業者に一般的に知られているものである。これらの方法は、例えば、臨床設定において便利に使用され得る、本明細書に記載されたIL−21またはIL−21Rポリヌクレオチド(またはそのフラグメント);IL−21またはIL−21Rポリペプチド(またはそのフラグメントおよび/または融合タンパク質);IL−21またはIL−21Rポリペプチドに対する抗体(またはその誘導体、またはその抗原結合性フラグメント);またはIL−21またはIL−21Rポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドのモジュレータを含む群より少なくとも1つを含む、予めパッケージされた診断的キットを利用すること等によって実施され得る。
【0079】
「診断的」または「診断」とは、病的状態が存在するかしないかを断定することを意味する。診断的方法には、被検体(ヒトまたは非ヒト哺乳動物)由来の生体試料内のIL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物(例えば、RNA、cDNAまたはポリペプチド。そのフラグメントを含む)の試験量を測定することによって、IL−21および/またはIL−21Rの活性を測定することによって、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを測定することによって、IL−21および/またはIL−21Rのレベルの上方調節を検出し、試験量を、例えば正常量または正常範囲(例えば、IL−21に関連した障害にかかっていないことがわかっている個体由来の量または範囲、あるいは、線維症または線維症に関連した状態にかかっていないことがわかっている個体由来の量または範囲)と比較することが含まれるが、これらに限定されない。特定の診断的方法は、IL−21に関連した障害に関する確実な診断を提供しないかも知れないが、該方法が、診断に役立つ肯定的な兆しを提供するのであれば、十分である。
【0080】
本発明はまた、例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物および/または活性の上方調節を検出すること、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを測定すること等、IL−21および/またはIL−21Rのレベルの上方調節を検出することによって、このような障害を予知する方法を提供する。「予知的」または「予知」とは、病的状態の進行の可能性および/または重症度を予測することを意味する。予知的方法には、被検体由来の生体試料内のIL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物の試験量を測定し、その試験量を、IL−21および/またはIL−21Rのレベルの予知的量または範囲(すなわち、様々な重症度の障害、すなわち、例えばIL−21に関連した、線維症および/または線維症に関連した状態にかかっている個体由来の量または範囲)と比較することが含まれる。試験試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルに関連した多様な量が、例えば、IL−21および/またはIL−21Rに関連した、線維症または線維症に関連した状態または障害等の障害に関するある予知と一致する。特定の予知的レベルにおけるIL−21および/またはIL−21Rレベルの量の検出は、被検体に関する予知を提供する。
【0081】
本発明はまた、例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物、活性、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用の上方調節を検出すること等、IL−21および/またはIL−21Rのレベルの上方調節を検出することによって、IL−21に関連したこのような障害の進行または過程をモニタリングする方法を提供する。モニタリングの方法には、1回目および2回目に被検体から採取された生体試料におけるIL−21の遺伝子産物の試験量を測定し、それらの量を比較することが含まれる。1回目と2回目の間でのIL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物の量の変化は、IL−21に関連した障害の過程における変化を示し、量の減少は、このような障害の寛解を、量の増加は、このような障害の進行を示す。このようなモニタリングアッセイはまた、線維症または線維症に関連した障害の治療を受けている患者における特定の治療的介入の有効性を評価するのにも有用である。
【0082】
(IL−21および/またはIL−21Rのレベルの測定)
本明細書において略述された本発明の方法(例えば、線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するための化合物をスクリーニングおよび/または同定する方法、線維症または線維症に関連した状態の進行を診断、予知および/またはモニタリングする方法、および、線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防する方法等)におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベル(例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物、活性および/または相互作用のレベル等)は、体液(例えば、全血、血漿および尿等)、細胞(例えば、全細胞、細胞分画および細胞抽出物等)、およびその他の組織を含む多様な生体試料内において測定され得る。生体試料にはまた、組織学的目的で採取された生検材料および凍結切片等の組織の切片が含まれる。好ましい生体試料には、血液、血漿、リンパ液、組織生検材料、尿、CSF(脳脊髄液)、滑液、およびBAL(気管支肺胞洗浄)が含まれる。生体試料の分析において、必ずしも被検体から細胞または組織を取り出す必要はないことが理解されるであろう。例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物(例えば抗体や核酸等)に結合する適切に標識された薬剤が、被検体に投与され得、標準的な画像技術(例えばCAT、NMR(MRI)およびPET)を使用して視覚化され得る(標的に結合された時)。
【0083】
線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防する方法において、被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防するための化合物を同定する方法において、および、本発明の診断的、予知的、およびモニタリングアッセイおよび方法において、試験量を産生するために、IL−21および/またはIL−21Rのレベルが検出および測定される。試験量は次に、例えば正常量または正常範囲と比較される。例えば、正常量または正常範囲を超える量(例えばより高いレベル)は、IL−21に関連した障害の診断における肯定的な徴候である。
IL−21および/またはIL−21Rの正常量またはベースライン値は、任意の特定の試料タイプおよび集団について測定され得る。一般的に、IL−21および/またはIL−21Rのベースライン値(正常値)は、正常な(すなわち健康な)被検体由来の生体試料タイプ内においてL−21および/またはIL−21Rのそれぞれのレベルを測定することにより決定される。あるいは、IL−21および/またはIL−21Rの正常レベルは、病気の(または病気の可能性のある)試験細胞または試験組織が採取された同じ被検体から採取された健康な細胞または組織における量を測定することにより決定され得る。IL−21および/またはIL−21Rのレベル(正常量または試験量)は、細胞当たり、総タンパク質当たり、または容積当たりで測定または発現され得る。試料の細胞量を測定するために、構造的に発現された遺伝子産物、または生体試料が採取されたタイプの細胞において知られたレベルで発現されたその他の遺伝子産物のレベルが測定され得る。
【0084】
本発明のアッセイ方法は、IL−21および/またはIL−21Rのレベルに関する絶対値の測定は、必ずしも必要ではないことが理解されるであろう。なぜならば、これらの方法の適用の多くにおいて、相対値で十分であるからである。また、IL−21および/またはIL−21Rのレベルの量または存在度に加え、変形した、または異常なIL−21および/またはIL−21Rのレベル、またはそれらの発現パターン(例えば、変異転写物、短縮ポリペプチド等)が、正常なレベルおよび発現パターンと比較することによって同定され得ることが理解されるであろう。
2つの試料における特定の遺伝子またはタンパク質のレベルが、それぞれ増加している(すなわち高まっている)か、または減少している(すなわち低くなっている)か(例えば、所定のレベルを有意に上回るか、または有意に下回るか)は、遺伝子そのものと、とりわけ、異なる個体または異なる試料間における発現、活性および/またはリガンドとの相互作用における変動性に依存する。試料間でIL−21および/またはIL−21Rのレベルが有意に類似しているか、または異なっているかを決定することは、当技術分野における技術の範囲内である。2つの試料間でのIL−21および/またはIL−21Rのレベルが増加しているか、または減少しているかを決定するために、個体、種、器官、組織、または細胞間での遺伝的多様性などの要因が考慮され得る(必要に応じて)。個体、種、器官、組織、または細胞間でのIL−21および/またはIL−21Rのレベルにおける天然の不均質性の結果として、「有意に上回る」または「有意に下回る」等のフレーズは、正確なパーセンテージまたは値として定義され得ないが、むしろ、本発明を実施すれば、当業者によって確認され得る。IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物、活性および相互作用を検出および測定する特定の方法が、本明細書に記載されている。
【0085】
IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物を測定するためのアッセイ
本発明の方法には、例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物のレベル、IL−21および/またはIL−21Rの活性レベル、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベル等、生体試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルを検出および定量化することが含まれる。IL−21およびIL−21Rの遺伝子産物には、mRNAおよびポリペプチドが含まれ、どちらも、当業者に周知の方法を使用して測定され得る。
例えば、mRNAは、ノーザンハイブリダイゼーション、インシトゥハイブリダイゼーション、ドットおよびスロットブロット、およびオリゴヌクレオチドアレイ等のハイブリダイゼーションをベースにしたアッセイを使用して、直接検出および定量化され得る。ハイブリダイゼーションをベースにしたアッセイとは、プローブ核酸が標的核酸にハイブリダイズされるアッセイのことを言う。いくつかのフォーマットにおいて、標的、プローブまたはその両方が固定される。固定された核酸は、DNA、RNA、または別のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであってよく、天然または非天然のヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、またはバックボーンを含み得る。本発明において使用するための核酸プローブ配列を選択する方法(例えば、IL−21の核酸配列に基づき)は、当技術分野において周知である。
【0086】
あるいは、mRNAは、検出および定量化前に増幅され得る。このような増幅をベースにしたアッセイは、当技術分野において周知であり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写式PCR(RT−PCR)、PCR−酵素免疫測定法(PCR−ELISA)、およびリガーゼ連鎖反応(LCR)を含む。増幅されたIL−21の遺伝子産物(例えば、mRNA、cDNA等)を生成および検出するためのプライマーおよびプローブは、IL−21および/またはIL−21Rの核酸配列に基づき、当業者による過度の実験の必要なく、容易に設計および生成され得る。増幅されたIL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物は、例えば、ゲル電気泳動;プローブ核酸へのハイブリダイゼーション;配列決定;蛍光シグナル、リン光性シグナルまたは放射性シグナルの検出;または多様な周知の方法のうちのいずれか、によって直接分析され得る。加えて、標的核酸配列の増幅によって生成されるシグナルを増加させるものとして、方法は当業者に知られている。どの増幅法が使用されても、遺伝子産物の定量化が望まれる場合に、当技術分野において知られている多様な定量方法(たとえば定量PCR)が使用され得ることを、当業者は認識するであろう。
【0087】
IL−21および/またはIL−21Rポリペプチド(またはそのフラグメント)は、当明細書に記載されるように産生され得る抗IL−21抗体および/または抗IL−21R抗体それぞれを利用する多様な周知の免疫アッセイを使用して検出され得る。免疫アッセイとは、例えばIL−21ポリペプチド(またはそのフラグメント)等に特異的に結合する抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、scFv抗体、および/またはそのフラグメント)を利用するアッセイのことを言う。本発明の実施に適切なこうした周知の免疫アッセイには、ELISA、放射免疫測定(RIA)、免疫沈降、免疫蛍光、蛍光活性化細胞分類(FACS)、およびウエスタンブロット法が含まれる。当業者であれば、IL−21ポリペプチドが、標識されたIL−21Rポリペプチドを使用しても検出され得ることも認識するであろう。当業者であれば、前述の方法が、IL−21に関連した障害、特に、線維症または線維症に関連した状態に適用され得ることを理解するであろう。
【0088】
(IL−21および/またはIL−21Rの活性を測定するためのアッセイ)
IL−21/IL−21Rの活性(例えば、サイトカイン生成および細胞の増殖/分化のモジュレータとしてのIL−21/IL−21Rアンタゴニストに反応して)は、32D、DA2、DA1G、T10、B9、B9/11、BaF3、MC9/G、M+(preB M+)、2E8、RB5、DA1、123、T1165、HT2、CTLL2、TF−1、Mo7eおよびCMKを含むがこれらに限定されない細胞株に関する多数のルーチンな因子依存性細胞増殖アッセイのうちの任意の一つを使用して試験され得る。
T細胞または胸腺細胞の増殖に関するアッセイは、例えば、Current Protocols in Immunology、Coliganら(編)、Greene Pub. Assoc. & WILey-Interscience、NY、NY(1991)(第3章「マウスのリンパ球の機能についてのインビトロアッセイ(In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function)」および第7章「ヒトにおける免疫学的研究(Immunologic studies in Humans)」);Takaiら、(1986) J. Immunol. 137:3494-500;Bertagnolliら、(1990) J. Immunol. 145:1706-12;Bertagnolliら、(1991) Cell. Immunol. 133:327-41;Bertagnolliら、(1992) J. Immunol. 149:3778-83;Bowmanら、(1994) J. Immunol. 152:1756-61に記載されている。サイトカイン生成および/または脾臓細胞、リンパ節細胞または胸腺細胞の増殖に関するアッセイは、例えば、「ポリクローナルT細胞の刺激(Polyclonal T cell stimulation)」KruisbeekおよびShevach(Current Protocols in Immunology、Vol.1 Coliganら(編)、pp.3.12.1-14、John WILey and Sons、Toronto(1994));および「マウスおよびヒトのインターフェロンガンマの測定(Measurement of mouse and human Interferon gamma)」Schreiber, R. D. (Current Protocols in Immunology、Vol. 1 Coliganら(編)、pp.6.8.1-8、John Wiley and Sons、Toronto (1994))に記載されている。
【0089】
造血細胞およびリンパ球産生細胞の増殖および分化に関するアッセイは、例えば、「ヒトおよびマウスのインターロイキン2およびインターロイキン4の測定(Measurement of Human and Murine Interleukin 2 and Interleukin 4)」Bottomlyら(Current Protocols in Immunology、Vol.1 Coliganら(編)pp.6.3.1-12、John Wiley and Sons、Toronto(1991));de Vriesら、(1991) J. Exp. Med. 173:1205-11;Moreauら、(1988) Nature 336:690-92;Greenbergerら、(1983) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:2931-38;「マウスおよびヒトのインターロイキン6の測定(Measurement of mouse and human interleukin 6)」Nordan, R.(Current Protocols in Immunology、Vol.1 Coliganら(編)、pp.6.6.1-5、John Wiley and Sons、Toronto (1991));Smithら、(1986) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83:1857-61;「ヒトのインターロイキン11の測定(Measurement of human Interleukin 11)」Bennettら(Current Protocols in Immunology、Vol.1 Coliganら(編)、p.6.15.1、John Wiley and Sons、Toronto (1991));「マウスおよびヒトのインターロイキン9の測定(Measurement of mouse and human Interleukin 9)」Ciarlettaら(Current Protocols in Immunology、Vol.1. Coliganら(編)、p.6.13.1、John Wiley and Sons、Toronto (1991))に記載されている。
【0090】
抗原に対するT細胞クローンの反応に関するアッセイ(とりわけ、増殖およびサイトカイン生成を測定することによる直接的なT細胞の影響と同様、APCとT細胞の相互作用に影響を与えるタンパク質を同定するであろう)は、例えば、Current Protocols in Immunology、Coliganら(編)Greene Pub. Assoc.およびWiley-Interscience、NY、NY(1991)(第3章「マウスのリンパ球の機能についてのインビトロアッセイ(In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function)」;第6章「サイトカインおよびそれらの細胞受容体(Cytokines and their cellular receptors)」;および第7章「ヒトにおける免疫学的研究(Immunologic studies in Humans)」);Weinbergerら、(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 77:6091-95;Weinbergerら、(1981) Eur. J. Immunol. 11:405-11;Takaiら、(1986) J. Immunol. 137:3494-500;Takaiら、(1988) J. Immunol. 140:508-12に記載されたものを含む。
【0091】
(IL−21とIL−21Rの相互作用の測定のためのアッセイ)
IL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを検出および/または測定する方法は、当技術分野において周知である。例えば、サイトカインとそのレセプター間でのこのような相互作用は、ELISA、ウエスタンブロット法、免疫沈降、ビアコア(Biacore)による分析等の技術を使用して(ただしこれらに限定されない)検出および/または測定され得る。
【0092】
(医薬組成物)
一つの局面において、本発明は、IL−21に関連した障害、すなわち、線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防する方法によって特徴づけられる。該方法は、例えばIL−21/IL−21Rアンタゴニスト等、被検体におけるIL−21および/またはIL−21Rの活性レベルを減少させる薬剤(例えば、抗IL−21R抗体、抗IL−21抗体、抗IL−21R抗体の抗原結合性フラグメント、抗IL−21抗体の抗原結合性フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメント(例えば、配列番号2の第1番目〜第538番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第538番目のアミノ酸、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第1番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第529番目のアミノ酸、配列番号5の第20番目〜第529番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第236番目のアミノ酸および配列番号5の第20番目〜第236番目のアミノ酸からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列))を、細胞またはその集団におけるIL−21の活性を阻害するのに十分な量だけ、細胞の集団に接触させる(例えば、線維症または線維症に関連した障害にかかっている、またはその危険性のある検体に投与することによって)工程を含み得る。
【0093】
線維症または線維症に関連した状態を治療するためのIL−21/IL−21Rアンタゴニストは、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わされた場合、医薬組成物として使用され得る。このような組成物は、IL−21/IL−21Rアンタゴニストおよびキャリアに加え、多様な希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、および当技術分野において周知のその他の材料を含有し得る。用語「薬学的に受容可能」とは、活性成分の生物活性の有効性を妨げない非毒性の材料を意味する。キャリアの特性は投与経路に依存し、一般的に当技術分野において周知である。
本発明の医薬組成物は、リポソームの形態であり得、この中において、IL−21/IL−21Rアンタゴニストは、他の薬学的に受容可能なキャリアに加え、脂質等の両親媒性薬剤と組み合わされ、これらは、水溶液内に存在するミセル、不溶性単分子層、液晶、またはラメラ層等の集合形態として存在する。リポソーム製剤用の適切な脂質には、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リソレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸等が含まれるが、これらに限定されない。このようなリポソーム製剤の調製は、当業者の実施レベルの範囲内にあり、例えば、米国特許番号4,235,871、4,501,728、4,837,028および4,737,323に開示されており、これらの全てが、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0094】
本明細書において使用される用語「治療上有効量」とは、例えば、このような状態に関する、症状の改善または減少、予防、治癒、または治癒の割合の増加等、重要な被検体の利益を示すのに十分な、医薬組成物または方法における各活性成分の総量を意味する。単独で投与される個々の活性成分に適用される場合、この用語は、その成分のみのことを言う。組合せに適用される場合、この用語は、併用、連続投与、同時投与の別を問わず、結果として治療効果を示すことになる、複数の活性成分の量を組み合わせたものを言う。
本発明の治療方法または使用を実施する際、治療上有効量のIL−21/IL−21Rアンタゴニストが、例えば哺乳動物(例えばヒト)等の被検体に投与される。IL−21/IL−21Rアンタゴニストは、本発明の方法のみに従って、または、本明細書により詳細に述べられるその他の治療法と組み合わせて投与され得る。1つ以上の薬剤と共に投与される場合、IL−21および/またはIL−21Rアンタゴニストは、第2薬剤と同時に、または連続して投与され得る。連続投与の場合、IL−21/IL−21Rアンタゴニストをその他の薬剤と組み合わせて投与する際の適切な順番を、担当医が決定することとなる。
【0095】
本発明の医薬組成物において使用されるIL−21/IL−21Rアンタゴニストの投与、または本発明の方法の実施は、例えば、経口摂取、吸入、あるいは、皮膚注射、皮下注射または静脈内注射等の多様な従来の方法によって行われ得る。被検体への静脈内投与が時には好ましい。治療上有効量のIL−21/IL−21Rアゴニストまたはアンタゴニストが経口投与される場合、結合剤は、錠剤、カプセル、粉末、溶液またはエリキシル剤の形態をとる。錠剤の形態で投与される場合、本発明の医薬組成物は、ゼラチンまたはアジュバント等の固体キャリアを更に含有し得る。錠剤、カプセルおよび粉末は、約5〜95%の結合剤、好ましくは約25〜90%の結合剤を含有する。液体の形態で投与される場合、水;石油;ピーナッツ油(但し集団におけるピーナッツアレルギーの頻度に留意)、鉱物油、大豆油、またはゴマ油等の動物または植物由来の油;または合成油などの液体キャリアが添加され得る。医薬組成物の液体形態は、生理食塩水、デキストロースまたはその他の糖類溶液、あるいはエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール等のグリコール類を更に含有し得る。液体形態で投与される場合、医薬組成物は、約0.5〜90wt%の結合剤、好ましくは約1〜50wt%の結合剤を含有する。
【0096】
治療上有効量のIL−21/IL−21Rアンタゴニストが静脈内注射、皮膚注射または皮下注射によって投与される場合、結合剤は、ピロゲンのない、非経口的に受容可能な水溶液の形態をとるであろう。このような非経口的に受容可能なタンパク質溶液を、pH、等張性、安定性等に十分配慮しつつ調製することは、当分野の技術の範囲内である。静脈内注射、皮膚注射または皮下注射のための好ましい医薬組成物は、結合剤に加え、塩化ナトリウム注射液、リンガー液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、乳酸リンガー液、またはその他の当技術分野において知られているビヒクル等の等張性ビヒクルを含有するべきである。本発明の医薬組成物はまた、安定剤、防腐剤、緩衝液、酸化防止剤、または当業者に知られているその他の添加剤を含有し得る。
本発明の医薬組成物におけるIL−21/IL−21Rアンタゴニストの量は、治療される状態の性質および重症度、および被検体が受けた前治療の性質に依存するであろう。最終的に、個々の被検体を治療するために用いる結合剤の量は、担当医が決定することになる。はじめに、担当医は、少量の結合剤を投与し、被検体の反応を観察する。被検体にとって最適な治療効果が得られるまで、より多量の結合剤が投与され得、その時点で、用量は一般的にそれ以上増やされない。本発明の方法を実施するために使用される多様な医薬組成物は、体重1kg当たり約0.1μg〜約100mgのIL−21/IL−21Rアンタゴニストを含有するべきであると考えられる。
【0097】
本発明の医薬組成物を使用する静脈内療法の期間は、治療される疾患の重症度、および、各被検体の状態および潜在的な特異的反応によって異なる。IL−21/IL−21Rアンタゴニストの各適用の期間については、12〜24時間の範囲の連続静脈内(i.v.)投与であり得ると考えられる。また、本発明の医薬組成物を使用する皮下(s.c.)注射療法も考えられる。これらの療法は、毎日、毎週、または、より好ましくは隔週または毎月投与され得る。また、IL−21/IL−21Rアンタゴニストが小分子である場合(例えば経口デリバリーのために)、これらの療法は毎日、1日に2回、1日に3回等の頻度で投与され得ると考えられる。最終的に、本発明の医薬組成物を使用する静脈内(i.v.)または皮下(s.c.)療法、あるいは小分子を用いた療法の適切な期間、および療法の投与のタイミングは、担当医が決定することになる。
本発明のポリヌクレオチドおよびタンパク質は、以下に同定される、1つ以上の使用または生物活性(本明細書に引用されたアッセイに関連するものを含む)を提示することが予期される。本発明のタンパク質、抗体またはポリヌクレオチドについて記載された使用または活性は、このようなタンパク質または抗体の投与または使用によって、あるいは、このようなタンパク質または抗体をコードするポリヌクレオチドの投与または使用によって提供され得る(例えば、DNAの導入に適した遺伝子療法またはベクターにおいて)。
【0098】
(併用療法)
一つの実施形態において、少なくとも1つのIL−21R/IL−21アンタゴニスト(例えばIL−21R/IL−21抗体)と、少なくとも1つの治療薬剤と、を含む医薬組成物が、併用療法において投与される。このような療法は、例えば免疫および/または炎症性障害等の病的状態または障害を治療するために有用である。これに関し、用語「併用」とは、アンタゴニスト組成物および治療薬剤が、同時または連続であるを問わず、実質的に同時期に与えられることを意味する。連続して与えられる場合、2つの化合物のうちの第2化合物の投与開始時に、治療部位において、第1化合物がまだ有効濃度で検出可能であり得る。
例えば、併用療法は、少なくとも1つの更なる治療薬剤と共に処方され、および/または共に投与される少なくとも1つのIL−21R/IL−21アンタゴニストを含み得る。更なる薬剤には、少なくとも1つのサイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性薬剤または細胞増殖抑制剤が含まれ得、以下により詳しく記載される。このような併用療法は、より少ない量の投与治療薬剤を有利に利用し得るので、多様な単剤療法に関連した毒性または合併症の可能性が避けられる。更に、本明細書に開示された治療薬剤は、IL−21/IL−21R経路と異なる経路に作用し得るので、IL−21R/IL−21アンタゴニストの効果を高める、および/または相乗作用を与えることが予期される。
【0099】
IL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせて使用される治療薬剤は、自己免疫およびその後の炎症反応における異なる段階において妨げる薬剤であり得る。一つの実施形態において、少なくとも1つの本明細書に記載されたIL−21R/IL−21アンタゴニストが、少なくとも1つのサイトカインおよび/または成長因子アンタゴニストと共に処方され、および/または共に投与され得る。サイトカインおよび/または成長因子アンタゴニストは、可溶性レセプター、ペプチド阻害剤、小分子、リガンド融合、抗体(サイトカインまたは成長因子、またはそのレセプター、またはその他の細胞表面分子を結合する)および「抗炎症サイトカイン」、それらのアゴニストを含み得る。
【0100】
本明細書に記載されたIL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせて使用され得る薬剤の限定されない例としては、少なくとも1つのインターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18おおびIL−22等)のアンタゴニスト;サイトカイン(例えば、TNFα、LT、EMAP−IIおよびGM−CSF等);または成長因子(例えば、FGFおよびPDGF等)が含まれるが、これらに限定されない。薬剤はまた、インターロイキン、サイトカインおよび成長因子に対する少なくとも1つのレセプターのアンタゴニストも含み得るが、これらに限定されない。IL−21R/IL−21アンタゴニストはまた、例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD20(例えば、CD20阻害剤のリツキシマブ(RITUXAN(登録商標)))、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90、またはCD154(gp39またはCD40L)を含むそれらのリガンド、あるいはLFA−1/ICAM−1およびVLA−4/VCAM−1等の細胞表面分子に対する抗体の阻害剤と組み合わせ得る(Yusuf-Makagiansarら、(2002) Med. Res. Rev. 22:146-67)。本明細書に記載されたIL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせて使用され得るその他の化合物は、IL−1、IL−12、TNFα、IL−15、IL−17、IL−18およびIL−22のレセプターのアンタゴニストを含み得る。
【0101】
IL−21R/IL−21アンタゴニストとの併用療法において有用な薬剤の例は、IL−12アンタゴニスト(IL−12を結合する抗体等(例えば国際公開第WO00/56772号参照);IL−12レセプター阻害剤(IL−12レセプターに対する抗体等);および可溶性IL−12レセプター、およびそれらのフラグメントを含む。IL−15アンタゴニストの例は、IL−15に対する抗体またはそのレセプター、IL−15レセプターの可溶性フラグメント、およびIL−15結合タンパク質を含む。IL−18アンタゴニストの例は、IL−18に対する抗体、IL−18レセプター可溶性フラグメント、およびIL−18結合タンパク質を含む(IL−18BP、Mallatら、(2001) Circ. Res. 89:E41-45)。IL−1アンタゴニストの例は、インターロイキン−1変換酵素(ICE)阻害剤(Vx740等)、IL−1アンタゴニスト(IL−1RA(アナキンラ(KINERET(登録商標))等、アムジェン社)、sIL−1RII(イムネックス社)、および抗IL−1レセプター抗体を含む。
【0102】
TNFアンタゴニストの例は、D2E7(ヒト抗TNFα抗体、米国特許番号6,258,562、HUMIRA(登録商標)、アボット・ラボラトリーズ社)等のTNFに対する抗体(ヒトTNFα等);CDP−571/CDP−870/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体、セルテック社/ファルマシア社);cA2(キメラ抗TNFα抗体、REMICADE(登録商標)、セントコア社);および抗TNF抗体フラグメント(CPD870等)を含む。その他の例は、p55 kdTNFR−IgG(55kD TNFレセプター−IgG融合タンパク質、LENERCEPT(登録商標))および75 kdTNFR−IgG(75kD TNFレセプター−IgG融合タンパク質、ENBREL(登録商標)(エタネルセプト、イムネックス社))等の可溶性TNFレセプター(ヒトp55またはp75等)のフラグメントおよび誘導体を含む。例えば、van der Pollら、(1997) Blood. 89:3727-34;およびMoriら、(1996) J. Immunol. 157:3178-82参照。更なる例は、α−スルホニルヒドロキサム酸誘導体(国際公開第WO01/55112号)またはN−ヒドロキシホルムアミド阻害剤(GW3333、−005または−022、グラクソ・スミスクライン社)およびTNF−bp/s−TNFR(可溶性TNF結合タンパク質、例えば、Lantzら、(1991) J Clin Invest. 88:2026-31;およびKapadiaら、(1995) Amer. J. Physiol. Heart Circ. Phys. 268:H517-25参照)等の酵素アンタゴニスト(TNFα変換酵素阻害剤(TACE)等)を含む。TNFアンタゴニストは、75kdTNFR−IgGおよびTNFα変換酵素(TACE)阻害剤等の可溶性TNFレセプター(例えばヒトp55またはp75等)のフラグメントおよび誘導体であり得る。
【0103】
その他の実施形態において、本明細書に記載されるIL−21R/IL−21アンタゴニストは、以下のうちの少なくとも1つと組み合わせて投与され得る:可溶性IL−13レセプターおよび/または抗IL−13抗体等のIL−13アンタゴニスト;および、IL−2融合タンパク質(例えばSeragen社製のDAB486−IL−2および/またはDAB389−IL−2、Sewellら、(1993) Arthritis Rheum. 36:1223-33等参照)および抗IL−2R抗体(例えば抗Tac(ヒト化抗体、プロテイン・デザイン・ラブ社、Junghansら、(1990) Cancer Res. 50:1495-502参照)等のIL−2アンタゴニスト。別の組合せは、IDEC−CE9.1/SB210396(抗CD4抗体、グラクソ・スミスクライン社)等の非除去(nondepleting)抗CD4阻害剤とIL−21R/IL−21アンタゴニストとの組合せを含む。更にその他の組合せは、IL−21R/IL−21アンタゴニストと、CD80(B7.1)およびCD86(B7.2)共刺激経路アンタゴニスト(抗体、可溶性レセプター、またはアンタゴニストリガンド等);P−セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)およびPSGL−1阻害剤(PSGLおよび/またはPSGL−1に対する抗体、および小分子阻害剤等);T細胞およびB細胞除去剤(抗CD4または抗CD22抗体等)、および抗炎症サイトカインおよびそのアゴニスト(抗体等)を含む。抗炎症サイトカインは、IL−4(例えばシェリング・プラウ バイオファーマ);IL−10(例えばSCH52000、組み替えIL−10、シェリング・プラウ バイオファーマ);IL−11;IL−13;およびTGFβまたはそのアゴニスト(例えばアゴニスト抗体)を含み得る。
【0104】
その他の実施形態において、少なくとも1つのIL−21R/IL−21アンタゴニストが、少なくとも1つの抗炎症剤、免疫抑制剤、代謝阻害剤、および酵素阻害剤と共に処方、および/または共に投与され得る。本明細書に記載されるIL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせて使用され得る薬物または阻害剤の限定されない例は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)(アスピリン、サルサレート、ジフルニサル、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、ピロキシカム、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ケトロラック、オキサプロジン、テニダップ、メロキシカム、ピロキシカム、アセクロフェナク、トルメチン、チアプロフェン酸、ニメスリド等を含むが、これらに限定されない);スルファサラジン;コルチコステロイド(プレドニゾロン等);サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID);ヌクレオチド生合成の阻害剤(プリン生合成の阻害剤等(例えばメトトレキサート等の葉酸アンタゴニスト等));および、例えばレフルノミド等のジヒドロオロト酸脱水素酵素(DHODH)阻害剤等のピリミジン生合成の阻害剤のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない(例えばKraanら、(2004) Ann. Rheum. Dis. 63:1056-61参照)。IL−21/IL−21Rアンタゴニストと組み合わせて使用するための治療薬剤は、1つ以上のNSAID、CSAID、DHODH阻害剤(レフルノミド等)、および葉酸アンタゴニスト(メトトレキサート等)を含み得る。
【0105】
IL−21/IL−21Rアンタゴニストと組み合わせて使用され得る更なる薬剤の例は、コルチコステロイド(経口、吸入および局注);免疫抑制剤(シクロスポリンおよびタクロリムス(FK−506)等);mTOR阻害剤(例えばCCI−779等のエステルラパマイシン誘導体等、シロリムス(ラパマイシン)またはラパマイシンのアナログおよび/または誘導体等(Elit (2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1249-53;およびHuangら、(2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3:295-304等参照));TNFαおよびIL−1等の炎症性サイトカインのシグナル伝達を妨げる薬剤(例えばIRAK、NIK、IKK、p38またはMAPキナーゼ阻害剤);TPL−2、Mk−2およびNFκb阻害剤;COX−2阻害剤(例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ等、およびそれらの改変体等);ホスホジエステラーゼ阻害剤(ロリプラム等);ホスホリパーゼ阻害剤(例えばトリフルオロメチルケトンアナログ等、細胞質型ホスホリパーゼ2(cPLA2)の阻害剤等(米国特許番号6,350,892));血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の阻害剤;VEGFレセプターの阻害剤;血管形成の阻害剤;RAGEおよび可溶性RAGE;エストロゲンレセプターβ(ERB)アゴニスト、ERB−NFκbアンタゴニスト;インターフェロンβ(例えばIFNβ−1aおよびIFNβ−1b);コパクソン;およびコルチコステロイドのうちの少なくとも1つを含む。
【0106】
IL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせ得るその他の有用な治療薬剤は、以下を含む:ブデノシド(budenoside);上皮成長因子;アミノサリチル酸塩;6−メルカプトプリン;アザチオプリン;メトロニダゾール;リポキシゲナーゼ阻害剤;メサラミン;オルサラジン;バルサラジド;酸化防止剤;トロンボキサン阻害剤;成長因子;エラスターゼ阻害剤;ピリジニル−イミダゾール化合物;グルクロニドまたはデキストランが結合されたプレドニゾロンのプロドラッグ;デクサメタゾンまたはブデソニド;ICAM−1アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS2302;アイシス・ファーマシューティカルズ社);可溶性補体レセプター1(TP10;ティーセルサイエンス社);徐放性メサラジン;血小板活性化因子(PAF)のアンタゴニスト;シプロフロキサシン;リグノカイン;シクロスポリンA;ヒドロキシクロロキン(PLAQUENIL(登録商標));ミノサイクリン(MINOCIN(登録商標));およびアナキンラ(KINERET(登録商標))。
本発明のIL−21/IL−21Rアンタゴニストと組み合わせて投与するための特定の治療薬剤の選択は、特定の被検体、所望の標的、および選択された治療の長さ等の要因に大きく依存するであろう。このような決定は、十分に当業者の技術および知識の範囲内である。
【0107】
IL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせ得る治療薬剤の更なる例は、以下のうちの1つ以上を含む:6−メルカプトプリン(6−MP);アザチオプリン;スルファサラジン;メサラジン;オルサラジン;クロロキン;ヒドロキシクロロキン(PLAQUENIL(登録商標));ペンシルアミン(pencilamine);オーロチオルナレート(aurothiornalate)(筋肉内および経口);アザチオプリン;コルヒチン;β−2アドレナリンレセプターアゴニスト(サルブタモール、テルブタリン、サルメテロール);キサンチン(テオフィリン、アミノフィリン);クロモグリク酸;ネドクロミル;ケトチフェン; イプラトロピウムおよびオキシトロピウム;ミコフェノール酸モフェチル;アデノシンアゴニスト;抗血栓剤;補体阻害剤;およびアドレナリン作動薬。
一つの実施形態において、IL−21R/IL−21アンタゴニストは、免疫反応の調節に関与する他の標的に向けられた1つ以上の抗体と組み合わせて使用され得る。本発明のIL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせ得る、免疫反応を治療または予防するための薬剤の限定されない例は、以下を含む:その他の細胞表面分子に対する抗体であって、CD25(インターロイキン−2レセプター−a)、CD11a(LFA−1)、CD54(ICAM−1)、CD4、CD45、CD28、CTLA4、ICOSL、ICOS、CD80(B7.1)および/またはCD86(B7.2)を含むがこれらに限定されない。更に別の実施形態において、IL−21R/IL−21アンタゴニストは、シクロスポリンAまたはFK506等、1つ以上の一般的な免疫抑制剤と組み合わせて使用される。別の実施形態において、IL−21/IL−21Rアンタゴニストは、CTLA4アゴニスト(例えばCTLA4 Ig−アバタセプト(ORENCIA(登録商標))等)と組み合わせて使用される。
【0108】
本出願全体を通じて引用されている全ての引例、特許、および公開された特許出願の内容全体は、引用することにより本明細書の一部をなす。
以下の実施例は、例示的な本発明の実施形態を提供し、決して本発明を限定するものではない。当業者であれば、本発明の範囲に、その他の多数の実施形態が包含されることを認識するであろう。
実施例
【実施例1】
【0109】
(材料および方法)
(実施例1.1:マウス、寄生虫病および抗原の調製)
メスまたはオスのC57BL/6マウス、C57BL/6/Ai−IL−10KO/IL−4KOマウスおよびC57BL/6Ai−IL−10KO/IL−12KOマウスが、タコニック社(ニューヨーク州ジャーマンタウン)から入手された(Hoffmannら、(1999) J. Immunol. 163:927-938)。C57BL/6バックグラウンドのIL−21R-/-マウスのつがいが、ハーバード大学公衆衛生学部(マサチューセッツ州ボストン)で飼育されている繁殖コロニーから入手された(Kasaianら、(2002) Immunity 16:559-69)。全てのマウスは、国立衛生研究所における特定の無菌の状態下、実験動物管理認定協会に認可された施設内で飼育された。NIAID動物管理使用委員会は、全ての実験手順を認可した。先に述べた通り、マンソン住血吸虫卵を、感染したマウス(バイオ医療研究所、メリーランド州ロックビル)の肝臓から抽出した(Wynnら、(1995) Nature 376:594-96)。同期原発性肺肉芽腫の誘導のため、5000個の卵をマウスに静脈内(i.v.)投与した。第二次肉芽腫の誘導のため、マウスを、腹腔内(i.p.)において5000個の生きた卵で感作し、次に、静脈内(i.v.)において5000個の生きた卵でチャレンジした(Wynnら、(1994) J. Exp. Med. 179:551-61)。感染実験において、感染したカタツムリ(Biomphalaria glabrata、バイオ医療研究所、メリーランド州ロックビル)から得られたマンソン住血吸虫(NMRI)のプエルトリコ株の25〜30匹のセルカリアを用いて、マウスを尾から経皮的に感染させた。先に述べた通り、可溶性の卵抗原(SEA)および可溶性虫抗原性製剤(SWAP)は、マンソン住血吸虫卵および寄生成虫から精製および均質化されたものであった(Cheeverら、(1994) J. Immunol. 153:753-59)。他所に記載されるように(同上)、蠕虫および組織の卵の負担が測定できるように、全ての動物に、犠牲にされる際にかん流を適用した。先に述べられたように、腸管寄生線虫(Nippostrongylus brasiliensis)の幼虫(L3)が調製された(Katonaら、(1983) J. Immunol. 130:350-56)。マウスには、500個のL3を皮下注射によって接種した。接種後7日目に、サイトカイン分析のために、肺の組織および縦隔リンパ節を回収した。
【0110】
(実施例1.2:組織病理および線維症)
ライト・ギムザ染色で染色した組織切片において、肺肉芽腫および肝肉芽腫の大きさを測定した(ヒストパス・オブ・アメリカ、メリーランド州クリントン)。全ての分析において、マウス1匹当たり約30個の肉芽腫が含まれた。熟練の病理学者が、同じ切片における好酸球、肥満細胞およびその他のタイプの細胞のパーセンテージを評価した。ヒドロキシプロリンのレベルによって測定された、肝臓および消化管における住血吸虫卵の数、および肝臓におけるコラーゲンの含有量が、先に述べられたように測定された(Cheeverら、既出)。具体的には、5mlの6N HCl内で200mgの肝臓の一部を110℃で18時間加水分解した後に、Bergman & Loxley法の技術によって、ヒドロキシプロリンを基に肝臓のコラーゲンを測定した(BergmanおよびLoxley (1963) Analytical Biochem. 35:1961-65)。肝臓のヒドロキシプロリンの増加は、全ての実験において卵の数と正の相関を示し、肝臓のコラーゲンは、正常な肝臓のコラーゲンよりも10,000個の卵当たりのミクロモル単位での増加として報告される:(感染した肝臓のコラーゲン−正常な肝臓のコラーゲン)/肝臓の卵×10-4または蠕虫の対当たりのミクロモル単位。遅い慢性の時点において、線維症は、肝臓当たりの総肝臓コラーゲン量として報告される。同じ個体が、全ての組織学的特徴でスコアし、実験的設計の知識は有さなかった。
【0111】
(実施例1.3:FACS分析)
肺全体を取り出し、RPMI内に配置した。70ミクロンのナイロンメッシュ(BDファルコン社、カリフォルニア州サンディエゴ)を通して引っ張ることにより、組織をバラバラにした。単一細胞懸濁液を洗浄し、RBCを、ACK溶菌液で3分間インキュベートすることによって溶解した。肺のリンパ球を、FACS緩衝液内で4℃で15分間、PE−Cy5で標識した抗CD4およびFc Blockを共に使用して標識した(どちらの抗体もBDファーミンゲン社製、カリフォルニア州サンディエゴ)。洗浄後、FLOWJO(登録商標)ソフトウエアを使用して、FACS Caliburで細胞を分析した(ツリースター社、オレゴン州アッシュランド)。
【0112】
(実施例1.4:sIL−21R−Fcを使用したIL−21ブロッキング実験)
30〜35匹のマンソン住血吸虫のセルカリアを用いて、C57BL/6マウス(10匹/グループ)を、尾から経皮的に感染させた。感染後6週目から、mIL−21R−Fc(ワイス・リサーチ)または抗コクシジウム(E.tenella)マウスIgG2a制御抗体(ワイス・リサーチ)を使用して、マウスを治療した。各マウスに、1回200μgの用量を、腹腔内注射により週3回、5週にわたって投与した。感染後12週でマウスを犠牲にし、ヒドロキシプロリンアッセイにより、肝線維症を測定した。
【0113】
(実施例1.5:リンパ球の培養および酵素免疫測定法(ELISA)を用いたサイトカイン検出)
脾臓および腸間膜のリンパ節(感染モデル)または肺関連リンパ節(肺のモデル)を無菌状態で除去し、先に述べた通りに単一細胞懸濁液を調製した(Hesseら、(2000) Am. J. Pathol. 157:945-55)。5%CO2の湿気のある環境において、培養物を37℃でインキュベートした。SEA(20μg/ml)、SWAP(50μg/ml)、コンカナバリンA(Con A;1μg/ml)、または培地のみを使用して、細胞を刺激した。72時間で上清液を採取し、サイトカイン生成物のアッセイを行った。先に記載したように(同上)、対を成す抗体(BDファーミンゲン社製、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して、サンドイッチELISA法により、IFN−γ、IL−5およびIL−10を測定した。組み換えマウスサイトカイン(BDファーミンゲン社製、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して構築された標準曲線を用いて、サイトカインのレベルを算出した。製造業者のプロトコルに従い、マウスIL−13 ELISAキット(R&Dシステムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)を使用して、IL−13のレベルを測定した。製造業者のプロトコルに従い、マウスTGF−β1 DUOSET(登録商標)ELISAディベロップメントシステム(R&Dシステムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)を使用して、TGF−β1のレベルを定量化した。ウシ由来のTGF−β1の混入を避けるため、細胞をPBS内で3回洗浄し、0.5%マウス血清を含有する培地内で培養した。
【0114】
(実施例1.6:RNAの単離および精製、およびリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応)
1ml TRIZOL(登録商標)試薬(インビトロジェン社、カリフォルニア州カールスバッド)内に個々に配置された肺および肝臓の組織試料から、RNA全部を抽出した。ティッシュポリトロン(tissue polytron、オムニインターナショナル社、ジョージア州マリエッタ)を使用して、試料を均質化し、製造業者の推奨に従ってRNA全部を抽出し、キアゲンのRNEASY(登録商標)ミニキット(キアゲンサイエンス社、メリーランド州ジャーマンタウン)を使用して更に精製した。個々の試料RNA(1μg)を、SUPERSCRIPT II(登録商標)(インビトロジェン社、カリフォルニア州カールスバッド)、およびオリゴ(dT)とランダムプライマーの混合物を使用して逆転写した。ABI PRISM(登録商標)7900配列検出システム(アプライドバイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティ)で、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を行った。SYBR(登録商標)Green PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティ)を使用し、ABI PRISM(登録商標)7700/7900配列検出システム(アプライドバイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティ)に関してアプライドバイオシステムズ社が述べている相対閾値サイクル法によって、いくつかの遺伝子についてのmRNAの相対量を測定した。この方法において、各試料のmRNAレベルを、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼのmRNAレベルまで標準化し、次に、感染していないコントロールにおけるレベルと比較して、相対的に増加しているか減少しているかを表した。プライマーは、PRIMER EXPRESS(登録商標)ソフトウエア(アプライドバイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティ)を使用して設計した。IL−13、IL−4、IL−10、HPRT(Hesseら、(2001) J. Immunol 167:6533-44)、IL−13Rα2(Chiaramonteら、(2003) J. Exp. Med. 197:687-701)、Ym1、FIZZ1および酸性キチナーゼ(AMCase)(Sandlerら、既出)に対するプライマーは、以前に公開されており、以下を含む:
【0115】
IL−21
5' GCCAG ATCGC CTCCT GATTA 3'(センス)(配列番号28);
5' CATGC TCACA GTGCC CCTTT 3'(アンチセンス)(配列番号29);
IL−21R
5' CTCCC CCCTT GAACG TGACT 3'(センス)(配列番号30);
5' TTGCC CCTCA GCACG TAGTT 3'(アンチセンス)(配列番号31);
IFN−γ
5' AGAGC CAGAT TATCT CTTTC TACCT CAG 3'(センス)(配列番号32);
5' CCTTT TTCGC CTTGC TGTTG 3'(アンチセンス)(配列番号33)
【0116】
(実施例1.7:血清抗体イソタイプ分析および骨髄由来のマクロファージ)
製造業者のプロトコルに従って、BD OPTEIA(登録商標)マウスIgE ELISAセット(BD Biosciences Pharmingen社製、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して総IgEを測定した。間接的なELISA方式により、SEA特異的IgGlおよびIgG2bアイソタイプ特異的抗体(Ab)の力価を評価した。IMMULON(登録商標)の4つのプレート(サーモ・ラブシステムズ社、マサチューセッツ州ビバリー)を、PBS内で希釈した10μg/ml SEA(100μl/ウェル)でコートし、連続2倍希釈を使用して、血清試料を分析した。ビオチン−ウサギ抗マウスIgGl(Zymed社、カリフォルニア州サンフランシスコ)は、1:1000の希釈で使用した。続いて、ぺロキシダーゼで標識したストレプトアビジン(KPL社、メリーランド州ゲーサーズバーグ)の基質酵素を1:1000の希釈で使用した。第2段階セイヨウワサビぺロキシダーゼが結合されたウサギ抗マウスIgG2b(Zymed社、カリフォルニア州サンフランシスコ)Abを、1:1000の希釈で使用した。100μl一成分ABTSぺロキシダーゼ基質(KPL社、メリーランド州ゲーサーズバーグ)を添加後、VMAX(登録商標)カイネチックマイクロプレートリーダー(モレキュラー・ディバイシーズ社)を使用して、ウェル中の吸光度を405nmで読み取った。
【0117】
メスのC57BL/6マウスから骨髄を回収し、補充DMEM培地(L929で調節された培地)を含有するペトリ皿(100×15mm)で、6日間培養した。6日後、細胞を採取し、補充DMEM培地(10% FBS、2mM L−グルタミン、100U/mL ペニシリンおよび100μg/mL ストレプトマイシン)を含有する24ウェルプレート内に、0.5×lO6細胞/ウェルの濃度で植え付けた。細胞は、IL−4、IL−13およびIL−21(R&D社、ミネソタ州ミネアポリス)で20時間刺激した。いくつかのアッセイにおいて、細胞をIL−21で前処理した。細胞を溶解し、RNEASY(登録商標)キット(キアゲンサイエンス社、メリーランド州ジャーマンタウン)を用いたRNAクリーンアップ手順を使用して、RNAを精製した。
【0118】
(実施例1.8:アルギナーゼ活性分析)
96ウェル組織培養プレートにおいて、骨髄由来マクロファージをウェル当たり6×105個平板培養し、IL−4、IL−13およびIL−21の組合せで刺激した。IL−4またはIL−13による刺激の6時間前に、IL−21を加えた。刺激に続き、細胞をPBSで洗浄し、プロテアーゼ阻害剤を含有する0.1% Triton X−100(ロッシュ社、ニュージャージー州ナトリー)で溶解した。溶解物を96ウェルPCRプレートに移し、10mM MnCl2および50mM Tris HCl(pH7.5)を用いてインキュベートし、55℃で10分間、酵素を活性化した。酵素活性化後、25μlの溶解物を除去し、新しいPCRプレート内の25μl 1M アルギニン(pH9.7)に加え、37℃で20時間インキュベートした。5μlの各試料を対で、5μlの各標準液と共に、96ウェルELISAプレートに加え、100mg/dLでスタートして、同じアッセイ条件で希釈した。製造業者のプロトコルに従って、QUANTICHROM(登録商標)尿素アッセイキット(バイオアッセイ・システムズ社、カリフォルニア州ヘイワード)の尿素測定試薬を使用した。
【0119】
(実施例1.9:統計)
肝線維症(卵の数を調節)は、感染(蠕虫の対)の強度が高まると共に減少する。従って、共変量としての肝臓における卵の総数の対数、および卵当たりのヒドロキシプロリン含有量の対数を使用して、共分散分析によって、これらの変数を比較した。感染の強度によって変化しなかった変数は、ワンウェイANOVAまたはスチューデントのt検定によって比較した(Cheeverら、既出)。ANOVAを使用して、サイトカインmRNA発現および肉芽腫の大きさの変化を評価した。p<0.05*、p<0.01**またはp<0.001***の場合に、差が有意なものであると考えた。
【実施例2】
【0120】
(タイプ1およびタイプ2の極性化反応中のIL−21およびIL−21Rの調節)
IL−21レセプターの調節および機能をインビボで調べるために、線虫症の実験モデルに加え、肺および肝臓の炎症のモデルを含むTH2に依存した炎症のいくつかの異なる実験系を調べた(Pearceら、既出;Wynnら、(1994)、既出)。各場合において、野生型(WT)動物の免疫反応を、IL−21R欠損マウスと比較した(Hoffmanら、既出;Kasaianら、(2002)、既出)。
IL−21に比べ(Wursterら、(2002)、既出;Mehtaら、(2004) Immunol. Rev. 202:84-95)、IL−21レセプターの調節および機能はについてはほとんど知られていない。インビボでの病的TH2反応中に、IL−21およびそのレセプターが調節されるかどうかを測定するために、肉芽腫形成のマンソン住血吸虫モデルを使用した。このモデルにおいて、TH2サイトカインが損傷形成において顕著な役割を果たすことが知られている(PearceおよびMacDonald、既出)。最初の研究は、IL−21およびIL−21RのmRNA発現が、インビボでの極性化TH2サイトカイン反応と関連するかどうかを測定するために設計された。マンソン住血吸虫卵に暴露した後に、非常に悪化したTH1(IL−4-/-/IL−10-/-)またはTH2(IL−12-/-/IL−10-/-)サイトカイン反応が進行するマウスを使用して、この研究を達成した。IL−4-/-/IL−10-/-「TH1」マウスについては、肺において、IFN−γのmRNA発現がチャレンジ後4日目でベースラインの75倍増加し、バックグラウンドの約50倍を14日目まで維持した(図16A)。IL−13のmRNAは、どの時点においてもこれらのマウスにおいて検出できなかった。このことは、高度に極性化されたTH1炎症反応の確立を立証している。一方、IL−12-/-/IL−10-/-「TH2」マウスは、チャレンジ後すべての時点においてIL−13のmRNAの200〜250倍の増加を示したが、IFN−γについてはほとんど、あるいはまったく変化しなかった。高度に極性化されたパターンの発現を示したTH1/TH2サイトカインとは対照的に、IL−21は、極性化された表現型とは関連しなかった(図16B)。両グループにおいて、住血吸虫卵によるチャレンジ後、IL−21のmRNAレベルは、ベースラインの少なくとも50倍増加したが、TH1極性化マウスにおいて観察された増加は、TH2極性化動物に比べて平均で3〜4倍であった(図16B、下のパネル)。IL−21Rも、TH1またはTH2免疫反応と特に関連はしなかった。しかし、TH1非対称の動物においてより顕著であったIL−21とは対照的に、IL−21Rへの最大の反応は、TH2極性化マウスにおいて観察された(図16B、上のパネル)。
【実施例3】
【0121】
(住血吸虫卵に対する一次反応中、IL−21R欠損マウスの肺において、タイプ2サイトカイン生成が減少した)
住血吸虫卵でチャレンジしたマウスにおけるIL−21R発現の有意な増加にかんがみ(図16)、次の一連の実験では、IL−21Rのシグナル伝達がTH2反応の進行に影響を与えるかどうかを調べた。これらの実験において、未処理のWTマウスおよびIL−21R-/-マウスに、生きている住血吸虫卵を静脈注射し、その後14日間にわたり、TH2サイトカインおよびTH2が調節された遺伝子の生成を、肺、脾臓および排出するリンパ節においてモニターした。WTマウスにおいては、卵への暴露後、IL−21RのmRNA発現が急速に増加し、14日目まで増加をし続けた(図17A)。IL−21は類似のプロフィールを示し、発現のピークが7日目に起こり、その後わずかに減少した。特に、IL−21R-/-マウスは、7日目と14日目にIL−21の発現の一貫して非常に有意な減少を示した。このことは、IL−21Rが、自らのリガンドの発現に好ましい影響を与えていることを示唆している。以前の観察(Wynnら、(1993) J. Immunol. 151:1430-40;およびVellaおよびPearce (1992) J. Immunol. 148:2283-88)と一致して、TH2関連サイトカインIL−4およびIL−13の発現は、WTマウスの肉芽腫組織内において徐々に増加し、5〜15倍の増加が14日目まで検出可能であった。一方、IL−21R-/-の組織においては、IL−4およびIL−13のmRNA発現の顕著で有意な減少が見られた。WTマウスにおいては、チャレンジ後4〜14日目の間、IFN−γおよびIL−10のmRNAにおける変化はほとんど検出されなかったが、IL−21R-/-動物においては、IFN−γおよびIL−10の生成もわずかに減少した。このように、IL−21R-/-マウスにおいて観察されたTH2反応の減少は、TH1サイトカイン生成の増加と関連しなかった。TH2サイトカインの減少も、肉芽腫組織に特異的なものであった。なぜならば、可溶性卵抗原(SEA)またはマイトジェンによるインビトロでの刺激後、リンパ節および脾細胞の培養物において、有意なTH2サイトカイン生成が観察されたからである(図17B)。実際、SEAは、IL−21R-/-マウスから調製されたリンパ節の培養物において、より強いIL−5、IL−10およびIL−13の反応を一貫して刺激した。しかし、肺におけるTH2反応の減少と一致して、IL−21R-/-動物において、肉芽腫形成のより迅速な分解が観察された(図17C)。加えて、Stat6活性化または「代わりに活性化されたマクロファージ」(AAMo)に関連するいくつかの遺伝子において、顕著な減少が見られた(Nairら、(2005) Infect. Immun. 73:385-94;Zhuら、(2004) Science 304:1678-82;Chiaramonteら、(2003)、既出;およびGordon, S. (2003) Nat. Rev. Immunol. 3:23-35)。これは、IL−21R-/-マウスにおけるTH2エフェクター反応の全体的な減少についての更なる証拠を提供している(図17D)。
【実施例4】
【0122】
(N・ブラシリエンシス(N.brasiliensis)感染後、IL−21R-/-マウスにおいてTH2反応が減少した)
TH2エフェクター反応の減少が、マンソン住血吸虫による肺肉芽腫の形成に特異的なものであるかどうかを測定するために、WTマウスおよびIL−21R-/-マウスを、腸内線虫、N・ブラシリエンシスで感染させた。3令幼虫(L3)を皮膚下に接種することにより、感染が確立した。それらは、成長した寄生虫として、接種部位から移動し、循環器系を経由して肺に入る。一旦肺の中に入ると、寄生虫は活発で高度に極性化されたTH2反応を引き起こす(Urbanら、(1993) J. Immunol. 151:7086-94)。これは、肺(図18A)および肺に関連したリンパ節(図18B)におけるいくつかのTH2関連遺伝子の発現を分析することにより確認された。WTマウスの肺およびリンパ節は、N・ブラシリエンシスによる感染後、IL−4、IL−13、AMCase、FIZZ1/RELM1α、およびYm1のmRNA発現において顕著な増加を示した(図18Aおよび18B)。しかし、肺肉芽腫モデルと一致して、IL−4、IL−13およびAMCaseの有意なレベルの減少が観察されると共に、IL−21R-/-マウスの肺において、Ym1およびFIZZ1のmRNAのレベルはわずかに減少した(図18A)。排出するリンパ節は、類似の減少を示したが、Ym1およびFIZZ1における減少は、リンパ節においてより有意であった(図18B)。2つの組織における唯一の他の主な相違点は、AMCaseのmRNAの反応であり、これが肺に限定されたようであった。これらのデータは共に、インビボでのTH2反応の進行におけるIL−21Rの重要な役割を立証するものである。しかし、顕著なことは、TH2反応が顕著に弱まったにもかかわらず、N・ブラシリエンシスに感染したIL−21R-/-マウスは、寄生虫の成虫の排出における有意な遅延を示さなかったことである(図示されず)。
【実施例5】
【0123】
(IL−21R-/-マウスの肺においてタイプ2サイトカイン主導の炎症が減少する)
次の一連の実験は、IL−21Rが、二次TH2反応の進行を調節するかどうかを測定するために設計された。これらの実験のために、WTマウスおよびIL−21R-/-マウスをマンソン住血吸虫卵で感作し、2週間後に静脈内でチャレンジした。予期されたように、感作したマウスは、強固な肉芽腫性の反応を進行させ、それは一次チャレンジを行った動物(図17C)に比べて4〜5倍であった(図19C)。一次モデルにおいて観察されたように、卵への暴露後、肺においてIL−21およびIL−21RのmRNAが有意に増加したが、二次チャレンジ中においては、IL−21の反応のピークはより早かった。IL−21と比較した場合、IL−21Rはやや増加したのみであったが、両時点において有意に増加し続けた。一方で、IL−21のmRNAレベルは、4日目にピークに達した後で減少した(図19A)。このように、組織において、リガンドがより厳しく調節されるという証拠が見られた。また、IL−21R-/-マウスにおいて、IL−21の発現の顕著な減少が見られ、レセプターとそのリガンドの間における強力なフィードバックのメカニズムを立証している。TH2関連サイトカインの中で、IL−13が最も強力な反応を示し、WTマウスにおいて、ベースラインの50〜100倍の増加を示した。しかし、IL−21R-/-マウスにおいては、バックグラウンドの10〜20倍まで減少した。このことは、二次TH2反応を最大限に進行させるためにはIL−21Rが必要であることを実証している。再び、IL−21R-/-マウスにおけるTH2サイトカイン発現の減少は、IFN−γにおける有意な増加を伴わなかった。実際、IL−21R-/-マウスの肺において、IFN−γのmRNA発現が減少した。しかし、ノックアウトマウスでは、リンパ節および脾臓において、IFN−γ生成が控えめではあるが一貫して増加した。このことは、TH2サイトカイン全体のより強い阻害を示唆している(図19B)。卵による一次チャレンジモデルに一致して、TH2およびTH1サイトカイン生成の減少は、肉芽腫性組織においてより顕著に示されたが(図19A)、脾臓においては、SEAに誘導されるTH2反応も部分的に減少した(図19B)。二次肉芽腫性炎症の大幅な減少は、肺におけるより弱いTH2反応の進行に一致していた(図19C)。加えて、FIZZ1、Ym1およびAMCaseの発現が顕著に減少した(図19D)。このことは、IL−21R-/-マウスにおける二次TH2エフェクター反応の有意な減少を更に立証している。
【実施例6】
【0124】
(感染したIL−21R欠損マウスにおいて、IgG抗体、肉芽腫形成およびタイプ2サイトカインは実質的に減少する)
次に、慢性的なTH2主導の反応を維持するためにIL−21のシグナル伝達が必要であるかどうかを測定するために、動物に対し、マンソン住血吸虫のセルカリアを経皮的に暴露し、感染後の急性の時点および慢性の時点両方における病的反応および免疫反応を分析した。肺肉芽腫の研究において観察されたように、感染したWTマウスの肝臓において、IL−21RおよびIL−21のmRNA発現における顕著な上方調節が見られた。一方、IL−21R-/-マウスにおいては、慢性感染後であっても、IL−21のmRNAはほとんど検出できなかった(図20A)。感染後の急性段階においては、IL−21R-/-マウスもTH2サイトカインのmRNA発現において顕著な減少を示した(図20A)。しかし、やはり、変化は肉芽腫性組織に限定されていた。なぜならば、寄生虫の抗原を用いたインビトロでの刺激後、両グループにおいて、リンパ節および脾細胞の反応が類似していたからである(図20B)。インビトロアッセイにおいて留意された唯一の一貫した相違点は、脾細胞の培養物において、IL−5およびIL−10の生成が2〜3倍減少したことである。IL−21R-/-マウスも、感染後の急性段階において有意により小さな肉芽腫を形成し(図20C)、これは、肝臓におけるIL−4およびIL−13のmRNA反応の減少と一貫していた(図20A)。しかしこれは、肉芽腫における好酸球のパーセンテージにおけるいかなる明白な変化をも伴わなかった(図20C)。損傷のより詳しい顕微分析は、肉芽腫の組成物全体において、検出可能な変化はなかったことを立証した(図21A)。また、IL−21R欠損が肉芽腫性組織へのCD4+T細胞の漸増に特異的に影響を与えたかどうかを測定するためにも実験が行われた。この問題に取り組むに当たり、炎症細胞の漸増を同調させるために、肺肉芽腫モデルを使用した。しかし、肝臓の肉芽腫の微視的評価と一致して(図21A)、卵への暴露前、暴露後どちらにおいても、肺におけるCD4+T細胞のパーセンテージは、WTマウスとIL−21R-/-マウスで同様であった(図21B)。このように、CD4+T細胞の漸増または展開における変化は、組織内で観察されたThl/Th2サイトカイン反応の減少の説明になっているとは考えられない。それよりはむしろ、全体的な炎症反応におけるより総体的な減少の結果であると思われる。重要なことに、両グループにおいて、感染後第12週目までに肉芽腫性反応が効果的に下方調節された(PearceおよびMacDonald、既出)。その結果として、慢性的時点において、肉芽腫の大きさにおける有意な相違は無かった(図20C)。慢性的に感染させたノックアウトマウスにおいて、TH2サイトカイン反応における最小限の弱まりが観察された(図20A)。急性段階に観察されたFIZZ1およびYm1の顕著な減少も、慢性的に感染させたIL−21R-/-動物において減少していた(図20D)。それにもかかわらず、AMCaseの発現レベルは第12週目において顕著な低さを維持した。このことは、慢性的に感染させたIL−21R-/-マウスにおいて、TH2主導の反応の少なくともサブセットが、減少を持続したことを示唆している。
【0125】
また、IL−21R-/-マウスについて、血清抗体のレベルにおける変化を調べた(図22)。抑制されたサイトカイン反応と一致して(図20A)、IL−21R-/-マウスは、寄生虫に特異的なIgG1(TH2関連抗体)およびIgG2b(TH1関連抗体)の力価において顕著な減少を示し、これは、慢性的時点において維持された(図22B)。しかし、興味深いことに、これにはIgEにおけるいかなる有意な変化も伴わず(図22C)、血清抗体アイソタイプのサブセットのみにおける選択的な弱まりを示唆している。外因性のIL−21は、IgE生成を阻害することが示されてきており(Sutoら、(2002) Blood 100:4565-73)、これにより、慢性的に感染させたIL−21R-/-マウスにおけるIgEの僅かな上昇の説明がつくかも知れない。重要なことに、IL−21R-/-マウスにおけるタイプ2の反応性の全体的な減少は、寄生虫の負担における相違に起因しなかった。なぜならば、両グループの組織において、全ての時点で、類似の数の卵および対の寄生虫の成虫が見られたからである(図22A)。
【実施例7】
【0126】
(IL−21R欠損が肝線維症の進行を遅らせる)
TH2サイトカインが組織の線維成長において主要な役割を果たすと考えられているので(Wynn (2004)、既出)、次に、マンソン住血吸虫で感染させたIL−21R-/-マウスにおける肝線維症の発生および進行を調べた。組織のコラーゲン含有量を直接的な測定として、様々な時点において、肝臓のヒドロキシプロリンのレベルをアッセイした。予期されたように、感染させたWTマウスにおいて、顕著な肝線維症が観察された(図22D)。一方、IL−21R-/-マウスは、急性時点、慢性時点の両方において有意により少ない線維症を示した。とりわけ、感染後第29週目までに、IL−21R-/-マウスは、肝臓コラーゲン総含有量がWTマウスに比較して50%を超える減少を示した(図22E)。このように、TH2に依存する線維症の進行における、IL−21Rの重要で不可欠な役割が立証されている。
【0127】
IL−21阻害剤が、感染させたWTマウスにおける線維症の進行を遅らせることができるかどうかを調べるために、実験が行われた。これらの実験のために、C57BL/6マウスのグループが、全部で5週間の間sIL−21R−Fcまたはコントロールタンパク質で処理され、卵が初めて肝臓で検出される頃である、感染後第6週目に開始した。両グループ共、寄生虫および卵の組織での負担が類似であったが(データは示されず)、IL−21阻害剤を受けているマウスは、実験の終了において、肝線維症における50%を超える減少を示した(図22F)。IL−4およびIL−13のmRNA発現も肝臓において減少し、肉芽腫の大きさは、約15%減少した(データは示されず)。このように、これらのデータは、IL−21R-/-マウスで行った実験を補足するものである。
【実施例8】
【0128】
(IL−21シグナル伝達は、代わりに活性化されるマクロファージの発達を促進する)
Arg−1、FIZZ1およびTGF−β1が線維症の発達と関連しており、IL−21R-/-マウスの病気の組織において、TH2/Stat6に調節されたいくつかの遺伝子の発現が減少した(図17−20)(Gordonら、既出;およびNairら、既出も参照)ので、IL−21での刺激に続き、Arg−1、FIZZ1およびTGF−β1がマクロファージ内において直接的に調節されたかどうかを測定するために、実験を行った。Arg−1およびFIZZ1はまた、代わりに活性化されるマクロファージ(AAMo)の周知のマーカーである(Gordon、既出)。これらの研究のために、骨髄由来のマクロファージ培養物(BMMo)を産生し、次にIL−4、IL−13およびIL−21の種々の組合せによって刺激した。予期されたように、IL−4およびIL−13の両方が、Arg−1およびFIZZ1のmRNA発現を増加させた上に、二つの刺激を組み合わせて使用した場合、付加的な効果が観察された(図23A)。しかし留意すべきは、IL−21を単独で用いた場合には、IL−21はどちらの遺伝子に対しても効果がなかったが、その後にIL−4およびIL−13で刺激した場合、IL−21で前処理した培養物は、Arg−1およびFIZZ1のmRNA発現における高度に有意な増加を示した(図23A)。同じ組合せはまた、細胞におけるアルギナーゼの機能を有意に増加させた(図23B)。一方、IL−21は、培養上清において、総TGF−β1および活性TGF−β1のレベルに影響を与えなかった(図24)。予期しなかったことには、IL−21処理のみで、IL−4RαおよびIL−13Rα1の発現が有意に増加した(図23C)。一方、IL−4およびIL−13は、単独で用いた場合には効果がなく(図23C)、3つの刺激が組み合わせて使用された場合にも、追加的な効果はなかった(示されず)。
【0129】
IL−13Rα2は、IL−13依存のシグナル伝達にも影響を与え得るので(Chiaramonteら、(2003)、既出;Mentink-Kaneら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101:586-90;およびWoodら、(2003) J. Exp. Med. 197:703-09)、IL−21がIL−13Rα2の生成を調節するのかどうかを調べるために、実験を行った。驚くことではないが、IL−13Rα2は、主として線維芽細胞および平滑筋等の非造血細胞によって生成されるので(Chiaramonteら、(2003)、既出;Jakubzickら、(2003) Am. J. Pathol. 162:1475-86;Zhengら、(2003) J. Allergy Clin. Immunol. 111:720-28;Morimotoら、(2006) J. Immunol. 176:342-48)、BMMoの培養物においては、おとりレセプターが調節されるという証拠は無かった(データは示されず)。しかし、インビボでおとりレセプターの調節を調べると、IL−21は、静脈内において卵でチャレンジしたマウスの肺におけるIL−13Rα2のmRNA発現を下方調節し、血清における可溶性IL−13Rα2のレベルを有意に減少させた(図23D)。これらのデータをあわせて見ると、マクロファージにおいてタイプ2IL−4レセプター(シグナル伝達レセプター)を上方調節し、同時に、血清において可溶性IL−13Rα2(おとりレセプター)のレベルを減少させることにより、IL−21は、代わりに活性化されるマクロファージの発達に寄与するということを示唆する。恐らく両方のメカニズムが、IL−4/IL−13で刺激されたマクロファージにおけるArg−1およびFIZZ1の活性化の増加に寄与したものと考えられる。このように、蠕虫で感染させたIL−21R-/-マウスにおける弱められたTH2反応およびTH2依存線維症についての、更なる機構上の説明が提供される。
【実施例9】
【0130】
(考察)
最近、IL−21は、ナイーブTH細胞のIFN−γ生成TH1細胞への分化を阻害し得るTH2サイトカインとして特徴付けられた(Wursterら、(2002)、既出)。住血吸虫症における免疫反応は、初期のIFN−γから、持続した優性のTH2反応へと発展するので(PearceおよびMacDonald、既出)、蠕虫に誘導されたTH2反応の発達に対するIL−21Rのシグナル伝達の影響を調べた。マンソン住血吸虫を用いてWTマウスを感染させたところ、肝臓におけるIL−21およびIL−21Rの発現が増加した。このことは、IL−21のシグナル伝達が、蠕虫に誘導されたタイプ2の免疫性に関連することを立証している。しかし、肺においては、住血吸虫卵が、TH1極性化反応およびTH2極性化反応の間、有意なIL−21発現を誘導した。実際、IL−21の発現は、マウスがTH1反応に極性化された時に最も増加した。これらのデータは、他のTH2関連サイトカインに比べ、IL−21の方がより制限されないパターンの発現を示すことを示唆した。IL−21のレセプターもまた、TH1/TH2に特異的なパターンを示すことができなかった。しかし、TH1に極性化されたマウスの場合に比べ、TH2に極性化されたマウスの肺では、ほぼ4倍のIL−21レセプターが誘導された。このことは、IL−21Rのシグナル伝達が、TH2媒介性の炎症の調節に関与するかも知れないことを初めて示すものの一つである。
【0131】
タイプ2エフェクターの反応が、IL−21Rの不在において十分に発揮されなかった(compromised)かどうかを測定するために、TH2に極性化する条件下で好ましく誘導されるいくつかの遺伝子の発現を調べた。これらの遺伝子はAMCase、Ym1、およびFizz1を含み、これらの全てが、TH2媒介性の炎症の調節において、重要で非冗長の役割を果たすと考えられる(Zhuら、既出;Chiaramonteら、(2003)、既出;Nairら、既出;Mentink-Kaneら、既出;Guoら、(2000) J. Biol Chem. 275:8032-37)。一次免疫反応、二次免疫反応または慢性的な免疫反応の間にいくらかの変異が観察されたが、各場合において、IL−21R-/-マウスは、そのTH2関連遺伝子において高度に有意な減少を示した。Ym1およびAMCaseは、下等動物のキチナーゼとの相同性を共有するタンパク質ファミリーのメンバーである(Nairら、既出)。それらの宿主免疫反応における厳密な機能はまだ不確かなままではあるが、好酸球遊走、組織改造および線維症において重要な役割を果たすと考えられる。確かに、最近の研究は、AMCaseの中和がアレルゲン主導の炎症および気道過敏性を改善できることを示し、TH2免疫性における哺乳動物のキチナーゼの関与を立証している(Zhuら、既出)。Fizz1もまた、組織の線維成長に関連している(Mentink-Kaneら、既出;Liuら、(2004) J. Immunol. 173:3425-31)。このため、IL−21Rの主な機能は、創傷治癒および線維症のメカニズムを調節することかも知れない。従って、蠕虫に誘導された免疫反応への関与に加え、IL−21Rは、種々のTH2に誘導された炎症性障害の調節に関与するかも知れない。
【0132】
住血吸虫症において、IL−21Rの欠損は、病気の進行に対して大きな影響を与えた。感染の強度はWTマウスとIL−21R-/-マウスとで同じではあったが、IL−21Rが無い場合に、卵に誘導された炎症性反応は有意に減少した。また、二次肉芽腫形成における顕著な減少および肺における一次肉芽腫のより早い分解も見られた。これらのデータをあわせると、肉芽腫性炎症におけるIL−21Rの不可欠な役割が示されている。以前の研究は、IL−4およびIL−13が損傷形成において必須であることを示した(PearceおよびMacDonald、既出)。このように、IL−21Rは、これらサイトカインの活性に直接的または間接的に影響を与えると考えられている。これらの研究は、IL−4/IL−10ダブルノックアウトマウスにおいて非常に高レベルのIL−21が観察されたので、IL−21が単独では作用しないことを示唆したが、それでも、肉芽腫の形成は、これらのTH2欠損動物においてほぼ完全に除かれた(Hoffmannら、(2000) J. Immunol. 164:6406-16;およびSandlerら、(2003) J. Immunol. 171:3655-67)。このように、IL−21は、IL−4およびIL−13と共同して最大の反応を誘導するものと思われる。本明細書に開示されたデータは、IL−21R-/-マウスの肉芽腫の細胞構成において検出可能な変化は見られず、また、CD4+T細胞の漸増における特異的な弱まりは見られなかったことを示している。これらの知見をあわせると、IL−21Rは、TH2エフェクター反応の全体的な強度を調節することにより、寄生虫に誘導された病状の発達を調節することを示唆した。
【0133】
IL−21Rは、IL−4に誘導されたTH2細胞の分化を直接に調節するとは考えられていない(Sutoら、既出;Wursterら、(2002)、既出)。代わりに、最近の論文において、IL−21が、IFN−γ−生成TH1細胞の発現を下方調節することにより、TH2主導の反応を増幅すると仮定された(Wursterら、(2002)、既出)。こうして、IL−21レセプターが無い場合に、住血吸虫に感染させたマウスにおけるIFN−γ反応は増加するとの理論が立てられている。インビトロでは、肺関連リンパ節において少しの増加が観察されたが、IFN−γの生成は、肉芽腫性組織において一貫して減少した。このように、これらの研究は、蠕虫による感染の間に、内因性IL−21RがIFN−γ生成の阻害において実質的な役割を果たすということを示さなかった。しかし、IL−21R-/-マウスは、組織内でより弱いTH1およびTH2サイトカイン反応を同時に生み出した。感染後全ての時点において、IgG2b(TH1関連)およびIgG1(TH2関連)抗体の力価が有意に減少したことが、この結論を裏付けている。Th2サイトカインも、N・ブラシリエンシスによる感染後に、肺およびリンパ節両方においてmRNAレベルで減少した。確かに、直接的な生体外のデータの全てが、影響を受けた組織内におけるTH2サイトカインの発現および機能における顕著な減少を立証した。しかし、抗原による再刺激後、単離されたリンパ球によってTH2サイトカインの生成が一貫して減少することはなかった。このことは、IL−21R-/-マウスが、少なくともインビトロで、有意なTH2反応を生み出すことができることを示唆している。このように、本明細書に開示されるデータは、IL−21Rが、組織におけるTH2反応を選択的に増加させることを示唆する。TH2反応を促進することに加え、IL−21Rは、IL−21の生成も増加させた。このように、IL−21Rは、インビボでTH2サイトカインの発現およびタイプ2のエフェクター機能を促進させるように、自己分泌の方法で作用すると思われる。
【0134】
関与するメカニズムを更に解明するに当たり、IL−21がマクロファージの機能を直接的に調節するかどうかを測定するために実験を行った。なぜならば、インビボのデータは、「代わりに活性化された」表現型と関連しているいくつかの遺伝子において顕著な減少を示したからである(Gordon、既出;Mantovaniら、(2005) Immunity 23:344-46)。代わりに活性化された表現型を示すマクロファージおよび線維芽細胞は、住血吸虫性肉芽腫の主要な細胞構成要素であり、機能的研究は、病気の進行に決定的に関与することを示唆した(Hesseら、(2001)、既出)。確かに、Brombacherらによる重要な研究は、代わりに活性化されたマクロファージが完全に欠損するマウスにおいて、マンソン住血吸虫での感染後に、卵に誘導された致命的な病状が生じたことを示した(Herbertら、(2004) Immunity 20:623-35)。加えて、IL−13に媒介される線維症のメカニズムにおいて、マクロファージ由来のTGF−β1が関っているので(Leeら、(2001) J. Exp. Med. 194:809-21;およびFichtner-Feiglら、(2006) Nat. Med. 12:99-106)、IL−21がマクロファージにおいてTGF−β1の生成を調節するかどうかを測定するために実験を行った。これらの問題を調べるために、IL−21、IL−4およびIL−13の種々の組合せによる刺激後、骨髄由来のマクロファージにおけるArg−1およびFIZZ1のmRNA、アルギナーゼ活性およびTGF−β1タンパク質の反応を測定した。Arg−1およびFIZZ1は、IL−4Rα/Stat6依存遺伝子である(Liuら、既出;Hesseら、(2001)、既出;Munderら、(1998) J. Immunol. 160:5347-54)。従ってそれらは、代替のマクロファージ活性化の機能的マーカーの役割を果たす。重要なことに、マクロファージは、IL−21に暴露された時に、IL−4およびIL−13のArg−1およびFIZZ1が誘導する活性に対してより感受性が高くなったことを、知見が示唆している。尿素の生成によって評価されたアルギナーゼ活性も有意に増加し、IL−21が、高度に機能的な代わりに活性化されたマクロファージの発達に対する重要な刺激であることを立証した。一方、IL−21は、マクロファージによるTGF−β1生成に対する効果を有さなかった。このように、前線維性(pro-fibrotic)サイトカインTGF−β1は確かに関与しているようであり、このことは、住血吸虫症におけるTGF−β1の役割を調べた以前の研究と一致する(Kaviratneら、(2004) J. Immunol. 173:4020-29)。代わりに、IL−21は、BMMoにおけるIL−4RαおよびIL−13Rα1の発現を有意に増加させ、インビボでの可溶性IL−13おとりレセプター生成を減少させた。このことは、IL−4およびIL−13に対する感受性が高まったことの説明になると思われる。このように、これらのデータは、IL−21R-/-マウスについてのインビボの研究を補足するものであり、IL−21Rシグナル伝達の重要な機能は、線維症のメカニズムに関与しているAAMoの発達を強めることであることを示唆する(Hesseら、(2001)、既出;Hesseら、(2000)、既出)。また、AAMoは、CD4+TH2細胞の分化を増幅することが示されているので(Bonecchiら、(1998) Blood 92:2668-71)、これらのデータは、IL−21R-/-マウスにおける蠕虫に誘導されたTH2活性の全体的な減少の説明にもなり得る。
【0135】
ヒトの住血吸虫症において、繊維性の肝臓の病状の発達は、慢性的な病的状態および死亡の主要な原因である(PearceおよびMacDonald、既出;Wynnら、(2004) Immunol. Rev. 201:156-67)。TH2サイトカイン反応は、コラーゲン沈着において重要な役割を果たすことが知られているので(Wynnら、(2004)、既出)、最終的な一連の実験において、IL−21Rの肝線維症の進行に対する影響を調べた。留意すべきことに、IL−21R-/-マウスにおいて、線維症の発達が有意に減少し、ノックアウト動物は、感染後29週目までに、肝線維症の50%を超える減少を示した。重要なことに、感染させたWTマウスをsIL−21R−Fcで処理した場合にも、類似の発見が得られた。このように、IL−21レセプターは、抗線維性治療の潜在的な新しい標的として明らかになった。結論として、これらの研究は、TH2サイトカインに媒介される病気の進行におけるIL−21Rの必須の役割を例示している。そうであるから、IL−21Rは、タイプ2の免疫性およびマクロファージの極性化を調節する重要なレセプターのリストに加えるべきである。
【実施例10】
【0136】
(予測的治療)
予測的治療について、限定されない一連の例を以下に挙げる。
肝硬変と診断された被検体に、肝臓に線維性組織が蓄積するのを減らすために、IL−21R融合タンパク質を投与する。IL−21R融合タンパク質は、C末端において、リンカー(配列番号17の第236番目〜第243番目のアミノ酸に対応)によって、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc変異配列(配列番号17の第244番目〜第467番目のアミノ酸に対応)と融合した、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸を含む。
住血吸虫による感染と診断された被検体に、線維性組織が蓄積するのを減らすために、可溶性IL−21Rフラグメントを投与する。フラグメントは、配列番号2の第20番目〜第538番目のアミノ酸を含有する。
外科手術後に、創傷治癒の過程中に外科的切開が原因で線維症が蓄積するのを減らすために、被検体にIL−21R抗体を投与する。
肝硬変と診断された被検体に、肝臓に線維性組織が蓄積するのを減らすために、IL−21抗体を投与する。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1は、マウスIL−21R/MU−1の全長cDNA配列を示す。ヌクレオチド配列は、配列番号4の第1番目〜第2628番目のヌクレオチドに対応する。
【図1−2】(図1の続き)
【図2A】図2Aおよび2Bは、マウスおよびヒトIL−21R/MU−1のアミノ酸配列を示す。図2Aは、マウスIL−21R/MU−1のアミノ酸配列を示す(配列番号5の第1番目〜第529番目のアミノ酸に対応)。第1番目〜第19番目のアミノ酸にリーダー配列(10.1のスコアによるSPScanによって予測)がある(ボールド体表示)。予測された膜貫通ドメイン(下線部)が、配列番号5の第237番目〜第253番目のアミノ酸に見られる。予測されたシグナル伝達モチーフは、第265番目〜第274番目のアミノ酸における「ボックス1」モチーフ、および第311番目〜第324番目のアミノ酸における「ボックス2」モチーフを含む(ボールド体および下線部分)。6つのチロシンが、配列番号5の第281番目、第319番目、第361番目、第368番目、第397番目及び第510番目のアミノ酸に位置する。WSXWSモチーフ(配列番号3)は、第214番目〜第218番目のアミノ酸残基に位置する(大文字、ボールド体で表示)。潜在的Statドッキング部位は、配列番号5の第393番目〜第398番目のアミノ酸および第510番目〜第513番目のアミノ酸を含む。図2Bは、ヒトIL−21R/MU−1のアミノ酸配列を示す(配列番号2に対応)。予測されたシグナル配列(配列番号2のおよそ第1番目〜第19番目のアミノ酸);WSXWSモチーフ(配列番号2のおよそ第213番目〜第217番目のアミノ酸);および膜貫通ドメイン(配列番号2のおよそ第236番目〜第252番目(又は第236番目〜第253番目、又は第236番目〜第254番目)のアミノ酸(下線部分))の位置が示されている。潜在的JAK結合部位、ボックス1およびボックス2のシグナル伝達モチーフ、およびStatドッキング部位が、ラベル付きの矢印で示されている。
【図2B】(図2Aの説明を参照)
【0138】
【図3】図3は、ヒトおよびマウスIL−21R/MU−1のcDNA配列(それぞれ配列番号1の第1番目〜第2665番目の核酸および配列番号4の第1番目〜第2628番目の核酸に対応)のGAP配列比較を示す。huMU−1はヒトIL−21R/MU−1を、muRMU−1はマウスIL−21R/MU−1を表す。Gapパラメータ:Gap重量=50;平均マッチ=10.000;長さ重量=3;平均ミスマッチ=0.000;同一性割合=66.116。
【図3−2】(図3の続き)
【図3−3】(図3の続き)
【図3−4】(図3の続き)
【図4】図4は、ヒトIL−21R/MU−1タンパク質(配列番号2のアミノ酸に対応)とマウスIL−21R/MU−1タンパク質(配列番号5のアミノ酸に対応)のGAP比較を示す。アラインメントは、BLOSUM62アミノ酸置換行列によって産生された(HenikoffおよびHenikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:10915-19参照)。Gapパラメータ:Gap重量=8;平均マッチ=2.912;長さ重量=2;平均ミスマッチ=2.003;同一性割パーセント=65.267。
【図5】図5は、ヒトIL−21R/MU−1(配列番号2に対応)、マウスIL−21R/MU−1(配列番号5に対応)、およびヒトIL−2ベータ鎖のアミノ酸(GENBANK(登録商標)受託番号M26062)の複数の配列アラインメントを示す。リーダー配列および膜貫通ドメインに下線が引かれている。保存されたサイトカインレセプターモジュールのモチーフがボールド体で表示されている。潜在的シグナル伝達領域が、下線およびボールド体で示されている。
【0139】
【図6】図6は、IL−21R/MU−1経由のシグナル伝達を示す。IL−21R/MU−1は、EPOで刺激されたクローンE7 EPO IL−21R/MU−1キメラ発現細胞においてStat5をリン酸化する。コントロールまたはキメラBAF−3細胞をIL−3で処理した結果、Stat3がリン酸化されたが、Stat1または5はリン酸化されなかった。
【図7A】図7Aおよび図7Bは、アミノ末端においてミツバチのリーダー配列およびHis6およびFlagタグと融合した成熟ヒトIL−21Rのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。図7Aおよび図7Bに示される融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号10および配列番号11に示される。融合タンパク質の成熟ヒトIL−21Rフラグメントおよびミツバチのリーダー配列/Hisタグのフラグメントのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸および配列番号11の第1番目〜第44番目のアミノ酸に対応する。
【図7B】(図7Aの説明を参照)
【図8A】図8A〜8Cは、C末端において、リンカーによってヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc配列と融合した、ヒトIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。図8A〜8Cに示される融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号12および配列番号13に示される。ヒトIL−21R細胞外ドメイン、リンカー、およびヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc配列のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号13の第236番目〜第243番目のアミノ酸、および配列番号13の第244番目〜第467番目のアミノ酸に対応する。
【図8B】(図8Aの説明を参照)
【図8C】(図8Aの説明を参照)
【0140】
【図9A】図9A〜9Cは、C末端において、リンカーによってヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc配列およびHis6配列タグと融合した、ヒトIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。図9A〜9Cに示される融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号14および配列番号15に示される。ヒトIL−21R細胞外ドメイン、リンカー、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc配列およびHis6配列タグのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号15の第236番目〜第243番目のアミノ酸、配列番号15の第244番目〜第467番目のアミノ酸、および配列番号15の第468番目〜第492番目のアミノ酸に対応する。
【図9B】(図9Aの説明を参照)
【図9C】(図9Aの説明を参照)
【図10A】図10A〜10Cは、C末端において、リンカーによってヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc変異配列と融合した、ヒトIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。ヒトFc配列は、Fc−レセプター結合を減少させるために野生型配列から第254番目及び第257番目の残基が変異されているものである。図10A〜10Cに示される融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号16および配列番号17に示される。ヒトIL−21R細胞外ドメイン、リンカー、およびヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc変異配列のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号17の第236番目〜第243番目のアミノ酸、および配列番号17の第244番目〜第467番目のアミノ酸に対応する。
【図10B】(図10Aの説明を参照)
【図10C】(図10Aの説明を参照)
【0141】
【図11A】図11A〜11Bは、C末端において、ロドプシン配列タグと融合した、ヒトIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。この融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号18および配列番号19に示される。ヒトIL−21R細胞外ドメインのアミノ酸配列は、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸に対応する。
【図11B】(図11Aの説明を参照)
【図12A】図12A〜12Cは、C末端において、EK切断部位および変異IgG1 Fc領域と融合した、ヒトIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。図12A〜12Cに示される融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号20および配列番号21に示される。ヒトIL−21R細胞外ドメイン、およびEK切断部位/変異IgG1 Fc領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸および配列番号21の第236番目〜第470番目のアミノ酸に対応する。
【図12B】(図12Aの説明を参照)
【図12C】(図12Aの説明を参照)
【0142】
【図13A】図13A〜13Bは、C末端において、マウス免疫グロブリンG2a(IgG2a)と融合した、マウスIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号22および配列番号23に示される。
【図13B】(図13Aの説明を参照)
【図14A】図14A〜14Bは、C末端において、FlagおよびHis6配列タグと融合した、マウスIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号24および配列番号25に示される。
【図14B】(図14Aの説明を参照)
【図15A】図15A〜15Bは、N末端において、FlagおよびHis6配列タグと融合した、(ミツバチのリーダー配列)マウスIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号26および配列番号27に示される。
【図15B】(図15Aの説明を参照)
【図16】図16は、高度に極性化されたタイプ1およびタイプ2の免疫応答中のIL−21およびIL−21Rの発現のプロフィールを示す。IL−10/IL−4KO(TH1、Δ)およびIL−10/IL−12KO(TH2、●)のグループの5匹のマウスを、マンソン住血吸虫卵を使用して腹腔内で感作し、14日後に静脈内でチャレンジした。IL−13およびIFN−γ(図16A)、およびIL−21RおよびIL−21(図16B)のリアルタイムRT−PCR分析のために、肺のRNA検体がそれぞれ調製された。遺伝子発現における平均±SEMは、HPRTへの標準化後に、チャレンジしなかった野生型コントロールに比べて何倍増加したかとして表された。星印は、所定の時点におけるグループ間での有意差を示す。*はp<0.05。
【0143】
【図17A】図17は、住血吸虫卵でチャレンジしたIL−21R-/-マウスの肺において、タイプ2のサイトカイン生成が減少することを示す。未処理の野生型マウス(白い棒グラフ)およびIL−21R-/-マウス(黒い棒グラフ)のグループを、生きているマンソン住血吸虫卵を使用して静脈内でチャレンジし、チャレンジ後4、7および14日で犠牲にした。(A)肺の組織からRNAを調製し、それぞれリアルタイムRT−PCRによって分析した(グループ/時点当たりN=5)。結果は、5つの数字を有する大まかなバーによる箱髭図に示されており、分布における中央値、四分位数、最小および最大のパーセンタイル値を示している。バーは(下から上に向かって)、それぞれ試験をした試料の10、25、50、75および90パーセンタイルを示す。星印は、所定の時点における野生型の値との有意差を示し、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である。(B)脾臓(Spl)および肺に関連するリンパ節(LN)をそれぞれプールし(2つの別個のグループ、グループ当たり3〜4匹のマウス)、Con A(CON、1μg/ml)または可溶性卵抗原(SEA、20μg/ml)の存在下で72時間インキュベーションした後、IL−5、IL−10、IL−13およびIFN−γについて、単一細胞懸濁液のアッセイを行った。刺激を行わなかった培養物においては、サイトカインは検出レベルより低かった。(C)肉芽腫の大きさ(体積、mm3×10-3)および肉芽腫における好酸球のパーセンテージを、顕微鏡によって定量化した。(D)肉芽腫性の肺の組織におけるTH2に調節された炎症遺伝子のリアルタイムPCR分析。すべてのデータは、少なくとも2つの別個の実験を代表するものである。
【図17B】(図17Aの説明を参照)
【図17C】(図17Aの説明を参照)
【図17D】(図17Aの説明を参照)
【0144】
【図18A】図18は、N・ブラシリエンシスに感染させたIL−21R-/-マウスにおいて、タイプ2の反応が弱まることを示している。第7日に、N・ブラシリエンシスに感染させた、または未処理のC57BL/6またはIL−21R-/-マウス(5匹/処理グループ)それぞれから、肺(A)および肺に関連したリンパ節(LALN)(B)を除去した。RNAを単離し、図17について述べられている通りに、cDNAを産生した。IL−13、IL−4、AMCase、Ym1およびFIZZ1それぞれについて、リアルタイム定量PCRによってmRNAを分析した。変化(倍)は、感染させたマウスと感染させなかったマウスとの比較に基づく。
【図18B】(図18Aの説明を参照)
【図19A】図19は、IL−21R-/-マウスにおいて、タイプ2サイトカイン主導の炎症が減少することを示している。WTマウス(白い棒グラフ)およびIL−21R-/-マウス(黒い棒グラフ)を、腹腔内において卵で感作し、2週間後に静脈内において生きているマンソン住血吸虫卵でチャレンジし、チャレンジ後第4日および第7日に犠牲にした。(A)肺の組織からRNAを調製し、図17について述べられている通りに、リアルタイムRT−PCRによって個々に分析した(グループ/時点当たりN=5)。(B)抗原(SEA)またはマイトジェンによる刺激(CON)後に、IL−5、IL−10、IL−13およびIFN−γについて、脾臓(Spl)および肺に関連したリンパ節(LN)のアッセイを行った。(C)WTマウス(グループ当たり複数のマウス:N=10、第4日;N=15、第7日)およびIL−21R-/-マウス(N=11、第4日;N=16、第7日)について、肉芽腫の大きさ(mm3×10-3)および肉芽腫における好酸球のパーセンテージを、顕微鏡によって定量化した。(D)肉芽腫性の肺の組織におけるTH2炎症遺伝子のリアルタイムPCR分析(グループ/時点当たりN=5)。星印は、所定の時点における野生型の値との有意差を示し、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である。示されたデータは、3つの別個の実験の結果を総合したものである。
【図19B】(図19Aの説明を参照)
【図19C】(図19Aの説明を参照)
【図19D】(図19Aの説明を参照)
【0145】
【図20A】図20は、経皮的なマンソン住血吸虫への感染後に、IL−21Rが存在しない場合、慢性的な肝疾患が減少することを示している。WTマウス(白い棒グラフ)およびIL−21R-/-マウス(黒い棒グラフ)を、25〜30匹のマンソン住血吸虫セルカリアを用いて感染させた。全ての動物は、感染後第9週(急性)または第12週(慢性)で犠牲にした。(A)肝臓の組織からRNAを単離し、図17について述べられている通りに、リアルタイムRT−PCRによって個々に分析した(グループ/時点当たりN=8〜10)。(B)脾臓(Spl)および腸間膜リンパ節(LN)を、2〜4匹のマウスのグループ内でプールし、IL−5、IL−10およびIFN−γについて、単一細胞懸濁液のアッセイを行った。示されたデータは、3つの別個のプールされたグループの平均である。(C)WTマウス(グループ当たり複数のマウス:第9週においてN=30、第12週においてN=17)およびIL−21R-/-マウス(グループ当たり複数のマウス:第9週においてN=27、第12週においてN=19)について、肉芽腫の大きさ(mm3×10-3)および肉芽腫における好酸球のパーセンテージを、顕微鏡によって評価した。(D)肉芽腫性の肝臓の組織におけるTH2炎症遺伝子のリアルタイムPCR分析(グループ/時点当たりN=8〜10)。示されたデータは、第9週に行われた1つの実験と、第12週に行われた2つの実験、計3つの別個の実験結果を総合したものである。星印は、所定の時点における野生型の値との有意差を示し、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である。
【図20B】(図20Aの説明を参照)
【図20C】(図20Aの説明を参照)
【図20D】(図20Aの説明を参照)
【0146】
【図21A】図21は、肉芽腫の細胞構成が、IL−21Rの欠損によって変化しないことを示している。(A)9週間感染させたWT(N=10)マウスおよびIL−21R-/-(N=9)マウスの肝臓における、肉芽腫の細胞構成が評価された。小リンパ球(Sm Lym)、大リンパ球(Lg Lym)、マクロファージ(Mac)、線維芽細胞(Fibro)、好酸球(Eos)、および肥満細胞(Mc)の平均±SEMが示される。(B)未処理のWTマウスおよびIL−21R-/-マウスの潅流させた肺からリンパ球を単離し(上のパネル)、第7日に、マンソン住血吸虫の5000個の卵を用いて静脈内でチャレンジを行った(下のパネル)。ヒストグラム中の数は、肺の総リンパ球数におけるCD4-およびCD4+T細胞のパーセンテージを示す。
【図21B】(図21Aの説明を参照)
【図22A】図22は、IL−21Rの欠損が、TH2サイトカイン依存線維症の進行を有意に遅らせることを示す。WTマウス(白い棒グラフ)およびIL−21R-/-マウス(黒い棒グラフ)を、マンソン住血吸虫のセルカリアを用いて感染させた。動物は、感染後第9週(急性)、第12週(慢性)(パネルA〜D)、または第29週(遅い慢性)(パネルE)に犠牲にした。(A)各グループについて、千単位±SEにおける平均的な蠕虫対数、総蠕虫数および蠕虫1対当たりの卵数が示されている。どの実験においても、感染強度の差は見られなかった(n=マウスの数)。(B)犠牲の際にマウスの血を抜き取り、SEAアイソタイプ特異的Abの力価をELIZAによって測定した。(C)総血清IgE量(μg/ml)。(D〜F)卵10,000個当たり(パネルD)、または肝臓全体当たり(パネルEおよびF)の、肝臓において検出されたヒドロキシプロリンの量(単位:ミクロモル)によって、線維症を評価した。パネルFにおいて、感染させたWT C57BL/6マウスを、IgG2aコントロール抗体(cIg−白い棒グラフ)またはsIL−21R−Fc(黒い棒グラフ)のどちらかで6週間処理した。星印は、所定の時点における野生型の値との有意差を示し、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である。
【図22B】(図22Aの説明を参照)
【図22C】(図22Aの説明を参照)
【図22D】(図22Aの説明を参照)
【図22E】(図22Aの説明を参照)
【図22F】(図22Aの説明を参照)
【0147】
【図23A】図23は、IL−21のシグナル伝達が、IL−13レセプターの発現を調節することにより、代わりのマクロファージの活性化を促進することを示す。骨髄由来のマクロファージが、IL−4(20ng/ml)、IL−13(20ng/ml)およびIL−21(20ng/ml)の種々の組合せで一晩処理された。IL−4、IL−13およびIL−21で処理されたマクロファージを、IL−4およびIL−13を投与する前に、IL−21で6時間前処理した。細胞を20時間後に溶解し、リアルタイムRT−PCRによってRNAを個々に分析した。(A)Arg−1およびFIZZ1の遺伝子発現を測定することにより、IL−21が代わりのマクロファージの活性化を促進する能力を評価した。(B)L−アルギニンから尿素への変換を測定することにより、細胞溶解物中のアルギナーゼ活性を定量化した(mg/dL±SEM、3重測定)。(C)IL−4RαおよびIL−13Rα1のmRNAの発現を、リアルタイムPCRによって評価した。全ての条件において、IL−13Rα2のmRNAはほとんど検出不可能であった(示されず)。パネルA、BおよびCに示されるデータは、3つの別個の実験を代表するものである。(D)5000個の生きているマンソン住血吸虫卵を用いて、未処理のC57BL/6マウスに静脈内でチャレンジし、第1日から第6日まで、一日おきにPBSまたはrIL−21(2μg/投与量)で処理した。動物(グループ当たり5匹)は第7日に犠牲にし、リアルタイムPCRによって肺のIL−13Rα2 mRNAのレベルのアッセイを行い、未処理のコントロール(白い棒グラフ)より何倍増加したかを示した。また、犠牲の際にマウスの血を抜き取り、ELISAによって、個々の血清試料中のsIL−13Rα2の量のアッセイを行った。星印は有意差を示し、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である。
【図23B】(図23Aの説明を参照)
【図23C】(図23Aの説明を参照)
【図23D】(図23Aの説明を参照)
【図24】図24は、代わりに活性化されたマクロファージが、有意な量の活性TGF−β1を生成しないことを示す。右のパネルは、マクロファージ活性後の活性TGF−β1を示し、左のパネルは、マクロファージ活性後の総TGF−β1レベルを示す。骨髄由来のマクロファージを、IL−4(20ng/ml)、IL−13(20ng/ml)およびIL−21(20ng/ml)の種々の組合せで一晩処理した。IL−4、IL−13およびIL−21で処理されたマクロファージは、IL−4およびIL−13を投与する前に、IL−21で6時間前処理された。活性化後20時間で、ELIZAによって上清のアッセイを行い、総TGF−β1および活性TGF−β1を調べた。IL−21のみで処理された細胞を除き(左のパネルの「IL−21」と「未処理」とを比較のこと)、全てのグループにおいて高レベルの総TGF−β1が検出された(例えば、左のパネルの「IL−4」と「未処理」とを比較のこと)。総TGF−β1発現は高かったが、全てのグループにおいて活性TGF−β1は最小限であった(右のパネル)。示されたデータは、類似の結果であった3つの別個の実験を代表するものである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願においては、2005年4月14日に出願された米国仮出願第60/671,374号に対して優先権を主張し、その全体を引用することによって、本明細書の一部となす。
(発明の技術分野)
本発明は、線維症および線維症に関連した状態を治療および予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連する背景技術)
任意の器官の傷害は、一般的に、血小板に誘導された止血を伴う生理学的反応を引き起こし、続いて、炎症細胞および活性化された線維芽細胞の流入が起こる。これらの細胞型によって生成されたサイトカインは、新しい細胞外マトリックスおよび血管の形成を促進し、これらが集まって肉芽組織を形成する。線維組織の形成は、傷害の後の通常の有益な治癒の過程の一部である。しかし、線維症は、多様な組織の構造および機能を変えてしまう、傷害または炎症の後のコラーゲンマトリックスの異常な蓄積によって特徴づけられる状態である。腎臓、肝臓、肺、心臓、硬骨、骨髄および皮膚における進行性の線維症は、死亡の主な原因、または誘因となっている。
線維組織の増殖に関連した多くの病気が慢性的でしばしば衰弱させるものであり、例えば、強皮症などの皮膚疾患が含まれる。肺線維症を含めたいくつかは命にかかわるものであり得る。これは、現在の治療が重大な副作用を有し、一般的に線維症の進行を遅らせる、または食い止めるのに効果的ではないということも一因となっている。従って、新しい抗線維化薬剤への絶え間ないニーズがある。
【0003】
IL−21レセプター(IL−21R)は、クラスIサイトカインレセプターファミリーの中の新たに発見されたメンバーである(Parrish-Novakら、(2000) Nature 408:57-63;およびOzakiら、(2000) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97:11439-44参照)。IL−21レセプターは、IL−4レセプターα鎖(IL−4Rα)との配列および構造における有意な相同性を示し、ヒトおよびマウスのゲノムにおいてIL−4Rαに隣接する。一方、そのリガンドであるIL−21は、サイトカインIL−2、IL−4およびIL−15と有意な相同性を示す(Sivakumarら、(2004) Immunology 112:177-82;およびHabibら、(2003) J. Allergy Clin. Immunol. 112:1033-45参照)。このように、IL−21およびIL−21Rは、ガンマ鎖(γc)の機能的シグナル伝達を必要とするサイトカインおよびレセプターとの相同性により、γcに依存するサイトカインネットワークのメンバーとして新たに述べられているものである(VosshenrichおよびDi Santo (2001) Curr. Biol. 11:R175-77参照)。γcネットワークのメンバー全てが、宿主免疫において重要で独特な役割を示していることから、インビボでの抗原に誘発された免疫反応中におけるIL−21Rの新しい機能を詳しく調べることへの関心が高まってきている。
【0004】
IL−21の機能を調べた初期研究は、IL−21によって、NK細胞の膨張が中和される一方で、抗腫瘍免疫を含む抗原特異的なT細胞免疫が促進されることを示した(Maら、(2003) J. Immunol. 171:608-15;Kishidaら、(2003) Mol. Ther. 8:552-58;およびDi Carloら、(2004) J. Immunol. 172:1540-47参照)。研究の成果は、IL−21が、先天性免疫反応と適応的免疫反応との間の橋渡し的な役割を果たすことを示唆するものである(Collinsら、(2003) Immunol. Res. 28:131-40参照)。IL−21はまた、インビボでB細胞およびCD8+T細胞の機能を調節する(Ozakiら、(2002) Science 298:1630-34;Sutoら、(2002) Blood 100:4565-73;Mehtaら、(2003) J. Immunol. 170:4111-18;Peneら、(2004) J. Immunol. 172:5154-57;Jinら、(2004) J. Immunol. 173:657-65;およびZengら、(2005) J. Exp. Med. 201:139-48参照)。更なる研究は、IL−21が、ナイーブTH細胞がIFN−γ−分泌TH1細胞に分化するのを阻害し得るTH2サイトカインであることを示唆している(Wursterら、(2002) J. Exp. Med. 196:969-77参照)。実際に、IL−21による外部処理は、他のTH1/TH2に関連したサイトカインに影響を及ぼすことなくIFN−γの生成を強く阻害し、IL−21によるIFN−γの抑制が非常に特異的であることを示唆した。このように、そのTH1細胞の発達を抑制する能力により、IL−21はTH2反応を促進し得ると仮定された(Wursterら、既出)。にもかかわらず、TH2に依存するいかなる障害においても、TH2反応の発達へのIL−21Rシグナル伝達経路の関与についてはこれまで調査されなかった。
【0005】
住血吸虫症において、TH2サイトカインは、病気の発症において不可欠の役割を果たす(Wynn (2004) Nat. Rev. Immunol. 4:583-594;PearceおよびMacDonald (2002) Nat. Rev. Immunol. 2:499-511参照)。実際、IL−4/IL−13、IL−4RαおよびStat6が欠損したマウスすべてが、マンソン住血吸虫による感染後に、著しく障害のある肉芽腫の形成および肝線維症を示す(Chiaramonteら、(1999) J. Clin. Invest. 104:777-85;Kaplanら、(1998) J. Immunol. 160:1850-56;Jankovicら、(1999) J. Immunol. 163:337-42;およびFallonら、(2000) J. Immunol. 164:2585-91参照)。IL−21をTH2サイトカインとする最近の分類(Wursterら、(2002)、既出;およびMehtaら、(2005) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102:2016-21)、IL−4レセプターとIL−21レセプターの間の著しい類似性(Sivakumarら、既出;およびHabibら、既出)、そして、他のTH2サイトカイン主導の炎症性疾患の場合と同様、この疾患においても関連するIL−4Rα/Stat6シグナル伝達経路が重大な役割を果たすこと(Wynn (2003) Annu. Rev. Immunol. 21:425-56)を考えると、これらの研究から出てきた重要な疑問点は、IL−21Rのシグナル伝達が、TH2免疫の開始および/または維持において有意な役割を果たすかどうかということであった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防する方法、およびそれらの方法において有用な化合物および組成物をスクリーニングする方法を提供する。本発明はまた、線維症および/または線維症に関連した状態の経過(例えば治療過程)を診断、予知およびモニタリングする方法を提供する。これらの方法は、IL−21および/またはIL−21Rのレベル(すなわち、IL−21および/またはIL−21Rの活性レベル、IL−21および/またはIL−21Rの発現レベル(例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物のレベル)、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベル)を測定および/または調節することに関連付けられる。本発明は更に、線維症および/または線維症に関連した状態を治療するためのIL−21またはIL−21Rのアンタゴニストを提供する。
【0007】
一つの実施形態において、本発明は、被検体(例えばヒト)におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルを減少させる治療上有効量の薬剤を該被検体に投与する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防する方法を提供する。更なる実施形態において、該薬剤は、抗IL−21R抗体、抗IL−21抗体、抗IL−21R抗体の抗原結合性フラグメント、抗IL−21抗体の抗原結合性フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメントからなる群より選択されるIL−21/IL−21Rアンタゴニストである。別の更なる実施形態において、該薬剤は、IL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントは、配列番号2の第1番目〜第538番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第538番目のアミノ酸、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第1番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第529番目のアミノ酸、配列番号5の第20番目〜第529番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第236番目のアミノ酸および配列番号5の第20番目〜第236番目のアミノ酸からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、該IL−21Rの可溶性フラグメントは、IL−21ポリペプチドに結合する。
【0008】
別の実施形態において、該薬剤は、IL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントは、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25または配列番号27に示されるアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、該IL−21Rの可溶性フラグメントのアミノ酸配列は、配列番号11または配列番号13に示されるアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、該薬剤は、IL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントは、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24または配列番号26に示される核酸配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列によってコードされる。別の実施形態において、該IL−21Rの可溶性フラグメントは、配列番号12または配列番号16に示される核酸配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0009】
別の実施形態において、該薬剤は、IL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントは、IL−21Rの細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFcフラグメントを含む。更なる実施形態において、該IL−21Rの細胞外ドメインのアミノ酸配列は、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸または配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、該免疫グロブリンFcフラグメントは、機能変化(an altered function)を有する。別の更なる実施形態において、該免疫グロブリンFcフラグメントは、配列番号17の第244番目〜第467番目のアミノ酸のアミノ酸配列を有する。
別の実施形態において、該線維症または線維症に関連した障害は、肝臓、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、小腸、胆管または胃に影響を与える。更なる実施形態において、該線維症または線維症に関連した障害は、間質性肺線維症である。別の実施形態において、該線維症または線維症に関連した障害は、住血吸虫による感染の結果である。別の実施形態において、該線維症または線維症に関連した障害は、創傷治癒の結果である。更なる実施形態において、該創傷治癒は、外科的切開に起因する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも1つの追加の治療剤を被検体に投与する工程を更に含む。別の実施形態において、該少なくとも1つの追加の治療剤は、サイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性薬剤および細胞増殖抑制剤からなる群より選択される。更なる実施形態において、該少なくとも1つの追加の治療剤は、TNFアンタゴニスト、抗TNF剤、IL−12アンタゴニスト、IL−15アンタゴニスト、IL−17アンタゴニスト、IL−18アンタゴニスト、IL−22アンタゴニスト、T細胞除去剤、B細胞除去剤、シクロスポリン、FK506、CCI−779、エタネルセプト、インフリキシマブ、リツキシマブ、アダリムマブ、プレドニゾロン、アザチオプリン、金、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、ミノサイクリン、アナキンラ、アバタセプト、メトトレキサート、レフルノミド、ラパマイシン、ラパマイシンの類似体、Cox−2阻害剤、cPLA2阻害剤、NSAID、p38阻害剤、およびB7.1、B7.2、ICOSL、ICOSおよび/またはCD28のアンタゴニスト、ならびにCTLA4のアゴニストからなる群より選択される。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、(a)目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;(b)該目的の細胞または試料を化合物と接触させる工程;および(c)該化合物との接触の後に、該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程を含む、被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防するための化合物を同定する方法であって、接触させなかった目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルと比較して、接触させた該目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、被検体における線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するのに有用な化合物として該化合物を同定するものである、前記方法、を提供する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、(a)目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;(b)該目的の細胞または試料を化合物と接触させる工程;(c)該化合物との接触の後に、該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(d)該接触させた目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを、IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルと比較する工程を含む、被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防するための化合物を同定する方法であって、IL−21および/またはIL−21Rの該基準レベルと比較して、該接触させた目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、被検体における線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するのに有用な化合物として該化合物を同定するものである、前記方法、を提供する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、(a)第1時点において、被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)第2時点において、該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態の経過をモニタリングする方法であって、該第1時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルと比較して、該第2時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、該線維症または線維症に関連した状態の重症度が減少したことを示すものである、前記方法、を提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、(a)第1時点において、被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)第2時点において、該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態を予知する方法であって、該第1時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルと比較して、該第2時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、該被検体が該線維症または線維症に関連した状態になり得る可能性が減少したこと、または、該被検体において該線維症または線維症に関連した状態が悪化し得る可能性が減少したことを示すものである、前記方法、を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、(a)被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)該被検体由来の該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを、IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルと比較する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態を予知する方法であって、IL−21および/またはIL−21Rの該基準レベルと比較して、該被検体由来の該目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、該被検体が該線維症または線維症に関連した状態になり得る可能性が減少したこと、または、該被検体において該線維症または線維症に関連した状態が悪化し得る可能性が減少したことを示すものである、前記方法、を提供する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、(a)被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)該被検体由来の該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを、IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルと比較する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態を診断する方法であって、IL−21および/またはIL−21Rの該基準レベルと比較して、該被検体由来の該目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が高いことが、該被検体において線維症または線維症に関連した状態が存在することを示すものである、前記方法、を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
線維症の発症におけるIL−21/IL−21Rシグナル伝達経路の役割を調べるために、肺および肝臓の炎症の多様なモデルを使用して、機能的IL−21R(IL−21R-/-)が欠損したマウスおよび野生型マウスにおいて、免疫反応を比較した。一つのモデルにおいて、肺における一次性および二次性肉芽腫性炎症を調べるために、未処理の動物または抗原感作した動物に、生きている住血吸虫卵を静脈注射で投与した。別のモデルにおいて、マンソン住血吸虫セルカリアを用いてマウスを経皮的に感染させ、卵に誘導された炎症および線維症の進行を肝臓において観察した。別のモデルにおいて、マウスをN・ブラシリエンシス(N. brasILiensis)に感染させた。これらのモデルを使用して、急性および慢性の病気状態におけるタイプ2サイトカイン主導の病変に対するIL−21Rの影響を調べた。結果は、インビボでの極性化されたタイプ2反応の産生、特にタイプ2サイトカインに媒介される炎症および線維症におけるIL−21Rの重要な役割を示している。
【0018】
従って、本発明は、未処理のコントロール(例えば、線維症または線維症に関連した状態になっているコントロール被検体、線維症または線維症に関連した状態になっていないコントロール被検体)と比較して、または適切な基準レベルと比較して、IL−21および/またはIL−21Rのレベル(例えば、IL−21および/またはIL−21Rの発現レベル(例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物(すなわち、タンパク質および/またはmRNA)のレベル)、IL−21および/またはIL−21Rの活性レベル、IL−21とIL−21Rの相互作用のレベル等)を減少させる薬剤を使用して、被検体(例えばヒト、例えばヒトの患者)における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防する方法を提供する。IL−21および/またはIL−21Rのレベルを減少させる薬剤を同定することに関連して、「IL−21および/またはIL−21Rのレベル」を測定することには、(1)IL−21および/またはIL−21Rの発現レベルを測定すること(例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物(例えばタンパク質および/またはそれに対応するmRNA)のレベルを測定すること);(2)IL−21および/またはIL−21Rの活性レベルを測定すること;および(3)IL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを測定すること(例えば被検体(例えばヒトの患者、コントロール被検体等)由来の、例えば目的の細胞または試料において)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において更に詳しく述べられるように、線維症または線維症に関連した状態または障害を治療、改善および/または予防するのに有用な薬剤の例には、抗IL−21R抗体、抗IL−21R抗体の抗原結合性フラグメント、抗IL−21抗体、抗IL−21抗体の抗原結合性フラグメント、およびIL−21Rポリペプチドの可溶性フラグメントが含まれる。本発明は更に、線維症または線維症に関連した障害の治療過程をモニタリングし、それを診断および予知し、および線維症または線維症に関連した障害を治療するのに有用な化合物をスクリーニングする方法を提供する。
【0019】
本明細書において使用される「IL−21」または「IL−21R」とは、それぞれ、天然のIL−21またはIL−21Rレセプタータンパク質と実質的に同一である任意のポリペプチドを意味する。ヒトインターロイキン−21(IL−21)およびそのレセプター(IL−21R)をコードするヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、例えば、国際公開第WO00/53761号;国際公開第WO01/85792号;Parrish-Novakら、(2000) Nature 408:57-63;およびOzakiら、(2000) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97:11439-44に記載されている。望ましくは、IL−21ポリペプチドがIL−21Rを結合するか、またはIL−21RポリペプチドがIL−21を結合し、相互作用の際に、IL−21/IL−21R経路のシグナル伝達活性が、任意の標準方法による測定において、コントロールレベルよりも少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%よりも高い比率で増加する。IL−21Rは、「MU−1」、「NILR」および「zalphal1」としても知られている。
【0020】
IL−21および/またはIL−21Rのレベルを減少させる薬剤には、IL−21/IL−21R経路のシグナル伝達活性、IL−21および/またはIL−21Rの活性レベル、IL−21および/またはIL−21Rの発現レベル、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%減少させる任意の薬剤が包含される。必要に応じて、IL−21および/またはIL−21Rのレベルの減少は、線維症の減少のレベルを測定することによって評価される。IL−21とIL−21Rとの相互作用のレベルを減少させる薬剤には、IL−21とIL−21Rの相互作用を少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%減少させる任意の薬剤が包含される。IL−21および/またはIL−21Rの活性または発現のレベルを減少させる、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを減少させるこれら前述の薬剤(すなわち、IL−21および/またはIL−21Rのレベルを減少させる薬剤)は、本明細書において、IL−21および/またはIL−21Rの「アンタゴニスト」と言われることがある。
「IL−21遺伝子」または「IL−21R遺伝子」は、それぞれ、IL−21ポリペプチドまたはIL−21Rポリペプチドをコードする核酸として定義される。
【0021】
「線維症」は、線維組織の過剰産生または異常産生の結果として生じる任意の病的状態として定義される。線維症は、例えば腎臓、肺、肝臓、皮膚、中枢神経系、硬骨、骨髄、心臓血管系、内分泌器官または胃腸系を含む任意の器官においておこり得る。「線維症に関連した状態」とは、線維症に関連している任意の状態を意味する。このように、線維症に関連した状態は、線維症によって引き起こされたり、線維症を伴ったり、または線維症を引き起こし得る。
IL−21および/またはIL−21Rの活性のレベルの減少とは、未処置のコントロールまたは基準の試料(例えば基準レベル)におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルまたは生物活性と比較して、IL−21のレベルまたは生物活性が減少することを指し得る。このようなレベルまたは活性は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%減少され得る。IL−21および/またはIL−21Rの活性の減少はまた、タイプ2(「Th2」)サイトカインの発現および/または機能の減少と関連し得、これには、例えばIL−4、IL−13、AMCase、Ym1、およびFizz1/RELMαのレベルおよび活性における調節が含まれ得る。
【0022】
IL−21とIL−21Rとの相互作用のレベルの減少とは、未処理のコントロールまたは基準の試料におけるIL−21とIL−21Rとの相互作用のレベルと比較して、処理された細胞または試料における相互作用が減少することを指し得る。このような相互作用のレベルは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%減少され得る。相互作用のレベルは、例えばELIZAおよびウエスタンブロットなどのいくつかの周知の分子生物学の技術によって評価することができる。
IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物のレベルの減少とは、未処理のコントロールまたは基準の試料におけるIL−21および/またはIL−21Rの遺伝子またはタンパク質発現レベルと比較して、処理された細胞または試料におけるmRNAおよび/またはタンパク質発現レベルが減少することを指す。このような発現は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%減少され得る。発現のレベルは、例えばノーザンブロットまたはウエスタンブロットなどの多数の周知の分子生物学の技術によって評価することができる。
【0023】
「線維症を治療または改善する」とは、任意の標準方法による測定において、未処理のコントロールと比較して線維症のレベルが減少することを意味する。線維症の減少はまた、線維症または線維症に関連した状態に関連した任意の症状の減少によって測定され得る。本明細書に開示される実施例は、コントロールと比較して線維症のレベルが減少されたか否かを測定する方法の例を提供する。
「線維症に関連した状態(または障害)を治療または改善する」とは、このような状態がおこる前またはおこった後にそれを減少させることを意味する。相当する未処理のコントロールと比較して、任意の標準技術による測定において、このような減少または予防の程度は、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%または100%である。線維症に関連した状態の治療を受けている被検体とは、開業医が、そのような状態を有すると診断した者を言う。診断は、任意の適切な手段によって行うことができる。線維症に関連した状態の進行が予防されている被検体は、このような診断を受けていてもいなくとも良い。これらの被検体(例えば患者)は、線維症に関連した状態を診断するために標準試験にかけられていてもよく、または、試験をすることなく、1つ以上の危険因子の存在により高い危険にさらされているとして確認されていてもよいことを、当業者は理解するであろう。本明細書に開示された実施例は、コントロールと比較して線維症に関連した障害のレベルが減少されたか否かを測定する方法の例を提供する。
【0024】
「予防する」とは、そのような状態が進行しそうな被検体において、線維症または線維症に関連した状態の発症を遅らせること、あるいは、線維症または線維症に関連した状態の発症を妨げることを言う。
「有効量」とは、哺乳動物において線維症または線維症に関連した状態を治療、改善、減少、または予防するのに必要な化合物(単独または組合せ)の量を意味する。活性化合物の有効量は、被検体における投与経路、年齢、体重、および総体的な健康によって異なる。最終的には、担当医または獣医が、適切な量および用法・用量を決定することになる。
タンパク質またはポリペプチドに関連して「実質的に同一の」とは、例えば配列番号2、配列番号5、および配列番号11、13、15、17、19、21、23、25および27に示されるものなどの融合タンパク質などの基準のアミノ酸配列に対して、少なくとも75%、好ましくは85%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%、または99%までの同一性を有するタンパク質またはポリペプチドを意味する。タンパク質またはポリペプチドについて、比較配列の長さは、一般的に、少なくとも20個のアミノ酸、好ましくは少なくとも30個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも40個のアミノ酸、最も好ましくは50個のアミノ酸、あるいは、タンパク質またはポリペプチドの全長になるであろう。このような「実質的に同一の」タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸は、「実質的に同一の」核酸の例を構成する。遺伝子コードの冗長性のせいで、いくつかの核酸が所定のタンパク質またはポリペプチドをコードし得、このような核酸が、基準ポリペプチドに「実質的に同一の」ポリペプチドをコードするのであれば、本発明の範囲内にある、と認識される。
【0025】
本発明に関連する核酸は、DNAまたはRNAを含み得、全体または一部が合成であり得る。本明細書に示されるヌクレオチド配列への言及には、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、特定の配列(またはその相補体)を有するDNA分子が包含され、また、TがUで置換された特定の配列を有するRNA分子が包含される。
本発明に関連する単離されたポリヌクレオチドは、開示されたポリヌクレオチドをコードする配列に同一の、または類似する配列を有する核酸を同定および単離するために、ハイブリダイゼーションのプローブおよびプライマーとして使用することができる。核酸を同定および単離するためのハイブリダイゼーションの方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、サザンハイブリダイゼーション、原位置ハイブリッド形成、およびノーザンハイブリダイゼーションが含まれ、これらは当業者にとって周知である。
【0026】
ハイブリダイゼーション反応は、異なるストリンジェンシー条件下において実施され得る。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーには、任意の2つの核酸分子が互いにハイブリダイズする際の困難性が含まれる。好ましくは、ハイブリダイズする各ポリヌクレオチドは、その対応するポリヌクレオチドに、減少されたストリンジェントな条件下で、より好ましくはストリンジェントな条件下で、および最も好ましくは高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。ストリンジェンシー条件の例を、以下の表1に示す。高度にストリンジェントな条件とは、少なくとも、例えば条件A−Fと同等にストリンジェントであるものである。ストリンジェントな条件とは、少なくとも、例えば条件G−Lと同等にストリンジェントであるものである。そして、減少されたストリンジェントな条件とは、少なくとも、例えば条件M−Rと同等にストリンジェントであるものである。
【0027】
【表1】
1:ハイブリッドの長さは、ハイブリダイズするポリヌクレオチドのハイブリダイズされた領域について予測されるものである。ポリヌクレオチドを、未知の配列の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする場合、ハイブリッドの長さは、ハイブリダイズするポリヌクレオチドの長さであると推測される。知られている配列のポリヌクレオチドがハイブリダイズされる場合、ハイブリッドの長さは、ポリヌクレオチドの配列を並べ、その領域または最適な配列相補性の領域を特定することによって決定することができる。
2:ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液として、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)の代わりに、SSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaH2PO4および1.25mM EDTAであり、pH7.4である)を使用し得る。洗浄は、ハイブリダイゼーション完了後に15分間行われる。
TB*〜TR*:長さが50塩基対よりも少ないと予測されるハイブリッドについてのハイブリダイゼーション温度は、該ハイブリッドの融解温度(Tm)よりも5〜10℃低くするべきであって、ここで、Tmは、以下の方程式に従って決定される。長さが18塩基対よりも少ないハイブリッド:Tm(℃)=2(A塩基+T塩基の数)+4(G塩基+C塩基の数)。長さが18〜49塩基対のハイブリッド:Tm(℃)=81.5+16.6(log10Na+)+0.41(%G+C)−(600/N)、ここで、Nはハイブリッド中の塩基の数であり、Na+は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である(1×SSCのNa+=0.165M)。
ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションにおけるストリンジェンシー条件の更なる例は、Sambrook、J., E. F. FritschおよびT. Maniatis、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、第9および11章;およびCurrent Protocols in Molecular Biology、1995、F. M. Ausubelら編、John WILey & Sons, Inc.、第2.10節および第6.3-6.4節に記載されており、引用することによって、本明細書の一部となす。
【0028】
本発明に関連する単離されたポリヌクレオチドは、開示されたポリヌクレオチドの対立遺伝子多型をコードする配列を有するDNAを同定および単離するために、ハイブリダイゼーションのプローブおよびプライマーとして使用することができる。対立遺伝子多型は、開示されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと同一の、または有意に類似性を有するポリペプチドをコードする、開示されたポリヌクレオチドの天然の代替形態である。好ましくは、対立遺伝子多型は、開示されたポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも95%の同一性、最も好ましくは、少なくとも99%の同一性)を有する。あるいは、核酸のセグメントが、選択的なハイブリダイゼーション条件(例えば高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下で開示されたポリヌクレオチドにハイブリダイズする場合に、有意な類似性が存在する。
【0029】
本発明に関連する単離されたポリヌクレオチドはまた、開示されたポリヌクレオチドに相同性を有するポリペプチドをコードする配列を有するDNAを同定および単離するために、ハイブリダイゼーションのプローブおよびプライマーとして使用することができる。これらのホモログは、開示されたポリペプチドおよびポリヌクレオチドとは異なる種から単離されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドであるか、または、同種であるが、開示されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドに対して有意な配列類似性を有するものである。好ましくは、ポリヌクレオチドのホモログは、開示されたポリヌクレオチドに対して少なくとも50%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも75%の同一性、最も好ましくは、少なくとも90%の同一性)を有し、一方でポリペプチドのホモログは、開示されたポリペプチドに対して少なくとも30%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも45%の同一性、最も好ましくは、少なくとも60%の同一性)を有する。好ましくは、開示されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドのホモログは、哺乳類種から単離されたものである。
【0030】
二つの配列間の「相同性」または「配列同一性」の計算は、当業者に周知の手段によって行われる。例えば、配列同一性を計算するための一つの一般的な手段は、以下の通りである。配列は、最適な比較を行うためにアラインメントされる(例えば、最適なアラインメントのために、一番目および二番目のアミノ酸または核酸の配列の一方または両方において、ギャップが導入でき、比較の目的において、非相同の配列は無視することができる。好ましい実施形態において、比較目的でアラインメントされる参照配列の長さは、該参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、更により好ましくは少なくとも60%、そして更により好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第一配列におけるある位置が、第二配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置において同一である。二つの配列間の同一率は、その二つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要のあるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮に入れた、該配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0031】
配列の比較および二つの配列間の配列同一率の決定は、数学アルゴリズムを使用して達成できる。好ましい実施形態において、二つのアミノ酸配列間の同一率は、Needleman-Wunschアルゴリズム((1970) J. Mol. Biol. 48:444-53)を使用して決定され、これはGCGソフトウエアパッケージ(www.gcg.comにて入手可能)中のGAPプログラムに組み込まれており、Blossum 62マトリックスまたはPAM 250マトリックスが使用され、ギャップ重量は16、14、12、10、8、6または4、そして長さ重量は1、2、3、4、5または6が使用される。更に別の好ましい実施形態において、二つのヌクレオチド配列間の同一率は、GCGソフトウエアパッケージ(www.gcg.comにて入手可能)中のGAPプログラムを使用して決定され、NWSgapdna.CMPマトリックス、40、50、60、70、または80のギャップ重量および1、2、3、4、5または6の長さ重量が使用される。一つの好ましいパラメータのセットは、ギャップペナルティが12、ギャップ延長ペナルティが4、そしてフレームシフトギャップペナルティが5のBlossum 62スコアリング・マトリックスである。二つのアミノ酸配列またはヌクレオチド間の同一率はまた、MeyersとMillerのアルゴリズム((1989) CABIOS4:11-17)を使用しても決定され得、これはALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、PAM120荷重残基表を使用し、ギャップ長さペナルティが12、ギャップペナルティが4である。
【0032】
「実質的に純粋」は、例えば遺伝物質、関連タンパク質、膜、および細胞残屑などの天然に付随する成分から分離されている核酸、ポリペプチド、またはその他の分子として定義される。典型的には、天然に関連するタンパク質および天然の有機分子から、少なくとも60wt%、70wt%、80wt%、90wt%、95wt%、または99wt%まで遊離している場合、そのポリペプチドは実質的に純粋である。例えば、実質的に純粋なポリペプチドは、組み替え核酸を、通常はそのタンパク質を発現しない細胞中で発現させることにより、天然源から抽出することによって、または化学合成によって得られ得る。
用語「単離されたDNA」は、所定のDNAが由来する生体の天然ゲノム内のDNAの側方に位置する遺伝子およびその他のDNA配列から比較的、または実質的に遊離しているDNAとして定義される。従って、用語「単離されたDNA」は、例えば、cDNA、クローニングされたゲノムDNA、および合成DNAなどを包含する。
【0033】
「IL−21融合」ポリペプチドまたはタンパク質、または「IL−21R融合」ポリペプチドまたはタンパク質は、第2の相同アミノ酸配列に結合される、例えば配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸由来のIL−21R細胞外フラグメントなどの、IL−21またはIL−21Rアミノ酸配列の全部または一部として定義される。一つの実施形態において、第2の相同アミノ酸配列は、タグ配列である。一般的なタグ配列には、mycタグ、hisタグ、flagタグなどが含まれる。本発明の別の実施形態において、第2の相同アミノ酸配列は、例えばFcフラグメントなどの免疫グロブリン配列である。本明細書において更に詳しく述べられる、このような融合タンパク質および融合ポリペプチドは、「IL−21融合遺伝子」または「IL−21R融合遺伝子」と呼ばれる核酸配列によってコードされる。
スクリーニング方法において、「化合物」とは、天然のもの、または人工的なものにかかわらず、化学物質を指す。このような化合物には、例えば、ペプチド、ポリペプチド、合成有機分子、天然有機分子、核酸分子、ペプチド核酸分子、およびそれらの成分および誘導体が含まれ得る。例えば、本発明による有用な化合物は、IL−21のIL−21Rへの結合を減少させる。
【0034】
線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するのに使用するためのIL−21およびIL−21Rのアンタゴニストはまた、小分子より成り得る。用語「小分子」は、巨大分子ではない化合物を指す(例えば、Karp (2000) Bioinformatics Ontology 16:269-85;およびVerkman (2004) AJP-Cell Physiol. 286:465-74等参照)。このように、小分子はしばしば、例えば1000ダルトンよりも少ない化合物と考えられる(例えば、VoetおよびVoet、Biochemistry、第2版、N. Rose, WILey and Sons編、New York、14(1995)参照)。例えば、Davisら、(2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:5981-86では、葉酸塩、メトトレキサートおよび神経ペプチドを示すために小分子のフレーズを使用している一方、HalpinおよびHarbury (2004) PLos Biology 2:1022-30では、例えばDNA、RNAおよびペプチドなどの小分子の遺伝子産物を示すためにフレーズを用いている。天然および合成の小分子の例には、コレステロール、神経伝達物質、siRNA、および、例えばFCD(Fine Chemicals Database)、SMID(Small Molecule Interaction Database)、ChEBI(Chemical Entities of Biological Interest)およびCSD(Cambridge Structural Database)などの多数の市販されている小分子データベース(例えばAlfaranoら、(2005) Nuc. Acids Res. Database Issue 33:D416-24参照)にリストアップされている多様な化学物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
用語「医薬組成物」は、少なくとも1つの治療上または生物学的に活性の薬剤を含有し、被検体への投与に適切である、任意の組成物を意味する。これらの処方物のいずれもが、当技術分野において周知および受け入れられた方法によって調製され得る。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、(A.R.Gennaro編)、Lippincott WILliams & WILkins、Baltimore、MD(2005)参照。
本発明は、線維症に関連した状態の治療および予防のための標準的な療法に比べて有意な利点を提供する。本明細書に記載されるように、IL−21および/またはIL−21Rの活性または発現のレベルを減少させる、またはIL−21とIL−21Rの相互作用を減少させる(すなわち、IL−21および/またはIL−21Rの活性のレベルを減少させる)治療薬剤の投与の結果、線維症および線維症に関連した状態が改善、減少、または予防される。加えて、本発明が提供する化合物のスクリーニング方法によって、単に症状を和らげるよりもむしろ、損傷過程を変える新規の治療法を同定することが可能となる。
【0036】
(線維性障害)
肉芽組織の産生は、注意深く組織された過程であって、その過程においては、プロテアーゼ阻害剤および細胞外マトリックスタンパク質の発現が調節されず、プロテアーゼの発現が減少し、細胞外マトリックスの蓄積に至る。しかし、繊維性材料の異常な蓄積は、最終的に臓器不全に至る場合がある(例えばBorderら、(1994) New Engl. J. Med. 331:1286-92参照)。誘導されたものか自然発生のものかにかかわらず、線維性の状態の進行は、少なくとも部分的には、線維芽細胞の活性の刺激によって引き起こされる。炎症細胞および活性化された線維芽細胞の損傷を受けた器官への流入は、これらの細胞型の、主としてコラーゲンを含有する間質マトリックスと相互に作用する能力に依存する。線維症に影響され得る組織の例には、腎臓、肺、肝臓、皮膚、中枢神経系、硬骨、骨髄、心臓血管系の組織、内分泌器官、および胃腸系の組織が含まれる。
【0037】
本発明の方法および組成物は、例えば、内臓の線維症、皮膚または真皮の線維性障害、および眼における繊維性の状態などを含む、任意の組織に影響を与える、任意の線維症または線維症に関連した状態に対して有用である。内臓(例えば肝臓、肺、腎臓、心臓血管、胃腸管)の線維症は、肺線維症、特発性肺線維症、自己免疫線維症、骨髄線維症、肝硬変、肝内性肝静脈閉塞症、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性ネフロパシー、腎間質線維症、シクロスポリンを受ける被検体における腎線維症、同種移植の拒絶反応、HIVに関連したネフロパシーなどの障害において起こる。その他の線維症に関連した障害には、全身性硬化症、好酸球増加・筋痛症候群、および眼球内の線維症などの線維症に関連したCNS障害が含まれる。皮膚の線維性障害には、例えば、強皮症、限局性強皮症、ケロイド、肥厚性瘢痕、家族性の皮膚の膠原腫、およびコラーゲンタイプの結合織母斑が含まれる。眼における繊維性の状態には、糖尿病性網膜症、手術後の瘢痕(例えば、緑内障のフィルタリング手術後、および斜視の手術後)、および増殖性硝子体網膜症などの状態が含まれる。本発明の方法によって治療され得る更なる繊維性の状態は、例えば、関節リウマチ、長期の関節痛および悪化した関節に関連した疾患、全身性進行性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、限局性強皮症、レイノー症候群、および鼻茸に起因し得る。本明細書に記載される通り、IL−21/IL−21R経路のアンタゴニストは、線維症および線維症に関連した障害を治療または予防するため、またはこれらの障害に関連した1つ以上の症状を改善するために投与され得る。
【0038】
(IL−21またはIL−21Rのアンタゴニスト(IL−21/IL−21Rアンタゴニスト))
本発明のIL−21アンタゴニストまたはIL−21Rアンタゴニストは、それぞれ、IL−21またはIL−21R(例えばヒト、ウシ、ラット、マウス、馬、犬などの哺乳動物のIL−21またはIL−21R)と相互に作用し、IL−21および/またはIL−21Rのレベルを減少させる(例えば、IL−21および/またはIL−21Rに関連した1つ以上の生物活性を減少させる)。この相互作用が直接の結合を伴う場合、アンタゴニストは、高い親和性をもってIL−21またはIL−21Rに結合する(例えば、親和定数が少なくとも約107M-1、好ましくは約108M-1、より好ましくは約109M-1〜1010M-1またはそれ以上)。
IL−21および/またはIL−21Rのレベルは、望ましくは10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%まで減少する。アンタゴニストは、例えば、IL−21を中和することによってIL−21Rの活性を減少できる。アンタゴニストは、例えば配列番号11、13、15、17、19、21、23、25および27に示される融合タンパク質などの、免疫グロブリンFc領域などの非IL−21Rフラグメントに融合されるIL−21Rのフラグメントを含む融合タンパク質であり得る。その他のアンタゴニストの例には、抗IL−21抗体または抗IL−21R抗体、それらの抗原結合性フラグメント、IL−21Rの可溶性形態、ペプチド、抑制性のポリヌクレオチド(例えばsiRNA、SNP、アプタマーなど)、および小分子が挙げられる。
【0039】
一つの実施形態において、IL−21/IL−21Rアンタゴニストは、抗IL−21R抗体または抗IL−21抗体、あるいはそれらの抗原結合性フラグメントである。更なる実施形態において、抗体は中和抗体である。所望の場合、抗体は、IL−21またはIL−21R、あるいはそれらの抗原結合性フラグメント(例えばFab、F(ab’)2、Fvまたは単鎖のFvフラグメントなど)に結合するモノクローナル抗体または単一特異性抗体であり得る。抗体は、IL−21ポリペプチドまたはIL−21Rポリペプチドに対するヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはインビトロで産生された抗体であり得る。
【0040】
あるいは、IL−21アンタゴニストまたはIL−21Rアンタゴニストは、IL−21ポリペプチドまたはIL−21Rポリペプチドの全長(例えば変異配列)またはフラグメントであり得る(例えばヒト)。アンタゴニストの例には、例えば、IL−21ポリペプチドの抑制性IL−21レセプター結合ドメイン(例えばヒト)、あるいは、マウスまたはヒトIL−21Rの細胞外ドメインが含まれる。IL−21アンタゴニストは、天然のIL−21R(例えば、配列番号2(ヒト)または配列番号5(マウス)など)またはそのフラグメントと実質的に同一の(例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%、99%の配列同一性を有する)アミノ酸配列を有し得る(表2参照)。あるいは、アンタゴニストは、天然の哺乳動物のIL−21Rまたはそのフラグメント(例えば、配列番号1(ヒト)または配列番号4(マウス))と実質的に同一のヌクレオチド配列、または、ストリンジェントな条件、例えば高度にストリンジェントな条件下で前述のヌクレオチド配列の1つにハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を有し得る(表1参照)。
【0041】
【表2】
【0042】
必要に応じ、IL−21Rポリペプチドは、膜の固着(membrane anchoring)が不可能な可溶性ポリペプチドであり得る。このような可溶性ポリペプチドには、例えば、膜貫通ドメインの十分な部分が無い、または膜貫通ドメインが非機能的であるように修飾されているIL−21Rポリペプチドが含まれる。例えば、IL−21Rポリペプチドは、IL−21Rの可溶性フラグメントであり得る(例えば、配列番号2(ヒト)のおよそ第1番目〜第235番目、第1番目〜第236番目、第20番目〜第235番目、又は第20番目〜第236番目のアミノ酸からのアミノ酸配列、または配列番号5(マウス)のおよそ第1番目〜第236番目、又は第20番目〜第236番目のアミノ酸からのアミノ酸配列を含む、マウスまたはヒトIL−21Rの細胞外ドメインを含有するIL−21Rのフラグメントなど)。例となるIL−21アンタゴニストは、配列番号2の第20番目〜第538番目のアミノ酸(成熟ヒトIL−21R)、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸(ヒトIL−21Rの細胞外ドメイン)、配列番号2の第1番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第236番目のアミノ酸、または配列番号5の第20番目〜第236番目のアミノ酸と実質的に同一のアミノ酸配列を有し得る。
【0043】
本発明のIL−21アンタゴニストは、例えば表1に記載されたような高度にストリンジェントな条件下、配列番号1、配列番号4、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24または配列番号26に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズする核酸によってコードされ得る。IL−21Rタンパク質または融合タンパク質をコードする、しかし、遺伝子コードの縮重により配列番号1、4、10、12、14、16、18、20、22、24または26に示されるヌクレオチド配列と異なる単離されたポリヌクレオチドもまた、本発明に包含される。点突然変異または誘導された修飾によって引き起こされる、配列番号1、4、10、12、14、16、18、20、22、24または26に示されるヌクレオチド配列の変化物もまた、本発明に包含される。
【0044】
所望であれば、可溶性のIL−21Rポリペプチドは、ポリペプチドなどの第2部分(例えば免疫グロブリン鎖、GST、Lex−AまたはMBPのポリペプチド配列)を含み得るか、またはそれに融合され得る。例えば、融合タンパク質は、第2部分(例えば免疫グロブリン鎖、Fcフラグメント、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEを含む多様な免疫グロブリンアイソタイプの重鎖定常領域など)に融合されるIL−21Rの可溶性フラグメント(例えば、配列番号2(ヒト)の第1番目〜第235番目、第1番目〜第236番目、第20番目〜第235番目、もしくは第20番目〜第236番目のアミノ酸、または配列番号5(マウス)の第1番目〜第236番目もしくは第20番目〜第236番目のアミノ酸などの、マウスまたはヒトIL−21Rの細胞外ドメインを含有するフラグメント)などの、IL−21を結合し得るIL−21Rポリペプチドのフラグメントを含み得る。
【0045】
望ましくは、本発明のIL−21アンタゴニストは、例えば、IL−21ポリペプチドと相互に作用する、またはそれに結合する能力、γcまたはJAK1などのシグナル変換分子に関連する能力、リン酸化反応および/またはstatタンパク質(例えばStat5および/またはStat3)の活性化を刺激する能力、および、増殖、分化、エフェクター細胞機能、細胞溶解活性、サイトカイン分泌、および/またはT細胞(Th1およびTh2細胞を含む、CD8+およびCD4+T細胞)、NK細胞、B細胞、マクロファージ、および巨核球などの免疫細胞の生存を調節する(例えば刺激するまたは減少させる)能力を含む、天然のIL−21Rに関連した少なくとも1つの生物活性を減少させる。
【0046】
本発明によれば、IL−21ポリペプチドは、IL−2、IL−4およびIL−15に配列相同性を示すサイトカインである(Parrish-Novakら、(2000) Nature 408:57-63)。インターロイキンサイトカイン間での配列相同性が低いにもかかわらず、サイトカインは、共通の第2モチーフ、すなわち、ファミリーの典型である「4本ヘリックス束」構造を共有する。IL−21は、主に活性化されたCD4+T細胞中で発現され、NK細胞、B細胞およびT細胞に影響を与えることが報告されている(Parrish-Novakら、(2000)既出;およびKasaianら、(2002) Immunity 16:559-69参照)。IL-21は、IL−21R(「MU−1」、「NILR」および「zalphal1」とも呼ばれる)に結合する。IL−21の結合の際、IL−21Rの活性化により、Stat5および/またはStat3のシグナル伝達が引き起こされる(Ozakiら、(2000)既出)。
IL−21ポリペプチドのアミノ酸配列は公知である。例えば、ヒトIL−21のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、GenBank受託番NM_021803で入手可能である。開示されているヒトIL−21ヌクレオチド配列が、以下に示される:
【化1】
【0047】
開示されているヒトIL−21ポリペプチドのアミノ酸配列が、以下に示される:
【化2】
【0048】
このように、IL−21ポリペプチドとは、IL−21Rと相互に作用可能な、またはそれに結合可能であって、以下の特性のうちの一つを有するタンパク質のことを言う:(i)天然の哺乳動物のIL−21またはそのフラグメント(例えば、配列番号8(ヒト))と実質的に同一のアミノ酸配列;(ii)天然の哺乳動物のIL−21ヌクレオチド配列またはそのフラグメント(例えば、配列番号7(ヒト)またはそのフラグメント)と実質的に同一のヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列;(iii)例えば、配列番号7(ヒト)またはそのフラグメントなどの、天然のIL−21ヌクレオチド配列またはそのフラグメントに変性した(degenerate)ヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列;または(iv)ストリンジェントな条件下で、前述のヌクレオチド配列のうちの一つにハイブリダイズするヌクレオチド配列。
【0049】
前述の本発明の局面全てにおいて、IL−21ポリペプチドまたはIL−21Rポリペプチドは、それぞれIL−21RまたはIL−21に結合する、より高い親和性(突然変異のない配列に比較して)を有する結果となる天然のIL−21配列またはIL−21R配列(野生型)における突然変異を有する変異ポリペプチドとして提供され得る。このような突然変異は、例えばタンパク質分解耐性を高める(突然変異のない配列に比較して)のに有用であり得る。開示された配列のうちのいくつかのアミノ酸配列は、IL−21またはIL−21Rの構造または機能を有意に変えることなく変化させることができる。一般的に、類似の機能を有する残基が使用されるのであれば、IL−21タンパク質またはIL−21Rタンパク質の三次構造を形成する残基を置換することが可能である。他の場合において、重要でない領域において変更が起こるのであれば、残基の型は完全に無関係であり得る。このように、本発明は更に、実質的なIL−21型の生物活性を示すIL−21およびIL−21Rの改変体を含む。このような改変体には、欠失、挿入、逆位、繰り返し、およびタイプ置換(例えば、ある親水性残基を別のものに置換するが、強親水性残基から強疎水性残基へは置換しない)が含まれる。小さな変更または「ニュートラルな」アミノ酸置換は、タンパク質機能への影響が少ない場合が多い(Taylor (1986) J. Theor. Biol. 119:205-18参照)。同類置換には、脂肪族アミノ酸同士の置換、アミド残基同士の置換、塩基性残基同士の置換、および芳香族残基同士の置換が含まれ得るが、これらに限定されない。どのアミノ酸の変更が表現型的にサイレントである可能性が高いか(すなわち、機能に有意な影響を与える可能性が低い)についての更なるガイダンスは、Bowieら、(1990) Science 247:1306-10およびZvelebilら、(1987) J. Mol. Biol. 195:957-61において見ることが可能である。
【0050】
必要に応じ、IL−21またはIL−21Rアンタゴニストは、Fcフラグメント等の免疫グロブリン鎖、GSTまたはmyc等のエピトープ(タグ)配列、および、Lex−AまたはMBPポリペプチド配列等の更なる周知の配列などの第2部分に融合される、本明細書に記載されたIL−21またはIL−21Rポリペプチドまたはそのフラグメントを含有する融合タンパク質である。所望であれば、融合タンパク質には、第2部分(例えば、免疫グロブリン鎖、Fcフラグメント、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEを含む多様なアイソタイプの重鎖定常領域など)に融合される、IL−21Rの可溶性フラグメント(例えば、配列番号2(ヒト)のおよそ第1番目〜第235番目、第1番目〜第236番目、第20番目〜第235番目、もしくは第20番目〜第236番目のアミノ酸、または配列番号5(マウス)の第1番目〜第236番目もしくは第20番目〜第236番目のアミノ酸由来のマウスまたはヒトIL−21Rの細胞外ドメインを含有するIL−21Rのフラグメント、または、配列番号1または4にコードされるポリペプチドに同一、または実質的に同一のフラグメント等)などの、IL−21を結合可能なIL−21Rポリペプチドのフラグメントが含まれ得る。あるいは、Fcレセプター結合を減少させるために、ヒトFc配列は、天然の配列内において1つ以上のアミノ酸が突然変異されている(例えば、配列番号16の第254番目及び第257番目の残基が突然変異されている)。その他の実施形態において、融合タンパク質は、マウス免疫グロブリンFc鎖(例えばマウスIgG2a、またはマウスIgG2aの突然変異形態等のマウスIgGを含むがそれらに限定されない)に融合される、マウスIL−21Rの細胞外ドメイン(配列番号5(マウス)のおよそ第1番目〜第236番目又は第20番目〜第235番目のアミノ酸由来)を含み得る。
【0051】
本発明の方法において使用され得る拮抗的融合タンパク質の例を、図7−15に示す。融合タンパク質は、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25または配列番号27と実質的に同一のアミノ酸配列、または、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24または26と実質的に同一のヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を含み得る。ある典型的な融合タンパク質は、C末端において、リンカー(配列番号17の第236番目〜第243番目のアミノ酸に対応)によって、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc変異配列(配列番号17の第244番目〜第467番目のアミノ酸に対応)と融合した、ヒトIL−21R細胞外ドメイン(例えば、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸)を含有する。ヒトFc配列は、Fcレセプター結合を減少させるために、野生型配列から第254番目及び第257番目の残基が突然変異されている。ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号16および配列番号17として示されている。
【0052】
第2のポリペプチドは、好ましくは可溶性である。必要に応じ、第2のポリペプチドは、結合されたポリペプチドの半減期(例えば血清の半減期)を改善する。所望であれば、第2のポリペプチドは、融合ポリペプチドの第2のIL−21RまたはIL−21ポリペプチドとの関連性を促進する配列を含む。第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの少なくともある領域を含み得る。免疫グロブリン融合ポリペプチドは当技術分野において知られており、例えば、米国特許第5,225,538号、第5,428,130号、第5,514,582号、第5,714,147号および第5,455,165号に記載されている。
必要に応じ、第2のポリペプチドは、全長免疫グロブリンポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば重鎖、軽鎖、Fab、Fab2、FvまたはFc等)である。
【0053】
一つの例において、第2のポリペプチドは、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能よりも低いエフェクター機能を有する。Fcエフェクター機能は、例えば、Fcレセプター結合、補体結合、およびT細胞除去活性を含む(例えば米国特許第6,136,310号参照)。T細胞除去活性、Fcエフェクター機能、および抗体安定性を検査する方法は、当技術分野において知られている。一つの実施形態において、第2のポリペプチドは、Fcレセプターに対する親和性が低い、または親和性を有さない。別の実施形態において、第2のポリペプチドは、補体タンパク質C1qに対する親和性が低い、または親和性を有さない。
好ましい第2のポリペプチドの配列は、配列番号6のアミノ酸配列を含む。この配列は、Fc領域を含む。下線が引かれたアミノ酸は、野生型免疫グロブリン配列の対応する位置に見られるアミノ酸とは異なるものである:
【化3】
【0054】
融合タンパク質は、第1部分を第2部分に結合させるリンカー配列を更に含み得る。例えば、融合タンパク質は、約4〜20個のアミノ酸、より好ましくは5〜10個のアミノ酸、そして最も好ましくは約8個のアミノ酸の長さからなるペプチドリンカーを含み得る。ペプチドリンカー内のアミノ酸は、例えばGly、Ser、Asn、ThrおよびAlaを含み得る。このように、ペプチドリンカーは、Gly−Serエレメントから成り得る。その他の実施形態において、融合タンパク質は、式(Ser−Gly−Gly−Gly−Gly)yを有するペプチドリンカーを含み、ここで、「y」は1、2、3、4、5、6、7または8である。
その他の実施形態において、発現、検出および/または単離、または精製を促進するために、融合タンパク質のN末端またはC末端に、更にアミノ酸配列を追加し得る。例えば、IL−21/IL−21R融合タンパク質は、例えばGST(すなわちグルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、His、FLAGまたはmycタグなどの1つ以上の更なる部分に結合され得る。例えば、融合タンパク質は、GSTペプチドを更に含み得、その場合において、融合タンパク質配列は、GST配列のC末端に融合されている。このような融合タンパク質は、IL−21R/MU−1融合タンパク質の精製または同定を促進する。その他の実施形態において、発現、立体化学的柔軟性、検出および/または単離、または精製を促進するために、更なるアミノ酸配列は、融合タンパク質のN末端またはC末端に追加され得る。
【0055】
融合タンパク質はまた、そのN末端において、非相同のシグナル配列をも含み得る。例えば、天然のIL−21Rシグナル配列は、除去され、別のタンパク質由来のシグナル配列に置換され得る。ある宿主細胞(例えば哺乳動物の宿主細胞)において、非相同のシグナル配列を使用して、IL−21Rの発現および/または分泌が増加され得る。融合タンパク質に含有され得るシグナルペプチドは、MPLLLLLLLLPSPLHP(配列番号9)である。所望であれば、IL−21R/MU−1部分を含む第1のポリペプチド部分と第2のポリペプチド部分との間に、1つ以上のアミノ酸が更に挿入され得る。
本明細書に記載されたIL−21/IL−21Rアンタゴニストは、誘導体化され得るか、または、例えば別のペプチドまたはタンパク質(例えばFab’フラグメント)などの別の機能分子に結合され得る。例えば、融合タンパク質または抗体、または抗原結合部分が、例えば、とりわけ抗体(例えば二重特異性抗体または多重特異性抗体)、毒素、放射性同位体、細胞毒性薬、細胞増殖抑制剤などの1つ以上のその他の分子的実体に、機能的に結合され得る(例えば、化学的結合、遺伝子融合、非共有結合性会合ないしは別の方法によって)。
【0056】
本発明のキメラタンパク質または融合タンパク質は、標準的なDNA組み換え技術によって生成され得る。例えば、ライゲーションのための平滑末端または粘着末端、適切な末端を作り出すための制限酵素での消化、必要に応じた粘着末端の穴埋め、所望ではないライゲーションを避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素によるライゲーションなどを採用することにより、従来の技術に従って、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントをインフレームで結びつける。別の実施形態においては、融合遺伝子が、自動DNA合成装置を含む従来技術によって合成され得る。あるいは、キメラ遺伝子配列を産生するために後でアニールおよび再増幅され得る2つの連続した遺伝子フラグメント間の相補的なオーバーハングを引き起こすアンカープライマーを使用して、遺伝子フラグメントのPCR増幅が行われ得る(例えば、Ausubelら(既出)参照)。更に、融合部分(例えば免疫グロブリン重鎖のFc領域)をコードする多数の発現ベクターが市販されている。融合部分が免疫グロブリンタンパク質にインフレームで結合されるように、IL−21R/MU−1またはIL−21をコードする核酸が、このような発現ベクター内にクローニングされ得る。いくつかの実施形態において、IL−21R/MU−1またはIL−21融合ポリペプチドは、二量体または三量体などのオリゴマーとして存在する。当技術分野において知られている方法を使用して、IL−21R/MU−1またはIL−21モノマー、および/またはIL−21R/MU−1またはIL−21をコードする核酸が構築され得る。
【0057】
(核酸の生成)
IL−21RまたはIL−21ポリペプチド(そのフラグメントおよび融合を含む)を遺伝子組み換え的に生成するために、本発明の単離されたポリヌクレオチドが、Kaufmanら、(1991) Nuc. Acids Res. 19:4485-90に開示されているpMT2またはpED発現ベクターなどの発現調節配列に、作動可能に結合され得る。多数の適切な発現調節配列が、当技術分野において知られている。組み換えタンパク質を発現する一般的な方法もまた知られており、Kaufman (1990) Meth. Enzym. 185:537-66に例示されている。本明細書に定義される通り、「作動可能に結合され」とは、IL−21RまたはIL−21ポリペプチドが、ライゲーションされたポリヌクレオチド/発現調節配列により形質転換(トランスフェクト)されている宿主細胞によって発現されるように、酵素的または化学的にライゲーションされて、本発明の単離されたポリヌクレオチドと発現調節配列との間に共有結合を形成することを意味する。
【0058】
本明細書において使用される用語「ベクター」は、結合されている別の核酸を移送することが可能な核酸分子を指すことが意図される。ベクターの一つのタイプが「プラスミド」であり、これは、更なるDNAセグメントがライゲーションされ得る円形で二本鎖のDNAループを指す。別のタイプのベクターにはウイルスベクターがあり、ウイルスのゲノムに、更なるDNAセグメントがライゲーションされ得る。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自己複製が可能である(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクターおよび哺乳動物のエピソームベクターなど)。その他のベクター(例えば哺乳動物の非エピソームベクターなど)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノム内に統合され得、それによって宿主のゲノムと共に複製される。更に、ある種のベクターは、動作可能に結合された遺伝子の発現を指示することが可能である。このようなベクターは、本明細書において「組み換え発現ベクター」(または単純に「発現ベクター」)と称される。一般的に、DNA組み換え技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態をとる場合が多い。本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」は同じ意味で使用され得る。なぜならば、プラスミドは最も一般的に使用されるベクターの形態であるからである。しかし、本発明は、同等な機能を有するウイルスベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などの、その他の形態の発現ベクターをも含むことを意図する。
【0059】
本発明の組み換え発現構成体は、調節配列(すなわち、複製起点、目的のポリペプチド(またはペプチド)をコードする核酸配列の転写などのベクターの複製、またはコードされたポリペプチドの発現を調節する配列)ヒスチジン等のタグ配列、および選択可能なマーカー遺伝子などの、更なる配列を有し得る。用語「調節配列」は、転写、複製または翻訳をコントロールするプロモーター、エンハンサー、およびその他の任意の発現調節エレメント(例えばポリアデニル化信号、転写スプライス部位)を含むことが意図される。このような調節配列は、例えば、Goeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1990)に記載されている。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、宿主細胞の選択および所望のタンパク質発現のレベルを含む多様な要因に依存するであろうことが、当業者によって理解されるであろう。哺乳動物の宿主細胞においてタンパク質を発現するための好ましい調節配列には、FF−1aプロモーターおよびBGHポリA、サイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例えばアデノウイルスメジャーレイトプロモーター(AdMLP))、およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルスエレメントが含まれる。ウイルス性の調節エレメント、およびその配列は、例えば米国特許第5,168,062号、第4,510,245号および第4,968,615号に記載されている。
【0060】
本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点および終了配列など)および選択マーカー遺伝子などの、更なる配列を含み得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を促進する(例えば米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号(全てAxelら)参照)。例えば、選択マーカー遺伝子は典型的に、G418(ジェネティシン)、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの化合物に対する、選択マーカーでトランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞の耐性を与える。好ましい選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサートの選択/増幅と共にdhfr ̄宿主細胞内で使用するため)、neo遺伝子(G418選択のため)、および細菌に対するテトラサイクリンおよび/またはアンピシリン耐性を与える遺伝子が含まれる。
【0061】
プロモーター配列、終了配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子およびその他の必要に応じた配列を含む適切な調節配列を含有する適切なベクターが、選択、あるいは構成され得る。pTet−On(登録商標)およびpTet−Off(登録商標)(クローンテック社、カリフォルニア州パロアルト)等テトラサイクリン誘導可能なベクターなどの、誘導可能なプロモーター配列を有するベクターを使用することによって達成されるタンパク質の誘導可能な発現もまた、開示された方法において使用することができる。発現ベクターに関する更なる詳細については、例えば既出のSambrookらを参照されたい。例えば、核酸構成体の調製、突然変異生成、シークエンシング、細胞内へのDNAの導入、遺伝子発現、およびタンパク質の分析において核酸を操作するための多くの知られている技術およびプロトコルもまた、既出のSambrookらに詳しく記載されている。
【0062】
多くのタイプの細胞が、IL−21R/MU−1またはIL−21またはその融合タンパク質の発現に適切な宿主細胞として作用し得る。機能的IL−21R/MU−1またはIL−21タンパク質またはその融合を発現可能な、任意の細胞タイプが使用され得る。適切な哺乳動物の宿主細胞には、例えば、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓293細胞、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、3T3細胞、CV−1細胞、その他の形質転換された霊長類の細胞株、正常2倍体細胞、一次組織のインビトロでの培養に由来する細胞株、初代外植片、HeLa細胞、マウスL細胞、BHK細胞、HL−60細胞、U937細胞、HaK細胞、C3H10T1/2細胞、Rat2細胞、BaF3細胞、32D細胞、FDCP−1細胞、PC12細胞、M1x細胞、C2C12細胞が含まれる。
【0063】
IL−21RまたはIL−21ポリペプチドまたはその融合タンパク質はまた、1つ以上の昆虫発現ベクターにおいて、本発明の単離されたポリヌクレオチドを適切な制御配列に作動可能に結合し、昆虫の発現系を利用することによって生成することができる。バキュロウイルス/Sf9の発現系のための材料および方法は、キットの形態で市販されている(例えば、MAXBAC(登録商標)キット、インビトロジェン社、カリフォルニア州カールスバッド)。本明細書に記載されているポリペプチドの可溶性の形態もまた、上述のように適切な単離されたポリヌクレオチドを使用して、昆虫の細胞内で生成され得る。
【0064】
あるいは、IL−21RまたはIL−21ポリペプチドまたはその融合タンパク質は、酵母菌などの下等真核生物内で、または、細菌などの原核生物内で生成され得る。適切な酵母菌株には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリヴェロマイセス(Kluyveromyces)株、カンジダ菌、または、異種タンパク質を発現可能な任意の酵母菌株が含まれる。適切な細菌株には、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、または、異種タンパク質を発現可能な任意の細菌株が含まれる。細菌内での発現の結果、組み換えタンパク質を組み込んだ封入体が形成され得る。このように、活性の、またはより活性の材料を生成するためには、組み換えタンパク質のリフォールディングが必要な場合がある。細菌の封入体由来の正しくリフォールディングされた異種タンパク質を得るためのいくつかの方法が、当技術分野において知られている。これらの方法は、一般的に、封入体由来のタンパク質を可溶化し、次にカオトロピック剤を使用してタンパク質を完全に変性させる工程を伴う。タンパク質の一次アミノ酸配列にシステイン残基が存在する場合、しばしば、ジスルフィド結合の正しい形成を可能にする環境(酸化還元系)において、リフォールディングを達成することが必要である。リフォールディングの一般的な方法は、Kohno (1990) Meth. Enzym. 185:187-95、欧州特許第0433225号および米国特許第5,399,677号において開示されている。
【0065】
本発明のタンパク質(またはそのフラグメントまたは融合)はまた、例えば、トランスジェニックなウシ、ヤギ、ブタ、またはヒツジのミルクの成分として等、トランスジェニック動物の生成物として発現され得、これらは、例えば、IL−21RまたはIL−21またはその融合タンパク質をコードする等、ポリヌクレオチド配列を含有する体細胞または胚細胞によって特徴づけられる。従って、タンパク質は、その所望のタンパク質を発現するために必要な培養条件下で、培養で形質転換された宿主細胞を育てることにより調製することができる。結果として得られた発現されたタンパク質は、次に、培地または細胞抽出物から精製することができる。タンパク質の可溶性の形態は、ならし培地から精製することができる。本発明のIL−21Rタンパク質の膜に結合された形態は、発現細胞から総膜画分を調製し、TRITON(登録商標)X−100(EMDバイオサイエンス社、カリフォルニア州サンディエゴ)等の非イオン系洗剤を使用して膜を抽出することにより精製することができる。
【0066】
本明細書に記載されるポリペプチドは、当業者に知られている方法を使用して精製することができる。例えば、本発明のタンパク質は、AMICON(登録商標)またはPELLICON(登録商標)限外ろ過装置(ミリポア社、マサチューセッツ州ビレリカ)等、市販のタンパク質濃縮フィルターを使用して濃縮することができる。濃縮工程に続き、濃縮物は、ゲルろ過媒体等の精製マトリックスに適用することができる。あるいは、例えばペンダントしているジエチルアミノエチル(DEAE)またはポリエチレンイミン(PEI)基を有するマトリックスまたは基質などの、陰イオン交換樹脂が利用できる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質の精製に一般的に利用されるその他のタイプであってよい。あるいは、陽イオン交換工程が利用できる。適切な陽イオン交換には、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含む多様な不溶性マトリックスが含まれる。スルホプロピル基が好ましい(例えばS−SEPHAROSE(登録商標)カラム、シグマ・アルドリッチ社、ミズーリ州セントルイス)。培養上清からのIL−21R/MU−1タンパク質または融合タンパク質の精製はまた、コンカナバリンA−アガロース、AF−HEPARIN650、ヘパリン−TOYOPEARL(登録商標)またはチバクロンブルー3GA SEPHAROSE(登録商標)(トーソー・バイオサイエンス社、カリフォルニア州サンフランシスコ)等の親和性樹脂に対する;または、フェニルエーテル、ブチルエーテルまたはプロピルエーテル等の樹脂を使用した疎水性相互作用クロマトグラフィーによる;または免疫親和性クロマトグラフィーによる1つ以上のカラム工程を含む。最後に、IL−21R/MU−1またはIL−21タンパク質を更に精製するために、例えばペンダントしているメチル基またはその他の脂肪族基を有するシリカゲル等の、疎水性RP−HPLC媒体を利用した、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)の1つ以上の工程が利用され得る。本発明のタンパク質に対する抗体を含む親和性カラムもまた、知られている方法に従って精製において使用され得る。実質的に精製された単離された組み換えタンパク質を提供するために、前述の精製工程のいくつか、または全てはまた、多様な組み合わせで、またはその他の知られている方法と共に利用され得る。好ましくは、単離されたタンパク質は、その他の哺乳動物のタンパク質から実質的に遊離されるように精製される。
【0067】
(抗体の生成)
本発明のIL−21またはIL−21Rポリペプチドは、IL−21またはIL−21Rと特異的に反応してIL−21および/またはIL−21Rの発現または活性を調節するか、またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを調節する、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を得るために、動物に免疫性を与えるために使用できる。このような抗体は、例えば、IL−21R全体またはそのフラグメントを免疫原として使用して得ることができる。ペプチド免疫原は、カルボキシル末端にシステイン残基を更に含有し得、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等のハプテンに結合され得る。更なるペプチド免疫原が、チロシン残基を硫酸化チロシン残基で置換することにより産生され得る。このようなペプチドを合成する方法は、当技術分野において知られており、例えば、Merrifield (1963) J. Amer. Chem. Soc. 85:2149-54およびKrstenanskyおよびMao (1987) FEBS Lett. 211:10-16に記載されている。
【0068】
IL−21またはIL−21Rに対するヒトモノクローナル抗体(mAbs)は、マウス系よりもヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを使用して産生され得る。ヒトタンパク質由来のエピトープに特異的な親和性を有するヒトmAbsを分泌するハイブリドーマを生成するために、目的の抗原で免疫性が与えられたこれらトランスジェニックマウス由来の脾細胞が使用される(例えば、国際公開第WO91/00906号、第WO91/10741号、第WO92/03918号および第WO92/03917号、Lonbergら、(1994) Nature 368:856-59;Green ら、(1994) Nat. Genet. 7:13-21、Morrisonら、(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851-55;およびTuaillonら、(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:3720-24参照)。
【0069】
モノクローナル抗体はまた、当業者に知られているDNA組み換え技術に関するその他の方法によって産生され得る。特別な抗原特異性を有する抗体フラグメントを同定および単離するために、「組合せ抗体ディスプレイ」方法と称される一つの典型的な方法が開発されており、モノクローナル抗体を生成するために利用され得る(組合せ抗体ディスプレイに関する記述については、例えばSastryら、(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:5728-32;Huseら、(1989) Science 246:1275-81;およびOrlandiら、(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:3833-37参照)。上述の通り免疫原で動物に免疫性を与えた後、得られたB細胞プールの抗体のレパートリーがクローニングされる。免疫グロブリン分子の異なる集団の可変領域のDNA配列は、オリゴマープライマーおよびPCRの混合物を使用して得られ得る。例えば、5’リーダー(シグナルペプチド)配列および/またはフレームワーク1(FR1)配列、および保存3’定常領域プライマーに対するプライマーに対応する混合されたオリゴヌクレオチドプライマーが、多数のマウス抗体由来の重鎖および軽鎖の可変領域のPCR増幅に使用され得る(Larrickら、(1991) BioTechniques 11:152-56参照)。ヒト抗体由来のヒト重鎖および軽鎖可変領域を増幅するためにも、類似の戦略が使用され得る(Larrickら、(1991) Methods: Companion to Methods in Enzymology 2:106-10参照)。
【0070】
キメラ免疫グロブリン鎖を含むキメラ抗体もまた、当技術分野において知られているDNA組み換え技術によって生成され得る。例えば、マウス(またはその他の種)のモノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子は、マウスFcをコードする領域を除去するために制限酵素を使用して切断され、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子の対応部分が置換される(PCT/US86/02269;欧州特許第184,187号;欧州特許第171,496号;欧州特許第173,494号;WO86/01533;米国特許第4,816,567号;欧州特許第125,023号;Betterら、(1988) Science 240:1041-43;Liuら、(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:3439-43;Liuら、(1987) J. Immunol. 139:3521-26;Sunら、(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:214-18;Nishimuraら、(1987) Canc. Res. 47:999-1005;Woodら、(1985) Nature 314:446-49;およびShawら、(1988) J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-59参照)。
【0071】
所望であれば、抗体または免疫グロブリン鎖は、当技術分野において知られている方法によってヒト化され得る。ヒト化された免疫グロブリン鎖を含むヒト化抗体は、抗原結合に直接に関与しないFv可変領域の配列を、ヒトFv可変領域由来の対応する配列で置換することによって産生され得る。ヒト化抗体を産生する一般的な方法は、Morrison (1985) Science 229:1202-07;Oiら、(1986) BioTechniques 4:214-21;および米国特許番号5,585,089、5,693,761および5,693,762によって提供され、これらの全てが、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。これらの方法には、重鎖または軽鎖のうちの少なくとも1つ由来の免疫グロブリンFv可変領域の全部または一部をコードする核酸配列を単離、操作および発現する工程が含まれる。このような核酸のソースは当業者に周知であり、例えば、所定の標的に対する抗体を生成するハイブリドーマから得られ得る。ヒト化抗体またはそのフラグメントをコードする組み換えDNAは、次に適切な発現ベクター内にクローニングされ得る。
【0072】
ヒト化またはCDRグラフト化抗体分子または免疫グロブリンは、CDRグラフト化またはCDR置換によって生成され得、ここで、免疫グロブリン鎖のうちの1つ、2つ、または全てのCDRが置換され得る。例えば、米国特許番号5,225,539;Jonesら、(1986) Nature 321:552-25;Verhoeyanら、(1988) Science 239:1534-36;およびBeidlerら、(1988) J. Immunol. 141:4053-60参照。これらは全て、その全体を引用することによって、本明細書の一部となす。米国特許番号5,225,539には、本発明のヒト化抗体を調製するために使用され得るCDRグラフト化方法が記載されている(英国特許公開第2188638号も参照されたい)。特定のヒト抗体のCDR全てが、非ヒトCDRの少なくとも一部で置換され得るか、またはCDRのいくつかのみが非ヒトCDRで置換され得る。ヒト化抗体を所定の抗原に結合させるのに必要なCDRの数を置換しさえすればよい。
【0073】
定常領域等、抗体のその他の部分を欠失、追加、または置換等することによって改変されているモノクローナル抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体もまた、本発明の範囲内にある。例えば、抗体は以下のようにして改変され得る:(i)定常領域を欠失させる;(ii)定常領域を別の定常領域、例えば、抗体の半減期、安定性および親和性を増加させることが意図される定常領域、または、別の種または別のクラスの抗体由来の定常領域などで置換する;または(iii)例えば、特に糖鎖付加部位の数、エフェクター細胞の機能、Fcレセプター(FcR)結合、補体結合を変えるために、定常領域内の1つ以上のアミノ酸を改変する。
【0074】
抗体の定常領域を変える方法は、当技術分野において知られている。変えられた機能(例えば、細胞上のFcR等のエフェクターリガンド、または補体のC1成分に対する変えられた親和性)を有する抗体は、抗体の定常領域内の少なくとも1つ以上のアミノ酸残基を別の残基で置換することによって生成され得る(例えば、欧州特許公開第388,151号、米国特許第5,624,821号および第5,648,260号参照。これらは全て、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす)。類似のタイプの変化が、マウス免疫グロブリンおよびその他の種由来の免疫グロブリンにも適用され得る。例えば、特定の残基を側鎖に適切な機能性を有する残基で置換することによって、または、グルタメートまたはアスパルテート等の荷電された官能基あるいは多分フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンまたはアラニン等の芳香族非極性残基を導入することによって、FcR(例えばFcγR1)またはC1q結合への抗体のFc領域(例えばヒトIgG等のIgG)の親和性を変えることが可能である(例えば米国特許第5,624,821号参照)。
【0075】
抗原によるチャレンジに応えて、その動物の内因性抗体よりもむしろ完全にヒト抗体を生成するように改変されたトランスジェニック非ヒト動物を使用して、IL−21および/またはIL−21Rに対するヒト抗体が、更に生成され得る。例えば国際公開第WO94/02602号参照。非ヒト宿主における免疫グロブリン重鎖および軽鎖をコードする内因性遺伝子は、機能しないようにされており、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖をコードする活性の遺伝子座が、宿主のゲノムに挿入される。ヒト遺伝子は、例えば、必要なヒトDNAセグメントを含有する酵母菌の人工染色体を使用して組み込まれる。そして、改変の全てよりも少ない種類の改変を含有する中間のトランスジェニック動物を異種交配することによって、所望の改変全てを提供する動物が、後代として得られる。このような非ヒト動物の一つの実施形態がマウスであり、XENOMOUSE(登録商標)と称され、国際公開第WO96/33735号および第WO96/34096号に開示されている。この動物は、完全にヒトの免疫グロブリンを分泌するB細胞を生成する。抗体は、例えばポリクローナル抗体の調製としての目的の免疫原での免疫付与後に該動物から直接に得られるか、あるいは、モノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ等、該動物由来の不死化B細胞から直接に得られる。更に、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子が、抗体を直接得るために回収および発現され得、あるいは、例えば単鎖Fv分子等の抗体のアナログを得るために更に改変され得る。
【0076】
IL−21および/またはIL−21Rの活性を調節するために、その他のタンパク質結合分子も利用することができる。このようなタンパク質結合分子には、小モジュラー免疫薬学的(small modular immunopharmaceutical、SMIP(登録商標))薬物(Trubion Pharmaceuticals社、ワシントン州シアトル)が含まれる。SMIPは、抗原やカウンターレセプター等の同種構造のための結合ドメイン;システイン残基を1つ有する、または有さないヒンジ領域のポリペプチド;および免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインから構成される単鎖ポリペプチドである(www.trubion.comも参照のこと)。SMIP、その使用および適用については、例えば米国特許出願公開第2003/0118592号、第2003/0133939号、第2004/0058445号、第2005/0136049号、第2005/0175614号、第2005/0180970号、第2005/0186216号、第2005/0202012号、第2005/0202023号、第2005/0202028号、第2005/0202534号、および第2005/0238646号、ならびにそれに関連するパテントファミリーメンバーに開示されており、それらは全て、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
本明細書において述べられている通り、IL−21RまたはIL−21またはその融合タンパク質に結合する中和抗体または非中和抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、線維症および線維症に関連した状態等の免疫状態の治療において有用であり得る。
従って、本発明は、IL−21またはIL−21Rまたはその融合タンパク質と特異的に反応する抗体を含む組成物を更に提供する。
【0077】
(スクリーニングアッセイ)
本発明のIL−21RまたはIL−21ポリペプチドまたは融合タンパク質はまた、IL−21またはIL−21Rに結合可能で、例えばIL−21および/またはIL−21Rの活性レベル、IL−21および/またはIL−21Rの発現レベル(例えばIL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物のレベル等)、および/またはIL−21とIL−21R間の相互作用のレベル等のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを調節可能な薬剤をスクリーニングするために使用され得る。支持体から離れていても固定されていても良い、本発明のタンパク質またはその結合パートナーを使用した結合アッセイは、当技術分野において周知である。本発明のIL−21RまたはIL−21ポリペプチドまたは融合タンパク質に対する結合パートナーおよび/またはリガンド(天然または合成、例えば試験化合物)を同定するために、精製された細胞ベースまたはタンパク質ベース(無細胞)のスクリーニングアッセイが使用され得る。例えば、IL−21Rはキャリア上に精製された形態で固定され得、IL−21Rに対する潜在的リガンドの結合が測定され得る。
【0078】
(IL−21に関連した、線維症および線維症に関連した障害の進行を診断、予知およびモニタリングする方法)
本発明は、IL−21および/またはIL−21Rのレベルを検出および/または測定すること等により、IL−21および/またはIL−21Rに関連した障害、すなわち、線維症または線維症に関連した状態または障害の進行を診断、予知およびモニタリングする(例えば治療過程をモニタリングする)方法を提供する。ここで、「IL−21および/またはIL−21Rのレベル」のフレーズおよびそれに相当する語句は、(1)IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物の発現レベル(例えば、目的の細胞または試料内におけるIL−21および/またはIL−21Rタンパク質および/またはmRNAのレベル);(2)IL−21タンパク質および/またはIL−21Rタンパク質の活性レベル(例えば、Th2サイトカイン発現および/または目的の細胞または試料内の機能);および(3)IL−21とIL−21Rの相互作用のレベル(例えば、目的の細胞または試料内において)を含むが、これらに限定されない。例えば、本発明は、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物および/または活性の上方調節または下方調節の検出、および/またはIL−21のIL−21R等との相互作用の測定による診断、予知およびモニタリングの方法を提供する(ヒトの被検体におけるこのような方法の使用を含むが、これに限定されない)。IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルを生成するまたは得るために、IL−21および/またはIL−21Rのレベルはまた、基準の目的の細胞または試料において測定され得る。または、このような基準レベルは、その他の方法を通じて入手され得るか、あるいは当業者に一般的に知られているものである。これらの方法は、例えば、臨床設定において便利に使用され得る、本明細書に記載されたIL−21またはIL−21Rポリヌクレオチド(またはそのフラグメント);IL−21またはIL−21Rポリペプチド(またはそのフラグメントおよび/または融合タンパク質);IL−21またはIL−21Rポリペプチドに対する抗体(またはその誘導体、またはその抗原結合性フラグメント);またはIL−21またはIL−21Rポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドのモジュレータを含む群より少なくとも1つを含む、予めパッケージされた診断的キットを利用すること等によって実施され得る。
【0079】
「診断的」または「診断」とは、病的状態が存在するかしないかを断定することを意味する。診断的方法には、被検体(ヒトまたは非ヒト哺乳動物)由来の生体試料内のIL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物(例えば、RNA、cDNAまたはポリペプチド。そのフラグメントを含む)の試験量を測定することによって、IL−21および/またはIL−21Rの活性を測定することによって、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを測定することによって、IL−21および/またはIL−21Rのレベルの上方調節を検出し、試験量を、例えば正常量または正常範囲(例えば、IL−21に関連した障害にかかっていないことがわかっている個体由来の量または範囲、あるいは、線維症または線維症に関連した状態にかかっていないことがわかっている個体由来の量または範囲)と比較することが含まれるが、これらに限定されない。特定の診断的方法は、IL−21に関連した障害に関する確実な診断を提供しないかも知れないが、該方法が、診断に役立つ肯定的な兆しを提供するのであれば、十分である。
【0080】
本発明はまた、例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物および/または活性の上方調節を検出すること、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを測定すること等、IL−21および/またはIL−21Rのレベルの上方調節を検出することによって、このような障害を予知する方法を提供する。「予知的」または「予知」とは、病的状態の進行の可能性および/または重症度を予測することを意味する。予知的方法には、被検体由来の生体試料内のIL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物の試験量を測定し、その試験量を、IL−21および/またはIL−21Rのレベルの予知的量または範囲(すなわち、様々な重症度の障害、すなわち、例えばIL−21に関連した、線維症および/または線維症に関連した状態にかかっている個体由来の量または範囲)と比較することが含まれる。試験試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルに関連した多様な量が、例えば、IL−21および/またはIL−21Rに関連した、線維症または線維症に関連した状態または障害等の障害に関するある予知と一致する。特定の予知的レベルにおけるIL−21および/またはIL−21Rレベルの量の検出は、被検体に関する予知を提供する。
【0081】
本発明はまた、例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物、活性、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用の上方調節を検出すること等、IL−21および/またはIL−21Rのレベルの上方調節を検出することによって、IL−21に関連したこのような障害の進行または過程をモニタリングする方法を提供する。モニタリングの方法には、1回目および2回目に被検体から採取された生体試料におけるIL−21の遺伝子産物の試験量を測定し、それらの量を比較することが含まれる。1回目と2回目の間でのIL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物の量の変化は、IL−21に関連した障害の過程における変化を示し、量の減少は、このような障害の寛解を、量の増加は、このような障害の進行を示す。このようなモニタリングアッセイはまた、線維症または線維症に関連した障害の治療を受けている患者における特定の治療的介入の有効性を評価するのにも有用である。
【0082】
(IL−21および/またはIL−21Rのレベルの測定)
本明細書において略述された本発明の方法(例えば、線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するための化合物をスクリーニングおよび/または同定する方法、線維症または線維症に関連した状態の進行を診断、予知および/またはモニタリングする方法、および、線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防する方法等)におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベル(例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物、活性および/または相互作用のレベル等)は、体液(例えば、全血、血漿および尿等)、細胞(例えば、全細胞、細胞分画および細胞抽出物等)、およびその他の組織を含む多様な生体試料内において測定され得る。生体試料にはまた、組織学的目的で採取された生検材料および凍結切片等の組織の切片が含まれる。好ましい生体試料には、血液、血漿、リンパ液、組織生検材料、尿、CSF(脳脊髄液)、滑液、およびBAL(気管支肺胞洗浄)が含まれる。生体試料の分析において、必ずしも被検体から細胞または組織を取り出す必要はないことが理解されるであろう。例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物(例えば抗体や核酸等)に結合する適切に標識された薬剤が、被検体に投与され得、標準的な画像技術(例えばCAT、NMR(MRI)およびPET)を使用して視覚化され得る(標的に結合された時)。
【0083】
線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防する方法において、被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防するための化合物を同定する方法において、および、本発明の診断的、予知的、およびモニタリングアッセイおよび方法において、試験量を産生するために、IL−21および/またはIL−21Rのレベルが検出および測定される。試験量は次に、例えば正常量または正常範囲と比較される。例えば、正常量または正常範囲を超える量(例えばより高いレベル)は、IL−21に関連した障害の診断における肯定的な徴候である。
IL−21および/またはIL−21Rの正常量またはベースライン値は、任意の特定の試料タイプおよび集団について測定され得る。一般的に、IL−21および/またはIL−21Rのベースライン値(正常値)は、正常な(すなわち健康な)被検体由来の生体試料タイプ内においてL−21および/またはIL−21Rのそれぞれのレベルを測定することにより決定される。あるいは、IL−21および/またはIL−21Rの正常レベルは、病気の(または病気の可能性のある)試験細胞または試験組織が採取された同じ被検体から採取された健康な細胞または組織における量を測定することにより決定され得る。IL−21および/またはIL−21Rのレベル(正常量または試験量)は、細胞当たり、総タンパク質当たり、または容積当たりで測定または発現され得る。試料の細胞量を測定するために、構造的に発現された遺伝子産物、または生体試料が採取されたタイプの細胞において知られたレベルで発現されたその他の遺伝子産物のレベルが測定され得る。
【0084】
本発明のアッセイ方法は、IL−21および/またはIL−21Rのレベルに関する絶対値の測定は、必ずしも必要ではないことが理解されるであろう。なぜならば、これらの方法の適用の多くにおいて、相対値で十分であるからである。また、IL−21および/またはIL−21Rのレベルの量または存在度に加え、変形した、または異常なIL−21および/またはIL−21Rのレベル、またはそれらの発現パターン(例えば、変異転写物、短縮ポリペプチド等)が、正常なレベルおよび発現パターンと比較することによって同定され得ることが理解されるであろう。
2つの試料における特定の遺伝子またはタンパク質のレベルが、それぞれ増加している(すなわち高まっている)か、または減少している(すなわち低くなっている)か(例えば、所定のレベルを有意に上回るか、または有意に下回るか)は、遺伝子そのものと、とりわけ、異なる個体または異なる試料間における発現、活性および/またはリガンドとの相互作用における変動性に依存する。試料間でIL−21および/またはIL−21Rのレベルが有意に類似しているか、または異なっているかを決定することは、当技術分野における技術の範囲内である。2つの試料間でのIL−21および/またはIL−21Rのレベルが増加しているか、または減少しているかを決定するために、個体、種、器官、組織、または細胞間での遺伝的多様性などの要因が考慮され得る(必要に応じて)。個体、種、器官、組織、または細胞間でのIL−21および/またはIL−21Rのレベルにおける天然の不均質性の結果として、「有意に上回る」または「有意に下回る」等のフレーズは、正確なパーセンテージまたは値として定義され得ないが、むしろ、本発明を実施すれば、当業者によって確認され得る。IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物、活性および相互作用を検出および測定する特定の方法が、本明細書に記載されている。
【0085】
IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物を測定するためのアッセイ
本発明の方法には、例えば、IL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物のレベル、IL−21および/またはIL−21Rの活性レベル、および/またはIL−21とIL−21Rの相互作用のレベル等、生体試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルを検出および定量化することが含まれる。IL−21およびIL−21Rの遺伝子産物には、mRNAおよびポリペプチドが含まれ、どちらも、当業者に周知の方法を使用して測定され得る。
例えば、mRNAは、ノーザンハイブリダイゼーション、インシトゥハイブリダイゼーション、ドットおよびスロットブロット、およびオリゴヌクレオチドアレイ等のハイブリダイゼーションをベースにしたアッセイを使用して、直接検出および定量化され得る。ハイブリダイゼーションをベースにしたアッセイとは、プローブ核酸が標的核酸にハイブリダイズされるアッセイのことを言う。いくつかのフォーマットにおいて、標的、プローブまたはその両方が固定される。固定された核酸は、DNA、RNA、または別のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであってよく、天然または非天然のヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、またはバックボーンを含み得る。本発明において使用するための核酸プローブ配列を選択する方法(例えば、IL−21の核酸配列に基づき)は、当技術分野において周知である。
【0086】
あるいは、mRNAは、検出および定量化前に増幅され得る。このような増幅をベースにしたアッセイは、当技術分野において周知であり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写式PCR(RT−PCR)、PCR−酵素免疫測定法(PCR−ELISA)、およびリガーゼ連鎖反応(LCR)を含む。増幅されたIL−21の遺伝子産物(例えば、mRNA、cDNA等)を生成および検出するためのプライマーおよびプローブは、IL−21および/またはIL−21Rの核酸配列に基づき、当業者による過度の実験の必要なく、容易に設計および生成され得る。増幅されたIL−21および/またはIL−21Rの遺伝子産物は、例えば、ゲル電気泳動;プローブ核酸へのハイブリダイゼーション;配列決定;蛍光シグナル、リン光性シグナルまたは放射性シグナルの検出;または多様な周知の方法のうちのいずれか、によって直接分析され得る。加えて、標的核酸配列の増幅によって生成されるシグナルを増加させるものとして、方法は当業者に知られている。どの増幅法が使用されても、遺伝子産物の定量化が望まれる場合に、当技術分野において知られている多様な定量方法(たとえば定量PCR)が使用され得ることを、当業者は認識するであろう。
【0087】
IL−21および/またはIL−21Rポリペプチド(またはそのフラグメント)は、当明細書に記載されるように産生され得る抗IL−21抗体および/または抗IL−21R抗体それぞれを利用する多様な周知の免疫アッセイを使用して検出され得る。免疫アッセイとは、例えばIL−21ポリペプチド(またはそのフラグメント)等に特異的に結合する抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、scFv抗体、および/またはそのフラグメント)を利用するアッセイのことを言う。本発明の実施に適切なこうした周知の免疫アッセイには、ELISA、放射免疫測定(RIA)、免疫沈降、免疫蛍光、蛍光活性化細胞分類(FACS)、およびウエスタンブロット法が含まれる。当業者であれば、IL−21ポリペプチドが、標識されたIL−21Rポリペプチドを使用しても検出され得ることも認識するであろう。当業者であれば、前述の方法が、IL−21に関連した障害、特に、線維症または線維症に関連した状態に適用され得ることを理解するであろう。
【0088】
(IL−21および/またはIL−21Rの活性を測定するためのアッセイ)
IL−21/IL−21Rの活性(例えば、サイトカイン生成および細胞の増殖/分化のモジュレータとしてのIL−21/IL−21Rアンタゴニストに反応して)は、32D、DA2、DA1G、T10、B9、B9/11、BaF3、MC9/G、M+(preB M+)、2E8、RB5、DA1、123、T1165、HT2、CTLL2、TF−1、Mo7eおよびCMKを含むがこれらに限定されない細胞株に関する多数のルーチンな因子依存性細胞増殖アッセイのうちの任意の一つを使用して試験され得る。
T細胞または胸腺細胞の増殖に関するアッセイは、例えば、Current Protocols in Immunology、Coliganら(編)、Greene Pub. Assoc. & WILey-Interscience、NY、NY(1991)(第3章「マウスのリンパ球の機能についてのインビトロアッセイ(In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function)」および第7章「ヒトにおける免疫学的研究(Immunologic studies in Humans)」);Takaiら、(1986) J. Immunol. 137:3494-500;Bertagnolliら、(1990) J. Immunol. 145:1706-12;Bertagnolliら、(1991) Cell. Immunol. 133:327-41;Bertagnolliら、(1992) J. Immunol. 149:3778-83;Bowmanら、(1994) J. Immunol. 152:1756-61に記載されている。サイトカイン生成および/または脾臓細胞、リンパ節細胞または胸腺細胞の増殖に関するアッセイは、例えば、「ポリクローナルT細胞の刺激(Polyclonal T cell stimulation)」KruisbeekおよびShevach(Current Protocols in Immunology、Vol.1 Coliganら(編)、pp.3.12.1-14、John WILey and Sons、Toronto(1994));および「マウスおよびヒトのインターフェロンガンマの測定(Measurement of mouse and human Interferon gamma)」Schreiber, R. D. (Current Protocols in Immunology、Vol. 1 Coliganら(編)、pp.6.8.1-8、John Wiley and Sons、Toronto (1994))に記載されている。
【0089】
造血細胞およびリンパ球産生細胞の増殖および分化に関するアッセイは、例えば、「ヒトおよびマウスのインターロイキン2およびインターロイキン4の測定(Measurement of Human and Murine Interleukin 2 and Interleukin 4)」Bottomlyら(Current Protocols in Immunology、Vol.1 Coliganら(編)pp.6.3.1-12、John Wiley and Sons、Toronto(1991));de Vriesら、(1991) J. Exp. Med. 173:1205-11;Moreauら、(1988) Nature 336:690-92;Greenbergerら、(1983) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:2931-38;「マウスおよびヒトのインターロイキン6の測定(Measurement of mouse and human interleukin 6)」Nordan, R.(Current Protocols in Immunology、Vol.1 Coliganら(編)、pp.6.6.1-5、John Wiley and Sons、Toronto (1991));Smithら、(1986) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83:1857-61;「ヒトのインターロイキン11の測定(Measurement of human Interleukin 11)」Bennettら(Current Protocols in Immunology、Vol.1 Coliganら(編)、p.6.15.1、John Wiley and Sons、Toronto (1991));「マウスおよびヒトのインターロイキン9の測定(Measurement of mouse and human Interleukin 9)」Ciarlettaら(Current Protocols in Immunology、Vol.1. Coliganら(編)、p.6.13.1、John Wiley and Sons、Toronto (1991))に記載されている。
【0090】
抗原に対するT細胞クローンの反応に関するアッセイ(とりわけ、増殖およびサイトカイン生成を測定することによる直接的なT細胞の影響と同様、APCとT細胞の相互作用に影響を与えるタンパク質を同定するであろう)は、例えば、Current Protocols in Immunology、Coliganら(編)Greene Pub. Assoc.およびWiley-Interscience、NY、NY(1991)(第3章「マウスのリンパ球の機能についてのインビトロアッセイ(In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function)」;第6章「サイトカインおよびそれらの細胞受容体(Cytokines and their cellular receptors)」;および第7章「ヒトにおける免疫学的研究(Immunologic studies in Humans)」);Weinbergerら、(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 77:6091-95;Weinbergerら、(1981) Eur. J. Immunol. 11:405-11;Takaiら、(1986) J. Immunol. 137:3494-500;Takaiら、(1988) J. Immunol. 140:508-12に記載されたものを含む。
【0091】
(IL−21とIL−21Rの相互作用の測定のためのアッセイ)
IL−21とIL−21Rの相互作用のレベルを検出および/または測定する方法は、当技術分野において周知である。例えば、サイトカインとそのレセプター間でのこのような相互作用は、ELISA、ウエスタンブロット法、免疫沈降、ビアコア(Biacore)による分析等の技術を使用して(ただしこれらに限定されない)検出および/または測定され得る。
【0092】
(医薬組成物)
一つの局面において、本発明は、IL−21に関連した障害、すなわち、線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防する方法によって特徴づけられる。該方法は、例えばIL−21/IL−21Rアンタゴニスト等、被検体におけるIL−21および/またはIL−21Rの活性レベルを減少させる薬剤(例えば、抗IL−21R抗体、抗IL−21抗体、抗IL−21R抗体の抗原結合性フラグメント、抗IL−21抗体の抗原結合性フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメント(例えば、配列番号2の第1番目〜第538番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第538番目のアミノ酸、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第1番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第529番目のアミノ酸、配列番号5の第20番目〜第529番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第236番目のアミノ酸および配列番号5の第20番目〜第236番目のアミノ酸からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列))を、細胞またはその集団におけるIL−21の活性を阻害するのに十分な量だけ、細胞の集団に接触させる(例えば、線維症または線維症に関連した障害にかかっている、またはその危険性のある検体に投与することによって)工程を含み得る。
【0093】
線維症または線維症に関連した状態を治療するためのIL−21/IL−21Rアンタゴニストは、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わされた場合、医薬組成物として使用され得る。このような組成物は、IL−21/IL−21Rアンタゴニストおよびキャリアに加え、多様な希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、および当技術分野において周知のその他の材料を含有し得る。用語「薬学的に受容可能」とは、活性成分の生物活性の有効性を妨げない非毒性の材料を意味する。キャリアの特性は投与経路に依存し、一般的に当技術分野において周知である。
本発明の医薬組成物は、リポソームの形態であり得、この中において、IL−21/IL−21Rアンタゴニストは、他の薬学的に受容可能なキャリアに加え、脂質等の両親媒性薬剤と組み合わされ、これらは、水溶液内に存在するミセル、不溶性単分子層、液晶、またはラメラ層等の集合形態として存在する。リポソーム製剤用の適切な脂質には、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リソレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸等が含まれるが、これらに限定されない。このようなリポソーム製剤の調製は、当業者の実施レベルの範囲内にあり、例えば、米国特許番号4,235,871、4,501,728、4,837,028および4,737,323に開示されており、これらの全てが、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0094】
本明細書において使用される用語「治療上有効量」とは、例えば、このような状態に関する、症状の改善または減少、予防、治癒、または治癒の割合の増加等、重要な被検体の利益を示すのに十分な、医薬組成物または方法における各活性成分の総量を意味する。単独で投与される個々の活性成分に適用される場合、この用語は、その成分のみのことを言う。組合せに適用される場合、この用語は、併用、連続投与、同時投与の別を問わず、結果として治療効果を示すことになる、複数の活性成分の量を組み合わせたものを言う。
本発明の治療方法または使用を実施する際、治療上有効量のIL−21/IL−21Rアンタゴニストが、例えば哺乳動物(例えばヒト)等の被検体に投与される。IL−21/IL−21Rアンタゴニストは、本発明の方法のみに従って、または、本明細書により詳細に述べられるその他の治療法と組み合わせて投与され得る。1つ以上の薬剤と共に投与される場合、IL−21および/またはIL−21Rアンタゴニストは、第2薬剤と同時に、または連続して投与され得る。連続投与の場合、IL−21/IL−21Rアンタゴニストをその他の薬剤と組み合わせて投与する際の適切な順番を、担当医が決定することとなる。
【0095】
本発明の医薬組成物において使用されるIL−21/IL−21Rアンタゴニストの投与、または本発明の方法の実施は、例えば、経口摂取、吸入、あるいは、皮膚注射、皮下注射または静脈内注射等の多様な従来の方法によって行われ得る。被検体への静脈内投与が時には好ましい。治療上有効量のIL−21/IL−21Rアゴニストまたはアンタゴニストが経口投与される場合、結合剤は、錠剤、カプセル、粉末、溶液またはエリキシル剤の形態をとる。錠剤の形態で投与される場合、本発明の医薬組成物は、ゼラチンまたはアジュバント等の固体キャリアを更に含有し得る。錠剤、カプセルおよび粉末は、約5〜95%の結合剤、好ましくは約25〜90%の結合剤を含有する。液体の形態で投与される場合、水;石油;ピーナッツ油(但し集団におけるピーナッツアレルギーの頻度に留意)、鉱物油、大豆油、またはゴマ油等の動物または植物由来の油;または合成油などの液体キャリアが添加され得る。医薬組成物の液体形態は、生理食塩水、デキストロースまたはその他の糖類溶液、あるいはエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール等のグリコール類を更に含有し得る。液体形態で投与される場合、医薬組成物は、約0.5〜90wt%の結合剤、好ましくは約1〜50wt%の結合剤を含有する。
【0096】
治療上有効量のIL−21/IL−21Rアンタゴニストが静脈内注射、皮膚注射または皮下注射によって投与される場合、結合剤は、ピロゲンのない、非経口的に受容可能な水溶液の形態をとるであろう。このような非経口的に受容可能なタンパク質溶液を、pH、等張性、安定性等に十分配慮しつつ調製することは、当分野の技術の範囲内である。静脈内注射、皮膚注射または皮下注射のための好ましい医薬組成物は、結合剤に加え、塩化ナトリウム注射液、リンガー液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、乳酸リンガー液、またはその他の当技術分野において知られているビヒクル等の等張性ビヒクルを含有するべきである。本発明の医薬組成物はまた、安定剤、防腐剤、緩衝液、酸化防止剤、または当業者に知られているその他の添加剤を含有し得る。
本発明の医薬組成物におけるIL−21/IL−21Rアンタゴニストの量は、治療される状態の性質および重症度、および被検体が受けた前治療の性質に依存するであろう。最終的に、個々の被検体を治療するために用いる結合剤の量は、担当医が決定することになる。はじめに、担当医は、少量の結合剤を投与し、被検体の反応を観察する。被検体にとって最適な治療効果が得られるまで、より多量の結合剤が投与され得、その時点で、用量は一般的にそれ以上増やされない。本発明の方法を実施するために使用される多様な医薬組成物は、体重1kg当たり約0.1μg〜約100mgのIL−21/IL−21Rアンタゴニストを含有するべきであると考えられる。
【0097】
本発明の医薬組成物を使用する静脈内療法の期間は、治療される疾患の重症度、および、各被検体の状態および潜在的な特異的反応によって異なる。IL−21/IL−21Rアンタゴニストの各適用の期間については、12〜24時間の範囲の連続静脈内(i.v.)投与であり得ると考えられる。また、本発明の医薬組成物を使用する皮下(s.c.)注射療法も考えられる。これらの療法は、毎日、毎週、または、より好ましくは隔週または毎月投与され得る。また、IL−21/IL−21Rアンタゴニストが小分子である場合(例えば経口デリバリーのために)、これらの療法は毎日、1日に2回、1日に3回等の頻度で投与され得ると考えられる。最終的に、本発明の医薬組成物を使用する静脈内(i.v.)または皮下(s.c.)療法、あるいは小分子を用いた療法の適切な期間、および療法の投与のタイミングは、担当医が決定することになる。
本発明のポリヌクレオチドおよびタンパク質は、以下に同定される、1つ以上の使用または生物活性(本明細書に引用されたアッセイに関連するものを含む)を提示することが予期される。本発明のタンパク質、抗体またはポリヌクレオチドについて記載された使用または活性は、このようなタンパク質または抗体の投与または使用によって、あるいは、このようなタンパク質または抗体をコードするポリヌクレオチドの投与または使用によって提供され得る(例えば、DNAの導入に適した遺伝子療法またはベクターにおいて)。
【0098】
(併用療法)
一つの実施形態において、少なくとも1つのIL−21R/IL−21アンタゴニスト(例えばIL−21R/IL−21抗体)と、少なくとも1つの治療薬剤と、を含む医薬組成物が、併用療法において投与される。このような療法は、例えば免疫および/または炎症性障害等の病的状態または障害を治療するために有用である。これに関し、用語「併用」とは、アンタゴニスト組成物および治療薬剤が、同時または連続であるを問わず、実質的に同時期に与えられることを意味する。連続して与えられる場合、2つの化合物のうちの第2化合物の投与開始時に、治療部位において、第1化合物がまだ有効濃度で検出可能であり得る。
例えば、併用療法は、少なくとも1つの更なる治療薬剤と共に処方され、および/または共に投与される少なくとも1つのIL−21R/IL−21アンタゴニストを含み得る。更なる薬剤には、少なくとも1つのサイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性薬剤または細胞増殖抑制剤が含まれ得、以下により詳しく記載される。このような併用療法は、より少ない量の投与治療薬剤を有利に利用し得るので、多様な単剤療法に関連した毒性または合併症の可能性が避けられる。更に、本明細書に開示された治療薬剤は、IL−21/IL−21R経路と異なる経路に作用し得るので、IL−21R/IL−21アンタゴニストの効果を高める、および/または相乗作用を与えることが予期される。
【0099】
IL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせて使用される治療薬剤は、自己免疫およびその後の炎症反応における異なる段階において妨げる薬剤であり得る。一つの実施形態において、少なくとも1つの本明細書に記載されたIL−21R/IL−21アンタゴニストが、少なくとも1つのサイトカインおよび/または成長因子アンタゴニストと共に処方され、および/または共に投与され得る。サイトカインおよび/または成長因子アンタゴニストは、可溶性レセプター、ペプチド阻害剤、小分子、リガンド融合、抗体(サイトカインまたは成長因子、またはそのレセプター、またはその他の細胞表面分子を結合する)および「抗炎症サイトカイン」、それらのアゴニストを含み得る。
【0100】
本明細書に記載されたIL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせて使用され得る薬剤の限定されない例としては、少なくとも1つのインターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18おおびIL−22等)のアンタゴニスト;サイトカイン(例えば、TNFα、LT、EMAP−IIおよびGM−CSF等);または成長因子(例えば、FGFおよびPDGF等)が含まれるが、これらに限定されない。薬剤はまた、インターロイキン、サイトカインおよび成長因子に対する少なくとも1つのレセプターのアンタゴニストも含み得るが、これらに限定されない。IL−21R/IL−21アンタゴニストはまた、例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD20(例えば、CD20阻害剤のリツキシマブ(RITUXAN(登録商標)))、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90、またはCD154(gp39またはCD40L)を含むそれらのリガンド、あるいはLFA−1/ICAM−1およびVLA−4/VCAM−1等の細胞表面分子に対する抗体の阻害剤と組み合わせ得る(Yusuf-Makagiansarら、(2002) Med. Res. Rev. 22:146-67)。本明細書に記載されたIL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせて使用され得るその他の化合物は、IL−1、IL−12、TNFα、IL−15、IL−17、IL−18およびIL−22のレセプターのアンタゴニストを含み得る。
【0101】
IL−21R/IL−21アンタゴニストとの併用療法において有用な薬剤の例は、IL−12アンタゴニスト(IL−12を結合する抗体等(例えば国際公開第WO00/56772号参照);IL−12レセプター阻害剤(IL−12レセプターに対する抗体等);および可溶性IL−12レセプター、およびそれらのフラグメントを含む。IL−15アンタゴニストの例は、IL−15に対する抗体またはそのレセプター、IL−15レセプターの可溶性フラグメント、およびIL−15結合タンパク質を含む。IL−18アンタゴニストの例は、IL−18に対する抗体、IL−18レセプター可溶性フラグメント、およびIL−18結合タンパク質を含む(IL−18BP、Mallatら、(2001) Circ. Res. 89:E41-45)。IL−1アンタゴニストの例は、インターロイキン−1変換酵素(ICE)阻害剤(Vx740等)、IL−1アンタゴニスト(IL−1RA(アナキンラ(KINERET(登録商標))等、アムジェン社)、sIL−1RII(イムネックス社)、および抗IL−1レセプター抗体を含む。
【0102】
TNFアンタゴニストの例は、D2E7(ヒト抗TNFα抗体、米国特許番号6,258,562、HUMIRA(登録商標)、アボット・ラボラトリーズ社)等のTNFに対する抗体(ヒトTNFα等);CDP−571/CDP−870/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体、セルテック社/ファルマシア社);cA2(キメラ抗TNFα抗体、REMICADE(登録商標)、セントコア社);および抗TNF抗体フラグメント(CPD870等)を含む。その他の例は、p55 kdTNFR−IgG(55kD TNFレセプター−IgG融合タンパク質、LENERCEPT(登録商標))および75 kdTNFR−IgG(75kD TNFレセプター−IgG融合タンパク質、ENBREL(登録商標)(エタネルセプト、イムネックス社))等の可溶性TNFレセプター(ヒトp55またはp75等)のフラグメントおよび誘導体を含む。例えば、van der Pollら、(1997) Blood. 89:3727-34;およびMoriら、(1996) J. Immunol. 157:3178-82参照。更なる例は、α−スルホニルヒドロキサム酸誘導体(国際公開第WO01/55112号)またはN−ヒドロキシホルムアミド阻害剤(GW3333、−005または−022、グラクソ・スミスクライン社)およびTNF−bp/s−TNFR(可溶性TNF結合タンパク質、例えば、Lantzら、(1991) J Clin Invest. 88:2026-31;およびKapadiaら、(1995) Amer. J. Physiol. Heart Circ. Phys. 268:H517-25参照)等の酵素アンタゴニスト(TNFα変換酵素阻害剤(TACE)等)を含む。TNFアンタゴニストは、75kdTNFR−IgGおよびTNFα変換酵素(TACE)阻害剤等の可溶性TNFレセプター(例えばヒトp55またはp75等)のフラグメントおよび誘導体であり得る。
【0103】
その他の実施形態において、本明細書に記載されるIL−21R/IL−21アンタゴニストは、以下のうちの少なくとも1つと組み合わせて投与され得る:可溶性IL−13レセプターおよび/または抗IL−13抗体等のIL−13アンタゴニスト;および、IL−2融合タンパク質(例えばSeragen社製のDAB486−IL−2および/またはDAB389−IL−2、Sewellら、(1993) Arthritis Rheum. 36:1223-33等参照)および抗IL−2R抗体(例えば抗Tac(ヒト化抗体、プロテイン・デザイン・ラブ社、Junghansら、(1990) Cancer Res. 50:1495-502参照)等のIL−2アンタゴニスト。別の組合せは、IDEC−CE9.1/SB210396(抗CD4抗体、グラクソ・スミスクライン社)等の非除去(nondepleting)抗CD4阻害剤とIL−21R/IL−21アンタゴニストとの組合せを含む。更にその他の組合せは、IL−21R/IL−21アンタゴニストと、CD80(B7.1)およびCD86(B7.2)共刺激経路アンタゴニスト(抗体、可溶性レセプター、またはアンタゴニストリガンド等);P−セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)およびPSGL−1阻害剤(PSGLおよび/またはPSGL−1に対する抗体、および小分子阻害剤等);T細胞およびB細胞除去剤(抗CD4または抗CD22抗体等)、および抗炎症サイトカインおよびそのアゴニスト(抗体等)を含む。抗炎症サイトカインは、IL−4(例えばシェリング・プラウ バイオファーマ);IL−10(例えばSCH52000、組み替えIL−10、シェリング・プラウ バイオファーマ);IL−11;IL−13;およびTGFβまたはそのアゴニスト(例えばアゴニスト抗体)を含み得る。
【0104】
その他の実施形態において、少なくとも1つのIL−21R/IL−21アンタゴニストが、少なくとも1つの抗炎症剤、免疫抑制剤、代謝阻害剤、および酵素阻害剤と共に処方、および/または共に投与され得る。本明細書に記載されるIL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせて使用され得る薬物または阻害剤の限定されない例は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)(アスピリン、サルサレート、ジフルニサル、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、ピロキシカム、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ケトロラック、オキサプロジン、テニダップ、メロキシカム、ピロキシカム、アセクロフェナク、トルメチン、チアプロフェン酸、ニメスリド等を含むが、これらに限定されない);スルファサラジン;コルチコステロイド(プレドニゾロン等);サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID);ヌクレオチド生合成の阻害剤(プリン生合成の阻害剤等(例えばメトトレキサート等の葉酸アンタゴニスト等));および、例えばレフルノミド等のジヒドロオロト酸脱水素酵素(DHODH)阻害剤等のピリミジン生合成の阻害剤のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない(例えばKraanら、(2004) Ann. Rheum. Dis. 63:1056-61参照)。IL−21/IL−21Rアンタゴニストと組み合わせて使用するための治療薬剤は、1つ以上のNSAID、CSAID、DHODH阻害剤(レフルノミド等)、および葉酸アンタゴニスト(メトトレキサート等)を含み得る。
【0105】
IL−21/IL−21Rアンタゴニストと組み合わせて使用され得る更なる薬剤の例は、コルチコステロイド(経口、吸入および局注);免疫抑制剤(シクロスポリンおよびタクロリムス(FK−506)等);mTOR阻害剤(例えばCCI−779等のエステルラパマイシン誘導体等、シロリムス(ラパマイシン)またはラパマイシンのアナログおよび/または誘導体等(Elit (2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1249-53;およびHuangら、(2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3:295-304等参照));TNFαおよびIL−1等の炎症性サイトカインのシグナル伝達を妨げる薬剤(例えばIRAK、NIK、IKK、p38またはMAPキナーゼ阻害剤);TPL−2、Mk−2およびNFκb阻害剤;COX−2阻害剤(例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ等、およびそれらの改変体等);ホスホジエステラーゼ阻害剤(ロリプラム等);ホスホリパーゼ阻害剤(例えばトリフルオロメチルケトンアナログ等、細胞質型ホスホリパーゼ2(cPLA2)の阻害剤等(米国特許番号6,350,892));血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の阻害剤;VEGFレセプターの阻害剤;血管形成の阻害剤;RAGEおよび可溶性RAGE;エストロゲンレセプターβ(ERB)アゴニスト、ERB−NFκbアンタゴニスト;インターフェロンβ(例えばIFNβ−1aおよびIFNβ−1b);コパクソン;およびコルチコステロイドのうちの少なくとも1つを含む。
【0106】
IL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせ得るその他の有用な治療薬剤は、以下を含む:ブデノシド(budenoside);上皮成長因子;アミノサリチル酸塩;6−メルカプトプリン;アザチオプリン;メトロニダゾール;リポキシゲナーゼ阻害剤;メサラミン;オルサラジン;バルサラジド;酸化防止剤;トロンボキサン阻害剤;成長因子;エラスターゼ阻害剤;ピリジニル−イミダゾール化合物;グルクロニドまたはデキストランが結合されたプレドニゾロンのプロドラッグ;デクサメタゾンまたはブデソニド;ICAM−1アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS2302;アイシス・ファーマシューティカルズ社);可溶性補体レセプター1(TP10;ティーセルサイエンス社);徐放性メサラジン;血小板活性化因子(PAF)のアンタゴニスト;シプロフロキサシン;リグノカイン;シクロスポリンA;ヒドロキシクロロキン(PLAQUENIL(登録商標));ミノサイクリン(MINOCIN(登録商標));およびアナキンラ(KINERET(登録商標))。
本発明のIL−21/IL−21Rアンタゴニストと組み合わせて投与するための特定の治療薬剤の選択は、特定の被検体、所望の標的、および選択された治療の長さ等の要因に大きく依存するであろう。このような決定は、十分に当業者の技術および知識の範囲内である。
【0107】
IL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせ得る治療薬剤の更なる例は、以下のうちの1つ以上を含む:6−メルカプトプリン(6−MP);アザチオプリン;スルファサラジン;メサラジン;オルサラジン;クロロキン;ヒドロキシクロロキン(PLAQUENIL(登録商標));ペンシルアミン(pencilamine);オーロチオルナレート(aurothiornalate)(筋肉内および経口);アザチオプリン;コルヒチン;β−2アドレナリンレセプターアゴニスト(サルブタモール、テルブタリン、サルメテロール);キサンチン(テオフィリン、アミノフィリン);クロモグリク酸;ネドクロミル;ケトチフェン; イプラトロピウムおよびオキシトロピウム;ミコフェノール酸モフェチル;アデノシンアゴニスト;抗血栓剤;補体阻害剤;およびアドレナリン作動薬。
一つの実施形態において、IL−21R/IL−21アンタゴニストは、免疫反応の調節に関与する他の標的に向けられた1つ以上の抗体と組み合わせて使用され得る。本発明のIL−21R/IL−21アンタゴニストと組み合わせ得る、免疫反応を治療または予防するための薬剤の限定されない例は、以下を含む:その他の細胞表面分子に対する抗体であって、CD25(インターロイキン−2レセプター−a)、CD11a(LFA−1)、CD54(ICAM−1)、CD4、CD45、CD28、CTLA4、ICOSL、ICOS、CD80(B7.1)および/またはCD86(B7.2)を含むがこれらに限定されない。更に別の実施形態において、IL−21R/IL−21アンタゴニストは、シクロスポリンAまたはFK506等、1つ以上の一般的な免疫抑制剤と組み合わせて使用される。別の実施形態において、IL−21/IL−21Rアンタゴニストは、CTLA4アゴニスト(例えばCTLA4 Ig−アバタセプト(ORENCIA(登録商標))等)と組み合わせて使用される。
【0108】
本出願全体を通じて引用されている全ての引例、特許、および公開された特許出願の内容全体は、引用することにより本明細書の一部をなす。
以下の実施例は、例示的な本発明の実施形態を提供し、決して本発明を限定するものではない。当業者であれば、本発明の範囲に、その他の多数の実施形態が包含されることを認識するであろう。
実施例
【実施例1】
【0109】
(材料および方法)
(実施例1.1:マウス、寄生虫病および抗原の調製)
メスまたはオスのC57BL/6マウス、C57BL/6/Ai−IL−10KO/IL−4KOマウスおよびC57BL/6Ai−IL−10KO/IL−12KOマウスが、タコニック社(ニューヨーク州ジャーマンタウン)から入手された(Hoffmannら、(1999) J. Immunol. 163:927-938)。C57BL/6バックグラウンドのIL−21R-/-マウスのつがいが、ハーバード大学公衆衛生学部(マサチューセッツ州ボストン)で飼育されている繁殖コロニーから入手された(Kasaianら、(2002) Immunity 16:559-69)。全てのマウスは、国立衛生研究所における特定の無菌の状態下、実験動物管理認定協会に認可された施設内で飼育された。NIAID動物管理使用委員会は、全ての実験手順を認可した。先に述べた通り、マンソン住血吸虫卵を、感染したマウス(バイオ医療研究所、メリーランド州ロックビル)の肝臓から抽出した(Wynnら、(1995) Nature 376:594-96)。同期原発性肺肉芽腫の誘導のため、5000個の卵をマウスに静脈内(i.v.)投与した。第二次肉芽腫の誘導のため、マウスを、腹腔内(i.p.)において5000個の生きた卵で感作し、次に、静脈内(i.v.)において5000個の生きた卵でチャレンジした(Wynnら、(1994) J. Exp. Med. 179:551-61)。感染実験において、感染したカタツムリ(Biomphalaria glabrata、バイオ医療研究所、メリーランド州ロックビル)から得られたマンソン住血吸虫(NMRI)のプエルトリコ株の25〜30匹のセルカリアを用いて、マウスを尾から経皮的に感染させた。先に述べた通り、可溶性の卵抗原(SEA)および可溶性虫抗原性製剤(SWAP)は、マンソン住血吸虫卵および寄生成虫から精製および均質化されたものであった(Cheeverら、(1994) J. Immunol. 153:753-59)。他所に記載されるように(同上)、蠕虫および組織の卵の負担が測定できるように、全ての動物に、犠牲にされる際にかん流を適用した。先に述べられたように、腸管寄生線虫(Nippostrongylus brasiliensis)の幼虫(L3)が調製された(Katonaら、(1983) J. Immunol. 130:350-56)。マウスには、500個のL3を皮下注射によって接種した。接種後7日目に、サイトカイン分析のために、肺の組織および縦隔リンパ節を回収した。
【0110】
(実施例1.2:組織病理および線維症)
ライト・ギムザ染色で染色した組織切片において、肺肉芽腫および肝肉芽腫の大きさを測定した(ヒストパス・オブ・アメリカ、メリーランド州クリントン)。全ての分析において、マウス1匹当たり約30個の肉芽腫が含まれた。熟練の病理学者が、同じ切片における好酸球、肥満細胞およびその他のタイプの細胞のパーセンテージを評価した。ヒドロキシプロリンのレベルによって測定された、肝臓および消化管における住血吸虫卵の数、および肝臓におけるコラーゲンの含有量が、先に述べられたように測定された(Cheeverら、既出)。具体的には、5mlの6N HCl内で200mgの肝臓の一部を110℃で18時間加水分解した後に、Bergman & Loxley法の技術によって、ヒドロキシプロリンを基に肝臓のコラーゲンを測定した(BergmanおよびLoxley (1963) Analytical Biochem. 35:1961-65)。肝臓のヒドロキシプロリンの増加は、全ての実験において卵の数と正の相関を示し、肝臓のコラーゲンは、正常な肝臓のコラーゲンよりも10,000個の卵当たりのミクロモル単位での増加として報告される:(感染した肝臓のコラーゲン−正常な肝臓のコラーゲン)/肝臓の卵×10-4または蠕虫の対当たりのミクロモル単位。遅い慢性の時点において、線維症は、肝臓当たりの総肝臓コラーゲン量として報告される。同じ個体が、全ての組織学的特徴でスコアし、実験的設計の知識は有さなかった。
【0111】
(実施例1.3:FACS分析)
肺全体を取り出し、RPMI内に配置した。70ミクロンのナイロンメッシュ(BDファルコン社、カリフォルニア州サンディエゴ)を通して引っ張ることにより、組織をバラバラにした。単一細胞懸濁液を洗浄し、RBCを、ACK溶菌液で3分間インキュベートすることによって溶解した。肺のリンパ球を、FACS緩衝液内で4℃で15分間、PE−Cy5で標識した抗CD4およびFc Blockを共に使用して標識した(どちらの抗体もBDファーミンゲン社製、カリフォルニア州サンディエゴ)。洗浄後、FLOWJO(登録商標)ソフトウエアを使用して、FACS Caliburで細胞を分析した(ツリースター社、オレゴン州アッシュランド)。
【0112】
(実施例1.4:sIL−21R−Fcを使用したIL−21ブロッキング実験)
30〜35匹のマンソン住血吸虫のセルカリアを用いて、C57BL/6マウス(10匹/グループ)を、尾から経皮的に感染させた。感染後6週目から、mIL−21R−Fc(ワイス・リサーチ)または抗コクシジウム(E.tenella)マウスIgG2a制御抗体(ワイス・リサーチ)を使用して、マウスを治療した。各マウスに、1回200μgの用量を、腹腔内注射により週3回、5週にわたって投与した。感染後12週でマウスを犠牲にし、ヒドロキシプロリンアッセイにより、肝線維症を測定した。
【0113】
(実施例1.5:リンパ球の培養および酵素免疫測定法(ELISA)を用いたサイトカイン検出)
脾臓および腸間膜のリンパ節(感染モデル)または肺関連リンパ節(肺のモデル)を無菌状態で除去し、先に述べた通りに単一細胞懸濁液を調製した(Hesseら、(2000) Am. J. Pathol. 157:945-55)。5%CO2の湿気のある環境において、培養物を37℃でインキュベートした。SEA(20μg/ml)、SWAP(50μg/ml)、コンカナバリンA(Con A;1μg/ml)、または培地のみを使用して、細胞を刺激した。72時間で上清液を採取し、サイトカイン生成物のアッセイを行った。先に記載したように(同上)、対を成す抗体(BDファーミンゲン社製、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して、サンドイッチELISA法により、IFN−γ、IL−5およびIL−10を測定した。組み換えマウスサイトカイン(BDファーミンゲン社製、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して構築された標準曲線を用いて、サイトカインのレベルを算出した。製造業者のプロトコルに従い、マウスIL−13 ELISAキット(R&Dシステムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)を使用して、IL−13のレベルを測定した。製造業者のプロトコルに従い、マウスTGF−β1 DUOSET(登録商標)ELISAディベロップメントシステム(R&Dシステムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)を使用して、TGF−β1のレベルを定量化した。ウシ由来のTGF−β1の混入を避けるため、細胞をPBS内で3回洗浄し、0.5%マウス血清を含有する培地内で培養した。
【0114】
(実施例1.6:RNAの単離および精製、およびリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応)
1ml TRIZOL(登録商標)試薬(インビトロジェン社、カリフォルニア州カールスバッド)内に個々に配置された肺および肝臓の組織試料から、RNA全部を抽出した。ティッシュポリトロン(tissue polytron、オムニインターナショナル社、ジョージア州マリエッタ)を使用して、試料を均質化し、製造業者の推奨に従ってRNA全部を抽出し、キアゲンのRNEASY(登録商標)ミニキット(キアゲンサイエンス社、メリーランド州ジャーマンタウン)を使用して更に精製した。個々の試料RNA(1μg)を、SUPERSCRIPT II(登録商標)(インビトロジェン社、カリフォルニア州カールスバッド)、およびオリゴ(dT)とランダムプライマーの混合物を使用して逆転写した。ABI PRISM(登録商標)7900配列検出システム(アプライドバイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティ)で、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を行った。SYBR(登録商標)Green PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティ)を使用し、ABI PRISM(登録商標)7700/7900配列検出システム(アプライドバイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティ)に関してアプライドバイオシステムズ社が述べている相対閾値サイクル法によって、いくつかの遺伝子についてのmRNAの相対量を測定した。この方法において、各試料のmRNAレベルを、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼのmRNAレベルまで標準化し、次に、感染していないコントロールにおけるレベルと比較して、相対的に増加しているか減少しているかを表した。プライマーは、PRIMER EXPRESS(登録商標)ソフトウエア(アプライドバイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティ)を使用して設計した。IL−13、IL−4、IL−10、HPRT(Hesseら、(2001) J. Immunol 167:6533-44)、IL−13Rα2(Chiaramonteら、(2003) J. Exp. Med. 197:687-701)、Ym1、FIZZ1および酸性キチナーゼ(AMCase)(Sandlerら、既出)に対するプライマーは、以前に公開されており、以下を含む:
【0115】
IL−21
5' GCCAG ATCGC CTCCT GATTA 3'(センス)(配列番号28);
5' CATGC TCACA GTGCC CCTTT 3'(アンチセンス)(配列番号29);
IL−21R
5' CTCCC CCCTT GAACG TGACT 3'(センス)(配列番号30);
5' TTGCC CCTCA GCACG TAGTT 3'(アンチセンス)(配列番号31);
IFN−γ
5' AGAGC CAGAT TATCT CTTTC TACCT CAG 3'(センス)(配列番号32);
5' CCTTT TTCGC CTTGC TGTTG 3'(アンチセンス)(配列番号33)
【0116】
(実施例1.7:血清抗体イソタイプ分析および骨髄由来のマクロファージ)
製造業者のプロトコルに従って、BD OPTEIA(登録商標)マウスIgE ELISAセット(BD Biosciences Pharmingen社製、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して総IgEを測定した。間接的なELISA方式により、SEA特異的IgGlおよびIgG2bアイソタイプ特異的抗体(Ab)の力価を評価した。IMMULON(登録商標)の4つのプレート(サーモ・ラブシステムズ社、マサチューセッツ州ビバリー)を、PBS内で希釈した10μg/ml SEA(100μl/ウェル)でコートし、連続2倍希釈を使用して、血清試料を分析した。ビオチン−ウサギ抗マウスIgGl(Zymed社、カリフォルニア州サンフランシスコ)は、1:1000の希釈で使用した。続いて、ぺロキシダーゼで標識したストレプトアビジン(KPL社、メリーランド州ゲーサーズバーグ)の基質酵素を1:1000の希釈で使用した。第2段階セイヨウワサビぺロキシダーゼが結合されたウサギ抗マウスIgG2b(Zymed社、カリフォルニア州サンフランシスコ)Abを、1:1000の希釈で使用した。100μl一成分ABTSぺロキシダーゼ基質(KPL社、メリーランド州ゲーサーズバーグ)を添加後、VMAX(登録商標)カイネチックマイクロプレートリーダー(モレキュラー・ディバイシーズ社)を使用して、ウェル中の吸光度を405nmで読み取った。
【0117】
メスのC57BL/6マウスから骨髄を回収し、補充DMEM培地(L929で調節された培地)を含有するペトリ皿(100×15mm)で、6日間培養した。6日後、細胞を採取し、補充DMEM培地(10% FBS、2mM L−グルタミン、100U/mL ペニシリンおよび100μg/mL ストレプトマイシン)を含有する24ウェルプレート内に、0.5×lO6細胞/ウェルの濃度で植え付けた。細胞は、IL−4、IL−13およびIL−21(R&D社、ミネソタ州ミネアポリス)で20時間刺激した。いくつかのアッセイにおいて、細胞をIL−21で前処理した。細胞を溶解し、RNEASY(登録商標)キット(キアゲンサイエンス社、メリーランド州ジャーマンタウン)を用いたRNAクリーンアップ手順を使用して、RNAを精製した。
【0118】
(実施例1.8:アルギナーゼ活性分析)
96ウェル組織培養プレートにおいて、骨髄由来マクロファージをウェル当たり6×105個平板培養し、IL−4、IL−13およびIL−21の組合せで刺激した。IL−4またはIL−13による刺激の6時間前に、IL−21を加えた。刺激に続き、細胞をPBSで洗浄し、プロテアーゼ阻害剤を含有する0.1% Triton X−100(ロッシュ社、ニュージャージー州ナトリー)で溶解した。溶解物を96ウェルPCRプレートに移し、10mM MnCl2および50mM Tris HCl(pH7.5)を用いてインキュベートし、55℃で10分間、酵素を活性化した。酵素活性化後、25μlの溶解物を除去し、新しいPCRプレート内の25μl 1M アルギニン(pH9.7)に加え、37℃で20時間インキュベートした。5μlの各試料を対で、5μlの各標準液と共に、96ウェルELISAプレートに加え、100mg/dLでスタートして、同じアッセイ条件で希釈した。製造業者のプロトコルに従って、QUANTICHROM(登録商標)尿素アッセイキット(バイオアッセイ・システムズ社、カリフォルニア州ヘイワード)の尿素測定試薬を使用した。
【0119】
(実施例1.9:統計)
肝線維症(卵の数を調節)は、感染(蠕虫の対)の強度が高まると共に減少する。従って、共変量としての肝臓における卵の総数の対数、および卵当たりのヒドロキシプロリン含有量の対数を使用して、共分散分析によって、これらの変数を比較した。感染の強度によって変化しなかった変数は、ワンウェイANOVAまたはスチューデントのt検定によって比較した(Cheeverら、既出)。ANOVAを使用して、サイトカインmRNA発現および肉芽腫の大きさの変化を評価した。p<0.05*、p<0.01**またはp<0.001***の場合に、差が有意なものであると考えた。
【実施例2】
【0120】
(タイプ1およびタイプ2の極性化反応中のIL−21およびIL−21Rの調節)
IL−21レセプターの調節および機能をインビボで調べるために、線虫症の実験モデルに加え、肺および肝臓の炎症のモデルを含むTH2に依存した炎症のいくつかの異なる実験系を調べた(Pearceら、既出;Wynnら、(1994)、既出)。各場合において、野生型(WT)動物の免疫反応を、IL−21R欠損マウスと比較した(Hoffmanら、既出;Kasaianら、(2002)、既出)。
IL−21に比べ(Wursterら、(2002)、既出;Mehtaら、(2004) Immunol. Rev. 202:84-95)、IL−21レセプターの調節および機能はについてはほとんど知られていない。インビボでの病的TH2反応中に、IL−21およびそのレセプターが調節されるかどうかを測定するために、肉芽腫形成のマンソン住血吸虫モデルを使用した。このモデルにおいて、TH2サイトカインが損傷形成において顕著な役割を果たすことが知られている(PearceおよびMacDonald、既出)。最初の研究は、IL−21およびIL−21RのmRNA発現が、インビボでの極性化TH2サイトカイン反応と関連するかどうかを測定するために設計された。マンソン住血吸虫卵に暴露した後に、非常に悪化したTH1(IL−4-/-/IL−10-/-)またはTH2(IL−12-/-/IL−10-/-)サイトカイン反応が進行するマウスを使用して、この研究を達成した。IL−4-/-/IL−10-/-「TH1」マウスについては、肺において、IFN−γのmRNA発現がチャレンジ後4日目でベースラインの75倍増加し、バックグラウンドの約50倍を14日目まで維持した(図16A)。IL−13のmRNAは、どの時点においてもこれらのマウスにおいて検出できなかった。このことは、高度に極性化されたTH1炎症反応の確立を立証している。一方、IL−12-/-/IL−10-/-「TH2」マウスは、チャレンジ後すべての時点においてIL−13のmRNAの200〜250倍の増加を示したが、IFN−γについてはほとんど、あるいはまったく変化しなかった。高度に極性化されたパターンの発現を示したTH1/TH2サイトカインとは対照的に、IL−21は、極性化された表現型とは関連しなかった(図16B)。両グループにおいて、住血吸虫卵によるチャレンジ後、IL−21のmRNAレベルは、ベースラインの少なくとも50倍増加したが、TH1極性化マウスにおいて観察された増加は、TH2極性化動物に比べて平均で3〜4倍であった(図16B、下のパネル)。IL−21Rも、TH1またはTH2免疫反応と特に関連はしなかった。しかし、TH1非対称の動物においてより顕著であったIL−21とは対照的に、IL−21Rへの最大の反応は、TH2極性化マウスにおいて観察された(図16B、上のパネル)。
【実施例3】
【0121】
(住血吸虫卵に対する一次反応中、IL−21R欠損マウスの肺において、タイプ2サイトカイン生成が減少した)
住血吸虫卵でチャレンジしたマウスにおけるIL−21R発現の有意な増加にかんがみ(図16)、次の一連の実験では、IL−21Rのシグナル伝達がTH2反応の進行に影響を与えるかどうかを調べた。これらの実験において、未処理のWTマウスおよびIL−21R-/-マウスに、生きている住血吸虫卵を静脈注射し、その後14日間にわたり、TH2サイトカインおよびTH2が調節された遺伝子の生成を、肺、脾臓および排出するリンパ節においてモニターした。WTマウスにおいては、卵への暴露後、IL−21RのmRNA発現が急速に増加し、14日目まで増加をし続けた(図17A)。IL−21は類似のプロフィールを示し、発現のピークが7日目に起こり、その後わずかに減少した。特に、IL−21R-/-マウスは、7日目と14日目にIL−21の発現の一貫して非常に有意な減少を示した。このことは、IL−21Rが、自らのリガンドの発現に好ましい影響を与えていることを示唆している。以前の観察(Wynnら、(1993) J. Immunol. 151:1430-40;およびVellaおよびPearce (1992) J. Immunol. 148:2283-88)と一致して、TH2関連サイトカインIL−4およびIL−13の発現は、WTマウスの肉芽腫組織内において徐々に増加し、5〜15倍の増加が14日目まで検出可能であった。一方、IL−21R-/-の組織においては、IL−4およびIL−13のmRNA発現の顕著で有意な減少が見られた。WTマウスにおいては、チャレンジ後4〜14日目の間、IFN−γおよびIL−10のmRNAにおける変化はほとんど検出されなかったが、IL−21R-/-動物においては、IFN−γおよびIL−10の生成もわずかに減少した。このように、IL−21R-/-マウスにおいて観察されたTH2反応の減少は、TH1サイトカイン生成の増加と関連しなかった。TH2サイトカインの減少も、肉芽腫組織に特異的なものであった。なぜならば、可溶性卵抗原(SEA)またはマイトジェンによるインビトロでの刺激後、リンパ節および脾細胞の培養物において、有意なTH2サイトカイン生成が観察されたからである(図17B)。実際、SEAは、IL−21R-/-マウスから調製されたリンパ節の培養物において、より強いIL−5、IL−10およびIL−13の反応を一貫して刺激した。しかし、肺におけるTH2反応の減少と一致して、IL−21R-/-動物において、肉芽腫形成のより迅速な分解が観察された(図17C)。加えて、Stat6活性化または「代わりに活性化されたマクロファージ」(AAMo)に関連するいくつかの遺伝子において、顕著な減少が見られた(Nairら、(2005) Infect. Immun. 73:385-94;Zhuら、(2004) Science 304:1678-82;Chiaramonteら、(2003)、既出;およびGordon, S. (2003) Nat. Rev. Immunol. 3:23-35)。これは、IL−21R-/-マウスにおけるTH2エフェクター反応の全体的な減少についての更なる証拠を提供している(図17D)。
【実施例4】
【0122】
(N・ブラシリエンシス(N.brasiliensis)感染後、IL−21R-/-マウスにおいてTH2反応が減少した)
TH2エフェクター反応の減少が、マンソン住血吸虫による肺肉芽腫の形成に特異的なものであるかどうかを測定するために、WTマウスおよびIL−21R-/-マウスを、腸内線虫、N・ブラシリエンシスで感染させた。3令幼虫(L3)を皮膚下に接種することにより、感染が確立した。それらは、成長した寄生虫として、接種部位から移動し、循環器系を経由して肺に入る。一旦肺の中に入ると、寄生虫は活発で高度に極性化されたTH2反応を引き起こす(Urbanら、(1993) J. Immunol. 151:7086-94)。これは、肺(図18A)および肺に関連したリンパ節(図18B)におけるいくつかのTH2関連遺伝子の発現を分析することにより確認された。WTマウスの肺およびリンパ節は、N・ブラシリエンシスによる感染後、IL−4、IL−13、AMCase、FIZZ1/RELM1α、およびYm1のmRNA発現において顕著な増加を示した(図18Aおよび18B)。しかし、肺肉芽腫モデルと一致して、IL−4、IL−13およびAMCaseの有意なレベルの減少が観察されると共に、IL−21R-/-マウスの肺において、Ym1およびFIZZ1のmRNAのレベルはわずかに減少した(図18A)。排出するリンパ節は、類似の減少を示したが、Ym1およびFIZZ1における減少は、リンパ節においてより有意であった(図18B)。2つの組織における唯一の他の主な相違点は、AMCaseのmRNAの反応であり、これが肺に限定されたようであった。これらのデータは共に、インビボでのTH2反応の進行におけるIL−21Rの重要な役割を立証するものである。しかし、顕著なことは、TH2反応が顕著に弱まったにもかかわらず、N・ブラシリエンシスに感染したIL−21R-/-マウスは、寄生虫の成虫の排出における有意な遅延を示さなかったことである(図示されず)。
【実施例5】
【0123】
(IL−21R-/-マウスの肺においてタイプ2サイトカイン主導の炎症が減少する)
次の一連の実験は、IL−21Rが、二次TH2反応の進行を調節するかどうかを測定するために設計された。これらの実験のために、WTマウスおよびIL−21R-/-マウスをマンソン住血吸虫卵で感作し、2週間後に静脈内でチャレンジした。予期されたように、感作したマウスは、強固な肉芽腫性の反応を進行させ、それは一次チャレンジを行った動物(図17C)に比べて4〜5倍であった(図19C)。一次モデルにおいて観察されたように、卵への暴露後、肺においてIL−21およびIL−21RのmRNAが有意に増加したが、二次チャレンジ中においては、IL−21の反応のピークはより早かった。IL−21と比較した場合、IL−21Rはやや増加したのみであったが、両時点において有意に増加し続けた。一方で、IL−21のmRNAレベルは、4日目にピークに達した後で減少した(図19A)。このように、組織において、リガンドがより厳しく調節されるという証拠が見られた。また、IL−21R-/-マウスにおいて、IL−21の発現の顕著な減少が見られ、レセプターとそのリガンドの間における強力なフィードバックのメカニズムを立証している。TH2関連サイトカインの中で、IL−13が最も強力な反応を示し、WTマウスにおいて、ベースラインの50〜100倍の増加を示した。しかし、IL−21R-/-マウスにおいては、バックグラウンドの10〜20倍まで減少した。このことは、二次TH2反応を最大限に進行させるためにはIL−21Rが必要であることを実証している。再び、IL−21R-/-マウスにおけるTH2サイトカイン発現の減少は、IFN−γにおける有意な増加を伴わなかった。実際、IL−21R-/-マウスの肺において、IFN−γのmRNA発現が減少した。しかし、ノックアウトマウスでは、リンパ節および脾臓において、IFN−γ生成が控えめではあるが一貫して増加した。このことは、TH2サイトカイン全体のより強い阻害を示唆している(図19B)。卵による一次チャレンジモデルに一致して、TH2およびTH1サイトカイン生成の減少は、肉芽腫性組織においてより顕著に示されたが(図19A)、脾臓においては、SEAに誘導されるTH2反応も部分的に減少した(図19B)。二次肉芽腫性炎症の大幅な減少は、肺におけるより弱いTH2反応の進行に一致していた(図19C)。加えて、FIZZ1、Ym1およびAMCaseの発現が顕著に減少した(図19D)。このことは、IL−21R-/-マウスにおける二次TH2エフェクター反応の有意な減少を更に立証している。
【実施例6】
【0124】
(感染したIL−21R欠損マウスにおいて、IgG抗体、肉芽腫形成およびタイプ2サイトカインは実質的に減少する)
次に、慢性的なTH2主導の反応を維持するためにIL−21のシグナル伝達が必要であるかどうかを測定するために、動物に対し、マンソン住血吸虫のセルカリアを経皮的に暴露し、感染後の急性の時点および慢性の時点両方における病的反応および免疫反応を分析した。肺肉芽腫の研究において観察されたように、感染したWTマウスの肝臓において、IL−21RおよびIL−21のmRNA発現における顕著な上方調節が見られた。一方、IL−21R-/-マウスにおいては、慢性感染後であっても、IL−21のmRNAはほとんど検出できなかった(図20A)。感染後の急性段階においては、IL−21R-/-マウスもTH2サイトカインのmRNA発現において顕著な減少を示した(図20A)。しかし、やはり、変化は肉芽腫性組織に限定されていた。なぜならば、寄生虫の抗原を用いたインビトロでの刺激後、両グループにおいて、リンパ節および脾細胞の反応が類似していたからである(図20B)。インビトロアッセイにおいて留意された唯一の一貫した相違点は、脾細胞の培養物において、IL−5およびIL−10の生成が2〜3倍減少したことである。IL−21R-/-マウスも、感染後の急性段階において有意により小さな肉芽腫を形成し(図20C)、これは、肝臓におけるIL−4およびIL−13のmRNA反応の減少と一貫していた(図20A)。しかしこれは、肉芽腫における好酸球のパーセンテージにおけるいかなる明白な変化をも伴わなかった(図20C)。損傷のより詳しい顕微分析は、肉芽腫の組成物全体において、検出可能な変化はなかったことを立証した(図21A)。また、IL−21R欠損が肉芽腫性組織へのCD4+T細胞の漸増に特異的に影響を与えたかどうかを測定するためにも実験が行われた。この問題に取り組むに当たり、炎症細胞の漸増を同調させるために、肺肉芽腫モデルを使用した。しかし、肝臓の肉芽腫の微視的評価と一致して(図21A)、卵への暴露前、暴露後どちらにおいても、肺におけるCD4+T細胞のパーセンテージは、WTマウスとIL−21R-/-マウスで同様であった(図21B)。このように、CD4+T細胞の漸増または展開における変化は、組織内で観察されたThl/Th2サイトカイン反応の減少の説明になっているとは考えられない。それよりはむしろ、全体的な炎症反応におけるより総体的な減少の結果であると思われる。重要なことに、両グループにおいて、感染後第12週目までに肉芽腫性反応が効果的に下方調節された(PearceおよびMacDonald、既出)。その結果として、慢性的時点において、肉芽腫の大きさにおける有意な相違は無かった(図20C)。慢性的に感染させたノックアウトマウスにおいて、TH2サイトカイン反応における最小限の弱まりが観察された(図20A)。急性段階に観察されたFIZZ1およびYm1の顕著な減少も、慢性的に感染させたIL−21R-/-動物において減少していた(図20D)。それにもかかわらず、AMCaseの発現レベルは第12週目において顕著な低さを維持した。このことは、慢性的に感染させたIL−21R-/-マウスにおいて、TH2主導の反応の少なくともサブセットが、減少を持続したことを示唆している。
【0125】
また、IL−21R-/-マウスについて、血清抗体のレベルにおける変化を調べた(図22)。抑制されたサイトカイン反応と一致して(図20A)、IL−21R-/-マウスは、寄生虫に特異的なIgG1(TH2関連抗体)およびIgG2b(TH1関連抗体)の力価において顕著な減少を示し、これは、慢性的時点において維持された(図22B)。しかし、興味深いことに、これにはIgEにおけるいかなる有意な変化も伴わず(図22C)、血清抗体アイソタイプのサブセットのみにおける選択的な弱まりを示唆している。外因性のIL−21は、IgE生成を阻害することが示されてきており(Sutoら、(2002) Blood 100:4565-73)、これにより、慢性的に感染させたIL−21R-/-マウスにおけるIgEの僅かな上昇の説明がつくかも知れない。重要なことに、IL−21R-/-マウスにおけるタイプ2の反応性の全体的な減少は、寄生虫の負担における相違に起因しなかった。なぜならば、両グループの組織において、全ての時点で、類似の数の卵および対の寄生虫の成虫が見られたからである(図22A)。
【実施例7】
【0126】
(IL−21R欠損が肝線維症の進行を遅らせる)
TH2サイトカインが組織の線維成長において主要な役割を果たすと考えられているので(Wynn (2004)、既出)、次に、マンソン住血吸虫で感染させたIL−21R-/-マウスにおける肝線維症の発生および進行を調べた。組織のコラーゲン含有量を直接的な測定として、様々な時点において、肝臓のヒドロキシプロリンのレベルをアッセイした。予期されたように、感染させたWTマウスにおいて、顕著な肝線維症が観察された(図22D)。一方、IL−21R-/-マウスは、急性時点、慢性時点の両方において有意により少ない線維症を示した。とりわけ、感染後第29週目までに、IL−21R-/-マウスは、肝臓コラーゲン総含有量がWTマウスに比較して50%を超える減少を示した(図22E)。このように、TH2に依存する線維症の進行における、IL−21Rの重要で不可欠な役割が立証されている。
【0127】
IL−21阻害剤が、感染させたWTマウスにおける線維症の進行を遅らせることができるかどうかを調べるために、実験が行われた。これらの実験のために、C57BL/6マウスのグループが、全部で5週間の間sIL−21R−Fcまたはコントロールタンパク質で処理され、卵が初めて肝臓で検出される頃である、感染後第6週目に開始した。両グループ共、寄生虫および卵の組織での負担が類似であったが(データは示されず)、IL−21阻害剤を受けているマウスは、実験の終了において、肝線維症における50%を超える減少を示した(図22F)。IL−4およびIL−13のmRNA発現も肝臓において減少し、肉芽腫の大きさは、約15%減少した(データは示されず)。このように、これらのデータは、IL−21R-/-マウスで行った実験を補足するものである。
【実施例8】
【0128】
(IL−21シグナル伝達は、代わりに活性化されるマクロファージの発達を促進する)
Arg−1、FIZZ1およびTGF−β1が線維症の発達と関連しており、IL−21R-/-マウスの病気の組織において、TH2/Stat6に調節されたいくつかの遺伝子の発現が減少した(図17−20)(Gordonら、既出;およびNairら、既出も参照)ので、IL−21での刺激に続き、Arg−1、FIZZ1およびTGF−β1がマクロファージ内において直接的に調節されたかどうかを測定するために、実験を行った。Arg−1およびFIZZ1はまた、代わりに活性化されるマクロファージ(AAMo)の周知のマーカーである(Gordon、既出)。これらの研究のために、骨髄由来のマクロファージ培養物(BMMo)を産生し、次にIL−4、IL−13およびIL−21の種々の組合せによって刺激した。予期されたように、IL−4およびIL−13の両方が、Arg−1およびFIZZ1のmRNA発現を増加させた上に、二つの刺激を組み合わせて使用した場合、付加的な効果が観察された(図23A)。しかし留意すべきは、IL−21を単独で用いた場合には、IL−21はどちらの遺伝子に対しても効果がなかったが、その後にIL−4およびIL−13で刺激した場合、IL−21で前処理した培養物は、Arg−1およびFIZZ1のmRNA発現における高度に有意な増加を示した(図23A)。同じ組合せはまた、細胞におけるアルギナーゼの機能を有意に増加させた(図23B)。一方、IL−21は、培養上清において、総TGF−β1および活性TGF−β1のレベルに影響を与えなかった(図24)。予期しなかったことには、IL−21処理のみで、IL−4RαおよびIL−13Rα1の発現が有意に増加した(図23C)。一方、IL−4およびIL−13は、単独で用いた場合には効果がなく(図23C)、3つの刺激が組み合わせて使用された場合にも、追加的な効果はなかった(示されず)。
【0129】
IL−13Rα2は、IL−13依存のシグナル伝達にも影響を与え得るので(Chiaramonteら、(2003)、既出;Mentink-Kaneら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101:586-90;およびWoodら、(2003) J. Exp. Med. 197:703-09)、IL−21がIL−13Rα2の生成を調節するのかどうかを調べるために、実験を行った。驚くことではないが、IL−13Rα2は、主として線維芽細胞および平滑筋等の非造血細胞によって生成されるので(Chiaramonteら、(2003)、既出;Jakubzickら、(2003) Am. J. Pathol. 162:1475-86;Zhengら、(2003) J. Allergy Clin. Immunol. 111:720-28;Morimotoら、(2006) J. Immunol. 176:342-48)、BMMoの培養物においては、おとりレセプターが調節されるという証拠は無かった(データは示されず)。しかし、インビボでおとりレセプターの調節を調べると、IL−21は、静脈内において卵でチャレンジしたマウスの肺におけるIL−13Rα2のmRNA発現を下方調節し、血清における可溶性IL−13Rα2のレベルを有意に減少させた(図23D)。これらのデータをあわせて見ると、マクロファージにおいてタイプ2IL−4レセプター(シグナル伝達レセプター)を上方調節し、同時に、血清において可溶性IL−13Rα2(おとりレセプター)のレベルを減少させることにより、IL−21は、代わりに活性化されるマクロファージの発達に寄与するということを示唆する。恐らく両方のメカニズムが、IL−4/IL−13で刺激されたマクロファージにおけるArg−1およびFIZZ1の活性化の増加に寄与したものと考えられる。このように、蠕虫で感染させたIL−21R-/-マウスにおける弱められたTH2反応およびTH2依存線維症についての、更なる機構上の説明が提供される。
【実施例9】
【0130】
(考察)
最近、IL−21は、ナイーブTH細胞のIFN−γ生成TH1細胞への分化を阻害し得るTH2サイトカインとして特徴付けられた(Wursterら、(2002)、既出)。住血吸虫症における免疫反応は、初期のIFN−γから、持続した優性のTH2反応へと発展するので(PearceおよびMacDonald、既出)、蠕虫に誘導されたTH2反応の発達に対するIL−21Rのシグナル伝達の影響を調べた。マンソン住血吸虫を用いてWTマウスを感染させたところ、肝臓におけるIL−21およびIL−21Rの発現が増加した。このことは、IL−21のシグナル伝達が、蠕虫に誘導されたタイプ2の免疫性に関連することを立証している。しかし、肺においては、住血吸虫卵が、TH1極性化反応およびTH2極性化反応の間、有意なIL−21発現を誘導した。実際、IL−21の発現は、マウスがTH1反応に極性化された時に最も増加した。これらのデータは、他のTH2関連サイトカインに比べ、IL−21の方がより制限されないパターンの発現を示すことを示唆した。IL−21のレセプターもまた、TH1/TH2に特異的なパターンを示すことができなかった。しかし、TH1に極性化されたマウスの場合に比べ、TH2に極性化されたマウスの肺では、ほぼ4倍のIL−21レセプターが誘導された。このことは、IL−21Rのシグナル伝達が、TH2媒介性の炎症の調節に関与するかも知れないことを初めて示すものの一つである。
【0131】
タイプ2エフェクターの反応が、IL−21Rの不在において十分に発揮されなかった(compromised)かどうかを測定するために、TH2に極性化する条件下で好ましく誘導されるいくつかの遺伝子の発現を調べた。これらの遺伝子はAMCase、Ym1、およびFizz1を含み、これらの全てが、TH2媒介性の炎症の調節において、重要で非冗長の役割を果たすと考えられる(Zhuら、既出;Chiaramonteら、(2003)、既出;Nairら、既出;Mentink-Kaneら、既出;Guoら、(2000) J. Biol Chem. 275:8032-37)。一次免疫反応、二次免疫反応または慢性的な免疫反応の間にいくらかの変異が観察されたが、各場合において、IL−21R-/-マウスは、そのTH2関連遺伝子において高度に有意な減少を示した。Ym1およびAMCaseは、下等動物のキチナーゼとの相同性を共有するタンパク質ファミリーのメンバーである(Nairら、既出)。それらの宿主免疫反応における厳密な機能はまだ不確かなままではあるが、好酸球遊走、組織改造および線維症において重要な役割を果たすと考えられる。確かに、最近の研究は、AMCaseの中和がアレルゲン主導の炎症および気道過敏性を改善できることを示し、TH2免疫性における哺乳動物のキチナーゼの関与を立証している(Zhuら、既出)。Fizz1もまた、組織の線維成長に関連している(Mentink-Kaneら、既出;Liuら、(2004) J. Immunol. 173:3425-31)。このため、IL−21Rの主な機能は、創傷治癒および線維症のメカニズムを調節することかも知れない。従って、蠕虫に誘導された免疫反応への関与に加え、IL−21Rは、種々のTH2に誘導された炎症性障害の調節に関与するかも知れない。
【0132】
住血吸虫症において、IL−21Rの欠損は、病気の進行に対して大きな影響を与えた。感染の強度はWTマウスとIL−21R-/-マウスとで同じではあったが、IL−21Rが無い場合に、卵に誘導された炎症性反応は有意に減少した。また、二次肉芽腫形成における顕著な減少および肺における一次肉芽腫のより早い分解も見られた。これらのデータをあわせると、肉芽腫性炎症におけるIL−21Rの不可欠な役割が示されている。以前の研究は、IL−4およびIL−13が損傷形成において必須であることを示した(PearceおよびMacDonald、既出)。このように、IL−21Rは、これらサイトカインの活性に直接的または間接的に影響を与えると考えられている。これらの研究は、IL−4/IL−10ダブルノックアウトマウスにおいて非常に高レベルのIL−21が観察されたので、IL−21が単独では作用しないことを示唆したが、それでも、肉芽腫の形成は、これらのTH2欠損動物においてほぼ完全に除かれた(Hoffmannら、(2000) J. Immunol. 164:6406-16;およびSandlerら、(2003) J. Immunol. 171:3655-67)。このように、IL−21は、IL−4およびIL−13と共同して最大の反応を誘導するものと思われる。本明細書に開示されたデータは、IL−21R-/-マウスの肉芽腫の細胞構成において検出可能な変化は見られず、また、CD4+T細胞の漸増における特異的な弱まりは見られなかったことを示している。これらの知見をあわせると、IL−21Rは、TH2エフェクター反応の全体的な強度を調節することにより、寄生虫に誘導された病状の発達を調節することを示唆した。
【0133】
IL−21Rは、IL−4に誘導されたTH2細胞の分化を直接に調節するとは考えられていない(Sutoら、既出;Wursterら、(2002)、既出)。代わりに、最近の論文において、IL−21が、IFN−γ−生成TH1細胞の発現を下方調節することにより、TH2主導の反応を増幅すると仮定された(Wursterら、(2002)、既出)。こうして、IL−21レセプターが無い場合に、住血吸虫に感染させたマウスにおけるIFN−γ反応は増加するとの理論が立てられている。インビトロでは、肺関連リンパ節において少しの増加が観察されたが、IFN−γの生成は、肉芽腫性組織において一貫して減少した。このように、これらの研究は、蠕虫による感染の間に、内因性IL−21RがIFN−γ生成の阻害において実質的な役割を果たすということを示さなかった。しかし、IL−21R-/-マウスは、組織内でより弱いTH1およびTH2サイトカイン反応を同時に生み出した。感染後全ての時点において、IgG2b(TH1関連)およびIgG1(TH2関連)抗体の力価が有意に減少したことが、この結論を裏付けている。Th2サイトカインも、N・ブラシリエンシスによる感染後に、肺およびリンパ節両方においてmRNAレベルで減少した。確かに、直接的な生体外のデータの全てが、影響を受けた組織内におけるTH2サイトカインの発現および機能における顕著な減少を立証した。しかし、抗原による再刺激後、単離されたリンパ球によってTH2サイトカインの生成が一貫して減少することはなかった。このことは、IL−21R-/-マウスが、少なくともインビトロで、有意なTH2反応を生み出すことができることを示唆している。このように、本明細書に開示されるデータは、IL−21Rが、組織におけるTH2反応を選択的に増加させることを示唆する。TH2反応を促進することに加え、IL−21Rは、IL−21の生成も増加させた。このように、IL−21Rは、インビボでTH2サイトカインの発現およびタイプ2のエフェクター機能を促進させるように、自己分泌の方法で作用すると思われる。
【0134】
関与するメカニズムを更に解明するに当たり、IL−21がマクロファージの機能を直接的に調節するかどうかを測定するために実験を行った。なぜならば、インビボのデータは、「代わりに活性化された」表現型と関連しているいくつかの遺伝子において顕著な減少を示したからである(Gordon、既出;Mantovaniら、(2005) Immunity 23:344-46)。代わりに活性化された表現型を示すマクロファージおよび線維芽細胞は、住血吸虫性肉芽腫の主要な細胞構成要素であり、機能的研究は、病気の進行に決定的に関与することを示唆した(Hesseら、(2001)、既出)。確かに、Brombacherらによる重要な研究は、代わりに活性化されたマクロファージが完全に欠損するマウスにおいて、マンソン住血吸虫での感染後に、卵に誘導された致命的な病状が生じたことを示した(Herbertら、(2004) Immunity 20:623-35)。加えて、IL−13に媒介される線維症のメカニズムにおいて、マクロファージ由来のTGF−β1が関っているので(Leeら、(2001) J. Exp. Med. 194:809-21;およびFichtner-Feiglら、(2006) Nat. Med. 12:99-106)、IL−21がマクロファージにおいてTGF−β1の生成を調節するかどうかを測定するために実験を行った。これらの問題を調べるために、IL−21、IL−4およびIL−13の種々の組合せによる刺激後、骨髄由来のマクロファージにおけるArg−1およびFIZZ1のmRNA、アルギナーゼ活性およびTGF−β1タンパク質の反応を測定した。Arg−1およびFIZZ1は、IL−4Rα/Stat6依存遺伝子である(Liuら、既出;Hesseら、(2001)、既出;Munderら、(1998) J. Immunol. 160:5347-54)。従ってそれらは、代替のマクロファージ活性化の機能的マーカーの役割を果たす。重要なことに、マクロファージは、IL−21に暴露された時に、IL−4およびIL−13のArg−1およびFIZZ1が誘導する活性に対してより感受性が高くなったことを、知見が示唆している。尿素の生成によって評価されたアルギナーゼ活性も有意に増加し、IL−21が、高度に機能的な代わりに活性化されたマクロファージの発達に対する重要な刺激であることを立証した。一方、IL−21は、マクロファージによるTGF−β1生成に対する効果を有さなかった。このように、前線維性(pro-fibrotic)サイトカインTGF−β1は確かに関与しているようであり、このことは、住血吸虫症におけるTGF−β1の役割を調べた以前の研究と一致する(Kaviratneら、(2004) J. Immunol. 173:4020-29)。代わりに、IL−21は、BMMoにおけるIL−4RαおよびIL−13Rα1の発現を有意に増加させ、インビボでの可溶性IL−13おとりレセプター生成を減少させた。このことは、IL−4およびIL−13に対する感受性が高まったことの説明になると思われる。このように、これらのデータは、IL−21R-/-マウスについてのインビボの研究を補足するものであり、IL−21Rシグナル伝達の重要な機能は、線維症のメカニズムに関与しているAAMoの発達を強めることであることを示唆する(Hesseら、(2001)、既出;Hesseら、(2000)、既出)。また、AAMoは、CD4+TH2細胞の分化を増幅することが示されているので(Bonecchiら、(1998) Blood 92:2668-71)、これらのデータは、IL−21R-/-マウスにおける蠕虫に誘導されたTH2活性の全体的な減少の説明にもなり得る。
【0135】
ヒトの住血吸虫症において、繊維性の肝臓の病状の発達は、慢性的な病的状態および死亡の主要な原因である(PearceおよびMacDonald、既出;Wynnら、(2004) Immunol. Rev. 201:156-67)。TH2サイトカイン反応は、コラーゲン沈着において重要な役割を果たすことが知られているので(Wynnら、(2004)、既出)、最終的な一連の実験において、IL−21Rの肝線維症の進行に対する影響を調べた。留意すべきことに、IL−21R-/-マウスにおいて、線維症の発達が有意に減少し、ノックアウト動物は、感染後29週目までに、肝線維症の50%を超える減少を示した。重要なことに、感染させたWTマウスをsIL−21R−Fcで処理した場合にも、類似の発見が得られた。このように、IL−21レセプターは、抗線維性治療の潜在的な新しい標的として明らかになった。結論として、これらの研究は、TH2サイトカインに媒介される病気の進行におけるIL−21Rの必須の役割を例示している。そうであるから、IL−21Rは、タイプ2の免疫性およびマクロファージの極性化を調節する重要なレセプターのリストに加えるべきである。
【実施例10】
【0136】
(予測的治療)
予測的治療について、限定されない一連の例を以下に挙げる。
肝硬変と診断された被検体に、肝臓に線維性組織が蓄積するのを減らすために、IL−21R融合タンパク質を投与する。IL−21R融合タンパク質は、C末端において、リンカー(配列番号17の第236番目〜第243番目のアミノ酸に対応)によって、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc変異配列(配列番号17の第244番目〜第467番目のアミノ酸に対応)と融合した、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸を含む。
住血吸虫による感染と診断された被検体に、線維性組織が蓄積するのを減らすために、可溶性IL−21Rフラグメントを投与する。フラグメントは、配列番号2の第20番目〜第538番目のアミノ酸を含有する。
外科手術後に、創傷治癒の過程中に外科的切開が原因で線維症が蓄積するのを減らすために、被検体にIL−21R抗体を投与する。
肝硬変と診断された被検体に、肝臓に線維性組織が蓄積するのを減らすために、IL−21抗体を投与する。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1は、マウスIL−21R/MU−1の全長cDNA配列を示す。ヌクレオチド配列は、配列番号4の第1番目〜第2628番目のヌクレオチドに対応する。
【図1−2】(図1の続き)
【図2A】図2Aおよび2Bは、マウスおよびヒトIL−21R/MU−1のアミノ酸配列を示す。図2Aは、マウスIL−21R/MU−1のアミノ酸配列を示す(配列番号5の第1番目〜第529番目のアミノ酸に対応)。第1番目〜第19番目のアミノ酸にリーダー配列(10.1のスコアによるSPScanによって予測)がある(ボールド体表示)。予測された膜貫通ドメイン(下線部)が、配列番号5の第237番目〜第253番目のアミノ酸に見られる。予測されたシグナル伝達モチーフは、第265番目〜第274番目のアミノ酸における「ボックス1」モチーフ、および第311番目〜第324番目のアミノ酸における「ボックス2」モチーフを含む(ボールド体および下線部分)。6つのチロシンが、配列番号5の第281番目、第319番目、第361番目、第368番目、第397番目及び第510番目のアミノ酸に位置する。WSXWSモチーフ(配列番号3)は、第214番目〜第218番目のアミノ酸残基に位置する(大文字、ボールド体で表示)。潜在的Statドッキング部位は、配列番号5の第393番目〜第398番目のアミノ酸および第510番目〜第513番目のアミノ酸を含む。図2Bは、ヒトIL−21R/MU−1のアミノ酸配列を示す(配列番号2に対応)。予測されたシグナル配列(配列番号2のおよそ第1番目〜第19番目のアミノ酸);WSXWSモチーフ(配列番号2のおよそ第213番目〜第217番目のアミノ酸);および膜貫通ドメイン(配列番号2のおよそ第236番目〜第252番目(又は第236番目〜第253番目、又は第236番目〜第254番目)のアミノ酸(下線部分))の位置が示されている。潜在的JAK結合部位、ボックス1およびボックス2のシグナル伝達モチーフ、およびStatドッキング部位が、ラベル付きの矢印で示されている。
【図2B】(図2Aの説明を参照)
【0138】
【図3】図3は、ヒトおよびマウスIL−21R/MU−1のcDNA配列(それぞれ配列番号1の第1番目〜第2665番目の核酸および配列番号4の第1番目〜第2628番目の核酸に対応)のGAP配列比較を示す。huMU−1はヒトIL−21R/MU−1を、muRMU−1はマウスIL−21R/MU−1を表す。Gapパラメータ:Gap重量=50;平均マッチ=10.000;長さ重量=3;平均ミスマッチ=0.000;同一性割合=66.116。
【図3−2】(図3の続き)
【図3−3】(図3の続き)
【図3−4】(図3の続き)
【図4】図4は、ヒトIL−21R/MU−1タンパク質(配列番号2のアミノ酸に対応)とマウスIL−21R/MU−1タンパク質(配列番号5のアミノ酸に対応)のGAP比較を示す。アラインメントは、BLOSUM62アミノ酸置換行列によって産生された(HenikoffおよびHenikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:10915-19参照)。Gapパラメータ:Gap重量=8;平均マッチ=2.912;長さ重量=2;平均ミスマッチ=2.003;同一性割パーセント=65.267。
【図5】図5は、ヒトIL−21R/MU−1(配列番号2に対応)、マウスIL−21R/MU−1(配列番号5に対応)、およびヒトIL−2ベータ鎖のアミノ酸(GENBANK(登録商標)受託番号M26062)の複数の配列アラインメントを示す。リーダー配列および膜貫通ドメインに下線が引かれている。保存されたサイトカインレセプターモジュールのモチーフがボールド体で表示されている。潜在的シグナル伝達領域が、下線およびボールド体で示されている。
【0139】
【図6】図6は、IL−21R/MU−1経由のシグナル伝達を示す。IL−21R/MU−1は、EPOで刺激されたクローンE7 EPO IL−21R/MU−1キメラ発現細胞においてStat5をリン酸化する。コントロールまたはキメラBAF−3細胞をIL−3で処理した結果、Stat3がリン酸化されたが、Stat1または5はリン酸化されなかった。
【図7A】図7Aおよび図7Bは、アミノ末端においてミツバチのリーダー配列およびHis6およびFlagタグと融合した成熟ヒトIL−21Rのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。図7Aおよび図7Bに示される融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号10および配列番号11に示される。融合タンパク質の成熟ヒトIL−21Rフラグメントおよびミツバチのリーダー配列/Hisタグのフラグメントのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸および配列番号11の第1番目〜第44番目のアミノ酸に対応する。
【図7B】(図7Aの説明を参照)
【図8A】図8A〜8Cは、C末端において、リンカーによってヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc配列と融合した、ヒトIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。図8A〜8Cに示される融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号12および配列番号13に示される。ヒトIL−21R細胞外ドメイン、リンカー、およびヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc配列のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号13の第236番目〜第243番目のアミノ酸、および配列番号13の第244番目〜第467番目のアミノ酸に対応する。
【図8B】(図8Aの説明を参照)
【図8C】(図8Aの説明を参照)
【0140】
【図9A】図9A〜9Cは、C末端において、リンカーによってヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc配列およびHis6配列タグと融合した、ヒトIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。図9A〜9Cに示される融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号14および配列番号15に示される。ヒトIL−21R細胞外ドメイン、リンカー、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc配列およびHis6配列タグのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号15の第236番目〜第243番目のアミノ酸、配列番号15の第244番目〜第467番目のアミノ酸、および配列番号15の第468番目〜第492番目のアミノ酸に対応する。
【図9B】(図9Aの説明を参照)
【図9C】(図9Aの説明を参照)
【図10A】図10A〜10Cは、C末端において、リンカーによってヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc変異配列と融合した、ヒトIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。ヒトFc配列は、Fc−レセプター結合を減少させるために野生型配列から第254番目及び第257番目の残基が変異されているものである。図10A〜10Cに示される融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号16および配列番号17に示される。ヒトIL−21R細胞外ドメイン、リンカー、およびヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fc変異配列のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号17の第236番目〜第243番目のアミノ酸、および配列番号17の第244番目〜第467番目のアミノ酸に対応する。
【図10B】(図10Aの説明を参照)
【図10C】(図10Aの説明を参照)
【0141】
【図11A】図11A〜11Bは、C末端において、ロドプシン配列タグと融合した、ヒトIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。この融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号18および配列番号19に示される。ヒトIL−21R細胞外ドメインのアミノ酸配列は、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸に対応する。
【図11B】(図11Aの説明を参照)
【図12A】図12A〜12Cは、C末端において、EK切断部位および変異IgG1 Fc領域と融合した、ヒトIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。図12A〜12Cに示される融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号20および配列番号21に示される。ヒトIL−21R細胞外ドメイン、およびEK切断部位/変異IgG1 Fc領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸および配列番号21の第236番目〜第470番目のアミノ酸に対応する。
【図12B】(図12Aの説明を参照)
【図12C】(図12Aの説明を参照)
【0142】
【図13A】図13A〜13Bは、C末端において、マウス免疫グロブリンG2a(IgG2a)と融合した、マウスIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号22および配列番号23に示される。
【図13B】(図13Aの説明を参照)
【図14A】図14A〜14Bは、C末端において、FlagおよびHis6配列タグと融合した、マウスIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号24および配列番号25に示される。
【図14B】(図14Aの説明を参照)
【図15A】図15A〜15Bは、N末端において、FlagおよびHis6配列タグと融合した、(ミツバチのリーダー配列)マウスIL−21R細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のアラインメントを示す。ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号26および配列番号27に示される。
【図15B】(図15Aの説明を参照)
【図16】図16は、高度に極性化されたタイプ1およびタイプ2の免疫応答中のIL−21およびIL−21Rの発現のプロフィールを示す。IL−10/IL−4KO(TH1、Δ)およびIL−10/IL−12KO(TH2、●)のグループの5匹のマウスを、マンソン住血吸虫卵を使用して腹腔内で感作し、14日後に静脈内でチャレンジした。IL−13およびIFN−γ(図16A)、およびIL−21RおよびIL−21(図16B)のリアルタイムRT−PCR分析のために、肺のRNA検体がそれぞれ調製された。遺伝子発現における平均±SEMは、HPRTへの標準化後に、チャレンジしなかった野生型コントロールに比べて何倍増加したかとして表された。星印は、所定の時点におけるグループ間での有意差を示す。*はp<0.05。
【0143】
【図17A】図17は、住血吸虫卵でチャレンジしたIL−21R-/-マウスの肺において、タイプ2のサイトカイン生成が減少することを示す。未処理の野生型マウス(白い棒グラフ)およびIL−21R-/-マウス(黒い棒グラフ)のグループを、生きているマンソン住血吸虫卵を使用して静脈内でチャレンジし、チャレンジ後4、7および14日で犠牲にした。(A)肺の組織からRNAを調製し、それぞれリアルタイムRT−PCRによって分析した(グループ/時点当たりN=5)。結果は、5つの数字を有する大まかなバーによる箱髭図に示されており、分布における中央値、四分位数、最小および最大のパーセンタイル値を示している。バーは(下から上に向かって)、それぞれ試験をした試料の10、25、50、75および90パーセンタイルを示す。星印は、所定の時点における野生型の値との有意差を示し、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である。(B)脾臓(Spl)および肺に関連するリンパ節(LN)をそれぞれプールし(2つの別個のグループ、グループ当たり3〜4匹のマウス)、Con A(CON、1μg/ml)または可溶性卵抗原(SEA、20μg/ml)の存在下で72時間インキュベーションした後、IL−5、IL−10、IL−13およびIFN−γについて、単一細胞懸濁液のアッセイを行った。刺激を行わなかった培養物においては、サイトカインは検出レベルより低かった。(C)肉芽腫の大きさ(体積、mm3×10-3)および肉芽腫における好酸球のパーセンテージを、顕微鏡によって定量化した。(D)肉芽腫性の肺の組織におけるTH2に調節された炎症遺伝子のリアルタイムPCR分析。すべてのデータは、少なくとも2つの別個の実験を代表するものである。
【図17B】(図17Aの説明を参照)
【図17C】(図17Aの説明を参照)
【図17D】(図17Aの説明を参照)
【0144】
【図18A】図18は、N・ブラシリエンシスに感染させたIL−21R-/-マウスにおいて、タイプ2の反応が弱まることを示している。第7日に、N・ブラシリエンシスに感染させた、または未処理のC57BL/6またはIL−21R-/-マウス(5匹/処理グループ)それぞれから、肺(A)および肺に関連したリンパ節(LALN)(B)を除去した。RNAを単離し、図17について述べられている通りに、cDNAを産生した。IL−13、IL−4、AMCase、Ym1およびFIZZ1それぞれについて、リアルタイム定量PCRによってmRNAを分析した。変化(倍)は、感染させたマウスと感染させなかったマウスとの比較に基づく。
【図18B】(図18Aの説明を参照)
【図19A】図19は、IL−21R-/-マウスにおいて、タイプ2サイトカイン主導の炎症が減少することを示している。WTマウス(白い棒グラフ)およびIL−21R-/-マウス(黒い棒グラフ)を、腹腔内において卵で感作し、2週間後に静脈内において生きているマンソン住血吸虫卵でチャレンジし、チャレンジ後第4日および第7日に犠牲にした。(A)肺の組織からRNAを調製し、図17について述べられている通りに、リアルタイムRT−PCRによって個々に分析した(グループ/時点当たりN=5)。(B)抗原(SEA)またはマイトジェンによる刺激(CON)後に、IL−5、IL−10、IL−13およびIFN−γについて、脾臓(Spl)および肺に関連したリンパ節(LN)のアッセイを行った。(C)WTマウス(グループ当たり複数のマウス:N=10、第4日;N=15、第7日)およびIL−21R-/-マウス(N=11、第4日;N=16、第7日)について、肉芽腫の大きさ(mm3×10-3)および肉芽腫における好酸球のパーセンテージを、顕微鏡によって定量化した。(D)肉芽腫性の肺の組織におけるTH2炎症遺伝子のリアルタイムPCR分析(グループ/時点当たりN=5)。星印は、所定の時点における野生型の値との有意差を示し、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である。示されたデータは、3つの別個の実験の結果を総合したものである。
【図19B】(図19Aの説明を参照)
【図19C】(図19Aの説明を参照)
【図19D】(図19Aの説明を参照)
【0145】
【図20A】図20は、経皮的なマンソン住血吸虫への感染後に、IL−21Rが存在しない場合、慢性的な肝疾患が減少することを示している。WTマウス(白い棒グラフ)およびIL−21R-/-マウス(黒い棒グラフ)を、25〜30匹のマンソン住血吸虫セルカリアを用いて感染させた。全ての動物は、感染後第9週(急性)または第12週(慢性)で犠牲にした。(A)肝臓の組織からRNAを単離し、図17について述べられている通りに、リアルタイムRT−PCRによって個々に分析した(グループ/時点当たりN=8〜10)。(B)脾臓(Spl)および腸間膜リンパ節(LN)を、2〜4匹のマウスのグループ内でプールし、IL−5、IL−10およびIFN−γについて、単一細胞懸濁液のアッセイを行った。示されたデータは、3つの別個のプールされたグループの平均である。(C)WTマウス(グループ当たり複数のマウス:第9週においてN=30、第12週においてN=17)およびIL−21R-/-マウス(グループ当たり複数のマウス:第9週においてN=27、第12週においてN=19)について、肉芽腫の大きさ(mm3×10-3)および肉芽腫における好酸球のパーセンテージを、顕微鏡によって評価した。(D)肉芽腫性の肝臓の組織におけるTH2炎症遺伝子のリアルタイムPCR分析(グループ/時点当たりN=8〜10)。示されたデータは、第9週に行われた1つの実験と、第12週に行われた2つの実験、計3つの別個の実験結果を総合したものである。星印は、所定の時点における野生型の値との有意差を示し、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である。
【図20B】(図20Aの説明を参照)
【図20C】(図20Aの説明を参照)
【図20D】(図20Aの説明を参照)
【0146】
【図21A】図21は、肉芽腫の細胞構成が、IL−21Rの欠損によって変化しないことを示している。(A)9週間感染させたWT(N=10)マウスおよびIL−21R-/-(N=9)マウスの肝臓における、肉芽腫の細胞構成が評価された。小リンパ球(Sm Lym)、大リンパ球(Lg Lym)、マクロファージ(Mac)、線維芽細胞(Fibro)、好酸球(Eos)、および肥満細胞(Mc)の平均±SEMが示される。(B)未処理のWTマウスおよびIL−21R-/-マウスの潅流させた肺からリンパ球を単離し(上のパネル)、第7日に、マンソン住血吸虫の5000個の卵を用いて静脈内でチャレンジを行った(下のパネル)。ヒストグラム中の数は、肺の総リンパ球数におけるCD4-およびCD4+T細胞のパーセンテージを示す。
【図21B】(図21Aの説明を参照)
【図22A】図22は、IL−21Rの欠損が、TH2サイトカイン依存線維症の進行を有意に遅らせることを示す。WTマウス(白い棒グラフ)およびIL−21R-/-マウス(黒い棒グラフ)を、マンソン住血吸虫のセルカリアを用いて感染させた。動物は、感染後第9週(急性)、第12週(慢性)(パネルA〜D)、または第29週(遅い慢性)(パネルE)に犠牲にした。(A)各グループについて、千単位±SEにおける平均的な蠕虫対数、総蠕虫数および蠕虫1対当たりの卵数が示されている。どの実験においても、感染強度の差は見られなかった(n=マウスの数)。(B)犠牲の際にマウスの血を抜き取り、SEAアイソタイプ特異的Abの力価をELIZAによって測定した。(C)総血清IgE量(μg/ml)。(D〜F)卵10,000個当たり(パネルD)、または肝臓全体当たり(パネルEおよびF)の、肝臓において検出されたヒドロキシプロリンの量(単位:ミクロモル)によって、線維症を評価した。パネルFにおいて、感染させたWT C57BL/6マウスを、IgG2aコントロール抗体(cIg−白い棒グラフ)またはsIL−21R−Fc(黒い棒グラフ)のどちらかで6週間処理した。星印は、所定の時点における野生型の値との有意差を示し、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である。
【図22B】(図22Aの説明を参照)
【図22C】(図22Aの説明を参照)
【図22D】(図22Aの説明を参照)
【図22E】(図22Aの説明を参照)
【図22F】(図22Aの説明を参照)
【0147】
【図23A】図23は、IL−21のシグナル伝達が、IL−13レセプターの発現を調節することにより、代わりのマクロファージの活性化を促進することを示す。骨髄由来のマクロファージが、IL−4(20ng/ml)、IL−13(20ng/ml)およびIL−21(20ng/ml)の種々の組合せで一晩処理された。IL−4、IL−13およびIL−21で処理されたマクロファージを、IL−4およびIL−13を投与する前に、IL−21で6時間前処理した。細胞を20時間後に溶解し、リアルタイムRT−PCRによってRNAを個々に分析した。(A)Arg−1およびFIZZ1の遺伝子発現を測定することにより、IL−21が代わりのマクロファージの活性化を促進する能力を評価した。(B)L−アルギニンから尿素への変換を測定することにより、細胞溶解物中のアルギナーゼ活性を定量化した(mg/dL±SEM、3重測定)。(C)IL−4RαおよびIL−13Rα1のmRNAの発現を、リアルタイムPCRによって評価した。全ての条件において、IL−13Rα2のmRNAはほとんど検出不可能であった(示されず)。パネルA、BおよびCに示されるデータは、3つの別個の実験を代表するものである。(D)5000個の生きているマンソン住血吸虫卵を用いて、未処理のC57BL/6マウスに静脈内でチャレンジし、第1日から第6日まで、一日おきにPBSまたはrIL−21(2μg/投与量)で処理した。動物(グループ当たり5匹)は第7日に犠牲にし、リアルタイムPCRによって肺のIL−13Rα2 mRNAのレベルのアッセイを行い、未処理のコントロール(白い棒グラフ)より何倍増加したかを示した。また、犠牲の際にマウスの血を抜き取り、ELISAによって、個々の血清試料中のsIL−13Rα2の量のアッセイを行った。星印は有意差を示し、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001である。
【図23B】(図23Aの説明を参照)
【図23C】(図23Aの説明を参照)
【図23D】(図23Aの説明を参照)
【図24】図24は、代わりに活性化されたマクロファージが、有意な量の活性TGF−β1を生成しないことを示す。右のパネルは、マクロファージ活性後の活性TGF−β1を示し、左のパネルは、マクロファージ活性後の総TGF−β1レベルを示す。骨髄由来のマクロファージを、IL−4(20ng/ml)、IL−13(20ng/ml)およびIL−21(20ng/ml)の種々の組合せで一晩処理した。IL−4、IL−13およびIL−21で処理されたマクロファージは、IL−4およびIL−13を投与する前に、IL−21で6時間前処理された。活性化後20時間で、ELIZAによって上清のアッセイを行い、総TGF−β1および活性TGF−β1を調べた。IL−21のみで処理された細胞を除き(左のパネルの「IL−21」と「未処理」とを比較のこと)、全てのグループにおいて高レベルの総TGF−β1が検出された(例えば、左のパネルの「IL−4」と「未処理」とを比較のこと)。総TGF−β1発現は高かったが、全てのグループにおいて活性TGF−β1は最小限であった(右のパネル)。示されたデータは、類似の結果であった3つの別個の実験を代表するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルを減少させる治療上有効量の薬剤を該被検体に投与する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防する方法。
【請求項2】
前記薬剤が、抗IL−21R抗体、抗IL−21抗体、抗IL−21R抗体の抗原結合性フラグメント、抗IL−21抗体の抗原結合性フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメントからなる群より選択されるIL−21/IL−21Rアンタゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤がIL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントが、配列番号2の第1番目〜第538番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第538番目のアミノ酸、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第1番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第529番目のアミノ酸、配列番号5の第20番目〜第529番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第236番目のアミノ酸および配列番号5の第20番目〜第236番目のアミノ酸からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記IL−21Rの可溶性フラグメントが、IL−21ポリペプチドに結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤がIL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントが、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25または配列番号27に示されるアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記IL−21Rの可溶性フラグメントのアミノ酸配列が、配列番号11または配列番号13に示されるアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤がIL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントが、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24または配列番号26に示される核酸配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記IL−21Rの可溶性フラグメントが、配列番号12または配列番号16に示される核酸配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤がIL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントが、IL−21Rの細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFcフラグメントを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記IL−21Rの細胞外ドメインのアミノ酸配列が、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸または配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫グロブリンFcフラグメントが機能変化(an altered function)を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫グロブリンFcフラグメントが、配列番号17の第244番目〜第467番目のアミノ酸のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記線維症または線維症に関連した障害が、肝臓、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、小腸、胆管または胃に影響を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記線維症または線維症に関連した障害が、肝臓、表皮、内皮または肺に影響を与える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記線維症または線維症に関連した障害が、間質性肺線維症である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記線維症または線維症に関連した障害が、住血吸虫による感染の結果である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記線維症または線維症に関連した障害が、創傷治癒の結果である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記創傷治癒が外科的切開に起因する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの追加の治療剤を前記被検体に投与する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの追加の治療剤が、サイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性薬剤および細胞増殖抑制剤からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの追加の治療剤が、TNFアンタゴニスト、抗TNF剤、IL−12アンタゴニスト、IL−15アンタゴニスト、IL−17アンタゴニスト、IL−18アンタゴニスト、IL−22アンタゴニスト、T細胞除去剤、B細胞除去剤、シクロスポリン、FK506、CCI−779、エタネルセプト、インフリキシマブ、リツキシマブ、アダリムマブ、プレドニゾロン、アザチオプリン、金、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、ミノサイクリン、アナキンラ、アバタセプト、メトトレキサート、レフルノミド、ラパマイシン、ラパマイシンの類似体、Cox−2阻害剤、cPLA2阻害剤、NSAID、p38阻害剤、およびB7.1、B7.2、ICOSL、ICOSおよび/またはCD28のアンタゴニスト、ならびにCTLA4のアゴニストからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記被検体がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
(a)目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;(b)該目的の細胞または試料を化合物と接触させる工程;および(c)該化合物との接触の後に、該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程を含む、被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防するための化合物を同定する方法であって、接触させなかった目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルと比較して、該接触させた目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、被検体における線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するのに有用な化合物として該化合物を同定するものである、前記方法。
【請求項24】
(a)目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;(b)該目的の細胞または試料を化合物と接触させる工程;(c)該化合物との接触の後に、該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(d)該接触させた目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを、IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルと比較する工程を含む、被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防するための化合物を同定する方法であって、IL−21および/またはIL−21Rの該基準レベルと比較して、該接触させた目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、被検体における線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するのに有用な化合物として該化合物を同定するものである、前記方法。
【請求項25】
(a)第1時点において、被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)第2時点において、該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態の経過をモニタリングする方法であって、該第1時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルと比較して、該第2時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、該線維症または線維症に関連した状態の重症度が減少したことを示すものである、前記方法。
【請求項26】
(a)第1時点において、被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)第2時点において、該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態を予知する方法であって、該第1時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルと比較して、該第2時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、該被検体が該線維症または線維症に関連した状態になり得る可能性が減少したこと、または、該被検体において該線維症または線維症に関連した状態が悪化し得る可能性が減少したことを示すものである、前記方法。
【請求項27】
(a)被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)該被検体由来の該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを、IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルと比較する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態を予知する方法であって、IL−21および/またはIL−21Rの該基準レベルと比較して、該被検体由来の該目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、該被検体が該線維症または線維症に関連した状態になり得る可能性が減少したこと、または、該被検体において該線維症または線維症に関連した状態が悪化し得る可能性が減少したことを示すものである、前記方法。
【請求項28】
(a)被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)該被検体由来の該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを、IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルと比較する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態を診断する方法であって、IL−21および/またはIL−21Rの該基準レベルと比較して、該被検体由来の該目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が高いことが、該被検体において線維症または線維症に関連した状態が存在することを示すものである、前記方法。
【請求項1】
被検体におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルを減少させる治療上有効量の薬剤を該被検体に投与する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防する方法。
【請求項2】
前記薬剤が、抗IL−21R抗体、抗IL−21抗体、抗IL−21R抗体の抗原結合性フラグメント、抗IL−21抗体の抗原結合性フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメントからなる群より選択されるIL−21/IL−21Rアンタゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤がIL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントが、配列番号2の第1番目〜第538番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第538番目のアミノ酸、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸、配列番号2の第1番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号2の第20番目〜第236番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第529番目のアミノ酸、配列番号5の第20番目〜第529番目のアミノ酸、配列番号5の第1番目〜第236番目のアミノ酸および配列番号5の第20番目〜第236番目のアミノ酸からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記IL−21Rの可溶性フラグメントが、IL−21ポリペプチドに結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤がIL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントが、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25または配列番号27に示されるアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記IL−21Rの可溶性フラグメントのアミノ酸配列が、配列番号11または配列番号13に示されるアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤がIL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントが、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24または配列番号26に示される核酸配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記IL−21Rの可溶性フラグメントが、配列番号12または配列番号16に示される核酸配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤がIL−21Rの可溶性フラグメントであり、該IL−21Rの可溶性フラグメントが、IL−21Rの細胞外ドメインおよび免疫グロブリンFcフラグメントを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記IL−21Rの細胞外ドメインのアミノ酸配列が、配列番号2の第1番目〜第235番目のアミノ酸または配列番号2の第20番目〜第235番目のアミノ酸と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫グロブリンFcフラグメントが機能変化(an altered function)を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫グロブリンFcフラグメントが、配列番号17の第244番目〜第467番目のアミノ酸のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記線維症または線維症に関連した障害が、肝臓、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、小腸、胆管または胃に影響を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記線維症または線維症に関連した障害が、肝臓、表皮、内皮または肺に影響を与える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記線維症または線維症に関連した障害が、間質性肺線維症である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記線維症または線維症に関連した障害が、住血吸虫による感染の結果である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記線維症または線維症に関連した障害が、創傷治癒の結果である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記創傷治癒が外科的切開に起因する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの追加の治療剤を前記被検体に投与する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの追加の治療剤が、サイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性薬剤および細胞増殖抑制剤からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの追加の治療剤が、TNFアンタゴニスト、抗TNF剤、IL−12アンタゴニスト、IL−15アンタゴニスト、IL−17アンタゴニスト、IL−18アンタゴニスト、IL−22アンタゴニスト、T細胞除去剤、B細胞除去剤、シクロスポリン、FK506、CCI−779、エタネルセプト、インフリキシマブ、リツキシマブ、アダリムマブ、プレドニゾロン、アザチオプリン、金、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、ミノサイクリン、アナキンラ、アバタセプト、メトトレキサート、レフルノミド、ラパマイシン、ラパマイシンの類似体、Cox−2阻害剤、cPLA2阻害剤、NSAID、p38阻害剤、およびB7.1、B7.2、ICOSL、ICOSおよび/またはCD28のアンタゴニスト、ならびにCTLA4のアゴニストからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記被検体がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
(a)目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;(b)該目的の細胞または試料を化合物と接触させる工程;および(c)該化合物との接触の後に、該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程を含む、被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防するための化合物を同定する方法であって、接触させなかった目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルと比較して、該接触させた目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、被検体における線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するのに有用な化合物として該化合物を同定するものである、前記方法。
【請求項24】
(a)目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;(b)該目的の細胞または試料を化合物と接触させる工程;(c)該化合物との接触の後に、該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(d)該接触させた目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを、IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルと比較する工程を含む、被検体における線維症または線維症に関連した障害を治療、改善または予防するための化合物を同定する方法であって、IL−21および/またはIL−21Rの該基準レベルと比較して、該接触させた目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、被検体における線維症または線維症に関連した状態を治療、改善または予防するのに有用な化合物として該化合物を同定するものである、前記方法。
【請求項25】
(a)第1時点において、被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)第2時点において、該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態の経過をモニタリングする方法であって、該第1時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルと比較して、該第2時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、該線維症または線維症に関連した状態の重症度が減少したことを示すものである、前記方法。
【請求項26】
(a)第1時点において、被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)第2時点において、該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態を予知する方法であって、該第1時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルと比較して、該第2時点における該被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、該被検体が該線維症または線維症に関連した状態になり得る可能性が減少したこと、または、該被検体において該線維症または線維症に関連した状態が悪化し得る可能性が減少したことを示すものである、前記方法。
【請求項27】
(a)被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)該被検体由来の該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを、IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルと比較する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態を予知する方法であって、IL−21および/またはIL−21Rの該基準レベルと比較して、該被検体由来の該目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が低いことが、該被検体が該線維症または線維症に関連した状態になり得る可能性が減少したこと、または、該被検体において該線維症または線維症に関連した状態が悪化し得る可能性が減少したことを示すものである、前記方法。
【請求項28】
(a)被検体由来の目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを測定する工程;および(b)該被検体由来の該目的の細胞または試料内のIL−21および/またはIL−21Rのレベルを、IL−21および/またはIL−21Rの基準レベルと比較する工程を含む、該被検体における線維症または線維症に関連した状態を診断する方法であって、IL−21および/またはIL−21Rの該基準レベルと比較して、該被検体由来の該目的の細胞または試料におけるIL−21および/またはIL−21Rのレベルの方が高いことが、該被検体において線維症または線維症に関連した状態が存在することを示すものである、前記方法。
【図1】
【図1−2】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図3−2】
【図3−3】
【図3−4】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図21A】
【図21B】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図22E】
【図22F】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図24】
【図1−2】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図3−2】
【図3−3】
【図3−4】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図21A】
【図21B】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図22E】
【図22F】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図24】
【公表番号】特表2008−538553(P2008−538553A)
【公表日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506683(P2008−506683)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/013829
【国際公開番号】WO2006/113331
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【出願人】(507339744)
【出願人】(507339593)プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/013829
【国際公開番号】WO2006/113331
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【出願人】(507339744)
【出願人】(507339593)プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ (1)
【Fターム(参考)】
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