説明

LED照明光源およびLED照明装置

【課題】従来に比べてLEDベアチップの熱劣化を防止し、発光効率を向上させることで、優れた性能を有するLEDモジュール等のLED照明用光源と、これを光源に利用したLED照明装置を提供する。
【解決手段】 LEDベアチップ2において、p電極405に設けられた金バンプG1、G2の総面積(接合面積)が、その表面が金属であるp電極405と実装パターン201Bの間で、p型半導体層404および活性層403に略等しいp電極405の面積の20%以上になるように設定する。
この金バンプG1、G2の直径の設定によって基板10の熱抵抗を3.0℃/W以下に設定し、ヒートシンクと熱的密着させることで、LEDベアチップ温度を80℃以内に抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明光源またはLED照明装置に利用されるLEDモジュールに関し、特に放熱特性の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の新しい照明光源として、LED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)を用いたLED照明光源が注目されている。LEDは従来の一般的な光源の構成と異なり、長寿命且つ非常に小型で薄く、コンパクトに製造できるといったメリットを持つ。このため、取付位置の制約軽減などの優れた特徴を発揮して、幅広い用途が期待されている。
具体的なLED照明光源として、例えば特許文献1に開示されているように、基板上に複数のLEDベアチップを高密度実装し、当該LEDベアチップ表面を光透過樹脂で被覆してなるLEDモジュールが開発されている。
【0003】
このような構成を持つLEDモジュールを単体または複数、ソケットまたはコネクタを利用して挿抜自在に保持し、これに電力供給を行うことで、様々な形式および光出力のLED照明装置として利用することができる。
【特許文献1】特開2003-124528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記LEDモジュールでは、LEDベアチップを照明光源として使用するため、比較的大きい電力供給を行う必要がある。具体的には、各LEDベアチップの光束をできる限り増加させるために、照明以外の通常用途(例えば発光表示用)における電流(例えば20mA程度;0.3mm角のLEDベアチップを想定すると活性層における電流密度は約222.2mA/mm2)よりも大きな電流(過電流(最大電流):例えば40mA程度;前記に同じくLEDベアチップの活性層における電流密度は約444.4mA/mm2)を各LEDベアチップにそれぞれ供給する必要がある。
【0005】
上記のように大電流を供給させることによって、駆動時のLEDベアチップでは高い光出力が発揮されるが、一方で基板に実装されたLEDベアチップの温度(広義ではジャンクション温度とも言われる)が比較的高温にまで上昇する。ここで一般に、LEDベアチップは高温状態に置かれると寿命に大きな影響が及ぶ性質がある。例えば室温において、LEDベアチップの温度が10℃上昇すると、LEDベアチップを組み込んだLED照明装置の寿命は半減してしまうと考えられている。また、LEDベアチップが高温状態になることで、熱劣化を生じ、発光効率(光利用効率)も低下するという問題も発生する。
【0006】
このようなことから、LEDモジュール等のLED照明用光源の発光効率を維持するためには、LEDモジュールにおいて、これに実装されたLEDベアチップが過度の高温状態に達しないよう放熱させなければならない。
また、LEDモジュールを利用したLED照明装置では、駆動時における発熱を主としてLEDモジュールの基板裏面から外部に放散させることが意図されている。このためLED照明装置では、LEDモジュールの基板裏面にヒートシンクを熱的に密着させて配設する構成が採用される。しかしながら、現在ではこのようなヒートシンクによる放熱効果を最大限に利用しているとは言い難く、未だ改善の余地があると考えられる。
【0007】
本発明は以上の課題に鑑みて為されたものであって、その目的は、従来に比べてLEDベアチップの熱劣化を防止し、発光効率を向上させることで、優れた性能を有するLEDモジュール等のLED照明用光源と、これを光源に利用したLED照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、第一の主面に配線パターンが施された実装基板と、異なった導電型を含む2つの半導体層の間に活性層が介設され且つこのうち第一の半導体層に当該半導体層と略等しい面積の金属電極が積層されたLEDベアチップを複数個備え、前記各LEDベアチップが前記配線パターンに対して、前記金属電極においてフリップチップ実装により接合されてなるLED照明光源であって、前記金属電極と前記配線パターンとの接合面積が、前記金属電極の面積の20%以上であり、且つ、LEDベアチップの活性層から実装基板の第二の主面である裏面までの熱抵抗が、3.0℃/W以下に設定されている構成とした。
【0009】
ここで、少なくとも前記第一の半導体層に対して設けられた金属電極と前記配線とが、互いに金ー金接合、または金ーアルミ接合、または金ースズ接合により接合されている構成とすることもできる。
また、前記LEDベアチップの第一の半導体層に設けられた金属電極と前記配線との接合が、2個以上のバンプによりなされた構成とすることもできる。
【0010】
また、前記LEDベアチップの第一半導体層に設けられた金属電極と前記配線との接合が、2個以上且つ直径100μm以上のバンプ、または3個以上且つ直径80μm以上のバンプによりなされている構成とすることもできる。
また、駆動時におけるLEDベアチップの活性層の電流密度が、250mA/mm2〜660mA/mm2である構成とすることもできる。
【0011】
また、前記実装基板が、絶縁層と金属層を積層して構成されており、前記配線パターンが施される側の第一の主面である実装基板表面が絶縁層の表面、前記配線パターンが施される側の実装基板表面と反対側の第二の主面である実装基板表面が金属層の表面にそれぞれ相当する構成とすることもできる。
ここで、前記実装基板は、絶縁層が無機フィラーおよび樹脂組成物を含むコンポジット材料から構成することもできる。
【0012】
さらに前記実装基板は、絶縁層がセラミックス材料から構成することもできる。
また、前記実装基板は、セラミックス材料から構成することもできる。
また、前記セラミックス材料は少なくともAlNまたはAl2O3、またはSiO2のいずれかを含んだ構成とすることもできる。
さらに、前記実装基板の裏面に対し、熱抵抗が1.0℃/W以上4.0℃/W以下であるヒートシンクが熱的に密着して配設された構成とすることもできる。
【0013】
ここで前記ヒートシンクは、Al、Cu、W、Mo、Si、AlN、SiCの中から選ばれた一種以上のものより構成することができる。
また本発明は、前記本願発明のLED照明光源を備えるLED照明装置であって、前記LED照明光源の実装基板裏面に対し、包絡体積が100 cm3以上820 cm3以下であるヒートシンクが熱的に密着して配設された構成を有するものとした。
【0014】
ここで前記ヒートシンクは、Al、Cu、W、Mo、Si、AlN、SiCの中から選ばれた一種以上のものより構成することができる。
また、前記LED照明装置では、LEDベアチップとサブマウントがフリップチップ実装により接合され、さらにサブマウントと実装基板との第一の主面の配線パターンが電気的に接合されていることにより、前記LEDベアチップと実装基板との実装がなされている構成とすることもできる。
【0015】
さらに、前記ベアチップの実装されたサブマウントと実装基板との接合は、導電ペーストによりなされている構成とすることもできる。
また前記導電ペーストの材料は、銀、銅、ニッケル、パラジウム、スズの中から選ばれた1種以上、またはこれらのいずれかを含んでなる合金で構成し、或いはさらにこれらに樹脂を加えて構成することも可能である。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成を持つ本発明のLED照明光源によれば、LEDベアチップの第一半導体層に対して略等しい大きさに設けられた金属電極と前記配線との接合面積が、配線と対向する第一半導体層に対して設けられた金属電極の面積の20%以上になるように設定され、且つLEDベアチップの活性層から実装基板の裏面までの熱抵抗が3.0℃/W以下になるように設定されることによって、活性層から基板側への熱伝導が向上し、駆動時におけるLEDベアチップの温度が80℃以下に抑えられることとなり、過度の温度上昇が回避される。その結果、LEDベアチップの熱劣化を防ぎ、発光効率を維持して、良好な駆動を行うことができる。
【0017】
また本発明では、LEDベアチップの成長基板が、サファイア、SiC、GaN、AlN等といった、従来と同等の構成であっても、活性層の発熱が第一半導体層を通じて直接放熱されるため、前記配線との接合面積を設定するだけでLEDベアチップの温度を調節できるので、従来の製造方法を利用しながら比較的簡便な方法で実現できるという利点がある。金バンプまたは金属は高い放熱特性を有しており、熱抵抗の調整には有利である。
【0018】
また、上記構成を有するLED照明光源を光源に用いた本発明のLED照明装置では、当該LED照明光源の基板裏面に対し、熱抵抗が4.0℃/W以下であるヒートシンクが熱的に密着して配設されるので、LED照明光源が効率よく放熱される。このような放熱特性のヒートシンクを用いることで、駆動時におけるLEDベアチップの温度が80℃以下に抑えられることとなり、LEDベアチップの熱劣化を防ぎながら発光効率を維持することが可能となり、良好な性能を有するLED照明装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<実施の形態1>
1-1.カード型LEDモジュールの全体構成
図1は実施の形態1のカード型LEDモジュール1(以降、「LEDカード1」と言う)の全体的な構成を示す斜視図である。
LEDカード1は、大別して基板10と、基板10表面(絶縁層10b表面)に形成されたLED光源部30、および給電端子20a〜20hとから構成されている。
【0020】
LEDカード1は、樹脂組成物と無機フィラーの混合材料からなる厚み0.2mmの実装面を有する回路形成部(絶縁層)10bに、厚み1.0mmのアルミニウムなどの金属層10aが積層された高放熱性メタルコンポジット(ここではアルミナコンポジット)材料からなる基板10(サイズ例;縦28.5mm×横23.5mm×厚1.2mm)を持つ。基板1の全体の厚みは、駆動時における放熱特性や機械的強度の観点から0.7mm以上であることが好ましく、基板の切り出しの観点からは2.0mm以下であることが好ましい。なお基板10の全体的な形状は、実装されるLED素子300の数等の条件により適宜変更してもよく、上記サイズに限定するものではない。
【0021】
上記無機フィラーとしては、Al2O3、MgO、BN、SiO2、SiC、Si3N4およびAlNから選ばれた一種以上のものを用いることが望ましい。また、基板の充填率および熱伝導性を高める目的から、基板製造時における無機フィラーの粒形は粒形であること、特に球状であることが好ましい。樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂から選ばれた少なくとも一種類を含み、更には、前記無機フィラー70〜95質量%と前記樹脂組成物5〜30質量%の混合から形成されることが好ましい。
【0022】
なお上記絶縁層10bにはセラミックス材料を用いてもよい。その際、セラミックス材料としては、MgO、CaO、SrO、BaO、Al2O3、SiO2、ZnO、TiO2、NiO、Nb2O3、CuO、MnO、WO3のうちから少なくとも一種を含む材料を用いるのが望ましい。
一方、金属層10aとしては、アルミ、銅、鉄、ステンレス、または、これらの合金から作製することができる。放熱特性の点では、銅、アルミニウム、鉄、ステンレスの順に材料特性が優れている。一方、熱膨張率の点では、鉄、ステンレス、銅、アルミの順に材料特性が優れている。さらに防錆処理などの使い勝手の良さではアルミニウム系材料が好ましく、熱膨張に起因する信頼性劣化を避ける観点からは、鉄またはステンレス系材料が好ましい。このように、要求に応じて適宜材料を選択することが可能である。また、金属層10aの表面を電解研磨、アルマイト処理、無電解メッキ、または電着などで絶縁処理を施しておけば、金属層10aが配線200、201等に万一接触しても、短絡の発生を防止することができる。
【0023】
なお、金属層10aの裏面はヒートシンク等の放熱手段と熱的に密着させることが想定されており、そのため高い熱伝導率を発揮するために平坦に形成されている。
また、上記基板10では金属層10aと絶縁層10bとを積層してなる構成としたが、本発明ではこの構成の代わりにセラミックス基板を用いてもよい。その際セラミックス基板としては、比較的熱伝導のよいAlNまたはAl2O3またはSiO2の少なくとも一つを含む材料を用いるのが望ましい。
【0024】

1-2.基板の配線について
絶縁層10bには、その表面に例えば図2(a)に示すパターンのCu箔からなる上層配線200が形成されている。この上層配線200の表面にはNi-Auメッキが施されている。当図に示すパターンでは、島状に孤立したパターン部201A、201B等が繰り返し配列されており、基板長手方向(図中では上下方向)で隣接する2つのパターン部(例えば201A、201B)の対向部分において、LEDベアチップ2がフリップチップ接合により実装される。図2(a)における領域20Aは、具体的なLEDベアチップ実装領域を示す。
【0025】
また上記給電端子20a〜20hは、この上層配線200の端部で構成されている。これら給電端子20a〜20hは、外部端子と接続し、各LED素子300に電力を供給するためのものである。当該給電端子20a〜20hと外部端子接続時には、LEDカード1専用のソケットまたはコネクタを用いることにより、当該LEDカード1を保持させて使用することが望ましい。ここで言う「ソケット」及び「コネクタ」とは、電気的接続のために着脱自在にLEDカード1を装着できる部材や部品を指す。本実施の形態1のLEDカード1は、当該カード1のサイズを例えば既存の各種メモリカード等のソケットまたはコネクタの規格に合わすことにより、従来から存在する電気的接続のためのシステムを利用して駆動させることが可能である。
【0026】
給電端子20a〜20hの数と絶縁層10b上での配置位置はこれに限定するものではないが、短絡防止のために隣接する端子とのピッチを少なくとも0.8mm以上保つことが望ましい。
一方、絶縁層10bの内部には、図2(b)に示すパターンのCu箔からなる下層配線201が配設されている。下層配線201は線状パターン201a〜201hを有しており、上記上層配線200を適宜接続するために配される。上層配線200および下層配線201は絶縁層10bの内部において、接続ビア21、22を介して互いに接続される。
【0027】
このような配線200、201によって、実施の形態1では、図3(a)に示す複数のLED素子300からなる直列-並列回路が形成される。なお、回路構成はこれに限定するものではなく、図3(b)に示すようにLED素子300の並列接続部分を多く取り入れるようにしてもよい。

1-3.LED光源部の構成について
図1に示すLED光源部30は、LEDカード1において主たる構成部分であって、従来の表示用光源等としてではなく、照明用光源として高密度に実装されている。具体的には絶縁層10bの表面において、一例として、直径2mmのLED素子300が一定間隔を置いて8×8個(計64個)にわたり、全体として20mm角サイズの正方形状に配列されてなる。規格の一例としては、順方向電流40mA、順方向電圧120Vであり、これにより駆動時には室温25℃(JIS規格で定められた一般照明用ランプの光出力測定条件)において光出力120lmが発揮される。LEDカード1全体でのLED光源部30までの高さは3mmである。
【0028】
なお、当然ながらLED素子300の実装個数および配列形状はこれ以外であってもよい。
LED素子300周囲の構造は図4のLED素子周囲の拡大断面図に示す通りである。
まず、フレームとなるアルミニウム製光学反射板301には、直径2mmで擂鉢状の反射面301aを持つように孔が穿孔されている。この光学反射板301が絶縁層10b表面に積層されている。
【0029】
LEDベアチップ2は、一例として0.32mm角の正方形状に形成されており、サファイアからなる素子基板401の下面に、GaN系の第二半導体層(n型半導体層という)402、活性層403、第一半導体層(p型半導体層という)404が下方へ同順に積層され、さらにn型半導体層402またはp型半導体層404のそれぞれに対して、n型半導体層電極(n電極という)406、p型半導体層電極(p電極という)405が積層された構造を有している。p電極405はその表面が金属であり、ここではp型半導体層404の下面全体に積層されている。駆動時には、主として活性層403の層表面において発光がなされる。
【0030】
このようなLEDベアチップ2は、例えば直径2インチ程度のサファイア基板上に、GaN系のn型半導体層、p型半導体層を例えばCVD法により順次積層して形成した半導体ウェハをダイシング処理して得ることができる。素子基板201には、サファイアの他にSiC基板やGaN基板などを用いてもよい。
なお、LEDベアチップ2において近紫外光または青色、或いは緑(青緑)色の光(相対的に波長が短い光)を発光させようとする場合には、上記サファイアからなる素子基板401に対して発光層を積層することもできる。サファイアからなる素子基板401では、近紫外光や青色、或いは緑色の光を透過するため、素子基板401の上面・下面のいずれに発光層を設けてもよい。
【0031】
このように、LEDベアチップ2では素子基板401の下面に半導体層402、403を設けた構成となっている。これにより光学反射板301の孔の内部において、LEDベアチップ2のp電極405およびn電極406が、絶縁層10b表面の上層配線200におけるパターン部201A、201Bに対し、金バンプG1、G2、G3によってフリップチップ(FC)実装されている。このLEDベアチップ2の実装については詳細を後述する。
【0032】
なお、図4では金バンプG3が他の金バンプG1、G2に対して大きく表示されているが、これはLEDベアチップ2の構成を容易に把握するためにLEDベアチップ2の半導体層の厚み方向を高めに表示しているためであって、実際には金バンプG1、G2、G3の厚み方向大きさの差異は数十nmに留まる。また金バンプG1、G2、G3の形状はほぼ円形に表示しているが、実際には楕円状など真円からずれた形状をしている場合もある。
【0033】
LED素子では上記のようにフリップチップ実装を行うことで、従来の砲弾型LED素子等で見られるような給電用のワイヤを設ける必要がなく、ワイヤボンディングに要する領域も不要となる。したがって隣接する2つのLEDベアチップ2間隔を狭くでき、高密度実装化を図ることができる。このように高密度実装化が有利な点は、例えば発光色の異なる多数のLEDベアチップ2(またはベアチップ)を使用した混光表示の調整にも活かされる。さらにワイヤを不要とすることで、駆動時においてワイヤが遮光する問題も根本的に解決することができる。
【0034】
孔の内部では、上記構成を持つLEDベアチップ2を内包するようにシリコーン樹脂やエポキシ樹脂が配置され、孔からややはみ出る量まで配置形成されることにより、凸状または半球状等、所定の形状の樹脂レンズ302がモールドされる。なお、樹脂レンズ302中に所望の色の蛍光体を分散させることもできる。
このようなLED素子300周囲の構成は、LED光源部30における64個全てのLED素子300についても同様である。
【0035】
また、図5はLEDベアチップ2を内包するように蛍光体407を配置し、光学反射板301を覆うように樹脂レンズ302を形成した構成例を示す。本発明のLEDベアチップはこのような構成としてもよい。

1-4.LEDベアチップの実装について
図6は、LEDベアチップ2の接合付近における構成をより詳細に説明するため、LEDベアチップ2を下面から見た模式図である。
【0036】
図6に示すように、本実施の形態1では金バンプを用いたフリップチップ実装(具体的には金-金接合)を用いて、n電極406は1個の金バンプG3、p電極405は2個の金バンプG1、G2でそれぞれ上層配線パターン部201A、201Bと接合されている。具体的には、まず上層配線パターン部201A、201Bの上に金バンプG1、G2、G3を打っておき、この上にLEDベアチップ2を載置して、超音波を印加することで接合を行う。
【0037】
ここで、本実施の形態1の特徴として、p電極405に設けられた金バンプG1、G2の総面積(接合面積)は、その表面が金属であるp電極405と実装パターン201Bの間で、p型半導体層404および活性層403に略等しいp電極405の面積の20%以上になるように設定されている(当該面積「20%」の根拠については後述する)。この面積比率を実現するため、少なくとも金バンプG1、G2の各スポット直径は、それぞれ100μm以上としている。このような金バンプG1、G2の直径の設定は、本願発明者らがLEDカード1の放熱設計を検討し、金バンプG1、G2の各スポット直径がそれぞれ100μm以上であれば、当該LEDカード1が最大電流50mAで駆動される場合において、基板10の熱抵抗、具体的にはLEDベアチップ2のいわゆる"Junction to Package"に相当する距離(LEDベアチップ2の活性層403から金属層10aの裏面までの厚み方向)における熱抵抗(以降、「基板10の熱抵抗」という)が3.0℃/W以下に抑えられることを見出した結果よりなされたものである。このように本実施の形態1では、金バンプG1、G2の直径の設定によって基板10の熱抵抗を3.0℃/W以下に設定することにより、基板10の金属層10aに対して放熱手段(ヒートシンク)を熱的に密着するように配して使用した場合、駆動時におけるLEDベアチップ2の温度(ジャンクション温度)が80℃以内に収まるようになっている。
【0038】
なお、基板10の金属層10aと放熱手段とを熱的に密着させる構成には幾つかの例が挙げられる。例えば、金属層10aと放熱手段とを物理的に直接接触させる構成の他に、金属層10aと放熱手段とをシリコーン放熱シート、シリコーンゴム、シリコーングリス、ヒートパイプ等の熱伝導手段を介して、物理的に直接接触、あるいは一定の距離を置いて間接的に配設させる構成例がある。本発明で言う「熱的に密着」する構成には、このような構成も含めることができ、基本的に基板10の金属層10aから放熱手段を介して放熱効果が奏される構成を指すものと定義できる。
【0039】
すなわち、従来においては、フリップチップ実装におけるバンプは単に実装素子と配線との接合手段として用いられていたが、本願発明者らはLEDカード1の製造のためにLEDベアチップ2をフリップチップ実装で高放熱基板に直接高密度実装するに当たり、金バンプの備える放熱特性に着眼し、これによって駆動時における基板10の熱抵抗の低減を図るように設計したものである。つまり本願発明者らは、LEDベアチップの高放熱基板への直接実装において、金バンプ接合面積とLEDベアチップのジャンクション温度の関係を初めて見出したものである。
【0040】

1-5.駆動時の効果について
以上の構成を有するLEDカード1は、使用時にはソケットまたはコネクタに対して装着される。このとき、ソケットまたはコネクタに配設された外部端子に対して給電端子20a〜20hが接触状態となる。また、LEDカード1の基板裏面(金属層10a表面)には、これと熱的に密着するようにヒートシンク(不図示)を装着する。当該ヒートシンクはできるだけ熱抵抗の低いものが望ましい。
【0041】
このような状態でLEDカード1に対し、所定の電力を供給すれば、LED光源部30のベアチップ2に対して電力が供給される。これによりLEDベアチップ2では、主として活性層403において発光がなされる。当該発光は、アルミニウム製光学反射板301の孔31における擂鉢状反射面301aで反射され、前面から効率よく取り出される。発光はさらに樹脂レンズ302によって収束され、120lmの十分な光出力を持つ照明用光源として利用される。
【0042】
そしてこのとき、LEDベアチップ2において発生した熱は、主として基板10を通じ、熱伝導率の高い金属層10aを介して外部に放散される。
ここで本実施の形態1では、p電極405における金バンプG1、G2の直径が、100μm以上になるように設定されており、金バンプG1、G2の総面積(接合面積)が、p電極405を挟んで絶縁層10bと対向するp型半導体層404の面積の20%以上になるように設定されている。具体的には、p型半導体層404の面積をベアチップ角0.32mmとすると0.32(mm)×0.32(mm)×75(%)=0.0768(mm2)で表されるので、バンプ直径が100μm、バンプ個数が2個のとき、接合面積は0.0157 mm2となり、p型半導体層404の面積の約20%を占める。このような設定により、LEDベアチップ2のJunction to Packageに相当する間における活性層403-金属層10a表面間の熱抵抗(基板10の熱抵抗)が3.0℃/W以下に抑えられる。
【0043】
このように、基板10の熱抵抗が3.0℃/W以下に抑えられることで、本実施の形態1のDカード1駆動時におけるLEDベアチップ2の温度は80℃以下に抑えられ、LEDベアチップ2の過度の発熱が抑制されるといった効果が奏される。一般に、LEDベアチップの温度が80℃を超えるようになると、当該LEDベアチップの性能が劣化し、発光効率も低下するので望ましくない(当該温度の根拠については以下に詳細を述べる)が、本実施の形態1ではLEDベアチップ2の温度が80℃以下に抑えられるので、LEDベアチップ2がこれ以上の高温に達することもなく、LEDベアチップ2を安定して良好に駆動させることができるようになっている。
【0044】
また本実施の形態1では、基板10の熱抵抗を、フリップチップ実装におけるバンプ(金バンプG1、G2)の面積によって調節できるので、従来の製造方法を利用しながら比較的簡便な方法で実現できるという利点も有している。
なお、実施の形態1では2個のバンプ(金バンプG1、G2)を用いる例を示したが、バンプの数は3個以上であってもよい。この場合、直径80μmのバンプを3個設けると接合面積0.015072 mm2、直径70μmのバンプを4個設けると接合面積0.015386 mm2となり、金属からなるp電極405、およびp型半導体層404とほぼ同様の面積を有し、活性層403の面積の約20%を占めることができる。
【0045】
なお、上記接合面積は金属からなるp電極405、およびp型半導体層404と略同等の面積を有する活性層403の面積の約30%以上を占めるようにするとより望ましい。また、バンプには金材料以外の材料を用いても構わないが、熱伝導性の面から金材料を用いることが望ましい。
また、LEDベアチップが0.32mm角より大きい場合も、p型半導体層および活性層と略同等の面積を有する金属からなるp電極に対し、接合面積を20%以上とすることで、同様の効果を得ることができる。さらに前記接合面積における接合をp電極の表面において分散配置すれば、当該p電極のヒートスプレッド効果と相まって、LEDベアチップの活性層から良好に放熱効果を得ることが可能である。
【0046】
さらにバンプ(はんだバンプや金)単体、またはバンプと合わせて他の金属材料(例えば金属粒子を包含する接合用接着剤)を用いて、或いは金スズなどに代表される合金接合やはんだ接合を用いてLEDベアチップ2を配線側と接合してもよい。しかしながら、現在のフリップチップ実装工程を金バンプを用いて行えば、上記熱抵抗の設定に効率よく貢献できるほか、実装効率、実装の接合信頼性、また高電流投入による応力緩和性のいずれも高いことが実験的に分かっているので望ましい。
【0047】
さらに、スポット形状のバンプを用いる構成に限らず、例えばp電極405を全て覆う接合面積(すなわちp型半導体層および活性層と略同等の面積を有する金属からなるp電極に対する面積比率100%)で接合を行ってもよい。
1-6.本発明で規定する数値範囲の根拠について
LEDベアチップの一般的な熱的特性については、例えば図7に示すLEDベアチップの周囲温度と順方向電流特性のグラフ(Panasonic DATA BOOK 2000「光半導体素子・可視発光ダイオード ユニット商品編」)に開示されている。
【0048】
この図7のグラフでは、周囲温度Taを上昇させた場合に、一般的なLEDベアチップに投入可能な順方向電流量を示している。周囲温度が上昇すれば、これに伴ってLEDベアチップの温度も上昇することになる。当該グラフが示すように、一般的には周囲温度が80〜85℃に達した時点で、LEDの発熱が大きくなり過ぎ、素子の劣化が極端に進むため、80℃という発熱温度がLEDベアチップに十分な電力を供給可能な温度の上限であると考えられる。このようなことから、LEDベアチップの温度が80℃を超えてしまうと、この温度上昇が制約となり、LEDベアチップに対して十分な電力を供給できなくなる。また、80℃以上になるとLEDベアチップの封止樹脂の熱劣化も大きくなってくる。このため発光効率の低下を招く他、前述のようにLEDベアチップ自体が熱劣化することが推測される。
【0049】
このようなLEDベアチップの熱的特性を踏まえた上で、本願発明者らは、LEDベアチップに対する投入電力を40mAに設定し、そのときに基板の熱抵抗を変化させた場合におけるLEDベアチップの温度を測定する実験を行った。一般的なサイズのLEDベアチップの電流密度260mA/ mm2を超えた大電流を投入し、大光束を得ようとした場合、電流密度約660mA/ mm2を超える大電流を投入する領域では、LEDベアチップ温度を室温近くに保ってもキャリアオーバーフローから発光量が飽和してしまう上に、動作中の素子のエピ層における欠陥増加が顕著となり、寿命劣化が起こる。
【0050】
その実験結果が図8に示すベアチップ温度とヒートシンク熱抵抗の関係を示すグラフである。この実験では、LEDカードの金属層に熱的に密着するようにヒートシンクを配設し、そのヒートシンクの熱抵抗を変化させている。
図8のグラフでは、駆動前に周囲温度35℃(これは体温と近く生活空間である室温の上限と考えられる数値としている)、順方向電流40mA、10Wの投入電力の条件でLEDベアチップを駆動した場合、ヒートシンクの熱抵抗が非常に小さいとき(具体的には1℃/Wの場合)において、基板の熱抵抗が3℃/W以下であれば、LEDベアチップ温度が80℃以下に抑えられることが分かる。
【0051】
したがって、実際にヒートシンクによる放熱効果を利用してLEDカード1を駆動させる場合、少なくとも基板の熱抵抗が3℃/W以下であれば、LEDベアチップの過度の温度上昇を招くことなく安定した駆動が可能となると言える。これが本発明で基板の熱抵抗を3℃/W以下に設定している根拠である。
ここで、基板の熱抵抗を測定するにあたり、図8のようにヒートシンクの熱抵抗1℃/Wの場合を基準とする理由については次の通りである。
【0052】
すなわち、放熱手段(ヒートシンク)では、熱抵抗が低くなるとその体積(包絡体積)が大きくなる関係がある。放熱手段の熱抵抗は低い方が、言い換えると放熱手段の包絡体積は大きい方が、放熱能力は高くなるので望ましい。しかしながら、実際に本発明のLEDカード1を照明光源としてLED照明装置に組み込んだ場合、ヒートシンクの大きさは現実的には制限があると考えるべきである。
【0053】
具体的に使用可能なヒートシンクの大きさとしては、現在市販されている室内向け照明光源の大きさを基準と考えることができる。例えば、松下電器産業株式会社製電球型蛍光灯で比較的大型のサイズを有する「パルックボールG型シリーズ」では、そのサイズ例として外径90mm、長さ130mmであり、およその円柱形体積として見積もった体積は約830 cm3となっている。
【0054】
ここで表1は、ヒートシンクの包絡体積とヒートシンク熱抵抗との関係を含めた幾つかのデータを示している。表1中、「ヒートシンク番号」はサンプルとして用意したヒートシンクNo.を示し、番号が大きくなるに従い包絡体積が小さくなるように設定している。
【0055】
【表1】

【0056】
表1のヒートシンク番号4のデータを見ればわかるように、包絡体積816 cm3において、熱抵抗が1.0℃/Wとなっている。包絡体積がこれ以上であれば、さらに熱抵抗を低く抑えることが可能ではあるが、番号4のサイズのヒートシンクであれば、上記円柱形体積としてみなした体積約830 cm3であれば、実際上照明器具の内部に備えることができ、サイズ的に好適である。したがって、番号4のサイズの熱抵抗が1.0℃/Wのヒートシンクを現実的なヒートシンクの基準として考えるのが妥当と言える。このような理由から、図8ではヒートシンクの熱抵抗として1℃/Wを基準としている。
【0057】
なお、本発明のLEDカード1におけるLEDベアチップ2では、上記のように0.32mm角の正方形状に形成した場合、活性層403の面積は上記p型半導体層404とほぼ同様の面積を持ち、一例としてLEDベアチップ2面積の75%を占めることから、計算式0.32(mm)×0.32(mm)×75(%)=0.0768(mm2)で表される。これに基づけば、駆動時においてLEDベアチップ2に20mA、30mA、40mA、50mAの順方向電流を投入したときの活性層403における電流密度はそれぞれ、260mA/ mm2、390mA/ mm2、521mA/ mm2、651mA/ mm2となる。ここで、特に50mAの順方向電流をLEDベアチップ2に投入する場合、LEDカード1の金属層10aに熱的に密着するように放熱手段として包絡(外形寸法)体積100 cm3、熱抵抗約4.0℃/W程度の性能を持つヒートシンクを用いると、LEDベアチップ2の温度が80℃を超える可能性がある。
【0058】
また、順方向電流が20mA(活性層403における電流密度250mA/ mm2)を下回る場合、照明として十分な光束が得られない。
このことから、本発明のLEDベアチップ2の活性層403における電流密度は、250mA/ mm2〜660mA/ mm2の範囲になるように設定するのが適当であると言える。
次に示す図9は、基板の熱抵抗を3℃/Wまたは2℃/Wで一定とする条件下において、LEDベアチップのp型半導体層の接合面積(具体的にはp型半導体層と同一面積を持つp電極の面積に占める接合面積(G1、G2のスポット面積))とジャンクション温度Tjとの間における関係を示すグラフである。
【0059】
当図9から明らかなように、接合面積とジャンクション温度Tjとは反比例関係にあり、ジャンクション温度を80℃以下に抑えるためには、熱抵抗を3℃/Wのときにおいて、接合面積をp型半導体層の面積の20%以上を占めるように設定する必要があることが分かる。本実施の形態1では、このようなデータを根拠に基づいており、金バンプG1、G2の総面積(接合面積)をp型半導体層404の面積の20%以上にするように設定している。
【0060】
なお、上記図5はLEDベアチップをフリップチップ実装により、実装基板の第一の主面に直接実装させているが、次に示す図18は、LEDベアチップをサブマウント方式により実装基板の第一の主面に間接的に実装させた例である。本発明ではこのようにLEDベアチップを実装基板に間接的に実装してもよい。
具体的に図18は、LED素子を間接的に実装基板に実装させてなるLEDモジュールの断面図の一例であるが、以下、これについて説明する。
【0061】
図18のおけるLEDモジュール30は、図5と同じ構成のLED実装用モジュールとなっている。LED実装用モジュールは基板10と反射板301とを備える。LED実装用モジュールのLED実装位置には、LEDベアチップ401がサブマウント40として間接的に実装されている。なおLEDモジュール30は、図5と同様にレンズ板302を備えている。
サブマウント40は、例えばシリコン基板409と、このシリコン基板409の上面に実装されたLEDベアチップ401と、LEDベアチップ401を内包する蛍光体407とを備える。ここではLEDベアチップ401は、金バンプG1、G2、G3を介してシリコン基板409に実装されている。
【0062】
なお、シリコン基板409の上面には、LEDベアチップ401のp電極405から電気的に接続された第一の電極408Bが形成されており、さらにシリコン基板409の下面には第一の電極408Bから電気的に接続された電極410が形成されている。一方、シリコン基板409の上面には、LEDベアチップ401のn電極406に電気的に接続された第二の電極408Aが形成されている。
ここでは一例として、電極材料にアルミを用い、金-アルミ接合となっているが、電極材料には金、またはスズ、またはその合金を用いて、金-金接合、または金-スズ接合をなすように選択してもよい。
【0063】
サブマウント40のLED実装用モジュールへの実装は、例えば導電ペースト(銀ペースト)411を利用して行われる。サブマウント40と基板10との電気的接続は、シリコン基板409の下面の電極410が基板10に形成されている配線パターン201の一方に、上記銀ペースト411を介して接続され、また、シリコン基板409の上面の第二の電極408Aがワイヤ412を介して基板10の他方の配線パターン201に接続されることでなされている。
【0064】
前記導電性ペーストとしては、金属粉末と樹脂が用いられるが、金属粉末の材料としては銀の他に、銅、ニッケル、パラジウム、スズの中から選ばれた一種以上の粉末、または一種以上の合金の粉末と樹脂を用いてもよい。
このようにLEDベアチップ401をサブマウント方式で間接的に実装する場合、蛍光体407を予め形成してなるサブマウント40を基板10に実装できるので、例えば、シリコン基板に実装されたLED素子が正常に点灯するか等の検査を行うことができる。従って、検査済みのサブマウントをLED実装用モジュールに実装することができ、LEDモジュールとしての製造歩留まりを向上させることができる等の効果が得られる。
【0065】
<実施の形態2>
2-1.LED照明装置(電球型ランプ)の構成
図10(a)は、実施の形態2におけるLED照明装置の構成を示す図である。当図に示されるLED照明装置100は、一般的な電球型ランプとして使用可能な照明装置であって、図1に示す実施の形態1の構成を持つLEDカード1をその光源に使用するものである。
【0066】
その全体構成は図10(a)に示すように、円盤状のLED装着部101、本体部130、ネジ式端子140に大別される。
LED装着部101には、その主面において実施の形態1で説明したLEDカード1を挿抜自在に保持するカードソケット110が設けられている。カードソケット110はLED装着部101の主面側とヒンジ110aにより連結されており、通常はLED装着部101の主面に埋設されて平行に収納されているが、ユーザがこのカードソケット110を起こすことで、LEDカード1を挿抜することができる。なおカードソケット110の内部には、LEDカード1の給電端子20a〜20hのそれぞれと電気的に接続可能な端子が設けられており、本体部130に収納された公知の点灯回路(不図示)を介してLEDカード1に適宜電力が供給されるようになっている。
【0067】
カードスロット110は例えば放熱性に優れるアルミニウム、白銅等の材料により作製することができる。LED装着部101には、側面に配された爪101a、101bを利用して、ランプシェード150を配することができる。
一方、LED装着部101の内部には、図11の照明装置断面図に示すように、カードソケット110の直下において、ベース121をLED装着部101の主面と平行に配され、複数のフィン122が本体部130内部方向へ向けて延長された構成を持つ放熱手段としてヒートシンク120が備わっている。当該ヒートシンク120は、熱伝導性に優れる銅やアルミニウム等で作製されており、そのベース121表面は、カードソケット110に装着されたLEDカード1の金属層10bと熱的に密着するように配されている。
【0068】
なお、ヒートシンク材料としては、Al、Cu、W、Mo、Si、AlN、SiCの中から選ばれた一種以上のものを用いてもよい。
ここで本実施の形態2では、その特徴としてヒートシンク120に、包絡体積が100cm3以上、且つ熱抵抗が4.0℃/W以上の放熱能力を有するものを用いている。
2-2.本発明のヒートシンクによる効果
以上の構成を有する照明装置100によれば、使用時にはネジ式端子140を公知のソケットに装着する。そして駆動時には、最大電流40mA、最大電圧120Vの電力をLEDカード1に対して供給することによって、当該LEDカード1のLED発光部30が光出力120lmで発光する。
【0069】
そしてこのとき、LEDカード1の金属層10aと熱的に密着するように配されたヒートシンク120によって、LEDカード1で生じた熱が基板10から良好に放熱される。本実施の形態2では、熱抵抗が4.0℃/W以上の放熱能力を持つヒートシンク120を利用しているので、これによってベアチップ2におけるp電極405から金属層10aを通してヒートシンク120側に効果的に放熱がなされ、LEDベアチップ2の発熱が80℃以下に抑えられる。その結果、LED照明装置100ではLEDベアチップ2の熱劣化を防止し、優れた発光効率を発揮して、良好な照明装置として利用することができる。
【0070】
2-3.LEDベアチップ温度とヒートシンク特性との関係について
ここではLEDカード1におけるLEDベアチップ温度とヒートシンク特性との関係について、本願発明者らが行った実験により得られた知見を説明する。なお、ここで言うLEDベアチップ温度とは、p電極におけるジャンクション温度として測定している。
図12は、ベアチップ温度とヒートシンクの熱抵抗との関係を示したグラフである。ここでは、LEDベアチップを最大電流20mA(5W)、30mA(6W)、40mA(9W)、50mA(11W)のそれぞれで駆動した場合について、ヒートシンクの熱抵抗がベアチップ温度に与える影響を示している。図中に書かれた各直線は、それぞれ対応して記入された関係式により描かれたものである。
【0071】
LEDカードの駆動時の発熱は、投入電力における順方向電流と、使用するヒートシンクの熱抵抗に依存する。LEDベアチップでは既に前述したように、熱劣化や発光効率の維持のために、駆動温度を80℃以下に抑制することが重要である。したがって、本発明のLED照明装置に使用するヒートシンクには、LEDベアチップの発熱を80℃以下に抑える能力のあるものを選定する必要がある。
【0072】
この条件を考慮して当図に示すグラフを見ると、LEDベアチップを最大電流50mAで駆動する場合には、ヒートシンクの熱抵抗が5℃/Wよりも十分小さくなければ、LEDベアチップの温度が80℃以下に収まらないことがわかる。したがって、熱抵抗が4.0℃/W以下のヒートシンクを選んでおけば、駆動時におけるLEDベアチップ温度はほぼ80℃以下に抑えられると考えられる。
【0073】
通常、LEDカードにおけるLEDベアチップは、最大電流50mAでの投入電力における駆動が上限と考えられるので、ヒートシンクの熱抵抗が4.0℃/W以下であれば、LEDベアチップの温度が80℃以下に抑制できると考えられる。この根拠により、本発明では、ヒートシンクに熱抵抗が4.0℃/W以下のものを用いるようにしている。
次に示す図13は、ベアチップ温度とヒートシンクの包絡体積との関係を示したグラフである。ここでもLEDベアチップを最大電流20mA、30mA、40mA、50mAのそれぞれで駆動した場合について調査しており、ヒートシンクの包絡体積がベアチップ温度に与える影響を示している。図中に書かれた各曲線は、それぞれ対応して記入された関係式により描かれたものである。
【0074】
当図からは、ヒートシンクの包絡体積が100 cm3以上であれば、ほぼLEDベアチップの発熱を80℃以下に抑える能力が発揮されることが分かる。このことから、本発明のヒートシンクとしては、包絡体積が100 cm3以上のものが望ましいと言える。したがって、前記図8に示したヒートシンクの熱抵抗とその包絡体積の上限とを併せて考慮すると、照明装置として、100 cm3以上820cm3以下の包絡体積を持つヒートシンクを用いれば、これによって1.0℃/W以上4.0℃/W以下の熱抵抗の特性を得ることができ、LEDベアチップの効果的な放熱を行うことが可能である。
【0075】
次に示す図14は、ベアチップ温度とヒートシンクの表面積との関係を示したグラフである。ここでもLEDベアチップを最大電流20mA、30mA、40mA、50mAのそれぞれで駆動した場合について調査しており、ヒートシンクの表面積がベアチップ温度に与える影響を示している。
当図からは、ヒートシンクのある程度以上であれば、ほぼLEDベアチップの発熱を80℃以下に抑える能力が発揮されることが分かる。このことから、本発明のヒートシンクとしては、表面積がある程度以上のものが望ましいと言える。また、ヒートシンクの表面積が十分大きければ、LEDベアチップの発熱が50℃付近から緩やかに降下し飽和する。したがって、LEDベアチップの発熱を抑える目的からは、必要以上に大型のヒートシンクを用いる必要はない。
【0076】
次に示す図15は、ベアチップ温度とヒートシンクの重量との関係を示したグラフである。ここでもLEDベアチップを最大電流20mA、30mA、40mA、50mAのそれぞれで駆動した場合について調査しており、ヒートシンクの表面積がベアチップ温度に与える影響を示している。
当図からは、ヒートシンクの重量が一定の大きさ以上であれば、ほぼLEDベアチップの発熱を80℃以下に抑える能力が発揮されることが分かる。また、ヒートシンクの重量が十分大きいと、LEDベアチップの発熱は緩やかに降下し飽和する。したがって、LEDベアチップの発熱を抑える目的からは、必要以上に重いヒートシンクを用いる必要はない。
【0077】
以上のように、ヒートシンクの熱抵抗、包絡体積、表面積、重量等の要因によって、LEDベアチップ温度が変わることが分かった。これによってヒートシンクについては、上記要因による各々の定量的な解析評価も可能であると考えられる。

2-4.LED照明装置のその他の構成
上記実施の形態2では、カードソケット110にLEDカード1を挿抜する構成を示したが、本発明のLED照明装置はこの構成に限定しない。また、使用するLEDカード1も1つのLED照明装置に対して複数使用してもよい。
【0078】
図16は、実施の形態2以外の本発明のバリエーションとしてのLED照明装置の構成例を2つ示す。
図16(a)では、基本的には実施の形態2における照明装置100と類似した電球型ランプである照明装置500の構成を示している。
照明装置500の構成におけるLED装着部501には、実施の形態2のような別部材からなるカードソケットを設けておらず、代わりに円盤状のLED装着部501に対して、その側面を溝状に加工して設けられたスロット部510を持つ。そして、このスロット部510にLEDカード1を挿抜自在に保持させる構成としている。LED装着部501の周縁にはランプシェード550を配することができる。また本体部530の下部には、公知の外部ソケットと接続可能なネジ式端子540が配設されている。
【0079】
このような構成において、LED装着部501に配されたLEDカード1は、実施の形態2と同様に、LED装着部501内部に備えられたヒートシンク520と熱的に密着する構成となっている。このヒートシンク520も熱抵抗が4.0℃/W以下のものを用いている。
また、この照明装置500の構成では、円盤状のLED装着部501に合計3個のLEDカード1を均等配置できるようになっており、その分実施の形態2のLED照明装置100に比べて高い光出力を発揮できるようになっている。このような構成によっても、実施の形態2とほぼ同様の効果が奏され、LEDカード1の発熱が80℃以下に抑えられる。
【0080】
さらに図16(b)では、懐中電灯型のLED照明装置600の構成例を示している。このLED照明装置600は、大別してLED装着部601、グリップ部630、スイッチ部640等の構成からなる。
この構成では、LEDカード1はLED装着部601側面に形成されたカードスロット610から挿抜自在に装着される。そして、LEDカード1の装着時には、LEDカード1の金属層10aはLED装着部601内部に配設されたヒートシンク620と熱的に密着するようになっている。この構成例においても、ヒートシンク620には熱抵抗が4.0℃/W以下のものが用いられる。グリップ部630には公知の懐中電灯と同様に電池が収納されており、スライド式スイッチ640を操作してLEDカード1に電力を供給することができる。
【0081】
このような懐中電灯型の構成を持つLED照明装置600によっても、実施の形態2とほぼ同様の効果が奏され、LEDカード1の発熱が80℃以下に抑えられる。

2-5.ヒートシンクのバリエーション
実施の形態2およびそのバリエーションでは、ベースに対して複数のフィンが配設されたヒートシンク120、520、620等を開示したが、本発明で使用できるヒートシンクの形態はこれに限定しない。
【0082】
図17はその他のヒートシンクの構成を示す図である。
図17(a)は、板状ベースに肉厚のリブを複数併設してなるヒートシンクの構成を示す。基本的には、実施の形態2およびそのバリエーションで説明したヒートシンク120、520、620と同様の構成を持っているが、フィンの厚みとその数を適宜調整することが可能である。このような要素を調節することによって、例えばヒートシンクの表面積を設定することができる。
【0083】
図17(b)は、板状ベースに細い角柱状のリブを多数配設してなるヒートシンクの構成を示す。これは一般にパーソナルコンピュータのCPUに対する放熱手段として広く用いられる形状のヒートシンクであるが、これを本発明のLEDカード1の放熱手段として用いることもできる。
図17(c)は、円盤状のペースを間隔を置いて数枚重ね、各ベースの中心を円柱によって連結してなるヒートシンクの構成を示す。この構成の場合、それぞれの円盤状のペース自体がフィンを兼ねている。LEDカード1は端部のベース表面に熱的に密着させる。当該ベースの設ける数を増やすことによって、容易にヒートシンクの熱抵抗・包絡体積・表面積・重量等の放熱特性を決めるファクターを設定することが可能なメリットがある。
【0084】
なお、これ以外にも例えばヒートパイプを備えるヒートシンクを利用してもよい。さらに、ファン、水冷装置、ペルチェ素子、自己蒸発型ヒートシンク等強制冷却装置を組み合わせたヒートシンクを利用してもよい。

<その他の事項>
上記実施の形態で開示したカード型LEDモジュールは、LED照明装置の光源以外の装置に用いることも可能である。例えば照明装置と同様に、高輝度発光が必要な機器(表示機器等)の光源としての利用が想定される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、小型・薄型・軽量等のいずれかの特性が要求される照明器具や照明装置に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施の形態1におけるLEDカードの構成を示す図である。
【図2】基板の配線パターン例を示す図である。
【図3】基板の回路構成を示す図である。
【図4】LED素子周囲の構成を示す図である。
【図5】LED素子周囲の構成を示す図である。
【図6】LEDベアチップの実装構造を示す図である。
【図7】一般的なLEDベアチップの周囲温度と順方向電流特性の関係を示すグラフである。
【図8】ベアチップ温度と熱抵抗との関係を示すグラフである。
【図9】p電極面積(p型半導体層の面積)に占める接合面積(G1、G2のスポット面積)とジャンクション温度Tjとの間における関係を示すグラフである。
【図10】実施の形態2におけるLED照明装置の構成を示す図である。
【図11】LED照明装置の構成を示す断面図である。
【図12】ベアチップ温度とヒートシンクの熱抵抗との関係を示すグラフである。
【図13】ベアチップ温度とヒートシンクの包絡体積との関係を示すグラフである。
【図14】ベアチップ温度とヒートシンクの表面積との関係を示すグラフである。
【図15】ベアチップ温度とヒートシンクの重量との関係を示すグラフである。
【図16】LED照明装置の構成(バリエーション)を示す図である。
【図17】ヒートシンクの構成例(バリエーション)を示す図である。
【図18】LEDカードの別の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
G1〜G3 金バンプ
1 LEDカード
2 LEDベアチップ
10 基板
10a 金属層
10b 絶縁層
20a〜20h 給電端子
30 LED光源部
40 サブマウント
100 照明装置
101 LED装着部
110 カードソケット
120、520、620 ヒートシンク
130 本体部
200 上層配線
201A、201B パターン部
300 LED素子
301 光学反射板
302 樹脂レンズ
401 素子基板
402 第二半導体層
403 活性層
404 p型半導体層
405 p電極
406 n電極
407 蛍光体
408A 第二の電極
408B 第一の電極、
409 シリコン基板
412 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の主面に配線パターンが施された実装基板と、異なった導電型を含む2つの半導体層の間に活性層が介設され且つこのうち第一の半導体層に当該半導体層と略等しい面積の金属電極が積層されたLEDベアチップを複数個備え、前記各LEDベアチップが前記配線パターンに対して、前記金属電極においてフリップチップ実装により接合されてなるLED照明光源であって、
前記金属電極と前記配線パターンとの接合面積が、前記金属電極の面積の20%以上であり、
且つ、LEDベアチップの活性層から実装基板の第二の主面である裏面までの熱抵抗が、3.0℃/W以下に設定されている
ことを特徴とするLED照明光源。
【請求項2】
少なくとも前記第一の半導体層に対して設けられた金属電極と前記配線とが、互いに金ー金接合、または金ーアルミ接合、または金ースズ接合により接合されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLED照明光源。
【請求項3】
前記LEDベアチップの第一の半導体層に設けられた金属電極と前記配線との接合が、2個以上のバンプによりなされている
ことを特徴とする請求項1に記載のLED照明光源。
【請求項4】
前記LEDベアチップの第一半導体層に設けられた金属電極と前記配線との接合が、2個以上且つ直径100μm以上のバンプ、または3個以上且つ直径80μm以上のバンプによりなされている
ことを特徴とする請求項1に記載のLED照明光源。
【請求項5】
駆動時におけるLEDベアチップの活性層の電流密度が、250mA/mm2〜660mA/mm2である
ことを特徴とする請求項1に記載のLED照明光源。
【請求項6】
前記実装基板が、絶縁層と金属層を積層して構成されており、前記配線パターンが施される側の第一の主面である実装基板表面が絶縁層の表面、前記配線パターンが施される側の実装基板表面と反対側の第二の主面である実装基板表面が金属層の表面にそれぞれ相当する
ことを特徴とする請求項1に記載のLED照明光源。
【請求項7】
前記実装基板が、絶縁層が無機フィラーおよび樹脂組成物を含むコンポジット材料から構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLED照明光源。
【請求項8】
前記実装基板は、絶縁層がセラミックス材料から構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLED照明光源。
【請求項9】
前記実装基板が、セラミックス材料から構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLED照明光源。
【請求項10】
前記セラミックス材料が、少なくともAlNまたはAl2O3、またはSiO2のいずれかを含んでいる
ことを特徴とする請求項9に記載のLED照明光源。
【請求項11】
請求項1に記載のLED照明光源を備えるLED照明装置であって、
前記LED照明光源の実装基板裏面に対し、熱抵抗が1.0℃/W以上4.0℃/W以下であるヒートシンクが熱的に密着して配設された構成を有する
ことを特徴とするLED照明装置。
【請求項12】
前記ヒートシンクは、
Al、Cu、W、Mo、Si、AlN、SiCの中から選ばれた一種以上のものより構成されている
ことを特徴とする請求項11に記載のLED照明装置。
【請求項13】
請求項1に記載のLED照明光源を備えるLED照明装置であって、
前記LED照明光源の実装基板裏面に対し、包絡体積が100 cm3以上820 cm3以下であるヒートシンクが熱的に密着して配設された構成を有するLED照明装置。
【請求項14】
前記ヒートシンクは、
Al、Cu、W、Mo、Si、AlN、SiCの中から選ばれた一種以上のものより構成されている
ことを特徴とする請求項13に記載のLED照明装置。
【請求項15】
請求項1に記載のLED照明光源を備えるLED照明装置であって、
前記LED照明光源では、LEDベアチップとサブマウントがフリップチップ実装により接合され、さらにサブマウントと実装基板との第一の主面の配線パターンが電気的に接合されていることにより、前記LEDベアチップと実装基板との実装がなされている
ことを特徴とするLED照明装置。
【請求項16】
前記ベアチップの実装されたサブマウントと実装基板との接合は、導電ペーストによりなされている
ことを特徴とする請求項15に記載のLED照明装置。
【請求項17】
前記導電ペーストの材料は、銀、銅、ニッケル、パラジウム、スズの中から選ばれた1種以上、またはこれらのいずれかを含んでなる合金で構成され、或いはさらにこれらに樹脂を加えて構成されている
ことを特徴とする請求項16に記載のLED照明装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−528588(P2007−528588A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519279(P2006−519279)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013290
【国際公開番号】WO2005/029185
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】