説明

MEMSを備える半導体装置及びその製造方法

【課題】パッケージの小型化が可能であり且つ生産効率の良い半導体装置の製造方法の提供。
【解決手段】MEMSを備える半導体装置の製造方法であって、電導層が絶縁層で被覆されたキャップ基板に、該絶縁層の上に少なくとも2つの電極を互いに離間させて形成するステップと、前記キャップ基板において前記少なくとも2つの電極間に電圧を印加することで、マイグレーションを起こして前記絶縁層を破壊させ、これにより、前記少なくとも2つの電極のうちの少なくとも一方を前記電導層に導通させるステップと、前記キャップ基板によりMEMSを覆うステップと、前記電導層に導通された電極を所定電位に接続することで、前記キャップ基板の電導層を所定電位に接続するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を備える半導体装置及びその製造方法、並びに、当該半導体装置を使用した物理量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上面に配線パターンを備えた絶縁材料製のプリント基板と、該プリント基板上に実装された電子部品を含むプリント基板上面を包囲する絶縁材料製のキャップ基板(蓋)と、を備え、プリント基板とキャップ基板との間をガラス封止した構造の電子部品用パッケージにおいて、キャップ基板の表面の少なくとも一部にシールド用導体膜を形成すると共にプリント基板側にも接地用導体膜を形成し、プリント基板とキャップ基板とを封止するガラスを貫通して対向配置したシールド用導体膜の一部と接地用導体膜とを、1個または複数の金属バンプにより電気的に接続した構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、MEMSのキャップ基板を貫通する絶縁分離トレンチを形成して、絶縁分離された複数個のキャップ導体領域を形成し、特定のキャップ導体領域を取り囲むキャップ導体領域を接地電位に接続する構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−319729号公報
【特許文献2】特開2008−229833号公報(図23)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載する構造では、キャップ基板を接地するために、プリント基板に内部導体11及び接地用外部端子電極10を形成する必要があり、製造プロセス数の低減や低コストのプロセスを実現する観点から改善の余地がある。また、特許文献2の記載の構造では、キャップ導体領域を接地するために、キャップ基板上面からパッケージ底部のリードフレームへと高段差のワイヤボンディングを行う必要がある。この際、ワイヤの断線を防止すべく比較的大きい曲率半径のワイヤの曲げを伴ってワイヤボンディングを行おうとすると、かかる高段差のワイヤボンディングに起因して、パッケージ上方向のスペースのみならずパッケージ横方向のスペースも過大に必要となり、パッケージの小型化の妨げにもなる。
【0006】
そこで、本発明は、パッケージの小型化が可能であり且つ生産効率の良い半導体装置及びその製造方法、並びに、当該半導体装置を使用した物理量検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、MEMSを備える半導体装置の製造方法であって、
電導層が絶縁層で被覆されたキャップ基板に、該絶縁層の上に少なくとも2つの電極を互いに離間させて形成するステップと、
前記キャップ基板において前記少なくとも2つの電極間に電圧を印加することで、マイグレーションを起こして前記絶縁層を破壊させ、これにより、前記少なくとも2つの電極のうちの少なくとも一方を前記電導層に導通させるステップと、
前記キャップ基板によりMEMSを覆うステップと、
前記電導層に導通された電極を所定電位に接続することで、前記キャップ基板の電導層を所定電位に接続するステップとを含むことを特徴とする、半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パッケージの小型化が可能であり且つ生産効率の良い半導体装置及びその製造方法、並びに、当該半導体装置を使用した物理量検出装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例による半導体装置1を組み込む電子部品実装パッケージ10の要部断面を示す断面図である。
【図2】本実施例のキャップ基板50を示す図であり、図2(A)は上面図であり、図2(B)は上面図におけるラインB−Bに沿った断面図であり、図2(C)は上面図におけるC部の詳細図である。
【図3】本実施例の半導体装置1の上面図である。
【図4】図1のY部の拡大図である。
【図5】第1の比較例を示す断面図である。
【図6】第2の比較例を示す断面図である。
【図7】第2の比較例におけるトレンチ形成のプロセスフローである。
【図8】高段差のワイヤボンディングの欠点の説明図である。
【図9】本発明のその他の一実施例による半導体装置2を組み込む電子部品実装パッケージ10Bの要部断面を示す断面図である。
【図10】図9のY部の拡大図である。
【図11】本実施例の半導体装置2の上面図である。
【図12】本発明のその他の一実施例による半導体装置3を組み込む電子部品実装パッケージ10Cの要部断面を示す断面図である。
【図13】本発明のその他の一実施例による半導体装置4を組み込む電子部品実装パッケージ10Dの要部断面を示す断面図である。
【図14】トレンチにより電極56が形成される場合の絶縁層欠損部58の形成過程を示す図である。
【図15】表面電極として電極56が形成される場合の絶縁層欠損部58の形成過程を示す図である。
【図16】キャップ基板50の電極56のその他の配置例を示す上面図である。
【図17】電極構成の各種バリエーションを示す上面図である。
【図18】電極構成の各種バリエーションを示す断面図である。
【図19】絶縁層欠損部58の各種バリエーションを示す図である。
【図20】絶縁層欠損部58の各種バリエーションを示す図である。
【図21】絶縁層欠損部58の各種バリエーションを示す図である。
【図22】電極構成の更なる各種バリエーションを示す断面図である。
【図23】絶縁層52の各種バリエーションを示す断面図である。
【図24】各実施例による半導体装置1乃至4の製造方法の主要プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明の一実施例による半導体装置1を組み込む電子部品実装パッケージ10の要部断面を示す断面図である。
【0012】
電子部品実装パッケージ10は、パッケージ本体17を備える。パッケージ本体17は、底部と底部から立設された側壁により内部空間(キャビティ)17aを画成する。内部空間17aには、半導体装置1の各種の電子部品(後述のMEMS11や制御ICチップ12)が収容される。内部空間17aの上方側は開口しており、蓋部材16により覆われる。パッケージ本体17は、セラミック材料のような任意の材料から構成されてよいし、若しくは、樹脂材料(例えばエポキシ樹脂)から構成されてもよい。
【0013】
パッケージ本体17は、複数のリードフレーム14を備える。リードフレーム14は、電導性を有する材料からなる。制御ICチップ12の各電極とリードフレーム14とはワイヤ32のワイヤボンディングにより電気的に接続され、制御ICチップ12の各電極とMEMS11の各電極とはワイヤ30のワイヤボンディングにより電気的に接続される。
【0014】
蓋部材16は、電導性を有する材料(典型的には、金属材料)から形成される。蓋部材16は、シールド機能を果たすため、図示しない接地構造により接地電位に接続されてもよい。
【0015】
半導体装置1は、主に、MEMS11、制御ICチップ12、及び、キャップ基板50を備える。
【0016】
MEMS11は、受ける力(加速度等)に応じて変位する部材(ばね要素や錘等)を備えるMEMS可動部(センサ部)11aを備える。MEMS11は、任意の物理量を検出するセンサチップであってよい。MEMS11は、例えば車載センサとして機能するものであってよい。この場合、MEMS11は、搭載される車両に生ずる車体前後方向又は車幅方向の加速度に応じた信号を出力する加速度センサと、車両の重心軸回りに生ずる角速度に応じた信号を出力するヨーレートセンサとを構成してもよい。電子部品実装パッケージ10は、MEMS11を一体に構成した車両制御用センサユニット(物理量検出装置)として具現化される。この場合、電子部品実装パッケージ10は、MEMS11等を内部に実装した状態で、車両の重心位置付近(フロアトンネル等)に設けられ、MEMS11は、当該搭載位置に発生するヨーレート及び加速度を検出する。検出されたヨーレート及び加速度は、例えば、横滑り等を防止して車両の挙動を安定化させる車両走行制御に利用されてよい。尚、このようなMEMS可動部11aの構造は、任意であるが、例えば特開2006−242730広報に記載された構造が採用されてもよい。
【0017】
制御ICチップ12は、MEMS11とワイヤ30等で電気的に接続され、MEMS11からの信号を処理する機能を有する集積回路(IC)を備える。例えば車両実装状態では、制御ICチップ12は、ワイヤ32によりリードフレーム14を介して外部の制御装置(図示せず)に接続される。
【0018】
キャップ基板50は、MEMS11を覆うように設けられ、MEMS可動部11aを密封・保護する。また、キャップ基板50は、後述する接地構造により接地電位に接続され、MEMS可動部11aを電気的に保護する。即ち、キャップ基板50は、電気的なシールド機能を備え、MEMS可動部11aの安定的な動作を保証する。
【0019】
図2は、本実施例のキャップ基板50を示す図であり、図2(A)はキャップ基板50の上面図であり、図2(B)は、図2(A)のキャップ基板50におけるラインB−Bに沿った断面図であり、図2(C)は、図2(A)のキャップ基板50におけるC部の詳細図である。
【0020】
キャップ基板50は、図2(B)に示すように、絶縁層(例えば、SiOの絶縁膜)52と電導層(例えばSi)54の積層構造を有する。即ち、キャップ基板50は、電導層54が絶縁層52により被覆されている。電導層54は、キャップ基板50の全面に亘って設けられる。絶縁層52についても、キャップ基板50の全面に亘って設けられてよい。キャップ基板50は、また、図2(A)に示すように、MEMS可動部11aを密封する機能(即ち、キャップ基板50とMEMS11との間の結合部のシール機能)を果たすシール層51が形成される。シール層51は、図2(A)に示すように、MEMS可動部11aを取り囲むように形成される。シール層51は、絶縁層52上に形成される。キャップ基板50は、絶縁層52側がMEMS11に向くような向きでMEMS11を覆うように設けられる。
【0021】
キャップ基板50は、図2(A)に示すように、互いに離間した2つの電極56を備える。2つの電極56は、シール層51よりも外側に形成される。2つの電極56は、図2(B)に示すように、絶縁層52上に形成される。即ち2つの電極56は、形成時には、絶縁層52により電導層54から電気的に絶縁されている。しかしながら、絶縁層52には、2つの電極56の形成後に、絶縁層欠損部58が形成される。これにより、2つの電極56は、電導層54と電気的に導通する。絶縁層欠損部58は、2つの電極56間に電圧(ストレス)を印加することで、マイグレーションを起こして絶縁層52を破壊させることで形成される。この絶縁層欠損部58の形成方法の詳細は、図14及び図15を参照して後述する。
【0022】
図3は、本実施例の半導体装置1の上面図であり、図1の電子部品実装パッケージ10からパッケージ本体17及び蓋部材16を取り外した状態の上面図に相当する。
【0023】
キャップ基板50は、MEMS11の外形よりも小さく形成される。これにより、図3に示すように、MEMS11の両側にワイヤ30のワイヤボンディングのためのスペースが確保される。
【0024】
2つの電極56の一方(図示の例では、図上で上側の電極56)は、GND引出し配線34を介してMEMS11のグランド接続用電極11cに接続される。グランド接続用電極11cは、ワイヤ30cを介して制御ICチップ12のグランド接続用電極12cに接続される。制御ICチップ12のグランド接続用電極12cは、例えばリードフレーム14を介してグランドに接続される。これにより、GND引出し配線34が接続される電極56が接地電位となる。このとき、GND引出し配線34が接続される電極56(及び他方の電極56)は、絶縁層欠損部58を介して電導層54に導通しているので、電導層54も接地電位となる。このようにして、キャップ基板50の電導層54が接地電位となり、キャップ基板50にシールド機能が付与される。
【0025】
図4は、図1のY部の拡大図である。キャップ基板50(シール層51、電極56)とMEMS11との間の接続方法は、Si直接接合、金属接合、共晶接合(Au−Si,Al−Si等)、導電性接着剤(ACF/ACP(異方性導電フィルム/ペースト)等)、半田接合等により実現されてもよい。キャップ基板50からのGND引出し配線34は、MEMS11内に埋め込んで形成してもよい。
【0026】
ここで、図5乃至図8を参照して、本実施例に対する比較例について説明する。
【0027】
図5は、キャップ基板の上側の導体層を、図中のGND線のワイヤボンディングにより接地する構造を有する第1比較例を示し、図6は、キャップ基板を貫通するトレンチを作成し当該トレンチから図中のGND線のワイヤボンディングにより接地する構造を有する第2比較例を示す。図7は、第2比較例におけるトレンチ形成のプロセスフローを示す。図7では、(A)から(E)までプロセス順にトレンチ形成のプロセスフローが示されている。まず、図7(A)に示すように、キャップ基板とMEMS基板が接合され、次いで、図7(B)に示すように、キャップ基板に貫通トレンチが作成され、次いで、図7(C)に示すように、キャップ基板の表面の酸化処理が実行され、次いで、図7(D)に示すように、キャップ基板表面の酸化膜が除去され、次いで、図7(E)に示すように、キャップ基板の酸化膜が除去された部分に配線が引き出され、導体層が接地される。
【0028】
図5及び図6に示す比較例では、キャップ基板50の上面からワイヤボンディングを行う必要がある。従って、キャップ基板50よりも上方のスペース、即ちパッケージ上方向のスペースが必要となる。更に、図5及び図6に示す比較例では、キャップ基板50の上面からの高段差のワイヤボンディングになる。この点、図8にてX2に示すように、ワイヤボンディングの際のワイヤの曲率半径を小さいと、パッケージ横方向のスペースに関して有利であるが、ワイヤの断線の虞がある。他方、図8にてX1に示すように、ワイヤの断線を防止すべくワイヤボンディングを比較的大きい曲率半径のワイヤの曲げを伴って行おうとすると、かかる高段差のワイヤボンディングに起因して、パッケージ横方向のスペースも過大に必要となり、小型化の妨げにもなる。
【0029】
これに対して、本実施例では、図1に示すように、キャップ基板50の上面からではなく、MEMS11側からのワイヤ30のワイヤボンディングによりキャップ基板50の電導層54を接地することができる。これにより、キャップ基板50よりも上方の必要なスペースを小さくすることができる。更に、高段差のワイヤボンディングを回避できるので、パッケージ横方向の必要なスペースを小さくすることができる。これにより、パッケージサイズの小型化を図ることができる。更に、図7に示すような貫通トレンチ形成のプロセスが不要となり、生産効率が向上する。
【0030】
図9は、本発明のその他の一実施例による半導体装置2を組み込む電子部品実装パッケージ10Bの要部断面を示す断面図である。図10は、図9のY部の拡大図である。図11は、本実施例の半導体装置2の上面図であり、図9の電子部品実装パッケージ10からパッケージ本体17及び蓋部材16を取り外した状態の上面図に相当する。
【0031】
図9乃至図11に示す電子部品実装パッケージ10Bは、図1等に示した電子部品実装パッケージ10に対して、半導体装置2のMEMS11とキャップ基板50とが上下逆に配置されている点が主に異なる。ここでは、図1等に示した電子部品実装パッケージ10に対する相違点について重点的に説明するが、その他の構成は電子部品実装パッケージ10と同様であってよい。
【0032】
図9乃至図11に示す電子部品実装パッケージ10Bでは、MEMS可動部11aが下側からキャップ基板50により覆われるように配置される。即ち、キャップ基板50は、MEMS11と制御ICチップ12との間に配置され、絶縁層52側がMEMS11に向くような向きでMEMS11を下方から覆うように設けられる。キャップ基板50の電極56は、同様に、GND引出し配線34を介してMEMS11のグランド接続用電極11cに接続される。GND引出し配線34は、MEMS11内に埋め込んで形成してもよい。MEMS11のグランド接続用電極11cは、GND引出し配線30dを介して制御ICチップ12のグランド接続用電極12cに接続される。GND引出し配線30dは、制御ICチップ12内に埋め込んで形成してもよい。同様に、制御ICチップ12のグランド接続用電極12cは、例えばワイヤ32によりリードフレーム14を介してグランドに接続される。これにより、GND引出し配線34が接続される電極56が接地電位となる。また、GND引出し配線34が接続される電極56(及び他方の電極56)は、絶縁層欠損部58を介して電導層54に導通しているので、電導層54も接地電位となる。このようにして、キャップ基板50の電導層54が接地電位となり、キャップ基板50にシールド機能が付与される。
【0033】
図9乃至図11に示す電子部品実装パッケージ10Bでは、同様に、キャップ基板50(シール層51、電極56)とMEMS11との間の接続方法は、Si直接接合、金属接合、共晶接合(Au−Si,Al−Si等)、導電性接着剤(ACF/ACP(異方性導電フィルム/ペースト)等)、半田接合等により実現されてもよい。また、MEMS11(グランド接続用電極11c)と制御ICチップ12(GND引出し配線30d)との間の接続方法は、半田接合等により実現されてもよい。
【0034】
図9乃至図11に示す実施例によれば、MEMS11と制御ICチップ12の間のワイヤボンディングが不要となる。即ち、図4に示したワイヤボンディングによるワイヤ30cに代えて、図10に示すようなワイヤボンディングが不要なGND引出し配線30dを使用することができる。従って、図9乃至図11に示す実施例によれば、かかるワイヤボンディングのためのスペースの確保が不要となる。これにより、電子部品実装パッケージ10Bの更なる小型化が可能となる。
【0035】
図12は、本発明のその他の一実施例による半導体装置3を組み込む電子部品実装パッケージ10Cの要部断面を示す断面図である。
【0036】
図12に示す電子部品実装パッケージ10Cは、図9乃至図11に示した電子部品実装パッケージ10Bに対して、半導体装置3が2セットのMEMS11A,11Bとキャップ基板50A,50Bを備える点が主に異なる。ここでは、図9乃至図11に示した電子部品実装パッケージ10Bに対する相違点について重点的に説明するが、その他の構成は図9乃至図11に示した電子部品実装パッケージ10Bと同様であってよい。
【0037】
具体的には、本実施例の半導体装置3は、図9乃至図11に示した電子部品実装パッケージ10の半導体装置2の構成上に、キャップ基板50B及びMEMS11Bを配置した構造を有する。キャップ基板50A,50Bの接地用の各接続部Q,Pは、図10に示した構造と同様であってよい。本実施例の半導体装置3では、各接続部Q,Pをつなぐワイヤ37が設けられる。これにより、キャップ基板50Bが接地電位となる。このようにして、MEMSが複数個積層された場合も、同様の接地構造を採用して、小型化を図ることができる。
【0038】
図13は、本発明のその他の一実施例による半導体装置4を組み込む電子部品実装パッケージ10Dの要部断面を示す断面図である。
【0039】
図13に示す電子部品実装パッケージ10Dは、図1等に示した電子部品実装パッケージ10に対して、半導体装置4が2セットのMEMS11A,11Bを備える点が主に異なる。ここでは、図1等に示した電子部品実装パッケージ10に対する相違点について重点的に説明するが、その他の構成は図1等に示した電子部品実装パッケージ10と同様であってよい。
【0040】
具体的には、本実施例の半導体装置4は、図1等に示した電子部品実装パッケージ10の半導体装置1の構成上に、MEMS11Bを配置した構造を有する。キャップ基板50の接地用の接続部Pは、図4に示した構造と同様であってよい。これにより、キャップ基板50Bが接地電位となる。MEMS11Bの接地用電極11dは、キャップ基板50の導体層54に接続されてもよい。このようにして、MEMSが複数個積層された場合も、同様の接地構造を採用して、小型化を図ることができる。
【0041】
次に、キャップ基板50における絶縁層欠損部58の形成方法について、図14及び図15を参照して説明する。
【0042】
図14は、トレンチにより電極56が形成される場合の絶縁層欠損部58の形成過程を示す図である。
【0043】
絶縁層欠損部58は、2つの電極56間に電圧(ストレス)を印加することで、マイグレーションを起こして絶縁層52を破壊させることで形成される。具体的には、図14(A)に示すように、2つの電極56間に電圧(ストレス)を印加すると、図14(B)に示すように、マイグレーションを起こして絶縁層52に電極56のメタル成分が浸透し、図14(C)に示すように、絶縁層52が破壊されて絶縁層欠損部58が形成される。これにより、電極56が電導層54と導通する。
【0044】
図15は、表面電極として電極56が形成される場合の絶縁層欠損部58の形成過程を示す図である。
【0045】
表面電極の場合も同様に、図15(A)に示すように、2つの電極56間に電圧(ストレス)を印加すると、図15(B)に示すように、マイグレーションを起こして絶縁層52に電極56のメタル成分が浸透し、図15(C)に示すように、絶縁層52が破壊されて絶縁層欠損部58が形成される。これにより、電極56が電導層54と導通する。
【0046】
例えば絶縁層52がSiO(絶縁破壊強度8MV/cm)のとき、膜厚0.5μm、800V以上の電圧の印加で絶縁層52が破壊され、絶縁層欠損部58が形成される。尚、SiOの破壊耐圧例としては、膜厚1μmのとき耐圧1600V(電極56間の膜厚合計2μm)、膜厚2μmのとき耐圧3200V(電極56間の膜厚合計4μm)である。尚、絶縁層欠損部58が意図通り形成されたことは、導通試験等により検査されてもよい。
【0047】
次に、上述の各実施例におけるキャップ基板50で採用できる電極構成等の各種バリエーションについて説明する。
【0048】
図16は、キャップ基板50の電極56のその他の配置例を示す上面図である。電極56は、図16に示すように、面内電位(本例では接地電位)の均一化のために、4つ設定されてもよい。当然ながら、電極56は、3つや5つ以上設定されてもよい。
【0049】
図17は、電極構成の各種バリエーションを示す上面図である。図17(A)(図2(C)と同じ)に示す正方形の電極56に対して、図17(B)に示すように、電極間ストレスが伝わりやすくなるように(マイグレーションを起こしやすくなるように)幅を変化してもよい。また、図17(C)及び図17(D)に示すように、電界集中しショートしやすい構造(電極間の等電位線を密にする構造)となるように、相手側に向けて延在する凸状部位や先細部位を各電極56に設定してもよい。例えば図17(C)の場合は、細長い先端部56aを相手方の電極56に近接させている。
【0050】
図18は、電極構成の各種バリエーションを示す断面図である。図18(A)(図2(C)と同じ)に示すトレンチによる電極56に対して、図18(B)に示すように、ショートしやすいように電極56を絶縁層52の表面上に引き出して相手側に向けて延在させてもよい。また、図18(C)に示すように、ショートしやすいように電極56のトレンチ構造を変化させ、相手側に向けて横方向に延在させてもよい。
【0051】
図19乃至図21は、絶縁層欠損部58の各種バリエーションを示す図であり、各図の(A)は断面図を示し、各図の(B)は上面図を示す。
【0052】
絶縁層欠損部58は、電極56間の合計膜厚が最も薄い部分から形成される。また、絶縁層欠損部58は、図19に示すように、絶縁層52の内部(トレンチの側部)及び外部(表面)に形成されてもよい。また、絶縁層欠損部58は、図20に示すように、絶縁層52の外部(表面)に形成されてもよい。また、絶縁層欠損部58は、図21に示すように、絶縁層52の内部(トレンチの側部)に形成されてもよい。尚、図21に示す例は、図17(D)及び図18(C)に示した構造に対応している。これらのいずれも場合も、電極56は絶縁層欠損部58を介して電導層54に電気的に接続される。
【0053】
図22は、電極構成の更なる各種バリエーションを示す断面図である。電極56は、図2(B)に示したような非貫通トレンチ構造でなくてもよく、例えば、図22(A)に示すように、貫通トレンチ構造であってもよいし、図22(B)に示すように、表面電極構造であってもよい。
【0054】
図23は、絶縁層52の各種バリエーションを示す断面図である。絶縁層52は、図23(A)(図2(B)と同じ)に示すような表面側だけに設けられる以外にも、図23(B)に示すように、側面や裏面に設けられてもよい。
【0055】
図24は、上述の各実施例による半導体装置1乃至4の製造方法の主要プロセスを示す図である。
【0056】
ステップ100では、電導層54が絶縁層52で被覆されたキャップ基板50に、絶縁層52側に電極56を互いに離間させて形成する。これらの電極56の構成は、例えば図17や図18等に示した構成であってよい。
【0057】
ステップ110では、2つの電極56間に電圧を印加することで、マイグレーションを起こして絶縁層52を破壊させ、これにより、電極56を電導層54に導通させる。この方法は、図14及び図15等に示す方法であってよい。電導層54に導通される電極56は、典型的には、2つの電極56のそれぞれであるが、原理上、電導層54に導通される電極56は、1つであってよい。この場合、当該電導層54に導通される方の電極56が接地される。
【0058】
ステップ120では、キャップ基板50を組み付け、キャップ基板50によりMEMS11を覆う。これにより、MEMS11のMEMS可動部(センサ部)11aがキャップ基板50により密閉される。
【0059】
ステップ130では、電導層54に導通された電極56を接地電位に接続する。これにより、キャップ基板50の電導層54を接地電位に接続する。尚、電導層54に導通された電極56を接地電位に接続する方法は、図4や図10等を参照して説明した方法であってよい。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0061】
例えば、上述の実施例では、好ましい実施例として、キャップ基板50の電導層54を接地電位に接続しているが、キャップ基板50の電導層54は、上述の接地構造を用いて、任意の電位に接続することができる。例えば、キャップ基板50の電導層54は、接地電位以外の低電位に接続してもよい。この場合も、キャップ基板50全体が均一な等電位になることで、MEMS可動部(センサ部)11aの良好な動作を保証することができる。
【符号の説明】
【0062】
1,2,3,4 半導体装置
10,10B,10C,10D 電子部品実装パッケージ
11 MEMS
11a MEMS可動部
11c グランド接続用電極
11d 接地用電極
12 制御ICチップ
12c グランド接続用電極
14 リードフレーム
16 蓋部材
17 パッケージ本体
30 ワイヤ
30c ワイヤ
30d GND引出し配線
32 ワイヤ
34 GND引出し配線
37 ワイヤ
50 キャップ基板
51 シール層
52 絶縁層
54 電導層
56 電極
58 絶縁層欠損部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMSを備える半導体装置の製造方法であって、
電導層が絶縁層で被覆されたキャップ基板に、該絶縁層の上に少なくとも2つの電極を互いに離間させて形成するステップと、
前記キャップ基板において前記少なくとも2つの電極間に電圧を印加することで、マイグレーションを起こして前記絶縁層を破壊させ、これにより、前記少なくとも2つの電極のうちの少なくとも一方を前記電導層に導通させるステップと、
前記キャップ基板によりMEMSを覆うステップと、
前記電導層に導通された電極を所定電位に接続することで、前記キャップ基板の電導層を所定電位に接続するステップとを含むことを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記所定電位は、接地電位である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
半導体装置であって、
電導層が絶縁層で被覆されたキャップ基板と、
前記キャップ基板により覆われるMEMSとを備え、
前記キャップ基板は、前記絶縁層の上に、互いに離間した少なくとも2つの電極を備え、
前記少なくとも2つの電極のうちの少なくとも一方は所定電位に接続され、
前記キャップ基板の絶縁層には、前記所定電位に接続された電極を前記電導層に導通させる絶縁層欠損部が形成されることを特徴とする、半導体装置。
【請求項4】
前記所定電位は、接地電位である、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の半導体装置を備え、前記MEMSが物理量を検出するセンサ部を構成する物理量検出装置。

【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−115925(P2011−115925A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277765(P2009−277765)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】