説明

MEMSセンサ・パッケージ

【課題】センサを密封する、MEMSセンサ・パッケージを提供する。
【解決手段】MEMSセンサ・パッケージは、MEMSセンサと、第1のリーク・レートでガスリークに浸透するセンサボディと、埋め戻し圧力までセンサボディに加圧する埋め戻しガスと、を有し、埋め戻し圧力は、MEMSセンサの減衰を提供し、埋め戻し圧力は、ガスリークのためのセンサボディ内の圧力の増加が、MEMSセンサ・パッケージに関する少なくとも特定の設計サービス寿命に関する所定の範囲を越えて、MEMSセンサのQ値の偏差に生じさせないようにセットされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願についてのクロス・リファレンス>
[0001] 本出願は、2005年8月19日に米国に出願され「MEMSセンサ・パッケージ」と名づけられた、米国特許出願シリアル番号11/161,871号の一部継続であり、当該出願に基づいて優先権を有し、リファレンスとしてここに組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
[0002] 微小電気機械システム(MEMS)センサ(例えばMEMSジャイロ・センサ)の作動性能は、センサのクォリティ(Q)値に関する。高いQ値を備えるセンサを有することは、利点および不利な点の両者を有する。高いQ値は、システムがごくわずかな減衰化しかないことを意味する。したがって、センサを励磁して、それらの駆動周波数でセンサ構成要素を移動するにはごくわずかなエネルギーしか必要でない。しかし、高いQ値を有するセンサが、振動およびショックがセンサを囲んでいる航空機またはその他の環境に入れられるときに、駆動周波数のノイズはMEMSセンサの制御の損失を与えることがありえる。このノイズの減衰は、ガスを有するセンサチャンバを埋め戻すことによって、センサの減衰化によって、成し遂げられることが可能である。すなわち、振動およびショック・ノイズが不安定なセンサ反応を起こさないために、ガスを有するセンサチャンバを埋め戻すことはセンサのQ値を下げる。結果として生じるQ値は、ある程度少なくとも埋め戻されたガス圧の関数である。このように、センサチャンバの中の圧力が時間とともに変化する場合、センサのためのQ値はまた、時間とともに変化する。このように、現在まで埋め戻されたセンサは、センサチャンバを密封し(例えば、例えば、金属結合に対するガラス)、その結果、チャンバへのまたはチャンバからのガス漏れのいずれもが、ほぼ0である。この種の封止方法は、高価で、MEMSセンサを生産するためのコストを押し上げる。
【0003】
[0003] 上述した理由、および、後述する理由のために、MEMSセンサ・パッケージための改良されたシステムと方法のための技術が必要であることは、当業者にとって明らかであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004] 本発明の実施形態は、方法および装置をMEMSセンサ・パッケージための改良されたシステムと方法に提供し、以下の詳細な説明を参照することにより理解される。
[0005] MEMSセンサ・パッケージのための方法と装置を提供する。ある実施形態では、MEMSセンサ・パッケージは、MEMSセンサと、第1のリーク・レートでガスリークに浸透するセンサボディと、埋め戻し圧力までセンサボディに加圧する埋め戻しガスと、を有し、埋め戻し圧力は、MEMSセンサの減衰を提供し、埋め戻し圧力は、ガスリークのためのセンサボディ内の圧力の増加が、MEMSセンサ・パッケージに関する少なくとも特定の設計サービス寿命に関する所定の範囲を越えて、MEMSセンサのQ値の偏差に生じさせないようにセットされる。
【0005】
[0006] 本発明の実施形態は、好ましい実施形態および図の説明を参照して、より容易によく理解され、更に効果を理解するのにも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】[0007] 図1は、本発明のある実施形態のMEMSセンサ・パッケージの線図である。
【図2】[0008] 図2は、本発明のある実施形態のセンサのためのリークレートに対する、時間を例示しているグラフである。
【図3】[0009] 図3は、センサのチャンバの圧力の変化に対する、本発明のある実施形態のセンサに関するモーターQ値の変化を例示するグラフである。
【図4】[0010] 図4は、本発明のある実施形態のセンサのためのモーターQ値の変化を時間にわたって例示するグラフである。
【図5】[0011] 図5は、本発明のある実施形態の方法を例示するフローチャートである。
【図6】[0012] 図6は、本発明のある実施形態のMEMSセンサ・パッケージに関する時間にわたるパーセント・モーターQ値変化を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0013] 一般のプラクティスによれば、さまざまな記載されている特徴は、一定の比率で描かれておらず、本発明に関連する特徴を強調するように描かれる。参照文字は、図及びテキストを通して同じ要素で規定される。
【0008】
[0014] 以下の詳細な説明において、本発明が実施されることができる特定の例示の実施形態を介して、この一部を形成する添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者は本発明を実施できるために充分に詳細に記載され、他の実施形態が利用できるように理解される。したがって、以下の詳細な説明は、限定的に解釈されるべきではない。
【0009】
[0015] 図1は、本発明のあるボディのMEMSセンサ・パッケージ10を例示する線図である。MEMSセンサ・パッケージ10は、MEMSセンサ12を保つ第1のチャンバ15を定めるセンサボディ16を含む。MEMSセンサ12は、Q値に基づいてパフォーマンス特徴を有する振動または可動パーツを備えるMEMSジャイロ・センサまたはいかなるセンサでもあってもよい。一般的に、MEMSセンサ・パッケージ10は、第2のチャンバ5の中に収納される。ある実施形態では、例えば、第2のチャンバ5は、空気のようなガスを備えた一気圧の圧力に埋め戻される。ある実施形態において、センサボディ16は、組み立ての際に、センサボディ16の範囲内で第1のチャンバ15を画定する2つ以上の構成要素21、22から成る。第1のチャンバ15は、密封されない。すなわち、第1のチャンバ15は、構成要素21、22または一緒に構成要素21、22を保つために用いる封止23のいずれかを介してガスに、少なくとも部分的に浸透する。例えば、ある実施形態では、構成要素21は、はんだ封止を使用してパーツ22に固定される。このように、第1のチャンバ15は、第1のチャンバ15および第2のチャンバ5の中でガスにパーツ21、22と同様に、封止23の透過性の機能であるリークレートをもつ。
【0010】
[0016] 本発明の実施形態について、MEMSセンサ・パッケージ10の証明された寿命のための指定された設計境界の中で、Q値を維持する圧力に、第1のチャンバ15は、ガス14によって、埋め戻される。本発明の実施形態は、より高い埋め戻される圧力で、ガスがチャンバ15に入りまたは出て行くための時間にわたる圧力差が、相対的に低い満たされた圧力で、Q値の効果がより小さいという原理に基づく。例えば、第1のチャンバ15の中の圧力が、1マイクロTorrであり、充分なガスが、10マイクロTorrまで圧力を上げるために第1のチャンバに入るならば、圧力およびチャンバは10倍に上昇する。これは、センサ10のQ値に、かなりの変化を引き起こす。しかし、第1のチャンバ15の中の圧力が、44mTorrにセットされ、充分なガスが、10マイクロTorrだけ圧力を上げるためにチャンバに入る場合、センサ10のQ値に対する効果はごくわずかである。これは、パーセント圧力変化がその0.03%より小さいからである。
【0011】
[0017] 図2は、MEMSセンサ・パッケージ10のようなセンサのためのリークレート対時間を例示するグラフである。図2のグラフで示すように、リークレートがより大きく、より少ない時間は、第1のチャンバ15の中の圧力に関して1mTorrだけ変化させるために必要である。例えば、毎秒5×10-13 cm3のリークレートは、僅かに1年未満の1mTorrの第1のチャンバ15の中の圧力の変化に結果としてなる。チャンバ15の圧力が変化するにつれて、図3は、センサ(例えばMEMSセンサ・パッケージ10)のためのモーターQ値の変化を例示するグラフである。例えば、5mTorrの圧力で始まって、ほぼ12mTorrに対するチャンバ圧の増加によって、70,000から60,000までQ値の低下を結果として生じさせる。対照的に、50mTorrの圧力で始まって、57mTorrまでチャンバの圧力の対応する増加によって、3000未満のQ値の低下を結果として生じさせる。図4は、時間とともにセンサ(例えばMEMSセンサ・パッケージ10)に関するモーターQ値の変化を例示するグラフである。毎秒5×10-13cm3のリークレートとすると、(410で一般に示される線で例示する)100マイクロTorrだけ初めに埋め戻されるセンサのQ値は、1年後にほぼ1400/年のレートのQ値の変化を経験する。20年後、センサQ値に関する変化率は、まだ1000/年以上である。対照的に、40mTorr(420で一般に示される線で例示)まで初めに埋め戻されるセンサのQ値は、1年後ほぼ550/年だけのQ値が20年後に200/年まで減少する変化を経験する。
【0012】
[0018] チャンバ15を埋め戻すのに使用するためどのガスを選択するかは、当業者によって容易に判断される。特定のガスによって提供されるQ値は、両方の埋め戻し圧力およびガス分子の寸法の両方の関数である。すなわち、空気で40mTorrにチャンバ15を埋め戻すことは、ヘリウムまたはアルゴンで40mTorrに、チャンバ15を埋め戻すのとは異なるQ値を生成する。加えて、センサ・パッケージのリークレートは、選択された埋め戻しガスの少なくとも一部において算出される。埋め戻しガスは、不活性ガスか非不活性ガスまたは非不活性ガス、若しくは、不活性ガスと非不活性ガスとの混合物のいずれであってもよい。特にアルゴンは、比較的大きな分子サイズを有する安価な不活性ガスである利点がある。しかし、本発明の実施形態は、埋め戻しガスとしてアルゴンの使用を必要としない。例えば、ヘリウムまたは酸素のようなガスが、別の実施形態において、使うことができる。
【0013】
[0019] 埋め戻しチャンバ15が、任意のゲッター18を含むとき、ゲッター18が、センサのQ値を変えるために埋め戻しガスを吸収しないように、不活性ガスは好まれる。ゲッター18は、チャンバ15に入るいかなる非不活性ガスも吸収するように機能する。
【0014】
[0020] 図5は、所定の設計寿命を超える十分に安定したQ値を有するMEMSセンサを設計するための本発明のある実施形態の方法を例示するフローチャートである。方法は、MEMSセンサの設計(すなわち所望の)サービス寿命を確立することに関する510から始まる。所望のサービス寿命は、例えば、特定のMEMSセンサが使用される特定の任務に基づく。方法は、所望のサービス寿命を超えるQの許容可能な偏差を識別することに関する520へ進む。これは、MEMSセンサが使われるシステムの較正耐性または精度条件に少なくとも部分的に基づく。例えば、デバイスが、MEMSセンサが較正時にその値の±10%のQ値を維持すると仮定する機能に調整される場合、10%の偏差は、所望のサービス寿命を超えるQオーバーの最大の受け入れ可能な偏差であろう。方法は、MEMSセンサ・パッケージの予想されるリークレートを識別することに関する530へ進む。それらは、リークレートが、ガスがセンサチャンバを入るかまたは出ることができるセンサ・パッケージの透過性を表すと期待する。それらは、リークレートが、チャンバを埋め戻すために選ばれる特定のガスに少なくとも部分的に基づくと予想した。予想されるリークレートを識別することはまた、MEMSセンサ・パッケージの外側を囲むのを予想されるガスの圧力および組成に基づいてもよい。ある実施形態では、予想されるリークレートを識別することは、MEMSセンサの構成に用いられる材料のためのセンサチャンバの中でoff-gassingの周知のソースの組み入れを含むことができる。
【0015】
[0021] 方法は、設計サービス寿命を超えるQの識別された許容可能な偏差の範囲内に、予想されるリークレートに基づいてQ値を維持する埋め戻しガス圧および埋め戻しガスを選ぶことに関する540へ進む。埋め戻しガスの選択は、センサのQ値のための近似の所望の範囲と同様に経済考慮のような要因に基づいてもよい。例えば、異なるガスが、埋め戻し圧力の同じ範囲以上の異なるQ値を生成するので、ある実施形態では、ガスの選択は、近似の所望のQ値により調整される。例えば、予想される振動および音響ノイズの違いのため、軌道プラットフォームのようなアプリケーションと比較したとき、航空機または誘導ミサイルまたは発射体のようなアプリケーションは、比較的低いQ値により提供される弱いレスポンスから利益を得る。
【0016】
[0022] 次いで、埋め戻しガス圧の選択は、センサに関する設計寿命を超える受容可能な偏差範囲の中で、センサQ値を維持することに基づいている。例えば、図6は、本発明のある実施形態のMEMSセンサ・パッケージに関する、時間にわたるパーセント・モーターQ値の変化を例示するグラフである。図6は、0.0075in3の内容量を備えたMEMSセンサ・パッケージに関する5×10-13cm/秒のリークレートを想定する。示される効果は、センサを保っているパッケージチャンバの空いた容量と比例しているので、センサ・パッケージ量が50%減少する場合、(例えば)Qの20%の変化がわかる時は50%減少するだろう。図6に示すように、(610で一般に示される線で例示される)100マイクロTorrだけ初めに埋め戻されるセンサは、12年未満で20%以上のQ値の変化を経験する。特定のミッションが、20%を超えない設計サービス寿命を超えるQオーバーの受容可能偏差を備えた20年の設計サービス寿命を有するMEMSセンサを必要とするならば、610により表されるセンサは、受け入れられない。(620で一般に示される線で例示される)40mTorrに初めに埋め戻されるセンサは、20年の寿命にわたって僅かに20%未満のQ値の変化を経験する。それゆえ、40mTorrの埋め戻し圧力を選ぶことは、センサの設計寿命を超える許容可能偏差条件を満たす。許容可能偏差が20%ではなく10%である場合、60mTorrにセンサを埋め戻すことは、許容可能センサを生成する(630で一般に示される線で示される)。
【0017】
[0023] 実際には、ある実施形態では、選択された埋め戻しガスは、所望の埋め戻し圧力が成し遂げられたあと、その後封止されるパッケージの入口を介してMEMSセンサ・パッケージのチャンバ内にポンプで送りこまれる。ある実施形態では、チャンバの内容は、埋め戻す前に最初に空にされる。他の実施形態では、チャンバを埋め戻すことは、その後封止されるパッケージの排出ポートを介して既存のガスも付勢する。
【0018】
[0024] 本願明細書において、特定の実施形態を例示し、記載してきたけれども、同じ目的を達成するために算出されるいかなる構成が、特定の例示の実施形態と置換することができることは、当業者にとって明らかであろう。本出願は、本発明のいかなる適合またはバリエーションをもカバーする。それゆえ、本発明は、特許請求の範囲およびその均等の範囲によってのみ制限されることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計サービス寿命を超える安定したQ値を備えたMEMSセンサ・パッケージを提供する方法であって、
MEMSに関する設計サービス寿命を確立するステップ(510)と、
設計サービス寿命を超えるQ値の許容可能な偏差を識別するステップ(520)と、
MEMSセンサ・パッケージの期待されるリーク・レートを識別するステップ(530)と、
期待されるリーク・レートに基づいて、設計サービス寿命を超えるQ値の許容可能な偏差内にQ値を維持する埋め戻しガス(14)および埋め戻しガス圧力を選択するステップ(540)と
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記MEMSセンサ・パッケージが、少なくとも1つのシールによって一緒に固定された複数のコンポーネント・パーツを備えたセンサボディを有し、前記少なくとも1つのシールおよびセンサボディが、前記MEMSセンサを保持する非密封シールドチャンバを形成し、
MEMSセンサ(12)を収容するMEMSセンサ・パッケージのチャンバ(15)の体積に基づいて選択され、
埋め戻しガス(14)および埋め戻しガス圧力の一方又は両方が、MEMSセンサ(12)を収容するMEMSセンサ・パッケージのチャンバ(15)の容積に基づいて選択され、
期待されるリーク・レートを識別するステップが、埋め戻しガスの分子の特徴の少なくとも一部に基づくことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Qの許容可能な偏差を識別するステップが、MEMSセンサが使用されるシステムの正確な要求または較正耐性のすくなくとも1つに基づき、
期待されるリーク・レートを識別するステップが、MEMSセンサ・パッケージの外部を取り囲むのを期待するガスの圧力および構成の少なくとも一部に基づく、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−221001(P2011−221001A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−280644(P2010−280644)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】