説明

MEMS構造用の一体化した台座マウント

【課題】より丈夫で、特に、広い温度範囲、振動応力及び重力荷重において剛性と安定性を保持することが可能なセンサを提供する。
【解決手段】 MEMSデバイスを支持するための基板を提供する。基板は、使用に際してMEMSデバイスを支持するための一体成形の台座マウントを備えた収納容器を含む。センサーを形成するために、基板はMEMSデバイスと組み合わせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーのパッケージングに関し、特に微小電子機械システム(MEMS)構造用の一体化した台座マウントに関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS構造は、自動車産業、生物医学応用、及びエレクトロニクス産業等の様々な技術分野で広く使用されている。MEMS構造は、様々な型のセンサとして使用される。MEMS構造の例としては、自動車産業においてヨーイングを検出するのに使用可能なMEMSジャイロスコープ、自動車内でエアバッグを展開させるのに使用可能なMEMS加速度計、及び適切に製造されれば自動車のタイヤ圧や血圧さえも測定可能なMEMS圧力センサがある。
MEMS構造は、通常、マイクロマシニング技術を用いてシリコン基板上に製造される機械的構造を含む。
【0003】
容積比に対して大きい表面積を備える結果として、MEMS構造は、それらが意図する機能に関連する環境パラメータに非常に敏感である。特に、最終的に故障に繋がるかもしれず、かつ出力の精度を不正確にする可能性のある熱的及び機械的な応力に、それらは非常に敏感である。
【0004】
従って、性能に悪影響を及ぼすセンサのゆがみ等の悪影響を最小化するために、MEMS構造を周囲から隔離するのが望ましい。
【0005】
センサと支持基板のそれぞれの間に柔らかい素材層を設けることが提案されている。また、この柔らかい素材の2つの層に介在型取付板を設けることができる。これらの追加層は、使用する接着剤の量の精密制御およびセンサー位置の精密制御を必要とする。
【0006】
更に、センサの性能に悪影響を及ぼす熱的及び機械的な応力を回避するために、パッケージとセンサの間に配置される対応するインタポーザから成るセンサー隔離システムが知られている。対応するインタポーザは、センサに対する移動を回避するために、パッケージ内に存在する応力を吸収する部材を含む。しかるべき場所ではんだ付けされないで、むしろ締まりばめを用いて設けられる対応するインタポーザを設けることは、センサとパッケージとの接続に用いられるはんだを精密に制御するという問題を克服することになる。
【0007】
この原理を更に発展させることで、2つの部分が締まりばめによって嵌め合わされ、センサが収容される閉じた空間ができるように協働する基板に柱を設けることによって、はんだとエポキシによる接着に関連した諸問題に代替解決案を提供する。
【0008】
センサが曝されている応力を減少させることへの上記提案の全てが、複数の協働する部品の精密な機械加工に依存している。介在型取付板を備える素材の軟質層の形を取るか否かに拘わらず、これらの部品、即ち対応するインタポーザ又は協働する基板は、全てその様な装置の製造の複雑さを増す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今日の高度に競争の激しいエレクトロニクス市場では、高品質の製品を信頼性と経済性をもって生産できることが非常に重要である。また、装置がより複雑になるのに伴って、製造に要求されることも、より複雑になり、それ故必要とする構成部品の数を増やすことは、物品の生産コストを増す可能性がある。更に、多くの製品が小型化されると、製造の一貫性を維持するために、製品の全体的な寸法の減少に従って、それぞれの部品の製造許容誤差を向上しなければならない。更にまた、より多くの部品を使用すると、含まれる全ての部品の熱的特性を整合することが、重大な挑戦課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明では、MEMSデバイスを支持するための基板を提供するものであり、基板は、MEMSデバイスを支持するための吸入孔を内部に形成した一体化した台座マウントを備える収納容器を含む。
【0011】
基板の台座部分上にMEMSデバイスを直接取り付けることによって、結果的にセンサは、より丈夫になる。特に、広い温度範囲、振動応力及び重力荷重において、センサがその剛性と安定性を保持することが可能である。
【0012】
また、部品数を減らし、それによって含まれる異なる素材の数を減らすことによって、基板と台座の一体構造に起因する低いヒステリシス効果の結果として、本発明のセンサーはまた、時間が経過しても、より高い信頼性を保有する。
【0013】
本発明の基板は、感圧センサー装置に特に有益であるが、いかなる標準MEMS構造とも利用可能である。
【0014】
台座マウントは、細長く、MEMSデバイスの断面より小さい直径を有するのが望ましい。収納容器は、セラミック又は高分子系であってもよい。
【0015】
基板とMEMSデバイスを用いて、センサを形成してもよい。センサは、センサから信号を出力するための結線を更に含んでもよい。
【0016】
また、本発明によれば、センサー製造方法が提供され、その方法は、多層技術又は成形技術を用いて基板を形成する工程と、MEMSデバイスを直接台座マウントへ接合する工程とを含む。ダイ接合は、直接接合又は接着接合であってもよい。
【0017】
本発明の方法は、必要とされる基板の正確な配置を成すために、セラミックの多層技術又は高分子成形技術のいずれかを用いる。それにより、基板への追加的な応力導入をもたらす可能性のある製造後変化を減少させることになる。両技術は、安価な三次元製造技術の十分に確立した方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を、添付図面を参照して説明する。図面において、図1は第1例のセンサの断面図を示し、図2は本発明によるセンサの第2例の断面図を示す。
以下の説明において、同一参照番号が、2つの例のそれぞれの同等な部分に用いられる。
【0019】
図1は、基板11と、MEMS構造12とを備えるセンサ10を示す。基板11は、セラミック素材又は高分子素材から形成される。セラミック素材は、シリコン又はガラスのいずれかに相当する熱膨張率を有するように調整することができる。また、セラミックは、時間が経過してもその素材の特性と熱サイクルを維持することが知られており、結果的に非常に安定した素材である。セラミック素材の例として、窒化アルミニウム(ALN)が挙げられる。高分子素材は、きわめて低コストな成形技術による安価なものであることが望ましい。高分子の例としては、射出成形されたガラス繊維、強化ナイロン、PPS、又は液晶高分子(LCP)が挙げられる。
【0020】
基板11は、その上にMEMS構造12が接着剤19を用いて接着される一体成形の台座13を備える。台座13は細長く、かつ円形断面を有するのが望ましい。当業者であれば、いかなる断面形状でも使用可能であることが分かるであろうし、また円形断面が鋭い角の数を減少させることによって応力を最小化することも分かるであろう。台座13は、一定の断面積を有するか、あるいはMEMSのダイに近い最小の断面を持つ先細り形状を持つこともできる。ダイ接合技術によって、台座の表面を金属化してもよい。
【0021】
基板11は、MEMS構造12を超えて伸長された保護部14、15を更に備える。これらの部分14、15は、MEMS構造12に閉じた環境をもたらす。更に、部分14、15は、MEMS構造12に取り付けられる結線16、17を取り付けるのに用いられる。
【0022】
図1に関連して上述した特徴に加えて、図2のセンサ10は吸入孔18を台座内部に備える。このセンサ10は、被測定物である流体がセンサ10に衝突することができるようにする吸入孔18を備える圧力センサとしての使用に適している。
【0023】
図1及び2に示したセンサ10は、いかなる標準のMEMS構造12とも互換性があり、ダイ接合工程に接着剤を使用してセンサ10で使用可能となる前に、MEMS構造12は、いかなる特定の適合処理をする必要も無い。ダイ接合工程パラメータによって、MEMSダイの裏側を直接接合するか、金属化するか、又は酸化させることが必要であるかもしれない。ガラス基板又はガラス層を含むMEMSダイでは、直接接合を直に行うことができる。
【0024】
図1及び2に示したセンサ10は、以下のように製造される。まず始めに、基板12が、セラミック素材の多層技術又は高分子素材の成形技術を用いて形成される。その後、MEMS構造が、陽極接合のような直接接合又は金属接合のいずれかを用いて台座13に接合される。代替としては、その結合は、はんだ又はエポキシ等の有機素材を使用する接着であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1例のセンサーの断面図を示す。
【図2】本発明によるセンサーの第二例の断面図を示す。
【符号の説明】
【0026】
10…センサ
11…基板
12…MEMS構造
13…台座
14,15…保護部
16,17…結線
18…吸入孔
19…接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用に際してMEMSデバイスを支持するための、吸入孔を内部に形成した一体成形の台座マウントを備える収納容器を含むことを特徴とする、MEMSデバイスを支持するための基板。
【請求項2】
前記台座マウントが細長いことを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記台座マウントが、前記MEMSデバイスの断面より小さい直径を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の基板。
【請求項4】
前記収納容器がセラミックからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板。
【請求項5】
前記収納容器が高分子素材からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の基板と、
MEMSデバイスとを含むことを特徴とするセンサー。
【請求項7】
前記センサーから信号を出力するための結線を更に含むことを特徴とする請求項6に記載のセンサー。
【請求項8】
前記MEMSデバイスが圧力センサであることを特徴とする請求項6又は7に記載のセンサー。
【請求項9】
多層技術又は成形技術を用いて基板を形成する工程と、
MEMSデバイスを直接台座マウントに接合する工程と、を含む請求項6〜8のいずれかに記載のセンサーを製造する方法。
【請求項10】
前記ダイ接合が直接接合であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ダイ接合が接着接合であることを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−253323(P2007−253323A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72947(P2007−72947)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(507090971)インフィネオン・テクノロジーズ・センソナー・アクティーゼルスカブ (3)
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES SENSONOR AS
【Fターム(参考)】