説明

NCプログラム作成方法及び作成装置

【課題】工具が工具使用限界時間を超過した状態で被加工物を加工することに起因する工具破損や加工精度の低下を確実に防ぎ、工具を工具使用限界時間まで適切に使用することを可能とするNCプログラム作成方法及びNCプログラム作成装置を提供する。
【解決手段】各加工経路に使用する工具を選択する工具選択指令と当該工具の加工経路とが記述される加工データと、工具の工具番号及び工具使用限界時間が記述される工具データとを読み込むステップと、加工データから工具選択指令を検出するステップと、検出された工具選択指令により選択される工具の加工経路から工具使用時間を算出し、工具使用時間と工具使用限界時間とを比較するステップと、工具使用時間が工具使用限界時間を越える加工経路の前に、当該工具を工具番号の異なる同一の工具と交換する工具交換指令を追記するステップとを含むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NCプログラム作成方法及び作成装置に関し、特に、NC工作機械の加工時に使用される工具の使用時間が使用限界時間を超過して加工することのないNCプログラムの作成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マシニングセンタ、NC旋盤、NCフライス盤等のNC工作機械に使用される工具は、NC工作機械に内蔵されるコンピュータの工具管理手段により管理される。工具管理手段には、NC工作機械の備える工具の種類毎の工具使用限界時間と実際に使用した工具の工具使用時間とが工具データとして記憶される。工具使用限界時間は、例えば、被加工物を加工するときの工具の回転速度及び送り速度によって設定される。工具使用時間は、被加工物の加工を制御するNCプログラムに従って工具交換が行われるときにコンピュータの制御手段から工具管理手段に出力される工具交換信号に基づいて交換前の工具の使用時間が出力される。そして、工具管理手段では、制御手段から出力される工具の使用時間と工具使用限界時間とを比較して工具の使用時間が工具使用限界時間を超過したときに工具は使用限界であると判定し、以降の加工で当該工具を使用しないように管理している。
また、NC工作機械の工具の使用限界を管理する方法には、例えば、NC工作機械の工具管理手段とは別に工具を管理するための工具管理コンピュータを設け、工具管理コンピュータとNC工作機械のコンピュータとを接続し、工具管理手段の記憶する工具データを共有する方法がある。そして、工具管理コンピュータを複数のNC工作機械に接続して各NC工作機械の工具の工具データを一括して管理し、各NC工作機械の工具の工具使用時間が工具使用限界時間を超過しないようにすることで、工具使用限界時間までの残りの工具使用時間が長い工具を有するNC工作機械には加工時間の長い加工を行わせ、残りの工具使用時間が短い工具を有するNC工作機械には加工時間の短い加工を行わせることで、複数のNC工作機械の稼動効率を向上させている。
しかしながら、工具の使用時間は、NCプログラムの工具交換指令による工具交換のときにはじめてNC工作機械のコンピュータの制御手段から工具管理手段に出力されるため、例えば、1つの加工工程に長時間を要するときには、加工工程の途中で工具の使用限界時間が来てしまい、次の工具交換指令までの間は工具の使用限界時間を超過した状態で加工することになり工具破損や加工精度の低下を招く虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−84631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するため、工具が工具使用限界時間を超過した状態で被加工物を加工することに起因する工具破損や加工精度の低下を確実に防ぎ、工具を工具使用限界時間まで適切に使用することを可能とするNCプログラム作成方法及びNCプログラム作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための方法として、異なる工具を複数備えるNC工作機械に出力されるNCプログラムの作成方法であって、各加工経路に使用する工具を選択する工具選択指令と当該工具の加工経路とが記述される加工データと、工具の工具番号及び工具使用限界時間が記述される工具データとを読み込むステップと、加工データから工具選択指令を検出するステップと、検出された工具選択指令により選択される工具の加工経路から工具使用時間を算出し、工具使用時間と工具使用限界時間とを比較するステップと、工具使用時間が工具使用限界時間を越える加工経路の前に、当該工具を工具番号の異なる同一の工具と交換する工具交換指令を追記するステップとを含むようにした。
本方法によれば、NC工作機械に出力するNCプログラムを作成する前に、加工データに記述される工具毎の加工経路から工具使用時間を算出し、工具使用時間と工具データに記述される工具使用限界時間とを比較して、工具使用時間が工具使用限界時間を越える加工経路の前に、工具使用限界時間となる工具と同一の工具で工具番号の異なる工具に工具交換する工具交換指令を追記してNCプログラムを作成することにより、加工に使用する工具が工具使用限界時間を超過して加工することを防止することができる。
また、前記課題を解決する構成として、異なる工具を複数備えるNC工作機械に出力されるNCプログラムの作成装置であって、各加工経路に使用する工具を選択する工具選択指令と当該工具の加工経路とが記述される加工データと、工具の工具番号及び工具使用限界時間が記述される工具データとを読み込む読み込み手段と、加工データから工具選択指令を検出する工具選択指令検出手段と、検出された工具選択指令により選択される工具の加工経路から工具使用時間を算出し、工具使用時間と工具使用限界時間とを比較する工具使用時間算出比較手段と、工具使用時間が工具使用限界時間を越える加工経路の前に、当該工具を工具番号の異なる同一の工具と交換する工具交換指令を追記する工具交換指令追記手段とを備える構成とした。
本構成によれば、NC工作機械に出力するNCプログラムを作成する前に、加工データに記述される工具毎の加工経路から工具使用時間を算出し、工具データに記述される工具使用限界時と比較して、工具使用時間が工具使用限界時間を越える加工経路の前に、工具使用限界時間となる工具と同一の工具で工具番号の異なる工具に工具交換する工具交換指令を追記してNCプログラムを作成することにより、加工に使用する工具が工具使用限界時間を超過して加工することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】NCプログラムを作成するための概略構成図及び装置構成の詳細ブロック図。
【図2】NCプログラム作成装置によりNCプログラムを作成するフローチャート。
【図3】加工データ及びNCプログラムの例示図。
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組合せのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1(a)は、NC工作機械30に入力されるNCプログラムを作成するための概略構成図を示し、図1(b)は、NCプログラムが作成されるまでの一例としての装置構成の詳細を示すブロック図である。以下、図1(a),(b)を用いてNCプログラムの作成について説明する。
NC工作機械30に入力されるNCプログラムは、CAD/CAM装置10から出力される加工データをNCプログラム作成装置20に入力し、NCプログラム作成装置20が加工データを変換することにより作成される。NCプログラムが入力されるNC工作機械30には、NC旋盤、NCフライス盤、マシニングセンタ等があげられる。CAD/CAM装置10は、例えば、CAD/CAMソフトウェアを実行するコンピュータであり、演算処理手段としてのCPU、記憶手段としてのROM,RAM及びHDD、通信手段としてのインターフェイスを含み、記憶手段に格納されたプログラムに基づいて動作する。CAD/CAM装置10には入力装置及び表示装置が接続される。入力装置11は、CAD/CAM装置10を利用する作業者による指示を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス等である。表示装置12は、例えばLCD等のモニタである。
【0009】
CAD装置13は、図面作成手段14としてのCADソフトウェアを備え、CADソフトウェアを実行した状態で作業者が入力装置11を操作することによって入力される所定の加工形状を数値的に変換した形状データを出力する。
【0010】
CAM装置15は、CAD装置13から出力される形状データと、入力装置11を介して作業者によって入力される工具情報と加工条件とに基づきNC工作機械30に読み込み可能な加工データを作成する。具体的には、CAM装置15は、工具情報と加工条件とに基づき加工データを作成する加工データ作成手段16と、入力された工具情報を工具データとして記憶する工具データ管理手段18と、加工データに基づいて工具使用限界時間を算出して設定する工具使用限界時間設定手段17とを備える。
工具情報は、NC工作機械の備える複数の工具の種類、工具の材質、形状、長さ、直径や所定の工具使用限界時間等を各工具毎に工具番号を付して工具データとしてCAM装置に記憶される。また、加工条件は、加工に使用するNC工作機械の種類、被加工物の固定方法及び加工に必要な治具、加工に使用する工具、加工開始位置、切削手順、工具の回転速度及び送り速度等の切削条件が加工データとしてCAM装置に記憶される。
なお、加工情報は、あらかじめ加工条件データとして作成しておきコンピュータに読み込ませるようにしても良い。
【0011】
加工データ作成手段16は、形状データと加工条件データとに基づいて、加工に使用する工具の加工経路や工具の主軸回転数や送り速度をプログラムにした加工データを作成し、NCプログラム作成装置20に出力する。
即ち、加工データ作成手段16は、図面作成手段14によって作成された形状データと、入力装置11から入力される加工条件データ及び工具データとを読み込み、形状データに基づいて加工する部位及び形状に適した工具を工具データから選択し、その工具の工具番号、加工経路、工具の送り速度、工具回転数等を自動で設定し、工具番号、加工経路、送り速度、工具回転数等の加工条件を工具毎に順番に記述することで被工作物を加工するプログラムを作成する。加工データには、加工開始位置を設定する加工開始位置指令、複数の工具から加工に使用する工具を選択し、設定する旨を指示する工具選択指令、加工経路を工具の移動方向によって設定する工具移動指令、工具を保持する主軸の回転速度及び回転方向を設定する主軸回転指令とが加工順に記述される。
加工データ作成手段16は、例えば、ある部位を加工するために工具Aという種類の工具を選択した場合、工具Aによって加工可能な部位すべてを加工経路として記述し、工具Aの素材と被加工物の素材との関係から最適な工具回転数と送り速度を自動で設定して加工データに記述する。また、工具Aの加工する部位とは異なる部位の加工に使用する工具に工具Bという種類の工具を選択した場合、工具Bによって加工可能な部位すべてを加工経路として記述し、工具Bの素材、形状と被加工物の素材との関係から最適な工具回転数と送り速度を自動で設定する。
【0012】
工具使用限界時間設定手段17は、加工データ作成手段16によって作成される加工データに基づいて、加工に使用する工具の工具使用限界時間を算出し、工具データ管理手段18に出力する。具体的には、工具使用限界時間設定手段17は、加工情報データに記述される被加工物の素材と、加工データに記述される加工に使用する工具の種類、送り速度、工具回転数とから工具の使用限界時間を設定する。
工具データ管理手段18は、CAM装置15に入力される工具情報を工具データとして記憶する。
【0013】
NCプログラム作成装置20は、例えば、CAM装置15から出力される加工データをNCプログラムに変換するためのソフトウェアを実行するコンピュータであり、演算処理手段としてのCPU、記憶手段としてのROM,RAM及びHDD、通信手段としてのインターフェイスを含み、記憶手段に格納されたプログラムに基づいて動作する。NCプログラム作成装置20には入力装置及び表示装置が接続される。入力装置20Aは、NCプログラム作成装置20を利用する作業者による指示を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス等である。表示装置20Bは、例えばLCD等のモニタである。
NCプログラム作成装置20は、CAM装置15から出力される工具データと加工データとを読み込む読み込み手段19と、加工データを変換してNCプログラムを作成するための工具選択指令検出手段21と、工具使用時間算出比較手段22と、工具交換指令追記手段23とを備える。
読み込み手段19は、CAM装置15から出力される工具データと加工データとを読み込み、記憶する。
工具選択指令検出手段21は、加工データを読み込み、加工データに記述される工具選択指令と、当該工具選択指令によって呼び出される工具番号とを検出する。
【0014】
工具使用時間算出比較手段22は、工具選択指令検出手段21によって検出された工具番号の工具の工具使用時間を算出し、算出された工具使用時間と工具データに記憶される当該工具番号の工具使用限界時間とを比較する。例えば、加工データには工具選択指令の次に主軸回転指令が記述され、次の工具選択指令までの間には複数行に亘り加工経路とともに送り速度が記述される。加工経路は、工具先端の座標と、工具の移動方向及び移動距離とを記述した工具移動指令によって表わされる。つまり、複数の工具移動指令を連続するように記述することによって加工経路全体を示し、工具移動指令に基づいて工具が移動して被加工物を加工することにより所定の形状を表現する。よって、加工データには、加工形状を案内するように順番に加工経路が連続して記述される。そこで、工具使用時間算出比較手段22では、加工データを読み込み、加工経路毎に記述される移動距離を送り速度で除して工具使用時間を算出し、加工経路毎に算出される工具使用時間を積算し、工具使用時間と工具使用限界時間とを比較する。そして、工具使用時間が工具使用限界時間を超過したときに、工具交換指令追記手段23に工具番号を出力する。
【0015】
工具交換指令追記手段23は、工具使用時間が工具使用限界時間を超過した工具番号の工具を異なる工具番号の同一の工具と交換する旨の工具交換指令を加工データに追記する。具体的には、工具使用時間が工具使用限界時間を超過したときの加工経路を示すプログラム行の前に、工具選択指令検出手段21で検出された工具と同一の工具で、工具番号の異なるものと交換するように工具交換指令を追記する。
工具使用時間が工具使用限界時間を超過するときの加工経路を示す工具移動指令の前に同一の工具と交換する工具交換指令を加工データに追記することにより、加工に使用する工具が工具使用限界時間を超過して加工することを防止できる。
【0016】
なお、工具使用時間が工具使用限界時間を超過するときに工具交換指令を追記するとして説明したが、工具使用時間が工具使用限界時間と同じときに工具交換指令を追記するようにしても良い。
また、工具交換指令の追記は、工具使用時間が工具使用限界時間を超過するときの加工経路を示すプログラム行の前に追記するとして説明したが、工具使用時間が工具使用限界時間を超過するときの加工経路を示すプログラム行の後に追記するようにしても良い。例えば、加工データに記述される加工経路を示すプログラム行毎の加工距離が微小のときには、工具使用限界時間を超過する時の加工経路を示すプログラム行の後に工具交換指令を追記することで、工具の使用限界時間をほぼ100%使用することができるので工具交換回数を減少させることができる。よって、工具交換回数が減少することにより、加工に要する時間が短縮するとともに工具の使用数が減少するので工具にかかるコストを減少させつつ生産効率を向上させることができる。
【0017】
図2は、NCプログラム作成装置20によって加工データからNCプログラムを作成するフローチャートである。NCプログラム作成装置20は、加工データ及び工具データを読み込み、処理しつつ、NCプログラムを作成する。
まず、コンピュータからなるCAM装置15によって作成された加工データと、CAM装置15の記憶する工具データとをNCプログラム作成装置20に読み込む(S101)。
次に、工具選択指令検出手段21は、読み込んだ加工データから工具選択指令を検出する(S102)。なお、以下の工程では、加工データに記述されたプログラムを順番に処理を行う。工具選択指令が検出されたときはS103に移行し、工具選択指令が検出されないときはS104に進む。
次に、工具使用時間算出比較手段22は、S102で検出された工具選択指令と、工具選択指令に記述される工具の工具番号とを記憶し、NCプログラムとして出力する(S103)。
次に、工具使用時間算出比較手段22は、加工データに記述される加工経路を一行づつ読み込み、工具の移動距離を送り速度で除して工具使用時間を算出し、算出された工具使用時間と工具データに記述される工具使用限界時間とを比較する。工具使用時間が工具使用限界時間を超過したときにはS105に移行し、工具使用時間が工具使用限界時間未満にはS102に戻る(S104)。
次に、S104において工具使用時間が工具使用限界時間を超過したときには、工具使用時間が超過したときの加工経路を示すプログラム行を工具交換指令追記手段23に出力する。工具交換指令追記手段23は、工具使用時間が超過したときの加工経路を示す加工データのプログラム行の前に、S102で検出された工具選択指令の工具番号の工具と同一の工具で工具番号の異なる工具に交換する工具交換指令を追記する(S105)。
次に、S104で読み込まれた加工データのプログラム行の次の行がプログラムの最終行PENDかどうかを判定し、最終行でなければS102に戻り、最終行PENDのときは処理を終了する。
なお、上記処理は、例えば、読み込んだ加工データをコンピュータのメモリに一端コピーし、コピーした加工データに処理を行いファイルの最終行PENDとなったときに、メモリからNCプログラムとして出力される。
【0018】
図3(a)は、加工データとして記述されるプログラムの一例を示し、図3(b)は、図3(a)に示す加工データをNCプログラム作成装置20により変換して作成されたNCプログラムを示す。以下、図3(a),(b)を用いてNCプログラム作成装置20によるNCプログラムの作成方法について説明する。なお、図3(a)に示す加工データのプログラムは、工具使用限界時間が90分の工具番号T1017と工具番号T1018で表わされる2種類の工具による1つの被加工物に対して加工A,加工B,加工Cの異なる加工の加工手順を示したものである。また、加工データにおいて、工具選択指令はプログラム行2A,2B,2Cの“M06T1017”,“M06T1018”のように記述される。“M06T1017”の“M06”は工具選択指令を示し、“T1017”,“T1018”は選択された工具の工具番号を示している。
NCプログラム作成装置20は、CAD/CAM装置10と接続され、CAM装置15から出力される加工データと工具データとが入力される。
工具選択指令検出手段21は、加工データをプログラム行の若い順に読み込み、まず、最初に加工Aを実行するプログラム行2Aの工具選択指令と工具番号とが記述された“M06T1017”を検出し、工具使用時間算出比較手段22に工具選択指令の検出を出力する。
次に、工具使用時間算出比較手段22は、加工データのプログラム行2A以下を読み込み、加工経路を記述した各プログラム行毎に工具使用時間を算出し、算出した工具使用時間を積算したものと工具使用限界時間と比較する。なお、加工経路に関する具体的な記述はプログラム行12A〜プログラム行1220Aであるが、プログラム行16A〜プログラム行1216Aまでの間の加工経路の記述は省略する。工具使用時間算出比較手段22は、プログラム行12A〜プログラム行1220Aの工具番号“T1017”の工具使用時間を算出する。本例では、プログラム行12A〜プログラム行1220Aにおいて工具番号T1017の工具使用時間、換言すると、工具番号T1017を使用した積算時間は約75分と算出される。そして、工具使用時間算出比較手段22は、工具番号“T1017”の工具使用時間が加工使用限界時間に達していないため次の加工に使用することができると判定し、工具番号“T1017”の工具使用時間を記憶する。
次に、工具選択指令検出手段21は、加工Bのプログラム行2Bの工具選択指令と工具番号とが記述された“M06T1017”を検出する。つまり、加工Aで使用した工具番号の工具である。よって、工具選択指令検出手段21は、“M06T1017”の検出を工具使用時間算出比較手段22に出力する。なお、加工データにおける加工Bの加工経路を示すプログラム行12Bからプログラム行520Bまでは、約30分の加工が記述されているものとする。
次に、工具使用時間算出比較手段22は、再び検出された“M06T1017”の工具使用時間が工具使用限界時間を超過していないため、加工Bにおいて検出された工具選択指令を加工データから削除する。そして、工具使用時間算出比較手段22は、加工Bの加工経路を示すプログラム行12B以下を順に読み込み、プログラム行毎に工具使用時間を算出し、算出した工具使用時間を積算したものと、工具番号“T1017”の工具使用限界時間とを比較する。具体的には、加工Aで最後に算出された工具使用時間に、加工Bの加工経路毎に算出される工具使用時間を加算し、加算された工具使用時間と工具使用限界時間とを比較する。
そして、プログラム行276Bで算出された工具使用時間が工具使用限界時間を超過すると、プログラム行276Bにおいて工具番号“T1017”の工具使用時間が超過した工具番号を工具交換指令追記手段23に出力する。
工具交換指令追記手段23は、工具使用時間算出比較手段22から出力された加工経路を示す工具移動指令の前に、加工に使用した工具と同一の工具番号の異なる工具に交換する工具交換指令を加工データに追記する。なお、工具データには、異なる工具番号で同一の工具である工具番号T1015と工具番号T1017とが記述されている。そこで、工具交換指令追記手段23は、工具データを参照して工具番号“T1017”と同一の工具の工具番号“T1015”に交換する工具交換指令“M06T1015”を加工Bのプログラム行276Bの前に追記する。
次に、工具使用時間算出比較手段22は、加工Bのプログラム行276Bの加工経路から加工Bの加工が終了するプログラム行520Bまでの工具番号“T1015”の工具使用時間を算出して記憶する。
次に、工具選択指令検出手段21は、加工Cのプログラム行2Cに記述される工具選択指令“M06T1018”を検出し、工具使用時間算出比較手段22に“M06T1018”の検出を出力する。
次に、工具使用時間算出比較手段22では、加工Cの加工位置を示すプログラム行を順次読み込み、加工Cの各加工経路における工具使用時間を算出して工具番号“T1018”の工具使用限界時間とを比較する。
NCプログラム作成装置20では、上記の手順を加工データの最終行に記述されるプログラム終了を示す例えば“PEND”を検出するまで繰り返し行い加工データに工具交換指令を追記してNCプログラムとして出力する。
【0019】
以上、本発明のNCプログラム作成方法によれば、NC工作機械に入力されるNCプログラムを作成するときに、加工に使用する工具の工具使用時間をあらかじめ算出し、工具使用時間が工具使用限界時間を超過するときには、工具使用限界時間を超過する工具と同一の工具で異なる工具番号の工具に交換するようにNCプログラムを作成するので、工具使用限界時間を超過して加工することを防止することができる。また、加工に使用する工具を工具使用限界時間いっぱいまで使用することができるので工具にかかる費用を抑制することができる。
なお、上記例では、1つの工具に対する工具交換指令の追記を示したが、NCプログラム作成装置20は、読み込んだ加工データから工具選択指令検出手段により検出されるすべての工具のうち工具使用限界時間を超過する工具について工具交換指令を追記することができる。
【0020】
上記実施形態において、CAD/CAM装置とNCプログラム作成装置とを異なるコンピュータにより構成したが、CAD/CAM装置とNCプログラム作成装置とを1つのコンピュータにより構成しても良い。
【0021】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0022】
10 CAD/CAM装置、11 入力装置、12 表示装置、13 CAD装置、
14 図面作成手段、15 CAM装置、16 加工データ作成手段、
17 工具使用限界時間設定手段、18 工具データ管理手段、19 読み込み手段、
20 NCプログラム作成装置、21 工具選択指令検出手段、
22 工具使用時間算出比較手段、23 工具交換指令追記手段、30 NC工作機械。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる工具を複数備えるNC工作機械に出力されるNCプログラムの作成方法であって、
各加工経路に使用する工具を選択する工具選択指令と当該工具の加工経路とが記述される加工データと、前記工具の工具番号及び工具使用限界時間が記述される工具データとを読み込むステップと、
前記加工データから工具選択指令を検出するステップと、
検出された工具選択指令により選択される工具の加工経路から工具使用時間を算出し、工具使用時間と工具使用限界時間とを比較するステップと、
工具使用時間が工具使用限界時間を越える加工経路の前に、当該工具を工具番号の異なる同一の工具と交換する工具交換指令を追記するステップとを含むことを特徴とするNCプログラム作成方法。
【請求項2】
異なる工具を複数備えるNC工作機械に出力されるNCプログラムの作成装置であって、
各加工経路に使用する工具を選択する工具選択指令と当該工具の加工経路とが記述される加工データと、前記工具の工具番号及び工具使用限界時間が記述される工具データとを読み込む読み込み手段と、
前記加工データから工具選択指令を検出する工具選択指令検出手段と、
検出された工具選択指令により選択される工具の加工経路から工具使用時間を算出し、工具使用時間と工具使用限界時間とを比較する工具使用時間算出比較手段と、
工具使用時間が工具使用限界時間を越える加工経路の前に、当該工具を工具番号の異なる同一の工具と交換する工具交換指令を追記する工具交換指令追記手段とを備えることを特徴とするNCプログラム作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−103973(P2012−103973A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253022(P2010−253022)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】