説明

NO(一酸化窒素)産生抑制剤

【課題】 NO(一酸化窒素)産生抑制作用を有する組成物を提供し、ひいては該組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品を提供することにある。
【解決手段】 zonarol、farnesylhydroquinone、シワヤハズの成分を含有することを特徴とするNO(一酸化窒素)産生抑制組成物、及び該組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNO(一酸化窒素)産生抑制を目的とした組成物、及び該組成物を含む飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
NO(一酸化窒素)産生を抑制する飲食品は、関節炎(関節リウマチ、変性性骨関節炎など)、腫脹、アレルギー性鼻炎、花粉症、皮膚などの炎症性疾患に対しての治療に有効である。NO産生抑制剤として医薬品ではステロイド性抗炎症薬(ベタメタゾン、デキサメタゾン、プレトニゾロン等)などが知られているが、いずれも副作用がある。食品ではグルコサミン、MSM(メチルサルフォニルメタン)、アスタキサンチン、甜茶、デビルズクロー、カテキンなどが知られているが、より効果の高い新しい素材が求められている。
【0003】
zonarolは表1に示される物質である。本発明以前の時点で、zonarolがNO産生を抑制するという報告はまったく無い。
【表1】

【0004】
farnesylhydroquinoneは表2に示される物質である。本発明以前の時点で、farnesylhydroquinoneがNO産生を抑制するという報告はまったく無い。
【表2】

【0005】
シワヤハズ(学名 Dictyopteris undulata)はアミジグサ科の褐藻である。本発明以前の時点で、シワヤハズがNO産生を抑制するという報告はまったく無い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、NO産生抑制作用を有する組成物を提供し、ひいては該組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、zonarol、farnesylhydroquinoneに顕著なNO産生抑制作用があることを見出した。すなわち本発明は、以下の構成を有する。
(1)zonarolを含有することを特徴とするNO産生抑制組成物。
(2)farnesylhydroquinoneを含有することを特徴とするNO産生 抑制組成物。
(3)上記(1)(2)に記載の組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品 。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、zonarol、farnesylhydroquinoneを含有することを特徴とするNO産生抑制組成物、及び該組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に関わるzonarol、farnesylhydroquinoneは、合成物または天然抽出物からの精製により得たものを用いてもよく、これらを含む天然抽出物を用いることもできる。これらを含む天然物の例としてはシワヤハズが挙げられる。
【0010】
本発明に関わるNO産生抑制剤を製造するには、上記の方法で製造したzonarol、farnesylhydroquinone、またはシワヤハズの成分を用いることができ、常法に従って公知の医薬用無毒性担体と組み合わせて製剤化すればよい。本発明に関わる抗炎症剤は、種々の剤型での投与が可能であり、例えば、経口投与剤としては錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳化剤等の液剤、凍結乾燥剤等があげられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、でんぷん、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルでんぷん、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤等の慣用の添加剤を適宜添加することができる。本発明に関わる抗炎症剤において、zonarol、farnesylhydroquinone、シワヤハズ成分の投与量は、患者の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態等により、適宜選択、決定されるが、例えば、一日当たり0.01−100g/kg体重程度とされ、一日数回に分けて投与してもよい。
【0011】
本発明に関わるzonarol、farnesylhydroquinone、シワヤハズの成分は、特定保健用食品、栄養機能食品、又は健康食品等として用いることができる。機能性食品としては、例えば、zonarol、farnesylhydroquinone、シワヤハズの成分に適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した状態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、ペースト状等に形成したものを用いることができる。この飲食品は、そのまま食用に供してもよく、また種々の食品(例えばハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、パン、バター、粉乳、菓子など)に添加して使用したり、水、酒類、果汁、牛乳、清涼飲料水等の飲物に添加して使用してもよい。かかる食品の形態における本発明のシワヤハズの成分の摂取量は、年齢、体重、症状、疾患の程度、食品の形態等により適宜選択・決定されるが、例えば、一日当たり0.01−100g/kg体重程度とされ、一日数回に分けて投与してもよい。
【実施例】
【0012】
以下に本発明をより詳細に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0013】
実施例1 シワヤハズメタノール抽出物のNO(一酸化窒素)産生抑制作用
被験試料としてシワヤハズのメタノール抽出物を用いた。シワヤハズの粗切物(100g)を10倍量のメタノールに一日浸漬し、減圧乾固した結果、1.5gの抽出物を得た。96Well plateにRAW264.7細胞を2×105cell/well(100μl)とシワヤハズメタノール抽出物とLPS(1μg/ml)を含むメディウム(100μl)を加えて16〜24時間培養した。培養後、測定用プレートに培養上澄(100μl)を回収し、Griess試薬(1%sulfanilamide、0.1%N−naphthylenediamine・2HCl in 5%HPO)を100μl加え、10分間程度放置後にプレートリーダーにてOD550nmを測定した。NaNOの標準液のODを同時に測定し懸稜線を作成、メディウム中のNOを測定した。LPSのみを加えたRAW264.7細胞(コントロール)のNO産生量を100%とした。それぞれの値は平均値を示す。その結果を表3に示す。
【表3】

【0014】
この結果よりシワヤハズ抽出物はRAW264.7細胞からのNO産生を抑制することが示された。
【0015】
実施例2 シワヤハズメタノール抽出物の抗炎症作用
実施例1で用いたシワヤハズメタノール抽出物を被験試料として用いた。9週齢の雄ddYマウスの両後ろ肢足蹠の容積と厚さを測定し(0時間の測定値)、コーン油で懸濁したシワヤハズメタノール抽出物(1000mg/kg)を経口投与した。コントロールとしてコーン油のみを経口投与した。1時間後、右後ろ肢足蹠皮下へ生理食塩水で溶解した1%カラゲニンを50μl、左後ろ肢足蹠皮下へ生理食塩水を50μl注射投与した。注射の2時間後、4時間後に両後ろ肢の容積と厚さを測定した。それぞれの値は平均値を示す。有意差検定はStudentのT−testによって行った。*、**、***はそれぞれコントロールに対しp<0.05、p<0.01、p<0.005を示す。その結果を表4に示す。
【表4】

【0016】
この結果より、シワヤハズ抽出物はマウスのカラゲニン誘発浮腫形成を有意に抑制することが明らかとなった。
【0017】
実施例3 zonarol、farnesylhydroquinoneのNO(一酸化窒素)産生抑制作用
被験試料としてシワヤハズから単離したzonarol、farnesylhydroquinoneを用いた。96Well plateにRAW264.7細胞を2×105cell/well(100μl)とzonarolがfarnesylhydroquinoneとLPS(1μg/ml)を含むメディウム(100μl)を加えて16〜24時間培養した。培養後、測定用プレートに培養上澄(100μl)を回収し、Griess試薬(1%sulfanilamide、0.1%N−naphthylenediamine・2HCl in 5%HPO)を100μl加え、10分間程度放置後にプレートリーダーにてOD550nmを測定した。NaNOの標準液のODを同時に測定し懸稜線を作成、メディウム中のNOを測定した。LPSのみを加えたRAW264.7細胞(コントロール)のNO産生量を100%とした。それぞれの値は平均値を示す。その結果を表5に表す。
【表5】

【0018】
この結果よりzonarol、farnesylhydroquinoneはRAW264.7細胞からのNO産生を抑制することが示された。
【0019】
実施例4 zonarol、farnesylhydroquinoneの抗炎症作用
実施例3で用いたzonarol、farnesylhydroquinoneを被験試料として用いた。9週齢の雄ddYマウスの両後ろ肢足蹠の容積と厚さを測定し(0時間の測定値)、蒸留水で懸濁したzonarolかfarnesylhydroquinone(62.5mg/kg)をそれぞれ経口投与した。コントロールとして蒸留水のみを経口投与した。1時間後、右後ろ肢足蹠皮下へ生理食塩水で溶解した1%カラゲニンを50μl、左後ろ肢足踏皮下へ生理食塩水を50μl注射投与した。注射の2時間後、4時間後に両後ろ肢の容積と厚さを測定した。それぞれの値は平均値を示す。有意差検定はStudentのT−testによって行った。*、**、***はそれぞれコントロールに対しp<0.05、p<0.01、p<0.005を示す。その結果を表6に示す。
【表6】

【0020】
この結果より、zonarol、farnesylhydroquinoneはマウスのカラゲニン誘発浮腫形成を抑制することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明により、シワヤハズの成分、zonarol、farnesylhydroquinoneを含有することを特徴とするNO産生抑制組成物及び該組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シワヤハズの成分を含有することを特徴とするNO(一酸化窒素)産生組成物、または組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品。
【請求項2】
zonarolを含有することを特徴とするNO(一酸化窒素)産生組成物、または組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品。
【請求項3】
farnesylhydroquinoneを含有することを特徴とするNO(一酸化窒素)産生組成物、または組成物を含有する飲食品、動物飼料、化粧品又は医薬品。

【公開番号】特開2010−100598(P2010−100598A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292776(P2008−292776)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(300076688)有限会社湘南予防医科学研究所 (54)
【Fターム(参考)】