説明

PARP−1の阻害剤としてのフタラジノン誘導体

式(I):


[式中、Rは縮合シクロヘキセン環上の1以上の任意の置換基を表し;XはNRXまたはCRXRYであってもよく;もしX=NRXであれば、nは1または2であり、もしX=CRXRYであれば、nは1であり;もしX=NRXであれば、RX はH、必要に応じて置換されたC1-20アルキル、必要に応じて置換されたC5-20アリール、必要に応じて置換されたC3-20ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたチオアミド、必要に応じて置換されたエステル、必要に応じて置換されたアシル、および必要に応じて置換されたスルホニル基からなる群より選択され;もしX=CRXRYであれば、RXはH、必要に応じて置換されたC1-20アルキル、必要に応じて置換されたC5-20アリール、必要に応じて置換されたC3-20ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたチオアミド、必要に応じて置換されたスルホンアミノ、必要に応じて置換されたエーテル、必要に応じて置換されたエステル、必要に応じて置換されたアシル、必要に応じて置換されたアシルアミドおよび必要に応じて置換されたスルホニル基からなる群より選択され;およびRYはH、ヒドロキシ、必要に応じて置換されたアミノから選択されるか、またはRXとRYは一緒に必要に応じて置換されたスピロ-C3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル基を形成してもよく;RC1とRC2は両方とも水素であるか、またはXがCRXRYである場合、RC1、RC2、RXおよびRYはそれらが結合している炭素原子と一緒に、必要に応じて置換された縮合芳香環を形成してもよく;そしてR1はHとハロから選択される]の化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフタラジノン誘導体、およびその医薬としての使用に関する。特に、本発明は、酵素ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ-1の活性を阻害するためのこれらの化合物の使用に関する。この酵素はポリ(ADP-リボース)シンターゼおよびポリADP-リボシルトランスフェラーゼとしても知られ、一般にPARP-1と呼ばれている。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の酵素PARP-1(113kDaのマルチドメインタンパク質)は、DNA一本鎖または二本鎖の切断部を認識してそれと迅速に結合する能力により、DNA損傷のシグナル伝達に関わるとされている(D'Amoursら, Biochem. J., 342, 249-268 (1999))。
【0003】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼのファミリーには現在約18種のタンパク質が含まれ、それらはすべてその触媒ドメインがある特定のレベルの相同性を示すが、それらの細胞機能は異なっている(Ameら, Bioessays., 26(8), 882-893 (2004))。このファミリーのうちで、DNA鎖切断部の発生によりその触媒活性が刺激されるのは今のところPARP-1(創設メンバー)とPARP-2のみであり、そのためこれらはファミリー中でも独特である。
【0004】
今や、PARP-1は、遺伝子増幅、細胞分裂、分化、アポトーシス、DNA塩基切除修復ならびにテロメアの長さおよび染色体の安定性に及ぼす影響を含めて、種々のDNA関連機能に関わることが知られている(d'Adda di Fagagnaら, Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999))。
【0005】
PARP-1がDNA修復および他のプロセスをモジュレートする機構に関する研究から、細胞核内でのポリ(ADP-リボース)鎖の形成におけるその重要性が明らかにされた(Althaus, F.R.およびRichter, C., ADP-Ribosylation of Proteins: Enzymology and Biological Significance, Springer-Verlag, Berlin (1987))。DNAと結合した、活性化PARP-1は、NADを利用して、様々な核の標的タンパク質(トポイソメラーゼ、ヒストンおよびPARPそのものを含む)上でポリ(ADP-リボース)を合成する(Rhunら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 245, 1-10 (1998))。
【0006】
ポリ(ADP-リボシル)化はまた、悪性形質転換と関連している。例えば、PARP-1活性はSV40の形質転換された繊維芽細胞の単離された核においてより高く、また白血病細胞および結腸癌細胞は両方とも、対応する正常な白血球および結腸粘膜より高い酵素活性を示す(Miwaら, Arch. Biochem. Biophys., 181, 313-321 (1977);Burzioら, Proc. Soc. Exp. Bioi. Med., 149, 933-938 (1975);およびHiraiら, Cancer Res., 43, 3441-3446 (1983))。さらに最近、悪性の前立腺腫瘍において、良性の前立腺細胞に比べて著しく増大したレベルの活性PARP(主にPARP-1)がより高レベルの遺伝的不安定性と関連していることが確認されている(Mcnealyら, Anticancer Res., 23, 1473-1478 (2003))。
【0007】
DNA修復におけるポリ(ADP-リボシル)化の機能的な役割を明らかにするために、数種の低分子量のPARP-1阻害剤が使用された。アルキル化剤で処理した細胞では、PARPの阻害がDNA鎖切断の顕著な増加、および細胞の死滅をもたらす(Durkaczら, Nature, 283, 593-596 (1980);Berger, N.A., Radiation Research, 101, 4-14 (1985))。
【0008】
その後、かかる阻害剤は、損傷(致死的でありうる)の修復を抑制することにより、放射線応答の効果を増強することが示された(Ben-Hurら, British Journal of Cancer, 49 (Suppl. VI)、34-42 (1984);Schlickerら, Int. J. Radiat. Bioi., 75、91-100 (1999))。PARP阻害剤は、低酸素性腫瘍細胞を放射線感受性にするのに効果的であると報告されている(US 5,032,617;US 5,215,738およびUS 5,041,653)。ある特定の腫瘍細胞株では、PARP-1(およびPARP-2)活性の化学的阻害はまた、ごく低線量の放射線に著しく感受性となることと関連している(Chalmers, Clin. Oncol., 16(1), 29-39 (2004))。
【0009】
さらに、PARP-1ノックアウト(PARP-/-)動物は、アルキル化剤およびγ線照射に応答してゲノムの不安定性を示す(Wangら, Genes Dev., 9, 509-520 (1995);Menissier de Murciaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 7303-7307 (1997))。さらに最近のデータは、PARP-1およびPARP-2がゲノム安定性の維持において重複する機能と非重複性の機能の両方を有することを示しており、これらが両方とも興味深い標的となる(Menissier de Murciaら, EMBO. J., 22(9), 2255-2263 (2003))。
【0010】
PARP阻害はまた最近、抗血管形成効果を有することが報じられている。その場合、HUVEC細胞におけるVEGFおよび塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)誘発性増殖、遊走および管形成の、用量に応じた低減が報じられている(Rajeshら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 350, 1056-1062 (2006))。
【0011】
PARP-1の役割は、ある特定の血管疾患、敗血症性ショック、虚血性障害および神経毒性においても実証されている(Cantoniら, Biochim. Biophys. Acta, 1014、1-7 (1989)、Szaboら, J. Clin. Invest., 100, 723-735 (1997))。DNAの鎖切断(これはその後PARP-1により認識される)をもたらす酸素ラジカルDNA損傷は、PARP-1阻害剤研究が示すように、かかる疾患状態の主な寄与因子である(Cosiら, J. Neurosci. Res., 39, 38-46 (1994);Saidら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 93, 4688-4692 (1996))。さらに最近、PARPが出血性ショックの発病(Liaudetら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 97(3)、10203-10208 (2000))、黄斑変性症(AMD)および色素性網膜炎における眼(眼球)に関係する酸化障害(Paquet-Durand et al., J. Neuroscience, 27(38), 10311-10319 (2007))、ならびに肺、心および腎のような器官の移植拒絶(O’Valleら, Transplant. Proc., 39(7), 2099-2101 (2007))において、ある役割を果たすことが実証されている。さらに、PARP阻害剤による治療は膵炎のような急性疾患を減弱することが示されていて、それはPARPが役割を果たす機構により生起する肝および肺障害に関連がある(Motaら, Br. J. Pharmacol., 151(7), 998-1005 (2007))。
【0012】
哺乳動物細胞への効率的なレトロウイルス感染がPARP-1活性の阻害により遮断されることも実証された。組換えレトロウイルスベクター感染のかかる阻害は、種々の異なる細胞型において生じることが示された(Gakenら, J. Virology, 70(6), 3992-4000 (1996))。こうして、PARP-1の阻害剤が抗ウイルス療法および癌治療に使用するために開発されている(WO 91/18591)。
【0013】
さらに、PARP-1阻害は、ヒト繊維芽細胞(RattanおよびClark, Biochem. Biophys. Res. Comm., 201(2)、665-672 (1994))における老化特性およびアテローム性動脈硬化症などの加齢に関係する疾患(Hansら, Cardiovasc. Res., (Jan 31, 2008))の発症を遅延させると推測されている。このことはPARPがテロメア機能の制御において果たす役割と関連している可能性がある(d'Adda di Fagagnaら, Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999))。このことはPARPがテロメア機能の制御において果たす役割と関連している可能性がある(d'Adda di Fagagnaら, Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999))。
【0014】
PARP阻害剤はまた、炎症性腸疾患(Szabo C., "Role of poly(ADP-ribose) Polymerase Activation in the Pathogenesis of Shock and Inflammation(ポリ(ADP-リボース)ポリマー活性化のショックおよび炎症の病原性における役割)", In PARP as a Therapeutic Target; J. Zhang編, 2002、 CRC Pressより; 169-204)、潰瘍性大腸炎(Zingarelli, Bら, Immunology, 113(4), 509-517 (2004))およびクローン病(Jijon, H.B.ら, Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 279, G641-G651 (2000))の治療に好適であると考えられている。
【0015】
本発明者らの何人かは以前に、PARP阻害剤として作用する1(2H)-フタラジノン化合物の一群を記載している(WO 2004/080976)。これらの化合物は、一般式:
【化1】

【0016】
[式中、AとBは一緒に、必要に応じて置換された縮合芳香環を表し;
XはNRXまたはCRXRYであってもよく;
もしX=NRXであれば、nは1または2であり、もしX=CRXRYであれば、nは1であり;
RXはH、必要に応じて置換されたC1-20アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリル、アミド、チオアミド、スルホンアミノ、エステル、アシル、およびスルホニル基からなる群より選択され;
RYはH、ヒドロキシ、アミノから選択されるか;
またはRXとRYは一緒にスピロ-C3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル基を形成してもよく;
RC1とRC2は両方とも水素であるか、またはXがCRXRYである場合、RC1、RC2、RXおよびRYはそれらが結合している炭素原子と一緒に、必要に応じて置換された縮合芳香環を形成してもよく;そして
R1はHとハロから選択される]
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】US 5,032,617
【特許文献2】US 5,215,738
【特許文献3】US 5,041,653
【特許文献4】WO 91/18591
【特許文献5】WO 2004/080976
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】D'Amoursら, Biochem. J., 342, 249-268 (1999)
【非特許文献2】Ameら, Bioessays., 26(8), 882-893 (2004)
【非特許文献3】d'Adda di Fagagnaら, Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999)
【非特許文献4】Althaus, F.R.およびRichter, C., ADP-Ribosylation of Proteins: Enzymology and Biological Significance, Springer-Verlag, Berlin (1987)
【非特許文献5】Rhunら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 245, 1-10 (1998)
【非特許文献6】Miwaら, Arch. Biochem. Biophys., 181, 313-321 (1977)
【非特許文献7】Burzioら, Proc. Soc. Exp. Bioi. Med., 149, 933-938 (1975)
【非特許文献8】Hiraiら, Cancer Res., 43, 3441-3446 (1983)
【非特許文献9】Mcnealyら, Anticancer Res., 23, 1473-1478 (2003)
【非特許文献10】Durkaczら, Nature, 283, 593-596 (1980)
【非特許文献11】Berger, N.A., Radiation Research, 101, 4-14 (1985)
【非特許文献12】Ben-Hurら, British Journal of Cancer, 49 (Suppl. VI)、34-42 (1984)
【非特許文献13】Schlickerら, Int. J. Radiat. Bioi., 75、91-100 (1999)
【非特許文献14】Chalmers, Clin. Oncol., 16(1), 29-39 (2004)
【非特許文献15】Wangら, Genes Dev., 9, 509-520 (1995)
【非特許文献16】Menissier de Murciaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 7303-7307 (1997)
【非特許文献17】Menissier de Murciaら, EMBO. J., 22(9), 2255-2263 (2003)
【非特許文献18】Rajeshら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 350, 1056-1062 (2006)
【非特許文献19】Cantoniら, Biochim. Biophys. Acta, 1014、1-7 (1989)
【非特許文献20】Szaboら, J. Clin. Invest., 100, 723-735 (1997)
【非特許文献21】Cosiら, J. Neurosci. Res., 39, 38-46 (1994)
【非特許文献22】Saidら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 93, 4688-4692 (1996)
【非特許文献23】Liaudetら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 97(3)、10203-10208 (2000)
【非特許文献24】Paquet-Durand et al., J. Neuroscience, 27(38), 10311-10319 (2007)
【非特許文献25】O’Valleら, Transplant. Proc., 39(7), 2099-2101 (2007)
【非特許文献26】Motaら, Br. J. Pharmacol., 151(7), 998-1005 (2007)
【非特許文献27】Gakenら, J. Virology, 70(6), 3992-4000 (1996)
【非特許文献28】RattanおよびClark, Biochem. Biophys. Res. Comm., 201(2)、665-672 (1994)
【非特許文献29】Hansら, Cardiovasc. Res., (Jan 31, 2008)
【非特許文献30】d'Adda di Fagagnaら, Nature Gen., 23(1), 76-80 (1999)
【非特許文献31】Szabo C., "Role of poly(ADP-ribose) Polymerase Activation in the Pathogenesis of Shock and Inflammation(ポリ(ADP-リボース)ポリマー活性化のショックおよび炎症の病原性における役割)", In PARP as a Therapeutic Target; J. Zhang編, 2002、 CRC Pressより; 169-204
【非特許文献32】Zingarelli, Bら, Immunology, 113(4), 509-517 (2004)
【非特許文献33】Jijon, H.B.ら, Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 279, G641-G651 (2000)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは今回、前記化合物の-A-B-により表される縮合芳香環が縮合シクロヘキセン環により置換えられた場合、その化合物が、PARP活性の阻害のレベルおよび/または放射線療法および種々の化学療法に対する腫瘍細胞の感受性の増強作用に驚くべき増加を示し、ならびに/あるいはその化合物の溶解度(水媒体および/またはリン酸緩衝溶液の両方において)の驚くべき増加を示し、溶解度の向上は、静脈注射経路による投与のため、または小児用の経口製剤(例えば液体および小型錠剤の形態)のための本化合物の製剤に有用でありうることを見出した。本発明の化合物の経口バイオアベイラビリティーは高めうる。本化合物はまた細胞におけるMDR1の作用に対して、より低感受性でありうる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
従って、本発明の第1の態様は、式(I):
【化2】

【0021】
[式中、Rは縮合シクロヘキセン環上の1以上の任意の置換基を表し;
XはNRXまたはCRXRYであってもよく;
もしX=NRXであればnは1または2であり、もしX=CRXRYであればnは1であり;
もしX=NRXであれば、RXはH、必要に応じて置換されたC1-20アルキル、必要に応じて置換されたC5-20アリール、必要に応じて置換されたC3-20ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたチオアミド、必要に応じて置換されたエステル、必要に応じて置換されたアシル、および必要に応じて置換されたスルホニル基からなる群より選択され;
もしX=CRXRYであれば、RXはH、必要に応じて置換されたC1-20アルキル、必要に応じて置換されたC5-20アリール、必要に応じて置換されたC3-20ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたチオアミド、必要に応じて置換されたスルホンアミノ、必要に応じて置換されたエーテル、必要に応じて置換されたエステル、必要に応じて置換されたアシル、必要に応じて置換されたアシルアミドおよび必要に応じて置換されたスルホニル基からなる群より選択され;およびRYはH、ヒドロキシ、必要に応じて置換されたアミノから選択されるか、またはRXとRYは一緒に必要に応じて置換されたスピロ-C3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル基を形成してもよく;
RC1とRC2は両方とも水素であるか、またはXがCRXRYである場合、RC1、RC2、RXおよびRYはそれらが結合している炭素原子と一緒に、必要に応じて置換された縮合芳香環を形成してもよく;そして
R1はHとハロから選択される]の化合物を提供する。
【0022】
従って、もしXがCRXRYであれば、本発明の化合物は式(Ia):
【化3】

である。
【0023】
もしXがNRXであり、かつnが1であれば、本発明の化合物は式(Ib):
【化4】

【0024】
もしXがNRXであり、かつnが2であれば、本発明の化合物は式(Ic):
【化5】

である。
【0025】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の化合物および製薬上許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
本発明の第3の態様は、ヒトまたは動物の治療方法における、第1の態様の化合物の使用を提供する。
【0027】
本発明の第4の態様は、医薬の調製における本発明の第1の態様で定義した化合物の使用であって、前記医薬が
(a) 細胞性PARP(PARP-1および/またはPARP-2)の活性を阻害することによりポリ(ADP-リボース)鎖形成を妨げるための;
(b) 次の疾患:血管疾患;敗血症性ショック;脳および心血管の両方の虚血性障害;脳および心血管の両方の再灌流障害;神経毒性(脳卒中およびパーキンソン病のための急性および慢性治療を含む);出血性ショック;眼に関係する酸化的障害、移植拒絶;関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎およびクローン病のような炎症性疾患;多発性硬化症;糖尿病の二次作用の治療、ならびに心血管手術後の細胞毒性;膵炎;アテローム性動脈硬化症を治療するための;またはPARPの活性の阻害により改善される疾患の急性治療のための;
(c) 癌治療におけるまたは電離放射線もしくは化学治療薬を用いた治療のために腫瘍細胞の感受性を増強するための補助剤として使用のための
医薬である前記使用を提供する。
【0028】
特に、本発明の第1の態様で定義した化合物は、抗癌併用療法において(または補助剤として)、アルキル化剤、例えばメタンスルホン酸メチル(MMS)、テモゾロミドおよびダカルバジン(DTIC)と共に、またトポイソメラーゼ-1阻害剤、例えばトポテカン、イリノテカン、ルビテカン、エキサテカン、ルルトテカン、ギメテカン、ジフロモテカン(ホモカンプトセシン類);ならびに7-置換型非シラテカン;7-シリルカンプトセシン、BNP 1350;および非カンプトセシン型トポイソメラーゼ-I阻害剤、例えばインドロカルバゾール、また二重トポイソメラーゼ-IおよびII阻害剤、例えばベンゾフェナジン、XR 11576/MLN 576およびベンゾピリドインドールと共に使用することができる。かかる組合せは、その特定の薬剤の好ましい投与方法に応じて、例えば静注調製物としてまたは経口投与により投与することができる。
【0029】
本発明の他のさらなる態様は、治療を必要とする被験体に、治療に有効な量の第1の態様で定義した化合物を好ましくは医薬組成物の形態で投与するステップを含む、PARPの阻害により改善される疾患の治療を提供し、また、治療を必要とする被験体に、治療に有効な量の第1の態様で定義した化合物を好ましくは医薬組成物の形態で、放射線療法(電離放射線)または化学治療薬と同時にまたは逐次的に、投与するステップを含む癌の治療を提供する。
【0030】
本発明のさらなる態様において、本発明の化合物は、相同組換え(HR)依存性DNA二本鎖切断(DSB)修復活性に欠陥がある癌を治療するための医薬の製造において、またはHR依存性DNA DSB修復活性に欠陥がある癌を有する患者に治療上有効な量の本化合物を投与するステップを含む、前記患者の治療において、使用することができる。
【0031】
HR依存性DNA DSB修復経路は、相同的な機構を介してDNA中の二本鎖切断(DSB)を修復して、連続的なDNA二重らせんを再形成する(K.K. KhannaおよびS.P. Jackson, Nat. Genet. 27(3): 247-254 (2001))。HR依存性DNADSB修復経路の成分としては、限定されるものでないが、ATM(NM_000051)、RAD51(NM_002875)、RAD51L1(NM_002877)、RAD51C(NM_002876)、RAD51L3(NM_002878)、DMC1(NM_007068)、XRCC2(NM_005431)、XRCC3(NM_005432)、RAD52(NM_002879)、RAD54L(NM_003579)、RAD54B(NM_012415)、BRCA1(NM_007295)、BRCA2(NM_000059)、RAD50(NM_005732)、MRE11A(NM_005590)およびNBS1(NM_002485)が挙げられる。HR依存性DNA DSB修復経路に関与する他のタンパク質としてはEMSY (Hughes-Daviesら, Cell, 115, pp523-535)のような調節因子がある。HR成分は、Woodら, Science, 291, 1284-1289 (2001)にも記載されている。
【0032】
HR依存性DNA DSB修復に欠陥がある癌は、正常細胞と比較して、DNA DSBを該経路を介して修復する能力が低下しているかまたは破壊されている1以上の癌細胞を含むか、または該癌細胞から成る、すなわち、前記1以上の癌細胞では、HR依存性DNA DSB修復経路の活性が低下しているかまたは破壊されている。
【0033】
HR依存性DNA DSB修復に欠陥がある癌を有する個体の1以上の癌細胞では、HR依存性DNA DSB修復経路の1以上の成分の活性が破壊されている。HR依存性DNA DSB修復経路の成分は当技術分野で詳細に特徴付けられており(例えばWoodら, Science, 291, 1284-1289 (2001)を参照されたい)、上に挙げた成分が含まれる。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、癌細胞はBRCA1および/またはBRCA2欠損表現型を有しうる、すなわち癌細胞においてBRCA1および/またはBRCA2活性が低下しているか、または破壊されている。この表現型の癌細胞はBRCA1および/またはBRCA2に欠損を有しうる、すなわち前記癌細胞では、例えばコード核酸における変異もしくは多型により、または調節因子をコードする遺伝子(例えばBRCA2調節因子をコードするEMSY遺伝子(Hughes-Daviesら, Cell, 115, 523-535))の増幅、変異もしくは多型により、あるいは遺伝子プロモーターのメチル化のような後成的な機構により、BRCA1および/またはBRCA2の発現および/または活性が低下しているか、または破壊されている可能性がある。
【0035】
BRCA1およびBRCA2は既知の腫瘍抑制因子であり、その野生型対立遺伝子はヘテロ接合性の保因者の腫瘍においてしばしば失われている(Jasin M., Oncogene, 21(58), 8981-93 (2002)、Tuttら, Trends Mol Med., 8(12), 571-6, (2002))。BRCA1および/またはBRCA2の突然変異と乳癌との関連性は当技術分野で詳しく特徴付けされている(Radice, P.J., Exp Clin Cancer Res., 21(補遺3), 9-12 (2002))。BRCA2結合因子をコードするEMSY遺伝子の増幅もまた乳癌および卵巣癌と関連することが知られている。
【0036】
BRCA1および/またはBRCA2中の変異の保持者はまた、卵巣、前立腺および膵臓の癌のリスクが増大している。
【0037】
いくつかの実施形態において、個体は、BRCA1および/またはBRCA2またはその調節因子における1以上の変異(例えば、突然変異や多型)についてヘテロ接合である。BRCA1およびBRCA2における変異の検出は当技術分野でよく知られており、例えばEP 699 754、EP 705 903、Neuhausen, S.L.およびOstrander, E.A., Genet. Test, 1, 75-83 (1992);Janatova M.ら, Neoplasma, 50(4), 246-50 (2003)に記載されている。BRCA2結合因子EMSYの増幅の確認は、Hughes-Daviesら, Cell, 115, 523-535に記載されている。
【0038】
癌と関連している突然変異や多型は、変異核酸配列の存在を検出することにより核酸レベルにおいて、または変異(すなわち、突然変異または対立遺伝子変異)ポリペプチドの存在を検出することによりタンパク質レベルにおいて検出することができる。
【0039】
定義
本明細書において用語「芳香環」は通常の意味で用いられ、環式芳香族構造、すなわち非局在化π電子軌道を有する環式構造を言う。
【0040】
アルキル:本明細書で用いる用語「アルキル」は、(特に断らない限り)1〜20個の炭素原子を有する炭化水素化合物の1個の炭素原子から1個の水素原子を除くことにより得られる一価の基を言い、これは脂肪族または脂環式であってよく、また飽和もしくは不飽和(例えば部分不飽和、完全不飽和)であってもよい。従って、用語「アルキル」には、以下に説明する下位群であるアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、などが含まれる。
【0041】
アルキル基に関連して、接頭辞(例えばC1-4、C1-7、C1-20、C2-7、C3-7など)は炭素原子の数、または炭素原子の数の範囲を表す。例えば本明細書で用いる用語「C1-4 アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を言う。アルキル基の例としては、C1-4アルキル(「低級アルキル」)、C1-7アルキル、およびC1-20アルキルが挙げられる。最初の接頭辞は他の制限により変化しうることに留意されたい。例えば、不飽和アルキル基については最初の接頭辞は少なくとも2でなければならなず、環式アルキル基については最初の接頭辞は少なくとも3でなければならないなどである。
【0042】
(無置換の)飽和アルキル基の例としては、限定されるものでないが、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)、ヘプチル(C7)、オクチル(C8)、ノニル(C9)、デシル(C10)、ウンデシル(C11)、ドデシル(C12)、トリデシル(C13)、テトラデシル(C14)、ペンタデシル(C15)、およびエイコデシル(C20)が挙げられる。
【0043】
(無置換の)飽和線状アルキル基の例としては、限定されるものでないが、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)、およびn-ヘプチル(C7)が挙げられる。
【0044】
(無置換の)飽和分枝状アルキル基の例としては、限定されるものでないが、イソプロピル(C3)、イソブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、イソペンチル(C5)、およびネオペンチル(C5)が挙げられる。
【0045】
アルケニル:本明細書で用いる用語「アルケニル」は、1以上の炭素-炭素二重結合を有するアルキル基を言う。アルケニル基の例としては、C2-4アルケニル、C2-7アルケニル、C2-20アルケニルが挙げられる。
【0046】
(無置換の)不飽和アルケニル基の例としては、限定されるものでないが、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(1-メチルビニル、-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)、およびヘキセニル(C6)が挙げられる。
【0047】
アルキニル: 本明細書で用いる用語「アルキニル」は、1以上の炭素-炭素三重結合を有するアルキル基を言う。アルキニル基の例としては、C2-4アルキニル、C2-7アルキニル、C2-20アルキニルが挙げられる。
【0048】
(無置換の)不飽和アルキニル基の例としては、限定されるものでないが、エチニル(エチニル、-C≡CH)および2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)が挙げられる。
【0049】
シクロアルキル: 本明細書で用いる用語「シクロアルキル」は、環状基でもあるアルキル基を言う。すなわち、この用語は、炭素環式化合物の炭素環の脂環式環原子から水素原子を除くことにより得られる一価の基を言い、この炭素環は飽和または不飽和(例えば部分不飽和、完全不飽和)であってもよく、この基は(特に断らない限り)3〜20個の環原子を含めて、3〜20個の炭素原子を有する。従って、用語「シクロアルキル」には、下位群であるシクロアルケニルおよびシクロアルキニルが含まれる。好ましくは、各々の環は3〜7個の環原子を有する。シクロアルキル基の基の例としては、C3-20シクロアルキル、C3-15シクロアルキル、C3-10シクロアルキル、C3-7シクロアルキルが挙げられる。
【0050】
シクロアルキル基の例としては、限定されるものでないが、以下から誘導されるものが挙げられる:
飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、メチルシクロプロパン(C4)、ジメチルシクロプロパン(C5)、メチルシクロブタン(C5)、ジメチルシクロブタン(C6)、メチルシクロペンタン(C6)、ジメチルシクロペンタン(C7)、メチルシクロヘキサン(C7)、ジメチルシクロヘキサン(C8)、メンタン(C10);
不飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロペン(C3)、シクロブテン(C4)、シクロペンテン(C5)、シクロヘキセン(C6)、メチルシクロプロペン(C4)、ジメチルシクロプロペン(C5)、メチルシクロブテン(C5)、ジメチルシクロブテン(C6)、メチルシクロペンテン(C6)、ジメチルシクロペンテン(C7)、メチルシクロヘキセン(C7)、ジメチルシクロヘキセン(C8);
飽和多環式炭化水素化合物:
ツジャン(C10)、カラン(C10)、ピナン(C10)、ボルナン(C10)、ノルカラン(C7)、ノルピナン(C7)、ノルボルナン(C7)、アダマンタン(C10)、デカリン(デカヒドロナフタレン)(C10);
不飽和多環式炭化水素化合物:
カンフェン(C10)、リモネン(C10)、ピネン(C10);
芳香環を有する多環式炭化水素化合物:
インデン(C9)、インダン(例えば2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)、アセアントレン(C16)、コラントレン(C20)。
【0051】
ヘテロシクリル:本明細書で用いる用語「ヘテロシクリル」は、複素環式化合物の環原子から水素原子を除くことにより得られる一価の基を言い、この基は(特に断らない限り)3〜20個の環原子を有し、そのうち1〜10個が環ヘテロ原子である。好ましくは、各々の環は3〜7個の環原子を有し、そのうち1〜4個が環ヘテロ原子である。
【0052】
この意味で、接頭辞(例えばC3-20、C3-7、C5-6など)は、炭素原子であれヘテロ原子であれ、環原子の数、または環原子の数の範囲を表す。例えば、本明細書で用いる用語「C5-6ヘテロシクリル」は、5または6個の環原子を有するヘテロシクリル基を言う。ヘテロシクリル基の例としては、C3-20ヘテロシクリル、C5-20ヘテロシクリル、C3-15ヘテロシクリル、C5-15ヘテロシクリル、C3-12ヘテロシクリル、C5-12ヘテロシクリル、C3-10ヘテロシクリル、C5-10ヘテロシクリル、C3-7ヘテロシクリル、C5-7ヘテロシクリル、およびC5-6ヘテロシクリルが挙げられる。
【0053】
単環式ヘテロシクリル基の例としては、限定されるものでないが、以下から誘導されるものが挙げられる:
N1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
O1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
S1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)、およびジオキセパン(C7);
O3:トリオキサン(C6);
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソオキサゾール(C5)、ジヒドロイソオキサゾー(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1:オキサジアジン(C6);
O1S1:オキサチオール(C5)およびオキサチアン(チオキサン)(C6);および
N1O1S1:オキサチアジン(C6)。
【0054】
置換された(非芳香族)単環式ヘテロシクリル基の例としては、環式の糖から誘導されたもの、例えば、フラノース類(C5)、例えばアラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース、およびキシロフラノース、およびピラノース類(C6)、例えばアロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース、およびタロピラノースが挙げられる。
【0055】
スピロC3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル:本明細書で用いる用語「スピロC3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル」は、両方の環に共通の単一原子を介して別の環と結合したC3-7シクロアルキルまたはC3-7ヘテロシクリル環を言う。
【0056】
C5-20アリール: 本明細書で用いる用語「C5-20アリール」は、C5-20芳香族化合物の芳香族環原子から水素原子を除くことにより得られる一価の基を言い、前記化合物は1つの環、または2以上の環(例えば、縮合環)を有し、かつ5〜20個の環原子を有し、少なくとも1つの前記環は芳香環である。好ましくは、各々の環は5〜7個の環原子を有する。
【0057】
環原子は、「カルボアリール基」のように、全てが炭素原子であってもよく、その場合、この基のことを便宜的に「C5-20カルボアリール」基と呼ぶことができる。
【0058】
環ヘテロ原子を有しないC5-20アリール基(すなわちC5-20カルボアリール基)の例としては、限定されるものでないが、ベンゼン(すなわちフェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、およびピレン(C16)から誘導されるものが挙げられる。
【0059】
あるいはまた、環原子には、限定されるものでないが、酸素、窒素、および硫黄を含む1個以上のヘテロ原子が含まれてもよく、「ヘテロアリール基」などがそうである。この場合、この基のことを便宜上「C5-20ヘテロアリール」基と呼ぶことができ、ここで「C5-20」は、炭素原子であれヘテロ原子であれ、環原子を意味する。好ましくは、各々の環は5〜7個の環原子を有し、そのうち0〜4個が環ヘテロ原子である。
【0060】
C5-20ヘテロアリール基の例としては、限定されるものでないが、フラン(オキソール)、チオフェン(チオール)、ピロール(アゾール)、イミダゾール(1,3-ジアゾール)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、テトラゾールおよびオキサトリアゾールから誘導されるC5ヘテロアリール基、ならびにイソオキサジン、ピリジン(アジン)、ピリダジン(1,2-ジアジン)、ピリミジン(1,3-ジアジン、例えばシトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)およびトリアジンから誘導されるC6ヘテロアリール基が挙げられる。
【0061】
ヘテロアリール基は、炭素原子またはヘテロ環原子を介して結合することができる。
【0062】
縮合環を含むC5-20ヘテロアリール基の例としては、限定されるものでないが、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドールから誘導されるC9ヘテロアリール基;キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジンから誘導されるC10ヘテロアリール基;アクリジンおよびキサンテンから誘導されるC14ヘテロアリール基が挙げられる。
【0063】
上記のアルキル、ヘテロシクリル、およびアリール基は、単独であれ別の置換基の一部であれ、それ自体が、場合によっては、それ自体および以下に記載する追加の置換基から選択される1個以上の基で置換することができる。
【0064】
ハロ:-F、-Cl、-Br、および-I。
【0065】
ヒドロキシ:-OH。
【0066】
エーテル:-OR[式中、Rはエーテル置換基、例えばC1-7アルキル基(C1-7アルコキシ基とも言う)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも言う)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも言う)であって、好ましくはC1-7アルキル基である]。
【0067】
ニトロ:-NO2
【0068】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN。
【0069】
アシル(ケト):-C(=O)R[式中、Rはアシル置換基、例えば、H、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシルまたはC1-7アルカノイルとも言う)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも言う)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも言う)であって、好ましくはC1-7 アルキル基である]。アシル基の例としては、限定されるものでないが、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(ブチリル)、および-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が挙げられる。
【0070】
カルボキシ(カルボン酸):-COOH。
【0071】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル): -C(=O)OR[式中、Rはエステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であって、好ましくはC1-7アルキル基である]。エステル基の例としては、限定されるものでないが、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3、および-C(=O)OPhが挙げられる。
【0072】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):-C(=O)NR1R2[式中、R1およびR2は独立に、アミノ基について定義したようなアミノ置換基である]。アミド基の例としては、限定されるものでないが、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3、および-C(=O)N(CH2CH3)2、ならびに、R1とR2がそれらの結合している窒素原子と一緒に、複素環式構造、例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、およびピペラジニルカルボニルなどを形成するアミド基が挙げられる。
【0073】
アミノ:-NR1R2、[式中、R1とR2は独立に、アミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノまたはジC1-7アルキルアミノとも言う)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であって、好ましくはHまたはC1-7アルキル基であるか、あるいは「環式」アミノ基の場合には、R1とR2は、それらが結合している窒素原子と一緒に4〜8個の環原子を有する複素環を形成する]。アミノ基の例としては、限定されるものでないが、-NH2、-NHCH3、-NHCH(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、および-NHPhが挙げられ、環式アミノ基の例としては、限定されるものでないが、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、パーハイドロジアゼピニル、モルホリノ、およびチオモルホリノが挙げられる。環式アミノ基は、本明細書に定義した置換基のいずれか(例えばカルボキシ、カルボキシレートおよびアミド)により、その環が置換されたものであってもよい。
【0074】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2、[式中、R1はアミド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはHもしくはC1-7アルキル基であり、最も好ましくはHであり、かつR2はアシル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。アシルアミド基の例としては、限定されるものでないが、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3、および-NHC(=O)Phが挙げられる。R1およびR2は、一緒に、例えば、スクシンイミジル、マレイミジル、およびフタルイミジルのような環式構造:
【化6】

を形成してもよい。
【0075】
ウレイド:-N(R1)CONR2R3、[式中、R2およびR3は独立に、アミノ基について定義したようなアミノ置換基であり、かつR1はウレイド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくは水素もしくはC1-7アルキル基である]。ウレイド基の例としては、限定されるものでないが、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2、-NMeCONEt2および-NHCONHPhが挙げられる。
【0076】
アシルオキシ(逆エステル):-OC(=O)R[式中、Rは、アシルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。アシルオキシ基の例としては、限定されるものでないが、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Ph、-OC(=O)C6H4F、および-OC(=O)CH2Phが挙げられる。
【0077】
チオール:-SH。
【0078】
チオエーテル(スルフィド):-SR[式中、Rは、チオエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも呼ばれる)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。C1-7アルキルチオ基の例としては、限定されるものでないが、-SCH3および-SCH2CH3が挙げられる。
【0079】
スルホキシド(スルフィニル):-S(=O)R[式中、Rは、スルホキシド置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルホキシド基の例としては、限定されるものでないが、-S(=O)CH3および-S(=O)CH2CH3が挙げられる。
【0080】
スルホニル(スルホン):-S(=O)2R[式中、Rは、スルホン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルホン基の例としては、限定されるものでないが、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3、-S(=O)2CH2CH3、および4-メチルフェニルスルホニル(トシル)が挙げられる。
【0081】
チオアミド(チオカルバミル):-C(=S)NR1R2[式中、R1およびR2は、独立して、アミノ基について定義されるようなアミノ置換基である]。アミド基の例としては、限定されるものでないが、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH3)2、および-C(=S)NHCH2CH3が挙げられる。
【0082】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R[式中、R1は、アミノ基について定義されるようなアミノ置換基であり、そしてRは、スルホンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルホンアミノ基の例としては、限定されるものでないが、-NHS(=O)2CH3、-NHS(=O)2Ph、および-N(CH3)S(=O)2C6H5が挙げられる。
【0083】
上述のように、以上に列挙された置換基を形成する基、例えば、C1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリル、およびC5-20アリールは、それ自体が置換されていてもよい。従って、以上の定義は置換された置換基を包含する。
【0084】
さらなる実施形態
次の実施形態は、適用可能な場合、本発明の各態様に適用することができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、もしX=CRXRYであれば、RXはH、必要に応じて置換されたC1-20アルキル、必要に応じて置換されたC5-20アリール、必要に応じて置換されたC3-20ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたチオアミド、必要に応じて置換されたスルホンアミノ、必要に応じて置換されたエーテル、必要に応じて置換されたエステル、必要に応じて置換されたアシルおよび必要に応じて置換されたスルホニル基から選択されかつRYはH、ヒドロキシ、必要に応じて置換されたアミノから選択されるか、またはRXとRYは一緒に、必要に応じて置換されたスピロ-C3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル基を形成してもよい。
【0086】
縮合シクロヘキセン環はいずれの利用しうる環位置においても1以上の置換基を保持することができる。これらの置換基はハロ、ニトロ、ヒドロキシ、エーテル、チオール、チオエーテル、アミノ、C1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールから選択される。縮合シクロヘキセン環はまた、一緒に環を形成する1以上のの置換基を保持することもできる。特に、これらは式-(CH2)m-または-O-(CH2)p-O-(ここで、mは2、3、4または5でありかつpは1、2または3である)であってもよい。特定の置換基にはハロ、ヒドロキシおよびアミノ(例えばNH2)が含まれる。
【0087】
もし縮合シクロヘキセン環が唯一の置換基を保持すれば、その化合物は次式:
【化7】

であってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、R1はH、ClおよびFから選択される。さらなる実施形態において、R1はFである。
【0089】
いくつかの実施形態において、RC1とRC2は両方とも水素である。
【0090】
nが2である場合、XはNRXである。これらの実施形態において、RXはH;必要に応じて置換されたC1-20アルキル;必要に応じて置換されたC5-20アリール;必要に応じて置換されたエステル基(ここでエステル置換基は、好ましくはC1-20アルキルである);必要に応じて置換されたアシル基;必要に応じて置換されたアミド基;必要に応じて置換されたチオアミド基;および必要に応じて置換されたスルホニル基からなる群より選択される。さらなる実施形態において、RXはH;必要に応じて置換されたC1-20アルキル;必要に応じて置換されたC5-20アリール;および必要に応じて置換されたエステル基(ここでエステル置換基はC1-20アルキルだけであってもよい)からなる群より選択することができる。
【0091】
nが1である場合、XはNRXまたはCRXCRYであってもよい。
【0092】
XがNRXである実施形態において、RXはH;必要に応じて置換されたC1-20アルキル(例えば、必要に応じて置換されたC1-7、またはC1-4、アルキル);必要に応じて置換されたC5-20アリール(例えば、C5-6アリール);必要に応じて置換されたアシル;および必要に応じて置換されたスルホニルからなる群より選択することができる。
【0093】
RXはまた、必要に応じて置換されたエステルから選択することができる。
【0094】
XがNRXである実施形態において、RXは必要に応じて置換されたアルキルである場合、置換基はヒドロキシおよびC1-4アルコキシ(例えばメトキシ)から選択することができる。RXがアリールである場合、それはヘテロアリール(例えばトリアジニル、ピリミジニル、ピリジル)であってもよいし、またいくつかの実施形態において、無置換であってもよい。もしアリール基が置換されていれば、置換基はC1-4アルキル(例えばメチル、トリフルオロメチル)およびシアノから選択することができる。RXが必要に応じて置換されたアシルである場合、アシル置換基はC1-7アルキル基(例えばシクロプロピル)またはC3-20、またはさらにC3-7、ヘテロシクリル基(例えばテトラヒドロフラニル)であってもよい。RXが必要に応じて置換されたスルホニルである場合、スルホン置換基はC1-7アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル)であってもよい。もしRXがエステルであれば、エステル基はC1-4アルキル(例えばt-ブチル)であってもよく、また無置換であってもよい。
【0095】
XがCRXRYである実施形態において、RYはHであってもよい。RXはH;必要に応じて置換されたC3-20ヘテロシクリル、より好ましくはC3-7ヘテロシクリル;必要に応じて置換されたエーテル;および必要に応じて置換されたスルホンアミノからなる群より選択することができる。RXはまた、必要に応じて置換されたアミドまたは必要に応じて置換されたアシルアミドであってもよい。
【0096】
XがCRXRYである実施形態において、RXがヘテロシクリルである場合、それは1個の窒素環原子、例えばピロリジニルを含有しうる。RXがエーテルである場合、エーテル置換基はそれ自身が(例えばクロロまたはメトキシにより)置換されていてもよいC5-7アリール(例えば、フェニル、ピリジル);それ自身が例えばメトキシにより置換されていてもよいC1-7アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロペンチル、シクロプロピルエチル)であってもよい。RXがスルホンアミノである場合、アミノ置換基はC1-7アルキル基、例えばメチル、シクロプロピルであってもよく、そしてスルホンアミノ置換基はそれ自身が(例えば、クロロにより)置換されていてもよいC1-7アルキル基(例えばシクロプロピル)またはC5-7アリール基、例えばフェニルであってもよい。RXがアミドである場合、第1のアミノ置換基はHおよびC1-4アルキル(例えばメチル)から選択することができるし、また第2のアミノ置換基はそれ自身C5-6アリール(例えばフェニル)またはアミノ(例えばジメチルアミノ)により置換されていてもよいC1-7アルキル(例えばメチル、シクロプロピルメチル、ブチル、シクロブチル)であってもよい。RXがアミドである場合、アミノ置換基は窒素原子と共に一緒に環を形成して、RXがそれ自身C1-4アルキル(例えばメチル)またはスルホンアミド(例えばシクロプロピルスルホニルメチルアミノ)により置換されていてもよいピペリジニルカルボニルまたはピペラジニルカルボニルであってもよい。RXがアシルアミドである場合、アミド置換基はHまたはC1-4アルキル(例えばメチル)であってもよく、またアシル置換基はC1-7アルキル(例えばエチル)またはC5-7アリール(例えばフェニル)であってもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、RXはHでありかつRYはアミノである。RYがアミノである場合、アミノ置換基はHおよびC1-7、またはさらにC1-4アルキルから選択され、アミノ基はジメチルアミノであってもよく、またはアミノ置換基は環を形成し、RYは、例えば、ピロリジニルであってもよい。
【0098】
本発明のさらなる態様は以下の例の化合物である。
【0099】
適宜、以上の実施形態をお互いに組合わせることができる。
【0100】
特別な重要な化合物において、nは1であり、XはCRXRYであり、RYはHでありかつRXはC1-7アルキルエーテル(例えばメチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソ-ブチルオキシ、t-ブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロプロピルエチルオキシ)であり、ここでC1-7アルキル基は例えば、C1-4アルコキシ(例えばメトキシ)により置換されていてもよい。
【0101】
これらの実施形態において、R1はFであってもよくかつシクロヘキセン環は置換基を保持しなくてもよい。
【0102】
包含される他の形態
以上の事項には、これらの置換基の周知のイオン型、塩型、溶媒和型、および保護型が包含される。例えば、カルボン酸(-COOH)が言及された場合、そのアニオン(カルボキシレート)型(-COO-)、塩型、または溶媒和型、さらには従来の保護型も包含される。同様に、アミノ基が言及された場合、アミノ基のプロトン化型(-N+HR1R2)、塩型、または溶媒和型、例えば塩酸塩、さらにはアミノ基の従来の保護型が包含される。同様に、ヒドロキシル基が言及された場合、そのアニオン型(-O-)、塩型、または溶媒和型、さらには従来の保護型も包含される。
【0103】
異性体、塩、溶媒和物、保護型、およびプロドラッグ
ある特定の化合物は、1以上の特定の幾何異性型、光学異性型、鏡像異性型、ジアステレオ異性型、エピ異性型、立体異性型、互変異性型、配座異性型、またはアノマー異性型、例えば、限定されるものではないが、シス型およびトランス型;E型およびZ型;c型、t型、およびr型;endo型およびexo型;R型、S型、およびメソ型;D型およびL型;d型およびl型;(+)型および(-)型;ケト型、エノール型、およびエノラート型;syn型およびanti型;シンクリナル型およびアンチクリナル型;α型およびβ型;アキシアル型およびエクアトリアル型;ボート型、チェア型、ツイスト型、エンベロープ型、およびハーフチェア型;ならびにそれらの組合せで存在可能であり、これから以降、まとめて「異性体」(または「異性型」)と呼ぶ。
【0104】
化合物が結晶形態をとる場合、それは、いくつかの異なる多形で存在しうる。
【0105】
互変異性型について以下で考察する場合を除き、構造異性体(すなわち、空間内の原子の位置が単に異なるのではなく原子間の結合が異なる異性体)は、本明細書中で用いられる用語「異性体」から特に除外されることに留意されたい。例えば、メトキシ基(-OCH3)が言及された場合、その構造異性体であるヒドロキシメチル基(-CH2OH)が言及されたと解釈されることはない。同様に、オルト-クロロフェニルが言及された場合、その構造異性体であるメタ-クロロフェニルが言及されたと解釈されることはない。しかし、構造のクラスが言及された場合、そのクラスに属する構造異性型が包含されることは当然であろう(例えば、C1-7アルキルには、n-プロピルおよびiso-プロピルが包含され、ブチルには、n-、iso-、sec-、およびtert-ブチルが包含され、メトキシフェニルには、オルト-、メタ-、およびパラ-メトキシフェニルが包含される)。
【0106】
以上の除外は、例えば、次の互変異性対:ケト/エノール、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾ、およびニトロ/アシニトロなどの互変異性型、例えば、ケト型、エノール型、およびエノラート型には関係がない。
【0107】
本発明に特に関係があるのは次に図解した互変異性対である。
【化8】

【0108】
1以上の同位体置換を有する化合物は、用語「異性体」に特に包含されることに留意されたい。例えば、Hは、1H、2H(D)、および3H(T)をはじめとする任意の同位体型で存在してもよく、Cは、12C、13C、および14Cをはじめとする任意の同位体型で存在してもよく、Oは、16Oおよび18Oをはじめとする任意の同位体型で存在してもよく、他も同様である。
【0109】
特に明記されない限り、特定の化合物が言及された場合、かかる異性型がすべて包含され、その(完全もしくは部分)ラセミ混合物および他の混合物も包含される。かかる異性型の調製方法(例えば不斉合成)および分離方法(例えば、分別結晶化手段およびクロマトグラフィー手段)は、当技術分野で公知であるか、または本明細書に教示される方法もしくは公知の方法を慣例に従って適合させることにより容易に得られる。
【0110】
特に明記されない限り、特定の化合物が言及された場合、例えば、以下に考察したそのイオン型、塩型も包含される。
【0111】
特に明記されない限り、特定の化合物が言及された場合、例えば、以下に考察したその溶媒和物も包含される。
【0112】
特に明記されない限り、特定の化合物が言及された場合、例えば、以下に考察したそのプロドラッグも包含される。
【0113】
特に明記されない限り、特定の化合物が言及された場合、例えば、以下に考察したその保護型も包含される。
【0114】
特に明記されない限り、特定の化合物が言及された場合、例えば、以下に考察した色々なその多形も包含される。
【0115】
活性化合物の対応する塩(例えば、製薬上許容される塩)の調製、精製、および/または取扱が好都合であるかまたは望ましいことがありうる。製薬上許容される塩の例は、Bergeら, "Pharmaceutically Acceptable Salts(製薬上許容される塩)", J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977)に考察されている。
【0116】
例えば、化合物がアニオンである場合またはアニオンになりうる官能基(例えば、-COOHは-COO-になりうる)を有する場合、好適なカチオンを用いて塩を形成することができる。好適な無機カチオンの例としては、限定されるものでないが、Na+およびK+のようなアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+のようなアルカリ土類カチオン、およびAl3+のような他のカチオンが挙げられる。好適な有機カチオンの例としては、限定されるものでないが、アンモニウムイオン(すなわち、NH4+)および置換されたアンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2+、NHR3+、NR4+)が挙げられる。いくつかの好適な置換されたアンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、ならびにリシンやアルギニンなどのアミノ酸から誘導されたものである。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4+である。
【0117】
化合物がカチオンである場合またはカチオンになりうる官能基(例えば、-NH2は-NH3+になりうる)を有する場合、好適なアニオンを用いて塩を形成することができる。好適な無機アニオンの例としては、限定されるものでないが、次の無機酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、および亜リン酸から誘導されるものが挙げられる。好適な有機アニオンの例としては、限定されるものでないが、次の有機酸:酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、乳酸、リンゴ酸、パモ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセチルオキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、吉草酸、およびグルコン酸から誘導されるものが挙げられる。好適な高分子アニオンの例としては、限定されるものでないが、次の高分子酸:タンニン酸、カルボキシメチルセルロースから誘導されるものが挙げられる。
【0118】
活性化合物の対応する溶媒和物の調製、精製、および/または取扱が好都合であるかまたは望ましいことがありうる。用語「溶媒和物」は、本明細書中では従来の意味で用いられ、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒との複合体を意味する。溶媒が水である場合、溶媒和物は、適宜、一水和物、二水和物、三水和物などのような水和物と呼ぶことができる。
【0119】
化学保護型で活性化合物の調製、精製、および/または取扱が好都合であるかまたは望ましいことがありうる。本明細書中で用いられる用語「化学保護型」は、1つ以上の反応性官能基が望ましくない化学反応から保護されている化合物、すなわち、1つ以上の反応性官能基が保護化基もしくは保護基(マスク化基もしくはマスキング基またはブロック化基もしくはブロッキング基としても知られる)の形態をとる化合物を意味する。反応性官能基を保護することにより、保護化基に影響を及ぼすことなく他の未保護の反応性官能基が関与する反応を行うことができ、保護基は、通常、後続工程で分子の残りの部分に実質的な影響を及ぼすことなく除去することができる。例えば、"Protective Groups in Organic Synthesis(有機合成における保護基)" (T. Green and P. Wuts; 3rd Edition; John Wiley and Sons, 1999)を参照されたい。
【0120】
例えば、ヒドロキシ基は、エーテル(-OR)またはエステル(-OC(=O)R)として、例えば、t-ブチルエーテル;ベンジルエーテル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)エーテル、もしくはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリルエーテルもしくはt-ブチルジメチルシリルエーテル;またはアセチルエステル(-OC(=O)CH3、-OAc)として保護することができる。
【0121】
例えば、アルデヒド基またはケトン基は、それぞれ、アセタールまたはケタールとして保護することができる。この場合、カルボニル基(>C=O)は、例えば、第一級アルコールとの反応によりジエーテル(>C(OR)2)に変換される。アルデヒド基またはケトン基は、酸の存在下で大過剰の水を用いて加水分解により容易に再生される。
【0122】
例えば、アミン基は、例えば、アミドまたはウレタンとして、例えば、メチルアミド(-NHCO-CH3)、ベンジルオキシアミド(-NHCO-OCH2C6H5、-NH-Cbz)として、t-ブトキシアミド(-NHCO-OC(CH3)3、-NH-Boc)、2-ビフェニル-2-プロポキシアミド(-NHCO-OC(CH3)2C6H4C6H5、-NH-Bpoc)として、9-フルオレニルメトキシアミド(-NH-Fmoc)として、6-ニトロベラトリルオキシアミド(-NH-Nvoc)として、2-トリメチルシリルエチルオキシアミド(-NH-Teoc)として、2,2,2-トリクロロエチルオキシアミド(-NH-Troc)として、アリルオキシアミド(-NH-Alloc)として、2(-フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(-NH-Psec)として、または好適な場合にはN-オキシド(>NO)として保護することができる。
【0123】
例えば、カルボン酸基は、エステルとして、例えば、C1-7アルキルエステル(例えば、メチルエステル、t-ブチルエステル)、C1-7ハロアルキルエステル(例えば、C1-7トリハロアルキルエステル)、トリC1-7アルキルシリル-C1-7アルキルエステル、もしくはC5-20アリール-C1-7アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル、ニトロベンジルエステル)として、またはアミドとして、例えば、メチルアミドとして保護することができる。
【0124】
例えば、チオール基は、チオエーテル(-SR)として、例えば、ベンジルチオエーテル、アセトアミドメチルエーテル(-S-CH2NHC(=O)CH3)として保護することができる。
【0125】
プロドラッグの形態で活性化合物の調製、精製、および/または取扱いを行うことが好都合であるかまたは望ましいことがありうる。本明細書中で用いられる用語「プロドラッグ」は、代謝されたときに(例えば、in vivoで)所望の活性化合物を生成する化合物を意味する。典型的には、プロドラッグは、不活性であるかまたは活性化合物ほど活性ではないが、有利な取扱、投与、または代謝性を提供しうる。
【0126】
例えば、いくつかのプロドラッグは、活性化合物のエステル(例えば、生理学的に許容される代謝活性エステル)である。代謝中、エステル基(-C(=O)OR)は、切断されて活性薬剤を生成する。かかるエステルは、例えば、親化合物中のカルボン酸基(-C(=O)OH)のいずれかをエステル化することにより形成することができ、その際、適宜、親化合物中に存在する任意の他の反応性基を事前に保護しておき、必要であれば、後で脱保護することができる。かかる代謝活性エステルの例としては、RがC1-20アルキル(例えば、-Me、-Et)、C1-7アミノアルキル(例えば、アミノエチル、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル、2-(4-モルホリノ)エチル)、ならびにアシルオキシ-C1-7アルキル(例えば、アシルオキシメチル、アシルオキシエチル、例えば、ピバロイルオキシメチル、アセトキシメチル、1-アセトキシエチル、1-(1-メトキシ-1-メチル)エチル-カルボニルオキシエチル、1-(ベンゾイルオキシ)エチル、イソプロポキシ-カルボニルオキシメチル、1-イソプロポキシ-カルボニルオキシエチル、シクロヘキシル-カルボニルオキシメチル、1-シクロヘキシル-カルボニルオキシエチル、シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシメチル、1-シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシエチル、(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル、1-(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル、(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル、および1-(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチル)であるものが挙げられる。
【0127】
さらなる好適なプロドラッグの形態としては、ホスホネート塩およびグリコレート塩が挙げられる。特に、ヒドロキシ基(-OH)は、クロロジベンジルホスフィットとの反応に続いて水素化を行ってホスホネート基-O-P(=O)(OH)2を形成することにより、ホスホネートプロドラッグの形態にすることが可能である。かかる基は代謝中にホスホターゼ酵素により除去して、ヒドロキシ基を有する活性薬剤を生成することができる。
【0128】
また、いくつかのプロドラッグは酵素的に活性化されて、活性化合物を生じるか、またはさらなる化学反応を受けて活性化合物を生成する化合物を生じる。例えば、プロドラッグは、糖誘導体もしくは他のグリコシドコンジュゲート、またはアミノ酸エステル誘導体であってもよい。
【0129】
頭字語
便宜上、多くの化学部分は、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(nPr)、iso-プロピル(iPr)、n-ブチル(nBu)、tert-ブチル(tBu)、n-ヘキシル(nHex)、シクロヘキシル(cHex)、フェニル(Ph)、ビフェニル(biPh)、ベンジル(Bn)、ナフチル(naph)、メトキシ(MeO)、エトキシ(EtO)、ベンゾイル(Bz)、アセチル(Ac)など(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとする周知の略号を用いて表される。
【0130】
便宜上、多くの化合物は、限定されるものでないが、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソ-プロパノール(i-PrOH)、メチルエチルケトン(MEK)、エーテルまたはジエチルエーテル(Et2O)、酢酸(AcOH)、ジクロロメタン(メチレンクロリド、DCM)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などをはじめとする周知の略号を用いて表される。
【0131】
合成
本発明の化合物は、式1:
【化9】

【0132】
[式中、RおよびR1は先に定義した通りである]の化合物と式2:
【化10】

【0133】
[式中、n、RC1、RC2およびXは先に定義した通りである]の化合物との反応、すなわち、カップリング試薬系、例えば2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートまたは(ジメチルアミノプロピル)エチルカルボジイミドヒドロクロリド/ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在のもとで、塩基、例えばジイソプロピルエチルアミンの存在のもとで、溶媒、例えばジメチルアセトアミドまたはジクロロメタン中で、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。
【0134】
あるいは、本発明の化合物は、周知の技法を用いる、式1の化合物の活性化種、例えば酸クロリドまたはN-ヒドロキシスクシンイミドエステルなどの活性化エステルへの転化、およびその活性化種の式2の化合物との反応により合成することができる。
【0135】
式1の化合物は、式3:
【化11】

【0136】
[式中、RおよびR1は先に定義した通りである]の化合物、または式4:
【化12】

【0137】
[式中、RおよびR1は先に定義した通りである]の化合物、または式3の化合物と式4の化合物の混合物の、ヒドラジン源、例えばヒドラジン水和物との反応、すなわち、場合により塩基、例えばトリエチルアミンの存在のもとで、場合により溶媒、例えば工業用変性アルコールの存在のもとで、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。
【0138】
式3または式4の化合物、またはそれらの混合物は、式5:
【化13】

【0139】
[式中、RおよびR1は先に定義した通りである]の化合物の、ニトリル部分を加水分解できる試薬、例えば水酸化ナトリウムとの反応、すなわち、溶媒、例えば水の存在のもとで、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。
【0140】
式5の化合物は、式6:
【化14】

【0141】
[式中、R1は先に定義した通りである]の化合物の、式7:
【化15】

【0142】
[式中、Rは先に定義した通りである]の化合物との反応、すなわち、塩基、例えばナトリウムメトキシドの存在のもとで、溶媒、例えばメタノール中で、場合により水捕捉剤、例えばプロピオン酸エチルの存在のもとで、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。
【0143】
式1の化合物はまた、式8:
【化16】

【0144】
[式中、RおよびR1は先に定義した通りである]の化合物の、ニトリルを加水分解できる試薬、例えば水酸化ナトリウムとの反応、すなわち、溶媒、例えば水の存在のもとで、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応と、続いて得られる中間体の、ヒドラジン源、例えばヒドラジン水和物との、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。
【0145】
式8の化合物は、式9:
【化17】

【0146】
[式中、Rは先に定義した通りであり、RaはC1-4アルキル基である]の化合物の、式6の化合物との反応、すなわち、塩基、例えばトリエチルアミンもしくはリチウムヘキサメチルジシラジドの存在のもとで、溶媒、例えばテトラヒドロフランの存在のもとで、-80℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。
【0147】
式9の化合物は、WO 02/26576に記載の方法に類似した方法により合成することができる。
【0148】
式1の化合物はまた、上記の方法に類似した方法であって、全ての式のニトリル部分がカルボン酸を生成できる他の部分、例えばエステルまたはカルボキサミド部分、またはニトリルの前駆体(例えばブロモ)により置換えられた方法により合成することもできる。
【0149】
式2の化合物は市販されているかまたは化学文献に報じられた方法により合成することができる。
【0150】
XがCRXRYであり、RXまたはRYのうちの1つがアミド部分である本発明の化合物、従って、式10:
【化18】

【0151】
[式中、R、n、RC1、RC2、R1およびRXは先に定義した通りであり、RN1およびRN2はそれぞれ個々にH、必要に応じて置換されたC1-20アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリルからなる群より選択されるか、または一緒に必要に応じて置換されたC3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル基を形成してもよい]で表すことができる本発明の化合物は、式11:
【化19】

【0152】
[式中、R、n、RC1、RC2、R1およびRXは先に定義した通りである]の化合物の、式HNRN1RN2[式中、RN1およびRN2は先に定義した通りである]の化合物との反応、すなわち、カップリング試薬系、例えば2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートまたは(ジメチルアミノプロピル)エチルカルボジイミドヒドロクロリド/ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在のもとで、塩基、例えばジイソプロピルエチルアミンの存在のもとで、溶媒、例えばジメチルアセトアミドまたはジクロロメタン中で、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。
【0153】
代わりに、式10の化合物は、周知の技法を用いる、式11の化合物の活性化種、例えば酸クロリドまたはN-ヒドロキシスクシンイミドエステルなどの活性化エステルへの転化、およびその活性化種の式HNRN1RN2の化合物との反応により合成することができる。
【0154】
式11の化合物は、式11の化合物の保護型、例えば式12:
【化20】

【0155】
[R、n、RC1、RC2、R1およびRXは先に定義した通りでありかつR01はC1-4アルキル基である]
の化合物の、周知の技法での脱保護、すなわち、例えば、塩基触媒による加水分解を用いる、水酸化物源、例えば水酸化ナトリウムもしくは水酸化リチウムの存在のもとで、溶媒、例えば水および/またはテトラヒドロフランの存在のもとで、0℃〜使用溶媒沸点の温度での脱保護により合成することができる。
【0156】
式12の化合物は、式1の化合物から先に記載の方法により合成することができる。
【0157】
式HNRN1RN2の化合物は市販されているかまたは化学文献に報じられた方法により合成することができる。
【0158】
XがNHである本発明の化合物、従って式13:
【化21】

【0159】
[R、n、RC1、RC2およびR1は先に定義した通りである]で表すことができる本発明の化合物は、式13の化合物の保護型、例えば式14:
【化22】

【0160】
[n、RC1、RC2およびR1は先に定義した通りである]の化合物の、周知の技法の脱保護、例えば、酸触媒による切断を用いる、酸、例えばトリフルオロ酢酸または塩酸の存在のもとで、溶媒、例えばジクロロメタンまたはエタノールおよび/または水の存在のもとで、0℃〜使用溶媒沸点の温度での脱保護により合成することができる。
【0161】
式14の化合物は式1の化合物から先に記載の方法により合成することができる。
【0162】
XがNRXであり、RXがアシル部分である本発明の化合物、従って式15:
【化23】

【0163】
[式中、R、n、RC1、RC2およびR1は先に定義した通りでありかつRC3は必要に応じて置換されたC1-20アルキル、C5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリルからなる群より選択される]で表すことができる本発明の化合物は、式13の化合物の、式RC3COX[式中、RC3は先に定義した通りでありかつXは好適な脱離基、例えばクロロなどのハロゲンである]の化合物との反応、すなわち、場合により塩基、例えばピリジン、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンの存在のもとで、場合により溶媒、例えばジクロロメタンの存在のもとで、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。
【0164】
式RC3COXの化合物は市販されているかまたは化学文献に報じられた方法により合成することができる。
【0165】
式15の化合物はまた、式13の化合物の、式RC3CO2H(式中、RC3は先に定義した通りである)の化合物との反応、すなわち、カップリング試薬系、例えば2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートまたは(ジメチルアミノプロピル)エチルカルボジイミドヒドロクロリド/ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在のもとで、塩基、例えばジイソプロピルエチルアミンの存在のもとで、溶媒、例えばジメチルアセトアミドまたはジクロロメタン中で、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。
【0166】
式RC3CO2Hの化合物は市販されているかまたは化学文献に報じられた方法により合成することができる。
【0167】
XがNRX(式中、RXはアミドまたはチオアミド部分である)である本発明の化合物、従って式16:
【化24】

【0168】
[式中、R、n、RC1、RC2およびR1は先に定義した通りであり、YはOまたはSでありかつRN3は必要に応じて置換されたC1-20アルキル、C5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリルからなる群より選択される]により表される本発明の化合物は、式13の化合物の、式RN3NCY(式中、YおよびRN3先に定義した通りである)の化合物との反応、すなわち、溶媒、例えばジクロロメタンの存在のもとで、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。
【0169】
式RN3NCYの化合物は市販されているかまたは化学文献に報じられた方法により合成することができる。
【0170】
XがNRXであり、RXがスルホニル部分である本発明の化合物、従って式17:
【化25】

【0171】
[式中、R、n、RC1、RC2およびR1は先に定義した通りでありかつRS1は必要に応じて置換されたC1-20アルキル、C5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリルからなる群より選択される]により表すことができる本発明の化合物は、式13の化合物の、式RS1SO2Cl[式中、RS1は先に定義した通りである]の化合物との、場合により塩基、例えばピリジン、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンの存在のもとで、場合により溶媒、例えばジクロロメタンの存在のもとで、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。
【0172】
式RS1SO2Clの化合物は市販されているかまたは化学文献に報じられた方法により合成することができる。
【0173】
XがNRX(式中、RXは必要に応じて置換されたC1-20アルキルまたはC3-20ヘテロシクリルからなる群より選択される)である本発明の化合物、従って式18:
【化26】

【0174】
[式中、R、n、RC1、RC2およびR1は先に定義した通りでありかつRC4およびRC5はそれぞれ個々に、H、必要に応じて置換されたC1-20アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリルからなる群より選択されるか、または一緒に、必要に応じて置換されたC3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル基を形成してもよい]で表すことができる本発明の化合物は、式13の化合物の、式RC4CORC5(RC4およびRC5は先に定義した通りである)の化合物との反応、すなわち、還元剤、例えばナトリウムシアノボロハイドライドまたはナトリウムトリアセトキシボロヒドリドの存在のもとで、溶媒、例えばメタノールの存在のもとで、場合により酸触媒、例えば酢酸のもとで、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。
【0175】
式RC4CORC5の化合物は市販されているかまたは化学文献に報じられた方法により合成することができる。
【0176】
XがCRXRY(式中、RXは必要に応じて置換されたスルホンアミノでありかつRYはHである)である本発明の化合物は、式19:
【化27】

【0177】
[式中、R、RC1、RC2およびR1は先に定義した通りであり、RN4は必要に応じて置換されたC1-20アルキル、C5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリルからなる群より選択され、かつRS2は必要に応じて置換されたC1-20アルキル、C5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリルはからなる群より選択される]により表すことができ、式20:
【化28】

【0178】
の化合物の、式RS2SO2Clの化合物(式中、RS2は先に定義した通りである)との反応、すなわち、場合により塩基、例えばピリジン、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンの存在のもとで、溶媒、例えばジクロロメタンの存在のもとで、0℃〜使用溶媒沸点の温度における反応により合成することができる。式20の化合物は先に考察したように合成することができる。
【0179】
使用
本発明は、PARPの活性を阻害するのに特に活性のある活性化合物を提供する。
【0180】
本明細書中で用いられる用語「活性」は、PARP活性を阻害しうる化合物を意味し、特に、固有活性を有する化合物(薬剤)さらにはかかる化合物のプロドラッグ(プロドラッグはそれ自体では固有活性をほとんどもしくはまったく呈しえない)の両方を包含する。
【0181】
特定の化合物により提供されるPARP阻害を評価するために便利に使用しうるアッセイの一例を以下の実施例に記載する。
【0182】
本発明はさらに、細胞においてPARPの活性を阻害する方法を提供する。この方法は、該細胞を有効量の活性化合物(好ましくは、製薬上許容される組成物の形態をとる)に接触させるステップを含む。かかる方法は、in vitroまたはin vivoで実施することができる。
【0183】
例えば、細胞のサンプルをin vitroで増殖させ、活性化合物を前記細胞に接触させ、そしてその細胞に及ぼす化合物の効果を観測することができる。「効果」の例として、特定の時間で行われるDNA修復の量を測定することが可能である。活性化合物が細胞に影響を及ぼすことが判明した場合、これは、同一の細胞型の細胞を有する患者を治療する方法における化合物の効力の予後マーカーまたは診断マーカーとして使用可能である。
【0184】
病態の治療に関連して本明細書中で用いられる用語「治療」は、ヒトを対象とするか動物を対象とするか(例えば獣医学的用途)を問わず、一般的に、なんらかの所望の治療効果、例えば、病態の進行の阻害(進行速度の減少、進行速度の停止、病態の改善、および病態の治癒を包含する)が達成される治療や療法を意味する。予防手段としての治療(すなわち予防)もまた包含される。
【0185】
本明細書中で用いられる用語「補助剤」は、既知の治療手段と併行して活性化合物を使用することを意味する。かかる手段としては、さまざまなタイプの癌の治療に使用される薬剤および/または電離放射線の細胞傷害性レジームが挙げられる。特に、活性化合物は、癌の治療で使用されるトポイソメラーゼ毒類(例えば、トポテカン、イリノテカン、ルビテカン)、既知のアルキル化剤のほとんど(例えば、DTIC、テモゾラミド)、および白金系薬剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン)をはじめとする多くの癌化学治療薬の作用を増強することがわかっている。
【0186】
活性化合物はまた、例えば、in vitroにおいて既知の化学治療薬または電離放射線治療に対する細胞の感受性を増大させるために、PARPを阻害する細胞培養添加剤として使用することも可能である。
【0187】
活性化合物はまた、例えば、対象化合物による治療が候補宿主で奏効する可能性があるかどうかを調べるために、in vitroアッセイの一部として使用することも可能である。
【0188】
投与
活性化合物または活性化合物を含む医薬組成物は、全身的/末梢的であるか所望の作用の部位であるかを問わず、任意の好適な投与経路により、例えば、限定されるものではないが、経口(例えば、摂取による)経路により、局所(例えば、経皮、鼻腔内、経眼、頬腔内、舌下など)経路により、経肺(例えば、口や鼻などを介してエアロゾルなどを用いる吸入療法または吹送療法による)経路により、経直腸経路により、経膣経路により、非経口経路により、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内、脊髄内、嚢内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、クモ膜下、胸骨内などへの注射により、皮下や筋肉内などへのデポ剤の埋植により、被験体に投与可能である。
【0189】
被験体は、真核生物、動物、脊椎動物、哺乳動物、齧歯動物(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科動物(例えば、マウス)、イヌ科動物(例えば、イヌ)、ネコ科動物(例えば、ネコ)、ウマ科動物(例えば、ウマ)、霊長動物、シミアン(例えば、サルもしくは類人猿)、サル(例えば、マーモセット、ヒヒ)、類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、ギボン)、またはヒトであってもよい。
【0190】
製剤
活性化合物を単独で投与してもよいが、1種以上の製薬上許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤、滑沢剤、または当業者に周知である他の材料、および場合により他の治療剤または予防剤と共に、少なくとも1種の以上で定義したような活性化合物を含む医薬組成物(例えば、製剤)として、それを提供することが好ましい。
【0191】
従って、本発明はさらに、以上で定義したような医薬組成物、ならびに1種以上の製薬上許容される担体、賦形剤、緩衝剤、アジュバント、安定化剤、または本明細書に記載されるような他の材料と共に少なくとも1種の以上で定義したような活性化合物を混合することを含む医薬組成物の作製方法を提供する。
【0192】
本明細書中で用いられる用語「製薬上許容される」は、妥当な便益/危険比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答、もしくは他の問題、または合併症を伴うことなく、健全な医学的判断の範囲内で、被験体(例えば、ヒト)の組織に接触させて使用するのに好適な化合物、材料、組成物、および/または投与製剤を意味する。それぞれの担体、賦形剤なども同様に、製剤の他方の成分と適合するという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0193】
好適な担体、希釈剤、賦形剤などは、標準的な薬学の教科書に見いだしうる。例えば、"Handbook of Pharmaceutical Additives", 2nd Edition (eds. M. Ash and I. Ash), 2001 (Synapse Information Resources, Inc., Endicott, New York, USA), "Remington's Pharmaceutical Sciences", 20th edition, pub. Lippincott, Williams & Wilkins, 2000; および "Handbook of Pharmaceutical Excipients", 2nd edition, 1994を参照されたい。
【0194】
製剤は、適宜、ユニット投与製剤の形態で提供可能であり、製薬技術分野で周知の任意の方法により調製可能である。かかる方法は、活性化合物と、1種以上の副成分を構成する担体とを一体化させる工程を含む。一般的には、製剤は、活性化合物と液体担体もしくは微細分割固体担体またはその両方とを均一かつ十分に一体化させてから必要であれば生成物を造形することにより、調製される。
【0195】
製剤は、液剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、シロップ剤、錠剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、アンプル剤、坐剤、膣坐剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、クリーム剤、スプレー剤、ミスト剤、フォーム剤、ローション剤、油剤、ボーラス剤、舐剤、またはエアロゾル剤の形態をとりうる。
【0196】
経口投与(例えば、摂取による)に好適な製剤は、それぞれ所定量の活性化合物を含有するカプセル剤、カシェ剤、もしくは錠剤のような個別ユニットとして、粉末剤もしくは顆粒剤として、水性もしくは非水性の液体中の溶液剤もしくは懸濁剤として、または水中油型液状乳剤もしくは油中水型液状乳剤として、ボーラス剤として、舐剤として、あるいはペースト剤として、提供可能である。
【0197】
錠剤は、場合により1種以上の副成分を用いて、圧縮や成形などの従来の手段により作製可能である。圧縮錠剤は、場合により、1種以上の結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、アカシア、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤または希釈剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えば、マグネシウムステアレート、タルク、シリカ)、崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコレート、架橋型ポビドン、架橋型ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、界面活性剤または分散剤または湿潤剤(例えば、ナトリウムラウリルスルフェート)、および保存剤(例えば、メチルp-ヒドロキシベンゾエート、プロピルp-ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸)と混合して、粉末または顆粒のような自由流動性形態の活性化合物を好適な機械で圧縮することにより調製可能である。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末状化合物の混合物を好適な機械で成形することにより作製可能である。錠剤は、場合により、コーティングや切込みを施すことが可能であり、所望の放出プロファイルを提供するさまざまな割合でヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを用いて内部の活性化合物の徐放または制御放出を提供するように製剤化することが可能である。錠剤は、場合により、胃以外の消化管部分で放出を提供すべく腸溶コーティングを施すことが可能である。
【0198】
局所投与(例えば、経皮、鼻腔内、経眼、頬腔内、および舌下)に好適な製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、粉末剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤、または油剤として製剤化可能である。他の選択肢として、製剤は、活性化合物と場合により1種以上の賦形剤または希釈剤とで含浸されたバンデージまたは絆創膏のような貼付剤またはドレッシングを包含する。
【0199】
口内局所投与に好適な製剤としては、風味付き基剤(通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント)中に活性化合物を含むロゼンジ剤、不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア)中に活性化合物を含むパステル剤、および好適な液体担体中に活性化合物を含む洗口剤が挙げられる。
【0200】
同様に、眼への局所投与に好適な製剤としては、活性化合物が好適な担体(特に、活性化合物用の水性溶媒)中に溶解または懸濁されている点眼剤が挙げられる。
【0201】
担体が固体であるときの経鼻投与に好適な製剤としては、例えば約20〜約500ミクロンの範囲内の粒子サイズを有する粗末剤が挙げられる。これは、鼻呼吸する方法で、すなわち、鼻のすぐ近くに保持された粉末剤の容器から鼻道を介して迅速な吸入を行うことにより、投与される。経鼻スプレー、点鼻剤などとして、またはネブライザーによるエアロゾル投与により、投与に供される、担体が液体であるときの好適な製剤としては、活性化合物の水性もしくは油性の溶液剤が挙げられる。
【0202】
吸入による投与に好適な製剤としては、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適なガス)を用いて加圧パックからエアロゾルスプレーとして提供されるものが挙げられる。
【0203】
皮膚を介する局所投与に好適な製剤としては、軟膏剤、クリーム剤、および乳剤が挙げられる。軟膏剤の形態で製剤化する場合、活性化合物は、場合により、パラフィン系軟膏基剤または水混和性軟膏基剤のいずれかと併用可能である。他の選択肢として、活性化合物は、水中油型クリーム基剤を用いてクリーム剤の形態で製剤化可能である。所望により、クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも約30%w/wの多価アルコール、すなわち、2個以上のヒドロキシル基を有するアルコール、例えば、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、およびポリエチレングリコール、ならびにそれらの混合物を含みうる。局所製剤は、望ましくは、皮膚または他の罹患領域を介する活性化合物の吸収または浸透を促進する化合物を含みうる。かかる真皮浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよびその関連類似体が挙げられる。
【0204】
局所乳剤として製剤化する場合、油性相は、場合により、乳化剤(エマルジェントとしても知られる)だけを含みうるか、または少なくとも1種の乳化剤と脂肪もしくは油または脂肪および油の両方との混合物を含みうる。好ましくは、親水性乳化剤は、安定化剤として作用する新油性乳化剤と一緒に含まれる。また、油および脂肪の両方を含むことが好ましい。乳化剤(複数種可)は、安定化剤(複数種可)の有無を問わず、一緒に、いわゆる乳化ワックスを構成し、ワックスは、油および/または脂肪と一緒に、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。
【0205】
好適な乳濁化剤および乳剤安定化剤としては、トゥイーン60(Tween 60)、スパン80(Span 80)、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアレート、およびナトリウムラウリルスルフェートが挙げられる。医薬エマルジョン製剤で使用される可能性のあるほとんどの油への活性化合物の溶解性は、非常に低い可能性があるので、製剤に好適な油または脂肪の選択は、所望の化粧特性を達成することに基づく。従って、クリーム剤は、好ましくは、チューブまたは他の容器からの漏れを防止するのに好適な粘稠度を有する非グリース性、非汚染性、かつ可洗性の製剤であることが望ましい。直鎖状もしくは分岐鎖状の一塩基性もしくは二塩基性のアルキルエステル、例えば、ジ-イソアジペート、イソセチルステアレート、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、イソプロピルミリステート、デシルオレエート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、2-エチルヘキシルパルミテート、またはクロダモルCAP(Crodamol CAP)として知られる分岐鎖状エステルのブレンドを使用することが可能であり、最後の3つが、好ましいエステルである。これらは、所要の性質に依存して単独でまたは組合せで使用可能である。他の選択肢として、高融点脂質、例えば、白色ワセリンおよび/または流動パラフィンまたは他の鉱油を使用することが可能である。
【0206】
経直腸投与に好適な製剤は、ココアバターやサリチレートなどを含む好適な基剤を用いて坐剤として提供することが可能である。
【0207】
経膣投与に好適な製剤は、活性化合物に加えて当技術分野で適切であることが知られている担体を含有する膣坐剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤、またはスプレー製剤として提供することが可能である。
【0208】
非経口投与(例えば、皮膚、皮下、筋肉内、静脈内、皮内などへの注射による)に好適な製剤としては、水性および非水性で等張性で発熱原を含まない無菌注射溶液剤(抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、安定化剤、静菌剤、および製剤を対象のレシピエントの血液と等張になるようにする溶質を含有していてもよい)、ならびに水性および非水性の無菌懸濁剤(懸濁化剤および粘稠化剤を含んでいてもよい)、さらには血液成分または1つ以上の器官に化合物をターゲッティングするようにデザインされたリポソームまたは他の微粒子系が挙げられる。かかる製剤で使用するのに好適な等張性媒体の例としては、食塩注射液、リンゲル液、または乳酸加リンゲル注射液が挙げられる。典型的には、溶液中の活性化合物の濃度は、約1ng/ml〜約10μg/ml、例えば、約10ng/ml〜約1μg/mlである。製剤は、ユニット用量またはマルチ用量の密閉容器(例えば、アンプルおよびバイアル)に入れて提供可能であり、そして使用直前に無菌液体担体(例えば、注射用水)の添加だけを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することが可能である。即時注射用の溶液剤および懸濁剤は、無菌の粉末剤、顆粒剤、および錠剤から調製可能である。製剤は、血液成分または1つ以上の器官に活性化合物をターゲッティングするようにデザインされたリポソームまたは他の微粒子系の形態をとりうる。
【0209】
投与量
当然のことであろうが、活性化合物および活性化合物を含む組成物の適切な投与量は、患者ごとに異なる可能性がある。最適投与量を決定するには、一般的には、本発明に係る治療に伴うなんらかの危険性または有害な副作用に対して治療効果のレベルを比較評価することが必要であろう。選択される投与レベルは、特定の化合物の活性、投与の経路、投与の時期、化合物の排泄速度、治療の継続期間、組み合わせて使用される他の薬剤、化合物、および/または材料、ならびに患者の年齢、性別、体重、病態、全般的健康状態、および既往歴など(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとするさまざまな因子に依存するであろう。化合物の量および投与の経路は、最終的には、医師の自由裁量にゆだねられるであろうが、一般的には、実質的に危険もしくは有害な副作用を引き起こすことなく所望の効果を達成する局所濃度が作用部位で得られる投与量が用いられるであろう。
【0210】
in vivo投与は、治療の全期間にわたり、1回投与方式、連続方式、または断続方式(例えば、適切な間隔をあけて分割投与方式)で、行うことが可能である。最も効果的な投与手段および投与量を決定する方法は、当業者に周知であり、治療に用いられる製剤、治療の目的、治療対象の標的細胞、および治療対象の被験体によって異なるであろう。単回もしくは複数回の投与は、治療医により選択される用量レベルおよびパターンで行うことが可能である。
【0211】
一般的には、活性化合物の好適な用量は、被験体の体重1キログラムあたり1日約100μg〜約250mgの範囲内である。活性化合物が塩、エステル、プロドラッグなどである場合、投与量は、親化合物を基準にして計算されるので、使用される実際の重量は、比例的に増大される。
【実施例】
【0212】
実施例1と2のための一般的実験方法
分取HPLC
計器:Waters ZMD LC-MSシステムNo. LD352、エレクトロスプレーイオン化モードで動作。
【0213】
移動相A:水中0.1%ギ酸
移動相B:アセトニトリル中0.1%ギ酸
カラム:Genesis C18 4μm 50x4.6mm
グラジエント:

流速:1.0ml/min.
PDA走査範囲:210-400nm.
代わりの分取HPLC(+で示した場所で使用)
計器:Waters Acquity UPLC/Wtaers SQD、エレクトロスプレーイオン化モードで動作。
【0214】
移動相A:水中0.1% ギ酸。
【0215】
移動相B:アセトニトリル中 0.1% ギ酸。
【0216】
カラム:Acquity UPLC BEH C18 1.7μm 50x2.1mm。
【0217】
グラジエント:

流速:0.6ml/min。
【0218】
PDA走査範囲:210-400nm。
【0219】
ELSD条件:ドリフトチューブ50Cネビュライザー20℃(30%)、ガス50psi。
【0220】
(実施例1)
【化29】

【0221】
(a) 3-(3-オキソ-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イソベンゾフラン-1-イリデンメチル)-ベンゾニトリル(2)
4,5,6,7-テトラヒドロ-イソベンゾフラン-1,3-ジオン(1)(3.043g,20.0mmol)と3-シアノフェニル酢酸(3.15g,19.8mmol)を、酢酸ナトリウム(20.1mg,0.243mmol)の存在のもとで、240℃へ「Wood's Alloy」浴を用いて加熱した。反応物が240℃に到達すると、追加量の酢酸ナトリウム(20.1mg,0.243mmol)を加えた。次いで反応混合物をさらに40分間加熱し、次いで80℃へ冷却した。エタノール(20ml)を濃厚なガム状物に加え、その混合物を30分間攪拌した。得られる懸濁液を周囲温度へ冷却して濾過した。固体をさらに、追加の冷エタノール(2x4ml)により洗浄し、乾燥して所望の生成物を幾何異性体の混合物として得た。LC-MSの主ピークは(3.5g、94%純度)であって、さらなる精製を必要としなかった;m/z(LC-MS、ESP)、RT=4.75分(イオン化は観察されず)。
【0222】
(b) 3-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-ベンゾニトリル(3)
3-(3-オキソ-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イソベンゾフラン-1-イリデンメチル)-ベンゾニトリル(2)(3.5g、13.9mmol)の水(20ml)中の懸濁液に、ヒドラジン水和物(1.0ml、20.0mmol)を滴下して処理し、次いで8時間還流した。その混合物をほぼ5℃へ冷却し、得られる懸濁液を濾過し、水(4ml)とジエチルエーテル(4ml)を用いて洗浄した。その物質を次いで真空乾燥した。LC-MSの主ピークは(1.8g、91%純度)であって、さらなる精製を必要としなかった;m/z(LC-MS、ESP)、RT=3.24分(M+H 266)。
【0223】
(c) 3-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-安息香酸(4)
3-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-ベンゾニトリル(3)(1.31g、4.93mmol)の水(10ml)中の懸濁液に水酸化ナトリウム(987mg、24.7mmol)を加え、4時間90℃にて加熱した。その混合物を次いで冷却し、硫酸でpHを2に調節した(約6ml 4N)。クリーム状沈殿物を生じ、これを濾過により単離して乾燥した。LC-MSの主ピークは(1.1g、99%純度)であって、さらなる精製を必要としなかった;m/z(LC-MS、ESN)、RT=3.10分(M+H 283.4)。
【0224】
(d) ライブラリー合成(5a〜5h)
3-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-安息香酸(4)(20mg、0.07mmol)のDCM(1ml)中の溶液に、HBTU(53mg、0.140mmol)、トリエチルアミン(20μl、0.140mol)およびアミン(0.140mmol)を加えた。反応 混合物を18時間室温にて攪拌し そして真空で濃縮した。粗サンプルを分取HPLC精製で処理した。
【化30】



【0225】
(実施例2)
【化31】

【0226】
(a) 3-(3-ブロモ-4-フルオロ-ベンジリデン)-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イソベンゾフラン-1-オン(6)
4,5,6,7-テトラヒドロ-イソベンゾフラン-1,3-ジオン(1)(16.7g、109.7mmol)と3-ブロモ-4-フルオロフェニル酢酸(15.0g、64.37mmol)を、酢酸ナトリウム(0.259g、3.160mmol)の存在のもとで210℃へ「Wood’s Alloy」浴を用いて4.5時間加熱した。反応混合物を次いで坩堝中に注ぎ、冷却して結晶固体を得た。その固体を乳鉢と乳棒で粉砕し、エタノール(20ml)を用いて摺り砕いた。得られる懸濁液を次いで濾過し、さらなるエタノール(10ml)を用いて洗浄した。その固体を次いで乾燥して所望の生成物を幾何異性体の混合物として得た。LC-MSの主ピークは(20.78g、94%純度)であって、さらなる精製を必要としなかった;m/z(LC-MS、ESP)、RT=4.74分(イオン化は観察されない)。
【0227】
(b) 4-(3-ブロモ-4-フルオロ-ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-2H-フタラジン-1-オン(7)
水(150ml)中に懸濁した3-(3-ブロモ-4-フルオロ-ベンジリデン)-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イソベンゾフラン-1-オン(6)(cis/trans混合物)(20.78g、64.3mmol)に、ヒドラジン水和物(12.5ml、257.2mmol)を加えた。反応物を85℃へ18時間加熱し、次いで室温へ冷却した。ベージュ色の懸濁液を濾過により単離し、水(1x50ml)、ヘキサン(1x50ml)、およびエーテル(1x25ml)を用いて洗浄した後、真空オーブンで一晩乾燥した。LC-MSの主ピークは(19.1g、91%純度)であって、さらなる精製を必要としなかった;m/z(LC-MS、ESP)、RT=3.92分(M+H 337および339)。
【0228】
(c) 2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-ベンゾニトリル(8)
乾燥DMF(95ml)中の4-(3-ブロモ-4-フルオロ-ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-2H-フタラジン-1-オン(7)(9.53g、28.2mmol)の溶液に、シアン化銅(I)(3.5g、42.3mmol)を一度に加えた。その混合物を160℃に18時間加熱した。反応物を次いで冷却し、セライトを通して濾過し、メタノールを用いて洗浄した。濾液を真空で濃縮して褐色の油を得た。LC-MSの主ピークは(8.01g、66%純度)であって、粗製のまま次の反応に使用した;m/z(LC-MS、ESP)、RT=3.50分(M+H 284.3)。
【0229】
(d) 2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-安息香酸(9)
粗2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イルメチル)ベンゾニトリル(9.9g、34.9mmol)を水(245ml)中に懸濁し、水酸化ナトリウム(6.98g、174mmol)で処理した。混合物を60℃に18時間加熱した。反応物を次いで5℃に冷却し、濃硫酸を沈殿を形成するまで滴状で加えた(約10ml、pH2)。懸濁液を10分間5℃で攪拌しそして濾過した。単離した固体を水(2x8ml)を用いて洗浄し、DCM(20ml)と共に摺り潰した後に乾燥した。LC-MSの単一ピークは(4.48g、98%純度)であって、さらなる精製をしないで次ステップへ送った;m/z(LC-MS、ESN)、RT=1.96分(M-H 301.3)。
【0230】
(e) ライブラリー合成(10a〜10m)
2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-安息香酸(22mg、0.07mmol)のDMA(1ml)中の溶液にHBTU(53mg、0.140mmol)、トリエチルアミン(20μl、0.140mol)およびアミン(0.140mmol)を加えた。粗反応混合物を18時間室温で攪拌し、次いで分取HPLCで精製した。
【化32】





【0231】
実施例3〜8に対する一般的実験方法
分析用LC-MS
LC-MSデータを作製したシステムは次の通りであり、HPLC要素は一般にAgilent1100、Waters Alliance HT(2790 & 2795)装置またはHP1100ポンプおよびダイオードアレイから構成され、CTCオートサンプラーを備えかつPhenomenex Gemini C185mm、50x2 mmカラム(または類似品)上で、酸性溶出液[例えば、4分間にわたるグラジエント、0〜95%の水/アセトニトリルと5%の50:50 水:アセトニトリル(v/v)中の1%ギ酸混合物;またはアセトニトリルの代わりにメタノールによる等価の溶媒系を用いる];または塩基性溶出液[例えば、4分間にわたるグラジエント、0〜95%の水/アセトニトリルと5%のアセトニトリル中の0.1% 880アンモニア混合物を用いる]で溶出し;そしてMS構成要素は一般に適当な質量範囲を走査するWaters ZQ質量分析計から成った。エレクトロスプレイ(ESI)陽および陰ベースピーク強度に対するクロマトグラムおよび220〜300nmからのUV総吸収クロマトグラムを作製し、m/zの値を得た;一般に親質量を示すイオンだけを報じ、特に断らない限り、引用した値は陽イオンモードに対する(M+H)+および陰イオンモードに対する(M-H)-である。
【0232】
NMRスペクトル
記載のNMRデータは400MHzで、例えば、Bruker DPX-400分光計を用いて測定し、δ値の形で、主な診断プロトンについて百万分の一(ppm)の単位で与えた。使用した溶媒は、特に断わらない限り、CDCl3(内部標準としてテトラメチルシランを用いた)またはDMSO-d6であった。次の略語を用いた:s、1重項;d、2重項;t、3重項;q、4重項;m、多重項;br、広域。
【0233】
(実施例3)
【化33】

【0234】
(a) Tert-ブチル4-(N-メチルシクロプロパンスルホンアミド)ピペリジン-1-カルボキシラート(12)
tert-ブチル4-(メチルアミノ)ピペリジン-1-カルボキシラート(11)(2g、9.33mmol)のジクロロメタン(40ml)中の溶液に、トリエチルアミン(2.60ml、18.67mmol)を加えた。次いで、シクロプロパンスルホニルクロリド(1.188ml、11.67mmol)を2分間にわたって滴下した。得られる溶液を周囲温度で20時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(ほぼ50ml)を加えて混合物を5分間攪拌した。有機相を次いで分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして乾燥し、粗製の所望生成物をコハク色の油として得て(3.40g、>100%)、これを静置すると固化した;1H NMR (400.132 MHz, CDCl3) δ 0.95 - 1.00 (2H, m), 1.17 - 1.21 (2H, m), 1.32 - 1.38 (1H, m), 1.47 (9H, s), 1.58 - 1.77 (3H, m), 2.26 - 2.32 (1H, m), 2.71 - 2.80 (2H, m), 2.81 (3H, s), 3.83 - 3.91 (1H, m), 4.17 - 4.26 (2H, m)。これをさらに精製することなく使用し、100%収率と仮定した。
【0235】
(b) N-メチル-N-(ピペリジン-4-イル)シクロプロパンスルホンアミド(13)
tert-ブチル4-(N-メチルシクロプロパンスルホンアミド)ピペリジン-1-カルボキシラート(12)(2.96g、9.3mmol)のジクロロメタン(20ml)中の溶液を、トリフルオロ酢酸(7.16ml、93.00mmol)を用いて処理した。得られる溶液を周囲温度で4時間攪拌し、次いでSCX-2カラム(50g)に直接注いだ。カートリッジを逐次、DCM(200ml)およびメタノール(150ml)を用いて溶出した後、所望の生成物をカラムから、2M NH3/MeOH(200ml)を用いて溶出し、これを蒸発乾固して所望の化合物をワックス状の黄色固体(1.800g、89%)として得た;1H NMR (400.132 MHz, DMSO) δ 0.91 - 0.96 (4H, m), 1.55 - 1.64 (4H, m), 2.44 - 2.52 (2H, m), 2.55 - 2.62 (1H, m), 2.72 (3H, s), 2.94 - 3.00 (2H, m), 3.55 - 3.65 (1H, m)。
【0236】
(c) N-(1-(2-フルオロ-5-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)ベンゾイル)ピペリジン-4-イル)-N-メチルシクロプロパンスルホンアミドメチルシクロプロパンスルホンアミド(14)
2-フルオロ-5-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)安息香酸(9)(200mg、0.66mmol)のN,N-ジメチルアセトアミド(6ml)中の溶液を、トリエチルアミン(0.250ml、1.79mmol)およびN-メチル-N-(ピペリジン-4-イル)シクロプロパンスルホンアミド(13)(150mg、0.69mmol)を用いて処理した。O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(344mg、0.91mmol)を次いで加え、反応混合物を周囲温度にて、窒素下で6時間攪拌した。反応混合物を次いで水(50ml)中に注ぎ、得られる固体を濾過して粗生成物を粘着性の暗褐色固体として得た。濾液に2M HClを加えてpH4〜5に調節し、DCM(2x75ml)を用いて抽出した。組合わせた抽出物を、上記の濾過した固体と組合わせ、混合物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、蒸発させ、粗生成物を得て、これを分取HPLC(Waters XBridge Prep C18 OBD カラム、5μシリカ、19mm径、100mm長)により、水(1%NH3を含有する)とMeCNの低下する極性の混合物を溶出液として用いて、精製した。所望の化合物を含有する画分を組合わせた後に、蒸発乾固し、凍結乾燥して生成物をガム状物あとして得た。これを最小量のジクロロメタン中に再溶解し、静置して蒸発させ、そして真空で、65℃にて、4時間真空乾燥して所望の化合物を黄褐色の泡状物(128mg、38.5%収率、LC-MSによる純度100%)として得た;1H NMR (399.902 MHz, DMSO) δ 0.96 (4H, d), 1.54 - 1.80 (8H, m), 2.35 - 2.40 (4H, m), 2.60 - 2.66 (1H, m), 2.73 (3H, s), 2.80 - 2.91 (1H, m), 3.11 - 3.20 (1H, m), 3.36 - 3.42 (1H, m), 3.84 - 3.93 (1H, m), 3.93 (2H, s), 4.56 - 4.62 (1H, m), 7.19 - 7.33 (3H, m), 12.62 (1H, s); m/z (LC-MS, ESI+), RT=1.70 (M+H 503.5)。
【0237】
(実施例4)
【化34】

【0238】
(a) エチル1-(2-フルオロ-5-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)ベンゾイル)ピペリジン-4-カルボキシラート(15)
2-フルオロ-5-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)安息香酸(9)(3g、9.92mmol)のN,N-ジメチルアセトアミド(90ml)中の部分溶液を、エチルイソニペコタート(1.9ml、12.34mmol)およびトリエチルアミン(3.5ml、25.11mmol)を用いて処理した。O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(4.89g、12.90mmol)を次いで小分けして5分間にわたり加えた。反応混合物を次いで周囲温度にて窒素下で一晩攪拌した後、水(ほぼ500ml)中に注いだ。混合物のpHをpH 11〜12からpH 7へ2M HClを滴状で加えて調節した。得られる固体を吸引濾過により採集して粗生成物を褐色粘着性ガム状物として得て、これをDCM(ほぼ200ml)に再溶解し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、蒸発させて褐色の油/ガムを得た。濾液もDCM(500ml)を用いて抽出し、有機抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、蒸発させて暗色のコハク色のガム状物を得た。両方の粗生成物を組合わせ、フラッシュシリカクロマトグラフィ、グラジエントDCM中の0〜20%MeOHにより精製した。生成物を含有する画分を蒸発乾固し、フラッシュシリカクロマトグラフィ、溶出グラジエントEtOAc中の0〜10%MeOHにより再精製した。純粋な画分を蒸発乾固し、所望の化合物を淡黄色のガム状物(1.900g、43.4 %)として得た;1H NMR (400.132 MHz, CDCl3) δ 1.26 (3H, t), 1.66 - 1.89 (7H, m), 2.00 - 2.06 (1H, m), 2.33 - 2.40 (2H, m), 2.52 - 2.61 (3H, m), 3.03 - 3.16 (2H, m), 3.51 - 3.58 (1H, m), 3.88 (2H, s), 4.16 (2H, q), 4.49 - 4.55 (1H, m), 7.03 (1H, t), 7.17 - 7.21 (2H, m), 10.64 (1H, s); m/z (LC-MS, ESI+), RT=1.92 (M+H 442.5)。
【0239】
(b) 1-(2-フルオロ-5-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)ベンゾイル)ピペリジン-4-カルボン酸(16)
エチル1-(2-フルオロ-5-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)ベンゾイル)ピペリジン-4-カルボキシラート(15)(1.9g、4.30mmol)のエタノール(30ml)中の溶液を水酸化リチウム一水和物(0.397g、9.47mmol)の水(7.50ml)中の溶液を用いて処理した。得られる溶液を周囲温度で19時間攪拌した。
【0240】
得られる混合物を蒸発乾固し、残留物を水(50ml)中に再溶解し、DCM(ほぼ20ml)を用いて洗浄し、その水溶液を攪拌しながら2M HClを滴状で加えることによりpH 3に調節した。得られる沈殿物を吸引濾過により採集し、60℃にて2時間真空乾燥し、所望の化合物を黄褐色の固体(1.000g、56.2%)として得た;1H NMR (400.132 MHz, CDCl3) δ 1.66 - 1.92 (7H, m), 2.05 - 2.13 (1H, m), 2.29 - 2.69 (5H, m), 3.10 - 3.18 (2H, m), 3.54 - 3.60 (1H, m), 3.86 - 3.96 (2H, m), 4.45 - 4.52 (1H, m), 7.01 - 7.12 (2H, m), 7.21 - 7.26 (1H, m), 12.58 - 12.98 (1H, brs) [OHは非存在/交換されたと仮定した];m/z (LC-MS, ESI+), RT=0.82 (M+H 414.5)。
【0241】
(c) ライブラリー合成
1-(2-フルオロ-5-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)ベンゾイル)ピペリジン-4-カルボン酸(16)(896mg、2.17mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド(18ml)に希釈し、溶液をトリエチルアミン(0.8ml、5.74mmol)およびO-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(1.1g、2.90mmol)を用いて処理した。得られる黄色溶液を周囲温度で25分間攪拌してストック溶液を得た。所望のアミンのそれぞれ(0.41〜0.46mmol)に、2.35mlのストック溶液を加え、その反応混合物を周囲温度で一晩攪拌した。粗反応混合物を濾過した後、分取HPLC(Waters XBridge Prep C18 OBDカラム、5μシリカ、19mm径、100mm長)により、溶出液として水(1%NH3を含有する)とMeCNの低下する極性混合物を用いて精製した。所望の化合物を含有する画分を蒸発乾固し、凍結乾燥し、高真空で乾燥して所望の化合物を得た。
【化35】


【0242】
17a: N-ベンジル-1-[2-フルオロ-5-[(4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-3H-フタラジン-1-イル)メチル]ベンゾイル]ピペリジン-4-カルボキサミド; 1H NMR (399.902 MHz, DMSO) δ 1.36 - 1.65 (7H, m), 1.73 - 1.80 (1H, m), 2.28 - 2.33 (4H, m), 2.72 - 2.84 (2H, m), 2.93 - 3.03 (1H, m), 3.31 - 3.37 (1H, m), 3.85 (2H, s), 4.14 - 4.25 (2H, m), 4.38 - 4.44 (1H, m), 7.09 - 7.34 (8H, m), 8.28 (1H, t), 12.53 (1H, s)。
【0243】
17b: N-シクロブチル-1-[2-フルオロ-5-[(4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-3H-フタラジン-1-イル)メチル]ベンゾイル]ピペリジン-4-カルボキサミド; 1H NMR (399.902 MHz, DMSO) δ 1.38 - 1.53 (2H, m), 1.58 - 1.66 (7H, m), 1.73 - 1.79 (1H, m), 1.81 - 1.91 (2H, m), 2.09 - 2.18 (2H, m), 2.33 - 2.42 (4H, m), 2.76 - 2.90 (2H, m), 2.98 - 3.08 (1H, m), 3.36 - 3.43 (1H, m), 3.93 (2H, s), 4.17 (1H, sextet), 4.43 - 4.50 (1H, m), 7.15 - 7.30 (3H, m), 8.03 (1H, d), 12.60 (1H, s)。
【0244】
17c: N-(シクロプロピルメチル)-1-[2-フルオロ-5-[(4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-3H-フタラジン-1-イル)メチル]ベンゾイル]ピペリジン-4-カルボキサミド; 1H NMR (399.902 MHz, DMSO) δ 0.13 - 0.17 (2H, m), 0.38 - 0.42 (2H, m), 0.84 - 0.94 (1H, m), 1.42 - 1.57 (2H, m), 1.59 - 1.68 (5H, m), 1.75 - 1.82 (1H, m), 2.36 - 2.44 (5H, m), 2.83 (1H, td), 2.95 (2H, t), 3.00 - 3.09 (1H, m), 3.38 - 3.44 (1H, m), 3.94 (2H, s), 4.44 - 4.52 (1H, m), 7.17 - 7.31 (3H, m), 7.88 (1H, t), 12.61 (1H, s)。
【0245】
17d: 1-[2-フルオロ-5-[(4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-3H-フタラジン-1-イル)メチル]ベンゾイル]-N-(2-メチルプロピル)ピペリジン-4-カルボキサミド; 1H NMR (399.902 MHz, DMSO) δ 0.83 (6H, d), 1.41 - 1.57 (2H, m), 1.59 - 1.72 (6H, m), 1.75 - 1.81 (1H, m), 2.35 - 2.44 (5H, m), 2.77 - 2.89 (3H, m), 2.99 - 3.08 (1H, m), 3.37 - 3.44 (1H, m), 3.93 (2H, s), 4.44 - 4.50 (1H, m), 7.16 - 7.30 (3H, m), 7.79 (1H, t), 12.60 (1H, s)。
【0246】
17e: 4-[[4-フルオロ-3-[4-(モルホリン-4-カルボニル)ピペリジン-1-カルボニル]フェニル]メチル]-5,6,7,8-テトラヒドロ-2H-フタラジン-1-オン; 1H NMR (399.902 MHz, DMSO) δ 1.41 - 1.68 (7H, m), 1.71 - 1.78 (1H, m), 2.35 - 2.42 (4H, m), 2.84 - 2.97 (2H, m), 3.06 - 3.14 (1H, m), 3.36 - 3.61 (9H, m), 3.93 (2H, s), 4.45 - 4.51 (1H, m), 7.17 - 7.30 (3H, m), 12.61 (1H, s)。
【0247】
17f: 4-[[4-フルオロ-3-[4-(2-メチルピペリジン-1-カルボニル)ピペリジン-1-カルボニル]フェニル]メチル]-5,6,7,8-テトラヒドロ-2H-フタラジン-1-オン; 1H NMR (399.902 MHz, DMSO)推定回転異性体による複合NMR。
【0248】
17g: N-(2-ジメチルアミノエチル)-1-[2-フルオロ-5-[(4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-3H-フタラジン-1-イル)メチル]ベンゾイル]-N-メチルピペリジン-4-カルボキサミド; 1H NMR (399.902 MHz, DMSO)複合NMR。
【0249】
17h: N-[1-[1-[2-フルオロ-5-[(4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-3H-フタラジン-1-イル)メチル]ベンゾイル]ピペリジン-4-カルボニル]ピペリジン-4-イル]-N-メチルシクロプロパンスルホンアミド; 1H NMR (399.902 MHz, DMSO)複合NMR。
【0250】
(実施例5)
【化36】

【0251】
(a) 4-(4-フルオロ-3-(4-(2-メトキシエトキシ)ピペリジン-1-カルボニル)ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロフタラジン-1(2H)-オン(18a)
2-フルオロ-5-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)安息香酸(9)(153mg、0.51mmol)のN,N-ジメチルアセトアミド(4mL)中の溶液を、4-(2-メトキシエトキシ)ピペリジンヒドロクロリド(103mg、0.53mmol)およびトリエチルアミン(0.212mL、1.52mmol)を用いて処理した。O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(253mg、0.67mmol)を加え、得られる溶液を周囲温度で3時間攪拌した。粗反応混合物を濾過し、濾液を分取HPLC(Waters XBridge Prep C18 OBD カラム、5μシリカ、19mm径、100mm長)により、水(1%NH3を含有する)とMeCNの低下する極性混合物を溶出液として用いて精製した。所望の化合物を含有する画分を蒸発乾固し、凍結乾燥して生成物をガム状物を得て、これを少量のジエチルエーテルとDCM中に移しとり、蒸発させた後に真空で55℃にて2時間乾燥して所望の化合物を白色の泡状物として得た(112mg、49.9%収率;LC-MSで100%純度);1H NMR (400.132 MHz, DMSO) δ 1.30 - 1.50 (2H, m), 1.59 - 1.66 (4H, m), 1.72 - 1.79 (1H, m), 1.84 - 1.90 (1H, m), 2.35 - 2.40 (4H, m), 3.03 - 3.10 (1H, m), 3.25 (3H, s), 3.26 - 3.36 (2H, m), 3.44 (2H, t), 3.53 - 3.59 (3H, m), 3.90 - 4.00 (3H, m), 7.18 - 7.30 (3H, m), 12.60 (1H, s); m/z (LC-MS, ESI+), RT=1.46 (M+H 444.1)。
【0252】
(b) 上記方法を用いる生成物(18b〜18e)
(a)に記載したのと類似した手順を用いて、2-フルオロ-5-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)安息香酸(9)を一晩適当なピペリジンと反応させて下記の化合物を得た。
【化37】


【0253】
18b: 4-(4-フルオロ-3-(4-(4-メトキシフェノキシ)ピペリジン-1-カルボニル)ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロフタラジン-1(2H)-オン; 1H NMR (400.132 MHz, DMSO) δ 1.48 - 1.66 (6H, m), 1.80 - 1.88 (1H, m), 1.92 - 2.00 (1H, m), 2.35 - 2.40 (4H, m), 3.14 - 3.20 (1H, m), 3.35 - 3.50 (2H, m), 3.70 (3H, s), 3.90 - 4.01 (3H, m), 4.47 - 4.52 (1H, m), 6.83 - 6.87 (2H, m), 6.91 - 6.95 (2H, m), 7.20 - 7.30 (3H, m), 12.60 (1H, s)。
【0254】
18c: 4-(4-フルオロ-3-(4-(3-メトキシフェノキシ)ピペリジン-1-カルボニル)ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロフタラジン-1(2H)-オン; 1H NMR (400.132 MHz, DMSO) δ 1.49 - 1.68 (6H, m), 1.84 - 1.92 (1H, m), 1.96 - 2.04 (1H, m), 2.34 - 2.41 (4H, m), 3.16 - 3.25 (1H, m), 3.36 - 3.52 (2H, m), 3.73 (3H, s), 3.92 (2H, s), 3.94 - 4.03 (1H, m), 4.62 - 4.67 (1H, m), 6.50 - 6.59 (3H, m), 7.15 - 7.30 (4H, m), 12.60 (1H, s)。
【0255】
18d: 4-(4-フルオロ-3-(4-(2-メトキシフェノキシ)ピペリジン-1-カルボニル)ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロフタラジン-1(2H)-オン; 1H NMR (400.132 MHz, DMSO) δ 1.52 - 1.69 (6H, m), 1.80 - 1.88 (1H, m), 1.92 - 2.00 (1H, m), 2.35 - 2.40 (4H, m), 3.13 - 3.21 (1H, m), 3.38 - 3.51 (2H, m), 3.76 (3H, s), 3.90 - 4.02 (3H, m), 4.49 - 4.54 (1H, m), 6.85 - 7.05 (4H, m), 7.20 - 7.31 (3H, m), 12.60 (1H, s)。
【0256】
18e: 4-(4-フルオロ-3-(4-プロポキシピペリジン-1-カルボニル)ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロフタラジン-1(2H)-オン; 1H NMR (400.132 MHz, DMSO) δ 0.87 (3H, t), 1.30 - 1.54 (4H, m), 1.57 - 1.66 (4H, m), 1.71 - 1.78 (1H, m), 1.83 - 1.90 (1H, m), 2.34 - 2.40 (4H, m), 3.03 - 3.11 (1H, m), 3.28 - 3.40 (4H, m), 3.49 - 3.55 (1H, m), 3.89 - 3.99 (3H, m), 7.17 - 7.29 (3H, m), 12.59 (1H, s)。
【0257】
(実施例6)
【化38】

【0258】
(a) N-(1-(2-フルオロ-5-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)ベンゾイル)ピペリジン-4-イル)ベンズアミド(19)
2-フルオロ-5-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)安息香酸(9)(212mg、0.70mmol)のN,N-ジメチルアセトアミド(7ml)中の部分溶液を、N-ピペリジン-4-イル-ベンズアミド(157mg、0.77mmol)およびトリエチルアミン(0.250ml、1.79mmol)を用いて処理した。O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(356mg、0.94mmol)を次いで加え、その反応混合物を周囲温度にて窒素下で2時間攪拌した。反応混合物を0.45μmシリンジフィルターを通して濾過し、その濾液を分取HPLC(Waters XBridge Prep C18 OBDカラム、5μシリカ、19mm径、100mm長)により、水(1%NH3を含有する)とMeCNの低下する極性混合物を溶出液として用いて精製した。所望の化合物を含有する画分を組合わせ、そして、分取HPLC(Waters XBridge Prep C18 OBD カラム、5μ シリカ、19 mm径、100mm長)により、水(0.1%TFAを含有する)とMeCNの低下する極性混合物を溶出液として用いて精製した。所望の化合物を含有する画分を、イオン交換クロマトグラフィで処理し、蒸発乾固し、凍結乾燥して所望の化合物を白色の固体として得た(67.0 mg、19.6 %収率、LC-MSによる純度100%);1H NMR (400.132 MHz, DMSO) δ 1.40 - 1.66 (6H, m), 1.76 - 1.83 (1H, m), 1.88 - 1.95 (1H, m), 2.35 - 2.40 (4H, m), 2.93 - 3.00 (1H, m), 3.12 - 3.21 (1H, m), 3.38 - 3.45 (1H, m), 3.93 (2H, s), 4.04 - 4.14 (1H, m), 4.43 - 4.50 (1H, m), 7.16 (1H, dd), 7.22 - 7.32 (2H, m), 7.44 - 7.55 (3H, m), 7.82 - 7.86 (2H, m), 8.27 - 8.32 (1H, m), 12.61 (1H, s); m/z (LC-MS, ESI+), RT=1.88 (M+H 489.6)。
【0259】
(実施例7)
【化39】

【0260】
(a) 4-(4-フルオロ-3-(4-イソプロポキシピペリジン-1-カルボニル)ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロフタラジン-1(2H)-オン(20)
4-イソプロポキシピペリジンヒドロクロリド(119mg、0.66mmol)およびトリエチルアミン(0.203mL、1.46mmol)のDMF(2mL)中の溶液を一度に、2-フルオロ-5-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)安息香酸(9)(200mg、0.66mmol)、トリエチルアミン(0.203mL、1.46mmol)およびO-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(376mg、0.99mmol)のDMF(2mL)中の攪拌溶液に周囲温度で加えた。得られる溶液を4時間攪拌した。粗混合物を次いで分取HPLC(Waters XBridge Prep C18 OBD カラム、5μシリカ、30mm径、100mm長)により、水(1%NH3を含有する)およびMeCNの低下する極性混合物を溶出液として用いて精製した。所望の化合物を含有する画分を蒸発乾固し、凍結乾燥して所望の化合物をガム状物(87mg、30.8%収率、LC-MSによる純度98.5%)として得た;1H NMR (399.902 MHz, DMSO) δ 1.08 (6H, dd), 1.26 - 1.46 (2H, m), 1.59 - 1.67 (6H, m), 1.68 - 1.75 (1H, m), 1.80 - 1.87 (1H, m), 2.32 - 2.43 (4H, m), 3.03 - 3.12 (1H, m), 3.25 - 3.29 (1H, m), 3.60 - 3.66 (1H, m), 3.70 (1H, quintet), 3.92 (2H, s), 7.19 (1H, dd), 7.23 (1H, d), 7.26 - 7.30 (1H, m), 12.61 (1H, s); m/z (LC-MS, ESI+), RT=1.89 (M+H 428.5)。
【0261】
(実施例8)
【化40】

【0262】
(a) 4-(3-(4-イソプロポキシピペリジン-1-カルボニル)ベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロフタラジン-1(2H)-オン (21)
4-イソプロポキシピペリジンヒドロクロリド(126mg、0.70mmol)およびトリエチルアミン(0.216mL、1.55mmol)のDMF(2mL)中の溶液を一度に、3-((4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロフタラジン-1-イル)メチル)安息香酸(4)(200mg、0.70mmol)、トリエチルアミン(0.216mL、1.55mmol)およびO-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(400mg、1.06mmol)のDMF(2mL)中の攪拌溶液に加えた。得られる溶液を4時間攪拌した。粗混合物を次いで分取HPLC(Waters XBridge Prep C18 OBD カラム、5μシリカ、30mm径、100mm長)により、水(1%NH3を含有する)およびMeCNの低下する極性混合物を溶出液として用いて精製した。所望の化合物を含有する画分を蒸発乾固し、凍結乾燥して所望の化合物をガム状物(184 mg、63.9%収率、LC-MSによる純度99.2%)として得た;1H NMR (399.902 MHz, DMSO) δ 1.08 (6H, t), 1.26 - 1.46 (2H, m), 1.58 - 1.65 (6H, m), 1.68 - 1.88 (2H, m), 2.33 - 2.42 (4H, m), 3.04 - 3.27 (2H, m), 3.59 - 3.65 (1H, m), 3.71 (1H, quintet), 3.95 (2H, s), 7.16 - 7.19 (1H, m), 7.25 (2H, dd), 7.38 (1H, t), 12.62 (1H, s); m/z (LC-MS, ESI+), RT=1.93 (M+H 410.6)。
【0263】
(実施例9)
阻害作用
化合物の阻害作用を評価するために、次のアッセイを用いてIC50値を決定した。
【0264】
Hela細胞核抽出物から単離した哺乳動物PARPを、Z-バッファー(25mM Hepes(Sigma);12.5mM MgCl2(Sigma);50mM KCl(Sigma);1mM DTT(Sigma);10%グリセロール(Sigma);0.001% NP-40(Sigma);pH7.4)と共に96ウエルFlashPlates(登録商標)(NEN、UK)中でインキュベートし、様々な濃度の前記阻害剤を加えた。全ての化合物をDMSOに希釈し、10〜0.01μMの最終アッセイ濃度を得たが、このときのDMSOの最終濃度はウェル当たり1%であった。1ウエル当たりの総アッセイ容積は40μlであった。
【0265】
30℃での10分間のインキュベーション後に、NAD(5μM)、3H-NADおよび30量体2本鎖DNA-オリゴを含有する10μl反応混合物を加えることにより、反応を開始させた。酵素活性%を計算するために、化合物ウェル(未知)と並行して、指定した陽性反応および陰性反応ウェルを実施した。プレートを次いで2分間振とうし、30℃にて45分間インキュベートした。
【0266】
インキュベーションの後、50μlの30%酢酸を加えて反応をクエンチした。プレートを次いで1時間室温にて振とうした。
【0267】
プレートをTopCount NXT(登録商標)(Packard、UK)に移してシンチレーション計数を行った。記録した値は、各ウエルの30秒カウントした後の1分間当たりカウント数(cpm)である。
【0268】
次いで、各化合物の酵素活性%を、次の等式:
%阻害=100-{100x(未知のcpm-平均陰性cpm)/(平均陽性cpm-平均陰性cpm)}
を用いて計算した。
【0269】
IC50値(酵素活性の50%が阻害される濃度)を計算し、これを種々の濃度の範囲(通常は10μMから下限は0.001μMまで)にわたり決定した。かかるIC50値を比較値として用いて、化合物の効力増加を確認する。
【0270】
試験したすべての化合物は0.1μM未満の平均IC50を有した。
【0271】
本発明の化合物の平均IC50を次表に掲げる。
【0272】


【0273】
感受性増強係数(potentiation factor)
化合物の感受性増強係数(PF50)は、対照細胞増殖のIC50を、PARP阻害剤を添加した細胞増殖のIC50で除した比として計算する。対照細胞と化合物処理細胞の両方の増殖阻害曲線は、アルキル化剤メタンスルホン酸メチル(MMS)の存在下のものである。試験化合物は0.2μMの一定濃度で使用した。MMSの濃度は0〜10μg/mlの範囲であった。
【0274】
細胞増殖は、スルホローダミンB(SRB)アッセイ(Skehan, P.ら, (1990) "New colorimetric cytotoxicity assay for anticancer-drug screening(抗癌薬スクリーニングのための新しい比色細胞毒性アッセイ") J. Natl. Cancer Inst. 82、1107-1112)を用いて評価した。2,000個のHeLa細胞を、平底96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに100μlの容積でまいて、37℃で6時間インキュベートした。細胞の培地を、培地のみ、またはPARP阻害剤を30nMもしくは200nMの最終濃度で含有する培地と交換した。細胞をさらに1時間増殖させ、その後、種々の濃度の(典型的には0、1、2、3、5、7および10μg/ml)のMMSを、未処理細胞またはPARP阻害剤処理した細胞に加えた。PARP阻害剤のみで処理した細胞を用いて、PARP阻害剤による増殖阻害を評価した。
【0275】
細胞をさらに16時間放置した後に、培地を交換し、細胞を37℃でさらに72時間増殖させた。次いで培地を除き、100μlの氷冷10%(w/v)トリクロロ酢酸を用いて細胞を固定した。プレートを4℃で20分間インキュベートし、次いで水で4回洗浄した。次いで各ウェルの細胞を、1%酢酸中の0.4%(w/v)SRBの溶液100μlで20分間染色し、その後1%酢酸で4回洗浄した。次いでプレートを室温で2時間乾燥させた。染色細胞からの染料を、各ウェルに100μlの10mM Tris塩基を加えることにより、可溶化した。プレートを穏やかに振とうし、室温で30分静置した後に、Microquantマイクロタイタープレートリーダーで564nMの光学密度を測定した。
【0276】
次の化合物:5a、5c〜5f、5h、5k、5l、10a〜10j、10l〜10m、10o、10r、10ab〜10aeは、200nMで少なくとも2の平均PF50を有した。
【0277】
次の化合物:5i-5k、10o、10q、10s-x、10z、10aa、14、17c、17d、17f、18a-e、19、20、21は、30nMで少なくとも2の平均PF50を有した。
【0278】
溶解度アッセイ
本発明の化合物の溶解度を評価するために使用しうる典型的なアッセイは以下のとおりである。化合物の溶解度は、水およびpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で評価する。いずれのサンプルも、室温にて20時間(振とうして)溶媒中で平衡化させる。この期間の後に、サンプルを視覚的に調べて、溶解していない固体の有無を判別する。サンプルを必要に応じて遠心分離または濾過して不溶性物質を除き、これらの溶液を、水性およびDMSOサンプルの両方共に、DMSOで同様の濃度へ希釈して分析し、DSの溶解度を決定した。サンプルのHPLCから得られるピーク(ダイオードアレイ検出器を使用)の面積を、DMSO溶液(サンプルと同じ濃度に希釈)からのピーク面積と比較し、最初の溶解に用いたサンプルの重量を考慮して定量する。試験に使用するレベルでは、サンプルはDMSOに完全に溶解するものと仮定する。
【0279】
ピーク面積の比を比較し、かつ元のサンプルの濃度を知ることにより、溶解度を計算することができる。
【0280】
サンプルの調製
約1mgのサンプルを4mlのガラスバイアルに正確に計量し、正確に1.0mlの水、水性バッファーまたはDMSOをピペットで加える。各バイアルを最大2分間、超音波処理して固形物の溶解を助ける。サンプルをオービタルシェーカーで振とうしながら20時間、室温に保つ。この期間の後にバイアルを検査して、溶解していない固体の有無を確認する。必要であれば不溶性物質を除去するためにサンプルを遠心分離するか、または0.45μmフィルターを通して濾過することとし、そしてすべてのサンプルを適宜DMSOで希釈した後に、濾液を分析して溶液中の化合物の濃度を決定する。以下に示す方法を用いて20μlをHPLCに注入し、すべてのサンプルを二重に注入する。この方法を用いて決定することのできる最大溶解度は、名目上1.0mg/ml(採取した重量を、使用溶媒の容積で除した値)である。
【0281】
分析手法
サンプルは、Waters製のMicromass ZQ装置(または同等の装置)を、典型的には以下の試験パラメーターで使用して、LC/MSに供する。
【0282】
陽イオンモードでのWaters Micromass ZQ
スキャニングはm/z 100から800まで
移動相A − 0.1%ギ酸水溶液
移動相B − アセトニトリル中の0.1%ギ酸
カラム − Jones Chromatography Genesis 4μ C18カラム、4.6×50mm
流速 2.0ml/分
注入容積 20μlループ中に30μl注入
濃度勾配(グラジエント) − 95%A/5%Bから開始、4分後に95%Bに上げ、そこで4分間固定、次いで開始条件に戻す(必要であれば、よりよいピーク分離をうるためにこの条件を改変してもよい)。
【0283】
210nmから400nmまでのPDA検出スキャニング。
【0284】
サンプルの定量
水性希釈物の入ったサンプルバイアルの初期検査により、本化合物がそのバッファー中にその濃度で溶解するかどうかが示される。もしその化合物が可溶性でなければ、これをHPLC/MSにより溶液で得た濃度に反映させなければならない。もし溶液が透明であれば、化合物の分解が起こっていない限り(これはクロマトグラムで視認できるはずである)、水性溶媒中の濃度はDMSO中の濃度と同程度であるはずである。
【0285】
サンプルはDMSO中で完全に溶解し、従ってそのサンプルから得られるピークのサイズは100%溶解度を反映すると仮定する。すべてのサンプルの希釈が同じであったと仮定すると、溶解度(mg/mlで表す)=(PBS溶液からの面積/DMSO溶液からの面積)×(DMSO溶液/希釈液中の元の重量)である。
【0286】
多剤耐性細胞における活性のアッセイ
KBA1細胞はMDR1(低下した薬物蓄積に関わるATP依存性薬物流出ポンプであるP-糖タンパク質)を発現し、エトポシドに対して高い耐性がある。本アッセイは試験化合物のKBA1細胞における効力を測定するアッセイである。本アッセイにおいて、これらの細胞をKB31(非MDR1発現細胞)とマッチさせる。従って本アッセイは、KBA1細胞における試験化合物の効力に対するMDR1の効果を、MDR1を発現しないKB31と比較して試験する。次いでベラパミルを用いてKBA1細胞におけるMDR1介在性効果を逆転する。
【0287】
方法
100μlのKBA1(Pgp発現細胞)および/またはKB31(マッチさせる非Pgp発現細胞)を、1ウエル当たり2×104/mlで、96ウエル組織培養プレート中にまいて、4〜6時間付着するに任せると、これは1ウエル当たり2000細胞の最終濃度になった。10μlの細胞培地(最終濃度10μMを与える)中のベパミルまたは10μlの正常培地を次いでウエルに加え、続いて30分間37℃にてインキュベートする。
【0288】
次いで10μlの試験化合物を加えて、最終濃度50、40、30、20、10、および5μMとする。エトポシド(VP16)をポジティブ対照として用いる。KBA1細胞は最終濃度2,1、0.5、0.25、0.1、0.05μg/mlを、かつKB31細胞は0.25、0.1、0.05、0.025、0.01、0.005μg/mlを与えて、両方の細胞系列の十分な細胞死滅を確実にするように処理しなければならない。対照ウエルは培地および1%の最終濃度を越えてはならない等価量のDMSOで処理する。得られるプレートを37℃で72時間インキュベートする。
【0289】
インキュベーションの終わりに細胞をPBSで洗浄し、次いでSRB(スルホローダミンB)で染色してUV/visプレートリーダーで読取って総タンパク質レベルをうるようにする。次いでこのデータを用いてKBA1およびKB31細胞系列における試験化合物のIC50を計算し、これらの値を比較して試験化合物に対するMDR1の効果を示すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、Rは縮合シクロヘキセン環上の1以上の任意の置換基を表し;
XはNRXまたはCRXRYであってもよく;
もしX=NRXであれば、nは1または2であり、もしX=CRXRYであれば、nは1であり;
もしX=NRXであれば、RXはH、必要に応じて置換されたC1-20アルキル、必要に応じて置換されたC5-20アリール、必要に応じて置換されたC3-20ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたチオアミド、必要に応じて置換されたエステル、必要に応じて置換されたアシル、および必要に応じて置換されたスルホニル基からなる群より選択され;
もしX=CRXRYであれば、RXはH、必要に応じて置換されたC1-20アルキル、必要に応じて置換されたC5-20アリール、必要に応じて置換されたC3-20ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたチオアミド、必要に応じて置換されたスルホンアミノ、必要に応じて置換されたエーテル、必要に応じて置換されたエステル、必要に応じて置換されたアシル、必要に応じて置換されたアシルアミドおよび必要に応じて置換されたスルホニル基からなる群より選択され;およびRYはH、ヒドロキシ、必要に応じて置換されたアミノから選択されるか、またはRXとRYは一緒に、必要に応じて置換されたスピロ-C3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル基を形成してもよく;
RC1とRC2は両方とも水素であるか、またはXがCRXRYである場合、RC1、RC2、RXおよびRYはそれらが結合している炭素原子と一緒に、必要に応じて置換された縮合芳香環を形成してもよく;そして
R1はHとハロから選択される]の化合物。
【請求項2】
式Id:
【化2】

で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rがハロ、ニトロ、ヒドロキシ、エーテル、チオール、チオエーテル、アミノ、C1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールから選択される、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R1がH、ClおよびFから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
RC1とRC2が両方とも水素である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
nが2であり、XがNRXであり、かつRXがH;必要に応じて置換されたC1-20アルキル;必要に応じて置換されたC5-20アリール;必要に応じて置換されたエステル基;必要に応じて置換されたアシル基;必要に応じて置換されたアミド基;必要に応じて置換されたチオアミド基;および必要に応じて置換されたスルホニル基からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
nが1であり、XがNRXであり、かつRXがH;必要に応じて置換されたC1-20アルキル;必要に応じて置換されたC5-20アリール;必要に応じて置換されたアシル;および必要に応じて置換されたスルホニルからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
nが1であり、XがCRXRYであり、RYがHであり、かつRXがH;必要に応じて置換されたC3-20ヘテロシクリル;必要に応じて置換されたアミノ;必要に応じて置換されたエステル;および必要に応じて置換されたスルホンアミノからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物および製薬上許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項10】
ヒトまたは動物の身体を治療する方法において使用する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
PARPの活性を阻害する医薬の調製における、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項12】
血管疾患;敗血症ショック;虚血性傷害;神経毒性;出血性ショック;ウイルス感染;またはPARPの活性を阻害することにより改善される疾患を治療するための医薬の調製における、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項13】
癌治療における補助剤として使用するためのまたは電離放射線または化学治療薬による治療に対する腫瘍細胞の感受性を増強する(potentiating)ための医薬の調製における、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
個体における癌を治療するために使用する医薬の製造における、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、該癌がHR依存性DNA DSB修復経路に欠陥がある、上記使用。
【請求項15】
前記癌が正常細胞と比較してHRによりDNA DSBを修復する能力が低下したまたは抑止された1以上の癌細胞を含む、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記癌細胞がBRCA1またはBRCA2欠失表現型を有する、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記癌細胞がBRCA1またはBRCA2を欠失している、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記個体がHR依存性DNA DSB修復経路の構成要素をコードする遺伝子の変異についてヘテロ接合性である、請求項14〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記個体がBRCA1および/またはBRCA2の変異についてヘテロ接合性である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記癌が乳癌、卵巣癌、膵癌または前立腺癌である、請求項14〜19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記治療がさらに電離放射線または化学治療薬の投与を含む、請求項14〜20のいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2010−532339(P2010−532339A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514128(P2010−514128)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002318
【国際公開番号】WO2009/004356
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】