説明

PARP調節因子及び癌の治療

本発明は、動物においてポリ(ADP‐リボース)ポリメラーゼ-1(PARP‐I)を調節する方法であって、哺乳動物に、4〜約35個の炭素原子を有する芳香族有機化合物の有効量を投与することを含む方法に関し、ここで当該芳香族有機化合物が、電子供与能を有し、その結果そのπ電子系がPARP‐Iのジンク1フィンガーの特定のアルギニン-34残基の正に荷電された(カチオン性)グアニジニウム部分と相互作用する。特に、置換ベンゾピロン及び置換インドール、並びにPARP‐1の活性を調節するそのような化合物を含む医薬組成物が記載される。本発明は、医薬組成物、キット、及び明細書中に記載される疾患及び障害の治療において治療及び/又は予防に用いるための方法であって、このような化合物の有効量を投与することによる方法に関する。好ましくは、本明細書に提供される組成物及び方法はPARP活性を阻害する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は以下の:
(i) 哺乳動物においてPARP-1活性を調節する4〜約35個の炭素原子を有する有効量の芳香族有機化合物、ここで、(a)当該芳香族有機化合物が、PARP-1酵素のジンクフィンガー1に位置するアルギニン34部分に結合でき、そして(b)当該芳香族有機化合物が、電子供与能を有し、その結果そのπ電子系が、当該PARP-1のジンク-1フィンガーの特異アルギニン-34残基の正に荷電された(カチオン性)グアニジニウム部分と相互作用し、(c)当該芳香族化合物が、窒素原子を含む複素環を含み、(d)、当該環がカルボニル部分を含まない、並びに
(ii)医薬として許容される担体、賦形剤、及び/又は希釈剤
を含む医薬組成物に関する。好ましくは、本発明の組成物は、PARP活性を阻害する。
【0002】
クロスリファレンス
本出願は、2005年6月10日に出願された米国仮特許出願第60/689,178号の優先権を主張し、当該文献は、その全てを本明細書に援用される。
【0003】
連邦支援研究についての陳述
本発明は、その一部においてNIH助成金HL59693及びHL35561の合衆国政府の支援を得てなされた。
【背景技術】
【0004】
PARP(ポリ-ADPリボース・ポリメラーゼ)は、遺伝子増幅、細胞分裂、分化、アポトーシス、DNA塩基除去修復を含む様々なDNA関連の機能に寄与し、そして、テロメア長、及び染色体安定性にも影響を与える(d'Adda di Fagagnaら、1999、Nature Gen.、23(1): 76-80)。酸化ストレス誘導性のPARPの過剰活性化は、NAD+を消費し、そして結果としてATPを消費し、結果的に細胞機能障害又はネクローシスをもたらす。この細胞自殺メカニズムは、脳卒中、心筋虚血、糖尿病、糖尿病性心血管機能障害、ショック、外傷性中枢神経系傷害、関節炎、大腸炎、アレルギー性脳脊髄炎、及び様々な形態の炎症の病理学的機序に関与してきた。PARPは、幾つかの転写因子の機能に関与し、当該機能を調節すると示されてきた。PARPの多様な機能は、PARPを、様々なタイプの癌及び神経変性疾患を含む様々な重篤な病気に対する標的とした。
【0005】
PARP阻害治療は、様々な疾患を治療する有効なアプローチを示す。癌患者において、PARP阻害は、放射及び化学療法の治療有効性を増加させうる。PARPの標的化により、腫瘍細胞のDNA複製、並びに薬剤抵抗性の発達が妨げられうる。このことは、癌治療に対して腫瘍細胞をより感受性にしうる。PARP阻害剤は、広範囲の腫瘍(例えば、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、直腸癌、頭部及び頸部腫瘍)に対する様々な化学治療薬(例えば、メチル化試薬、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、シスプラチンなど)、並びに放射線の効果を増大させる能力を示した。
【0006】
女性の乳癌の発生率は、1991年において人口100,000人あたり100.5症例から、2001年において人口100,000人あたり117.2症例へと増加し、1年あたり平均で1.4%増加した。BRCA1及び2遺伝子に欠陥を有する女性は、最大85%の危険性となる70歳までに乳癌を発達させる危険性を有する。PARP阻害剤は、BRCA1及びBRCA2に欠陥を有するヒトにおいて腫瘍細胞の殺傷に有効である可能性がある。PARP阻害剤は、これらの遺伝子に変異を有する患者の特定集合(the specific subset)の助けとなる可能性を有する。これらの変異は、患者を早期発症性癌にかかりやすくし、そして乳房、子宮、前立腺、及び膵臓癌において見つかってきた。
【0007】
PARP阻害剤は、直腸癌及び胃癌、並びに黒色腫及び神経膠腫などの多くの癌の治療を改善するために、他の化学療法薬、例えばイリノテカン又はテモゾロミドなどの他の化学療法薬と組み合わせることができる。PARP阻害剤は、進行性直腸癌を治療するためにイリノテカンと組み合わせることができる。約146000の直腸癌の新たな症例が、米国において2004年に予見されており、そしてこのうち60〜70%がかなり進行した段階にあると予期されている。
【0008】
PARP阻害剤は、PARPの触媒部位の天然の基質であるNADと競合的に結合するベンズアミドのアナログとして設計された。当該アナログは、NAD部位での強力な阻害剤である様々な環上ベンズアミドアナログ(つまりラクタム)を含む。しかしながら、ベンズアミドアナログを用いるアプローチは、in vivoの効果において限定的であった。これらのベンズアミド及びラクタムは、至る所に存在する他のNADを利用する酵素に結合でき、そして副作用をもたらしそして、細胞の生存性、代謝性、及びDNA合成に影響を与える。一例として、Milanら(1984) "Inhibitors of Poly (Adenosine Diphosphate Ribose) Synthesis: Effect on Other Metabolic Processes"、Science 223: 589-91を参照のこと。こうして、PARP活性を阻害する化合物であって、強力かつ信頼できる効果を、PARP活性を阻害する点について少ない副作用で発揮し、そして関連疾患及び病気を治療する化合物について必要性が残る。
【0009】
従って、本発明は、PARP媒介性疾患を患う哺乳動物においてPARP活性を調節する組成物及び方法を提供する。
【発明の開示】
【0010】
本発明は以下の:
(i) 哺乳動物においてPARP-1活性を調節する4〜約35個の炭素原子を有する有効量の芳香族有機化合物、ここで、(a)当該芳香族有機化合物が、PARP-1酵素のジンクフィンガー1に位置するアルギニン34部分に結合でき、そして(b)当該芳香族有機化合物が、電子供与能を有し、その結果そのπ電子系が、当該PARP-1のジンク-1フィンガーの特異アルギニン-34残基(the specific arginine-34 residue)の正に荷電された(カチオン性)グアニジニウム部分と相互作用し、(c)当該芳香族化合物が、窒素原子を含む複素環を含み、(d)、当該環がカルボニル部分を含まない、並びに
(ii)医薬として許容される担体、賦形剤、及び/又は希釈剤
を含む医薬組成物に関する。好ましくは、本発明の組成物は、PARP活性を阻害する。
【0011】
本発明は、哺乳動物においてPARP-1活性を調節する方法であって、哺乳動物に4〜約35個の炭素原子を有する有効量の芳香族有機化合物を投与することを含み、ここで、当該有機化合物は、当該PARP-1酵素のジンクフィンガーに位置するアルギニン-34部分を結合でき、そして当該芳香族有機化合物は、電子供与能を有し、その結果そのπ電子系は、PARP-1のジンク-1フィンガーの特異アルギニン-34残基の正荷電の(カチオン性)グアニジニウム部分と相互作用し、当該芳香族化合物は窒素原子を含む複素環を含み、当該環は、カルボニル部分を含まず、そしてラクタム構造を含まず、そしてベンズアミドアナログではなく、そしてNADのアナログではない、前記方法に関する。本発明の化合物は、ATP結合部位を介して作用し、そしてNAD部位と相互作用してもしなくてもよい。好ましくは、本発明の方法は、PARP活性を阻害する。
【0012】
本発明は、具体的に、哺乳動物においてPARP-1活性を調節する方法であって、哺乳動物に以下の式I:
【化1】

[式中、R1、R2、R3及びR4は、独立して、H、ハロゲン、場合により置換される水酸基、置換アミン、場合により置換される低級アルキル、場合により置換されるフェニル、場合により置換されるC4-C10ヘテロアリール及び場合により置換されるC3-C8シクロアルキルからなる群から選ばれる]
で表される有効量の芳香族有機化合物、又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、又はプロドラッグを投与することを含み、ここで、当該有機化合物が、PARP-1酵素のジンクフィンガーに位置するアルギニン-34部分を結合でき、そして当該芳香族有機化合物が電子供与能を有し、その結果そのπ電子系が当該PARP-1のジンク-1フィンガーの特異アルギニン-34残基の正に荷電された(カチオン性)グアニジニウム部分と相互作用する、前記方法に関する。好ましくは、本発明の当該方法はPARP活性を阻害する。
【0013】
好ましい実施態様では、本発明は、以下の式I:
【化2】

[式中、
1、R2がHである]
で表される化合物、又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、又はプロドラックに関する。
【0014】
本発明の別の態様は、哺乳動物においてPARP-1活性を調節する方法であって、哺乳動物に以下の式II:
【化3】

[式中、
1、R2、R3、R4及びR5は独立して、H、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、場合により置換される水酸基、場合により置換される低級アルキル、場合により置換されるアミン、場合により置換されるフェニル、場合により置換されるC4-C10ヘテロアリール 及び場合により置換されるC3-C8シクロアルキルからなる群から選ばれ;
XはH、N-オキシド又は場合により置換されるアルキルである]
で表される芳香族有機化合物又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、又はプロドラッグの有効量を投与することを含み、ここで当該芳香族有機化合物は、PARP-1酵素のジンクフィンガー1に位置するアルギニン-34部分に結合でき、そしてここで当該芳香族有機化合物が電子供与能を有し、その結果そのπ電子系は、PARP-1のジンクフィンガー1の特異アルギニン34残基の正に荷電された(カチオン性)グアニジニウム部分と相互作用する、前記方法に関する。好ましくは本発明の当該方法は、PARP活性を阻害する。
【0015】
好ましい実施態様では、本発明は、以下の式IIa:
【化4】

[式中、R1及びXはHであり、R2、R3、R4及びR5は、独立してハロ、好ましくはヨード、水酸基、ニトロ、ニトロソ、及び場合により置換されるアミン、例えばアミノアルキルからなる群から選ばれる]
で示される式IIの化合物のサブセット、或いはその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、又はプロドラッグに関する。
【0016】
式IIaの化合物の特に好ましい群は、R2がアルキルアミン、好ましくはプロピルアミンである化合物である。
【0017】
式IIaの別の好ましい化合物のクラスは、R3、R4又はR5がハロゲン、好ましくはヨウ素である化合物である。
【0018】
式IIaの化合物の別の好ましいクラスは、R3、R4、又はR5が水酸基である化合物である。
【0019】
本発明の1の態様は、PARP媒介性の疾患を治療する方法であって、治療を必要とする対象に治療有効量の4〜約35個の炭素原子を有する芳香族有機化合物を投与することを含み、ここで当該芳香族有機化合物が、PARP-1酵素のジンクフィンガー1に位置するアルギニン34部分に結合でき、そして当該芳香族有機化合物が電子供与能を有し、その結果そのπ電子系は、当該PARP-1のジンク-1フィンガーの特異アルギニン-34残基の正に荷電された(カチオン性)グアニジニウム部分と相互作用し、当該芳香族化合物が窒素原子を含む複素環を含む場合、当該芳香族化合物が、窒素原子を含む芳香環を含み、当該環がカルボニル部分を含まない、前記方法である。
【0020】
本発明の別の態様は、PARP媒介性疾患の治療方法であって、治療を必要とする対象に、以下の式I:
【化5】

[式中、
1、R2、R3及びR4は、独立して、H、ハロゲン、場合により置換される水酸基、置換アミン、場合により置換される低級アルキル、場合により置換されるフェニル、場合により置換されるC4-C10ヘテロアリール及び場合により置換されるC3-C8シクロアルキルからなる群から選ばれる]
で表される芳香族有機化合物、又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、又はプロドラッグの治療有効量を投与することを含み、ここで、当該芳香族有機化合物が、PARP-1酵素のジンクフィンガー1に位置するアルギニン-34部分に結合でき、 そしてここで、当該芳香族有機化合物は、電子供与能を有し、その結果そのπ電子系は、PARP-1のジンク-1フィンガーの特異アルギニン-34残基の正に荷電された(カチオン性)グアニジニウム部分と相互作用する、前記方法である。
【0021】
本発明の別の態様は、PARP媒介性疾患の治療法法であって、治療を必要とする対象に、式II:
【化6】

[式中、
1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、H、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、場合により置換される水酸基、場合により置換される低級アルキル、場合により置換されるアミン、場合により置換されるフェニル、場合により置換されるC4-C10ヘテロアリール、及び場合により置換されるC3-C8シックロアルキルからなる群から選ばれ;
Xは、H、N-オキシド、又は場合により置換されるアルキルである]
で表される芳香族有機化合物、又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、又はプロドラッグの治療有効量を投与することを含み、ここで当該芳香族有機化合物は、PARP-1酵素のジンクフィンガー1に位置するアルギニン-34部分に結合でき、そしてここで当該芳香族有機化合物が電子供与能を有し、その結果当該π電子系は、PARP-1のジンク-1フィンガーの特異アルギニン-34の正荷電(カチオン性)グアニジニウム部分と相互作用する、前記方法に関する。
【0022】
本発明の特に好ましい化合物の例として、非限定的に以下の:
【化7】

が挙げられる。
【0023】
援用
本明細書中で言及される全ての文献及び特許出願は、各個々の文献又は特許出願が具体的かつ個別に援用されると記載されるのと同程度に本明細書に援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本明細書に使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖及び分枝鎖アルキル基であって、1〜8個の炭素原子を有する基を指す。代表的なアルキル基として、メチル(Me)、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル(tBu)、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどが挙げられる。置換アルキルとして、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキルなどが挙げられる。置換アルキルは、例えば置換又は非置換C3-C8シクロアルキル、C3-C8ヘテロシクロアルキル、フェニル、又はC4-C10ヘテロアリールへテロアリールで置換されたアルキルにより表される。
【0025】
「アミノアルキル」という用語は、-CH2-R-NH2[基中、Rは上で定義されるアルキル基である]を指す。
【0026】
「シクロアルキル」という用語は、3〜8個の炭素原子を有する飽和炭素環を指し、二環及び三環のシクロアルキル構造を含む。代表的なシクロアルキルとして、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。
【0027】
「ハロゲン」という用語は、塩素、フッ素、臭素、又はヨウ素を指す。「ハロ」という用語は、クロロ、フルオロ、ブロモ、又はヨードを表す。本発明の最も好ましい実施態様として、ハロ基としてヨードが上げられる。
【0028】
「ヘテロアリール」という用語は、複素単環及び複素多環の不飽和又は芳香環構造を指す。複素環構造の例として、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、ピリジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、1,2,3-トリアジニル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1-H-テトラゾール-5-イル、インドリル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル(チアナフテニル)などが挙げられる。この様な部分は、場合により、1以上の適切な置換基、例えば、ハロゲン(F、Cl、Br又はI);低級アルキル;OH;NO2;CN;CO2H;O-低級アルキル;フェニル;フェニル-低級アルキル;CO2CH3;CONH2;OCH2CONH2;NH2;SO2NH2;OCHF2;CF3;OCF3などから選ばれる置換基により場合により置換されてもよい。この様な部分は、融合環構造又はブリッジ、例えばOCH2-O、により場合により置換されてもよい。
【0029】
「阻害する」及びその文法的活用、例えば「阻害性」、という用語は、PARP活性の完全な低下を必要とすることを予定していない。このような低下は、阻害効果、例えば化合物I、II、及び/又はその好ましい本発明の実施態様などの阻害剤の不存在下における分子活性の好ましくは、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、そしてより好ましくは少なくとも約95%の低下である。最も好ましくは、当該用語は、活性の観測可能な又は計測可能な低下のことを指す。治療シナリオでは、好ましくは、阻害は、治療される病気の治療的及び/又は予防的有効性をもたらすために十分である。「阻害しない」というフレーズ又はその文法的活用は、活性について効果の完全な欠如を必要としない。当該用語は、例えば、化合物I、II及び/又は本発明の好ましい実施態様の存在下で、PARP活性の約20%、約10%、そして好ましくは約5%未満の低下が存在する状況を指す。
【0030】
「医薬として許容される塩」という用語は、生物学的効果及び本発明に使用される化合物の性質を保持し、かつ生物学的に又はその他の点で不所望であることはない塩を指す。例えば、医薬として許容される塩は、癌の治療において本発明の化合物の有利な効果を妨げることはない。
【0031】
「医薬として許容されるプロドラッグ」という用語は、その薬理学的効果を示す前に、生理学的条件下で又は加溶媒分解により、特定の化合物、又はこの様な化合物の医薬として許容される塩へと変換されうる化合物を指す。一般的に、プロドラッグは、改善された化学安定性、改善された患者許容性及びコンプライアンス、改善された生物学的利用能、延長された作用期間、改善された組織選択性、改善された剤形(例えば水溶性の増加)、及び/又は副作用(例えば毒性)の低下といった目的で剤形される。
【0032】
「医薬として活性な代謝物」という用語は、体内での特定の化合物又はその塩の代謝を通して産生される医薬として活性な生成物を指す。体内に入った後に、多くの薬剤は、化学反応の基質となり、当該反応は、薬剤の物理的性質及び生物的効果を変化しうる。しかしながら、幾つかの場合、薬剤の代謝は、治療効果に必要とされる。
【0033】
「治療有効量」という用語は、治療又は予防有効性を達成するために有効な量を指す。治療有効性という用語は、治療される基礎疾患の根絶又は寛解を意味する。また、治療有効性は、基礎疾患に付随する生理的症状の1以上を根絶又は寛解することを達成し、その結果改善が患者において観察されるものの、当該患者はいまだ基礎疾患にかかっていてもよい。予防有効性について、当該組成物は、特定の疾患を発達させる危険性のある患者に、又は疾患の生理学的症状を報告する患者に対して、当該疾患の診断がなされていないにも関わらず投与されてもよい。特定の適用について有効である実際の量は、患者(例えば年齢、体重など)、治療される病気、及び投与経路に左右されるであろう。有効量の決定は、当業者の能力の範囲内である。ヒトにおいて使用するための有効量は、動物モデルから決定することができる。例えば、ヒトへの用量は、動物において有効であると分かった循環及び/又は胃腸濃度を達成するように剤形できる。
【0034】
PARP阻害剤の組成物及び方法
本発明は、PARP-1酵素のZn2+フィンガー1に位置するアルギニン-34に有機分子を結合させることによるPARP-1の阻害方法に関する。タンパク質中のアルギニン残基が、ATP検知に関与でき(Oguraら、(2004) J. Struct. Biol. 146: 106-112)、そしてアルギニン残基が、特定の触媒機能を割り当てられることなくPARP-1のZn2+フィンガーの両方において同定されることは知られていた(Molinetら 、(1993) EMBO J. 12:2109-2117; Ikeyamaら、(1990) J. Biol. Chem. 265:21907-21913)。アルギニン-34の点突然変異分析により、PARP-1のZn2+フィンガー1においてアルギニン-34のアルギニンをグリシンなどの他のアミノ酸に置換することはPARP-1の全体としての酵素活性に影響しないが、ATPによる阻害作用が失われるということが示される。PARP-1のZn2+フィンガー2におけるアルギニン138のロイシンへの変異は、ATPによる阻害作用に対し無視できるほどの効果しか与えずZn2+フィンガー1のアルギニン-34は、PARP-1とATPとが相互作用する部位であるという意見を確かめた。
【0035】
アルギニンのグアニジン部分が、カチオン-π相互作用において、カチオンとして中心的な重要性を担うということが知られている (Zachariasら、(2002) Trends in pharmacological Sciences 23:281-287; Woodsら、(2004) J. Proteome Res. 3:478-484)。本発明のある態様は、5-ヨード-6-ヒドロキシベンゾピロン又は5-ヨード-6-アミノベンゾピロンのいずれかを例として用いて、図7に記載される様に候補分子のπシステムとアルギニンのグアニジン部分との間のカチオン性-π相互作用によるPARP-1の阻害に関する。電子供与置換基で芳香環を置換することは、環中の電子密度を増加させ、次にカチオン性のπと、アルギニンのグアニジン部分との間の相互作用を増加させ、それにより、この様な有機芳香族分子を用いることによってPARP-1の阻害を高める。PARP分子の活性の阻害は、これらの分子の活性化を低減することを含む。
【0036】
PARP-1のジンクフィンガー1におけるアルギニン-34での阻害部位は、NAD触媒部位でPARP-1を阻害する必要性を取り除き、そうしてNAD触媒部位で競合するベンズアミド又はアナログラクタムを用いる必要性を取り除き、それによりin vivoでの欠点を避ける。アルギニン-34部位での新たな電子供与性阻害剤は、新たなクラスであり、その特徴は、当該阻害剤がベンズアミド又はラクタム基を意図的に含まないということである。本発明の化合物は、置換1,2-ベンゾピロン、インドール、又はベンズイミダゾールであり、これらは、第三の環と融合を含まず(つまり、三環ではない)、そしてラクタム環を含まず、そしてベンズアミドアナログではない(つまりベンズアミドコアを有さない)。
【0037】
アルギニン-34カチオンと相互作用するπ電子ドナーとして作用できる芳香族分子は、2個のカテゴリーに分けることができる:(1)相互作用阻害剤(好ましくは、抗癌剤の候補である)、及び(2)細胞の代謝要求に従ってPARPを一時的に調節する芳香基を有する生理的に生じる分子。芳香族化合物の選別は、アルギニン-34部位との反応性により決定でき、そして芳香族系の改変は、その反応性により決定できる。一般的に、アルギニン-34との反応性についての動力学的証拠は、ATPの反応性についての相加的抑制からなる(T.C. Chou及び P. Talalay, Adv. Enzyme Regul. 22:27 (1984))。
【0038】
本発明の幾つかの好ましい実施態様では、アルギニン-34カチオンと相互作用する芳香族πシステムとして、1,2-ベンゾピロン(クマリン)(例えば、式I)、場合によりヨウ素で置換されるインドール(式II)、又は場合によりヨウ素で置換されるベンズイミダゾール(式III)が挙げられる:
【化8】

【0039】
記載される様に、式中の可変部として様々な部分又は官能基は、1以上の適切な置換基により、場合により置換されてもよい。代表的な置換基として、ハロゲン(F、Cl、Br、又はI)、低級アルキル、-OH、-NO2、-CN、-CO2H、-O-低級アルキル、-フェニル、-フェニル-低級アルキル、-CO2CH3、-CONH2、-OCH2CONH2、-NH2、-SO2NH2、ハロアルキル(例えば、-CF3、-CH2CF3)、-O-ハロアルキル(例えば、-OCF3、-OCHF2)などが挙げられる。好ましくは、ハロゲンはヨード基である。
【0040】
本発明は、式I、その好ましい実施態様、式II及び/又はその好ましい実施態様を含む4〜約35個の炭素原子を有する芳香族有機化合物を用いて、哺乳動物においてPARP-1活性を調節、好ましくは阻害する方法であって、ここで当該芳香族有機化合物は、PARP-1酵素のジンクフィンガー1に位置するアルギニン-34部分に結合でき、そして当該芳香族有機化合物は、電子供与能を有し、その結果そのπ電子系は、PARP-1のジンクフィンガー1の特異アルギニン-34残基の正荷電(カチオン性)グアニジニウム部分と相互作用でき、ここで当該芳香族化合物が窒素原子を含む複素環を含む場合、当該環はカルボニル部分を含むことはない、前記方法に関する。本発明は、この様な化合物の治療又は予防的使用、並びにPARP活性化に関与する疾患及び障害を治療する方法に関する。
【0041】
本発明の別の態様は、PAPR媒介性疾患の治療方法であって、治療を必要とする対象に、治療有効量の以下の式I:
【化9】

[式中、R1、R2、R3及びR4は、独立して、H、ハロゲン、場合により置換される水酸基、置換アミン、場合により置換されるニトロ、場合により置換される低級アルキル、場合により置換されるフェニル、場合により置換されるC4-C10ヘテロアリール及び場合により置換されるC3-C8シクロアルキルからなる群から選ばれる]
で表される芳香族有機化合物、又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、又はプロドラッグを投与すること含み、ここで当該芳香族有機化合物は、PAPR-1酵素のジンクフィンガー1に位置するアルギニン-34部分を結合でき、そしてここで当該芳香族有機化合物は、電子供与能を有し、その結果そのπ電子系は、PARP-1のジンクフィンガー-1の特異アルギニン-34の正荷電(カチオン性)グアニジニウム部分と相互作用し、そしてここで当該芳香族有機化合物は、ラクタム基を含まず、またラクタム又はベンズアミド置換基も有さない、前記方法である。
【0042】
式Iの好ましい実施態様は、以下の:
【化10】

[式中、R1、R2はHである]
で表される芳香族有機化合物、又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、又はプロドラッグである。
【0043】
本発明の別の態様は、PARP媒介性疾患の治療方法であって、治療を必要とする対象に、以下の式II:
【化11】

[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は独立して、H、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、場合により置換される水酸基、場合により置換される低級アルキル、場合により置換されるアミン、場合により置換されるニトロ、場合により置換されるフェニル、場合により置換されるC4-C10ヘテロアリール及び場合により置換されるC3-C8シクロアルキルからなる群から選ばれ;Xは、H、N-オキシド又は場合により置換されるアルキルである]
で表される治療有効量の芳香族有機化合物、又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、又はプロドラッグを投与することを含み、ここで当該芳香族有機化合物は、PARP-1酵素のジンクフィンガー-1に位置するアルギニン-34を結合でき、そしてここで当該芳香族有機化合物が電子供与能を有し、その結果そのπ電子系は、PARP-1のジンクフィンガー-1の特異アルギニン-34残基の正荷電(カチオン性)グアニジニウム部分と相互作用する、前記方法である。
【0044】
好ましい実施態様では、式IIの化合物のサブセットが、以下の式IIa:
【化12】

[式中、R1及びXはHであり、そしてR2、R3、R4及びR5は、独立して、ヨード、水酸基、ニトロ、ニトロソ、及び場合により置換されるアミン、例えばアミノアルキルからなる群から選ばれる]
で表される芳香族有機化合物、又は塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、又はプロドラッグである。
【0045】
式IIaの化合物の特に好ましい群は、R2がアルキルアミンであり、好ましくはプロピルアミンである化合物である。
【0046】
式IIaの化合物の別の好ましいクラスは、R3、R4又はR5がハロゲン、好ましくはヨウ素である化合物である。
【0047】
式IIaの化合物の別の好ましいクラスは、R3、R4又はR5が水酸基である化合物である。
【0048】
本発明の特に好ましい化合物の例として、非限定的に、以下の:
【化13】

が挙げられる。
【0049】
本発明の化合物は、互変異性の現象を示してもよい。式I、II、及びIIaは、全ての互変異性体を表していない一方、式I、II、及びIIaが、記載された化合物の任意の互変異性体を表すことを意図し、そして化学式の作図により表現された具体的化合物にのみ限定されることはない。本発明の化合物の幾つかは、1の立体異性体(つまり、他の立体異性体を実質的に含まない)、ラセミ体、及び/又はエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物として存在してもよい。この様な1の立体異性体、ラセミ体、及びそれらの混合物の全ては、本発明の範囲内であると意図される。好ましくは、光学的に活性である本発明の化合物は、光学的に純粋な形態で使用される。
【0050】
さらに、当該式は、同定された構造の溶媒和形態並びに非溶媒和形態にまで及ぶことを意図する。例えば、式Iは、水和及び非水和形態で表された構造の化合物を含む。溶媒和物の他の例として、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、又はエタノールアミンと組み合わせた構造が挙げられる。式I、II、及びIIaの化合物に加えて、本発明は、医薬として許容されるプロドラッグ、医薬として活性な代謝物、及び医薬として許容されるこの様な化合物及び代謝物の塩を含む。
【0051】
本明細書に記載される化合物は、当該技術分野に知られている技術を用いて合成できる。様々な置換基は、1,2-ベンゾピロン、インドール、及びベンズイミダゾールの芳香核に導入できる。一般的に、アミノ置換基は、標準のニトロ化技術を用い、続いてこの様なニトロ基をアミノ基へと還元することにより導入できる。芳香核上のアミノ基は、ジアゾ化され、そしてSandmeyer型の反応過程により、様々な他の基、例えばハロゲン及び水酸基などへと変換される。さらに、ハロゲン付加は、水酸基及びアミノ置換芳香環上で直接行われて、二置換の例を与える。さらに、ハロゲン基は、有機金属などの試薬により置換されて、アルキル基を導入する脱離基として使用することができる。
【0052】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼは、ポリ(ADP-リボース)シンターゼ及びポリADP-リボシルトランスフェラーゼとしても知られている。PARPは、筋肉、心臓、及び脳細胞を含む様々な組織の核に位置する酵素である。PARPは、核タンパク質に(並びにPARPにも)結合でき、そしてそれによりこれらのタンパク質の活性を改変できるポリ(ADP-リボース)ポリマーの形成を触媒する。酵素は、DNA修復を高める役割を果たし、そしておそらく核のクロマチンを調節する役割を果たす(例えば、総説としてD. D'amoursら、"Poly (ADP-ribosylation reactions in the regulation of nuclear functions," Biochem. J. 342: 249-268 (1999)を参照のこと)。
【0053】
PARP-1は、N末端DNA結合ドメイン(DBD)、自己修復ドメイン及びC-末端触媒ドメイン、並びにPARP-1と相互作用する様々な細胞タンパク質を含む。N-末端DNA結合ドメインは、2個のジンクフィンガーモチーフを含む。転写エンハンサー因子1(TEF-1)、レチノイドX受容体α、DNAポリメラーゼα、X線修復交差相補因子-1(XRCC1)及びPARP-1自身は、PARP1とこのドメインで相互作用する。自己修飾ドメインは、タンパク質-タンパク質相互作用モジュールのうちの一つであるBRCTモチーフを含む。このモチーフは、通常BRCA1(乳癌罹患性タンパク質1)のC末端において見られ、そしてDNA修復、組換え、及び細胞周期チェックポイントの制御に関する様々なタンパク質中に存在する。POU-ホメオドメイン含有オクタマー転写因子-1(Oct-1)、YinYang(YY)1及びユビキチン結合酵素9(ubc9)は、PARP-1のBRCTモチーフと相互作用できる。
【0054】
PARPファミリーの遺伝子のうち15超のメンバーは、哺乳動物ゲノムに存在する。PARPファミリータンパク質、及びポリ(ADP)リボースをADP-リボースへと分解するポリ(ADP-リボース)グリコヒドロラーゼ(PARG)は、DNA損傷応答及び転写調節を含む様々な細胞調節機能に関与し、そして発癌及び多くの点で癌の生物学に関与しうる。
【0055】
幾つかのPARPファミリータンパク質が同定されてきた。タンキラーゼ(Tankylase)は、テロメア調節因子1(TRF-1)のタンパク質と相互作用するタンパク質として発見され、そしてテロメア調節に関与する。ボールト(Vault)PARP(VPARP)は、核-細胞質トランスポーターとして働くボールト複合体中の成分である。PARP-2、PARP-3、及び2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン誘導性PARP(TiPARP)が同定されてきた。その結果ポリ(ADP-リボース)代謝は、様々な細胞調節機能に関しうる。
【0056】
当該遺伝子ファミリーの最も研究されたファミリーはPARP1である。PARP1遺伝子産物は、細胞核において高レベルで発現し、そして活性化についてはDNA損傷に左右される。理論に束縛されることなく、PARP1は、アミノ末端のDNA結合ドメインを通して一本鎖又は二本鎖のほつれに結合すると信じられている。当該結合は、カルボキシ末端の触媒ドメインを活性化し、そして標的分子のADP-リボースのポリマーの形成をもたらす。PARP1はそれ自身、中心に位置する自己修飾ドメインのため、ポリADP-リボシル化の標的である。PARP1のリボシル化は、DNAからのPARP1分子の乖離を引き起こす。結合の全過程、リボシル化、及び乖離は、かなり迅速に生じる。このPARP1のDNA損傷部位への一過性の結合は、DNA修復機構のリクルートをもたらすか、又は修復機構のリクルートに十分な期間の間の組換えを抑制するように作用しうるということが示唆されてきた。
【0057】
Bauerら(Int. J. Oncol. 8, 239, 1996)は、癌細胞におけるポリADPリボシル化が、Ca2+-Mg2+依存性のDNAseを阻害し、それにより未制御の癌複製を許容するようになると報告した。(PPAR-1阻害による)DNAseの阻害解除は、癌細胞に特異的であるDNA破壊を開始し、そして癌細胞にのみアポトーシスを誘導する。生理的に存在するdsDNAは、損傷DNAよりもずっと優れたPARP-1の補酵素であり、そうしてPARP-1を、無傷の細胞において生理学的機能性クロマチン調節因子(physiologically operative chromatin regulator)とする。当該調節因子は、癌の表現形では違うように機能する(Kunら、J. Biol. Chem. 277, 39066, 2002)。
【0058】
PARP-1のN末端DBDは、ヒトPARPにおいて開始メチオニンからスレオニン-373に至るまで伸張している。当該ドメインは、約42kDaの分子量を有し、そして2個のジンクフィンガーを含み、そして2個のヘリックス-ターンヘリックスモチーフを含む。PARPのDBDはまた、高い割合の塩基性残基を含み、これは、酵素とDNAとの相互作用に関連しうる。PARPは、亜鉛分子に特異的に結合する金属酵素である。亜鉛結合部位は、トリプシンを用いたタンパク質の限定的タンパク質分解から得られる29kDaのPARP断片に関連している。PARPと亜鉛との関連は、当該酵素がジンクフィンガーを有することを示唆する。当該ジンクフィンガーは、クローン化されたcDNAの配列分析をすることにより後で確認された。ジンクフィンガー1(F1)は、システイン-21から開始し、そしてシステイン-56で終わる。一方ジンクフィンガー2(F2)は、システイン-125〜システイン-162の間で見られる。D'amoursら、Op.Cit(1999)を参照のこと。
【0059】
1の作用メカニズムにより限定されることを意図せず、本発明の1の態様は、ポリADPリボース環(つまり、その分解部位)上での及び特異的にポリADP-リボース合成部位でのATPの二様式性の作用に関する。当該態様は、ポリADPリボシル化の阻害に関与する単離細胞核に対するATPの作用、並びにタンパク質が結合されたポリADP-リボース鎖の分解を調節する特異的グリコヒドロラーゼに対するATPの作用を利用する。単離された細胞核は、ATPによるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの阻害と、ATPによるポリ(ADP-リボース)グリコハイドラーゼの活性化の両方に応答し、細胞系に酵素学的結果が表されるということが示される。
【0060】
PARP-1のZn2+フィンガー1での生理的濃度のATP(又はその非加水分解性のアナログ)によって、PARP-1が阻害されるということが示された(Kunら、Biochemistry 43, 210, 2004)。ATPはNAD触媒部位には存在しない。当該阻害部位は、さらに、ATP部位を指摘するために、両方のZn2+フィンガーのアルギニン残基をアミノ酸変異させることにより、阻害部位がさらに同定された(Bauerら、Int. J. Mol. Med. 2005、受理済み、近刊)。当該ATP部位は、Zn2+フィンガー1におけるアルギニン-34であると発見された。アルギニン残基が、「反応性」ホスフェート(例えばATP) (Zachariasら、Trends in Pharmacol. Sci. 23, 281, 2002)及び芳香族(電子供与体) (Woods、J. Proteomic Res. 3, 478, 2004) と反応でき、当該ATP「部位」は、Zn2+フィンガー1においてアルギニン-34を通した反応性を介して、PARP-1を阻害する芳香族の部位を同定しうる。こうして、本発明のPARP阻害剤は、アルギニン-34との相互作用により同定可能であり、そしてATP阻害の加法性により動力学的に同定可能である。本発明のアルギニン-34選択的PARP-1阻害剤は、癌の特徴的な生物化学的表現形である癌の高いPARP-1活性のため、腫瘍細胞に直接作用することができる。
【0061】
PARP媒介性の疾患
本発明の1の態様は、PARP媒介性疾患の治療方法であって、治療を必要とする対象に、4〜35個の炭素原子を有し、式I、その好ましい実施態様、式II及び/又は上記その好ましい実施態様を含む治療有効量の芳香族有機化合物を投与することを含む方法である。ここで当該芳香族有機化合物は、PARP-1酵素のジンクフィンガー1に位置するアルギニン34部位に結合でき、そして当該芳香族有機化合物は、電子供与能を有し、その結果そのπ電子系が、PARP-1のジンクフィンガー1の特異アルギニン-34残基の正荷電(カチオン性)グアニジン部分と接触し、ここで、当該芳香族化合物が窒素原子を含む複素環を含む場合、当該環はカルボニル部位を含むことはない、前記治療方法である。
【0062】
様々なPARP媒介性疾患は、非限定的に、副腎皮質癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆汁管癌、膀胱癌、骨癌、骨転移、成年性中枢神経系脳腫瘍、若年性中枢神経系脳腫瘍、乳癌、キャッスルマン病、頸部癌、若年性非ホジキンリンパ腫、大腸及び直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング腫瘍群(Ewing's family of tumors)、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質性腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン疾患、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌及び下咽頭癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、若年性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、肝臓癌、肺癌、肺カルチノイド腫瘍、非-ホジキンリンパ腫、男性乳癌、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔及び口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、精巣癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫(成年軟組織癌)、黒色腫皮膚癌、非黒色腫皮膚癌、胃癌、睾丸癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症である。
【0063】
PARP媒介性疾患として、癌の血管新生、炎症、変性疾患、CNS疾患、自己免疫疾患、及びウイルス性疾患、例えばHIVが挙げられる。本明細書に記載される化合物は、病原体への細胞応答の調節に有効である。本発明は、他のPARP媒介性疾患、例えばウイルス疾患を治療する方法も提供する。ウイルス疾患の幾つかは、非限定的に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、1型及び2型ヒト単純ヘルペスウイルス、及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)であり、危険なHIVの同時感染である。
【0064】
他のPARP媒介性疾患は、非限定的に、炎症性腸障害、関節炎、高血糖、糖尿病、内毒素ショック又は敗血症性ショック、末梢神経損傷、皮膚老化、てんかん、ストローク、
パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、統合失調症、慢性疼痛、虚血、低酸素の後の神経細胞脱落、アルツハイマー病、粥状動脈硬化、骨関節炎、骨粗鬆症、筋ジストロフィー、骨格筋の変性疾患、例えば、複製老化、加齢黄斑変性、免疫老化、及び他の免疫老化病が挙げられる。幾つかの実施態様では、本明細書に記載される化合物及び方法は、血管形成又は炎症の調節、好ましくは阻害に使用される。
【0065】
PARP媒介性疾患の幾つかの例が本明細書に記載されるが、本発明の範囲を制限することはなく、当該技術分野に知られている他のPARP媒介性疾患が存在してもよく、そして本発明の範囲内である。
【0066】
癌の例
癌の例として、非限定的に、リンパ腫、癌腫及びホルモン依存性腫瘍(例えば、乳房、前立腺又は卵巣癌)が挙げられる。成人又は小児のいずれかにおいて治療されうる異常な細胞増殖性の病気又は癌として、固相腫瘍/悪性腫瘍、局所進行性腫瘍、ヒト軟部肉腫、転移癌が挙げられ、リンパ性腫瘍転移、血液細胞悪性腫瘍、例えば多発性骨髄腫、急性及び慢性白血病、及びリンパ腫、頭頚部癌、例えば口癌、喉頭癌及び甲状腺癌、肺癌、例えば小細胞癌及び非小細胞癌、乳癌、例えば小細胞癌及び腺管癌、消化管癌、例えば食道癌、胃癌、結腸癌、直腸結腸癌、及び結腸直腸の新生物に付随するポリープ、膵癌、肝癌、泌尿器癌、例えば膀胱癌及び前立腺癌、女性生殖器の悪性腫瘍、例えば卵巣癌、子宮癌(子宮内膜癌を含む)、及び卵胞の固形腫瘍、腎癌、例えば腎細胞癌、脳癌、例えば内因性脳腫瘍、神経芽細胞腫、アストロサイトの脳腫瘍、神経膠腫、中枢神経系における転移性腫瘍細胞侵襲、骨癌、例えば骨腫、皮膚癌、例えば悪性黒色腫、ヒト皮膚ケラチノサイトの腫瘍増殖、扁平上皮癌、基底細胞癌、血管周囲細胞腫及びカポジ肉腫が挙げられる。
【0067】
本発明の幾つかの好ましい実施態様では、癌として、結腸腺癌、食道腺癌、肝臓肝細胞癌、扁平上皮癌、膵臓腺癌、膵島腫瘍、直腸腺癌、胃腸間質性腫瘍、胃腺癌、副腎皮質癌、濾胞性癌腫、乳頭癌、乳癌、腺管癌、小葉癌、乳管癌、粘液性癌、葉状腫瘍、卵巣腺癌、子宮内膜腺癌、粒状細胞腫瘍(granulose cell tumor)、粘液性嚢胞性癌、頚部腺癌、外陰部扁平上皮癌、基底細胞癌、前立腺腺癌、骨巨細胞腫、骨骨肉腫、喉頭癌腫、肺腺癌、腎癌、膀胱癌、及びウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0068】
本発明のさらに好ましい実施態様では、癌として、子宮内膜のミュラー管混合腫瘍、管及び小葉タイプの浸潤性癌腫、ウィルムス腫瘍、卵巣のミュラー管混合腫瘍、漿液の嚢胞腺癌、卵巣腺癌(漿液性乳頭状腺癌)、卵巣腺癌(分泌型類内膜腺癌)、転移性浸潤性乳房小葉癌、精巣精上皮腫、前立腺良性結節状過形成、肺扁平上皮癌、肺大細胞癌、肺腺癌、子宮内膜腺癌(類子宮内膜型)、浸潤性腺管癌、皮膚基底細胞癌、乳房浸潤性小葉癌、線維嚢胞性疾患、線維腺腫、神経膠腫、慢性骨髄性白血病、肝臓肝細胞癌、粘液性癌、シュワン腫、腎臓移行上皮癌、橋本病、転移性浸潤性乳房腺管癌、食道腺癌、胸腺腫、葉状腫瘍、直腸腺癌、骨肉腫、結腸腺癌、甲状腺乳頭癌、平滑筋腫、及び胃腺癌が挙げられる。
【0069】
炎症の例
炎症の例として、非限定的に、全身性炎症性の病気及び単球の遊走及び誘引に局所的に付随する病気、白血球及び/又は好中球が挙げられる。炎症は、病原体の感染(グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、ウイルス、真菌、及び寄生虫、例えば原核生物及び蠕虫類)、移植片拒絶(例えば、腎臓、肝臓、心臓、肺、又は角膜などの固形組織の拒絶、並びに移植片対宿主病(GVHD)を含む骨髄移植の拒絶)、又は局在化慢性又は急性自己免疫又はアレルギー反応から生じる。自己免疫疾患として、急性急性糸球体腎炎;リウマチ様又は反応性関節炎;慢性糸球体腎炎;炎症性腸疾患、例えばクローン病、潰瘍性大腸炎及び壊死性腸炎;顆粒球輸血に付随する症候群;炎症性皮膚病、例えば接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性甲状腺炎、多発性硬化症、及び糖尿病の幾つかの型が挙げられるか、又は対象の自己免疫系が攻撃する任意の他の自己免疫状態は、病原組織破壊をもたらす。アレルギー反応として、アレルギー性喘息、慢性気管支炎、急性及び遅延型過敏症が挙げられる。全身性炎症性疾患状態として、外傷、熱傷、虚血の後の再灌流(例えば、心臓、脳、腸、又は末梢脈管構造における血栓の発生、例えば心筋梗塞及び脳卒中)、敗血症、急性呼吸促迫症候群又は多臓器障害が挙げられる。炎症細胞のリクルートが、動脈硬化プラークにも生じる。
【0070】
幾つかの好ましい実施例では、炎症として、非ホジキンリンパ腫、ウェゲナー肉芽腫症、橋本病、肝細胞癌、胸腺萎縮症、慢性膵炎、関節リウマチ、反応性リンパ組織増生、骨関節炎、潰瘍性大腸炎、乳頭癌、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性胆嚢炎、慢性胆嚢炎、硬変、慢性唾液腺炎、腹膜炎、急性膵炎、慢性膵炎、慢性胃炎、腺筋症、子宮内膜症、急性子宮頚管炎、慢性子宮頚管炎、リンパ様過形成、多発性硬化症、特発性血小板減少性紫斑病に対する続発性肥大、原発性IgA腎症、全身性エリテマトーデス、乾癬、肺気腫、慢性腎盂腎炎、及び慢性膀胱炎が挙げられる。
【0071】
内分泌及び神経内分泌障害の例
内分泌障害の例として、副腎、乳房、生殖腺、膵臓、副甲状腺、下垂体、甲状腺の障害、低身長症などが挙げられる。副腎障害として、非限定的にアジソン病、多毛症、癌、多発性内分泌腫瘍症、先天性副腎過形成、及び褐色細胞腫が挙げられる。乳房障害として、非限定的に、乳癌、線維嚢胞性乳腺疾患、及び女性化乳房が挙げられる。生殖腺障害として、非限定的に先天性副腎過形成、多嚢胞性卵巣症候群、及びターナー症候群が挙げられる。膵臓障害として、非限定的に、(I型及びII型)糖尿病、低血糖、及びインスリン抵抗性が挙げられる。副甲状腺障害として、非限定的に、副甲状腺機能亢進、及び副甲状腺機能低下症が挙げられる。下垂体疾患として、非限定的に、先端巨大症、クッシング症候群、尿崩症、トルコ鞍空洞症候群、下垂体機能低下症、及びプロラクチン産生腺腫が挙げられる。甲状腺疾患として、非限定的に、癌、甲状腺腫、甲状腺機能亢進性、甲状腺機能低下性、小結節、甲状腺炎、及びウィルソン症候群が挙げられる。神経内分泌障害の例として、非限定的に、うつ病及びホルモン不均衡に関連する不安障害、生理の際のてんかん、閉経、月経性片頭痛、生殖内分泌疾患、胃腸障害、例えば、腸内分泌腺腫瘍たとえば、カルチノイド、ガストリン産生腫瘍、及びソマトスタチン産生腫瘍、食道アカラシア、及びヒルシュスプルング病が挙げられる。幾つかの実施態様では、内分泌及び神経内分泌障害として、結節状過形成、橋本病、膵島腫瘍、及び乳頭癌が挙げられる。
【0072】
小児における内分泌及び神経内分泌障害として、成長障害の内分泌学的病気及び尿崩症が挙げられる。成長遅延は、脳下垂体の先天性異所性位置又は形成不全/発育不全、全前脳症、中隔視神経異形成症及び基底脳ヘルニアで観察されうる。後天性疾患、例えば、頭蓋咽頭腫、視覚性/視床下部神経膠腫は、小人症、及び間脳症候群を呈する。思春期早発症及び過剰発育は、以下の病気:くも膜嚢胞、水頭症、視床下部過誤腫及び胚細胞腫において見られる。下垂体腺種による成長ホルモン及び副腎皮質刺激ホルモンの過剰分泌は、病理学的高身長症及び小児における体幹肥満をもたらしうる。尿崩症は、ランゲルハルス細胞の組織球増殖症、結核、胚細胞腫、下垂体茎の外傷後/外科的傷害後及び低酸素虚血性脳症などの浸潤性プロセスの次に生じる。
【0073】
栄養及び代謝障害の例
栄養及び代謝障害の例として、非限定的に、アスパルチルグルコサミン尿症、ビオチニダーゼ欠損症、唐鎖不全糖タンパク質症候群(CDGS)、クリグラー・ナジャー症候群、シスチン症、尿崩症、ファブリー病、脂肪酸代謝障害、ガラクトース血症、ゴーシェ病、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)、グルタル酸性尿、フルラー症候群、フルラーシェイエ症候群、ハンター症候群、低リン血症、I-セル病(I-cell)、クラッベ病、乳酸アシドーシス、長鎖3ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素欠損症(LCHAD)、リソソーム蓄積症、マンノース症、メープルシロップ尿症、マルトー-ラミー症候群、異染性白質萎縮症、ミトコンドリア病、モルキオ症候群、ムコ多糖症、神経-代謝性疾患、ニーマン-ピック病、有機物酸血症、プリン症、フェニルケトン尿症(PKU)、ポンペ病、偽-フルラー症候群、ピルビン酸脱水素酵素欠損症、サンドホフ病、サンフィリポ病、シャイエ症候群、sly病、テイサックス病、トリメチルアミン尿症(魚臭症候群)、尿素サイクル異常症、ビタミンD欠乏性くる病、筋の代謝疾患、遺伝性代謝疾患、酸塩基平衡異常、アシドーシス、アルカローシス、アルカプトン尿症、α-マンノース症、アミロイド症、貧血、鉄欠乏、アスコルビン酸欠乏症、ビタミン欠乏症、脚気、ビオチニダーゼ欠損症、欠乏性糖タンパク質症候群、カルニチン障害、シスチン症、シスチン尿症、ファブリー病、脂肪酸酸化障害、フコシドーシス、ガラクトース血症、ゴーシェ病、ギルバート病、グルコースリン酸脱水素酵素欠損症、グルタル酸血症(glutaric academia)、糖原病、ハートナップ病、ヘモクロマトーシス、ヘモシデローシス、肝レンズ核変性症、ヒスチジン尿症、ホモシスチン尿症、高ビリルビン血症、高カルシウム血症、高インスリン症、高カリウム血症、高脂血症、高シュウ酸尿症、ビタミンA過剰症、低カルシウム血症、低血糖症、低カリウム血症、低ナトリウム血症、低リン酸血症(hypophosphotasia)、インスリン抵抗性、ヨード欠損症、鉄過剰症、黄疸、慢性特発性リー病(leigh disease)、レッシュ・ナイハン症候群、ロイシン代謝障害、リソソーム蓄積症、マグネシウム欠乏症、メープルシロップ尿症、MELAS症候群、メンケス捻転毛症候群、内臓脂肪症候群、ムコリピドーシス、ムコポリサッカブリドーシス(mucopolysacchabridosis)、ニーマン・ピック病、肥満症、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ欠乏性疾患、骨軟化症、ペラグラ、ペルオキシソーム病、ポルフィリン症、赤血球新生、ポルフィリー(porphyries)、早老症、偽-ゴーシェ病、レフサム病、ライ症候群、くる病、サンドホフ病、タンジール病、テイ-サックス病、テトラヒドロビオプテリン欠損症、トリメチルアミン尿症(魚匂症候群)、チロシン血症、尿素サイクル障害、水分電解質不均衡、ウェルニッケ脳症、ビタミンA欠乏症、ビタミンB12欠乏症、ビタミンB欠乏症、ウォルマン病、及びツェルウェガー症候群が挙げられる。
【0074】
幾つかの好ましい実施態様では、代謝疾患は、糖尿病及び肥満を含む。
【0075】
血液リンパ系の例
血液リンパ系として、血液疾患及びリンパ系疾患が挙げられる。「血液疾患」として、造血細胞又は組織に影響する疾患、障害、又は病気が挙げられる。血液疾患疾患として、異常血液含量又は機能に付随する疾患、障害、又は病気が挙げられる。血液学的障害の例として、癌の化学療法処置又は骨髄照射から生じる障害、悪性貧血、出血性 貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血、鎌状赤血球貧血、鉄芽球性貧血、慢性感染症、例えば、マラリア、トリパノソーマ症、HIV、肝炎ウイルス又は他のウイルスに付随する貧血、髄欠乏により引き起こされる骨髄癆性貧血、貧血から生じる腎不全、赤血球増加症、伝染性単核球症(IM)、急性非リンパ性白血病(ANLL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、急性骨髄単球性白血病 (AMMoL)、真正赤血球増加症、リンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、ウィルム腫瘍、ユーイング肉腫、網膜芽細胞腫、血友病、高いリスクの血栓症に付随する障害、疱疹、サラセミア、抗体媒介性障害、例えば輸血反応及び赤芽球症、赤血球に対する機械的外傷、例えば、微小血管症性溶血性貧血、血栓性血小板減少性紫斑病及び播種性血管内凝固、プラスモディウムなどの寄生虫による感染症、例えば鉛中毒などのによる化学的損傷、及び脾機能亢進が挙げられる。
【0076】
リンパ系疾患として非限定的に、リンパ節炎、リンパ管拡張症、リンパ管炎、リンパ浮腫、リンパ嚢腫、リンパ球増殖性疾患、皮膚粘膜リンパ節症候群、細網内皮症、脾臓疾患、胸腺過形成、胸腺腫瘍、結核、リンパ節、偽リンパ腫、及びリンパ管異常が挙げられる。
【0077】
幾つかの好ましい実施例において、血液リンパ系の障害として、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、及び反応性リンパ組織増生が挙げられる。
【0078】
CNS疾患の例
CNS疾患の例として、非限定的に、神経変性疾患、薬物乱用、例えばコカイン乱用、多発性硬化症、統合失調症、急性散在性脳脊髄炎、横断性脊髄炎、脱髄性 遺伝病、脊髄損傷、ウイルス-誘発性脱髄、進行性多巣性白質脳症、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLVI)付随性脊髄症、及び栄養性代謝疾患が挙げられる。
【0079】
幾つかの好ましい実施態様では、中枢神経疾患としてパーキンソン病、アルツハイマー病、コカイン乱用、及び統合失調症が挙げられる。
【0080】
神経変性疾患の例
本発明の方法における神経変性疾患として非限定的に、アルツハイマー病、ピック病、びまん性レヴィー小体病、進行性核上性麻痺 (スティール-リチャードソン症候群)、多系統変性(シャイ・ドレーガー症候群)、運動ニューロン疾患、例えば筋萎縮性側索硬化症、変性運動失調(degenerative ataxias)、大脳皮質基底核変性症、グアムにおける筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン認知症の合併症、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、パーキンソン病、シヌクレイン障害(synucleinopathies)、原発性進行性失語、線条体黒質変性症、マシャド・ジョセフ病/3型脊髄小脳失調症及びオリーブ橋小脳変性症、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、延髄性及び仮性球麻痺、脊髄性及び球脊髄性筋萎縮症(ケネディ病)、原発性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、ウェルドニッヒ・ホフマン病、クーゲルベルク・ヴェランダー病、テイサックス病、サンドホフ病、家族性痙性病、ウオールフアルト・クーゲルベルク・ウエランダー病、痙性対麻痺、進行性多巣性白質脳症、及びプリオン病(例えば、クロイツフェルト-ヤコブ、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、クールー病及び致死性家族性不眠症)、アレキサンダー病、アルパース病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、カナバン病、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、ケネディ病、クラッベ病、レウィー小体認知症、マシャド・ジョセフ病、脊髄小脳失調症3型、多発性硬化症、多系統萎縮症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハ病、レフサム病、シルダー病、スピールマイヤー・フォークト-シェーグレン-バッテン病、スティール-リチャードソン-オルツェウスキー病、及び脊髄癆が挙げられる。
【0081】
尿路障害の例
本発明の方法における尿路障害として、非限定的に、腎臓、尿管、膀胱、及び尿道の障害が挙げられる。例えば、尿道炎、膀胱炎、腎盂腎炎、先天性腎無形成、水腎症、多発性嚢胞腎、多嚢胞腎、低い尿路閉塞、膀胱外反症及び尿道上裂、尿道下裂、細菌尿、前立腺炎、腎臓内及び末梢性膿瘍、良性前立腺肥大、腎細胞癌、移行上皮癌、ウィルム腫瘍、尿毒症、及び糸球体腎炎である。
【0082】
呼吸器疾患の例
呼吸器疾患及び病気として非限定的に、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、大細胞癌、嚢胞性線維症(CF)、呼吸困難、肺気腫、喘鳴、肺高血圧症、肺線維症、応答性亢進気道、高いアデノシン又はアデノシン受容体レベル、肺気管支収縮、肺炎症及びアレルギー、及び界面活性物質の枯渇、慢性気管支炎、気管支収縮、呼吸困難、肺軌道の閉塞及び妨害、心臓機能についてのアデノシンテスト、肺血管収縮、呼吸閉塞、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、特定の薬、例えばアデノシン及びアデノシン・レベル増大薬、の投与、及び上室性頻拍(SVT)を治療するための他の薬剤の投与、及びアデノシン・ストレス試験の投与、乳児性呼吸促迫症候群 (乳児性RDS)、疼痛、アレルギー疾患、肺界面活性物質の低下、ユビキノンレベルの低下、又は慢性気管支炎などが挙げられる。
【0083】
女性生殖系の障害の例
女性生殖系の障害の例として、外陰部、腟、子宮頚部、子宮体、卵管、及び卵巣の疾患が挙げられる。その一例として、付属器疾患、例えば、卵管疾患、卵巣疾患、平滑筋腫、粘液性嚢胞性癌、漿液嚢胞腺癌、傍卵巣嚢胞、及び骨盤内炎症性疾患;子宮内膜症;生殖器腫瘍、例えば卵管腫瘍、子宮腫瘍、腟腫瘍、外陰腫瘍、及び卵巣腫瘍;鎖陰;性器ヘルペス;不妊症;性機能不全、例えば性交疼痛症、及び不能;結核;子宮疾患、例えば頚部病、子宮内膜増殖症、子宮内膜炎、子宮留血腫、子宮出血、子宮腫瘍、子宮脱、子宮破裂、及び子宮内反症;腟疾患、例えば性交疼痛症、腟留血症、腟瘻、腟腫瘍、腟炎、腟分泌物、及びカンジダ症、又は外陰腟;外陰部疾患、例えば萎縮症外陰部、そう痒、外陰腫瘍、外陰部炎、及びカンジダ症;並びに泌尿生殖器疾患、例えば泌尿生殖器奇形及び泌尿生殖器腫瘍が挙げられる。
【0084】
男性生殖系の障害の例
男性生殖系の障害として、非限定的に、精巣上体炎;生殖系腫瘍、例えば陰茎腫瘍、前立腺腫瘍、及び精巣腫瘍;血瘤;性器ヘルペス;水瘤;不妊症;陰茎疾患、例えば亀頭炎、尿道下裂、ペイロニー病、陰茎腫瘍、包茎、及び持続勃起症;前立腺疾患、例えば前立腺肥大、前立腺腫瘍、及び前立腺炎;器質性性機能不全、例えば性交疼痛症、及び不能;精索ねじれ;精液瘤;精巣疾患、例えば、停留精巣、精巣炎、及び精巣腫瘍;結核;精索静脈瘤;泌尿生殖器疾患、例えば泌尿生殖器奇形、及び泌尿生殖器腫瘍;並びにフルニエ壊疽が挙げられる。
【0085】
心血管障害(CVS)の例
心血管障害として、虚血を引き起こすか、又は心臓の再灌流により引き起こされる障害が挙げられる。例として、非限定的に、粥状動脈硬化、冠動脈疾患、肉芽腫性心筋炎、慢性心筋炎(非-肉芽腫性)、一次肥大型心筋症、末梢血管病(PAD)、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心停止により引き起こされる心血管組織の損傷、心臓バイパスにより引き起こされる心血管組織損傷、心原性ショック、及び当業者により知られている関連のある病気、又は心臓又は脈管構造の組織損傷又は機能不全に関与する病気が挙げられ、特に非限定的に、PARP活性化に関連する組織損傷が挙げられる。本発明の幾つかの好ましい実施態様では、CVS疾患として、粥状動脈硬化、肉芽腫性心筋炎、心筋梗塞、心臓弁膜症に続発する心筋線維症、梗塞を伴わない心筋線維症、一次肥大型心筋症、及び慢性心筋炎(非-肉芽腫性)が挙げられる。
【0086】
治療方法
本発明により提供される方法は、式I、IIの化合物、及び/又はその好ましい実施態様の投与を含みうる。当該化合物は、他の治療と組み合わせて投与されうる。本発明の組成物と一緒に投与されうる治療薬の選択は、ある程度、治療される病気に左右されよう。例えば、急性骨髄性白血病の治療では、本発明のある実施態様である化合物は、放射線治療、モノクローナル抗体治療、化学療法、骨髄移植、又はそれらの組合せと組み合わせて使用することができる。
【0087】
PARP阻害剤の有効な治療量は、PARP酵素の阻害に関する薬理活性に影響を及ぼすために、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに投与される。そのようなものとして、本発明のPARP阻害剤は、動物において、様々な疾患及び病気、例えば、ネクローシス又はアポトーシス、脳虚血及び再灌流損傷のため生じる細胞損傷又は細胞死、又は神経変性疾患から生じる神経組織損傷、を治療又は予防するのに有用でありうる。さらに、本発明の化合物は、当該PARP阻害剤の有効量を動物に投与することにより、当該動物の循環器障害を治療するために使用することもできる。さらに、本発明の化合物は、癌を治療するために、そして腫瘍細胞を放射線増感又は化学増感するために使用することができる。
【0088】
本発明の幾つかの実施態様では、PARP阻害剤は、損傷ニューロンを刺激し、神経の再生を促進し、神経変性症を予防し、及び/又は神経障害を治療するために使用することができる。PARP阻害剤は、PARP活性を阻害し、そうして、動物における神経組織損傷、特に癌、循環器疾患、脳虚血、及び再灌流傷害、又は神経変性製疾患を治療するために有用である。本発明のPARP阻害剤は、心臓組織損傷の治療のために有用であり、特に、心臓虚血から生じる損傷の治療に有用であり、又は患者の再灌流傷害により引き起こされうる。本発明のPARP阻害剤は、心臓組織損傷、特に心臓虚血から生じるか、又は患者における再灌流傷害により引き起こされる損傷に有用でありうる。本発明の化合物は、以下の:冠動脈疾患、例えば、粥状動脈硬化;狭心症;心筋梗塞;心筋虚血及び心停止;心臓バイパス;及び心原性ショックからなる群から選ばれる心臓血管障害を治療するために特に有用でありうる。
【0089】
別の態様では、本発明のPARP阻害剤は、癌を治療するため、そして腫瘍細胞を放射線増感及び/又は化学増感するために使用できる。本発明のPARP阻害剤は、「抗癌剤」であり、当該用語は「抗腫瘍細胞増殖剤」及び「抗新生物薬」を包含する。例えば、本発明のPARP阻害剤は、癌治療に有用であり、そして癌の腫瘍細胞を放射線増感及び/又は化学増感するのに有用である。
【0090】
放射線増感剤は、癌性細胞の電磁放射腺の毒性効果に対する癌性細胞の感受性を増加させると知られている。多くの癌治療プロトコルは、現在、X線の電磁放射により活性化される放射腺増感剤を使用する。X線により活性化される放射線増感剤の例として、非限定的に以下の: メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU1069、SR4233、EO9、RB 6145、ニコチンアミド、5-ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5-ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FudR)、ヒドロキシ尿素、シスプラチン、及びそれらの治療的に有効なアナログ及び誘導体が挙げられる。
【0091】
癌の光線力学的治療(PDT)は、感作剤の放射活性化因子として可視光を使用する。光線力学的照射増感剤の例として、非限定的に以下の:ヘマトポルフィリン誘導体、フォトフリン、ベンゾポルフィリン誘導体、NPe6、スズ・エチオポリルフィリンSnET2、フェオボルビド-α、バクテリオクロロフィル-α、ナフタロシアニン、フタロシアニン、亜鉛 フタロシアニン、及びこれらの治療的に有効なアナログ及び誘導体が挙げられる。
【0092】
放射線増感剤は、1以上のほかのPARP阻害剤、例えば非限定的に、標的細胞への放射線増感剤の取り込みを促進するPARP阻害剤;治療薬及び/又は酸素の標的細胞への流入を調節するPARP阻害剤の有効量と組み合わせて投与することができる。同様に、化学増感剤は、癌性細胞の化学療法化合物に対する毒性効果を増大させると知られている。PARP阻害剤と組み合わせて使用されうる化学療法薬の例として、非限定的に、アドリアマイシン、カンプトテシン、ダカルバジン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、インターフェロン (α、β、γ)、インターロイキン2、イリノテカン(innotecan)、パクリタキセル、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、トポテカン、及びそれらの治療有効な類似体及び誘導体が挙げられる。さらに、PARP阻害剤と組み合わせて使用できるほかの治療薬として、非限定的に、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、5'アミノ-5'デオキシチミジン、酸素、カーボゲン、赤血球輸血、ペルフルオロカーボン(例えば、フルオソール-DA)、2,3-DPG、BW12C、カルシウムチャネル遮断薬、ペントキシフィリン、血管新生抑制化合物、ヒドララジン、及びL-BSOが挙げられる。
【0093】
製剤、投与経路、及び有効用量
本発明の別の態様は、式I、その好ましい態様である式II、及び/又は式IIaの化合物を含む医薬組成物の製剤及び投与経路に関する。この様な医薬組成物は、上で詳細に記載される方法で癌を治療するために使用できる。
【0094】
式Iの化合物、その好ましい実施態様である式II及び/又はIIaの化合物は、プロドラッグとして提供されてもよく、及び/又は投与後にin vivoでその形態へと変換されよい。つまり、化合物又はその医薬として許容される塩は、本発明において使用する製剤の開発に使用されてもよい。さらに、幾つかの実施態様では、化合物は、1以上のほかの化合物、又は1以上のほかの形態と組み合わせて使用されてもよい。2個の形態は、同じ投与ユニット、例えば1のクリーム、坐剤、錠剤、カプセル、又は飲み物に溶解される1袋入りの粉末剤形されてもよいし、又は各々の形態は、別々のユニットに、例えば、2つのクリーム、2つの坐剤、2つの錠剤、2つのカプセル、1つの錠剤と当該錠剤を溶解するための液体、並びに1袋入りの粉末と当該粉末を溶解するための液体などに剤形されてもよい。
【0095】
式I、その好ましい実施態様である式II及び/又はIIaの化合物と、他の活性薬を含む組成物は、有効であってもよい。当該2個の化合物及び/又は化合物の形態は、例えば1のクリーム、坐剤、錠剤、カプセル、又は飲み物中に溶解される1袋入りの粉末中に一緒に剤形されてもよいし;又は各形態は、別々のユニット中、例えば2つのクリーム、坐剤、錠剤、2つのカプセル、1の錠剤と当該錠剤を溶解する液体、1袋入りの粉末と当該粉末を溶解するための液体に剤形されてもよい。
【0096】
一般的な塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムイオンなどの無機イオンの塩である。この様な塩としては、無機又は有機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸又はマレイン酸などとの塩を含む。さらに、本発明に使用される化合物が、カルボキシ基又は他の酸性基を含む場合、無機又は有機塩基との医薬として許容される添加塩へと変換されてもよい。適切な塩基の例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシル-アミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンが挙げられる。
【0097】
経口投与では、化合物は、当該技術分野に周知の医薬として許容される担体と活性化合物を組み合わせることにより容易に剤形できる。この様な担体は、本発明の化合物が、治療をうける患者により経口摂取される錠剤、例えば、咀嚼錠剤、咀嚼錠、ピル、糖衣錠、カプセル、ロゼンジ、ハードキャンディ、液体、ゲル、シロップ、スラリー、粉末、懸濁液、エリキシル剤、ウェーハ、として剤形されることを可能にする。一般的に、本発明の化合物は、所望の単位用量を提供するために十分な量で、経口投与形態の全体の組成物の重量あたり約0.5%、約5%、約10%、約20%、又は約30%から約50%、約60%、約70%、約80%又は約90%の範囲の濃度レベルで含まれよう。
【0098】
水性懸濁液は、医薬として許容される賦形剤、例えば懸濁化剤(例えばメチルセルロース)、湿潤剤(例えば、レシチン、リゾレシチン及び/又は長鎖脂肪アルコール)、並びに着色料、保存料、香味料などと供に式I、その好ましい実施態様である式II及び/又はIIaの化合物を含んでもよい。
【0099】
幾つかの実施態様では、オイル又は非水性溶媒が、例えば大きな親油性部分が存在することから、化合物を溶液にするために必要とされうる。或いは、乳濁液、懸濁液、又は他の調製品、例えば、リポソーム調製品が使用されてもよい。リポソーム調製品に関して、病気の治療用のリポソームを調製するための任意の既知の方法が使用されてもよい。例えば、本明細書に援用されるBanghamら、J.Mol.Biol, 23: 238-252 (1965) 及びSzoka ら、Proc. Natl. Acad. Sci 75: 4194-4198 (1978)を参照のこと。リガンドは、これらの組成物が特定の作用部位へと運ばれるようにリポソームへと取り付けられてもよい。本発明の化合物は、可溶化、投与及び/又は特定の集合においてコンプライアンスを容易にするため、食品、例えば、クリーム、チーズ、バター、サラダドレッシング、又はアイスクリームに組み込まれてもよい。
【0100】
経口用の医薬製剤は、固体賦形剤として得ることができ、場合により、得られた混合物を粉砕し、そして望まれる場合、適した補助剤を加えた後に粉末混合物を加工して、錠剤又は糖衣錠の中心部を得た。適切な賦形剤は、特に、砂糖、例えばラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトール;香味剤、セルロース調製品、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン(PVP) などの増量剤である。所望される場合、崩壊剤が加えられてもよく、例えば架橋ポリビニルピロリドン、アガー、又はアルギン酸、又はその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどが加えられてもよい。本化合物は、徐放製剤として剤形されてもよい。
【0101】
糖衣錠中心部に適切なコーティングを与えることができる。この目的のために、濃縮糖溶液が使用されてもよく、当該溶液は、場合によりアラビアゴム、タルク、ポリビニル ピロリドン、カルボポール・ゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含みうる。染料又は色素は、識別のため、又は活性化合物の用量の異なる組合せを特徴決定するため、錠剤または糖衣錠皮膜に加えられてもよい。
【0102】
経口投与に用いることができる医薬製剤として、ゼラチン製の押し込み型カプセル、並びにゼラチンとグリコール又はソルビトールなどの可塑剤から作られた密封型のソフトカプセルが挙げられる。押し込み型のカプセルは、ラクトースなどの増量剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び場合により安定剤と混合して活性成分を含んでもよい。ソフトカプセルでは、活性化合物は、適切な液体、例えば脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの中に溶解又は懸濁されてもよい。さらに、安定剤が加えられてもよい。全ての経口投与用の製剤は、投与に適した用量であるべきである。
【0103】
注射液では、本発明の阻害剤は、水溶液中に、好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液、又は生理食塩水緩衝液などの生理的に適した緩衝液中に剤形されうる。この様な組成物は、1以上の賦形剤、例えば、保存剤、可溶化剤、増量剤、潤滑剤、安定剤、アルブミンなどを含む。剤形方法は、Remington's Pharmaceutical Sciences, last edition, Mack Publishing Co., Easton に開示されるように、当該技術分野に知られている。これらの化合物は、経粘膜投与、頬側投与、吸入投与、非経口投与、経皮投与、及び直腸投与用に剤形されてもよい。
【0104】
上に記載された製剤に加えて、化合物は、デポー製剤として剤形されてもよい。この様な長期間作用性製剤は、埋め込み又は経皮デリバリー(例えば皮下又は筋中)、筋中注射、又は経皮パッチの使用により投与されうる。こうして、例えば、化合物は、適切なポリマー又は疎水性物質(例えば、許容できる油におけるエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と剤形されてもよいし、又は難溶性誘導体、例えば難溶性塩として剤形されてもよい。
【0105】
本発明での使用に適した医薬組成物として、活性成分が有効量で、つまり本明細書に記載される少なくとも1の癌において治療及び/又は予防効果を達成するために効果的な量で存在する組成物を含む。個別の適用についての実際の有効量は、治療される病気(単数又は複数)、対照の病気、製剤、及び投与経路、並びに当業者に知られている他の因子に左右されよう。式I、その好ましい実施態様である式II及び/又はIIaの化合物の有効量の決定は、本明細書の開示に照らして当業者の能力の範囲内であり、そして通常行われる最適化技術を用いて決定されよう。
【0106】
以下の製法及び実施例は、本発明を説明するのに役立つ。以下に記載される実施例は、本発明の範囲を制限又は狭めることを少しも意図しない。さらに、多くの変更及び修飾が、添付の特許請求の範囲の本質又は範囲から逸脱することなくなされ、そしてこの様な変更及び修飾は、本発明の範囲内であると予期されるということが、当業者に認められる。
【実施例】
【0107】
PARP-1は、以前に報告されたように仔ウシ胸腺から精製した(Molinetら、(1993) EMBO J. 12:2109-2117)。或いは、組換えPARP-1は、Pharmingenの説明書に従って構築されたヒトPARP-1を発現する組換えバキュロウイルスで感染されたソドプテラ・フジペルダ(Sodoptera Fugiperda)(Sf9)から単離される。PARP-1のR34G及びR138ilのアミノ酸置換変異体のcDNAは、メガプライマー法(Kannannら、(1989) Nucl Acid Res 17:5404)により作成した。変異遺伝子を、トランスファーベクターpV1392へとクローニングし、そして組換えウイルスをPharmingenのBaculogold技術により作成する。変異タンパク質をSf9細胞中で発現させ、精製し、そして報告されるようにアッセイした(Huangら、(2004) Biochemistry 43:217-223; Kirstenら, (2004) Methods in Molecular Biology 287、Epigenetics Protocols 137-149)。
【0108】
ポリ(ADP-リボース)グリコヒドロラーゼ(PARG)をBiomol又はAlexis Coから購入した。当該酵素の性能は等しい。Jurkat細胞を報告されたように培養し(Budayら、(1996) J Biol Chem 271:6159-6163)、そして核は、報告された方法により調製した(Smirnovaら、(2000) J Biol Chem 275:9377-9384)。PARP-1についての酵素アッセイを報告されるように行った(deMurcia (2000) From DNA-damageand and Stress Signalling to Cell Death: Poly ADP-ribosylation Reactions)。スペルミンを補助因子として合成された長鎖(Kunら、(2004) Biochemistry 43:210-216)、又は補助因子がヒストンH1である短鎖を含むポリADP-リボシル化PARP-1を基質として用いて、PARG活性を分析した。ポリADP-リボースは、3H又はビオチン化NADのいずれかで標識されている。PARG活性を、TLCにより遊離3H-ADP-リボースを分析することにより(Kirsten ら、(1991) Exp cell Res 194:1-8)(PEI-セルロースシート上で、0.9M酢酸と0.3M・LiClを溶媒として用いてクロマトグラフィーを行った)、又は残りのビオチン化(ADP-リボース)nを免疫測定することにより (Bakondiら、(2004) Exp Dermatol 13:170-178)、定量的に計測した。 他の試薬は全て、最高の分析用純度の試薬である。
【0109】
実施例1
野生型PARP-1、アルギニン-34及びアルギニン-138変異PARP-1の酵素活性
アッセイを(Kunら、(2004) Biochemistry, 43:210-216)に報告された様に3回行った(200μM 3H標識NAD+、28 dpm/pmol、0.5pmolのPARP-1、3mMスペルミン、pH7.3、t=7.5分)。ATPがその非加水分解性アナログにより置換される場合に、理想的な結果が得られる(Kunら、(2004) Biochemistry、43:210-216)。
【0110】
PARP-1のZn2+フィンガー1において、アルギニン-34をグリシンに置換した場合の効果を図1に示す。PARP-1の全体の酵素活性が、この変異により影響されない一方、ATP(又はその非加水分解性のアナログ)の阻害作用が損なわれる。これらの結果により、PARP-1のみが、ATPによる調節に感受性であることが示される。Zn2+フィンガー2におけるアルギニン-138のイソロイシンへの変異は、ATPの阻害作用について無視できる効果しか有さず、Zn2+フィンガー1のアルギニン-34が、PARP-1とのATP相互作用の部位であるという発明者らの観察を確かにする。
【0111】
実施例2
Jurkat細胞核のPARP-1活性についてのATPの効果
2×105Jurkat細胞に相当する核を、様々な濃度のATPの存在下でインキュベートした。PARP活性を、ビオチン化-NAD(終濃度5μM)を混合し、そして10分間インキュベートすることによりアッセイした。タンパク質を8%SDS-PAGEゲル上で分離した後に、ニトロセルロースにブロットされた標識タンパク質を、ストレプトアビジン-HPO複合体(1μg/ml)でインキュベートし、そしてX線蛍光撮影により検出する。3回の結果を濃度測定単位として表した。
【0112】
単離Jurkat細胞核のPARP-1活性に対する過度に加えられたATP(又はその非加水分解性アナログ)の作用を図2に示す。PARP-1活性が迅速に阻害されることは明らかであり、このことは、単離された酵素について報告された阻害よりもずっと大きい。なぜなら、純粋な酵素についてのATPのKiは2〜2.5mM(3)であるが、核では1mMのATPがすでにPARP-1を80%阻害しているからである。この違いは、核における構造的に連携されているPARP-1の高い感受性のため、又は拡散性のdsDNA-sがある程度失われているため生じうる(Kunら、(2002) J Biol Chem 277:39066-39069; Kunら、(2004) Biochemistry 43:210-216) 拡散性のdsDNA‐sの消失は、核の単離のあいだに生じうる。
【0113】
実施例3
Jurkat細胞核のPARP-1活性のATP感受性に対するBCNUの効果
400nMのBCNUで30分間プレインキュベートを行うという点を変更して、三回の実験を図2に記載されるように行った。一つ目の棒グラフは、BCNUで処理されていない核のPARP活性を示す。
【0114】
PARP-1活性化及びATPによる病態生理的に重要なプロセスの抑制に対して、BCNUによるDNA損傷の結果が図3に示される。PARP-1活性によりアッセイされる場合、BCNUによるDNA損傷に対する応答は、外部から加えられたATPによって完全に除かれ、BCNUの作用が、標的癌細胞の生体エネルギーの競合に左右されるということが示される。
【0115】
実施例4
Jurkat核抽出物のグリコヒドロラーゼ活性についてのATPの効果
ポリ(ADP-リボシル化)-PARP-1(上に記載される様に、2μgのタンパク質を、50μMのビオチン化ーNADとインキュベートする)を96ウェルプレートの壁に結合させる(Kannannら、(1989) Nucl. Acid. Res. 17:5404)。Jurkat細胞核抽出液 (50μgのタンパク質)を、横軸に示される様々な時間のあいだ10mMのATPの存在下(白丸-白丸)で、又は非存在下(黒丸‐黒丸)のいずれかでインキュベートした。ウェルに結合したPARの残りの量を、Trevigenアッセイで三回試験した(縦軸)。
【0116】
Jurkat細胞抽出物が長鎖ポリマー(50ADP‐リボース・ユニット)を含むポリADP‐リボシル化PARP‐1とインキュベートされる場合、ポリマーの崩壊は明らかである。このことは、細胞抽出物中にPARG活性が存在することの結果である(図4)。8mMのATPを加えることは、PARG活性を有意に促進する。
【0117】
実施例5
精製PARGのATP感受性に対するPARポリマーの鎖長の効果
短鎖PAR‐PARP分子(Δ-Δ)又は長鎖PAR-PARP分子(黒丸-黒丸)が、当該方法に記載されるように調製され、そしてアッセイウェルの壁の表面に結合された。精製されたPARG(15mU/アッセイ)を、様々な濃度のATPの存在下で当該壁に加え、そして45分間インキュベートした。結合された量のポリマーを実験で3回測定した(短鎖について0分の値は、0.5ODであり、そして長鎖ポリマーについての0分の値は1.8ODであった)。
【0118】
PARGへの感受性に関して長鎖ADPリボースオリゴマーと短鎖ADPリボースオリゴマーとの間の違いが、図5に示され、これから、短鎖オリゴマーの崩壊がATPにより促進されず、長鎖オリゴマー(平均鎖長50ADPR)の崩壊のみが促進されるということが明らかである。
【0119】
実施例6
基質(PAR)濃度の関数としてのPARG活性についてのATPの効果
PARG(15mU/アッセイ)を、6mMのATPの存在下又は不存在下で45分間、32P‐PAR(長鎖ポリマー)の様々な濃度とインキュベートし、そして遊離32P‐ADPリボースの量をTLCにより、そしてプレートから切り出された部分をオートラジオグフィーにより液体シンチレーションすることにより測定した。実験を3回行う。
【0120】
PARG触媒反応の次に、図6に示される様に3H‐ADPリボースの遊離を計測し、長鎖ポリマーが基質である場合、PARGのエキソヌクレオチダーゼ活性の活性化を示す。
【0121】
実施例7
固形腫瘍直腸癌の治療における化合物の使用
固形腫瘍直腸癌を患う対象を、以下の式:
【化14】

で表される治療有効量の化合物で治療した。ここで、当該化合物は経口又は非経口的に投与される。 数日後、当該癌の症状は顕著に軽くなった。
【0122】
実施例8
固形腫瘍大腸癌の治療における化合物の使用
実施例7の方法が、癌を患う患者に以下の式:
【化15】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0123】
実施例9
固形腫瘍大腸がんの治療における化合物の使用
実施例7の方法が、癌を患う患者に、以下の式:
【化16】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0124】
実施例10
固形腫瘍大腸がんの治療における化合物の使用
実施例7の方法が、癌を患う患者に、以下の式:
【化17】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0125】
実施例11
固形腫瘍大腸がんの治療における化合物の使用
実施例7の方法が、癌を患う患者に、以下の式:
【化18】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0126】
実施例12
固形腫瘍大腸がんの治療における化合物の使用
実施例7の方法が、癌を患う患者に、以下の式:
【化19】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0127】
実施例13
炎症の治療における化合物の使用
炎症を患う患者は、以下の式:
【化20】

で表される治療有効量の化合物で治療される。ここで、当該化合物は経口又は非経口投与により投与される。数日後、炎症の症状は顕著に軽くなった。
【0128】
実施例14
炎症の治療における化合物の使用
実施例13の方法が、炎症を患う患者に、以下の式:
【化21】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0129】
実施例15
炎症の治療における化合物の使用
実施例13の方法が、炎症を患う患者に、以下の式:
【化22】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0130】
実施例16
炎症の治療における化合物の使用
実施例13の方法が、炎症を患う患者に、以下の式:
【化23】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0131】
実施例17
炎症の治療における化合物の使用
実施例13の方法が、炎症を患う患者に、以下の式:
【化24】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0132】
実施例18
炎症の治療における化合物の使用
実施例13の方法が、炎症を患う患者に、以下の式:
【化25】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0133】
実施例19
CMS疾患の治療における化合物の使用
CNS疾患を患う患者を、以下の式:
【化26】

で表される治療有効量の化合物で治療する。ここで、当該化合物を経口又は非経口投与により投与した。数日後、CNS疾患の症状は顕著に軽くなった。
【0134】
実施例20
CNS疾患の治療における化合物の使用
実施例19の方法が、CNS疾患を患う患者に、以下の式:
【化27】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0135】
実施例21
CNS疾患の治療における化合物の使用
実施例19の方法が、CNS疾患を患う患者に、以下の式:
【化28】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0136】
実施例22
CNS疾患の治療における化合物の使用
実施例19の方法が、CNS疾患を患う患者に、以下の式:
【化29】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0137】
実施例23
CNS疾患の治療における化合物の使用
実施例19の方法が、CNS疾患を患う患者に、以下の式:
【化30】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0138】
実施例24
CNS疾患の治療における化合物の使用
実施例19の方法が、CNS疾患を患う患者に、以下の式:
【化31】

で表される化合物が投与されるという点を変更して繰り返される。
同様の結果が得られる。
【0139】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲において特に記載されている。当該特徴及び本発明の利点の更なる理解は、本発明の原理が使用される例示的実施態様を記載する以下の詳細な記載、並びに添付の図面を参照することにより進むであろう。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】図1は、PARP-1の野生型、アルギニン-34変異体、及びアルギニン-138変異体の酵素活性を示すグラフである。
【図2】図2は、Jurkat細胞核のPARP-1活性に対するATPの効果を示すグラフである。
【図3】図3は、Jurkat細胞核のATP感受性PARP-1に対するBCNUの効果を示すグラフである。
【図4】図4は、Jurkat細胞核抽出物のグリコヒドロラーゼ活性対するATPの効果を示すグラフである。
【図5】図5は、精製PARGのATP感受性についてのPARポリマーの鎖長の効果を示すグラフである。
【図6】図6は、基質(PAR)濃度の関数としての、PARG活性についてのATPの効果を示すグラフである。
【図7】図7は、芳香族πシステムとPARP-1のカチオン性グアニジニウム部分との間の相互作用の態様を示す。ここでX=OH又はNH2である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物においてPARP‐1活性を調節する方法であって、哺乳動物に、4〜約35個の炭素原子を有する芳香族有機化合物の有効量を投与することを含み、ここで、当該芳香族有機化合物がPARP‐1酵素のジンクフィンガー-1に位置するアルギニン-34部分に結合でき、そしてここで当該芳香族有機化合物が電子供与能を有し、その結果そのπ電子系が、PARP-1のジンク-1フィンガーの特定のアルギニン-34残基の正に荷電された(カチオン性の)グアニジン部分と相互作用し、ここで当該芳香族化合物が、窒素原子を含む複素環を含む場合、当該環はカルボニル部分を含まず、かつラクタム構造を含まず、そして置換基がベンズアミド又はラクタム構造を含まない、前記方法。
【請求項2】
前記芳香族有機化合物が、以下の式I:
【化1】

[式中、
1、R2、R3及びR4は、独立して、H、ハロゲン、場合により置換される水酸基、置換アミン、場合により置換される低級アルキル、場合により置換されるフェニル、場合により置換されるC4-C10ヘテロアリール及び場合により置換されるC3-C8シクロアルキルからなる群から選ばれる]
で表される化合物、或いはその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物又はプロドラッグ、並びに以下の式II:
【化2】

[式中、
1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、H、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、場合により置換される水酸基、場合により置換される低級アルキル、場合により置換されるアミン、場合により置換されるフェニル、場合により置換されるC4-C10ヘテロアリール及び場合により置換されるC3-C8シクロアルキルからなる群から選ばれ;
XはH、N-オキシド又は場合により置換されるアルキルである]
で表される化合物、或いはその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物又はプロドラッグからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該調節が阻害性である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
当該阻害が不可逆的である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
以下の式:
【化3】

で表される化合物、或いはその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物又はプロドラッグ。
【請求項6】
以下の式IIa:
【化4】

[式中
1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、ヨード、水酸基、ニトロ、ニトロソ、及び場合により置換されるアミンからなる群から選ばれる]
で表される化合物、或いはその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物又はプロドラッグ。
【請求項7】
1、R2及びR5が水素であり、R3が水酸基であり、そしてR4がヨードである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
1、R2及びR5が水素であり、R4が水酸基であり、そしてR3がヨードである、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
1、R2及びR3が水素であり、R5がヨードであり、そしてR4が水酸基である、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
2がアミノプロピルであり、R3がヨードであり、そしてR4が水酸基であり、そしてR5が水素である、請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
2がアミノプロピルであり、R3が水素であり、そしてR4が水酸基であり、そしてR5がヨードである、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
請求項5又は6に記載される少なくとも1の化合物の有効量を、医薬として許容される担体、賦形剤、及び/又は希釈剤と含む、医薬組成物。
【請求項13】
PARP媒介性疾患の治療方法であって、治療を必要とする対象に、4〜約35の炭素原子を有する芳香族有機化合物の治療有効量を投与することを含み、ここで当該芳香族有機化合物は、PARP-1酵素のジンクフィンガー-1に位置するアルギニン-34部分に結合でき、そしてここで当該芳香族有機化合物は、電子供与能を有し、その結果そのπ電子系が、PARP-1のジンク-1フィンガーの特定のアルギニン-34残基の正に荷電された(カチオン性の)グアニジニウム部分と相互作用し、ここで当該芳香族化合物が、窒素原子を含む複素環を含む場合、当該環は、カルボニル部分を含まず、かつラクタム構造を含まず、そして置換基がベンズアミド又はラクタム構造を含まない、前記方法。
【請求項14】
芳香族有機化合物が、以下の式I:
【化5】

[式中、
1、R2、R3及びR4は、独立して、H、ハロゲン、場合により置換される水酸基、置換アミン、場合により置換される低級アルキル、場合により置換されるフェニル、場合により置換されるC4-C10ヘテロアリール及び場合により置換されるC3-C8シクロアルキルからなる群から選ばれる]
で表される化合物、或いはその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物又はプロドラッグ、並びに以下の式II:
【化6】

[式中、
1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、H、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、場合により置換される水酸基、場合により置換される低級アルキル、場合により置換されるアミン、場合により置換されるフェニル、場合により置換されるC4-C10ヘテロアリール及び場合により置換されるC3-C8シクロアルキルからなる群から選ばれ;
XはH、N-オキシド又は場合により置換されるアルキルである]
で表される化合物、或いはその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物又はプロドラッグからなる群から選ばれる、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−543786(P2008−543786A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516030(P2008−516030)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/022907
【国際公開番号】WO2006/135873
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507401258)バイパー サイエンシズ,インコーポレイティド (13)
【Fターム(参考)】