説明

PLLキャリブレーション

変調信号を位相ロックループに加える方法であって、前記変調信号をフィルタリングして低周波数成分と高周波数成分を準備し、位相ロックループのフィードバック経路及びフィードフォワード経路にそれぞれ加えることを含む。前記高周波数成分は、前記フィードフォワード経路に加えられる前に、ゲイン係数によりスケールされる。前記低周波数成分も、ゲイン係数によりスケールされた後、前記フィードフォワード経路に加えられる。前記変調信号とループエラー信号との共通の低周波数範囲におけるエネルギーが見積もられ、その後、前記ゲイン係数は前記測定されたエネルギーに基づいて変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調信号を位相ロックループに加える装置と方法、その装置を備える位相ロックループ、及び、その装置または位相ロックループを備える機器に関する。本発明は、特に、排他的にではないが、無線送信機、例えば、移動通信トランシーバに適用される。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話及びコネクティビティ用の無線送信機で用いられる周知のアーキテクチャは、位相変調を位相ロックループ(PLL)内の局部発振器に加える。このようなアーキテクチャは、統合を提供して所定のチャンネル周波数で無線動作を可能にするだけでなく、送信用の変調信号も提供する。追加の経路、例えば、カルテシアン変調(cartesian modulation)を行うためのI及びQ構成は、必要とされない。さらに、PLLは望ましいスペクトルを、ミスマッチと非直線性が、EVM(エラー・ベクトル・マグニチュード)とスペクトルリグロースとに寄与する、イメージ、キャリア及び相互変調スペクトル成分を加える伝統的な変調器回路の固有の欠点を有さずに、正確に生成する。
【0003】
PLL内で位相変調を加えることの明らかな固有の利点にもかかわらず、いくつかの問題が存在する。第一に、ループは狭帯域の周波数応答を示す。一般的に、ループカットオフ周波数は十分に低くされ、これにより水晶基準発振器スペクトルのレプリカを科すものの、局部発振器の近傍ノイズ(close-in noise)が除去される。PLLのループ帯域幅内の積分された(integrated)位相ノイズは、小さい、例えば1°rmsより小さいままでなければならない。というのも、これは、残留送信位相エラーと受信ビットエラーレートの制限とに関して、全体の無線接続性能に寄与するからである。無線通信システムに用いられるPLLに関して、標準的な要求は、10から100kHzのループ帯域幅と、2GHzのキャリアの周囲で−90dBcの近傍ノイズフロアとである。
【0004】
近年の無線システムは、高い瞬間データスループットレートを実現する目的で、広帯域の変調スキームを採用する。従って、送信用の変調信号のスペクトルは、通常、PLLの帯域幅より非常に広い。基準入力、又は、可変周波数発振器から位相比較器へのフィードバック経路に入れられた変調する信号は、ローパス周波数応答を受ける。フィードバック経路は特に興味深い。というのも、数学的に、プリスケーラ分周器の係数(モジュラス:modulus)を変更することは出力周波数に正確な変化を導入し、ループフィードバックは発振器の動作の正確な制御を確実にする、ということが示され得るからである。これは、2点変調(two point modulation)ループ内の第1の変調点である。それは、正確なゲインだが、限定された通過帯域の特性を有する。積分されたノイズフロアから生じる、より大きい全体の位相エラーを受け入れることによって、ループ帯域幅が広くされ得ても、ループの安定性は、カットオフ周波数が位相比較基準周波数よりも一桁分低くなければならないことに影響する。このことは、1MHzより低い現実的なPLL帯域幅をもたらす。多くの通信システムは、複数メガヘルツ幅のスペクトルを占有するスループットを必要とする。
【0005】
第2の変調点は局部発振器の制御入力である。アナログPLLでは、これは、その平均電位をループフィルタの積分容量から得る、電圧制御ピンである。追加の電圧信号を加えることは、発振器の直接的な周波数変調を可能にする。PLLは、しかし、この外乱を修正しようと試みる。周波数がループ帯域幅内に入る信号に関して、ループは、外乱を打ち消すと共にその影響を削減または無効にするであろう増幅されたエラー信号を、生成するであろう。周波数がループ帯域幅より高い信号に関して、ループゲインは低下し、修正する動作をゼロに低減する。このことは、ループ帯域幅に等しい遷移周波数を有するハイパス伝達関数を生成する。それは、第1の変調点のものに対して相補的な周波数伝達関数の特性を有する。ゲイン(所定の電圧入力に対する出力周波数の変化)は、固有の発振器ゲインにより設定される。これは、一般的に、十分に知られておらず、十分に制御もできず、LCタンク回路内で用いられる容量の製造によって決定される。更に、現実の回路は、電源電圧、温度、出力周波数、及び、部品間のばらつきの複数の変数が原因で変化するゲインを示す。従って、製品の動作中に、ゲインを連続的な方法で調整する必要性がある。
【0006】
上述した様に、2つの点は相補的な方法で用いられ得、任意の周波数変調を、PLL内で制御された発振器に加える。問題は、依然として、2つの経路のゲインをそろえて、それにより理想的な平坦な周波数応答を達成することである。様々なデジタル変調スキームの解析は、要求されたスペクトルの挙動を達成するために小さなゲインエラー許容値のみを示す。このことは、特に、無線LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)システム、例えば、IEEE 802.11a又はIEEE 802.11gに用いられる直交周波数分割多重(OFDM)のような、単位帯域幅あたりの高いビットレートを特徴とする複雑な変調の場合である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、変調信号を位相ロックループに加える装置であって、前記位相ロックループは、
発振器信号を発振器周波数で生成する可変周波数の発振器と、
前記発振器信号を、可変分周比を用いて分周する可変分周比の分周手段と、
前記分周された発振器信号と基準信号との間の位相差を示すエラー信号を生成する位相比較手段と、
前記発振器周波数を制御するために、前記エラー信号を前記発振器に加える結合手段と、
を備え、
前記装置は、
前記変調信号の低周波数成分と前記変調信号の高周波数成分とを準備する変調フィルタリング手段と、
前記低周波数成分を第1ゲイン係数で、且つ、前記高周波数成分を第2ゲイン係数で、スケーリングする(scaling)スケーリング手段と、
前記分周比を制御するための前記低周波数成分と、前記エラー信号との組み合わせで前記発振器周波数を制御するための前記スケールされた低周波数成分及びスケールされた高周波数成分と、を伝達する出力と、
前記変調信号のエネルギーと前記エラー信号のエネルギーとの表示を、前記変調信号と前記エラー信号とに共通の周波数範囲において生成する、エネルギー見積もり手段と、
前記第1及び第2ゲイン係数を、前記エネルギーの前記表示に基づいて、変更するゲイン調整手段と、
を備える装置が提供される。
【0008】
従って、本発明は、位相ロックループの発振器の制御入力に入力された変調信号の高周波数成分のゲインの調整を提供する。調整は、同一点に入力された変調信号の低周波数成分のエネルギーの測定と、ループエラー信号のエネルギーの測定とに基づき、両方のエネルギーの測定は共通の周波数範囲にわたって行われる。本発明は、特に、ゲインの調整を、相関器の使用を必要としない低複雑度の実施で可能にすることが有利である。
【0009】
本発明の第2によれば、変調信号を位相ロックループに加える方法であって、前記位相ロックループは、
発振器信号を発振器周波数で生成する可変周波数の発振器と、
前記発振器信号を、可変分周比を用いて分周する可変分周比の分周手段と、
前記分周された発振器信号と基準信号との間の位相差を示すエラー信号を生成する位相比較手段と、
前記発振器周波数を制御するために前記エラー信号を前記発振器に加える結合手段と、
を備え、
前記方法は、
前記変調信号の低周波数成分及び高周波数成分を、前記変調信号をフィルタリングすることにより準備し、
前記低周波数成分を第1ゲイン係数で、且つ、前記高周波数成分を第2ゲイン係数で、スケーリングし、
前記分周比を制御するための前記低周波数成分と、前記エラー信号との組み合わせで前記発振器周波数を制御するための前記スケールされた低周波数成分及びスケールされた高周波数成分と、を伝達し、
前記変調信号のエネルギーと前記エラー信号のエネルギーとの表示を、前記変調信号と前記エラー信号とに共通の周波数範囲において生成し、
前記第1及び第2ゲイン係数を、前記エネルギーの前記表示に基づいて、変更する、
ことを含む方法が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様に記載の位相ロックループと、本発明の第1の態様による装置とを備える位相ロックループが提供される。
【0011】
本発明の更なる態様によれば、本発明の第1の態様による装置を備える集積回路が提供される。
【0012】
本発明の更なる態様によれば、本発明の第3の態様による位相ロックループを備える無線送信機が提供される。
【0013】
本発明の更なる態様によれば、本発明の第2の態様による方法を実行するように構成されたコンピュータプログラムが提供される。本発明はこのようなコンピュータプログラムを備えるコンピュータ読み取り可能な媒体にまでも及ぶ。
【0014】
位相ロックループは前記エラー信号をフィルタリングするローパス・ループフィルタリング手段も有し、且つ、選択的に、前記エネルギー見積もり手段は、前記エラー信号の前記エネルギーを、前記共通の周波数範囲において、前記フィルタされたエラー信号から生成するように構成され得る。さらに、前記共通の周波数範囲は前記ループフィルタリング手段の帯域幅に相当し得る。これらの特長は、エネルギー見積もり目的のエラー信号の追加のフィルタリングに対する必要性を除去又は削減できる。
【0015】
選択的に、前記エネルギー見積もり手段は、前記変調信号の前記エネルギーの前記表示を、前記共通の周波数範囲において、前記変調信号の前記低周波数成分から、又は、前記変調信号の前記スケールされた低周波数成分から生成するように構成され得る。このことは、エネルギー見積もり目的の変調信号の追加のフィルタリングに対する必要性を、除去又は削減できる。
【0016】
選択的に、エネルギーの前記表示は、前記変調信号の前記共通の周波数範囲における前記エネルギーの表示と、前記エラー信号の前記共通の周波数範囲における前記エネルギーの表示と、を含み得る。従って、両方の信号のエネルギーは独立して見積もられ得、見積もりの、低い複雑度の実現を可能にする。あるいは、エネルギーの前記表示は、前記共通の周波数範囲における前記変調信号の前記エネルギーと、前記共通の周波数範囲における前記エラー信号の前記エネルギーと、の比の表示を含み得る。従って、これらの信号の比は最初に作られ得、比のエネルギーの見積もりが後に続き、一段階のエネルギー見積もりが用いられることと、ゲイン調整手段による削減された処理とを可能にする。
【0017】
選択的に、前記ゲイン調整手段は、前記第1及び第2ゲイン係数を、増加係数
【数1】

で変更するように構成され得、
ここでEEは前記エラー信号の前記共通の周波数範囲の前記見積もられたエネルギーを表し、ELは前記変調信号の前記共通の周波数範囲の前記見積もられたエネルギーを表し、k=GL/GHであり、ここでGLは前記第1ゲイン係数であると共にGHは前記第2ゲイン係数であり、且つ、k<1である。
【0018】
選択的に、EEとELは、前記発振器の制御入力における前記各エネルギーを表し得る。このことは、エラー信号と変調信号との共通の周波数範囲がループにおいて同じゲインを受けるのを確保することで、高い精度を可能にする。
【0019】
選択的に、前記第2ゲイン係数は前記第1ゲイン係数の2倍であり得、ここでnは正の整数である。この場合、kによる割り算又は掛け算は、単にレジスタにおける2進値の1つ以上の右又は左シフトにより実現され得る。
【0020】
選択的に、前記ゲイン調整手段は、少なくとも1つの前記第1及び第2ゲイン係数を前記変調形式に基づいて変更するように構成され得る。このようにして、装置は、異なる各々のスペクトルを有する異なる変調形式の信号に適合され得る。
【0021】
選択的に、前記装置は、前記エラー信号の前記エネルギー見積もりに先立って、DC成分を前記エラー信号から除去するDC除去手段を備え得る。このことは、エネルギー見積もりの間にDCが考慮される必要性を除去する。
【0022】
選択的に、前記位相ロックループはロック外れ(out-of-lock)表示を生成するロック検出手段を備え得、且つ、前記ゲイン調整手段は、前記第1及び第2ゲイン係数を変更することを、前記ロック外れ表示に応じてやめるように構成され得る。このことは、ループがロックを確保している間に、ゲイン調整手段が過渡的なループ信号に反応することを防ぎ得る。
【0023】
選択的に、前記位相ロックループは前記第1及び第2ゲイン係数の値を記憶する記憶手段を備え得、且つ、前記第1及び第2のスケーリング手段は、各々の前記記憶された値をそれらのスケーリングに用いるように構成され得る。このことは、ゲイン係数の高速な調整を可能にし、これは、例えば時分割多重接続システムにおいて有利であり得る。
【0024】
選択的に、前記位相ロックループは前記第2ゲイン係数の値を記憶する記憶手段を備え得、且つ、前記第1及び第2のスケーリング手段は、前記記憶された値をそれらのスケーリングに用いるように構成され得る。このことは、ゲイン係数の高速な調整も可能にし、且つ、削減された記憶装置の要求も有する。
【0025】
選択的に、前記位相ロックループは前記エラー信号の前記DC成分の値を記憶する記憶手段を備え得、且つ、前記DC除去手段は、前記記憶された値を次のDC除去に用いるように構成され得る。このことは、DCの高速な除去、及び、結果としてゲイン係数の高速な調整を可能とし、これは、例えば時分割多重接続システムに有利であり得る。
【0026】
対応する任意の特長は、本発明による方法にも当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明は、例示のみの目的で、添付の図面を参照してここに説明されるであろう。
【図1】図1は、変調される用意がある位相ロックループの実施形態のブロック概略図である。
【図2】図2は、加算ステージの別の構成を示すブロック概略図である。
【図3】図3は、位相ロックループを変調する方法を説明するフローチャートである。
【図4】図4は、変調される用意がある位相ロックループの他の実施形態のブロック概略図である。
【図5】図5は、変調される用意がある位相ロックループの更に他の実施形態のブロック概略図である。
【図6】図6は、位相ロックループを有するトランシーバの実施形態のブロック概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照すると、発振器10の周波数を制御するための制御入力12と、発振器信号用の出力14とを有する、電圧制御発振器またはデジタル制御発振器のような発振器10が示されている。デジタル制御発振器では、発振器信号の周波数はデジタル入力ワードにより制御される。出力14は、発振器信号の周波数を分周するための分周器20の入力に結合される。分周器20は、分周された発振器信号用の出力24を有する。出力24は位相比較器30の第1の入力に結合されていて、それは基準信号用の第2の入力36も有する。位相比較器30は、分周された発振器信号の位相と基準信号の位相との比較を行い、そして、出力34に発振器信号と基準信号との位相差の表示であるエラー信号を供給する。位相比較器30は、時間・デジタル変換器であり得る。このような変換器は、2つの入力信号のエッジ間における到達の時間の差に比例するデジタルワードを生成する。出力34は、エラー信号をローパスフィルタリングするためのループフィルタ40の入力に結合されている。ループフィルタ40の出力44は、発振器10の周波数を制御するための制御入力12に結合されている。上述の図1の要素は、基本的な位相ロックループを形成する。
【0029】
ループは2つの点にて変調され得る。第1に、分周器20は分周器20の分周比を制御するための制御入力22を有する。入力132に加えられた第1の変調成分と、入力131に供給された選択的なチャンネル選択信号と、を加算するための選択的な加算ステージ130が存在する。チャンネル選択信号は、発振器の中心周波数を選択するために用いられ得る。加算ステージ130の出力はシグマ・デルタ変換器50の入力52に結合され、且つ、シグマ・デルタ変換器50の出力は、分周比を制御するための分周器20の制御入力22に結合されている。第2に、出力44におけるフィルタされたエラー信号と追加の変調成分とを加算するための加算ステージ60があり、且つ、加算ステージ60の出力は発振器10の入力12に結合されている。
【0030】
変調信号は、変調信号が占有する帯域幅を正確に符号化するのに十分高いレートで、デジタルワードとして供給され得る。一般的に、振幅及び位相情報が別々に処理されるポーラ変調スキームに関して、一旦振幅及び位相成分が再結合されると、瞬間の周波数情報に関する帯域幅は得られる出力スペクトルよりも著しく広い。例えば、EDGE移動体通信規格に関して、出力変調スペクトルは一般的に±135kHz幅であるが、周波数変調は少なくとも±1MHzの帯域幅にわたって符号化される必要があり、従ってクロックレートは約6.5MHzであり得る。
【0031】
以下の段落は、変調成分を生成する装置200について記載する。
【0032】
変調信号用の入力92を有するフィルタリングステージ90が存在する。フィルタリングステージは、変調信号をフィルタリングするための、ローパスフィルタ94とハイパスフィルタ96とを備える。ローパスフィルタは、出力95に、ループ帯域幅内の帯域幅を有する変調信号の低周波数成分を供給し、且つ、ハイパスフィルタ96は、出力97に、ループ帯域幅より高く且つ選択的に低い周波数を有する変調信号の高周波数成分を供給する。出力95は入力132に結合されているので、低周波数成分は上述の第1の変調成分に対応する。
【0033】
出力95は、第1ゲイン係数用の追加の入力72を有するスケーリングステージ70の入力にも結合されている。スケーリングステージ70は、低周波数成分を第1ゲイン係数でスケールし、そして、スケールされた低周波数成分を、加算ステージ60の入力に結合されている出力74に供給する。
【0034】
出力97は、第2ゲイン係数用の追加の入力82を有するスケーリングステージ80の入力にも結合されている。スケーリングステージ80は、高周波数成分を第2ゲイン係数でスケールし、そして、スケールされた高周波数成分を、加算ステージ60の入力に結合されている出力84に供給する。加算ステージ60は、スケールされた低周波数成分及び高周波数成分を、フィルタされたエラー信号と加算する。従って、スケールされた低周波数成分及び高周波数成分は、共に、上述の追加の変調成分に対応する。異なる順序の加算を有する加算ステージ60の代わりのアーキテクチャは、図2に示されている。
【0035】
ループフィルタ40の出力44は、フィルタされたエラー信号からDCを除去するためのDC除去ステージ100の入力に結合されている。DC除去ステージ100の出力は、エネルギー見積もりステージ110の入力に結合されている。スケーリングステージ70の出力74は、エネルギー見積もりステージ110の入力に結合されている。DC除去ステージ100に結合された、通常、ループがロックを実現した時だけDC値の表示を記憶するための選択的な記憶装置105が存在する。そのためにロック検出ステージ126が後述のように備えられ得、さもなければ、過渡信号が変調信号として処理され得、誤ったゲイン係数をもたらす。記憶されたDC値は、ループの動作の間、例えばトランシーバによる送信又は受信の間、更新され得る。記憶された値は、次のDC除去を補助するのに用いられ得る。
【0036】
エネルギー見積もりステージ110は、各々の測定ステージ111,112において、DC除去後のフィルタされたエラー信号と、スケールされた低周波数成分とのエネルギーを見積もるように構成されており、そして、見積もりはゲイン調整ステージ120の入力に結合されている出力に供給される。エネルギーが見積もられた周波数の範囲は、本明細書では、共通の周波数範囲として言及され、そして、それはループ帯域幅内にある。エネルギー見積もりに用いられる共通の周波数範囲は、エラー信号と変調信号の低周波数成分との両方に関して等しい。共通の周波数範囲はローパス特性またはバンドパス特性を有し得る。けれども、ローパス特性は、より簡単なフィルタリングを可能にする。
【0037】
測定ステージ111,112は、共通の周波数範囲を定義するための各々のフィルタを備え得、そして、各フィルタの平均出力の表示をエネルギーの見積もりとして供給する。他の実施形態では、単純な平均の代わりに、エネルギーは他の方法、例えば、正確なrms(root mean square:2乗平均平方根)値、整流した信号の平均、又は、ピーク値と平均値との重み付き組み合わせで見積もられ得、同じ方法は両方の測定ステージ111と112で用いられる。
【0038】
他の実施形態では、エネルギー見積もりステージ110は、エラー信号と共通の周波数範囲の変調との比を決定し、次に比のエネルギーを見積もるように構成され得る。この場合、比のエネルギーは次にゲイン調整ステージ120に供給され得る。
【0039】
ゲイン調整ステージ120は、スケールされた低周波数成分とエラー信号とのエネルギー、又は、これらの成分の比のエネルギーの見積もりを用い、各々の第1及び第2ゲイン係数の新たな値を決定する。第1ゲイン係数GLの新たな値GL’は、
【数2】

として決定され得、且つ、第2ゲイン係数GHの新たな値GH’は、
【数3】

として決定され得、ここで、GLは第1ゲイン係数の現在値であり、GHは第2ゲイン係数の現在値であり、EEは共通の周波数範囲のフィルタされたエラー信号の見積もられたエネルギーであり、ELは共通の周波数範囲のスケールされた低周波数成分の見積もられたエネルギーであり、且つ、k = GL / GH < 1である。従って、両方のゲイン係数は、同じ割合
【数4】

により調整される。このことは、発振器10の入力12に伝達された両方のエラー信号とスケールされた低周波数成分とが、等しいループゲインエラーを受けるためである。比EE/ELは測定されたエネルギー比であり、且つ、k/(1-k)は期待されたエネルギー比であり、期待されたエネルギー比からの何れの偏差も、発振器10の入力12への変調経路におけるゲインの不十分に調整された値に起因する。従って、ゲインエラーは
【数5】

として表され得る。
【0040】
第1及び第2ゲイン係数は定数kにより関係付けられ、よって、一方のゲイン係数を他方のゲイン係数から計算することが都合良い。例えば、GL’=k.GH’又はGH’=GL’/kである。kの値は任意に選択され得る。しかし、値k=1/2n、ここでnは正の整数であり、例えばk=0.5は、好都合であり得る。というのも、kによる割り算又は掛け算は、その結果、それぞれGH’又はGL’の値を含むレジスタにおける2進値の1つ以上の右又は左シフトとして実現され得るからである。kの値は、変調信号のスペクトルに基づいて選択され得る。例えば、スペクトルのごく一部のみがループ帯域幅から外れるとき、kをより小さくしておき、そしてその結果、より多くの変調信号を発振器の制御入力に加えることが好ましいかもしれないが、スペクトルのほとんどがループ帯域幅の内側に入るとき、より大きいkの値は、分周比を制御するのに用いられるより多くの変調信号に対して好ましいかもしれない。従って、装置が1つ以上のタイプの変調スキームに用いられると、kの値は動作中に変えられ得る。
【0041】
通常、0 < GL < 1且つ0 < GH < 1である。しかし、より大きい値のGL又はGHが用いられると、一連の調整は値を1(ユニティ:unity)より小さく減少させるであろう。ゲイン調整ステージは結合され、第1ゲイン係数の新たな値GL’をスケーリングステージ70の入力72に、且つ、第2ゲイン係数の新たな値GH’をスケーリングステージ80の入力82に供給する。
【0042】
エネルギー見積もりと第1及び第2ゲイン係数の調整とを繰り返すことにより、ゲイン係数の値はk.EE = (1-k).ELのとき収束するであろう。
【0043】
それらが現在の値として用いられるであろう時における、ゲイン調整のその後の繰り返しにおける呼び出し(recall)用の新たな値GL’,GH’を記憶するための、ゲイン調整ステージ120に結合された選択的な記憶装置125が存在する。あるいは、新たな値の1つだけを記憶することが十分である。というのも、他方はGL’=k.GH’又はGH’=GL’/kとして計算され得るためである。
【0044】
また、ゲイン調整ステージ120に結合された、選択的なロック検出ステージ126が存在する。ロック検出ステージ126は、位相ロックループがロックされたかどうかを、例えば変調がループに加えられる前のエラー信号の大きさを測定することによって示すように構成されており、且つ、ゲイン調整ステージ120は、ロック検出ステージ126がループはロックされていないことを示す場合、各々の第1及び第2ゲイン係数の新たな値を決定することをやめるように構成されている。
【0045】
変調成分を生成する装置200の動作が、図3を参照してここに説明されるであろう。技術的な当業者は、基本的な位相ロックループの動作と2点変調の使用とを良く理解しているであろうから、これらはここに説明されないであろう。
【0046】
図3を参照すると、ステップ300において、ロック検出ステージ126によりテストが行われて、位相ロックループがロックされているかどうか判定される。ループがロックされていない場合、フローは次のステップに進まないであろう。フローはループがロックされている場合のみに、ステップ310に進むであろう。
【0047】
ステップ310において、変調信号はフィルタリングステージ90によりフィルタされて、変調信号の低周波数成分と高周波数成分とを準備する。
【0048】
ステップ320において、低周波数成分は第1ゲイン係数GLによりスケールされると共に、高周波数成分は第2ゲイン係数GHによりスケールされる。このステップは、ゲイン係数の1つ又は両方を記憶装置125から読み出すことを含み得る。
【0049】
ステップ330において、スケールされた低周波数成分及び高周波数成分は、スケールされた低周波数成分及び高周波数成分をフィルタされたエラー信号と加算するために加算ステージ60に供給することにより、発振器10の周波数を制御するために伝達される。
【0050】
ステップ340において、フィルタされたエラー信号は受け取られる。ステップ350において、フィルタされたエラー信号のDC成分は、DC除去ステージ100により、フィルタされたエラー信号から除去される。このステップは、以前に記憶されたDC値の表示を記憶装置105から読み出すこと、及び、それを用いてDC除去を補助することを含み得る。このステップは、記憶装置105に、その方法のその後の繰り返しで用いるために除去されたDC成分の値の表示を記憶することも含み得る。
【0051】
ステップ360において、スケールされた低周波数成分とDC除去後のフィルタされたエラー信号とのエネルギーは、エネルギー見積もりステージ110により見積もられ、そして、このエネルギーの表示はゲイン調整ステージ120に供給される。
【0052】
ステップ370において、エネルギーの表示はゲイン調整ステージ120により用いられて、第1及び第2ゲイン係数の値をエネルギーの表示に基づいて調整する。このステップは、以前に記憶された一方又は両方の第1及び第2ゲイン係数の値を記憶装置125から読み出すこと、及び、これらを用いて新たな値を決定することを含み得る。調整は、前述のように方程式(1)と(2)に従い得る。ステップ370は、記憶装置125に、その方法のその後の繰り返しで用いるための調整された第1及び第2ゲイン係数の一方又は両方の値の表示を記憶することも含み得る。
【0053】
ステップ370の後、フローは処理の更なる繰り返しのためにステップ300に戻る。
【0054】
図1に示されたアーキテクチャの多数の変形が、本発明を実施するために可能である。可能な変形はここに論じられるであろう。続いて2つの更なる実施形態の提示が行われる。
【0055】
図1の実施形態では、エラー信号の共通の周波数範囲内のエネルギーは、フィルタされたエラー信号から見積もられる。このことは、共通の周波数範囲がループフィルタ40の帯域幅に等しい場合、エネルギーが見積もられる前にエラー信号の追加のフィルタリングが必要ないので、特に便利である。代わりに、エネルギーはエラー信号から、それがループフィルタ40によりフィルタされる前に見積もられ得る。けれども、この場合、追加のフィルタリングが必要とされ、エラー信号の共通の周波数範囲を測定ステージ111において選択する。このことは、共通の周波数範囲の選択に柔軟性を提供する。
【0056】
同様に、図1の実施形態では、変調信号の共通の周波数範囲内のエネルギーは、変調信号の低周波数成分から見積もられる。このことは、共通の周波数範囲がローパスフィルタ94の帯域幅に等しい場合、エネルギーが見積もられる前に測定ステージ112において変調信号の追加のフィルタリングが必要ないので、特に便利である。代わりに、エネルギーは変調信号から、それがローパスフィルタ94によりフィルタされる前に見積もられ得る。けれども、この場合、追加のフィルタリングが測定ステージ112に必要とされ、変調信号の共通の周波数範囲を選択する。このことは、共通の周波数範囲の選択に柔軟性を提供する。
【0057】
更に、図1の実施形態では、変調信号の共通の周波数範囲内のエネルギーは、スケーリングステージ70によるスケーリング後の変調信号の低周波数成分から見積もられる。代わりに、エネルギーは、スケーリングステージ70によるスケーリング前の変調信号の低周波数成分から見積もられ得る。
【0058】
エネルギー見積もりの目的でどの点から変調信号が取り出されるかに関係なく、方程式(1)と(2)が用いられる場合、EEとELは、発振器10の入力12における共通の周波数範囲における、フィルタされたエラー信号の見積もられたエネルギーと変調信号の見積もられたエネルギーとの各々を表すべきである。従って、変調信号が、エネルギー見積もりのために、それが入力12にて存在しているスケーリングを含まない点にて取り出される場合、補償スケーリングがエネルギー見積もりステージ110又はゲイン調整ステージ120により加えられるべきである。従って、例えば、エネルギー見積もりが、スケーリングステージ70におけるスケール係数GLによるスケーリングの前の、出力95にて取り出された変調信号の低周波数成分に行われる場合、係数GLによるスケーリングは、エネルギー見積もりステージ110又はゲイン調整ステージ120により低周波数成分のエネルギー見積もりに適用されるべきである。
【0059】
第2の実施形態が図4を参照してここに説明されるであろう。変調成分を生成する装置500と装置200との間の相違のみが説明されるであろう。同一のブロック、特に基本的な位相ロックループと点12及び132における変調の用意とは再度説明されないであろう。図1のものと同じ機能を実行するブロックは同一に番号が付されている。けれども、機能が異なる方法で実行されているものについて、相違は説明されるであろう。
【0060】
図4で、DC除去ステージ100は、ループフィルタ40の出力44に結合された入力を有するDC見積もりステージ101と、DC見積もりステージ101の出力に結合された入力及び位相比較器30の出力34に結合された追加の入力を有する減算ステージ102とを備える。従って、減算ステージ102は、ループフィルタ40の出力でDC見積もりステージ101により見積もられるDCレベルを、位相比較器30により供給されるエラー信号から減算するように構成されている。
【0061】
DC除去ステージ100の出力は、エネルギー見積もりステージ110の測定ステージ111に結合されている。測定ステージ112は、図1にあるようなスケールされた低周波数成分の代わりに、変調信号を受け取るための入力92に結合されている。測定ステージ111と112はフィルタリングを含み、エネルギー見積もりのために共通の周波数範囲を定義する。以下に説明するようにエネルギー見積もりステージ110またはゲイン調整手段120は、第1ゲイン係数GLを考慮に入れる用意があり、ELの正確な計算を確保する。
【0062】
図4に示された装置500の動作は、以下の相違を除いて、図1の位相ロックループに関して図3を参照して説明した方法と同一である。ステップ340において、フィルタされたエラー信号ではなく位相比較器30により出力されるエラー信号が受け取られ、そして、ステップ350において、エラー信号のDC成分はDC除去ステージ100により除去される。上述のように、このステップは、以前に記憶されたDC値の表示を記憶装置105から読み出すこと、及び、それを用いてDC除去を補助することを含み得る。このステップは、記憶装置105に、その方法のその後の繰り返しで用いるために、除去されたDC成分の値の表示を記憶することも含み得る。
【0063】
ステップ360において、エネルギーは共通の周波数範囲内でエネルギー見積もりステージ110により、スケールされた低周波数成分ではなく変調信号に関して、且つ、DC除去後のフィルタされたエラー信号ではなくエラー信号に関して、見積もられ、そして、このエネルギーの表示はゲイン調整ステージ120に供給される。
【0064】
ステップ370において、ゲイン調整ステージ120により行われたゲイン調整は方程式(1)と(2)に従う。けれども、ELを決定するため、エネルギー見積もりステージ110により供給された、変調信号に関するエネルギーの見積もりは、第1のスケール係数GLによりスケールされなければならず、それにより、それは発振器10の入力12に供給されたスケールされた低周波数成分の共通の周波数範囲のエネルギーを表す。
【0065】
第3の実施形態が図5を参照してここに説明されるであろう。変調成分を生成する装置600と装置200との間の相違のみが説明されるであろう。同一のブロック、特に基本的な位相ロックループと点12及び132における変調の用意とは再度説明されないであろう。図1のものと同じ機能を実行するブロックは同一に番号が付されている。けれども、機能が異なる方法で実行されているものについて、相違は説明されるであろう。
【0066】
フィルタされたエラー信号と低周波数成分及び高周波数成分との加算は、単一の加算器66のみを含む加算ステージ60により実行され、低周波数成分及び高周波数成分は装置600内で加算される。
【0067】
測定ステージ112は、図1にあるようなスケールされた低周波数成分の代わりに、低周波数成分を受けとるために出力95に結合されている。スケーリングステージ70の入力72に加えられるスケール係数は、第1ゲイン係数GLではなく定数kである。従って、この実施形態のスケーリングステージ70は、二進レジスタにおける右シフトとして実施され得る。
【0068】
それぞれ出力97及び出力74に結合された入力を有する加算ステージ140が存在する。加算ステージ140の出力144は、高周波数成分と、kですでにスケールされた低周波数成分との和を第2スケール係数GHでスケールするために、スケーリングステージ150の入力に結合されている。スケーリングステージ150の追加の入力152は、第2スケール係数GHを受け取るためにゲイン調整ステージ120に結合されている。スケーリングステージ150の出力154は、フィルタされたエラー信号と加算するために加算器66に結合されている。
【0069】
図5に示された装置600の動作は、以下の相違を除いて、図1の位相ロックループに関して図3を参照して説明した方法と同一である。ステップ320において、低周波数成分はkでスケールされ、高周波数成分はkでスケールされた低周波数成分と加算され、そして、得られる和は第2ゲイン係数GHによりスケールされる。それは、第2ゲイン係数を記憶装置125から読み出すことを含み得る。従って、低周波数成分は、GLであるk.GHによりスケールされる。ステップ360において、スケールされた低周波数成分ではなく低周波数成分と、DC除去後のフィルタされたエラー信号とのエネルギーは、エネルギー見積もりステージ110により共通の周波数範囲において見積もられ、そして、このエネルギーの表示はゲイン調整ステージ120に供給される。図4の実施形態に関しては、ELを決定することにおいて、エネルギー見積もりステージ110またはゲイン調整ステージ120は、低周波数成分の測定されたエネルギーをステップ360またはステップ370においてスケールしなければならず、これにより、ELについて決定された値が発振器10の入力12における共通の周波数範囲の変調信号のエネルギーを表すことを確実にする。
【0070】
3つの実施形態の特長は組み合わせられ得、特に、エラー信号をエネルギー見積もりステージ100に供給する異なった方法、つまりループフィルタ40によるフィルタリング前または後は、変調信号の一部をエネルギー見積もりステージ100に供給する異なった方法、つまりGLによるスケーリング前または後、及び、フィルタリングステージ90によるフィルタリング前または後と、組み合わせられ得る。当業者は他の可能性、出力144から第2スケーリング係数GHによるスケーリング前に、又は、図5の出力74からkによるスケーリング後且つ高周波数成分との加算前に、変調信号の一部をエネルギー見積もり手段110に供給するように、図5のスキームをこのように修正すること、を認識するであろう。
【0071】
共通の周波数範囲はエラー信号と変調信号の両方について等しいが、共通の周波数範囲を定義するために用いられるフィルタリングは、変調のスペクトルの特性に基づいて、エラー信号についてと、変調信号についてとで異なり得る。例えば、変調信号が1つ以上のギャップをそのスペクトル、例えば、DCの近く、または、共通の周波数範囲の上限に対応する周波数の周囲、に有する場合、そのエネルギーの評価は、エネルギー見積もりに影響を及ぼすことなくギャップの帯域幅を除外し得、または、エネルギー見積もりに影響を及ぼすことなくギャップが位置されている追加の帯域幅を含み得る。エラー信号は、ローパス特性を有すると共に、そのスペクトルにギャップを有していない。
【0072】
装置及び方法のいくつかの追加の詳細がここに説明されるであろう。
【0073】
位相ロックループは、第2の変調点、入力12のみに加えられるループ帯域幅内の変調周波数を受け入れないであろう。しかし、システムは、これらの周波数が同時に両方の変調点、入力12と入力132とに加えられる時、今までどおり有効に働き得る。これらの周波数がユニティゲインで両方の入力12,132に加えられる時、発振器に引き起こされる初期の変調は、次に発振器の出力14からのフィードバック経路の分周器20により復調され、名目上影響を受けない基準信号を生成する。位相比較器30の出力は、その結果、変調周波数成分を含まないはずである。実際には、2つの変調経路間の何れのゲイン差も、小さな位相比較器エラーとして現れる。このことは、順番に補償信号を発振器の入力12にて生成して、望ましい変調スペクトルを適切に生成するであろう。発振器の入力12における順方向経路(forward path)のゲインが大きすぎる場合、補償信号は逆極性を有すると共に入力12における信号の過剰部分をキャンセルする。発振器の入力12における順方向経路のゲインが小さすぎる場合、極性は揃えられ、そして、補償信号は要求されるレベルで変調信号を増加させて、差を補償するであろう。
【0074】
本発明は、全体的または部分的にアナログまたはデジタル領域で実施され得る。例えば、変調を加える装置200,500,600は、専らデジタル領域で実施され得ると共に、アナログ位相ロックループと共に用いられ得る。実装は、例えば、プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、または、中央演算処理装置(CPU)などを備え得る。追加として又は代わりに、実装は、特定用途向け集積回路(ASIC)の様な配線で接続された1つ又は複数の回路、又は組み込みソフトウェアを備え得る。本発明はコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムコードを用いて実施され得るということも、好ましい。コンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムコードは、コンピュータ読み取り可能な媒体により実行され得る。媒体は、読み出し専用メモリ(ROM)チップのような物理的な記録媒体であり得る。あるいは、それはデジタル多用途ディスク(DVD-ROM)又はコンパクトディスク(CD-ROM)のようなディスクであり得る。それは配線上の電気信号、光信号、又は、人工衛星若しくは同様のものへの無線信号のような信号でもあり得る。
【0075】
本発明に従った装置又は位相ロックループは、通信送信機またはトランシーバに用いられ得る。図6を参照すると、アンテナに結合されると共に局部発振器信号を生成する位相ロックループ430に結合された送信機410と受信機420とを備える無線通信装置が示されている。位相ロックループ430は、送信中に変調を位相ロックループに加える装置200または500または600を含む。
【0076】
本開示の解釈から、他の変形例が当業者に明らかになるであろう。このような変形例は、位相ロックループ及び送信機の分野で既に知られており、ここで既に説明された特長の代わりに又はそれに追加して用いられ得る、均等物および他の特長を含み得る。
【0077】
添付の請求項は特定の特長の組み合わせを対象とするが、本発明の開示の範囲は、明示的に又は非明示的にここに開示された何れの新規な特長、又は、何れの新規な特長の組み合わせ、又は、それらの何れの一般化も含み得ることが、それが現在任意の請求項にクレームされたものと同一発明に関係するか否かを問わず、且つ、それが、本発明が緩和するような任意の又は全ての同一の技術的な問題を緩和するか否かを問わず、理解されるべきである。
【0078】
別の実施形態の文脈に説明された特長も、組み合わせて単一の実施形態に提供され得る。反対に、単一の実施形態の文脈に略して説明された様々な特長も、分けて又は任意の適切な下位の組み合わせで提供され得る。
【0079】
本出願人は、本出願又はそこから派生した任意の追加の出願の審査の間に、新たな請求項がこのような特長及び/又はこのような特長の組み合わせに合わせて作成され得ることを、ここに通知する。
【0080】
完全を期すために、以下のこと、即ち、語句「備える(”comprising”)」は他の要素又はステップを除外しないこと、語句「1つの(”a”又は”an”)」は複数を除外しないこと、単独のプロセッサ又は他の装置は請求項に記載されたいくつかの手段の機能を実現すること、且つ、請求項の参照符号は請求項の範囲を限定するものではないことも、述べられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調信号を位相ロックループに加える装置であって、
前記位相ロックループは、
発振器信号を発振器周波数で生成する可変周波数の発振器と、
前記発振器信号を、可変分周比を用いて分周する可変分周比の分周手段と、
前記分周された発振器信号と基準信号との間の位相差を示すエラー信号を生成する位相比較手段と、
前記発振器周波数を制御するために前記エラー信号を前記発振器に加える結合手段と、
を備え、
前記装置は、
前記変調信号の低周波数成分と前記変調信号の高周波数成分とを準備する変調フィルタリング手段と、
前記低周波数成分を第1ゲイン係数で、且つ、前記高周波数成分を第2ゲイン係数で、スケーリングするスケーリング手段と、
前記分周比を制御するための前記低周波数成分と、前記エラー信号との組み合わせで前記発振器周波数を制御するための前記スケールされた低周波数成分及びスケールされた高周波数成分と、を伝達する出力と、
前記変調信号のエネルギーと前記エラー信号のエネルギーとの表示を、前記変調信号と前記エラー信号とに共通の周波数範囲において生成する、エネルギー見積もり手段と、
前記第1及び第2ゲイン係数を、前記エネルギーの前記表示に基づいて、変更するゲイン調整手段と、
を備える装置。
【請求項2】
前記位相ロックループは前記エラー信号をフィルタリングするローパス・ループフィルタリング手段を備え、且つ、前記エネルギー見積もり手段は、前記エラー信号の前記エネルギーを、前記共通の周波数範囲において、前記フィルタされたエラー信号から見積もるように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記エネルギー見積もり手段は、前記変調信号の前記エネルギーを前記共通の周波数範囲において前記変調信号の前記低周波数成分から見積もるように構成された、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記エネルギー見積もり手段は、前記変調信号の前記エネルギーを前記共通の周波数範囲において前記変調信号の前記スケールされた低周波数成分から見積もるように構成された、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記共通の周波数範囲は前記ループフィルタリング手段の帯域幅に相当する、請求項1から4の何れか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記エネルギーの前記表示は、前記変調信号の前記共通の周波数範囲における前記エネルギーの表示と、前記エラー信号の前記共通の周波数範囲における前記エネルギーの表示とを含む、請求項1から5の何れか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記エネルギーの前記表示は、前記共通の周波数範囲における前記変調信号の前記エネルギーと、前記共通の周波数範囲における前記エラー信号の前記エネルギーと、の比の表示を含む、請求項1から5の何れか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記ゲイン調整手段は、前記第1及び第2ゲイン係数を、増加係数
【数1】

で変更するように構成され、
ここでEEは前記エラー信号の前記共通の周波数範囲の前記見積もられたエネルギーを表し、ELは前記変調信号の前記共通の周波数範囲の前記見積もられたエネルギーを表し、k = GL / GHであり、ここでGLは前記第1ゲイン係数であると共にGHは前記第2ゲイン係数であり、且つ、k<1である、請求項1から7の何れか1項に記載の装置。
【請求項9】
EEとELは、前記発振器の制御入力における前記各エネルギーを表す、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第2ゲイン係数は前記第1ゲイン係数の2倍であり、ここでnは正の整数である、請求項1から9の何れか1項に記載の装置。
【請求項11】
異なる各々のスペクトルを有する複数の変調形式の信号と共に用いる装置であって、
前記ゲイン調整手段は、少なくとも1つの前記第1及び第2ゲイン係数を前記変調形式に基づいて変更するように構成された、請求項1から10の何れか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記エラー信号の前記エネルギー見積もりに先立って、DC成分を前記エラー信号から除去するDC除去手段を備える、請求項1から11の何れか1項に記載の装置。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の位相ロックループと、請求項1から12の何れか1項に記載の装置とを備える位相ロックループ。
【請求項14】
ロック外れ表示を生成するロック検出手段を備え、
前記ゲイン調整手段は、前記第1及び第2ゲイン係数を変更することを、前記ロック外れ表示に応じてやめるように構成された、請求項13に記載の位相ロックループ。
【請求項15】
前記第1及び第2ゲイン係数の値を記憶する記憶手段を備え、
前記スケーリング手段は、前記記憶された値をスケーリングに用いるように構成された、請求項13又は14に記載の位相ロックループ。
【請求項16】
前記第2ゲイン係数の値を記憶する記憶手段を備え、
前記スケーリング手段は、前記記憶された値をスケーリングに用いるように構成された、請求項13又は14に記載の位相ロックループ。
【請求項17】
前記エラー信号の前記DC成分の値を記憶する記憶手段を備え、
前記DC除去手段は、前記記憶された値をDC除去に用いるように構成された、請求項13から16の何れか1項に記載の位相ロックループ。
【請求項18】
変調信号を位相ロックループに加える方法であって、
前記位相ロックループは、
発振器信号を発振器周波数で生成する可変周波数の発振器と、
前記発振器信号を、可変分周比を用いて分周する可変分周比の分周手段と、
前記分周された発振器信号と基準信号との間の位相差を示すエラー信号を生成する位相比較手段と、
前記発振器周波数を制御するために前記エラー信号を前記発振器に加える結合手段と、
を備え、
前記方法は、
前記変調信号の低周波数成分及び高周波数成分を、前記変調信号をフィルタリングすることにより準備し、
前記低周波数成分を第1ゲイン係数で、且つ、前記高周波数成分を第2ゲイン係数で、スケーリングし、
前記分周比を制御するための前記低周波数成分と、前記エラー信号との組み合わせで前記発振器周波数を制御するための前記スケールされた低周波数成分及びスケールされた高周波数成分と、を伝達し、
前記変調信号のエネルギーと前記エラー信号のエネルギーとの表示を、前記変調信号と前記エラー信号とに共通の周波数範囲において生成し、
前記第1及び第2ゲイン係数を、前記エネルギーの前記表示に基づいて、変更する、
ことを含む方法。
【請求項19】
前記位相ロックループは前記エラー信号をフィルタリングするローパス・ループフィルタリング手段を備え、前記方法は、前記エラー信号の前記エネルギーの前記表示を、前記共通の周波数範囲において、前記フィルタされたエラー信号から生成することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記変調信号の前記エネルギーの前記表示を、前記共通の周波数範囲において前記変調信号の前記低周波数成分から生成することを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記変調信号の前記エネルギーの前記表示を、前記共通の周波数範囲において前記変調信号の前記スケールされた低周波数成分から生成することを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項22】
前記共通の周波数範囲は前記ループフィルタリング手段の帯域幅に相当する、請求項18から21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記エネルギーの前記表示は、前記変調信号の前記共通の周波数範囲における前記エネルギーの表示と、前記エラー信号の前記共通の周波数範囲における前記エネルギーの表示と、を含む、請求項18から22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記エネルギーの前記表示は、前記共通の周波数範囲における前記変調信号の前記エネルギーと、前記共通の周波数範囲における前記エラー信号の前記エネルギーと、の比の表示を含む、請求項18から22の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1及び第2ゲイン係数を、増加係数
【数2】

で変更することを含み、
ここでEEは前記エラー信号の前記共通の周波数範囲の前記見積もられたエネルギーを表し、ELは前記変調信号の前記共通の周波数範囲の前記見積もられたエネルギーを表し、k = GL / GHであり、ここでGLは前記第1ゲイン係数であると共にGHは前記第2ゲイン係数であり、且つ、k<1である、請求項18から24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
EEとELは、前記発振器の制御入力における前記各エネルギーを表す、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第2ゲイン係数は前記第1ゲイン係数の2倍であり、ここでnは正の整数である、請求項18から26の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの前記第1及び第2ゲイン係数を、異なる各々のスペクトルを有する異なる変調信号に応じて変更することを含む、請求項18から27の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記エラー信号の前記エネルギー見積もりに先立って、DC成分を前記エラー信号から除去することを含む、請求項18から28の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記位相ロックループがロックされているか判定し、そして、前記位相ロックループがロック外れであることに応じて、前記第1及び第2ゲイン係数を変更することをやめることを含む、請求項18から29の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1及び第2ゲイン係数の値を記憶し、そして、前記記憶された値を、次の変調信号の前記低周波数成分及び高周波数成分を各々スケーリングするために用いることを含む、請求項18から30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記第2ゲイン係数の値を記憶し、そして、前記記憶された値を、次の変調信号の前記低周波数成分及び高周波数成分をスケーリングするために用いることを含む、請求項18から30の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記エラー信号の前記DC成分の値を記憶し、そして、前記記憶された値を次のDC除去に用いることを含む、請求項18から32の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
請求項1から12の何れか1項に記載の装置を備える集積回路。
【請求項35】
請求項13から17の何れか1項に記載の位相ロックループを備える無線送信機。
【請求項36】
請求項18から33の何れか1項に記載の方法を実行するように構成されたコンピュータプログラム。
【請求項37】
請求項36に記載されたコンピュータプログラムを備えるコンピュータ読み取り可能な媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−503983(P2011−503983A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532491(P2010−532491)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009355
【国際公開番号】WO2009/056361
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510000633)エスティー‐エリクソン、ソシエテ、アノニム (59)
【Fターム(参考)】