説明

PLL制御回路

【課題】省電力モード等において周波数が大きく変動するリファレンスクロックに応答し、PLLクロックを出力するPLL制御回路では、省電力モード時等においてリファレンスクロックの変動に追随できず、誤動作が生じる場合があった。
【解決手段】リファレンスクロックに応答し、PLLクロックを出力するPLL制御回路において、リファレンスクロックの変動の際にも、PLLクロックの周波数が実質的に一定になるような周波数調整を行う周波数調整回路を備えている。周波数調整回路はPLLクロックの周波数を決定するカウンタの設定値をリファレンスクロック周波数の変動に応じて変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL(Phase Locked Loop:位相同期ループ)回路を制御するPLL制御回路に関し、特に、携帯端末等、移動無線通信装置に使用されるPLL制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のPLL回路(以下、単にPLL)は、電圧制御発振器(VCO)、位相比較器、及び、ループフィルタによって構成されている。具体的に説明すると、位相比較器は、外部から与えられる入力信号と、VCOから出力される出力信号との間の位相差を検出し、ループフィルタを介して、位相差をあらわす電圧をVCOに帰還している。この構成を有するPLLは、VCOの発振周波数を入力信号の周波数・位相に一致するように、制御することができる。
【0003】
通常、PLLは、半導体集積回路化されて、多種多様な機器に使用されている。このうち、携帯電話機等の携帯端末に適用できるPLLが特開2003−152535号公報(特許文献1)及び特開2003-133951号公報(特許文献2)に記載されている。
【0004】
特許文献1は、GSM(Global System for Mobile Communication)、DCS(Digital Cellular System)、及び、PCS(Personal Communication System)等、複数の周波数帯域で動作可能なVCOを使用し、VCOの発振可能な周波数帯域を広くしてもVCOの制御電圧の感度が高くならず、外来ノイズ、電源電圧変動による影響を受けにくいPLLを開示している。
【0005】
即ち、特許文献1では、PLLを構成する発振回路の制御電圧を所定の電圧に固定した状態で各帯域での発振回路の発振周波数を測定して記憶回路に記憶しておき、PLL動作時に与えられる帯域指定用の設定値と記憶された周波数の測定値とを比較し、比較結果から実際に発振回路で使用する帯域を決定している。
【0006】
このため、特許文献1に示されたPLLは、記憶回路のほかに、VCOに接続された可変分周器、基準発振器の出力とVCOの出力とから周波数をカウントする周波数カウンタ、及び、VCOの出力と基準発振器の出力との位相を比較する位相比較器を備えている。
【0007】
他方、特許文献2はCPUからデータ信号、クロック信号、及び、ストローブ(STB)を受けて動作するPLLを開示している。特許文献2では、データ信号を用いて、プログラマブルカウンタに所望のカウント値を設定することにより、所望の周波数の信号を生成できることが開示されている。
【0008】
また、特許文献2は、ストローブ信号にノイズが重畳されても誤動作が発生しないように、ノイズを無視する回路を設けたPLLを提案している。即ち、ストローブ信号として、所定のパルス幅を有するストローブ信号をCPUから生成する一方、ストローブ信号のパルス幅期間、リファレンス信号をカウンタによってカウントすることにより、ストローブ信号とノイズとを識別して、ノイズによる誤動作が発生しないようにしている。
【0009】
上に説明したように、特許文献1及び2は、周波数カウンタ或いはプログラマブルカウンタを使用して、周波数を可変することができるPLLを開示している。
【0010】
【特許文献1】特開2003−152535号公報
【特許文献2】特開2003-133951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1及び2は、携帯端末等、移動無線通信装置における移動無線通信装置特有の問題があること、及び、移動無線通信装置に使用されるPLLでは、これらの問題に対応した対策が取られなければならないことについて、何等指摘していない。
【0012】
具体的に言えば、携帯端末等の移動無線通信装置では、消費電力を低減するために、非通話時、或いは、待受け時等、通話時における通話モードに比較して消費電力を少なくする省電力モードが設定されているのが普通である。ここで、省電力モードは、設定の場合等とは異なり、携帯端末等、移動無線通信装置の動作時に一時的に行われるモードである。
【0013】
また、携帯端末のうち携帯電話機は、CPU及びリファレンスクロックを発生するクロック発生器を含む集積回路部と、リファレンスクロックを入力信号として受け、液晶表示装置(LCD)等の表示装置を駆動する集積回路部とを個別に備えている。この場合、表示装置を駆動する集積回路部には、PLLが設けられ、リファレンスクロックにしたがってPLLを動作させる構成が採用されることがある。
【0014】
このような構成を備えた携帯電話機では、省電力モードの際、通常の通話モードの場合に比較して、リファレンスクロックの周波数を著しく低下させる場合、或いは、CPUを含む回路部の電源をオフにしてリファレンスクロックの周波数をゼロにする場合もある。
【0015】
一方、リファレンスクロックにしたがって動作するPLLの出力信号をパラレル/シリアル変換(P/S)して表示装置に供給することにより、配線の数を減少させると共に、パラレル配線に伴う配線相互間のノイズの発生を軽減することも考慮されている。このように、P/S変換器を設けた構成では、PLLから出力されるPLLクロックの周波数はリファレンスクロックの周波数に比較して極めて高くなり、しかも、省電力モードにおいて、リファレンスクロックの周波数を低下或いは停止させ場合、PLLからのPLLクロックの周波数の変化も非常に大きくなってしまう。
【0016】
したがって、P/S変換器を備えた携帯電話機では、省電力モードにおけるリファレンスクロックの周波数の低下、または、停止の際、PLLクロックの変化が非常に大きくなる。このため、従来のPLLを含むPLL制御回路では、その変化に追随できず、誤動作が生じることが判明した。
【0017】
他方、特許文献1及び2では、省電力モード時におけるPLLの誤動作について指摘していないし、そのための対策についても何等指摘していない。
【0018】
本発明の目的は、省電力モードを有する携帯電話機等の移動端末に適したPLL制御回路を提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、リファレンスクロックの周波数が一時的に大幅に変化しても、実質的に一定のPLLロックを発生することができるPLL制御回路を提供することである。
【0020】
本発明の更に他の目的は、リファレンスクロックの変動があっても、LCD等の表示装置の誤動作、シーケンス処理の損失を防止できるPLL制御回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の態様によれば、PLLの出力周波数を変更制御するカウンタ部と、前記PLLに入力されるリファレンスクロックを検知する検出部と、前記検出部の検出結果に基づき前記カウンタ部の設定値を変更する設定変更部とを有することを特徴とするPLL制御回路が得られる。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、PLLの出力周波数を変更制御するカウンタ部と、前記PLLに入力されるリファレンスクロックを検知する検出部と、前記検出部の検出結果に基づきリファレンスクロックをカウントするカウント部と、前記PLLへのリファレンスクロックと帰還クロックの供給停止を制御する回路とを有することを特徴とするPLL制御回路が得られる。
【0023】
第1の態様に係るPLL制御回路において、リファレンスクロックをPLL逓倍後のクロックでサンプリングすることで周波数変化を可能としても良いし、或いは、リファレンスクロックを第2のクロックでサンプリングすることで周波数変化を可能としても良い。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、周波数が変化するリファレンスクロックを受けて、PLLクロックを出力するPLL制御回路において、前記リファレンスクロックの周波数を測定し、前記リファレンスクロックの周波数変化を検出する手段と、前記リファレンスクロックの周波数変化に応じて、PLLクロックの周波数を決定するパラメータを備えた回路要素を変更制御し、前記PLLクロックの周波数が実質的に一定になるように制御する周波数調整部とを有することを特徴とするPLL制御回路が得られる。
【0025】
この場合、前記周波数変化を検出する手段は、前記リファレンスクロックの周波数をデジタル的に測定・検出する周波数測定回路を有し、他方、前記周波数調整部は、前記リファレンスクロック周波数変化前及び後の周波数から、前記回路要素のパラメータを更新し、前記回路要素に設定する設定回路によって構成される。
【0026】
一方、前記周波数変化を検出する手段は、前記リファレンスクロックの停止を判定する周波数判定回路を有し、他方、前記周波数調整部は、前記リファレンスクロックの停止中、PLLを自走状態にするクロック停止制御回路によって構成されても良い。
【0027】
また、本発明に係るPLL制御回路は種々の電子装置、例えば、携帯端末等に適用できる。
【0028】
本発明の第4の態様によれば、PLLクロックを生成するPLLを備え、周波数が変動するリファレンスクロックに応じて、前記PLLクロックを制御する制御方法において、前記リファレンスクロックの周波数変化を検出するステップと、周波数変化が検出された場合、前記PLLクロックを決定するパラメータを前記周波数変化に応じて変化させることにより、前記PLLクロックの周波数を実質的に一定に維持するステップとを有することを特徴とするPLL制御方法が得られる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、PLL動作中、リファレンスクロックの変動があっても、データやシーケンス処理の損失を防ぐことができるPLL制御回路を得ることができる。このため、省電力化の際にもシステム全体の処理能力を低下させる必要が無いと言う利点がある。更に、本発明では、システムを構成する個々のLSIの状態を管理しなくて良いため、システム設計者は煩雑なシステム管理から開放されると言う効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
まず、図1を参照すると、本発明を適用できるシステムの一般的な構成が示されている。ここでは、システムの一例として、クロック発生器20を備え、CPUとして動作する集積回路部LSI1から、リファレンスクロックを他の集積回路部、ここでは、2つの集積回路部LSI2、LSI3に分配するシステムが示されている。図示された3つの集積回路部LSI1、LSI2、及び、LSI3はそれぞれ個別の電源1、2、及び3を備えている。
【0032】
このようなシステムにおいて、2つの集積回路部LSI2及びLSI3はそれぞれPLL210及び220を含むPLL制御回路21及び22を有している。各PLL制御回路21、22は、クロック発生器20からのリファレンスクロックを受けて、各集積回路部LSI2、LSI3の外部に接続された外部装置(例えば、表示装置等)をPLLクロックにしたがって駆動する。
【0033】
ここで、CPUとして動作する集積回路部LSI1は、例えば、省電力化のために、リファレンスクロックの周波数を低下させたり、或いは、リファレンスクロックを停止させることもある。このように、リファレンスクロックの周波数が変化しても、リファレンスクロックの受信側である集積回路部LSI2及びLSI3は、通常どおりの処理動作をしなければならない場合もある。この場合、リファレンスクロックの周波数切り替えや、停止のタイミングは、各集積回路部LSI2〜LSI3におけるデータ処理やシーケンス処理の状態を考慮した上で行う必要がある。
【0034】
リファレンスクロックのタイミングを間違えると、集積回路部LSI2、LSI3において、データやシーケンス処理の損失が生じ、これらが誤動作することがある。
【0035】
また、省電力化によりリファレンスクロック周波数を落としたり、停止したりする期間はシステムの処理能力を下げるか、処理自体が出来ないこともあった。一方、処理能力の低下等を軽減するために、システム全体を考慮して、リファレンスクロック、PLLクロック等の制御を行うことはシステム制御が煩雑になってしまう。
【0036】
図2を参照すると、図1に示されたシステムの具体例として、本発明を携帯端末、特に、携帯電話機に適用した場合のシステム構成が示されている。図2に示されたシステムは、CPUとして動作する第1の集積回路部31と、本発明に係るPLL制御回路を含む第2の集積回路部32(後述)、及び、表示装置であるLCD25を駆動する第3の集積回路部33とを備え、これらはいずれもLSIによって構成されていることは図1と同様であり、このうち、第3の集積回路部33はLCDドライバとして動作する。
【0037】
また、図示された第1の集積回路部31は、システムクロックを発生するクロック発生器311と、システムクロックを受けてリファレンスクロックを生成する一方、データ信号とを出力する信号処理部312とによって特徴付けられている。信号処理部312は、システムクロックから、第2の集積回路部32に分配されるリファレンスクロックREFclkを生成すると共に、ビット並列(例えば、18ビット並列)にパラレルデータ信号DPを出力する。ここで、携帯電話機に使用されるCPUでは、通常モード時に、例えば6Mzの周波数のリファレンスクロックREFclkを発生し、省電力モードでは、リファレンスクロックREFclkの周波数を低い周波数(例えば、1.5MHz)に低下させるか、或いは、リファレンスクロックREFclkを停止している。
【0038】
一方、第2の集積回路部32は、PLL制御回路321とパラレル(P)/シリアル(S)変換回路322とを含むPLL部を構成しており、当該PLL部は、フレキシブル配線を通してLCDドライバ323に接続されている。尚、図示されたPLL制御回路321及びP/S変換回路322からなるPLL部は、単体の集積回路によって構成されるものとして説明するが、第1の集積回路部31に組み込まれても良い。
【0039】
ここで、PLL制御回路321は、P/S変換回路322からビットシリアルでデータ信号(即ち、シリアルデータ信号DS)を出力するためにリファレンスクロックREFclkよりも高い周波数(例えば、114MHz)を有するPLLクロックPLLclkをP/S変換回路322に送出する。また、P/S変換回路322はシリアル変換されたシリアルデータ信号をLCDドライバ323にフレキシブル配線を介して出力する。当該シリアルデータ信号DSを伝送するフレキシブル配線は、パラレル配線に比較して配線数を少なくすること(例えば、6本程度)ができると共に、フレキシブル配線に伴うノイズを低減できる。
【0040】
シリアルデータ信号DSを受けたLCDドライバ323は、PLLclkにしたがって、LCD25を駆動し、データ信号の表示を行う。この構成では、LCD表示部25を折り畳むのに必要なフレキシブル配線の数を減少させることにより、配線の断線等に伴う故障を少なくすることができ、且つ、ノイズを低減できる。
【0041】
次に、図3を参照して、図2に示された携帯電話機の信号処理部312から出力されるリファレンスクロックの周波数変化について説明する。図3では、横軸及び縦軸にそれぞれ時間(t)及びリファレンスクロック周波数が取られている。図3では、時間t0からt1の間、リファレンスクロック周波数は高い周波数(例えば、6MHz)を維持しており、t1からt2の時間、省電力モードが指定されると、例えば、1.5MHz程度の低い周波数になる例が示されている。
【0042】
他方、図4では、t1からt2の省電力モードの時間、リファレンスクロックが停止される場合が示されている。
【0043】
図2に戻ると、図3或いは図4に示すように、リファレンスクロックREFclkが省電力モードにおいて変動すると、リファレンスクロックREFclkに比較して非常に高い周波数を有するPLLクロックPLLclkの変動はリファレンスクロックREFclkの変動にも増して大きく変化し、通常のPLL制御を行ったのでは、PLLクロックPLLclkはリファレンスクロックREFclkの変動に追随できず、誤動作が発生してしまう。
【0044】
上記した点を考慮して、図2に示されたシステムは、リファレンスクロックREFclkが大幅に変動し、PLLクロックPLLclkが更に大きく変動しても充分に対処することができ、誤動作等の生じないPLL制御回路321を有している。
【0045】
図5を参照して、本発明に係るPLL制御回路321の具体的な構成について説明する。図示されたPLL制御回路321は、周波数が省電力モードの際等、一時的に大きく変動するリファレンスクロックREFclkを受けると共に、当該リファレンスクロックREFclkよりも高い周波数を有する第2のクロックclk2を受けて動作する。
【0046】
また、PLL制御回路321は、PLL40、リファレンスクロックREFclkの周波数を測定する周波数測定回路42、及び、リファレンスクロックREFclkと周波数測定回路42の検出結果にしたがって、PLL40のPLLクロックPLLclkの周波数を常に実質的に一定に維持する周波数調整回路45を有している。即ち、図示された周波数調整回路45は、リファレンスクロックの周波数が図3に示すように、省電力モードにおいて低下した場合にも、PLLクロックPLLclkの周波数を実質的に一定に保つことができる。
【0047】
このため、周波数調整回路45は、リファレンスクロックREFclkをカウントする1/Mカウンタ451、PLLクロックPLLclkをカウントする1/Nカウンタ452、及び、周波数測定回路42に接続されたM,N設定回路453を備えている。なお、1/Mカウンタ451、1/Nカウンタ452はそれぞれ任意にカウント数を変更できる可変カウンタ(又は、可変分周器)であり、これらのカウント値を設定することで所望の周波数の逓倍を作ることができるものとし、これらのカウンタはパラメータを可変できる回路要素として動作する。尚、M及びNは正整数である。
【0048】
まず、図5に示されたPLL制御回路321の動作をより明確にするために、周波数測定回路42及びMN設定器453を備えず、1/Mカウンタ451及び1/Nカウンタ452が固定カウンタによって構成されたPLL制御回路の動作を説明する。この場合、PLL制御回路は図6のような構成になる。図6に示されたPLL制御回路において、リファレンスクロックREFclkは1/Mカウンタ451に与えられ、当該1/Mカウンタ451を介してPLL40のPLL_R端子に供給されており、他方、PLLクロックPLLclkは外部回路に出力されると共に、1/Nカウンタ452を介して、PLL40のPLL_V端子に帰還されている。
【0049】
図6に示されたPLL制御回路において、PLL40のPLLclkの周波数をfPclkとし、リファレンスクロックREFclkの周波数をfRclkとすると、リファレンスクロック周波数(fRclk)の逓倍クロックであるPLLクロック周波数(fPclk)の関係は次のように計算できる。
【0050】
fPclk=(1/M)・ N ・ (fRclk) (1)
【0051】
この場合、前段の信号処理部31では、前述したように、省電力モードなど周波数波数を低下させる場合もあるし、省電力モードからの復帰時周波数が上がる場合もある。
【0052】
このように、fRclkが変動すると、(1)式からも分かる通り、M,Nの値を固定している限り、PLLクロック周波数(fPclk)が変わってしまうばかりでなく、PLL40は新しいリファレンスクロック周波数にあわせてロックアップを行うが、fRclkが変動している区間では、fPclkも不安定になって(1)式の関係を満たせなくなってしまう。この結果、PLLクロックPLLclkで動作するロジック回路は処理データを失うと共に、処理シーケンスを実行できなくなってしまう。
【0053】
このことを考慮して、本発明に係るPLL制御回路321は、図5のように、周波数測定回路42を設けると共に、周波数調整回路45にM,N設定回路453を設け、当該M,N設定回路453により1/Mカウンタ451及び1/Nカウンタ452におけるM及びNの値を変化、制御する構成を有している。
【0054】
次に、図7に示された状態線図をも参照して、図5に示されたPLL制御回路321の動作を説明する。
【0055】
図7に示すように、電源OFFの状態(S0)で、電源をONにすると状態(S1)に移行する。状態(S1)においてRSEETが解除されると、状態(S2)となって、以後、図5に示されたPLL40はロック状態(PLLロック状態)(S3)となる。状態(S3)において、図5に示された周波数測定回路42は常に周波数検知を行っている。
【0056】
周波数測定回路42において、リファレンスクロックREFclkの周波数fRclkが変化すると、PLL制御回路321の状態(S3)は図7に示すように、状態(S4)に移行する。状態(S4)では、M,N設定回路453により、1/Mカウンタ451、及び、1/Nカウンタ452のカウント値が演算される。即ち、状態(S4)では、切替前のPLLクロックPLLclkの周波数fPclk(n-1)と切替後の周波数fPclk(n)とが等しくなるように、M,N設定回路453によって、1/Mカウンタ451、1/Nカウンタ452のカウント値が演算される。
【0057】
演算が終了すると、状態(S4)で演算結果は1/Mカウンタ451、1/Nカウンタ452に設定され、状態(S3)に移行して設定された新たなカウント値にしたがってPLL制御回路321はPLLクロックPLLclkを出力する。このように、図示されたPLL制御回路321は、リファレンスクロックREFclkの変化に応じて、PLL制御回路321に設けられた1/Mカウンタ451、1/Nカウンタ452のカウント値を変化させ、常に一定のPLLクロックPLLclkの周波数が一定となるように、制御していることが分かる。
【0058】
図8を参照して、図5に示された周波数測定回路42の具体例を説明する。図示された周波数測定回路42には、リファレンスクロックREFclkと当該リファレンスクロックREFclkよりも周波数の高いサンプリングクロックSclkとが与えられており、周波数測定回路42は、リファレンスクロックREFclkのハイレベル(H)及びローレベル(L)の期間中におけるサンプリングクロックSclkの数をカウントすることによって、リファレンスクロックREFclkの周波数を検出、測定している。
【0059】
具体的に説明すると、周波数測定回路42は、ハイレベル(H)区間及びローレベル(L)区間をカウントするHL区間カウント回路421、H区間のカウント結果(X)をラッチする第1のラッチ回路422、L区間のカウント結果(Y)をラッチする第2のラッチ回路423、及び、第1及び第2のラッチ回路422、423のラッチ結果(X+Y)を加算する加算回路424とを備えている。更に、周波数測定回路42は、現時点nにおけるラッチ結果(X+Y)nをラッチする第3のラッチ回路425、現時点よりも前の時点(n-1)におけるラッチ結果(X+Y)n-1をラッチする第4のラッチ回路426、及び、第3及び第4のラッチ回路425及び426のラッチ結果(X+Y)n、(X+Y)n-1を比較する比較回路427を備えている。
【0060】
比較回路427は、ラッチ結果(X+Y)n、(X+Y)n-1を比較し、両者の値が1で無い場合、即ち、現時点nにおけるリファレンスクロックと、前時点n-1との間に変化が生じた場合、リファレンスクロックの周波数が変化したことを示す周波数変化検出信号及び現時点nにおける第3のラッチ回路425のカウント値、即ち、変化後の周波数を出力する。
【0061】
図9をも併せて参照すると、図8に示された周波数測定回路42は、リファレンスクロックREFclkをサンプリングクロックSclkでカウントし、ハイレベルHまたはローレベルLの変化しない区間中におけるカウント量によって測定している。即ち、サンプリングクロックSclkはPLLクロックPclkの逓倍クロックや、LSI内に存在する任意のクロック(例えば、第2のクロック:CLK2)で行う。
【0062】
HL区間カウンタ421は、図9に示すように、ハイレベルHまたはローレベルL区間のサンプリングクロックSclkをカウントし、カウント値X、Yの加算結果が現時点nにおけるカウント値(X+Y)nとして第3のラッチ回路425にラッチされると共に、前時点のカウント値(X+Y)n-1がラッチ回路426にラッチされる。これらのカウント値は、リファレンスクロック1クロック当たりのカウント値であり、サンプリングクロックSclk単位当たりの周波数と見ることができるから、このカウント値を周波数として扱うことができる。
【0063】
図5に戻ると、周波数調整回路45に設けられたMN設定回路は、変化後のカウント値(即ち、現時点におけるカウント値)から、リファレンスクロック周波数fRclkの変化量Zを求める。更に、求められた変化量Zに対して、PLLクロック周波数fRclkが一定となるように、1/Mカウンタ451及び1/Nカウンタ452の逓倍率を変更する。
【0064】
即ち、図7の状態(S4)では、MN設定回路453において、次式のような関係になるように、M,Nの値を1/Mカウント回路451、1/Nカウント回路452に設定する動作が行われる。
【0065】
{ N(n)/M(n) } = Z・ { N(n-1)/M(n-1) } (2)
【0066】
MN設定回路453により、(2)式が満足されるように、M及びNの値を1/Mカウント回路451、1/Nカウント回路452に設定することにより、一定の周波数のPLLクロックを外部回路に供給することが出来る。このため、データの損失やデータ処理の停止をすることがない。
【0067】
ここで、省電力モードにおいて、リファレンスクロックREFclkの周波数が6MHzから1.5MHzに変化する場合、Mの値が1に固定されているものとすると(即ち、1/Mカウンタ451が介在していない場合)、Nの値を19から76に変化させることによって式(2)の条件を満足させることができる。
【0068】
尚、本回路構成は省電力モードなどの周波数を落とす場合だけでなく、周波数が上がる場合においても同様の効果があり、更に、図5に示されたPLL制御回路321に限定されることなく、他の構成を有するPLL制御回路にも適用できる。
【0069】
図10を参照して、本発明を適用できる他のシステムについて説明する。図10では、省電力モード時、リファレンスクロックの周波数を低下させるのではなく、図3に示すように、リファレンスクロックを停止するシステムが示されている。ここでは、図10のようにクロックの供給元LSI1の電源がOFFで、他のLSI2,3が電源ONの状態に保たれている場合について説明する。尚、図10の例では、リファレンスクロックREFclkのLSI1の配線部にプルダウン素子が挿入されているため、LSI1電源OFF時は“L”レベルに固定され、他方、プルアップの場合は”H”レベルに固定されるものとする。
【0070】
図10において、LSI1電源OFF時、リファレンスクロックは停止しているため、他のLSI2,3のPLL210、220の端子PLL_Rへのリファレンスクロックの供給は停止する。しかしながら、各PLL210、220の端子PLL_V(帰還クロック)には、各PLL210、220PLL内のVCO発振回路からのPLLclkを1/N分周したクロックが供給される状態となる。この場合、PLL210、220は自走状態となって、PLL_RにPLL_Vの位相を合わせるように働き、PLLクロックPLLclkの周波数は次第に低下して行くが、少なくとも、省電力モードのような限られた時間中、PLLクロックの周波数は実質的に一定として取り扱っても差し支えない。
【0071】
図10では、リファレンスクロックREFclkが停止状態になると、LSI2、3のPLL210、220は自走状態となって、各PLL210、220に接続されたロジック回路211、221に対してPLLclkを出力する。上記したように、PLLクロックの周波数は、リファレンスクロックの停止状態において実質的に一定であるから、これらPLLクロックにしたがって動作するロジック回路211、221には、誤動作は発生しない。
【0072】
図11を参照して、図10に示されたシステムに使用できるPLL制御回路321が示されている。図示されたPLL制御回路321は、リファレンスクロックREFclkの停止を検出した場合、クロック停止信号を出力する周波数判定回路50を有している。クロック停止信号を受けてPLL40のPLLclkを調整する周波数調整回路45は、1/Mカウンタ451及び1/Nカウンタ452の他に、クロック停止制御回路455及び論理回路456とを有している。ここで、クロック停止制御回路455は周波数判定回路50からクロック停止信号を受けると、論理“1”を論理回路456に出力する一方、クロック停止信号が与えられない状態では、論理“0”を論理回路456に出力している。
【0073】
論理回路456は、論理“0”が与えられている状態では、1/Mカウンタ451、1/Nカウンタ452の出力をそのままPLL40のPLL_R、PLL_V端子にそれぞれ供給している。このことから、通常モードの場合、PLL40は両カウンタ451、452のカウント値で定まる周波数を有するPLLclkを出力し、他方、周波数判定回路50でリファレンスクロックREFclkの停止が検出され、クロック停止制御回路455から論理“1”が論理回路456に与えられると、PLL40は自走状態となって、実質的にリファレンスクロックREFclkの停止前の周波数のPLLclkを出力する。
【0074】
即ち、図11に示されたPLL制御回路321は、リファレンスクロックが停止する場合においても停止前のロックアップ状態のPLLクロック周波数を維持してロジック回路に供給できることを特長としている。
【0075】
図12をも参照して、図11に示されたPLL制御回路321の制御動作を説明する。まず、PLLを含む回路では、通常、電源立ち上げ時、リセット時など初期状態からのPLLクロック周波数が安定する(ロック)状態までの時間(即ち、ロックアップ時間)はPLLや付随するフィルタに固有の値である。したがって、リファレンスクロックの停止を検出する場合、ロックアップ時間と、省電力モードにおけるリファレンスクロックの停止時間とを区別する必要がある。上記したように、ロックアップ時間は固有の値であり、他方、省電力モードの際におけるリファレンスクロックの停止時間は、ロックアップ時間よりも長いのが普通である。
【0076】
図11に示されたPLL制御回路321の周波数判定回路50は、単に、リファレンスクロックREFclkの停止を検出するだけでなく、リファレンスクロックREFclkを数えるカウンタ及び図8に示した周波数測定回路と同様な構成の周波数測定回路を有している。
【0077】
具体的に言えば、周波数判定回路50では、周波数測定回路より得た周波数(fREFclk)と、カウンタから得られたカウント値(cntREFclk)により時間を測定し、ロックアップ時間tLOCKと比較することにより、ロックアップ時間tLOCKと、省電力モード時間とを識別できる。ここで、ロックアップ時間tLOCK、周波数(fREFclk)、及びカウント値(cntREFclk)は、以下の関係式(3)を満足すれば良い。また、カウントするクロックはリファレンスクロックREFclkに限らずLSI内に存在する任意のクロック(第2のクロック:CLK2)としても時間を測定できる。
【0078】
tLOCK < cntREFclk ・( 1/fREFclk) (3)
【0079】
式(3)を満たすカウント値Zを決定しておき、カウント値Zを越えると、周波数判定回路50はロックアップ時間tLOCKよりも長い省電力モードであると判定する。
【0080】
上記した点を考慮して、図12を参照すると、周波数判定回路50では、状態(S3)において、式(3)に従ってロックアップ時間tLOCKの経過を監視する。カウンタが設定されたZまでカウントを終え、式(3)の条件が満足されると、状態(S10)に遷移し、クロック停止制御回路455はPLL_RとPLL_Vを同時に停止する(S11)。前述したように、PLL40は、PLL_RとPLL_Vを同時に供給されなくなると前の状態を維持しようとするため、ロック状態の周波数でPLLクロックを供給しつづける。このようにして、リファレンスクロックが停止しても、PLLクロック周波数は低下することなくロック時の周波数を維持することができる。
【0081】
周波数判定回路50において、リファレンスクロックREFclkの周波数がゼロから高い周波数に変化すると、リファレンスクロック停止からの復帰を検知して(S12)、PLL_RとPLL_Vの供給を開始する。このとき、クロック停止制御回路455の出力は論理“0”になる。
【0082】
以後、1/Mカウンタ451、1/Nカウンタ452の出力はPLL40のPLL_R、PLL_Vに供給される状態になる(S3)。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、P/S変換器を備えていない携帯端末等にも適用でき、更に、携帯端末等の移動無線通信装置だけでなく、省電力を要求される他の機器にも適用できる。更に、PLLクロックの周波数を決定するパラメータを有する回路要素としての可変カウンタ或いは可変分周器の数は1つ、或いは、2よりも多くても良い。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係るPLL制御回路を適用できるシステムの一例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るPLL制御回路を含む携帯端末を示すブロック図である。
【図3】携帯端末におけるリファレンスクロック周波数の変化状態の一例を説明する図である。
【図4】携帯端末におけるリファレンスクロック周波数の変化状態の他の例を説明する図である。
【図5】本発明の一実施例に係るPLL制御回路を示すブロック図である。
【図6】図5に示された本発明に係るPLL制御回路の一部を取り除いたPLL制御回路を示すブロック図である。
【図7】図5に示されたPLL制御回路の動作を説明する状態遷移図である。
【図8】図5に示されたPLL制御回路に使用される周波数測定回路を示すブロック図である。
【図9】図8に示された周波数測定回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図10】本発明に係るPLL制御回路を適用できる他のシステムを示すブロック図である。
【図11】本発明の他の実施例に係るPLL制御回路を示すブロック図である。
【図12】図11に示されたPLL制御回路の動作を説明する状態遷移図である。
【符号の説明】
【0085】
20 クロック発生器
21、22、321 PLL制御回路
210、220 PLL
25 LCD
31 第1の集積回路部
32 第2の集積回路部
33 LCDドライバ
311 クロック発生器
312 信号処理部
322 P/S変換器
40 PLL
42 周波数測定回路
45 周波数調整回路
451 1/Mカウンタ
452 1/Nカウンタ
453 M,N設定回路
421 HL区間カウント回路
422、423、425、426 第1〜第4のラッチ回路
424 加算回路
427 比較回路
50 周波数判定回路
455 クロック停止制御回路
456 論理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PLL制御回路であって、
PLLの出力周波数を変更制御するカウンタ部と、
前記PLLに入力されるリファレンスクロックを検知する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき前記カウンタ部の設定値を変更する設定変更部と、
を有することを特徴とするPLL制御回路。
【請求項2】
PLL制御回路であって、
PLLの出力周波数を変更制御するカウンタ部と、
前記PLLに入力されるリファレンスクロックを検知する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づきリファレンスクロックをカウントするカウント部と、
前記PLLへのリファレンスクロックと帰還クロックの供給停止を制御する回路と、
を有することを特徴とするPLL制御回路。
【請求項3】
請求項1に記載のPLL制御回路において、リファレンスクロックをPLL逓倍後のクロックでサンプリングすることで周波数変化を可能とするPLL制御回路。
【請求項4】
請求項1に記載のPLL制御回路において、リファレンスクロックを第2のクロックでサンプリングすることで周波数変化を可能とするPLL制御回路。
【請求項5】
請求項2に記載のPLL制御回路において、リファレンスクロックをカウントすることにより時間を測定することを可能とするPLL制御回路。
【請求項6】
請求項2に記載のPLL制御回路において、第2のクロックをカウントすることにより時間を測定することを可能とするPLL制御回路。
【請求項7】
周波数が変化するリファレンスクロックを受けて、PLLクロックを出力するPLL制御回路において、前記リファレンスクロックの周波数を測定し、前記リファレンスクロックの周波数変化を検出する手段と、前記リファレンスクロックの周波数変化に応じて、PLLクロックの周波数を決定するパラメータを備えた回路要素を変更制御し、前記PLLクロックの周波数が実質的に一定になるように制御する周波数調整部とを有することを特徴とするPLL制御回路。
【請求項8】
請求項7において、前記周波数変化を検出する手段は、前記リファレンスクロックの周波数をデジタル的に測定・検出する周波数測定回路を有し、他方、前記周波数調整部は、前記リファレンスクロック周波数変化前及び後の周波数から、前記回路要素のパラメータを更新し、前記回路要素に設定する設定回路を含んでいることを特徴とするPLL制御回路。
【請求項9】
請求項7において、前記周波数変化を検出する手段は、前記リファレンスクロックの停止を判定する周波数判定回路を有し、他方、前記周波数調整部は、前記リファレンスクロックの停止中、PLLを自走状態にするクロック停止制御回路を有していることを特徴とするPLL制御回路。
【請求項10】
請求項7〜9において、前記回路要素は、分周比を可変できる少なくとも一つの可変カウンタであることを特徴とするPLL制御回路。
【請求項11】
請求項7〜9において、前記回路要素は、前記リファレンスクロックを受けて分周する第1の可変カウンタと、前記PLLクロックを受けて分周する第2の可変カウンタとによって構成されていることを特徴とするPLL制御回路。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載されたPLL制御回路を備えたことを特徴とする電子装置。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載されたPLL制御回路を備えたことを特徴とする携帯端末。
【請求項14】
PLLクロックを生成するPLLを備え、周波数が変動するリファレンスクロックに応じて、前記PLLクロックを制御する制御方法において、前記リファレンスクロックの周波数変化を検出するステップと、周波数変化が検出された場合、前記PLLクロックを決定するパラメータを前記周波数変化に応じて変化させることにより、前記PLLクロックの周波数を実質的に一定に維持するステップとを有することを特徴とするPLL制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−129306(P2007−129306A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318169(P2005−318169)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】