説明

PLL回路

【課題】 広い周波数範囲が必要とされるPLL回路において、そのPLL特性を一定に保つことができるようにするとともに、そのための構成を簡単化する。
【解決手段】 VCO11と、その発振信号を1/Nの周波数に分周する可変分周回路12と、その分周信号と基準信号とを位相比較する位相比較回路13とを設ける。位相比較回路13の比較出力から分周信号と基準信号との位相差に対応してパルス幅の変化するチャージポンプ電流ICPを出力するチャージポンプ回路14と、チャージポンプ電流ICPが供給されて分周信号と基準信号との位相差に対応してレベルの変化する電圧を出力するとともに、この電圧をVCO11にその制御電圧として供給するループフィルタ15とを設ける。VCO11の発振周波数と、PLL帯域を設定するための係数との関数として、チャージポンプ電流ICPの値を計算してチャージポンプ回路14に設定する制御回路22を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーヘテロダイン方式の受信機をシンセサイザ方式に構成した場合、その局部発振信号はPLL回路により形成されるが、そのPLL回路は、一般に図6に符号10により示すように構成されている。すなわち、このPLL回路10において、VCO11の発振信号SVCOが可変分周回路12に供給されて1/N(Nは正の整数)の周波数の分周信号SDIVに分周され、この分周信号SDIVが位相比較回路13に供給される。また、基準となる周波数fREFの基準信号SREFが位相比較回路13に供給される。
【0003】
そして、位相比較回路13において、分周信号SDIVが基準信号SREFと位相比較され、その比較出力がチャージポンプ回路14に供給されて分周信号SDIVと基準信号SREFとの位相差に対応してパルス幅の変化する位相比較出力が取り出される。そして、この比較出力がループフィルタ15に供給され、分周信号SDIVと、基準信号SREFとの位相差に対応してレベルの変化する直流電圧VCが取り出され、この直流電圧VCがVCO11に発振周波数fVCOの制御電圧として供給される。
【0004】
この結果、定常状態では、VCO11の発振周波数fVCOは、
fVCO=N・fREF
となるので、分周比Nを変更すれば、VCO11の発振周波数fVCOを変更することができる。
【0005】
したがって、VCO11の発振信号SVCO(あるいはその分周信号)を局部発振信号として使用して受信信号の周波数変換を行うとともに、分周比Nあるいは基準周波数fREFを変更すれば、受信周波数を変更することができる。すなわち、シンセサイザ方式の受信を行うことができる。
【0006】
なお、先行技術文献として例えば以下のものがある。
【特許文献1】特開2001−156629号公報
【特許文献2】特開平9−93125号公報
【特許文献3】特開平11−308101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、これまでのPLL回路10においては、その特性を一定に保つ場合、チャージポンプ回路14におけるチャージポンプ電流を、発振周波数fVCOのあらかじめ決められた関数として制御するようにしている。このため、VCO11の制御感度が発振周波数fVCOに応じて変化した場合や基準周波数fREFを変更した場合、あるいはPLL回路10の帯域WCを変更した場合などに対応できなかった。
【0008】
さらに、アナログテレビ放送と、デジタルテレビ放送とに対応したフロントエンド用ICにおいては、帯域WCを変更することが好ましい。すなわち、アナログテレビ放送の受信時には、帯域外の位相ノイズ特性を改善するために帯域WCを狭くする必要があるが、デジタルテレビ放送の受信時には、逆に帯域内の位相ノイズ特性を良くするために帯域WCを広くする必要がある。したがって、受信する放送方式により、帯域WCを変更することが好ましいが、これまでの技術では、このような帯域WCの変更に対応できなかった。
【0009】
また、近年のフロントエンド用のICにおいては、VCO11の共振回路を構成する可変容量ダイオードを、ICに内蔵する(オンチップ化する)場合が多くなっているが、このため、その可変容量ダイオードの容量の変化範囲が狭くなっている。
【0010】
この結果、可変容量ダイオードをICに内蔵する場合には、VCO11の共振回路に複数の固定のコンデンサを選択的に接続することにより、発振周波数fVCOの変化範囲(サブバンド)を切り換えるとともに、それぞれの周波数変化範囲で可変容量ダイオードにより発振周波数fVCOを変更するようにしている。すると、この場合には、制御電圧VCだけでは発振周波数fVCOが決まらないので、制御電圧VCだけでPLL回路10の特性を一定に保つことはできない。
【0011】
この発明は、以上のような点にかんがみ、PLL回路の特性を改善するとともに、その構成を簡単化しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明においては、
VCOと、
このVCOの発振信号を1/N(Nは整数)の周波数に分周する可変分周回路と、
この可変分周回路から出力される分周信号と、基準周波数の基準信号とを位相比較する位相比較回路と、
この位相比較回路の比較出力から上記分周信号と上記基準信号との位相差に対応してパルス幅の変化するチャージポンプ電流を出力するチャージポンプ回路と、
上記チャージポンプ電流が供給されて上記分周信号と上記基準信号との位相差に対応してレベルの変化する直流電圧を出力するとともに、
この直流電圧を上記VCOにその発振周波数の制御電圧として供給するループフィルタと、
上記VCOの発振周波数と、PLL帯域を設定するための係数との関数として、上記チャージポンプ電流の値を計算して上記チャージポンプ回路に設定する制御回路と
を有するPLL回路
とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、広い周波数範囲が必要とされるPLL回路において、そのPLL特性を一定に保つことができるとともに、そのための構成が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔1〕 この発明のアウトライン
〔1−1〕 基本となるPLL回路の例
図1において、符号10は基本となるPLL回路の例を示す。そして、このPLL回路10において、VCO11の発振信号SVCOが可変分周回路12に供給されて1/N(Nは正の整数)の周波数の分周信号SDIVに分周され、この分周信号SDIVが位相比較回路13に供給される。また、基準となる周波数fREFの基準信号SREFが位相比較回路13に供給される。
【0015】
そして、位相比較回路13において、分周信号SDIVが基準信号SREFと位相比較され、その比較出力がチャージポンプ回路14に供給されて分周信号SDIVと基準信号SREFとの位相差に対応してパルス幅の変化する位相比較出力が取り出される。そして、この比較出力がループフィルタ15に供給され、分周信号SDIVと、基準信号SREFとの位相差に対応してレベルの変化する直流電圧VCが取り出され、この直流電圧VCがVCO11に発振周波数fVCOの制御電圧として供給される。
【0016】
この結果、定常状態では、VCO11の発振周波数fVCOは、図2における(1)式により示されるので、分周比Nを変更すれば、VCO11の発振周波数fVCOを変更することができる。
【0017】
したがって、VCO11の発振信号SVCO(あるいはその分周信号)を局部発振信号として使用して受信信号の周波数変換を行うとともに、分周比Nあるいは基準周波数fREFを変更すれば、受信周波数を変更することができる。すなわち、シンセサイザ方式の受信を行うことができる。なお、回路21〜23については、後述する。
【0018】
〔1−2〕 PLL回路の特性
〔1−1〕に示すようなチャージポンプ型のPLL回路10のループ特性は、そのPLL回路10のオープンループ時の伝達関数G(s)により決まる。すなわち、図1において、可変分周回路12から位相比較回路13に至る信号ラインをX点でカットしてPLL回路10をオープンループとし、位相比較回路13の基準信号SREFの入力端から可変分周回路32の出力端(分周信号SDIVの出力端)までの伝達関数を求めると、これは図2における(2)式で示す伝達関数G(s)となる。したがって、発振周波数fVCOを変更するために分周比Nを変更すると、伝達関数G(s)が変化するので、結果として、PLL回路10の安定度が変化してしまう。
【0019】
したがって、分周比Nを変更しても、伝達関数G(s)が変化しないようにする必要があるが、そのためには、(2)式において、分周比Nが例えば2倍になったら、チャージポンプ電流ICPも2倍にすればよい。つまり、チャージポンプ電流ICPの大きさを分周比Nに対応して変更すれば、分周比Nを変更しても、PLL回路10のループ特性を一定に保持することができる。
【0020】
また、VCO11の制御感度KVCOは、VCO11の発振周波数fVCOにより変化するが、これもチャージポンプ電流ICPの大きさを変更することにより一定の感度に補正することができる。
【0021】
さらに、PLL回路10の帯域WCは、伝達関数G(s)が|G(s)|=1[倍]となる周波数(s=2πf)で表されるが、伝達関数G(s)はチャージポンプ電流ICPにより変更することができるので、帯域WCもチャージポンプ電流ICPにより変更できることになる。したがって、伝達関数G(s)が一定となるように、チャージポンプ電流ICPの値を制御すれば、帯域WCは一定に保つことができる。
【0022】
もちろん、この場合、位相マージンが確保されていることが前提であるが、例えば2次のループフィルタでは、零点を帯域WCの可変範囲よりも低く、かつ、極点を帯域WCの可変範囲よりも高くすれば可能である。
【0023】
そこで、この発明においては、チャージポンプ電流ICPを制御することにより、それぞれの特性を一定に保つとともに、特にそのための構成を簡略化するものである。
【0024】
なお、伝達関数G(s)の絶対値|G(s)|は、周波数により変化するオープンループの利得でもあるので、以下は簡単のため、「利得G」と記す。
【0025】
〔1−3〕 制御方法の例
いま、簡単のため、周波数(s=2πf)を無視して(2)式を示すと、図2における(3)式となる。そして、利得Gを一定に保つのであるから、その一定値を値G0とし、(3)式をチャージポンプ電流ICPについて解くと、図2における(4)式となる。そして、この(4)式に(1)式を代入すると、(4)式は図2における(5)式となる。
【0026】
しかし、この(5)式においては、除算を必要とするので、(5)式をソフトウェアにより実行するにせよ、ハードウェアにより実行するにせよ、そのソフトウェアあるいはハードウェアの構成が複雑になってしまう。
【0027】
そこで、この発明においては、(5)式を1次式により近似し、除算を不要とするものである。すなわち、図2における(6)式および(7)式を定義し、これら(6)式および(7)式を(5)式に代入すると、(5)式は図2における(8)式となる。
【0028】
したがって、(8)式によれば、VCO11の発振周波数fVCOを変更する場合、その発振周波数fVCOに比例して(1次式により)チャージポンプ電流ICPを制御すればよいことになる。
【0029】
一方、テレビ放送を受信するフロントエンドなどにおいては、位相ノイズの観点からVCO11の共振回路は、一般にコイルおよびコンデンサ(可変容量ダイオードを含む)により構成されている。したがって、その発振周波数fVCOは、図3における(11)式により表される。
【0030】
そして、このとき、コンデンサの一部として、可変容量素子、例えば可変容量ダイオードを使用し、発振周波数fVCOを変更できるようにしている。したがって、このときのVCO11の制御感度KVCOを求めると、図3における(12)式を得ることができる。そこで、さらに制御電圧VCの中心値付近について(12)式を近似すると、図3における(13)式となる。
【0031】
この(13)式によれば、容量Cに比例して変化率dC/dVCを設定すると、左辺の値fVCO/KVCOはほぼ一定になるか、あるいは発振周波数fVCOの1次式で表現できることが分かる。
【0032】
さらに、上記のように、VCO11の共振回路を構成する可変容量ダイオードを、ICに内蔵する場合、その可変容量ダイオードの容量の変化範囲が狭くなっているので、VCO11の共振回路に複数の固定のコンデンサを選択的に接続することにより、発振周波数fVCOの変化範囲(サブバンド)を切り換えるとともに、それぞれの周波数変化範囲で可変容量ダイオードにより発振周波数fVCOを変更するようにしている。
【0033】
この場合に、容量Cに比例するように変化率dC/dVCを設定するためには、可変容量ダイオードの容量と固定のコンデンサの容量との比を各サブバンドで一定に設定すればよい。これはスイッチにより可変容量ダイオードを切り換えるなどの方法で容易に実現可能である。このようにすると値fVCO/KVCOはほぼ一定に制御できることになる。したがって、値fVCO/KVCOを一定の値にすること、より一般的には、発振周波数fVCOの1次式で表現することは妥当だと言える。
【0034】
以上のことから、制御感度KVCOが発振周波数fVCOに依存することを考慮すれば、(8)式に示すチャージポンプ電流ICPにより、値KBW((7)式)で決まる帯域WCを一定に保証できることが分かる。
【0035】
この(8)式の利点は、どの発振周波数fVCOであっても、帯域WCを決めるパラメータが、定数KBWの1つだけであるということである。また、(2)式から分かるように、変数KVCO/Nを実質的な制御感度KVCOと考えれば、分周比Nを変更した場合でも、単に定数KBWを変更するだけでよいことも分かる。
【0036】
さらに、VCO特性をあらかじめ測定し、値A、Bを定数として設定しておけば、定数KBWを変更するだけで、どの発振周波数fVCOにおいても、帯域WCを一定に保つことができ、従来のようにユーザが発振周波数に応じてチャージポンプ電流ICPの大きさを変更するといった手間が不要となる。また、基準周波数fREFを変えた場合にも、単に定数KBWを分周比Nに比例させて変更するだけでよい。
【0037】
〔2〕 実施例
基本となるPLL回路は、〔1−1〕において述べたように、例えば図1において符号10により示すように構成されるとともに、回路21〜23と一緒に1つのICにオンチップ化されている。
【0038】
さらに、図1において、VCO11の発振周波数fVCOを示すデータと、帯域WCを決める定数KBWのデータと、VCO11の制御感度KVCOを決める定数A、Bのデータとが用意され、これらデータがメモリ(レジスタ)21に保存されるとともに、制御回路22に供給されて〔1−3〕において説明したデータに対応するデータD22に変換される。
【0039】
そして、このデータD22がD/Aコンバータ回路23に供給されてアナログ電圧V23にD/A変換され、この電圧V23が定電流源Q1、Q2にチャージポンプ電流ICP(出力電流)の制御電圧として供給され、チャージポンプ電流ICPの大きさが、〔1−3〕において説明したように制御される。
【0040】
なお、発振周波数fVCOを示すデータをメモリ21に書き込む代わりに、分周比Nを示すデータをメモリ21に書き込み、制御回路22において、(1)式から発振周波数fVCOに変換して対応するデータを得ることもできる。
【0041】
〔3〕 チャージポンプ回路の構成例
〔3−1〕 構成例・その1
図4は、チャージポンプ回路14を、カレントステアリング型と呼ばれる構成とした場合の一例を示す。
【0042】
すなわち、4つのスイッチ回路SW1〜SW4がブリッジ接続される。そして、吐き出し型の定電流源Q1が、一方の電位点である電源端子T1と、スイッチ回路SW1およびSW3の接続点PAとの間に接続され、吸い込み型の定電流源Q2が、スイッチ回路SW2およびSW4の接続点PBと、他方の電位点である接地端子T2との間に接続される。
【0043】
また、スイッチ回路SW1、SW2の接続点が、出力端子T3に接続されるとともに、ボルテージフォロワ、すなわち、利得が1倍のアンプG1を通じてスイッチ回路SW3、SW4の接続点DNに接続される。なお、出力端子T3には、次段のループフィルタ15が接続される。
【0044】
さらに、位相比較回路13からパルスPUPが取り出され、スイッチ回路SW1に供給される。この場合、パルスPUPは、分周信号SDIVが基準信号SREFよりも位相が進んでいるとき“H”レベルになり、遅れているとき“L”レベルになるパルスであって、そのパルス幅τが信号SDIVと信号SREFとの位相差に対応したパルスである。そして、このパルスPUPがスイッチ回路SW1にその制御信号として供給され、PUP=“H”のとき、スイッチ回路SW1はオンとされる。
【0045】
同様に、位相比較回路13からパルスPDNが取り出され、スイッチ回路SW2に供給される。この場合、パルスPDNは、分周信号SDIVが基準信号SREFよりも位相が遅れているとき“H”レベルになり、進んでいるとき“L”レベルになるパルスであって、そのパルス幅が信号SDIVと信号SREFとの位相差に対応したパルスである。そして、このパルスPDNがスイッチ回路SW2にその制御信号として供給され、PDN=“H”のとき、スイッチ回路SW2はオンとされる。
【0046】
さらに、位相比較回路13から、パルスPUP、PDNのレベル反転したパルスPUPB、PDNBが取り出され、これらパルスPUPB、PDNBがスイッチ回路SW3、SW4にそれらの制御信号として供給され、スイッチ回路SW3、SW4はにパルスPUPB、PDNBにより同様にオンオフ制御される。
【0047】
また、定電流源Q1、Q2は、チャージポンプ電流ICPの供給源であり、これら定電流源Q1、Q2の出力電流(チャージポンプ電流ICP)の大きさは、回路21〜23により、連動して〔1−3〕において説明したように制御されるものである。
【0048】
このような構成において、PUP=“H”、PDN=“L”のときには、スイッチ回路SW1がオン、スイッチ回路SW2がオフとなるので、定電流源Q1からスイッチ回路SW1を通じて端子T3にチャージポンプ電流ICPが流れ出す。逆に、PUP=“L”、PDN=“H”のときには、スイッチ回路SW1がオフ、スイッチ回路SW2がオンとなるので、端子T3からスイッチ回路SW2を通じて定電流回路Q2にチャージポンプ電流ICPが流れ込む。
【0049】
なお、このとき、パルスPUP、PDNのパルス高が一定であれば、端子T3を流れるチャージポンプ電流ICPの大きさは、定電流源Q1、Q2の出力電流の大きさにより決まる。
【0050】
また、パルスPUPによりスイッチ回路SW1がオフのときには、パルスPUPBによりスイッチ回路SW3はオンとなっているので、定電流源Q1とスイッチ回路SW1との接続点の電位PAは、アンプG1により端子T3と等しい電位に保たれる。つまり、スイッチ回路SW1の両端は同電位となり、スイッチ回路SW1にリーク電流は流れない。
【0051】
また、パルスPDNによりスイッチ回路SW2がオフのときには、同様の理由により、スイッチ回路SW2と定電流源Q2との接続点PBの電位は、端子T3と等しい電位に保たれ、スイッチ回路SW2にリーク電流は流れない。
【0052】
したがって、このチャージポンプ回路14によれば、安定なチャージポンプ電流ICPを得ることができるとともに、そのチャージポンプICPの大きさを〔1−3〕にしたがって変更することができる。
【0053】
この結果、テレビ放送受信用のフロントエンドにおけるように、発振周波数fVCOとして広い周波数範囲が求められるPLL回路10において、帯域WCを一定に保つことができる。また、帯域WCを変える場合でも、1つのパラメータ、すなわち、定数KBWを変えるだけでよい。さらに、分周比Nが変わった場合にも、(1)式および(8)式にしたがってチャージポンプ電流ICPを分周比Nに比例させて変更するだけでよく、制御あるいは処理が簡単である。
【0054】
また、出力端子T3と接続点DNとはアンプG1により同電位に保持されるので、スイッチ回路SW1〜SW4が切り換わっても、端子T3および接続点DNの電位が変化することがなく、したがって、いわゆるチャージ・シェアリング効果がなく、定電流源Q1の定電流と定電流源Q2の定電流とのマッチング特性がよくなる。さらに、定電流源Q1、Q2自身がオンオフ動作をすることがないので、チャージポンプ回路として高速で動作をさせることができる。
【0055】
〔3−2〕 構成例・その2
図5は、図4に示したチャージポンプ回路14をMOS−FETにより実現した場合の例を示す。なお、以下においては、簡単のため、「MOS−FET」を単に「FET」と記載する。
【0056】
すなわち、NチャンネルのFET(N1〜N4)のドレイン・ソース間と、PチャンネルのFET(P1〜P4)のソース・ドレイン間との並列回路によりスイッチ回路SW1〜SW4がそれぞれ構成される。
【0057】
また、電源端子T1と、スイッチ回路SW1、SW3の接続点PAとの間に、PチャンネルのFET(P12)のソース・ドレイン間が接続され、スイッチ回路SW2、SW4の接続点PBと接地端子T2との間に、NチャンネルのFET(N22)のドレイン・ソース間が接続される。
【0058】
この場合、FET(P12、N22)は、定電流源Q1、Q2として動作するものである。このため、FET(P11、P12)により、電源端子T1を基準電位点とし、FET(P11)を入力側としてカレントミラー回路CM1が構成される。また、FET(N21〜N23)により、接地端子T2を基準電位点とし、FET(N21)を入力側としてカレントミラー回路CM2が構成される。さらに、FET(N23)のドレインがFET(P11)のドレインに接続される。
【0059】
また、〔3−2〕において説明したA/Dコンバータ回路23から所定の電圧V23が取り出され、この電圧V23が可変定電流源QCPに制御電圧として供給され、可変定電流源QCPからFET(N21)に定電流(チャージポンプ電流)ICPが供給される。
【0060】
さらに、スイッチ回路SW1とスイッチ回路SW2との接続点が、出力端子T3に接続されるとともに、ボルテージフォロワ用のアンプG1を通じてスイッチ回路SW3とスイッチ回路SW4との接続点DNに接続される。
【0061】
そして、スイッチ回路SW1、SW3のFET(N1、P3)のゲートに、位相比較回路13から出力パルスPUPが供給され、スイッチ回路SW1、SW3のFET(P1、N3)のゲートに、位相比較回路13から出力パルスPUPBが供給される。さらに、スイッチ回路SW2、SW4のFET(N2、P4)のゲートに、位相比較回路13から出力パルスPDNが供給され、スイッチ回路SW2、SW4のFET(P2、N4)のゲートに、位相比較回路13から出力パルスPDNBが供給される。
【0062】
したがって、可変定電流源QCPからFET(N21)に電流ICPが供給されるので、FET(P12)のドレインからはチャージポンプICPが流し出され、FET(N22)のドレインにはチャージポンプ電流ICPが流れ込む。そして、スイッチ回路SW1〜SW4は、パルスPUP〜PDNBに対応してオンオフ制御されるので、この回路は図4において説明したチャージポンプ回路14として動作する。
【0063】
そして、このとき、図4におけるチャージポンプ回路14と同様、PLL特性を一定に保つことができるとともに、その構成が簡単である。また、可変定電流源QCPの出力定電流ICPの大きさを変更すれば、FET(P12、N22)を流れるチャージポンプ電流ICPの大きさを同時に変更することができる。
【0064】
さらに、このチャージポンプ回路14によれば、スイッチ回路SW1〜SW4が、それぞれNチャンネルのFET(N1〜N4)と、PチャンネルのFET(P1〜P4)とのペアにより構成されているので、スイッチ回路SW1〜SW4の切り換え時に発生するゲート・ドレイン間の寄生容量(オーバーラップ容量)を通じて流れる電流のピーク値を抑えることができる。
【0065】
〔略語の一覧〕
A/D:Analog to Digital
FET:Field Effect Transistor
IC :Integrated Circuit
MOS:Metal Oxide Semiconductor
PLL:Phase Locked Loop
VCO:Voltage Controlled Oscillator
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の一形態を示す系統図である。
【図2】この発明を説明するための数式を示す図である。
【図3】この発明を説明するための数式を示す図である。
【図4】この発明の一部の一形態を示す系統図である。
【図5】この発明の一部の一形態を示す接続図である。
【図6】この発明を説明するための系統図である。
【符号の説明】
【0067】
10…PLL回路、11…VCO、12…可変分周回路、13…位相比較回路、14…チャージポンプ回路、15…ループフィルタ、21…メモリ、22…制御回路、23…D/Aコンバータ回路、G1…アンプ、Q1、Q2…定電流源、SW1〜SW4…スイッチ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VCOと、
このVCOの発振信号を1/N(Nは整数)の周波数に分周する可変分周回路と、
この可変分周回路から出力される分周信号と、基準周波数の基準信号とを位相比較する位相比較回路と、
この位相比較回路の比較出力から上記分周信号と上記基準信号との位相差に対応してパルス幅の変化するチャージポンプ電流を出力するチャージポンプ回路と、
上記チャージポンプ電流が供給されて上記分周信号と上記基準信号との位相差に対応してレベルの変化する直流電圧を出力するとともに、
この直流電圧を上記VCOにその発振周波数の制御電圧として供給するループフィルタと、
上記VCOの発振周波数と、PLL帯域を設定するための係数との関数として、上記チャージポンプ電流の値を計算して上記チャージポンプ回路に設定する制御回路と
を有するPLL回路。
【請求項2】
請求項1に記載のPLL回路において、
上記それぞれの回路が1つのICにオンチップ化されているとともに、
上記制御回路の計算に必要なデータを保持するメモリもオンチップされているICである
ようにしたPLL回路。
【請求項3】
請求項2に記載のPLL回路において、
上記関数が、上記VCOの発振周波数を変数とする1次式で表現される
ようにしたPLL回路。
【請求項4】
請求項3に記載のPLL回路において、
上記1次式が、
ICP=KBW(A・fVCO+B)
ICP :上記チャージポンプ電流
fVCO :上記発振周波数
KBW :定数
A、B:定数
で表現されるとともに、
上記定数KBW、A、Bの値がメモリから供給される供給される
ようにしたPLL回路。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のPLL回路において、
上記関数の計算をオンチップで行う
ようにしたPLL回路。
【請求項6】
請求項1に記載のPLL回路において、
上記チャージポンプ回路が、
上記位相比較回路の比較出力によりオンオフ制御されるとともに、ブリッジ接続された第1〜第4のスイッチ回路と、
上記第1および上記第3のスイッチ回路の接続点に接続されて吐き出し型のチャージポンプ電流を出力する第1の定電流源と、
上記第2および上記第4のスイッチ回路の接続点に接続されて吸い込み型のチャージポンプ電流を出力する第2の定電流源と、
上記第1および上記第2のスイッチ回路の接続点から上記第3および上記第4のスイッチ回路の接続点に接続されたボルテージフォロワと
を有し、
上記第1および上記第2のスイッチ回路の接続点が上記ループフィルタに接続された
構成であるPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−246607(P2009−246607A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89373(P2008−89373)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】