説明

PLL回路

【課題】PLL回路のロックアップ時間を短縮することである。
【解決手段】VCO・電流切替回路15は、外部から与えられる分周データに基づいて、複数のVCO22a〜22nの内の1つを選択するVCO選択信号を出力する。また、VCOを切り替える際に、可変チャージポンプ20の出力電流を通常(ロック時)より大きな値に変更する切替信号を出力する。VCO・電流切替回路15は、VCOの切り替えが終了したなら、可変チャージポンプ20の出力電流を通常時の小さい値に切り替える切替信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振周波数帯域の異なる複数のVCOの内の1つを選択して発振動作を行うPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ等の広い周波数範囲の信号を受信するチューナでは、周波数範囲をカバーするために発振周波数帯域の異なる複数の電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)を切り替えて使用している。
【0003】
特許文献1には、チャージポンプ回路と抵抗、キャパシタ及び発振信号を所定の分周比により分周する分周器を有するPLL回路において、チャージポンプ回路の出力信号の電流値、抵抗の抵抗値、キャパシタの容量値及び分周器の分周比のうち少なくとも2つの回路定数を切り替える切替手段を有し、切替手段が、回路定数を切替えるときに、PLLループのダンピング因子を一定のままでPLLループの帯域周波数を変更することが記載されている。これにより、ループの安定性を保ちつつ十分な収束速度で良好な位相引き込み特性が得られることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、位相比較器から出力されるアップ信号とダウン信号の位相差をカウンタでカウントし、D/Aコンバータによりデジタルのカウント値をアナログ信号に変換することが記載されている。これにより、チャージポンプの制御を容易にすることができることが記載されている。
【0005】
特許文献3には、ローパスフィルタの抵抗値をスイッチにより切り替える2モードPLL回路において、モードに応じてチャージポンプの駆動電流を切りかえることで、引き込み時とロック時のループ特性を変化させることが記載されている。これにより、IC化が可能で、擾乱を与えにくいPLL回路を提供できることが記載されている。
【0006】
ところで、異なる発振周波数帯域を持つ複数のVCOを切り替えて使用する場合に、例えば、順次探索でターゲットの周波数と一致するようにVCOを切り替えると、PLL回路がロック状態になるまでに多くの時間がかかるという問題点があった。
【特許文献1】特開2006−222939号公報
【特許文献2】特開平8−288843号公報
【特許文献3】特開昭62−92521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、PLL回路のロックアップ時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のPLL回路は、発振周波数帯域の異なる複数のVCOと、プログラマブル分周器と、チャージポンプと、前記プログラマブル分周器の分周比を決める分周データに基づいて前記複数のVCOの内の1つを選択すると共に、VCOを切り替える際に、前記チャージポンプの電流値を通常より大きいな値に切り替えるVCO・電流切替回路とを備える。
【0009】
この発明によれば、分周データに基づいて最適な周波数帯域のVCOに切り替えることができる。また、VCOを切り替えるときに、チャージポンプの電流値を大きくすることで、PLL回路のロックアップタイムを短縮することができる。
【0010】
上記のPLL回路において、前記VCO・電流切替回路は、前記プログラマブル分周器の分周比を決める分周データに基づいて、前記複数のVCOの内の1つのVCOを選択する選択信号を出力する第1の判定回路と、VCOの発振周波数を制御するための制御電圧と第1の基準値及び第2の基準値を比較し、前記制御電圧が前記第1の基準値以上で、かつ前記第2の基準値以下と判定したときには、現在選択されているVCOを選択し、前記制御電圧が前記第2の基準値より大きいと判定したときには、現在選択されているVCOより発振周波数帯域が一段高いVCOを選択する信号を出力し、前記制御電圧が前記第1の基準値未満であると判定したときには、現在選択されているVCOより発振周波数帯域が一段低いVCOを選択する信号を出力する第2の判定回路と、前記第1の判定回路と前記第2の判定回路の出力の一方を選択してVCO選択信号として出力するセレクタとを有する。
【0011】
このように構成することで、VCOの発振周波数を制御する制御電圧が変動した場合にも、好適な発振周波数帯域を有するVCOに切り替えることができる。
上記のPLL回路において、受信チャンネルを切り替えるときに、前記セレクタは、最初に前記第1の判定回路を選択し、それ以降前記第2の判定回路を選択する。
【0012】
上記のPLL回路において、前記セレクタは、分周データが変更されたとき、最初に前記第1の判定回路の出力を選択し、前記チャージポンプの電流値を通常より大きな値に変更する切替信号を出力し、その後、前記第2の判定回路からVCOを切り替える信号が出力されない場合には、前記チャージポンプの電流値を通常時の小さい値に変更する。
【0013】
このように構成することで、受信チャンネルを切り換えるために、分周データが変更された場合には、最初に、第1の判定回路から出力されるVCOの選択信号と、チャージポンプの電流値を通常の値より大きな値に変更する切替信号を出力し、その後、第2の判定回路からVCOを切り替えるためのVCO選択信号が出力されない場合には、チャージポンプの電流値を通常の小さい値に変更する切替信号を出力する。これにより、VCOを切り替えたとき、チャージポンプの電流値を大きな値に変更してロックアップ時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のVCOの中から最適な周波数帯域のVCOを選択し、さらにVCOを切り替える際に、PLL回路のロックアップ時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。図1は、実施の形態のPLL回路構成を示すブロック図である。
このPLL回路11は、例えば、テレビチューナ用ICに搭載され、複数のVCOの中から、受信したい放送局の周波数に適した周波数帯域のVCOを選択するための回路である。
【0016】
図1において、テレビチューナ用ICの外部の制御部(プロセッサ)12は、ユーザが受信を希望する放送局の周波数に対応する分周データ(プログラマブル分周器14の分周比を指定するデータ)を、テレビチューナ用ICのインターフェイス回路13に出力する。
【0017】
インターフェイス回路13は、制御部12から受信した分周データをプログラマブル分周器14とVCO・電流切替回路15に出力する。
VCO・電流切替回路15は、分周データに基づいて複数のVCO22a〜22nの内の1つを選択するVCO選択信号と、VCOを切替え際に、可変チャージポンプ20の出力電流を通常(ロック時)より大きな値に変更する切替信号を出力する。
【0018】
プログラマブル分周器14は、VCO出力回路16から出力される発振信号を、分周データで指定される分周比で分周して位相比較器17に出力する。
プログラマブル分周器14の分周比は、VCOの発振周波数と、PLL回路の比較周波数(クロック信号の周波数)から決めることができる。実施の形態では、位相比較器17に入力するクロック信号の周波数は一定であるので、そのクロック信号の周波数と分周データに基づいて、放送局の周波数に対して好適な発振周波数帯域を有するVCOを予め決めておくことができる。従って、VCO・電流切替回路15は、分周データに基づいて、好適な発振周波数帯域のVCOを選択する信号を生成することができる。
【0019】
なお、プログラマブル分周器14の前段に別の分周器を設け、VCO出力回路16から出力される発振信号をその分周器で分周した後、プログラマブル分周器14でさらに分周しても良い。分周器を複数段使用することで、発振周波数が高い場合でもプログラマブル分周器14の分周比をそれほど大きくせずに対応できる。
【0020】
基準クロック発生器19は、水晶振動子等から基準クロック信号を生成する回路である。基準クロック分周器18は、基準クロック発生器19から出力される基準クロック信号を、予め定められた分周比で分周して特定の周波数のクロック信号を位相比較器17に出力する。
【0021】
位相比較器17は、プログラマブル分周器14の出力信号と、基準クロック分周器18から出力されるクロック信号の位相を比較し、位相差に応じた信号を可変チャージポンプ20に出力する。
【0022】
可変チャージポンプ20は、位相比較器17から出力されるアップ信号またはダウン信号に従って、電源側または接地(または負電位側)のトランジスタをオンしてループフィルタ21のキャパシタの充電または放電を行う。また、可変チャージポンプ20は、VCO・電流切替回路15からの切替信号に基づいてループフィルタ21に供給する電流値を変化させる。
【0023】
ループフィルタ21は、可変チャージポンプ20の出力電流を平滑してVCO22a〜22nの発振周波数を制御する周波数制御電圧として出力する。
VCO22a〜22nは、それぞれ発振周波数帯域の異なる電圧制御発振器であり、これらのVCO22a〜22nの発振信号の内の1つがVCO出力回路16により選択されプログラマブル分周器14及び図示しない他の回路に出力される。
【0024】
上記のプログラマブル分周器14、位相比較器17、可変チャージポンプ20、ループフィルタ21、VCO22a〜22n等でPLL回路を構成している。
比較器23は、ループフィルタ21から出力されるアナログの周波数制御電圧と、基準電圧回路24から出力されるアナログの基準電圧を比較して、アナログの周波数制御電圧をデジタル値に変換する。
【0025】
図2は、可変チャージポンプ20の一例を示す図である。可変チャージポンプ20は、正の電源VDDに接続される可変電流源31と、MOSトランジスタ等で構成されるスイッチ32、33と、負電源VSSまたは接地に接続される可変電流源34とを有する。
【0026】
可変電流源31、34には、VCO・電流切替回路15から電流の切替信号が与えられる。VCO・電流切替回路15から、電流値を通常より大きな値に変更する切替信号が与えられたときには、可変電流源31、34の出力電流が増加する。また、VCO・電流切替回路15から、電流値を小さい値に変更する切替信号が与えられたときには、可変電流源31、34の電流が減少する。すなわち、可変チャージポンプ20は、VCOを切替えるとき、通常より大きな電流を出力し、それ以外のときはそれより小さな電流を出力する。
【0027】
スイッチ32、33には、位相比較器17からそれぞれアップ信号またはダウン信号が与えられる。アップ信号が与えられたときには、スイッチ32がオン、スイッチ33がオフ状態となり、可変電流源31の出力電流がループフィルタ21のキャパシタに供給される。他方、ダウン信号が与えられたときには、スイッチ32がオフ、スイッチ33がオン状態となり、ループフィルタ21のキャパシタに蓄積された電荷が可変電流源34を介して放出される。
【0028】
図3は、VCO・電流切替回路15の構成の一例を示す図である。VCO・電流切替回路15は、第1の判定回路41と第2の判定回路42と判定タイミング生成回路43とセレクタ44とを有する。
【0029】
第1の判定回路41は、外部の制御部12から与えられる分周データに基づいて、複数のVCOの内の1つのVCOを選択するVCO選択信号を出力する。
第2の判定回路42は、判定タイミング生成回路43から出力される信号をトリガとして、以下の判定動作を行う。
【0030】
第2の判定回路42は、比較器23(図1)から出力される周波数制御電圧のデジタル値が、基準値B(第1の基準値に対応する)以上で、かつ基準値A(第2の基準値に対応する)以下と判定したときには、現在選択されているVCOの選択を維持する。また、第2の判定回路42は、周波数制御電圧のデジタル値が基準値Aより大きいと判定したときには、現在選択されているVCOの発振周波数帯域より1つ上の発振周波数帯域を持つVCOを選択するVCO選択信号を出力する。また、第2の判定回路42は、周波数制御電圧のデジタル値が基準値B未満と判定したときには、現在選択されているVCOの発振周波数帯域の1つ下の発振周波数帯域を持つVCOを選択するVCO選択信号を出力する。基準値A、Bは、一定の環境温度範囲等の条件でVCOの発振が安定して行える周波数制御電圧の上限値と下限値に基づいて設定している。
【0031】
セレクタ44は、分周データが変更されてVCOの切り替えを行うとき、最初に第1の判定回路41から出力されるVCO選択信号を選択すると共に、可変チャージポンプ20の電流値を通常より大きな値に変更する切替信号を出力する。そして、それ以降は、第2の判定回路42から出力されるVCO選択信号を選択する。セレクタは、第2の判定回路42からVCOを切り替える信号が出力されない場合には、可変チャージポンプ20の電流値を通常時の小さな値に変更する切替信号を出力する。
【0032】
セレクタ44から出力されるVCO選択信号により複数のVCO22a〜22nの内の1つのVCOが選択されて発振動作が行われる。VCO選択信号は、同時にVCO出力回路16に選択信号として与えられており、VCO出力回路16は、VCO選択信号により指定されるVCOの出力を選択してプログラマブル分周器14に出力する。
【0033】
図4(A)は、VCOの発振周波数及び分周データと周波数制御電圧の関係を示す図であり、図4(B)は、分周データとVCOの対応関係を示す図である。
図4(A)の左側の図は、VCOの発振周波数と周波数制御電圧の関係を示し、右側の図は、分周データの値N0〜Nn−1と周波数制御電圧の関係を示している。
【0034】
分周データN、PLL回路の比較周波数(クロック信号の周波数)frefとすると、VCOの発振周波数fvcoは、以下の式で表せる。
fvco=fref×N
PLL回路の比較周波数frefが一定であるとすると、上記の式から、受信する放送局の周波数が決まれば分周データNの値が決まるので、分周データNと特定の発振周波数帯域を有するVCOを対応付けることができる。
【0035】
図4(A)において、発振周波数帯域が最も低いVCOをVCO0(図1のVCO22aに対応する)、発振周波数帯域が2番目に低いVCOをVCO1(図1のVCO22bに対応する)・・・発振周波数帯域が2番目に高いVCOをVCOn−1(図1のVCO22n−1に対応する)、発振周波数帯域が最も高いVCOをVCOn(図1のVCO22nに対応する)とする。
【0036】
例えば、発振周波数帯域が最も低いVCO0の周波数制御電圧が上限値である基準値Aとほぼ等しくなるときの分周データNの値がN0、発振周波数帯域が2番目に低いVCO1の周波数制御電圧が基準値Aとほぼ等しくなるときの分周データNの値がN1・・・発振周波数帯域が2番目に高いVCOn−1の周波数制御電圧が基準値Aとほぼ等しくなるときの分周データNの値がNn−1である。
【0037】
本実施の形態では、上記の分周データNの値N0〜Nn−1用いて、図4(B)に示す分周データNの範囲と、そのとき選択するVCOの対応関係を決めている。図4(A)に示す例では、VCOの発振周波数帯域が各VCOで一部重複しているので、重複している周波数範囲などを考慮して分周データNの範囲を決めている。
【0038】
以下、図3のVCO・電流切替回路15の動作を、図4(A)、(B)を参照して説明する。
プログラマブル分周器14に設定される分周データNが、N≦N0の条件(図4(B)に示す条件、以下同様)を満たすときには、第1の判定回路41は、発振周波数帯域の最も低いVCO0(図4(A)参照、以下同様)を選択するVCO選択信号を出力する。
【0039】
分周データNが、N0<N≦N1の条件を満たすときには、第1の判定回路41は、発振周波数帯域が2番目に低いVCO1を選択するVCO選択信号を出力する。分周データNが、N1<N≦N2の条件を満たすときには、第1の判定回路41は、発振周波数帯域が3番目に低いVCO2を選択するVCO選択信号を出力する。
【0040】
分周データNの値が、Nn−2<N≦Nn−1の条件を満たすときには、第1の判定回路41は、発振周波数帯域が2番目に高いVCOn−1を選択するVCOを選択信号を出力する。さらに、分周データNが、Nn−1<Nの条件を満たすときには、第1の判定回路41は、発振周波数帯域が最も高いVCOnを選択するVCOを選択信号を出力する。
【0041】
次に、第2の判定回路42の動作を説明する。第2の判定回路42は、周波数制御電圧のデジタル値と基準値A、Bを比較する。例えば、VCO1が選択されているときに、周波数制御電圧のデジタル値が、下限値である基準値B以上で、かつ上限値である基準値A以下であると判定したときには、第2の判定回路42は、そのとき選択されているVCO1の選択を維持する。
【0042】
また、周波数制御電圧のデジタル値が、基準値Aより大きいと判定したときには、第2の判定回路42は、発振周波数帯域が現在選択されているVCO1より1つ上のVCO2を選択するVCO選択信号を出力する。
【0043】
周波数制御電圧のデジタル値が、基準値Bより小さいと判定したときには、第2の判定回路42は、発振周波数帯域が現在選択されているVCO1より1つ下のVCO0を選択するVCO選択信号を出力する。
【0044】
この実施の形態では、発振周波数帯域の低いVCO1を指定するデータとして、例えば、N0<N≦N1の値が設定されており、周波数制御電圧のデジタル値が基準値B以上、基準値A以下の範囲にあるときには、第2の判定回路42は、「現在選択されているVCOの値」を維持する。また、周波数制御電圧のデジタル値が、基準値Aより大きいと判定したときには、「現在選択されているVCOの値+1」をVCO選択信号として出力する。周波数制御電圧のデジタル値が、基準値Bより小さいと判定したときには、「現在選択されているVCOの値−1」をVCO選択信号として出力する。第2の判定回路42は、例えば、デコーダと比較器等で構成することができる。
【0045】
VCO選択信号として、「現在選択されているVCOの値+1」が出力されると、現在選択されているVCOが発振動作を停止し、発振周波数帯域が1つ上のVCOが発振動作を開始する。VCOを切り替える回路は、例えば、スイッチ回路等により実現できる。図1において、各VCO22a〜22nに入力するVCO選択信号は、VCO選択信号により制御されるスイッチ回路の機能を模式的に示したものである。
【0046】
セレクタ44は、制御部12から指示されたとき、または分周データが変更されたとき、第1の判定回路41から出力されるVCO選択信号を最初に選択してVCO22a〜22nとVCO出力回路16に出力して、特定のVCOを動作させる。そして、それ以降は、第2の判定回路42から出力されるVCO選択信号(例えば、選択されているVCO値に「1」を加算した値、または「1」を減算した値)を出力する。また、セレクタ44は、VCOを切り替えるとき、可変チャージポンプ20の電流値を大きくする切替信号を出力する。
【0047】
これにより、分周データに対応する発振周波数帯域を有するVCOを選択する信号が出力されると共に、可変チャージポンプ20の電流値を、ロック時より大きな値に切り替えるための切替信号が出力される。さらに、周波数制御電圧が基準値Bより小さいまたは基準値Aより大きい場合には、発振周波数帯域が1つ上のVCO、または1つ下のVCOを選択する信号が出力される。
【0048】
次に、図1のPLL回路11の動作を、図5のフローチャートを参照して説明する。
プログラマブル分周器14に、受信する周波数に対応する分周データをセットする(図5、S11)。
【0049】
次に、VCO・電流切替回路15は、プログラマブル分周器14に設定する分周データに対応するVCOを選択するVCO選択信号を出力すると共に、可変チャージポンプ20の電流値を切り替えるために切替信号を出力する(S12)。
【0050】
VCO・電流切替回路15から電流値を大きな値に変更するための切替信号が出力されると、可変チャージポンプ20の可変電流源31、34の電流値がロック時より大きな値に変更され、その大きな電流値でPLLループの周波数制御が行われる。従って、PLL回路11の発振周波数を短時間で収束させることができる。
【0051】
次のステップS13において、周波数制御電圧が安定するまで一定時間待つ。一定時間経過したなら、周波数制御電圧のデジタル値が、基準値B以上で、かつ基準値A以下か否か、基準値Aより大きいか、あるいは基準値B未満か否かを判定する(S14)。
【0052】
周波数制御電圧のデジタル値が、基準値B≦周波数制御電圧のデジタル値≦基準値Aの条件を満たすときには、ステップS15に進み、現在のVCOの選択を維持し、可変チャージポンプ20の電流値を小さな値に変更する切替信号を出力する。
【0053】
ステップS14において、周波数制御電圧のデジタル値が、基準値Aより大きいと判定されたときには、ステップS16に進み、現在のVCOの発振周波数帯域より1つ上の発振周波数帯域を有するVCOを選択するVCO選択信号を出力する。このとき、可変チャージポンプ20には、通常より大きな電流の出力を指示する切替信号が、VCO・電流切替回路15から出力されている。その後、ステップS13に戻る。
【0054】
ステップS14において、周波数制御電圧のデジタル値が、基準値B未満と判定されたときには、ステップS17に進み、現在のVCOの発振周波数帯域より1つ下の発振周波数帯域を有するVCOを選択するVCO選択信号を出力する。このとき、可変チャージポンプ20には、通常より大きな電流の出力を指示する切替信号が、VCO・電流切替回路15から出力されている。その後、ステップS13に戻る。
【0055】
上記のステップS12〜S17の処理は、VCO・電流切替回路15の動作を示すものである。
上述した実施の形態によれば、受信を希望する放送局に対応する分周データに基づいて、複数のVCOの中から発振周波数帯域が好適なVCOを選択することができる。また、VCOを切り替えるときに、可変チャージポンプ20の電流値を大きくすることで、PLL回路を短時間で収束した状態にすることができる。
【0056】
また、上述した実施は、VCOの発振周波数を制御する周波数制御電圧のデジタル値が、一定範囲にあるときには、現在選択されているVCOの選択を維持し、そのデジタル値が上限の基準値Aより大きいときには、発振周波数帯域が1つ上のVCOに切り替えるVCO選択信号を出力する。また、周波数制御電圧のデジタル値が、下限の基準値B未満のときには、発振周波数帯域が1つ下のVCOに切り替えるVCO選択信号を出力する。
【0057】
このように構成することで、受信しようとする放送局の周波数に近い発振周波数のVCOを選択することができるので、PLL回路のロックアップ時間を短縮できる。
また、環境温度、その他の条件が変化して周波数制御電圧が変動した場合に、変動後の条件に適した発振周波数帯域を持つVCOに切り替えることができる。
【0058】
本発明は上述した実施の形態に限らず、例えば、以下のように構成しても良い。
(1)実施の形態は、第1の判定回路41と第2の判定回路42の出力の一方をセレクタ44で選択するようにしたが、第1の判定回路と第2の判定回路を1つの回路で構成し、分周データに基づくVCO選択信号の生成と、基準値A、Bとの比較を1つの回路で行うようにしても良い。
【0059】
また、第1の判定回路41,第2の判定回路42、セレクタ44を1つの回路にまとめても良い。
(2)実施の形態では、判定タイミング生成回路43から出力される信号に従って、第2の判定回路42が判定動作を行うようにしたが、判定タイミング生成回路43を用いずに、第2の判定回路42が一定時間毎に判定動作を行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態のPLL回路の回路図である。
【図2】可変チャージポンプ回路の一例を示す図である。
【図3】VCO・電流切替回路の構成を示す図である。
【図4】図4(A)は、発振周波数及び分周データと周波数制御電圧の関係を示す図であり、図4(B)は、分周データの条件とVCOの対応関係を示す図である。
【図5】PLL回路の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
11 PLL回路
12 制御部
14 プログラマブル分周器
15 VCO・電流切替回路
18 基準クロック分周器
20 可変チャージポンプ
22a〜22n VCO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振周波数帯域の異なる複数のVCOと、
プログラマブル分周器と、
チャージポンプと、
前記プログラマブル分周器の分周比を決める分周データに基づいて前記複数のVCOの内の1つを選択すると共に、VCOを切り替える際に、前記チャージポンプの電流値を通常より大きな値に切り替えるVCO・電流切替回路とを備えるPLL回路。
【請求項2】
前記VCO・電流切替回路は、前記プログラマブル分周器の分周比を決める分周データと基準値を比較して、前記複数のVCOの内の1つのVCOを選択する選択信号を出力する第1の判定回路と、VCOの発振周波数を制御するための制御電圧と第1の基準値及び第2の基準値を比較し、前記制御電圧が前記第1の基準値以上で、かつ前記第2の基準値以下と判定したときには、現在選択されているVCOを選択し、前記制御電圧が前記第2の基準値より大きいと判定したときには、現在選択されているVCOより発振周波数帯域が一段高いVCOを選択する信号を出力し、前記制御電圧が前記第1の基準値未満であると判定したときには、現在選択されているVCOより発振周波数帯域が一段低いVCOを選択する信号を出力する第2の判定回路と、前記第1の判定回路と前記第2の判定回路の出力の一方を選択してVCO選択信号として出力するセレクタとを有する請求項1記載のPLL回路。
【請求項3】
受信チャンネルを切り替えるときに、前記セレクタは、最初に前記第1の判定回路を選択し、それ以降前記第2の判定回路を選択する請求項2記載のPLL回路。
【請求項4】
前記セレクタは、分周データが変更されたとき、最初に前記第1の判定回路の出力を選択し、前記チャージポンプの電流値を通常より大きな値に変更する切替信号を出力し、その後、前記第2の判定回路からVCOを切り替える信号が出力されない場合には、前記チャージポンプの電流値を通常時の小さい値に変更する切替信号を出力する請求項2または3記載のPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−118803(P2010−118803A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289372(P2008−289372)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】