説明

PLL回路

【課題】本発明の課題は、PLL回路のリファレンスリークと位相雑音を低減することである。
【解決手段】チャージポンプ回路14は、ロック状態監視回路19から出力される、PLL回路11がロック状態か否かを示す信号に基づいてチャージポンプ電流を切り換える。PLL回路11がアンロック状態のときには、第1及び第2の電流供給回路からチャージポンプ電流を供給し、ロック状態となると、第2の電流供給回路からのみチャージポンプ電流を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジオ、テレビ等の受信回路の局部発振回路としてPLL(Phase Locked Loop)回路が用いられている。PLL回路において、発振周波数を目的とする周波数に一致させるまでのロック時間を短縮するためには、ローパスフィルタに供給するチャージポンプ電流を大きくする方が良い。他方、チャージポンプ電流が大きいほどリファレンスリークが増大する。そこで、特定の周波数にロックするまではチャージポンプ回路の出力電流を大きくし、ロック状態となったならチャージポンプ回路の出力電流を減らすことが考えられている。
【0003】
特許文献1には、PLL回路のループフィルタ内のラグリードフィルタのコンデンサに直列に抵抗を挿入することで、電圧制御発振器の制御電圧の変動を抑え、出力周波数を安定にすることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、第1及び第2の2個のチャージポンプ回路を設け、第2のチャージポンプ回路の出力が基準値を上まわる場合には、第1及び第2のチャージポンプ回路の出力を徐々に減少させることで、PLL回路のリファレンスリークを抑制することが記載されている。また、ノイズ検出器により位相ノイズを検出し、位相ノイズの大きさを所定の基準値と比較し、位相ノイズの大きさが基準値を下回るまで、低域通過フィルタの出力を徐々に増加させることが記載されている(段落0105)。これにより、位相ノイズを低減することができる。低域通過フィルタの出力の制御は、抵抗に直列に接続されるスイッチをオン、オフ制御することにより行われる。 特許文献3には、チャージポンプ回路の出力電流を制御するアップパルス信号とダウンパルス信号のパルス幅の差を検出し、パルス幅の差が小さい場合には、チャージポンプ回路の出力電流を小さくして、PLL回路のリファレンスリークを低減することが記載されている。
【0005】
しかしながら、リファレンスリークと位相雑音を低減するには、特許文献2に見られるように、チャージポンプ回路の出力又は電圧制御発振器の位相雑音をモニタするための専用の回路が必要となり、回路が複雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−140688号公報
【特許文献2】特開2004−215105号公報
【特許文献3】特開平10−233681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は従来の問題点を鑑み、簡単な回路でリファレンスリークと位相雑音を低減したPLL回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のPLL回路は、PLL回路がロック状態か否かを監視するロック状態監視回路と、前記ロック状態監視回路により前記PLL回路がアンロック状態と判定されたとき、チャージポンプ電流を供給し、ロック状態と判定されたとき、チャージポンプ電流の供給を停止する第1の電流供給回路と、前記PLL回路がアンロック状態及びロック状態のとき、チャージポンプ電流を供給する第2の電流供給回路と、前記ロック状態監視回路により前記PLL回路がロック状態と判定されたとき、カットオフ周波数を切り換えることのできるローパスフィルタとを備える。
【0009】
このPLL回路によれば、簡単な回路でリファレンスリークを減らし、かつ位相雑音を低減することができる。
上記のPLL回路において、前記第1の電流供給回路は、前記ロック状態監視回路によりロック状態と判定されたときオフ状態となるスイッチを有し、前記スイッチがオフ状態のときチャージポンプ電流の供給を停止する。
【0010】
このように構成することで、PLL回路がロック状態になったとき、第1の電流供給回路のチャージポンプ電流の供給を停止し、ロック時のリファレンスリークを減らすことができる。
【0011】
上記のPLL回路において、第1のMOSトランジスタと第3のMOSトランジスタを有するカレントミラー回路と、前記第3のMOSトランジスタの負荷として機能する第2のMOSトランジスタを有し、前記第1の電流供給回路は、縦続接続された第4のMOSトランジスタと第5のMOSトランジスタと、前記第4のMOSトランジスタのゲートに前記第2のMOSトランジスタのゲート電圧を印加する第1のスイッチと、前記第5のMOSトランジスタのゲートに、前記第3のMOSトランジスタのゲート電圧を印加する第2のスイッチを有し、前記第1のスイッチは、前記PLL回路がアンロック状態で、かつ発振周波数を上げるときにオン状態となり、ロック状態のときオフ状態となり、前記第2のスイッチは、前記PLL回路がアンロック状態で、かつ発振周波数を下げるときにオン状態となり、ロック状態のときオフ状態となる。
【0012】
このように構成することで、ロック状態のときには、第1の電流供給回路の電流供給を停止し、チャージポンプ電流の値をアンロック時より小さくできる。これによりリファレンスリークを減らすことができる。また、ロック状態のとき、ローパスフィルタのカットオフ周波数を切り換えて位相ノイズを低減することができる。
【0013】
上記のPLL回路において、前記第2の電流供給回路は、縦続接続された第6のMOSトランジスタと第7のMOSトランジスタと、前記第6のMOSトランジスタのゲートに、前記第2のMOSトランジスタのゲート電圧を印加する第3のスイッチと、前記第7のMOSトランジスタのゲートに、前記第3のMOSトランジスタのゲート電圧を印加する第4のスイッチとを有し、前記第3のスイッチは、前記PLL回路がアンロック状態又はロック状態で、発振周波数を上げるときオン状態となり、前記第4のスイッチは、前記PLL回路がアンロック状態又はロック状態で、発振周波数を下げるときオン状態となる。
【0014】
このように構成することで、アンロック状態のときには、第1の電流供給回路と第2の電流供給回路からチャージポンプ電流を供給し、ロック状態のときには、第2の電流供給回路からのみチャージポンプ電流を供給することができる。これにより、ロック時のリファレンスリークを減らすことができる。さらに、チャージポンプ電流を減らしたときの位相ノイズも低減することができる。
【0015】
上記のPLL回路において、前記ローパスフィルタは、並列接続された複数のキャパシタの並列容量を切り換えるスイッチと、直列抵抗を切り換えるスイッチを有し、前記ロック状態監視回路によりロック状態であることが検出されたとき、前記スイッチを並列容量が小さくなり、かつ抵抗値が大きくなるように切り換える。
【0016】
このように構成することで、ロック状態のときには、ローパスフィルタのキャパシタと抵抗の値を切り換えて、位相ノイズを低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
発明によれば、簡単な回路でPLL回路のリファレンスリークと位相雑音を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態のPLL回路とロック状態監視回路の回路図である。
【図2】チャージポンプ電流とミスマッチ電流の関係を示す図である。
【図3】実施の形態のチャージポンプ回路の回路図と、信号の説明図である。
【図4】実施の形態のローパスフィルタ回路の回路図である。
【図5】チャージポンプ電流と位相ノイズの説明図である。
【図6】PLL回路の動作を示すタイムチャートである。
【図7】ロック状態監視回路の機能を示すフローチャートである。
【図8】A/D変換器の出力値の変動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。図1(A)は、実施の形態のPLL回路11の回路図である。
PLL回路11は、図1(A)に示すように、基準周波数信号を生成する発振器12と、位相比較器(PD)13と、チャージポンプ回路(CP)14と、ローパスフィルタ(FIL)15と、電圧制御発振器(VCO)16と、分周器17を有する。PLL回路11は、その他にローパスフィルタ15の出力電圧をA/D変換するA/D変換器18と、ロック状態監視回路19を有する。
【0020】
位相比較器13は、分周器17で1/Nに分周された発振信号CLKと、基準周波数信号REFの位相を比較し、位相の進み又は遅れに応じて発振周波数を上げるUP信号又は下げるDN信号を出力する。
【0021】
チャージポンプ回路14は、図1(A)には示していないが、チャージポンプ電流を供給する第1の電流供給回路と第2の電流供給回路を有する。チャージポンプ回路14は、ロック状態監視回路19から出力されるロック状態か否かを示す信号に基づいてチャージポンプ電流を切り換える。具体的には、PLL回路11がアンロック状態のときには、第1及び第2の電流供給回路からチャージポンプ電流を供給する。PLL回路11がロック状態となると、第2の電流供給回路からのみチャージポンプ電流を供給する。
【0022】
ローパスフィルタ15は、チャージポンプ回路14の出力電流を平滑し、発振周波数を制御する制御電圧VTとして電圧制御発振器16に出力する。ローパスフィルタ15の出力電圧は、A/D変換器18によりデジタル値に変換されロック状態監視回路19に出力される。
【0023】
ロック状態監視回路19は、A/D変換器18から出力されるデジタル値を監視し、PLL回路11がロック状態か否かを判定する。そして、PLL回路11がロック状態であることを示すロック信号(LOCK信号)又はその反転信号のLOCKB信号を、チャージポンプ回路14とローパスフィルタ15に出力する。
【0024】
図1(B)に示すように、ロック状態監視回路19は、時定数回路21と判定回路22とロック検出回路23とを有する。
時定数回路21は、A/D変換器18から出力されるデジタル値、例えば、8ステップに区切ったデジタル値を判定回路22に一定期間出力する。
【0025】
判定回路22は、時定数回路21から一定期間出力されるデジタル値が一定値か否かを判定する。判定回路22は、例えば、A/D変換器18の出力値が8ステップの内の特定のステップの値が一定期間連続するか否かを判定する。あるいは、特定のステップの値が所定回数以上検出されたか否かを判定する。
【0026】
ロック検出回路23は、判定回路22によりA/D変換器18の出力値が一定範囲内にあると判定されたときには、PLL回路11がロック状態にあるものと判断し、ロック状態であることを示すLOCK信号(又はLICKB信号)を出力する。
【0027】
図2は、チャージポンプ電流Icpとミスマッチ電流ΔIとの関係を示す図である。図2において、横軸はチャージポンプ電流Icp[μA]を示し、縦軸はミスマッチ電流ΔI[μA]を示す。ミスマッチ電流とは、チャージポンプ回路14の出力段のpチャネルMOSトランジスタから出力される電流と、nチャネルMOSトランジスタに流れ込む電流の差電流である。
【0028】
図2に示すようにチャージポンプ電流Icpが大きくなると、ミスマッチ電流ΔIが大きくなる。ミスマッチ電流が増加すると、PLL回路11のリファレンスリーク(スプリアス)が増加する。
【0029】
本実施の形態では、PLL回路11がアンロック状態のときには、チャージポンプ回路14のチャージポンプ電流を比較的大きな値にしてロックアップタイムを短くし、ロック状態のときには、チャージポンプ電流の値を小さくしてリファレンスリークが小さくなるようにしている。
【0030】
図3(A)は、チャージポンプ回路14の一例を示す図である。nチャネルMOSトランジスタTR1のドレインと電源VDDとの間には電流源I1が接続されている。pチャネルMOSトランジスタTR2とnチャネルMOSトランジスタTR3は縦続接続されており、MOSトランジスタTR3のゲートは、MOSトランジスタTR1のゲートとドレインに接続されている。
【0031】
MOSトランジスタTR1とTR3とはカレントミラー回路を構成している。MOSトランジスタTR2はMOSトランジスタTR3の負荷として機能しており、電流源I1と同じ電流がMOSトランジスタTR2に流れる。MOSトランジスタTR1、TR2、TR3は、それぞれ第1、第2、第3のMOSトランジスタに対応する。
【0032】
MOSトランジスタTR2のゲート電圧は、スイッチSW2を介してpチャネルMOSトランジスタTR4のゲートに印加されると共に、スイッチSW6を介してpチャネルMOSトランジスタTR6のゲートに印加される。また、MOSトランジスタTR2のゲートには、キャパシタC1の一端が接続され、キャパシタC1の他端は電源VDDに接続されている。MOSトランジスタTR4とTR6のゲートは、それぞれスイッチSW1とSW5を介して電源VDDに接続されている。
【0033】
スイッチSW1は、位相比較器13から出力されるUP信号(発振周波数を高くする信号)によりオン、オフ制御されるスイッチであり、スイッチSW2は、UPB信号(UP信号の反転信号)によりオン、オフ制御されるスイッチである。
【0034】
スイッチSW5は、位相比較器13から出力されるUP_R信号によりオン、オフ制御されるスイッチであり、スイッチSW6は、UPB_R信号(UP_R信号の反転信号)によりオン、オフ制御されるスイッチである。
【0035】
MOSトランジスタTR4は、スイッチSW2がオン状態のとき(UPB信号がハイレベルのとき)チャージポンプ電流を出力する。また、MOSトランジスタTR6は、スイッチSW6がオン状態のとき(UPB_R信号がハイレベルのとき)チャージポンプ電流を出力する。スイッチSW2は第1のスイッチに対応し、スイッチSW6は、第3のスイッチに対応する。また、MOSトランジスタTR4は、第4のMOSトランジスタに対応し、MOSトランジスタTR6は、第6のMOSトランジスタに対応する。
【0036】
上記のMOSトランジスタTR4は、比較的大きなチャージポンプ電流を出力し、MOSトランジスタTR6は小さいなチャージポンプ電流を出力するように設計してある。なお、MOSトランジスタTR4とTR5の出力電流をほぼ同じ値にしても良い。
【0037】
MOSトランジスタTR1のゲート電圧は、スイッチSW3を介してnチャネルMOSトランジスタTR5のゲートに印加されると共に、スイッチSW7を介してnチャネルMOSトランジスタTR7のゲートに印加される。
【0038】
MOSトランジスタTR3のゲートには、キャパシタC2の一端が接続され、キャパシタC2の他端は接地されている。MOSトランジスタTR5のゲートは、スイッチSW4を介して接地されている。MOSトランジスタTR7のゲートはスイッチSW8を介して接地されている。
【0039】
スイッチSW3は、位相比較器13から出力されるDN信号(発振周波数を低くする信号)によりオン、オフ制御されるスイッチであり、スイッチSW4は、DNB信号(DN信号の反転信号)によりオン、オフ制御されるスイッチである。
【0040】
スイッチSW7は、DN_R信号によりオン、オフ制御されるスイッチであり、スイッチSW8は、DNB_R信号(DN_R信号の反転信号)によりオン、オフ制御されるスイッチである。
【0041】
MOSトランジスタTR5は、スイッチSW3がオン状態のとき(DN信号がハイレベルのとき)、MOSトランジスタTR1と同じゲート電圧が印加され、ローパスフィルタ15からチャージポンプ電流が流れ込む。また、MOSトランジスタTR7は、スイッチSW7がオン状態のとき(DN_R信号がハイレベルのとき)、MOSトランジスタTR1と同じゲート電圧が印加され、ローパスフィルタ15からチャージポンプ電流が流れ込む。
【0042】
スイッチSW3は、第2のスイッチに対応し、スイッチSW7は、第4のスイッチに対応する。また、MOSトランジスタTR5は第5のMOSトランジスタに対応し、MOSトランジスタTR7は第7のMOSトランジスタに対応する。スイッチSW2,SW3,MOSトランジスタTR4、TR5は、第1の電流供給回路に対応する。また、スイッチSW6,SW7、MOSトランジスタTR6、TR7は、第2の電流供給回路に対応する。
【0043】
図3(B)は、位相比較器13から出力されるUP信号、UP_R信号、DN信号及びDN_R信号の説明図である。
位相比較器13では、基準周波数信号と分周器17の出力信号の位相比較が行われ、発振周波数を上げる場合にはPDアップ信号が生成され、発振周波数を下げる場合にはPDダウン信号が生成される。
【0044】
PDアップ信号は、スイッチSW11を介してUP信号としてチャージポンプ回路14に出力され、スイッチSW12を介してUP_R信号として出力される。スイッチSW11は、LOCKB信号(LOCK信号の反転信号)がハイレベルのときオン状態となり、LOCKB信号がローレベルのときオフ状態となるスイッチである。スイッチSW12は常にオン状態となっているスイッチである。
【0045】
従って、PLL回路11がアンロック状態(LOCKB信号がハイレベルのとき)のときには、PDアップ信号がUP信号として出力されるが、ロック状態となると、PDアップ信号はUP信号としては出力されなくなる。
【0046】
PLL回路11がアンロック状態のときには、UPB信号によりスイッチSW2がオン状態となり、そのときスイッチSW6はUPB_R信号によりオン状態となっているので、MOSトランジスタTR4とTR6の両方からチャージポンプ電流が供給される。その後、PLL回路11がロック状態になると、スイッチSW2がオフ状態となり、MOSトランジスタTR4はオフ状態となる。その結果、MOSトランジスタTR6のみからチャージポンプ電流が供給される。
【0047】
従って、PLL回路がアンロック状態で、発振周波数を上げるときには、MOSトランジスタTR4とTR6から大きなチャージポンプ電流がローパスフィルタに供給され、ロック状態となると、MOSトランジスタTR6からアンロック時より小さいチャージポンプ電流がローパスフィルタ15に供給される。
【0048】
PDダウン信号は、スイッチSW13を介してDN信号として出力され、スイッチSW14を介してDN_R信号として出力される。スイッチSW13は、LOCKB信号がハイレベルのときオン状態となり、LOCKB信号がローレベルのときオフ状態となるスイッチである。スイッチSW14は常にオン状態となっているスイッチである。
【0049】
従って、PLL回路11がアンロック状態のときには、PDダウン信号がそのままDN信号として出力されるが、PLL回路11がロック状態となると、PDダウン信号はDN信号としては出力されない。
【0050】
PLL回路11がアンロック状態のときには、DN信号によりスイッチSW3がオン状態となり、そのときSW7はDN_R信号によりオン状態となっているので、ローパスフィルタ15からMOSトランジスタTR5とTR7の両方にチャージポンプ電流が流れ込む。その後、PLL回路11がロック状態になると、MOSトランジスタTR5がオフ状態となり、MOSトランジスタTR7のみにチャージポンプ電流が流れ込む。
【0051】
従って、PLL回路がアンロック状態で、発振周波数を下げるときには、ローパスフィルタ15からMOSトランジスタTR4とTR6に大きなチャージポンプ電流が流れ込む。その後、ロック状態となると、MOSトランジスタTR5がオフ状態となり、アンロック時より小さいチャージポンプ電流がMOSトランジスタTR7に流れ込む。
【0052】
図4は、ローパスフィルタ15の一例を示す図である。ローパスフィルタ15は、抵抗R11と、その抵抗R11と並列に接続されたスイッチSW21と、抵抗R12と、キャパシタC12と、そのキャパシタC12と並列にキャパシタC11を接続するか否かを切り換えるスイッチSW22と、キャパシタC21に直列に接続されたスイッチSW23と、キャパシタC22とを有する。抵抗R11とR12とキャパシタC12は直列に接続されており、それらと並列にキャパシタC21とC22が接続されている。
【0053】
スイッチSW21、SW22及びSW23は、LOCKB信号がハイレベルのときオン状態となり、LOCKB信号がローレベルのときオフ状態となるスイッチである。
従って、図4のローパスフィルタ15は、PLL回路11がアンロック状態のとき(LOCKB信号がハイレベルのとき)には、スイッチSW21、SW22がオン状態となり、キャパシタC11とC12が並列に接続され、それらのキャパシタに抵抗R12のみが直列に接続される。また、スイッチSW23がオン状態となり、キャパシたC21とC22が並列に接続される。
【0054】
PLL回路11がロック状態のとき(LOCKB信号がローレベルのとき)には、スイッチSW21、SW22がオフ状態となり、抵抗R11が抵抗R12に直列に接続され、抵抗R12にキャパシタC12が直列に接続される。また、スイッチSW23がオフ状態となり、キャパシタC22のみが接続される。
【0055】
上記のローパスフィルタ15は、PLL回路11がアンロック状態からロック状態に変化すると、抵抗値が大きく、キャパシタの容量が小さくなるように切り換えられ、カットオフ周波数が高くなる。
【0056】
図5は、発振周波数と位相ノイズの関係を示す図である。図5において、横軸は周波数を、縦軸は位相ノイズの大きさ示している。
PLL回路11がロック状態となったときにチャージポンプ電流を小さな値に切り換えると、図5に点線で示すように低い周波数帯域において位相ノイズが増加する。
【0057】
本実施の形態においては、ロック時にチャージポンプ電流の値を小さくし、同時にローパスフィルタ15の抵抗を大きく、キャパシタの容量を小さな値に切り換え、カットオフ周波数が高くしている。これにより、カットオフ周波数以下の周波数帯域での位相ノイズを低減することができる。
【0058】
ここで、PLL回路11の動作を図6のタイムチャートを参照して説明する。図6の横軸は時間を表している。図6は、PLL回路11の発振周波数を下げてアンロック状態からロック状態にするときの信号波形を示している。
【0059】
図6において、UP信号は、ロック状態のときはハイレベルの信号であり、発振周波数を上げるとき、位相差に応じた期間ローレベルとなる信号である。DN信号は、ロック状態のときはローレベルの信号であり、発振周波数を下げるとき、位相差に応じた期間ハイレベルとなる信号である。UP_R信号、DN_R信号は、アンロック状態のときは、それぞれUP信号、DN信号と同じ信号であり、ロック状態のときには、最小幅のパルス信号となる。
【0060】
DN信号がハイレベルの期間、MOSトランジスタTR5とTR7のゲートには、MOSトランジスタTR1のゲート電圧が印加される。
すなわち、アンロック状態で、かつ発振周波数を下げるときには、MOSトランジスタTR5とTR7の両方にローパスフィルタ15から大きなチャージ電流が流れ込む。
【0061】
PLL回路11の発振周波数を下げたことにより、基準周波数信号REFと発振周波数信号の位相差が一定値以下になると(又は位相差が無くなると)、ロック状態監視回路19からロック(LOCK)信号が出力される。
【0062】
LOCK信号がハイレベル(LOCKB信号がローレベル)となると、図3(B)のスイッチSW11、SW13が両方ともオフ状態となる。スイッチSW11とSW13がオフ状態になると、MOSトランジスタTR4とMOSトランジスタTR5はオフ状態となる。
【0063】
PLL回路11がロック状態のとき、MOSトランジスタTR6又はMOSトランジスタTR7が動作状態となり、アンロック時より少ないチャージポンプ電流がローパスフィルタ15に出力又はローパスフィルタ15から流れ込む。
【0064】
このようにロック時のチャージポンプ電流を、アンロック時のチャージポンプ電流より小さくすることでリファレンスリークを減らすことができる。また、ロック状態のとき、ローパスフィルタ15のカットオフ周波数を切り換えることで位相ノイズを低減できる。
【0065】
ここで、ロック状態監視回路19の設計方法について、図7及び図8を参照して説明する。
図7(A)は、第1の設計例の回路機能を示すフローチャートである。ハードウェア記述言語等で回路の機能を以下のように定義することで、PLL回路11がロック状態か否かを監視するロック状態監視回路19を実現することができる。
【0066】
発振周波数の制御を開始してから、A/D変換器18の出力値(ADC「2:0」)が一定範囲の値に安定するまで待つ(S11)。A/D変換器18の出力値が安定しなら、PLL回路11がロック状態であることを示すLOCK信号=1を出力する(S12)。
【0067】
図8(A)は、A/D変換器18から8ステップの値を出力する場合の例である。図8(A)に示すように、周波数制御を開始してから、ローパスフィルタ15の出力電圧VTのデジタル値(ADC[2:])が1ステップの値の範囲に収束したなら、PLL回路11がロック状態となったものと判定する。
【0068】
図7(B)は、第2の設計例のフローチャートである。任意の一定時間のA/D変換器18の出力が何回同一値となったか調べ、一定回数以上同一値になったならロック状態と判定する場合の回路機能を示すフローチャートである。
【0069】
任意時間Waitを設定し(S21)、A/D変換器18の出力を読み取る(S22)。N回同一値が読み取られたか否かを判定する。N回同一の値が読み取られ無かった場合には(S23、NO)、ステップS21に戻る。
【0070】
N回同一の値が読み取られた場合には、ステップS24に進み、PLL回路11がロック状態であることを示すLOCK信号=1を出力する。
図8(B)は、A/D変換器18から8ステップの値を出力する場合の例であり、出力値ADC[2:0]がN回以上同じ値となったとき、PLL回路11がロック状態になったものと判定する。
【0071】
上述した実施の形態によれば、PLL回路11がアンロック状態のときには、チャージポンプ電流を大きな値にしてロックアップタイムを短縮し、ロック状態となったときには、チャージポンプ電流を小さな値に変更してスプリアスを低減することができる。
【0072】
さらに、ロック状態になったとき、ローパスフィルタのカットオフ周波数を変更することで位相ノイズを低減することができる。
本発明は、上述した実施の形態の回路に限らず、例えば、以下のように構成しても良い。
【0073】
第1の電流供給回路を4個のMOSトランジスタで構成し、2個のMOSトランジスタでチャージポンプ電流の値を決め、他の2個のMOSトランジスタを発振周波数を上げるUP信号又は下げるDN信号によりオン、オフさせるようにしても良い。
【符号の説明】
【0074】
11 PLL回路
12 発振器
13 位相比較器
14 チャージポンプ回路
15 ローパスフィルタ
16 電圧制御発振器
17 分周器
18 A/D変換器
19 ロック状態監視回路
21 時定数回路
22 判定回路
23 ロック検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PLL回路がロック状態か否かを監視するロック状態監視回路と、
前記ロック状態監視回路により前記PLL回路がアンロック状態と判定されたときには、チャージポンプ電流を供給し、ロック状態と判定されたときには、チャージポンプ電流の供給を停止する第1の電流供給回路と、
前記PLL回路がアンロック状態及びロック状態のとき、チャージポンプ電流を供給する第2の電流供給回路と、
前記ロック状態監視回路により前記PLL回路がロック状態と判定されたとき、カットオフ周波数を切り換えることのできるローパスフィルタとを備えるPLL回路。
【請求項2】
前記第1の電流供給回路は、前記ロック状態監視回路によりロック状態と判定されたときオフ状態となるスイッチを有し、前記スイッチがオフ状態のとき、チャージポンプ電流の供給を停止する請求項1記載のPLL回路。
【請求項3】
第1のMOSトランジスタと第3のMOSトランジスタを有するカレントミラー回路と、前記第3のMOSトランジスタの負荷として機能する第2のMOSトランジスタを有し、
前記第1の電流供給回路は、縦続接続された第4のMOSトランジスタと第5のMOSトランジスタと、前記第4のMOSトランジスタのゲートに前記第2のMOSトランジスタのゲート電圧を印加する第1のスイッチと、前記第5のMOSトランジスタのゲートに、前記第3のMOSトランジスタのゲート電圧を印加する第2のスイッチを有し、前記第1のスイッチは、前記PLL回路がアンロック状態で、かつ発振周波数を上げるときにオン状態となり、ロック状態のときオフ状態となり、前記第2のスイッチは、前記PLL回路がアンロック状態で、かつ発振周波数を下げるときにオン状態となり、ロック状態のときオフ状態となる請求項1記載のPLL回路。
【請求項4】
前記第2の電流供給回路は、縦続接続された第6のMOSトランジスタと第7のMOSトランジスタと、前記第6のMOSトランジスタのゲートに、前記第2のMOSトランジスタのゲート電圧を印加する第3のスイッチと、前記第7のMOSトランジスタのゲートに、前記第3のMOSトランジスタのゲート電圧を印加する第4のスイッチとを有し、前記第3のスイッチは、前記PLL回路がアンロック状態又はロック状態で、発振周波数を上げるときオン状態となり、前記第4のスイッチは、前記PLL回路がアンロック状態又はロック状態で、発振周波数を下げるときオン状態となる請求項3記載のPLL回路。
【請求項5】
前記第1及び第3のMOSトランジスタはnチャネルMOSトランジスタ、前記第2のMOSトランジスタはpチャネルMOSトランジスタであり、
前記第1の電流供給回路の前記第4のMOSトランジスタはpチャネルMOSトランジスタ、前記第5のMOSトランジスタはnチャネルMOSトランジスタであり、
前記第2の電流供給回路の前記第6のMOSトランジスタはpチャネルMOSトランジスタ、前記第7のMOSトランジスタはnチャネルMOSトランジスタである請求項4記載のPLL回路。
【請求項6】
前記ローパスフィルタは、並列接続された複数のキャパシタの並列容量を切り換えるスイッチと、直列抵抗を切り換えるスイッチを有し、前記ロック状態監視回路によりロック状態であることが検出されたとき、前記スイッチを並列容量が小さくなり、かつ抵抗値が大きくなるように切り換える請求項1、2、3、4又は5記載のPLL回路。
【請求項7】
前記ロック状態監視回路は、ローパスフィルタの出力電圧をA/D変換して得られる値が、一定期間内で所定の幅に入るとき、ロック状態と判定する請求項1乃至6のいずれか1項に記載のPLL回路。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−212919(P2010−212919A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55827(P2009−55827)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】