説明

PTP1B阻害剤及び該阻害剤を含む糖尿病治療薬、皮膚外用剤並びに食品

【課題】本発明は、PTP1B阻害活性を示す有効成分を含むPTP1B阻害剤と、該阻害剤を含む糖尿病治療薬、皮膚外用剤及び食品を提供する。
【解決手段】ピロロキノリンキノン又はその誘導体からなるPTP1B阻害剤を提供する。また、PTP1B阻害剤を、糖尿病治療薬全量に対して、0.000001〜10質量%含有することを特徴とする糖尿病治療薬、PTP1B阻害剤を、皮膚外用剤全量に対して、0.000001〜10質量%含有することを特徴とする皮膚外用剤、及び、PTP1B阻害剤を、食品全量に対して、0.000001〜10質量%含有することを特徴とする食品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTP1B阻害剤、特に、ピロロキノリンキノン又はその誘導体からなるPTP1B阻害剤に関する。また、本発明は、該阻害剤を含む糖尿病治療薬、皮膚外用剤及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣の欧米化に伴い、肥満を始めとする生活習慣病と呼ばれる疾患が、社会的に大きな問題となっている。生活習慣病は、食習慣、運動習慣、喫煙、飲酒等の生活習慣がその発症及び進行に関与する疾患群とされており、例えば、肥満症、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、循環器疾患、大腸癌、歯周病、高血圧、肺扁平上皮がん、慢性気管支炎、閉塞性肺疾患、肺気腫、アルコール性肝疾患又はアルコール性膵炎等が挙げられる。
【0003】
その中でも特に注目されている疾患の1つが糖尿病である。糖尿病は、慢性的に血糖値が高い状態となることを特徴とする疾患である。慢性的な高血糖状態は、様々な疾患へとつながり、網膜症、腎症、神経障害等の合併症を引き起こす。糖尿病は、膵臓β細胞の大部分に破壊が起こり、インスリン分泌が欠乏してインスリンの絶対的な不足が生じるI型糖尿病と、インスリンの分泌低下や骨格筋、肝臓、脂肪組織でのインスリン抵抗性によってインスリンの相対的な不足が生じるII型糖尿病とに大きく分類される。現在、II型糖尿病患者が急増しており、糖尿病患者の90%以上を占めている。しかし、従来用いられている糖尿病治療薬であるスルホニルウレア系糖尿病治療薬、ビグアナイド系糖尿病治療薬、α−グルコシダーゼ阻害薬は、その効果が充分でなく、低血糖、乳酸アシドーシス、下痢、便秘、嘔吐等の問題がある。また最近、インスリン抵抗性改善薬としてチアゾリジン系薬剤の開発がなされている。しかし、これも作用発現までに数日を要すること、ノンレスポンダーの存在、体重増加等の課題が残されている上に、毒性も問題視されており、未だ充分な糖尿病治療薬はない。
【0004】
前述したように、糖尿病の発症にはインスリンが深く関わっている。インスリンは、膵臓β細胞でつくられる血糖調節に関わるホルモンである。分泌されたインスリンは、細胞膜上に存在するインスリン受容体に結合すると、チロシンキナーゼの作用を受けて、インスリン受容体の細胞内ドメインに存在するチロシン残基がリン酸化される。このチロシンリン酸化はチロシンキナーゼと、逆にこれを脱リン酸化するチロシンホスファターゼにより調節を受けており、この両者のバランスにより多様な細胞機能が発現されると考えられている。よって、このバランスが破綻してチロシンホスファターゼ活性が異常亢進すると、リン酸化されたチロシンの脱リン酸化が亢進し、インスリン作用が低下、つまりインスリン抵抗性へと至る。
【0005】
現在、種々のチロシンホスファターゼが知られているが、インスリンシグナル伝達に関与するチロシンホスファターゼとして、肝臓、脂肪細胞、骨格筋などに存在するプロテインチロシンホスファターゼ(PTP)1Bがある。これはインスリンシグナル伝達の減弱因子の1つとして考えられている。また、このPTP1Bは脂肪細胞から分泌されるペプチドホルモンであるレプチンのシグナル伝達にも関与している。レプチンは、強い摂食抑制とエネルギー産生の亢進を引き起こす作用を持ち、過食や肥満抑制に関与するホルモンである。レプチンシグナルはインスリンシグナルと同様、レプチン受容体の細胞内ドメインにおけるリン酸化がチロシンキナーゼとチロシンホスファターゼにより調節を受けている。よって、チロシンホスファターゼ活性が異常亢進することによって、リン酸化されたチロシンの脱リン酸化が亢進し、レプチン抵抗性へと至る。最近、PTP1Bノックアウトマウスは、正常に発育するが、インスリン感受性の増大、エネルギー代謝の亢進、白色脂肪組織重量の減少を呈することが報告された(非特許文献1)。
【0006】
すなわち、PTP1Bを阻害すると、PTP1Bの活性化による脱リン酸化作用が阻害され、インスリン及びレプチンのシグナル伝達が増強される。したがって、インスリン抵抗性及びレプチン抵抗性による糖尿病、肥満症及び高脂血症等が改善されると考えられる。以上のことから、PTP1B阻害作用を有する薬剤はホスファターゼ阻害によって細胞内シグナル伝達を正常化するという、これまでの糖尿病治療薬にはない新規な作用を有するため、既存の糖尿病治療薬が抱える問題点を回避した生活習慣病、特に糖尿病、肥満症及び高脂血症の治療薬となり得る可能性がある。
【0007】
また、近年、美容についての関心は、老若男女を問わず極めて高いものがあり、殊に顔、美肌に対しては化粧料の作用をいかに高めるか、顔、肌に対する安全をいかに図るかという追及がなされてきた。また、頭髪に関しても、幅広い層に関心が高く、特に一定の年齢を経た男性については、悩みの種であり、効果的な成分の出現が待たれていた。このような観点から、これまでの美肌化粧料及び頭髪化粧料を根本から見直す画期的な成分の開発が試みられている(特許文献1〜4)。
【0008】
本来、人の肌はデリケートなものであり、人によっては化粧料の種類により、かぶれや痒み等を生じ、場合によっては顔や肌に対して大きなダメージを与えることとなる。また、有効的な成分であっても、その成分の安定化に欠ける場合、その成分が皮膚へ有効的に浸透することに欠ける場合には、その成分の作用効果を活かすことはできなかった。
【0009】
現在、PTPの阻害剤としてはバナジウム誘導体、ホスホチロシン誘導体等が知られている。しかし、これらは阻害活性の特異性、細胞内への透過性等に問題があり、実用化には至っていない。インスリンシグナル伝達に関与することが明らかになりつつあるPTP1B等のPTPを阻害する薬剤を見出すことができれば、糖尿病等の治療薬、予防薬として利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−211660号公報
【特許文献2】特開平8−20512号公報
【特許文献3】特開2004−345954号公報
【特許文献4】特開2007−230912号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Molecular and Cellular Biology, 20(15), 5479-5489 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑み、PTP1B阻害活性を示す有効成分を含むPTP1B阻害剤と、該阻害剤を含む糖尿病治療薬、皮膚外用剤及び食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、ピロロキノリンキノン又はその誘導体がPTP1B阻害活性を示す有効成分であることを見出した。また、ピロロキノリンキノン又はその誘導体がPTP1B阻害剤の有効成分として作用し、生活習慣病、特に糖尿病の治療薬、皮膚外用剤、特に育毛剤、及び食品として有効であることを見出した。
すなわち、本発明に係るPTP1B阻害剤は、ピロロキノリンキノン又はその誘導体からなる。
【0014】
前記ピロロキノリンキノン誘導体は、以下の構造式(I)
【化1】

(式中、R及びRはC2n+1であり、nは自然数である。)
で表されることが好適である。
前記構造式(I)中、R及びRはそれぞれメチル基であることが好適である。
【0015】
本発明に係る糖尿病治療薬は、上記したPTP1B阻害剤を、糖尿病治療薬全量に対して、0.000001〜10質量%含有することを特徴とする。
また、本発明に係る皮膚外用剤は、上記したPTP1B阻害剤を、皮膚外用剤全量に対して、0.000001〜10質量%含有することを特徴とする。
さらに、本発明に係る食品は、上記したPTP1B阻害剤を、食品全量に対して、0.000001〜10質量%含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のPTP1B阻害剤は、ピロロキノリンキノン又はその誘導体がPTP1B阻害活性を示す有効成分として作用する。本発明の糖尿病治療薬は、ピロロキノリンキノン又はその誘導体がPTP1B阻害剤の有効成分として作用し、糖尿病の治療薬として有効である。また、本発明の皮膚外用剤は、ピロロキノリンキノン又はその誘導体がPTP1B阻害剤の有効成分として作用し、皮膚外用剤、特に発毛、育毛作用を損なわずに、安定性、安全性を向上させた育毛剤として有効である。さらに、本発明の食品は、ピロロキノリンキノン又はその誘導体がPTP1B阻害剤の有効成分として作用し、糖尿病やメタボリックシンドロームの予防および改善食として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1において得られたPTP1B活性測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
PTP1B阻害剤
本発明に係るPTP1B阻害剤は、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその誘導体からなる。
ピロロキノリンキノン誘導体は、以下の構造式(II)
【化2】

(式中、R及びRはC2n+1であり、nは自然数である。)
で表されるアシル化ピロロキノリンキノン誘導体であることが好適である。このような誘導体とすることにより、活性部位である2つのキノンが保護され、服用した際に体内酵素等の作用によってアシル基が外れることにより、ピロロキノリンキノンの活性が得られる。したがって、このような誘導体を用いることにより、ピロロキノリンキノンの不活性化を抑制することができるため、ピロロキノリンキノンの活性を安定化することができる。また、アシル化ピロロキノリンキノン誘導体は、単純な反応で合成できる点においても好ましい。
【0019】
上述した構造式(II)中、R及びRがそれぞれメチル基であるアセチル化ピロロキノリンキノン誘導体とすることが好適である。
【0020】
その他のピロロキノリンキノン誘導体としては、マレイン酸等のその他の酸無水物を2つのキノンの各々に付加した構造、無水化している部位を2箇所有する酸無水物により2つのキノン間を架橋した構造等を有するものとすることも可能である。
【0021】
アシル化ピロロキノリンキノン誘導体は、例えば、ピロロキノリンキノン又はその塩中の2つのキノンを、有機溶剤又は水混和性有機溶剤を含んだ水溶液中でカテコール体へと還元する還元剤の存在下、もしくは、その還元反応の後に、アシル化触媒存在下又は非存在下において、カルボン酸の酸無水物又は酸ハロゲン化物を反応させることによって合成することができる。
【0022】
アシル化ピロロキノリンキノン誘導体としては、例えば、アセチル化ピロロキノリンキノン誘導体を、上述した方法により合成することができる。
アセチル化剤としては、塩化アセチル、アセチルケテン、ケテンN−アセチルイミダゾール、無水酢酸等を任意に使用することが可能である。このようなアセチル化剤において、無水酢酸を使用することが好ましい。有機溶剤を必要とせず、副生する酢酸の除去を容易に行うことができるからである。
還元剤としては、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム等の金属、ハイドロサルファイトナトリウム、硫化水素、二酸化硫黄、塩化スズ(II)、水素、ギ酸、アスコルビン酸等を使用することが可能である。このような還元剤において、亜鉛、マグネシウムを使用することが好ましい。後処理が簡易であり、還元力が高いからである。
【0023】
糖尿病治療薬
本発明に係る糖尿病治療薬は、上記したPTP1B阻害剤を、糖尿病治療薬全量に対して、0.000001〜10質量%含有する。好ましくは0.000002〜0.5質量%である。少なくとも0.000001質量%以上含有していれば、PTP1B阻害効果が最小限得られる濃度に相当するからであり、多くとも10質量%以下であれば、十分にPTP1B阻害効果が得られ且つ安全性も得られるからである。
【0024】
ハイドロキノン類、キノン類、キノン系化合物は、細胞毒性が強く、発癌性があるため、治療薬として利用することは難しいのに対し、PQQは食品にも含まれていて安全性が高いため、治療薬としての優位性を備えている。
【0025】
本発明の糖尿病治療薬の投与形態としては、例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤及びカプセル剤等の経口投与剤;注射剤、軟膏剤、トローチ剤などが挙げられる。
【0026】
本発明の糖尿病治療薬には、PTP1B阻害剤として作用するピロロキノリンキノン又はその誘導体の他に、治療薬の投与形態に応じて、適宜組み合わせて用いることができる。例えば、乳糖等の賦形剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤;マクロゴール等の界面活性剤;炭酸水素ナトリウム等の発泡剤;シクロデキストリン等の溶解補助剤;クエン酸等の酸味剤;エデト酸ナトリウム等の安定化剤;リン酸塩等のpH調整剤等が挙げられる。
【0027】
以上のように、ピロロキノリンキノン又はその誘導体がPTP1B阻害剤として作用し、本発明は糖尿病の治療薬として有効である。
【0028】
皮膚外用剤
本発明に係る皮膚外用剤は、上記したPTP1B阻害剤を、皮膚外用剤全量に対して、0.000001〜10質量%含有する。好ましくは0.000002〜0.5質量%である。少なくとも0.000001質量%以上含有していれば、PTP1B阻害効果が最小限得られる濃度に相当するからであり、多くとも10質量%以下であれば、PTP1B阻害効果が得られ且つ安全性も得られるからである。
【0029】
本発明に係る皮膚外用剤は、PQQと反応するアミノ酸及びチオール化合物を含有していない。そのため、皮膚の老化防止、肌荒れの改善、抗炎症、創傷治癒等の効果も期待される。このような効果を奏する皮膚外用剤を製造するためには、PQQ又はその誘導体(有効成分)を白色ワセリン、ミツロウ、流動パラフィン、ポリエチレングリコール等に加え、必要ならば加湿して練合し軟膏剤とするか、ロジン、アクリル酸アルキルエステル重合体等の粘着剤と練合した後、ポリアルキル等の不織布に展延してテープ剤とすることが好適である。
【0030】
本発明の成分は、化粧料、医薬品、医薬部外品など外皮に適用される皮膚外用剤として用いることができる。したがって、その剤型として水溶性系(ローション系)、可溶化系、乳化系(W/O型、O/W型)、粉末系、軟膏系、油液系、ジェル系、水−油二層系、水−油−粉末三層系など幅広い形態に使用することができる。また、本発明の皮膚外用剤は、上記必須成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、皮膚外用剤に通常用いられる他の成分、例えば、粉末、油分、湿潤剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤、pH調整剤、酵素、保湿剤、香料、水、多価アルコール、低級アルコール、高分子(増粘剤)、シリコーン類、色素などを必要に応じて適宜、配合することができる。
【0031】
本発明の皮膚外用剤の剤型としては、例えば、ローション、油剤、乳剤、クリーム、軟膏等が挙げられる。また、化粧水、クリーム、乳液、パック、美容液、洗浄料等の様々な形態の化粧料として提供することも可能である。
【0032】
以上のように、本発明の皮膚外用剤は、ピロロキノリンキノン又はその誘導体がPTP1B阻害剤の有効成分として作用し、皮膚外用剤、特に発毛、育毛作用を損なわずに、安定性、安全性を向上させた育毛剤として有効である。
【0033】
食品
本発明に係る食品は、上記したPTP1B阻害剤を、食品全量に対して、0.000001〜10質量%含有する。好ましくは0.000002〜0.5質量%である。少なくとも0.000001質量%以上含有していれば、PTP1B阻害効果が最小限得られる濃度に相当するからであり、多くとも10質量%以下であれば、PTP1B阻害効果が得られ且つ安全性も得られるからである。
【0034】
本発明の成分は、食品添加物として、例えば、健康食品等に配合することができる。本発明の成分を含むことができる食品の具体例としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤等の形態、あるいは、日常食する飲食物、栄養補強食、各種病院食等の形態で提供可能である。なお、調製の際に使用される添加剤としては、液剤としては水、果糖、ブドウ糖等の糖類、落下生油、大豆油、オリーブ油等の油類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類を用いることができる。錠剤、カプセル剤、顆粒剤などの固形剤の賦型剤としては乳糖、ショ糖、マンニット等の糖類、滑沢剤としてはカオリン、タルク、ステアリン酸マグネシウム等、崩壊剤としてデンプン、アルギン酸ナトリウム、結合剤としてポリビニルアルコール、セルロース、ゼラチン等、界面活性剤としては脂肪酸エステル等、可塑剤としてグリセリン等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明において提供される食品は、そのまま食しても良く、例えば、カプセル型、錠剤型等の食品としても良い。その他、顆粒、粉末、栄養ドリンク食品等として提供しても良い。食品的に許容される他の食材、防腐剤、増粘剤、着色料、酸化防止剤その他の添加剤を加えることもできる。また、他の食品と合わせて摂取しても良い。
【0036】
本発明の食品は、ピロロキノリンキノン又はその誘導体がPTP1B阻害剤の有効成分として作用し、糖尿病やメタボリックシンドロームの予防および改善食として有効である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例、製剤例等を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製剤例1
散剤ピロロキノリンキノン又はピロロキノリンキノン誘導体5g、乳糖895g及びトウモロコシデンプン100gをブレンダーで混合することにより、経口投与用の散剤を得た。
【0038】
製剤例2
顆粒剤ピロロキノリンキノン又はピロロキノリンキノン誘導体5g、乳糖865g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース100gを混合した後、10%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液300gを加えて練合した。これを押出し造粒機を用いて造粒し、乾燥後、経口投与用の顆粒剤を得た。
【0039】
製剤例3
カプセル剤ピロロキノリンキノン又はピロロキノリンキノン誘導体5g、乳糖115g、トウモロコシデンプン58g及びステアリン酸マグネシウム2gをV型混合機を用いて混合した後、3号カプセルに180mgずつ充填することによって、経口投与用のカプセル剤を得た。
【0040】
製剤例4
ピロロキノリンキノン又はピロロキノリンキノン誘導体0.5重量%、プロピレングリコール10重量%、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル10重量%、エタノール65重量%、精製水14.5重量%を配合することによって、ローションタイプの育毛剤を得た。
【0041】
製剤例5
ピロロキノリンキノン又はピロロキノリンキノン誘導体0.5重量%、ステアリン酸2重量%、セタノール1.5重量%、白色ワセリン3重量%、ラノリンアルコール2重量%、ポリオキシエチレン(10)モノオレエート2重量%、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル5重量%、ビタミンEアセテート0.2重量%、グリチルレチン酸0.2重量%、パラオキシ安息香酸メチル0.05重量%、エチレンジアミンテトラアセテート−2ナトリウム塩0.05重量%、プロピレングリコール10重量%、精製水73.5重量%を配合することによって、乳液タイプの育毛剤を得た。
【0042】
実施例1(PTP1B活性測定)
PTP1B活性は、96穴マイクロタイタープレートを用いて、p−nitrophenylphosphate(pNPP)を脱リン酸化する活性(405nmの吸光度の変化)を測定した。Protein tyrosine phosphatase 1B(human recombinant)は、Cayman Chemical Company社から購入して使用した。酵素希釈液(37.5 mM HEPES、20%グリセロール、0.005% Triton X-100)に溶解したPTP1Bを20μlと50 mM HEPES(pH 7.5)に溶解したPQQを50μlずつ各穴に加えて37℃で30分間インキュベートした。基質溶液(37.5 mM 酢酸ナトリウム、150 mM 塩化ナトリウム、2.5 mM EDTA、0.1% BSA、50 mM pNPP、0.5 mM DTT(pH 5.0))をマルチピペットを用いて、各wellに150μlずつ加えた。室温において、マイクロプレートリーダーによって405nmの吸光度を経時的に測定した。
実施例1の結果を図1に示す。
【0043】
図1より、ピロロキノリンキノン又はピロロキノリンキノン誘導体がPTP1B阻害剤として作用し、糖尿病の治療薬、皮膚外用剤、又は食品として有効であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロロキノリンキノン又はその誘導体からなるPTP1B阻害剤。
【請求項2】
前記ピロロキノリンキノン誘導体が、以下の構造式(I)
【化1】

(式中、R及びRはC2n+1であり、nは自然数である。)
で表されることを特徴とする請求項1に記載のPTP1B阻害剤。
【請求項3】
前記構造式(I)中、R及びRがそれぞれメチル基であることを特徴とする請求項2に記載のPTP1B阻害剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のPTP1B阻害剤を、糖尿病治療薬全量に対して、0.000001〜10質量%含有することを特徴とする糖尿病治療薬。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のPTP1B阻害剤を、皮膚外用剤全量に対して、0.000001〜10質量%含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のPTP1B阻害剤を、食品全量に対して、0.000001〜10質量%含有することを特徴とする食品。

【図1】
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【公開番号】特開2012−1507(P2012−1507A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139366(P2010−139366)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔発行者名〕 社団法人日本農芸化学会 〔刊行物名〕 日本農芸化学会2010年度(平成22年度)大会講演要旨集 〔発行年月日〕 平成22年3月5日
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(599098518)株式会社ディーエイチシー (31)
【Fターム(参考)】