説明

RFタグ用2−Dレンジホッピングスペクトラム拡散符号器/復号器システム

空中レーダーが友好的な車両上のタグに問いかけを行う。このタグは、レーダーからのダウンリンク信号によって問いかけられると、敵の検知及び利用を避けるように雑音のように見える非常に低いレベルのアップリンクメッセージを返信する。これは、レーダーから送信された1つおきのパルスの位相シフトされた、遅延されたバージョンを再送信することによって達成される。デジタルRFタグは、レーダーからの1つおきのパルスを捕捉し、1つおきの介在パルス時に擬似ランダム遅延(レンジホップ)及び擬似ランダム位相(方向)を含むデジタル符号化スペクトラム拡散パルスをレーダーに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的に言えば、スペクトラム拡散レーダーシステムとの関連で利用される符号化技術に関し、さらに詳しくは、通信とレーダーの技術を統合する安全スペクトラム拡散(SS)符号化技術に関し、これによって、空中レーダーが地上に基礎を置く1つ以上のデジタルRFタグに問いかけを行い、1つ以上のデジタルRFタグから擬似雑音符号化メッセージを受信する。
【背景技術】
【0002】
スペクトラム拡散は、周知の変調技術であり、この技術では、送信されたRF信号が広い周波数帯域に渡って拡散される。スペクトラム拡散は、通信システムにおいてのみでなく、地上にあるか又は他の航空機による対抗手段システムによる検知を避ける必要があるレーダー分野でも特別の用途を有している。この技術は、一般に、合成開口レーダー(SAR)及び地上マッピングターゲット指示器(GMTI)との関連で利用される。
【0003】
スペクトラム拡散技術の一般的なタイプがいくつか知られている。あるタイプは、直接拡散(direct sequence)変調として知られており、情報信号帯域幅よりもビットレートがはるかに高い、デジタル符号系列による搬送波の変調を含む。第2のタイプは、所定のパルスインターバルの間に広い帯域に渡って搬送波が掃引される「チャープ(chirp)」と呼ばれるFM変調を採用する。第3のタイプは、所定の符号系列に従った個別の増分(discrete increments)での搬送波シフティング又はホッピングを含む。
【0004】
このように、全ての場合において、スペクトラム拡散送信は、情報信号の帯域幅を拡張し、拡張された信号を送信し、次に、受信されたスペクトラム拡散の元の情報信号の帯域幅を再度マッピングすることによって所望の情報信号を回復することを含む。
【発明の開示】
【要旨】
【0005】
従って、デジタルRFタグと関連してスペクトラム拡散通信とレーダーパルス圧縮技術とを結合するハイブリッド通信技術を提供することが本発明の目的であり、これによって、監視任務、例えばSARマッピングを行うレーダーが友好的な地上車両上のタグに追加的に問いかけを行い、タグは、レーダーからのダウンリンク信号によって問いかけられると、本来の監視任務を劣化させず、敵の検知及び利用を避けるように、雑音のように見える非常に低いレベルの信号をレーダーに返信する。
【0006】
これは、レーダーから送信された1つおきのパルスの位相シフト及び時間遅延されたバージョンを再送信することによって達成される。デジタルRFタグは、レーダーからの1つおきのパルスを捕捉し、1つおきの介在パルス時に擬似ランダム遅延(レンジ(range)ホップ)及び擬似ランダム位相(方向)を含むデジタル符号化スペクトラム拡散パルスをレーダーに返信する。アップリンクデジタル符号は、n1パルスのプリアンブル(接頭辞シンボル)が前に来て、n3パルスからなる最終(接尾辞)シンボルで終端されるn2パルスからなる「ソフトシンボル」メッセージシンボルを含む符号化構造を備える。プリアンブル及び最終シンボルは、レーダーによって初期及び最終検知が行われるように十分な信号−雑音比(signal to noise ratio)を有している。メッセージシンボルは、一連の整合フィルタで構築される仮説ツリーの順次プルーニング(刈り込み,pruning)によってレーダー内で復号化される。重要な特徴は、スペクトラム拡散帯域幅拡張の前の情報ビットに誤り訂正符号を適用するのではなく(又はこれに加えて)、誤り訂正符号がスペクトラム拡散帯域幅拡張に組み込まれていることである。これは、誤り訂正符号用に、より豊富な文字体系(richer alphabet)を提供する。
【0007】
本発明の用途のさらなる範囲は、後述する詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明と特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示唆するものであるが、例示の目的のためにのみ与えられるものであることが理解されるべきである。従って、本発明の精神及び範囲内での種々の変更及び修正は、この詳細な説明から当業者によって明らかになるであろう。
【0008】
本発明は、以下で提供される詳細な説明と添付図面からさらによく理解されるであろう。これらは、例示の目的のためにのみ与えられ、本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ここで、類似の参照番号が類似の構成要素を参照する図面を参照するが、参照は、最初に図1に対して行う。図1には、主題発明を示すブロック図が示されている。図1には、空中合成開口レーダー(SAR)10が示されている。これは、その通常のレーダーモードに加えて、例えば図示しない地上車両上に配置された地上に基礎を置くデジタルRFタグ14に対してダウンリンクRF信号を送信するのに動作可能である。また、例えば、メッセージをレーダー10に伝えることを望む、地上車両上の人が使用する機器からなるタグユーザー16も示されている。タグユーザー16は、タグ14に与えるデジタルメッセージを生成する。次に、タグ14は、デジタル擬似雑音符号化されたRFアップリンクスペクトラム拡散メッセージ信号18を生成し、レーダー10に対して返信する。簡単にするために、図1には、1つのタグ14とタグユーザー16を示しているが、一般に、特定の利用区域には個々の異なるユーザーによって支配される複数のタグがある。
【0010】
レーダー10は、ダウンリンク信号12を生成及び送信し、かつアップリンク信号18を受信し、これに応答するための機器を含む。レーダー10は、図1に示され、特に、サーキュレータ26によってRF送信器セクション22及びRF受信器セクション24に交互に結合される送信/受信アンテナ20を含む。受信器セクション24の出力は、ディスプレイ30上に通常のレーダー帰還データを表示するのに必要に信号を生成するレーダープロセッサセクション28に接続される。レーダー10について重要なことは、レーダー10が、アップリンクメッセージ信号18に含まれると共にレーダープロセッサ28を経由するタグメッセージ用の別個の信号プロセッサも含むことである。復号化されたタグ14からのメッセージ及びデータを表示するために、タグメッセージ信号プロセッサ32も、ディスプレイ30に接続されている。しかし、所望の場合には、レーダープロセッサ28で十分な計算資源が入手可能であれば、タグメッセージ信号プロセッサ32は、レーダープロセッサ28に含めることができる。
【0011】
図1にさらに示しているように、デジタルRFタグ14は、送信/受信アンテナ34も含む。アンテナ34は、RFスイッチ36によって受信器セクション38又は送信器セクション40に接続されている。ローカルオシレータ42は、送信器セクションと受信器セクション38,40の両方に接続されている。デジタルRFメモリ(DRFM)及び変調器44は、送信器及び受信器セクション38及び40及びデジタル信号プロセッサ46の間に配置されている。
【0012】
要求があると、レーダー10は、1つ以上のタグ14を目覚めさせ、レーダーの身元証明、アップリンク信号パラメータ及びメッセージを提供するように作用する,変調されたダウンリンクパルス系列をデジタルRFタグ14に照射する。ダウンリンクで使用される変調のタイプは、好ましくは、パルス幅変調であるが、変調のタイプは、周波数変調(FM)、FM傾斜変調(CHIRP)又はその組合せであってもよい。照射されたデジタルRFタグ14(図1)の少なくとも1つは、レーダー10からのパルスを1つおきに捕捉し(つまり、傾聴を行い)、タグユーザー16からのメッセージデータを1つおきの介在パルスにおいて送信することによって応答する。代わりに、パルスの一部で傾聴を行い、パルスの他の一部で送信を行うチョッパー技術を採用することができる。しかし、これは、信号の損失に繋がり、エネルギー効率が低下したタグメッセージの送信が必要になるであろう。
【0013】
アップリンクRF信号18中のタグメッセージは、符号分割多重接続(CDMA)信号であり、つまり、複数のタグが同時に一斉送信を行うが、それらは、それらの符号が直交しているという点で「分離」されている。タグメッセージは、乱雑さの被覆で覆われるように、符号化擬似ランダム遅延及び擬似ランダム位相パルス系列(coded pseudo random pulse sequence of delays and pseudo random phases)として符号化されている。全てのタグは、他のタグにとって雑音のように見え、全てが、レーダー10に対して同時に返信する。何れか1つのタグを復号化する際には、レーダーに送信を行っている他のタグの効果は、雑音フロアを上昇させること、つまり雑音レベルを増大させることである。タグの数が臨界数より少ない場合、上昇した雑音フロアは、無視できる。しかし、臨界数を超えるタグは、性能を劣化させ始める。レーダー10は、タグ14からのアップリンクパルス系列18を検知する。アップリンクパルス系列18は、最初にデチャープ及び移動補償され(de-chirped and motion compensated)、次に、メッセージの復号化のためにタグメッセージプロセッサ32に与えられる。これについては、次に説明する。
【0014】
タグメッセージのアップリンクパルス系列と関連した符号化及び復号化技術の詳細について検討すると、このアプローチに対する基本的な前提は、ビット当りの、全信号−雑音比(SNR)(total signal to noise ratio per bit)があるレベル(シャノン限界)をほんの少し超える場合は、極めて長いメッセージに対してはほぼ完璧な送信が達成可能であることである。ビット当りの全信号の比(total signal to ratio per bit)がこのレベルよりほんの少し低い場合は、符号がどのようなものであっても送信誤りの確率がほぼ1になる。SNRがシャノン限界を超える場合、シャノンは、ほぼ全てのランダム符号一覧表がほぼ完璧な送信を達成するであろうことを示した。
【0015】
ランダム符号は、構造をほとんど有さず、それ故に複雑である。従って、多くの例において符号化構造は、非常に複雑でなければならない。しかし、これは、最適な復号化も非常に複雑であることを意味する。従来のターボ符号(turbo codes)は、情報ビットに非常に複雑なインターリーバ(interleaver)を通過させ、単純な誤り符号のパリティビットをオリジナルの情報ビットについての別の単純な符号と連接することによって、この問題を解決している(平行連接された、つまりリンクされた符号)。これは、ほぼ最適な繰り返し復号化(recursive decoding)を可能にする。従って、本発明は、ほぼシャノン限界の性能を可能にするために、復号化の複雑さとエネルギー効率のよい通信とのトレードオフを可能にする複雑な符号を提供する。
【0016】
主題発明の好ましい実施形態では、擬似ランダム雑音符号は、それぞれの可能性のある(possible)メッセージが、シャノン限界に近づくように大きく統合された信号−雑音比(SNR)を有する種々の直交符号に対応し、「ソフトシンボル」の連結を含むように生成される。「ソフトシンボル」では、シンボル境界で硬判定がなされず、むしろ復号化の間にシンボル境界で仮説(hypothesis)が刈り込まれ、つまり、最もありそうにない(unlikely)仮説がシンボル境界において引き抜かれる。これらの符号は、信号の相関を可能にするようにタグ14とレーダー10の両方で入手可能な共通の初期シードで図5に示す擬似ランダム雑音生成器47を用いて生成される。チャネル符号化が分岐を行うソフトシンボル境界を形成することによって、プルーニングプロセスを可能にする相対的に単純な準最適アルゴリズムが構築される。ソフトシンボルが連続するのに伴って統合されたSNRが増大すると、前のシンボルを復号化する際の遅延誤りが劇的に減少する。結果的に、シャノン限界に対してSNRのマージンが小さくても、維持する必要がある可能性のある仮説の数が相対的に少なくなる。レーダー10は、例えば次の表1に示すように、アップリンク信号18を制御するパラメータも含むダウンリンク信号12により、SNRを任意に設定する。
【表1】

【0017】
図2を参照すると、ここに示されているのは、相互タグ干渉を最小にするために、2つの自由度、つまりレンジホッピングと位相シフティングを有するスペクトラム拡散パルス系列を含むアップリンクメッセージ信号18のメッセージ内容の基本符号化構造である。これは、n1パルス481...48nの系列からなるプレアンブル48と、それぞれがn2パルス501...50nの系列からなる複数のメッセージシンボル50と、n3パルス521...52nの系列からなる接尾辞又は最終シンボル52とを含む。n1,n2及びn3パルスのそれぞれは、メッセージシンボル50について図3に示すように、少なくとも1つの擬似ランダム時間遅延又はレンジホップ54と擬似ランダム位相56を含む。これらは、レンジ内でのタグ14の位置と、角度を導出可能なドップラーを検知するためにレーダー10によって用いられる。
【0018】
関連するタグシステムでは、図4に示すように、メッセージシンボル50は、擬似ランダム線形周波数変化即ち「chirp」55と擬似ランダム位相56を含むn2パルスの系列からなる。本発明では、時間遅延つまりレンジホップは、スペクトラム拡散符号が知られ、かつメッセージが正しく復号化される場合以外には、パルスとパルスがコヒーレントに統合されることをタグが防止するために用いられる。従って、これらは、「タグを検知する」ためにレーダーによって用いられるのではなく、むしろそのタグが通常のレーダー処理に対しては雑音のように見えるようにする(つまり、非コヒーレントに通算されるようにする)ためにタグによって用いられる。これは、高速(単一パルス)整合フィルタ処理が、通常のレーダーの移動補償及びデチャープされた信号を降ろすので、復号化の複雑さの点で関連するタグシステムに対する改善を示している。
【0019】
代わりに、より少ない数のタグが存在するときは、それぞれが異なるレンジホップ及び位相を有する複製パルスの複数の合計を採用することができる。しかし、各タグは、より大きなメッセージを伝達しなければならないであろう。
【0020】
プリアンブル52のn1パルスは、レーダー10による初期検知に十分な信号−雑音比(SNR)を有している。初期検知は、図8Aに示すような一組の整合フィルタ571...57nによって構築されるトレリス構造を設定するためにプロセッサ32中の復号化機器によって用いられる。整合フィルタ571...57nは、トレリスを通る経路ごとに互いに異なっている。
【0021】
メッセージシンボル50は、タグユーザー16(図1)によって生成された「ソフトシンボル」メッセージシンボルを含む。その数は、ユーザー16がレーダー10に送りたいメッセージの内容に依存する。「ソフトシンボル」という用語は、ありそうにない仮説が仮説のプルーニングプロセスで切り捨てられる以外には、現在復号化されているメッセージの一部に関してシンボル境界で硬判定(hard decisions)がなされることが必要とされないことを意味する。ソフトシンボル符号化技術によれば、メッセージシンボル501...50nの系列では、それぞれの後に続くメッセージシンボル50i+1は、その前のメッセージシンボル50iのメッセージの内容に依存する。これによって、シャノン限界に近づくことができる畳み込み符号が生成される。前のシンボル50で失敗が起これば、その後の全ての通信は、ランダム雑音のように見える。従って、復号化判断を遅らせることによって、前のシンボルを任意の精度で復号化することができる。復号化精度の向上は、計算の複雑さとタグ信号強度とのトレードオフである。
【0022】
最終シンボル52は、十分なSNRを有するn3パルスの系列からなり、最終メッセージ決定(パリティ)を提供する。
【0023】
図5を参照すると、図2及び3に示すソフトシンボル50用のスペクトラム拡散符号を生成する各RFタグ14内に配置されているタグプロセッサ46(図1)の詳細のブロック図が示されている。図示のように、タグユーザー16において生成され、タグユーザー16から供給されるメッセージシンボル501、502...50nは、レーダー10内のメッセージプロセッサ32にリンクされているクロック62によって制御されている暗号安全シード参照テーブル60をも受け取るスペクトラム拡散符号生成器47に与えられる。これによって、共通の初期シードが、両方のプロセッサ32及び36に提供され、信号相関が可能になり、別のレーダーがレーダーのダウンリンク12を捕捉し、それを再度ブロードキャストするならば、タグは、試みられたダウンリンク/ウエークアップが妥当でないことを認識することができるであろうことが保証される。
【0024】
符号生成器47は、ユーザー16によって意図されたメッセージによって順次修飾された(progressively modified)初期ランダムシードをn1パルス、n2パルス及びn3パルスの擬似ランダム雑音系列(PRNS)からなる複数の符号セグメント640...64nに分離するコンピュータプログラムループを備える。第1符号セグメントセクション640は、プリアンブル用のn1パルスのPRNS0系列からなる。中間符号セグメント641...642は、例えば最初の2つのメッセージシンボル501及び502用のPRNS1及びPRNS2からなる。一方、最終符号セグメント64nは、最終シンボル52のn3パルスを生成するための最終PRNSn系列からなる。上記のように、プリアンブル48、メッセージシンボル50及び最終シンボル52のn1,n2,n3の系列の各パルスは、それぞれ、例えば図3に示すように、擬似ランダムレンジホップ54及び擬似ランダム位相変化56を含む。これらは、タグレシーバ38が受け取ってデジタルRFメモリ(DRFM)が捕捉する1つおきのレーダーパルスに順次適用され、アップリンク信号18の、1つおきの他の(every other alternate)RFパルスにより、変調器44によってレシーバ10に返信される。
【0025】
上記のように、アップリンクメッセージ信号18によりタグからレーダーに送信される擬似雑音パルスの復号化プロセスは、図1に示すタグメッセージ用プロセッサ32内で起こる。図6を参照すると、参照番号28は、レーダー10用のプロセッサを示し、これは、受け取ったパルスのそれぞれの高速移動補償デチャーピング(fast time motion compensated de-chirping)を最初に行い、その後にレンジ(range)高速フーリエ変換(FFT)を行って、レンジ及び遅延及びパルスごとの位相変調(range plus delay plus pulse-to-pulse phase modulation)でのタグ帰還パルスを提供する。このパルスが、タグメッセージ用のプロセッサ32に与えられる。参照番号66によって示すように、レンジドップラーマップ68が、図7に示すように、参照番号60で示すタグプロセッサ46によって使用されるのと同じ暗号シードを用いて低速で(in slow time)n1プリアンブルパルスから生成される。これは、擬似ランダムレンジホップを反転させ、かつ揃え(align)、位相シフトのアンラップ(unwrap)を行うためである。図6中の参照番号72で示すように、乱雑さ(clutter)の閾値70は、検知されたタグのそれぞれに対してレンジ及びドップラー(角度)での初期評価を得るために図7のレンジドップラーマップ68に適用される。タグ14がレンジ及びドップラーで一旦検知されると、シンボル相関は、図8に示すように、乱雑さにおいて実行される。
【0026】
次に、図6の参照番号74で示すように、各メッセージシンボル501...50nに対するn2パルスは、図9Aに示すような整合フィルタスコアに基づく仮説のプルーニング(刈り取り)又は廃棄プロセスに用いられる。図9Bに示すように保持されている最終メッセージシンボル50nが単一スコアで処理されるまで、各ソフトシンボル境界において整合フィルタ出力の最高「スコア」を有する2つの仮説経路だけが保持される。図6中の番号74で示すように、整合フィルタは、ドップラートラッカー(tracker)を更新するために用いられる測定も提供する。ドップラートラッカーは、ドップラードリフトを評価するために整合フィルタからの位相誤りを用いる。ドップラー評価は、レンジ内でのタグ位置を更新するためにも用いられる。従って、機械化(mechanization)は、相対的に長い統合機会(relatively long integration times)を可能にする。なぜならレンジゲートでのタグウオークが妨げられるからである。
【0027】
検知の最終ステップを行うための、最終シンボル52(図2)の最終n3パルスの処理が後に続く。そして、メッセージデータが、図1に示すレーダーのディスプレイ30に与えられ、これに表示される。
【0028】
ソフトシンボルメッセージシンボル50のプルーニングは、現在維持されている全ての仮説について、整合フィルタ評価を行った統合された信号−雑音比に基づいて行われる。プルーニングは、ソフトシンボルメッセージ境界で、トップの「nhypth」候補メッセージを除く全てを除去することによって行われる。これは、結果的に、ドップラーが復号化プロセスを通して生き残る2つの仮説として現れるという、レゾルーションセル(レンジ)内に複数タグが存在することの副次的な利点になり、レゾルーションセル内での複数タグの復号化の成功確率が高められるという結果になる。
【0029】
ここまで示し、説明してきたのは、安全スペクトラム拡散符号化技術である。例えば監視任務を行っているレーダーが、友好的な車両上にあるタグに呼びかけを行い、このタグが、次に、本来の監視任務を劣化させず、敵の検知及び利用を避けるように、雑音のように見える非常に低いレベルの信号をレーダーに返信する。RFタグからレーダーに返信されるRF信号は、レーダーから送信された1つおきのパルスの位相シフトされ、遅延されたバージョンからなる。
【0030】
ここまで説明してきた本発明は、多数の方法で変更することができることは明らかであろう。このような変更は、本発明の精神と範囲を逸脱するものとみなされることを意図しておらず、このような修正は、当業者に自明であるように、次のクレームの範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ダウンリンクレーダー信号を受信し、ユーザーからのメッセージとデータを符号化し、アップリンク信号でレーダーに符号化データを返信するデジタルRFタグと通信する空中レーダーシステムのブロック図である。
【図2】図1に示すRFタグからレーダーへのアップリンク信号中の1つのタグメッセージパケットの図である。
【図3】主題発明の好ましい実施形態による、アップリンクタグメッセージパケットの1つのシンボルを示す。
【図4】関連するタグシステムで用いられるアップリンクタグメッセージパケット中の1つのメッセージシンボルを示す図である。
【図5】図1に示すデジタルRFタグに含まれるタグプロセッサの詳細を示すブロック図である。
【図6】図1に示すレーダーに含まれるタグメッセージ用プロセッサの詳細のブロック図である。
【図7】図6に示すタグメッセージプロセッサでのレンジドップラーマップの生成を描写する図である。
【図8】検知されたタグのそれぞれに対する位相揃えされた相関を描写し、仮説メッセージのそれぞれに対して整合フィルタを作用させる図である。
【図9A】図1に示すデジタルRFタグからレーダーにアップリンクされるタグ信号中のメッセージを検知するためにメッセージシンボルをプルーニングする手順を示す。
【図9B】図1に示すデジタルRFタグからレーダーにアップリンクされるタグ信号中のメッセージを検知するためにメッセージシンボルをプルーニングする手順を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調されたRFパルスの系列からなる第1メッセージ信号を第1機器によって生成し、
第1メッセージ信号のRFパルスを第2機器に送信し、
第1機器によって送信された第1メッセージ信号のRFパルスを第2機器によって受信し、
第1メッセージを受信したときに第1機器に送信するための第2メッセージを生成し、
受信した第1メッセージの系列中の1つおきのRFパルスのそれぞれに対して擬似ランダム時間遅延及び擬似ランダム位相シフトを適用することによって、第2メッセージを用いて1つおきのRFパルスを第2機器において符号化し、
第1メッセージのRFパルスの1つおきのパルスの間の介在パルス時に比較的低い出力レベルのスペクトラム拡散通信として第2メッセージを含む符号化された1つおきのRFパルスを第1機器に返信し、
第2メッセージを含む符号化された1つおきのRFパルスを第1機器によって受信し、
第2メッセージを含む符号化RFパルスを復号化し、
第2メッセージを第1機器によって表示する工程を備える、
RFパルス型信号の送信及び受信を行う第1及び第2機器間のスペクトラム拡散通信を提供する方法。
【請求項2】
第1機器は、レーダーシステムを備え、第2機器は、RFタグを備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
RFパルスの擬似ランダム時間遅延は、見かけレンジでのシフト(shifts in apparent range)を生成し、擬似ランダム位相シフトは、ランダムシード及びタグメッセージが導き出されない場合にパルスとパルスのコヒーレントな加算を防ぐ個別の増分の変化を生成する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
RFパルスの個々の時間遅延及び位相シフトは、パルスとパルスをコヒーレントに加算させない請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1機器は、空中レーダーを備え、第2機器は、デジタルRFタグを備える請求項1に記載の方法。
【請求項6】
RFパルスの擬似ランダム時間遅延は、レンジホッピングを生成し、擬似ランダム位相シフトは、角度方向でのシフトを生成する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
RFタグは、地上に基礎を置くデジタルRFタグを備え、第1メッセージ信号は、ダウンリンク信号を備え、第2メッセージは、アップリンク信号を備える請求項6に記載の方法。
【請求項8】
符号化を行う工程は、レーダーとタグの両方に共通であるシードを有する擬似ランダム雑音符号を生成する工程を含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
符号化を行う工程は、
タグからの送信の初期検知を行うためのプリアンブルパルス系列を生成し、
タグからレーダーに送り返されることが望まれるメッセージ内容を含むメッセージシンボルの1つ以上のパルス系列を生成し、
RFタグからの送信を終えるための最終シンボルパルス系列を生成する工程を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
メッセージシンボルは、シンボル境界で硬判定が必要とされないソフトシンボルを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ソフトシンボルのそれぞれは、所定のメッセージ内容を有する関連するメッセージパルスの系列を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ソフトシンボルのメッセージ内容は、前のソフトシンボルのメッセージ内容に依存し、
復号化の工程は、ソフトシンボルのメッセージ内容の仮説ツリーの順次デプルーニング(depruning)を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
デプルーニングは、関連するソフトシンボルメッセージパルスの全てで分岐するトレリスネットワークを通じてソフトシンボルのそれぞれの関連するメッセージパルスの系列を提供することを備える請求項9に記載の方法。
【請求項14】
トレリスネットワークは、それぞれが相互に異なるフィルタ特性を有する一組の整合フィルタによって構築され、ありそうにない仮説がソフトシンボル境界で廃棄される請求項11に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのRFタグによって用いられる変調されたRFパルスの系列からなるダウンリンク信号をレーダーによって生成する手段と、
ダウンリンク信号をRFタグに送信する手段とを備え、
ダウンリンク信号は、RFタグをウエークアップさせるように作用すると共にダウンリンク信号を送信するレーダーの身元証明とタグからのアップリンク信号用信号パラメータを提供し、
RFタグによってダウンリンク信号を受信する手段と、
レーダーに送信するメッセージ信号を生成する手段と、
角度方向でのランダムシフトを提供するために、受信したダウンリンク信号の1つおきのRFパルスのそれぞれに対してレンジホッピングを提供する擬似ランダム時間遅延と擬似ランダム位相シフトを適用することによって、1つおきのRFパルス内にメッセージ信号を符号化する手段と、
ダウンリンクメッセージのRFパルスの1つおきのパルスの間の介在パルス時に比較的低い出力レベルのスペクトラム拡散アップリンク信号としてメッセージ信号を含む符号化された1つおきのRFパルスをレーダーに返信する手段とを備え、
レーダーは、
アップリンク信号中の、メッセージ信号を含む符号化された1つおきのRFパルスを受信する手段と、
メッセージ信号を含む符号化されてRFパルスを復号化する手段と、
復号化されたメッセージ信号を表示する手段をさらに備える
車両に搭載されたレーダーと少なくとも1つのRFタグの間のスペクトラム拡散通信を提供するシステム。
【請求項16】
レーダーは、航空機に搭載された空中レーダーを備え、前記少なくとも1つのRFタグは、地上に基礎を置くデジタルRFタグを含む請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つのRFタグは、複数のRFタグを備え、RFタグから送信されたRFパルスは、符号分割多重接続(CDMA)法でレーダーに送信される請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
タグのそれぞれは、ダウンリンク信号中の1つおきのRFパルスを捕捉するためのデジタルRFメモリを含む請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
RFタグのそれぞれは、レーダーとRFタグの両方に共通の、信号相関を可能にするシードを有する擬似ランダム雑音符号のための手段を含む請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
シードは、ランダムに選択されたシードである請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
メッセージ信号は、
初期検知を行うためのプリアンブルパルス系列と、
レーダーに送り返されるメッセージ内容の複数のメッセージシンボルパルス系列と、
メッセージ信号を終えるための最終シンボルパルス系列とを含む請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
メッセージシンボル系列は、ソフトシンボルを備える請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
ソフトシンボルのそれぞれは、所定のメッセージ内容を有する関連するメッセージパルスの系列を含む請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
ソフトシンボルのメッセージ内容は、前のソフトシンボルのメッセージ内容に依存する請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
復号化のための手段は、ソフトシンボルのメッセージ内容をデプルーニングするための仮説ツリーを構築するトレリスネットワークを含む請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
トレリスネットワークは、連続するソフトシンボルメッセージパルスの全てのパルスにおいて分岐する請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
トレリスネットワークは、それぞれが相互に異なるフィルタ特性を有する一組の整合フィルタを備える請求項26に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2007−530952(P2007−530952A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505250(P2007−505250)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/010222
【国際公開番号】WO2005/098472
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(397017191)ノースロップ グラマン コーポレーション (30)
【Fターム(参考)】